JP2006202784A - 磁気抵抗効果膜、並びに、ピンド層の磁化制御方法 - Google Patents

磁気抵抗効果膜、並びに、ピンド層の磁化制御方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2006202784A
JP2006202784A JP2005009658A JP2005009658A JP2006202784A JP 2006202784 A JP2006202784 A JP 2006202784A JP 2005009658 A JP2005009658 A JP 2005009658A JP 2005009658 A JP2005009658 A JP 2005009658A JP 2006202784 A JP2006202784 A JP 2006202784A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnetization
pinned layer
film
magnetic field
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2005009658A
Other languages
English (en)
Inventor
Koji Shimazawa
幸司 島沢
Yoshihiro Tsuchiya
芳弘 土屋
Kenji Inage
健治 稲毛
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TDK Corp filed Critical TDK Corp
Priority to JP2005009658A priority Critical patent/JP2006202784A/ja
Publication of JP2006202784A publication Critical patent/JP2006202784A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Magnetic Heads (AREA)
  • Hall/Mr Elements (AREA)

Abstract

【課題】シンセティックピンド構造でありながら、画一的に、ピンド層の磁化方向をリセットもしくはより安定化できる、磁気抵抗効果膜を提供すること。
【解決手段】磁気抵抗効果膜3は、フリー層19と、非磁性層17と、相互に膜厚の異なる二つの強磁性膜21、25を少なくとも有するピンド層15とを備える。二つの強磁性膜のうち、相対的に膜厚が厚い強磁性膜21の磁歪定数λ2が、膜厚の薄い強磁性膜25の磁歪定数λ1よりも大きくなるように設定されている。かかるピンド層に、磁化リセット方向又は磁化維持方向の制御磁界を与えることで、強磁性膜の磁化方向が反転していても本来の反平行な方向にリセットされ又は反転しないように維持される。
【選択図】 図2

Description

本発明は、シンセティックピンド構造の磁気抵抗効果膜、並びに、そのピンド層の磁化制御方法に関するものである。
従来から、ハードディスクの高密度化に伴い、高感度化、高出力化されたヘッドが要求されており、この要求に応えるものとして、スピンバルブヘッドが考案されている。通常、スピンバルブにおいては、非磁性金属からなる非磁性層の上下に強磁性金属からなるフリー層及びピンド層が設けられている。また、ピンド層における非磁性層と逆側の面には反強磁性層が設けられている。そして、ヘッドの出力等の特性は、フリー層及びピンド層の磁化方向のなす角度によって定まる。
フリー層の磁化方向は、記録媒体などから提供される外部磁界の方向に容易に向くようになっている。また、ピンド層の磁化方向は、反強磁性層との交換結合によって一方向に固定されている。この交換結合力や交換結合力の熱安定性は、ヘッドの特性や信頼性に大きな影響を及ぼすことから、できるだけ大きな交換結合力を獲得することが好ましい。
上述した観点から、通常、単層構造であるピンド層を、強磁性膜、非磁性金属膜及び強磁性膜からなる三層構造とする、いわゆるシンセティックピンド(synthetic pinned)構造がある(特許文献1参照)。このシンセティックピンド構造では、二つの強磁性膜間に強い交換結合を与え、反強磁性層からの交換結合力を実効的に増大させ、ピンド層から発生する静磁界がフリー層に及ぼす影響を減少させる効果がある。
特開2000−137906号公報
スピンバルブヘッドにおいては、研磨加工工程や実使用時におけるHDI(Head Disk Interface)ダメージ等のストレスによって、ピンド層の磁化方向が反転する不具合が発生し得る。かかる不具合を回避するために、シンセティックピンド構造が採用されることもあるが、なお、十分な安定性(信頼性)が得られてなく更なる工夫が求められている。
そこで、本出願人は、パルス電流が発生する熱と磁界を用いて、反転したピンド層の磁化方向を当初企図した方向にリセットする手法について鋭意検討を行ってきた。しかし、かかる手法では、ピンド層が通常のように単層構造である場合には磁化方向を容易にリセットできるにしても、シンセティックピンド構造の場合にはうまくリセットできないケースが存在していた。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、シンセティックピンド構造でありながら、画一的に、ピンド層の磁化方向をリセットもしくはより安定化できる、磁気抵抗効果膜を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係る磁気抵抗効果膜は、磁化方向が自由に動くフリー層と、磁化方向が一方向に固定されているピンド層と、前記フリー層及びピンド層の間に配置された非磁性層とを備え、前記ピンド層は、相互に膜厚の異なる二つの強磁性膜を少なくとも有し、相対的に膜厚の厚い強磁性膜の磁歪定数が、膜厚の薄い強磁性膜の磁歪定数よりも大きい、ことを特徴とする。
同課題を解決するための本発明に係るピンド層の磁化制御方法は、フリー層と、非磁性層と、相互に膜厚の異なる二つの強磁性膜を少なくとも有するピンド層とを備えた磁気抵抗効果膜において、前記二つの強磁性膜のうち、相対的に膜厚が厚い強磁性膜の磁歪定数が、膜厚の薄い強磁性膜の磁歪定数よりも大きくなるよう、前記ピンド層を設け、前記ピンド層に、磁化リセット方向又は磁化維持方向の制御磁界を与える、ことを特徴とする。
上述した本発明の磁気抵抗効果膜、及び、ピンド層の磁化制御方法によれば、何らかのストレスによって磁化方向が本来の方向に対して反転してしまったとしても、磁化リセット方向の適切な大きさの制御磁界をかけることによってシンセティックピンド構造でありながら本来の反平行な状態に画一的にリセットすることができる。
さらに、本来の磁化方向が反転していない場合には、磁化維持方向の適切な大きさの制御磁界をかけ、磁化方向を安定化させて維持することもできる。
なお、本発明の他の特徴及びそれによる作用効果は、添付図面を参照し、実施の形態によって更に詳しく説明する。
以下、この発明に係る磁気抵抗効果膜を、ハードディスクの薄膜磁気ヘッドの読み取り素子の構成に適用した実施の形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
図1に、本実施の形態に係る磁気抵抗効果膜を有する読み取り素子の構成を概略的に示す。読み取り素子1は、磁気抵抗効果膜3と、一対の磁区制御膜5、7と、一対の電極膜9、11とを備えている。なお、保護膜や下地膜などは図示省略する。
一対の磁区制御膜5、7は、磁気抵抗効果膜3の両側に設けられている。本実施の形態では、磁区制御膜5、7として硬磁性膜を用いており、具体的にはCoPt、CoPtCr等を用いることができる。なお、これに限定されず、磁区制御膜としては、反強磁性膜、あるいは、軟磁性膜及び反強磁性膜の積層膜、を用いることもできる。一対の電極膜9、11は、一対の磁区制御膜5、7の上面に積層されており、磁気抵抗効果膜3にセンス電流を供給するために用いられる。
磁気抵抗効果膜3は、外部から印加される磁界に応答する膜であり、本実施の形態では、シンセティックピンド構造(積層フェリ構造)のシングルスピンバルブとして構成されている。磁気抵抗効果膜3は、基本的な層として、反強磁性層13、ピンド層15、非磁性層17、フリー層19を備えている。
図1に示されるように、ピンド層15とフリー層19との間に非磁性層17が介在されており、また、ピンド層15における非磁性層17との逆側に、反強磁性層13が設けられている。ピンド層15は、少なくとも三層構造、すなわち、順に下部強磁性膜21、非磁性膜23、上部強磁性膜25の積層構造を備えている。
ピンド層15の磁化方向は、反強磁性層13との交換結合によって一方向に固定されている。一方、フリー層19の磁化方向は、外部から印加される磁界に応答して自由に動くことができる。磁気抵抗効果膜3においては、ピンド層15の上部強磁性膜25の磁化方向と、フリー層19の磁化方向とが同方向であるときには抵抗値が最小になり、逆方向であるときには抵抗値が最大になる。したがって、この抵抗変化特性を利用して、外部磁界を検出する。
図2の(a)に示されるように、ピンド層15において、下部強磁性膜21の膜厚は、上部強磁性膜25の膜厚よりも厚く設定されている。また、上部強磁性膜25の磁化方向M1と下部強磁性膜21の磁化方向M2とは反平行を指向している。
また、強磁性膜の磁歪定数に関しては、相対的に膜厚の薄い強磁性膜の磁歪定数をλ1とし厚い強磁性膜の磁歪定数をλ2とする。よって、図2の(a)から分かるように、上部強磁性膜25及び下部強磁性膜21の磁歪定数はそれぞれλ1及びλ2となる。
ところで、磁気抵抗効果膜においては、様々なストレス、例えば、スピンバルブヘッドならば研磨加工工程や実使用時におけるHDI(Head Disk Interface)ダメージ等のストレスによって、ピンド層の磁化方向が反転する不具合が発生し得る。すなわち、本実施の形態の構造ならば、図2の(b)に示されるように、上部強磁性膜25の磁化方向M1と下部強磁性膜21の磁化方向M2とが、それぞれ図2の(a)に示した方向と逆方向を指向する。
そこで、本出願人は鋭意検討を行った結果、本発明では、次のようにしてかかる不具合を解消及び予防するような構成を採用するに至った。
まず、単層構造のピンド層においては、強い磁場をかけると磁化方向はその磁場方向を指向するように変化する。シンセティックピンド構造のピンド層においても、その磁化方向が磁場の影響で変化することは同様であるが、実際に強い磁場を印加すると、上部強磁性膜25の磁化M1の方向と下部強磁性膜21の磁化M2の方向とが、双方とも、印加磁界と同方向に向い、印加磁界をゼロにした場合、図2の(a)に示した反平行関係には復帰しない場合が存在することが分かった。
そこで、本出願人は、シンセティックピンド構造のピンド層のエネルギEと、層構成と、磁歪と、磁化方向との関係について調べた。エネルギEは、以下の式、すなわち、
E=−M1・H・cosθ1−M2・H・cosθ2+J・cos(θ1−θ2)
+K1・sin2θ1+K2・sin2θ2・・・(1)式
で表される。(1)式の第1項及び第2項は、シンセティックピンド構造の強磁性膜の磁気エネルギを示し、第3項は、交換結合エネルギを示し、第4項及び第5項は磁歪エネルギを示している。
また、(1)式において、M1及びM2はそれぞれ、上部強磁性膜25及び下部強磁性膜21の磁気膜厚Mst(Msは飽和磁化、tは膜厚)を示し、Hは印加する制御磁界の強さを示し、Jは上部強磁性膜25及び下部強磁性膜21の交換結合エネルギを示し、K1及びK2はそれぞれ、上部強磁性膜25及び下部強磁性膜21において磁歪による1軸異方性定数を示し、θ1及びθ2はそれぞれ、M1及びM2のHに対する磁化方向の角度を示している。
(1)式のエネルギEの値を計算した結果を図3に示す。縦軸及び横軸にはそれぞれ、θ1及びθ2[deg]がとられており、図3は、θ1及びθ2を個別に0〜360度まで変化させた結果を、360×360のマトリックスとして表したものといえる。また、条件としては、M1=0.225[mA]、M2=0.3[mA]、J=0.8×10-3[J/m2]、K1=0.0×10-3[J/m2]、K2=0.2×10-3[J/m2]に設定し、H=7.9[kA/m]の制御磁界を印加している。また、下部強磁性膜の磁歪定数λ2の方が上部強磁性膜の磁歪定数λ1よりも大きくなるように構成した。
図3(同態様の図4〜図13並びに図15〜図24も同様)は、地よりもいったん淡色になり更に中心に向けて濃色に変化する目玉状の濃淡変化部に関して、次のような変化を表現している。周辺の地よりもいったん淡色になっている部分は、周辺の部分よりもエネルギEの値が負の値に大きくなっており、更に、淡色部分から中心の濃色部分に近づくほどエネルギEの値が負の値に大きくなっている。すなわち、地の部分に対して濃淡が変化している部分は、目玉状の中心に行くほど(濃色が強まるほど)エネルギEの値が負の値に大きくなっていることを表している。また、シンセティックピンド構造のピンド層における磁化M1及びM2の方向は、エネルギEが負の値に大きくなっている領域ほど、その状態で安定しやすい。
よって、図3に示されるように、磁化方向が安定しやすいポイントは二つあり、一つはθ1=180度、θ2=0度のポイントであり、もう一つはθ1=0度、θ2=180度のポイントである。前者は、図2の(a)に示す状態であり、後者は、図2の(b)に示す状態である。また、これより、シンセティックピンド構造のピンド層においては、本来、図2の(a)に示す状態であった磁化方向が、ひとたび図2の(b)に示すように反転してしまうと、その反転した状態は、磁化が安定しやすく、図2の(a)に示す本来の磁化方向にはリセットされにくいことが分かる。
次に、図3の条件から制御磁界だけを順次増加させ、H=40、79、119、158、198、237、316、395、474、553[kA/m]としたときの結果をそれぞれ図4〜図13に示す。これらの結果をみると、本来の磁化方向から反転した図2の(b)の磁化状態(すなわちθ1=0度、θ2=180度)は、図3では十分、エネルギEが負の値として大きな値であり、安定しているといえるが、図4、図5、図6と制御磁界が増加するにつれて、エネルギEは徐々に負の値として小さくなっていき、図7に至っては、他のθ1、θ2の磁化状態と同様なエネルギEの状態となる。
これは、図2の(b)の磁化状態(すなわちθ1=0度、θ2=180度)は、もはや磁化方向が容易に変化しやすい状態にあるといえ、最終的には、エネルギEが負の値として大きなθ1=180度、θ2=0度で示される磁化状態に遷移し、その状態に落ち着く。すなわち、これは、図6から図7に至る過程で、磁化状態が図2の(b)の状態から図2の(a)の状態に変化したことを意味し、ピンド層においては、反転していた磁化状態が本来の磁化状態へとリセットされたことを意味する。
さらに、図8〜図13に示されるようにその後の経過をみると、制御磁界を増加させるにつれて、エネルギEが負の値として大きなポイントは、θ1=0度、θ2=0度の位置へと徐々に移っていき、図13の状態でθ1=0度、θ2=0度の位置に達する。これは、ある程度強い磁場をかけると、上部強磁性膜25の磁化M1の方向と下部強磁性膜21の磁化M2の方向とが、双方とも、制御磁界Hと同方向に揃うことを示している。以上より、図7の状態で制御磁界をゼロにすることで、反転していた磁化状態を本来の磁化状態にリセットすることが可能となる。
続いて、図14に比較例を示す。比較例のシンセティックピンド構造のピンド層においては、下部強磁性膜の膜厚は、上部強磁性膜の膜厚よりも厚く設定されており、本実施の形態である図2とは逆に、上部強磁性膜の磁歪定数λ1の方が下部強磁性膜の磁歪定数λ2よりも大きくなるように構成されている。そして、本実施の形態と同様に、本来、図14の(a)に示す状態であった磁化方向が図14の(b)に示すように反転してしまった場合に、制御磁界を作用させることで図14の(a)に示す状態にリセットできるかを調べた。(1)式に用いる計算条件は、K1=2.0×10-3[J/m2]、K2=0.0×10-3[J/m2]としたこと以外は、前記の実施の形態の場合と同様である。その結果を、図15〜図24に示す。
まず、図15に示されるように、磁化方向が安定しやすいポイントは図3と同様に二つあり、一つはθ1=180度、θ2=0度のポイントであり、もう一つはθ1=0度、θ2=180度のポイントである。前者は、図14の(a)に示す状態であり、後者は、図14の(b)に示す状態である。これより、本実施の形態と同様、本来、図14の(a)に示す状態であった磁化方向が、ひとたび図14の(b)に示すように反転してしまうと、その反転した状態は、磁化が安定しやすく、図14の(a)に示す本来の磁化方向にはリセットされにくいことが分かる。
次に、図15の条件から制御磁界だけを順次増加させ、H=40、79、119、158、198、237、316、395、474[kA/m]としたときの結果をそれぞれ図16〜図24に示す。
これらの結果をみると、図17から図18にかけて、θ1=0度、θ2=180度のポイントにおけるエネルギEは、徐々に負の値として小さくなっていき、磁化方向が変化しやすい状態に遷移していることは見受けられる。
しかし、本実施の形態(λ2>λ1)では磁化が反転した制御磁界H=158[kA/m]においても、図19に示されるように、θ1=290〜300度、θ2=60〜70度のポイントに、周囲よりもエネルギEが負の値として比較的大きな箇所がある。このため、磁化M1及びM2の方向は、図14の(a)を示すθ1=180度、θ2=0度まで反転せず、θ1=290〜300度、θ2=60〜70度の方向に落ち着くことになる。
さらに、その後の経過をみると、図20〜図22に示されるように、エネルギEが負の値として大きな値のポイントが図14の(a)を示すθ1=180度、θ2=0度のポイントに集中していく傾向にはない。
さらに、その後の経過を含む、図20〜図24までの経過を総合すると、エネルギEが負の値として大きなポイントは、θ1=0度、θ2=0度の位置へと徐々に移っていくことが分かり、図24の状態でθ1=0度、θ2=0度の位置に達する。
本実施の形態(λ2>λ1)の図3〜図13の結果でも述べたように、ある程度強い磁場をかけ、上部強磁性膜の磁化M1の方向と下部強磁性膜の磁化M2の方向とが、双方とも制御磁界Hと同方向に揃った状態に帰結したことを示している。
したがって、比較例(λ2<λ1)では、制御磁場をかけても、図14の(b)に示すように反転した磁化方向は、図14の(a)に示す本来の磁化方向にはリセットされることなく、双方とも制御磁界Hと同方向に揃った状態に至ることが分かる。
以上のように、図3〜図13に示したλ2>λ1の条件では、ピンド層に適切な制御磁界を付与することで磁化M1及びM2の方向を、反転していた状態から本来の反平行な状態へとリセットすることができるが、図15〜図24に示したλ2<λ1の条件では、ピンド層にいかなる制御磁界を付与しても磁化M1及びM2の方向は、本来の反平行な状態にはリセットされず、双方とも制御磁界と同方向に揃ってしまう。従って、比較例においては、制御磁界をゼロにしても本来の磁化状態にリセットすることはできない。
このため、本実施の形態では、相対的に膜厚の厚い下部強磁性膜21の磁歪定数λ2は、膜厚の薄い上部強磁性膜25の磁歪定数λ1よりも大きくなる関係に設定してある。よって、本実施の形態では、ピンド層15において、何らかのストレスによって磁化M1及びM2の方向が本来の方向に対して反転してしまったとしても、磁化リセット方向の適切な大きさの制御磁界をかけることによってシンセティックピンド構造でありながら本来の反平行な状態に画一的にリセットすることができる。
なお、磁歪λ1及びλ2はピンド層を構成する層の組成で制御することができ、また、適切な制御磁界Hの値は磁歪λ1及びλ2に起因して得られるため、それらの条件は実験などによって適宜、設定することができる。また、ピンド層15に制御磁界Hを付与する態様としては、制御磁界を付与する専用の手段を用意することも可能であるが、電極膜9、11を介して付与する電流で磁界を発生させ、その磁界を制御磁界として機能させると好適である。
さらに、本出願人は、上述した図3〜図13(本実施の形態)及び図15〜図24(比較例)の結果を確認すべく、本実施の形態及び比較例を具現化した実物サンプルを用いて、実際に反転した磁化方向を本来の状態にリセットできるか否かを試験した。
まず、試験に供するスピンバルブは、基本的構成として、下から順に、NiCr(50Å)からなる下地層、IrMn(70Å)からなる反強磁性層、シンセティックピンド層、Cu(19Å)からなる非磁性層、CoFe(10Å)及びNiFe(20Å)からなるフリー層、Ru(5Å)からなる層、Ta(20Å)からなる保護層を備える。シンセティックピンド層は、CoFe(18Å)からなる上部強磁性膜と、Ru(8Å)からなる非磁性膜と、CoFe(15Å)からなる下部強磁性膜とを有する。なお、各組成のカッコ内の値はそれぞれの厚みを示す。
また、本実施の形態に対応するサンプルのシンセティックピンド層は、膜厚の厚い強磁性膜の磁歪定数λ2が、膜厚の薄い強磁性膜の磁歪定数λ1よりも大きくなるように構成する必要があり、そのために、上部強磁性膜におけるCoとFeとの組成比は90:10に設定し、下部強磁性膜におけるCoとFeとの組成比は83:17に設定した。これによって、下部強磁性膜の磁歪定数λ1は1.1×10-6であり、上部強磁性膜の磁歪定数λ2は3.0×10-6であって、すなわち、λ2>λ1である。
一方、比較例に対応するサンプルのシンセティックピンド層は、膜厚の薄い強磁性膜の磁歪定数λ1が、膜厚の厚い強磁性膜の磁歪定数λ2よりも大きくなるように構成する必要があり、そのために、上部強磁性膜におけるCoとFeとの組成比は90:10に設定し、下部強磁性膜におけるCoとFeとの組成比は70:30に設定した。これによって、下部強磁性膜の磁歪定数λ1は19.5×10-6であり、上部強磁性膜の磁歪定数λ2は3.0×10-6であって、すなわち、λ1>λ2である。
上記のように構成された本実施の形態及び比較例に対応するサンプルにつき、150nsのパルス電流を与えることで制御磁界(膜厚の厚い強磁性膜の磁化方向と反平行な方向)を印加し、シンセティックピンド層における二つの強磁性膜の磁化方向が本来の反平行な方向に反転するか否かを調べた。本実施の形態及び比較例の対応サンプルをそれぞれ6つずつ用意して行った。その結果を図25及び図26に示す。
図25は、本実施の形態に対応するサンプルに関する結果である。6つのサンプルに対応する6つのグラフのそれぞれの左側の縦軸は素子の抵抗値[Ω]、右側の縦軸は出力値[V]である。横軸は付与したパルス電流のピーク電流[mA]を示している。円形プロットは左側縦軸で読み取られる抵抗値であり、四角形プロットは右側縦軸で読み取られる出力値である。
円形プロットの抵抗値は、急激に増加しているところで実質的に素子破壊が生じていることを示している。したがって、素子破壊が生じる前にシンセティックピンド層の二つの強磁性膜の磁化方向が反転する必要がある。また、二つの強磁性膜の磁化方向が反転したか否かは、四角形プロットの出力値から検知することができる。すなわち、出力値が正の値から負の値へ移行したことをもって二つの強磁性膜の磁化方向が反転したことを知ることができる。そして、図25の結果をみると、本実施の形態に対応するサンプルにおいては、6つのサンプルはすべて出力値が正から負の値へきれいに移行しており、所定の制御磁界によって、強磁性膜の磁化方向が反転していることが分かる。よって、本実施の形態によれば、磁界によって二つの強磁性膜の磁化方向を制御できることが分かる。
これに対して、図26に示された比較例に対応するサンプルでは、幾つかのグラフでは出力値が正から負の値へきれいに移行しているものもあるが、他のグラフでは出力値が正から負の値に移行していないものや、正の値と負の値との間で反転を繰り返し安定しないものもある。したがって、比較例のようにλ1>λ2であるシンセティックピンド構造では、磁界をかけても二つの強磁性膜の磁化方向を制御することが不可能であることが分かる。
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
本発明は、実施の形態として説明したシングルスピンバルブに限らず、デュアルスピンバルブやセルフピン型スピンバルブに実施することも可能である。
また、上記実施の形態では、シンセティックピンド構造のピンド層の磁化方向のリセットとしての態様で説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、反転していない本来の磁化方向を何らかのストレスが作用しても反転しないよう、磁化維持方向の適切な大きさの制御磁界をかけ、磁化方向を安定化させて維持する態様として実施することも可能である。
本発明の実施の形態に係る磁気抵抗効果膜を有する読み取り素子の構成を概略的に示す図である。 本実施の形態に係るシンセティックピンド構造のピンド層の構成を示す図である。 磁歪条件がλ2>λ1であるシンセティックピンド構造における、制御磁界H=7.9[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図3において、制御磁界H=40[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図3において、制御磁界H=79[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図3において、制御磁界H=119[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図3において、制御磁界H=158[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図3において、制御磁界H=198[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図3において、制御磁界H=237[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図3において、制御磁界H=316[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図3において、制御磁界H=395[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図3において、制御磁界H=474[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図3において、制御磁界H=553[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 比較例として磁歪条件がλ2<λ1であるシンセティックピンド構造のピンド層の構成を示す図である。 磁歪条件がλ2<λ1であるシンセティックピンド構造における、制御磁界H=7.9[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図15において、制御磁界H=40[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図15において、制御磁界H=79[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図15において、制御磁界H=119[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図15において、制御磁界H=158[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図15において、制御磁界H=198[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図15において、制御磁界H=237[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図15において、制御磁界H=316[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図15において、制御磁界H=395[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 図15において、制御磁界H=474[kA/m]の場合のエネルギEを表す図である。 本実施の形態として磁歪条件がλ2>λ1であるシンセティックピンド構造のピンド層に関し、磁化方向の反転の成否を試験した結果を示す図である。 比較例として磁歪条件がλ2<λ1であるシンセティックピンド構造のピンド層に関し、磁化方向の反転の成否を試験した結果を示す図である。
符号の説明
3 磁気抵抗効果膜
15 ピンド層
17 非磁性層
19 フリー層
21、25 強磁性膜
λ1、λ2 磁歪定数
H 制御磁界

Claims (2)

  1. 磁化方向が自由に動くフリー層と、
    磁化方向が一方向に固定されているピンド層と、
    前記フリー層及びピンド層の間に配置された非磁性層とを備え、
    前記ピンド層は、相互に膜厚の異なる二つの強磁性膜を少なくとも有し、
    相対的に膜厚の厚い強磁性膜の磁歪定数が、膜厚の薄い強磁性膜の磁歪定数よりも大きい、
    ことを特徴とする磁気抵抗効果膜。
  2. フリー層と、非磁性層と、相互に膜厚の異なる二つの強磁性膜を少なくとも有するピンド層とを備えた磁気抵抗効果膜におけるピンド層の磁化制御方法であって、
    前記二つの強磁性膜のうち、相対的に膜厚が厚い強磁性膜の磁歪定数が、膜厚の薄い強磁性膜の磁歪定数よりも大きくなるよう、前記ピンド層を設け、
    前記ピンド層に、磁化リセット方向又は磁化維持方向の制御磁界を与える、
    ことを特徴とする、ピンド層の磁化制御方法。
JP2005009658A 2005-01-17 2005-01-17 磁気抵抗効果膜、並びに、ピンド層の磁化制御方法 Pending JP2006202784A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005009658A JP2006202784A (ja) 2005-01-17 2005-01-17 磁気抵抗効果膜、並びに、ピンド層の磁化制御方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005009658A JP2006202784A (ja) 2005-01-17 2005-01-17 磁気抵抗効果膜、並びに、ピンド層の磁化制御方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2006202784A true JP2006202784A (ja) 2006-08-03

Family

ID=36960549

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005009658A Pending JP2006202784A (ja) 2005-01-17 2005-01-17 磁気抵抗効果膜、並びに、ピンド層の磁化制御方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2006202784A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008065957A (ja) * 2006-09-11 2008-03-21 Hitachi Global Storage Technologies Netherlands Bv 外部ストレス耐性の高い磁気抵抗効果型ヘッド
JP2020064892A (ja) * 2018-10-15 2020-04-23 Tdk株式会社 磁気センサ

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004259918A (ja) * 2003-02-26 2004-09-16 Alps Electric Co Ltd 磁気検出素子の製造方法
JP2005294453A (ja) * 2004-03-31 2005-10-20 Alps Electric Co Ltd 磁気検出素子

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004259918A (ja) * 2003-02-26 2004-09-16 Alps Electric Co Ltd 磁気検出素子の製造方法
JP2005294453A (ja) * 2004-03-31 2005-10-20 Alps Electric Co Ltd 磁気検出素子

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008065957A (ja) * 2006-09-11 2008-03-21 Hitachi Global Storage Technologies Netherlands Bv 外部ストレス耐性の高い磁気抵抗効果型ヘッド
JP4673274B2 (ja) * 2006-09-11 2011-04-20 ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ 外部ストレス耐性の高い磁気抵抗効果型ヘッド
US7957109B2 (en) * 2006-09-11 2011-06-07 Hitachi Global Storage Technologies Netherlands B.V. Magnetic head of magnetoresistance effect type with high resistance to external stress
JP2020064892A (ja) * 2018-10-15 2020-04-23 Tdk株式会社 磁気センサ

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9177575B1 (en) Tunneling magnetoresistive (TMR) read head with reduced gap thickness
US6614630B2 (en) Top spin valve heads for ultra-high recording density
US7440241B2 (en) Magnetoresistive head using longitudinal biasing method with 90-degree magnetic interlayer coupling and manufacturing method thereof
JP2005229108A (ja) センス電流により発生する渦磁気ドメインに対して安定化された自由層を有する面垂直電流磁気抵抗効果型センサ
JP5383145B2 (ja) 磁気再生ヘッド
JP2004282073A (ja) Cpp−gmr再生ヘッドおよびその製造方法、ならびに、強磁性フリー層およびその磁歪制御方法
WO2005101377A1 (en) Stabilizer for magnetoresistive head in current perpendicular to plane mode and method of manufacture
EP2267811B1 (en) CPP type giant magnetoresistance device and magnetic compounds and units using the same
US7599154B2 (en) Stabilized spin valve head and method of manufacture
JPH10223942A (ja) 磁気抵抗効果素子の製造方法
JP2006261454A (ja) 磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド、および磁気記憶装置
WO2005101375A1 (en) Stabilizer for magnetoresistive head and method of manufacture
US7535683B2 (en) Magnetoresistive head with improved in-stack longitudinal biasing layers
US6327121B1 (en) GMR head, method for its manufacture, and magnetic disc drive utilizing the head
JP2004039869A (ja) 磁気抵抗センサ、磁気ヘッド、ならびに磁気記録装置
JP2006202784A (ja) 磁気抵抗効果膜、並びに、ピンド層の磁化制御方法
JP2001307308A (ja) 磁気抵抗効果型ヘッドおよび情報再生装置
US8091209B1 (en) Magnetic sensing device including a sense enhancing layer
JP2000348309A (ja) スピンバルブ型薄膜磁気素子及び薄膜磁気ヘッド及びスピンバルブ型薄膜磁気素子の製造方法
JP2006080144A (ja) 磁気抵抗効果素子、薄膜磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ、およびハードディスク装置
US7199983B2 (en) Magnetoresistive device utilizing a magnetoresistance effect for reading magnetic information
JP2008192632A (ja) 磁性薄膜および磁気抵抗効果素子
JP2000058941A (ja) スピンバルブ膜の製造方法
JP6331862B2 (ja) 磁気抵抗素子
JP2000215422A (ja) スピンバルブ型磁気抵抗効果素子およびその製造方法とその素子を備えた薄膜磁気ヘッド

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071025

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20090217

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100812

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100818

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20101222