JP2006143820A - 帯電防止塗料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 有機の帯電防止剤や溶剤等を含まず、さらに帯電性が低く耐久性にも優れた水系の塗料を提供することを目的とする。
【解決手段】 3モル%〜20モル%のカルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマー単位と80モル%〜97モル%の不飽和結合を有するその他のモノマー単位とから構成される共重合体樹脂が水に分散し且つ水酸化カリウムを用いてpHが樹脂エマルジョン本来のpH〜5.5又は9.0〜12.5に調整された樹脂エマルジョンと、無機顔料の着色剤とを含有し、前記樹脂エマルジョンの樹脂固形分と着色剤固形分との合計が塗料組成物の全固形分に対して98重量%以上である塗料組成物。

Description

本発明は、半導体、液晶デバイス、食品、医薬品、バイオテクノロジーなどの産業の工場、あるいは病院、小学校、中学校、高等学校、大学等の壁に用いられる塗料、及び個別住宅や共同住宅の塗料、並びに製粉工場等の粉体を取り扱う工場に適した塗料に関するものである。
従来、塗料には、塗料用樹脂を芳香族炭化水素系の有機溶剤に溶かした溶剤型の塗料が主に使用されていた。また、エポキシ樹脂系やウレタン系の反応型塗料でも、作業性を良くするためにトルエンやキシレンなどの有機溶剤が使用されている場合が多い。
このような有機溶剤を含有する塗料を建築部材に塗工した場合、塗工後十分な時間が経過しても、塗膜から残存する有機溶剤が揮発して出てきて、臭気の原因になることが指摘されている。これらの有機溶剤は臭気の問題だけでなく、例えば、学校では揮発してきた溶剤を含む空気を呼吸した生徒が病気になる、いわゆるシックスクールのような問題の要因でもある。
半導体や液晶デバイス工場では塵埃防止のために、コンクリートスラブ、鉄、石膏ボード等を使用して構成された屋内の壁面・柱などを塗膜で覆う必要がある。この目的のために上記のような溶剤型塗料を使用した場合、工場内やクリーンルーム内に空気を流して循環させると、揮発した有機溶剤の濃度が数百μg/m3程度となることがあり、作業者の安全上好ましくない。このガス状有機物を除去するために活性炭を充填したケミカルフィルターを設置する方法があるが、高濃度のガス状有機物を吸着するために短い期間で性能が劣化し、頻繁に新しいケミカルフィルターと交換する必要がある。さらに、ケミカルフィルターは高価であるので経済性の点からも問題がある。
上記のような一般的に有機溶剤系塗料ではなく、エポキシ系やウレタン系の反応型塗料でも、ほとんどの製品がその中に数重量%の有機溶剤を含んでいる。特に、エポキシ系塗料ではベンジルアルコール等の特殊な溶剤が使用されることが多い。最近では上記のような反応型塗料に低沸点アルコールやケトンを使用することも多く、施工時に施工者が高濃度の溶剤蒸気に曝露されるという危険を伴っており、エポキシ系やウレタン系の反応型塗料も決して安全な製品とは言えない。
また、溶剤の使用を避けるために樹脂エマルジョンを使用した塗料もある。しかし、エマルジョン系塗料では、コンクリートや鉄への密着が不十分で、剥離や膨れを生じて、塗料性能が十分でないという問題が解決されていない。また、塗膜の性能を上げるために、多量の造膜剤を使用している場合があり、造膜剤に使用される有機物の有害性が指摘されている。
一般的に、樹脂エマルジョンに使用される樹脂は通常共重合体樹脂であり、その共重合体がカルボキシル基(-CO2H)やスルホン基(-SO3H)を有するモノマー単位を含む場合、そのままでは樹脂エマルジョンは高い酸性(通常、pH2.5〜4.0)を示す。安定性の点からすれば塗料組成物は中性に調整するのが好ましいが、使用する着色剤が無機顔料(特に酸化チタンのような酸化物顔料)であると、その等電点付近(pH=6付近)において無機顔料が水中で凝集する傾向を示す。つまり、樹脂エマルジョンのpHを中性にすると、酸化チタンのような酸化物顔料が非常に沈降しやすくなるという問題がある。
特公平02−51387号公報 特開2001−261906号公報
上記のような従来の有機溶剤系塗料では、学校の教室や住宅等に用いた場合、塗工後の塗膜中に残存する有機溶剤に起因する所謂シックスクールやシックハウスという問題が生じる。また、半導体工場や表示デバイス工場等においても、ケミカルフィルターの負荷を軽減し、作業者の健康を損なわないようにするために、塗膜からの有機溶剤の揮発量が少ない塗料組成物を用いることが望まれている。
さらに、有機溶剤の揮発の問題だけでなく、塗料には、その要求性能として、塗工下地面への密着性、表面の保護、美観、難燃性の付与等も求められている。さらに、風や摩擦等で塗膜表面が帯電すると埃等を吸着して塗膜表面が著しく汚染されるので、塗膜表面の静電気が自然に放電されるようにする必要がある。
したがって、本発明は、本質的に溶剤を含まず特殊な樹脂エマルジョンを原料に使用した塗料を提供することを目的とする。さらに、本発明は、帯電性が低く耐久性にも優れた塗料を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特殊な樹脂エマルジョンを原料として塗料とすることにより、有機添加剤や溶剤の添加量を極力低減して、従来の溶剤系塗料、反応型塗料、エマルジョン型塗料で問題とされていた諸問題を解決できること見出し、本発明を提供するに至った。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)3モル%〜20モル%のカルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマー単位と80モル%〜97モル%の不飽和結合を有するその他のモノマー単位とから構成される共重合体樹脂が水に分散し且つ水酸化カリウムを用いてpHが樹脂エマルジョン本来のpH〜5.5又は9.0〜12.5に調整された樹脂エマルジョンと、無機顔料の着色剤とを含有し、前記樹脂エマルジョンの樹脂固形分と着色剤固形分との合計が塗料組成物の全固形分に対して98重量%以上である塗料組成物。
(2)3モル%〜20モル%のカルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマー単位と80モル%〜97モル%の不飽和結合を有するその他のモノマー単位とから構成される共重合体樹脂が水に分散し且つ水酸化カリウムを用いてpHが5.5〜9.0に調整された樹脂エマルジョンと、有機顔料の着色剤とを含有し、前記樹脂エマルジョンの樹脂固形分と着色剤固形分との合計が塗料組成物の全固形分に対して98重量%以上である塗料組成物。
(3)前記不飽和結合を有するその他のモノマーが、エチレン、プロピレン及びブテンからなる群より選択されるオレフィン系モノマーである前記(1)又は(2)記載の塗料組成物。
(4)前記不飽和結合を有するその他のモノマーが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル及びメタクリル酸ヒドロキシエチルから成る群より選択される(メタ)アクリル酸エステル類である前記(1)又は(2)記載の塗料組成物。
(5)前記カルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、メタリルスルホン酸及びビニルベンゼンスルホン酸から成る群より選択されるモノマーである前記(1)又は(2)記載の塗料組成物。
(6)前記無機顔料が、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、弁柄、酸化クロム及び四三酸化鉄から成る群より選択される前記(1)及び(3)〜(5)のいずれかに記載の塗料組成物。
(7)前記有機顔料が、カーボンブラック、ケッチンブラック、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーンから成る群より選択される前記(2)〜(5)のいずれかに記載の塗料組成物。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の塗料組成物が屋内に塗工された半導体製造工場、電子機器組立工場、液晶表示デバイス工場又はプラズマディスプレー工場。
(9)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の塗料組成物が屋内に塗工された病院、製薬工場又はバイオ関連施設。
(10)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の塗料組成物が屋内に塗工された学校の教室。
(11)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の塗料組成物が屋内に塗工された住宅。
(12)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の塗料組成物が屋内に塗工された粉体を取り扱う工場。
(13)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の塗料組成物を塗工して形成される塗膜。
(14)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の塗料組成物を塗工して形成された塗膜上に、さらに3モル%〜20モル%のカルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマー単位と80モル%〜97モル%の不飽和結合を有するその他のモノマー単位とから構成される共重合体樹脂が水に分散し且つ水酸化カリウムを用いてpHが5.0〜9.0に調整された樹脂エマルジョンを塗工して形成された透明な塗膜を有する積層塗膜。
本発明の水性塗料組成物は実質的に有機溶剤を含有していないので、塗膜から溶剤が気化してガス状有機物が屋内大気中に混入することがなく、その中に住む人及び作業者に対してシックハウス症候群に見られる症状を引き起こす可能性を非常に少なくすることができる。
半導体製造工場、電子機器組立工場、液晶表示デバイス工場又はプラズマディスプレー工場等の工場屋内に使用すると、塗料から出てくるガス状有機物(アウトガス)が少なく、製造される製品を汚染しないので、これらの工場で生産される製品の歩留まりを向上することができるという利点がある。また、工場内部で製造に携わる従業員に対して、ガス状有機物を吸入する危険を減少させることができる。
病院や学校等の屋内に使用することにより、これまで病院や学校で問題にされてきた有機溶剤やホルモン様物質等のアウトガスが出てこないので、患者、生徒、学生などをこうした汚染物質から守ることができる。特に、塗料用有機溶剤の残存によるシックスクールの問題を防止することができる。
また、従来のアウトガス対策をした塗料により形成される塗膜は、静電気により帯電して塗膜に空気中の粉体や塵埃が引き付けられてこびり付き、壁面の汚染を促進するばかりでなく、それが剥がれ落ちて製品の汚染の原因となることがあった。これに対して、本発明の塗料組成物により形成される塗膜は優れた帯電防止性能を有し、塗膜表面に空気中の粉体・塵埃がこびりつかなくなるので、工場・住宅等の屋内の衛生環境を清潔に保つことができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、3モル%〜20モル%のカルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマー単位と80モル%〜97モル%の不飽和結合を有するその他のモノマー単位とから構成される共重合体樹脂が水に分散し且つ水酸化カリウムを用いてpHが樹脂エマルジョン本来のpH〜5.5又は9.0〜12.5に調整された樹脂エマルジョンと、無機顔料の着色剤とを含有し、前記樹脂エマルジョンの樹脂固形分と着色剤固形分との合計が塗料組成物の全固形分に対して98〜100重量%以下(好ましくは、98〜99.9重量%)である塗料組成物に関する。
また、本発明は、3モル%〜20モル%のカルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマー単位と80モル%〜97モル%の不飽和結合を有するその他のモノマー単位とから構成される共重合体樹脂が水に分散し且つ水酸化カリウムを用いてpHが5.5〜9.0に調整された樹脂エマルジョンと、有機顔料の着色剤とを含有し、前記樹脂エマルジョンの樹脂固形分と着色剤固形分との合計が塗料組成物の全固形分に対して98〜100重量%以下(好ましくは、98〜99.9重量%)である塗料組成物にも関する。
樹脂エマルジョン
本発明の塗料組成物は、カルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマー単位と不飽和結合を有するその他の(別の)モノマー単位とから構成される共重合体樹脂が水に分散した樹脂エマルジョンを使用して製造される。共重合体中に占めるカルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマー単位成分の割合は、通常3〜20モル%である。また、共重合体中に占める不飽和結合を有するその他のモノマー単位成分の割合は、通常80〜97モル%である。
カルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタリルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸等が挙げられ、これらの2種以上を用いてもよい。
不飽和結合を有するその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン及びブテン、スチレン等の炭素数2〜8のα-オレフィンや、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類、さらにメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のメタクリル酸エステル等が挙げられ、これらの2種以上を用いてもよい。
カルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマーと不飽和結合を有するその他のモノマーとの使用割合は、通常前者が3〜20モル%であり(後者が80〜97モル%である)、特に、5〜15モル%(後者が85〜95モル%である)が好ましい。前者の混合割合をより多くすると有機化合物の添加剤の添加量を少なくできるとともに、エマルジョンの安定性や帯電防止性もよくなる。一方、形成される塗膜の強度の点から言えば、後者をより多く使用するほうが好ましい。
次に、本発明に使用する樹脂エマルジョンの製造方法について説明する。
樹脂エマルジョンに使用される共重合体樹脂は公知の方法により製造することができ、例えば、原料のカルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマーと不飽和結合を有するその他のモノマーとを用いて、公知の重合反応により製造することができる。例えば、上記不飽和モノマーを圧縮工程で加圧してオートクレーブに供給して周囲から加熱し、有機過酸化物等のラジカル重合開始剤を供給して重合反応を行うことにより、共重合樹脂を得ることができる。この共重合体樹脂のガラス転移点は0℃以下となるので、この共重合体樹脂を水に分散させた樹脂エマルジョンを用いた塗料組成物は、常温で容易に塗膜を形成することができる。
次に、上記にようにして得られた共重合体中のカルボキシル基及び/又はスルホン基の一部を水酸化カリウムを用いてカリウム塩に変換する。このカリウム塩への変換は次のようにして行うことができる。まず、共重合体樹脂を粉砕して微粉化する。次いで、微粉化した共重合体樹脂を水中に分散させ、これに所定の量の水酸化カリウムを加えて高速撹絆することにより共重合体中のカルボキシル基及び/又はスルホン基をカリウム塩に中和すると同時に樹脂エマルジョンを形成することができる。
このようにして得られる樹脂エマルジョンの水素イオン濃度(pH)は、使用する水酸化カリウムの量(酸性分の中和率)によって異なる。樹脂エマルジョンのpHが5.5〜9.0となっている場合、カルボキシル基及び/又はスルホン基の中和率は30〜80%程度である。
上記の範囲のpHをもった樹脂エマルジョンは、顔料を含有しないクリア塗料組成物か、又は有機顔料着色剤を含有する塗料組成物に使用可能であるが、着色剤として無機顔料を含有する塗料組成物には使用できない。その理由は、この範囲のpH(5.5<pH<9.0)をもつ樹脂エマルジョンに酸化チタンのような酸化物無機顔料を添加しても、顔料が均一に分散せずに凝集してしまうからである。有機系分散剤を使用するとこの範囲のpH(5.5<pH<9.0)をもつ樹脂エマルジョンに無機顔料の着色剤を分散させることはできるが、しかしながら本発明ではアウトガスをできるだけ発生させないようにするために有機系分散剤を用いないのが好ましい。
このような観点から、無機顔料着色剤を使用する塗料組成物においては、無機顔料の分散を良くするために樹脂エマルジョンのpHを樹脂エマルジョン本来のpH〜5.5又は9.0〜12.5に調整することが好ましい。この場合のカルボキシル基及び/又はスルホン基の中和率は〜120%程度となる。ここで、「樹脂エマルジョン本来のpH」とは上記のようにして得られた樹脂エマルジョンであって酸やアルカリ等で何ら処理していない状態でのpHを意味する。
また、樹脂エマルジョンを得る別の方法として以下の方法が挙げられる。
加熱用ジャケットと攪拌機付きの反応釜に水と分散剤とカルボキシル基及び/又はスルホン基を含む不飽和モノマーとを入れて十分に撹拌し、さらに不飽和結合を有するモノマーを加えて全体を均一に撹拌する。加熱用ジャケットに熱媒を通して、反応液全体を、例えば50〜80℃に上げ、重合触媒として、有機アゾ化合物や有機過酸化物、又は無機過硫酸化合物等を加える。数時間掛けて重合反応を進行させるとエマルジョン状態に分散した共重合体樹脂が得られ、これはそのまま樹脂エマルジョンとして本発明の塗料組成物に使用できる。得られた樹脂エマルジョンの水素イオン濃度(pH)は、使用する酸性モノマーの種類と量によって異なるが、通常2.5〜4.5程度となる。
また、不飽和結合を有するその他のモノマーは、それを用いて得られる共重合体樹脂のガラス転移温度を考慮して選択される。本発明の塗料組成物は、水に分散した樹脂を室温で自然乾燥することにより塗膜が形成される。このためには、樹脂エマルジョン(共重合体樹脂)のガラス転移点を0℃以下(下限は、モノマーの種類から−30℃程度)にすることが必要となる。このように共重合樹脂のガラス転移点を制御するには、例えば、アクリル酸ブチル(Tg=-30℃)とアクリル酸メチル(Tg=100℃)とを組合せて、例えばTg=-10℃程度の共重合体を合成することが必要である。
着色剤
本発明において使用する着色剤としては無機顔料、含炭素顔料及び有機顔料のいずれのものでも使用できる。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄、酸化クロム、酸化コバルト、四三酸化鉄等の無機酸化物顔料や、炭酸カルシウム等の無機化合物顔料等が挙げられ、これらの2種以上を用いてもよい。
含炭素顔料としては、カーボンブラック等の炭素系顔料が挙げられ、有機顔料としては、フタロシアニンブルーなどのフタロシアニン系顔料、ナフトールAS不溶性アゾ顔料、キナクドリン顔料などの縮合多環系顔料などの有機化合物顔料が挙げられ、これらの2種以上を用いてもよい。
その他の添加剤
本発明の塗料組成物には、樹脂エマルジョン及び着色剤以外に、公知の有機系添加剤(例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、抗菌剤、難燃剤、充填剤等)を加えてもよい。だだし、その量は塗料組成物の全固形分量に対して2重量%以下に抑える必要がある。これらの有機系添加剤を2重量%以上添加すると添加剤が徐々に周囲の環境に揮発して、周囲の空気を汚染するので好ましくない。
なお、難燃剤として、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤を使用する場合には、上記の使用量の制限を受けず、例えば、樹脂エマルジョンの樹脂固形分の40重量%程度まで使用することができる。その理由は、本発明の樹脂エマルジョンには、カルボキシル基又はスルホン酸基があるので、このような無機の難燃剤に対する親和性がよいので、多量の水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムを含ませることができるためである。
塗料組成物の製造
無機顔料を使用する場合
一般に塗料の隠蔽性を上げるために、酸化チタンのような無機顔料の着色剤の使用が求められる場合が多い。しかしながら、無機顔料はその等電点付近では凝集する傾向があり、中性付近のpH(5.5<pH<9.0)を有する塗料組成物には分散させるのが困難である。
そこで、無機顔料を使用する塗料組成物を製造するには、上記のようにして得られる樹脂エマルジョン本来のpH(通常3.0前後)を、水酸化カリウムを用いて中和率を〜30%程度にして樹脂エマルジョン本来のpH〜5.5とするか、又は水酸化カリウムを用いて中和率を〜120%程度にしてpHを9.0〜12.5に調整し、次いで、無機顔料を含む着色料を添加する。さらに、公知の塗料用添加剤(例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、抗菌剤、難燃剤等)を添加してもよい。
次いで、全体を均一になるように混練する。混練機は、サンドミルのような顔料を均一に混練できるような装置が好ましい。無機顔料を含む着色剤は、例えば、無機顔料を高分子系分散剤で水に均一に分散させたものを用いると便利である。
有機顔料を使用する場合
有機顔料の着色剤を使用する場合には、水酸化カリウムを用いてpH5.5〜9.0に調製された樹脂エマルジョンと混合することにより本発明の塗料組成物を製造することができる。さらに、公知の塗料用添加剤(例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、抗菌剤、難燃剤等)を添加してもよい。
次いで、全体を均一になるように混練する。混練機は、サンドミルのような顔料を均一に混練できるような装置が好ましい。
着色剤の添加方法としては、顔料をサンドミル等で細かく砕きながら樹脂エマルジョンと混合するとよい。また、着色剤として顔料を高分子系分散剤を用いて予め水に分散したものも用いることができる。高分子系分散剤としては、アクリル変性ポリビニルアルコールや水性アクリル樹脂等が挙げられる。
また、塗料をつや消し塗料にする場合には、つや消し剤として微細な樹脂ビーズやシリカ等を使用することもできる。
樹脂エマルジョンと上記着色剤との割合は、求められる色調によって異なるが、例えば製造工場では薄い色が好まれるので、樹脂エマルジョンの樹脂固形分に対して通常5重量%以下である。例外的に、酸化チタンでは隠蔽性を上げるために樹脂エマルジョンの樹脂固形分に対して10重量%程度まで使用してもよい。
着色剤以外の塗料用添加剤としては、例えば、塗料を乾燥硬化する際に均一な塗膜が得られるようにする目的で造膜剤を使用することがある。造膜剤は、多価アルコール及びその誘導体を使用することが多いが、硬化後の塗膜からのアウトガスを少なくするためにブチルセルソルブ、ブチルカルビトール等を使用した造膜剤が好ましい。このほか、増粘剤(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)等を添加しても良い。しかし、その使用量は、本発明の場合には、前記のとおりアウトガス予防の点から、全体で塗料組成物固形分の2重量%以下にする必要がある。
本発明の塗料組成物の粘度は、10〜500mPa・s、特に20〜300mPa・sとすることが好ましい。
一般に、酸性の塗料は塗装面に対して害を与える場合が多いので、塗料組成物のpHは、顔料の分散性を維持できる範囲でpHを上げて、例えばpHを5.0以上(5.0<pH)とすることが好ましい。特に、鉄は酸に弱く、空気中の水の作用で容易に錆が発生する。そこで、鉄に塗工する場合には、錆の発生を防止するために塗料組成物のpHをアルカリ性(好ましくは、pH=9.0以上)とするのが好ましい。
なお、pHを上げることによって帯電防止性も付与できるというメリットもある。しかしながら、塗膜が人間の肌に触れた場合に害を及ぼす可能性がある。その場合には、その塗膜表面を、後述するような中性付近のpHに調整した透明な塗料(クリア塗料)でさらに被覆するとよい。
トップコート(クリア塗料)
本発明で使用される樹脂エマルジョンに着色剤を加えずにクリア塗料(透明な塗料)として使用してもよい。このようなクリア塗料は、例えば、着色剤を含む本発明の塗料組成物を使用して形成された塗膜上に塗布してトップコートを形成するために使用できる。クリア塗料で使用する場合にも上述のような塗料用添加剤を使用してもよい。
クリア塗料としては、具体的には、3モル%〜20モル%のカルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマー単位と80モル%〜97モル%の不飽和結合を有するその他のモノマー単位とから構成される共重合体樹脂が水に分散し且つ水酸化カリウムを用いてpHが5.0〜9.0に調整された樹脂エマルジョンを使用することができ、その製造方法は先述の樹脂エマルジョンの製造方法と同様である。
塗料組成物により形成される塗膜の帯電防止性
本発明では、共重合体樹脂中のカルボキシル基及び/又はスルホン基を中和するのに水酸化カリウムを用いることが特に重要である。水酸化カリウムを用いると、塗膜の電気抵抗を10Ω以下まで下げることができる上、表面の粘着性や汚れの付きにくさの点で他のアルカリ金属水酸化物を用いた場合よりも優れた性能の塗膜とすることができる。カリウムの代わりに、ナトリウムやリチウムを使用しても、カリウムのように表面抵抗値を下げる効果はない。表面抵抗は、例えば、アジレントテクノロジー社製のpAmeter等を使用して測定することができる。
塗料の用途
本発明の塗料組成物は、例えば、鉄骨、コンクリート躯体、石膏ボード面、木材等に直接塗ることができ、塗工下地面との接着性もよい。
本発明の塗料組成物により形成される塗膜は帯電性が少なく、また塗膜からのアウトガス(塗料の添加剤、可塑剤及びその他の揮発成分)が少ないので、アウトガスや粉塵の発生が問題となる場所において使用するのに適している。また、実質的に有機溶剤を含んでいないので人体にも安全である。なお、「実質的に有機溶剤を含んでいない」とは、本発明の塗料組成物中の有機溶剤の含有量が1重量%(10,000ppm)以下(好ましくは0.5重量%以下)であり、その硬化後の塗料では塗料固形分の0.1重量%(1,000ppm)未満であることをいう。
本発明の塗料は、例えば、半導体製造工場、電子デバイス組立工場、液晶表示デバイス工場又はプラズマディスプレー工場等の精密部品工場の梁、柱、壁、床、天井等に使用することができる。これらの部位に、本発明の塗料を塗布することによって、これらの部位から出てくる塵埃を十分に防ぐことができる。また、従来の溶剤系塗料では塗膜に残った溶剤がアウトガスとなってクリーンルームの空気中に揮発して空気を汚染することがあったが、本発明の塗料では揮発する有機物がほとんど無いために、ガス状有機物による汚染を防止することができる。このため従来の溶剤型塗料は、これまで、微粒子数の許容範囲が1000個/立方フィート(ft3)以上程度のかなり制限のゆるい工場でしか使用できなかった。これに対して、本発明の塗料はアウトガス及び粉塵の発生がないために、空気中の微粒子数の制限がもっと厳しい10個/ft3クラスのクリーンルーム(例えば、半導体製造工場、電子デバイス組立工場、液晶表示デバイス工場又はプラズマディスプレー工場等の精密部品工場)の壁面等に使用することができる。本発明の塗料をこれらの工場で使用することにより、アウトガス及び粉塵による製品の汚染を防ぐことができ、製品の歩留まりを向上することができる。
また、本発明の塗料は、病院、製薬工場、バイオ関連設備等の衛生管理が必要とされる建築物の屋内の塗料として使用することができる。例えば、病院の場合には、従来の塗料では静電気によって壁面に細菌・ウイルス類が吸着し、場合によってはこれが院内感染の原因となることもあるが、本発明の塗料は帯電しないのでその表面に細菌・ウイルス類が付着するおそれはなく、院内感染の問題は生じない。また、従来の溶剤型塗料のように塗料内部から溶剤が揮発して、患者及び病院内の人の健康を害することもなくなる。同様に、製薬工場及びバイオ関連設備で使用する場合においても、アウトガスや塵埃の発生がないために優れた清浄度の製造環境を提供することができる。
また、本発明の塗料は、乳幼児や生徒や学生が集まる保育園、幼稚園、学校、大学、専門学校等の教室の壁面や、多くの人々が集まるホールや講堂等の塗料に使用することができる。従来の溶剤型塗料の場合には、作業性や帯電防止性を付与する目的で多くの溶剤や有機帯電防止剤を添加していたが、これらの添加剤の空気中への揮発による空気汚染の危険性があった。これに対して本発明の塗料は、溶剤や有機系帯電防止剤を添加していないため、これらのアウトガスが発生しないために教室やホール等の塗料に使用しても安全である。また、多くの生徒が出入りする教室やホール等では、衣服からの繊維等による綿埃が発生するが、本発明の塗料は帯電防止性であるために、これらの綿埃の壁への静電的な吸着・付着による壁面の汚れを防止することができる。
また、本発明の塗料組成物は、戸建住宅、共同住宅等の住宅の壁面にも使用することができる。本発明の塗料は対汚染性にも優れているので、台所からでる油や調味料が付着しにくく、壁を清潔に維持することができる。また、化学物質に対する耐性が大人の1/3程度しかない乳幼児や子供がいる家庭では、アウトガスや環境ホルモンを出さない塗料を使用することは乳幼児・子供の健全な育成には特に重要である。
さらに、本発明の塗料は粉体を取り扱う工場の壁面に使用することができる。本発明で言う粉体を取り扱う工場としては、例えば、食品等の粉砕工場、樹脂の混練工場、薬品の粉砕工場等が挙げられる。粉体を扱う工場では空気中舞い上がって静電気を帯びた粉体が壁面に吸着・付着して壁面を汚染することが問題であったが、本発明の塗料を使用すれば粉体は壁面に付着することなく壁面は常に清潔に保たれる。
以上述べたように、本発明の塗料を半導体工場、製薬工場及び学校等に使用すると、それぞれの環境を清浄に維持することができる。また、本発明の塗料からは有機溶剤の発生はなく、さらに、燃焼してもダイオキシン等の有害物質を発生することもなく、環境・人体に優しい塗料である。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
本実施例では、塗料の物性評価には以下の方法を採用した。それらの評価方法による測定結果は、試料の材料構成や加工方法と併せて表1に記載した。
表面抵抗の測定
塗膜の表面抵抗は、アジレントテクノロジー社製のpAmeter/DC VOLTAGE SOURCE 4140Bを用いて測定した。この表面抵抗計では、この測定端子をシートに押し付けることによって、表面抵抗値が表示される。
アウトガス(有機物)量の測定
本発明の塗料を機材に塗布して得られた塗膜からのアウトガス発生量は、ダイナミックヘッドスペース/ガスクロマトグラム・マススペクトル(DHS/GC/MS)法で測定した。試料中の揮発性成分を気化させるため、サンプルホルダーの試料にヘリウムガスを流しながら温度150℃で30分間加熱した。加熱によりヘリウム中に気化してきたアウトガスをテナックス管(GESTEL社製)に導入して吸着させた。吸着管に捕集されたアウトガスをGC/MS装置に流して種類と量とを測定した。ガスクロマトグラム装置のカラムはキャピラリーカラム(液層:Pheny Methyl Siloxaneで、その長さは60mであり、また、測定温度は常温〜280℃とした。DHS/GC/MS装置はアジレントテクノロジー社製の分析装置を使用した。
帯電防止性の測定
帯電防止性能は、JIS L 1094に記載の方法に準じて、シシド静電気社製の帯電圧測定装置を用いて測定した。温度23℃、相対湿度50%において、同社のスタチックネオストメーターにより機材に塗布した塗膜を帯電させ、最大帯電圧の半分の電圧になるまでに要する時間、つまり半減期を測定する。半減期が短いほど放電し易い(即ち、帯電し難い)ということができる。
クリーンルームでの試験条件
本実施例では塗料を施工する建築物のモデルとして以下のような小型のクリーンルームを使用した。
大きさ・・・・・・4.4m(縦)×4.0m(横)×2.7m(高さ)
塗料の施工面積
(クリーンルームを構成する柱、梁、壁、床に本発明の塗料組成物を塗布した)
梁鉄骨 5m
柱 コンクリート 10m
壁 石膏ボード 60m
床下 コンクリート 20m
乾燥時間 30日間
循環空気量・・・・1400m/hr
取り入れ空気量・・240m/hr
使用したフィルター:特許第3531742号に準じて製造したアウトガスの出ないフィルターを使用
上記の条件にて3日間運転した後にサンプリングしてクリーンルーム中の空気を分析した。空気中の塗料からのアウトガス(有機物)量は、クリーンルームから排出される空気をテナックス吸着管に導入し、吸着前後のテナックス吸着管の重量変化から求めた。また、テナックス吸着管に吸着した有機物をGC/MS装置で分析した。分析条件は上述の「アウトガス(有機物)量の測定」に記載した条件と同じである。クリーンルーム中の有機物量(μg/m)は、テナックス吸着管に吸着した有機物量(μg)を導入空気量(m)で除して求めた。
なお、以下に述べる各実施例の条件や測定値等の詳細は、表1及び表2の各実施例/比較例番号のそれぞれの項目に示す。
(実施例1)
まず、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体を水に分散して中和して得た樹脂エマルジョンとして、三井化学(株)社製のケミパールの水酸化カリウム中和品(pH=8)を使用した(樹脂エマルジョン中の樹脂固形分45重量%)。この樹脂エマルジョン100重量部に、顔料としてフタロシアニンブルーを0.2重量部を含む着色剤と充填剤として炭酸カルシウムを30重量部加えて表1に記載の混練機で混練し、本発明の塗料組成物を得た。塗料組成物中の全固形分に対する樹脂エマルジョン固形分と着色剤固形分との合計は47重量%であった。得られた塗料の性能を表1の塗料の項に示すが、塗料として十分の性能を示した。
この塗料組成物をフッ素樹脂(PTFE)フィルム上に塗って7日間室温で放置して硬化させた。硬化物はフッ素樹脂フィルムから容易に剥離するので、それをアウトガスの発生量の試験に使用した。アウトガス発生量の分析は、前記のDHS-GC/MS法で行った。アウトガス量は125μg/g-試料(ppm)であった。
塗膜そのものの試験は、上記の塗料をガラス板に塗って室温で7日放置して、得られた塗膜について評価した。その結果を表1の塗膜物性の項に示す。顔料の沈降分離も無く、また保存安定性にも問題はなかった。また、塗料の目視試験や帯電防止試験についても良好な性能を示すことがわかった。
次に、この塗料組成物を用いて実際にコンクリート面に塗装試験を行った。本発明の塗料組成物は半導体工場等に使用することを勘案して、主にロール塗りで行った。塗装作業性には問題が無く、また塗膜の密着性や仕上りには問題はなかった。このことから、本発明の塗料組成物は大量の造膜剤を使用しなくても高性能の塗膜を形成できることがわかった。また、有機系添加剤が少ないためにアウトガス量も少ないことが判明した。
(実施例2)
エチレンとアクリル酸とからなる共重合体樹脂を使用した。この共重合体樹脂を水に分散させた樹脂エマルジョン(樹脂エマルジョン中の樹脂固形分45重量%)に水酸化カリウムを添加して樹脂エマルジョンをpH12に調整した。着色剤として弁柄(酸化第二鉄)及び酸化チタンの無機顔料を使用した。さらに、水酸化アルミニウムを難燃剤として使用した。実施例1と同様にして各成分を混合し塗料組成物を製造した。塗料組成物中の全固形分に対する樹脂エマルジョン固形分と着色剤固形分との合計は60重量%であった。
本実施例の塗料組成物はアウトガス量も少なく、また帯電防止性能も優れていることがわかった。次に、本発明の塗料を鉄板の上にはけ塗りで塗装して塗装性を調べた。その結果塗装作業性には問題が無く、また塗膜の密着性や仕上りも問題はなかった。
(実施例3)
エチレンとアクリル酸とからなる共重合体樹脂を使用した。この共重合体樹脂を水に分散させて樹脂エマルジョン(樹脂固形分45重量%)とした。また、安全性と帯電防止性能を付与の目的から、水酸化カリウムで中和してpHは7とした。得られた樹脂エマルジョンには着色剤は添加せず、クリア塗料として用いた。クリア塗料は、塗膜表面をより樹脂の多い成分で被うことにより塗膜強度を増加させる目的で使用する。本クリア塗料は優れた塗膜強度、帯電防止性を有していることが分かった。
(実施例4)
本実施例では、不飽和結合を有する構成モノマーとしてメタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチルを用いた。また、カルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマーとしてアクリル酸とメタリルスルホン酸とを使用した(合計7モル%)。得られた共重合体樹脂のガラス転移点は0℃であった。この共重合体樹脂を水に分散させて樹脂エマルジョンを製造し、水酸化カリウムで中和してpH=4.5とした。着色剤として無機顔料(弁柄及び酸化チタン)、また充填剤として水酸化アルミニウムを加え、ディスパーサーで混合して塗料組成物を製造した。塗料組成物中の全固形分に対する樹脂エマルジョン固形分と着色剤固形分との合計は47重量%であった。
本実施例の塗料組成物は安定性に問題はなかった。また塗膜からのアウトガス量も少ないことがわかった。さらに帯電防止性能も十分にあることが示された。
本実施例の塗料を石膏ボード表面に塗工して塗膜を形成させ、さらにその上に実施例3のクリア塗料をトップコートとして塗工して積層塗膜を形成させた。これにより平滑な塗膜表面が得られるとともに、クリア塗料が優れた帯電防止性を有しているので、塵埃の多く発生する粉体工場等適していることがわかった。
(実施例5)
本実施例は実施例4の共重合体樹脂を水に分散させて水酸化カリウムで中和して樹脂エマルジョン(pH8)を製造し、着色剤を添加せずにクリア塗料とした事例である。この塗料組成物をトップコートとして用いて塗装した塗膜は美しい外観及び優れた帯電防止性能を有することが分かった。
(実施例6)
本実施例は実施例4の樹脂エマルジョンを使用した塗料組成物に関するものである。樹脂エマルジョン中の酸成分(アクリル酸のカルボキシル基及びメタリルスルホン酸のスルホン基)を水酸化カリウムで若干中和して、pH=11.5として使用した。着色剤として酸化物顔料、弁柄及び酸化チタンを添加した。また充填剤として炭酸カルシウムを添加した。これらの各成分を樹脂エマルジョンと混合して塗料組成物を製造した。
本実施例の塗料組成物は安定性に問題はなかった。また塗膜からのアウトガス量も少ないことがわかった。さらに帯電防止性能も十分にあることが示された。
本実施例の塗料を石膏ボード表面に塗工して塗膜を形成させ、さらにその上に実施例3のクリア塗料を塗工して積層塗膜を形成させた。これにより平滑な塗膜表面が得られるとともに、クリア塗料の優れた帯電防止性を有しているので、塵埃の多く発生する粉体工場等適していることがわかった。
Figure 2006143820
(比較例1)
比較例1は実施例2に対する比較例であり、水酸化カリウムに代えて水酸化ナトリウムで中和し、これ以外は実施例2と同様にして塗料組成物を製造した。比較例1の塗膜の物性を表2に示す。塗料としての性能も良く、アウトガス量も少ないが、帯電性を有し、塵埃を吸着しやすいことがわかった。このことから水酸化ナトリウムで樹脂エマルジョンを中和することは有効ではないことがわかった。
(比較例2)
比較例2は、カルボキシル基及びスルホン基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル系共重合体樹脂を用いた塗料組成物の事例である。比較例2の塗膜の物性を表2に示す。得られた塗膜の表面抵抗値は1012Ω以上であり、十分な帯電防止性を有していないことが分かった。
(比較例3)
比較例3は、市販の溶剤系塗料を使用した事例である。アクリルエマルジョン系塗料として日本ペイント社製のエコフラット70を使用した。比較例3の塗膜の物性を表2に示す。この場合には、塗膜に含まれるアウトガス量は比較的少ないが、帯電防止性能の点で本発明の目的には適していないことがわかった。
(比較例4)
本比較例は、市販のエポキシ系塗料を使用した事例である。エポキシ系塗料としてエービーシー商会製のケミコンダクトREを使用した。比較例4の塗膜の物性を表2に示す。エポキシ系塗料の場合にも、アウトガス量が多く(特に、ベンジルアルコールや未反応のエポキシ化合物)、本発明の目的には適していないことがわかった。
(比較例5)
本比較例は、市販のウレタン系塗料を使用した事例である。ウレタン系塗料として関西ペイント社製のアレスレタンカラークリアーを使用した。比較例5の塗膜の物性を表2に示す。ウレタン系塗料の場合にも、アウトガス量(特に、溶剤や未反応のイソシアネート化合物)が多く、本発明の目的には適していないことがわかった。
クリーンルームでの試験によれば、本発明の塗料組成物をクリーンルームの柱、梁、壁、床に塗布した場合、極めて清浄な環境が得られることがわかった。
Figure 2006143820
以上の結果から明らかなように、本発明の塗料は表面抵抗値が小さく帯電性能に優れており、塗膜への静電的な塵埃の吸着量も極めて少なくすることができる。また、本発明の塗料組成物は帯電防止剤や有機溶剤等を実質的に含有しないためアウトガスが極めて少なく、人体や環境に優しい。
本発明によれば、帯電防止性に優れ、しかもアウトガスの少ない塗料組成物を提供できる。本発明の塗料組成物は清浄な環境が必要とされる施設、例えば、半導体工場等の精密部品工場、病院、学校等の塗料として有用である。

Claims (14)

  1. 3モル%〜20モル%のカルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマー単位と80モル%〜97モル%の不飽和結合を有するその他のモノマー単位とから構成される共重合体樹脂が水に分散し且つ水酸化カリウムを用いてpHが樹脂エマルジョン本来のpH〜5.5又は9.0〜12.5に調整された樹脂エマルジョンと、無機顔料の着色剤とを含有し、前記樹脂エマルジョンの樹脂固形分と着色剤固形分との合計が塗料組成物の全固形分に対して98重量%以上である塗料組成物。
  2. 3モル%〜20モル%のカルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマー単位と80モル%〜97モル%の不飽和結合を有するその他のモノマー単位とから構成される共重合体樹脂が水に分散し且つ水酸化カリウムを用いてpHが5.5〜9.0に調整された樹脂エマルジョンと、有機顔料の着色剤とを含有し、前記樹脂エマルジョンの樹脂固形分と着色剤固形分との合計が塗料組成物の全固形分に対して98重量%以上である塗料組成物。
  3. 前記不飽和結合を有するその他のモノマーが、エチレン、プロピレン及びブテンからなる群より選択されるオレフィン系モノマーである請求項1又は2記載の塗料組成物。
  4. 前記不飽和結合を有するその他のモノマーが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル及びメタクリル酸ヒドロキシエチルから成る群より選択される(メタ)アクリル酸エステル類である請求項1又は2記載の塗料組成物。
  5. 前記カルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、メタリルスルホン酸及びビニルベンゼンスルホン酸から成る群より選択されるモノマーである請求項1又は2記載の塗料組成物。
  6. 前記無機顔料が、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、弁柄、酸化クロム及び四三酸化鉄から成る群より選択される請求項1及び3〜5のいずれか1項記載の塗料組成物。
  7. 前記有機顔料が、カーボンブラック、ケッチンブラック、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーンから成る群より選択される請求項2〜5のいずれか1項記載の塗料組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項記載の塗料組成物が屋内に塗工された半導体製造工場、電子機器組立工場、液晶表示デバイス工場又はプラズマディスプレー工場。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項記載の塗料組成物が屋内に塗工された病院、製薬工場又はバイオ関連施設。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項記載の塗料組成物が屋内に塗工された学校の教室。
  11. 請求項1〜7のいずれか1項記載の塗料組成物が屋内に塗工された住宅。
  12. 請求項1〜7のいずれか1項記載の塗料組成物が屋内に塗工された粉体を取り扱う工場。
  13. 請求項1〜7のいずれか1項記載の塗料組成物を塗工して形成される塗膜。
  14. 請求項1〜7のいずれか1項記載の塗料組成物を塗工して形成された塗膜上に、さらに3モル%〜20モル%のカルボキシル基及び/又はスルホン基を含有する不飽和モノマー単位と80モル%〜97モル%の不飽和結合を有するその他のモノマー単位とから構成される共重合体樹脂が水に分散し且つ水酸化カリウムを用いてpHが5.0〜9.0に調整された樹脂エマルジョンを塗工して形成された透明な塗膜を有する積層塗膜。
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