JP2006265619A - 耐蝕性部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】CVD装置、プラズマ処理装置等に用いる部材は腐食性ガスとの反応、或いはプラズマによるエッチングにより消耗し、パーティクル発生による製品の汚染、歩留まり生産性低下の問題があった。また腐蝕性ガス、プラズマに耐性のあるガラスは高価であった。
【解決手段】基材とその上に形成された溶射膜からなる耐蝕性部材であって、Si、O、Nおよび2a族と、B、ZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素によって構成された溶射膜からなる耐蝕性部材は、腐蝕性ガスおよびプラズマに対する耐蝕性と耐熱強度が高く、パーティクルの発生が少なく、このような耐蝕性部材は、例えば、窒化ケイ素、シリカおよび2a族酸化物粉末と、ジルコニア粉末との混合粉末を基材に対して溶射することによって製造することができる。
【選択図】選択図なし
【解決手段】基材とその上に形成された溶射膜からなる耐蝕性部材であって、Si、O、Nおよび2a族と、B、ZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素によって構成された溶射膜からなる耐蝕性部材は、腐蝕性ガスおよびプラズマに対する耐蝕性と耐熱強度が高く、パーティクルの発生が少なく、このような耐蝕性部材は、例えば、窒化ケイ素、シリカおよび2a族酸化物粉末と、ジルコニア粉末との混合粉末を基材に対して溶射することによって製造することができる。
【選択図】選択図なし
Description
本発明は、半導体等の製造におけるCVD(Chemical Vapor Deposition)装置、プラズマ処理装置(プラズマエッチング装置)等に用いる部材であり、特に腐食性ガス又はプラズマに対する耐蝕性が高い溶射膜からなる耐蝕性部材に関するものである。
半導体等の製造工程におけるプラズマエッチングや、CVD装置のクリーニング用途には腐食性ガスが多用されている。これら腐食性ガスにはフッ素系、塩素系ガス等が用いられている。フッ素系ガスではCF4、C2F6、C3F8、CHF3/CF4、SF6等が用いられており、塩素系ガスでは、Cl2、BCl3、CCl4等が用いられている。さらにHF、F2、NF3を用いることも提案されている。
このような腐食性ガスを用いる装置の容器、内壁、部品等、上記ガス或いは上記ガスを含むプラズマに接触する部分には、石英、アルミナ、窒化アルミニウム等のセラミックス又はアルミニウム、ステンレス等の金属が使用されている。しかし、これら部材は、短時間に消耗することや、装置内のパーティクル発生の原因となるという問題があった。
例えば、石英の部材はフッ素ガスと反応してSiF4を生成して昇華して消耗する。またアルミナ、窒化アルミニウム等のセラミックス部材では、アルミニウムのフッ化物AlF3は昇華し難いが、物理的なスパッタ等による消耗が発生し、同時にプラズマ等の部材の粒界や気孔において選択的に腐蝕が進行し、結晶粒子脱落によりパーティクルが発生する。
この様な問題を解決する方法として、結晶粒界を無くしてパーティクルの発生を押さえると同時に窒素を導入することで耐蝕性を向上させる方法として、Si−Al−O−N元素で構成されたガラスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、これらの耐蝕性ガラスを製造するために還元雰囲気又は不活性雰囲気中が必要であるため、装置が大規模になり、結果的に耐蝕性部材が高価になる傾向があった。また、この組成では、耐蝕性も必ずしも十分ではなかった。
一方、基材を保護するために基材表面に溶射膜を形成する技術が知られており、上述の耐蝕性のガラスを基材の上に溶射・被覆することが考えられる。しかし、従来の溶射技術では、緻密質な窒素含有溶射膜形成が困難であり、従来の溶射による保護膜の形成は主に金属或いは酸化物セラミックスを用いるものであった。
窒素を含有する溶射膜作製の先行技術としては、例えば、Si3N4、Al2O3、Y2O3にAlN、SiO2、MgOの混合粉体を爆発溶射にて溶射してアモルファス層とYAG層を形成する技術(例えば、非特許文献1参照)やSi3N4、Al2O3、ZrO2、TiO2の混合粉末を熱処理して得たβサイアロンおよびχサイアロン粉末の爆発溶射による窒化珪素溶射膜を形成したものや、Si3N4、Al2O3、Y2O3の混合粉体について、プラズマ溶射によるα窒化珪素を形成したものが報告されている。しかし、これらの溶射膜は溶射粉末の融点が高いため、溶射粉末がよく溶けずに基板に付着することで、溶射膜個々の粒子同士の結合が弱く、気孔が多くなってしまい、密度が低く、プラズマエッチング時に溶射膜の粒界や気孔において選択的に腐蝕が進行し、結晶粒子脱落によるパーティクルが発生しやすい傾向にあった。また、溶射膜の腐蝕性ガス、プラズマに対する耐蝕性も充分ではなかった。さらに、爆発溶射に用いる装置は高価であり、溶射膜の堆積効率が悪く、爆発時の風圧でアルミニウムなど金属基板が変形してしまうこともあった。
すなわち、従来、一般的な溶射法を用いた窒素含有の緻密質で個々の粒子同士が良く結合し、さらに非常に高い耐蝕性を備えた溶射膜を作製する技術は更なる改善が求められており、プラズマエッチング時に結晶粒子脱落によるパーティクルが発生せず、腐食性ガス又はプラズマに対して良好な耐蝕性を有する耐蝕性部材が望まれていた。
以上説明した様に、半導体製造プロセスにおいて腐食性ガスやプラズマを用いる工程では、部材の腐蝕によるパーティクル発生、それに伴う製品汚染、歩留まり低下等の問題があった。さらに、部材の低い耐蝕性による部材の寿命の低下という問題もあった。この様な問題を抑制するSi−Al−O−N元素で構成されたガラス質の耐蝕性部材が提案されているが、耐蝕性は必ずしも十分ではなかった。一方、Si3N4−Al2O3−Y2O3系での溶射は可能であるが、溶射膜の密度が低く、パーティクルの問題を解決する必要があった。
本発明の目的は、耐蝕性が高く、パーティクルが少なく、製造が容易で窒素を含有したガラス質溶射膜からなる耐蝕性部材を与えるものである。
本発明者らは、上述のような現状に鑑み、鋭意検討を行った結果、Si、O、Nおよび2a族元素とB、ZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素によって構成された材料が溶射に適しており、基材にこの材料を溶射することで粒子同士の結合が良く、緻密な溶射膜ができ、その結果、部材の耐蝕性が著しく向上し、パーティクルの発生も少ないことを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
以下、本発明の耐蝕性部材について詳細に説明する。
(第1発明)
本発明のうち、第1の発明は、基材とその上に形成された溶射膜からなる耐蝕性部材であって、プラズマ又は腐食性ガスに曝される部位がSi、O、Nおよび2a族と、B、ZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素によって構成された溶射膜であることを特徴とする耐蝕性部材である。
(第1発明)
本発明のうち、第1の発明は、基材とその上に形成された溶射膜からなる耐蝕性部材であって、プラズマ又は腐食性ガスに曝される部位がSi、O、Nおよび2a族と、B、ZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素によって構成された溶射膜であることを特徴とする耐蝕性部材である。
本発明でいう2a族元素とは元素周期律表2a族元素であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Sr、Baである。本発明の耐蝕性部材を構成する溶射膜は、ガラスが主成分となるため、腐蝕性ガス或いはそのプラズマとの反応性が低く、仮に腐食性ガス中のフッ素と反応が生じたとしても反応生成物はプラズマにエッチングされにくい高沸点化合物であり、プラズマや腐蝕性ガスによるエッチングを抑制する効果があり、特に好ましい2a族元素はMgである。
本発明の第1の発明において、耐食性部材の組成としては、Zrを用いる場合、Zr:Siの原子数比率が5:95から70:30の範囲、O:Nの原子数比率が99.9:0.1から60:40の範囲であり、Zr+Si:2a族元素の原子数比率が75:25から40:60であることが好ましい。
また、Tiを用いる場合、Ti:Siの原子数比率が5:95から80:20の範囲、O:Nの原子数比率が99.9:0.1から60:40の範囲であり、Ti+Si:2a族元素の原子数比率が85:15から40:60であることが好ましい。
また、Bを用いる場合、B:Siの原子数比率が5:95から70:30の範囲、O:Nの原子数比率が99.9:0.1から60:40の範囲であり、B+Si:2a族元素の原子数比率が85:15から40:60であることが好ましい。
上記したZr、Ti又はBを用いる場合、2a族元素を酸化物として導入した場合には、酸化物に含まれている酸素は含めないこととする。
また、本発明の耐食性部材は、Si、O、Nおよび2a族と、B、ZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素によって構成された溶射膜の主成分がガラスであることを特徴とするものである。Si、O、Nおよび2a族元素で構成されるガラス相は耐蝕性に優れると同時に、ガラスであるため結晶粒界が無く、腐蝕性ガスや腐食性ガスを含むプラズマによるエッチング時に結晶粒界での腐蝕による当該結晶粒子の脱落によるパーティクル発生が抑制される。そして、このガラス相は、Nが添加されることでガラス化が促進され、さらに、耐蝕性が増す。
さらに、本発明の耐蝕性部材は、少なくともSi、O、Nおよび2a族元素で構成されるガラス相とB、ZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む結晶相とで構成される溶射膜である。Si、O、Nおよび2a族元素で構成されるガラス相の特徴は前述の通りであるが、この組成が共晶組成であることで、溶射粉末の融点が低くなり、堆積する溶射膜が緻密となる。また、Zrおよび/又はTiを含む結晶相は、腐蝕性ガスや腐蝕性ガスを含むプラズマとの反応物の沸点が高いことから耐蝕性に優れている。
この共晶組成として、Zrを含む結晶相が2a族酸化物を固溶した立方晶酸化ジルコニウムである溶射膜を例示することができる。立方晶酸化ジルコニウム結晶相中の2a族元素、Zrは共に腐蝕性ガスやプラズマとの反応物の沸点が高いことから耐蝕性に優れている。2a族を固溶した立方晶酸化ジルコニウムの溶射膜としては、例えば、酸化マグネシウムを固溶した立方晶酸化ジルコニウムを挙げることができる。
また、Bを含む結晶相としては、窒化ホウ素が挙げられる。この窒化ホウ素とSi、O、Nおよび2a族元素で構成されるガラス相とが共晶組成であることで、溶射粉末の融点が低くなり、堆積する溶射膜が緻密となる。
本発明で用いる基材は特に限定はないが、石英ガラスなどの耐熱ガラスやアルミニウム、ステンレス等の金属、アルミナ、ムライト等のセラミックス、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂が挙げられる。
用いる基材の表面は、表面粗さRaが1〜50μmであることが好ましい。その中でも、溶射膜と基材との良好な密着性を保つためには1〜15μmであることが好ましい。表面粗さRaが1μm未満では、基材と溶射膜が剥離し易い場合があり、基材の上に耐蝕性ガラス溶射膜を均一に被覆することが難しい場合がある。一方、表面粗さRaが50μmを超えると、溶射膜の表面を平滑にすることが難しく、プラズマや腐蝕性ガスによるエッチングを抑制することが難しい場合がある。基材表面の表面粗さRaを1〜50μmとする方法としては、その様な表面粗さの溶射膜を基材に予め溶射する方法、基材自身をブラスト処理する方法又はブラスト処理とフッ酸等による化学的エッチングを併せて施す方法等を例示できる。
本発明の耐蝕性部材の溶射膜厚に限定はないが、0.01〜3mm、特に0.01〜0.5mmであることが好ましい。耐蝕性部材の溶射膜厚が3mmを超えて厚くなると、基材との熱膨張率の差によって溶射膜のひび割れ、剥離が発生し易い場合があり、一方、0.01mm未満では保護膜として不十分である場合がある。耐蝕性部材の溶射膜厚は、部材の断面を顕微鏡で観察するか、部材の断面をEPMA(X線マイクロアナライザー)による構成元素の組成分析を行うこと等で確認することができる。
本発明の耐蝕性部材の溶射膜の表面粗さRaは0.01〜10μm、特に8μm以下であることが好ましい。溶射膜の表面平滑性が悪く荒れたものであると、溶射膜表面に形成された突起形状の特にエッジの部分がプラズマ或いは腐食性ガスによって選択的にエッチングされ、パーティクルが発生し易い。
表面の粗さが粗いと、パーティクルが発生しやすくなるが、この評価方法としては、溶射膜の表面を研磨し、研磨面をプラズマエッチングした上で、プラズマエッチング前後の表面粗さRaを測定することで評価できる。プラズマエッチング前後のRaの差が大きいとエッチングによって表面が荒れるためパーティクルが多く発生することが予想される。
(第2発明)
次に、第2の発明として、第1の発明の耐蝕性部材の製造方法を説明する。
(第2発明)
次に、第2の発明として、第1の発明の耐蝕性部材の製造方法を説明する。
本発明の耐蝕性部材は、溶射によって耐蝕性溶射膜を形成することによって製造できる。
本発明で用いる溶射法はプラズマ溶射であることが好ましい。図1に一般的なプラズマ溶射装置を示す。プラズマ溶射装置はアノード11とカソード10との間に流れたプラズマガス12がアーク放電にすることによって形成されるプラズマジェットを熱源として、溶射粉末13を溶融し、溶融した溶射粉末はプラズマガスの流速で基材15にぶつかり堆積するものである。
プラズマ溶射装置では、プラズマガスとして、N2、Ar等不活性ガスもしくはH2等還元性ガス又はこれらの混合ガスを用いることができる。窒素含有物質の溶射では、プラズマガスに酸素が含有すると溶射中に分解してしまい、溶射膜から窒素が消失することで耐蝕性が低下するため、プラズマガスとして不活性ガス、還元性ガスを用いることが出来るプラズマ溶射法が好ましい。その溶射ガス流量として、50SLM(Standard Litter per Minuts)以上とすることが好ましい。溶射膜中の窒素の含有量については、溶射膜表面に蛍光X線分析やEPMA分析を行うことや、少量削り取った溶射膜を加熱分解した後に発生する窒素ガスについて熱伝導率測定を行うことで測定する窒素分析装置を用いることで分析する。
また、プラズマ溶射法の他に一般的な溶射法としてフレーム溶射や高速フレーム溶射によっても本発明の溶射膜を製造することも可能である。この場合、通常のフレーム溶射条件で作成することもできるが、酸素等に対して燃料を過剰とした還元雰囲気のフレームで溶射することが好ましい。
本発明の溶射において、溶射フレームを基材に溶射する際の投入する溶射パワーは用いる装置によっても異なるが、例えば図1に示すようなプラズマ溶射装置の場合、溶射パワーを20kW以上とするような条件が例示できる。
本発明の耐蝕性部材の製造時、常圧下での溶射ガン先端と基板との間の距離である溶射距離は、40〜150mmが好ましい。溶射距離が150mmをこえると基板に溶射材が付着するまでに冷却されてしまい、基板上に溶射膜が堆積されない場合があり、溶射距離が40mmより短いと基材、溶射膜両方の温度が上昇してしまい、溶射材である窒化物の分解によって窒素の消失が発生し、耐蝕性が低下する場合がある。
本発明で用いる溶射原料は、Si、O、Nおよび2a族元素と、B、ZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含む組成の原料であり、粉末形状の原料を用いることが好ましい。このような原料としては、ジルコニアを例にすると、シリカ、窒化ケイ素および2a族酸化物とジルコニアとから少なくともなる粉末顆粒の混合物や、シリカ、窒化ケイ素および2a族酸化物とジルコニアとから少なくともなる粉末を所定の割合で混合し、加圧若しくは常圧の還元雰囲気下等で焼結や溶融したインゴットを作成した後、粉砕することによって調製することができる。またシリカ、窒化ケイ素および2a族酸化物とジルコニアを少なくとも含んでなる混合粉末をスラリー化し、当該混合スラリーをスプレードライ法で顆粒を作成した後、顆粒を焼結する等の方法で得ることも出来る。上述した各方法において、必要に応じてアクリル系等のバインダーを添加しても良い。
溶射に用いる原料粉末の粒径に限定はないが、平均粒径(2次粒径)で10〜100μmであることが好ましい。平均粒径10μm未満では原料粉末自身に十分な流動性がないため溶射フレーム中に原料を均一に供給することが難しい場合がある。また、平均粒径が100μmを超えると、溶射粒子の溶融が不均一となり、得られる溶射膜の基材に対する密着性が悪くなりやすい場合がある。
本発明では溶射被膜の形成の際、基材表面の温度をあらかじめ予熱して溶射することが好ましい。基材表面をあらかじめ予熱することは、溶射の際に、熱ショックによる基材の割れ防止、並びに密着性の高い耐蝕性部材を得るために有効である。予熱温度は用いる基材の種類によっても異なるが、例えば石英ガラス基材の場合100〜800℃、アルミニウム基材の場合50〜500℃、樹脂基材の場合50〜200℃の範囲が好ましい。
予熱温度を上げすぎると溶射膜中の窒素が分解してしまうため好ましくない。予熱は、基材を外部ヒーターで加熱する、或いは原料を供給せずに溶射フレームを基材に照射すること等で行えば良い。予熱温度は、基材の裏面からの熱電対による測定、或いは非接触の放射温度計等で測定できる。
本発明の耐蝕性部材の製造時、大気圧下における不活性ガスあるいは還元性ガスを用いたプラズマ溶射の場合、基材温度としては、100〜800℃が好ましいが、基板の種類にもよるが、ガラスやセラミックスの場合では、50〜800℃が好ましい。基材温度が50℃より低いと溶射材が基材に付着時に冷却がされてしまい、基板上の溶射膜の膜質が悪くなる場合があり、基材温度が800℃よりも高いと、溶射材である窒化物の分解によって窒素の消失が発生し、耐蝕性が低下する場合がある。また、樹脂基材の場合、樹脂の種類にもよるが、基材温度としては50〜300℃が好ましい。
本発明の耐蝕性部材は、成膜装置又はプラズマ処理装置の容器や部品等に用いることが出来る。耐蝕性部材の使用方法としては、これらの装置の中で腐食性ガスやプラズマに接触する部位に用いることができ、より具体的にはリング状部材やベルジャーとして用いることが挙げられる。
ここでいう成膜装置とは、例えばCVD装置やPVD(Physical Vapor Deposition)装置等である。これらの装置の反応管やベルジャー等は、使用後の洗浄にフッ素系ガスによる洗浄を行なわれており、当該洗浄による腐食やそれに起因するパーティクル発生が問題であったが、本発明の耐蝕性部材を用いればそれらの問題が解決される。
またここでいうプラズマ処理装置とは、例えばプラズマエッチング装置、プラズマクリーニング装置であり、装置内に設置した製品にプラズマを照射し、製品の表面を剥離、あるいは清浄化する装置をさす。これら装置のリング状フォーカスリング又はベルジャー等でもフッ素系プラズマによってエッチングが行なわれるため、装置内の部品で腐食性ガスやプラズマと接触する部位では、パーティクルの発生が問題であった。この場合も同様に、本発明の耐蝕性部材を用いれば腐食されにくく、パーティクルの発生が少ない。
本発明の耐蝕性部材は、CVD装置、プラズマ処理装置等の腐食性ガス、プラズマを用いる装置に使用した際、耐蝕性が高く、パーティクル発生が少ないため、製品への汚染がなく、高い製品留まりで連続運転が可能である。
本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例
1)溶射基材の調製
ブラストにより表面粗さRaを6μmとした石英ガラスに対し、24%フッ酸で1時間処理して表面粗さRaを10μmとした石英ガラス基材を調製した。
実施例
1)溶射基材の調製
ブラストにより表面粗さRaを6μmとした石英ガラスに対し、24%フッ酸で1時間処理して表面粗さRaを10μmとした石英ガラス基材を調製した。
2)溶射用原料粉末の調製
表1に示す2a族元素の酸化物、ジルコニア、チタニアおよびホウ酸からなる群より選ばれる化合物と、シリカと、窒化珪素または窒化ホウ素とを表1の組成になるように調製し、それら粉末にバインダーを混合した後、スプレードライにより、平均粒径50μmの造粒粉末を得た。この造粒粉末について、500℃2時間の脱脂後、1200℃2時間の焼結を行い、平均粒径50μmの焼結粉末を得た。
表1に示す2a族元素の酸化物、ジルコニア、チタニアおよびホウ酸からなる群より選ばれる化合物と、シリカと、窒化珪素または窒化ホウ素とを表1の組成になるように調製し、それら粉末にバインダーを混合した後、スプレードライにより、平均粒径50μmの造粒粉末を得た。この造粒粉末について、500℃2時間の脱脂後、1200℃2時間の焼結を行い、平均粒径50μmの焼結粉末を得た。
3)溶射膜の形成
1)で調製した基材を用い、常圧にて、図1に示すプラズマ溶射装置を用いて、プラズマガスとして窒素40SLMと水素12SLMとを流し、溶射距離を60mmとし、溶射ガンを400mm/秒の速度で移動させながら、30kWのパワーでプラズマを生成し、原料粉末を供給することなく、基材の予熱を行った。
1)で調製した基材を用い、常圧にて、図1に示すプラズマ溶射装置を用いて、プラズマガスとして窒素40SLMと水素12SLMとを流し、溶射距離を60mmとし、溶射ガンを400mm/秒の速度で移動させながら、30kWのパワーでプラズマを生成し、原料粉末を供給することなく、基材の予熱を行った。
次に2)で調製した溶射用原料粉末を供給量7g/分とし、速度を400mm/秒、ピッチ4mm、溶射距離60mmで溶射ガンを移動させながら15回溶射し、溶射膜を形成した。
4)性能評価
3)で得られた各種組成の溶射膜に対し、接触式表面粗さ計による表面粗さRaの測定、X線回折法による構成相、ガラス相の確認、断面のSEM観察による気孔率の測定、削り取った溶射膜を炉によって分解した後に発生する窒素ガスについての熱伝導率測定による窒素含有量の測定、フッ素系ガスを含むプラズマに曝した時のエッチング速度とパーティクル量の測定試験を行った。
3)で得られた各種組成の溶射膜に対し、接触式表面粗さ計による表面粗さRaの測定、X線回折法による構成相、ガラス相の確認、断面のSEM観察による気孔率の測定、削り取った溶射膜を炉によって分解した後に発生する窒素ガスについての熱伝導率測定による窒素含有量の測定、フッ素系ガスを含むプラズマに曝した時のエッチング速度とパーティクル量の測定試験を行った。
エッチング条件は、反応処理室内の圧力1torr、反応ガスにCF4ガスを用い、電極板間に300Wの高周波電力を印加することによりプラズマを発生させた。エッチングを行う溶射膜の表面は、研磨によってRaを0.1μm以下とした。エッチング厚みは段差測定法を用いて測定し、パーティクル発生はエッチング時に試験サンプル隣に置いた石英ガラスの表面観察によって行なった。
表面粗さRa、構成相、気孔率、窒素含有量、エッチング速度とパーティクル量については結果を表1に示した。いずれの耐蝕性部材も緻密でエッチングレートは0.1μm/hr以下と小さく、耐食性に優れ、パーティクルの発生が少なかった。
比較例
表1に比較例として示す組成の溶射用原料粉末から、1)〜3)と同様な方法で溶射膜を形成し、4)と同様にして性能評価を行った。
比較例
表1に比較例として示す組成の溶射用原料粉末から、1)〜3)と同様な方法で溶射膜を形成し、4)と同様にして性能評価を行った。
比較例1の石英ガラス部材では、ガラス質であることを確認したが、エッチング速度が耐蝕性部材と比較して大きく、耐蝕性が不良であった。比較例102のAl2O3溶射膜ではエッチング速度は小さかったが、実施例のガラス質の耐蝕性部材に比べてパーティクルの発生が多かった。造粒した酸化マグネシウム粉末を用いた比較例103の部材では、エッチング速度が本発明の耐蝕性部材と比較して高く、また、パーティクルが多く発生した。市販の溶射用部分安定化ジルコニア粉末を用いた比較例104の部材では、エッチング速度が本発明の耐蝕性部材と比較して高く、また、パーティクルが多く発生した。シリカ、ジルコニア、マグネシア粉末を表1の組成にて調製した溶射用原料粉末を用いた比較例105の部材では、エッチング速度が本発明の耐蝕性部材と比較して高く、また、パーティクルが多く発生した。
10:カソード
11:アノード
12:プラズマガス
13:溶射粉末(供給口)
14:溶射距離
15:基材
16:溶射膜
17:電源
11:アノード
12:プラズマガス
13:溶射粉末(供給口)
14:溶射距離
15:基材
16:溶射膜
17:電源
Claims (9)
- 基材とその上に形成された溶射膜からなる耐蝕性部材であって、プラズマ又は腐食性ガスに曝される部位がSi、O、Nおよび2a族と、B、ZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素によって構成された溶射膜であることを特徴とする耐蝕性部材。
- 溶射膜の主成分がガラスであることを特徴とする請求項1に記載の耐食性部材。
- 溶射膜が少なくともSi、O、Nおよび2a族元素で構成されるガラス相と、B、ZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む結晶相とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の耐蝕性部材。
- 溶射膜の結晶相が2a族酸化物を固溶した立方晶酸化ジルコニウムであることを特徴とする請求項3に記載の耐食性部材
- 耐蝕性部材の組成がZr:Siの原子数比率が5:95から70:30の範囲、O:Nの原子数比率が99.9:0.1から60:40の範囲であり、Zr+Si:2a族元素の原子数比率が75:25から40:60である請求項1に記載の耐蝕性部材。
- 耐蝕性部材の組成がTi:Siの原子数比率が5:95から80:20の範囲、O:Nの原子数比率が99.9:0.1から60:40の範囲であり、Ti+Si:2a族元素の原子数比率が85:15から40:60である請求項1に記載の耐蝕性部材。
- 耐蝕性部材の組成がB:Siの原子数比率が5:95から70:30の範囲、O:Nの原子数比率が99.9:0.1から60:40の範囲であり、B+Si:2a族元素の原子数比率が85:15から40:60である請求項1に記載の耐蝕性部材。
- 結晶相が窒化ホウ素であることを特徴とする請求項3に記載の耐蝕性部材。
- 不活性ガス又は不活性ガスと還元性ガスの混合ガスを用いた大気圧プラズマ溶射を用い、溶射ガスの総流量を50SLM以上とすることを特徴とする、基材とその上に形成された溶射膜からなる耐蝕性部材であって、プラズマ又は腐食性ガスに曝される部位がSi、O、Nおよび2a族と、B、ZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素によって構成された溶射膜である耐蝕性部材の製造方法。
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JP2005084507A JP2006265619A (ja) | 2005-03-23 | 2005-03-23 | 耐蝕性部材およびその製造方法 |
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-
2005
- 2005-03-23 JP JP2005084507A patent/JP2006265619A/ja not_active Withdrawn
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CN104496404A (zh) * | 2014-01-26 | 2015-04-08 | 符素玲 | 一种新型水晶锆加工装置 |
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