JP2006206658A - ボールペン用水性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 超硬合金ボールを筆記先端部に適用した水性ボールペンに内蔵される水性インキ組成物であって、少なくとも着色剤と、水と、金属イオン封鎖剤と、リン酸エステルとを含んでなる。前記金属イオン封鎖剤とリン酸エステルとの含有比率が1:10〜1:500である。前記水性インキ組成物のpHが7〜13である。
【選択図】 なし
Description
前記ボールは、結合材として主にコバルト、クロム、チタン、ニッケル等の金属が使用されていることから、水性ボールペンに用いた場合、前記結合材がインキ中の溶存酸素の作用により経時的にインキ中に溶出し、ボールから結合材が失われることで、主成分である炭化珪素、ジルコニア、タングステンカーバイド等の結晶粒子が脱落したり、溶出した結合材が金属酸化物となり不溶化し、再びボール表面に付着する等、所謂腐食状態になることがある。前記腐食によりボールの表面の凹凸が大きくなるため、ボールの回転が阻害され書き味が重くなったり、インキのスムーズな流出が阻害されて筆跡がかすれる等の不具合を生じることがあった。
特に、超硬合金ボールのうち、タングステンやタングステンカーバイドを主成分とし、コバルトやニッケル等の金属を結合材に用いたボールは、結合材の含有量が多いことから、経時的に腐食し易いという欠点を有している。
そこで、この経時的な腐食を防止する方法として、インキ中にベンゾトリアゾールやベンゾチアジアゾール等の防錆剤や金属イオン封鎖剤を添加する方法が開示されている(特許文献1、2参照)。
また、金属イオン封鎖剤を添加した場合、結合材である金属の溶出を抑制することができるものの、筆記時の潤滑性能が低下してしまうため、書き味が悪化することがあった。
更に、前記金属イオン封鎖剤がインキ組成物全量中0.01〜0.5重量%の範囲で添加されること、前記リン酸エステルがインキ組成物全量中0.1〜5重量%の範囲で添加されること、前記水性インキ組成物のpHが7〜13であることを要件とする。
更には、前記ボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペンを要件とする。
更には、前記ボールペンに用いられる超硬合金ボールが、タングステン及び/又はタングステンカーバイドと、金属結合材とから少なくともなることを要件とする。
0.01重量%未満では所期の効果を得ることは困難であり、又、0.5重量%を越えて添加しても腐食抑制効果の向上は認められないので、これ以上の添加を要しない。
0.1重量%以下では所期の効果を得ることは困難であり、又、5重量%を越えて添加しても潤滑性能の向上は認められないので、これ以上の添加を要しない。
前記比率で添加することで、優れた潤滑性能を維持したまま、長期間ボール腐食を抑制できるものとなる。金属イオン封鎖剤の比率が高い場合、筆記時の座磨耗が大きくなってしまい、リン酸エステルの比率が高い場合、インキ中での溶解安定性が低下してインキ粘度が増加するため、筆記感が重くなることがある。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:S.S.Blue GLL、顔料分22%、山陽色素株式会社製〕、
C.I. Pigment Red 146〔品名:S.S.Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、
C.I.Pigment Red220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、修正ペン等に用いられる二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、香料又は香料カプセル顔料などを例示できる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用して用いることができ、2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、HLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示でき、更には、インキ組成物中にN−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加しても安定した剪断減粘性を付与できる。
前記pHに調整することで、金属イオン封鎖剤及びリン酸エステルの溶解安定性が得られて効率良く作用し、高い潤滑性能を維持したまま確実にボール腐食を抑制できる。
前記インキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマー、シリコーン油、精製鉱油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、脂肪酸アマイド等を添加することもできる。また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。前記液状及び固体のインキ逆流防止体は併用することも可能である。
前記ボールは、4a、5a、6a族の金属又はそれらの炭化物を結合材となるコバルトやニッケル等の金属と共に焼結して得られるものであり、硬度が高く磨耗し難い超硬合金製のボールである。
特に、前記4a、5a、6a族の金属又はそれらの炭化物のうち、化学的に安定でしかも硬度の高いタングステンやタングステンカーバイド(炭化タングステン)を主成分として用いた超硬合金製ボールが好適に用いられる。
なお、4a、5a、6a族の金属としてチタン、バナジウム、クロム、タンタルやそれらの炭化物を含んでいてもよい。
前記結合材として機能するコバルトやニッケルのうち、特にコバルトは水性インキ中に溶出し易く、ボール表面が粗くなったり、更にコバルトの溶出によりタングステンやタングステンカーバイトが脱落していっそうボール表面が粗くなる。よって、ボール受け座に接触した状態でボールが回転すると受け座の磨耗が激しくなり、軸方向のボールとボール抱持部の間隙(クリアランス)が大きくなるため、インキ流出量が増大して筆跡が太くなったり、線飛び等の不具合を生じ易くなる。
また、前記ボールは、直径0.1mm〜2.0mmの範囲のものが好適に用いられる。
前記軸筒にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記軸筒とチップを連結してもよい。
前記軸筒内に収容されるインキ組成物は、インキ組成物が低粘度である場合は軸筒前部にインキ保留部材を装着し、軸筒内に直接インキ組成物を収容する方法と、多孔質体或いは繊維加工体に前記インキ組成物を含浸させて収容する方法が挙げられる。
尚、前記軸筒は、ボールペン用レフィルの形態として、前記レフィルを軸筒内に収容するものでもよい。
尚、前記インキ収容管は、ボールペン用レフィルの形態として、前記レフィルを軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
以下の表に実施例及び比較例のボールペン用水性インキの組成を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
(1)オリエント化学工業(株)製、商品名:フィスコブラック886
(2)(株)キレスト製、商品名:キレスト3D
(3)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
(4)λ−カラギーナン、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製、商品名:カラギニンCSL−2
水に剪断減粘性付与剤以外の成分を添加し、混合攪拌した後、剪断減粘性付与剤を添加して、25℃で、ディスパーにて400rpm、1時間攪拌し、濾過することで各インキを調製した。
基油としてポリブテン85部中に、増粘剤として脂肪酸アマイド15部を添加した後、3本ロールにて混練してインキ逆流防止体を得た。
前記各インキ組成物を直径0.5mmのWC−Co系超硬合金ボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプ(内径3.8mm)の一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを軸筒に組み込み、試料ボールペンを作製した。
ボール腐食試験
各試料ボールペンを、横置き状態で50℃の環境下に60日間放置した後、ボール表面の状態を光学顕微鏡(倍率100倍)にて確認した。
筆記可能であることを確認した試料ボールペンを、横置き状態で50℃の環境下に60日間放置した後、JIS P3201筆記用紙Aに手書きで螺旋状の丸を連続筆記した際の筆跡の状態を目視にて確認した。
筆記可能であることを確認した試料ボールペンを、横置き状態で50℃の環境下に60日間放置した後、走行試験機にて、JIS P3201筆記用紙Aに500m筆記した。その際の台座部分の初期状態に対する磨耗量(μm)を測定した。
前記試験の結果を以下の表に示す。
ボール腐食試験
○:初期と変化なし。
×:初期と比較して粗い、又は、付着物あり。
筆記試験
○:滑らかに筆記でき、良好な筆跡を示した。
△:筆記時にひっかかり感があり、筆跡に若干のかすれや線飛びが見られる。
×:筆記感が悪く、筆跡にかすれや線飛びが多数見られる。
Claims (6)
- 超硬合金ボールを筆記先端部に適用した水性ボールペンに内蔵される水性インキ組成物であって、少なくとも着色剤と、水と、金属イオン封鎖剤と、リン酸エステルとを含んでなり、前記金属イオン封鎖剤とリン酸エステルとの含有比率が1:10〜1:500であることを特徴とするボールペン用水性インキ組成物。
- 前記金属イオン封鎖剤がインキ組成物全量中0.01〜0.5重量%の範囲で添加されることを特徴とする請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記リン酸エステルがインキ組成物全量中0.1〜5重量%の範囲で添加されることを特徴とする請求項1又は2に記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記水性インキ組成物のpHが7〜13であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記請求項1乃至4のいずれかに記載のボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペン。
- 前記超硬合金ボールが、タングステン及び/又はタングステンカーバイドと、金属結合材とから少なくともなることを特徴とする請求項5記載のボールペン。
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