JP2006227533A - 無機配向膜の形成方法、無機配向膜、電子デバイス用基板、液晶パネルおよび電子機器 - Google Patents

無機配向膜の形成方法、無機配向膜、電子デバイス用基板、液晶パネルおよび電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】液晶材料等の有機材料の分解劣化等を生じさせ難い無機配向膜を提供すること、当該無機配向膜を確実に形成することができる無機配向膜の形成方法を提供すること、前記無機配向膜を備える信頼性の高い電子デバイス用基板、液晶パネルおよび電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の無機配向膜の形成方法は、イオンビーム源S1からのイオンビームをターゲット500に向けて照射することにより、スパッタ粒子を引き出し、前記スパッタ粒子を基材100上に入射させ、酸化物で構成された無機配向膜を形成する方法であって、ターゲットとして酸化物で構成されたものを用いるとともに、イオンビーム源に酸素を含むガスS13を導入して酸素のイオンを発生させ、当該酸素のイオンを含むイオンビームを照射することを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、無機配向膜の形成方法、無機配向膜、電子デバイス用基板、液晶パネルおよび電子機器に関するものである。
スクリーン上に画像を投影する投射型表示装置が知られている。この投射型表示装置では、その画像形成に主として液晶パネルが用いられている。
このような液晶パネルは、通常、液晶分子を一定方向に配向させるため、所定のプレチルト角が発現するように設定された配向膜を有している。これらの配向膜を製造するには、基材上に成膜されたポリイミド等の高分子化合物からなる薄膜を、レーヨン等の布で一方向に擦るラビング処理する方法等が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、ポリイミド等の高分子化合物で構成された配向膜は、使用環境、使用時間等により、光劣化を生じることがあった。このような光劣化が起こると、配向膜、液晶層等の構成材料が分解し、その分解生成物が液晶の性能等に悪影響を及ぼすことがある。また、このラビング処理では静電気や埃が発生し、それにより信頼性等が低下するといった問題がある。
このような問題を解決する目的で、無機材料で構成された配向膜(無機配向膜)を採用する試みがある。無機配向膜は、一般に、無機材料(無機配向膜形成用材料)をターゲットとして用いる気相成膜法により形成されるが、従来の方法では、以下のような問題があった。
すなわち、無機配向膜を構成するような無機材料は、それ自体が、一般に、有機材料に比べて高い化学的安定性を有するものの、無機配向膜を備えた液晶パネルとしたときに、液晶相を構成する液晶材料の分解、劣化が促進されるという問題点があった。すなわち、無機材料を用いることにより、無機配向膜の安定性を向上させることはできるものの、それに接触する液晶材料等の分解劣化等を促進し、液晶パネルとしての耐久性、信頼性を損ねてしまうという問題点があった。
特開平10−161133号公報(特許請求の範囲)
本発明の目的は、液晶材料等の有機材料の分解劣化等を生じさせ難い無機配向膜を提供すること、当該無機配向膜を確実に形成することができる無機配向膜の形成方法を提供すること、前記無機配向膜を備える信頼性の高い電子デバイス用基板、液晶パネルおよび電子機器を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の無機配向膜の形成方法は、イオンビーム源からのイオンビームをターゲットに向けて照射することにより、スパッタ粒子を引き出し、前記スパッタ粒子を基材上に入射させ、酸化物で構成された無機配向膜を形成する方法であって、
前記ターゲットとして前記酸化物で構成されたものを用いるとともに、
前記イオンビーム源に酸素を含むガスを導入して酸素のイオンを発生させ、当該酸素のイオンを含むイオンビームを照射することを特徴とする。
これにより、液晶材料等の有機材料の分解劣化等を生じさせ難い無機配向膜を確実に形成することができる無機配向膜の形成方法を提供することができる。
本発明の無機配向膜の形成方法では、前記イオンビーム源に導入する前記ガス中の酸素濃度を経時的に変化させることが好ましい。
これにより、酸素のイオンをより確実に発生させることができ、その結果、形成される無機配向膜の化学的反応性を、より確実に低いものとすることができる。
本発明の無機配向膜の形成方法では、前記ガスとして、酸素とアルゴンとの混合物で構成される第1のガスを用いる第1の段階と、
前記ガスとして、前記第1の段階で用いた前記第1のガスよりも酸素の含有率の高い第2のガスを用いる第2の段階とを有することが好ましい。
これにより、酸素のイオンをより確実に発生させることができ、その結果、形成される無機配向膜の化学的反応性を、より確実に低いものとすることができる。
本発明の無機配向膜の形成方法では、前記イオンビームの照射を行うチャンバは、その内壁面の少なくとも一部が、前記ターゲットと同一の材料で構成されたものであることが好ましい。
これにより、無機配向膜中に不純物が混入するのをより確実に防止することができ、その結果、形成される無機配向膜の化学的反応性を、より確実に低いものとすることができる。
本発明の無機配向膜の形成方法では、前記スパッタ粒子を、前記基材の前記無機配向膜を形成する面の垂直方向に対して所定の角度θだけ傾斜させた方向から前記基材上に入射させ、
前記基材上に、主として酸化物で構成された柱状の結晶が、前記基材の前記無機配向膜を形成する面の面方向に対して、傾斜した状態で配向した前記無機配向膜を形成することが好ましい。
これにより、プレチルト角をより確実に制御することができ、無機配向膜の配向特性(液晶材料の配向状態を規制する機能)を特に優れたものとすることができる。
本発明の無機配向膜の形成方法では、前記所定の角度θは、40°以上であることが好ましい。
これにより、無機配向膜を構成する柱状結晶の頂部付近の形状を、液晶材料がより安定して配向することが可能な形状とすることができ、その結果、無機配向膜の配向特性をさらに優れたものとすることができる。
本発明の無機配向膜の形成方法では、前記基材上に到達する前記スパッタ粒子のエネルギーおよび/または数を制御することにより、前記柱状の結晶の頂部付近の形状を制御することが好ましい。
これにより、無機配向膜を構成する柱状結晶の頂部付近の形状を、液晶材料がより安定して配向することが可能な形状とすることができ、その結果、無機配向膜の配向特性をさらに優れたものとすることができる。
本発明の無機配向膜の形成方法では、前記柱状の結晶は、前記基材に対して所定の角度θだけ傾斜した状態で配向したものであることが好ましい。
これにより、適度なプレチルト角を発現させることができ、液晶材料の配向状態をより好適に規制することができる。
本発明の無機配向膜の形成方法では、前記酸化物は、二酸化ケイ素で構成されるものであることが好ましい。
これにより、無機配向膜の化学的反応性を、特に低いものとすることができる。その結果、配向膜の信頼性は、特に優れたものとなる。
本発明の無機配向膜は、本発明の無機配向膜の形成方法により形成されたことを特徴とする。
これにより、配向特性(液晶材料の配向状態を規制する機能)に優れ、かつ、耐光性に優れた、信頼性の高い無機配向膜を提供することができる。
本発明の無機配向膜では、無機配向膜の平均厚さは、0.02〜0.3μmであることが好ましい。
これにより、より適度なプレチルト角を発現させることができ、液晶材料の配向状態をより好適に規制することができる。
本発明の電子デバイス用基板は、基板上に、電極と、
本発明の無機配向膜とを備えることを特徴とする。
これにより、配向特性(液晶材料の配向状態を規制する機能)に優れ、かつ、耐光性に優れた、信頼性の高い電子デバイス用基板を提供することができる。
本発明の液晶パネルは、本発明の無機配向膜と、液晶層とを備えたことを特徴とする。
これにより、配向特性(液晶材料の配向状態を規制する機能)に優れ、かつ、耐光性に優れた、信頼性の高い液晶パネルを提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の液晶パネルを備えたことを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、無機配向膜形成装置、無機配向膜の形成方法の説明に先立ち、本発明の液晶パネルについて説明する。
図1は、本発明の液晶パネルの第1実施形態を示す模式的な縦断面図、図2は、本発明の方法により形成された無機配向膜を示す縦断面図である。
図1に示すように、液晶パネル1Aは、液晶層2と、無機配向膜3A、4Aと、透明導電膜5、6と、偏光膜7A、8Aと、基板9、10とを有している。
液晶層2は、主として、液晶材料で構成されている。
液晶層2を構成する液晶材料としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶など配向し得るものであればいかなる液晶材料を用いても構わないが、TN型液晶パネルの場合、ネマチック液晶を形成させるものが好ましく、例えば、フェニルシクロヘキサン誘導体液晶、ビフェニル誘導体液晶、ビフェニルシクロヘキサン誘導体液晶、テルフェニル誘導体液晶、フェニルエーテル誘導体液晶、フェニルエステル誘導体液晶、ビシクロヘキサン誘導体液晶、アゾメチン誘導体液晶、アゾキシ誘導体液晶、ピリミジン誘導体液晶、ジオキサン誘導体液晶、キュバン誘導体液晶等が挙げられる。さらに、これらネマチック液晶分子にモノフルオロ基、ジフルオロ基、トリフルオロ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基などのフッ素系置換基を導入した液晶分子も含まれる。
液晶層2の両面には、無機配向膜3A、4Aが配置されている。
また、無機配向膜3Aは、後述するような透明導電膜5と基板9とからなる基材100上に形成されており、無機配向膜4Aは、後述するような透明導電膜6と基板10とからなる基材101上に形成されている。
無機配向膜3A、4Aは、液晶層2を構成する液晶材料(液晶分子)の(電圧無印加時における)配向状態を規制する機能を有している。
このような無機配向膜3A、4Aは、例えば、後述するような方法(本発明の無機配向膜の形成方法)により形成され、図2に示すように、柱状の結晶が、基材100の無機配向膜が形成されている面の面方向に対して、所定(一定)の方向に所定の角度θだけ傾斜した状態で配列した構成となっている。特に、本実施形態では、無機配向膜3A、4Aを構成する柱状結晶の頂部付近の形状が、液晶材料を安定して配向させることが可能な形状となっている。
本実施形態では、無機配向膜3A、4Aを構成する各柱状結晶は、柱状結晶の頂部付近において、図2に示すように、比較的平坦で、かつ、基材100の無機配向膜が形成されている面とのなす角度θ’が柱状結晶の傾斜角θよりも小さい部位を有している。このような構成とすると、各柱状結晶の比較的平坦な部位のそれぞれに、液晶分子が安定した状態で配置されるため、適度なプレチルト角を発現させることができ、電圧の印加時における液晶分子の立ち上がりをより好適に規制することができる。
基材100に対する柱状の結晶の傾きθは、30〜60°であるのが好ましく、40〜50°であるのがより好ましい。これにより、より適度なプレチルト角を発現させることができ、液晶分子の配向状態をより好適に規制することができる。
また、このような柱状の結晶の幅Wは、10〜40nmであるのが好ましく、10〜20nmであるのがより好ましい。これにより、より適度なプレチルト角を発現させることができ、液晶分子の配向状態をより好適に規制することができる。
無機配向膜3A、4Aは、無機材料、特に、無機酸化物で構成されている。一般に、無機材料は、それ自体が、有機材料に比べて、優れた化学的安定性を有している。また、無機配向膜3A、4Aは、後に詳述するように、ダングリングボンド(未結合手)の少ない無機酸化物で構成されている。このため、液晶層2を構成する液晶材料等の有機材料の分解劣化等を生じ難い。言い換えると、液晶パネル1Aにおいては、配向膜3A、4Aの耐光性が優れるとともに、液晶層2を構成する液晶材料等の有機材料の分解劣化等が生じ難い。したがって、液晶パネル1A全体としての耐久性、信頼性は、優れたものとなっている。
また、無機配向膜3A、4Aを構成する無機材料(無機酸化物)は、図2に示すように、柱状に結晶化し得るものであるのが好ましい。これにより、液晶層2を構成する液晶分子の(電圧無印加時における)配向状態(プレチルト角)をより容易に規制することができる。
上述したような無機材料(無機酸化物)としては、例えば、SiOやSiO等の酸化ケイ素(シリコンの酸化物)、Al等の酸化アルミニウム(アルミニウムの酸化物)、ZnO等の酸化亜鉛(亜鉛の酸化物)、MgO、ITO等の各種金属酸化物等を用いることができる。このような酸化物は、一般に、Mの一般式(ただし、Mは金属元素であり、X、Yはそれぞれ正の数。)で表すことができるが、Mについて複数種の酸化物がある場合、Mの酸化数がより大きい材料であるのが好ましい。例えば、酸化ケイ素としては、SiOとSiOが知られているが、酸化数のより大きいSiOが好ましい。これにより、無機配向膜3A、4Aの化学的反応性をより低いものとすることができ、液晶材料等の有機材料の分解劣化をより確実に防止することができる。また、SiOは、それ自体の化学的安定性に優れるとともに、優れた透明性を有する点でも無機配向膜3A、4Aの構成材料として好ましい。
このような無機配向膜3A、4Aは、その平均厚さが0.02〜0.3μmであるのが好ましく、0.02〜0.08μmであるのがより好ましい。平均厚さが前記下限値未満であると、各部位におけるプレチルト角を十分に均一にするのが困難となる場合がある。一方、平均厚さが前記上限値を超えると、駆動電圧が高くなり、消費電力が大きくなる可能性がある。
無機配向膜3Aの外表面側(液晶層2と対向する面とは反対側の面側)には、透明導電膜5が配置されている。同様に、無機配向膜4Aの外表面側(液晶層2と対向する面とは反対側の面側)には、透明導電膜6が配置されている。
透明導電膜5、6は、これらの間で通電を行うことにより、液晶層2の液晶分子を駆動する(配向を変化させる)機能を有する。
透明導電膜5、6間での通電の制御は、透明導電膜に接続された制御回路(図示せず)から供給する電流を制御することにより行われる。
透明導電膜5、6は、導電性を有しており、例えば、インジウムティンオキサイド(ITO)、インジウムオキサイド(IO)、酸化スズ(SnO)等で構成されている。
透明導電膜5の外表面側(無機配向膜3Aと対向する面とは反対側の面側)には、基板9が配置されている。同様に、透明導電膜6の外表面側(無機配向膜4Aと対向する面とは反対側の面側)には、基板10が配置されている。
基板9、10は、前述した液晶層2、無機配向膜3A、4A、透明導電膜5、6、および後述する偏光膜7A、8Aを支持する機能を有している。基板9、10の構成材料は、特に限定されず、例えば、石英ガラス等のガラスやポリエチレンテレフタレート等のプラスチック材料等が挙げられる。この中でも特に、石英ガラス等のガラスで構成されたものであるのが好ましい。これにより、そり、たわみ等の生じにくい、より安定性に優れた液晶パネルを得ることができる。なお、図1では、シール材、配線等の記載は省略した。
基板9の外表面側(透明導電膜5と対向する面とは反対側の面側)には、偏光膜(偏光板、偏光フィルム)7Aが配置されている。同様に、基板10の外表面側(透明導電膜6と対向する面とは反対側の面側)には、偏光膜(偏光板、偏光フィルム)8Aが配置されている。
偏光膜7A、8Aの構成材料としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。また、偏光膜としては、前記材料にヨウ素をドープしたもの等を用いてもよい。
偏光膜としては、例えば、上記材料で構成された膜を一軸方向に延伸したものを用いることができる。
このような偏光膜7A、8Aに配置することにより、通電量の調節による光の透過率の制御をより確実に行うことができる。
偏光膜7A、8Aの偏光軸の方向は、通常、無機配向膜3A、4Aの配向方向に応じて決定される。
なお、本実施形態では、無機配向膜として、図2に示すような構成のものについて説明したが、これに限定されず、液晶分子が安定して配向するような形状であれば、いずれの形状であってもよい。
次に、上述したような無機配向膜の形成に用いる無機配向膜形成装置および無機配向膜の形成方法について説明する。
図3は、無機配向膜の形成方法に用いる本発明の無機配向膜形成装置の模式図である。
まず、無機配向膜形成装置について説明する。
図3に示す無機配向膜形成装置S100は、イオンビームを照射するイオン源(イオンビーム源)S1と、イオンビームの方向に電子を放出するニュートラライザS2と、真空チャンバS3と、真空チャンバS3内の圧力を制御する排気ポンプS4と、無機配向膜が形成されるべき基材を真空チャンバS3内に固定する基材ホルダーS5と、ターゲット500を保持するターゲット保持部材(バッキングプレート)S6とを有している。
イオン源S1は、イオンビームを照射するものであり、本実施形態では、RFイオン源を用いている。イオン源(RFイオン源)S1では、酸素を含むガスをガス供給源S13から供給するとともに、当該ガスをRF放電させることにより、イオン化(プラズマ化)させる。そして、グリッド(図示せず)間に電圧を印加することにより、イオン化(プラズマ化)されたガスをイオンビームとして出射させる。
ニュートラライザS2は、イオンビームの方向に電子を放出するものである。これにより、ターゲット500等に、過剰な電荷が溜まるのを防止抑制することができ、継続的に成膜を行った場合であっても、スパッタ粒子を基材の方向に安定的に引き出すことができる。
また、ターゲット保持部材S6は、通常、ステンレス鋼、銅、銅合金等の熱伝導性に優れる金属材料で構成されている。無機配向膜の形成時には、ターゲット500は、In等のボンディング剤を介して、ターゲット保持部材S6に固定される。
また、真空チャンバ(チャンバ)S3は、その内面が、ターゲットと同一の材料で構成された板状部材S31で構成されている。言い換えると、真空チャンバS3は、その内壁面S32の少なくとも一部が、ターゲット500と同一の材料で構成されている。このような内壁面S32(板状部材S31)は、ターゲット500から引き出されたスパッタ粒子との密着性に優れている。このため、ターゲット500へのイオンビームの照射が行われた際に、ターゲット500から引き出されたスパッタ粒子の一部が、基材上に堆積せず、真空チャンバS3の内壁面S32に付着したとしても、このような付着物を確実に保持することができる。特に、真空チャンバS3内において、温度変化や圧力変化が生じた場合であっても、十分な密着性を保持することができる。これにより、スパッタ粒子による付着物が、内壁面S32から剥落するのを効果的に防止することができる。その結果、スパッタ粒子による付着物が、内壁面から剥落し、粉塵、ダスト状の異物(汚れ)として、チャンバ内や、基材等を汚染するといった問題の発生を確実に防止することができる。また、真空チャンバS3の内壁面S32がターゲット500と同一の材料で構成されていることにより、後述するような無機配向膜の形成時において、イオンビームの一部が、ターゲット500ではなく、真空チャンバS3の内壁面S32に照射されてしまったとしても、無機配向膜の構成材料以外の材料が引き出されてしまうのを防止することができ、成形される無機配向膜の特性に悪影響を及ぼすのを、より確実に防止することができる。また、このような構成の真空チャンバS3は、長期間にわたって、上記のような優れた効果を発揮することができる。したがって、無機配向膜形成装置S100のメンテナンスも容易である。
特に、図示の構成では、真空チャンバS3は、その内壁面S32全体が、ターゲット500と同一の材料で構成された板状部材S31によって形成されている。これにより、スパッタ粒子による付着物が、内壁面S32から剥落するのを効果的に防止することができる。
真空チャンバS3の内壁面S32を構成する板状部材S31の厚さ(ターゲット500と同じ材料で構成された部分の厚さ)は、特に限定されないが、0.5〜3.0mmであるのが好ましく、1〜2mmであるのがより好ましい。板状部材S31の厚さが前記下限値未満であると、ターゲット500、板状部材S31の構成材料等によっては、本発明の効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、板状部材S31の厚さが前記上限値を超えると、上述したような効果は飽和し、さらなる向上が望めなくなる。
また、板状部材S31は、必要に応じて、チャンバ本体S30から、取り外し可能であるのが好ましい。これにより、板状部材S31上への付着物の堆積量が多くなった場合(例えば、付着物の厚さが5000nm以上となった場合等)に、板状部材S31を容易に交換することができる。なお、付着物は、板状部材S31との密着性に優れているので、このような板状部材の取り外しの際にも、付着物が剥落するのを確実に防止することができる。
上述したように、無機配向膜形成装置S100は、真空チャンバS3の内壁面S32がターゲット500と同一材料で構成されたものであればよいが、真空チャンバS3内の部材、すなわち、基材ホルダーS5、ターゲット保持部材S6等も、その表面付近がターゲット500と同一の材料(内壁面S32と同一の材料)で構成されていてもよい。これにより、上述したような問題の発生をより確実に防止することができる。このような場合、これらの部材についての、ターゲット500と同一の材料(内壁面S32と同一の材料)で構成された部位の厚さは、0.5〜3.0mmであるのが好ましく、1〜2mmであるのがより好ましい。
次に、図示の構成のような無機配向膜形成装置を用いた、本発明の無機配向膜の形成方法について説明する。以下、代表的に、無機配向膜3Aを形成する場合について説明する。
<1>まず、真空チャンバS3内のターゲット保持部材S6にターゲット500を設置する。ターゲット500を構成する材料は、無機配向膜3Aを形成する材料によって適宜選択され、例えば、SiOで構成された無機配向膜を形成する場合には、ターゲット500として、SiOで構成されたものを好適に用いることができる。
<2>次に、真空チャンバS3内の基材ホルダーS5に、基材100を設置する。
<3>次に、排気ポンプS4により、真空チャンバS3内を減圧する。
<4>次に、イオン源S1内に、ガス供給源S13よりガス(後に詳述するような酸素を含むガス)を供給するとともに、イオン源S1において放電(RFまたはDC放電)を行うことにより、導入されたガスをイオン化(プラズマ化)する。そして、図示しないグリッド間に電圧を印加することにより、イオン化(プラズマ化)されたガスを加速し、イオンビームとして、ターゲット500に向けて出射させる。一方、ニュートラライザS2からは、イオン源S1から出射されたイオンビームの方向に向けて、電子を放出させる。これにより、イオン源S1から出射されたイオンビームの電気的な中和が進行する。これにより、ターゲット500等に、過剰な電荷が溜まるのを防止抑制することができ、継続的に成膜を行った場合であっても、スパッタ粒子を基材の方向に安定的に引き出すことができる。
<5>イオン源S1から出射されたイオンビーム(ニュートラライザS2からの電子により電気的な中和が進行したビーム)は、ターゲット500に衝突する。これにより、ターゲット500からは、スパッタ粒子が引き出され、当該スパッタ粒子を基材100上に入射、堆積させる。
そして、上記のようなイオンビームの照射を続けることにより、スパッタ粒子の基材100上への入射、堆積が進行し、基材100上に無機配向膜3Aが形成された基板(本発明の電子デバイス用基板(電子デバイス用基板200))が得られる。
ところで、従来のイオンビームスパッタ法(プロセスガスとしてアルゴンガスを用いるイオンビームスパッタ法)を採用した場合には、形成される無機配向膜の化学的安定性は優れているものの、無機配向膜を備えた液晶パネルとしたときに、液晶相を構成する液晶材料の分解、劣化が促進されるという問題点があった。すなわち、無機材料を用いることにより、無機配向膜の安定性を向上させることはできるものの、それに接触する液晶材料等の分解劣化等を促進し、液晶パネルとしての耐久性、信頼性を損ねてしまうという問題点があった。
そこで、本発明者は、鋭意研究を行った結果、プロセスガスとして、酸素を含むガスを用いることにより、形成される無機配向膜化学的安定性を十分に高いものとしつつ、無機配向膜の化学的反応性を低くすることができることを見出した。これは、以下のような理由によるものであると考えられる。すなわち、イオンビームスパッタ法においては、ターゲットに入射するビームのエネルギーが高い。このため、従来の方法においては、ターゲットとして、無機配向膜の構成材料であるべき無機酸化物を用いたとしても、イオンビームの照射により、引き出されたイオンビームの照射により引き出されるスパッタ粒子から、酸素原子が離脱してしまい、形成される無機配向膜は、ダングリングボンド(未結合手)を有する(一部酸素が欠損した)材料で構成されたものとなる(例えば、ターゲットとして、SiOを用いた場合に、形成される無機配向膜は、酸素原子が一部欠損したSiOを含むものとなる。)。このように、無機配向膜がダングリングボンドを有する材料で構成されたものであると、その化学的反応性が高まり、例えば、液晶パネルとしたときに、無機配向膜と接触する液晶材料の分解反応等を促進することとなる。また、一旦、このような分解反応が起こると、上記のような化学反応が連鎖的に進行する。その結果、液晶材料の耐久性は著しく低下し、液晶パネルとしての信頼性も低下する。これに対し、酸素を含むガスを用いることにより、高エネルギー状態のスパッタ粒子においても、酸素原子との結合を保持することができる。その結果、形成される無機配向膜は、未結合手が少なく、化学的反応性の低いものとなる。
本実施形態においても、ガス供給源S13から供給するガスとしては、酸素(O)を含むものを用いる。ガス供給源S13から供給するガスは、酸素を含むものであればよく、例えば、実質的に酸素(O)のみで構成されるものであってもよいし、酸素と他の成分との混合物であってもよい。
また、イオン源S1に導入されるガスは、一定の組成を有するものであってもよいが、組成が経時的に変化するものであってもよい。例えば、イオン源S1に導入するガスの酸素濃度を経時的に変化させてもよい。これにより、例えば、酸素のイオン(プラズマ)をより確実に発生させることができ、その結果、形成される無機配向膜の化学的反応性を、より確実に低いものとすることができる。
また、ガスとして、酸素とアルゴンとの混合物で構成される第1のガスを供給した(第1の段階)後に、第1のガスよりも酸素の含有率の高い(例えば、アルゴンガスを実質的に含まない)第2のガスを供給してもよい(第2の段階)。これにより、以下のような効果が得られる。すなわち、初期の段階(第1の段階)では、酸素(O)に比べて放電インピーダンスの低いアルゴンガスを所定の割合で含むことにより、プラズマを効率良く発生させることができるとともに、その後(第2の段階)には、酸素を高い濃度で含むイオンビームを照射することができ、上記のような問題の発生をより確実に防止することができる。このような場合、第1の段階で用いるガス(第1のガス)中における酸素の含有率は、0.1〜99.9vol%程度であるのが好ましく、また、アルゴンの含有率は、99.9〜0.1vol%程度であるのが好ましい。また、第2の段階で用いるガス(第2のガス)中における酸素の含有率は、0.1〜99.9vol%程度であるのが好ましい。
また、イオンビームの照射時には、ターゲット500より発生したスパッタ粒子が、基材100に、基材100の無機配向膜3Aを形成する面の垂直方向に対して所定の角度(照射角)θだけ傾斜した方向から入射するように、基材ホルダーS5の設置角度を設定するのが好ましい。これにより、主として無機酸化物で構成された柱状の結晶が、基材の無機配向膜を形成する面の面方向に対して、傾斜した状態で配向した無機配向膜を形成することができる。その結果、無機配向膜のプレチルト角をより確実に制御することができ、無機配向膜の配向特性(液晶材料の配向状態を規制する機能)を特に優れたものとすることができる。
角度θは、45°以上であるのが好ましく、50〜87°であるのがより好ましく、70〜87°であるのがさらに好ましい。これにより、無機配向膜3Aを構成する柱状結晶の頂部付近の形状を、液晶分子がより安定して配向することが可能な形状とすることができ、その結果、得られる無機配向膜3Aは液晶分子の配向状態を規制する機能がより優れたものとなる。これに対し、角度θが小さすぎると、十分なプレチルト角が得られず、液晶分子の配向状態を規制する機能が十分に得られない可能性がある。一方、角度θが大きすぎると、ターゲット500から引き出されたスパッタ粒子を、基材100上に確実に付着させるのが困難となり、その結果、基材100と無機配向膜3Aとの密着性が低下するといった問題が生じる可能性がある。
また、本発明者は、上述のように成膜する際に基材に到達するスパッタ粒子のエネルギーおよび/または数を制御することにより、無機配向膜の配向性をより好適に制御することができることを見出した。より詳しく説明すると、基材に到達するスパッタ粒子のエネルギーおよび/または数を制御することにより、無機配向膜3Aを構成する柱状結晶の頂部付近の形状を、液晶材料がより安定して配向することが可能な形状とすることができ、その結果、無機配向膜の配向特性をさらに優れたものとすることができる。
さらに、以下のような条件(1)および(2)のうち、少なくとも1つを満足するのが好ましく、2つを同時に満足するのがより好ましい。
(1)イオン源S1でのイオンビームの加速電圧が、800〜3000eVである。
(2)イオン源S1のイオンビーム電流が、50〜900mAである。
このような条件(1)および(2)のうち、少なくとも1つを満足することにより、ダングリングボンド(未結合手)の少ない無機酸化物で構成された無機配向膜を形成することができるとともに、無機配向膜を構成する柱状結晶の頂部付近の形状を、液晶分子がより安定して配向する形状とすることができ、結果として、プレチルト角をより確実に制御することができる。
特に、前記条件(1)および(2)を同時に満足することにより、前述の効果がより顕著なものとなる。
イオンビームの加速電圧は、上述したように800〜3000eVであるのが好ましいが、1000〜2800eVであるのがより好ましい。これにより、スパッタレートを十分に高いものとしつつ、上述した効果をさらに顕著なものとして発揮されせることができる。
イオン源S1のイオンビーム電流は、上述したように50〜3000mAであるのが好ましいが、100〜600mAであるのがより好ましい。これにより、スパッタレートを十分に高いものとしつつ、上述した効果をさらに顕著なものとして発揮されせることができる。
一般に、基材に対して所定の条件でスパッタ粒子を傾斜させて入射させると、スパッタ粒子の入射角(照射角)に対応した方向に傾斜した柱状結晶を成長させることができ、無機配向膜全体として配向性を有するものとすることができるが、液晶分子の配向性にばらつきが生じてしまう可能性がある。しかしながら、上記のような条件を満足すると、無機配向膜3Aを構成する柱状結晶の頂部付近の形状を、液晶分子がより安定して配向することが可能な形状に制御することができ、その結果、より確実にプレチルト角を制御することができる。
また、真空チャンバS3内の圧力、すなわち、無機配向膜3Aを形成する際の雰囲気の圧力は、5.0×10−2Pa以下であるのが好ましく、1.0×10−2Pa以下であるのがより好ましい。これにより、液晶分子がより安定して配向可能な無機配向膜3Aを形成することができる。これに対し、真空チャンバS3内の圧力が高すぎると、スパッタ粒子の直進性が低下してしまう場合があり、その結果、柱状の結晶が十分に形成されない可能性がある。また、結晶の配向が十分に揃わない可能性がある。なお、真空チャンバS3内の雰囲気中には、酸素が含まれていてもよい。これにより、上述したような問題の発生をより確実に防止することができる。
無機配向膜3Aを形成する際の基材100の温度は、比較的低いのが好ましい。具体的には、基材100の温度は、150℃以下とするのが好ましく、80℃以下とするのがより好ましく、20〜50℃とするのがさらに好ましい。これにより、基材100に付着したスパッタ粒子が最初に付着した位置から移動する現象、すなわちマイグレーションという現象を抑制し、液晶分子がより安定して配向可能な無機配向膜3Aを形成することができる。なお、無機配向膜3Aを形成する際の基材100の温度が、上記範囲のものとなるように、必要に応じて冷却してもよい。
無機配向膜3Aの形成速度(成膜速度)は、特に限定されないが、1〜15nm/分であるのが好ましく、6〜10nm/分であるのがより好ましい。これにより、得られる無機配向膜の配向性を損なうことなく、より効率よく無機配向膜を形成することができる。
以上、無機配向膜3Aを形成する場合について説明したが、無機配向膜4Aについても同様に形成することができる。
次に、本発明の液晶パネルの第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の液晶パネルの第2実施形態を示す模式的な縦断面図である。以下、図4に示す液晶パネル1Bについて、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図4に示すように、液晶パネル(TFT液晶パネル)1Bは、TFT基板(液晶駆動基板)17と、TFT基板17に接合された無機配向膜3Bと、液晶パネル用対向基板12と、液晶パネル用対向基板12に接合された無機配向膜4Bと、無機配向膜3Bと無機配向膜4Bとの空隙に封入された液晶よりなる液晶層2と、TFT基板(液晶駆動基板)17の外表面側(無機配向膜4Bと対向する面とは反対側の面側)に接合された偏光膜7Bと、液晶パネル用対向基板12の外表面側(無機配向膜4Bと対向する面とは反対側の面側)に接合された偏光膜8Bとを有している。無機配向膜3B、4Bは、前記第1実施形態で説明した無機配向膜3A、4Aと同様の方法(本発明の無機配向膜の形成方法)で形成されたものであり、偏光膜7B、8Bは、前記第1実施形態で説明した偏光膜7A、8Aと同様なものである。
液晶パネル用対向基板12は、マイクロレンズ基板11と、かかるマイクロレンズ基板11の表層114上に設けられ、開口131が形成されたブラックマトリックス13と、表層114上にブラックマトリックス13を覆うように設けられた透明導電膜(共通電極)14とを有している。
マイクロレンズ基板11は、凹曲面を有する複数(多数)の凹部(マイクロレンズ用凹部)112が設けられたマイクロレンズ用凹部付き基板(第1の基板)111と、かかるマイクロレンズ用凹部付き基板111の凹部112が設けられた面に樹脂層(接着剤層)115を介して接合された表層(第2の基板)114とを有しており、また、樹脂層115では、凹部112内に充填された樹脂によりマイクロレンズ113が形成されている。
マイクロレンズ用凹部付き基板111は、平板状の母材(透明基板)より製造され、その表面には、複数(多数)の凹部112が形成されている。凹部112は、例えば、マスクを用いた、ドライエッチング法、ウェットエッチング法等により形成することができる。
このマイクロレンズ用凹部付き基板111は、例えば、ガラス等で構成されている。
前記母材の熱膨張係数は、ガラス基板171の熱膨張係数とほぼ等しいもの(例えば両者の熱膨張係数の比が1/10〜10程度)であることが好ましい。これにより、得られる液晶パネルでは、温度が変化したときに二者の熱膨張係数が違うことにより生じるそり、たわみ、剥離等が防止される。
かかる観点からは、マイクロレンズ用凹部付き基板111と、ガラス基板171とは、同種類の材質で構成されていることが好ましい。これにより、温度変化時の熱膨張係数の相違によるそり、たわみ、剥離等が効果的に防止される。
特に、マイクロレンズ基板11を高温ポリシリコンのTFT液晶パネルに用いる場合には、マイクロレンズ用凹部付き基板111は、石英ガラスで構成されていることが好ましい。TFT液晶パネルは、液晶駆動基板としてTFT基板を有している。かかるTFT基板には、製造時の環境により特性が変化しにくい石英ガラスが好ましく用いられる。このため、これに対応させて、マイクロレンズ用凹部付き基板111を石英ガラスで構成することにより、そり、たわみ等の生じにくい、安定性に優れたTFT液晶パネルを得ることができる。
マイクロレンズ用凹部付き基板111の上面には、凹部112を覆う樹脂層(接着剤層)115が設けられている。
凹部112内には、樹脂層115の構成材料が充填されることにより、マイクロレンズ113が形成されている。
樹脂層115は、例えば、マイクロレンズ用凹部付き基板111の構成材料の屈折率よりも高い屈折率の樹脂(接着剤)で構成することができ、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリルエポキシ系のような紫外線硬化樹脂等で好適に構成することができる。
樹脂層115の上面には、平板状の表層114が設けられている。
表層(ガラス層)114は、例えばガラスで構成することができる。この場合、表層114の熱膨張係数は、マイクロレンズ用凹部付き基板111の熱膨張係数とほぼ等しいもの(例えば両者の熱膨張係数の比が1/10〜10程度)とすることが好ましい。これにより、マイクロレンズ用凹部付き基板111と表層114の熱膨張係数の相違により生じるそり、たわみ、剥離等が防止される。このような効果は、マイクロレンズ用凹部付き基板111と表層114とを同種類の材料で構成すると、より効果的に得られる。
表層114の厚さは、マイクロレンズ基板11が液晶パネルに用いられる場合、必要な光学特性を得る観点からは、通常、5〜1000μm程度とされ、より好ましくは10〜150μm程度とされる。
なお、表層(バリア層)114は、例えばセラミックスで構成することもできる。なお、セラミックスとしては、例えば、AlN、SiN、TiN、BN等の窒化物系セラミックス、Al、TiO等の酸化物系セラミックス、WC、TiC、ZrC、TaC等の炭化物系セラミックスなどが挙げられる。表層114をセラミックスで構成する場合、表層114の厚さは、特に限定されないが、20nm〜20μm程度とすることが好ましく、40nm〜1μm程度とすることがより好ましい。
なお、このような表層114は、必要に応じて省略することができる。
ブラックマトリックス13は、遮光機能を有し、例えば、Cr、Al、Al合金、Ni、Zn、Ti等の金属、カーボンやチタン等を分散した樹脂等で構成されている。
透明導電膜14は、導電性を有し、例えば、インジウムティンオキサイド(ITO)、インジウムオキサイド(IO)、酸化スズ(SnO)等で構成されている。
TFT基板17は、液晶層2の液晶を駆動する基板であり、ガラス基板171と、かかるガラス基板171上に設けられ、マトリックス状(行列状)に配設された複数(多数)の画素電極172と、各画素電極172に対応する複数(多数)の薄膜トランジスタ(TFT)173とを有している。なお、図4では、シール材、配線等の記載は省略した。
ガラス基板171は、前述したような理由から、石英ガラスで構成されていることが好ましい。
画素電極172は、透明導電膜(共通電極)14との間で充放電を行うことにより、液晶層2の液晶を駆動する。この画素電極172は、例えば、前述した透明導電膜14と同様の材料で構成されている。
薄膜トランジスタ173は、近傍の対応する画素電極172に接続されている。また、薄膜トランジスタ173は、図示しない制御回路に接続され、画素電極172へ供給する電流を制御する。これにより、画素電極172の充放電が制御される。
無機配向膜3Bは、TFT基板17の画素電極172と接合しており、無機配向膜4Bは、液晶パネル用対向基板12の透明導電膜14と接合している。
液晶層2は液晶材料(液晶分子)で構成されており、画素電極172の充放電に対応して、かかる液晶分子、すなわち液晶の配向が変化する。
このような液晶パネル1Bでは、通常、1個のマイクロレンズ113と、かかるマイクロレンズ113の光軸Qに対応したブラックマトリックス13の1個の開口131と、1個の画素電極172と、かかる画素電極172に接続された1個の薄膜トランジスタ173とが、1画素に対応している。
液晶パネル用対向基板12側から入射した入射光Lは、マイクロレンズ用凹部付き基板111を通り、マイクロレンズ113を通過する際に集光されつつ、樹脂層115、表層114、ブラックマトリックス13の開口131、透明導電膜14、液晶層2、画素電極172、ガラス基板171を透過する。このとき、マイクロレンズ基板11の入射側に偏光膜8Bが設けられているため、入射光Lが液晶層2を透過する際に、入射光Lは直線偏光となっている。その際、この入射光Lの偏光方向は、液晶層2の液晶分子の配向状態に対応して制御される。したがって、液晶パネル1Bを透過した入射光Lを偏光膜7Bに透過させることにより、出射光の輝度を制御することができる。
このように、液晶パネル1Bは、マイクロレンズ113を有しており、しかも、マイクロレンズ113を通過した入射光Lは、集光されてブラックマトリックス13の開口131を通過する。一方、ブラックマトリックス13の開口131が形成されていない部分では、入射光Lは遮光される。したがって、液晶パネル1Bでは、画素以外の部分から不要光が漏洩することが防止され、かつ、画素部分での入射光Lの減衰が抑制される。このため、液晶パネル1Bは、画素部で高い光の透過率を有する。
この液晶パネル1Bは、例えば、公知の方法により製造されたTFT基板17と液晶パネル用対向基板12とに、それぞれ、無機配向膜3B、4Bを形成し、その後、シール材(図示せず)を介して両者を接合し、次いで、これにより形成された空隙部の封入孔(図示せず)から液晶を空隙部内に注入し、次いで、かかる封入孔を塞ぐことにより製造することができる。
なお、上記液晶パネル1Bでは、液晶駆動基板としてTFT基板を用いたが、液晶駆動基板にTFT基板以外の他の液晶駆動基板、例えば、TFD基板、STN基板などを用いてもよい。
また、上述したような無機配向膜を備える液晶パネルは、光源の強いものや、屋外で用いられるものに好適に用いることができる。
次に、前述したような液晶パネル1Aを備える本発明の電子機器(液晶表示装置)について、図5〜図7に示す実施形態に基づき、詳細に説明する。
図5は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、表示ユニット1106が、前述の液晶パネル1Aと、図示しないバックライトとを備えている。バックライトからの光を液晶パネル1Aに透過させることにより画像(情報)を表示し得るものである。
図6は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、前述の液晶パネル1Aと、図示しないバックライトとを備えている。
図7は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、前述の液晶パネル1Aと、図示しないバックライトとが設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、液晶パネル1Aは、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が液晶パネル1Aに表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
次に、本発明の電子機器の一例として、上記液晶パネル1Bを用いた電子機器(液晶プロジェクター)について説明する。
図8は、本発明の電子機器(投射型表示装置)の光学系を模式的に示す図である。
同図に示すように、投射型表示装置300は、光源301と、複数のインテグレータレンズを備えた照明光学系と、複数のダイクロイックミラー等を備えた色分離光学系(導光光学系)と、赤色に対応した(赤色用の)液晶ライトバルブ(液晶光シャッターアレイ)24と、緑色に対応した(緑色用の)液晶ライトバルブ(液晶光シャッターアレイ)25と、青色に対応した(青色用の)液晶ライトバルブ(液晶光シャッターアレイ)26と、赤色光のみを反射するダイクロイックミラー面211および青色光のみを反射するダイクロイックミラー面212が形成されたダイクロイックプリズム(色合成光学系)21と、投射レンズ(投射光学系)22とを有している。
また、照明光学系は、インテグレータレンズ302および303を有している。色分離光学系は、ミラー304、306、309、青色光および緑色光を反射する(赤色光のみを透過する)ダイクロイックミラー305、緑色光のみを反射するダイクロイックミラー307、青色光のみを反射するダイクロイックミラー(または青色光を反射するミラー)308、集光レンズ310、311、312、313および314とを有している。
液晶ライトバルブ25は、前述した液晶パネル1Bを備えている。液晶ライトバルブ24および26も、液晶ライトバルブ25と同様の構成となっている。これら液晶ライトバルブ24、25および26が備えている液晶パネル1Bは、図示しない駆動回路にそれぞれ接続されている。
なお、投射型表示装置300では、ダイクロイックプリズム21と投射レンズ22とで、光学ブロック20が構成されている。また、この光学ブロック20と、ダイクロイックプリズム21に対して固定的に設置された液晶ライトバルブ24、25および26とで、表示ユニット23が構成されている。
以下、投射型表示装置300の作用を説明する。
光源301から出射された白色光(白色光束)は、インテグレータレンズ302および303を透過する。この白色光の光強度(輝度分布)は、インテグレータレンズ302および303により均一にされる。光源301から出射される白色光は、その光強度が比較的大きいものであるのが好ましい。これにより、スクリーン320上に形成される画像をより鮮明なものとすることができる。また、投射型表示装置300では、耐光性に優れた液晶パネル1Bを用いているため、光源301から出射される光の強度が大きい場合であっても、優れた長期安定性が得られる。
インテグレータレンズ302および303を透過した白色光は、ミラー304で図8中左側に反射し、その反射光のうちの青色光(B)および緑色光(G)は、それぞれダイクロイックミラー305で図8中下側に反射し、赤色光(R)は、ダイクロイックミラー305を透過する。
ダイクロイックミラー305を透過した赤色光は、ミラー306で図8中下側に反射し、その反射光は、集光レンズ310により整形され、赤色用の液晶ライトバルブ24に入射する。
ダイクロイックミラー305で反射した青色光および緑色光のうちの緑色光は、ダイクロイックミラー307で図8中左側に反射し、青色光は、ダイクロイックミラー307を透過する。
ダイクロイックミラー307で反射した緑色光は、集光レンズ311により整形され、緑色用の液晶ライトバルブ25に入射する。
また、ダイクロイックミラー307を透過した青色光は、ダイクロイックミラー(またはミラー)308で図8中左側に反射し、その反射光は、ミラー309で図8中上側に反射する。前記青色光は、集光レンズ312、313および314により整形され、青色用の液晶ライトバルブ26に入射する。
このように、光源301から出射された白色光は、色分離光学系により、赤色、緑色および青色の三原色に色分離され、それぞれ、対応する液晶ライトバルブに導かれ、入射する。
この際、液晶ライトバルブ24が有する液晶パネル1Bの各画素(薄膜トランジスタ173とこれに接続された画素電極172)は、赤色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路(駆動手段)により、スイッチング制御(オン/オフ)、すなわち変調される。
同様に、緑色光および青色光は、それぞれ、液晶ライトバルブ25および26に入射し、それぞれの液晶パネル1Bで変調され、これにより緑色用の画像および青色用の画像が形成される。この際、液晶ライトバルブ25が有する液晶パネル1Bの各画素は、緑色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路によりスイッチング制御され、液晶ライトバルブ26が有する液晶パネル1Bの各画素は、青色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路によりスイッチング制御される。
これにより赤色光、緑色光および青色光は、それぞれ、液晶ライトバルブ24、25および26で変調され、赤色用の画像、緑色用の画像および青色用の画像がそれぞれ形成される。
前記液晶ライトバルブ24により形成された赤色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ24からの赤色光は、面213からダイクロイックプリズム21に入射し、ダイクロイックミラー面211で図8中左側に反射し、ダイクロイックミラー面212を透過して、出射面216から出射する。
また、前記液晶ライトバルブ25により形成された緑色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ25からの緑色光は、面214からダイクロイックプリズム21に入射し、ダイクロイックミラー面211および212をそれぞれ透過して、出射面216から出射する。
また、前記液晶ライトバルブ26により形成された青色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ26からの青色光は、面215からダイクロイックプリズム21に入射し、ダイクロイックミラー面212で図8中左側に反射し、ダイクロイックミラー面211を透過して、出射面216から出射する。
このように、前記液晶ライトバルブ24、25および26からの各色の光、すなわち液晶ライトバルブ24、25および26により形成された各画像は、ダイクロイックプリズム21により合成され、これによりカラーの画像が形成される。この画像は、投射レンズ22により、所定の位置に設置されているスクリーン320上に投影(拡大投射)される。
なお、本発明の電子機器は、図5のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図6の携帯電話機、図7のディジタルスチルカメラ、図8の投射型表示装置の他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータなどが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部、モニタ部として、前述した本発明の液晶パネルが適用可能なことは言うまでもない。
以上、本発明を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、無機配向膜形成装置において、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、前述した実施形態では、イオン源としてRFイオン源を用いるものとして説明したが、例えば、DCイオン源を用いてもよい。
また、本発明の無機配向膜の形成方法では、任意の目的の工程が1または2以上追加されてもよい。また、例えば、本発明の電子デバイス用基板、液晶パネルおよび電子機器では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、前述した実施形態では、投射型表示装置(電子機器)は、3個の液晶パネルを有するものであり、これらの全てに本発明の液晶パネルを適用したものについて説明したが、少なくともこれらのうち1個が、本発明の液晶パネルであればよい。この場合、少なくとも、青色用の液晶ライトバルブに用いられる液晶パネルに本発明を適用するのが好ましい。
(実施例1)
[無機配向膜形成装置の製造]
まず、図3に示すような無機配向膜形成装置を製造した。
真空チャンバS3は、チャンバ本体S30の内表面全体に、SiO製の板状部材S31が配されたものとした。板状部材S31の厚さは、2mmであった。また、チャンバ本体の内表面は、Al溶射で構成されたものとした。
また、ターゲット保持部材S6は、銅で構成された基部と、SiOで構成された表面層とを有するものを用いた。表面層の厚さは、5mmであった。
また、基材ホルダーS5は、銅で構成された基部と、SiOで構成された表面層とを有するものを用いた。表面層の厚さは、1.5mmであった。
[液晶パネルの製造]
上記のような無機配向膜形成装置を用いて、以下のようにして、図4に示すような液晶パネルを製造した。
まず、以下のようにして、マイクロレンズ基板を製造した。
厚さ約1.2mmの未加工の石英ガラス基板(透明基板)を母材として用意し、これを85℃の洗浄液(硫酸と過酸化水素水との混合液)に浸漬して洗浄を行い、その表面を清浄化した。
その後、この石英ガラス基板の表面および裏面に、CVD法により、厚さ0.4μmの多結晶シリコンの膜を形成した。
次に、形成した多結晶シリコン膜に、形成する凹部に対応した開口を形成した。
これは、次のようにして行った。まず、多結晶シリコン膜上に、形成する凹部のパターンを有するレジスト層を形成した。次に、多結晶シリコン膜に対してCFガスによるドライエッチングを行い、開口を形成した。次に、前記レジスト層を除去した。
次に、石英ガラス基板をエッチング液(10wt%フッ酸+10wt%グリセリンの混合水溶液)に120分間浸漬してウェットエッチング(エッチング温度30℃)を行い、石英ガラス基板上に凹部を形成した。
その後、石英ガラス基板を、15wt%テトラメチル水酸化アンモニウム水溶液に5分間浸漬して、表面および裏面に形成した多結晶シリコン膜を除去することにより、マイクロレンズ用凹部付き基板を得た。
次に、かかるマイクロレンズ用凹部付き基板の凹部が形成された面に、紫外線(UV)硬化型アクリル系の光学接着剤(屈折率1.60)を気泡なく塗布し、次いで、かかる光学接着剤に石英ガラス製のカバーガラス(表層)を接合し、次いで、かかる光学接着剤に紫外線を照射して光学接着剤を硬化させ、積層体を得た。
その後、カバーガラスを厚さ50μmに研削、研磨して、マイクロレンズ基板を得た。
なお、得られたマイクロレンズ基板では、樹脂層の厚みは12μmであった。
以上のようにして得られたマイクロレンズ基板について、スパッタリング法およびフォトリソグラフィー法を用いて、カバーガラスのマイクロレンズに対応した位置に開口が設けられた厚さ0.16μmの遮光膜(Cr膜)、すなわち、ブラックマトリックスを形成した。さらに、ブラックマトリックス上に厚さ0.15μmのITO膜(透明導電膜)をスパッタリング法により形成し、液晶パネル用対向基板を製造した。
このようにして得られた液晶パネル用対向基板の透明導電膜上に無機配向膜を上述したような無機配向膜形成装置を用い、以下のようにして形成した。
まず、銅で構成されたターゲット保持部材S6に、ボンディング剤としてのInを介して、SiO製のターゲット500を設置した。
次に、真空チャンバS3内の基材ホルダーS5に、液晶パネル用対向基板を設置し、真空チャンバS3内を酸素で置換した後に、排気ポンプS4により、真空チャンバS3内を7.0×10-5Paまで減圧した。
次に、イオン源S1内に、ガス供給源S13より酸素とアルゴンとの混合ガス(酸素ガス流量:1.0sccmに対して、アルゴンガス流量8.0sccm)を供給するとともに、イオン源S1において放電(RF放電)を行うことにより、導入されたガスをイオン化(プラズマ化)させ、さらに、ガス供給源S13のグリッド間に電圧を印加することにより、イオン化(プラズマ化)されたガスを加速し、イオンビームとして、ターゲット500に向けて出射させた。この際の、イオン源S1でのイオンビームの加速電圧は、1800eV、イオン源S1のイオンビーム電流は、250mAであった。また、イオン源S1における放電(RF放電)開始から、60秒後に、ガス供給源S13から導入するガスの組成を100%酸素(O)に変更した。
一方、ニュートラライザS2からは、イオン源S1から出射されたイオンビームの方向に向けて、電子を放出させた。
そして、イオン源S1から出射されたイオンビーム(ニュートラライザS2からの電子により電気的な中和が進行したビーム)が、ターゲット500に衝突することにより、ターゲット500からは、液晶パネル用対向基板に向けてスパッタ粒子が引き出され、このスパッタ粒子が透明導電膜上に堆積し、平均厚さ0.05μmのSiOで構成された無機配向膜が形成された。なお、スパッタ粒子の照射角度(入射角度)θは、80°であった。また、成膜する際の液晶パネル用対向基板の温度は、100℃であった。
上記のようにして形成された無機配向膜を構成する柱状の結晶の液晶パネル用対向基板に対する傾斜角θは、45°で、柱状の結晶の幅は、25nmであった。
また、別途用意したTFT基板(石英ガラス製)の表面にも、上記と同様にして、無機配向膜を形成した。
無機配向膜が形成された液晶パネル用対向基板と、無機配向膜が形成されたTFT基板とを、シール材を介して接合した。この接合は、液晶層を構成する液晶分子が左ツイストするように無機配向膜の配向方向が90°ずれるように行った。
次に、無機配向膜−無機配向膜間に形成された空隙部の封入孔から液晶(メルク社製:MJ99247)を空隙部内に注入し、次いで、かかる封入孔を塞いだ。形成された液晶層の厚さは、約3μmであった。
その後、液晶パネル用対向基板の外表面側と、TFT基板の外表面側とに、それぞれ、偏光膜8B、偏光膜7Bを接合することにより、図4に示すような構造のTFT液晶パネルを製造した。偏光膜としては、ポリビニルアルコール(PVA)で構成された膜を一軸方向に延伸したものを用いた。なお、偏光膜7B、偏光膜8Bの接合方向は、それぞれ、無機配向膜3B、無機配向膜4Bの配向方向に基づき決定した。すなわち、電圧印加時には入射光が透過せず、電圧無印加時には入射光が透過するように、偏光膜7B、偏光膜8Bを接合した。
なお、製造された液晶パネルのプレチルト角は、3〜7°の範囲のものであった。
(実施例2〜6)
無機配向膜を形成する際の各条件を表1に示すようにして、SiOで構成された無機配向膜を形成した以外は、前記実施例1と同様にして液晶パネルを製造した。
(比較例1)
図3に示すような装置を用いずに、ポリイミド系樹脂(PI)の溶液(日本合成ゴム株式会社製:AL6256)を用意し、スピンコート法により、液晶パネル用対向基板の透明導電膜上に平均厚さ0.05μmの膜を形成し、プレチルト角が2〜3°となるように、ラビング処理を施して、配向膜とした以外は、前記実施例1と同様にして液晶パネルを製造した。なお、比較例1では、ラビング処理する際に、埃のようなものが発生した。
(比較例2)
イオン源S1内に導入するガスとして、アルゴン(100%Arガス)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液晶パネルを製造した。
(比較例3)
SiO製の板状部材S31を用いず、真空チャンバS3をチャンバ本体のみで構成されたものとし、ターゲット保持部材S6、基材ホルダーS5として、SiOで構成された表面層を有さない、銅製の部材を用いた以外は、前記比較例2と同様にして液晶パネルを製造した。
(比較例4)
ターゲット500より発生したスパッタ粒子を、傾斜させずに液晶パネル用対向基板に入射させた以外は、前記比較例2と同様にして液晶パネルを製造した。
(比較例5)
蒸着装置を用いて、無機配向膜を形成した以外は、前記比較例2と同様にして液晶パネルを製造した。
[液晶パネル(耐光性)の評価]
上記各実施例および各比較例で製造した液晶パネルについて、光透過率を連続的に測定した。光透過率の測定は、各液晶パネルを60℃の温度下に置き、電圧無印加の状態で、17lm/mmの光束密度の白色光を照射することにより行った。
なお、液晶パネルの評価としては、比較例1で製造した液晶パネルの白色光の照射開始から光透過率が初期の光透過率と比較して、50%低下するまでの時間(耐光時間)を基準として、以下のように4段階で評価を行った。
◎:耐光時間が比較例1よりも5倍以上。
○:耐光時間が比較例1よりも2倍以上5倍未満。
△:耐光時間が比較例1よりも1倍以上2倍未満。
×:耐光時間が比較例1よりも劣る。
表1には、無機配向膜の形成条件、無機配向膜の平均厚さ、各液晶パネルでのプレチルト角度の評価結果とともに、液晶パネルの評価結果をまとめて示した。
Figure 2006227533
表1から明らかなように、本発明の液晶パネルにおいては、比較例1の液晶パネルと比較して、優れた耐光性を示した。これに対し、比較例2〜5は、本発明と同様に配向膜が無機材料で構成されているにも関わらず、十分な耐光性が得られなかった。これは、配向膜を構成する無機材料が、多くのダングリングボンド(未結合手)を有しているためであると考えられる。また、本発明の液晶パネルでは、十分なプレチルト角が得られ、液晶分子の配向状態を確実に規制することができたが、比較例4、5の液晶パネルでは、十分なプレチルト角が得られず、液晶分子の配向状態を規制するのが困難であった。
また、上記各実施例および比較例3について、それぞれ、上述したのと同様の方法で、無機配向膜の形成を繰り返し行い、100枚の液晶パネルを製造した。その結果、本発明では、無機配向膜の形成を繰り返し行った後においても、チャンバ内に、粉塵、ダスト状の異物等が一切認められなかった。これに対し、比較例3では、チャンバ内に、粉塵、ダスト状の異物等が顕著に認められた。このような異物は、無機配向膜の特性にも悪影響を与えるものと考えられる。
[液晶プロジェクター(電子機器)の評価]
上記各実施例および各比較例で製造したTFT液晶パネルを用いて、図8に示すような構造の液晶プロジェクター(電子機器)を組み立て、この液晶プロジェクターを5000時間連続駆動させた。
なお、液晶プロジェクターの評価としては、駆動直後の投射画像と駆動後5000時間の投射画像とを観察し、以下のように4段階で鮮明度の評価を行った。
◎:鮮明な投射画像が観察された。
○:ほぼ鮮明な投射画像が観察された。
△:やや鮮明さに劣る投射画像が観察された。
×:鮮明でない投射画像が確認された。
この結果を表2に示した。
Figure 2006227533
表2から明らかなように、本発明の液晶パネルを用いて製造された液晶プロジェクター(電子機器)は、長時間連続して駆動させた場合であっても、鮮明な投射画像が得られた。
これに対し、比較例1の液晶パネルを用いて製造された液晶プロジェクターでは、駆動時間に伴い、投射画像の鮮明度が明らかに低下した。これは、初期の段階では、液晶分子の配向が揃っているが、長期駆動により、配向膜が劣化し、液晶分子の配向性が低下したためであると考えられる。また、比較例2〜5の液晶パネルを用いて製造された液晶プロジェクターでも、駆動時間に伴い、投射画像の鮮明度が明らかに低下した。これは、無機配向膜自体の化学的安定性は優れるものの、無機配向膜の化学的反応性が高いため、液晶材料の分解劣化を促進するためであると考えられる。
また、本発明の液晶パネルを備えたパーソナルコンピュータ、携帯電話機、ディジタルスチルカメラを作製して、同様の評価を行ったところ、同様の結果が得られた。
これらの結果から、本発明の液晶パネル、電子機器は、耐光性に優れ、長期間使用しても安定した特性が得られるものであることが分かる。
本発明の液晶パネルの第1実施形態を示す模式的な縦断面図である。 本発明の方法により形成された無機配向膜を示す縦断面図である。 無機配向膜の形成方法に用いる本発明の無機配向膜形成装置の模式図である。 本発明の液晶パネルの第2実施形態を示す模式的な縦断面図である。 本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。 本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。 本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。 本発明の電子機器を適用した投射型表示装置の光学系を模式的に示す図である。
符号の説明
1A、1B…液晶パネル 2…液晶層 3A、3B…無機配向膜 4A、4B…無機配向膜 5…透明導電膜 6…透明導電膜 7A、7B…偏光膜 8A、8B…偏光膜 9…基板 10…基板 100…基材 101…基材 200…電子デバイス用基板 500…ターゲット S1…イオン源(RFイオン源) S13…ガス供給源 S100…無機配向膜形成装置 S2…ニュートラライザ S3…真空チャンバ(チャンバ) S30…チャンバ本体 S31…板状部材 S32…内壁面 S4…排気ポンプ S5…基材ホルダー S6…ターゲット保持部材(バッキングプレート) 11…マイクロレンズ基板 111…マイクロレンズ用凹部付き基板 112…凹部 113…マイクロレンズ 114…表層 115…樹脂層 12…液晶パネル用対向基板 13…ブラックマトリックス 131…開口 14…透明導電膜 17…TFT基板 171…ガラス基板 172…画素電極 173…薄膜トランジスタ 1100…パーソナルコンピュータ 1102…キーボード 1104…本体部 1106…表示ユニット 1200…携帯電話機 1202…操作ボタン 1204…受話口 1206…送話口 1300…ディジタルスチルカメラ 1302…ケース(ボディー) 1304…受光ユニット 1306…シャッタボタン 1308…回路基板 1312…ビデオ信号出力端子 1314…データ通信用の入出力端子 1430…テレビモニタ 1440…パーソナルコンピュータ 300…投射型表示装置 301…光源 302、303…インテグレータレンズ 304、306、309…ミラー 305、307、308…ダイクロイックミラー 310〜314…集光レンズ 320…スクリーン 20…光学ブロック 21…ダイクロイックプリズム 211、212…ダイクロイックミラー面 213〜215…面 216…出射面 22…投射レンズ 23…表示ユニット 24〜26…液晶ライトバルブ

Claims (14)

  1. イオンビーム源からのイオンビームをターゲットに向けて照射することにより、スパッタ粒子を引き出し、前記スパッタ粒子を基材上に入射させ、酸化物で構成された無機配向膜を形成する方法であって、
    前記ターゲットとして前記酸化物で構成されたものを用いるとともに、
    前記イオンビーム源に酸素を含むガスを導入して酸素のイオンを発生させ、当該酸素のイオンを含むイオンビームを照射することを特徴とする無機配向膜の形成方法。
  2. 前記イオンビーム源に導入する前記ガス中の酸素濃度を経時的に変化させる請求項1に記載の無機配向膜の形成方法。
  3. 前記ガスとして、酸素とアルゴンとの混合物で構成される第1のガスを用いる第1の段階と、
    前記ガスとして、前記第1の段階で用いた前記第1のガスよりも酸素の含有率の高い第2のガスを用いる第2の段階とを有する請求項1または2に記載の無機配向膜の形成方法。
  4. 前記イオンビームの照射を行うチャンバは、その内壁面の少なくとも一部が、前記ターゲットと同一の材料で構成されたものである請求項1ないし3のいずれかに記載の無機配向膜の形成方法。
  5. 前記スパッタ粒子を、前記基材の前記無機配向膜を形成する面の垂直方向に対して所定の角度θだけ傾斜させた方向から前記基材上に入射させ、
    前記基材上に、主として酸化物で構成された柱状の結晶が、前記基材の前記無機配向膜を形成する面の面方向に対して、傾斜した状態で配向した前記無機配向膜を形成する請求項1ないし4のいずれかに記載の無機配向膜の形成方法。
  6. 前記所定の角度θは、40°以上である請求項5に記載の無機配向膜の形成方法。
  7. 前記基材上に到達する前記スパッタ粒子のエネルギーおよび/または数を制御することにより、前記柱状の結晶の頂部付近の形状を制御する請求項1ないし6のいずれかに記載の無機配向膜の形成方法。
  8. 前記柱状の結晶は、前記基材に対して所定の角度θだけ傾斜した状態で配向したものである請求項7に記載の無機配向膜の形成方法。
  9. 前記酸化物は、二酸化ケイ素で構成されるものである請求項1ないし8のいずれかに記載の無機配向膜の形成方法。
  10. 請求項1ないし9のいずれかに記載の無機配向膜の形成方法により形成されたことを特徴とする無機配向膜。
  11. 無機配向膜の平均厚さは、0.02〜0.3μmである請求項10に記載の無機配向膜。
  12. 基板上に、電極と、
    請求項10または11に記載の無機配向膜とを備えることを特徴とする電子デバイス用基板。
  13. 請求項10または11に記載の無機配向膜と、液晶層とを備えたことを特徴とする液晶パネル。
  14. 請求項13に記載の液晶パネルを備えたことを特徴とする電子機器。
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