JP2006168387A - 車両用サスペンションシステム - Google Patents

車両用サスペンションシステム Download PDF

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Abstract

【課題】 スタビライザ装置等のロール抑制装置を備えた車両用サスペンションシステムの実用性の向上を図る。
【解決手段】 ロール抑制装置のアクチュエータの目標回転角θ*を決定する際、操舵速度が大きく(S22)、推定横加速度が大きく(S23)、かつ、実横加速度と推定横加速度との偏差が大きい場合(S24)に、実横Gと推定横Gとに基づいて目標回転角を決定する(S26,27,28)。また、その場合であっても、実横Gと推定横Gとの符号が異なる場合や、実横Gが大きい場合、および短時間の間にステアリング操作の切り返しが行われている場合(S30,31)には、両横Gに基づく制御を禁止して、実横Gに基づく制御を実行する(S19,20,21)。
【選択図】 図6

Description

本発明は、車両用サスペンションシステムに関し、詳しくは、車体のロールを抑制するためのロール抑制装置を備えたサスペンションシステムにおけるそのロール抑制装置の制御に関する。
ロール抑制装置を備えたサスペンションシステムの制御に関して、下記特許文献に記載の技術が存在する。下記特許文献1に記載の技術では、車両に発生する実際の横加速度である実横加速度(「実旋回状態量」の一種であり、以下、「実横G」と略す場合がある)を利用してロール抑制装置の制御値を決定しており、下記特許文献2〜4は、実横Gに加え、車両走行速度および操舵量に基づいて推定された推定横加速度(「推定旋回状態量」の一種であり、以下、「推定横G」と略す場合がある)を利用してロール制御装置の制御値を決定している。
特開平3−125616号公報 特開平5−50819号公報 特開平5−16633号公報 特開平4−166408号公報
実横Gは、実際の車両の挙動状態を示すものであるため、車体のロールを抑制するための制御は、横Gに基づいて行うことが理に適っており、その点で、上記特許文献1に記載の技術は妥当な制御が行われる。しかし、車両旋回初期における制御遅れ,ステアリング操作部材の切り戻し時の揺れ戻し,旋回時の車両の過大なスリップ等、実旋回状態量にのみ基づく制御では、十分にロールを制御できない場合があり、特許文献2〜4に記載の技術では、そのことに鑑みて、実横Gのみならず推定横Gに基づく制御を行っている。それらの特許文献に記載の技術では、実横G,推定横Gのそれぞれのゲインを変更している。ところが、それらゲインの変更を伴った制御でも、実際の車両走行における種々の局面の車両の挙動をシミュレートすることは困難であり、また、可及的に完全に近い状態でシミュレートすべく、多くのパラメータを用いて複雑な演算処理を行う場合には、制御値決定の処理が煩雑となり、制御装置の負担が大きくなってしまう。ここに述べた問題は、上記特許文献に記載の技術を始めとする従来の技術の抱える問題の一例であるが、従来の技術は、改善の余地を残すものとなっており、種々の改善を施すことにより、車両用サスペンションシステムの実用性を向上させることが可能であると考える。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、ロール抑制装置を備える車両用サスペンションシステムの実用性を向上させることを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両用サスペンションシステムは、ロール抑制装置の制御にあたって、推定旋回状態量と実旋回状態量との偏差である旋回状態量偏差と実旋回状態量とに基づく制御と、実旋回状態量に基づく制御とを、設定条件を満たすか否かによって切り換えて実行することを特徴とする。
本発明のサスペンションシステムは、例えば、実旋回状態量に基づく制御では制御遅れ等が発生するような場合に、推定旋回状態量を加味した制御を行うことができるため、効果的に車体のロールを抑制することが可能であるという利点を有する。また、実旋回状態量と推定旋回状態量との両者に基づく制御と、実旋回状態量に基づく制御との切換という簡便な手法を採用するため、制御自体が簡便であるという利点を有する。それらの利点により、本発明の車両用サスペンションシステムは、実用性の高いサスペンションシステムとなる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(4)項ないし(6)項を合わせたものが請求項3に、(7)項が請求項4に、(8)項が請求項5に、(9)項が請求項6に、(10)項が請求項7に、それぞれ相当する。
(1)アクチュエータを有してそのアクチュエータの作動によって車体のロールを抑制するロール抑制装置と、
(a)実際の車両の旋回状態を指標する実旋回状態量と、操舵量と車両走行速度とに依拠して推定される車両の旋回状態を指標する推定旋回状態量とに基づいて、前記アクチュエータの制御目標値を決定する制御目標値決定部と、(b)その制御目標値決定部によって決定された制御目標値に基づいて前記アクチュエータを制御作動させる作動制御部とを有する制御装置と
を備えたサスペンションシステムであって、
前記制御目標値決定部が、設定条件を満たす場合に、推定旋回状態量と実旋回状態量との偏差である旋回状態量偏差と実旋回状態量とに基づいて前記アクチュエータの制御目標値を決定する両旋回状態量依拠決定を行い、前記設定条件を満たさない場合に、推定旋回状態量と実旋回状態量との偏差に基づかず実旋回状態量に基づいて前記アクチュエータの制御目標値を決定する実旋回状態量依拠決定を行うことを特徴とする車両用サスペンションシステム。
本項に記載のサスペンションシステムは、実旋回状態量と推定旋回状態量との両者に基づく制御と、実旋回状態量に基づく制御とを、切り換えるようにされている。切り換えという簡便な手法により、2つの制御を選択的に行うことができるため、制御自体が簡便なものとなる。また、設定条件として、例えば、制御の遅れ等、実旋回状態に基づく制御では効果的なロール抑制ができない条件を設定すれば、その条件を満たす場合に、推定旋回状態量を加味した制御を行うことができるため、効果的なロール抑制制御を実行することが可能となる。以上のような利点から、本項の態様によれば、実用性の高い車両用サスペンションシステムが実現される。
本項の態様において、サスペンションシステムが備える「ロール抑制装置」は、その構成が特に限定されるものではなく、すでに公知の構成のロール抑制装置を広く採用することが可能である。詳しく言えば、アクチュエータの作動によって車体のロール量(ロール角),ロール速度等を抑制することが可能な装置であればよいのである。具体的には例えば、車輪保持部材と車体に設けられたマウント部とに連結されて車輪と車体との相対移動に伴って伸縮する懸架シリンダ(例えば、ショックアブソーバのようなもの)を有し、その懸架シリンダの発生させる減衰力をアクチュエータによって変更することでロール速度を制御するような構成のロール抑制装置であってもよく、また、アクチュエータによって積極的に懸架シリンダを伸縮させることにより、車輪と車体間の距離を能動的に変化させてロール量を制御するような構成のロール抑制装置であってもよい。さらに、車輪車体間距離を能動的に変化させる構成の装置として、後に説明するように、スタビライザバーを有し、アクチュエータによってそのスタビライザバーの弾性力を変化させるような構成のロール抑制装置を採用することも可能である。また、「アクチュエータ」は、空気圧,油圧等の液圧によって作動するものであってもよく、電磁式モータ、ソレノイド等の電磁力によって作動するものであってもよい。
本項の態様における「制御装置」は、コンピュータを主体とするものを採用することができ、「制御目標値決定部」によって決定された制御目標値に基づいてアクチュエータの作動を制御する「作動制御部」は、フィードバック制御,フィードフォワード制御を始めとした任意の形態の制御を行うものとすることが可能である。また、本項の態様における「旋回状態量」は、実質的に旋回状態を表す量であればよく、特に限定されるものではない。例えば、上述した横Gを始めとして、車両のヨーレート、車両のスリップ角、車両に作用するコーナリングフォース,横力等、種々のものを採用することが可能である。また、推定旋回状態量の基礎となる「操舵量」は、例えば、ステアリングホイール等のステアリング操作部材の操作量であってもよく、また、転舵装置が備える転舵ロッドの移動量等である転舵量であってもよい。推定旋回状態量は、例えば、車両走行速度と操舵量とをパラメータとするマップを作成し、そのマップを参照することによって推定することもでき、また、車両走行速度と操舵量とをパラメータとする計算式を設定し、その計算式に従って演算することによって推定することも可能である。
本項の態様における制御目標値決定部が両旋回状態量依拠決定を実行するための条件である「設定条件」は、特に限定されるものではないが、実旋回状態量のみならず推定旋回状態量にも基づいて制御目標値を決定することが好ましい条件であり、つまり、実旋回状態量依拠決定では、効果的なロールの抑制ができない状態となる条件である。換言すれば、その設定条件は、両旋回状態量依拠決定許容条件と考えることのできる条件である。具体的には、例えば、後に説明するように、車両走行速度が大きいこと,操舵速度が大きいこと、実旋回状態量と比較して推定旋回状態量がある程度大きいことといった条件であり、実旋回状態量に基づく制御では制御遅れが発生するような条件とすることが可能である。なお、設定条件を複数の条件で構成し、それら複数の条件のすべてを満たす場合に、設定条件を満たすとして、両旋回状態量依拠決定を実行するような態様とすることが可能である。「両旋回状態量依拠決定」の具体的態様も、特に限定されるものではない。好ましい具体的手法については、以下の項において説明する。
(2)前記両旋回状態量依拠決定が、設定された係数を旋回状態量偏差に乗じ、その乗じたものと実旋回状態量との和に基づいて前記アクチュエータの制御目標値を決定するものである(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、「両旋回状態量依拠決定」の好ましい一具体的手法に関する態様である。本項の態様の手法によれば、容易に、推定旋回状態量を加味した制御を実行することが可能である。本項の態様における係数は、定数として設定されるものであってもよく、また、車両走行速度,操舵速度,操舵量,実旋回状態量,推定旋回状態量等の1以上のものをパラメータとする変数として設定されるものであってもよい。定数とすれば、簡便に、制御目標値を決定することが可能であり、また、変数とすれば、よりきめ細かな制御が可能となる。
(3)前記係数の値の範囲が、0を超え1以下とされた(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様によれば、両旋回状態量依拠決定において、実旋回状態量と推定旋回状態量との中間的な値に基づいて制御目標値が決定されることになり、効果的なロール抑制に対して適切な範囲で制御目標値が決定されることになる。例えば、係数を定数として1に設定すれば、制御目標値決定部は、推定旋回状態量に基づく制御目標値の決定と、実旋回状態量に基づく制御目標値の決定とを選択的に行うことになり、その場合には、特に簡便に制御目標値が決定されることになる。
(4)前記設定条件が、操舵速度が設定された閾値以上であるという条件を含む(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
(5)前記設定条件が、旋回状態量偏差が設定された閾値以上であるという条件を含む(1)項ないし(4)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
(6)前記設定条件が、推定旋回状態量が設定された閾値以上であるという条件を含む(1)項ないし(5)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
上記3つの項に記載の態様は、両旋回状態量依拠決定を行う条件である設定条件を具体的なものに限定した態様である。上記3つの条件は、いずれも、実旋回状態量に基づく制御では制御の遅れが発生し易い状態となる条件であり、上記3つの条件の少なくとも1つを設定条件に設定すれば、効果的にロール抑制が行われる。なお、上記3つの条件のうちの1つを満たすことを設定条件とすることも可能であり、2つ以上の条件を満たすことを設定条件とすることも可能である。
(7)前記制御目標値決定部が、前記設定条件を満たす状態であっても、設定された禁止条件を満たす場合には、上記両旋回状態量依拠決定を行わないものとされた(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、制御目標値決定部が、例えば、両旋回状態量依拠制御の利点を犠牲にしてまで実旋回状態量依拠決定を行うべき場合、あえて両旋回状態量依拠決定を行う必要のない場合等に、両旋回状態量依拠決定を行わず、実旋回状態量依拠決定を行う態様である。所定の場合に両旋回状態量依拠決定に代えて実旋回状態量依拠決定を行うことで、より効果的なロール抑制制御が可能となる。なお、「禁止条件」は1つに限定されるものではなく、複数の禁止条件を採用し、それら複数の禁止条件のうち、いずれかの条件を満たす場合に、両旋回状態量依拠決定を行わないようにしてもよい。
(8)前記禁止条件が、実旋回状態量と推定旋回状態量との符号が異なることである(7)項に記載の車両用サスペンション装置。
(9)前記禁止条件が、実旋回状態量が設定された閾値以上であることである(7)項または(8)項に記載の車両用サスペンション装置。
(10)前記禁止条件が、操舵操作を開始した後設定された時間内に逆方向の操舵操作が開始されることである(7)項ないし(9)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
上記3つの項に記載の態様は、それぞれ、禁止条件を具体的に限定した態様である。実旋回状態量と推定旋回状態量との符号が異なる場合(例えば、左方向の実横Gが発生しているものの、右方向に横Gが推定されるような場合である)、特に、それらの旋回状態量がある程度の大きさとなっている場合は、推定旋回状態量を加味して制御目標値を決定すれば、制御目標値が急変する虞がある。また、実旋回状態量がある程度大きくなった場合は、例えば、車両の旋回初期の段階から脱した場合であり、そのような場合はステアリング操作の手ごたえ等への影響がすくないため、実旋回状態量に基づく制御に早めに切り換えることで、その後の旋回状態量の増加した時点での制御の切り換えに比べて、切り換えによる制御の急変の悪影響を少なくすることが可能となる。さらにまた、スラローム走行,緊急回避等においては、短い時間の間にステアリング操作の切り返しが行われるが、その場合には、一瞬大きな操舵量の変動が発生する。そのような場合に、推定旋回状態量を加味した制御では、必要以上のロール抑制制御がなされて、車両の挙動が不安定になる。上記3つの条件は、それらを考慮した禁止条件である。それら3つの条件のいずれかを禁止条件とすれば、円滑なロール抑制制御が可能となる。
(11)前記ロール抑制装置が、
両端部の各々が左右の車輪保持部材の各々に連結されるスタビライザバーを備え、前記アクチュエータがそのスタビライザバーの弾性力を変化させるように構成されたスタビライザ装置を含んで構成された(1)項ないし(10)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
本項の態様におけるスタビライザ装置は、いわゆるアクティブスタビライザとよぶことのできる装置であり、バウンシング,ピッチング等の制御とは別に車体のロール制御を行い得るため、本項の態様のサスペンションシステムは効果的なロール抑制制御が可能となる。本項の態様において採用するスタビライザ装置は、その構成が特に限定されるものではない。例えば、スタビライザバーの一方の端部とサスペンションロアアーム等の車輪保持部材との間に、アクチュエータとしてのシリンダ装置を介在させ、そのシリンダ装置を伸縮させることによってスタビライザバーの弾性力を変化させるような構成のものを採用することが可能である。また、スタビライザバーを中央部で分割して、1対のスタビライザバーとし、アクチュエータによってそれら1対のスタビライザバーを相対回転させることによってスタビライザバー全体の弾性力を変化させるような構成のものを採用することも可能である。
以下、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
図1に、実施例の車両用サスペンションシステム10を概念的に示す。本車両用サスペンションシステム10は、車両の前輪側、後輪側の各々に配設され、それぞれがロール抑制装置として機能する2つのスタビライザ装置14を含んで構成されている。スタビライザ装置14はそれぞれ、両端部において左右の車輪16を保持する車輪保持部材(図2参照)に連結されたスタビライザバー20を備えている。そのスタビライザバー20は、中央部で分割されており、一対のスタビライザバー、すなわち右スタビライザバー22と左スタビライザバー24とを含む構成のものとされている。それら一対のスタビライザバー22,24がアクチュエータ30を介して相対回転可能に接続されており、大まかに言えば、スタビライザ装置14は、アクチュエータ30が、左右のスタビライザバー22,24を相対回転させることによって(図の矢印を参照のこと)、スタビライザバー20全体の弾性力を変化させて車体のロール抑制を行う。
図2には、一方のスタビライザ装置14の車幅方向の中央から一方側の車輪16にかけての部分が概略的に示されている。本車両用サスペンションシステム10は、それぞれが4つの車輪16の各々に対して設けられた4つの独立懸架式のサスペンション装置38を含んで構成されている。このサスペンション装置38は、一般によく知られたダブルウィシュボーン式のものであり、一端部が車体に回動可能に連結され、他端部が車輪16に連結された車輪保持部材としてのアッパアーム42およびロアアーム44を備えている。それらアッパアーム42およびロアアーム44は、車輪16と車体との接近離間(相対的な上下動の意味)に伴い、上記一端部(車体側)を中心に回動させられ、上記他端部(車輪側)が車体に対して上下させられる。また、サスペンション装置38は、ショックアブソーバ46と、サスペンションスプリング48(本装置では「エアばね」である)とを備えている。それらショックアブソーバ46およびスプリング48は、それぞれが、車体側の部材と車輪側の部材とに連結されている。このような構造から、サスペンション装置38は、車輪16と車体とを弾性的に相互支持するとともに、それらの接近離間に伴う振動に対する減衰力を発生させる機能を果たすものとなっている。
スタビライザ装置14は、先に説明した一対のスタビライザバーである右スタビライザバー22と左スタビライザバー24とを備える(図2には、右スタビライザバー22および左スタビライザバー24の一方が示されている)。各スタビライザバー22,24は、それぞれ、略車幅方向に延びるトーションバー部60と、トーションバー部60と一体化されてそれと交差して概ね車両前方あるいは後方に延びるアーム部62とに区分することができる。各スタビライザバー22,24のトーションバー部60は、アーム部62に近い箇所において、車体の一部であるスタビライザ装置配設部64に固定的に設けられた支持部材66によって回転可能に支持され、互いに同軸に配置されている。それらトーションバー部60の端部(車幅方向における中央側の端部)の間には、上述のアクチュエータ30が配設されており、後に詳しく説明するが、各トーションバー部60の端部は、それぞれ、そのアクチュエータ30に接続されている。一方、アーム部62の端部(トーションバー部60側とは反対側の端部)は、上述のロアアーム44に設けられたスタビライザバー連結部68に、それと相対回転可能に連結されている。
アクチュエータ30は、図3に模式的に示すように、電動モータ70と、電動モータ70の回転を減速する減速機構72とを含んで構成されている。これら電動モータ70および減速機構72は、アクチュエータ30のハウジング74内に設けられている。ハウジング74は、ハウジング保持部材76によって、回転可能かつ軸方向(略車幅方向)に移動不能にスタビライザ装置配設部64に保持されている。図2から解るように、ハウジング74の両端部の各々には、2つの出力軸80,82の各々延び出すように配設されている。それら出力軸80,82のハウジング74から延び出した側の端部が、それぞれ、各スタビライザバー22,24の端部と、セレーション嵌合によって相対回転不能に接続されている。また、図3から解るように、一方の出力軸80は、ハウジング74の端部に固定されており、また、他方の出力軸82は、ハウジング74内に延び入る状態で配設されるとともに、ハウジング74に対して回転可能かつ軸方向に移動不能に支持されている。その出力軸82のハウジング74内に存在する一方の端部が、後に詳しく説明するように、減速装置72に接続されている。
電動モータ70は、ハウジング74の内周壁に沿って一円周上に固定して配置された複数のステータコイル84と、ハウジング74に回転可能に保持された中空状のモータ軸86と、モータ軸86の外周においてステータコイル84と向きあうようにして一円周上に固定して配設された永久磁石88とを含んで構成されている。電動モータ70は、ステータコイル84がステータとして機能し、永久磁石88がロータとして機能するDCブラシレスモータとされている。
減速機構72は、波動発生器(ウェーブジェネレータ)90,フレキシブルギヤ(フレクスプライン)92およびリングギヤ(サーキュラスプライン)94を備え、ハーモニックギヤ機構(ハーモニックドライブ機構(登録商標),ストレイン・ウェーブ・ギヤリング機構等とも呼ばれる)として構成されている。波動発生器90は、楕円状カムの外周にボール・ベアリングが嵌められたものであり、モータ軸86の一端部の外周に固定されている。フレキシブルギヤ92は、周壁部が弾性変形可能なカップ形状をなすものとされており、周壁部の開口側の外周に複数の歯が形成されている。このフレキシブルギヤ92は、先に説明した出力軸82に支持されている。詳しく言えば、出力軸82は、モータ軸86を貫通しており、それから延び出す端部にフレキシブルギヤ92の底部が固着されることで、フレキシブルギヤ92と出力軸82とが接続されているのである。リングギヤ94は、概してリング状をなし、その内周に複数(フレキシブルギヤの歯数よりやや多い数、例えば2つ多い数)の歯が形成されており、ハウジング74に固定されている。フレキシブルギヤ92は、その周壁部が波動発生器90に外嵌して楕円状に弾性変形させられ、楕円の長軸方向に位置する2箇所においてリングギヤ94と噛合し、他の箇所では噛合しない状態とされている。波動発生器90が1回転(360度)すると、フレキシブルギヤ92とリングギヤ94とが、それらの歯数の差分だけ相対回転させられる。ハーモニックギヤ機構はその構成が公知のものであることから、本減速機構72の詳細な図示は省略し、説明は簡単なものに留める。
以上の構成から、電動モータ70が回転させられる場合、つまり、アクチュエータ30が作動する場合に、右スタビライザバー22と左スタビライザバー24との各トーションバー部60が相対回転させられ、右スタビライザバー22と左スタビライザバー24とによって構成されて1つのスタビライザバーと観念できるスタビライザバー20が、捩じられることになるのである。このねじりにより生じる力は、左右の各々の車輪16と車体とを接近あるいは離間させる力として作用することになる。つまり、本スタビライザ装置14では、アクチュエータ30の作動によって、スタビライザバー20の弾性力,すなわち,剛性を変化させるような構成の装置とされているのである。
なお、アクチュエータ30には、ハウジング74内に、モータ軸86の回転角度、すなわち、電動モータ70の回転角度を検出するためのモータ回転角センサ100が設けられている。モータ回転角センサ100は、本アクチュエータ30ではエンコーダを主体とするものであり、それによる検出値は、電動モータ70の通電相の切換に利用されるとともに、左右のスタビライザバー22,24の相対回転角度(相対回転位置)を指標するものとして、アクチュエータ30の制御、つまり、スタビライザ装置14によるロール抑制制御に利用される。
本車両用サスペンションシステムは、図1に示すように、スタビライザ装置14、詳しくは、それのアクチュエータ30を制御する制御装置であるスタビライザ電子制御ユニット(スタビライザECU)110(以下、単に「ECU110」という場合がある)を備えている。そのECU110は、図4に示すように、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータ112を主体として構成されており、ECU110には、上記モータ回転角センサ100とともに、操舵量としてのステアリング操作部材の操作量であるステアリングホイールの操作角を検出するための操作角センサ120,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出するための車速センサ122,車体に実際に発生する横加速度である実横加速度を検出する横Gセンサ124が接続されている(図1では、それぞれ「θ」,「δ」,「v」,「G」と表されている)。また、ECU110には、駆動回路130(図4参照)を介してアクチュエータ30の電動モータ70が接続されている。ECU110のコンピュータ112のROMには、ロール抑制プログラム等のプログラムおよび各種データ等が記憶されている。
ECU110は、機能的には、図4に機能ブロックを示すように、操作角センサ120と車速センサ122との検出結果に基づいて横加速度などの旋回状態量を推定する旋回状態量推定部140と、それによって推定された推定横Gと横Gセンサ124によって検出された実横Gとに基づいてアクチュエータ30の制御目標値を決定する制御目標値決定部142と、後で詳細に説明する設定条件が満たされている場合に、旋回状態量偏差としての横加速度偏差(以下、「横G偏差」と略する場合がある)と実横Gとに基づいて制御目標値を決定する両横加速度依拠決定(両旋回状態量依拠決定の一種であり、以下、「両横G依拠決定」と略する場合がある)を許容する設定条件(許容条件)判定部144と、上記設定条件が満たされている場合であっても、予め設定された禁止条件を満たす場合には両横G依拠決定を禁止して、実横Gにのみ基づいて制御目標値を決定する実横加速度依拠決定(実旋回状態量依拠決定の一種であり、以下、「実横G依拠決定」という場合がある)を行うように判断する禁止条件判定部146と、制御目標値決定部142において決定された制御目標値に基づいてアクチュエータ30の作動を制御する作動制御部148とを備える。本システムにおいては、設定条件と禁止条件とに基づいて、両横G依拠決定による制御と、実横G依拠決定による制御とを切り換えるようにされているのである。
以上のように構成される車両用サスペンションシステム10では、ロール抑制制御、つまり、スタビライザ装置14のアクチュエータ30の作動によって車両旋回時における車体のロールモーメントに対抗するモーメントを発生させ、車体のロールをアクティブに抑制する制御が実行される。詳しくは、実横Gに基づいて、あるいは、推定横Gと実横Gとに基づいて、アクチュエータ30を制御する制御目標値を決定するための制御用の横加速度である制御横加速度(以下、「制御横G」という場合がある)が演算され、その制御横Gに基づいて車体のロールを抑制するに必要な制御目標値として、スタビライザバー20の捩り角度、すなわち、左右スタビライザバー22,24の相対回転角度に相当する電動モータ70の目標回転角が決定される。そして電動モータ70の実際の回転角である実回転角と目標回転角との偏差に基づくフィードバック制御が行われ、その偏差を解消するように電動モータ70へ電流が供給されるのである。
なお、上記ロール抑制制御が実行されない間は、電動モータ70には電流が供給されず、アクチュエータ30は、スタビライザバー20からの回転モーメント(車輪16側からの入力)により、電動モータ70の回転角が設定された角度(スタビライザバー20が捩じられていない状態に相当する角度)となる中立位置へ復帰することを許容される。ただし、アクチュエータ30の内部摩擦、電動モータ70のコギングトルク,逆起電力等の影響で中立位置へ復帰しないこともある。
本車両用サスペンションシステム10において、ECU110は、コンピュータ112がロール抑制プログラムを極短い時間間隔をおいて繰り返し実行することで、スタビライザ装置14を適切に作動させ、車体のロールを抑制する。以下、本スタビライザ装置14による車体のロール抑制制御を、図5に示すロール抑制プログラムのフローチャートに沿って説明する。なお、本サスペンションシステム10では、2つのスタビライザ装置14が設けられているが、それらは同様に制御されるため、説明を単純化させるため、一方のスタビライザ装置14の説明をすることで、システム全体における制御の説明に代えることとする。
まず、ステップS1(以下単に「S1」と称する。他のステップについても同じ)において、車体のロールを抑制するために必要な左右のスタビライザバー24,26の相対回転角度、すなわちアクチュエータ30の制御目標値たる電動モータ70の目標回転角θ*が決定される。この決定は、目標回転角決定ルーチンにおいて行われるが、そのルーチンによる目標回転角θ*の具体的な手法は、後に詳しく説明する。次にS2において、今回ロール抑制制御を行うべきか否かが判断される。具体的には、操舵されていない場合、つまり、ステアリングホイールの操作角δが一定期間略中立位置にある場合、または、車速vが予め設定された設定速度より小さい場合には、車体のロールが小さく、ロールの抑制を行う必要がないので、S2の判定がNOとなり、S3に進んでロールの抑制を行わない非ロール抑制制御が実行される。非ロール抑制制御が実行される場合には、アクチュエータ30に電流が供給されず、先に説明したように、アクチュエータ30は、左右スタビライザバー22,24からの回転モーメントによって中立位置へ復帰することを許容される状態となる。以上で本プログラムの1回の実行が終了する。
それに対して、S2においてロールの抑制を行うべきであると判断されれば、S4に進んで、モータ回転角センサ100の検出値に基づいて現在の電動モータ70の回転角である実回転角θが取得される。次にS5において、ロール抑制制御が実行される。具体的には、先に説明したように、目標回転角θ*と実回転角θとの偏差に基づくフィードバック制御が実行され、その偏差を解消するような電流が供給される。以上で本プログラムの1回の実行が終了する。
次に、電動モータ70の目標回転角θ*の決定を行う目標回転角決定ルーチンを、図6に示すフローチャートに沿って説明する。このルーチンでは、まず、S11において、車速センサ122の検出値に基づいて車速vが取得される。次に、S12において、操舵量として、操作角センサ120の検出値に基づいてステアリングホイールの操作角δが取得される。続いてS13において、実旋回状態量として、横Gセンサ124の検出値に基づいて実横加速度Grが取得される。次に、S14において、車速vと操作角δとに基づいて推定旋回状態量としての推定横加速度Gcが推定される。推定横加速度Gcは、車速vと操作角δとをパラメータとするマップが予め記憶されており、そのマップを参照することにより推定される。なお、車速vと操作角δとをパラメータとする計算式が予め設定され、その計算式に従って演算することにより推定するようにしてもよい。次にS15において、操作角δに基づいて操舵速度としての操作速度dδが算出される。
次にS16において、操舵方向フラグFが更新される。操舵方向フラグFは、現在のステアリングホイールの回転位置が、中立位置に対して左右のいずれに位置しているかを示す値であり、例えば、右方向に回転している場合に1とし、左方向に回転している場合に2とすることができる。次にS17において、カウンタCの値が0であるか否かが判断される。カウンタCは、後で詳細に説明するが、実横Gと横G偏差との両方に基づいて制御目標値としての目標回転角θ*を決定する両横G依拠決定が行われる毎に1ずつ増加させられる値である。カウンタCは、一定の値まで増加させられるか、または、実横Gにのみ基づいて目標回転角θ*を決定する実横G依拠決定が行われるかすれば、0に戻される値である。換言すれば、S17においては、前回のルーチンの実行において、両横G依拠決定と実横G依拠決定とのいずれが行われたかが判断されるのである。今回のルーチンの実行においては、カウンタCが初期値0であると仮定すると、S17の判定がYESとなりS18に進む。
続くS18において、第1禁止条件を満たしているか否かが判断される。本実施例では、第1禁止条件は、『推定横加速度Gcの絶対値が設定横加速度Gc0以上であり、かつ、実横加速度Grの絶対値が設定横加速度Gr0以上であって、さらに、推定横加速度Gcと実横加速度Grとが同じ符号ではない』という条件とされており、その条件を満たす場合に両横G依拠決定を禁止するようにされている。例えば、急激な操舵操作が行われた場合には、一時的に推定横加速度Gcと実横加速度Grとの符号が一致しなくなる場合があるが、そのような場合であって推定横加速度Gcと実横加速度Grとがある程度の大きさとなっているときにそれら両方の横Gに依拠した制御を行うと、目標回転角θ*が急変して、違和感のある車両挙動を呈するおそれがある。本実施例においては、そのような急変による悪影響をなくすために、第1禁止条件が満たされる場合には、実横加速度Grにのみ基づいて制御が行われる。すなわち、S19に進んで、制御横加速度G*が実横加速度Grとされ、S20に進んで、その制御横加速度G*に基づいて目標回転角θ*が決定される。次にS21において、カウンタCが初期値0に戻されて本ルーチンの1回の実行が終了する。なお、制御横加速度G*は、ロール抑制制御を行うために設定される値であって、制御目標値としての電動モータ70の目標回転角θ*を決定する際に利用される値である。制御横加速度G*の値に対応する目標回転角θ*の値は、ECU110が備えるコンピュータ112のROMにマップの形式で格納されており、目標回転角θ*は、そのマップを参照して決定される。
一方、S18において第1禁止条件が満たされていないと判断されれば、S22以下において、さらに、両横G依拠決定を行うべきか否かが判断される。本実施例においては、実横Gに基づく制御では制御の遅れが発生しやすい状態となる条件が満たされる場合に両横G依拠決定を行うことが許容される。具体的には、S22において、操作速度dδの絶対値が設定操作速度dδ1以上であるか否かが判断される。次にS23において、推定横加速度Gcの絶対値が設定横加速度Gc1以上であるか否かが判断される。次にS24において推定横加速度Gcと実横加速度Grとの偏差たる横G偏差の絶対値が設定横G偏差ΔG1以上であるか否かが判断される。S22ないしS24に示される3つの条件のうちいずれかが満たされない場合、すなわち、操作速度dδ、推定横加速度Gcまたは横G偏差の絶対値が比較的小さい場合には、横G偏差を加味しなくても大きな違いはないので、S19に進んで実横G依拠決定が行われる。なお、本実施例においては、S22ないしS24の条件をすべて満たすことが設定条件とされ、その設定条件が満たされる場合にのみ両横G依拠決定が行われるようにされているが、3つのステップのうちのいずれか1つを満たすことを両横G依拠決定を行うための設定条件としてもよいし、いずれか2つを満たすことを設定条件としてもよい。
次にS25において第2禁止条件が満たされているか否かが判断される。本実施例では、第2禁止条件は、『実横加速度Grの絶対値が設定横加速度Gr2より大きい』という条件とされており、その条件を満たす場合に、両横G依拠決定を禁止して、実横加速度Grに基づく実横G依拠決定に切り換えるようにされている。上記第2禁止条件を満たす場合とは、例えば、車両の旋回初期の段階から脱した場合であり、そのような場合には、実横加速度Grに基づく制御を行っても、そして、それがたとえ両横Gの偏差が小さくないときであっても、ステアリング操作の手応え等への影響が少ないと考えることができる。また、実横加速度Grに基づく制御に早めに切り換えることで、その後の横加速度が増加した時点での制御の切換に比べて、切換による制御の急変の悪影響を少なくすることが可能となる。このような知見に基づいて、上記第2禁止条件が満たされている場合には、S19ないしS21に進んで、実横加速度Grに基づいて目標回転角θ*が決定される。以上で本ルーチンの1回の実行が終了する。
それに対して第2禁止条件が満たされていない場合には、S25の判定がNOとなり、S26に進んで、制御横加速度G*が、実横加速度Grと横G偏差に係数Kを乗じたものとの和とされる。ここで係数Kは、例えば、車両の走行状態などを示す値をパラメータとする変数として設定することができ、本実施例では、車速をパラメータとする変数とされている。なお、パラメータとして、上述の車速をはじめとして実横G,操舵速度,操舵量,推定横G等のうち1以上のものを選択してもよい。また、係数Kは適当な定数に設定してもよく、その場合には0から1の間の数に設定することが望ましい。次にS27において、その制御横加速度G*に基づいて目標回転角θ*が決定され、S28においてカウンタCに1が加算される。以上で本ルーチンの1回の実行が終了する。
ここで、カウンタCについてさらに説明する。上述のように、S17において、カウンタCが0であるか否かが判断されるが、直前のルーチンの実行において、両横G依拠決定が行われることにより目標回転角θ*が決定された場合には、カウンタCが1以上の数であるので、S17の判定がNOとなる。その場合には、S30に進んで、カウンタCが設定値C1以上であるか否かが判断される。
S30において、カウンタCが設定値C1より小さいと判断された場合には、両横G依拠決定に基づく制御が行われ始めてから一定期間が経過しておらず、その場合には、S31に進んで、操舵方向フラグFが前回と同じであるか否かが判断される。例えば、旋回初期において両横G依拠決定に基づく制御が行われると考えることができ、その制御が行われている時間(一定時間間隔毎に繰り返し実行されたプログラムの実行回数)を計測することにより、ステアリング操作の開始からの経過時間を概ね推定することができる。したがって、カウンタCが設定値C1より小さく、かつ、操舵方向フラグFが前回とは異なる場合には、比較的短い時間の間に切り返し操作が行われたと言える。一般的には、スラローム走行や緊急回避などの場合に、短い時間の間に切り返し操作が行われ、そのような場合には、一瞬大きな操舵量の変動が発生し、推定横加速度Gcも急変するので、推定横加速度Gcを加味した制御では、必要以上のロール抑制制御が行われて、車両の挙動が不安定になるおそれがある。本実施例においては、そのような弊害を防止するために、カウンタCの値が設定値C1より小さい場合であって、操舵方向フラグFの値が、前回のプログラムの実行時におけるフラグの値と一致しない場合に、短い時間の間に切り返し操作が行われていると判断して、実横加速度Grにのみ基づく制御を行うこととしているのである。すなわち、S31の判定がYESとなる場合は、S19ないしS21に進んで実横加速度Grに基づく制御が行われることとなる。
なお、S31において、ステアリング操作の方向が、本ルーチンの前回の実行時における操作方向と同じであれば、上記切り返し操作は未だ行われていないものと判断され、S18以降の処理が実行される。さらに、S30において、カウンタCが設定値C1以上であるならば、旋回初期においてステアリングの切り返し操作が行われなかったと判断でき、その場合には、S32に進んでカウンタCが一旦初期値0に戻され、その後に、S18移行の処理が実行される。
以上の説明から解るように、本実施例においては、ECU110のコンピュータ112の目標回転角決定ルーチンを実行する部分のうちのS14を実行する部分が旋回状態量推定部140を構成し、S15およびS22ないしS24を実行する部分が設定条件(許容条件)判定部144を構成し、S17,S18,S25,S30およびS31を実行する部分が禁止条件判定部146を構成し、S19およびS20と、S26およびS27とを実行する部分がそれぞれ制御目標値決定部142を構成するものとされている。そして、ロール抑制プログラムを実行する部分のうちのS2ないしS5を実行する部分が、作動制御部148を構成するものとされているのである。
本車両用サスペンションシステム10によれば、スタビライザ装置14の制御目標値であるアクチュエータ30が備える電動モータ70の目標回転角θ*を、実横加速度Grと推定横加速度Gcとに基づいて決定するが、実横加速度Grに基づいて決定する場合と、実横加速度Grと推定横加速度Gcとに基づいて決定する場合とを切り換えるようにされている。2つの制御を選択的に行うことができるため、制御自体が簡便なものとなる。また、設定条件つまり許容条件として、実横加速度Grに基づく制御では効果的なロール抑制ができない条件を設定し、その条件を満たす場合に、推定横加速度Gcを加味した制御を行うとともに、禁止条件として、推定横加速度Gcを加味した制御では不都合が生じるおそれがある条件を設定し、その禁止条件を満たす場合には、設定条件が満たされている場合であっても、実横加速度Grにのみ基づく制御を行うようにされており、そのことによって、効果的なロール抑制制御が実行可能となっている。
本発明の一実施例である車両用サスペンションシステムを概念的に示す図である。 上記車両用サスペンションシステムのスタビライザ装置の一部を概念的に示す図である。 上記スタビライザ装置の構成要素であるアクチュエータを概念的に示す断面図である。 上記スタビライザ装置のを制御するスタビライザ電子制御ユニットの機能を示す機能ブロック図である。 上記スタビライザ電子制御ユニットによって実行されるロール抑制プログラムのフローチャートである。 上記ロール抑制プログラムの目標角決定ルーチンのフローチャートである。
符号の説明
10:車両用サスペンションシステム 14:スタビライザ装置(ロール抑制装置) 20:スタビライザバー 30:アクチュエータ 70:電動モータ 72:減速機構 100:モータ回転角センサ 110:スラビライザ電子制御ユニット(制御装置) 112:コンピュータ 140:旋回状態量推定部 142:制御目標値決定部 144:設定条件(許容条件)判定部 146:禁止条件判定部

Claims (7)

  1. アクチュエータを有してそのアクチュエータの作動によって車体のロールを抑制するロール抑制装置と、
    (a)実際の車両の旋回状態を指標する実旋回状態量と、操舵量と車両走行速度とに依拠して推定される車両の旋回状態を指標する推定旋回状態量とに基づいて、前記アクチュエータの制御目標値を決定する制御目標値決定部と、(b)その制御目標値決定部によって決定された制御目標値に基づいて前記アクチュエータを制御作動させる作動制御部とを有する制御装置と
    を備えたサスペンションシステムであって、
    前記制御目標値決定部が、設定条件を満たす場合に、推定旋回状態量と実旋回状態量との偏差である旋回状態量偏差と実旋回状態量とに基づいて前記アクチュエータの制御目標値を決定する両旋回状態量依拠決定を行い、前記設定条件を満たさない場合に、推定旋回状態量と実旋回状態量との偏差に基づかず実旋回状態量に基づいて前記アクチュエータの制御目標値を決定する実旋回状態量依拠決定を行うことを特徴とする車両用サスペンションシステム。
  2. 前記両旋回状態量依拠決定が、設定された係数を旋回状態量偏差に乗じ、その乗じたものと実旋回状態量との和に基づいて前記アクチュエータの制御目標値を決定するものである請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  3. 前記設定条件が、操舵速度が設定された閾値以上であるという条件、旋回状態量偏差が設定された閾値以上であるという条件、推定旋回状態量が設定された閾値以上であるという条件から選ばれる少なくとも1つの条件を含む請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
  4. 前記制御目標値決定部が、前記設定条件を満たす状態であっても、設定された禁止条件を満たす場合には、上記両旋回状態量依拠決定を行わないものとされた請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
  5. 前記禁止条件が、実旋回状態量と推定旋回状態量との符号が異なることである請求項4に記載の車両用サスペンション装置。
  6. 前記禁止条件が、実旋回状態量が設定された閾値以上であることである請求項4または請求項5に記載の車両用サスペンション装置。
  7. 前記禁止条件が、操舵操作を開始した後設定された時間内に逆方向の操舵操作が開始されることである請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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