JP2006256934A - 高誘電体材料とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高誘電体膜形成用の組織が均一で高密度かつ高強度のスパッタリングターゲットの製造原料として好適な高誘電体材料とその製造方法を提供する。
【解決手段】バリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物粉末とチタンの酸化物粉末を原料粉末として用いて、(1)前記原料粉末を調合し混合して得た混合粉末をカ焼に付し、カ焼粉末を得る第1の工程、(2)カ焼粉末を湿式解砕に付し、累積粒度分布90重量%にあたる粒径を3μm以下、かつ累積粒度分布50重量%にあたる粒径を2μm以下になるように粒度分布を調整したカ焼粉末スラリーを得る第2の工程、(3)カ焼粉末スラリーを真空ろ過に付し、得られた粉末に純水を加えて洗浄し再度真空ろ過に付し、不純物元素が洗浄分離された粉末を得る第3の工程、及び(4)粉末を乾燥造粒に付し、複合酸化物粉末を得る第4の工程、を含むことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、高誘電体材料とその製造方法に関し、さらに詳しくは、バリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素とチタンとの複合酸化物粉末からなる高誘電体材料であって、高誘電体膜形成用の組織が均一で高密度かつ高強度のスパッタリングターゲットの製造原料として好適な高誘電体材料とその製造方法に関する。
従来、半導体メモリー等のキャパシタ用薄膜形成材料として用いられる高誘電体膜形成用のスパッタリングターゲットとして、バリウム、ストロンチウム、カルシウム等のチタン酸塩からなる複合酸化物使用されていた。これら複合酸化物として、バリウム(Ba)とチタン(Ti)の複合酸化物(チタン酸バリウム、以下、BTと略称する。)、ストロンチウム(Sr)とチタン(Ti)の複合酸化物(チタン酸ストロンチウム、以下、STと略称する。)、カルシウム(Ca)とチタン(Ti)の複合酸化物(チタン酸カルシウム、以下、CTと略称する。)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)とチタン(Ti)の複合酸化物(チタン酸バリウムストロンチウム、以下、BSTと略称する。)、もしくは、前記の複合酸化物を主成分とし、さらに添加物としてマグネシウム、スズ、ジルコニウム、ビスマス、マンガン、又はランタンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む複合酸化物が知られている。
上記ターゲットは、通常、ホットプレス法か常圧焼結法で所望の組成に調製された複合酸化物粉末を成形する方法で製造される。ここで用いられる複合酸化物粉末は、一般に、まず原料粉末として所望のバリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素の炭酸塩粉末と酸化チタン粉末を所定の割合に配合し、ボールミルに入れて混合した後、得られた混合粉末をルツボに入れ、大気雰囲気下、800〜1100℃の温度で1〜10時間保持する条件でカ焼し、次いで、得られたカ焼物を湿式ボールミルで粉砕することにより製造される。
また、ホットプレス法としては、複合酸化物粉末を150kg/cm以上の圧力下 、900〜1300℃の温度で0.5〜3時間保持する条件で行なわれる。また、常圧焼結法としては、複合酸化物粉末に有機バインダー1〜3重量%(対複合酸化物粉末)を加えた後、1トン/cm以上の面圧で成形体を作製し、次いで、大気雰囲気下、1000〜1400℃の温度で0.5〜3時間保持する条件で行なわれる。
ところで、近年、半導体メモリーを大量生産し、かつコストダウンするために、従来のターゲットよりも高密度のものを用いて高出力でスパッタリングすることにより、広域面に高速成膜を行ない、短時間で高誘電体膜を形成する方法が注目されている。しかしながら、従来のスパッタリングターゲットを用いた場合には、成膜速度が100オングストローム/min以上の高速スパッタリング成膜においては、ターゲット表面が鱗片状に剥離したり、ターゲット全体が割れてしまうという現象が起こるという問題があった。
この解決策として、Na、Al、Si及びFe等の不可避不純物元素を90ppm以下に低減したスパッタリングターゲット(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。これにより、このような過酷な条件で高速スパッタリング成膜を行なってもターゲットの割れを防止することができるとされている。
しかしながら、最近、半導体メモリーの生産性をさらに上げるために、スパッタリングにおいてさらに高電力の投入にも耐えることができる、より高密度かつ高強度のターゲットが求められており、これらの提案では、密度の向上、又は組織の均一性が不十分であるためスパッタリング中に割れが発生する等の実用上の問題が発生し生産性の向上につながらなかった。
以上の状況から、組織が均一で高密度な高誘電体膜形成用のスパッタリングターゲットの製造原料として好適な高誘電体材料が求められている。
特開平7−3444号公報(第1頁、第2頁)
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、バリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素とチタンとの複合酸化物粉末からなる高誘電体材料であって、高誘電体膜形成用の組織が均一で高密度かつ高強度のスパッタリングターゲットの製造原料として好適な高誘電体材料とその製造方法を提供することにある。これによって、高電力をかけて高速スパッタリング成膜した際に、ターゲットの割れ、及びターゲット表面の剥離が発生しない高誘電体膜形成用スパッタリングターゲットが得られる。
本発明者らは、上記目的を達成するために、バリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素とチタンとの複合酸化物粉末からなる高誘電体材料とそれを用いて得られるターゲットについて、鋭意研究を重ねた結果、従来ターゲットの低強度及び低密度の原因としては、複合酸化物粉末の製造過程で混入する不純物元素に起因する要因が大きいこと、さらに、特に湿式解砕する際の不純物元素の混入が大きく影響していることを見出した。
この知見に基づいて、バリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物粉末とチタンの酸化物粉末を原料粉末として用いて、特定の条件で、カ焼粉末を得る第1の工程、カ焼粉末スラリーを得る第2の工程、不純物元素が洗浄分離された粉末を得る第3の工程、及び複合酸化物粉末を得る第4の工程を順次行なったところ、複合酸化物粉末中の不純物元素であるナトリウム、アルミニウム、鉄、ジルコニアの含有量はいずれも10ppm以下、ケイ素の含有量は50ppm以下にまで低下し、組織が均一で高密度かつ高強度のスパッタリングターゲットを製造するための原料として好適な高誘電体材料が効率的かつ安定的に製造されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、バリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物粉末とチタンの酸化物粉末を原料粉末として用い、それから複合酸化物粉末を合成して高誘電体材料を製造する方法において、
(1)前記原料粉末を所定の配合比で調合し混合して得た混合粉末を800〜1100℃の温度に保持してカ焼に付し、カ焼粉末を得る第1の工程、
(2)第1の工程で得られるカ焼粉末を湿式解砕に付し、粉砕された粉末の累積粒度分布90重量%にあたる粒径を3μm以下、かつ累積粒度分布50重量%にあたる粒径を2μm以下になるように粒度分布を調整したカ焼粉末スラリーを得る第2の工程、
(3)第2の工程で得られるカ焼粉末スラリーを真空ろ過に付し、得られた粉末に純水を加えて洗浄し再度真空ろ過に付し、不純物元素が洗浄分離された粉末を得る第3の工程、及び
(4)第3の工程で得られる粉末を乾燥造粒に付し、複合酸化物粉末を得る第4の工程、を含むことを特徴とする高誘電体材料の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、第2の工程において、カ焼粉末スラリーの粘度が20dPa・s以下になるように解砕されることを特徴とする高誘電体材料の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、第2の工程で用いる湿式解砕装置は、直径10mm以下の大きさの窒化珪素製ボールを用いる湿式ボールミルであることを特徴とする高誘電体材料の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、第2の工程で用いるカ焼粉末は、2種類以上の複合酸化物のカ焼粉末であることを特徴とする高誘電体材料の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、第2の工程において、前記カ焼粉末に対して添加成分としてマグネシウム、スズ、ジルコニウム、ビスマス、マンガン、又はランタンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はチタン酸塩を添加することを特徴とする高誘電体材料の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、高誘電体膜形成用のスパッタリングターゲットに用いる、請求項1〜5のいずれかの製造方法により得られた高誘電体材料であって、
不純物元素の含有量は、ナトリウム、アルミニウム、鉄、又はジルコニアがいずれも10ppm以下、ケイ素が50ppm以下であることを特徴とする高誘電体材料が提供される。
本発明の高誘電体材料の製造方法は、第1の発明において、不純物元素の含有量が非常に低いため、組織が均一で高密度かつ高強度のスパッタリングターゲットを製造するための原料として好適な高誘電体材料を効率的かつ安定的に製造することができるので、その工業的価値は極めて大きい。
また、第2又は3の発明では、より不純物元素の含有量が低い高誘電体材料をより効率的かつ安定的に製造することができるので、より有利である。
また、第4の発明では、2種以上の複合酸化物が均一に混合された複合酸化物粉末が得られる。この際、組成ずれを少なくすることができるだけでなく、各々の特性に合わせた最適条件で複合酸化物粉末を合成することができるので、過剰に粒径の大きな粉末の生成を避けることができるという利点がある。
また、第5の発明では、添加成分としてマグネシウム、スズ、ジルコニウム、ビスマス、マンガン、又はランタンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はチタン酸塩を含有する、組織が均一で高密度かつ高強度のスパッタリングターゲットを製造するための原料として好適な高誘電体材料が得られるので、その工業的価値は極めて大きい。
また、本発明の高誘電体材料である第6の発明によれば、高誘電体膜形成用のスパッタリングターゲットに用いる、バリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素とチタンとの複合酸化物粉末を主成分として含む高誘電体材料であって、不純物元素としてナトリウム、アルミニウム、鉄、ジルコニアはいずれも10ppm以下、及びケイ素は50ppm以下と非常に低い不純物元素含有量の高誘電体材料であるので、組織が均一で高密度かつ高強度のスパッタリングターゲットを製造するための原料として好適である。
以下、本発明の高誘電体材料とその製造方法を詳細に説明する。
1.高誘電体材料の製造方法
本発明の高誘電体材料の製造方法は、バリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物粉末とチタンの酸化物粉末を原料粉末として用い、それから複合酸化物粉末を合成して高誘電体材料を製造する方法において、(1)前記原料粉末を所定の配合比で調合し混合して得た混合粉末を800〜1100℃の温度に保持してカ焼に付し、カ焼粉末を得る第1の工程、(2)第1の工程で得られるカ焼粉末を湿式解砕に付し、粉砕された粉末の累積粒度分布90重量%にあたる粒径を3μm以下、かつ累積粒度分布50重量%にあたる粒径を2μm以下になるように粒度分布を調整したカ焼粉末スラリーを得る第2の工程、(3)第2の工程で得られるカ焼粉末スラリーを真空ろ過に付し、得られた粉末に純水を加えて洗浄し再度真空ろ過に付し、不純物元素が洗浄分離された粉末を得る第3の工程、及び(4)第3の工程で得られる粉末を乾燥造粒に付し、複合酸化物粉末を得る第4の工程を含むことを特徴とする。
本発明の製造方法において、カ焼粉末を用いて第2の工程で湿式解砕により所定の粒度分布に調整したスラリーを得ること、及び第3の工程で不純物元素が洗浄分離された粉末を得ることが特に重要である。これにより、組織が均一で高密度かつ高強度のスパッタリングターゲットを製造するための原料として好適な高誘電体材料が得られる。また、これを用いて成形し焼結してターゲットを製造すれば、高電力をかけて高速スパッタリング成膜した際に、ターゲットの割れ及びターゲット表面の剥離が発生しない高誘電体膜形成用スパッタリングターゲットが得られる。
すなわち、一般に、成膜時のターゲット表面はスパッタリングで高温に加熱され、一方、ターゲット底面は銅製バッキングプレートを介して冷却されている。この表面と底面の温度差により熱応力が起こり、熱衝撃によって割れが生じるといわれている。この割れの発生の多くは焼結体の焼結密度、初期の抗折強度、局所的に発生する粗大粒等に起因しており、焼結体の性状が下記の3要件を満足することで、成膜時の割れは改善される。
(1)焼結密度が低いと気孔に応力が集中して亀裂が生じやすいので、焼結体の相対密度は95%以上であること。
(2)初期抗折強度が低いと熱応力に対する抵抗力が低いので、焼結体の抗折強度は8.0kg/mm以上であること。
(3)結晶粒径が大きいと応力に対する抵抗力が低下するので、焼結体の平均結晶粒径は10μm以下であること。
このような焼結体の密度、強度及び平均結晶粒径に及ぼす要因としては、焼結原料である複合酸化物粉末中の不純物元素が大きく影響する。例えば、従来の方法では、カ焼により得た複合酸化物粉末を湿式解砕に付し、所定の粒度分布になるように調整するため、ZrOボール用いて12時間以上粉砕したときには、得られる粉末に含まれるZr含有量は200ppmを超え、しかもそれを用いて作製された焼結体の相対密度は95%以下と低密度であり、かつ結晶粒径は2〜20μmまでの広範囲に変動し均一性が悪い。
また、Zr含有量を抑えるため、ボール材質を摩耗しにくい窒化珪素製に変えて12時間以上粉砕したときには、Si含有量は120ppmを超え、しかもそれを用いて作製された焼結体組織は粗大粒の生成とともに焼結性の低下による低密度化が起こり、所望の焼結体を得ることができなかった。また、粉砕時間を短縮してケイ素の混入を抑制することも考えられるが、粉砕時間を短縮したときには、所望の微細な粒度分布を得ることができないために粗大粒の生成とともに焼結性の低下による低密度化が起こる。
これに対して、本発明の方法では、不純物元素の含有量として、ナトリウム、アルミニウム、鉄、又はジルコニアがいずれも10ppm以下、ケイ素が50ppm以下である複合酸化物粉末が得られ、また、それを用いて作製された焼結体る焼結体の相対密度は97%以上、抗折強度は8.0kg/mm以上、結晶粒径はホットプレス品で2〜5μm、常圧焼結品で4〜8μmの性能が得られ上記の3要件を満足するので成膜時の割れは発生しない。
まず、本発明の製造方法の概要を図を用いて説明する。図1は、本発明の製造方法の工程と得られた複合酸化物粉末を用いてターゲットを製造する工程とを組合せた、原料粉末からターゲットまでの一連の工程図の一例を表す。
図1において、まず、第1の工程1では、バリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物粉末7とチタンの酸化物粉末8を原料粉末として用いて、所定の配合比で調合し混合して得た混合粉末を800〜1100℃の温度に保持してカ焼に付し、カ焼粉末9を得る。次に、第2の工程2では、カ焼粉末9を湿式解砕に付し所定の粒度分布に調整されたカ焼粉末スラリー10を得る。
次いで、第3の工程3では、前記スラリーを真空ろ過に付し、得られた粉末に純水を加えて洗浄し再度真空ろ過に付す洗浄操作を行ない、洗浄後粉末11を得た後、第4の工程4で乾燥造粒に付して複合酸化物粉末12を得る。
ターゲット14の製造においては、所望の複合酸化物粉末12を原料として、成形・焼結工程5により所定の焼結体13を得て、加工工程6によりターゲット加工される。
本発明の製造方法で用いる原料粉末としては、純度が99.9%以上であり、Si含有量が10ppm以下で5μm以下の平均粒径を有するバリウム、ストロンチウム及びカルシウムの化合物粉末と酸化チタン粉末が用いられる。前記化合物粉末としては、炭酸バリウム粉末、炭酸ストロンチウム粉末、及び炭酸カルシウム粉末好ましい。また、これらの元素の金属アルコキシドを精製した粉末、水酸化物粉末等から熱分解により調製した高純度粉末を用いることもできる。
第1の工程で用いる組成の調合としては、特に限定されるものではなく、出発原料である炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、酸化チタン粉末等から最終目標組成に含まれるすべての粉末を所望の組成比に配合しておくこともできるが、組成の制御性を重視し、各々の複合酸化物からなるカ焼粉末を形成させた後に所望の組成比にカ焼粉末を配合することが好ましい。この場合には、第2の工程において、第1の工程において個別に合成された2種類以上の複合酸化物のカ焼粉末を同時に用いる。
例えば、炭酸バリウム(BaCO)粉末と酸化チタン(TiO)粉末を所定組成で混合した後、1000℃でカ焼しチタン酸バリウム(BaTiO)粉末を得る。一方、炭酸ストロンチウム(SrCO)粉末と酸化チタン(TiO)粉末を所定組成で混合した後、1100℃でカ焼しチタン酸ストロンチウム(SrTiO)粉末を得る。これを20mol%秤量しチタン酸バリウム(BaTiO)粉末中に添加することにより、BST組成の粉末が得られる。この場合、各々のカ焼粉末を所定組成に混合することによって、組成ずれを少なくすることができるだけでなく、各々の特性に合わせた最適条件で複合酸化物を合成することができるので、過剰に粒径の大きな粉末の生成を避けることができる。
第1の工程で用いる混合としては、特に限定されるものではないが、上記原料粉末を均一に混合するため、水と必要により有機分散媒を加え機械的な湿式粉砕により行う方法が好ましい。この段階では、粉末はカ焼されておらず粉砕されやすいので、湿式粉砕による不純物元素の混入はほとんどない。
上記湿式粉砕に用いる装置としては、特に限定されるものではなく、湿式ボールミル、媒体撹拌ミル、振動ミル等を用いることができるが、この中で、特に所望の粒径を得るために不純物元素の混入量が少ない湿式ボールミルが好ましい。例えば、湿式ボールミルの運転条件としては、直径3〜5mmのZrOボールを用い、回転数100rpm程度で24〜96時間の解砕を行う。このときのボールの充填率としては、60容量%程度が好ましい。また、水量としては、粉末の重量に対し1.0〜2.0倍が好ましい。さらに、有機分散媒を添加することで、構成元素の分散性と解砕効率を向上させることができる。ここで用いる有機分散媒の種類としては、ポリカルボン酸アンモニウム塩類がカ焼時の残留灰分がないので好ましい。
第1の工程で用いるカ焼としては、湿式粉砕で得られた混合粉末を800〜1100℃の温度で行なう。ここで、カ焼の時間としては、1〜10時間が好ましい。また、カ焼の雰囲気としては、大気中、もしくは酸素雰囲気中を選ぶことができる。この際用いるカ焼用の坩堝としては、混合粉末と坩堝との反応を抑制するために。純度97%以上の高純度アルミナ、もしくはマグネシアが好ましい。この工程により、炭酸塩、水酸化物を分解させることにより、焼結性への悪影響をなくす効果ばかりでなく、組成の安定性と焼結収縮率の均一性の向上が図られる。
第2の工程で用いる湿式解砕としては、例えば、上記カ焼粉末を適量配合し、水を加えて機械的な湿式粉砕を行うことができる。ここで、粉砕された粉末の累積粒度分布90重量%にあたる粒径を3μm以下、かつ累積粒度分布50重量%にあたる粒径を2μm以下になるように粒度分布を調整したカ焼粉末スラリーを得ることが重要である。スラリー中の粉末の粒度分布がこの範囲外であるときには、得られる粉末が均一混合されていないので、これを原料として用いた焼結法において空隙の少ない良好な焼結体が得られない。
上記湿式解砕の装置としては、特に限定されるものではなく、湿式ボールミル、媒体撹拌ミル、振動ミル等を用いることができるが、この中で、特に所望の粒径を得るために不純物元素の混入量が少ない湿式ボールミルが好ましい。例えば、湿式ボールミルの運転条件としては、直径10mm以下、好ましくは直径3〜5mmの窒化珪素製ボールを用い、回転数100rpm程度で12〜48時間の粉砕を行う。このときのボールの充填率としては、60容量%程度が好ましい。
上記湿式解砕後のカ焼粉末スラリーの粘度は、好ましくは20dPa・s以下、より好ましくは14〜18dPa・sである。この粘度になるように調整することにより、高い粉砕効率が得られるとともに、上記した所定の粒度分布を得ることができる。
また、後続の焼結体を製造する際に、複合酸化物粉末の成形方法として冷間プレスを行う場合には、PVA、酢酸ビニル等のアルカリ成分を含有しないバインダーを1〜3重量%添加して湿式解砕するのが好ましい。
第3の工程で用いる洗浄としては、上記スラリーを真空ろ過に付し、得られた粉末に純水を加えて攪拌洗浄し再度真空ろ過に付す操作を行なう。例えば、上記湿式解砕後のスラリーを5Cのろ紙で真空ろ過後、得られた粉末にスラリー重量の2〜4倍の純水を加えて、攪拌洗浄又は超音波洗浄した後、1〜5時間静止沈殿させる。次に、上澄み液を除去した後再度真空ろ過を行う。
これによって、得られる粉末中のナトリウム、アルミニウム、鉄、ジルコニアはいずれも10ppm以下、及びケイ素は50ppm以下の含有量に低下される。ここで、先に上澄みを除去しておくことにより、不純物元素をより低下することができる。すなわち、粉末中には不純物として磨耗された窒化珪素が混入しているが、比重が軽いために上澄み液内に浮遊しやすいので除去されるからである。また、この操作を2回以上行えば、さらに、他の不純物においても大きく洗浄除去することができる。
第4工程で用いる乾燥造粒としては、特に限定されるものではなく、市販の乾燥装置及び乾燥造粒装置が用いられる。例えば、スラリーを熱風式オーブン(YAMATO製、DH10)等の乾燥装置で乾燥し、その後手粉砕もしくはボールミル等で粉砕し目開き43μmの篩で篩い分けする方法、又はスラリーをスプレードライヤ(大川原化工機製)等で乾燥造粒する方法がある。
以上の製造方法によって、不純物元素の含有量が非常に低い、バリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素とチタンとの複合酸化物粉末を主成分として含む高誘電体材料が得られる。
2.高誘電体材料
本発明の高誘電体材料は、高誘電体膜形成用のスパッタリングターゲットに用いる、バリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素とチタンとの複合酸化物粉末を主成分として含む材料であって、不純物元素の含有量として、ナトリウム、アルミニウム、鉄、又はジルコニアがいずれも10ppm以下、ケイ素が50ppm以下である複合酸化物粉末からなる。
上記高誘電体材料を用いて、以下に示す成形及び焼結法によって、組織が均一で高密度かつ高強度の高誘電体膜形成用のスパッタリングターゲットが得られる。
上記成形法としては、後続の焼結法として常圧焼結法を用いる場合には、乾燥造粒後の複合酸化物粉末を用いて、成形圧力1トン/cm以上で冷間プレスにて成形を行うことができる。
上記焼結法としては、ホットプレス法か常圧焼結法かを選択することができる。ホットプレス法の場合には、アルゴン雰囲気下、粉末を150kg/cm2以上の圧力で加圧し、 900〜1300℃の温度で0.5〜3時間保持する条件が好ましい。また、常圧焼結法の場合には、1トン/cm以上の成形圧力で成形体を作製し、大気中、もしくは酸素雰囲気下、1000〜1400℃の温度で0.5〜3時間保持する条件が好ましい。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた金属の分析、粉末の粒度分布の測定、並びに焼結体の不純物元素の分析、密度の測定、抗折強度の測定、及び結晶粒径の測定の方法は、以下の通りである。
(1)金属の分析:ICP発光分析法で行った。
(2)粒度分布:解砕後に得たスラリーを25℃に保った室内でレーザ回折式粒度分布測定装置で粒度分布を測定した。粒度分布測定装置には(株)島津製作所製 SALD2000を用い、測定時間30秒で行った。
(3)焼結体の不純物元素の分析:焼結体中央を切断後、洗浄粉砕し、ICP発光分析法で行なった。
(4)焼結体の密度の測定:板状焼結体の中央部を切断して30×30mm角、厚さ10mmの大きさの焼結体を得て、高精度比重計(東京精機製作所製)で測定した。
(5)焼結体の抗折強度の測定:JIS規格R1601に準じて行われ、得られた焼結体から幅10mm、厚さ5mm、長さ30mmの試験片を10個作製し、3点曲げ強さ試験から抗折強度を測定し、その平均値を求めた。
(6)焼結体の結晶粒径の測定:焼結体中央部を切断し、切断面を鏡面研磨後、エッチングを施しSEM観察により結晶粒径を測定した。観察箇所は1試料につき10点場所を変えて測定した。
また、実施例及び比較例で用いた焼結体の作製方法は、以下の手順で行なった。
乾燥造粒後の複合酸化物粉末を成形圧力1トン/cmで冷間プレスにて成形し、直径110mm、厚さ6mmの成形体を得た。この成形体を600℃で脱脂後、酸素雰囲気下で1.0℃/minで昇温し、所定温度で所定時間保持して焼結体を得た。
また、実施例及び比較例で用いた成膜時の割れの観察方法は、以下の手順で行なった。
上記焼結体からインジウムはんだにより銅製バッキングプレートに接合した直径4インチ(102mm)のターゲットを加工した後、高周波マグネトロンスパッタ装置内にターゲットをセットし、雰囲気ガスとしてArと10%酸素の混合ガスを用い、雰囲気圧力2Pa、出力1kW、及び時間10時間の条件にてスパッタし、ターゲットの表面割れの発生を目視観察した。
(実施例1)
まず、最大粒径3μmの炭酸バリウム粉末711.8gと最大粒径2μmの酸化チタン粉末288.2gをBaTiO組成となるように調合した。これに純水1.5kgを加え、直径3mmのZrOボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で48時間の混合粉砕を行った。得られたスラリーを乾燥造粒後、1000℃で2時間保持してカ焼してカ焼粉末を得た。
これに再度、純水2.0kgとPVAバインダ10gを添加し、直径3mmの窒化珪素ボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で24時間の解砕を行った。このときのスラリーの粘度と粒度分布を測定した。結果を表1に示す。
得られたスラリーを用いて6時間静止沈殿を行なった後、上澄みを除去し残部を5Cのろ紙を使用して真空ろ過した。さらに得られた固形物に2.0kgの純水を加えて、2時間攪拌洗浄を行なった。その後、2時間静止沈殿を行なった後、上澄み液を除去し残部を5Cのろ紙を使用して真空ろ過を再度行った。得られた固形物を乾燥造粒して、BT複合酸化物粉末を得た。
得られた複合酸化物粉末を用いて上記の焼結体の作製方法により焼結体を作製し、焼結体の密度、抗折強度、結晶粒径、構成分モル比及び不純物元素の評価を行なった。なお、焼結条件としては、1300℃で2時間を用いた。結果を表2に示す。
また、上記の成膜時の割れの観察方法によりターゲットを作製し、スパッタリングでのターゲット割れを評価した。結果を表2に示す。
(実施例2)
まず最大粒径3μmの炭酸ストロンチウム粉末648.9gと、最大粒径2μmの酸化チタン粉末351.1gをSrTiO組成となるように調合した。これに純水1.5kgを加え、直径3mmのZrOボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で48時間の混合粉砕を行った。得られたスラリーを乾燥造粒後、1100℃で2時間保持してカ焼してカ焼粉末を得た。
これに再度、純水2.4kgとPVAバインダ10gを添加し、直径3mmの窒化珪素ボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で24時間の解砕を行った。このときのスラリーの粘度と粒度分布を測定した。結果を表1に示す。
得られたスラリーを用いて6時間静止沈殿を行なった後、上澄みを除去し残部を5Cのろ紙を使用して真空ろ過した。さらに得られた固形物に2.0kgの純水を加えて、2時間攪拌洗浄を行なった。その後、2時間静止沈殿を行なった後、上澄み液を除去し残部を5Cのろ紙を使用して真空ろ過を再度行った。得られた固形物を乾燥造粒して、ST複合酸化物粉末を得た。
得られた複合酸化物粉末を用いて上記の焼結体の作製方法により焼結体を作製し、焼結体の密度、抗折強度、結晶粒径、構成分モル比及び不純物元素の評価を行なった。なお、焼結条件としては、1350℃で3時間を用いた。結果を表2に示す。
また、上記の成膜時の割れの観察方法によりターゲットを作製し、スパッタリングでのターゲット割れを評価した。結果を表2に示す。
(実施例3)
まず最大粒径2μmの炭酸カルシウム粉末556.1gと、最大粒径2μmの酸化チタン粉末443.9gをCaTiO組成となるように調合した。これに純水1.8kgを加え、直径3mmのZrOボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で72時間の混合粉砕を行った。得られたスラリーを乾燥造粒後、1100℃で2時間保持してカ焼してカ焼粉末を得た。
これに再度、純水3.0kgとPVAバインダ10gを添加し、直径3mmの窒化珪素ボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で24時間の解砕を行った。このときのスラリーの粘度と粒度分布を測定した。結果を表1に示す。
得られたスラリーを用いて6時間静止沈殿を行なった後、上澄みを除去し残部を5Cのろ紙を使用して真空ろ過した。さらに得られた固形物に2.0kgの純水を加えて、2時間攪拌洗浄を行なった。その後、2時間静止沈殿を行なった後、上澄み液を除去し残部を5Cのろ紙を使用して真空ろ過を再度行った。得られた固形物を乾燥造粒して、ST複合酸化物粉末を得た。
得られた複合酸化物粉末を用いて上記の焼結体の作製方法により焼結体を作製し、焼結体の密度、抗折強度、結晶粒径、構成分モル比及び不純物元素の評価を行なった。なお、焼結条件としては、1350℃で2時間を用いた。結果を表2に示す。
また、上記の成膜時の割れの観察方法によりターゲットを作製し、スパッタリングでのターゲット割れを評価した。結果を表2に示す。
(実施例4)
まず最大粒径3μmの炭酸バリウム粉末711.8gと、最大粒径2μmの酸化チタン粉末288.2gをBaTiO組成となるように調合した。これに純水1.5kgを加え、直径3mmのZrOボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で48時間の混合粉砕を行った。得られたスラリーを乾燥造粒後、1000℃で2時間保持してカ焼してBTカ焼粉末を得た。また、最大粒径5μmの酸化ビスマス粉末660.4gと、最大粒径2μmの酸化チタン粉末339.6gをBi(TiO組成となるように調合した。これに純水1.2kgを加え、直径3mmのZrOボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で48時間の混合粉砕を行った。得られたスラリーを乾燥造粒後、850℃で2時間保持してカ焼してBi(TiOカ焼粉末を得た。
得られたBTカ焼粉末852.6gとBi(TiOカ焼粉末147.4gを秤量し、純水2.0kgとPVAバインダ10gを添加し、直径3mmの窒化珪素ボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で24時間の解砕を行った。このときのスラリーの粘度と粒度分布を測定した。結果を表1に示す。
得られたスラリーを用いて6時間静止沈殿を行なった後、上澄みを除去し残部を5Cのろ紙を使用して真空ろ過した。さらに得られた固形物に2.0kgの純水を加えて、2時間攪拌洗浄を行なった。その後、2時間静止沈殿を行なった後、上澄み液を除去し残部を5Cのろ紙を使用して真空ろ過を再度行った。得られた固形物を乾燥造粒して、BT複合酸化物粉末を得た。
得られた複合酸化物粉末を用いて上記の焼結体の作製方法により焼結体を作製し、焼結体の密度、抗折強度、結晶粒径、構成分モル比及び不純物元素の評価を行なった。なお、焼結条件としては、1000℃で2時間を用いた。結果を表2に示す。
また、上記の成膜時の割れの観察方法によりターゲットを作製し、スパッタリングでのターゲット割れを評価した。結果を表2に示す。
(実施例5)
まず、最大粒径3μmの炭酸バリウム粉末711.8gと、最大粒径2μmの酸化チタン粉末288.2gをBaTiO組成となるように調合した。これに純水1.5kgを加え、直径10mmのZrOボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で12時間の混合粉砕を行った。得られたスラリーを乾燥造粒後、1000℃で2時間保持してカ焼してカ焼粉末を得た。
これに再度、純水2.0kgとPVAバインダ10gを添加し、直径3mmの窒化珪素ボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で24時間の解砕を行った。このときのスラリーの粘度と粒度分布を測定した。結果を表1に示す。
得られたスラリーを用いて6時間静止沈殿を行なった後、上澄みを除去し残部を5Cのろ紙を使用して真空ろ過した。さらに得られた固形物に2.0kgの純水を加えて、2時間攪拌洗浄を行なった。その後、2時間静止沈殿を行なった後、上澄み液を除去し残部を5Cのろ紙を使用して真空ろ過を再度行った。得られた固形物を乾燥造粒して、BT複合酸化物粉末を得た。
得られた複合酸化物粉末を用いて上記の焼結体の作製方法により焼結体を作製し、焼結体の密度、抗折強度、結晶粒径、構成分モル比及び不純物元素の評価を行なった。なお、焼結条件としては、1300℃で2時間を用いた。結果を表2に示す。
また、成膜時の割れの観察方法によりターゲットを作製し、スパッタリングでのターゲット割れを評価した。結果を表2に示す。
(比較例1)
まず、最大粒径3μmの炭酸バリウム粉末711.8gと、最大粒径2μmの酸化チタン粉末288.2gをBaTiO組成となるように調合した。これに純水1.5kgを加え、直径10mmのZrOボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で12時間の混合粉砕を行った。得られたスラリーを乾燥造粒後、1000℃で2時間保持してカ焼してカ焼粉末を得た。
これに再度、純水1.2kgとPVAバインダ10gを添加し、直径10mmのZrOボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で24時間の解砕を行った。このときのスラリーの粘度と粒度分布を測定した。結果を表1に示す。
次いで、得られた固形物を乾燥造粒して、BT複合酸化物粉末を得た。得られた複合酸化物粉末を用いて上記の焼結体の作製方法により焼結体を作製し、焼結体の密度、抗折強度、結晶粒径、構成分モル比及び不純物元素の評価を行なった。なお、焼結条件としては、1300℃で2時間を用いた。結果を表2に示す。
また、成膜時の割れの観察方法によりターゲットを作製し、スパッタリングでのターゲット割れを評価した。結果を表2に示す。
(比較例2)
まず、最大粒径3μmの炭酸バリウム粉末711.8gと、最大粒径2μmの酸化チタン粉末288.2gをBaTiO組成となるように調合した。これに純水1.5kgを加え、直径3mmのZrOボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で48時間の混合粉砕を行った。得られたスラリーを乾燥造粒後、1000℃で2時間保持してカ焼してカ焼粉末を得た。
これに再度、純水2.0kgとPVAバインダ10gを添加し、直径3mmの窒化珪素ボールを用いてボールミル(回転数100rpm)で24時間の解砕を行った。このときのスラリーの粘度と粒度分布を測定した。結果を表1に示す。
次いで、得られた固形物を乾燥造粒して、BT複合酸化物粉末を得た。得られた複合酸化物粉末を用いて上記の焼結体の作製方法により焼結体を作製し、焼結体の密度、抗折強度、結晶粒径、構成分モル比及び不純物元素の評価を行なった。なお、焼結条件としては、1300℃で2時間を用いた。結果を表2に示す。
また、成膜時の割れの観察方法によりターゲットを作製し、スパッタリングでのターゲット割れを評価した。結果を表2に示す。
Figure 2006256934
Figure 2006256934
表1、2より、実施例1〜5では、カ焼粉末を得る第1の工程、カ焼粉末スラリーを得る第2の工程、不純物元素が洗浄分離された粉末を得る第3の工程、及び複合酸化物粉末を得る第4の工程が所定の条件で本発明の方法に従って行われたので、得られた複合酸化物粉を用いて作製された焼結体の構成成分のモル比が化学量論比に近く、不純物元素が低くので、密度が95%以上、抗折強度が8.0kg/mm以上、平均結晶粒径が10μm以下であり、スパッタリングでのターゲットの割れは発生しないことが分かる。
これに対して、比較例1又は2では、不純物元素が洗浄分離された粉末を得る第3の工程がこれらの条件に合わないので、得られた複合酸化物粉を用いて作製された焼結体の構成成分のモル比が化学量論比から大きくずれており、不純物元素が高いため、密度、抗折強度、平均結晶粒径のいずれかで所望の性能が得られないので、スパッタリングでのターゲットの割れが発生し満足すべき結果が得られないことが分かる。
以上より明らかなように、本発明の高誘電体材料とその製造方法は、不純物元素の含有量が非常に低いため、組織が均一で高密度かつ高強度のスパッタリングターゲットを製造するための原料として好適な高誘電体材料であり、そを効率的かつ安定的に製造することができる製造方法であるので、半導体メモリー等のキャパシタ用薄膜形成材料として用いられる高誘電体膜形成用のスパッタリングターゲットとして好適に用いられる。
本発明の製造方法の工程と得られた複合酸化物粉末を用いてターゲットを製造する工程を組合せた、原料粉末からターゲットまでの一連の工程の一例を表す図である。
符号の説明
1 第1の工程
2 第2の工程
3 第3の工程
4 第4の工程
5 成形・焼結工程
6 加工工程
7 バリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物粉末
8 チタンの酸化物粉末
9 カ焼粉末
10 カ焼粉末スラリー
11 洗浄後粉末
12 複合酸化物粉末
13 焼結体
14 ターゲット

Claims (6)

  1. バリウム、ストロンチウム、又はカルシウムから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物粉末とチタンの酸化物粉末を原料粉末として用い、それから複合酸化物粉末を合成して高誘電体材料を製造する方法において、
    (1)前記原料粉末を所定の配合比で調合し混合して得た混合粉末を800〜1100℃の温度に保持してカ焼に付し、カ焼粉末を得る第1の工程、
    (2)第1の工程で得られるカ焼粉末を湿式解砕に付し、粉砕された粉末の累積粒度分布90重量%にあたる粒径を3μm以下、かつ累積粒度分布50重量%にあたる粒径を2μm以下になるように粒度分布を調整したカ焼粉末スラリーを得る第2の工程、
    (3)第2の工程で得られるカ焼粉末スラリーを真空ろ過に付し、得られた粉末に純水を加えて洗浄し再度真空ろ過に付し、不純物元素が洗浄分離された粉末を得る第3の工程、及び
    (4)第3の工程で得られる粉末を乾燥造粒に付し、複合酸化物粉末を得る第4の工程、を含むことを特徴とする高誘電体材料の製造方法。
  2. 第2の工程において、カ焼粉末スラリーの粘度が20dPa・s以下になるように解砕されることを特徴とする請求項1に記載の高誘電体材料の製造方法。
  3. 第2の工程で用いる湿式解砕装置は、直径10mm以下の大きさの窒化珪素製ボールを用いる湿式ボールミルであることを特徴とする請求項1に記載の高誘電体材料の製造方法。
  4. 第2の工程で用いるカ焼粉末は、2種類以上の複合酸化物のカ焼粉末であることを特徴とする請求項1に記載の高誘電体材料の製造方法。
  5. 第2の工程において、前記カ焼粉末に対して添加成分としてマグネシウム、スズ、ジルコニウム、ビスマス、マンガン、又はランタンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はチタン酸塩を添加することを特徴とする請求項1に記載の高誘電体材料の製造方法。
  6. 高誘電体膜形成用のスパッタリングターゲットに用いる、請求項1〜5のいずれかの製造方法により得られた高誘電体材料であって、
    不純物元素の含有量は、ナトリウム、アルミニウム、鉄、又はジルコニアがいずれも10ppm以下、ケイ素が50ppm以下であることを特徴とする高誘電体材料。
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