JP2006265380A - 水性インク組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 インクジェット記録等における吐出安定性が良好で、且つ保存安定性に優れた水性インク組成物を提供すること。
【解決手段】 少なくとも2種類の表面処理型顔料を色材として含有する水性インク組成物にあって、前記2種類の表面処理型顔料は、顔料表面に直接または多価の基を介して導入された官能基の種類が異なることを特徴とし、表面処理型顔料として、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料と、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料とを含有する水性インク組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】 少なくとも2種類の表面処理型顔料を色材として含有する水性インク組成物にあって、前記2種類の表面処理型顔料は、顔料表面に直接または多価の基を介して導入された官能基の種類が異なることを特徴とし、表面処理型顔料として、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料と、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料とを含有する水性インク組成物。
【選択図】 なし
Description
本発明は、色剤として表面処理型顔料を含有する水性インク組成物に関する。より詳細には、インクジェット記録等における吐出安定性が良好であり、且つ保存安定性にも優れた水性インク組成物に関する。
インクジェット記録方法は、インクの小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。インクとしては、一般に各種の水溶性染料を水または水と水溶性有機溶剤との混合物に溶解させたものが使用されている。このような水溶性染料を含むインクにより形成された画像は耐水性や耐光性に劣ることが一般に指摘されている。
これに対して、顔料を水性媒体に分散させて得られたインクは、耐水性及び耐光性に優れる。例えば、顔料を界面活性剤や高分子分散剤用いて分散させた水性顔料インクが提案されている。しかしながら、これらのインクでは、記録物の印字濃度を上げるためにインク中の顔料含有量を増やすと、それに伴いインク粘度も急激に増加してしまう場合があった。また、顔料をインク中に安定に分散させるためには過剰の界面活性剤または高分子分散剤が必要であり、気泡発生や消泡性低下のため、吐出安定性が不充分であるという課題があった。
一方これに対し、上記のような界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤がなくても顔料単独で水性溶媒に分散させることができる、表面処理型顔料分散液が開示されている。この表面処理型顔料は、顔料表面に直接、または多価の基を介して、ヒドロキシル基(例えば、特許文献1参照)、カルボキシル基(例えば、特許文献2参照)、スルホン基、カルボニル基、アンモニウム基等の親水性官能基を導入することで、水性溶媒中における分散安定性を確保している。色剤としてインクに用いた場合は、インク粘度を適正な範囲に合わせやすいため取り扱いが容易である、記録物のOD値が高くなる、分散剤と添加溶媒との相溶性を考慮する必要がない、等の利点から種々開発されている。
しかしながら、このような顔料表面に親水性官能基を導入した表面処理型顔料1種を含有するインク組成物を使用した場合にも、水性インク組成物において要求される重要な特性である、インクジェット記録等における吐出安定性と保存安定性との、両方を充分に満足することができないという課題があった。例として、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料を含有する水性インク組成物は、一般に、インクジェット記録等における吐出安定性が良好である。しかしながら、保存安定性を確保することが比較的困難であるという課題を有する。また、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料を含有する水性インク組成物は、一般に、保存安定性に優れるという利点がある一方で、吐出安定性が比較的確保しにくいという課題を有する。
本発明は前記の課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の目的とするところは、インクジェット記録等における吐出安定性が良好で、且つ保存安定性に優れた水性インク組成物を提供することにある。
本発明者らは調査研究の結果、色剤として、顔料表面に導入された官能基が異なる複数表面処理型顔料を含有すること、特に、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料と、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料とを含有することで、前記課題を解決する水性インク組成物を得ることができることを見出した。すなわち本発明の構成は以下の通りである。
(1) 本発明の水性インク組成物は、少なくとも2種類の表面処理型顔料を色材として含有する水性インク組成物にあって、前記2種類の表面処理型顔料は、顔料表面に直接または多価の基を介して導入された官能基の種類が異なることを特徴とする。
(2) 本発明の水性インク組成物は、前記2種類の表面処理型顔料は、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料と、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料と、であることを特徴とする。
(3) 本発明の水性インク組成物は、水性インク組成物中における、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料と、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料との存在比率が、1:9から9:1の範囲であることを特徴とする。
(4) 本発明の水性インク組成物は、前記表面処理型顔料の含有量の合計が、水性インク組成物全量に対して、0.5〜10重量%の範囲であることを特徴とする。
(5) 本発明の水性インク組成物は、前記顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料が、次亜ハロゲン酸またはその塩を用いて湿式酸化された表面処理型顔料であることを特徴とする。
(6) 本発明の水性インク組成物は、前記表面処理顔料が、表面処理型カーボンブラックであることを特徴とする。
(7) 本発明の水性インク組成物は、インクジェット記録用であることを特徴とする。
(8) 本発明の記録方法は、インクを付着させて記録媒体に印字を行う記録方法であって、インクとして(1)〜(7)のいずれかに記載の水性インク組成物を用いることを特徴とする。
(9) 本発明のインクジェット記録方法は、インクの液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うインクジェット記録方法であって、インクとして(1)〜(7)のいずれかに記載の水性インク組成物を用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
(10) 本発明の記録物は、上記(8)または(9)に記載の記録方法によって記録が行われたことを特徴とする。
本発明によれば、インクジェット記録等における吐出安定性が良好で、且つ保存安定性に優れた水性インク組成物が提供される。また当該水性インク組成物を用いた記録方法及び記録物が好適に提供される。
以下、本発明について、その好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の水性インク組成物は、少なくとも2種類の表面処理型顔料を色材として含有する水性インク組成物にあって、前記2種類の表面処理型顔料は、顔料表面に直接または多価の基を介して導入された官能基の種類が異なるものである。
本発明における表面処理型顔料は、色剤として水性分散液中に含有されるものであり、顔料表面に多数の親水性官能基及び/またはその塩を、直接または多価の基等を介して間接的に結合させたもので、分散剤なしに水性媒体中に分散及び/または溶解することが可能な顔料である。ここで「分散剤なしに水性媒体中に分散及び/または溶解」とは、顔料が分散剤を用いなくても水性媒体中に分散可能な最小粒子径で安定に存在している状態をいう。ここで「分散可能な最小粒子径」とは、分散時間を増してもそれ以上小さくならない顔料の粒子径をいう。
前記表面処理型顔料の表面に導入される親水性官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホン基、アンモニウム基等が例示できる。
本発明の表面処理型顔料は、顔料粒子の表面を酸化および/または物理的/化学的な処理等によって、表面に上述のような親水性官能基を付与し、水系での分散を行うものである。これらの表面処理の方法としては、例として、空気接触による酸化法、窒素酸化物、オゾンとの反応による気相酸化法、炭酸ガス等酸化物を用いた低温プラズマ酸化法、硝酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素、オゾン水溶液等の酸化剤を用いる液相酸化法等の酸化方法、次亜ハロゲン酸またはその塩を用いる湿式酸化法、スルホン酸化物による方法、真空プラズマ処理、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等が例示できる。
前記表面処理型顔料を色剤として含有する水性分散液は、通常の顔料を分散させるために含有させる前述のような分散剤を含む必要が無いため、分散剤に起因する消泡性の低下や発泡がほとんど無く取り扱いが容易である。また、主に分散性に寄与する表面官能基の種類によって、吐出安定性、保存安定性等の特性が異なる。本発明の態様によれば、顔料表面に導入された官能基が異なる2種類の表面処理型顔料を含有することにより、各々の特性をバランス良く併せ持つ水性インクを提供することができる。
本発明の水性インク組成物は、少なくとも、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料と、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料とを含むことが好ましい。
まず、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料について詳述する。顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料分散液は、例えば、顔料表面に一旦スルホン基を固定した後、アルカリ融解してヒドロキシル基に置換することにより得られる。
上記方法で得られた、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料は、良好な均一分散性が得られる。従って、上記顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料を含有する水性インク組成物は、インクジェット記録等における吐出安定性良好であるという利点を有する。しかしながら、保存安定性が比較的確保しにくいという課題を有している。
次に、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料について詳述する。顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料は、上述した種々の酸化方法により得られる。
本発明において、前記顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料は、次亜ハロゲン酸またはその塩を用いて湿式酸化された表面処理型顔料であることが望ましい。この手法によれば、顔料表面に効率的に、かつ比較的容易にカルボキシル基を付与することができる。次亜ハロゲン酸またはその塩の例としては、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウムが挙げられ、次亜塩素酸ナトリウムが反応性の点から特に好ましい。顔料の酸化は、一般に、顔料と、顔料の重量に対して有効ハロゲン濃度で10〜30%の次亜ハロゲン酸塩とを適量の水中に仕込み、5時間以上、好ましくは約10〜15時間、50℃以上、好ましくは95〜105℃で攪拌することにより行う。
上記いずれかの方法により得られた、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料を含有する水性インク組成物は、長期間の保存安定性に優れる。しかしながら、インクジェット記録等において吐出安定性を確保することが比較的難しいという課題を有している。
以上、詳述した2種の表面処理型顔料を含有する水性インク組成物は、インクジェット記録等における吐出安定性が良好であり、且つ保存安定性に優れる。
また、本発明の水性インク組成物は、前記顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料と、前記顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料との、水性インク組成物中での存在比率が、1:9から9:1の範囲であることが好ましい。ここで、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料の、水性インク組成物中での存在比率が1未満であるとき、吐出不安定等の不具合が発生する場合がある。また一方、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料の、水性インク組成物中での存在比率が1未満であるとき、保存安定性が不充分である場合がある。
本発明の水性インク組成物は、以上詳細に説明してきた表面処理型顔料分散液を用いて製造される水性インク組成物であって、水性インク組成物全量に対する表面処理型顔料の含有量の合計が0.5〜10重量%の範囲であることであることが好ましい。ここで水性インク組成物中の顔料含有量が0.5重量%未満であるとき、印字した記録物のOD値が低く、所望の品質に満たない場合がある。また10重量%よりも大きいとき、それ以上顔料を増やしてもOD値は頭打ちになり上がらない場合があることに加え、急激なインクの初期粘度上昇による吐出不安定等の不具合が発生する場合がある。
本発明の水性インク組成物は、前記表面処理型顔料を表面処理型カーボンブラックとすることで、最も好適に使用することができる。表面処理型カーボンブラックの原料となるカーボンブラックとしてはカラー用カーボンブラックとして一般に市販されているものを使用することができる。具体的には、pHによって分類すると酸性カーボンブラック、中性カーボンブラック、塩基性カーボンブラックであり、また製造法で分類すると、ファーネス式カーボンブラック、チャンネル式カーボンブラック、アセチレン式カーボンブラック、サーマル式カーボンブラックのいずれをも用いることが可能である。本発明における表面処理型カーボンブラックは、前記カーボンブラックの分類の中でも特に酸性カーボンブラックを酸化処理して得られたものであることが好ましい。通常カーボンブラックの酸化処理は、原料カーボンブラックを粉砕する工程と、粉砕されたカーボンブラックを酸化する工程が引き続いて、または、ほぼ同時に行われ、両方の工程で酸化剤が必要となる。酸性カーボンブラックは表面にカルボキシル基等の親水性基が多いため、水系媒体になじみやすく粉砕が容易である。そのため、粉砕時の酸化剤が不要であり、酸化処理に使用する酸化剤の量を少なくすることができる。本発明において好適に使用される酸性カーボンブラックの例としては具体的には、#50、MA8、MA100(以上、三菱化学(株)製)など、カラーブラックFW1、FW18、FW200、カラーブラックS170、スペシャルブラック250(以上、デグサ社製)など、ラーベン3500、ラーベン1080、ラーベンC(以上、コロンビアンカーボン社製)など、モナーク1300、リーガル400R(以上、キャボット社製)などが挙げられる。なお、これら記載は本発明に好適なカーボンブラックの一例であり、これらによって本発明が限定されるものではない。また、本発明において、異なる官能基によって分散する、少なくとも2種の表面処理型カーボンブラック分散液は、同種のカーボンブラック原末を使用してもよく、また異なるカーボンブラック原末を使用してもよい。
また前記表面処理型カーボンブラックとしては市販品を利用することも可能であり、マイクロジェットCW−1(オリヱント化学工業(株)製)、CAB−O−JET200、CAB−O−JET300(以上、キャボット社製)等が例示できる。
本発明の水性インク組成物は、筆記具用、スタンプ用等のような各種インクとしても用いられる。特に、水性ボールペン等の筆記用インク組成物として使用した場合に記録・筆記特性が良好で筆跡ムラのない筆記ができ、また、速記した場合に文字がかすれることはない。また本発明の水性インク組成物は、インクの液滴を吐出し、前記液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録用インクとして、更に好適に使用することができる。
また、本発明のインク組成物は、溶剤として、水以外に、有機溶剤を併用することもできる。このような有機溶剤としては、水と相溶性を有し、記録媒体へのインク組成物の浸透性及びノズルの目詰まり防止性を向上させると共に、後述する浸透剤等のインク組成物中成分の溶解性を向上させるものが好ましく、例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−nプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等のグリコールエーテル類、2−ピロリドン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を、本発明のインク組成物中に好ましくは0〜10重量%で用いることができる。
本発明のインク組成物には、印字品質を向上させる点から、アセチレングリコール系界面活性剤を含有させることが好ましい。このようなアセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、またはこれらの物質それぞれにおける複数の水酸基それぞれにエチレンオキシ基若しくはプロピレンオキシ基を平均1〜30個付加してなる物質等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤としては、市販品を用いることもでき、例えば、「オルフィンE1010」及び「オルフィンSTG」(以上、日信化学工業(株)製)等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。アセチレングリコール系界面活性剤の含有量は、本発明のインク組成物中、好ましくは0.1〜3重量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%である。
本発明のインク組成物には、記録媒体への定着性をさらに向上させて、記録する画像の耐擦性を高めるために、浸透剤を含有させることが好ましい。このような浸透剤としては、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、特に、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルが好ましい。浸透剤の含有量は、インク組成物の浸透性及び速乾性を向上させて、インクの滲み発生を有効に防止できる点で、本発明のインク組成物中、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。
本発明のインク組成物には、ノズルの目詰まりを防止して信頼性をより高めるために、水溶性グリコール類を含有させることが好ましい。このような水溶性グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチエングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の二価のアルコールや、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の三価以上のアルコール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。水溶性グリコール類の含有量は、本発明のインク組成物中に好ましくは1〜30重量%である。
また、本発明のインク組成物には、前記水溶性グリコール類と同様に、ノズルの目詰まり防止のために、防黴剤や防腐剤を含有させることもできる。例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(AVECIA社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を、本発明のインク組成物中に好ましくは0.01〜0.5重量%で用いることができる。
本発明のインク組成物は、表面処理型顔料の表面がアニオン性である場合、印字濃度の向上及び液安定性の観点から、そのpHを6〜11とすることが好ましく、7〜10とすることが更に好ましい。インク組成物のpHを前記範囲内とするためには、pH調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無機アルカリ類、アンモニア、トリエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリプロパノールアミン等の炭素数6〜10の3級アミン類等を含有させることが好ましい。pH調整剤は、その1種又は2種以上を、本発明のインク組成物中に好ましくは0.01〜2重量%で用いることができる。
本発明のインクジェット記録方法は、インクを微細なノズルより液滴として吐出して、その液滴を記録媒体に付着させるいかなる方式も使用することができる。
その幾つかを説明する。先ず静電吸引方式がある。この方式はノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印可し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、あるいはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式がある。
第二の方式としては、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
第三の方式は圧電素子を用いる方式であり、インクに圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
第四の方式は熱エネルギーの作用によりインクを急激に体積膨張させる方式であり、インクを印刷情報信号に従って微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
以上のいずれの方式も本発明の水性インク組成物を用いたインクジェット記録方法に使用することができる。
本発明の記録物は、少なくとも上記水性インク組成物を用いて記録が行われて得られたものである。この記録物は、本発明の水性インク組成物を用いることにより、非常に安定した品質、OD値や堅牢性を有する。
以下、本発明の水性インク組成物について実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(表面処理型顔料の調製)
<顔料分散液1の調製>
市販のファーネス式カーボンブラック(硫黄含有量0.3%)12部に、50%過酸化水素水100部を加え、5時間放置して緩やかに酸化処理させた後、水500部と塩化ナトリウム58部を加え、攪拌混合してから吸引濾過した。残渣を飽和塩化ナトリウム水溶液で十分に洗浄した後、80℃で48時間乾燥させた。このカーボンブラック5部を250℃の水酸化カリウム100部と反応させ、325℃で5分間保持した後、反応物を直ちに1000部の砕氷中に投入して急冷した。氷が完全に溶けて反応物が冷却した状態になった段階で希硫酸を注入して中和処理し、吸引濾過した後、硫酸イオンが認められなくなるまで残渣を水洗し、90℃で乾燥させた。これを水3000部に再分散させた後、顔料濃度20部となるまで濃縮して、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料として顔料分散液1を得た。
<顔料分散液1の調製>
市販のファーネス式カーボンブラック(硫黄含有量0.3%)12部に、50%過酸化水素水100部を加え、5時間放置して緩やかに酸化処理させた後、水500部と塩化ナトリウム58部を加え、攪拌混合してから吸引濾過した。残渣を飽和塩化ナトリウム水溶液で十分に洗浄した後、80℃で48時間乾燥させた。このカーボンブラック5部を250℃の水酸化カリウム100部と反応させ、325℃で5分間保持した後、反応物を直ちに1000部の砕氷中に投入して急冷した。氷が完全に溶けて反応物が冷却した状態になった段階で希硫酸を注入して中和処理し、吸引濾過した後、硫酸イオンが認められなくなるまで残渣を水洗し、90℃で乾燥させた。これを水3000部に再分散させた後、顔料濃度20部となるまで濃縮して、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料として顔料分散液1を得た。
<顔料分散液2の調製>
市販の酸性カーボンブラック17部を水57部によく混合した後、これに次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度12%)26部を滴下して、100〜105℃で10時間攪拌した。得られたスラリーを吸引濾過し、顔料粒子が洩れるまで水洗した。この顔料ウェットケーキを水3000部に再分散させ、電導度0.2μSまで逆浸透膜で脱塩した。さらに、この顔料分散液を、顔料濃度20部となるまで濃縮し、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料として顔料分散液2を得た。
市販の酸性カーボンブラック17部を水57部によく混合した後、これに次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度12%)26部を滴下して、100〜105℃で10時間攪拌した。得られたスラリーを吸引濾過し、顔料粒子が洩れるまで水洗した。この顔料ウェットケーキを水3000部に再分散させ、電導度0.2μSまで逆浸透膜で脱塩した。さらに、この顔料分散液を、顔料濃度20部となるまで濃縮し、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料として顔料分散液2を得た。
(水性インク組成物の調製)
顔料分散液1及び顔料分散液2を、表1に示した各量添加し、さらに、グリセリン5部、2−ピロリドン5部、エタノール2部、オルフィンE1010(日信化学工業(株)製)1部、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル3部、1,2−ヘキサンジオール5部、プロキセルXL−2(AVECIA社製)0.3部、次いでpHが7.5になるようにトリエタノールアミンを加え、全量が100部になるように超純水を添加した。この混合液を室温にて2時間攪拌した後、ポリテトラフルオロエチレン製、孔径5μmのメンブランフィルター(ミリポア社製)により濾過して、実施例1〜4及び比較例1、2の各水性インク組成物を得た。
顔料分散液1及び顔料分散液2を、表1に示した各量添加し、さらに、グリセリン5部、2−ピロリドン5部、エタノール2部、オルフィンE1010(日信化学工業(株)製)1部、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル3部、1,2−ヘキサンジオール5部、プロキセルXL−2(AVECIA社製)0.3部、次いでpHが7.5になるようにトリエタノールアミンを加え、全量が100部になるように超純水を添加した。この混合液を室温にて2時間攪拌した後、ポリテトラフルオロエチレン製、孔径5μmのメンブランフィルター(ミリポア社製)により濾過して、実施例1〜4及び比較例1、2の各水性インク組成物を得た。
(水性インク組成物の評価試験)
調製した実施例1〜4及び比較例1、2の各水性インク組成物について、下記の評価1及び評価2を行った。
調製した実施例1〜4及び比較例1、2の各水性インク組成物について、下記の評価1及び評価2を行った。
<評価1: 吐出性>
調製した各インク組成物を上述のインクジェット記録装置PX−V700に充填し、40℃環境において、べた及び罫線の含まれるパターンを連続印刷した。印刷中にノズルの抜けやインクの飛行曲がり等による印字の乱れがあった場合は、記録装置に付属の復帰動作(クリーニング)を都度行った。連続100ページ内に必要とされた上記クリーニングの回数を計測し、結果を以下の基準に基づいて判定した。
判定A; クリーニングを必要としなかった場合
判定B; 3回未満のクリーニングを必要とした場合
判定C; 3回以上5回未満のクリーニングを必要とした場合
判定D; 5回以上のクリーニングを必要とした場合
調製した各インク組成物を上述のインクジェット記録装置PX−V700に充填し、40℃環境において、べた及び罫線の含まれるパターンを連続印刷した。印刷中にノズルの抜けやインクの飛行曲がり等による印字の乱れがあった場合は、記録装置に付属の復帰動作(クリーニング)を都度行った。連続100ページ内に必要とされた上記クリーニングの回数を計測し、結果を以下の基準に基づいて判定した。
判定A; クリーニングを必要としなかった場合
判定B; 3回未満のクリーニングを必要とした場合
判定C; 3回以上5回未満のクリーニングを必要とした場合
判定D; 5回以上のクリーニングを必要とした場合
<評価2: 保存性>
調製した各インク組成物60gをそれぞれ100gプラスティックボトルに入れた後、密栓してから70℃環境下で1週間放置した。放置前後の各インク組成物の粘度を振動式粘度計(山一電機(株)製)にて測定し、その変化率から以下の基準に基づいて保存安定性を判定した。
判定A; 放置による粘度変化率が±5%未満である場合
判定B; 放置による粘度変化率が±5%以上±10%未満である場合
判定C; 放置による粘度変化率が±10%以上±15%未満である場合
判定D; 放置による粘度変化率が±15%を超える場合
調製した各インク組成物60gをそれぞれ100gプラスティックボトルに入れた後、密栓してから70℃環境下で1週間放置した。放置前後の各インク組成物の粘度を振動式粘度計(山一電機(株)製)にて測定し、その変化率から以下の基準に基づいて保存安定性を判定した。
判定A; 放置による粘度変化率が±5%未満である場合
判定B; 放置による粘度変化率が±5%以上±10%未満である場合
判定C; 放置による粘度変化率が±10%以上±15%未満である場合
判定D; 放置による粘度変化率が±15%を超える場合
以上、評価1及び評価2の判定結果を、表2にまとめて示す。
表2から明らかなように、本発明の適用範囲内である水性インク組成物1〜4(実施例1〜4)は、いずれの評価項目においても、判定A〜Cを与え、安定な吐出性と良好な保存性をいずれも実現している。一方、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料分散液2を含まない水性インク組成物5(比較例1)は、保存性評価において判定Dを与えた。また、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料分散液1を含まない水性インク組成物6(比較例2)は、吐出性評価において判定Dを与える結果であった。
以上詳細に述べてきたように、本発明によれば、インクジェット記録等における吐出安定性が良好で、且つ保存安定性に優れた水性インク組成物が提供される。また当該水性インク組成物を用いた記録方法及び記録物が好適に提供される。
Claims (10)
- 少なくとも2種類の表面処理型顔料を色材として含有する水性インク組成物にあって、
前記2種類の表面処理型顔料は、顔料表面に直接または多価の基を介して導入された官能基の種類が異なることを特徴とする水性インク組成物。 - 前記2種類の表面処理型顔料は、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料と、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料と、であることを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
- 水性インク組成物中における、顔料表面に導入された官能基がヒドロキシル基である表面処理型顔料と、顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料との存在比率が、1:9から9:1の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の水性インク組成物。
- 前記表面処理型顔料の含有量の合計が、水性インク組成物全量に対して、0.5〜10重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3に記載の水性インク組成物。
- 前記顔料表面に導入された官能基がカルボキシル基である表面処理型顔料が、次亜ハロゲン酸またはその塩を用いて湿式酸化された表面処理型顔料であることを特徴とする請求項2〜4に記載の水性インク組成物。
- 前記表面処理顔料が、表面処理型カーボンブラックであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
- インクジェット記録用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
- インクを付着させて記録媒体に印字を行う記録方法であって、インクとして請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性インク組成物を用いることを特徴とする記録方法。
- インクの液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うインクジェット記録方法であって、インクとして請求項1〜7のいずれかに記載の水性インク組成物を用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項8または9に記載の記録方法によって記録が行われたことを特徴とする記録物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005085694A JP2006265380A (ja) | 2005-03-24 | 2005-03-24 | 水性インク組成物 |
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JP (1) | JP2006265380A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019173037A (ja) * | 2017-11-28 | 2019-10-10 | Dic株式会社 | ジオキサジン顔料の製造方法 |
-
2005
- 2005-03-24 JP JP2005085694A patent/JP2006265380A/ja not_active Withdrawn
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