JP2006348027A - アトピー性皮膚炎の予防又は治療剤 - Google Patents

アトピー性皮膚炎の予防又は治療剤 Download PDF

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Junji Nagao
淳二 長尾
Hiromitsu Aoki
洋満 青木
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Abstract

【課題】本発明の目的は、安全性が高く、アトピー性皮膚炎に対する予防又は治療効果に優れ、医薬品、食品、化粧料等の各種製品形態で使用可能なアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤を提供することである。
【解決手段】アトピー性皮膚炎の予防又は治療剤の有効成分として、(i)シソ科メン
タ属植物及び/又はその抽出物と、(ii)クルミ科黄杞及び/又はその抽出物を組み合わせて使用する。
【選択図】なし

Description

本発明は、アトピー性皮膚炎の予防又は治療剤に関する。より詳細には、アトピー性皮膚炎に対する予防又は治療効果が相乗的に増強されている予防又は治療剤に関する。
アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、痒みのある湿疹を主な症状とする皮膚疾患であり、IgEが関与した即時型アレルギーであるI型アレルギーと遅延型アレルギーであるIV型アレルギーとが複合的に関与することにより発症するといわれている。
従来、アトピー性皮膚炎の治療において、痒みの抑制や炎症の防止を目的として、副腎皮質ホルモンを主とするステロイド剤が広く使用されている。また、ステロイド剤以外では、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤等の薬剤が、ヒスタミンの遊離抑制或いはH1受容体の拮抗阻害のために使用されている。しかしながら、ステロイド剤の使用には浮腫、高血圧、皮膚亀裂等の副作用を伴うという不都合があり、またステロイド剤以外の薬剤の使用では抗炎症作用が不十分であるという欠点があった。更に、上記薬剤を投与する治療方法では、あくまで対症療法に過ぎないため、一時的に症状を緩和させることができても投与を止めると症状の再発或いは悪化が起こり、該疾患を根本的に治癒させることは困難であった。
一方、これまでに、シソ科メンタ属植物の抽出物は、アトピー性皮膚炎の予防や治療に有用であることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このシソ科メンタ属植物の抽出物が有するアトピー性皮膚炎の予防又は治療効果を、一層効果的に発現させる技術については知られていない。
また、クルミ科黄杞の抽出物には、抗アレルギー作用があることが分かっているが、該抽出物を、シソ科メンタ属植物の抽出物と組み合わせることにより奏される作用効果については一切知られていない。
特開2003−286181号公報
本発明は、安全性が高く、アトピー性皮膚炎に対する予防又は治療効果に優れ、医薬品、食品、化粧料等の各種製品形態で使用可能なアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、食品原料として使用され、長年の食経験によって安全性が確認されている2種の植物(即ち、シソ科メンタ属植物及びクルミ科黄杞)又はその抽出物を組み合わせて使用することによって、アトピー性皮膚炎に対する予防又は治療効果が相乗的に増強されることを見出し、更に、当該2種の植物及び/又は抽出物を配合した医薬品、食品、化粧料等が、アトピー性皮膚炎に対する予防又は治療に有用であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に改良を重ねることにより、完成したものである。
即ち、本発明は、下記態様の予防又は治療剤を提供するものである:
項1-1. (i)シソ科メンタ(Mentha)属植物及び/又はその抽出物と、(ii)クルミ科黄杞(Engelhardtia chrysolepis)及び/又はその抽出物を有効成分として含有する、アトピー性皮膚炎の予防又は治療剤。
項1-2. シソ科メンタ属植物がミズハッカ(Mentha aquaticaL.)、セイヨウハッカ(Mentha piperitaL.)、ペニロイアルハッカ(Mentha pulegiumL.)、マルバハッカ(Mentha rotundifolia(L.) Huds.)、オランダハッカ(Mentha spicataL.)及びベルガモット
ハッカ(Mentha citrata (Ehrh.) Briq.)よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1-1に記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤。
項1-3. シソ科メンタ属植物がセイヨウハッカである、項1-1に記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤。
項1-4. (i)シソ科メンタ属植物の抽出物が、極性溶媒により抽出して得られるものである、項1-1乃至項1-3のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤。
項1-5. (i)シソ科メンタ属植物の抽出物が、シソ科メンタ属植物の葉、茎、又はこれらの混合部位から抽出して得られるものである、項1-1乃至項1-4のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤。
項1-6. (ii)クルミ科黄杞の抽出物が、極性溶媒により抽出して得られるものである、
項1-1乃至項1-5のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤。
項1-7. (ii)クルミ科黄杞の抽出物が、クルミ科黄杞の葉、茎、又はこれらの混合部位
から抽出して得られるものである、項1-1乃至項1-6のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤。
項1-8. 更に(iii)テアニンを含有する、項1-1乃至項1-7のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤。
項1-9. 更に(iv)セラミド及び糖セラミドよりなる群から選択される少なくとも1種を
含有する、項1-1乃至項1-8のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤。
項1-10. 更に(iii)テアニン、及び(iv)セラミド及び糖セラミドよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、項1-1乃至項1-7のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤。
項1-11. 更に、テアニン、セラミド、及び糖セラミドを含有する、項1-1乃至項1-7のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤。
また、本発明は、下記態様の食品を提供する:
項2-1. 項1-1乃至項1-11のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤を含有する食品。
項2-2. 項1-1乃至項1-11のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤を含有する、アトピー性皮膚炎の予防又は治療用の食品。
項2-3. (i)シソ科メンタ属植物及び/又はその抽出物と、(ii)クルミ科黄杞及び/又はその抽出物を含有する、食品。
項2-4. シソ科メンタ属植物がミズハッカ(Mentha aquaticaL.)、セイヨウハッカ(Mentha piperitaL.)、ペニロイアルハッカ(Mentha pulegiumL.)、マルバハッカ(Mentha rotundifolia(L.) Huds.)、オランダハッカ(Mentha spicataL.)及びベルガモット
ハッカ(Mentha citrata (Ehrh.) Briq.)よりなる群から選択される少なくとも1種である、項2-3に記載の食品。
項2-5. シソ科メンタ属植物がセイヨウハッカである、項2-3に記載の食品。
項2-6. (i)シソ科メンタ属植物の抽出物が、極性溶媒により抽出して得られるものである、項2-3乃至項2-5のいずれかに記載の食品。
項2-7. (i)シソ科メンタ属植物の抽出物が、シソ科メンタ属植物の葉、茎、又はこれらの混合部位から抽出して得られるものである、項2-3乃至項2-6のいずれかに記載の食品。項2-8. (ii)クルミ科黄杞の抽出物が、極性溶媒により抽出して得られるものである、
項2-3乃至項2-7のいずれかに記載の食品。
項2-9. (ii)クルミ科黄杞の抽出物が、クルミ科黄杞の葉、茎、又はこれらの混合部位
から抽出して得られるものである、項2-3乃至項2-8のいずれかに記載の食品。
項2-10. 更に(iii)テアニンを含有する、項2-3乃至項2-9のいずれかに記載の食品。
項2-11. 更に(iv)セラミド及び糖セラミドよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、項2-3乃至項2-10のいずれかに記載の食品。
項2-12. 更に(iii)テアニン、及び(iv)セラミド及び糖セラミドよりなる群から選択さ
れる少なくとも1種を含有する、項2-3乃至項2-11のいずれかに記載の食品。
項2-13. 更に、テアニン、セラミド、及び糖セラミドを含有する、項2-3乃至項2-9のいずれかに記載の食品。
項2-14. アトピー性皮膚炎の予防又は治療のために使用される旨表示された食品である、項2-3乃至項2-13のいずれかに記載の食品。
更に、本発明は、下記態様の医薬組成物を提供する:
項3-1. 項1-1乃至項1-10のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤を含有する医薬組成物。
項3-2. 項1-1乃至項1-10のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤を含有する、アトピー性皮膚炎の予防又は治療用の医薬組成物。
項3-3. (i)シソ科メンタ属植物及び/又はその抽出物と、(ii)クルミ科黄杞及び/又はその抽出物を含有する、医薬組成物。
項3-4. シソ科メンタ属植物がミズハッカ(Mentha aquaticaL.)、セイヨウハッカ(Mentha piperitaL.)、ペニロイアルハッカ(Mentha pulegiumL.)、マルバハッカ(Mentha rotundifolia(L.) Huds.)、オランダハッカ(Mentha spicataL.)及びベルガモット
ハッカ(Mentha citrata (Ehrh.) Briq.)よりなる群から選択される少なくとも1種である、項3-3に記載の医薬組成物。
項3-5. シソ科メンタ属植物がセイヨウハッカである、項3-3に記載の医薬組成物。
項3-6. (i)シソ科メンタ属植物の抽出物が、極性溶媒により抽出して得られるものである、項3-3乃至項3-5のいずれかに記載の医薬組成物。
項3-7. (i)シソ科メンタ属植物の抽出物が、シソ科メンタ属植物の葉、茎、又はこれらの混合部位から抽出して得られるものである、項3-3乃至項3-6のいずれかに記載の医薬組成物。
項3-8. (ii)クルミ科黄杞の抽出物が、極性溶媒により抽出して得られるものである、
項3-3乃至項3-7のいずれかに記載の医薬組成物。
項3-9. (ii)クルミ科黄杞の抽出物が、クルミ科黄杞の葉、茎、又はこれらの混合部位
から抽出して得られるものである、項3-3乃至項3-8のいずれかに記載の医薬組成物。
項3-10. 更に(iii)テアニンを含有する、項3-3乃至項3-9のいずれかに記載の医薬組成
物。
項3-11. 更に(iv)セラミド及び糖セラミドよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、項3-3乃至項3-10のいずれかに記載の医薬組成物。
項3-12. 更に(iii)テアニン、及び(iv)セラミド及び糖セラミドよりなる群から選択さ
れる少なくとも1種を含有する、項3-3乃至項3-11のいずれかに記載の医薬組成物。
項3-13. 更に、テアニン、セラミド、及び糖セラミドを含有する、項3-3乃至項3-9のいずれかに記載の医薬組成物。
項3-14. アトピー性皮膚炎の予防又は治療用の医薬組成物である、項3-3乃至項3-13の
いずれかに記載の医薬組成物。
項3-15. 内用形態で使用されるものである、項3-1乃至項3-14のいずれかに記載の医薬
組成物。
項3-16. 外用形態で使用されるものである、項3-1乃至項3-14のいずれかに記載の医薬
組成物。
更に、本発明は、下記態様の化粧料を提供する:
項4-1. 項1-1乃至項1-10のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤を含有する化粧料。
項4-2. 項1-1乃至項1-10のいずれかに記載のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤を含有する、アトピー性皮膚炎の予防又は治療用の化粧料。
項4-3. (i)シソ科メンタ属植物及び/又はその抽出物と、(ii)クルミ科黄杞及び/又はその抽出物を含有する、化粧料。
項4-4. シソ科メンタ属植物がミズハッカ(Mentha aquaticaL.)、セイヨウハッカ(Mentha piperitaL.)、ペニロイアルハッカ(Mentha pulegiumL.)、マルバハッカ(Mentha rotundifolia(L.) Huds.)、オランダハッカ(Mentha spicataL.)及びベルガモット
ハッカ(Mentha citrata (Ehrh.) Briq.)よりなる群から選択される少なくとも1種である、項4-3に記載の化粧料。
項4-5. シソ科メンタ属植物がセイヨウハッカである、項4-3に記載の化粧料。
項4-6. (i)シソ科メンタ属植物の抽出物が、極性溶媒により抽出して得られるものである、項4-3乃至項4-5のいずれかに記載の化粧料。
項4-7. (i)シソ科メンタ属植物の抽出物が、シソ科メンタ属植物の葉、茎、又はこれらの混合部位から抽出して得られるものである、項4-3乃至項4-6のいずれかに記載の化粧料。
項4-8. (ii)クルミ科黄杞の抽出物が、極性溶媒により抽出して得られるものである、
項4-3乃至項4-7のいずれかに記載の化粧料。
項4-9. (ii)クルミ科黄杞の抽出物が、クルミ科黄杞の葉、茎、又はこれらの混合部位
から抽出して得られるものである、項4-3乃至項4-8のいずれかに記載の化粧料。
項4-10. 更に(iii)テアニンを含有する、項4-3乃至項4-9のいずれかに記載の化粧料。
項4-11. 更に(iv)セラミド及び糖セラミドよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、項4-3乃至項4-10のいずれかに記載の化粧料。
項4-12. 更に(iii)テアニン、及び(iv)セラミド及び糖セラミドよりなる群から選択さ
れる少なくとも1種を含有する、項4-3乃至項4-11のいずれかに記載の化粧料。
項4-13. アトピー性皮膚炎の予防又は治療用の化粧料である、項4-3乃至項4-12のいず
れかに記載の化粧料。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.本発明のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤
本発明のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤は、(i)シソ科メンタ属植物及び/又はそ
の抽出物、並びに(ii)クルミ科黄杞及び/又はその抽出物を有効成分として含有することを特徴とするものである。なお、以下、アトピー性皮膚炎の予防又は治療剤を「予防又は治療剤」;(i)シソ科メンタ属植物及び/又はその抽出物を「(i)成分」;(ii)クルミ科黄杞及び/又はその抽出物を「(ii)成分」と表記することもある。
(i)成分として使用されるシソ科メンタ(Mentha)属植物は、従来食品原料として使用
されており、安全性が確認されている植物として知られている。本発明に用いることができるシソ科メンタ属植物としては、特に制限されないが、例えばミズハッカ(MenthaaquaticaL.)、セイヨウハッカ(Mentha piperita L.)、ペニロイアルハッカ(MenthapulegiumL.)、マルバハッカ(Mentha rotundifolia (L.) Huds.)、オランダハッカ(MenthaspicataL.)、ベルガモットハッカ(Mentha citrata (Ehrh.) Briq.)等を挙げることができる。好ましくは、セイヨウハッカである。なお、本発明に使用されるシソ科メンタ属植物は、野生種であってもよく、また品種改良されたものであってもよい。
また、(i)成分として使用されるシソ科メンタ属植物としては、当該植物の全草、或い
は花、芽、葉、茎、根、根茎、及び種子等の当該植物の一部のいずれでもよいが、好ましくは葉及び茎を挙げることができる。これらの部位は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(i)成分としてシソ科メンタ属植物を使用する場合、当該植物は乾燥、細切、破砕、粉
砕等の処理に供されたものであってもよい。
また、(i)成分として使用されるシソ科メンタ属植物の抽出物は、前記するシソ科メン
タ属植物を抽出原料として、これを、そのまま或いは必要に応じて、乾燥、細切、破砕、粉砕、圧搾、煮沸或いは発酵処理したものを溶媒で抽出処理することにより取得することができる。なお、抽出原料については、必要に応じて、前処理としてヘキサン等の非極性溶媒で予め脱脂処理してもよい。かかる脱脂処理を行うことにより、上記抽出原料中の余分な脂質を除去でき、また場合によっては上記抽出原料の脱臭にも寄与し得る。
シソ科メンタ属植物の抽出物の抽出処理に使用される溶媒としては、例えば、水、極性有機溶媒、水と極性有機溶媒の混合液等の極性溶媒を挙げることができる。また、当該極性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール;プロピレングリコール;アセトン;酢酸エチル等の単独或いは2種以上の組み合わせを挙げることができる。上記極性溶媒の中で、人体への安全性と取扱性の観点から、好ましくは水;エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数2〜4の低級アルコール;又はこれらの混合物が挙げられる。更に好ましくは水、エタノール、又はこれらの混合物が挙げられ、特に好ましくは水が挙げられる。抽出溶媒として、炭素数1〜5の低級アルコールと水の混合液を使用する場合、該混合液の総重量に対する該低級アルコールの含有割合としては、例えば0.1〜99.9重量%、好ましくは0.1〜70重量%、更に好ましくは0.1〜50重量%となる割合が挙げられる。
抽出処理は、例えば、シソ科メンタ属植物の抽出原料1重量部に対して、約5〜20重量部の抽出溶媒を用いて行われる。また、当該抽出処理方法としては、通常用いられている植物抽出物の抽出処理方法を採用することができ、具体的には、冷浸、温浸等の浸漬法;低温、室温又は高温下で攪拌する方法;又はパーコレーション法等が例示される。シソ科メンタ属植物の抽出物の抽出処理の具体例として、乾燥したシソ科メンタ属植物の抽出原料を粉砕し、当該乾燥粉砕物1重量部に対して約5〜20重量部の抽出溶媒を添加し、室温で撹拌しながら1〜5時間抽出を行った後、濾過や遠心分離等の常法の固液分離手段により固形分を取り除き、溶液画分を収得する方法を例示することができる。
上記方法で得られるシソ科メンタ属植物の抽出物は液状であり、本発明には該抽出物をそのままの状態で用いることもできるが、有機溶媒が含まれている場合には減圧蒸留等により有機溶媒を取り除くことが好ましい。また必要に応じて、更に、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等の乾燥処理に供することにより水分を取り除き、乾燥品として用いることもできる。また、簡便には、上記シソ科メンタ属植物の抽出物としては、商業的に入手できるものを使用することもできる。
本発明の予防又は治療剤において、(i)成分として、シソ科メンタ属植物又はその抽出
物のいずれか一方のみを使用してもよく、またシソ科メンタ属植物及びその抽出物の双方を組み合わせて使用してもよい。当該(i)成分として、好ましくは、シソ科メンタ属植物
の抽出物が挙げられる。
一方、本発明の予防又は治療剤において、(ii)成分として使用されるクルミ科黄杞(Engelhardtia chrysolepis)は、中国南部の山中に自生するクルミ科の常緑高木であり、古くから民間薬、特に茶として飲用されている安全性の高い植物である。本発明に使用されるクルミ科黄杞は、野生種であってもよく、また品種改良されたものであってもよい。
また、(ii)成分として使用されるクルミ科黄杞としては、当該植物の全木、或いは茎、葉、根、根茎等の当該植物の一部のいずれでもよいが、好ましくは葉及び茎、更に好ましくは葉を挙げることができる。これらの部位は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(ii)成分としてクルミ科黄杞を使用する場合、当該植物は乾燥、細切、破砕、粉砕等の処理に供されたものであってもよい。
また、(ii)成分として使用されるクルミ科黄杞の抽出物は、前記するクルミ科黄杞を抽出原料として、これを、そのまま或いは必要に応じて、乾燥、細切、破砕、粉砕、圧搾、煮沸或いは発酵処理したものを溶媒で抽出処理することにより取得することができる。なお、抽出原料については、シソ科メンタ属植物の場合と同様、必要に応じて、前処理としてヘキサン等の非極性溶媒で予め脱脂処理してもよい。
クルミ科黄杞の抽出物の抽出処理に使用される抽出溶媒や抽出処理方法については、上記シソ科メンタ属植物の抽出物の場合と同様である。
クルミ科黄杞の抽出物は、上記シソ科メンタ属植物の抽出物の場合と同様、液状であってもよく、濃縮物や乾燥物の状態であってもよい。
クルミ科黄杞の抽出物には、主成分として、ネオアスチルビン、アスチルビン、ネオイソアスチルビン、イソアスチルビン、ファンキオキシドE、クエルシトリン、イウクリフィン等のジフラボノール配糖体が含まれている。
本発明の予防又は治療剤において、(ii)成分として、クルミ科黄杞又はその抽出物の
いずれか一方のみを使用してもよく、またクルミ科黄杞及びその抽出物の双方を組み合わせて使用してもよい。当該(ii)成分として、好ましくはクルミ科黄杞の抽出物が挙げられる。
本発明の予防又は治療剤において、(i)成分と(ii)成分の配合比率としては、例えば、
乾燥重量換算で、(i)成分1重量部に対して、(ii)成分が0.001〜1000重量部、
好ましくは0.01〜100重量部、更に好ましくは0.1〜10重量部が例示される。このような配合比率で、(i)成分と(ii)成分(特に、シソ科メンタ属植物の抽出物とクル
ミ科黄杞の抽出物)を組合わせて含有することにより、アトピー性皮膚炎の予防又は治療効果が相乗的に増強されて奏される。
本発明の予防又は治療剤には、上記(i)及び(ii)成分に加えて、(iii)テアニンを含有していてもよい。テアニンを含有することにより、鎮静作用やリラックス作用を付与でき、アトピー性皮膚炎の一因といわれている精神面の改善効果が得られる。
本発明の予防又は治療剤がテアニンを含有する場合、該剤におけるテアニンの配合比率としては、特に制限されないが、上記(i)及び(ii)成分の合計量(乾燥重量換算)100
重量部に対して、テアニンが通常0.001〜100重量部、好ましくは0.01〜100重量部、更に好ましくは0.1〜50重量部となる割合が挙げられる。
また、本発明の予防又は治療剤には、上記(i)及び(ii)の成分に加えて、(iv)セラミド
及び糖セラミドよりなる群から選択される少なくとも1種を含有していてもよい。セラミド及び/又は糖セラミドを含有することにより、皮膚の症状の改善効果が向上する傾向がみられる。本発明で使用されるセラミドとしては、例えば、ウシ、ウマ等のほ乳動物の由来のもの;米糠、米胚芽等の植物由来のもの;化学合成により製されたもの等が挙げられる。また、本発明で使用される糖セラミドとしては、グルコシルセラミドやガラクトシルセラミド等が挙げられ、その由来として、ウシ、ウマ等のほ乳動物の由来のもの;米糠、米胚芽等の植物由来のもの;化学合成により製されたもの等が例示される。本発明において、セラミド/及び又は糖セラミドは、必ずしも精製されたものでなくてもよく、例えばセラミド/及び又は糖セラミドを含む米胚芽油を使用することもできる。
また、本発明の予防又は治療剤がセラミド及び/又は糖セラミドを含有する場合、セラミド及び/又は糖セラミドの配合比率としては、特に制限されないが、上記(i)及び(ii)
成分の合計量(乾燥重量換算)100重量部に対して、セラミド及び/又は糖セラミドが総量で通常0.001〜100重量部、好ましくは0.005〜10重量部、更に好ましくは0.01〜5重量部となる割合が挙げられる。
本発明の予防又は治療剤の好ましい一態様として、上記(i)及び(ii)成分に加えて、(iii)テアニン及び(iv)セラミド/及び又は糖セラミドが含有されているものが挙げられる。これらの(iii)及び(iv)の成分をも組み合わせて含有することにより、アトピー性皮膚炎
の予防又は治療効果が一層良好になる傾向が見られ、治療効果の体感性が増大するという利点が得られる。
本発明の予防又は治療剤は、経口的摂取又は投与による使用形態でも、また経皮適用による使用形態でも、アトピー性皮膚炎に対する予防又は治療効果を奏することができるので、例えば、食品、医薬品、化粧料等の分野で使用することができる。
本発明の予防又は治療剤の有効な適用量は、該剤の形態、対象者の年齢や性別、期待される効果、使用する有効成分の種類等に応じて適宜設定される。
例えば、本発明の予防又は治療剤を経口摂取又は投与する場合であれば、通常、成人1日当たりの該剤の有効量(乾燥重量換算)として、上記(i)及び(ii)成分の合計量が0.006〜6g、好ましくは0.14〜5gに相当する量が例示される。より具体的には、経口摂取又は投与する場合の成人1日当たりの有効量(乾燥重量換算)として、(i)成分が0.05〜5gであり、且つ(ii)成分が0.01〜2g;好ましくは(i)成分が0.1〜3gであり、且つ(ii)成分が0.04〜1gに相当する量が例示される。
また、例えば、本発明のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤を経皮(外用)適用する場合であれば、通常、成人の適用患部1cmに対する1日当たりの該剤の有効量として、乾燥重量換算で、上記(i)及び(ii)成分の合計量が0.001〜0.1g、好ましくは0.003〜0.05gに相当する量が例示される。より具体的には、成人の適用患部1cmに対する1日当たりの有効量として、(i)成分が0.0008〜0.08gであり、且つ(ii)成分が0.0002〜0.02g;好ましくは(i)成分が0.002〜0.06gであり、且つ(ii)成分が0.0007〜0.015gに相当する量が例示される。
2.食品
本発明の予防又は治療剤を食品に配合することにより、アトピー性皮膚炎の予防又は治療効果を奏する食品が提供される。即ち、本発明の予防又は治療剤を含む食品は、アトピー性皮膚炎の予防又は治療用の食品、特に、アトピー性皮膚炎の予防又は治療のために用いられるものである旨の表示を付した食品として有用である。
本発明の予防又は治療剤を配合した食品として、好ましくは、保健機能食品(栄養機能食品及び特定保健用食品)、いわゆる健康食品、栄養補助食品又は特別用途食品(病者用食品等)等を挙げることができる。形態としては、例えば、飲料(炭酸飲料、清涼飲料、乳飲料、コーヒー飲料、ミネラルウォーター、アルコール飲料、果汁飲料、茶類、栄養飲料等)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープ等)、菓子類(ガム、キャンディー、クッキー、せんべい、ビスケット、ゼリー等)、水産練り製品(蒲鉾、竹輪等)、畜産製品(ハム、ソーセージ等)、調味料(ソース、マヨネーズ、ふりかけ、香辛料、ドレッシング等)、パン、麺類、シリアル等が挙げられる。また、保健機能食品や栄養補助食品等の場合であれば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ゼリー等の形態のものが挙げられる。
本発明の予防又は治療剤を含有する食品において、該食品中の該剤の配合割合については、上記有効量や該食品の形態等に応じて、適宜設定される。一例として、上記食品の総量に対して、上記(i)及び(ii)成分の合計量が、乾燥重量換算で1〜100重量%、好ま
しくは10〜90重量%、更に好ましくは15〜80重量%となる割合が例示される。より具体的には、上記食品の総重量に対して、乾燥重量換算で、(i)成分が10〜80重量
%であり、且つ(ii)成分が3〜50重量%;好ましくは(i)成分が13〜70重量%であり、且つ(ii)成分が5〜30重量%;更に好ましくは(i)成分が15〜60重量%であり、且つ(ii)成分が15〜25重量%となる割合が例示される。
また、上記(i)及び(ii)成分と共に、テアニンを食品に配合する場合、該食品中のテア
ニンの配合割合については、上記予防又は治療剤中のテアニンの配合比率や該剤の上記有効量等に応じて適宜設定される。一例として、該食品の総量に対して、テアニンが1〜80重量%、好ましくは2〜60重量%、更に好ましくは4〜30重量%となる割合を挙げることができる。
更に、上記(i)及び(ii)成分と共に、セラミド/及び又は糖セラミドを食品に配合する場合、該食品中のセラミド/及び又は糖セラミドの配合割合については、上記予防又は治療剤中のセラミドの配合比率や該剤の上記有効量等に応じて適宜設定される。一例として、食品の総量に対して、セラミド/及び又は糖セラミドが総量で0.01〜80重量%、好ましくは0.1〜5重量%、更に好ましくは0.3〜3重量%となる割合を挙げることができる。
3.化粧料
本発明の予防又は治療剤を、香粧学上許容される基材や担体と共に混合して化粧料を調製することにより、アトピー性皮膚炎の予防又は治療効果を奏する化粧料が提供される。即ち、本発明のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤を含む化粧料は、アトピー性皮膚炎の予防又は治療用の化粧料として有用である。
当該化粧料の形態については、特に制限されないが、例えば、クレンジング剤、皮膚洗浄料、マッサージ剤、軟膏、クリーム、ローション、オイル、パック、洗顔料、化粧水、乳液、ゼリー等が挙げられる。
本発明の予防又は治療剤を含有する化粧料において、該化粧料中の該剤の配合割合については、上記有効量や該化粧料の形態等に応じて、適宜設定される。一例として、上記化粧料の総量に対して、上記(i)及び(ii)成分の合計量が、乾燥重量換算で0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜7重量%、更に好ましくは1〜5重量%となる割合が例示される。より具体的には、上記化粧料の総量に対して、乾燥重量換算で、(i)成分が0.01
〜10重量%であり、且つ(ii)成分が0.1〜10重量%;好ましくは(i)成分が0.05〜5重量%であり、且つ(ii)成分が0.2〜5重量%;更に好ましくは(i)成分が0.1〜3重量%であり、且つ(ii)成分が0.3〜3重量%となる割合が例示される。
また、上記(i)及び(ii)成分と共に、テアニンを化粧料に配合する場合、該食品中のテ
アニンの配合割合については、上記予防又は治療剤中のテアニンの配合比率や該剤の上記有効量等に応じて適宜設定される。一例として、該化粧料の総量に対して、テアニンが0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、更に好ましくは0.1〜3重量%となる割合を挙げることができる。
更に、上記(i)及び(ii)成分と共に、セラミド/及び又は糖セラミドを化粧料に配合す
る場合、該化粧料中のセラミド/及び又は糖セラミドの配合割合については、上記予防又は治療剤中のセラミドの配合比率や該剤の上記有効量等に応じて適宜設定される。一例として、化粧料の総量に対して、セラミド/及び又は糖セラミドが総量で0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%、更に好ましくは0.01〜1重量%となる割合を挙げることができる。
4.医薬組成物
本発明の予防又は治療剤は、必要に応じて薬学的に許容される基材や担体と共に製剤化されることにより、アトピー性皮膚炎の予防又は治療用の医薬組成物として提供される。当該医薬組成物は、内用形態で使用されるものであっても、また外用形態で使用されるものであってもよい。
内用形態で使用される医薬組成物としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、液剤、エキス剤等の経口剤;注射剤等の剤型のものが挙げられる。
また外用形態で使用される医薬組成物としては、軟膏剤、貼付剤、液剤、乳剤、鼻腔用噴射剤等の剤型のものが挙げられる。
なお、本発明の予防又は治療剤を含有する医薬組成物における該剤の配合割合については、該医薬組成物の形態や前記投与有効量等に応じて適宜設定することができる。例えば、内用形態で使用される医薬組成物であれば、該医薬組成物中の各配合成分の割合は、前記食品の場合と同様の割合に設定される。また、外用形態で使用される医薬組成物であれば、該医薬組成物中の各配合成分の割合は、上記の化粧料の場合と同様の割合に設定される。
5.アトピー性皮膚炎易発症体質改善剤
本発明のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤は、アトピー性皮膚炎易発症体質を改善して、アトピー性皮膚炎を発症し難い体質にする効果を奏することができる。従って、本発明のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤は、アトピー性皮膚炎易発症体質改善剤としても有用である。なお、本発明でいう「アトピー性皮膚炎易発症体質」とは、IgE抗体を産生し易く、アレルゲンとの接触によってアトピー性皮膚炎を発症し易い体質を意味する。
本発明の予防又は治療剤は、シソ科メンタ属植物の抽出物とクルミ科黄杞の抽出物を組み合わせて含有することにより、アトピー性皮膚炎に対する予防又は治療効果が相乗的に増強されて奏されるため、シソ科メンタ属植物の抽出物やクルミ科黄杞の抽出物を単独で使用する場合に比して、アトピー性皮膚炎の予防又は治療効果の点で顕著に優れている。
また、本発明のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤で使用するシソ科メンタ属植物の抽出物とクルミ科黄杞の抽出物は、従来食品原料として使用されており、安全性が確認されている。そのため、本発明のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤は食品や化粧料に配合することが可能であり、食品の摂取や化粧料の使用という日常的で簡便な手段を通してアトピー性皮膚炎の予防又は治療が実現できる。
本発明のアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤は、アトピー性皮膚炎に対する予防乃至治療作用に加え、肌荒れ、ニキビ、あせも、あかぎれ、乾燥肌、湿疹、しもやけ等の皮膚症状を改善する作用をも示すので、有用性が高い。
以下、実施例等を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
参考製造例1 セイヨウハッカ抽出物の製造
セイヨウハッカの乾燥葉1000gに水10Lを加え、1時間、還流抽出処理を行った。次いで、得られた抽出液を約2Lになるまで減圧濃縮し、これにデキストリン360gを加え、これを噴霧乾燥して、720gのセイヨウハッカの抽出物含有粉体(実質360gのセイヨウハッカの抽出物含有)を取得した(収率36%)。
参考製造例2 クルミ科黄杞抽出物の製造
黄杞葉の乾燥粉砕物200gを2リットルの熱水で2時間抽出処理し、得られた抽出液を減圧下に濃縮して32gの抽出物(乾燥物)を得た。得られた抽出物には、ネオアスチルビンが2.28重量%、アスチルビンが3.87重量%、ネオイソアスチルビンが2.71重量%、イソアスチルビンが0.81重量%含まれていることが確認された。
試験例1
表1に示す組成の錠剤を常法に従って調製し、これをアトピー性皮膚炎を患っている8名のモニター(男性2人、女性6人)に、一日3錠を28日間連続して摂取させた。摂取終了日から7日以内に、モニター毎に、下記の評価基準に従ってアトピー性皮膚炎の症状の改善の程度を判定した。
<アトピー性皮膚炎の症状の改善の程度>
◎:明らかにアトピー性皮膚炎の症状が改善されており、治療効果が明確に認められる
○:自覚できる程度にアトピー性皮膚炎の症状が改善されており、治療効果が認められる△:アトピー性皮膚炎の症状の悪化は抑制されていた
×:アトピー性皮膚炎の症状が悪化した
得られた結果を表2に示す。この結果から、セイヨウハッカ抽出物及びクルミ科黄杞抽出物を含有する錠剤を摂取することにより、アトピー性皮膚炎の症状を改善する作用があることが確認され、アトピー性皮膚炎の予防又は治療には、セイヨウハッカ抽出物及びクルミ科黄杞抽出物を組み合わせて使用することが有効であることが明らかとなった。
試験例2
セイヨウハッカ抽出物としてミントエキスパウダー、クルミ科黄杞抽出物として黄杞葉エキスパウダーを用い、アトピー性皮膚炎を誘発させたマウスにおける耳介腫脹抑制率を測定した。
マウスは、雄性NC/NgaTndCrjSPFマウス(以下NCマウス:日本エスエルシー株式会社より購入)を用いた。動物は5週齢で購入し、1週間の馴化期間をもうけた後、6週齢から実験に供した。
被検物質としては、ミントエキスパウダー(商品名:ペパーミントエキスパウダー T−0602 生晃栄養薬品株式会社製;以下、ペパーミントエキスと記載する)、黄杞葉エキスパウダー(商品名:黄杞葉エキスパウダー T−0527 生晃栄養薬品株式会社製;以下は、黄杞葉エキスと記載する)を使用した。ペパーミントエキスはミント葉からの熱水抽出エキスを乾燥させ、デキストリンの最終濃度が50%となるようデキストリンを加え粉末化したものである。また、黄杞葉エキスは、黄杞葉からの含水アルコール抽出エキスを乾燥させ、デキストリンの最終濃度が20%となるようデキストリンを加え粉末化したものである。
対照物質としては塩酸エピナスチン(商品名:アレジオン(登録商標) ドライシロップ1%日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社)を使用した。投与検体の調製は生理食塩水(大塚製薬株式会社)を用いた。
群構成及び投与量は、感作及び惹起を行わない群(a群:無処置群)、感作及び惹起を行い生理食塩水を投与する群(b群:陰性対照群)、感作及び惹起を行い塩酸エピナスチン5mg/kg/dayを投与する群(c群:陽性対照群)、感作及び惹起を行いペパーミントエキス100mg/kg/day投与する群(d群)、感作及び惹起を行い黄杞葉エキス100mg/kg/day投与する群(e群)、感作及び惹起を行い黄杞葉エキス30mg/kg/day投与する群(f群)、感作及び惹起を行いペパーミントエキス100mg/kg/day+黄杞葉エキス30mg/kg/dayを投与する群(g群)の7群とした。
群分けは、感作処理前日に体重を測定し、体重のばらつきがほぼ均一になるように1群6匹に分けた。なお、投与は胃ゾンデを用いて0.01ml/gの割合で経口投与した。投与期間は感作処理日の前日から9週目終了まで、1日1回毎日投与した。
感作は6週齢に達した動物に1回実施した。すなわち、バリカンを用いて動物腹部の毛剃りを行い、その翌日、100μLの5%(w/v)塩化ピクリル(東京化成工業株式会社)溶液(エタノール:アセトン=4:1)を、マウス腹部に、ピペットマン(GILSON社)を用いて塗布した。
本試験例において感作・惹起に使用した塩化ピクリルは、ハプテンと呼ばれるものの一つである。ハプテンとは、一般的に分子量5000以下の低分子物質であり、抗体とは結合するがそれ自体のみでは免疫原性を持たないものをいう。しかし、ハプテンは、タンパク質や多糖類などの他の物質と結合することによって免疫原性を獲得し、本試験例においてはアレルゲンとして作用する。
アトピー性皮膚炎の惹起は、感作の4日後から開始した。最初の6週間は1週間1回、月曜日に実施した。その後、7、8週目に1週間2回、月曜日及び木曜日に実施した。惹起は、エーテル麻酔した状態でマウスの左右の耳介裏側に20μLずつの1%(w/v)塩化ピクリル溶液(オリーブ油:アセトン=9:1)を塗布した。
惹起9週目終了時におけるb、c及びg群について、マイクロメータ(株式会社ミツトヨ)を用いて左右の耳介の厚みを測定し、得られた測定値を平均した。得られた平均値に基づいて、陽性対照(c群)を100%、陰性対照(b群)を0%とし、g群の耳介腫脹抑制率を求めた。結果を表3に示す。
また、上記の試験において、各マウスの炎症所見を記録した。皮膚炎所見は、毎週1回、惹起の翌日(火曜日)に左右の耳介裏側の皮膚の状態を観察した。評価基準は、ヒトのアトピー性皮膚炎の臨床症状における評価基準を参考として、(1)発赤・出血、(2)擦創・組織欠損、(3)痂皮形成・乾燥について4段階の評点化(0:無症状、1:軽度、2:中等度、3:高度)を行い、左右の耳介についてそれぞれ評点(炎症スコア)を平均し、標準偏差を求めた。また、t検定により、惹起9週目終了時における陰性対照群(b群)に対する有意差を求めた。結果を表3に示す。
表3に表されるように、ペパーミントエキスと黄杞葉エキスを併用したg群では、b群(陰性対照群)や各エキス単独で用いる群(d〜f群)よりも炎症スコアが低いことが示された。また、g群は、陽性対照群であるc群と同程度の耳介腫脹抑制率を示した。
a、b、c及びg群について、それぞれマウスの耳介腫脹の様子を表す写真を撮影した(図1)。
以上の結果から、セイヨウハッカ抽出物とクルミ科黄杞抽出物を併用することによって、これらをそれぞれ単独で使用した場合と比較して、アトピー性皮膚炎の症状を改善する作用が顕著に増強されていることが確認された。
処方例1 錠剤
常法に従って下記組成の錠剤を製造した。
1錠当たりの配合量(mg)
参考製造例1で得られたセイヨウハッカ抽出物 51.0
参考製造例2で得られたクルミ科黄杞抽出物 22.1
テアニン 16.0
セラミド糖脂質含有米胚芽油
(セラミド糖脂質を37.5重量%含有) 1.6
粉末還元麦芽糖 100.0
デンプン 0.28
炭酸カルシウム 2.1
デキストリン 56.5
結晶セルロース 34.42
ショ糖脂肪酸エステル 15.0
1錠当たりの合計量(mg) 300.0
処方例2 クリーム剤(化粧料)
常法に従って下記組成の化粧料用クリーム剤を製造した。
配合割合(重量%)
参考製造例1で得られたセイヨウハッカ抽出物 1
参考製造例2で得られたクルミ科黄杞抽出物 1
エタノール 6
ミツロウ 7
スクワラン 28
脂肪酸グリセリルエステル 4
乳化剤 5
1,3−ブチレングリコール 3
α−ビサボロール 0.3
精製水 適量
合計 100重量%
処方例3 軟膏剤
常法に従って下記組成の軟膏剤を製造した。
配合割合(重量%)
参考製造例1で得られたセイヨウハッカ抽出物 1.5
参考製造例2で得られたクルミ科黄杞抽出物 1.5
白色ワセリン 25
ステアリルアルコール 22
プロピレングリコール 12
ラウリル硫酸ナトリウム 15
パラオキシ安息香酸メチル 0.02
パラオキシ安息香酸プロピル 0.015
精製水 適量
合計 100重量%
アトピー性皮膚炎惹起9週目終了時における、a、b、c及びg群のマウスの耳介の代表例を示す写真である。

Claims (4)

  1. (i)シソ科メンタ(Mentha)属植物及び/又はその抽出物と、(ii)クルミ科黄杞(Engelhardtia chrysolepis)及び/又はその抽出物を有効成分として含有する、アトピー性皮
    膚炎の予防又は治療剤。
  2. (i)シソ科メンタ属植物及び/又はその抽出物と、(ii)クルミ科黄杞及び/又はその抽
    出物を含有する、食品。
  3. (i)シソ科メンタ属植物及び/又はその抽出物と、(ii)クルミ科黄杞及び/又はその抽
    出物を含有する、医薬組成物。
  4. (i)シソ科メンタ属植物及び/又はその抽出物と、(ii)クルミ科黄杞及び/又はその抽
    出物を含有する、化粧料。
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