JP2006343455A - プラスチック光学材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 透明性に優れ、特定の屈折率高低分布を有する光学材料を作製する。
【解決手段】中空管30の中に、第1の重合成化合物を注入し、重合させて第1層13を形成する。続いて、第1層13の内側に第2の重合性組成物を注入し、重合させて第2層14を形成する。このように重合性組成物を注入し重合させて層を形成する工程を繰り返し行い、n層構造の光学材料10を形成する。中空管30への各重合性組成物の注入量は、内側の層に向かうにしたがい変化させる。隣接する層は、同じ複数種の重合性組成物を用いて、中心側の層において屈折率を高くする重合性組成物が多くなるように配合し、隣接する層同士の屈折率が異なるようにするとともに、屈折率の差が5×10-5以上5×10-3未満となるように調整する。透明性に優れ、帯域特性および集光特性に優れる光学材料10を得ることができる。
【選択図】 図2
【解決手段】中空管30の中に、第1の重合成化合物を注入し、重合させて第1層13を形成する。続いて、第1層13の内側に第2の重合性組成物を注入し、重合させて第2層14を形成する。このように重合性組成物を注入し重合させて層を形成する工程を繰り返し行い、n層構造の光学材料10を形成する。中空管30への各重合性組成物の注入量は、内側の層に向かうにしたがい変化させる。隣接する層は、同じ複数種の重合性組成物を用いて、中心側の層において屈折率を高くする重合性組成物が多くなるように配合し、隣接する層同士の屈折率が異なるようにするとともに、屈折率の差が5×10-5以上5×10-3未満となるように調整する。透明性に優れ、帯域特性および集光特性に優れる光学材料10を得ることができる。
【選択図】 図2
Description
本発明は、プラスチック光学材料およびその製造方法に関するものであり、特に光ファイバなどの光導波路やレンズに利用することができるプラスチック光学材料およびその製造方法に関する。
従来より、光学材料として、ガラス(光学ガラス)が使用されている。光学ガラスは、化学的に安定であり、優れた透明性や成形性,硬度などの特性を有することから、光ファイバや光導波路,レンズ,電子部品などに利用されている。ところが、最近では、光学ガラスに代替する光学材料として、プラスチック材料が注目されている。光学用プラスチック材料は、空気中からポリマー中へ入射した光が表面で反射しながらポリマー中を通過する現象を利用したものであり、透明性が高く、光学ガラスと比較して、軽量性,加工性に優れるなどの特色を有していることから、様々な技術へ応用されている。
例えば、光ファイバへ利用したプラスチック光ファイバ素線(Plastic Optical Fiber;POF)が挙げられる。POFは、互いに屈折率の異なる重合性組成物からなり、一方の重合性組成物に対して所定の角度で光を入射させて、屈折率の異なる界面で光を全反射させることにより光を伝播させる光伝送体である。最近では、このPOFの中でも、中心から外側に向かって屈折率に高低分布を設けた屈折率分布型POFが注目されている。屈折率分布型POFは、その特有の屈折率分布により、中心を通る光と周辺を経由する光とがほぼ同時に伝播される。そのため、入力信号に歪が発生しないので、高い伝送容量を発現させて大幅な高速通信を実現することができる。
屈折率分布型POFの製造方法としては、例えば、POFの前駆体となる光ファイバ母材(プリフォーム)を作製した後、このプリフォームを加熱延伸させて所望の径を有するPOFとする方法がある。このとき、所望の屈折率分布を発現させる方法としては、例えば、光の通路となる部分(光伝送部)を形成する主成分に対して屈折率調整剤を添加し、この屈折率調整剤の含有量を調整することにより径の中心に向かうにしたがい屈折率の高低分布を発現させる方法が挙げられる。
しかし、このように屈折率調整剤を使用する場合には、屈折率を所望の分布状態に制御することが困難であるという問題を抱える。そこで、光伝送部を順次形成する際の重合反応の程度を調整する方法(例えば、特許文献1参照)や、回転する光ファイバプリフォーム製造用チューブに単量体原料を注入および重合させて外殻部を形成した後、この単量体原料の組成を、屈折率調整剤を多量に含むように漸進的に変化するよう調整しながら注入し、これを重合させて光伝送部を形成する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
特開平10−096825号公報
特開2001−215345号公報
特許文献1の方法は、未重合の重合性組成物が残存する状態で連続して重合性組成物を注入し、重合させることにより複数の層によるコアを形成させる。しかし、このとき、残存する組成物と添加した組成物の組合せによってはポリマーブレンドによる失透がおきてしまう懸念があった。また、特許文献2の方法も同様に、連続的に屈折率の異なる複数の層により構成されたコアを形成することができるが、層間の屈折率が制御されていないと光が層間を通過する際に反射が起こってしまうため、光伝送には適さない。したがって、現在においては、上記のような懸念がなく、より高い透明性と最近の高速通信網の要求に耐えうる伝送帯域特性に優れたPOFの製造方法の提案が求められている。
本発明は、レンズおよび屈折率分布型POFを含む光ファイバとして利用することができる光学材料とその製造方法を提供する。
上記課題を解決するために、本発明のプラスチック光学材料の製造方法は、中空管の中に重合性組成物を注入して前記中空管を回転させながら前記重合性組成物を重合させることにより、前記中空管の内部に重合体からなる重合体層を形成させる工程を行い、前記工程を複数回繰り返すことにより、前記中空管の内部に前記重合体層が同心円状に積層されたプラスチック光学材料を製造する方法において、a回目と(a+1)回目(ただし、a≧1)の注液時の重合性組成物からなる重合体の屈折率の差が、5×10-5以上5×10-3未満とすることを特徴とする。
前記積層された重合体層において、隣接する層のうち径の中心側の層の屈折率が一方の層の屈折率よりも高いことが好ましい。また、前記中空管への前記重合性組成物の注入量を、内側の層に向かうにしたがい次第に減らすことが好ましい。そして、前記隣接する重合体層は、複数種の重合性組成物の配合からなることが好ましく、a回目と(a+1)回目(ただし、a≧1)の注液時の重合性組成物は、同一の複数種の重合性組成物の配合からなる事が特に好ましい。なお、前記隣接する重合体層のうち中心側の重合体層は、屈折率を高くする重合性組成物を多く配合してなることが好ましい。
また、上記いずれかの製造方法で製造されたプラスチック光学材料は本発明に含まれる。そして、本発明のプラスチック光学材料は、光ファイバやGRINレンズであることを特徴とする。なお、同心円状に複数のポリマー層が形成された断面を有し、内側に位置する前記ポリマー層ほど屈折率が大きいプラスチック光学材料において、前記複数のポリマー層のうち、隣接する層の屈折率の差が5×10-5以上5×10-3未満であることを特徴とする。
本発明を光ファイバに利用すると、優れた透明性および伝送帯域特性を有する屈折率分布型POF光ファイバを得ることができる。また、本発明の光学材料および製造方法は、プラスチック光導波路やプラスチックレンズとして利用することができる。特にレンズに使用する場合には、集光特性に優れたレンズを提供することができる。
本発明の実施形態について図を引用しながら説明する。ただし、本発明は本実施形態に限定されるものではない。図1は、本実施形態での光学材料の製造工程図である。ここでは工程の流れについてのみする。
本発明の光学材料10は、n層構造(n≧2)を有する。各層を形成させる層形成工程は、層を生成させる重合性組成物を注入する注入工程とこの重合性組成物を重合させて重合体とする重合工程とからなる。ここでは、第1,第2,・・・・,第(n−1),第nとn層の光学材料10を形成させる。なお、本実施形態では中空管30を用いて、この中空管30の内部に各層を生成させる重合性組成物を注入する。
まず、第1注入工程11において、第1層を生成させる第1の重合性組成物を中空管に注入する。そして、第1重合工程12として第1の重合性組成物を重合させて第1層13を形成させる。次に、第2注入工程15として第1層の中空部に第2の重合性組成物を注入する。そして、この第2の重合性組成物を重合させる第2重合工程16を行い、第1層13の内側に第2層14を形成させる。このような層形成工程は、所望の層数が得られるまで繰り返し連続して行う。最内層よりも1層前の第(n−1)層17を形成させる際には、同じく、第(n−1)の重合性組成物を注入する第(n−1)注入工程18を行ってから、第(n−1)重合工程19を行う。最後に、第n層形成工程として、第(n−1)層17の内側に、第nの重合性組成物を注入する第n注入工程20を行ってから第n重合工程により第n層22を形成させる。以上により、同心円状のn層で構成された光学材料が形成される。このように、屈折率の異なる複数の層により複層構造を形成させると、光の伝送損失を低減させることができる。なお、各重合工程では、中空管を回転させることにより重合性組成物を重合させる回転重合法を用いる。回転重合法の詳細については後述する。
図2(a)に、光学材料の径方向の断面図を示す。上記のように、本実施形態の光学材料10は、第1,第2,・・・・第(n−1),第n層で構成された複層構造を有する。そして、各層は、外径および内径が長手方向に一定で、厚みが均一の管状となっている。また、径の中心には空洞部31を有している。なお、図2(a)では、各層の境界を示しているが、製造条件などにより境界の明確さは異なり、必ずしも確認できるものでなくてもよい。同様に、空洞部31も、製造条件などにより消失する場合があるが、その有無は本発明では限定されない。
図2(b)に、本実施形態での光学材料10の屈折率分布を示す。このとき、縦軸は屈折率の高さであり、上に行くほど高い値を示す。また、横軸は、光学材料の半径方向を示す。そして、横軸の(A)で表される領域は図2(a)の中空管30に等しく、横軸の(B)は第1層〜第n層であり、横軸の(C)は空洞部31である。図2(b)に示すように、本実施形態での光学材料10の屈折率は、径の中心に向かうにしたがい次第に高くなっている。ただし、本発明では、外側から径の中心に向かうにしたがい高低分布を有するように調整されていればよい。図3に、他の一例の光学材料の屈折率分布図を示す。図3に示すように、径の中心から外側に向かうにしたがい屈折率が高くなるように調整することもできる。なお、図3における符号は、図2(b)と同一であるため説明は省略する。
そして、a回目と(a+1)回目(a≧1)の注液時の重合性組成物からなる重合体の屈折率の差、すなわち、光学材料10を構成する隣接する層の屈折率の差が、5×10-5以上5×10-3未満となるように調整する。このように、隣接する層同士の屈折率差を所定の範囲となるように調整することにより、界面での整合性を向上させることができるために、白濁などが発生することを防止して透明性を向上させることができるとともに、優れた伝送帯域を発現させることができる。また、隣接する層のうち径の中心側の層の屈折率は、その外側の層の屈折率よりも高くなるように調整する。このように各層の屈折率を調整すると、径の中心に向かうにしたがい次第に屈折率が高くなるように屈折率分布を調整することができる。ただし、上記でも説明したように、隣接する層のうち径の中心側の層の屈折率は、その外側の層の屈折率よりも低くなるように調整してもよい。このように各層の屈折率を調整すると、径の中心に向かうにしたがい次第に屈折率が低くなるように屈折率分布を調整することができ、凹レンズなどの光学機能を発現させることができる。なお、第1〜第n層の屈折率の変化は、段階的であってもよいし、連続的であってもよい。
また、中空管30への重合性組成物の注入量を、内側の層に向かうにしたがい次第に減らすようにする。これにより、各層の厚みを概ね一定もしくは近似した値に調整することができる。なお、注入量は、特に限定されるものではなく、形成したい層の厚みを考慮しながら調整すればよい。
光学材料10での屈折率分布の付け方について説明する。光学材料10を構成する各層は、同じ複数種の重合性組成物の配合からなることを特徴とする。すなわち、互いに異なる屈折率を示すホモポリマーを生成する重合性組成物を少なくとも2種類用いて、これらを互いに異なる配合比で共重合させて生成したコポリマーとする。このとき、形成されてなる各層間の親和性やポリマーの調整および製造におけるハンドリング性の観点から、屈折率の異なる2種類のモノマーの配合比を調整して製造することが好ましいが、最終製品の光学的および/または機械的性能向上や製造適性を考慮して、3種類以上の重合性組成物を用いてもよい。なお、その際には、層ごとに成分や配合比が変化していてもよい。このように、異なる屈折率を示すホモポリマーを異なる配合比で共重合させることにより、各層の屈折率に差を発現させることができる。また、各層は同じ重合性組成物を用いて形成されるので、隣接する層で形成される界面での親和性を向上させることができる。
また、隣接する層のうち中心側の層は、屈折率を高くする重合性組成物を多く配合してなることを特徴とする。これにより、径の内側に向かうにしたがい形成される層の屈折率を高くすることができるので、結果として、径の中心に向かうにしたがい次第に屈折率が高くなる光学材料10を得ることができる。なお、隣接する層のうち中心側の層は、屈折率を低くする重合性組成物を多く配合してもよい。この場合には、径の内側に向かうにしたがい形成される層の屈折率を低くすることができるので、径の中心に向かうにしたがい屈折率が次第に低い光学材料10を得ることができる。すなわち、凹レンズの機能が得られる。
このような光学材料10は、ポリマーで形成されているため優れた透明性を示す。また、屈折率の異なる複数の層により構成された複層構造により高屈折率化を図ることができるので、ロッドレンズなどをはじめとする光学レンズとして好適に利用することができる。くわえて、界面での整合性を向上させることにより、優れた伝送帯域を発現させることができるため、光ファイバとして利用することができ、特に屈折率分布型POFとして好適に利用することができる。
本発明の光学材料およびその作り方を利用して製造することができる一例として、POFのプリフォームを製造する例を挙げる。
図4に、POFの製造工程の流れを示す。POF40の製造工程は、パイプ41の内側に複層構造を形成させる第1層形成工程42と第2層形成工程43と、第(n−1)層形成工程44と第n層形成工程45と、プリフォーム50を加熱延伸させてPOF40とする延伸工程51とを有する。
あらかじめ市販の溶融押出成型などにより形成したパイプ41の中空部に第1層を形成させる。このパイプ41は、POF40の外殻部となる部分である。まず、第1層形成工程42として、第1の重合性組成物をパイプ41の中空部に注入する。そして、この第1の重合性組成物を重合させて第1層を形成する。続いて、第1層の内側に第1の重合性組成物よりも屈折率が高くなるように調整された第2の重合性組成物を注入し、重合させて第2層を形成する。第2層形成後は、重合性組成物の注入および重合を連続して繰り返し行い、第(n−1)層,第n層を順次形成する。これにより、パイプ41の内側に同心円状のn層構造を有する芯部材が形成されたプリフォーム50が形成される。なお、パイプ41への各重合性組成物の注入量は、内側の層に向かうにしたがい次第に減らしながら各層を形成させる。
プリフォーム50は、延伸工程51において延伸されて所望の径のPOF40とされる。延伸工程51において円柱状のプリフォーム50は、加熱された状態で長手方向に延伸される。なお、プリフォーム50は、POF40とされなくとも、この状態のままで光伝送体としての機能を発現する。
そして、被覆工程52において、POF40の外周は被覆材により被覆される。被覆工程52では、一次被覆を実施した後に二次被覆を実施する方法が一般的である。ただし、被覆層の数については1層または2層に限定されるものではない。被覆工程52を経たPOF40は、プラスチック光ファイバ心線またはプラスチック光ファイバコード53(ともに、Plastic Optical Code)と称される。
そして、組立工程54において、このプラスチック光ファイバコード53を束ねることによりプラスチック光ファイバケーブル55(Plastic Optical Cable)とする。本発明においては、このファイバコードが1本のままであって必要に応じてさらに被覆を施されたものをシングルファイバケーブルと称する。また、ファイバコードがテンションメンバなどとともに複数本組合されてさらなる被覆材が被されたものをマルチファイバケーブルと称する。なお、プラスチック光ファイバケーブル55は、これらのシングルファイバケーブルとマルチファイバケーブルとの両方を含む。
次に、本発明により得られるプリフォーム50について説明する。図5は、本発明により製造されたプリフォーム50の一例の断面図である。ただし、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
図5に示すように、プリフォーム50は、外殻部をなすパイプ41と、第1層61,第2層62,・・・・,第(n−1)層63,第n層64なる複数の層で構成された芯部材65とを有する。このとき、プリフォーム50は実施例に記載のように、外殻部をなすパイプ41を中空管として用いた場合でも、内部に複数の層を形成した後にパイプ41を除去してもよい。なお、図5に示したプリフォーム50の中央部には空洞部66が形成されているが、この空洞部66の有無、ならびに断面円形の径とプリフォーム50の外径との比率とは、図5に示す様態に限定されるものではなく、製造条件に応じて変動する。
また、図5では、説明の便宜上、パイプ41ならびに各層61〜64の各間の境界を示しているが、製造条件などにより境界の明確さは異なり、必ずしも確認できるものでなくてもよい。例えば、第1層61と第2層62とを形成する重合性組成物同士が接触することにより、互いにしみ込むなどして界面が認められない場合がある。
芯部材65を構成する各層61〜64は屈折率が互いに異なるように形成されている。このとき、第1層61は第2層62よりも屈折率が低く、径の中心に向かうにしたがい次第に高くなるように調整されている。また、隣り合う2層、例えば、第1層61と第2層62あるいは第(n−1)層63と第n層64との屈折率の差が5×10-5以上5×10-3未満となるように調整する。これにより、隣り合う層の界面での整合性を向上させたプリフォーム50を得ることができる。このプリフォーム50を後の延伸工程51で加熱延伸させて細径の線条体とすることで、図6に示すように優れた透明性および伝送帯域を示すPOF40を製造することができる。POF40の詳細は、後で説明する。なお、プリフォーム50を加熱延伸させてPOF40とする前の段階で、プリフォーム50を加熱延伸させて所望の径にした後に、平板状等に切断すると中空部を消去することができ、結果として、図7(a)または図7(b)のように径の中心から外側に向かって特定の屈折率の高低分布を有するGRINレンズを製造することができる。図7(a)および(b)において、横軸は半径方向を表し、図中の(A)は、図6のパイプ141に等しく、(B)は第1層〜第n層161〜166に等しい。
芯部材65での屈折率の高低分布は、異なる屈折率を示す重合性組成物を少なくとも2種類用いて、各層61〜64で互いに異なる配合比となるように共重合させることにより発現させる。本実施形態では、異なる屈折率を示す重合性組成物として、重合体の屈折率が1.41である重水素置換した2,2,2トリフルオロエチルメタクリレート(3FMd7)と、重合体の屈折率が1.49である重水素置換したペンタフルオロフェニルメタクリレート(PFPMAd5)とをそれぞれ用いて、異なる配合比となるように調整する。なお、本実施形態では、径の中心に向かうにしたがい次第に屈折率が高くなるプリフォーム50を示したが、屈折率の大きさの変化は、段階的であっても連続的であってもよく、特に限定はされない。また、本実施形態は、各層を形成させる際に、水素原子が一部重水素原子とされた3FMd7とPFPMAd5とを使用している。このように、重水素化されたポリマーを使用すると、伝送損失を低下させることができるので好ましい。
なお、パイプ41は、第1層61の屈折率よりも低い重合性組成物により形成させてもよいし、モノマーにより形成させてもよいし、第1層61の屈折率と略同等となるように形成してもよい。
芯部材65を形成する材料について説明する。各層61〜64を形成する重合性組成物は、光散乱が生じないように非晶質のポリマーとし、互いに密着性に優れることが好ましい。より好ましくは、機械的特性や耐湿熱性に優れているポリマーとすることである。
第1層用モノマーは、ポリマーの中でも屈折率が低いものであることが好ましい。また、第1層〜第n層用モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a),含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b)),スチレン系化合物(c),ビニルエステル類(d)、主鎖環状含フッ素ポリマー形成モノマー類(e)、非晶質フッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標)AF)、AVA樹脂、ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標:日本ゼオン(株)製))、ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標:JSR製)など)ポリカーボネート類の原料であるビスフェノールAなどを重合性組成物として用いて重合させたものとすることができる。なお、各層用モノマーを選択する際には、少なくとも一方の屈折率や親和性などの関係を考慮することが好ましい。
上記の(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボニルメタクリレートなどが挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニルなどが挙げられる。
(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられ、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテートなど、(e)主鎖環状含フッ素ポリマー形成モノマー類としては、モノマーとして環状構造を有するまたもしくは環化重合することによって非晶質の主鎖に環状構造を有する含フッ素重合体を形成するポリマーを形成するものであり、サイトップ(登録商標)として知られるポリパーフルオロブタニルビニルエーテルや特開平8−334634などに例示される主鎖に脂肪環もしくは複素環を有するようなポリマーを形成するモノマー、および特願2004−186199号に例示されるものなどが挙げられる。もちろん、これらに限定されるものではなく、重合性組成物の単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率が、光伝送体に成形されたときに所定の屈折率分布を成形体の中で有するように、種類や組成比を決定することが好ましい。
また、第1層用モノマーとしては、上記の各種化合物の他に以下のものが挙げられる。例えば、メチルメタクリレート(MMA)とトリフルオロエチルメタクリレート(3FM)やヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートなどのフッ化(メタ)アクリレートとの共重合体がある。また、MMAと,tert−ブチルメタクリレートなどの分岐を有する(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレートなどとの共重合体がある。さらには、ポリカーボネート(PC)、ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標:日本ゼオン(株)製))、ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標:JSR製)など)、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)を用いることもできる。また、フッ素樹脂の共重合体(例えば、PVDF系共重合体)やテトラフルオロエチレンパーフルオロ(アルキルビニルエーテル(PFA))ランダム共重合体、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)共重合体などを用いることもできる。
また、POF40を近赤外光用途に用いるためには、ポリマーを構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、特許3332922号公報や特開2003−192708号公報などに記載されているような、C−H結合の水素原子を重水素原子やフッ素などで置換したポリマーを用いることで、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。このようなポリマーとしては、例えば、重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)などを例示することができる。なお、原料となる化合物は、重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は重合前に十分に除去されることが望ましい。
本発明においては、重合性組成物を重合させてコポリマーとする際において、重合開始剤を使用する。重合開始剤としては、例えば、ラジカルを生成するものが各種ある。例えばラジカルを生成するものとして、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は、これらに限定されるものではない。また、2種類以上を併用してもよい。
コポリマーとしたときの機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために、重合度の調整を行うことが好ましい。重合度の調整のためには、連鎖移動剤を使うことができる。連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンなど)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオールなど)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は勿論これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
前述した重合開始剤や連鎖移動剤の各添加量は、使用する第1層〜第n層用モノマーである重合性組成物の種類などに応じて、好ましい範囲を適宜決定することができる。本実施形態においては、重合開始剤は、第1層〜第n層の重合性組成物に対して、0.005〜0.050質量%となるように添加しているが、この添加率を0.010〜0.020質量%とすることがより好ましい。また、前記連鎖移動剤は、第1層〜第n層の重合性組成物に対して、0.10〜0.40質量%となるように添加しているが、この添加率を0.15〜0.30質量%とすることがより好ましい。
その他にも、各層61〜64の一部に、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、各層61〜64もしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。
また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として用いることができる。これらの添加剤も、前記原料となる各種重合性組成物に添加した後、重合することによって、各層61〜64、もしくはそれらの一部に含有させることができる。
本実施形態においては、断面円形の径の外側から中心に向けて屈折率が連続的に高くなるように、各層61〜64の生成方法として、後述のような回転ゲル重合法を適用している。また、第1層〜第n層用モノマーは、3FMd7とPFPMAd5とをそれぞれ用いている。
次に、プリフォーム50を溶融延伸して得られるPOF40について説明する。図6に、POF40の断面図を示す。POF40は、第1層61,第2層62,・・・・,第(n−1)層63,第n層64を有する。なお、本実施形態では、パイプ141を有する形態のPOF40を示しているが、このパイプ141はプリフォーム50を延伸させる前に、除去してもよい。また、POF40は、プリフォーム50(図5参照)を加熱溶融して長手方向に延伸させることにより作製されるため、空洞部66は消失する。
POF40の屈折率に関連する説明を行う。POF40の断面径方向における屈折率は、プリフォーム50と同様に、第1層161が最も低く、第2層162,・・・・,第(n−1)層163,第n層164の順に次第に高くなっており、POF40の断面中心に向かうほど連続的に高くなっている。このとき、POF40の屈折率分布係数は、プリフォーム50(図5参照)とほぼ同じ値を示す。なお、プリフォーム50の屈折率分布については先に述べた通りである。
プリフォーム50の製造方法について説明する。ただし、本実施形態は、本発明の一様態としての例示であり、限定されるものではない。図8に、プリフォーム50を作製する際に使用する重合容器の断面図を示す。重合容器70は、円筒管状の容器本体70aとこの容器本体70aの両端をそれぞれ塞ぐ蓋70bとを有し、本実施形態においてはSUS製とされる。また、重合容器70は、その内径が中に収容されるパイプ41の外径よりもわずかに大きいものであり、重合容器70の回転に伴ってパイプ41が回転することができるようにされている。
まず、この重合容器70に、あらかじめ、市販の溶融押出成型により成型したパイプ41を収容する。次に、栓71でパイプ41の片端部を塞ぐ。この栓71は第1層〜第n層用モノマーに溶解しない素材からなり、可塑剤などを溶出させるような化合物も含まないものとする。このような素材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
片端部を栓71で塞いだ後、第1層用61を形成させる第1層用モノマー61aをパイプ41の中に注入する。そして、他方の端部を栓71で塞いでから、重合容器70を回転させることにより第1層用モノマー61aを重合させて第1層61を形成させる。なお、パイプ41が重合容器70の回転に応じることができるように、重合容器70の内面などにパイプ41を支持する支持部材を設けてもよい。
上記のように重合容器70を回転させる際には、回転重合装置を利用する。図9に、回転重合装置81の概略図を示す。回転重合装置81は、装置本体82の中に設けられた複数の回転部材83と駆動部86と装置本体82内の温度を検知してその検知結果に応じて内部温度を制御するための温度コントローラ87とを有している。
回転部材83は、円柱形状であり、2本の周面で少なくともひとつの重合容器70を支持することができるように、長手方向が互いに概ね平行かつ略水平となっている。各回転部材83は、その一端が装置本体82の側面に回動自在に取り付けられており、駆動部86によりそれぞれ独立した条件で回転駆動される。なお、駆動部86には、駆動部86の駆動を制御するためにコントローラ(図示しない)が備えられている。
図10に、重合容器の回転方法についての説明図を示す。重合反応時においては、隣り合う回転部材83の周面により形成される谷部に重合容器70がセットされた後、回転部材83の回転に応じて重合容器70は回転させられる。図10では、回転部材83の回転軸を符号83aで示している。このように、回転重合装置81に重合容器70をセットさせて回転させることにより、第1層用モノマー61aを重合させることができる。なお、本実施形態では、重合容器70の回転をサーフェスドライブ式としているが、重合容器70の回転方式は、特に限定されるものではない。
また、本実施形態では、図10に示すように、重合容器70の両端の蓋70bに磁石70cを備えるとともに、隣り合う2本の回転部材83の間の下方に磁石85を備えている。これにより、回転時において重合容器70が回転部材83から浮くことを防止することができる。ただし、重合容器70の回転部材83からの浮きを防止する方法としては、本形態に限定されるものではない。例えば、回転部材83と同様な回転手段を、セットされた重合容器70の上部に接するように設けて、同様に回転させることにより重合容器70の浮きを防止する方法や重合容器70の上方に押さえ手段を設けて、重合容器70に所定の荷重をかけることにより浮きを防止する方法などが挙げられる。なお、本発明は浮き防止方法に依存するものではなく、いずれの方法も適用することができる。
なお、回転重合の前に、パイプ41を立てた状態で第1層61を予備重合させてもよい。予備重合を行う際には、必要に応じて所定の回転機構によりパイプ41の円管軸を回転中心として回転させる。このようにパイプ41の長手方向を概ね水平に保ちながら回転させると、パイプ41の内面全体に第1層61が生成しやすくなるため好ましい。また、本発明では、第1層61の重合時において、パイプ41の長手方向を水平とすることが、パイプ41の内面全体に第1層61を形成する上でもっとも好ましい。ただし、略水平であればよく、回転軸の許容される角度は水平に対して概ね5°以内である。
なお、第1層〜第n層用モノマーを濾過や蒸留などを行うことにより、重合禁止剤や水分および不純物などをあらかじめ除去してから用いることが好ましい。なお、モノマーや重合開始剤を混合した後に、この混合物を超音波処理して溶存気体や揮発成分を除去することが好ましい。さらに、必要に応じて、第1層形成工程の前後において、公知の減圧装置によりパイプ41や第1層用モノマーを減圧処理してもよい。
以上のようにして第1層61が形成されたパイプ41を、回転重合装置81から取り出した後、本実施形態では、所定温度に設定された恒温槽などの加熱手段により所定時間の加熱処理をしている。
次に、第2層62〜第n層64を生成させる。図11に、第2層62〜第n層64の生成開始時における重合容器70の断面図を示す。この重合容器70は、第1層61を生成させた際に用いたものと同じであるため同一の符号を用いる。まず、第2層用モノマー62aを第1層61の中空部に注入する。そして、栓71により注入口を塞ぎ、第1層61が形成されたパイプ41の長手方向を略水平状態とし、パイプ41の断面円形の中心が回転軸となるように回転させながら反応を開始する。このように回転させながら重合を進めることにより第2層62を形成させる。第2層〜第n層用モノマーを重合させる際には、第1層61を作製する際に使用した回転重合装置81(図9参照)を用いる。なお、必要に応じては、第2層用モノマー62aをはじめとする第2層〜第n層用モノマーを注入する前後において、公知の減圧装置によりパイプ41や注入物を減圧処理してもよい。
このとき、第2層用モノマー62aが重合を開始すると、第1層61の内壁が第2層用モノマー62aにより膨潤し、重合初期段階において膨潤層を形成する。この膨潤層は、ゲル状態となっているため、重合速度が加速(ゲル効果と称する)する。このような現象から、本発明では、あらかじめ作製された管状部材を回転させながら、この管状部材と注入された重合性組成物との反応により膨潤層を形成させて重合性組成物を重合させる反応方法を回転ゲル重合法と称する。なお、この重合反応は、本実施形態のように、管状部材の長手方向が水平とされることがより好ましい。
なお、各重合反応の反応速度は、適宜調整されることが好ましい。例えば、各重合性組成物の反応度合いを表す転化率が、1時間あたり5〜90%となるように反応速度を調整することが好ましい。より好ましくは、1時間あたりの転化率が10〜85%となるように調整することであり、さらに好ましくは20〜80%である。この反応速度の制御は、重合開始剤の種類や重合温度の調整などにより制御することができる。なお、重合性組成物の転化率の求め方は周知の方法を用いればよく特に限定はされない。例えば、ガスクロマトグラフィによる残留モノマーの定量分析と目視評価とを実施して両者の関係をあらかじめ求めておき、この関係をもとに目視観察にて評価すればよい。なお、上記のような回転ゲル重合法においては、その反応温度を用いる重合性組成物の沸点以下とすることが好ましい。また、回転速度を適宜調整することにより、各層61〜64の転化率などを制御する。
以上の方法により、所定の材料により生成された第1層〜第n層の複層構造をパイプ41の内側に形成させてプリフォーム50を作製することができる。そして、得られたプリフォーム50を延伸工程51において溶融延伸させることにより所望の直径(例えば、200〜1000μm)を有するPOF40を得ることができる。なお、プリフォーム50の延伸方法は、特開平07−234322号公報などに記載される各種延伸方法を適用することができる。
POF40は、曲げ、耐候性の向上,吸湿による性能低下抑制,引張強度の向上,耐踏付け性付与,難燃性付与,薬品による損傷からの保護,外部光線によるノイズ防止,着色などによる商品価値の向上などを目的として、通常、その表面に1層以上の保護層を被覆して使用される。
なお、本発明により得られるPOF40は、被覆工程52として第1の被覆工程を経て光ファイバコード53となり、組立工程54において1本の心線または複数本の心線を束ねた形態で第2の被覆工程により被覆をされてプラスチック光ファイバケーブル55となる。ただし、光ケーブルの中でもシングルファイバケーブルとする場合には、第2の被覆工程を経ることなく、第1被覆工程における被覆層を外表としたままで光ケーブルとして用いることもある。光ケーブルとされるときの被覆の形態としては、一本の前記心線と被覆材との界面、あるいは複数本束ねた状態の光ファイバ心線の外周と被覆材との界面が、すべて接するように被覆されている密着型の被覆と、被覆材と光ファイバ心線との界面に空隙を有するルース型被覆とがある。ルース型被覆では、たとえばコネクタとの接続部において被覆層を剥離した場合、その端面の空隙から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、通常は密着型が好ましい。
しかし、被覆材と光ファイバ心線とが密着していないので、光ケーブルにかかる応力や熱などのダメージの多くを、被覆層により緩和させることができるという利点を有する。そのため、ルース型の被覆は、使用目的によっては好ましく用いることができる。ルース型被覆の場合のコネクタ接続部からの水分の伝播については、光ファイバ心線と被覆材との界面の空隙部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填することにより、防止することができる。さらに、これらの半固体や粉粒体に対して耐熱や機械的機能の向上などの他の異なる機能を付与させることにより、多機能な被覆層を形成した光ファイバケーブルを製造することができる。また、ルース型の被覆とするには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し減圧装置による減圧度を加減することにより、前記空隙を有する層を形成することができる。この空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層とを加圧/減圧することにより調整することができる。なお、第1、第2の被覆工程で設けられる被覆材には、難燃剤や、紫外線吸収剤、酸化防止剤、昇光剤、滑材などを、光伝送特性に影響を及ぼさない条件範囲で添加してもよい。
前記難燃剤としては、臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤、リン含有のものがあるが、燃焼時における毒性ガス低減などの安全性の観点では、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物が主流となりつつある。ただし、このような金属水酸化物は、その内部に水分を結晶水として有している。この水分は、これら金属水酸化物の製法過程における付着水に起因するものであり完全除去は不可能とされる。したがって、金属水酸化物による難燃性付与は、POF40に接する被覆層には含有させず、ケーブルとしての外表となる被覆層に対してのみ行うことが望ましい。
また、プラスチック光ファイバケーブル55に複数の機能を付与させるために、さらに、適宜機能性層となる被覆層を積層させてもよい。前記難燃化層以外の機能層としては、例えば、POF40の吸湿を抑制するためのバリア層や、POF40に含有された水分を除去するための吸湿材料層などが挙げられる。なお、この吸湿材料層の付与方法としては、例えば、吸湿テープや吸湿ジェルを所定の被覆層内や被覆層間に設ける方法がある。
さらに、その他の機能性層としては、可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や外部からの応力を緩衝するための緩衝材として機能する発泡材料層、剛性を向上させるための強化層などが挙げられる。また、プラスチック光ファイバケーブル55の構造材(被覆材)としては、樹脂以外にも、例えば、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線などの線材を熱可塑性樹脂に含有させたものが挙げられる。このような材料を用いると、プラスチック光ファイバケーブル55の力学的強度を補強することができるために好ましい。
なお、前記抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維,ポリエステル繊維,ポリアミド繊維が挙げられる。そして、前記金属線としては、ステンレス線,亜鉛合金線,銅線などが挙げられる。ただし、本発明に適用することができる抗張力繊維および金属線は、これらに限定されるものではない。また、その他にも、プラスチック光ファイバケーブル55を保護するための金属管の外装や架空用の支持線、配線時の作業性を向上させるための機構などをプラスチック光ファイバケーブル55の外周部に組み込むこともできる。
プラスチック光ファイバケーブル55の形状は使用形態によって、プラスチック光ファイバコード53を同心円上にまとめた集合型のものや一列に並べたテープ型のもの、さらに、それらを押え巻やラップシースなどでまとめたものなどが挙げられる。なお、これらの使用形態は、用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明のプリフォーム50から得られたプラスチック光ファイバケーブル55は、従来品と比べて軸ずれに対する許容度が高いために、突き合せにより接合しても用いることができる。ただし、より好ましくは、光ケーブルの端部に接続用光コネクタを備えて、互いの接続部を確実に固定することである。また、コネクタは、一般に知られているPN型,SMA型,SMI型などの市販の各種コネクタを利用することが可能である。そのため、本発明のプラスチック光ファイバケーブル55は、種々の発光素子や受光素子や光スイッチ,光アイソレータ,光集積回路,光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置などが組み合わされて好適に用いられる。この際、必要に応じて他の光ファイバなどと組合せてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用することができる。例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。
また、前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線,車両や船舶などの内部配線,光端末とデジタル機器,デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LANなどをはじめとする高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
さらに、IEICE TRANS. ELECTRON.,VOL.E84−C,No.3,MARCH 2001,p.339−344 「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3,No.6,2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開2003−152284号公報に記載の導波路面に対する発光素子の配置;特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号などの各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号などの各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号などの公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号などの各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号などに記載の光信号処理装置;特開2001−86537号などに記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号などに記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号などの各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用したより高度な光伝送システムを構築することができる。以上の光伝送用途以外にも、照明(導光)やエネルギー伝送,イルミネーション、レンズ、センサ分野にも用いることができる。なお、レンズとしては、例えば、径の中心から外側に向かって次第に屈折率が低くなる凸レンズや、逆に、径の中心から外側に向かって次第に屈折率が高くなる凹レンズにも本発明を適用させることができる。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明の光学材料および製造方法によりPOFを作製したが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、プリフォーム50の製造方法などに関しては実施例1において詳細に説明し、実施例2,3において、実施例1と同じ場合には説明を省略する。
溶融押出成形により作製した内径20mm、長さ27cmの中空状のPVDF管をパイプ41とし、この中空部に第1層用モノマー61aを、孔径が0.2μmのPTFEメンブランフィルターを用いて濾過しながら注入した。第1層用モノマーとしては、重合性組成物として3FMd7(以下、aと称する)を21.73mlおよび重合性組成物としてPFPMAd5(以下、bと称する)を4.56ml混合してから、重合開始剤として2,2ジメチルアゾビスイソブチレートを0.1mol%とドデシルメルカプタンを0.05mol%とを添加したものを調製した。
第1層用モノマー61aが注入されたパイプ41を、回転重合装置81の重合器本体70aに長手方向が水平となるようにセットし、2000rpmで回転させながら90℃の雰囲気下で2時間の加熱重合を行った。重合容器70はSUS製のものを使用した。このとき、回転する重合容器70の近傍、具体的には1〜2cm離れた位置に非接地型熱電対を設けて、温度を測定し、この測定温度を重合反応による温度としてみなした。また、この方法により測定された重合反応の発熱における温度ピーク(発熱ピーク)を求めた。実施例1では、重合開始から約1時間20分経過したときに67℃の発熱ピークが認められた。以上により、パイプ41の内面に第1層61を形成させた。なお、得られた重合体の転化率は90%であった。
次に、重合容器70から第1層61が形成されたパイプ41を取り出し、その中空部に第2混合溶液を注入し、回転重合させることにより第2層62を形成させた。このとき、第1層61を形成したときと同じ条件,方法を用いた。第2層用モノマー62aとしては、aを7.57mlおよびbを1.99ml混合してから、重合開始剤として2,2ジメチルアゾビスイソブチレートを0.1mol%とドデシルメルカプタンを0.05mol%とを添加した混合溶液を用いた。そして、第2層62を形成した後、表1に示すように配合比としてb/aが異なるように調製した第3〜第11混合溶液を用いて、径の中心に向かうにしたがい各層用モノマーの注入量を表1のように減らしながら、上記と同じ工程を繰り返し行うことにより、パイプ41の内側に11層の複層構造を形成させた。
第11混合溶液を重合させた後、90℃に加熱させた状態で6時間保持し残存している重合性組成物を反応させた。その後、パイプ41を除去して得られたプリフォーム50の空洞部66を減圧させながら200℃に加熱させた状態で、溶融延伸させることにより空洞部66を閉塞させて外径が470μmのPOF40を得た。このとき、POF40の外径の変動は±15μmであった。
得られたPOF40の屈折率分布を2光束透過型干渉顕微鏡(型番;TD−20,溝尻光学(株)製)により測定したところ、図12に示す屈折率分布図を得た。このとき、屈折率分布係数gは2.2であった。さらに、得られたPOF40の伝送損失値を測定したところ、光源波長650nmにて126dB/km、780nmにて91dB/km、850nmにて106dB/kmであった。また、このPOF40の伝送帯域を測定したところ、850nmにおいて50mで10GHzであった。
表1の実施例2の項に示す混合溶液を用いて、実施例1と同じ製造条件および製造方法によりプリフォーム50を作製した後、このプリフォーム50を溶解延伸させてPOF40を製造した。なお、得られたPOF40の屈折率分布係数gは2.2であり、その外径変動は±15μmであった。また、得られたPOF40の伝送損失値を測定したところ、光源波長650nmにて140dB/km、780nmにて109dB/km、850nmにて126dB/kmであった。さらに、このPOF40の伝送帯域を測定したところ、850nmにおいて50mで8GHzであった。
表1の実施例3の項に示す混合溶液を用いて、実施例1と同じ製造条件および製造方法によりプリフォーム50を作製した。このとき、プリフォーム50を構成する層のうち、第1〜第3混合溶液で形成させた各層において、目視にて白濁が確認された。そして、実施例1,2と同じように、このプリフォーム50を200℃に加熱しながら溶融延伸させてPOF40を製造した。そして、加熱延伸させる際には、屈折率分布が形成された領域の外径が220μmとなるように延伸倍率を調整した。また、得られたPOF40の屈折率分布の測定を試みたが、白濁により干渉縞が検知されず測定不可能であった。POF40の外径変動は±15μmであった。なお、得られたPOF40の伝送損失値を測定したところ、光源波長650nmにて700dB/km、780nmにて200dB/km、850nmにて230dB/kmであった。さらに、このPOF40の伝送帯域を測定したところ、850nmにおいて50mで6GHzであった。
各実施例において調製した混合溶液の配合比を表1に示す。また、各実施例で作製したプリフォーム50に関して、第1〜第11混合溶液から形成させたそれぞれの重合体の屈折率を光源波長589nmにて測定し、隣接層間の屈折率差を算出した。この屈折率に関する測定・算出結果を表2に示す。
実施例1〜3では、同一主成分ながら配合比を変更して複数種類の第1〜11混合溶液を調製後、これらをパイプ41の中空部に注入してから重合させる作業を繰り返し行い、パイプ41の内側に11層の複層を形成させた。このとき、各実施例ともに、より内側の層になるにしたがい、各層を生成する重合性組成物のうち、屈折率の低いbに対して屈折率の高いaが多くなるように配合比(b/a)を調整するとともに、a+bの値は内側の層に向かうにしたがい減らしながら各層を形成させた。その結果、隣接層での屈折率差が一定の範囲内を満たしていた実施例1,2と比べて、実施例3では、作製したプリフォーム中に白濁が確認できるなど、透明性の低下を確認した。また、実施例3では、伝送帯域が低い値を示したのに対して、実施例1,2では優れた伝送帯域を確認した。したがって、プリフォームを作製する際に、アウタークラッドの中空部に生成させる複層において、その隣接間での屈折率差を好適に制御することにより、透明性に優れかつ低伝送損失のPOFを製造することができることが分かる。
10 光学材料
13 第1層
14 第2層
17 第(n−1)層
22 第n層
30 中空管
40 POF
41 パイプ
50 プリフォーム
13 第1層
14 第2層
17 第(n−1)層
22 第n層
30 中空管
40 POF
41 パイプ
50 プリフォーム
Claims (10)
- 中空管の中に重合性組成物を注入して前記中空管を回転させながら前記重合性組成物を重合させることにより、前記中空管の内部に重合体からなる重合体層を形成させる工程を行い、前記工程を複数回繰り返すことにより、前記中空管の内部に前記重合体層が同心円状に積層されたプラスチック光学材料を製造する方法において、
a回目と(a+1)回目(ただし、a≧1)の注液時の重合性組成物からなる重合体の屈折率の差が、5×10-5以上5×10-3未満とすることを特徴とするプラスチック光学材料の製造方法。 - 隣接する前記重合体層は、同じ複数種の重合性組成物の配合からなることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック光学材料の製造方法。
- 前記積層された重合体層において、隣接する層のうち径の中心側の層の屈折率が一方の層の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1または2記載のプラスチック光学材料の製造方法。
- 前記隣接する重合体層のうち中心側の重合体層は、屈折率を高くする重合性組成物を多く配合してなることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つに記載のプラスチック光学材料の製造方法。
- 前記積層された重合体層において、隣接する層のうち径の中心側の層の屈折率が一方の層の屈折率よりも低いことを特徴とする請求項1または2記載のプラスチック光学材料の製造方法。
- 前記隣接する重合体層のうち中心側の重合体層は、屈折率を低くする重合性組成物を多く配合してなることを特徴とする請求項1,2,5いずれか1つに記載のプラスチック光学材料の製造方法。
- 請求項1〜6いずれか1つに記載の製造方法で製造されたことを特徴とするプラスチック光学材料。
- 光ファイバであることを特徴とする請求項7のプラスチック光学材料。
- GRINレンズであることを特徴とする請求項7のプラスチック光学材料。
- 同心円状に複数のポリマー層が形成された断面を有し、内側に位置する前記ポリマー層ほど屈折率が大きいプラスチック光学材料において、
前記複数のポリマー層のうち、隣接する層の屈折率の差が5×10-5以上5×10-3未満であることを特徴とするプラスチック光学材料。
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