JP2006128139A - 半導体薄膜、半導体薄膜の積層体、半導体薄膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電圧降下による消費電力の増大および表示性能の低下を抑制できるとともに高い発光効率を確保できる有機EL素子を提供する。
【解決手段】透明電極10および対向電極20の間に有機発光層を含む有機物層30が挟持された有機EL素子1において、透明電極10を、半導体薄膜および絶縁体薄膜の少なくともいずれか一方と金属薄膜との積層体により構成し、半導体薄膜および絶縁体薄膜を、キャリア濃度が1020cm-3未満でありかつエネルギーギャップが2.7eV以上のものとし、半導体薄膜または絶縁体薄膜を有機物層30と隣接させる。これにより、透明電極10の面抵抗を小さくできるとともに、高い発光効率を確保できる。
【選択図】図1
Description
有機EL素子を用いた表示装置では、基板上にストライプ状の透明電極および対向電極をマトリクス配置するとともに、これらの電極間に有機発光層を含む有機物層を挟持させることにより、有機EL素子からなる画素を平面上に二次元配列して有機EL表示パネルを形成し、各画素を構成する有機EL素子を独立して駆動させることで表示を行う。
しかしながら、ITOの面抵抗は10Ω/□〜20Ω/□であることから、高精細の有機EL表示装置に適用すると、この抵抗によって透明電極ラインが10kΩ近くの抵抗を保有する場合がある。このため、透明電極ラインの抵抗により電圧降下が生じ、消費電力が増大する上に、抵抗と素子の容量とで定まる時定数が大きくなって発光応答の遅れが生じ、これにより表示が乱れるという不具合があった。
このような不具合を解消する方法として、透明電極を、非晶質導電性酸化物層/金属薄膜/非晶質導電性酸化物層の三層構造とする方法が提案されている(特許文献1)。この方法では、透明電極に金属薄膜を用いることにより、透明電極全体の面抵抗を小さくすることができるので、消費電力の増大および表示性能の低下を防止できる。
また、半導体薄膜および絶縁体薄膜は、キャリア濃度が1020cm-3未満とされかつエネルギーギャップが2.7eV以上とされているので、発光効率を高く維持できる。すなわち、キャリア濃度が1020cm-3以上であると、有機物層と隣接させた場合に、有機物層における励起状態が失活して素子の効率が低下する。また、エネルギーギャップが2.7eV未満であると、有機物層から、隣接する半導体薄膜や絶縁体薄膜に励起エネルギの移動が起こって素子の効率が低下する。
すなわち、透明電極の面抵抗値が0.5Ω/□未満であると、金属薄膜の膜厚が大きくなるため透過率が10%以下となり、透明電極を通じて光を取り出す場合に十分な光取出し量を確保できないおそれが生じる。また、面抵抗値が10Ω/□を越えると、透明電極を細線化した場合等に抵抗が保有されて電圧降下が生じるおそれがある。
すなわち、金属薄膜の膜厚が0.5nm未満では、膜が島状に分離して十分な導電性が得られなくなるおそれがある。また、有機発光層の発光を透明電極を通じて取り出すためには、金属薄膜における可視光の透過率を50%以上とすることが好ましいが、膜厚が30nmを越えると十分な光透過性が得られない場合がある。
特に、金属薄膜の膜厚を1〜9nmの範囲とすることで、電気抵抗が小さくかつ光透過率が高い金属薄膜が得られる。
これらの金属は、比抵抗が10-5Ωcm以下であるため、透明電極の面抵抗を十分に小さくすることができる。
このようにすれば、半導体薄膜や絶縁体薄膜のキャリア濃度を確実に低減できる。
この場合、半導体薄膜は、酸化物、硫化物およびセレン化物のうちのいずれかよりなり、かつ、Ti、In、Sn、Mg、Zn、AlおよびGaより選ばれたいずれかを含有することが好ましい。特に好ましい例としては、ZnS、ZnSe、ZnSSe、MgSSe等を挙げることができる。
また、絶縁体薄膜は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有することが好ましく、特に、Mg、Ca、Ba、Sr、Li、Na、KおよびRbより選ばれたいずれかを含有する酸化物からなることが好ましい。
このように透明電極を三層構造とすることで、金属薄膜が安定化して経時的な構造変化が抑制されるため、耐熱性を向上させることができる。
すなわち、絶縁体薄膜の膜厚が0.1nm未満であると、成膜時に絶縁体薄膜が島状に分離して連続した膜が得られない場合があり、所望の性能を発揮できないおそれが生じる。
また、絶縁体薄膜を有機物層と隣接させた場合、絶縁体薄膜を介して有機物層に電荷注入を行うためには、絶縁体薄膜に1×106V/cm以上の高電圧を印加する必要がある。このため、膜厚が30nmを越えると、電荷注入を良好に行えないおそれが生じる。
本発明の有機EL素子1は、図1に示すように、透明電極10と、この透明電極10に対向する対向電極20と、当該透明電極10および対向電極20の間に挟持された有機物層30とを備えたものであり、有機物層30は、有機発光材料を含有する有機発光層を含んで構成されている。
有機EL素子1は、支持体としての基板2上に透明電極10から順に積層され、基板2側が光取り出し面とされている。なお、有機EL素子1は、水分や酸素の進入を防止するための封止層で覆われていてもよい。
このような有機EL素子1は、有機EL表示パネルや面光源等の各種有機EL発光装置に適用できる。
(1)透明電極(陽極)
透明電極は、半導体薄膜および絶縁体薄膜の少なくともいずれか一方と、金属薄膜との積層体よりなる。本発明の有機EL素子においては、透明電極を構成する薄膜のうち半導体薄膜および絶縁体薄膜のいずれかを有機物層に隣接させる。
また、透明電極を構成する半導体薄膜および絶縁体薄膜はキャリア濃度が1020cm-3未満であるとともにエネルギーギャップが2.7eV以上のものとされている。
このような複層構造をもつ透明電極の面抵抗は、0.5Ω/□〜10Ω/□の範囲とされていることが好ましい。
半導体薄膜や絶縁体薄膜のみで透明電極を構成すると、透明電極の面抵抗値が100Ω/□程度、場合によっては、10kΩ/□以上となり、消費電力が大きくなるため、発光装置に適用することができない。
本発明では、透明電極の面抵抗値を小さくするため、具体的には、面抵抗値を0.5Ω/□〜100Ω/□の範囲、好ましくは、0.5Ω/□〜10Ω/□の範囲とするために金属を用い、可視光の透過率を高くするため、具体的には50%以上とするために、特に、金属の超薄膜を用いる。
金属薄膜は、連続した薄膜状に形成することが好ましいが、全体として一つに繋がっていれば、部分的に開口した干潟状であってもよい。すなわち、金属薄膜の膜厚を、0.5nm〜3nm程度の非常に薄い厚さにすると、成膜時に金属が連続した膜にならないで、部分的に開口した干潟状に形成される場合があるが、金属薄膜が分断されないで一つに繋がっていれば導電性は確保できる。
金属薄膜を構成する金属としては、貴金属、比抵抗が10-5Ωcm以下の金属、これらを含有する合金等を採用できる。具体的には、Ag、Pd、Au、Cu、Ptおよびこれらを含有する合金より選ばれたいずれかにより構成することが好ましく、例えば、AuIn、AgPb、PdAg、PdAgSb等を挙げることができる。
本発明では、半導体薄膜として、キャリア濃度が1020cm-3〜1012cm-3の範囲であるとともに、エネルギーギャップが2.7eV〜9eVの範囲のものを用いる。
このような半導体薄膜としては、酸化物、酸化窒化物、硫化物およびセレン化物よりなるものが好ましく、特に、Ti、In、Sn、Mg、Zn、Al、Gaのいずれかを含むものが好ましい。具体的には、TiO2、In2O3、SnO2、MgO、ZnO、In2O3−ZnO、Ga2O3、In2O3−Al2O3、In2O3−TiO2、SnO2−TiO2、In2O3−SnO2、ZnS、ZnSe、ZnSSe、MgSSe等を挙げることができる。
ここで、半導体薄膜には、In2O3−SnO2等の透明導電性酸化物により構成されたものも含まれるが、通常用いられる透明導電性酸化物の膜は、キャリア濃度が1020cm-3以上であり、本発明の効果を発揮できないことから、キャリア濃度が低くなるように成膜する必要がある。半導体薄膜のキャリア濃度を低くする方法としては、成膜時にO2に対するSnの量を少なく方法、Snに対するO2の量を多くする方法、成膜を室温で行う方法、硫化物またはセレン化物を用いる方法等を採用できる。
本発明では、絶縁体薄膜として、キャリア濃度が0〜1020cm-3の範囲であるとともにエネルギーギャップが2.7eV以上のものを用いる。このようにエネルギーギャップが2.7eV以上の絶縁体を用いれば、有機物層の励起状態が失活することはない。
この絶縁体薄膜では、電荷注入を良好にするために、膜厚を0.1〜30nmとすることが好ましく、より好ましくは、0.3〜10nmであり、特に好ましくは、0.5〜5nmである。
このような絶縁体薄膜としては、Mg、Ca、Ba、Sr、Li、Na、KおよびRbより選ばれたいずれかを含有する酸化物または酸化窒化物からなるものを採用することが好ましい。また、絶縁体薄膜の材料としては、フッ化物、塩化物も好ましく、具体的には、LiF、BaF2、CaF2、MgF2、NaF等がある。
透明電極の層構成は、半導体薄膜および絶縁体薄膜のいずれか一方と金属薄膜とを含んで、半導体薄膜または絶縁体薄膜が有機物層に隣接するように積層されていれば特に制限はなく、例えば、半導体薄膜または絶縁体薄膜と金属薄膜とを積層した二層構造のもの、半導体薄膜または絶縁体薄膜からなる薄膜により金属薄膜を挟持した三層構造のもの、四層以上のもの等を挙げることができる。
このうち、透明電極が三層構造の場合、有機物層側からの積層順が次の(1)〜(4)のものを挙げることができる。
(1)半導体薄膜/金属薄膜/半導体薄膜
(2)絶縁体薄膜/金属薄膜/絶縁体薄膜
(3)半導体薄膜/金属薄膜/絶縁体薄膜
(4)絶縁体薄膜/金属薄膜/半導体薄膜
基板を光取り出し面とする場合には透明基板を用いる。
透明基板の種類は、目的とする有機EL素子の用途等に応じて適宜選択すればよく、有機発光層の発光(EL光)に対して高い透過性(概ね80%以上の透過率)を有する物質からなるものを用いることが好ましい。このような透明基板としては、アルカリガラスや無アルカリガラス等の透明ガラス、透明樹脂または石英等からなる板状物或いはフィルム状物等を採用できる。
前記透明樹脂としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化成樹脂を採用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニル、ポリアクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、非晶質ポリオレフィン、フッ素系樹脂等を挙げることができる。
このような防湿性無機酸化物膜は、透明樹脂以外の材料からなる基板に設けてもよく、この場合、防湿性無機酸化物膜は、透明電極用のアンダーコート層として利用することもできる。
一方、基板を光取り出し面としない場合、例えば、側面発光型の有機EL素子の場合には、上述した透明基板以外のものも基板として採用できる。
有機物層は、有機発光層を含む層構成であれば各種の層構成を採用できる。この有機物層の層構成に対応する有機EL素子の素子構成としては、例えば、基板上の積層順が下記のものを挙げることができる。
(1)陽極(透明電極)/有機発光層/陰極(対向電極)
(2)陽極陽極(透明電極)/正孔注入層/有機発光層/陰極(対向電極)
(3)陽極(透明電極)/有機発光層/電子注入層/陰極(対向電極)
(4)陽極(透明電極)/正孔注入層/有機発光層/電子注入層/陰極(対向電極) 上記(1)のタイプの有機EL素子では、有機発光層が有機物層に相当し、(2)では、正孔注入層および有機発光層が有機物層に相当し、(3)では、有機発光層および電子注入層が有機物層に相当し、(4)では、正孔注入層、有機発光層および電子注入層が有機物層に相当する。
有機発光層は、通常、一種もしくは複数種の有機発光材料により形成されるが、有機発光材料と電子注入材料および/または正孔注入材料との混合物や、当該混合物もしくは有機発光材料を分散させた高分子材料等により形成してもよい。
有機発光材料は、(a)電荷の注入機能、すなわち、電界印加時に、陽極或いは正孔注入層から正孔を注入することができるとともに、陰極或いは電子注入層から電子を注入することができる機能、(b)輸送機能、すなわち、注入された正孔および電子を電界の力で移動させる機能、(c)発光機能、すなわち、電子と正孔との再結合の場を提供してこれらを発光につなげる機能、の3つの機能を併せもつものであればよい。ここで、有機発光材料が、これらの(a)〜(c)の各機能のそれぞれについて十分な性能を併せもつことは必ずしも必要ではなく、例えば、正孔の注入輸送性が電子の注入輸送性よりも大きく優れているものの中にも有機発光材料として好適なものがある。
(R−Q)2−Al−O−L …(I)
(式中、Lは、フェニル部分を含んでなる炭素数6〜24の炭化水素を表し、O−Lはフェノラート配位子を表し、Qは置換8−キノリノラート配位子を表し、Rはアルミニウム原子に置換8−キノリノラート配位子が2個を上回って結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート環置換基を表す。)
その他、上述した有機発光材料をホストとし、当該ホストに青色から緑色までの強い蛍光色素、例えば、クマリン系或いは前記ホストと同様の蛍光色素をドープした化合物も、有機発光材料として好適である。有機発光材料として前記の化合物を用いた場合には、青色から緑色の発光(発光色はドーパントの種類によって異なる)を高効率で得ることができる。
このような化合物の材料であるホストの具体例としては、ジスチリルアリーレン骨格の有機発光材料(特に好ましくは、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル)が挙げられ、前記化合物の材料であるドーパントの具体例としては、ジフェニルアミノビニルアリレーン(特に好ましくは、例えば、N,N−ジフェニルアミノビフェニルベンゼン)や4,4’−ビス[2−[4−(N,N−ジ−p−トリル)フェニル]ビニル]ビフェニル)が挙げられる。
また、有機発光層は、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着されて形成された薄膜や、溶液状態または液相状態の材料化合物から固体化されて形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。
さらには、樹脂等の結着剤と有機発光材料とを溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、有機発光層を形成することができる。
このようにして形成される有機発光層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常5nm〜5μmの範囲が好ましい。
正孔注入層の材料(正孔注入材料)は、正孔の注入性或いは電子の障壁性を有しているものであればよく、例えば、従来より、電子感光体の正孔注入材料として用いられているものを適宜選択して用いることができ、正孔の移動度が10-5cm2 /V・s(電界強度104 〜105 V/cm)以上であるものが好ましい。なお、正孔注入材料は、有機物および無機物のいずれでもあってもよい。
このうち、正孔注入材料としては、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物またはスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、特に、芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
複層構造の正孔注入層を形成する場合、有機発光層と接する層は、正孔輸送性を有し、かつ、有機発光層と接しても非発光性の欠陥を生成しない化合物からなる層(以下、この層を正孔輸送層という)とすることが好ましい。なお、「非発光性の欠陥」とは、有機発光層と正孔輸送層とが相互作用して励起状態が消失することによるものであり、例えば、エキサイプレックスやCT(電荷移動錯体)等がある。
正孔輸送層の材料としては、前述した正孔注入材料の中から有機発光材料と接しても非発光性の欠陥を生成しない化合物を適宜選択して用いることができる。このような正孔輸送層を含む正孔注入層は、前述した正孔注入材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜化することで形成できる。正孔注入層全体としての膜厚は、特に制限されないが、通常は、5nm〜5μmである。
電子注入層の材料(以下、電子注入材料という)は、陰極から注入された電子を有機発光層に伝達する機能を有していればよく、一般には、電子親和力が、有機発光材料の電子親和力に比して大きく、かつ、陰極の仕事関数(陰極が多成分の場合には最小のもの)に比して小さいものが望ましい。
但し、エネルギーレベルの差が極端に大きいところは、そこに大きな電子注入障壁が存在することになるため好ましくない。このため、電子注入材料の電子親和力は、陰極の仕事関数或いは有機発光材料の電子親和力と同程度の大きさであることが好ましい。
また、電子注入材料は、有機物および無機物のいずれであってもよい。
このような電子注入層は、前述した電子注入材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜化することで形成できる。電子注入層の膜厚は、特に制限されないが、通常は、5nm〜5μmである。
陰極(対向電極)材料としては、仕事関数の小さい(例えば4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物等が好ましく用いられる。具体例としては、ナトリウム、ナトリウムーカリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウムと銀との合金または混合金属、アルミニウム、Al/Al2O3、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属等が挙げられる。
対向電極の膜厚は、材料にもよるが、通常10nm〜1μmの範囲内で適宜選択可能であり、その面抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。なお、陰極材料を選択する際に基準とする仕事関数の大きさは、4eVに限定されるものではない。
水分や酸素の侵入を防止するために設けられる封止層の材料としては、例えば、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、吸収率1%以上の吸水性物質および吸水率0.1%以下の防湿性物質、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、TiO2等の金属酸化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロポリエーテル等の液状フッ素化炭素および当該液状フッ素化炭素に水分や酸素を吸着する吸着剤を分散させたもの等が挙げられる。
封止層の材料として、液状フッ素化炭素や、当該液状フッ素化炭素に水分や酸素を吸着する吸着剤を分散させたものを用いる場合には、基板上に形成されている有機EL素子(既に別の封止層があってもよい)の外側に、当該有機EL素子との間に空隙を形成しつつ、基板と共同して有機EL素子を覆うハウジング材を設け、基板とハウジング材とによって形成された空間に、前述した封止層の材料を充填して封止層を形成することが好ましい。このハウジング材としては、吸水率の小さいガラスまたはポリマー(例えば三フッ化塩化エチレン)からなるものが好適に用いられる。ハウジング材を使用する場合には、上述した封止層を設けずに、ハウジング材のみを設けてもよいし、ハウジング材と基板とで形成された空間に、酸素や水を吸着する前記吸着剤の層を設けるか当該吸着剤からなる粒子を分散させてもよい。
本実施例1の有機EL素子は、下部電極/有機発光層(有機物層)/対向電極の素子構成において、下部電極を透明電極としたものである。
すなわち、厚さ1mmのガラス基板(25mm×75mm)上に、半導体薄膜として厚さ50nmのTiO2薄膜を製膜した。
続いて、このTiO2膜付きの基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄して、N2(窒素ガス)雰囲気中で乾燥させ、この後、UV(紫外線)とオゾンとを併用して30分間洗浄した。
そして、TiO2膜上に、先ず、金属薄膜として、Agを10nmの膜厚となるようにスパッタリングした。この後、Ag膜上に半導体薄膜として、TiO2を50nmの膜厚となるようにスパッタリングし、二層のTiO2膜の間にAg膜を介装した三層の積層体を透明電極とした。なお、TiO2は正孔伝導性を有する透明なものである。
そして、この有機発光層の上に、対向電極として、Al:Li合金を抵抗加熱により200nmの厚さに蒸着した。本実施例1では、この対向電極を陰極とし、本実施例1の有機EL素子を得た。
本実施例2の有機EL素子は、前記実施例1の有機EL素子の半導体薄膜をZnSe膜としたものである。なお、ZnSeは、黄みがかった透明なものであり、正孔伝導性を有する。
すなわち、本実施例2では、前記実施例1において、半導体薄膜の材料としてセレン化物であるZnSeを用い、透明電極を構成する二層の半導体薄膜を蒸着法により製膜した。具体的には、基板上にZnSeを蒸着し、このZnSe膜上にAgをスパッタリングして、このAg膜上に再びZnSeを蒸着した。
このとき、透明電極を構成する各層の膜厚は、基板側からZnSe/Ag/ZnSeの順に30nm、10nm、20nmとした。
本実施例3では、前記実施例1において、半導体薄膜として酸化物であるIn−Zn−Mg−O膜を採用した以外は、前記実施例1と同様にして有機EL素子を得た。なお、In−Zn−Mg−Oは、正孔伝導性を有する透明なものである。
すなわち、基板上にIn−Zn−Mg−Oをスパッタリングして、この膜上にAg膜(金属薄膜)を製膜し、このAg膜上に再びIn−Zn−Mg−Oをスパッタリングすることにより、透明電極を形成した。
スパッタリングにあたっては、In、ZnおよびMgに対するInの原子数比を0.57〜0.60の範囲内とした。また、In、ZnおよびMgに対するMgの原子数比を0.1〜0.23の範囲内とした。その他のスパッタリング条件は、実施例1と同様である。
本実施例4では、前記実施例1において、半導体薄膜として酸化物であるIn−Zn−Yb−O膜を採用した以外は、前記実施例1と同様にして有機EL素子を得た。なお、In−Zn−Yb−Oは、正孔伝導性を有する透明なものである。
すなわち、前記実施例1において、基板上にIn−Zn−Yb−Oをスパッタリングして、この膜上にAg膜(金属薄膜)を製膜し、このAg膜上に再びIn−Zn−Yb−Oをスパッタリングすることにより、透明電極を構成する二層の半導体薄膜をそれぞれ製膜した。
スパッタリングにあたっては、In、ZnおよびYbに対するInの原子数比を0.57〜0.60の範囲内とした。また、In、ZnおよびYbに対するYbの原子数比を0.1〜0.23の範囲内とした。その他のスパッタリング条件は、実施例1と同様である。
本実施例5では、前記実施例1において、二層の半導体薄膜に代えて絶縁体薄膜を採用し、これらの絶縁体薄膜を、フッ化物であるMgF2をスパッタリングすることにより製膜したことと、対向電極をAuとしたこと以外は、前記実施例1と同様にして有機EL素子を得た。
すなわち、前記実施例1において、基板上にMgF2をスパッタリングして、この膜上にAg膜(金属薄膜)を製膜し、このAg膜上に再びMgF2をスパッタリングすることにより、透明電極を構成する二層の絶縁体薄膜をそれぞれ製膜した。透明電極を構成する各層の膜厚は、基板側からMgF2/Ag/MgF2の順に、50nm、10nm、5nmとした。
続いて、MgF2膜上に有機発光層(Alq膜)を製膜した後、この有機発光層上にAuを蒸着して陽極とした。
本実施例6では、前記実施例5において、二層の絶縁体薄膜を、フッ化物であるLiFを蒸着することにより製膜した以外は、前記実施例5と同様にして有機EL素子を得た。
前記実施例1〜4で得られた有機EL素子について、半導体薄膜のバンドギャップエネルギー、比抵抗、結晶状態、素子の発光効率および半減寿命を評価した。また、前記実施例5,6で得られた有機EL素子については、絶縁体薄膜のバンドギャップエネルギー、素子の発光効率および半減寿命を評価した。
その結果を表1に示す。
半導体薄膜の結晶状態は、X線回折、電子線回折、SEM(電子顕微鏡)を用いて観察した。
発光効率および半減寿命は、有機EL素子に7.5Vの電圧を印加し、定電圧駆動して測定した。ここで、半減寿命とは、輝度が初期輝度の半値になるまでに要する時間をいう。なお、実施例1の有機EL素子を6Vの電圧で駆動したときの初期輝度は100cd/m2であり、発光効率は0.90lm/Wであった。
2 基板
10 透明電極
20 対向電極
30 有機物層
Claims (10)
- 透明電極と、この透明電極に対向する対向電極と、当該透明電極および対向電極の間に挟持された有機物層とを備え、この有機物層が、有機発光材料を含有する有機発光層を含んで構成されている有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記透明電極は、半導体薄膜および絶縁体薄膜の少なくともいずれか一方と、金属薄膜との積層体よりなり、
前記半導体薄膜および絶縁体薄膜は、キャリア濃度が1020cm-3未満であるとともにエネルギーギャップが2.7eV以上であり、
これらの半導体薄膜および絶縁体薄膜のいずれかが前記有機物層に隣接していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項1に記載した有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記透明電極の面抵抗値は、0.5Ω/□〜10Ω/□の範囲とされていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項1または請求項2に記載した有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記金属薄膜の膜厚は、0.5〜30nmの範囲とされていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項3に記載した有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記金属薄膜の膜厚は、1〜9nmの範囲とされていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載した有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記金属薄膜は、Ag、Pd、Au、Cu、Ptおよびこれらを含有する合金より選ばれたいずれかからなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項1から請求項5のいずれかに記載した有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記半導体薄膜および絶縁体薄膜は、酸化物、酸化窒化物、硫化物およびセレン化物のうちのいずれかを用いて構成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項6に記載した有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記半導体薄膜は、酸化物、硫化物およびセレン化物のうちのいずれかよりなり、かつ、Ti、In、Sn、Mg、Zn、AlおよびGaより選ばれたいずれかを含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項6または請求項7に記載した有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記絶縁体薄膜は、Mg、Ca、Ba、Sr、Li、Na、KおよびRbより選ばれたいずれかを含有する酸化物からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項1から請求項8のいずれかに記載した有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記透明電極は、前記有機物層側から、半導体薄膜/金属薄膜/半導体薄膜、絶縁体薄膜/金属薄膜/絶縁体薄膜、半導体薄膜/金属薄膜/絶縁体薄膜、絶縁体薄膜/金属薄膜/半導体薄膜のいずれかの順で積層した積層体よりなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項1から請求項9のいずれかに記載した有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記絶縁体薄膜の膜厚は、0.1〜30nmの範囲とされていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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