本発明の、画像記録後の現像処理工程を経ることなく印刷機に装着し、または印刷機装着後に画像記録して、印刷可能な平版印刷版原版としては、下記に示される(1)機上現像型平版印刷版原版および(2)無処理(無現像型)平版印刷版原版が挙げられる。
(1)機上現像型平版印刷版原版:
露光により湿し水および/またはインキに対する溶解性もしくは分散性が変化するか、または、露光により湿し水またはインキに対する親和性の異なる隣接層に対する接着性が変化する画像記録層を有し、画像露光後、印刷機上で湿し水および/またはインキを版面に供給することで現像しうる平版印刷版原版。
(2)無処理(無現像型)平版印刷版原版:
露光により湿し水またはインキに対する親和性が表面で変化する画像記録層を有し、画像露光後、画像記録層の除去を伴わず印刷可能な平版印刷版原版。
本発明の、画像記録後の現像処理工程を経ることなく印刷機に装着し、または印刷機装着後に画像記録して、印刷可能な平版印刷版原版としては、上記(1)および(2)の平版印刷版原版であれば特に制限はない。
具体的には、特許第2938397号明細書、特開2001−277740号、特開2001−277742号、特開2002−287334号、特開2001−96936号、特開2001−96938号、特開2001−180141号、特開2001−162
960号の各公報、国際公開第00/16987号、国際公開第01/39985号の各パンフレット、欧州特許出願公開第990517号、欧州特許出願公開第1225041号、米国特許第6465152号の各明細書、特開平6−317899号公報、国際公開第96/35143号パンフレット、欧州特許出願公開第652483号明細書、特開平10−10737号、特開平11−309952号の各公報、米国特許第6017677号、米国特許第6413694号の各明細書等に記載の版材が挙げられる。
以下、本発明の平版印刷版原版の構成要素および平版印刷版原版の製造方法について詳しく説明する。
〔変色剤と顕色剤〕
本発明で用いられる露光により可視光領域の吸光度変化が生じる変色剤と顕色剤とのシステム(変色系)としては、変色剤自身はエネルギーを加えても変色しないが、顕色剤と接触することにより相互作用して可視光領域の吸光度変化を起こすものが挙げられる。
なお、本発明においては、変色剤と顕色剤とのシステムを含有する層を変色層と称するが、変色層は、その機能を失わない限り、本発明の平版印刷版原版を構成する他の層、例えば画像記録層、保護層、下塗り層またはその他中間層などと同一の層であってもよい。
上記の変色剤/顕色剤システムの例としては、2種以上の成分間で、酸塩基反応、酸化還元反応、カップリング反応、キレート形成反応等により変色する種々のシステムが挙げられる。例えば、感圧紙などに利用されているラクトン、ラクタム、スピロピランなどの部分構造を有する発色剤を変色成分とし、酸性白土やフェノール類等の酸性物質(顕色剤)からなる発色システム、芳香族ジアゾニウム塩やジアゾタート、ジアゾスルホナート類とナフトール類、アニリン類、活性メチレン類などのアゾカップリング反応を利用したシステム、ヘキサメチレンテトラミンと第2鉄イオンおよび没食子酸との反応やフェノールフタレイン−コンプレクソン酸とアルカリ土類金属イオンとの反応等のキレート形成反応、ステアリン酸第2鉄とピロガロールとの反応やベヘン酸銀と4−メトキシ−1−ナフトールの反応等の酸化還元反応等が利用できる。
発色剤/顕色剤システムにおける発色剤としては、(i)トリアリールメタン系、(ii)ジフェニルメタン系、(iii)キサンテン系、(iv)チアジン系、(v)スピロピラン系、(vi)スピロオキサジン系化合物等があり、具体例としては、特開昭58−27253号公報等に記載のものが挙げられる。中でも(i)トリアリールメタン系、(iii)キサンテン系、(v)スピロピラン系、(vi)スピロオキサジン系の発色剤が、カブリが少なく、高い発色濃度を与えるものが多く好ましい。
具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−クロロ−7−(β−エトキシエチルアミノ)−フルオラン、3−(N,N,N−トリエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロ−7−o−クロロフルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N
−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド等が挙げられる。
スピロピラン系、スピロオキサジン系化合物の具体例としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。
1’,3’−ジヒドロ−1’,3’,3’−トリメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)インドール]、1’,3’−ジヒドロ−8−メトキシ−1’,3’,3’−トリメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)インドール]、6−ブロモ−1’,3’−ジヒドロ−1’,3’,3’−トリメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)インドール]、1’,3’−ジヒドロ−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)インドール]、1’,3’−ジヒドロ−8−メトキシ−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)インドール]、1’,3’−ジヒドロ−5’−メトキシ−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)インドール]、1’,3’−ジヒドロ−8−メトキシ−5’−メチルスルホニル−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)インドール]、1’,3’−ジヒドロ−3’,3’−ジメチル−1−(3−スルホプロピル)−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)インドール]トリエチルアミン塩、1’,3’−ジヒドロ−3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−1’−オクタデシルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)インドール]、1’,3’−ジヒドロ−3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−1’−オクタデシル−8−ドデサノイルオキシメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)インドール]、1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチルスピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]ナフト[2,1−b]−[1,4]オキサジン]、1’,3’−ジヒドロ−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−[2H]インドール]、1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−オクタデシルスピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]ナフト[2,1−b]−[1,4]オキサジン]、1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチルスピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]フェナンスロ[9,10−b][1,4]オキサジン]、5−クロロ−1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチルスピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]ナフト[2,1−b]−[1,4]オキサジン]、5−クロロ−1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチルスピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]フェナンスロ[9,10−b][1,4]オキサジン]等。
上記化合物は、単独または混合して用いられる。
顕色剤としては、フェノール系化合物、有機酸、無機酸、その金属塩、オキシ安息香酸エステル、酸性白土等が用いられる。
フェノール系化合物の具体例としては、フェノール、各種クレゾール、p−ニトロフェノール、4,4’−イソプロピリデン−ジフェノール(ビスフェノールA)、p−tert−ブチルフェノール、2,4−ジニトロフェノール、3,4−ジクロロフェノール、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、p−フェニルフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4
−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−メチレンビス(4−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(α−フェニル−p−クレゾール)チオジフェノール4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、スルホニルジフェノールのほか、p−tert−ブチルフェノール−ホルマリン縮合物、p−フェニルフェノール−ホルマリン縮合物等が挙げられる。
有機酸、無機酸、およびその金属塩としては、酢酸、フタル酸、無水フタル酸、マレイン酸、安息香酸、没食子酸、o−トルイル酸、p−トルイル酸、サリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−3−tert−ブチルサリチル酸、5−α−メチルベンジルサリチル酸、3,5−ビス(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−tert−オクチルサリチル酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、フェニルホスホン酸、HF、HCl、HBr、HI、HClO4、HBF4、HPF6、HSbF6、AsF6、H3PO3、H3PO4、H2SO3、H2SO4、HNO3およびその亜鉛塩、鉛塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。特に、サリチル酸誘導体および亜鉛塩、またはアルミニウム塩は、顕色能が優れている。オキシ安息香酸エステルとしては、p−オキシ安息香酸エチル、p−オキシ安息香酸ブチル、p−オキシ安息香酸ヘプチル、p−オキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
別の発色剤/顕色剤の発色剤としては、例えば、フェノールフタレイン、フルオレッセイン、2,4,5,7−テトラブロモ−3,4,5,6−テトラクロロフルオレッセイン、テトラブロモフェノールブルー、4,5,6,7−テトラブロモフェノールフタレイン、エオシン、アウリンクレゾールレッド、2−ナフトールフェノールフタレイン等が挙げられる。
顕色剤としては、無機および有機アンモニウム塩、有機アミン、アミド、尿素やチオ尿素およびその誘導体、チアゾール類、ピロール類、ピリミジン類、ピペラジン類、グアニジン類、インド−ル類、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアゾール類、モルホリン類、ピペリジン類、アミジン類、フォルムアジン類、ピリジン類等の含窒素化合物が挙げられる。
これらの具体例としては、例えば、酢酸アンモニウム、トリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン、オクタデシルベンジルアミン、ステアリルアミン、アリル尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、アリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、2−ベンジルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシル−イミダゾリン、2,4,5−トリフリル−2−イミダゾリン、1,2−ジフェニル−4,4−ジメチル−2−イミダゾリン、2−フェニル−2−イミダゾリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、1,2−ジトリルグアニジン、1,2−ジシクロヘキシルグアニジン、1,2−ジシクロヘキシル−3−フェニルグアニジン、1,2,3−トリシクロヘキシルグアニジン、グアニジントリクロロ酢酸塩、N,N’−ジベンジルピペラジン、4,4’−ジチオモルホリン、モルホリニウムトリクロロ酢酸塩、2−アミノベンゾチアゾール、2−ベンゾイルヒドラジノ−ベンゾチアゾール等がある。
変色剤を変色させる顕色剤成分は、上記の他に、光照射、加熱、加圧等のエネルギーを加えることにより発生する酸、塩基、またはラジカルであっても良い。そのためには、赤外線レーザー露光により、レーザー光を吸収した赤外線吸収剤から発生する熱や、赤外線吸収剤からの電子またはエネルギー移動により、酸、塩基、またはラジカルを発生する酸発生剤、塩基発生剤、またはラジカル発生剤を変色層に含有させることが好ましい。
酸、塩基、およびラジカルの少なくとも一つと相互作用して変色する変色剤としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノナフトキノン系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
具体例としては、ブリリアントグリーン、エオシン、エチルバイオレット、エリスロシンB、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、フェノールフタレイン、1,3−ジフェニルトリアジン、アリザリンレッドS、チモールフタレイン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、オレンジIV、ジフェニルチオカルバゾン、2,7−ジクロロフルオレセイン、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、フェナセタリン、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学工業(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、ファーストアシッドバイオレットR、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチルアミノ−フェニルイミノナフトキノン、p−メトキシベンゾイル−p′−ジエチルアミノ−o′−メチルフェニルイミノアセトアニリド、シアノ−p−ジエチルアミノフェニルイミノアセトアニリド、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等が挙げられる。
上記の他に、前記の発色剤/顕色剤システムにおける発色剤として示された化合物も有効に用いることができる。
また、ラジカルで発色する化合物としてアリールアミン類の有機染料を用いることができる。この目的に適するアリールアミン類としては、第一級、第二級芳香族アミンのような単なるアリールアミンのほかにいわゆるロイコ染料も含まれる。これらの化合物は、露光部において活性化されたラジカル発生剤から生ずる遊離ラジカルと接触し、未接触のバックグラウンド(地)に対して有色の像を生成させる。これらの化合物の例としては次のようなものが挙げられる。
単なるアリールアミンの例としては、ジフェニルアミン、ジベンジルアニリン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−トルイジン、4,4′−ビフェニルジアミン、o−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、o−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、アニリン、2,5−ジクロロアニリン、N−メチルジフェニルアミン、o−トルイジン等が挙げられる。
ロイコ染料としては、米国特許第3,445,234号明細書に記載のロイコ染料を挙げることができる。すなわち、アミノトリアリールメタン類、アミノキサンテン類、アミノチオキサンテン類、アミノ−9,10−ジヒドロアクリジン類、アミノフェノキサジン類、アミノフェノチアジン類、アミノジヒドロフェナジン類、アミノジフェニルメタン類
、ロイコインダミン類、アミノヒドロシンナミック酸(シアノエタン、ロイコメチン類)、ヒドラジン類、ロイコインジゴイド染料、アミノ−2,3−ジヒドロアントラキノン類、テトラハロ−p,p’−ビフェノール類、2−(p−ヒドロキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール類、フェネチルアニリン類を挙げることができる。
上記のロイコ染料の中でもアミノトリアリールメタンが特に好適である。一般的に好ましいアミノトリアリールメタンの種類は、アリール基の少なくとも2つが、(a)R1およびR2がそれぞれ水素、C1〜C10アルキル、2−ヒドロキシエチル、1−シアノエチル、またはベンジルから選択される基であるようなメタン炭素原子への結合に対してパラ位にあるR1R2N−置換基、および(b)低級アルキル(Cが1〜4)、フッ素原子、塩素原子または臭素原子より選択されるメタン炭素原子に対してオルト位の基を有するフェニル基であり、そして第3のアリール基ははじめの2つと同じかまたは異なっていてもよく、異なっている場合は、
(a)低級アルキル、低級アルコキシ、塩素原子、ジフェニルアミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、フッ素原子または臭素原子、アルキルチオ、アリールチオ、チオエステル、アルキルスルホン、アリールスルホン、スルホン酸、スルホンアミド、アルキルアミド、アリールアミド等で置換されるフェニル;
(b)アミノ、ジ−低級アルキルアミノ、アルキルアミノで置換されうるナフチル;
(c)アルキルで置換されうるピリジル;
(d)キノリル;および
(e)アルキルで置換されうるインドリニリデン;
より選択されるアミノトリアリールメタンおよびその酸塩の種類である。
好ましくは、R1およびR2は、水素原子、または1〜4炭素原子のアルキルである。最も好ましくは、3個の全てのアリール基は同一である。
アミノトリアリールメタンの具体例としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。
p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメタン(ロイコマラカイトグリーン)、p,p′−テトラエチルジアミノジフェニルメタン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、1,2−ジアニリノエチレン、p,p′,p″−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、p,p′,p″−ヘキサエチルトリアミノトリフェニルメタン、p,p′−テトラメチルジアミノトリフェニルメタン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメチルイミン、p,p′,p″−トリアミノ−o−メチルトリフェニルメタン、p,p′,p″−トリアミノトリフェニルカルビノール、p,p′−テトラメチルアミノジフェニル−4−アニリノナフチルメタン、p,p′,p″−トリアミノフェニルメタン、p,p′,p″−ヘキサプロピルトリアミノトリフェニルメタン等。
顕色剤に用いられる光酸発生剤としては、特開昭59−180543号、特開昭59−148784号、特開昭60−138539号、特公昭60−27673号、特公昭49−21601号、特開昭63−58440号、特公昭57−1819号、特開昭53−133428号、特開昭55−32070号等の各公報に記載された有機ハロゲン化合物;特公昭54−14277号、特公昭54−14278号、特開昭51−56885号各公報、米国特許第3,708,296号明細書、同第3,835,002号明細書等に記載されたジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩を用いることができる。
これらの光酸発生剤のうち、より好ましいのは、特開昭59−180543号、同59−148784号、同60−138539号、特公昭60−27673号および特開昭6
3−58440号、特公昭57−1819号、特開昭53−133428号、特開昭55−32070号の各公報に記載のトリハロアルキル化合物およびハロメチルトリアジン化合物である。
これらの酸発生剤としては、25℃における酸解離定数(pKa)が好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下、特に好ましくは−1以下の酸を発生しうる酸発生剤が好適である。このような酸の例には、R−COOH、R−SO3H、R−SO2H、R−PO3H2、R−OPO3H2、R−PO2H2、R−OPO2H2(Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す)で表される有機酸や、HF、HCl、HBr、HI、HClO4、HBF4、HPF6、HSbF6、AsF6、H3PO3、H3PO4、H2SO3、H2SO4、HNO3等の無機酸が含まれ、R−SO3H、R−PO3H2、R−OPO3H2、HClO4、HBF4、HPF6が好ましく、R−SO3H、HClO4、HBF4、HPF6がより好ましく、フッ素原子で置換された炭化水素基を有するR−SO3HおよびHClO4が特に好ましい。
光酸発生剤の好ましい具体例を下記に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
顕色剤に用いられる光または熱で塩基を発生する化合物としては、カルボン酸と有機塩基との塩を挙げることができる。カルボン酸と有機塩基との塩からなる塩基プレカーサーは、米国特許第3,493,374号明細書、英国特許第998,949号明細書、特開昭59−180537号公報、特開昭61−51139号公報および米国特許第4,060,420号明細書等に記載されているものを使用することができる。これらのカルボン酸と有機塩基との塩からなる塩基プレカーサーは、使用時(加熱時)に有機塩基を放出するように構成されている。
顕色剤に用いられる光または熱でラジカルを発生する化合物としては、従来、光重合開始剤として公知のものを使用できる。また従来、光酸化剤と呼ばれているラジカル発生剤も有効である。
例えば、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、有機ハロゲン化合物(例えば、米国特許第3,042,515号明細書、同第3,502,476号明細書および特開平2−44号公報に記載の四臭化炭素、N−ブロモサクシンイミド、トリブロモメチルスルホン、トリハロメチル−s−トリアジン化合物やトリハロメチルオキサジアゾール化合物等のトリハロメチルヘテロ環化合物、α,α,α−トリハロアセトフェノン化合物、アルキルまたはアリールスルホニルクロリド類、アルキルまたはアリールスルフェニルクロリド類、トリハロメチルスルホン類、および有効な光酸発生剤として前記した有機ハロゲン化合物等)、日本写真学会1968年春季研究発表会講演要旨55頁記載のアジドポリマー、米国特許第3,282,693号明細書記載の2−アジドベンゾオキサゾール、ベンゾイルアジド、2−アジドベンズイミダゾール等のアジド化合物、米国特許第3,615,568号明細書記載の3’−エチル−1−メトキシ−2−ピリドチアシアニンパークロレート、1−メトキシ−2−メチルピリジニウムp−トルエンスルホネート等の化合物、特公昭62−39728号公報記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体のごときロフィンダイマー化合物、ベンゾフェノン、p−アミノフェニルケトン、多核キノン、チオキサントン系化合物、芳香族第3アミン類、等を好適に用いることができる。
また、後述の重合開始剤も有効なラジカル発生剤である。
これらのうちより好ましいのは、トリハロアルキル化合物およびハロメチルトリアジン化合物であり、具体例として、光酸発生剤の前記例示化合物が挙げられる。
これらのラジカル発生剤は、単独で用いることも可能であるが、2種以上を併用することもできる。これらのラジカル発生剤の具体例と好ましい併用例については、「UV/EB硬化ハンドブック−原料編−」加藤清視編(高分子刊行会)の67ページから73ページ、「UV/EB硬化技術の応用と市場」田畑米穂監修、ラドテック研究会編集(シーエムシー)の64ページから82ページ、特公平6−42074号公報、特開昭62−61044号公報、特開昭60−35725号公報、特開平2−287547号公報等に記載されているものが挙げられる。
本発明において、上記変色剤は粒子状に分散させて変色層中に含有させなくてはならない。このことにより変色剤と顕色剤との相互作用は変色剤粒子表面でしか発現せず、露光時に溶融したときに初めて変色剤の大部分が顕色剤と相互作用することが可能となって、吸光度差の大きい焼き出し画像を得ることが出来る。
変色剤を変色層中に分散させる方法としては、変色層塗布液中に変色剤を分散して、これを塗布する方法が最も一般的である。ここで用いられる分散方法としては有機顔料の一般的な分散方法が良好に適用される。
有機顔料の一般的な分散方法について説明するが、本発明はこれらの記述により制限されるものではない。従来、有機顔料は合成後、種々の方法で乾燥を経て供給される。通常は水媒体から乾燥させて粉末体として供給されるが、水が乾燥するには大きな蒸発潜熱を必要とするため、乾燥して粉末とさせるには大きな熱エネルギーを与える。そのため、顔料は一次粒子が集合した凝集体(二次粒子)を形成しているのが普通である。この様な凝集体を形成している有機顔料を微粒子にして、画像記録層中に分散するのは容易ではない。そのため有機顔料をあらかじめ種々の樹脂で処理しておくことが好ましい。これら樹脂としては有機線状高分子結合剤を挙げることができる。処理の方法としては、フラッシング処理やニーダー、エクストルーダー、ビーズミル、ボールミル、2本または3本ロールミル等による混練方法がある。このうち、フラッシング処理や2本または3本ロールミル、ビーズミルによる混練法が微粒子化に好適である。
フラッシング処理は通常、有機顔料の水分散液と水と混和しない溶媒に溶解した樹脂溶液を混合し、水媒体中から有機媒体中に有機顔料を抽出し、有機顔料を樹脂で処理する方法である。この方法によれば、有機顔料の乾燥を経ることがないので、凝集を防ぐことができ、分散が容易となる。2本または3本ロールミルによる混練では、有機顔料と樹脂または樹脂の溶液を混合した後、高いシェア(せん断力)をかけながら、有機顔料と樹脂を混練することによって、有機顔料表面に樹脂をコーティングすることによって、有機顔料を処理する方法である。この過程で凝集していた有機顔料粒子はより低次の凝集体から一次粒子にまで分散される。ビーズミルは細長いベッセルにディスクを複数枚取り付けた攪拌軸(回転軸)を挿入し、ベッセル内のビーズを高速で攪拌する。ポンプで送り込まれたミルベース中の凝集した顔料は、高速で動くビーズ相互間やビーズがベッセル内壁シャフトとぶつかる時に生じる強いずり応力により分散させられる。
又、あらかじめアクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、マレイン酸樹脂、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂等で処理した加工有機顔料も都合良く用いることができる。上記の種々の樹脂で処理された加工有機顔料の形態としては、樹脂と有機顔料が均一に分散している粉末、ペースト状、ペレット状、ペースト状が好ましい。一方、樹
脂がゲル化した不均一な塊状のものは好ましくない。
微細な粒子サイズ分布を有する有機顔料分散液を得るには、先ず有機顔料をフラッシング処理したり、ニーダー、エクストルーダ、ビーズミル、2本または3本ロールミルで結着樹脂と混練する。好ましい混練法としては、有機顔料と顔料分散剤を含む他の構成成分と混合し湿式分散(一次分散)を行う。得られた分散液を、目的の粒子サイズ分布になるまで、より微細なビーズを用いて再度湿式分散(二次分散)を行う。または、湿式分散した分散液を遠心分離によって分別したり、デカンテーションにより粗大粒子を除去したりして目的の粒子サイズとサイズ分布を有する粒子を得る。
また、有機顔料の分散性を向上させる目的で従来公知の顔料分散剤や界面活性剤を添加することが出来る。これらの分散剤としては、多くの種類の化合物が用いられるが、例えば、フタロシアニン誘導体(市販品EFKA−745(森下産業製));オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業製)、W001(裕商製)等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;エフトップEF301、EF303、EF352(新秋田化成製)、メガファックF171、F172、F173(大日本インキ製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS382、SC−101、SC−102、SC−103、SC−104、SC−105、SC−1068(旭硝子製)等のフッ素系界面活性剤;W004、W005、W017(裕商製)等のアニオン系界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(以上森下産業製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ製)等の高分子分散剤;ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(ICI製);アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77,P84,F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(旭電化製)およびイソネットS−20(三洋化成製)が挙げられる。
次に、この様にして得られた変色剤分散物の好ましい使用様態について述べる。変色剤の平均粒径(平均サイズ)は非常に重要である。平均粒径が大きいと好ましくない光の散乱を生じ、結果として、感材に用いた場合、その透過率が低下し、画像形成に必要な光を画像記録層の内部にまで与える事ができなくなってしまう。一方、粒径が小さすぎると、変色剤の表面積が増加し、露光時の溶融による顕色剤との相互作用増加の効果が薄れてしまう。また更には分散安定性が不足する傾向があり、変色層中で凝集、沈降等、好ましくない問題を生じる。これらの観点から本発明の変色剤分散物は、平均粒径が0.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.3μmで、更に好ましくは0.05〜0.2μmである。また、0.5μmより大きい粒子の体積分率が10%以下であることが望ましい。
顕色剤を変色層中に含有させる方法としては、顕色剤を適当な溶媒に溶解して塗布する方法が一般的であるが、この顕色剤を前述の分散方法により変色剤と同様に分散して塗布してもよく、また顕色剤をマイクロカプセル又はミクロゲルに内包して変色層中に含有させてもよい。マイクロカプセル化又はミクロゲル化は、後述するような公知の方法で行う
ことが出来る。
本発明の変色層の形成は、顕色剤を含み、上記のように変色剤を粒子状で分散した塗布液を塗布した後、該変色剤粒子が溶融しない条件で乾燥することが好ましい。また、変色層の上にさらに保護層などの層を設ける場合は、その乾燥も変色剤粒子が溶融しない条件で行うことが好ましい。
変色剤の平版印刷版原版単位面積あたりの添加量は、画像記録層の画像形成性や未露光部機上現像性、露光部着肉性など印刷性能を低下させない様に上限を設定する。一方、下限は検版性の向上に十分な効果がえられる様に設定する。これらは個々の変色剤の光学特性によって異なる。好ましくは0.001〜1g/m2であり、より好ましくは0.005〜0.5g/m2、最も好ましくは0.01〜0.3g/m2である。
また、顕色剤の平版印刷版原版単位面積あたりの添加量は、0.001〜1g/m2が好ましく、より好ましくは0.005〜0.5g/m2、最も好ましくは0.01〜0.3g/m2である。
変色層は変色剤、顕色剤の他に、バインダーポリマーや界面活性剤、その他添加物などを適宜用いることが出来る。ここで用いられるバインダーポリマーや界面活性剤、その他添加物は後述する画像記録層、保護層や下塗り層に用いられるものであれば如何なるものでも使用可能である。
〔画像記録層〕
(赤外線吸収剤)
本発明の画像記録層には、赤外線レーザーに対する感度を高めるため、赤外線吸収剤が用いられる。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料または顔料である。
染料としては、市販の染料および例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等の公報に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号公報に記載されているピリリウム系化
合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。さらに、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(I)で示されるシアニン色素が挙げられる。
一般式(I)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1または以下に示す基を表す。
ここで、Xa-は後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
X2は酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数12個
以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(I)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(I)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げ
られる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1〜1μmの範囲にあることが好ましい。この範囲で、顔料分散物の画像記録層塗布液中での良好な安定性と画像記録層の良好な均一性が得られる。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
これらの赤外線吸収剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、変色層に添加してもよいし、さらに別の層を設けそこへ添加してもよい。また、マイクロカプセル又はミクロゲルに内包させて添加することもできる。
添加量としては、ネガ型平版印刷版原版を作製した際に、画像記録層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.3〜1.2の範囲にあるように添加することが好ましく、より好ましくは、0.4〜1.1の範囲である。この範囲で、画像記録層の深さ方向での均一な重合反応が進行し、良好な画像部の膜強度と支持体に対する密着性が得られる。
画像記録層の吸光度は、画像記録層に添加する赤外線吸収剤の量と画像記録層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像記録層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
(印刷画像を形成するための要素)
本発明の画像記録層における印刷画像を形成するための好ましく使用可能な要素としては、(A)重合を利用する画像形成要素、および(B)疎水化前駆体の熱融着や熱反応を利用する画像形成要素のいずれも用いることができる。以下、これらの要素について説明する。
(A)重合を利用する画像形成要素
重合を利用する画像形成要素においては、本発明の画像記録層は、重合性化合物および重合開始剤を含有する。
重合系要素は画像形成の感度が高いので、露光エネルギーを焼き出し画像形成に有効に
分配することができ、大きい明度差の焼き出し画像を得るのにより好ましい。
<重合性化合物>
本発明の画像記録層には、効率的な硬化反応を行うため重合性化合物を含有させることが好ましい。本発明に用いることができる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、および単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(a)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (a)
(ただし、R4およびR5は、HまたはCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(19
84年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、画像記録層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述のオーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
重合性化合物は、画像記録層中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
<重合開始剤>
本発明に用いられる重合開始剤としては、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進する化合物を示す。本発明に使用できる重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などが挙げられる。中でも、本発明において好適に用いられる重合開始剤は、熱エネルギーによりラジカルを発生する化合物である。以下、本発明で用いる重合開始剤についてより具体的に説明するが、かかる重合開始剤は、単独または2種以上を併用して用いることができる。
このような重合開始剤としては、例えば、有機ハロゲン化合物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、が挙げられる。
上記有機ハロゲン化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開53−133428号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号の各公報、M.P.Hutt,“Journal of Heterocyclic Chemistry”,1(No.3),(1970)に記載の化合物が挙げられる。中でも、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物およびS−トリアジン化合物が好適である。
より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、またはトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6−トリ
ス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2―n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ナトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
上記カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチルー(4'−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
上記アゾ系化合物としては例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
上記有機過酸化物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシ
エチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
上記メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号の各明細書等に記載の種々の化合物、具体的には、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ブロモフェニル))4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2'−ビス(o,o'−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−メチルフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
上記有機ホウ素化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837号、特開2002−107916号の各公報、特許第2764769号明細書、特開2002−116539号公報、および、Kunz,Martin,“Rad Tech'98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体あるいは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−34
8011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が挙げられる。
上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号公報、特開2002−328465号公報等記載される化合物が挙げられる。
上記オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979 )1653-1660)、J.C.S.Perkin II (1979)156-162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202-232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報記載の化合物、具体的には、下記の構造式で示される化合物が挙げられる。
上記オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同第4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同第390,214号、同第233,567号、同第297,443号、同第297,442号、米国特許第4,933,377号、同第161,811号、同第410,201号、同第339,049号、同第4,760,013号、同第4,734,444号、同第2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同第3,604,580号、同第3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et a
l,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
特に反応性、安定性の面から好適なものとして、上記オキシムエステル化合物またはオニウム塩(ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩もしくはスルホニウム塩)が挙げられる。
本発明において好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩である。
式(RI−I)中、Ar11は置換基を1〜6個有していても良い炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z11 -は1価の陰イオンを表し、具体的には、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンが挙げられる。中でも安定性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオンおよびスルフィン酸イオンが好ましい。
式(RI−II)中、Ar21およびAr22は、各々独立に置換基を1〜6個有していても良い炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z21 -は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホ
ン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
式(RI−III)中、R31、R32およびR33は、各々独立に置換基を1〜6個有していても良い炭素数20以下のアリール基またはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。中でも反応性、安定性の面から好ましいのは、アリール基である。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z31 -は1価の陰イオンを表す。具体例としては、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンが挙げられる。中でも安定性、反応性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。より好ましいものとして特開2001−343742号公報記載のカルボン酸イオン、特に好ましいものとして特開2002−148790号公報記載のカルボン酸イオンが挙げられる。
上記式(RI−I)〜(RI−III)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
これらの重合開始剤は、画像記録層を構成する全固形分に対し好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で、良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。これらの重合開始剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、これらの重合開始剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
<その他の画像記録層成分>
本発明の重合系画像記録層には、さらに、バインダーポリマー、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、低分子親水性化合物などの添加剤を、必要に応じて含有させることができる。以下、それらについて説明する。
<バインダーポリマー>
本発明の画像記録層には、バインダーポリマーを含有させることができる。本発明に用いることができるバインダーポリマーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有する線状有機ポリマーが好ましい。このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していることが好ましい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等
の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレン等が挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたは−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2 )n CR1 =CR2 R3 、−(CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 R3 、−(CH2 CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 R3 、−(CH2 )n NH−CO−O−CH2 CR1 =CR2 R3 、−(CH2 )n −O−CO−CR1 =CR2 R3 および−(CH2 CH2 O)2 −X(式中、R1 〜R3 はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1 とR2 またはR3 とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 (特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2 CH2 O−CH2 CH=CH2 、−CH2 C(CH3 )=CH2 、−CH2 CH=CH−C6 H5 、−CH2 CH2 OCOCH=CH−C6 H5 、−CH2 CH2 −NHCOO−CH2 CH=CH2 および−CH2 CH2 O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 、−CH2 CH2 −Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2 CH2 −OCO−CH=CH2 が挙げられる。
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定による重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と良好な保存安定性が得られる。
また、機上現像性向上の観点から、バインダーポリマーは、インキおよび/又湿し水に対する溶解性または分散性が高いことが好ましい。
インキに対する溶解性または分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親油的な方が好ましく、湿し水に対する溶解性または分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親水的な方が好ましい。このため、本発明においては、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することも有効である。
親水的なバインダーポリマーとしては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、
アミド基、カルボキシメチル基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性基を有するものが好適に挙げられる。
具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシピロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が60モル%以上、好ましくは80モル%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル等が挙げられる。
バインダーポリマーは、重量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマーのいずれでもよいが、ランダムポリマーがより好ましい。また、バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
バインダーポリマーは、従来公知の方法により合成することができる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられる。
バインダーポリマーを合成する際に用いられる重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等の公知の化合物を用いることができる。
バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分に対して、10〜90質量%であるのが好ましく、20〜80質量%であるのがより好ましく、30〜70質量%であるのがさらに好ましい。この範囲で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
また、重合性化合物とバインダーポリマーは、質量比で1/9〜7/3となる量で用いるのが好ましい。
<界面活性剤>
本発明において、画像記録層には、印刷開始時の機上現像性を促進させるため、および、塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ
素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および
親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号および同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜7質量%であるのがより好ましい。
<重合禁止剤>
本発明の画像記録層には、画像記録層の製造中または保存中において(C)重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
<高級脂肪酸誘導体等>
本発明の画像記録層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
<可塑剤>
本発明の画像記録層は、機上現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好ましい。
<無機微粒子>
本発明の画像記録層は、画像部の硬化皮膜強度向上および非画像部の機上現像性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像記録層中に安定に分散して、画像記録層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
<低分子親水性化合物>
本発明の画像記録層は、機上現像性向上のため、親水性低分子化合物を含有しても良い。親水性低分子化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類およびそのエーテルまたはエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類およびその塩、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類およびその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類およびその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類およびその塩等が挙げられる。
<重合系画像記録層の形成>
本発明においては、画像記録層構成成分を画像記録層に含有させる方法として、いくつかの態様を用いることができる。一つは、例えば、特開2002−287334号公報に記載のごとく、該構成成分を適当な溶媒に溶解して塗布する分子分散型画像記録層である。他の一つの態様は、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、該構成成分の全てまたは一部をマイクロカプセルに内包させて画像記録層に含有させるマイクロカプセル型画像記録層である。さらに、マイクロカプセル型画像記録層において、該構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。ここで、マイクロカプセル型画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。更に他の態様として、画像記録層に架橋樹脂粒子、すなわちミクロゲルを含有する態様が挙げられる。該ミクロゲルは、その中および/または表面に該構成成分の一部を含有することが出来る。特に重合性化合物をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
より良好な機上現像性を得るためには、画像記録層は、マイクロカプセル型もしくはミクロゲル型画像記録層であることが好ましい。
画像記録層構成成分をマイクロカプセル化、もしくはミクロゲル化する方法としては、公知の方法が適用できる。
例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号明細書、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号明細書、特公昭38−19574号公報、同42−446号公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号明細書、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号明細書、同第4087376号明細書、同第4089802号明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセル
ロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号公報、同51−9079号公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号明細書、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号明細書、同第967074号明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に、バインダーポリマー導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入しても良い。
一方、ミクロゲルを調製する方法としては、特公昭38−19574号公報、同42−446号公報に記載されている界面重合による造粒、特開平5−61214号公報に記載されているような非水系分散重合による造粒を利用することが可能である。但し、これらの方法に限定されるものではない。
上記界面重合を利用する方法としては、上述した公知のマイクロカプセル製造方法を応用することができる。
本発明に用いられる好ましいミクロゲルは、界面重合により造粒され3次元架橋を有するものである。このような観点から、使用する素材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。
上記のマイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
本発明の画像記録層は、必要な上記各成分を溶剤に分散、または溶かして塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の画像記録層は、同一または異なる上記各成分を同一または異なる溶剤に分散、または溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
(B)疎水化前駆体系の画像形成要素
<疎水性化前駆体>
本発明において疎水性化前駆体とは、熱が加えられたときに親水性の画像記録層を疎水性に変換できる微粒子である。この微粒子としては、熱可塑性ポリマー微粒子および熱反応性ポリマー微粒子から選ばれる少なくともひとつの微粒子であることが好ましい。また、熱反応性基を有する化合物を内包したマイクロカプセル又はミクロゲルであってもよい。
本発明の画像記録層に用いられる熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報および欧州特許第931647号明細書などに記載の熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。かかるポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾールなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマーまたはそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
本発明に用いられる熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。このような熱可塑性ポリマー微粒子の合成方法としては、乳化重合法、懸濁重合法の他に、これら化合物を非水溶性の有機溶剤に溶解し、これを分散剤が入った水溶液と混合乳化し、さらに熱をかけて、有機溶剤を飛ばしながら微粒子状に固化させる方法(溶解分散法)がある。
本発明に用いられる熱反応性ポリマー微粒子としては、熱硬化性ポリマー微粒子および熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられる。
上記熱硬化性ポリマーとしては、フェノール骨格を有する樹脂、尿素系樹脂(例えば、尿素またはメトキシメチル化尿素など尿素誘導体をホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したもの)、メラミン系樹脂(例えば、メラミンまたはその誘導体をホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したもの)、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。中でも、特に好ましいのは、フェノール骨格を有する樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂およびエポキシ樹脂である。
好適なフェノール骨格を有する樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾールなどをホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したフェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、およびN−(p−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、p−ヒドロキシフェニルメタクリレートなどのフェノール骨格を有するメタクリルアミドもしくはアクリルアミドまたはメタクリレートもしくはアクリレートの重合体または共重合体を挙げることができる。
本発明に用いられる熱硬化性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。このような熱硬化性ポリマー微粒子は、溶解分散法で容易に得られるが、熱硬化性ポリマーを合成する際に微粒子化してもよい。しかし、これらの方法に限らない。
本発明に用いる熱反応性基を有するポリマー微粒子の熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でも良いが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基な
ど)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基またはそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基およびこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基など)、縮合反応を行うカルボキシル基および反応相手であるヒドロキシル基またはアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物および反応相手であるアミノ基またはヒドロキシル基などを好適なものとして挙げることができる。
これらの官能基のポリマー微粒子への導入は、重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
重合時に導入する場合は、上記の官能基を有するモノマーを乳化重合または懸濁重合することが好ましい。上記の官能基を有するモノマーの具体例として、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、2−(ビニルオキシ)エチルメタクリレート、p−ビニルオキシスチレン、p−{2−(ビニルオキシ)エチル}スチレン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアナートエチルメタクリレートまたはそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−イソシアナートエチルアクリレートまたはそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2官能アクリレート、2官能メタクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明では、これらのモノマーと、これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性基をもたないモノマーとの共重合体も用いることができる。熱反応性基をもたない共重合モノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどを挙げることができるが、熱反応性基をもたないモノマーであれば、これらに限定されない。
熱反応性基の導入を重合後に行う場合に用いる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応を挙げることができる。
上記熱反応性基を有するポリマー微粒子の中で、ポリマー微粒子同志が熱により合体するものが好ましく、その表面は親水性で水に分散するものが特に好ましい。ポリマー微粒子のみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固温度より高い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。このようにポリマー微粒子表面を親水性にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーもしくはオリゴマーまたは親水性低分子化合物をポリマー微粒子表面に吸着させてやればよい。しかし、表面親水化の方法は、これに限定されない。
これらの熱反応性基を有するポリマー微粒子の凝固温度は、70℃以上が好ましいが、経時安定性を考えると100℃以上がさらに好ましい。ポリマー微粒子の平均粒径は、0.01〜2.0μmが好ましいが、その中でも0.05〜2.0μmがさらに好ましく、特に0.1〜1.0μmが最適である。この範囲内で良好な解像度および経時安定性が得られる。
本発明に用いられる熱反応性基を有する化合物を内包するマイクロカプセル又はミクロゲルにおける熱反応性基としては、前記の熱反応性基を有するポリマー微粒子に用いられるものと同じ熱反応性基を好適なものとして挙げることができる。以下に、熱反応性基を有する化合物について説明する。
重合性不飽和基を有する化合物としては、前記重合系のマイクロカプセル又はミクロゲルように示したのと同じ化合物が好適に用いられる。
本発明に好適なビニルオキシ基を有する化合物としては、特開2002−29162号公報に記載の化合物が挙げられる。具体例として、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,2−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3,5−トリス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、4,4´−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ビフェニル、4,4´−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルエーテル、4,4´−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルメタン、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ナフタレン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フラン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}チオフェン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}イミダゾール、2,2−ビス[4−{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フェニル]プロパン{ビスフェノールAのビス(ビニルオキシエチル)エーテル}、2,2−ビス{4−(ビニルオキシメチルオキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−(ビニルオキシ)フェニル}プロパンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明に好適なエポキシ基を有する化合物としては、2個以上エポキシ基を有する化合物が好ましく、多価アルコールや多価フェノールなどとエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル化合物またはそのプレポリマー、更に、アクリル酸グリシジルまたはメタクリ酸グリシジルの重合体もしくは共重合体等を挙げることができる。
具体例としては、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルまたはエピクロロヒドリン重付加物、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルまたはエピクロロヒドリン重付加物、ハロゲン化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルまたはエピクロロヒドリン重付加物、ビフェニル型ビスフェノールのジグリシジルエーテルまたはエピクロロヒドリン重付加物、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等、更に、メタクリ酸メチル/メタクリ酸グリシジル共重合体、メタクリ酸エチル/メタクリ酸グリシジル共重合体等が挙げられる。
上記化合物の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1001(分子量約900、エポキシ当量450〜500)、エピコート1002(分子量約1600、エポキシ当量600〜700)、エピコート1004(約1060、エポキシ当量875〜975)、エピコート1007(分子量約2900、エポキシ当量2000)、エピコート1009(分子量約3750、エポキシ当量3000)、エピコート1010(分子量約5500、エポキシ当量4000)、エピコート1100L(エポキシ当量4000)、エピコートYX31575(エポキシ当量1200)、住友化学(株)製のスミエポキシESCN−195XHN、ESCN−195XL、ESCN−195XF等を挙げることができる。
本発明に好適なイソシアナート化合物としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニ
ルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、シクロヘキシルジイソシアナート、または、これらをアルコールもしくはアミンでブロックした化合物を挙げることができる。
本発明に好適なアミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
本発明に好適なヒドロキシル基を有する化合物としては、末端メチロール基を有する化合物、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、ビスフェノール・ポリフェノール類などを挙げることができる。
本発明に好適なカルボキシル基を有する化合物としては、ピロメリット酸、トリメリット酸、フタル酸などの芳香族多価カルボン酸、アジピン酸などの脂肪族多価カルボン酸などが挙げられる。本発明に好適な酸無水物としては、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などが挙げられる。
上記の熱反応性基を有する化合物のマイクロカプセル化又はミクロゲル化は、重合系の説明で前記した公知の方法で行うことができる。
<その他の画像記録層成分>
本発明の画像記録層には、機上現像性や画像記録層自体の皮膜強度向上のため親水性樹脂を含有させることができる。親水性樹脂としては、例えばヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、アミド基などの親水基を有するものが好ましい。また、親水性樹脂は、疎水化前駆体の有する熱反応性基と反応し架橋することによって画像強度が高まり、高耐刷化されるので、熱反応性基と反応する基を有することが好ましい。例えば、疎水化前駆体がビニルオキシ基またはエポキシ基を有する場合は、親水性樹脂としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などを有するものが好ましい。中でも、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する親水性樹脂が好ましい。
親水性樹脂の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、ソヤガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも80モル%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸のホモポリマーおよびコポリマー、2−メタクロイルオキシエチルホスホン酸のホモポリマーおよびコポリマー等を挙げることができる。
上記親水性樹脂の画像記録層への添加量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
また、上記親水性樹脂は印刷機上で未露光部が機上現像できる程度に架橋して用いてもよい。架橋剤としては、グリオキザール、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂などのアルデヒド類、N−メチロール尿素やN−メチロールメラミン、メチロール化ポリアミド樹脂などのメチロール化合物、ジビニルスルホンやビス(β−ヒドロキシエチルスルホン酸)などの活性ビニル化合物、エピクロルヒドリンやポリエチレングリコ−ルジグリシジルエーテル、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン付加物、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂などのエポキシ化合物、モノクロル酢酸エステルやチオグリコール酸エステルなどのエステル化合物、ポリアクリル酸やメチルビニルエーテル/マレイン酸共重合物などのポリカルボン酸類、ホウ酸、チタニルスルフェート、Cu、Al、Sn、V、Cr塩などの無機系架橋剤、変性ポリアミドポリイミド樹脂などが挙げられる。その他、塩化アンモニウム、シランカプリング剤、チタネートカップリング剤等の架橋触媒を併用できる。
本発明の画像記録層は、前記熱反応基の反応を開始または促進する反応促進剤を含有することができる。かかる反応促進剤としては、前記の、変色系における光酸発生剤またはラジカル発生剤、重合系における重合開始剤を好適なものとして挙げることができる。
上記反応促進剤は2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、反応促進剤の画像記録層への添加は、画像記録層塗布液への直接添加でも、ポリマー微粒子中に含有させた形での添加でもよい。画像記録層中の反応促進剤の含有量は、画像記録層全固形分の0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。この範囲内で、機上現像性を損なわず、良好な反応開始または促進効果が得られる。
本発明の疎水化前駆体系の画像記録層には、耐刷力を一層向上させるために多官能モノマーを画像記録層マトリックス中に添加することができる。この多官能モノマーとしては、重合性化合物として例示したものを用いることができる。なかでも好ましいモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどを挙げることができる。
また、本発明の疎水化前駆体系の画像記録層には、前記重合系画像記録層の<その他の画像記録層成分>に記載の界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、低分子親水性化合物などの添加剤を、必要に応じて含有させることができる。
<疎水化前駆体系の画像記録層の形成>
本発明の疎水化前駆体系の画像記録層は、前記重合系画像記録層の場合と同様に、必要な上記各成分を溶剤に分散または溶解した塗布液を調製し、支持体上に塗布、乾燥して形成される。
塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。
上記疎水化前駆体系の画像記録層を用いると、機上現像可能な平版印刷版原版を作ることができる。
一方、上記疎水化前駆体系の画像記録層を未露光でも十分な耐刷力のある「架橋構造を有する親水性層」にすることによって、本発明の平版印刷版原版を無処理(無現像)型の平版印刷版原版に適用することができる。
かかる架橋構造を有する親水性層としては、架橋構造を形成してなる親水性樹脂、および、ゾル−ゲル変換によって形成される無機親水性結着樹脂のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい態様である。これらのうち、まず、親水性樹脂について説明する。この親水性樹脂を添加することにより、エマルジョンインク中の親水成分との親和性が良好となり、且つ、画像記録層自体の皮膜強度も向上するという利点をも有する。親水性樹脂としては、例えばヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、アミノ、アミノエチル、アミノプロピル、カルボキシメチルなどの親水基を有するものが好ましい。
親水性樹脂の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、ならびに加水分解度が少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも80モル%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー等を挙げることができる。
上記親水性樹脂を本発明に係る画像記録層に用いる場合には、親水性樹脂を架橋して用いればよい。架橋構造を形成するために用いる架橋剤としては、前記架橋剤として挙げたものが用いられる。
また、無処理(無現像)型の画像記録層の好ましい態様として、ゾル−ゲル変換によって形成される無機親水性結着樹脂を含有させるものを挙げることができる。好適なゾル−ゲル変換系結着樹脂は、多価元素から出ている結合基が酸素原子を介して網目状構造、すなわち、三次元架橋構造を形成し、同時に多価金属は未結合の水酸基やアルコキシ基も有していてこれらが混在した樹脂状構造となっている高分子体であって、アルコキシ基や水酸基が多い段階ではゾル状態であり、脱水縮合が進行するに伴って網目状の樹脂構造が強固となる。ゾル−ゲル変換を行う水酸基やアルコキシ基を有する化合物の多価結合元素は、アルミニウム、珪素、チタンおよびジルコニウムなどであり、これらはいずれも本発明に用いることができる。中でも、より好ましいのは珪素を用いたゾル−ゲル変換系であり、特に好ましのはゾル−ゲル変換が可能な、少なくとも一つのシラノール基を有するシラン化合物を含んだ系である。以下に、珪素を用いたゾル−ゲル変換系について説明するが、アルミニウム、チタン、ジルコニウムを用いたゾル−ゲル変換系は、下記説明の珪素をそれぞれの元素に置き換えて実施することができる。
ゾル−ゲル変換系結着樹脂は、好ましくはシロキサン結合およびシラノール基を有する樹脂であり、本発明の画像記録層には、少なくとも一つのシラノール基を有する化合物を含んだゾル系である塗布液を用い、塗布乾燥過程でシラノール基の縮合が進んでゲル化し、シロキサン骨格の構造が形成されるプロセスによって含有させられる。
また、ゾル−ゲル変換系結着樹脂を含む画像記録層は、膜強度、膜の柔軟性など、物理的性能の向上や塗布性の改良などを目的として、前記親水性樹脂や架橋剤と併用すること
も可能である。
ゲル構造を形成するシロキサン樹脂は、下記一般式(II)で、又少なくとも一つのシラノール基を有するシラン化合物は、下記一般式(III)で示される。又、画像記録層に添加される物質系は、必ずしも一般式(III)のシラン化合物単独である必要はなく、一般には、シラン化合物が部分縮合したオリゴマーもしくは一般式(III)のシラン化合物とオリゴマーの混合物あってもよい。
一般式(II)のシロキサン樹脂は、一般式(III)で示されるシラン化合物の少なくとも1種を含有する分散液からゾル−ゲル変換によって形成される。ここで、一般式(II)のR01〜R03の少なくとも一つは水酸基を表し、他は一般式(III)中の記号R0およびYから選ばれる有機残基を表す。
一般式(III) (R0)nSi(Y)4-n
ここで、R0は水酸基、炭化水素基またはヘテロ環基を表す。Yは水素原子、ハロゲン原子、−OR1、−OCOR2、またはN(R3)(R4)を表す。R1、R2は、それぞれ炭化水素基を表し、R3、R4は同じでも異なっていてもよく、炭化水素基または水素原子を表す。nは0、1、2または3を表す。
R0の炭化水素基またはヘテロ環基とは、例えば炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等;これらの基に置換される基としては、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子)、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、エポキシ基、−OR'基(R'は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、2−ヒドロキシエチル基、3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、2−ブロモエチル基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、ベンジル基等を示す)、−OCOR''基(R''は、前記R'と同一の内容を表す)、−COOR''基、−COR''基、−N(R''')(R''')基(R'''は、水素原子または前記R'と同一内容を表し、それぞれ同一でも異なってもよい)、−NHCONHR''基、−NHCOOR''基、―Si(R'')3基、−CONHR''基等が挙げられる。これらの置換基はアルキル基中に複数置換されてもよい。炭素数2〜12の置換されてもよい直鎖状または分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等;これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一内容のものが挙げられる)、炭素
数7〜14の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等;これらに置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一内容のものが挙げられ、又複数個置換されてもよい)、炭素数5〜10の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、ノルボニル基、アダマンチル基等;これらに置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一内容のものが挙げられ、又複数個置換されてもよい)、炭素数6〜12の置換されてもよいアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基で、置換基としては、前記アルキル基に置換される基と同一内容のものが挙げられ、又複数個置換されてもよい)、または、窒素原子、酸素原子、イオウ原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する縮環してもよいヘテロ環基(例えば、ピラン環、フラン環、チオフェン環、モルホリン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、テトラヒドロフラン環等で、置換基を含有してもよい。置換基としては、前記アルキル基に置換される基と同一内容のものが挙げられ、又複数個置換されてもよい)、を表す。
一般式(III)のYの−OR1基、−OCOR2基またはN(R3)(R4)基の置換基としては、例えば以下の置換基を表す。−OR1基において,R1は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基〔例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ペンチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル基、2−メトキシプロピル基、2−シアノエチル基、3−メチルオキシプロピル基、2−クロロエチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、クロロシクロヘキシル基、メトキシシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジメトキシベンジル基、メチルベンジル基、ブロモベンジル基等が挙げられる〕を表す。
−OCOR2基においてR2はR1と同一の内容の脂肪族基または炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(芳香族基としては、前記Rのアリール基で例示したと同様のものが挙げられる)を表す。又、−N(R3)(R4)基において、R3、R4は、互いに同じでも異なってもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、前記の−OR1基のR1と同様の内容のものが挙げられる)を表す。より好ましくは,R3とR4の炭素数の総和が16以内である。一般式(III)で示されるシラン化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
テトラクロルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−プロピルシラン、メチルトリクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジトリエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエ
トキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げらる。
本発明の画像記録層には一般式(III)のシラン化合物と共に、Ti、Zn、Sn、Zr、Al等のゾル−ゲル変換の際に樹脂に結合して製膜可能な金属化合物を併用することができる。用いられる金属化合物として、例えば、Ti(OR'')4、TiCl4、Zn(OR'')2、Zn(CH3COCHCOCH3)2、Sn(OR'')4、Sn(CH3COCHCOCH3)4、Sn(OCOR'')4、SnCl4、Zr(OR'')4、Zr(CH3COCHCOCH3)4、(NH4)2ZrO(CO3)2、Al(OR'')3、Al(CH3COCHCOCH3)3等が挙げられる。ここでR''は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、またはヘキシル基等を表す。
更に一般式(III)で示される化合物、更に併用する前記金属化合物の加水分解および重縮合反応を促進するために、酸性触媒または塩基性触媒を併用することが好ましい。触媒は、酸または塩基性化合物をそのままか、または水もしくはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒という)を用いる。その時の濃度については特に限定しないが、濃度が濃い場合は加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。ただし、濃度の濃い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒の濃度は1N(水溶液での濃度換算)以下が望ましい。
酸性触媒の具体例としては、塩酸などのハロゲン化水素酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸が挙げられる。塩基性触媒の具体例としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられるが、これらに限定されない。
以上述べたゾル−ゲル法を用いた画像記録層は、本発明に係る画像記録層の構成として特に好ましい。上記ゾル−ゲル法の更に詳細は、作花済夫著「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社刊(1988年)、平島碩著「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作製技術」総合技術センター刊(1992年)等に記載されている。
架橋構造を有する画像記録層における親水性樹脂の添加量は、画像記録層固形分の5〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がさらに好ましい。
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、または、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金
中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2〜0.3mmであるのが更に好ましい。
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、親水性皮膜形成等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上および画像記録層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
<粗面化処理>
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
<親水性皮膜の形成>
親水性皮膜を設ける方法としては、特に限定されず、陽極酸化法、蒸着法、CVD法、ゾルゲル法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、拡散法等を適宜用いることができる。また、親水性樹脂またはゾルゲル液に中空粒子を混合した溶液を塗布する方法を用いることもできる。
中でも、陽極酸化法により酸化物を作製する処理、すなわち、陽極酸化処理を用いるのが最も好適である。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。具体的には、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等の単独のまたは2種以上を組み合わせた水溶液または非水溶液の中で、アルミニウム板に直流または交流を流すと、アルミニウム板の表面に、親水性皮膜である陽極酸化皮膜を形成することができる。陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2 、電圧1〜200V、電解時間1〜1000秒であるのが適当である。これらの陽極酸化処理の中でも、英国特許第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸電解液中で高電流密度にて陽極酸化処理する方法、および、米国特許第3,511,661号明細書に記載されている、リン酸を電解浴として陽極酸化処理する方法が好ましい。また、硫酸中で陽極酸化処理し、更にリン酸中で陽極酸化処理するなどの多段陽極酸化処理を施すこともできる。
本発明においては、陽極酸化皮膜は、傷付きにくさおよび耐刷性の点で、0.1g/m2 以上であるのが好ましく、0.3g/m2 以上であるのがより好ましく、2g/m2 以上であるのが特に好ましく、3.2g/m2 以上であるのがさらに好ましい。また、厚い皮膜を設けるためには多大なエネルギーを必要とすることを鑑みると、100g/m2 以下であるのが好ましく、40g/m2 以下であるのがより好ましく、20g/m2 以下であるのが特に好ましい。
陽極酸化皮膜には、その表面にマイクロポアと呼ばれる微細な凹部が一様に分布して形成されている。陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの密度は、処理条件を適宜選択することによって調整することができる。マイクロポアの密度を高くすることにより、陽極酸化皮膜の膜厚方向の熱伝導率を下げることができる。また、マイクロポアの径は、処理条件を適宜選択することによって調整することができる。マイクロポアの径を大きくすることにより、陽極酸化皮膜の膜厚方向の熱伝導率を下げることができる。
本発明においては、熱伝導率を下げる目的で、陽極酸化処理の後、マイクロポアのポア径を拡げるポアワイド処理を行うことが好ましい。このポアワイド処理は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸漬することにより、陽極酸化皮膜を溶解し、マイクロポアのポア径を拡大するものである。ポアワイド処理は、陽極酸化皮膜の溶解量が、好ましくは0.01〜20g/m2 、より好ましくは0.1〜5g/m2 、特に好ましくは0.2〜4g/m2 となる範囲で行われる。
ポアワイド処理に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は10〜1000g/Lであるのが好ましく、20〜500g/Lであるのがより好ましい。酸水溶液の温度は、10〜90℃であるのが好ましく、30〜70℃であるのがより好ましい。酸水溶液への浸漬時間は、1〜300秒であるのが好ましく、2〜100秒であるのがより好ましい。一方、ポアワイド処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液のpHは、10〜13であるのが好ましく、11.5〜13.0であるのがより好ましい。アルカリ水溶液の温度は、10〜90℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。アルカリ水溶液への浸漬時間は、1〜500秒であるのが好ましく、2〜100秒であるのがより好ましい。しかしながら、最表面のマイクロポア径を拡大しすぎると、印刷時の汚れ性能が劣化することから、最表面のマイクロポア径は40nm以下にすることが好ましく、20nm以下にすることがより好ましく、10nm以下にすることが最も好ましい。したがって、断熱性と汚れ性能を両立する。より好ましい陽極酸化皮膜形状としては、表面のマイクロポア径が0〜40nmで、内部のマイクロポア径が20〜300nmである。例えば、電解液の種類が同じであれば、電解によって、生成するポアのポア径は電解時の電解電圧に比例することが知られている。その性質を利用して電解電圧を徐々に上昇させていくことで底部分の拡がったポアが生成する方法を用いることができる。また、電解液の種類を変えるとポア径が変化することが知られていて、硫酸、シュウ酸、リン酸の順にポア径が大きくなる。従って、1段階目に電解液に硫酸を用いて、2段階目にリン酸を用いて陽極酸化する方法を用いることができる。また、陽極酸化処理、およびあるいはポアワイド処理して得られた平版印刷版用支持体に後述の封孔処理を行ってもよい。
また、親水性皮膜は、上述した陽極酸化皮膜のほかに、スパッタリング法、CVD法等により設けられる無機皮膜であってもよい。無機皮膜を構成する化合物としては、例えば、酸化物、チッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物が挙げられる。また、無機皮膜は、化合物の単体のみから構成されていてもよく、化合物の混合物により構成されていてもよい。無機皮膜を構成する化合物としては、具体的には、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化クロム;チッ化アルミニウム、チッ化ケイ素、チッ化チタン、チッ化ジルコニウム、チッ化ハフニウム、チッ化バナジウム、チッ化ニオブ、チッ化タンタル、チッ化モリブデン、チッ化タングステン、チッ化クロム、チッ化ケイ素、チッ化ホウ素;ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化ハフニウム、ケイ化バナジウム、ケイ化ニオブ、ケイ化タンタル、ケイ化モリブデン、ケイ化タングステ
ン、ケイ化クロム;ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化バナジウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステン、ホウ化クロム;炭化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化モリブデン、炭化タングステン、炭化クロムが挙げられる。
<封孔処理>
本発明においては、上述したようにして親水性皮膜を設けて得られた本発明の平版印刷版用支持体に封孔処理を行ってもよい。本発明に用いられる封孔処理としては、特開平4−176690号公報および特開平11−301135号公報に記載の加圧水蒸気や熱水による陽極酸化皮膜の封孔処理が挙げられる。また、ケイ酸塩処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム塩処理、電着封孔処理、トリエタノールアミン処理、炭酸バリウム塩処理、極微量のリン酸塩を含む熱水処理等の公知の方法を用いて行うこともできる。封孔処理皮膜は、例えば、電着封孔処理をした場合にはポアの底部から形成され、また、水蒸気封孔処理をした場合にはポアの上部から形成され、封孔処理の仕方によって封孔処理皮膜の形成され方は異なる。そのほかにも、溶液による浸漬処理、スプレー処理、コーティング処理、蒸着処理、スパッタリング、イオンプレーティング、溶射、鍍金等が挙げられるが、特に限定されるものではない。中でも特に好ましいのは、特開2002−214764号公報記載の平均粒径8〜800nmの粒子を用いた封孔処理が挙げられる。
粒子を用いた封孔処理は、平均粒径8〜800nm、好ましくは平均粒径10〜500nm、より好ましくは平均粒径10〜150nmの粒子によって行われる。この範囲内で、親水性皮膜に存在するマイクロポアの内部に粒子が入り込んでしまうおそれが少なく、高感度化の効果が十分得られ、また、画像記録層との密着性が十分となり、耐刷性が優れたものとなる。粒子層の厚さは、8〜800nmであるのが好ましく、10〜500nmであるのがより好ましい。
粒子層を設ける方法としては、例えば、溶液による浸漬処理、スプレー処理、コーティング処理、電解処理、蒸着処理、スパッタリング、イオンプレーティング、溶射、鍍金等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
電解処理は、直流または交流を用いることができる。上記電解処理に用いられる交流電流の波形としては、サイン波、矩形波、三角波、台形波等が挙げられる。また、交流電流の周波数は、電源装置を製作するコストの観点から、30〜200Hzであるのが好ましく、40〜120Hzであるのがより好ましい。交流電流の波形として台形波を用いる場合、電流が0からピークに達するまでの時間tpはそれぞれ0.1〜2msecであるのが好ましく、0.3〜1.5msecであるのがより好ましい。上記tpが0.1msec未満であると、電源回路のインピーダンスが影響し、電流波形の立ち上がり時に大きな電源電圧が必要となり、電源の設備コストが高くなる場合がある。
親水性粒子としては、Al2 O3 、TiO2 、SiO2 およびZrO2 を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。電解液は、例えば、前記親水性粒子を含有量が全体の0.01〜20質量%となるように、水等に懸濁させて得られる。電解液は、電荷をプラスまたはマイナスに帯電させるために、例えば、硫酸を添加するなどして、pHを調整することもできる。電解処理は、例えば、直流を用い、アルミニウム板を陰極として、上記電解液を用い、電圧10〜200Vで1〜600秒間の条件で行う。この方法によれば、容易に、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの内部に空隙を残しつつ、その口をふさぐことができる。
また、封孔処理として特開昭60−149491号公報に記載されている、少なくとも1個のアミノ基と、カルボキシル基およびその塩の基ならびにスルホ基およびその塩の基からなる群から選ばれた少なくとも1個の基とを有する化合物からなる層、特開昭60−232998号公報に記載されている、少なくとも1個のアミノ基と少なくとも1個のヒドロキシ基を有する化合物およびその塩から選ばれた化合物からなる層、特開昭62−19494号公報に記載されているリン酸塩を含む層、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有するモノマー単位の少なくとも1種を繰り返し単位として分子中に有する高分子化合物からなる層等をコーティングによって設ける方法が挙げられる。
また、カルボキシメチルセルロース;デキストリン;アラビアガム;2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類;置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸、グリセロリン酸等の有機リン酸エステル;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸、グリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸;グリシン、β−アラニン等のアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれる化合物の層を設ける方法も挙げられる。
封孔処理には、不飽和基を有するシランカップリング剤を塗設処理してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、N−3−(アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−ブテニルトリエトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、メタクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、N−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メトキシジメチルビニルシラン、1−メトキシ−3−(トリメチルシロキシ)ブタジエン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)−プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、O−(ビニロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ジアリルアミノプロピルメトキシシランが挙げられる。中でも、不飽和基の反応性が速いメタクリロイル基、アクリロイル基を有するシランカップリング剤が好ましい。
そのほかにも、特開平5−50779号公報に記載されているゾルゲルコーティング処理、特開平5−246171号公報に記載されているホスホン酸類のコーティング処理、特開平6−234284号公報、特開平6−191173号公報および特開平6−230563号公報に記載されているバックコート用素材をコーティングにより処理する方法、特開平6−262872号公報に記載されているホスホン酸類の処理、特開平6−297
875号公報に記載されているコーティング処理、特開平10−109480号公報に記載されている陽極酸化処理する方法、特開2000−81704号公報および特開2000−89466号公報に記載されている浸漬処理方法等が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。
親水性皮膜を形成した後、必要に応じて、アルミニウム板の表面に親水化処理を施す。親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理し、または電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
本発明の支持体としてポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが望ましい。親水層としては、特開2001−199175号公報に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモンおよび遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層や、特開2002−79772号公報に記載の、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックスを有する親水層や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネートまたはアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリックスを有する親水層、あるいは、金属酸化物を含有する表面を有する無機薄膜からなる親水層が好ましい。中でも、珪素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
また、本発明の支持体としてポリエステルフィルム等を用いる場合には、支持体の親水性層側または反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、特開2002−79772号公報に記載の、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層等が使用できる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、画像記録層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
また、支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であるのが好ましい。この範囲で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
〔バックコート層〕
支持体に表面処理を施した後または下塗り層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3 )4 、Si(OC2 H5 )4 、Si(OC3 H7 )4 、Si(OC4 H9 )4 等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
〔下塗り層〕
本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、画像記録層と支持体との間に下塗り層を設けることができる。下塗り層が断熱層として機能することにより、赤外線レーザーによる露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。また、未露光部においては、画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、機上現像性が向上する。
下塗り層としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2 であるのが好ましく、1〜30mg/m2 であるのがより好ましい。
〔保護層〕
本発明の平版印刷版原版においては、画像記録層における傷等の発生防止、酸素遮断、高照度レーザー露光時のアブレーション防止のため、必要に応じて、画像記録層の上に保護層を設けることができる。
本発明においては、通常、露光を大気中で行うが、保護層は、画像記録層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物の画像記録層への混入を防止し、大気中での露光による画像形成反応の阻害を防止する。したがって、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いられる光の透過性が良好で、画像記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の機上現像処理工程で容易に除去することができるものであるのが好ましい。このような特性を有する保護層については、以前より種々検討がなされており、例えば、米国特許第3、458、311号明細書および特公昭55−49729号公報に詳細に記載されている。
保護層に用いられる材料としては、例えば、比較的、結晶性に優れる水溶性高分子化合物が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸等の水溶性ポリマーが挙げられる。中でも、ポリビニルアルコール(PVA)を主成分として用いると、酸素遮断性、現像除去性等の基本的な特性に対して最も良好な結果を与える。ポリビニルアルコールは、保護層に必要な酸素遮断性と水溶性を与えるための未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテルまたはアセタールで置換されていてもよく、一部が他の共重合成分を有していてもよい。
ポリビニルアルコールの具体例としては、71〜100モル%加水分解された重合度300〜2400の範囲のものが好適に挙げられる。具体的には、例えば、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8が挙げられる。
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用等)、塗布量等は、酸素遮断性および現像除去性のほか、カブリ性、密着性、耐傷性等を考慮して適宜選択される。一般には、PVAの加水分解率が高いほど(すなわち、保護層中の未置換ビニルアルコール単位含有率が高いほど)、また、膜厚が厚いほど、酸素遮断性が高くなり、感度の点で好ましい。また、製造時および保存時に不要な重合反応、画像露光時の不要なカブリおよび画線の太り等を防止するためには、酸素透過性が高くなりすぎないことが好ましい。従って、25℃、
1気圧下における酸素透過性Aが0.2≦A≦20(cc/m2・day)であることが好ましい。
保護層の他の組成物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を水溶性高分子化合物に対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を(共)重合体に対して数質量%添加することができる。
保護層の膜厚は、0.1〜5μmが適当であり、特に0.2〜2μmが好適である。
また、画像部との密着性、耐傷性等も平版印刷版原版の取り扱い上、極めて重要である。すなわち、水溶性高分子化合物を含有するため親水性である保護層を、画像記録層が親油性である場合に、画像記録層に積層すると、接着力不足による保護層のはく離が生じやすく、はく離部分において、酸素による重合阻害に起因する膜硬化不良等の欠陥を引き起こすことがある。
これに対して、画像記録層と保護層との間の接着性を改良すべく、種々の提案がなされている。例えば、特開昭49−70702号公報および英国特許出願公開第1303578号明細書には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルション、水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体等を20〜60質量%混合させ、画像記録層上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明においては、これらの公知の技術をいずれも用いることができる。保護層の塗布方法については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書および特公昭55−49729号公報に詳細に記載されている。
更に、保護層には、他の機能を付与することもできる。例えば、露光に用いられる赤外線の透過性に優れ、かつ、それ以外の波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(例えば、水溶性染料)の添加により、感度低下を引き起こすことなく、セーフライト適性を向上させることができる。
〔露光〕
本発明の平版印刷方法においては、上述した本発明の平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する。
本発明に用いられる赤外線レーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザーおよび半導体レーザーが好適に挙げられる。赤外線レーザーの出力は、100mW以上であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
1画素あたりの露光時間は、20μ秒以内であるのが好ましい。また、照射エネルギー量は、10〜300mJ/cm2 であるのが好ましい。
〔印刷方法〕
本発明の平版印刷版原版は赤外線レーザーで画像様に露光した後、なんらの現像処理工程を経ることなく油性インキと水性成分とを供給して印刷する。
具体的には、平版印刷版原版を赤外線レーザーで露光した後、現像処理工程を経ることなく印刷機の版胴上に装着して印刷する方法、平版印刷版原版を印刷機の版胴上に装着した後、印刷機上において赤外線レーザーで露光し、現像処理工程を経ることなく印刷する方法等が挙げられる。
例えば、ネガ型の機上現像型平版印刷版原版の一態様では、平版印刷版原版を赤外線レ
ーザーで画像様に露光した後、湿式現像処理工程等の現像処理工程を経ることなく水性成分と油性インキとを供給して印刷すると、画像記録層の露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された水性成分および/または油性インキによって、未硬化の画像記録層が溶解しまたは分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。その結果、水性成分は露出した親水性の表面に付着し、油性インキは露光領域の画像記録層に着肉し、印刷が開始される。ここで、最初に版面に供給されるのは、水性成分でもよく、油性インキでもよいが、水性成分が未露光部の画像記録層により汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給するのが好ましい。水性成分および油性インキとしては、通常の平版印刷用の湿し水と印刷インキが用いられる。このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔変色剤分散液の作製〕
(1)変色剤分散液(1)の作製
下記の変色剤分散液(1)の組成で各成分を添加した混合液をφ4mmのガラスビーズと共にペイントシェーカーにて30分間撹拌し、変色剤の粗分散液を得た。上記ガラスビーズをろ別した後、更にφ0.5mmのガラスビーズを添加し、これをダイノミルにて滞留時間が約20分となる液流量、セル容量の条件で分散した。ガラスビーズをろ別し、平均粒径0.12μmの変色剤粒子を含有する変色剤分散液(1)を得た。
変色剤分散液(1)
・下記の変色剤(1) 1.0g
・ソルスパースS−17000 (ICI製分散剤) 0.2g
・Isopar G (エクソンモービル(株)炭化水素溶剤) 10.8g
(2)変色剤分散液(2)の作製
変色剤分散液の組成を下記の変色剤分散液(2)とした以外は、変色剤分散液(1)の作製と同様にして、平均粒径0.08μmの変色剤粒子を含有する変色剤分散液(2)を得た。
変色剤分散液(2)
・上記の変色剤(1) 1.0g
・ソルスパースS−27000 (ICI製分散剤) 0.04g
・純水 9.0g
(3)変色剤分散液(3)の作製
変色剤分散液の組成を下記の変色剤分散液(3)とした以外は、変色剤分散液(1)の作製と同様にして、平均粒径0.12μmの変色剤粒子を含有する変色剤分散液(3)を得た。
変色剤分散液(3)
・下記の変色剤(2) 1.0g
・ソルスパースS−17000 (ICI社製分散剤) 0.2g
・Isopar G (エクソンモービル(株)製炭化水素溶剤)10.8g
(4)変色剤分散液(4)の作製
変色剤分散液の組成を下記の変色剤分散液(4)とした以外は、変色剤分散液(1)の作製と同様にして、平均粒径0.08μmの変色剤粒子を含有する変色剤分散液(4)を得た。
変色剤分散液(4)
・上記の変色剤(2) 1.0g
・ソルスパースS−27000 (ICI製分散剤) 0.04g
・純水 9.0g
(5)変色剤分散液(5)の作製
変色剤分散液の組成を下記の変色剤分散液(5)とした以外は、変色剤分散液(1)の作製と同様にして、平均粒径0.18μmの変色剤粒子を含有する変色剤分散液(5)を得た。
変色剤分散液(5)
・ロイコクリスタルバイオレット (東京化成工業(株)製) 1.0g
・ソルスパースS−17000 (ICI社製分散剤) 0.2g
・Isopar G (エクソンモービル(株)製炭化水素溶剤)10.8g
(6)変色剤分散液(6)の作製
変色剤分散液の組成を下記の変色剤分散液(6)とした以外は、変色剤分散液(1)の作製と同様にして、平均粒径0.10μmの変色剤粒子を含有する変色剤分散液(6)を得た。
変色剤分散液(6)
・ロイコクリスタルバイオレット (東京化成工業(株)製) 1.0g
・ソルスパースS−27000 (ICI製分散剤) 0.04g
・純水 9.0g
〔支持体の作製〕
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2 、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。この板を15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
次に、珪酸ナトリウム2.5質量%水溶液にて30℃で10秒処理した。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
さらに下記下塗り液(1)を乾燥塗布量が10mg/m2になるよう塗布して、以下の
実験に用いる支持体を作製した。
下塗り液(1)
・下記の下塗り化合物(1) 0.017g
・メタノール 9.00g
・水 1.00g
〔実施例1〜14および比較例1〜4〕
平版印刷版原版(1)〜(18)を作製し、次いで評価した。
〔平版印刷版原版の作製〕
(1)平版印刷版原版(1)の作製
上記支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成した。
画像記録層塗布液(1)は下記感光液(1)およびマイクロカプセル液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
感光液(1)
・下記のバインダーポリマー(1) 0.162g
・下記の重合開始剤(1) 0.1g
・下記の赤外吸収染料(1) 0.020g
・重合性化合物(アロニックスM215、東亞合成(株)製) 0.385g
・下記のフッ素系界面活性剤(1) 0.044g
・メチルエチルケトン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
マイクロカプセル液(1)
・下記の通り合成したマイクロカプセル(1) 2.640g
・水 2.425g
(マイクロカプセル(1)の合成)
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、下記の赤外線吸収剤(2)0.35g、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山本化成(株)製ODB)1g、およびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.2μmであった。
(変色層の形成)
上記画像記録層上に、下記組成の変色層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の変色層を形成した。
変色層塗布液(1)
・上記の変色剤分散液(1) 15.5g
・パーフルオロブタンスルホン酸 1.0g
・上記のフッ素系界面活性剤(1) 0.044g
(保護層の形成)
上記変色層上に、さらに下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃、75秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.1g/m2の保護層を形成して実施例1に用いる平版印刷版原版(1)を得た。
保護層塗布液(1)
・ポリビニルアルコール(ポバールPVA105) 0.895g
((株)クラレ製、ケン化度98〜99モル%、重合度500)
・ポリビニルピロリドン(K30) 0.035g
(和光純薬工業(株)、重量平均分子量40万)
・ポリビニルピロリドン共重合体(ルビスコールVA64W) 0.048g
ビーエーエスエフジャパン(株)、重量平均分子量3.4万
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(モル比=60/40)共重合体、
50質量%水溶液
・ノニオン系界面活性剤 0.020g
(商品名:EMALEX710、日本エマルジョン(株)製)
・水 15.200g
(2)平版印刷版原版(2)の作製
上記平版印刷版原版(1)の作製に記載の変色層を設けず、保護層塗布液(1)を下記組成の保護層塗布液(2)に変更し、乾燥塗布量を1.0g/m2とした以外は平版印刷版原版(1)の作製と同様にして、実施例2に用いる平版印刷版用原版(2)を得た。
保護層塗布液(2)
・ポリビニルアルコール(ポバールPVA105) 0.895g
・ポリビニルピロリドン(K30) 0.035g
・ノニオン系界面活性剤 0.020g
・上記の変色剤分散液(2) 1.000g
・p−トルエンスルホン酸 0.100g
・水 15.200g
(3)平版印刷版原版(3)の作製
上記平版印刷版原版(1)の作製に記載の変色層を設けず、画像記録層塗布液(1)を下記の画像記録層塗布液(2)に変更した以外は平版印刷版原版(1)の作製と同様にして、実施例3に用いる平版印刷版用原版(3)を得た。画像記録層塗布液(2)は上記感光液(1)と下記マイクロカプセル液(2)を塗布直前に混合することで得た。
マイクロカプセル液(2)
・上記の通り合成したマイクロカプセル(1) 2.640g
・上記の変色剤分散液(2) 1.000g
・メタンスルホン酸 0.100g
・水 1.425g
(4)平版印刷版原版(4)の作製
上記平版印刷版原版(1)の作製に記載の画像記録層塗布液(1)を下記組成の画像記録層塗布液(3)に変更した以外は平版印刷版原版(1)の作製と同様にして、実施例4に用いる平版印刷版用原版(4)を得た。
画像記録層塗布液(3)
・下記の赤外線吸収剤(2) 0.05g
・上記の重合開始剤(1) 0.1g
・下記のバインダーポリマー(2) 0.50g
・重合性化合物、アロニックスM−215(東亜合成(株)製) 1.00g
・上記のフッ素系界面活性剤(1) 0.044g
・メチルエチルケトン 18.0g
(5)平版印刷版原版(5)の作製
上記平版印刷版原版(2)の作製に記載の画像記録層塗布液(1)を上記の画像記録層塗布液(3)に変更した以外は平版印刷版原版(2)の作製と同様にして、実施例5に用いる平版印刷版用原版(5)を得た。
(6)平版印刷版原版(6)の作製
上記平版印刷版原版(3)の作製に記載の画像記録層塗布液(2)を画像記録層塗布液(4)に変更した以外は平版印刷版原版(3)の作製と同様にして、実施例6に用いる平版印刷版用原版(6)を得た。なお、画像記録層塗布液(4)は、下記感光液(2)と下
記の変色剤分散液を塗布直前に混合することで得た。
感光液(2)
・上記の赤外線吸収剤(2) 0.05g
・上記の重合開始剤(1) 0.1g
・上記のバインダーポリマー(2) 0.50g
・重合性化合物、アロニックスM−215(東亜合成(株)製) 1.00g
・上記のフッ素系界面活性剤(1) 0.044g
・メチルエチルケトン 1.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 9.0g
変色剤分散液
・上記の変色剤分散液(2) 1.000g
・メタンスルホン酸 0.100g
(7)平版印刷版原版(7)〜(9)の作製
上記平版印刷版原版(1)〜(3)の作製に記載した変色剤分散液(1)、(2)を上記の変色剤分散液(3)、(4)にそれぞれ変更した以外は平版印刷版原版(1)〜(3)の作製と同様にして、平版印刷版原版(1)〜(3)それぞれに対応する実施例7〜9に用いる平版印刷版用原版(7)〜(9)を得た。
(8)平版印刷版原版(10)〜(12)の作製
上記平版印刷版原版(1)〜(3)の作製に記載した変色剤分散液(1)、(2)を上記の変色剤分散液(5)、(6)にそれぞれ変更した以外は平版印刷版原版(1)〜(3)の作製と同様にして、平版印刷版原版(1)〜(3)それぞれに対応する実施例10〜12に用いる平版印刷版用原版(10)〜(12)を得た。
(9)平版印刷版原版(13)の作製
上記平版印刷版原版(1)の作製に記載の変色層を設けなかった以外は、平版印刷版原版(1)の作製と同様にして、比較例1に用いる平版印刷版用原版(13)を得た。
(10)平版印刷版原版(14)の作製
上記平版印刷版原版(1)の作製に記載の変色層を設けず、画像記録層塗布液(1)を上記の変色剤(1)を溶解させた画像記録層塗布液(5)に変更した以外は、平版印刷版原版(1)の作製と同様にして、比較例2に用いる平版印刷版用原版(14)を得た。なお、画像記録層塗布液(5)は、下記感光液(3)と上記マイクロカプセル液(1)を塗布直前に混合することで得た。
感光液(3)
・上記のバインダーポリマー(1) 0.162g
・上記の重合開始剤(1) 0.1g
・上記の赤外吸収染料(1) 0.020g
・重合性化合物(アロニックスM215、東亞合成(株)製) 0.385g
・上記の変色剤(1) 0.1g
・上記のフッ素系界面活性剤(1) 0.044g
・メチルエチルケトン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
(11)平版印刷版原版(15)の作製
上記平版印刷版原版(14)の作製に記載の感光液(3)に添加した上記の変色剤(1
)をロイコクリスタルバイオレット(東京化成工業(株)製)に変更した以外は、平版印刷版原版(14)の作製と同様にして、比較例3に用いる平版印刷版用原版(15)を得た。
(12)平版印刷版原版(16)の作製
下塗り層を有する上記の支持体上に、下記の画像記録層塗布液(6)をバー塗布した後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.6g/m2の画像記録層を作製した。
画像記録層塗布液(6)
・下記の通り製造した高分子微粒子水分散液 33.0g
・下記の赤外吸収染料(3) 1.0g
・上記の変色剤分散液(2) 10.0g
・メタンスルホン酸 0.1g
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート 0.5g
・メタノール 16.0g
(高分子微粒子水分散液の製造)
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ蒸留水350ccを加えて内温が80℃となるまで加熱した。分散剤としてドデシル硫酸ナトリウム3.0gを1.5g添加し、更に開始剤として過硫化アンモニウム0.45gを添加し、次いでグリシジルメタクリレート45.0gとスチレン45.0gとの混合物を滴下ロートから約1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、水蒸気蒸留で未反応単量体を除去した。その後冷却しアンモニア水でpH6に調整し、最後に不揮発分が15質量%となるように純水を添加して高分子重合体微粒子水分散液を得た。この高分子重合体微粒子の粒径分布は、粒子径60nmに極大値を有していた。
ここで、粒径分布は、ポリマー微粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で微粒子の粒径を総計で5000個測定し、得られた粒径測定値の最大値から0の間を対数目盛で50分割して各粒径の出現頻度をプロットして求めた。なお非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とした。
さらにその上に下記保護層塗布液(3)をバー塗布した後、60℃、120秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.3g/m2の保護層を形成して、実施例13に用いる平版印刷
版原版(16)を得た。
保護層塗布液(3)
・カルボキシメチルセルロース(重量平均分子量2万) 5.0g
・水 50.0g
(13)平版印刷版原版(17)の作製
上記平版印刷版原版(16)の作製に記載の画像記録層塗布液(6)と保護層塗布液(3)を、それぞれ下記の画像記録層塗布液(7)と保護層塗布液(4)に変更した以外は、平版印刷版原版(16)の作製と同様にして、実施例14に用いる平版印刷版用原版(17)を得た。
画像記録層塗布液(7)
・上記の通り製造した高分子微粒子水分散液 33.0g
・上記の赤外吸収染料(3) 1.0g
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.0g
・メタノール 16.0g
保護層塗布液(4)
・カルボキシメチルセルロース(重量平均分子量2万) 5.0g
・上記の変色剤分散液(2) 10.0g
・メタンスルホン酸 0.1g
・水 50.0g
(14)平版印刷版原版(18)の作製
上記平版印刷版原版(16)の作製に記載の画像記録層塗布液(6)を、上記の画像記録層塗布液(7)に変更した以外は、平版印刷版原版(16)の作製と同様にして、比較例4に用いる平版印刷版用原版(18)を得た。
〔平版印刷版原版の評価〕
(1)焼き出し画像の評価
得られた平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線チャートや文字画像を含むようにした。
焼き出し画像を評価するため、色差計(色彩色差計CR−221、ミノルタ(株)製)を用いて露光部と未露光部のL*値を測定し、その差の絶対値から明度差ΔLを求めた。
結果を表1に示す。比較例1を除き、露光部と未露光部のコントラストは良好であり、細線や文字が認識できた。
(2)生版経時による焼き出しかぶり性の評価
得られた平版印刷版原版を包装せずに60℃30%RHの環境下で3日間強制経時させた。
このときの焼き出しかぶり性を評価するため、上記色差計を用いて強制経時前後のL*値を測定し、その差の絶対値から明度差ΔLを求めた。
結果を表1に示す。比較例2,3を除き、強制経時での焼き出しかぶり性は良好であった。
(3)白灯曝光による焼き出しかぶり性の評価
得られた平版印刷版原版を、版表面で1000ルクスの照度になるように市販の蛍光灯下に6時間曝した。
このときの焼き出しかぶり性を評価するため、上記色差計を用いて白灯曝光前後のL*値を測定し、その差の絶対値から明度差ΔLを求めた。
結果を表1に示す。比較例2、3を除き、白灯曝光での焼き出しかぶり性は良好であった。
(4)機上現像性および印刷評価
得られた露光済み原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(IF−102(富士写真フイルム(株)製)/水=3/97(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、湿し水とインキを供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を100枚行った。
画像記録層の未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、印刷用紙にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測したところ、いずれの平版印刷版原版を用いた場合も、20枚以内で非画像部の汚れのない印刷物が得られた。
また、その後、5千枚の印刷を実施したところ、いずれの平版印刷版原版を用いた場合も、画像部のインキ濃度の低下および非画像部の汚れのない良好な印刷物が得られた。
(5)インキ濁り性評価
上記(4)に記載のインキをTRANS−G(N)黄インキ(大日本インキ化学工業(株)製)に変更した以外は上記(4)と同様にして100枚の印刷を行った。この印刷物の画像部インキの濁り状況を後述する指標で評価した。
結果を表1に示す。比較例2、3を除き、インキ濁り性は良好であった。
<インキ濁り性評価指標>
A:全くインキ濁りなし
B:わずかに濁りあるが許容レベル
C:はっきりと濁りありNGレベル
D:濁り劣悪
表1から明らかなように、本発明の平版印刷版原版(実施例1〜14)は、レーザー露光後に検版のための充分な焼き出し画像が明瞭に形成されており、かつ、生版の経時や白灯曝光による焼き出しかぶりが極めて少ないことが分かる。さらに印刷後の機上現像成分混入によるインキ濁りがほとんどなく、良好な印刷物が得られることが分かる。
〔実施例15〕
実施例3に於けるマイクロカプセル液(1)の代わりに下記のミクロゲル液(1)を用いた他は、実施例3と同様に平版印刷版原版を作製し、印刷、評価を行った。
露光時△Lは12.0、経時かぶり△Lは0.2、白灯かぶり△Lは0.2、機上現像性は良好、印刷評価は良好、インキ濁り性はAであった。
ミクロゲル液(1)
・下記の通り合成したミクロゲル(1) 2.640g
・蒸留水 2.425g
(ミクロゲル(1)の合成)
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15gおよびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.2μmであった。