JP2006337290A - X線分光装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 EPMA等、試料上の微小領域から発生するX線を分光分析する装置におけるエネルギー分解能を向上させる。
【解決手段】電子線の照射によりX線を放出する微小領域2に入射側端面の点焦点を合わせたマルチキャピラリX線レンズ6によりX線を効率良く収集し、平行光化して四結晶型分光器30に導入する。四結晶型分光器30はそれぞれ2枚の平行な単結晶を有するチャンネルカット結晶40、41を2個含み、入射されたX線を高精度で分光し、入射X線と平行な方向に出射する。マルチキャピラリX線レンズ6からの出射X線は若干の広がりを有しているが、四結晶型分光器30はその入射X線の広がり角の影響を受けることなく高い波長分解能で以てX線を分光する。そのため、高いエネルギー分解能と高い分光強度とを達成できる。
【選択図】 図3

Description

本発明はX線分析装置に利用されるX線分光装置に関し、更に詳しくは、電子線プローブ微小分析装置(EPMA)や走査電子顕微鏡(SEM)等、微小領域の分析を行うX線分析装置に利用されるX線分光装置に関する。
電子線プローブ微小分析装置(EPMA)では、高エネルギーを有する微小径の電子線を励起線として試料に照射し、それによって試料の含有成分の内側電子が励起された際に外部に放出される固有X線を分析することにより、元素の同定や定量を行ったり、元素の分布を調べたりする。また、走査電子顕微鏡(SEM)では一般的には電子線の照射位置から発生した二次電子や反射電子を検出するが、最近は、エネルギー分散型X線検出部を併設することでX線分析を可能とした装置も開発されている。
この種のX線分析装置では、試料面上のほぼ一点とみなせる微小領域から放出される固有X線を効率良く分光するため、従来、図6に示すような構成のX線分光装置が広く利用されている(例えば特許文献1の図7など参照)。このX線分光装置では、試料1上で電子線が照射される微小領域2と湾曲型分光結晶3と検出器4とを同一基準面(図の紙面)上のローランド円5上に配置し、試料1上の微小領域2を固定点として、湾曲型分光結晶3及び検出器4をリンク機構等の移動手段によってローランド円5上を移動させる。この湾曲型分光結晶3及び検出器4の移動によって固有X線の分光波長を走査し、元素の種類を特定する。この微小領域2、湾曲型分光結晶3、及び検出器4の位置関係は、分析対象元素の種類に応じて変化させる。
また別の構成として、特許文献1の図8に記載のように、点光源から出射したX線を平行ビームに変換するレンズ作用を有するマルチキャピラリ(ポリキャピラリと呼ぶ場合もある)X線レンズを用いたX線分光装置も知られている。図7はこのX線分光装置の概略構成図であり、図9はマルチキャピラリX線レンズの入射側の拡大図である。
図9に示すように、マルチキャピラリX線レンズ6は例えば内径が10μm程度の硼珪酸ガラスから成る細管(キャピラリ)を多数束ねた基本構造を有しており、1本のキャピラリの内側に入射されたX線がそのガラス壁の内周面を全反射しながら進行してゆく原理を利用して、X線を効率良く案内するものである(特許文献2、3など参照)。マルチキャピラリX線レンズには種々の形態があるが、ここでは、殆ど点とみなし得るX線源Fから出たX線を入射側端面で大きな立体角で以て取り込み、出射側端面から平行ビームを出射するものである。
図7において、試料1上の微小領域2から出射した固有X線を上述のようなマルチキャピラリX線レンズ6で集光し、平行光化して平板分光結晶7に導入し波長分散させ、この分散光を検出器4により検出する。この構成では、分光波長を走査する際には、平板分光結晶7は紙面に垂直な軸9を中心に回転駆動され、検出器4も軸9を中心にして平板分光結晶7の回転角θの2倍の角度2θを保つように回転駆動される。
近年、EPMAやSEMでは、分析精度をより向上させるためにエネルギー分解能(波長分解能)を高めたいという要求がある。一般に上述のように分光結晶を用いたX線分光器は比較的エネルギー分解能が優れてはいるものの、図6に示したような湾曲型分光結晶3ではその湾曲面の寸法精度の限界やX線光学系の持つ固有の収差に起因した限界があり、さらなるエネルギー分解能の向上は難しい。
一方、図7に示したような平板分光結晶7では湾曲型分光結晶3よりも寸法精度を容易に高めることができるものの、マルチキャピラリX線レンズ6で集光・平行光化されたX線も実際には或る程度の開き角を以て広がりながら平板分光結晶7に入射するため、それに起因するエネルギー分解能の限界がある。
このように上記従来のいずれの構成においても、実際に得られるエネルギー分解能ΔE/E、又は波長分解能Δλ/λはせいぜい10-3程度のオーダーである。この程度のエネルギー分解能では、固有X線のスペクトルの微細形状変化から化学状態分析を行うような目的に対して、2nm程度以上の長波長領域でしか実用性を有さない。これよりも短い波長領域で上記のような分析を行うためには、X線分光装置におけるエネルギー分解能の大幅な向上が不可欠である。
特開2004−294168号公報 特公平7−11600号公報 特公平7−40080号公報 特開平10−232209号公報 「高精度X線回折法」、[Online]、株式会社コベルコ科研、[平成17年5月18日検索]、インターネット <URL : http://www.kobelcokaken-it.com/panf_hyouka/A/A_02.html>
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、例えば微小径に集束された電子線などの照射に応じて試料上の微小領域から放出されるX線を分光分析する際に、高い分光強度を確保しつつ高いエネルギー分解能(波長分解能)を達成することを目的としている。
上記課題を解決するために、本願発明者は、従来、蛍光X線分析装置において分析精度を高めるために利用されている複結晶型分光器に着目した(例えば特許文献4、非特許文献1など参照)。こうした複結晶型分光器では、10-5又はそれ以上のエネルギー分解能で以てX線分光が可能であることが知られている。しかしながら、こうした蛍光X線分析における精密X線分光法は、実用的な信号強度を得ることを目的として、試料面の広い領域に一次X線を照射し、その広い照射範囲から発生する蛍光X線を分光するものである。したがって、EPMAやSEMのように殆ど一点とみなせる大きさの試料上の微小領域から放出される発散X線を分光する場合には、上記のような複結晶型分光器をそのまま用いても実用上十分な分光強度を得られない。
そこで、本願発明者は、マルチキャピラリX線レンズが複結晶型分光器の分光性能を損なわないことを利用して、マルチキャピラリX線レンズと複結晶型分光器とを組み合わせることにより、微小領域から放出されるX線を効率良く収集することでX線強度を確保しながらエネルギー分解能を向上させることに想到した。
即ち、本発明に係るX線分光装置は、試料上のほぼ点とみなせる微小領域から放出されるX線を波長分散するX線分光装置であって、
試料に向いた入射端面側で点焦点を有し、出射端面側で略平行光を出射するマルチキャピラリX線レンズと、
前記マルチキャピラリX線レンズで平行光化されたX線を複数段で分光するように複数の単結晶が配置された複結晶型分光器と、
を備えることを特徴としている。
本発明に係るX線分光装置では、好ましくは、マルチキャピラリX線レンズの点焦点が試料表面に来る程度まで、該レンズの入射端面を試料表面に近接させる。これにより、マルチキャピラリX線レンズは、その入射端面側において、殆ど点とみなし得る微小領域から出たX線を大きな立体角で以て効率良く取り込むことができる。したがって、このマルチキャピラリX線レンズを試料と複結晶型分光器との間に配置することにより、試料上の微小領域からあらゆる方向に放出される固有X線を効率良く収集し、平行光化して複結晶型分光器へと導くことができる。複結晶型分光器では、入射X線が複数段の単結晶で順次分光され、それに伴って高い波長分解能(エネルギー分解能)が得られる。
なお、マルチキャピラリX線レンズから出射するX線は完全な平行光ではなく、1本のキャピラリの内部でX線が全反射しながら進行する際の反射角で以て広がりながら出射端面から出射する。しかしながら、複結晶型分光器では、入射X線の角度の広がりに拘わらず1段目の結晶によってX線の角度広がりは結晶の回折幅まで狭められるので、2段目以降の結晶には1段目の結晶の回折角度幅程度の十分に狭い角度広がりしか持たないX線が入射する。それ故に、高い波長分解能で以てX線は分光されることになる。
このように本発明に係るX線分光装置によれば、微小領域から放出されるX線を効率良く収集して高い波長分解能、即ちエネルギー分解能で以て分光することができる。これにより、本発明に係るX線分光装置をEPMAやSEMなどに適用すれば、従来、長波長領域の固有X線でのみしか行えなかった微細なスペクトル構造観察による化学状態分析が短波長領域の固有X線でも可能となり、装置の利用範囲が大幅に広がる。
本発明に係るX線分光装置において複結晶型分光器としては各種の態様を採り得るが、二結晶型分光器である場合には、2個の単結晶を(+、+)配置した二結晶型分光器とすることが好ましい。もちろん、2個の単結晶を非平行の(+、−)配置した二結晶型分光器でもよいが、2個の単結晶を(+、+)配置した構成のほうが波長分解能を容易に上げることができる。
また別の態様として、前記複結晶型分光器は、それぞれが2個の同一格子結晶を平行に配置してなる2個のチャンネルカット結晶を(+、+)配置した四結晶型分光器である構成とすることができる。
四結晶型分光器では分光器への入射X線と出射X線とを平行にすることができるので、例えばマルチキャピラリX線レンズ、分光器、検出器をほぼ一直線上に配置することが可能であり、X線光学系の配置の省スペース化に有利である。また、分光波長を走査する際には、2個のチャンネルカット結晶をそれぞれ回転させる必要があるが、その際にも分光器からの出射X線の方向は変化しない。したがって、波長走査に伴って検出器を回転させる必要がなく、回転駆動機構が簡単になるとともに動作スペースも狭くて済む。また、(+、−)配置の二結晶型分光器では、波長走査に伴って2段目の結晶を回転させつつ平行移動させる必要があるが、四結晶型分光器ではこうした平行移動の必要もなく、その点でも波長走査を行うための駆動機構が簡単になる。
また、独立した2枚の独立した同一格子結晶を平行に配置する場合にはその平行性の精度が問題になり易いが、1個の結晶ブロックから2枚の同一格子結晶を切り出すチャンネルカット結晶を用いることにより、平行性を確保し易く、製造が簡単であるとともに精度向上にも有利である。
なお、上記構成では、前記2個のチャンネルカット結晶のうち、1段目のチャンネルカット結晶では出口側単結晶の長さを入口側単結晶よりも長く、2段目のチャンネルカット結晶では逆に入口側単結晶の長さを出口側単結晶よりも長くした構成とすることができる。
この構成によれば、1段目のチャンネルカット結晶で入口側単結晶で分光されたX線のうち出口側単結晶に当たる角度範囲が広くなり、さらにその出口側単結晶で分光されたX線が2段目のチャンネルカット結晶の長い入口側単結晶で効率良く取り入れられるから、結果的に、分光角度範囲が広がる。それによって、分光波長範囲を広げることができる。
まず、本発明に係るX線分光装置の基本的な構成と動作原理について説明する。
本発明に係るX線分光装置におけるマルチキャピラリX線レンズは、例えば前述の図9に示す構造を有するものであり、入射端面はX線源Fの位置に点焦点を有する。これにより、X線源Fから放出されたX線を広い立体角で以て各キャピラリ内に取り込み、キャピラリ内部で全反射を繰り返させることで前方に進行させながら平行光化する。このようにキャピラリ内部ではX線は臨界角以下の角度で全反射しながら進んで出射端面に到達するため、平行光とは言っても、厳密には、出射端面から出射する時点で最大臨界角程度、通常0.1°程度の広がりを有しており、こうした広がりを有してX線は複結晶型分光器に入射する。
図8は複結晶型分光器の各種の態様を示す概略図であり、図10〜図12はデュモンド(DuMond)ダイアグラムと呼ばれる方法で波長分解能を図式的に示したものである。
図8(a)は第1、第2なる2個の単結晶31、32を(+、+)配置した二結晶型分光器であり、図10はこのときの波長分解能を示すデュモンドダイアグラムである。図10中の右上がり及び右下がりの2つの曲線はそれぞれ2個の単結晶31、32に対応した回折曲線であり、それら曲線の形状は周知のブラッグの回折式
2d・sinθ=λ …(1)
d:格子定数、θ:入射角、λ:分光波長
に対応していて、回折角度の幅に相当する分だけ幅を有している。横軸の角度は第1単結晶31に対するX線の入射角度である。
第1単結晶31の回折曲線は単純に(1)式をそのまま適用して描かれる。一方、第2単結晶32の回折曲線は、(1)式の入射角θが第1単結晶31から回折したX線が第2単結晶32に入射する角度であるものとして描かれた曲線であり、その起点は、
θ=180−α[°]
α:単結晶31、32の成す角度(図8(a)参照)
の位置にあって、縦軸に平行な線を中心にして第1単結晶31の回折曲線を線対称としたような形状となる。そして、それぞれ幅を有した2つの回折曲線の交差する重なり部分(図中、斜線で塗りつぶした範囲)が、分光されるX線の角度広がり幅と波長幅(エネルギー幅)とを示す。即ち、図10中の、ΔθbがX線の角度広がり幅であり、Δλが波長幅である。
この角度広がり幅Δθbは、一般的な分光結晶では数秒〜数十秒(但し1秒=1/3600°)のオーダーであり、上述したようにマルチキャピラリX線レンズで得られるX線の開き角Δθa(通常0.1°程度)と比べると格段に狭く、高いエネルギー分解能での分光が可能である。このため、上述したようなマルチキャピラリX線レンズと(+、+)配置の二結晶型分光器とを組み合わせた構成では、波長分解能つまりエネルギー分解能はマルチキャピラリX線レンズには依存せず、二結晶型分光器自体のエネルギー分解能で以て決まることとなり、マルチキャピラリX線レンズで効率的に集光されたX線を高いエネルギー分解能で分光することができる。
図8(b)は第1、第2なる2個の単結晶33、34を(+、−)配置した二結晶型分光器であり、図11はこのときの波長分解能を示すデュモンドダイアグラムである。(+、−)配置では、2個の単結晶33、34に対応した回折曲線は(+、+)配置の場合とは異なり、対向せずに同じ方向を向くことになり、第2単結晶34の回折曲線の起点はθ=−αの位置となる。この場合には、2個の単結晶33、34として互いに格子定数の異なるものを用いることにより、図11に示すように、2本の回折曲線の傾きを相違するようにして両者を交差させることができる。このとき、両曲線の交差による重なり部分は、一般的に(+、+)配置の場合に比べれば横軸方向に細長い形状となるものの、その角度広がり幅ΔθbはマルチキャピラリX線レンズで得られるX線の開き角Δθaと比べると十分に狭く、高いエネルギー分解能での分光が可能となる。
図8(c)は第1〜第4なる4個の単結晶35、36、37、38を(+、−)、(+、+)、(+、−)配置した四結晶型分光器である。ここで第1及び第2単結晶35、36は同一格子結晶で平行に配置される。第3及び第4単結晶37、38についても同様である。この構成は、第1及び第2単結晶35、36を1つの結晶、第3及び第4単結晶37、38を他の1つの結晶とみなし、それら2個の結晶が(+、+)配置されたものとみなすことができる。即ち、上述した(+、+)配置の二結晶型分光器の一種の変形であると考えることができ、デュモンドダイアグラムは図10がそのまま適用できる。したがって、分光性能の点からは(+、+)配置の二結晶型分光器とほぼ同等である。
比較のために、1枚だけの単一結晶の分光器に対応するデュモンドダイアグラムを図12に示す。この場合には、或る幅を持つ1本の回折曲線と、マルチキャピラリX線レンズで得られるX線の開き角Δθaを横幅とする縦軸に平行な帯とが重なり合う部分が分光X線の範囲であると考えればよい。したがって、図12に示すように波長幅Δλは上記のような二結晶型分光器、四結晶型分光器に比べて広く、つまりは波長分解能は低いことが分かる。また、波長分解能はマルチキャピラリX線レンズによるX線の開き角Δθaに依存し、X線の開き角Δθaが大きくなるほど波長分解能は低下する。
なお、上述した二結晶型分光器についての一般的な説明については、例えば、Kazutake Kohra, Hiroo Hashizume, Jun-ichi Yoshimura "X-Ray Diffraction Topography Utilizing Double-Crystal Arrangement of (+,+) or (+,-) Setting", Japanese Journal of Applied Physics, Vol.9, No.9, Sept.,1970などに詳細に記載されている。
次に、上述したような原理に基づく本発明に係るX線分光装置の具体例を説明する。
図1は、図8(b)で説明した(+、−)配置の二結晶型分光器を用いたX線分光装置の一実施例の概略構成図である。既に説明した図中に記載の構成要素と同一の構成要素については同一符号を付している。
この実施例1によるX線分光装置では、電子線の照射によって試料1上の微小領域2から出射したX線は、微小領域2付近に入射側端面の点焦点を有するマルチキャピラリX線レンズ6により効率良く収集され、平行光化されて複結晶型分光器30に導入される。そして後述するように複結晶型分光器30で高いエネルギー分解能で以て分光され、その分光X線の一部がソーラスリット8を通して検出器4に導入される。
複結晶型分光器30を構成する第1単結晶33と第2単結晶34とは互いに格子定数の異なる分光結晶であり、図面が煩雑になるため図示しないが、それぞれ軸33a、34aを中心に回転するための独立した回転機構を備える。第2単結晶34の回転軸34aと同軸に、図示しないアームの回転軸が存在し、このアーム上にはソーラスリット8と検出器4とが直線上に並べて固定されている。即ち、ソーラスリット8と検出器4とは互いの相対位置関係を保ってアームと一体に回転する。
第2単結晶34の回転と上記アームの回転は1:2の比率で連動して駆動され、それ故に第2単結晶34で回折されたX線が常に検出器4に導入されるような位置にある。2つの単結晶33、34をそれぞれの回転軸33a、34aを中心に回転させ、マルチキャピラリX線レンズ6から第1単結晶33に入射する固有X線の入射角度を順次変えて第1単結晶33から回折してきたX線を第2単結晶34で分光することで、任意のX線波長を分光することができる。この際、第1単結晶33で回折し第2単結晶34に入射するX線はマルチキャピラリX線レンズ6の出射側端面で生じるX線ビームの広がりに対応した波長広がりを有するが、第2単結晶34の回転で以てエネルギー幅の狭いX線が分光される。
なお、第1単結晶33で回折されたX線ビームが、X線の回折角に依存することなく第2単結晶34の面の常に同じ位置に入射するように、第2単結晶34は回転機構とアームとが一体になって水平移動する手段、例えば1つの水平移動台の上に第2単結晶34と回転機構とを固定した構造とし、2個の単結晶33、34のそれぞれの回転と連動して水平移動台の移動を行うものとする。
この複結晶型分光器30により分光されるX線波長は、上述した図11から明らかなように、2つの単結晶33、34の回折曲線の交点で決まるが、数式的には、次のような考察から決まる。即ち、第1単結晶33の格子定数をd1、第2単結晶34の格子定数をd2、単結晶33、34に入射するX線の入射角をそれぞれθ1、θ2とすれば、(1)式のブラッグ回折式より、分光されるX線波長λとの間に次のような関係が成立する。
2d1・sinθ1=λ …(2)
2d2・sinθ2=λ …(3)
θ2=α+θ1 …(4)
なお、(4)式は図8(b)の配置において成立する幾何学的な関係式である。
(2)式、(3)式より波長λを消去すれば、
sinθ2/sinθ1=d1/d2 …(5)
が導出される。そして、(4)式を(5)式に代入してθ2を消去すれば、未知数はθ1のみの方程式となるので、これを解けばθ1が求まり、そして(4)式からθ2が、最後に(2)式又は(3)式から分光波長λが求まる。
換言すれば、単結晶33、34の格子定数d1、d2は固定されているので、分光波長λは2個の単結晶33、34のなす角度αで決まる。但し、格子定数についてd1=d2の場合には、(5)式よりθ1=θ2となってθ1、θ2の解は不定(α=0の場合)となるか、或いは存在しない(α≠0)かのいずれかとなるので、このような格子定数の条件は除外するものとする。
したがって、所望のX線波長を分光したいときには、第1単結晶33を軸33aを中心に回転させ、その波長成分を含むX線を第1単結晶33で回折させた上で、第2単結晶34を軸34aを中心にその波長に対応する2個の単結晶33、34間のなす角度αとなる角度位置まで回転させればよい。このようにして任意のX線波長を高いエネルギー分解能で以て取り出し、分析することができる。
なお、以上の説明では、分光波長λが2個の単結晶33、34間のなす角度αで決まることを数式的に説明したが、このことは図11のデュモンドダイアグラムからも容易に理解できる。即ち、図11において第2単結晶34の回折曲線の起点は角度αに応じて横軸方向に移動するから、角度αが決まれば2個の単結晶33、34の回折曲線の交差位置が定まり、これによって分光波長が決まることになる。
図2は、図8(a)で説明した(+、+)配置の二結晶型分光器を用いたX線分光装置の一実施例の概略構成図である。既に説明した図中に記載の構成要素と同一の構成要素については同一符号を付している。基本的に、この(+、+)配置でも(+、−)配置と基本的には同じであり、第1単結晶31と第2単結晶32とがそれぞれ独立に軸31a、32aを中心に回転し、軸32aと同軸である軸を中心にソーラスリット8と検出器4とが一体に回転することで分光波長の走査が達成される。
数式に則った説明としては、上記実施例1の説明において(4)式を、
θ2=(180−α)−θ1 …(6)
で置き換えればよい。但し、この場合には、2つの単結晶31、32の格子定数が同一、つまりd1=d2の場合でも、θ1=90°−α/2、θ2=90°−α/2なる解が存在するから、d1=d2という条件を除外する必要はない。このことは、1種類の格子定数の単結晶を用意すればよいという点で、上記実施例1による(+、−)配置の場合に比べて有利である。また、前述した如く原理的に、エネルギー分解能を改善するという点でも上記実施例1による(+、−)配置の場合に比べて有利である。
図3は、図8(c)で説明した四結晶型分光器を用いたX線分光装置の一実施例の概略構成図である。
このX線分光装置の複結晶型分光器30において、第1及び第2単結晶35、36は同一結晶ブロックから切り出した一体形のいわゆるチャンネルカット結晶40であり、第3及び第4単結晶37、38も同様に別のチャンネルカット結晶41である。チャンネルカット結晶は、図4の斜視図に示すように、1個の結晶ブロック50を断面コの字状に切削し、さらにA線、B線で切断することにより成形するものである。こうした構造では対向する2枚の単結晶の平行性を容易に確保することができる。
このチャンネルカット結晶40、41をそれぞれ1つの単結晶とみなせば、結晶配置は(+、+)の二結晶配置であるとみることができる。したがって、分光の原理は(+、+)配置の二結晶型分光器と同様である。それ故、分光波長を走査するために、上記実施例2と同様に、各チャンネルカット結晶40、41毎に、軸40a、41aを中心にそれらチャンネルカット結晶40、41を回転させる回転機構を備える。
一方、上述したように四結晶型分光器では二結晶型分光器とは異なり、X線の入射方向及び出射方向がチャンネルカット結晶40、41の回転角度に依らず一定である。そのため、チャンネルカット結晶40、41の回転に伴ってソーラスリット8及び検出器4の位置は固定でよく、そのための回転駆動機構は不要である。第2単結晶等を平行移動させる機構も不要である。また、マルチキャピラリX線レンズ6、複結晶型分光器30、ソーラスリット8、検出器4をほぼ一直線上に並べた配置とすることができ、上記のようにソーラスリット8及び検出器4の位置を固定できるため、分光波長の走査時にも広い動作スペースを必要としない。そのため、例えばSEMなどのX線分析装置において周囲に二次電子検出器やそのほかの部材を配置する必要がある場合でも配置を決め易い。
また、この実施例3の構成では、第1、第2チャンネルカット結晶40、41のそれぞれについて、図5(b)に示すように対となった一方の結晶を他方の結晶よりも長い形状とするような変形例が考えられる。具体的には、第1チャンネルカット結晶40では第2単結晶36を第1単結晶35よりも長くし、第2チャンネルカット結晶41では第3単結晶37を第4単結晶38よりも長くする。これにより、例えば図5(a)と(b)との比較で分かるように、第1チャンネルカット結晶40では、第1単結晶35による回折X線のうち第2単結晶36で分光される角度範囲が広がる。したがって、分光角度の走査範囲Φを大きくして分光波長範囲を広げることができる。
なお、上記実施例は本発明の一例であるから、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正又は追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
例えば、上記実施例1〜3に対応した図1〜図3ではマルチキャピラリX線レンズ6をほぼ直線状の形態で描いているが、マルチキャピラリX線レンズ6はその特性上湾曲させることができるから、試料1に対する複結晶型分光器30の位置はかなり自由に決めることができる。
本発明の一実施例(実施例1)によるX線分光装置の概略構成図。 本発明の他の実施例(実施例2)によるX線分光装置の概略構成図。 本発明の他の実施例(実施例3)によるX線分光装置の概略構成図。 チャンネルカット結晶を説明するための斜視図。 実施例3によるX線分光装置の変形例を示す概略構成図。 従来のX線分光装置の概略構成図。 従来のX線分光装置の概略構成図。 複結晶型分光器の各種の態様を示す概略図。 図7中のマルチキャピラリX線レンズの入射側の拡大図。 (+、+)配置の二結晶型分光器及び四結晶型分光器の波長分解能を示すデュモンドダイアグラム。 (+、−)配置の二結晶型分光器及び四結晶型分光器の波長分解能を示すデュモンドダイアグラム。 従来の単一結晶の分光器の波長分解能を示すデュモンドダイアグラム。
符号の説明
1…試料
2…微小領域
30…複結晶型分光器
31〜38…単結晶
31a、32a、33a、34a、40a、41a…軸
4…検出器
40、41…チャンネルカット結晶
6…マルチキャピラリX線レンズ
8…ソーラスリット

Claims (4)

  1. 試料上のほぼ点とみなせる微小領域から放出されるX線を波長分散するX線分光装置であって、
    試料に向いた入射端面側で点焦点を有し、出射端面側で略平行光を出射するマルチキャピラリX線レンズと、
    前記マルチキャピラリX線レンズで平行光化されたX線を複数段で分光するように複数の単結晶が配置された複結晶型分光器と、
    を備えることを特徴とするX線分光装置。
  2. 前記複結晶型分光器は2個の単結晶を(+、+)配置した二結晶型分光器であることを特徴とする請求項1に記載のX線分光装置。
  3. 前記複結晶型分光器は、それぞれが2個の単結晶を平行に配置してなる2個のチャンネルカット結晶を(+、+)配置した四結晶型分光器であることを特徴とする請求項1に記載のX線分光装置。
  4. 前記2個のチャンネルカット結晶のうち、1段目のチャンネルカット結晶では出口側単結晶の長さを入口側単結晶よりも長く、2段目のチャンネルカット結晶では逆に入口側単結晶の長さを出口側単結晶よりも長くしたことを特徴とする請求項3に記載のX線分光装置。
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