(実施の形態1)
本実施の形態では、照射面上に形成された複数の線状ビームの照射位置を、それぞれ独立して調整できる移動機構を備えたレーザ照射装置の構成について説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせて用いることができる。
まず、図1を用いて線状ビームを形成する光学系の説明をする。本実施の形態では、スリット121、ミラー131、シリンドリカルレンズ141、151を有する第1の光学系と、スリット122、ミラー132、シリンドリカルレンズ142、152を有する第2の光学系と、スリット123、ミラー133、シリンドリカルレンズ143、153を有する第3の光学系と、スリット124、ミラー134、シリンドリカルレンズ144、154を有する第4の光学系とが、レーザ発振器111、112、113、114の射出側にそれぞれ設置されている。
レーザ発振器111、112、113、114はCWあるいは10MHz以上の繰り返し周波数が高いレーザビームを射出するものである。本実施の形態において使用するレーザ発振器については特に制限されることはなく、パルス発振あるいは連続発振のいずれのレーザ発振器も用いることができる。例えば、エキシマレーザ、YAGレーザ、YVO4レーザ、GdVO4レーザ、YLFレーザ、Arレーザなどが挙げられる。また、これら以外の種類のレーザ発振器を用いてもよい。なお、本実施の形態では4台のレーザ発振器を用いているが、台数はこれに限定されず、2台以上であればよく、用いる基板の大きさ及びレーザ発振器の大きさ等により適宜決定すれば良い。
レーザ発振器111から射出されたレーザビームはスリット121によってレーザビームの強度の弱い部分を遮断され、ミラー131によって被照射体101の方向に偏向される。スリット121は、被照射面上に照射される線状ビームの両端に形成されるレーザ光強度の弱い部分をできるだけ少なくするために配置される。
ミラー131により偏向されたレーザビームは一方向にのみ作用するシリンドリカルレンズ141を通過する。さらに、シリンドリカルレンズ141を通過したレーザビームはシリンドリカルレンズ141と90度回転した一方向にのみ作用するシリンドリカルレンズ151によって集光され、被照射体101に線状ビーム161が照射される。同様に、レーザ発振器112、113、114から射出したレーザ光もスリット、ミラー、シリンドリカルレンズによって整形され、被照射面上に線状ビーム162、163、164が照射される。なお、シリンドリカルレンズ141、142、143、144は被照射面上に形成される線状ビームの長辺方向にのみ作用し、シリンドリカルレンズ151、152、153、154はその短辺方向にのみ作用する。
ここで、シリンドリカルレンズ141、142、143、144と、スリット121、122、123、124及び被照射体101の照射面との間の位置関係について詳しく説明する。4つのレーザ発振器それぞれに用いられる光学系は互いに同一のものであるので、ここでは代表してレーザ発振器111に対応する光学系について説明する。まず、シリンドリカルレンズ141の焦点距離をfとし、スリット121の幅をsとする。このとき、スリット121からシリンドリカルレンズ141までの光路長をM1とし、シリンドリカルレンズ141から被照射体101までの光路長をM2とする。また、被照射体101の照射面上に形成される線状ビームの長辺方向の長さをLとする。このとき、次の2式が成り立つ。
上記式1、式2より、次の式が導かれる。
これらの関係を満たす位置にスリット、シリンドリカルレンズ、被照射体を配置することで、スリットによる回折の影響がない線状ビームを照射面に投影できる。スリットは、結晶性不良領域の面積を出来るだけ小さくするために用いられているが、一方で、回折による影響から周期的なエネルギー分布を発生させる欠点を持っている。一般に、レーザビームがスリットにより一部遮光されると、光の回折現象が起こる。これによりスリットを通過したレーザビームには、被照射面上で周期的なエネルギー分布が発生する。しかしながら、レーザビームがスリットで切られた直後の位置では、回折による周期的なエネルギー分布は発生しない。従って、上記式を満たす位置に光学系を配置することにより、スリットによる回折の影響を受けない線状ビームを得ることができる。従って、被照射面にほぼ均一なエネルギー分布を持った線状ビームを照射することが可能となる。
もちろん、線状ビームを形成するための光学系は、本実施の形態の光学系に限定されない。例えば、スリットを設けない構成でもよいし、シリンドリカルレンズのかわりにフライアイレンズやシリンドリカルレンズアレイ、あるいは回折光学素子等を用いてもよいし、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。また、本実施の形態では、4台のレーザ発振器それぞれに対して、同一の構成の光学系をそれぞれ配置しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。例えば、レーザ発振器それぞれに異なる構成の光学系を配置してもよい。レーザ発振器それぞれに異なる光学系を配置することで、照射面に照射される線状ビームのエネルギー分布及びエネルギー密度等の特性をそれぞれ変えることが可能である。線状ビームのエネルギー分布及びエネルギー密度等の特性をそれぞれ変えることで、それぞれの線状ビームで結晶化された結晶領域の結晶性を異ならせることができるため、1つの基板上に異なる特性のデバイスを作製する際には、各デバイスの特性を制御することが可能である。
また、特性の異なる線状ビームで形成した結晶領域に渡って1つのデバイスを作製する場合には、偏光板やフィルター、またはその他のエネルギー調整手段を用いて、複数の線状ビームのエネルギー分布及びエネルギー密度等の特性がそれぞれ均一になるように調整することで、そのデバイスの特性のばらつきを最小限に抑えることができる。なお、ここでは図示していないが、レーザ発振器、スリット、ミラー及びシリンドリカルレンズを有する光学系とは移動可能なY軸ステージに設置されている。また、171、172、173、174はアライメントマーカーを検出するための手段である。ここでは、アライメントマーカーの検出手段としてCCDカメラを用いる。
次に、図2を用いてX軸ステージ102と複数のY軸ステージ201、202、203、204の構成を説明する。図2は、図1にY軸ステージを201、202、203、204を加えた図であり、図1と同一のものには同じ符号を付し説明を省略する。なお、ここでのX軸方向とは、線状ビームの短辺方向のことであり、Y軸方向とは線状ビームの長辺方向のことである。なお、本明細書では、Y軸上で座標の正の方向へ向かう方向をY軸方向、負の方向へ向かう方向を−Y軸方向、X軸上で座標の正の方向へ向かう方向をX軸方向、負の方向へ向かう方向を−X軸方向と記載する。
本実施の形態では、テーブル211上にX軸方向に自由に移動可能なX軸ステージ102を設け、X軸ステージ102の上方にY軸方向に移動可能なY軸ステージ201、202、203、204を設ける構成とした。つまり、テーブル211上に接してX軸ステージ102が設置され、X軸ステージ102の両側に配置された支持体231、232からX軸ステージ102上に延びた支持体241に支えられて、X軸ステージ102の上方にY軸ステージ201、202が配置されている。同様に、Y軸ステージ203、204は、X軸ステージ102の両側に配置された支持体233、234からX軸ステージ102上に延びた支持体242に支えられて、X軸ステージ102の上方に配置されている。本実施の形態では、Y軸ステージ201、202、203、204は連動することなく、それぞれが支持体241又は242に沿って独立して任意の距離だけ移動させることが可能な移動機構を備えている。なお、本実施の形態で示すY軸ステージ及び支持体の構成は一例であって、レーザ発振器をそれぞれ独立に動かすことができる機構であれば他の構成でもよい。また、本実施の形態においてY軸ステージはレーザ発振器の数と同数設ける。
Y軸ステージ201には、図1に示す線状ビームを整形するための第1の光学系とレーザ発振器111及びCCDカメラ171が配置されている。同様に、Y軸ステージ202には、図1に示す線状ビームを整形するための第2の光学系、レーザ発振器112、およびCCDカメラ172が設置され、Y軸ステージ203には、図1に示す線状ビームを整形するための第3の光学系、レーザ発振器113、および図2には示されないCCDカメラ173が設置され、Y軸ステージ204には、図1に示す線状ビームを整形するための第4の光学系、レーザ発振器114、および図2には示されないCCDカメラ174が設置されている。ここでは、第1の光学系とレーザ発振器111とをまとめて221、第2の光学系とレーザ発振器112とをまとめて222、第3の光学系とレーザ発振器113とをまとめて223、第4の光学系とレーザ発振器114とをまとめて224として図示した。
Y軸ステージ201、202、203、204をそれぞれY軸方向に移動させることにより、照射面上に形成された線状ビーム161、162、163、164もY軸方向に移動する。ここで、Y軸ステージ201、202、203、204には、レーザ発振器と光学系をそれぞれ1つずつ配置する。つまり、1つのY軸ステージ上には、レーザ発振器を1台だけ設ける。仮に、1つのY軸ステージ上に複数のレーザ発振器を設置した場合、隣り合うレーザ発振器から射出された線状ビームの間隔は光学系を用いて調整されなければならないため、正確な位置合わせが困難になる。
本実施の形態において、各光学系により線状に整形された線状ビーム161、162、163、164の照射位置は、例えば図8に示すように、あらかじめ設定されたレーザ光の照射開始位置1401、1402、1403、1404とは、それぞれ距離d1、d2、d3、d4だけずれた位置に照射される。なぜならば、線状ビームを形成するために光学系をそれぞれ微調整すると、線状ビームの相互位置が所望の位置よりずれるからである。なお、上記距離d1、d2、d3、d4は、それぞれ異なっている必要はない。
そこで、CCDカメラにより各アライメントマーカーを検出することで得た各アライメントマーカーの位置情報を基に、4つのY軸ステージを移動して各線状ビームを照射位置へ正確に移動させる。つまり、Y軸ステージ201、202、203、204をそれぞれY軸方向又は−Y軸方向にd1、d2、d3、d4だけ移動させて、線状ビーム161、162、163、164をレーザ光の照射開始位置1401、1402、1403、1404に合わせる。
ここで、アライメントマーカーを読み取る手段について図1及び図2を用いて説明する。4つのY軸ステージ201、202、203、204にそれぞれ設置されたCCDカメラ171、172、173、174を移動させて各CCDカメラで被照射体101表面を撮影し、アライメントマーカー181、182、183、184の位置を認識する。ここでは、CCDカメラに接続された画像処理装置でパターンマッチング等の画像処理を行うことにより、アライメントマーカーの位置を認識している。その後、パターンマッチング処理により得られたアライメントマーカーの位置情報を基に、Y軸ステージ201、202、203、204をそれぞれ移動して各線状ビームを所定の照射開始位置にあわせる。ここでは、CCDカメラ171でアライメントマーカー181の位置を検出し、CCDカメラ172でアライメントマーカー182の位置を検出し、CCDカメラ173でアライメントマーカー183の位置を検出し、CCDカメラ174でアライメントマーカー184の位置を検出している。つまり、各CCDカメラは、同じY軸ステージ上に設置されたレーザ発振器から射出されるレーザビームに対応するアライメントマーカーの位置情報のみを検出する。
本実施の形態では、被照射体表面での反射光をCCDカメラを用いて記録した画像に、ソーベル処理等による輪郭部分のみの抽出を行う。そして、輪郭部分を抽出した画像とあらかじめ画像処理装置に登録されたアライメントマーカーの画像とを比較するパターンマッチング処理を行い、アライメントマーカーの位置を検出している。輪郭部分のみを抽出した画像でパターンマッチング処理を行うことにより、被照射体表面での反射率の変化に影響されることがなく、安定してパターンマッチング処理を行うことが可能となる。なお、アライメントマーカーの位置の認識方法はこの方法に限定されない。例えば、CADデータから得られるアライメントマーカーのパターンを画像処理装置に登録してもよい。ここで登録される情報は、CCDカメラのピクセル間のコントラスト差を多階調で数値化したものではなく、二値化されたものを登録する。このとき、画像処理装置に登録される情報はアライメントマーカーの形状、つまり画像の輪郭部分のみとなる。この場合も、CCDカメラを用いて記録した画像にソーベル処理等を行い輪郭部分のみを抽出したパターンと、あらかじめ画像処理装置に登録したCADデータから得られるパターンとに対してパターンマッチング処理を行う。
被照射体に形成されたアライメントマーカーをCCDカメラを用いて記録する際、可視域全域にわたる波長を持った白色光源を用いると、被照射体に特定波長の吸収帯が存在したとしても反射光の総量に大きな違いが得られないため、良いコントラストを得ることが難しい。従って、ここで用いる光源としては被照射体に存在する吸収波長域に対応する単色の光源がより好ましい。被照射体が半導体膜の場合は、半導体膜上においてレーザ光の照射位置を決める際の光源としては、半導体膜の吸収波長域である可視域以下の短波長の光源を用いるのが好ましい。例えば非晶質シリコンは波長500nm以下で良い吸収を持っているため、波長500nm以下の光源を用いるのが好ましい。また、半導体膜に非晶質シリコン、下地膜にシリコン酸化膜を用いた場合、シリコン酸化膜には波長500nm付近の吸収はなく、波長200nm付近から吸収が現れるため、200〜500nmの波長帯の光源を用いるのが好ましい。
膜構造の複雑化でアライメントマーカーのコントラストが低い場合にも、このような単色光源の反射光を記録し、画像処理を行うことで、アライメントマーカーの輪郭では反射光の強度が変化し、その輪郭部分のみは認識できる。そのため、アライメントマーカーの位置をコントラストに関わらず認識することが可能である。さらに、基板面内の膜厚分布があり、面内に複数箇所あるアライメントマーカーのコントラストが互いに異なる場合にもそれらのアライメントマーカーを認識することができる。例えば、剥離層である非晶質シリコン膜と、剥離工程から半導体膜を保護するシリコン酸化膜と、アライメントマーカーの形成された半導体膜(多結晶シリコン膜)が順に積層された多層構造を有する積層膜上にレーザ光照射する場合でも、所定の位置にビームスポットの位置あわせすることが可能となる。
本実施の形態のレーザ照射装置を用いると、レーザ発振器をそれぞれ支持体241、242に沿って任意の距離だけ移動してレーザ光の照射位置を調整することができるので、各線状ビーム161、162、163、164をそれぞれの照射開始位置に容易に合わせることができる。ここでは、テーブル211に設けられたステージ201、202、203、204をY軸方向のみに移動可能なものとしたが、もちろんこの構成に限定されず、レーザの照射位置があらかじめ設定された照射開始位置にあうようなものであればよい。つまり、Y軸方向移動に加えてX軸方向移動できるものであってもよいし、Y軸方向移動に加えてZ軸方向移動できるものであってもよい。あるいは、Y軸方向移動に加えて回転移動できるものであってもよいし、これらを適宜組み合わせた方向に移動できるものであってもよい。
次に、100〜1000mm/sec程度の速度で移動できるX軸ステージ102をX軸方向に適切な速度にて走査移動させることで、被照射体101上に線状ビームを照射することができる。本実施の形態では、被照射体が設けられたステージ102は、X軸方向にのみ移動可能なものとしたが、もちろんこの構成に限定されず、レーザ光の照射位置があらかじめ設定された照射位置にあうようなものであればよい。つまり、X軸方向に加えY軸方向移動や、Z軸方向移動、又は回転移動できるものであっても良いし、これらを適宜組み合わせた方向に移動できるものであってもよい。
X軸ステージ102をX軸方向に移動後、線状ビーム161、162、163、164で結晶化される各結晶領域の幅と同じ距離だけ、4つのY軸ステージ201、202、203、204をY軸方向にそれぞれ移動する。Y軸ステージ201、202、203、204の移動後、今度はX軸ステージ102を逆方向、つまり−X軸方向に移動させる。本実施の形態では、X軸方向に移動後、各レーザ発振器を互いに独立した距離だけY軸方向に移動させているので、同じレーザ発振器から射出した隣り合う線状ビームの間にほぼ隙間無く、基板表面を均一に照射することができる。本動作を繰り返し行うことで、基板全面に線状ビームを照射することが可能である。このとき、Y軸ステージ201、202、203、204として、同軸上で互いに独立して動くステージを用いることで、装置面積を小さくすることが可能である。そのようなことを可能にするステージに、リニアモータ駆動のステージなどがある。
本実施の形態のレーザ照射装置を用いることで、線状ビームの照射位置をあらかじめ決められた位置に合わせる場合に、それぞれの線状ビームの照射位置の調整をレーザ発振器の移動だけで行うことができる。単にY軸ステージを移動するだけで、レーザ発振器と光学系を一緒に移動することができる。よって、困難な光学系の調整を行う必要がなくなり、線状ビームの照射位置の調整が極めて容易になる。従って、メンテナンスに要する時間を著しく短縮でき、生産性の向上につながる。また、レーザ発振器を移動することで照射位置を調整するため、レーザ照射位置の微調整が可能となる。従って、レーザが照射されない領域やレーザが重なって照射されてしまう領域の発生を防ぐことができる。本実施の形態のレーザ照射装置を、例えばTFT作製の際の半導体膜の結晶化に用いることで、TFTの生産性及び歩留まりを向上することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1の4台のCCDカメラのかわりに1台のCCDカメラで線状ビームの照射位置を決定するレーザ照射装置の構成について説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせて用いることができる。
本実施の形態のレーザ照射装置の構成を図3及び図4に示す。本実施の形態では、1台のCCDカメラを移動して4本の線状ビームそれぞれの位置合わせを行う。つまり、本実施の形態で示すレーザ照射装置は、図1、図2に示したCCDカメラ171〜174のかわりに、図3、図4に示すCCDカメラ371及び、CCDカメラ371を移動させる図4に示すY軸ステージ405を設ける構成である。本実施の形態において、実施の形態1と同一のものには同じ符号を付し説明は省略する。
ここでは、4台のレーザ発振器が設置されたY軸ステージ201、202、203、204とは別のY軸ステージ405に設置されたCCDカメラ371を移動させることで、被照射体上の4隅に形成された各線状ビームの照射位置の基準となるアライメントマーカー382の位置を検出する。アライメントマーカー382は、それぞれの線状ビームの照射位置の基準となる。
本実施の形態のレーザ照射装置を用いることで、複数の線状ビームそれぞれの照射位置の調整のために、困難な光学系の調整を行う必要がなくなり、線状ビームの照射位置の調整が極めて容易になる。従って、メンテナンスに要する時間を著しく短縮でき、生産性の向上につながる。また、レーザ照射位置の微調整が可能となり、レーザが照射されない領域やレーザが重なって照射されてしまう領域の発生を防ぐことができる。本実施の形態のレーザ照射装置を、例えばTFT作製の際の半導体膜の結晶化に用いることで、TFTの生産性及び歩留まりを向上することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態においては、図1及び図2に示したレーザ照射装置を用いて、薄膜トランジスタ(TFT)を作製する工程について説明する。なお、本実施の形態ではトップゲート型(順スタガ型)TFTの作製方法を記載しているが、トップゲート型TFTに限らず、ボトムゲート型(逆スタガ型)TFTなどでも同様に本発明を用いることができる。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせて用いることができる。
図9は、図1及び図2のX軸ステージ102を示したものである。X軸ステージ102は、吸着機能を有し、X軸方向に沿って移動することができる。まず、図9に示すように、吸着機能を持ったX軸ステージ102上に、絶縁表面を有する絶縁基板700、下地膜701、非晶質半導体膜702を順次形成したものを設置する。絶縁基板700には、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、ステンレス基板等を用いることができる。また、PET、PES、PENに代表されるプラスチックや、アクリル等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に他の基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るのであれば用いることができる。
下地膜701は、絶縁基板700中に含まれるNaなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属が、半導体膜中に拡散し、半導体素子の特性に悪影響を及ぼすのを防ぐために設ける。そのため、アルカリ金属やアルカリ土類金属の半導体膜中への拡散を抑えることができる酸化珪素や、窒化珪素、窒素を含む酸化珪素、酸素を含む窒化珪素などの絶縁膜を用いて形成する。例えば、プラズマCVD法を用いて窒化酸化珪素膜を10〜400nmの膜厚になるように成膜する。ガラス基板又はプラスチック基板のようにアルカリ金属やアルカリ土類金属が多少なりとも含まれている基板を用いる場合、不純物の拡散を防ぐという観点から下地膜を設けることは有効であるが、石英基板など不純物の拡散がたいして問題とならない場合には必ずしも設ける必要はない。
下地膜701上に、膜厚25〜100nm(好ましくは30〜60nm)程度の非晶質半導体膜702が形成されている。非晶質半導体膜としては、珪素やゲルマニウムを含む珪素を用いることができる。ゲルマニウムを含む珪素を用いる場合、ゲルマニウムの濃度は0.01〜4.5atomic%程度であることが好ましい。続いて、本発明のレーザ照射装置を用いて非晶質半導体膜702を結晶化する。
図10に非晶質半導体膜702の上面の模式図を示す。ここで、下地絶縁膜上に成膜された非晶質半導体膜702には、フォトリソグラフィ法を用いて非晶質半導体膜702をエッチングすることにより、あらかじめアライメントマーカー601a、601b、601c、601dが形成されている。非晶質半導体膜702のエッチングされた部分をアライメントマーカとして使用する。アライメントマーカー601a、601b、601c、601dは半導体膜に複数個形成されており、アライメントマーカー601aは線状ビーム161の照射位置調整のために用いられるものである。同様に、アライメントマーカー601b、601c、601dは各線状ビーム162、163、164に対応するものである。本実施の形態では、レーザ照射位置を決めるためにアライメントマーカーを設けているが必ずしも必要ではない。また、本実施の形態では、アライメントマーカーを半導体膜に形成しているが、ガラス基板中に形成してもよい。なお、ガラス基板中にアライメントマーカを形成する場合、ガラス基板内部に局所的にエネルギーを集中させたレーザ光をガラス基板に照射する。そして、照射することにより部分的にガラス基板内部の状態が変化した部分をアライメントマーカとして使用する。
本実施の形態では、図1及び図2で説明した4台のレーザ発振器、線状ビームを整形するための4組の光学系、4台のCCDカメラ、X軸ステージ、4つのY軸ステージを有するレーザ照射装置を用いる。まずレーザ発振器111、112、113、114から射出されたレーザ光を、第1の光学系、第2の光学系、第3の光学系、第4の光学系を用いて、被照射体上において線状ビーム161、162、163、164を形成する(図1参照)。本実施の形態において、被照射体は非晶質半導体膜702である。
次に、各Y軸ステージ上に設置されたCCDカメラにより、非晶質半導体膜702に形成されたアライメントマーカー601a、601b、601c、601d(図10参照)それぞれのパターンを画像処理装置(図示しない)に取り込む。そして、CCDカメラにより画像処理装置に取り込まれたパターンと事前に画像処理装置に登録されたパターンのパターンマッチング処理を行い、各アライメントマーカーの位置情報を得る。そして、得られたアライメントマーカーの位置情報を基にX軸ステージ102、Y軸ステージ201、202、203、204を移動して、線状ビーム161、162、163、164を半導体膜702上の照射位置にそれぞれ合わせる。
レーザ発振器として、例えば4台の出力10Wの第2高調波、連続発振のNd:YVO4レーザを用いることができる。もちろん、レーザ発振器の台数はこれに限定されず、2台以上であれば何台でもよい。また、レーザ発振器の出力はそれぞれ異なっていてもよい。異なる出力のレーザ発振器を用いることで、一度の走査で異なる結晶性を有する半導体膜を形成することが可能である。
線状ビームの位置合わせの後、X軸ステージを移動することで、各線状ビームは、図10に示す破線矢印602a、602b、602c、602dで示す方向に同時に走査され、結晶領域605a、605b、605c、605dを形成する。このとき、前記X軸方向はそれぞれの線状ビームの短辺方向と平行の関係にある方が生産性が良く好ましい。
X軸ステージをX軸方向に走査して結晶領域605a、605b、605c、605dを形成した後、Y軸ステージを移動して矢印603a、603b、603c、603dで示す方向に各線状ビームを移動する。このとき、結晶領域605a、605b、605c、605dの幅と同じ距離だけそれぞれのY軸ステージを移動して、605aと606aにほぼ隙間がないようにする。その後、再びX軸ステージにより、破線矢印604a、604b、604c、604dで示す方向に線状ビームを同時に走査し、結晶領域606a、606b、606c、606dを形成する。本実施の形態では、X軸方向に移動後、各レーザ発振器を互いに独立した距離だけY軸方向に移動させているので、結晶領域605aと結晶領域606aの間の隙間をほぼ無くすることができる。同様に、結晶領域605b、605c、605dと結晶領域606b、606c、606dそれぞれの間の隙間がほぼ無く、基板上において均一な照射を可能とすることができる。これらの動作を繰り返すことで、基板全面に形成された非晶質半導体膜を均一にかつ効率的にレーザアニールによって結晶化することができる。このとき、Y軸ステージとして、互いに独立して動くステージを用いることで、装置面積を小さくすることが可能である。そのようなことを可能にするステージに、リニアモータ駆動のステージなどがある。ここで、X軸方向とは、線状ビームの短辺に沿った方向であり、Y軸方向とは線状ビームの長辺に沿った方向である。
次に図11を用いて、TFTの作製工程について説明する。図11は、図10のMとNを結ぶ破線における断面図である。図11(A)に示すように、絶縁基板700上に下地膜701、非晶質半導体膜702が順次積層して形成されている。線状ビームは、非晶質半導体膜702の表面において、図11(B)に示した矢印の方向に向かって走査する。その線状ビームの照射により走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒が形成される。前記のように、走査方向に向かって長く延びた結晶の粒を形成することで、結晶性半導体膜606aよりチャネルのキャリア移動方向には結晶粒界のほとんど存在しないTFTの形成が可能となる。
その後、図11(C)に示すように結晶性半導体膜606aをエッチングし、島状の半導体膜704〜707を形成する。島状の半導体膜704〜707を用いてTFTに代表される各種の半導体素子を形成する。次に、その島状の半導体膜704〜707を覆うようにゲート絶縁膜708を形成する。そのゲート絶縁膜708には、例えば酸化珪素、窒化珪素または窒化酸化珪素等を用いることができる。その際の成膜方法には、プラズマCVD法、スパッタ法などを用いることができる。例えば、スパッタ法を用いて、膜厚30nm〜200nmの珪素を含む絶縁膜を形成すればよい。
次に、ゲート絶縁膜上に導電膜を形成しエッチングすることでゲート電極を形成する。その後、ゲート電極、又はレジストを形成しエッチングしたものをマスクとして用い、島状の半導体膜704〜707にn型またはp型の導電性を付与する不純物を選択的に添加し、ソース領域、ドレイン領域、さらにはLDD領域等を形成する。上述の工程によって、N型トランジスタ710、712と、P型トランジスタ711、713を同一基板上に形成することができる(図11(D))。続いて、それらの保護膜として絶縁膜714を形成する。この絶縁膜714には、プラズマCVD法またはスパッタ法を用い、膜厚100nm〜200nmの珪素を含む絶縁膜を、単層又は積層構造として形成すれば良い。例えば、プラズマCVD法により膜厚100nmの酸化窒化珪素膜を形成すればよい。
次いで、絶縁膜714上に、有機絶縁膜715を形成する。有機絶縁膜715としては、SOG法によって塗布されたポリイミド、ポリアミド、BCB、アクリル等の有機絶縁膜を用いる。その絶縁膜715は、ガラス基板上700に形成されたTFTによる凹凸を緩和し、平坦化する意味合いが強いので、平坦性に優れた膜が好ましい。さらに、フォトリソグラフィ法を用いて、絶縁膜714及び有機絶縁膜715をパターン加工して、不純物領域に達するコンタクトホールを形成する。
次に、導電性材料を用いて、導電膜を形成し、該導電膜をパターン加工して、配線716〜723を形成する。その後、保護膜として絶縁膜724を形成すると、図11(D)に図示するような半導体装置が完成する。なお、本発明のレーザアニール方法を用いた半導体装置の作製方法は、上述したTFTの作製工程に限定されない。本発明では、レーザ光の照射方法を用いて得られる結晶性半導体膜をTFTの活性層として用いることを特徴とする。その結果、素子間の移動度、閾値及びオン電流のばらつきを抑えることができる。なお、レーザ光は、本実施の形態で示した照射条件に限定されない。
また、レーザ光による結晶化の前に、触媒元素を用いた結晶化工程を設けてもよい。その触媒元素としては、ニッケル(Ni)、ゲルマニウム(Ge)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、コバルト(Co)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)といった元素を用いることができる。触媒元素を用いた結晶化工程の後に、レーザ光による結晶化工程を行うと、触媒元素による結晶化の際に形成された結晶が、レーザ光の照射により溶融されずに残存し、この結晶を結晶核として結晶化が進む。
そのため、レーザ光による結晶化工程のみの場合に比べて、より半導体膜の結晶性を高めることができ、レーザ光による結晶化後の半導体膜表面の荒れが抑えられる。よって、後に形成される半導体素子、代表的にはTFTの特性のばらつきがより抑えられ、オフ電流を抑えることができる。なお、触媒元素を添加してから加熱処理を行って結晶化を促進してから、レーザ光の照射により結晶性をより高めていてもよいし、加熱処理の工程を省略してもよい。具体的には、触媒元素を添加してから加熱処理の代わりにレーザ光を照射し、結晶性を高めるようにしてもよい。
本実施の形態では、本発明のレーザ照射方法を半導体膜の結晶化に用いた例を示したが、半導体膜にドーピングした不純物元素の活性化を行うために用いてもよい。また、本発明を用いた半導体装置の作製方法は、集積回路や半導体表示装置の作製方法にも用いることができる。ドライバやCPUなどの機能回路を用途としたトランジスタは、LDD構造又はLDDがゲート電極とオーバーラップする構造が好適であり、高速化のためには、トランジスタの微細化を図ることが好ましい。本実施の形態により完成されるトランジスタ710〜713は、LDD構造を有するため、低いIoff値が必要な駆動回路に用いることが好適である。
本実施の形態において、複数の線状ビームの照射位置の調整をレーザ発振器の移動により行っているため、各線状ビームの照射位置のずれを修正するために光学系の調整を行う必要がなくなり、各線状ビームの照射位置の調整が極めて容易になる。従って、メンテナンスに要する時間を著しく短縮でき、生産性の向上につながる。また、レーザ発振器を移動することで照射位置を調整するため、線状ビームの照射位置の微調整が可能となる。従って、レーザが照射されない領域やレーザが重なって照射されてしまう領域の発生を防ぐことができる。本実施の形態のTFTの作製方法を用いることで、TFTの生産性及び歩留まりを向上することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、薄膜集積回路または非接触型薄膜集積回路装置(無線チップ、無線ICタグ、RFID(無線認証、Radio Frequency Identification)とも呼ばれる)を図3及び図4のレーザ照射装置を用いて作製する過程を示す。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせて用いることができる。
無線ICタグの集積回路に用いられる半導体素子として絶縁分離されたTFTを用いた例を以下に示すが、無線ICタグの集積回路に用いられる半導体素子はTFTに限定されず、あらゆる素子を用いることができる。例えば、TFTの他に、記憶素子、ダイオード、光電変換素子、抵抗素子、コイル、容量素子、インダクタなどが代表的に挙げられる。
図12は、図3及び図4のX軸ステージ102を示したものである。X軸ステージ102は、吸着機能を有し、X軸に沿った方向に移動できる。図12に示すように、X軸ステージ上にガラス基板(第1の基板)1700、剥離層1701、下地絶縁膜1702、半導体膜1703を順次形成したものを設置する。半導体膜1703を成膜するまでの工程を説明する。
まず、スパッタ法を用いてガラス基板(第1の基板)1700上に剥離層1701を形成する。剥離層1701は、スパッタ法、減圧CVD法、プラズマCVD法等を用いて形成することができる。本実施の形態では、膜厚50nm程度の非晶質シリコンをスパッタ法で形成し、剥離層1701として用いる。なお剥離層1701はシリコンに限定されず、エッチングにより選択的に除去できる材料(例えば、W、Moなど)で形成すれば良い。剥離層1701の膜厚は、50〜60nmとするのが望ましい。
次いで、剥離層1701上に、下地絶縁膜1702を形成する。下地絶縁膜1702は第1の基板中に含まれるNaなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属が、半導体膜中に拡散し、TFTなどの半導体素子の特性に悪影響を及ぼすのを防ぐために設ける。また、下地絶縁膜1702は、後の半導体素子を剥離する工程において、半導体素子を保護する役目も有している。下地絶縁膜1702は単層であっても複数の絶縁膜を積層したものであっても良い。よってアルカリ金属やアルカリ土類金属の半導体膜への拡散を抑えることができる酸化珪素や、窒化珪素、窒素を含む酸化珪素(SiON)、酸素を含む窒化珪素(SiNO)などの絶縁膜を用いて形成する。
次に、下地絶縁膜1702上に半導体膜1703を形成する。半導体膜1703は、下地絶縁膜1702を形成した後、大気に曝さずに形成することが望ましい。半導体膜1703の膜厚は20〜200nm(望ましくは40〜170nm、より望ましくは50〜150nm)とする。
そして、上記工程で作製された基板を図12に示すようにX軸ステージ上に設置し、本発明のレーザ照射装置を用いて、半導体膜1703に対して線状ビームを照射して半導体膜1703を結晶化する。ここで、半導体膜1703の表面の様子を模式的に図13に示す。下地絶縁膜上に半導体膜1703を成膜した後、半導体膜1703を結晶化する前に、フォトリソグラフィ法を用いて半導体膜1703をエッチングすることにより、アライメントマーカー382を形成しておく。あらかじめアライメントマーカー601a、601b、601c、601dが形成されている。アライメントマーカー382は半導体膜に複数個形成されており、アライメントマーカー382をCCDカメラを用いて記録することにより線状ビームの照射位置を決定する。もちろん、照射位置を決定するためのアライメントマーカーは半導体膜上のどのような位置に設けてもよい。また、半導体膜に設けるかわりにガラス基板内部にアライメントマーカーを形成してもよい。なお、基板中にアライメントマーカを形成する場合、基板内部に局所的にエネルギーを集中させたレーザ光を基板に照射する。そして、照射することにより部分的に基板内部の状態が変化した部分をアライメントマーカとして使用する。
本実施の形態では、4台のレーザ発振器、線状ビームを形成するための4組の光学系、4台のCCDカメラ、X軸ステージ、4つのY軸ステージを有するレーザ照射装置(図3、図4参照)を用いる。まずレーザ発振器111、112、113、114から射出されたレーザ光を、第1の光学系、第2の光学系、第3の光学系、第4の光学系を用いて線状ビーム161、162、163、164に整形する(図3参照)。
次に、図4のY軸ステージ405上に設置されたCCDカメラ371で、被照射体上に形成されたアライメントマーカー382を撮影し、画像処理装置(図示しない)に取り込む。本実施の形態において、被照射体とは半導体膜1703である。そして、取り込まれた各アライメントマーカー382のパターンと事前に画像処理装置に登録されたパターンとのパターンマッチングを行い、各アライメントマーカーの位置情報を得る。そして、得られたアライメントマーカーの位置情報を基にX軸ステージ又はY軸ステージ201、202、202、204を移動して線状ビーム161、162、163、164それぞれを半導体膜1703上の照射位置にそれぞれ合わせる。
レーザ発振器として、例えば4台の10Wの第2高調波、連続発振のNd:YVO4レーザを用いることができる。もちろん、レーザ発振器の台数はこれに限定されず、2台以上であれば何台でも良い。また、レーザ発振器の出力はそれぞれ異なっていても良い。異なる出力のレーザ発振器を用いることで、一度の走査で異なる結晶性を有する半導体膜を形成することとが可能である。
線状ビームの位置合わせの後、X軸ステージを移動して、図13に示す破線矢印802a、802b、802c、802dの示す方向に各線状ビームを同時に走査して、結晶領域805a、805b、805c、805dを形成する。このとき、前記X軸方向はそれぞれの線状ビーム161、162、163、164の短辺方向と平行の関係にある方が、生産性が良く好ましい。
X軸ステージをX軸方向に走査して図13に示す結晶領域805a、805b、805c、805dを結晶化した後、各線状ビームをY軸ステージの移動して矢印803a、803b、803c、803dで示す方向に移動する。このとき、結晶領域の幅に合わせてそれぞれのY軸ステージが移動するようにする。その後、再びX軸ステージを破線矢印804a、804b、804c、804dで示す方向に同時に走査して、結晶領域806a、806b、806c、806dを形成する。これらの動作を繰り返すことで、基板全面に形成された半導体膜を効率的にレーザアニールすることができる。このとき、Y軸ステージとして、互いに独立して動くステージを用いることで、装置面積を小さくすることが可能である。そのようなことを可能にするステージに、リニアモータ駆動のステージなどがある。
次に、図14〜図18を用いて薄膜集積回路の作製工程について説明する。図14(A)は、図13のMとNを結ぶ破線における断面図である。図14(A)に示すように、第1の基板1700上に、剥離層1701、下地絶縁膜1702、半導体膜1703を順次積層して形成する。そして、本実施の形態のレーザ照射装置を用いた半導体膜1703への線状ビームの照射により、結晶性半導体膜805a(結晶領域)が形成される(図14(A)参照)。
次いで、図14(B)に示すように、結晶構造を有する半導体膜805aをエッチングして、島状の半導体層1705〜1707を形成した後、ゲート絶縁膜1708を形成する。ゲート絶縁膜1708は、プラズマCVD法又はスパッタリング法などを用い、窒化珪素、酸化珪素、窒素を含む酸化珪素又は酸素を含む窒化珪素を含む膜を、単層又は積層させて形成することができる。
なお、ゲート絶縁膜1708を形成した後、3%以上の水素を含む雰囲気中で、300〜450℃で1〜12時間の熱処理を行ない、島状の半導体膜1705〜1707を水素化する工程を行なっても良い。また、水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)を行っても良い。
次に図14(C)に示すように、ゲート電極1709〜1711を形成する。ここでは、SiとWをスパッタ法で積層するように形成した後、レジスト1712をマスクとしてエッチングを行なうことにより、ゲート電極1709〜1711を形成した。勿論、ゲート電極1709〜1711の導電材料、構造、作製方法は、これに限定されるものではなく、適宜選択することができる。例えば、n型を付与する不純物(リン、ヒ素等)がドーピングされたSiとNiSi(ニッケルシリサイド)との積層構造や、TaN(窒化タンタル)とW(タングステン)の積層構造としてもよい。また、種々の導電材料を用いて単層で形成しても良い。また、ゲート電極とアンテナとを同時に形成する場合には、それらの機能を考慮して材料を選択すればよい。
また、レジストマスクの代わりに、酸化珪素等のマスクを用いてもよい。この場合、エッチングして酸化珪素、窒素を含む酸化珪素等のマスク(ハードマスクと呼ばれる。)を形成する工程が加わるが、エッチング時におけるマスクの膜減りがレジストよりも少ないため、所望の幅のゲート電極1709〜1711を形成することができる。また、レジスト1712を用いずに、液滴吐出法を用いて選択的にゲート電極1709〜1711を形成しても良い。
次いで、図14(D)に示すように、pチャネル型TFTとなる島状の半導体膜1706をレジスト1713で覆い、ゲート電極1709、1711をマスクとして、島状の半導体膜1705、1707に、n型を付与する不純物元素(代表的にはP(リン)又はAs(砒素))を低濃度にドープする。このドーピング工程によって、ゲート絶縁膜1708を介してドーピングがなされ、島状の半導体膜1705、1707に、一対の低濃度不純物領域1716、1717が形成される。なお、このドーピング工程は、pチャネル型TFTとなる島状の半導体膜1706をレジスト1713で覆わずに行っても良い。
次いで、図14(E)に示すように、レジスト1713をアッシング等により除去した後、nチャネル型TFTとなる島状の半導体膜1705、1707を覆うように、レジスト1718を新たに形成し、ゲート電極1710をマスクとして、島状の半導体膜1706に、p型を付与する不純物元素(代表的にはB(ホウ素))を高濃度にドープする。このドーピング工程によって、ゲート絶縁膜1708を介してドーピングがなされ、島状の半導体膜1706に、一対のp型の高濃度不純物領域1720が形成される。
次いで、図15(A)に示すように、レジスト1718をアッシング等により除去した後、ゲート絶縁膜1708及びゲート電極1709〜1711を覆うように、絶縁膜1721を形成する。
その後、エッチバック法により、絶縁膜1721、ゲート絶縁膜1708を部分的にエッチングし、図15(B)に示すように、ゲート電極1709〜1712の側壁に接するサイドウォール1722〜1724を自己整合的(セルフアライン)に形成する。エッチングガスとしては、CHF3とHeの混合ガスを用いた。なお、サイドウォールを形成する工程は、これらに限定されるものではない。
次いで、図15(C)に示すように、pチャネル型TFTとなる島状の半導体膜1506を覆うように、レジスト1726を新たに形成し、ゲート電極1709、1711及びサイドウォール1722、1724をマスクとして、n型を付与する不純物元素(代表的にはP又はAs)を高濃度にドープする。このドーピング工程によって、ゲート絶縁膜1708を介してドーピングがなされ、島状の半導体膜1705、1707に、一対のn型の高濃度不純物領域1727、1728が形成される。
次に、レジスト1726をアッシング等により除去した後、不純物領域の熱活性化を行っても良い。例えば、50nmの窒素を含む酸化珪素膜を成膜した後、550℃、4時間、窒素雰囲気下において、加熱処理を行なえばよい。また、水素を含む窒化珪素膜を、100nmの膜厚に形成した後、410℃、1時間、窒素雰囲気下において、加熱処理を行なうことにより、多結晶半導体膜の欠陥を改善することができる。これは、例えば、多結晶半導体膜中に存在するダングリングボンドを終端させるものであり、水素化処理工程などと呼ばれる。
上述した一連の工程により、nチャネル型TFT1730、pチャネル型TFT1731、nチャネル型TFT1732が形成される。上記作製工程において、エッチバック法の条件を適宜変更し、サイドウォールのサイズを調整することで、LDD長0.2μm〜2μmのTFTを形成することができる。さらに、この後、TFT1730〜1732を保護するためのパッシベーション膜を形成しても良い。
次いで、図16(A)に示すように、TFT1730〜1732を覆うように、第1の層間絶縁膜1733を形成する。さらに、第1の層間絶縁膜1733上に、第2の層間絶縁膜1734を形成する。なお、第1の層間絶縁膜1733又は第2の層間絶縁膜1734と、後に形成される配線を構成する導電材料等との熱膨張率の差から生じる応力によって、第1の層間絶縁膜1733又は第2の層間絶縁膜1734の膜剥がれや割れが生じるのを防ぐために、第1の層間絶縁膜1733又は第2の層間絶縁膜1734中にフィラーを混入させておいても良い。
次いで、図16(A)に示すように、第1の層間絶縁膜1733、第2の層間絶縁膜1734及びゲート絶縁膜1708にコンタクトホールを形成し、TFT1730〜1732に接続する配線1735〜1739を形成する。なお、配線1735、1736はnチャネル型TFT1730の高濃度不純物領域1727に、配線1736、1737はpチャネル型TFT1731の高濃度不純物領域1720に、配線1738、1739はnチャネル型TFT1732の高濃度不純物領域1728に、それぞれ接続されている。さらに配線1739は、nチャネル型TFT1732のゲート電極1711にも接続されている。nチャネル型TFT1732は、乱数ROMのメモリ素子として用いることができる。
次いで、図16(B)に示すように、配線1735〜1739を覆うように、第2の層間絶縁膜1734上に第3の層間絶縁膜1741を形成する。第3の層間絶縁膜1741は、配線1735が一部露出する様な位置に開口部を有するように形成する。なお、第3の層間絶縁膜1741は、第1の層間絶縁膜1733と同様の材料を用いて形成することが可能である。
次に、第3の層間絶縁膜1741上にアンテナ1742を形成する。アンテナ1742は、Ag、Au、Cu、Pd、Cr、Mo、Ti、Ta、W、Al、Fe、Co、Zn、Sn、Niなどの金属、金属化合物を1つまたは複数有する導電材料を用いることができる。そしてアンテナ1742は、配線1735と接続されている。なお、図16(B)では、アンテナ1742が配線1735と直接接続されているが、本発明の無線ICタグはこの構成に限定されない。例えば別途形成した配線を用いて、アンテナ1742と配線1735とを電気的に接続するようにしても良い。
アンテナ1742は印刷法、フォトリソグラフィ法、蒸着法または液滴吐出法などを用いて形成することができる。図16(B)では、アンテナ1742が単層の導電膜で形成されているが、複数の導電膜が積層されたアンテナ1742を形成することも可能である。例えば、Niなどで形成した配線に、Cuを無電解めっきでコーティングして、アンテナ1742を形成しても良い。なお液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を細孔から吐出して所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。また印刷法にはスクリーン印刷法、オフセット印刷法などが含まれる。印刷法、液滴吐出法を用いることで、露光用のマスクを用いずとも、アンテナ1742を形成することが可能になる。また、液滴吐出法、印刷法だと、フォトリソグラフィ法と異なり、エッチングにより除去されてしまうような材料の無駄がない。また高価な露光用のマスクを用いなくとも良いので、無線ICタグの作製に費やされるコストを抑えることができる。
液滴吐出法または各種印刷法を用いる場合、例えば、CuをAgでコートした導電粒子なども用いることが可能である。なお液滴吐出法を用いてアンテナ1742を形成する場合、アンテナ1742の密着性が高まるような処理を、第3の層間絶縁膜1741の表面に施すことが望ましい。密着性を高めることができる方法として、具体的には、例えば触媒作用により導電膜または絶縁膜の密着性を高めることができる金属または金属化合物を第3の層間絶縁膜1741の表面に付着させる方法、形成される導電膜または絶縁膜との密着性が高い有機系の絶縁膜、金属、金属化合物を第3の層間絶縁膜1741の表面に付着させる方法、第3の層間絶縁膜1741の表面に大気圧下または減圧下においてプラズマ処理を施し、表面改質を行なう方法などが挙げられる。
第3の層間絶縁膜1741に付着させる金属または金属化合物が導電性を有する場合、アンテナの正常な動作が妨げられないように、そのシート抵抗を制御する。具体的には、導電性を有する金属または金属化合物の平均の厚さを、例えば1〜10nmとなるように制御したり、これらの金属または金属化合物を酸化により部分的に、または全体的に絶縁化したりすれば良い。或いは、密着性を高めたい領域以外は、付着した金属または金属化合物をエッチングにより選択的に除去しても良い。また金属または金属化合物を、予め基板の全面に付着させるのではなく、液滴吐出法、印刷法、ゾル−ゲル法などを用いて特定の領域にのみ選択的に付着させても良い。なお金属または金属化合物は、第3の層間絶縁膜1741の表面において完全に連続した膜状である必要はなく、ある程度分散した状態であっても良い。
そして、図17(A)に示すように、アンテナ1742を形成した後、アンテナ1742を覆うように、第3の層間絶縁膜1741上に保護層1745を形成する。保護層1745は、後に剥離層1701をエッチングにより除去する際に、アンテナ1742を保護することができる材料を用いる。例えば、水またはアルコール類に可溶なエポキシ系、アクリレート系、シリコン系の樹脂を全面に塗布することで保護層1745を形成することができる。
次いで、図17(B)に示すように、無線ICタグを個別に分離するために溝1746を形成する。溝1746は、剥離層1701が露出する程度であれば良い。溝1746の形成は、ダイシング、スクライビングなどを用いることができる。なお、第1の基板1700上に形成されている無線ICタグを分離する必要がない場合、必ずしも溝1746を形成する必要はない。
次いで、図17(C)に示すように、剥離層1701をエッチングにより除去する。ここでは、エッチングガスとしてフッ化ハロゲンを用い、このガスを溝1746から導入する。例えばClF3(三フッ化塩素)を用い、温度を350℃とし、流量を300sccmとし、気圧を798パスカル(798Pa)とし、処理時間を3時間とした条件で行う。また、ClF3ガスに窒素を混ぜたガスを用いても良い。ClF3等のフッ化ハロゲンを用いることで、剥離層1701が選択的にエッチングされ、第1の基板1700をTFT1730〜1732から剥離することができる。なおフッ化ハロゲンは、気体であっても液体であってもどちらでも良い。
次に図18(A)に示すように、剥離されたTFT1730〜1732及びアンテナ1742を、接着剤1750を用いて第2の基板1751に貼り合わせる。接着剤1750は、第2の基板1751と下地絶縁膜1702とを貼り合わせることができる材料を用いる。接着剤1750は、例えば反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤等の光硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。
なお、第2の基板1751として、フレキシブルな紙またはプラスチックなどの有機材料を用いることができる。
次いで、図18(B)に示すように、保護層1745を除去した後、アンテナ1742を覆うように接着剤1752を第3の層間絶縁膜1741上に塗布し、カバー材1753を貼り合わせる。カバー材1753は第2の基板1751と同様に、フレキシブルな紙またはプラスチックなどの有機材料を用いることができる。接着剤1752の厚さは、例えば10〜200μmとすれば良い。
また接着剤1752は、カバー材1753と第3の層間絶縁膜1741及びアンテナ1742とを貼り合わせることができる材料を用いる。接着剤1752は、例えば反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤等の光硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。
上述した各工程を経て、無線ICタグが完成する。上記作製方法によって、トータルの膜厚が0.3μm以上3μm以下、代表的には2μm程度の飛躍的に薄い集積回路を第2の基板1751とカバー材1753との間に形成することができる。
なお、集積回路の厚さは、半導体素子自体の厚さのみならず、接着剤1750と接着剤1752との間に形成された各種絶縁膜及び層間絶縁膜の厚さを含めるものとする。また、無線ICタグが有する集積回路の占める面積を、5mm四方(25mm2)以下、より望ましくは0.3mm四方(0.09mm2)〜4mm四方(16mm2)程度とすることができる。
なお、本実施の形態では、耐熱性の高い第1の基板1700と集積回路の間に剥離層を設け、エッチングにより剥離層を除去することで基板と集積回路とを剥離する方法について示したが、本発明の無線ICタグの作製方法は、この構成に限定されない。例えば、耐熱性の高い基板と集積回路の間に金属酸化膜を設け、この金属酸化膜を結晶化により脆弱化して集積回路を剥離しても良い。或いは、耐熱性の高い基板と集積回路の間に、水素を含む非晶質半導体膜を用いた剥離層を設け、レーザビームの照射によりこの剥離層を除去することで基板と集積回路とを剥離しても良い。あるいは、集積回路が形成された耐熱性の高い基板を機械的に削除または溶液やガスによるエッチングで除去することで集積回路を基板から切り離しても良い。
なお、本実施の形態では、アンテナを集積回路と同じ基板上に形成している例について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。別の基板上に形成したアンテナと集積回路とを、後に貼り合わせることで、電気的に接続するようにしても良い。
なお、一般的にRFID(無線認証、Radio Frequency Identification)で用いられている電波の周波数は、13.56MHz、2.45GHzが多く、これらの周波数の電波を検波できるように無線ICタグを形成することが、汎用性を高める上で非常に重要である。
本実施の形態の無線ICタグでは、半導体基板を用いて形成されたRFIDよりも電波が遮蔽されにくく、電波の遮蔽により信号が減衰するのを防ぐことができるというメリットを有している。よって、半導体基板を用いずに済むので、無線ICタグのコストを大幅に低くすることができる。
なお、本実施の形態では、集積回路を剥離して、可撓性を有する基板に貼り合わせる例について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えばガラス基板のように、集積回路の作製工程における熱処理に耐えうるような、耐熱温度を有している基板をICタグ中に用いる場合、必ずしも集積回路を剥離する必要はない。
本実施の形態において、複数の線状ビームの照射位置の調整をレーザ発振器の移動により行っているため、各線状ビームの照射位置のずれを修正するために光学系の調整を行う必要がなくなり、各線状ビームの照射位置の調整が極めて容易になる。従って、メンテナンスに要する時間を著しく短縮でき、生産性の向上につながる。また、レーザ発振器を移動することで照射位置を調整するため、線状ビームの照射位置の微調整が可能となる。従って、レーザが照射されない領域やレーザが重なって照射されてしまう領域の発生を防ぐことができる。本実施の形態のTFTの作製方法を用いることで、TFTの生産性及び歩留まりを向上することができる。
(実施の形態5)
本発明により、基板全面を均一にアニールすることができるため、半導体装置の生産性、集積度の向上が可能となる。さらに、一度の走査で同一基板上に異なる出力のレーザを照射することが可能となるため、半導体装置のレイアウトや大きさの自由度を高くすることや、集積度を向上することが可能となる。また、基板のどの部分においても同一のレーザで結晶化された部分の結晶化度は同じであるため、製作した半導体装置の製品品質は良好な状態であり、その製品品質のばらつきをなくすことが可能になる。本発明の半導体装置を用いることで電子機器をスループット良く、良好な品質で作製することが可能になる。その具体例を図を用いて説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせて用いることができる。
図19(A)は表示装置であり、筐体2201、支持台2202、表示部2203、スピーカー部2204、ビデオ入力端子2205などを含む。表示部2203は、薄膜トランジスタで画素を構成するものであり、薄膜トランジスタは実施の形態3と同様の方法で作製される。それにより、半導体膜にレーザの回折による縞が生じることなく結晶領域の面積を増やし、かつ結晶性不良領域の面積を少なくすることが可能となり、表示装置の生産性を向上させることができる。さらに、本発明は、大面積基板のレーザ照射処理を効率よく行うことができるため、表示装置の生産性を向上させることができる。よって、大画面の表示装置の生産コストの削減に寄与することができる。また、表示装置はメモリ、駆動回路部等を有していてもよく、本発明の半導体装置をメモリ、駆動回路部等に適用してもよい。なお表示装置として、液晶の電気光学効果を利用した液晶表示装置、エレクトロルミネセンス等の発光材料を用いた表示装置、電子源素子を用いた表示装置、場の印加により反射率が変化するコントラスト媒体(電子インクとも呼ばれる)を用いた表示装置など、薄膜トランジスタと各種表示媒体を組み合わせた様々なものが含まれる。利用形態として、コンピュータ用、テレビジョン用、電子書籍等の情報表示機器用、広告表示用若しくは案内表示用など全ての情報表示用機器が含まれる。
図19(B)はコンピュータであり、筐体2211、表示部2212、キーボード2213、外部接続ポート2214、ポインティングマウス2215などを含む。表示部2212やコンピュータに付随するCPU、メモリ、駆動回路部などに薄膜トランジスタを有する。本発明のレーザ照射装置を用いて作製された薄膜トランジスタを、表示部2212やコンピュータに付随するCPU、メモリ、駆動回路部などに用いることで、品質が向上し、品質のばらつきを少なくすることができる。
また、図19(C)は携帯電話機であり、携帯端末の1つの代表例である。この携帯電話機は筐体2221、表示部2222、操作キー2223などを含む。表示部2222や携帯電話機に付随するCPU、メモリなどの機能回路部に薄膜トランジスタを有する。本発明のレーザ照射装置を用いて作製された薄膜トランジスタを、表示部2222や携帯電話機に付随するCPU、メモリなどの機能回路部に用いることで、品質が向上し、品質のばらつきを少なくすることができる。本発明のレーザ照射装置を用いて作製された半導体装置は、上記の携帯電話を初めとして、PDA(Personal Digital Assistants、情報携帯端末)、デジタルカメラ、小型ゲーム機などの電子機器に用いることができる。
また、図19(D)、(E)はデジタルカメラである。なお、図19(E)は、図19(D)の裏側を示す図である。このデジタルカメラは、筐体2231、表示部2232、レンズ2233、操作キー2234、シャッター2235などを有する。表示部2232や表示部2232を制御する駆動回路部などに薄膜トランジスタを有する。本発明のレーザ照射装置を用いて作製された薄膜トランジスタを、表示部2232や表示部2232を制御する駆動回路部、及び他の回路などに用いることで、品質が向上し、品質のばらつきを少なくすることができる。
図19(F)はデジタルビデオカメラである。このデジタルビデオカメラは、本体2241、表示部2242、筐体2243、外部接続ポート2244、リモコン受信部2245、受像部2246、バッテリー2247、音声入力部2248、操作キー2249、接眼部2250などを有する。表示部2242を制御する駆動回路部などに薄膜トランジスタを有する。本発明のレーザ照射装置を用いて作製された薄膜トランジスタを、表示部2242を制御する駆動回路部、及び他の回路などに用いることで、品質が向上し、品質のばらつきを少なくすることができる。
また、本発明のレーザ処理装置を用いて作製した薄膜トランジスタを薄膜集積回路、または非接触型薄膜集積回路装置(無線ICタグ、RFID(無線認証、Radio Frequency Identification)とも呼ばれる)として用いることもできる。他の実施の形態で示した作製方法を用いることにより作製された薄膜集積回路および非接触型薄膜集積回路は、タグやメモリに用いることができる。
図20(A)は、パスポート2301に無線ICタグ2302を貼り付けている状態を示している。また、パスポート2301に無線ICタグ2302を埋め込んでもよい。同様にして、運転免許証、クレジットカード、紙幣、硬貨、証券、商品券、チケット、トラベラーズチェック(T/C)、健康保険証、住民票、戸籍謄本などに無線ICタグを貼り付けたり埋め込むことができる。この場合、本物であることを示す情報のみを無線ICタグに入力しておき、不正に情報を読み取ったり書き込んだりできないようにアクセス権を設定する。このようにタグとして利用することによって、偽造されたものと区別することが可能になる。
このほかに、無線ICタグをメモリとして用いることも可能である。図20(B)は、無線ICタグ2311を野菜の野菜の包装に貼り付けるラベルに埋め込んだ例を示している。また、包装そのものに無線ICタグを貼り付けたり埋め込んだりしても構わない。無線ICタグ2311には、生産地、生産者、製造年月日、加工方法などの生産段階のプロセスや、商品の流通プロセス、価格、数量、用途、形状、重量、賞味期限、各種認証情報などを記録することが可能になる。無線ICタグ2311からの情報は、無線式のリーダ2312のアンテナ部2313で受信して読み取り、リーダ2312の表示部2314に表示することによって、卸売業者、小売業者、消費者が把握することが容易になる。また、生産者、取引業者、消費者のそれぞれに対してアクセス権を設定することによって、アクセス権を有しない場合は読み込み、書き込み、書き換え、消去ができない仕組みになっている。
また、無線ICタグは以下のように用いることができる。会計の際に無線ICタグに会計を済ませたことを記入し、出口にチェック手段を設け、会計済みであることを無線ICタグに書き込まれているかをチェックする。会計を済ませていないで店を出ようとすると、警報が鳴る。この方法によって、会計のし忘れや万引きを予防することができる。
さらに、顧客のプライバシー保護を考慮すると、以下に記す方法にすることも可能である。レジで会計をする段階で、(1)無線ICタグに入力されているデータを暗証番号などでロックする、(2)無線ICタグに入力されているデータそのものを暗号化する、(3)無線ICタグに入力されているデータを消去する、(4)無線ICタグに入力されているデータを破壊する、のいずれかを行う。そして、出口にチェック手段を設け、(1)〜(4)のいずれかの処理が行われたか、または無線ICタグのデータに何も処理が行われていない状態であるかをチェックすることによって、会計の有無をチェックする。このようにすると、店内では会計の有無を確認することが可能であり、店外では所有者の意志に反して無線ICタグの情報を読み取られることを防止することができる。
なお、(4)の無線ICタグに入力されているデータを破壊する方法をいくつか挙げることができる。例えば、(a)無線ICタグが有する電子データの少なくとも一部に「0(オフ)」若しくは「1(オン)」、または「0」と「1」の両方を書き込んでデータのみを破壊する方法や、(b)無線ICタグに電流を過剰に流し、無線ICタグが有する半導体素子の配線の一部を物理的に破壊する方法などを用いることができる。
以上に挙げた無線タグは、従来用いているバーコードより製造コストが高いため、コスト低減を図る必要がある。本発明を用いることによって、半導体膜の均一なレーザアニールが可能であるため、品質が良好でばらつきのない半導体装置を効率良く作製することができ、コストの低減に有効である。さらに、どの無線タグも品質が高く、性能のばらつきがない信頼性の高い無線タグを製作することができる。
以上のように、本発明により作製された半導体装置の適用範囲は極めて広く、本発明により作製された半導体装置をあらゆる分野の電子機器に用いることができる。