JP2006258123A - 動圧軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 スラスト軸受隙間を高精度かつ容易に管理可能な動圧軸受装置を提供する。
【解決手段】 軸受スリーブ8の、ハウジング7開口側端面となる上端面8bと、これに対向するフランジ部2bの下端面2b2との間に第1スラスト軸受隙間を形成すると共に、ハウジング7の開口部7a内周に設けられたシール部9の下端面9bと、これに対向するフランジ部2bの上端面2b1との間に第2スラスト軸受隙間を形成する。そして、フランジ部2bの外周面2b3に対向する位置に、第1スラスト軸受隙間および第2スラスト軸受隙間の幅の総和を規定する隙間規定部10を配設し、その軸方向寸法Wを、第1、第2スラスト軸受隙間の幅δ1、δ2、およびフランジ部2bの軸方向幅Wfとの総和に等しくする。
【選択図】図5
【解決手段】 軸受スリーブ8の、ハウジング7開口側端面となる上端面8bと、これに対向するフランジ部2bの下端面2b2との間に第1スラスト軸受隙間を形成すると共に、ハウジング7の開口部7a内周に設けられたシール部9の下端面9bと、これに対向するフランジ部2bの上端面2b1との間に第2スラスト軸受隙間を形成する。そして、フランジ部2bの外周面2b3に対向する位置に、第1スラスト軸受隙間および第2スラスト軸受隙間の幅の総和を規定する隙間規定部10を配設し、その軸方向寸法Wを、第1、第2スラスト軸受隙間の幅δ1、δ2、およびフランジ部2bの軸方向幅Wfとの総和に等しくする。
【選択図】図5
Description
本発明は、軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材を非接触支持する動圧軸受装置に関するものである。この軸受装置は、情報機器、例えばHDD等の磁気ディスク駆動装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク駆動装置、MD、MO等の光磁気ディスク駆動装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、その他の小型モータ用として好適である。
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化等が求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の1つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、上記要求性能に優れた特性を有する動圧軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
例えば、HDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに組み込まれる動圧軸受装置では、軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部およびスラスト方向に支持するスラスト軸受部の双方を動圧軸受で構成する場合がある。この種の動圧軸受装置におけるスラスト軸受部としては、軸部材のフランジ部端面と、これに対向する面、例えば軸受部材を構成する軸受スリーブの端面との何れか一方に動圧溝などの動圧発生部を形成すると共に、両端面間にスラスト軸受隙間を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−239951号公報
上記構成の動圧軸受装置は、軸受部材や、軸部材をはじめとする複数の部品で構成され、情報機器の益々の高性能化に伴って必要とされる高い軸受性能を確保すべく、各部品の加工精度や組立精度を高める努力がなされている。特に、スラスト軸受隙間の大きさは、スラスト軸受隙間を形成する面(スラスト軸受面など)の面精度、あるいはこれらの面を有する部品の部品精度の他に、各構成部品間の組立精度の影響を受けることから、適正な値に管理するのが難しく、そのために、必要以上に高精度な部品加工や複雑な組立作業を強いられる。
この種の問題は、スラスト軸受隙間の形成箇所に関係なく起こり得るものである。例えばHDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに組み込まれる動圧軸受装置において、何らかの事情で、軸部の下端よりも上方(ディスク載置側)にフランジ部が設けられ、このフランジ部の両端面とこれらに対向する面との間にスラスト軸受隙間が形成される場合にも、上記と同様の問題が起こる可能性がある。
本発明の課題は、スラスト軸受隙間を高精度かつ容易に管理可能な動圧軸受装置を提供することである。
前記課題を解決するため、本発明は、軸受部材と、軸受部材の内周に挿入される軸部、および軸部の外径側に張り出したフランジ部を有する軸部材と、軸受部材の一端開口側に設けられたシール部と、軸受部材とフランジ部との間の第1スラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用でフランジ部をスラスト方向に非接触支持する第1スラスト軸受部と、シール部とフランジ部との間の第2スラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用でフランジ部をスラスト方向に非接触支持する第2スラスト軸受部とを備えた動圧軸受装置において、さらに、フランジ部の外周に対向し、第1スラスト軸受隙間および第2スラスト軸受隙間の幅の総和を規定する隙間規定部を備えたことを特徴とする動圧軸受装置を提供する。
上述のように、本発明では、フランジ部の外周に対向する位置に、第1および第2スラスト軸受隙間の幅の総和を規定する隙間規定部を設けたので、スラスト軸受隙間の幅を精度良く管理することができると共に、高い面精度や組立精度を要することなく、容易に所定寸法のスラスト軸受隙間を形成することができる。
隙間規定部は、その軸方向幅が第1スラスト軸受隙間と第2スラスト軸受隙間とフランジ部の軸方向幅の総和に等しくなるように形成されるのが望ましいが、上記スラスト軸受隙間を規定し得る形態である限り、その形状は問わない。例えば、隙間規定部をシール部と一体に形成することもでき、あるいは隙間規定部を軸受部材と一体に形成することもできる。
また、軸受部材は、ハウジングと、ハウジングの内周に固定され、かつ軸部を内周に挿入する軸受スリーブとを備えたものであってもよく、その場合には、ハウジングを、シール部および隙間規定部の何れか一方または双方と一体に形成した構成を採ることができる。
上記構成の動圧軸受装置は、例えばこの動圧軸受装置を備えたディスク装置のスピンドルモータとして好適に提供可能である。
以上のように、本発明によれば、スラスト軸受隙間を高精度かつ容易に管理可能な動圧軸受装置を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る動圧軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、ディスクハブ3を取付けた軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、モータブラケット6とを備える。ステータコイル4はモータブラケット6の外周に取付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の内周に取付けられる。動圧軸受装置1は、モータブラケット6の内周に固定される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスク状情報記録媒体(以下、単にディスクという。)Dが一又は複数枚保持される。ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する励磁力でロータマグネット5が回転し、それによってディスクハブ3およびディスクハブ3に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
動圧軸受装置1は、例えば図2に示すように、一端を開口したハウジング7と、ハウジング7の内部に固定された軸受スリーブ8と、ハウジング7および軸受スリーブ8に対して相対回転する軸部材2と、シール部9と、隙間規定部10とを備える。この実施形態において、ハウジング7および軸受スリーブ8が軸受部材に相当する。なお、この実施形態では、説明の便宜上、ハウジング7の開口部7aの側(シール部9が装着される側)を上方向、開口部7aの側と反対の側を下方向として以下説明する。
軸部材2は、例えばSUS鋼などの金属材料で形成され、軸部2aと、軸部2aの下端より上方に一体又は別体に設けられるフランジ部2bとを備える。なお、軸部材2は、金属材料と樹脂材料とのハイブリッド構造とすることもでき、その場合、軸部2aの少なくともディスクハブ3との結合部が上記金属で形成され、残りの箇所(例えば軸部2aの芯部やフランジ部2b)が樹脂で形成される。なお、フランジ部2bの強度を確保するため、フランジ部2bを樹脂・金属のハイブリッド構造とし、軸部2aと共に、フランジ部2bの芯部を金属製とすることもできる。
ハウジング7は、一端に開口部7aを有すると共に、他端を閉じた有底円筒状に形成され、円筒状の側部7bと、側部7bの他端側に一体に連続した底部7cとを備えている。このハウジング7は、例えば液晶ポリマー(LCP)や、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の結晶性樹脂、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)等の非晶性樹脂、あるいはこれら結晶性樹脂と非晶性樹脂との混合物をベース樹脂とする樹脂組成物を射出成形することで形成される。このハウジング7は、軸受スリーブ8をインサート部品として型成形(インサート成形。アウトサート成形を含む。)することもできる。あるいは、側部7bと底部7cとを別体に形成し、両者を接着、圧入、溶着(超音波溶着等)等の手段で相互に結合することもできる。なお、ハウジング7は、必ずしも樹脂で成形する必要はなく、例えば金属材料をプレス加工する等して成形することもできる。
また、上記樹脂組成物には、例えば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカ状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、各種金属粉等の繊維状または粉末状の導電性充填材を、目的に応じて適量配合することができる。
軸受スリーブ8は、例えば金属製の非孔質体あるいは焼結金属からなる多孔質体で形成される。この実施形態では、軸受スリーブ8は、銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成される。
軸受スリーブ8の内周面8aの上下に離隔した領域には、ラジアル動圧発生部として、例えば図3に示す複数の円弧面8a1がそれぞれ形成される。各円弧面8a1は、回転軸心Oから等距離オフセットした点を中心とする偏心円弧面であり、円周方向で等間隔に形成される。各偏心円弧面8a1の間には軸方向の分離溝8a2が形成される。これら偏心円弧面8a1の形成領域はラジアル軸受面として、軸部2aの外周面2a1と対向し、軸部材2の回転時には、断面真円状の外周面2a1との間に後述するラジアル軸受部R1、R2のラジアル軸受隙間を形成する(図2を参照)。ラジアル軸受隙間のうち、偏心円弧面8a1と対向する領域は、隙間幅を円周方向の一方で漸次縮小させたくさび状隙間8a3となる。くさび状隙間8a3の縮小方向は軸部材2の回転方向に一致している。
軸受スリーブ8の上端面8bの全面または一部の環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図4に示すように、スパイラル形状をなす複数の動圧溝8b1を配列した領域が形成される。この上端面8bの動圧溝8b1形成領域はスラスト軸受面として、フランジ部2bの下端面2b2と対向し、軸部材2の回転時には、両面8b、2b2の間に後述する第1スラスト軸受部T1の第1スラスト軸受隙間を形成する(図2あるいは図5を参照)。
シール部9は、図2に示すように、例えば真ちゅう等の軟質金属材料やその他の金属材料、あるいは樹脂材料で形成され、ハウジング7の開口部7a内周に固定される。この実施形態において、シール部9の内周面9aは円筒状をなし、この面に対向する軸部2aの外周面2a1との間に環状のシール空間Sを形成する。
シール部9の下端面9bの全面または一部の環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図示は省略するが、複数の動圧溝をスパイラル形状に、かつスパイラル方向を図4とは反対の向きに配列した領域が形成される。この下端面9bの動圧溝形成領域はスラスト軸受面として、フランジ部2bの上端面2b1と対向し、軸部材2の回転時には、両面9b、2b1の間に後述する第2スラスト軸受部T2の第2スラスト軸受隙間を形成する(図2あるいは図5を参照)。
隙間規定部10は、樹脂材料または金属材料で形成され、ハウジング7内周の、フランジ部2bの外周面2b3と径方向に対向する位置に配設される。この実施形態では、隙間規定部10は、円筒状に形成され、かつその軸方向寸法Wが、図5に示すように、第1スラスト軸受部T1の第1スラスト軸受隙間の幅δ1と、第2スラスト軸受部T2の第2スラスト軸受隙間の幅δ2と、フランジ部2bの軸方向幅Wfとの総和に等しくなるように形成されている。
ハウジング7の内周に軸受スリーブ8を挿入し、軸受スリーブ8の下端面8cをハウジング7の底部7cに当接させる。こうして、ハウジング7に対する軸受スリーブ8の軸方向位置を定めた上で、接着、圧入、溶着などの固定手段により軸受スリーブ8をハウジング7の内周面7dに固定する。次に、隙間規定部10を、その下端面10aを軸受スリーブ8の上端面8bに当接させた状態で、ハウジング7の開口部7a内周に配置する。そして、シール部9の下端面9bと軸受スリーブ8の上端面8bとの間にフランジ部2bを収容した状態で、下端面9bを隙間規定部10の上端面10bに当接させ、軸受スリーブ8の上端面8bに対するシール部9の軸方向位置を決定する。その上で、シール部9を、接着や圧入、超音波溶着などの溶着、あるいは溶接等の固定手段によりハウジング7の開口部7a内周に固定する。これにより、図2に示す動圧軸受装置1が完成する。この際、シール部9で密封されたハウジング7の内部空間は、軸受スリーブ8の内部気孔を含め、潤滑油で充満されると共に、潤滑油の油面はシール空間Sの範囲内に維持される。また、隙間規定部10は、下端面10aを軸受スリーブ8の上端面8bに当接させた状態で、ハウジング7の内周面7dに上述の固定手段により固定しても構わない。
上記構成の動圧軸受装置1において、軸部材2の回転時、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の領域)は、軸部2aの外周面2a1とラジアル軸受隙間を介して対向し、それぞれ多円弧軸受(テーパ軸受とも称される)を構成する。軸部材2の回転に伴い、ラジアル軸受隙間内の潤滑油がくさび状隙間8a3の縮小側に押し込まれて、その圧力が上昇する。このような円弧面8a1(くさび状隙間8a3)の動圧作用によって、軸部2aをラジアル方向に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2がそれぞれ構成される。
同時に、軸受スリーブ8のスラスト軸受面(上端面8bの動圧溝8b1形成領域)とこれに対向するフランジ部2bの下端面2b2との間の第1スラスト軸受隙間、およびシール部9のスラスト軸受面(下端面9bの動圧溝形成領域)とこれに対向するフランジ部2bの上端面2b1との間の第2スラスト軸受隙間に、動圧溝の動圧作用により潤滑油の油膜がそれぞれ形成される。そして、これら油膜の圧力によって、フランジ部2bをスラスト方向に非接触支持する第1スラスト軸受部T1と、第2スラスト軸受部T2とが構成される。
このとき、例えば図5に示すように、第1スラスト軸受隙間の幅δ1、第2スラスト軸受隙間の幅δ2、フランジ部2bの軸方向幅Wf、隙間規定部10の軸方向寸法Wの間には、W−Wf=δ1+δ2の関係が成り立つ。すなわち、フランジ部2bの軸方向幅Wfと、隙間規定部10の軸方向寸法Wを管理することにより、両スラスト軸受隙間幅δ1、δ2(の総和δ1+δ2)が精度良く管理され、動圧軸受装置1の回転性能が確保される。
この実施形態のように、動圧軸受装置1をHDDなどのディスク駆動装置用のスピンドルモータに組込んで使用する場合、ディスクハブ3に保持されるディスクDの数量が多くなると、回転体重量が増え、動圧軸受装置1への負荷が大きくなる。この場合、スラスト軸受部T1、T2をモータの重心位置に近づける(上方に移動させる)ことにより、ラジアル方向の負荷をスラスト軸受部でも支持することができるため、振れ回り(軸振れ)やこれらに起因する振動音、あるいは好ましくない摺動接触(摩耗)を可及的に防ぐことができる。また、上記スラスト軸受部T1,T2の軸受性能を高レベルに確保するためには、スラスト軸受隙間を精度良く管理する必要があるが、本発明では、各スラスト軸受隙間の幅δ1、δ2の総和を、上述のように隙間規定部10でもって適正な値に設定したので、各スラスト軸受隙間における油膜形成能力を高め、この種の問題をより効果的に解決することができる。従って、この動圧軸受装置1を備えたモータを長期に亘って安定的に使用することができる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、他の形態を採ることも可能である。以下、本発明に係る動圧軸受装置1の他の構成例を、図6〜図11に基づいて説明する。なお、図2に示す構成と構成・作用を同一にする部位および部材については、同一の参照番号を付し、重複説明を省略する。
図6は、隙間規定部10を、シール部9と一体に形成した場合を例示したものである。この場合、隙間規定部10の下端面10aを軸受スリーブ8の上端面8bに当接することで、シール部9の軸受スリーブ8の上端面8bに対する軸方向の位置決めがなされる。これにより、部品点数を削減し、かつシール部9と隙間規定部10との当接面(下端面9b、上端面10b)の面精度の影響を受けることなく、各スラスト軸受隙間幅δ1、δ2を高精度かつ容易に規定することができる。
また、動圧軸受装置1の小サイズ化を図ったものとして、例えば図7に示すような構成を挙げることができる。同図において、フランジ部2bの外周面2b3は、軸方向の段差によって上下二領域に区画され、区画形成された上側の外周面2b4と、これに対向するシール部9(と隙間規定部10との一体品)の内周面9aとの間にシール空間S’を形成する。また、段によって区画形成された上端面2b1のうち外径側の端面2b5は、スラスト軸受面となるシール部9の下端面9bと対向する。このような構成とすることで、潤滑油の外部への漏れ出しが防止されるとともに、軸部材2の上方への変位時、フランジ部2bの外径側端面2b5がシール部9の下端面9bと軸方向で係合し、軸部材2の抜止めがなされる。なお、この図示例では、フランジ部2bの上側外周面2b4をテーパ状として、これと対向するシール部9の内周面9aとの間に、上方に向けて径方向寸法を漸次拡大したシール空間S’を例示している。
隙間規定部10は、上述のようにシール部9と一体化する以外に、例えば図8に示すように、ハウジング7と一体に形成することもできる。この場合、軸受スリーブ8の上端面8bおよびシール部9の下端面9bを、ハウジング7の内周に一体形成された隙間規定部10の上下端面10a、10bにそれぞれ当接させることで、スラスト軸受隙間幅δ1、δ2の総和が規定される。
隙間規定部10を、シール部9あるいはハウジング7と一体化する他、例えば図9に示すように、シール部9とハウジング7とを一体化することもできる。この場合、隙間規定部10の上端面10bを、シール部9(とハウジング7との一体品)の下端面9bに当接させた状態で、さらに軸受スリーブ8の上端面8bを隙間規定部10の下端面10aに当接させることで、軸受スリーブ8の軸方向位置が定まると共に、スラスト軸受隙間幅δ1、δ2の総和が規定される。
あるいは、例えば図10に示すように、隙間規定部10とシール部9、さらにはハウジング7とを全て一体化することも可能である。これら図8〜図10に示す図示例においては、何れも軸受スリーブ8を、開口部7aとは反対の側から挿入する必要があるため、ハウジング7の底部7cは、側部7bとは別体に形成され、軸受スリーブ8の挿入後、適切な固定手段により、側部7bの下端に固定される。
以上の形態では、軸受部材を、ハウジング7と、その内周に固定される軸受スリーブ8とで分けて構成した場合を例示したが、これに限ることなく、例えば図11に示すように、軸受部材を一体品(ハウジング7と軸受スリーブ8との一体品)として構成することも可能である。また、この図示例では、軸受部材と隙間規定部10とを別体として構成した場合を例示しているが、もちろんこれらを一体化することも可能である。
このように、動圧軸受装置1の構成部品同士の一体化を進めることで、部品点数の削減や組立工数の削減を図ることができ、より一層の低コスト化が可能となる。なお、これら一体品は、樹脂や金属の型成形で成形可能である限り、あるいは少なくとも1部材をインサート部品として一体に型成形可能である限り、任意の構成を採ることができる。
図12は、第一および第二ラジアル軸受部R1、R2を構成する多円弧軸受の他の実施形態を示すものである。この実施形態では、図3に示す構成において、各偏心円弧面8a1の最小隙間側の所定領域θが、それぞれ回転軸心Oを中心とする同心の円弧で構成されている。従って、各所定領域θにおいて、ラジアル軸受隙間(最小隙間)8a4は一定となる。このような構成の多円弧軸受は、テーパ・フラット軸受と称されることもある。
図13では、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域が3つの円弧面8a5で形成されると共に、3つの円弧面8a5の中心は、回転軸心Oから等距離オフセットされている。3つの偏心円弧面8a5で区画される各領域において、ラジアル軸受隙間8a6は、円周方向の両方向に対してそれぞれ漸次縮小した形状を有している。
以上に説明した第一および第二ラジアル軸受部R1、R2の多円弧軸受は、何れもいわゆる3円弧軸受であるが、これに限らず、いわゆる4円弧軸受、5円弧軸受、さらには6円弧以上の数の円弧面で構成された多円弧軸受を採用してもよい。また、ラジアル軸受部R1、R2のように、2つのラジアル軸受部を軸方向に離隔して設けた構成とするほか、軸受スリーブ8の内周面8aの上下領域に亘って1つのラジアル軸受部を設けた構成としてもよい。
また、以上の実施形態では、ラジアル軸受部R1、R2として、多円弧軸受を採用した場合を例示しているが、これ以外の軸受で構成することも可能である。ラジアル軸受部R1、R2を構成可能な軸受としては、例えば図示は省略するが、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受隙間に面する領域(ラジアル軸受面となる領域)に、複数の軸方向溝形状の動圧溝を形成したステップ軸受が挙げられる。あるいは、軸方向溝に代えて、へリングボーン形状やスパイラル形状の傾斜溝を形成し、これら傾斜状の動圧溝により潤滑流体の動圧作用を発生させる構成を採ることもできる。
また、スラスト軸受部T1、T2の各スラスト軸受面となる領域には、スパイラル形状をなす複数の動圧溝を配列した領域を形成した場合を例示したが、この形態に限らず、例えば一方あるいは双方の面にへリンボーン形状をなす動圧溝を配列した領域を形成することもできる。あるいは、スラスト軸受面となる領域の一方または双方に、例えば図示は省略するが、複数の半径方向溝形状の動圧溝を円周方向所定間隔に設けた、いわゆるステップ軸受、あるいは波型軸受(ステップ型が波型になったもの)等で構成することもできる。
また、以上の実施形態では、ラジアル軸受部R1、R2やスラスト軸受部T1、T2を動圧軸受で構成した場合を説明したが、これ以外の軸受で構成することもできる。例えば、ラジアル軸受面となる軸受スリーブ8の内周面8aを、動圧発生部としての円弧面8a1、8a5を設けない真円内周面とし、この内周面と対向する軸部2aの真円状外周面2a1とで、いわゆる真円軸受を構成することができる。
また、以上の実施形態では、動圧溝などの動圧発生部を有するラジアル軸受面やスラスト軸受面を、軸受スリーブ8の内周面8aや上端面8b、シール部9の下端面9bの側に形成した場合を説明したが、この形態に限られる必要はない。例えばこれら軸受面を、これらと対向する軸部2aの外周面2a1やフランジ部2bの両端面2b1、2b2の側に形成することもできる。
また、以上の実施形態では、動圧軸受装置1の内部に充満し、ラジアル軸受隙間や、スラスト軸受隙間に動圧作用を生じる流体として、潤滑油を例示したが、それ以外にも各軸受隙間に動圧作用を生じ得る流体、例えば空気等の気体や、磁性流体等の流動性を有する潤滑剤、あるいは潤滑グリース等を使用することもできる。
1 動圧軸受装置
2 軸部材
2a 軸部
2b フランジ部
2b1 上端面
2b2 下端面
2b3 外周面
3 ディスクハブ
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
8a1 偏心円弧面
8b 上端面
9 シール部
9b 下端面
10 隙間規定部
10a 下端面
10b 上端面
D ディスク
S シール空間
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
W 軸方向寸法
Wf 軸方向幅
δ1、δ2 スラスト軸受隙間幅
2 軸部材
2a 軸部
2b フランジ部
2b1 上端面
2b2 下端面
2b3 外周面
3 ディスクハブ
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
8a1 偏心円弧面
8b 上端面
9 シール部
9b 下端面
10 隙間規定部
10a 下端面
10b 上端面
D ディスク
S シール空間
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
W 軸方向寸法
Wf 軸方向幅
δ1、δ2 スラスト軸受隙間幅
Claims (5)
- 軸受部材と、軸受部材の内周に挿入される軸部、および軸部の外径側に張り出したフランジ部を有する軸部材と、軸受部材の一端開口側に設けられたシール部と、軸受部材とフランジ部との間の第1スラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用でフランジ部をスラスト方向に非接触支持する第1スラスト軸受部と、シール部とフランジ部との間の第2スラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用でフランジ部をスラスト方向に非接触支持する第2スラスト軸受部とを備えた動圧軸受装置において、
さらに、フランジ部の外周に対向し、第1スラスト軸受隙間および第2スラスト軸受隙間の幅の総和を規定する隙間規定部を備えたことを特徴とする動圧軸受装置。 - 隙間規定部を、シール部と一体に形成した請求項1記載の動圧軸受装置。
- 隙間規定部を、軸受部材と一体に形成した請求項1記載の動圧軸受装置。
- 軸受部材は、ハウジングと、ハウジングの内周に固定され、かつ軸部を内周に挿入する軸受スリーブとを備え、ハウジングを、シール部および隙間規定部の何れか一方または双方と一体に形成した請求項1記載の動圧軸受装置。
- 請求項1〜4の何れかに記載の動圧軸受装置を備えたディスク装置のスピンドルモータ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005073011A JP2006258123A (ja) | 2005-03-15 | 2005-03-15 | 動圧軸受装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005073011A JP2006258123A (ja) | 2005-03-15 | 2005-03-15 | 動圧軸受装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2006258123A true JP2006258123A (ja) | 2006-09-28 |
Family
ID=37097619
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005073011A Withdrawn JP2006258123A (ja) | 2005-03-15 | 2005-03-15 | 動圧軸受装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2006258123A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008056749A1 (fr) * | 2006-11-10 | 2008-05-15 | Nidec Corporation | Moteur, procédé permettant de fabriquer le moteur et ventilateur soufflant utilisant le moteur |
WO2009116525A1 (ja) * | 2008-03-18 | 2009-09-24 | 日本電産株式会社 | モータ |
JP2015130341A (ja) * | 2013-12-30 | 2015-07-16 | アドヴァンスト オプトエレクトロニック テクノロジー インコーポレイテッドAdvanced Optoelectronic Technology Inc. | 発光ダイオードランプ |
-
2005
- 2005-03-15 JP JP2005073011A patent/JP2006258123A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2008056749A1 (fr) * | 2006-11-10 | 2008-05-15 | Nidec Corporation | Moteur, procédé permettant de fabriquer le moteur et ventilateur soufflant utilisant le moteur |
WO2009116525A1 (ja) * | 2008-03-18 | 2009-09-24 | 日本電産株式会社 | モータ |
JP2015130341A (ja) * | 2013-12-30 | 2015-07-16 | アドヴァンスト オプトエレクトロニック テクノロジー インコーポレイテッドAdvanced Optoelectronic Technology Inc. | 発光ダイオードランプ |
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