JP2006284231A - 遺伝子断片中のヌクレオチドの種類の特定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】遺伝子断片中のヌクレオチドの種類の特定が、遺伝子の一塩基多型が知られている個所におけるプリン塩基またはピリミジン塩基について、少なくとも2種類の蛍光緩和時定数の異なる色素を用い、検出用DNA配列と被測定DNA配列とをライゲーションし、蛍光発光における蛍光緩和時定数を測定して、被検体DNA配列がホモかヘテロかを検出して一塩基多型の有無を検出する遺伝子断片中のヌクレオチドの種類の特定方法。
【選択図】なし
Description
(1)遺伝子断片中の所定位置における少なくとも一つのヌクレオチドの種類を、担体として粒子を用い変調したレーザ光の照射によって生じる蛍光緩和時定数の測定によって検出することを特徴とする、遺伝子断片中のヌクレオチドの種類の特定方法。
本発明の方法は、遺伝子断片中の所定位置における少なくとも一つのヌクレオチドの種類を検出できるが、特には、固体に固有な相同染色体上の一塩基の違いを簡便に検出する。一塩基多型と呼ばれる相同染色体上の一塩基の違いの組み合わせは、図1に示す、アデニンホモ、へテロ、グアニンホモの3種類となる。一塩基多型の多くは、プリン塩基間(A,G)およびピリミジン塩基間(T,C)でおこり易いので、目的の被測定DNA配列を含む配列の中で、プリン塩基もしくはピリミジン塩基について、ホモかヘテロかを調べることで一塩基多型を検出できる。
本発明の方法に用いる、被測定物質等が結合する担体粒子は、遺伝子断片等のオリゴ−又はポリヌクレオチドをその表面に結合することができるものであれば、特に限定されるものではない。その例を挙げると、有機物粒子、無機物粒子、合成粒子、天然粒子が例示でき、マイクロビーズを含む合成高分子重合体粒子、赤血球、ゼラチン粒子等が挙げられる。
これらの中で、水不溶性水分散型合成高分子重合体粒子が好ましい。水不溶性水分散型合成高分子重合体粒子の具体例としては、ポリスチレン粒子、メタクリル酸トリフルオロエチル等のメタクリル酸フルオロアルキルエステル誘導体の(共)重合体粒子を挙げることができる。
用いる粒子の粒子径は、測定に適切な大きさである限り、特に限定されない。例えば、本発明の方法をフローサイトメータを用いて実施する場合には、通常、その直径が1〜20μmの粒子が好適に用いられる。
粒子は多種類の粒子を混合して用いても、1種類の粒子を用いてもよいが、本発明の方法は、屈折率等の光学的性質が異なる粒子を用いる必要はなく、光学的に実質的に同一である粒子に結合した遺伝子断片中の少なくとも一つのヌクレオチドの種類の違いを検出できる。
その第一の例では、1)個体によりその位置に存在するヌクレオチドの種類が異なることが知られている部分を含む二本鎖の遺伝子断片であって、異なる種類のヌクレオチドをその遺伝子断片のセンス鎖の3'末端付近の突出部位に含む分析対象の遺伝子断片(被測定DNA)を、2)そのアンチセンス鎖の3'末端付近の突出部位のヌクレオチド配列が、分析対象の遺伝子断片のセンス鎖の3'末端付近の突出部位のヌクレオチド配列に相補的である蛍光試薬で標識された二本鎖オリゴヌクレオチド(検出用DNA)と反応させる工程と、3)前記被測定DNAおよび・または検出用DNAを担体粒子に結合させる工程と、4)前記二本鎖オリゴヌクレオチドに結合された蛍光試薬の発する蛍光を測定する工程とを含む。
以下にクラスIIs制限酵素としてBseRI(NewEnglandBioLabs社製)を用いた湯合の例を示す。
分析対象とするDNA中の一塩基多形部より8塩基分、5’上流にCTCCTCという配列その他は分析対象と相補的な配列のプライマーを用いPCRを行う。次ぎにこのPCR産物をBseRIで処理するとその処理物は一塩基多形部を突出末端に含む形で切断される。この断片はTerminal deoxynucleotide transferase(PIERCE社)を用いて,DNAの3’−OH末端にBiotin−N4−CTPを取り込ませてビオチン標識する。一方、検出用配列としては、2塩基の突出末端部分に目的の一塩基多形に対応する配列を有し、その逆側の末端にDIGを標識したオリゴヌクレオチドを用いることができる。2塩基の突出末端部分は合成した長さの違うオリゴヌクレオチドをアニーリングする事で得られる。DIG標織はDIGケミリンクラベリングキット(Rochediagnostics社製)を用いることにより可能である。
上記のBseRIで処理されビオチン標識された断片と検出用配列とをライゲーションする事で、突出未端中の一塩基多形の配列に応じてライゲーションが行われる。ライゲースによる処理の終わったサンプルはストレプトアビジン表面のマイクロビーズ(Polyscience社製)に対して作用させることで検出用配列分析対象の末端に標識されたビオチンとマイクロビーズ表面のストレプトアビジンによる結合によりマイクロビーズ表面に固定化される。このマイクロビーズ由来の蛍光緩和時定数を計測する事で、正確な一塩基多形の計測が行われる。
図2Aは、その表面がストレプトアビジンでコートされた粒子に、そのセンス鎖の5'末端にはビオチンが結合され且つセンス鎖の3'末端はG(この末端はGが突出している)である遺伝子断片(A1)を介して、そのアンチセンス鎖の3'末端はC(この末端はCが突出している)であり且つアンチセンス鎖の5'末端には蛍光色素aが結合された検出用二本鎖オリゴヌクレオチド(D1)が結合する例を示す。
また、図2Bは、その表面がストレプトアビジンでコートされた粒子に、そのセンス鎖の5'末端にはビオチンが結合され且つセンス鎖の3'末端はA(この末端はAが突出している)である遺伝子断片(A2)を介して、そのアンチセンス鎖の3'末端はT(この末端はTが突出している)であり且つアンチセンス鎖の5'末端には蛍光色素bが結合された検出用二本鎖オリゴヌクレオチド(D2)が結合する例を示す。
ここで、分析対象の遺伝子断片と検出用二本鎖オリゴヌクレオチドとを反応させる工程と、分析対象の遺伝子断片(被測定DNA)および・または検出用DNAを担体粒子に結合させる工程は、それぞれ順序を問わない。また、同時に行ってもよい。
上記の例において、一塩基多型が相同染色体上のある位置にあり、従って、相同染色体のいずれもが特定の位置にG(グアニン)を有する固体(Gのホモ体)、いずれもが特定の位置にA(アデニン)を有する固体(Aのホモ体)、及び、相同染色体の一方が特定の位置にGを有し、他方が特定の位置にAを有する固体(ヘテロ体)とが知られている場合には、蛍光色素aに由来する蛍光のみが生ずる場合、蛍光色素bに由来する蛍光のみが生ずる場合、及び蛍光色素aとbとに由来する蛍光が生ずる場合とがある。
なお、蛍光測定法に関しては、後で詳細に述べる。
また、上記の例とは逆に、検出用二本鎖オリゴヌクレオチドが担体粒子に結合し、蛍光色素が結合された分析対象の遺伝子断片が、検出用二本鎖オリゴヌクレオチドに結合するように構成することもできる。そのような場合には、その種類が不明であるヌクレオチドは、センス鎖の5'末端に突出させるか、又はアンチセンス鎖の3'末端に突出させることとなる。
その第二の例では、個体によりその位置に存在するヌクレオチドの種類が異なることが知られている部分を含む二本鎖の遺伝子断片であって、異なる種類のヌクレオチドをその遺伝子断片の3'末端に含む平滑末端の分析対象の遺伝子断片を、平滑末端の二本鎖オリゴヌクレオチドと反応させる工程と、前記分析対象の遺伝子断片を担体粒子に結合させる工程と、前記反応生成物を、遺伝子断片中の異なる種類のヌクレオチドが特定の種類である場合にのみそのヌクレオチド付近で切断をする制限酵素と反応させる工程と、前記二本鎖オリゴヌクレオチドに結合された蛍光試薬の発する蛍光を測定する工程とを含む。
図3は、その表面がストレプトアビジンでコートされた粒子に、そのセンス鎖の5'末端にはビオチンが結合され且つ3'末端はC(センス鎖;アンチセンス鎖はGである)である遺伝子断片(A3)を介して、そのアンチセンス鎖の5'末端には蛍光色素xが結合された検出用二本鎖オリゴヌクレオチド(D3)が結合し(図3工程2))、この反応生成物は、その後HindIIIでは切断されず結合したままである例を示す。
図4は、その表面がストレプトアビジンでコートされた粒子に、そのセンス鎖の5'末端にはビオチンが結合され且つ3'末端はA(センス鎖;アンチセンス鎖はTである)である遺伝子断片(A4)を介して、そのアンチセンス鎖の5'末端には蛍光色素xが結合された検出用二本鎖オリゴヌクレオチド(D3)が結合し(図4工程2))、その後HindIIIで切断される例を示す。
HindIIIによる切断反応終了後、蛍光色素xが結合された未結合の二本鎖オリゴヌクレオチドを除去し、即ち、B/F分離し、その後に粒子に結合した蛍光色素xの発する蛍光を測定してもよい(なお、図4工程3)の例では蛍光は検出されない)し、B/F分離をせずに、粒子に結合した蛍光色素xの発する蛍光と、未結合の蛍光色素xの発する蛍光とを、分別定量してもよい。
なお、蛍光測定法に関しては、後で詳細に述べる。
上記の例とは逆に、検出用二本鎖オリゴヌクレオチドが担体粒子に結合し、蛍光色素が結合された分析対象の遺伝子断片が、検出用二本鎖オリゴヌクレオチドに結合するように構成することもできる。そのような場合には、その種類が不明であるヌクレオチドは、センス鎖の5'末端(アンチセンス鎖の3'末端)に配置される。
本発明においては、分析される二本鎖の遺伝子断片は、遺伝子中のヌクレオチドの種類を検出したい位置が遺伝子断片の末端付近に位置するようなプライマーを用い、PCR法等の方法によって増幅することによって入手する。また、遺伝子断片中において、その種類を特定したいヌクレオチドが一方の鎖の突出端に配置されるようにするには、例えば、長さの違う相補配列のオリゴヌクレオチドをアニーリングする等の方法を採用することができる。
上記において、分析対象の遺伝子断片は、一方の鎖あたり、3〜50000個の、好ましくは10〜5000個の、さらに好ましくは50〜100個のヌクレオチドを含む。
また、検出用二本鎖オリゴ−又はポリヌクレオチドは、一方の鎖あたり4〜30個の、好ましくは8〜16個のヌクレオチドを含む。
検出用オリゴヌクレオチドへの蛍光色素の結合は、例えば、当該オリゴヌクレオチドの一方の末端に官能基を導入しておき、その官能基と、蛍光色素の有する官能基とを化学的に結合させる方法、予め蛍光色素を結合させてあるヌクレオチドを、PCR法で取り込ませる方法で行うことができる。また、分析対象の遺伝子断片への蛍光色素の結合は、例えば、予め蛍光色素を結合させてあるヌクレオチドを、PCR法で取り込ませる方法で行うことができる。
本発明では、複数種類の遺伝子断片、例えば遺伝子断片Iと遺伝子断片II、の各々におけるある位置のヌクレオチドの種類の特定を、同時に行うこともできる。この方法の実施には、上記した方法において、遺伝子断片とある位置のヌクレオチドの種類との組み合わせごとに、異なる蛍光試薬に由来する蛍光を測定できるように、複数の蛍光試薬を使用すればよい。
第三の例では、個体によりその位置に存在するヌクレオチドの種類が異なることが知られている部分を含む分析対象の一本鎖の遺伝子断片を、当該遺伝子断片中のその種類を特定すべきヌクレオチドを含む1〜60個の、好ましくは10〜60個のヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を有する検出用一本鎖オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせ、次いで、前記分析対象の遺伝子断片を担体粒子に結合させ、そして、前記一本鎖オリゴヌクレオチドに結合された蛍光試薬の発する蛍光を測定する。
この方法において、その種類を特定すべきヌクレオチドは、一つであってもよいし、二つ以上であってもよい。二つ以上である場合、それらのヌクレオチドは、隣接していてもよいし、若干離れていてもよい。
また、上記方法において、分析対象の遺伝子断片と検出用一本鎖オリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせる工程と、遺伝子断片を担体粒子に結合させる工程は、順序を問わない。また、同時に行ってもよい。
ハイブリダイズ反応終了後、蛍光色素が結合された未結合の一本鎖オリゴヌクレオチドを除去し、即ち、B/F分離し、その後に粒子に結合した蛍光色素の発する蛍光を測定してもよいし、B/F分離をせずに、粒子に結合した蛍光色素の発する蛍光と、未結合の蛍光色素の発する蛍光とを、分別定量してもよい。
本発明においては、分析される一本鎖の遺伝子断片は、例えば、asymmetric PCR、RNA polymerase、PCRと変性、ExoIII等の酵素によって片鎖のみを消化する等の方法で調製される。
粒子と分析対象の遺伝子断片又は一本鎖オリゴ−又はポリヌクレオチドとの結合は、公知の方法によることができる。
検出用オリゴヌクレオチドへの蛍光色素の結合は、例えば、当該オリゴヌクレオチドの一方の末端に官能基を導入しておき、その官能基と、蛍光色素の有する官能基とを化学的に結合させる方法、予め蛍光色素を結合させてあるヌクレオチドを、PCR法で取り込ませる方法で行うことができる。また、分析対象の遺伝子断片への蛍光色素の結合は、例えば、予め蛍光色素を結合させてあるヌクレオチドを、PCR法で取り込ませる方法で行うことができる。
次に、本発明における蛍光測定法について説明する。
本発明では、特に蛍光色素のB/F分離をした場合には、通常の蛍光強度測定法で粒子に結合した蛍光色素による蛍光を測定するのみで、遺伝子断片中のヌクレオチドの種類を特定することができる場合もある。しかし、本発明においては、バックグラウンド蛍光の影響を最小限にするため、B/F分離を行わずに所望の蛍光(一種類とは限らない)を測定するため、あるいは複数種類の蛍光色素によって発せられた蛍光を測定するため、励起光としてレーザ光を用い、且つ、そのレーザ光を変調させて蛍光色素に照射して、生じた蛍光を測定、解析することが好ましい。
レーザ光の具体例としては、半導体レーザ光やガスレーザ光が挙げられる。また、レーザ光は単色光であってもよいし、複数種類の波長のレーザ光をレンズを通過させることによって光路中の所定の位置に集束させたものであってもよい。レーザ光の出力は、例えば5〜100mW程度である。
レーザ光の変調方法としては、高周波重畳変調、パルス変調、多値パルス変調、正弦波変調及びリニア変調等が知られているが、本発明では、正弦波変調を採用することが好ましい。
また、正弦波変調されたレーザ光を蛍光色素に照射し、生じた蛍光の蛍光緩和時定数から、目的とする蛍光を特定し、定量することが好ましい。これにより、検出の精度が高まるとともに、検出又は分析対象が複数であっても、同時に各々を分別して測定することができる。
以下、本発明の方法で採用することができる各種蛍光測定法の中で、フローサイトメータを用いた測定について、詳細に説明する。
図5は、本発明の方法中、蛍光測定工程に使用することができるフローサイトメータ10の概略構成図である。
フローサイトメータ10は、レーザ光を変調してマイクロビーズに照射し、その蛍光緩和時定数を測定するものである。
フローサイトメータ10は、レーザ光を測定対象とするマイクロビーズ12に照射し、マイクロビーズ12に結合した蛍光色素(一種類であるとは限らない)の発する蛍光の光信号、及び場合によってはマイクロビーズ12に結合していない蛍光色素(一種類であるとは限らない)の発する蛍光の光信号をも検出し、信号処理する信号処理装置(蛍光検出装置)20と、信号処理装置20で得られた処理結果からマイクロビーズ12に結合した蛍光色素に由来する蛍光を解析する分析装置50とを有する。
信号処理装置20は、レーザ光源部22と、受光部24,26と、レーザ光源部22のレーザ光の出射のオン/オフを制御する光源制御部及びマイクロビーズ12に結合した蛍光色素が発する蛍光の光信号と、マイクロビーズ12に結合していない蛍光色素が発する蛍光の光信号とを識別する信号処理部を含んだ制御・処理部28と、励起光の照射や蛍光の検出のために、高速流を形成するシース液に含ませてマイクロビーズ12を流したフローセルを有する管路30と、を有する。管路30の出口には、回収容器32が設けられている。
レーザ光源部22は、波長の異なる3つのレーザ光、例えばλ1=405nm、λ2=533nm及びλ3=650nm等のレーザ光を出射する部分である。レーザ光は、管路30中の所定の位置に集束するようにレンズ系が設けられ、この集束位置でマイクロビーズ12の測定点を形成する。
レーザ光源部22は、350nm〜800nmの可視光のパルスレーザ光を出射する部分で、主に赤色のレーザ光Rを極めて短時間のパルス幅でパルスレーザ光として断続的に出射するR光源22r、緑色のレーザ光Gを極めて短時間のパルス幅でパルスレーザ光として断続的に出射するG光源22g及び青色のレーザ光Bを極めて短時間のパルス幅でパルスレーザ光として出射するB光源22bと、特定の波長帯域のレーザ光を透過し、他の波長帯域のレーザ光を反射するダイクロイックミラー23a1,23a2と、レーザ光R,G及びBからなるレーザ光を管路30中の測定点に集束させるレンズ系23cと、を有して構成される。
パルスレーザ光のパルス幅は、蛍光色素の発する蛍光をバックグラウンドノイズと区別して効率よく検出できるように設定され、例えば0.5ナノ秒〜4ナノ秒である。
ダイクロイックミラー23a1は、レーザ光Rを透過し、レーザ光Gを反射するミラーであり、ダイクロイックミラー23a2は、レーザ光R及びGを透過し、レーザ光Bを反射するミラーである。
この構成によりレーザ光R,G及びBが合成されて、測定点のマイクロビーズ12を照射する照射光となる。
R光源22r、G光源22g及びB光源22bは、それぞれレーザドライバ34r,34g及び34bによって駆動される。このレーザドライバ34r,34g及び34bは、制御・処理部28に接続されて、レーザ光R,G,Bの出射のオン/オフが制御されるように構成される。ここで、レーザ光R,G,Bの各々は、後述するように制御信号によって出射のオン/オフが制御されて変調される。
R光源22r、G光源22g及びB光源22bは、レーザ光R、G及びBが蛍光色素を励起して特定の波長帯域の蛍光を発するように、予め定められた波長帯域で発振する。レーザ光R、G及びBによって励起される蛍光色素には、マイクロビーズ12に結合されているものと結合されていないものとがあるが、それらは、管路30を通過する際、測定点でレーザ光R、G及びBの照射を受けて特定の波長で蛍光を発する。
受光部24は、管路30を挟んでレーザ光源部22と対向するように配置されており、測定点を通過するマイクロビーズ12によってレーザ光が前方散乱することによりマイクロビーズ12が測定点を通過する旨の検出信号を出力する光電変換器を備える。この受光部24から出力される信号は、制御・処理部28に供給され、制御・処理部28においてマイクロビーズ12が管路30中の測定点を通過するタイミングを知らせるトリガ信号として用いられる。
一方、受光部26は、レーザ光源部22から出射されるレーザ光の出射方向に対して垂直方向であって、かつ管路30中のマイクロビーズ12の移動方向に対して垂直方向に配置されており、測定点にて照射されたマイクロビーズ12に結合した蛍光色素やマイクロビーズ12に結合していない蛍光色素の発する蛍光を電気信号に変える光電変換器を備える。
図8に示す受光部26は、マイクロビーズ12に結合した蛍光色素やマイクロビーズ12に結合していない蛍光色素が発する蛍光の光信号を集束させるレンズ系26aと、ダイクロイックミラー26b1,26b2と、バンドパスフィルタ26c1〜26c3と、光電子倍増管等の光電変換器27a〜27cと、を有する。
レンズ系26aは、受光部26に入射した光信号を光電変換器27a〜27cの受光面に集束させるように構成されている。
ダイクロイックミラー26b1,26b2は、所定の範囲の波長帯域の蛍光を反射させて、それ以外は透過させるミラーである。バンドパスフィルタ26c1〜26c3でフィルタリングして光電変換器27a〜27cで所定の波長帯域の蛍光の光信号を取り込むように、ダイクロイックミラー26b1,26b2の反射波長帯域及び透過波長帯域が設定されている。
バンドパスフィルタ26c1〜26c3は、各光電変換器27a〜27cの受光面の前面に設けられ、所定の波長帯域の蛍光のみを透過させる。透過する蛍光の波長帯域は、図7に示す蛍光色素の発する蛍光の波長帯域に対応して、すなわち、マイクロビーズ12に結合した蛍光色素の発する蛍光及びマイクロビーズ12に結合していない蛍光色素の発する蛍光に対応して、予め設定されており、例えばB光源から出射した波長λ11のレーザ光の照射によって発する波長λ12を中心とする一定の波長幅の帯域である。
バンドパスフィルタ26c1〜26c3の波長帯域は、例えば、それらの中の一つは、マイクロビーズ12に結合している蛍光色素の発する蛍光を透過し、他の二つのうち少なくとも一つは、マイクロビーズ12に結合していない蛍光色素の発する蛍光を透過するように波長帯域が設定される。
制御・処理部28は、図9に示すように、レーザ光源部22のレーザ光の出射のオン/オフを制御する光源制御部28a、及びマイクロビーズ12に結合した蛍光色素やマイクロビーズ12に結合していない蛍光色素の発する蛍光の光信号を識別する信号処理部28bを有して構成されている。
光源制御部28aは、受光部24から出力される検出信号がトリガ信号として入力されると、瞬時にレーザ光の出射のオン/オフを制御するパルス制御信号を生成するように構成される。
光源制御部28aは、このパルス制御信号を巡回的に繰り返し生成し、レーザドライバ34r、レーザドライバ34g、レーザドライバ34bの制御信号として供給する。
制御・処理部28は、光源制御部28aにおけるコードの生成のタイミングに同期して一定のクロック信号で駆動して、受光信号のA/D変換を行うA/D変換器28c及び一定のクロック信号で駆動して受光信号に所定の演算処理を施す演算処理部28dを備える。
A/D変換器28cは、受光部26の光電変換器27a〜27cで生成されて増幅された受光信号をA/D変換によりサンプリングする。サンプリングされた受光信号は演算処理部28dにて演算処理に供される。
演算処理部28dは、パルス制御信号の生成のタイミングに同期して受光信号の演算処理を行うように構成され、受光部26から出力された受光信号を、パルス制御信号の生成のタイミングに同期して時系列データとすることにより、レーザ光の照射に対するマイクロビーズ12に結合した蛍光色素の蛍光緩和特性(図11参照)を求める部分である。
蛍光緩和時定数は、蛍光強度とは独立したパラメータである。蛍光緩和時定数は、蛍光の減衰曲線から推測される消長時間を示すパラメータであり、この値が大きいほど、蛍光の消長時間は長くなる。この蛍光の消長時間は、蛍光試薬により異なるため、目的配列に応じて検出用オリゴ−又はポリヌクレオチドに蛍光緩和時定数の異なる蛍光試薬を結合させ、蛍光緩和時定数を測定すれば、特定の蛍光試薬で標識された検出用オリゴ−又はポリヌクレオチドと結合した遺伝子断片の種類が判明するとともに、測定雰囲気中に存在する物質によって発せられる蛍光と区別することが可能となる。これにより、分析対象の遺伝子中の特定位置のヌクレオチドの種類が精度よく特定できる。
本発明における蛍光緩和時定数は、蛍光試薬に、周波数変調をした励起光を照射し、その励起光源と生じた蛍光とを検出した後、復調をすることで測定される。
この蛍光緩和時定数が互いに異なる二種類の蛍光色素をごく近くに存在させるようにして測定したとき、蛍光緩和時定数は、それら二種類の蛍光色素の各々が示す蛍光緩和時定数とは異なる数値を示す。これは、二種類の蛍光色素が互いに作用し合い、異なる蛍光緩和特性を作り出すためである。
Q-dot525の基準濃度を20nMとした溶液Aと、Cascade Blue の基準濃度を20μMとした溶液Bを、下記の比率で混合して、直径1.5m、深さ3mmのスポットサンプル収納部分にサンプル溶液1〜9を作製したものである。
図12は、このとき発する蛍光の位相遅れを示すグラフである。このグラフによると、位相遅れは蛍光緩和時定数に応じて変化し、しかも、溶液Aと溶液Bの比率の順序に対応している。このことから、蛍光色素の存在比率によって、蛍光緩和時定数が変化することがわかる。このように、異なる二種類の蛍光色素がその比率を変えて存在すると、蛍光緩和時定数が変化する。
分析装置50は、制御・処理部28から供給される識別結果の情報を用いて、マイクロビーズ12に結合する蛍光色素、ひいては分析対象の遺伝子断片の特定部位に存在するヌクレオチドの種類を特定する装置である。分析装置50では、使用した蛍光色素の種類が既知であり、この蛍光色素が励起されるレーザ光の波長帯域もわかっているので、制御・処理部28から供給される情報を用いて、マイクロビーズ12に結合する蛍光色素、ひいては分析対象の遺伝子断片の特定部位に存在するヌクレオチドの種類を特定することができる。
こうして、分析装置50は短時間に分析をすることができる。
フローサイトメータ10は以上のように構成される。
遺伝子断片あるいは検出用二本鎖オリゴ−又はポリヌクレオチドに結合される蛍光色素(これは、遺伝子断片あるいは検出用二本鎖オリゴ−又はポリヌクレオチドを介してマイクロビーズに結合され得る)は、二種類以上を使用する場合には蛍光緩和時定数が異なるものが選択される。このため、蛍光色素の蛍光緩和時定数が既知となると、マイクロビーズ12に結合した遺伝子断片の特定個所のヌクレオチドの種類を特定することができる。
制御・処理装置28では、マイクロビーズ12が通過するときの検出信号をトリガ信号とし、このトリガ信号に同期して、図10に示すようなパルス変調信号を生成する。このパルス変調信号は、レーザ光源部22からのレーザ光の出射のオン/オフを制御する制御信号として用いるために、レーザドライバ34r,34g,34bに供給される。
レーザ光源部22では、この制御信号に従って各レーザ光の出射のオン/オフが制御され、レーザ光が出射される。このレーザ光は測定点を通過するマイクロビーズ12に結合した蛍光色素(B/F分離していない場合にはマイクロビーズ12に結合していない蛍光色素も)を励起させるために用いられ、このレーザ光の照射により蛍光色素が発する蛍光は、受光部26にて受光される。その際、蛍光色素からの蛍光は、変調されたレーザ光に励起されて生じるため、レーザ光の変調に対応して蛍光強度も変調する。
ここで、パルス変調されるレーザ光は、マイクロビーズ12が測定点を通過する数μ〜数10μ秒の間に、0.510μ秒を1周期とする、一連のパルス変調の制御信号が数回〜数10回、断続的に巡回される。
受光部26の光電変換器27a〜27cで受光されて出力される受光信号は、A/D変換器28cにおいて受光部24から出力されたトリガ信号のタイミングで同期が取られ、生成されたパルス変調信号の時間分解幅Δtと同じ時間分解幅で、受光信号のサンプリングが行われる。サンプリングは、例えば8ビットのサンプリング(0〜255の階調のサンプリング)である。
この蛍光緩和特性の波形において、最大となる蛍光強度に対して、蛍光強度が37%=1/eになる時間が蛍光緩和時定数として求められる。励起光の強度を正弦波で変化させると、検出される蛍光は減衰する時間の分だけ遅れが生じるようになる(位相差ψ図11B参照)。位相差と周波数との関係から蛍光緩和時定数を求める。この蛍光緩和時定数の値から、マイクロビーズ12に結合した蛍光色素の種類が特定される。
なお、光電変換器27a〜27cは、バンドパスフィルタ26c1〜26c3により波長帯域別に受光して受光信号を出力するので、受光信号がどの波長帯域の蛍光の信号なのかを知ることもできる。したがって、マイクロビーズ12に結合した蛍光色素から発せられた蛍光の蛍光緩和時定数と波長帯域とを用いて、蛍光色素の種類をより正確に識別することができる。
上述したフローサイトメータ10は、レーザ光を変調してマイクロビーズ12に結合した蛍光色素に照射することで、蛍光緩和時定数を計測するものであるが、レーザ光の強度を所定の周波数で変調してマイクロビーズに照射して、蛍光緩和時定数を計測するものであってもよい。以下、この方法について説明する。
例えば、波長405nmのレーザ光の強度を20MHzで変調し、このレーザ光をフローセル中の測定点を通過するマイクロビーズに照射する。変調した光の照射に対して発する蛍光を光電変換器等で受光する。
抽出されたsin成分及びcos成分の信号を用いて、蛍光信号の、変調信号に対する位相ずれ角度(位相遅れ角度)を求めることができる。
求められた位相ずれ角度は、蛍光色素の発する蛍光の蛍光緩和時定数に依存しており、例えば一次緩和過程で表した場合、cos成分及びsin成分は、下記式(1),(2)で表される。
cos(θ)=1/(1+(ωτ)2)(1/2) (1)
sin(θ)=ωτ/(1+(ωτ)2)(1/2) (2)
ここで、θは位相ずれ角度であり、ωはレーザ光の変調周波数であり、τは蛍光緩和時定数である。
蛍光信号のcos成分及びsin成分の比から求められる位相ずれ角度θを用いて、上記式(1)、(2)から、蛍光緩和時定数τを求めることができる。
このように、蛍光色素が結合されたマイクロビーズに、所定の周波数で強度変調したレーザ光を照射し、そのとき発する蛍光を計測することにより、発する蛍光の種類を識別することができ、これにより、マイクロビーズに結合した遺伝子断片の特定個所のヌクレオチドの種類を識別することができる。
このようなマイクロビーズは、上記実施形態のようなフローサイトメータに使用されるが、フローサイトメータに使用が限定されるわけではない。
しかし、フローサイトメータでは、マイクロビーズ12に結合された蛍光色素の蛍光緩和時定数を求めることで、蛍光色素の種類を的確に識別することが可能であるから、本発明方法における蛍光測定工程には、フローサイトメータを好適に用いることができる。
以上、本発明にかかる遺伝子断片中のヌクレオチドの種類の特定方法中、特定の態様について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
DIG標識二本鎖DNAには、Q−Dot655(QuantumDot社製)を結合させた。具体的には、DIG標識二本鎖DNAに、抗DIG抗体が表面コートされたQ−Dot655を加え、25℃にて30分間反応させた。反応液中において、Q−Dot655が1pmol、DIG標識二本鎖DNAが4pmol、10倍濃度の結合用Tris−HCl(10mM)緩衝液(EDTAを1mM、NacClを100mM濃度で含有、pH7.5)が1倍濃度となるように、これらを混合する際に蒸留水も添加した。反応終了後、MicroconYM−30(Milipore)社製)を用い、反応混液の溶媒をTE緩衝液(Tris−HClを10mM、EDTAを1mM濃度で含有、pH8.0)で置換した。その際、DNA濃度は2.5μMとなるように調整した。このように調製されたDNAを、グアニン検出用二本鎖DNAという。
これらのビオチンが結合された二本鎖DNAは、分析対象の遺伝子断片を模したものであり、以下においては、末端にグアニンを有する二本鎖DNAを「グアニン含有試験用二本鎖DNA」、末端にアデニンを有する二本鎖DNAを「アデニン含有試験用二本鎖DNA」という。ビオチンの標識はTerminal deoxynucleotide transferase(PIERCE社)を用いて、DNAの3’−OH末端にBiotin−N4−CTPを取り込ませてビオチン標識した((株)日本バイオサービスに依頼)。
また、同様に、図15(1)及び図16(1)に示されるような二本鎖DNAも調製した((株)日本バイオサービス他に依頼)。
上記ライゲーション反応の間、表面にストレプトアビジンがコートされたマイクロビーズ(DynabeadsM280;Dynal社製)を2倍濃度のBW緩衝液(Tris−HCl(10mM)緩衝液、EDTAを1mM、NaClを2M濃度で含有、pH7.5)で洗浄し、その後、BW緩衝液を用い、マイクロビーズ濃度が出荷時の1/5となるように希釈した。
アニーリング反応後の反応溶液と、希釈されたマイクロビーズ分散液とを、等量ずつ混合し、25℃にて10分間反応させた。その後、マイクロビーズをBW緩衝液で3回洗浄した。
結果を表2及び図17に示す。
これらから明らかなように、本発明の方法によれば、蛍光緩和時定数を測定、算出することで、分析対象の遺伝子断片中のヌクレオチドの種類を、正確に区別して測定することができる。
**:相同染色体上のある個所の塩基が、いずれもアデニン(AとTで相補している)であるホモ体を模したもの
***:相同染色体上のある個所の塩基が、一方の染色体はグアニン、他方の染色体はアデニンであるヘテロ体を模したもの
D1,D2,D3,D4 検出用二本鎖オリゴヌクレオチド
10 フローサイトメータ
12 マイクロビーズ
20 信号処理装置
22 レーザ光源部
22r R光源
22g G光源
22b B光源
23a1,23a2,23b1,23b2 ダイクロイックミラー
23c.26a レンズ系
24,26 受光部
26c1,26c2,26c3 バンドパスフィルタ
27a〜27c 光電センサ
28 制御・処理部
28a 光源制御部
28b 信号処理部
28c A/D変換器
28d 演算処理部
30 管路
32 回収容器
34r,34g,34b レーザドライバ
Claims (2)
- 遺伝子断片中の所定位置における少なくとも一つのヌクレオチドの種類を、担体として粒子を用い変調したレーザ光の照射によって生ずる蛍光の緩和時定数の測定によって検出することを特徴とする、遺伝子断片中のヌクレオチドの種類の特定方法。
- 遺伝子断片中のヌクレオチドの種類の特定が、遺伝子の一塩基多型が知られている個所におけるプリン塩基またはピリミジン塩基について、少なくとも2種類の蛍光緩和時定数の異なる色素を用い、検出用DNA配列と被測定DNA配列とをライゲーションし、蛍光発光における蛍光緩和時定数を測定して、被検体DNA配列がホモかヘテロかを検出して一塩基多型の有無を検出する遺伝子断片中のヌクレオチドの種類の特定方法。
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