以下、図面に基づいて、本発明にかかるステッピングモータの駆動機構(駆動方法)が適用される鏡胴内蔵型のデジタルカメラ(撮像装置)を例示して、具体的実施態様につき詳細に説明する。
(デジタルカメラの全体構造の概略説明)
図1は、本実施形態にかかるデジタルカメラ1の外観を示す図であって、図1(a)はその正面図、(b)は背面図をそれぞれ示している。この鏡胴内蔵型のデジタルカメラ1は、カメラ本体ボディ10の頂面にはレリーズ釦101等が、正面側には撮影窓部102や閃光部103等が、また背面側には各種の操作ボタン104や液晶モニタ(LCD)等からなる表示部105、ファインダー106等がそれぞれ配置されている。
そして本体ボディ10の内部には、前記撮影窓部102を通して対物レンズ21から被写体像を取り入れ、本体ボディ10の内部に配置されている固体撮像素子へ導くための撮影レンズ系を構成する屈曲型の鏡胴2が内蔵されている。この屈曲型の鏡胴2は、ズーミングやフォーカシング駆動時においてもその長さが変動しない、つまり本体ボディ10から外部に突出することのない鏡胴であって、その像面側に固体撮像素子が一体的に組み付けられている。さらに、本体ボディ10の内部には、当該カメラ1に与えられる振れを検出する振れ検出手段としてのピッチ(P)振れ検出ジャイロ11と、ヨー(Ya)振れ検出ジャイロ12とが内蔵されている。なお、カメラ1の水平方向(幅方向)をX軸方向と、カメラ1の垂直方向(高さ方向)をY軸方向として、X軸周りの回転方向をピッチ(P)方向とし、Y軸周りの回転方向をヨー(Ya)方向と定めるものとする。
この屈曲型の鏡胴2は、カメラ本体ボディ10の内部に縦型に内蔵される(勿論、横型に内蔵される態様でも良い)筒型を呈しており、該鏡胴2を揺動駆動する駆動機構を備えた振れ補正手段が付設されている。そして、前記ピッチ振れ検出ジャイロ11及びヨー振れ検出ジャイロ12にて本体ボディ10の振れ振動が検出された場合に、鏡胴2は前記振れ補正手段により、その振れを打ち消すようにピッチ方向及びヨー方向に揺動駆動される構成とされている。
図2は、このような鏡胴2の揺動駆動機構(振れ補正機構)の一例を模式的に示した斜視図である。鏡胴2は、該鏡胴2を揺動可能に支持する支持点を備える支持手段にて保持される。図2に示す例では、鏡胴2を図中矢印A1の第1の方向に回動(揺動)可能とさせる第1の回転軸200a並びにその軸受け(図示省略)、及び鏡胴2を図中矢印A2の第2の方向に回動可能とさせる第2の回転軸200b並びにその軸受けにて支持されている例を示している。この支持手段は、鏡胴2を少なくとも2軸方向に揺動させ得るものであれば良く、その支持形態や支持点の数については特に限定はない。従って、一個又は複数個のボール軸受け等を用いて鏡胴2を揺動自在に支持する方式、あるいはコイルバネ等の弾性部材で鏡胴2を多点的に支持する方式等、種々の支持形態を採ることが可能である。
鏡胴2のピッチ方向及びヨー方向への揺動駆動は、所定の駆動回路(ドライバ)6で駆動されるステッピングモータからなるピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bによりそれぞれ行われる。これらピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bは、後記で詳述するようなサーボ制御方式で駆動される。なお、本実施形態におけるドライバ6は、少なくとも前記ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bを、鏡胴2の振れ補正のために駆動させると共に、ステッピングモータのロータの磁極位置を不安定点から安定点へ移動させる安定化駆動のために駆動させることが可能なドライバである。
ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bから鏡胴2への駆動力伝達機構は適宜設定することができる。図2に示す例では、第1の回転軸200aに固定されたギア201aと、ピッチ方向モータ3aの回転軸に固定されたギア202aとを歯合させることで、カメラ本体ボディ10の内部において第1の回転軸200aの軸回りに鏡胴2が矢印A1方向へ回動され、また第2の回転軸200bに固定されたギア201bと、ヨー方向モータ3bの回転軸に固定されたギア202bとを歯合させることで、第2の回転軸200bの軸回りに鏡胴2が矢印A2方向へ回動される構成を示している。なお、ステッピングモータは入力した駆動パルスの積分値で位置把握が可能(オープンループ制御)であるが、あえてクローズドループ制御を行う場合は、鏡胴2のホームポジションを検知するための位置センサ等(後述の基準位置センサ8とは異なるセンサである)が付設される。
図3は、本実施形態で採用されているステッピングモータのサーボ駆動方法を概略的に示す模式的なブロック図である。ステッピングモータ3(前記ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bが該当)は、目標値に対して現在値(出力値)を追従させるサーボ制御方式で駆動され、且つ入力された駆動パルス数をカウントすることで駆動状態(現在値情報)が把握されるオープンループ制御で駆動されている。駆動パルス発生制御部4は、ステッピングモータ3を駆動させる駆動パルスの発生条件の設定を行うものである。
このような構成において、任意に変位する目標値(振れ補正の目標となる位置情報)に対して所定のサンプリング周期t1〜t5が設定される。そして駆動パルス発生制御部4は、このサンプリング周期t1〜t5毎に制御目標情報を取得し、この制御目標情報に応じて、前記サンプリング周期t1〜t5毎に駆動パルス発生条件のリセットと新たな駆動パルス発生条件の設定を行う。つまり、サンプリング周期t1において、それまでのサンプリング間隔S0において設定されていた駆動パルス発生条件を、目標位置に到達したか否かに拘わらずリセットすると共に、次のサンプリング間隔S1における新たな駆動パルス発生条件の設定を行うものである。以下、サンプリング周期t2〜t5についても、同様な動作が実行される。従って、ステッピングモータ3の駆動条件をサンプリング周期t1〜t5毎に目標値の変位に応じて適宜設定可能となり、目標値に現在値を追従させるサーボ制御を的確に実行できるようになる。
上記サンプリング周期t1〜t5は、所望の駆動速度や分解能及びステッピングモータの性能に応じて適宜設定される。また、サンプリング周期t1〜t5毎に設定される駆動パルス発生条件は、例えば各々のサンプリング間隔S1〜S5において発生させる駆動パルスの数やパルスレートなどである。なお、上記オープンループ制御に代えてクローズドループ制御を採用してもよく、この場合は別途位置検出センサ等を設け、この位置検出センサ等からサンプリング周期t1〜t5毎に制御目標情報と比較するための現在値情報を取得するようにすればよい。
(デジタルカメラの全体的な電気的構成の説明)
図4は、本実施形態におけるデジタルカメラ1の構成を、本発明にかかわる電気的構成の要部についてのみ概略的に示したブロック図である。このデジタルカメラ1の本体ボディ10内には、レリーズ釦101、該カメラ1に与えられる手振れ等を検出する振れ検出手段としてのピッチ振れ検出ジャイロ11及びヨー振れ検出ジャイロ12、各種の回路基板ブロックからなる回路装置部13、撮影レンズ系を構成する鏡胴2、及び該鏡胴2を振れ補正駆動する上述のステッピングモータからなるピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3b、前記ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bの基準位置を検出する基準位置センサ8が備えられている。また、前記回路装置部13は、制御目標位置演算部14、シーケンスコントロール回路15、制御回路4(駆動制御部)、積分回路5及びドライバ6を備えて構成されている。
レリーズ釦101は、ユーザが撮影動作を行う際に押下する操作スイッチであり、このレリーズ釦101が半押し状態とされると撮影準備状態となる。かかる撮影準備状態では、被写体に自動的にピントを合わせるオートフォーカス(AF)、露出を自動的に決定するオートエクスポージャー(AE)及び手振れによる画像乱れを防止するための振れ補正機能が動作する。この振れ補正機能は、フレーミングを容易にするためにレリーズ釦101の押下中は連続して動作し続ける。また、レリーズ釦101がユーザによって全押し状態にされると、撮影が行われる。すなわち、AEで決定された露出状態に従って、固体撮像素子が適正露出になるように露光制御が行われる。
ピッチ振れ検出ジャイロ11は、カメラ1のピッチ方向(図1参照)の振れを検出するジャイロセンサであり、ヨー振れ検出ジャイロ12は、カメラ1のヨー方向の振れを検出するジャイロセンサである。ここで用いられるジャイロセンサは、測定対象物(本実施形態ではカメラ本体ボディ10)が振れによって回転した場合における振れの角速度を検出するものである。このようなジャイロセンサとしては、例えば圧電素子に電圧を印加して振動状態とし、該圧電素子に回転運動による角速度が加わったときに生じるコリオリ力に起因する歪みを、電気信号として取り出すことで角速度を検出するタイプのものを用いることができる。
制御目標位置演算部14は、所定のサンプリング周期で取得する制御目標情報を設定する。すなわち、ピッチ振れ検出ジャイロ11が検出したピッチ振れ角速度信号及びヨー振れ検出ジャイロ12が検出したヨー振れ角速度信号を取得し、サーボ制御における制御目標値(この場合、駆動対象物である鏡胴2の位置情報)を設定する。この制御目標位置演算部14は、振れ検出回路141、振れ量検出回路142及び係数変換回路143を備えている。
振れ検出回路141は、ピッチ振れ検出ジャイロ11及びヨー振れ検出ジャイロ12により検出された各角速度信号から、ノイズ及びドリフトを低減するためのフィルタ回路(ローパスフィルタ及びハイパスフィルタ)及び各角速度信号を増幅するための増幅回路などの処理回路を備えて構成される。これら処理回路による処理後の各角速度信号は、振れ量検出回路142に入力される。
振れ量検出回路142は、検出された各角速度信号を所定の時間間隔で取り込み、カメラ1のX軸方向の振れ量をdetx、Y軸方向の振れ量をdetyとして係数変換回路143に出力する。また、係数変換回路143は、振れ量検出回路142から出力される各方向の振れ量(detx,dety)を、各方向の移動量(px,py)、つまりピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bにより、鏡胴2を移動させるべき移動量に変換する。係数変換回路143から出力された各方向の移動量(px、py)を示す信号は、制御回路4に入力される。
制御回路4(駆動制御部)は、所定のサンプリング周期毎に制御目標情報を取得し、取得された前記制御目標情報に応じて、前記サンプリング周期毎に前記ステッピングモータからなるピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bをマイクロステップ駆動させる駆動パルスの発生条件の設定を行う。制御回路4は、後述する積分回路5からの位置情報、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bの動作特性等を考慮して、各方向の移動量(px、py)を示す信号を実際の駆動パルス信号(drvx、drvy)に変換する。すなわち制御回路4は、ピッチ振れ検出ジャイロ11及びヨー振れ検出ジャイロ12からの検知信号に基づいて上記制御目標位置演算部14にて生成される制御目標値に追従する振れ補正制御(サーボ制御)を行うべく、鏡胴2を前記制御目標値に追従揺動させるために必要な駆動パルスの発生条件を演算する演算手段として機能する。
このような機能に加え、本実施形態にかかる制御回路4は、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bのマイクロステップ駆動の終了後、これらモータ各々のロータ磁極位置がステータのいずれかの磁極位置まで移動されるようロータを駆動させた後に、前記励磁コイルによる励磁動作を停止させる安定化駆動の制御も行う。このような制御回路4の機能については、図7に示す機能ブロック図に基づいて後記で詳述する。
積分回路5は、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bをオープンループ制御するために設けられるもので、後記駆動回路6により発生される駆動パルス数を積分し、ステッピングモータの現在位置情報、つまり鏡胴2の揺動位置情報を生成して制御回路4へ向けて出力するものである。なお、クローズドループ制御を採用する場合は、位置センサ及び該位置センサからのセンシング情報を位置情報に置換する変換回路が、この積分回路5に代替して組み込まれることとなる。
ドライバ6はパルス発生回路等を備え、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bを実際にマイクロステップ駆動する駆動パルスを生成する。この駆動パルスは、前記制御回路4から与えられる駆動パルス発生制御信号に基づいて生成される。なおドライバ6は、前記ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3b(ステッピングモータ)を、それぞれ比較的大電流で駆動させる大電流モード(高速駆動モード)と、比較的小電流で駆動させる小電流モード(低速・省電力モード)とで選択的に駆動させることが可能なドライバを用いるようにしても良い。
ドライバ6には、前記制御回路4から所定のサンプリング周期(一定周期)毎に駆動パルス発生制御信号が与えられ、これを受けてドライバ6は、次のサンプリング周期までのサンプリング間隔内に、所定数の駆動パルスを発生する。図5は、ドライバ6による駆動パルスの発生状況の一例を示すタイムチャートである。図示する通り、所定のサンプリング周期S1〜S6間のサンプリング間隔T1〜T5において、目標位置に対する偏差eに対応して、所用数の駆動パルスPが発生されている。すなわち、サンプリング間隔T1では偏差e=1であるので、発生される駆動パルス数はp=1とされ、次のサンプリング間隔T2では偏差e=3であるので、発生される駆動パルス数はp=3とされるというように、原則として、目標位置偏差eに応じて駆動パルスPが発生される。
なお、各サンプリング間隔T1〜T5で出力される駆動パルスのパルスレートは、負荷とトルク(プルイントルク)との関係を考慮し、パルス間隔が短すぎて脱調が生じないようなパルスレートが選ばれる。また、各サンプリング間隔T1〜T5で出力される駆動パルスの数の上限は、前記パルスレートの駆動パルスが所定時間に設定されているサンプリング間隔内に全て出力できるパルス数に設定されている。図5に示す例では、最大パルス数はp=5とされている。なお、上述の小電流モードが選択されている場合、前記最大パルス数を制限(例えばp=3)して最高速度を抑制し、脱調を防止することが望ましい。
本実施形態においてステッピングモータ(ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3b)は、上記のようなドライバ6によりマイクロステップ駆動される。図6は、ドライバ6に設定されているステッピングモータへの通電カーブの一例を示すグラフ図である。図6に示されている前記通電カーブ上の各ステップq0〜q12は、1個の駆動パルスが与えられたときに進行するステップである。
つまり、図5の各サンプリング間隔T1ではp=1の駆動パルスが出力されるが、これにより通電カーブも1ステップ進行し、例えばステップq0からq1まで1ステップ進行する。もしサンプリング間隔T3のp=5の駆動パルスが出力された場合は、例えばステップq0からq5まで5ステップ進行することとなる。つまり、駆動パルス数(pps)に応じて通電ステップの進行度が定まるものであり、これを換言すると、ドライバ6が単位時間当たりに出力する駆動パルス数(pps)の多少を制御することにより、ステッピングモータのスピードが制御されるということになる。
図7は、2相ステッピングモータの場合の、変位角θに対する各相の電流値を示すグラフ図である。図中、P1〜P5は、ステータの磁極配置位置を示している。実際のマイクロステップ駆動では、前記磁極配置位置P1〜P5の間を16等分、32等分或いは64等分などに等分し、その等分された各位置においてロータの位置決めを行うことができる。すなわち図6で説明したように、1つの駆動パルスで前記等分された各位置単位でロータが移動されるものである。なお、このようなロータの位置決め状態が安定的に保持されるのは、励磁コイルによる励磁動作が実行されていることが必要であり、ステータの磁極配置位置(安定点)以外でロータが停止し、励磁動作が解除されると、ディテントトルクによりロータは不安定な状態となる。本実施形態によれば、このような不安定さを解消することが可能となる。
以上の振れ量検出回路142、係数変換回路143及び制御回路4の動作は、シーケンスコントロール回路15によって制御される。すなわち、シーケンスコントロール回路15は、レリーズ釦101が押下されると、振れ量検出回路142を制御することによって、前述した各方向の振れ量(detx,dety)に関するデータ信号を取り込ませる。次に、シーケンスコントロール回路15は、係数変換回路143を制御することによって、各方向の振れ量を各方向の移動量(px、py)に変換させる。そして、制御回路4を制御することにより、各方向の移動量に基づいて鏡胴2の補正移動量を所定のサンプリング周期毎に演算させる。このような動作が、鏡胴2の防振制御(手振れを補正)のために、露光が終了するまでの期間中、一定の時間間隔で繰り返し行われる。そして、手振れ補正が終了した後(ステッピングモータのマイクロステップ駆動の終了後)、ロータを安定点まで移動させる安定化駆動のための制御信号を生成させるものである。
上記ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bを構成するステッピングモータとしては、複数の磁極(例えば磁極数に応じたポールと、その励磁コイルとから構成されている)が備えられたステータコアと、N極及びS極の磁極を有する円筒状の永久磁石からなるロータコアを備える通常の小型ステッピングモータ(PM型ステッピングモータ)が適用可能である。この他、VR型、HB型のステッピングモータも用いることができる。なお、このようなステッピングモータにより鏡胴2を直接的に防振駆動できるよう、前記ロータコアにスクリュー回転軸を直結し、該スクリュー回転軸上に移動片(ナット等)を取り付けた構成とすることが望ましい。
基準位置センサ8(基準位置検出手段)は、ステッピングモータの基準位置を検出するもので、例えばフォトインタラプタやフォトリフレクタ等を用いることができる。具体的には、上記ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bのロータに与えられている所定の基準位置をそれぞれ検出するべく、ピッチ方向モータ用基準位置センサ8aと、ヨー方向モータ用基準位置センサ8bがそれぞれ設置されている。
なお、基準位置センサ8a、8bによる検出位置と、ロータの安定点(ステータの磁極位置;原点)とを一致させることは困難であるので、前記検出位置は安定点から外れた位置に設定される(後出の図11など参照)。但し、基準位置センサ8a、8bによる検出位置と、ロータの安定点との距離は正確に把握することが可能であり、またその距離をステッピングモータに与える駆動パルス数に換算し、ロータを正確に移動させることができるので、この基準位置センサ8a、8bにより基準位置を検出することで、ロータの安定点を正確に検知できると共に、ロータの磁極位置を正確に安定点まで移動させることが可能となる。
(駆動機構の詳細説明)
図8は、上記制御回路4(駆動制御部)の機能を説明するための機能ブロック図である(本発明にかかる駆動機構Gの一実施形態を示すブロック図でもある)。前記制御回路4は、機能的に大別して、駆動パルス発生制御部40と、安定化駆動制御部70とを備えている。駆動パルス発生制御部40は、所定のサンプリング周期毎に、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bをマイクロステップ駆動させる駆動パルスの発生条件の設定を行うことを主な機能としている。また安定化駆動制御部70は、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bのマイクロステップ駆動の終了後、それぞれのロータの磁極位置がステータのいずれかの磁極位置まで移動されるようロータを駆動させた後に、励磁コイルによる励磁動作を停止させることを主な機能としている。
先ず、前記駆動パルス発生制御部40は、サンプリング周期設定部41、ウェイト時間設定部42、サンプリング部43、比較部44、駆動方向判別部45及び出力パルス数算出部46を備えている。
サンプリング周期設定部41は、サーボ制御の制御目標値を前記制御目標位置演算部14から取得するサンプリング周期の設定を受け付ける。このサンプリング周期は任意に設定して良く、例えば0.1ms〜2ms程度の範囲から適宜選択することができる。一般に、サンプリング周期を短く設定すると、短い周期で制御目標値を取得することから追従性は良くなるが、制御演算能力やステッピングモータの性能を考慮して適正なサンプリング周期を設定すればよい。
上記サンプリング周期の設定に当たって、駆動対象物が一次遅れ系に近似される場合、その固有の折点周波数f0を考慮して設定を行うことができる。折点周波数f0とは、振動等に対する応答特性が第1の関係から、前記第1の関係とは異なる第2の関係に変化する周波数である。例えば、対象物に所定の振動力Zinを入力したときの当該対象物の振動変位(出力)をZoutとすると、Zin=Zoutの関係となる振動領域(第1の関係)から、Zin>Zout若しくはZin<Zoutの関係となる振動領域(第2の関係)へ変移するポイントが折点周波数(振動数)f0となる。本実施形態に当てはめれば、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bによる鏡胴2の駆動応答特性が変移するポイントが、折点周波数f0となる。
図9は、駆動応答特性の一例を示すグラフ図である。この場合、折点周波数f0よりも低い周波数f1で駆動力を鏡胴2に与えた場合、所定の駆動力Zinと、これによる鏡胴2の変位Zoutとの関係はZout/Zin=1となり、いわば入力した駆動力に1:1で対応して鏡胴2が揺動されることとなる(第1の関係)。ステッピングモータは、駆動パルスのパルスレートを変更することで速度制御することが可能であるが、この第1の関係領域では、Zout/Zin=1の応答関係が得られることから、パルスレートに依拠した鏡胴2の駆動制御(速度制御)が行えることとなる。従って、前記第1の関係の特性を活用する場合は、前記サンプリング周期を、1/f0以上の長周期に設定すれば良い。ただ、パルスレートに依拠した駆動制御を行うと、サンプリング周期毎にパルスレートを定める演算を実行させる必要が生じることから、駆動処理が複雑化する傾向がある。
一方、折点周波数f0よりも高い周波数f2で駆動力を鏡胴2に与えた場合、所定の駆動力Zinと、これによる鏡胴2の変位Zoutとの関係はZout/Zin<1となり、いわば入力した駆動力に1:1で対応して鏡胴2が揺動されなくなる(第2の関係)。すなわち、与えられる駆動力に間に合わなくなり、忠実に追従して鏡胴2が揺動されなくなる。この場合、パルスレートに依拠した鏡胴2の駆動制御は行えなくなるが、逆にどのような駆動パルスを入力しても実際には追従できる所定量しか駆動されないことになるので、駆動パルスの数のみに依拠して鏡胴2の駆動制御(速度制御)が行えるようになる。従って、駆動処理を簡素化できるという利点がある。このような利点を有する前記第2の関係の特性を活用する場合は、前記サンプリング周期を、1/f0以下の短周期に設定すれば良い。本実施形態では駆動パルス数に依存した速度制御を行うことから、このような1/f0以下の短周期にサンプリング周期を選ぶことが望ましい。
ウェイト時間設定部42は、駆動パルスの発生間隔についての設定を受け付けるもので、具体的には、第1のサンプリング間隔内(例えば図5のサンプリング間隔T1)において最後に発せられる駆動パルスと、前記第1のサンプリング間隔に続く第2のサンプリング間隔内(例えば図5のサンプリング間隔T2)において最初に発せられる駆動パルスとの発生間隔を、所定のウェイト時間に設定する。すなわちウェイト時間設定部42は、第1のサンプリング間隔において最後に発せられる駆動パルスと、これに続く第2のサンプリング間隔内において最初に発せられる駆動パルスとの間隔が異常に近接し得ないよう(近接すると実質的にパルス発生間隔が狭くなることに帰着するので、脱調の可能性が生じる)所定のウェイト時間を設定し、脱調の発生を抑止するものである。
図8に戻って、サンプリング部43は、サンプリング周期設定部41に設定されたサンプリング周期毎に、制御目標位置演算部14からサーボ制御のための目標位置情報を取得する。具体的には、前記係数変換回路143から出力される各方向の移動量(px、py)を示す信号をサンプリング周期毎に取り入れる。
比較部44は、前述の積分回路5から出力される積分値信号であるステッピングモータ(ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3b)のロータの現在位置情報、つまり鏡胴2の揺動位置情報と、前記サンプリング部43に取得された目標位置情報とを比較し、両者の位置偏差eを求める。この位置偏差eが可及的にゼロに近づくよう、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bにより鏡胴2が揺動駆動される。
駆動方向判別部45は、前記比較部44にて求められた位置偏差eがプラス方向の偏差であるか、マイナス方向の偏差であるかに基づいて、ステッピングモータの回転方向を判別する。また駆動方向判別部45は、前記回転方向の判別結果に基づいて、ステータの励磁コイルへの通電順序を変更しロータを正方向回転又は逆方向回転させるための制御信号を発生する。
出力パルス数算出部46は、前記比較部44にて求められた位置偏差eに応じて、サンプリング周期毎に、それまでの駆動パルスの発生条件をリセットすると共に、次のサンプリング周期までのサンプリング間隔内において発生させる駆動パルス発生条件(駆動パルスの数)を定める演算を行う。すなわち出力パルス数算出部46は、サンプリング周期毎に新たにステッピングモータの駆動条件の設定を行うものであり、サーボ制御を行うにあたり、所定のサンプリング周期毎に最も適した駆動パルスをステッピングモータに与えて駆動させるものである。
上記駆動方向判別部45により生成されるロータの正方向回転又は逆方向回転に関する制御信号、及び出力パルス数算出部46により生成される駆動パルス数に関する制御信号は、ドライバ6へ出力される。ドライバ6はこのような制御信号を受けて、パルス発生回路により所定の駆動パルスを生成し、これをピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bに与えて駆動させるものである。
次に、制御回路4(駆動制御部)の安定化駆動制御部70は、原点復帰制御部71、ロータ磁極位置記憶部72、モード判別部73、停止位置設定部74及び位置決め制御部75を備えて構成されている。
原点復帰制御部71は、ロータの磁極位置を、その正方向回転又は逆方向回転の起点として定められている原点位置に復帰させる制御を行う機能部である。本実施形態では、ステータの磁極位置に対するロータの磁極位置を基準として定められている所定のポイント(原点位置)、つまりステータのいずれかの磁極位置とロータの磁極位置とが一致する所定のポイントが前記原点位置として定められている。原点復帰制御部71は、任意の位置に停止しているロータの磁極位置を、前記原点位置となるステータの所定の磁極位置まで移動させる制御を行うものである。この原点復帰制御部71による原点復帰動作は、専ら当該デジタルカメラ1の電源投入時に実行される。
具体的には、励磁コイルによる励磁動作を開始させ、任意の位置に停止しているロータを回転させつつ、基準位置センサ8a,8bを動作させてロータに与えられている所定の基準位置を検出させ、その基準位置検知情報に基づいて、ロータの磁極位置を前記原点位置まで移動させる。その後、必要に応じて励磁コイルを無励磁状態へ移行させる。前述の通り、基準位置センサ8a,8bによる検出位置とステータのいずれかの磁極位置とを一致させることはモータの構造上困難であるので、実際には基準位置センサ8a,8bによる検出位置までロータの磁極位置を移動させた後、前記検出位置から原点位置までの距離(上述の通り、この距離は既知である)再移動させることとなる。
ロータ磁極位置記憶部72(位置記憶部)は、ステッピングモータのマイクロステップ駆動が終了し、すなわちピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bによる振れ補正駆動が一旦終了して安定化駆動が完了した時点における、ロータの磁極位置情報(安定点であるステータのいずれかの磁極位置となる)を記憶する。すなわち、オープンループ制御の場合、ロータの現在位置情報は、前記積分回路5における駆動パルス数の積分値情報で把握できることから、ロータ磁極位置記憶部72は、安定化駆動終了時のロータ磁極位置を、前記駆動パルス数の積分値に関連づけて記憶する。
このロータ磁極位置記憶部72に格納されるロータの現在位置情報は、次回の振れ補正駆動の起動時におけるロータの現在位置情報として活用される。これにより、振れ補正を実行させる毎に原点位置確認をする必要がなくなり、動作を高速化することができる。なお、安定化駆動終了時においてロータ磁極位置が位置合わせされたステータの磁極位置を、新たな原点位置とする更新処理を付随させるようにしても良い。
モード判別部73は、当該デジタルカメラ1がどのような動作モードであるかを判別し、その判別情報を後記位置決め制御部75に送信し、位置決め制御部75においてモードに応じた適切な安定化駆動の実行を可能にするものである。例えば、通常撮影モードと連写撮影モードとを判別し、さらに前記連写撮影モードにおいて原点側に近い方の磁極位置へロータを移動させるのか、最短側の磁極位置へロータを移動させるのかが設定可能とされている場合は、その設定モードを判別する。
停止位置設定部74は、前記モード判別部73で判別されるモード毎の安定化駆動における、ロータ磁極位置の停止位置を設定する。例えば、前記通常撮影モードにおいては、マイクロステップ駆動の終了時におけるロータ磁極位置がどの位置にあるかに拘わらず、原点位置として設定されているステータの磁極位置までロータの磁極位置を移動させるように設定し、前記連写撮影モードにおいては、ロータの磁極位置がその正回転方向又は逆回転方向のそれぞれにおいて最も近接するステータの2つの磁極位置(つまりロータの磁極位置を挟む2つのステータ磁極の位置)のいずれかに至るまで(前記の原点側優先か最短側を優先するかに応じて)ロータの磁極位置を移動させる(省時間駆動モード)ように設定することができる。
位置決め制御部75は、前記モード判別部73による判別情報及び停止位置設定部74による設定情報に応じて、マイクロステップ駆動の終了後に、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bのロータの磁極位置がそのステータのいずれかの磁極位置(原点位置)まで移動されるようロータを駆動させるための制御信号を生成する。なお位置決め制御部75は、例えば前記連写撮影モードが与えられている場合において、マイクロステップ駆動終了時点におけるロータの磁極位置(積分回路5の出力値で把握可能)に対して最短のステータの磁極位置、若しくは原点側に最も近いステータの磁極位置はどれであるかを求める演算も行う。上記制御信号は、駆動パルス発生制御部40を介してドライバ6に送られる。そして、ロータの移動が完了したら、位置決め制御部75は励磁コイルによる励磁動作を停止させる制御も行う。
(安定化駆動の各種動作態様の説明)
次に、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bのマイクロステップ駆動終了後(振れ補正駆動終了後)に、安定化駆動制御部70により実行される安定化駆動の各種動作態様について説明する。
≪タイプA;原点復帰ルーチン≫
図10は、専らデジタルカメラ1の電源投入時において、前記原点復帰制御部71によって実行される原点復帰ルーチン(以下、単に「タイプA」という場合がある)の一例を示すフローチャートであり、図11は、タイプAにおけるロータ磁極位置の移動状態を模式的に示す模式図である。なお、図11において、変位角θの軸上に展開した点P1〜P7はステータの磁極配置位置を示し、また矢印a1,a2はロータ磁極位置の移動状態を示している。
デジタルカメラ1の電源が投入されると、原点復帰制御部71により、振れ補正を実行するか否かに拘わらず、ステッピングモータ(ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3b)の励磁コイルが励磁状態とされ、安定化駆動のための準備状態とされる(ステップS11)。このときロータは、ステータのいずれかの磁極位置にその磁極位置が一致した状態で停止(保持)される。図11では、電源投入時の初期状態において、点P6のステータ磁極位置にロータ磁極位置が位置している場合を例示している。なお、原点位置は点P4のステータ磁極位置に設定されているものとする。
そして励磁コイルに通電され、ロータが回転駆動されると共に、基準位置センサ8a,8bにより、ロータに与えられている所定の基準位置(ロータ磁極位置)の検出動作が開始される(ステップS12)。図11に示した白丸点h0は、基準位置センサ8a,8bによる検出位置である基準位置を示す。このように基準位置と前記原点位置とにズレがあるのは、前述の通り基準位置センサ8a,8bの検出位置をステータ磁極位置に設定することが構造上困難である事情による。そして、図11の矢印a1に示すように、ロータ磁極位置が前記基準位置(白丸点h0)に至るまで、つまり基準位置センサ8a,8bによりロータの基準位置が検出されるまでロータが回転移動しされ、基準位置が検出されると停止される(ステップS13)。
次に、図11の矢印a2に示すように、ロータ磁極位置がこの基準位置(白丸点h0)から、前記原点位置(点P6)まで移動される(ステップS14)。図11の例では、先の矢印a1方向への駆動により原点位置を通過しているので、ステップS14の移動はロータの駆動方向(回転方向)が反転されることとなる。なお、この矢印a2方向への駆動は、前記基準位置と原点位置との距離に応じて予め設定されている調整値に基づいて実行される。
以上の動作により、ロータ磁極位置が原点位置まで移動されたならば、原点復帰されたものとして(安定点に移行したものとして)、原点復帰制御部71は励磁コイルを無励磁状態に移行させる(ステップS15)。そして、原点復帰されたことに伴い、積分回路5による出力駆動パルス数の積分値をゼロにリセットする(ステップS16)。これにより、原点復帰ルーチンは完了する。
≪タイプB;通常撮影モードの安定化駆動ルーチン≫
図12は、単発的に静止画をキャプチャする通常撮影モードにおいて、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bのマイクロステップ駆動が終了した後(例えば1コマの静止画のキャプチャ時における手振れ補正を終え、次の撮影のためのスタンバイをしている状態)、ロータ磁極位置を安定点であるステータの磁極位置(この場合は原点位置に設定されている磁極位置)へ移動させる安定化駆動ルーチン(以下、単に「タイプB」という場合がある)の一例を示すフローチャート(安定化駆動モード1)であり、図13は、タイプBにおけるロータ磁極位置の移動状態を模式的に示す模式図である。なお、図13において、変位角θの軸上に展開した点P1〜pPはステータの磁極配置位置を示し(以下同じ)、また矢印b1,b2はロータ磁極位置の移動状態を示している。
通常撮影モードにおけるマイクロステップ駆動による所定の振れ補正が停止されると(ステップS21)、励磁コイルによる励磁状態は直ちに解除されず、位置決め制御部75による安定化駆動が実行される。この場合、振れ補正が真に必要な次の1コマ撮影まで比較的時間があるので、ロータ磁極位置を原点位置に復帰させた上で無励磁状態へ移行される。なお、図13に示した白丸点h1は、振れ補正停止時におけるロータ磁極位置を示している。
続いて、ロータが回転駆動されると共に、基準位置センサ8a,8bにより、ロータに与えられている所定の基準位置(ロータ磁極位置)の検出動作が開始される(ステップS22)。そして、図13の矢印b1に示すように、ロータ磁極位置が基準位置(白丸点h0)に至るまで、ロータが回転移動されて停止され(ステップS23)、さらに図13の矢印b2に示すように、ロータ磁極位置がこの基準位置(白丸点h0)から、前記原点位置(点P6)まで移動される(ステップS24)。これらの動作は、先に説明した原点復帰ルーチンと同様である。
以上の動作により、ロータ磁極位置が原点位置まで移動されたならば、原点復帰されたものとして(安定点に移行したものとして)、位置決め制御部75は励磁コイルを無励磁状態に移行させる(ステップS25)。そして、原点復帰されたことに伴い、積分回路5による出力駆動パルス数の積分値をゼロにリセットする(ステップS26)。これにより、通常撮影モード(安定化駆動モード1)における安定化駆動ルーチンは完了する。
≪タイプC;連写撮影モードの安定化駆動ルーチン≫
図14は、連続的に静止画をキャプチャする連写撮影モードにおいて、個々のコマ撮影を終え、ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3bのマイクロステップ駆動が終了した後(例えば連写撮影の間隙)、ロータ磁極位置を安定点であるステータの磁極位置(この場合はロータ磁極位置の近傍にある磁極位置)へ移動させる安定化駆動ルーチン(以下、単に「タイプC」という場合がある)の一例を示すフローチャート(安定化駆動モード2;省時間駆動モード)であり、図15は、タイプCにおけるロータ磁極位置の移動状態を模式的に示す模式図である。なお図15において、矢印c1は、当該省時間駆動モードにおいて最短側を優先する場合のロータ磁極位置の移動状態を示し、矢印c2は、原点側を優先する場合のロータ磁極位置の移動状態を示している。
例えば連写撮影モードにおける連写撮影の間隙において、マイクロステップ駆動による所定の振れ補正が停止されると(ステップS31)、励磁コイルによる励磁状態は直ちに解除されず、位置決め制御部75による安定化駆動が実行される。この場合、振れ補正が真に必要な次の1コマ撮影までの時間が少ないので、ロータ磁極位置がその正回転方向又は逆回転方向のそれぞれにおいて最も近接するステータの2つの磁極位置(つまりロータの磁極位置を挟む2つのステータ磁極の位置)のいずれかに復帰させた上で無励磁状態へ移行される。なお、図15に示した白丸点h1は、振れ補正停止時におけるロータ磁極位置を示している。
このような安定化駆動を行うためには、先ずマイクロステップ駆動終了時点におけるモータ磁極位置の存在位置を把握する必要がある。そこで、積分回路5による出力駆動パルス数の積分値に基づいて、ロータ磁極位置の現在位置が求められる(ステップS32)。
次に、モード判別部73により把握されているモードが、最短側優先であるのか、或いは原点側優先であるのかが判断される(ステップS33)。ここで「最短側優先」駆動とは、振れ補正停止時におけるロータ磁極位置である白丸点h1からみて、最も近い位置に存在しているステータの磁極位置へ、ロータ磁極位置を移動させる安定化駆動をいう。このような安定化駆動を行えば、ロータを安定点まで導くために必要な時間が最短化されることから、連写撮影のように1コマ撮影間の時間が短い場合でも、確実に無励磁状態へ移行させることができるので、より一層の省電力化を図ることが可能となる。
また「原点側優先」駆動とは、前記白丸点h1からみて、より原点位置(図15の場合は点P4)に近い方のステータの磁極位置へ、ロータ磁極位置を移動させる安定化駆動をいう。このような安定化駆動を行えば、最短の磁極位置まで移動させる場合に比べて若干時間は要するものの、安定化駆動の時間の短さを担保しつつ、ロータの磁極位置が原点側に少しでも近づくようロータが移動される。一般に、振れ補正では原点位置を基点としてステッピングモータの正回転方向及び逆回転方向の回転量がそれぞれ制限されることになるが、原点側に近づけることで、ロータの両方向への回転自由度(所謂ロータの「動きしろ」)を多い目に確保できるようになる。
ステップS33で「最短側優先」とされた場合、位置決め制御部75は、上記ステップS32で求められたロータ磁極位置の現在位置情報に基づき、白丸点h1(現在位置)から最も近い位置に存在しているステータの磁極位置(図15の場合は点P6)を求め、求められた最短磁極位置をロータ磁極位置の移動目標位置として定め、かかる駆動を行わせるための制御信号を生成する。そしてドライバ6は、かかる制御信号を受けて、図中矢印c1に示すように、ロータ磁極位置を現在位置の白丸点h1から最短磁極位置である点P6まで移動させる(ステップS34)。
一方、ステップS33で「原点側優先」とされた場合、位置決め制御部75は、上記ステップS32で求められたロータ磁極位置の現在位置情報に基づき、白丸点h1(現在位置)から原点位置(点P4)方向において最も近い位置に存在しているステータの磁極位置(図15の場合は点P5)を求める。次に、この原点方向側の最短磁極位置(点P5)が、白丸点h1(現在位置)からみて最も近い位置に存在しているステータの磁極位置であるかが判定される(ステップS35)。もし、最短磁極位置であるならば(ステップS35でYes)、先のステップS34と同じ動作が実行される。
これに対し、点P5が最短磁極位置でない場合(ステップS35でNo;図15はこの状態を例示している)、ロータ磁極位置の移動目標位置は点P5である点で同じであるが、現在位置からみて真に最短の磁極位置(点P6)ではなく、原点位置(点P4)を基準とした最短の磁極位置(点P5)がロータ磁極位置の移動目標位置として定められる点で相違する。位置決め制御部75は、かかる駆動を行わせるための制御信号を生成する。そしてドライバ6は、かかる制御信号を受けて、図中矢印c2に示すように、ロータ磁極位置を現在位置の白丸点h1から原点側に向いた最短磁極位置である点P5まで移動させる(ステップS36)。
以上のいずれか動作により、ロータ磁極位置がステータ磁極位置まで移動されたならば、ロータが安定点に移行したものとして、位置決め制御部75は励磁コイルを無励磁状態に移行させる(ステップS37)。この場合、ロータ磁極位置は原点復帰されていないので、積分回路5による出力駆動パルス数の積分値リセットは行わず、ロータ磁極位置の停止位置が点P6若しくは点P5であること、つまり当該安定化駆動モード2による安定化駆動完了時点におけるロータの磁極位置情報が、例えば駆動パルスの積分値としてロータ磁極位置記憶部72に格納される(ステップS38)。これにより、前記ロータ磁極位置記憶部72に格納されている位置情報に基づいて、次回の振れ補正動作の開始時にロータの位置制御が行えることから、位置校正のための原点復帰ルーチンを実行する必要がないので、高速始動に対応できるようになる。以上により、連写撮影モード(安定化駆動モード2;省時間駆動モード)における安定化駆動ルーチンは完了する。
勿論、この省時間駆動モードは、連写撮影モードに限って実行されるものではなく、通常撮影モードでも実行するようにしても良い。また、図14のフローチャートでは、ステップS33において最短側優先又は原点側優先の判断ステップを実行する例を示したが、予め最短側優先若しくは原点側優先のいずれかに設定されている場合は、上記ステップS32に続き、設定に応じてステップS34若しくはステップS36のいずれかが実行されることとなる。
≪タイプD;原点直行復帰ルーチン≫
図16は、前記タイプBの変形ルーチンとして、通常撮影モードにおいて実行される安定化駆動ルーチン、或いはデジタルカメラ1の電源OFF時において実行される原点復帰ルーチン(以下、単に「タイプD」という場合がある)の一例を示すフローチャートであり、図17は、タイプDにおけるロータ磁極位置の移動状態を模式的に示す模式図である。なお図11において、矢印d1はロータ磁極位置の移動状態を示している。このタイプDでは、基準位置センサ8a,8dを用いた原点確認ステップを行わず、ロータを、その振れ補正停止時におけるロータ磁極位置(白丸点h1)から原点位置(点P4)へ直行させる点で、前述のタイプBと相違している。
通常撮影モードにおけるマイクロステップ駆動による所定の振れ補正が停止、又はデジタルカメラ1の電源OFF指令があると(ステップS41)、励磁コイルによる励磁状態は直ちに解除されず、位置決め制御部75による安定化駆動が実行される。この場合、原点確認ステップを行わないことから、マイクロステップ駆動終了時点におけるモータ磁極位置の存在位置を把握する必要がある。そこで、積分回路5による出力駆動パルス数の積分値に基づいて、ロータ磁極位置の現在位置が求められる(ステップS42)。
位置決め制御部75は、上記ステップS42で求められたロータ磁極位置の現在位置情報に基づき、白丸点h1(現在位置)を基準として原点位置に相当するステータの磁極位置(図17の場合は点P4)を求め、求められた原点磁極位置をロータ磁極位置の移動目標位置として定め、かかる駆動を行わせるための制御信号を生成する。そしてドライバ6は、かかる制御信号を受けて、図中矢印d1に示すように、ロータ磁極位置を現在位置の白丸点h1から原点磁極位置である点P4まで移動させる(ステップS43)。
以上の動作により、ロータ磁極位置が原点位置まで移動されたならば、原点復帰されたものとして(安定点に移行したものとして)、位置決め制御部75は励磁コイルを無励磁状態に移行させる(ステップS44)。そして、原点復帰されたことに伴い、積分回路5による出力駆動パルス数の積分値をゼロにリセットすると共に、次の振れ補正に対するスタンバイ状態、或いは電源OFF動作の実行へ移行する(ステップS45)。これにより、原点直行復帰モードにおける安定化駆動ルーチンは完了する。
(カメラシーケンスとの関係の説明)
続いて、上記で説明したタイプA〜タイプDの安定化駆動モードの、デジタルカメラ1における振れ補正を伴う実際の撮像シーケンスでの使用関係につき、図18〜図23に示すタイムチャートに基づいて、いくつかの実施形態を説明する。なお、これらの図中に記載しているタイプA〜タイプDの記号は、上述したタイプA〜タイプDに相当する記号である。
図18は、通常撮影モードにおける振れ補正動作と安定化駆動モードとの関係を示すタイムチャートである。時刻t11でデジタルカメラ1が電源ONとされると、タイプAの原点復帰ルーチン(図10のフローチャート参照)が実行され、ロータ磁極位置が原点復帰された上で、振れ補正動作「有」の状態とされる。以後、ステッピングモータ(ピッチ方向モータ3a及びヨー方向モータ3b)のマイクロステップ駆動による振れ補正動作が実行可能な状態(ステータ磁極が励磁コイルにより励磁状態)で、レリーズ待ちの状態とされる。なお、タイムチャートでは振れ補正動作「有」の状態を継続させる例を示しているが、原点は既に確認されていることから、タイプAによる原点復帰ルーチンが完了した後、例えばレリーズ釦101が半押し状態とされるまで、励磁動作を解除する(振れ補正動作を「無」の状態とする)ようにしても良い。
そして、時刻t12でレリーズ釦101が全押し(レリーズ)され、シャッターが開とされた所定の露光期間が完了すると(時刻t13)、ステッピングモータのマイクロステップ駆動が終了され(同時にサーボ制御も停止される)、タイプB(図12のフローチャート参照)又はタイプD(図16のフローチャート参照)による安定化駆動ルーチンによって、ロータ磁極位置が原点位置に復帰される。しかる後、励磁動作が停止され、振れ補正動作「無」の状態とされる。そして、次回のコマ撮影のための振れ補正動作が起動される時刻t14まで、このような無励磁状態が継続される。
上記時刻t13〜t14の無励磁期間中、すなわちステッピングモータの励磁コイルへ通電されていない間に、画像転送、画像処理、画像記録などの電力を要する処理が実行される。これにより、電力を効率的に使用できるようになり、省電力化を図ることが可能となる。以下、同様な処理が、デジタルカメラ1が電源OFFとされるまで継続される。この電源OFF時にも(時刻t15)、原点復帰させるためにタイプB又はタイプDによる安定化駆動ルーチンが実行される。
図19は、フラッシュ撮影を実行する場合における振れ補正動作と安定化駆動モードとの関係を示すタイムチャートである。この場合、デジタルカメラ1が電源ONとされると(時刻t21)、タイプAの原点復帰ルーチンが実行されて振れ補正動作「有」の状態とされる点は図18の場合と同様であるが、フラッシュ撮影のためのフラッシュ充電が開始される時刻t22において、省電力化のため振れ補正動作「無」の状態とされる。この際、タイプB又はタイプDによる安定化駆動ルーチンが実行され、ロータ磁極位置が原点復帰された上で励磁動作が停止される。
その後、フラッシュ充電が終了すると(時刻t23)、電力負荷が軽減されることから、振れ補正動作「有」の状態へ移行する。この際、ロータ磁極位置は既に原点へ復帰されているので、タイプAによる原点復帰ルーチンは実行されない。そして、レリーズ後(時刻t24)、シャッターが「開」とされ、所定の露光期間が完了してシャッター「閉」とされたならば、タイプB又はタイプDによる安定化駆動ルーチンが実行され、ロータ磁極位置が原点復帰された上で励磁動作が停止される(時刻t25)。そして、次回のコマ撮影のための振れ補正動作が起動される時刻t26まで、このような無励磁状態が継続される。
上記時刻t25〜t26の無励磁期間中、すなわちステッピングモータの励磁コイルへ通電されていない間に、画像転送、画像処理、画像記録などの電力を要する処理が実行される。このように、フラッシュ充電中や画像処理等の電力を要する期間中に振れ補正用の電力を使用せずに済むため、省電力化を図ることが可能となる。以下、同様な処理が、デジタルカメラ1が電源OFFとされるまで継続される。この電源OFF時にも(時刻t27)、原点復帰させるためにタイプB又はタイプDによる安定化駆動ルーチンが実行される。
図20は、連写撮影モードにおける振れ補正動作と安定化駆動モードとの関係を示すタイムチャートである。このモードでも、デジタルカメラ1が電源ONとされると(時刻t31)、タイプAの原点復帰ルーチンが実行されて振れ補正動作「有」の状態とされる点は図18、図19の場合と同様である。
そして、レリーズ後(時刻t321)、シャッターが「開」とされ、所定の露光期間が完了してシャッター「閉」とされたならば、省時間駆動モードであるタイプC(図14のフローチャート参照)による安定化駆動ルーチンが実行され、ロータ磁極位置が近傍のステータ磁極位置(最短の磁極位置若しくは原点側最短の磁極位置)に移動された上で励磁動作が停止される(時刻t322)。この際、ロータの磁極位置に関する情報(現在位置情報)は、ロータ磁極位置記憶部72に格納され、次の振れ補正動作に備えられる。その後、次回の連写コマ撮影(次回のシャッター「開」動作)に備えて振れ補正動作が起動される時刻t331まで、このような無励磁状態が継続される。
この連写撮影モードでは次の振れ補正動作起動までの時間が短いことから、上記時刻t322〜t331の無励磁期間中、すなわちステッピングモータの励磁コイルへ通電されていない間に、画像転送のみが行われる。以後、連続的に実行されるシャッター開閉動作に対応して、時刻t331,t341,t351で振れ補正動作「有」の状態とされると共に、時刻t332,t342,t352で各々タイプCによる安定化駆動ルーチンが実行され、振れ補正動作「無」の状態とされる。そして、振れ補正動作「無」の無励磁期間中に、各々の画像転送が行われる。つまり、シャッター開(1)〜(4)のそれぞれの露光期間で取得された画像データが、順次画像転送(1)〜(4)として無励磁期間中に所定のメモリ部へ転送されるものである。
しかる後、レリーズ釦101の全押し状態が解除され(レリーズ開放)、連写撮影が完了すると(時刻t36)、メモリ部に転送された画像データの処理、画像記録等が開始される。このように、連写撮影の間隙の短いインターバル間でも、省時間駆動モードであるタイプCの安定化駆動ルーチンにて確実に無励磁期間を設けることができ、その間に画像転送等の電力を要する処理を実行できるので、省電力化を図ることが可能となる。以下、同様な処理が、デジタルカメラ1が電源OFFとされるまで継続される。図示は省略しているが、この電源OFF時には、原点復帰させるためにタイプB又はタイプDによる安定化駆動ルーチンが実行される。
図21は、S/N比を向上させることを目的として、前記タイプB又はDとタイプCとを複合化的に実行させる場合の、振れ補正動作と安定化駆動モード、並びにカメラ各部の動作との関係を示すタイムチャートである。この場合、所定の露光期間が完了して時刻t41でシャッターが「開」から「閉」とする動作が開始され、シャッターが完全に「閉」とされた後(時刻t42)、先ずタイプCによる安定化駆動ルーチンが実行される。
当該安定化駆動ルーチンが完了し、振れ補正動作「無」の状態へ移行して無励磁状態とされると(時刻t43)、先の時刻t41〜t42の露光期間においてCCD(撮像素子)で取得された画像データを転送させ、該画像データを一次メモリに格納させる処理を実行させる。つまり、タイプCのルーチンにて短時間で形成される無励磁状態を利用して、取り急ぎ電力を要する画像データ転送処理のみを実行させるものである。CCDで取得されるアナログデータにはノイズが重畳され易いので、このように速やかに画像データ転送のみを行わせることで、ノイズの重畳を抑止できるようになる。
そして、前記画像データ転送処理が完了した後の所定時刻t44から、ロータ磁極位置を原点位置に復帰させる駆動を実行する。ここでの原点復帰駆動は、前記タイプB又はDの安定化駆動に準じたルーチンとなる。すなわち、ロータはタイプCが完了した段階でその磁極位置から最短距離にある所定のステータ磁極位置で停止されているので、このような所定のステータ磁極位置から原点位置とされているステータ磁極位置へ移動させる磁極間移動となる。この場合、ステータ磁極位置は既知であることから、タイプBで行う原点位置探知動作(図12のステップS22、S23)又はタイプDで行うロータの現在位置確認動作(図16のステップS42)等は不要である。このようなステータ磁極位置間での駆動ルーチンを以下「タイプE」というものとする。図21に記載されている「タイプE」は、かかる駆動ルーチンが実行されることを意味している。
前記原点復帰動作が完了し、再び無励磁状態とされたら(時刻t45)、前記画像データを一次メモリから読み出して所定の画像処理を行い、メモリカード等の記録媒体への書き込み動作が実行される。その後、適宜な時刻に次の撮影のためにシャッターが「開」とされると(時刻t46)、振れ補正動作が起動され(時刻t47)、振れ補正動作「有」の状態へ移行されるものである(時刻t48)。
図21に示したようなシーケンスを実行させれば、画像データをCCDで取得した後、タイプCによる安定化駆動モードで速やかに無励磁状態へ移行させてCCDから画像データを転送させるので、省電力化を図れるだけでなく、ノイズの重畳が抑止されるので、S/N比の良い画像データを得ることが可能となる。
図22は、図18に示したシーケンスの変形例を示すタイムチャートである。この図22に示すシーケンスは、振れ補正の終了時にタイプCの安定化駆動ルーチンが実行されると共に、振れ補正動作の再起動時にタイプEの駆動ルーチンが実行される点で、図18に示したシーケンスと相違する。
デジタルカメラ1が電源ONとされると(時刻t51)、タイプAの原点復帰ルーチンが実行されて振れ補正動作「有」の状態とされる。次いで、時刻t52でレリーズ釦101が全押し(レリーズ)され、シャッターが開とされた所定の露光期間が完了すると(時刻t53)、ステッピングモータのマイクロステップ駆動が終了される。そして、安定化駆動ルーチンとして、図18のようにタイプB又はタイプDではなく、タイプCの安定化駆動ルーチンが実行される。これにより、ロータ磁極位置が所定のステータの磁極位置に位置合わせされると共に、励磁動作が停止され、振れ補正動作「無」の状態とされる。そして、次回のコマ撮影のための振れ補正動作が起動される時刻t54まで、このような無励磁状態が継続される。
上記時刻t53〜t54の無励磁期間中、すなわちステッピングモータの励磁コイルへ通電されていない間に、画像転送、画像処理、画像記録などの電力を要する処理が実行される。これにより、省電力化を図ることができるだけでなく、タイプCのルーチンにより速攻的に無励磁状態にして画像データの転送等が行われるので、ノイズの重畳が軽減化され、S/N比を向上させることができる。
これに続き、振れ補正動作が起動される時刻t54になると、前記タイプCの実行によりロータ磁極位置が停止されている所定のステータ磁極位置から、原点位置とされているステータ磁極位置へ移動させる前記タイプEの駆動ルーチンが実行された上で、振れ補正動作「有」の状態とされる。これにより、原点位置を基準とした、振れ補正の位置制御が行えるようになる。以下、同様な処理が、デジタルカメラ1が電源OFFとされるまで継続される。この電源OFF時にも(時刻t55)、原点復帰させるためにタイプB又はタイプDによる安定化駆動ルーチンが実行される。
図23は、図19に示したシーケンスの変形例を示すタイムチャートである。この図23に示すシーケンスは、同様に振れ補正の終了時にタイプCの安定化駆動ルーチンが実行されると共に、振れ補正動作の再起動時にタイプEの駆動ルーチンが実行される点で、図19に示したシーケンスと相違する。
デジタルカメラ1が電源ONとされると(時刻t61)、タイプAの原点復帰ルーチンが実行されて振れ補正動作「有」の状態とされる。そして、フラッシュ撮影のためのフラッシュ充電が開始される時刻t62において、省電力化のため振れ補正動作「無」の状態とされる。この際、図19のようにタイプB又はタイプDではなく、タイプCの安定化駆動ルーチンが実行される。これにより、ロータ磁極位置が所定のステータの磁極位置に位置合わせされると共に、励磁動作が停止される。
その後、フラッシュ充電が終了すると(時刻t63)、電力負荷が軽減されることから、振れ補正動作「有」の状態へ移行する。この際、ロータ磁極位置を原点へ復帰させるために、タイプEによる原点復帰ルーチンが実行される。そして、レリーズ後(時刻t64)、シャッターが「開」とされ、所定の露光期間が完了してシャッター「閉」とされたならば、再びタイプCによる安定化駆動ルーチンが実行され、ロータ磁極位置が所定のステータの磁極位置へ位置合わせされた上で励磁動作が停止される(時刻t65)。そして、次回のコマ撮影のための振れ補正動作が起動される時刻t66まで、このような無励磁状態が継続される。
上記時刻t65〜t66の無励磁期間中、すなわちステッピングモータの励磁コイルへ通電されていない間に、画像転送、画像処理、画像記録などの電力を要する処理が実行される。これにより、省電力化を図ることができるだけでなく、タイプCのルーチンにより速攻的に無励磁状態にして画像データの転送等が行われるので、ノイズの重畳が軽減化され、S/N比を向上させることができる。
これに続き、振れ補正動作が起動される時刻t66になると、前記タイプCの実行によりロータ磁極位置が停止されている所定のステータ磁極位置から、原点位置とされているステータ磁極位置へ移動させる前記タイプEの駆動ルーチンが実行された上で、振れ補正動作「有」の状態とされる。これにより、原点位置を基準とした、振れ補正の位置制御が行えるようになる。以下、同様な処理が、デジタルカメラ1が電源OFFとされるまで継続される。この電源OFF時にも(時刻t67)、原点復帰させるためにタイプB又はタイプDによる安定化駆動ルーチンが実行される。