JP2006123275A - 液体移送装置及び液体移送装置の製造方法 - Google Patents

液体移送装置及び液体移送装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐久性に優れ、さらに、駆動効率がより向上した圧電アクチュエータを備えた液体移送装置、及び、このような液体移送装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】 圧力室14の径方向の長さをW、駆動電圧が印加される個別電極32の、圧力室14の縁部の径方向一方側部分と重なる領域に形成される部分の径方向の長さをAとしたときに、個別電極32の径方向長さAは、A/(W/2)の値と、個別電極32に駆動電圧が印加されたときの振動板30の変形量との関係に基づいて、振動板30の変形量が大きくなるように決定されている。
【選択図】 図5

Description

本発明は、液体を移送する液体移送装置及び液体移送装置の製造方法に関する。
液体に圧力を付与して所定の位置へ移送する液体移送装置としては種々のものがあるが、例えば、インクをノズルへ移送して、このノズルから記録用紙等の被噴射体に対して吐出するインクジェットヘッドが知られている。その中でも、例えば、特許文献1に記載のインクジェットヘッドは、ノズルに連通し且つ一方向に細長い形状を有する圧力室が複数形成された流路ユニット(キャビティプレート)と、圧力室の容積を変化させることにより、圧力室内のインクにノズルから吐出させるための圧力を付与する圧電アクチュエータとを備えている。
さらに、このインクジェットヘッドの圧電アクチュエータは、圧力室を覆うように配設された、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる複数枚の圧電シートと、これら複数枚の圧電シートの間に交互に配置された、個別電極(駆動電極)及び共通電極(コモン電極)とを有する。個別電極と共通電極は、圧電シートの面に直交する方向から見て圧力室と重なる領域において、圧力室の周縁に沿うように環状に形成されている。そして、この圧電アクチュエータは、圧力室の容積を一旦増加させて圧力室内にインクを引き込んだ後、圧力室の容積を減少させることによりインクに大きな圧力を付与する、いわゆる、引き打ちが可能に構成されている。
即ち、共通電極がグランド電位に保持された状態で、個別電極に駆動電圧が印加されると、個別電極と共通電極との間に挟まれた、圧力室の周縁に沿った環状である圧電シートの部分がその面に平行な方向に縮む。その結果、複数枚の圧電シートが圧力室と反対側に凸となるように変形し、圧力室内の容積が増加して、圧力室内に圧力波が発生する。さらに、この圧力波が圧力室内で正に転じるタイミングで、個別電極への駆動電圧の印加が停止されると、複数枚の圧電シートが元の形状に戻って圧力室内の容積が減少するが、このとき、前述の圧力室の容積増大に伴う圧力波と、圧電シートの復元に伴い生じる圧力波とが合成されて、インクに大きな圧力が付与される。そのため、このインクジェットヘッドの圧電アクチュエータは、比較的低い駆動電圧でインクに大きな圧力を付与することができ、圧電アクチュエータの駆動効率が高くなる。また、インクを吐出するタイミングにおいてのみ個別電極に駆動電圧を印加して圧電層に電界を作用させるように構成されており、インクの吐出タイミング以外では圧電層に電界が付与されず、圧電層に分極劣化が生じにくいため、アクチュエータの耐久性も高い。
特開2004−166463号公報
前述のように、前記特許文献1のインクジェットヘッドでは、個別電極と共通電極が、平面視で圧力室と重なる領域において、圧力室の周縁に沿うように環状に形成されている。ここで、圧電アクチュエータは、低い駆動電圧で圧電シートを大きく変形させるように構成されていることがエネルギー効率の面から好ましいが、圧電シートの変形量の大小は、電界が作用して変形する圧電層の駆動部の寸法、即ち、駆動電圧が印加される個別電極の寸法に大きく左右される。そのため、圧電シートの変形量がより大きくなるように、個別電極の寸法が決定されていることが望ましい。
本発明の目的は、耐久性に優れ、さらに、駆動効率がより向上した圧電アクチュエータを備えた液体移送装置、及び、このような液体移送装置の製造方法を提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
第1の発明の液体移送装置は、それぞれが平面に沿って配置された複数の圧力室を有する流路ユニットと、これら複数の圧力室内の容積を選択的に変化させて圧力室内の液体に圧力を付与する圧電アクチュエータとを有する液体移送装置であって、前記圧電アクチュエータは、前記流路ユニットに接合されて前記複数の圧力室を覆う振動板と、前記振動板の前記複数の圧力室と反対側に配置され、前記平面に直交する方向から見て、前記複数の圧力室と全面的に重なるように形成された圧電層と、この圧電層の一方の面側において、前記平面と直交する方向から見て、少なくとも前記複数の圧力室の中央部を除いた領域である縁部と重なる領域に夫々形成された複数の個別電極と、前記圧電層の他方の面側に形成された共通電極とを有し、前記圧力室の径方向の長さをW、前記個別電極の、前記圧力室の前記縁部の前記径方向一方側部分と重なる領域に形成された部分の前記径方向の長さをAとしたときに、A/(W/2)の値が、0.33以上で、0.75以下であることを特徴とするものである。
この液体移送装置において、圧電アクチュエータの個別電極は、圧力室の縁部と重なる領域に配置されている。そのため、個別電極に駆動電圧が印加されると、個別電極と共通電極との間に挟まれた、圧力室の縁部に沿う圧電層の部分がその面に平行な方向に縮む。その結果、振動板と圧電層が圧力室の中央部と重なる部分を頂点として圧力室と反対側に凸となるように変形することになり、圧力室の容積が増加して、圧力室内に圧力波が発生する。さらに、この圧力波が圧力室内で正に転じるタイミングで、個別電極への駆動電圧の印加が停止されると、振動板が元の形状に戻って圧力室内の容積が減少するが、前述の圧力室の容積増大に伴う圧力波と、振動板の復元に伴い生じる圧力波とが合成され、圧力室内の液体に大きな圧力が付与される。従って、比較的低い駆動電圧で液体に高い圧力を付与することが可能になり、圧電アクチュエータの駆動効率が高くなる。また、液体を移送するタイミングにおいてのみ個別電極が駆動電圧を印加されて圧電層に電界が作用するため、圧電層に分極劣化が生じにくく、耐久性に優れる。
さらに、圧力室の径方向長さ(圧力室の面積中心を通る直線の方向の長さ)をW、個別電極の、圧力室の縁部の径方向一方側部分と重なる部分の、径方向長さをAとしたときに、A/(W/2)の値が0.33以上で、0.75以下の範囲内に収まっていると、圧電層の変形量のばらつきを極力小さくしつつ、圧電層をより大きく変形させることが可能になり、圧電アクチュエータの駆動効率が向上する。
さらに、この第1の発明において、前記A/(W/2)の値が、0.41以上で、0.69以下であることが好ましい(第2の発明)。さらに、この第2の発明において、前記A/(W/2)の値が、0.41以上で、0.55以下であることがより好ましい(第3の発明)。このように、第2の発明におけるA/(W/2)の値の範囲内で、個別電極の径方向長さAが小さくなっていると、圧電層の変形量を大きくしつつも、個別電極と共通電極との間の圧電層に生じる静電容量を小さくすることができるため、圧電アクチュエータの消費電力が小さくなる。
第4の発明の液体移送装置は、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記複数の圧力室は、夫々所定の一方向に長い形状を有し、前記複数の個別電極は、前記複数の圧力室の前記縁部と重なる領域のうち、少なくとも、前記所定の一方向にほぼ平行に延びる2つの領域に夫々形成されていることを特徴とするものである。圧力室が所定の一方向に長い形状を有する場合には、圧力室の長手方向(前記所定の一方向)と交差する方向の個別電極の長さが圧電層の変形量に大きく影響する。そのため、圧力室の縁部と重なる領域のうち、少なくとも、圧力室の長手方向に延びる2つの領域に形成された個別電極の、前記所定の一方向と交差する方向(第1の発明における径方向に相当する)の長さAを、圧電層の変形量が大きくなるような最適な値にすることにより、圧電アクチュエータの駆動効率を確実に向上させることができる。
これら第1〜第4の何れかの発明において、さらに、前記振動板は金属材料からなり、前記共通電極を兼ねていてもよい(第5の発明)。この場合には、振動板とは別に共通電極を設ける必要がない。または、前記振動板は、少なくとも前記圧力室と反対側の面において絶縁性を有し、この振動板の前記圧力室と反対側の面に前記共通電極が形成されていてもよい(第6の発明)。あるいは、前記振動板は、少なくとも前記圧力室と反対側の面において絶縁性を有し、この振動板の前記圧力室と反対側の面に前記複数の個別電極が形成されていてもよい(第7の発明)。
第8の発明の液体移送装置の製造方法は、それぞれが平面に沿って配置された複数の圧力室を有する流路ユニットと、前記複数の圧力室を覆う振動板、この振動板の圧力室と反対側に配置された圧電層、この圧電層の一方の面側において、前記平面と直交する方向から見て、前記複数の圧力室の中央部を除いた領域である縁部と重なる領域に夫々形成された複数の個別電極、及び、前記圧電層の他方の面側に形成された共通電極を備えた圧電アクチュエータを有する液体移送装置の製造方法であって、前記圧力室の径方向の長さをW、前記個別電極の、前記圧力室の前記縁部の前記径方向一方側部分と重なる領域に形成される部分の前記径方向の長さをAとしたときの、A/(W/2)の値と、前記個別電極に電圧が印加されたときの前記振動板の変形量との関係に基づいて、前記個別電極の前記径方向の長さAを決定する電極長さ決定工程と、この電極長さ決定工程で決定された径方向長さAを有する個別電極を形成する個別電極形成工程とを備えたことを特徴とするものである。
電極長さ決定工程において、個別電極の、圧力室の縁部の径方向一方側部分と重なる領域に形成される部分の径方向の長さAと圧力室の径方向長さの半分(W/2)の比である、A/(W/2)の値と、個別電極に駆動電圧が印加されたときの振動板の変形量との関係に基づいて、個別電極の径方向長さAを、振動板の変形量が大きくなるような最適な値に決定し、個別電極形成工程において、決定された長さAを有する個別電極を形成するため、振動板をより効率よく変形させることが可能になり、圧電アクチュエータの効率が向上する。
第9の発明の液体移送装置の製造方法は、前記第8の発明において、前記圧電層を複数の圧力室を全面的に覆うように形成する圧電層形成工程を備えたことを特徴とするものである。圧電層が複数の圧力室を全面的に覆うように形成されている場合には、圧力室と重なる領域においては、振動板及び圧電層の剛性のばらつきが小さく、ほぼ均一になるため、振動板や圧電層の厚さ等の条件が変形しても、個別電極の径方向の長さAに対する振動板の変形量の傾向は変わらない。即ち、個別電極に電圧が印加されたときの振動板の変形量が大きくなるような、個別電極の径方向の長さAの最適な値は、振動板や圧電層の厚さ等の、圧力室の径方向長さW以外の他の条件に依存しないため、個別電極の径方向長さAの最適値を決定することが容易になる。
第10の発明の液体移送装置の製造方法は、前記第8の発明において、前記振動板の厚さを測定する振動板厚さ測定工程と、前記振動板の前記圧力室と反対側の面において、前記平面と直交する方向から見て、前記複数の圧力室の中央部と夫々重なる位置に複数の開口部が形成されるように、前記圧電層を、前記複数の圧力室の前記縁部と夫々重なる領域に形成する圧電層形成工程と、前記圧電層の厚さを測定する圧電層厚さ測定工程と、前記平面と直交する方向から見て、前記圧力室に重なり且つ前記圧電層が部分的に形成されていない領域である、前記開口部の前記径方向の長さを測定する開口長さ測定工程とを備え、前記電極長さ決定工程において、前記振動板の厚さ、前記圧電層の厚さ、及び、前記開口部の前記径方向の長さに基づいて、前記A/(W/2)の値と前記個別電極に電圧が印加されたときの前記振動板の変形量との関係を決定し、この決定された関係に基づいて前記個別電極の前記径方向の長さAを決定することを特徴とするものである。
個別電極が配置されない圧力室の中央部と重なる部分に、圧電層が形成されない場合には、圧電アクチュエータの剛性が、圧力室の中央部と重なる領域と、縁部と重なる領域とで異なることになる。そのため、A/(W/2)の値と、個別電極に電圧が印加されたときの振動板の変形量との関係は、振動板の厚さ、圧電層の厚さ、及び、開口部の径方向長さに夫々依存する。そこで、この第11の発明においては、振動板の厚さ、圧電層の厚さ、及び、開口部の幅を測定して、これらの測定結果に基づいてA/(W/2)の値と、個別電極に電圧が印加されたときの振動板の変形量との関係を定めるため、振動板の変形量が大きくなるような、Aの値を適切に決定することができる。
本発明の第1実施形態について説明する。この第1実施形態はノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドに本発明を適用した一例である。
まず、インクジェットヘッド1を備えたインクジェットプリンタ100について簡単に説明する。図1に示すように、インクジェットプリンタ100は、図1の左右方向に移動可能なキャリッジ101と、このキャリッジ101に設けられて記録用紙Pに対してインクを吐出するシリアル式のインクジェットヘッド1(液体移送装置)と、記録用紙Pを図1の前方へ搬送する搬送ローラ102等を備えている。インクジェットヘッド1は、キャリッジ101と一体的に左右方向(走査方向)へ移動して、その下面のインク吐出面に形成されたノズル20(図2〜図5参照)の出射口から記録用紙Pに対してインクを吐出する。そして、インクジェットヘッド1により記録された記録用紙Pは、搬送ローラ102により前方(紙送り方向)へ排出される。
次に、インクジェットヘッド1について説明する。図2〜図5に示すように、インクジェットヘッド1は、内部にインク流路が形成された流路ユニット2と、この流路ユニット2の上面に配置された圧電アクチュエータ3とを有する。
まず、流路ユニット2について説明する。流路ユニット2はキャビティプレート10、ベースプレート11、マニホールドプレート12、及びノズルプレート13を備えており、これら4枚のプレート10〜13が積層状態で接合されている。このうち、キャビティプレート10、ベースプレート11及びマニホールドプレート12は略矩形のステンレス鋼製の板である。そのため、これら3枚のプレート10〜12に、後述するマニホールド17や圧力室14等のインク流路をエッチングにより容易に形成することができるようになっている。また、ノズルプレート13は、例えば、ポリイミド等の高分子合成樹脂材料により形成され、マニホールドプレート12の下面に接着される。あるいは、このノズルプレート13も、3枚のプレート10〜12と同様にステンレス鋼等の金属材料で形成されていてもよい。
図2、図3に示すように、キャビティプレート10には、平面に沿って配列された複数の圧力室14が形成されている。これら複数の圧力室14は上方へ開口しており、複数の圧力室14はキャビティプレート10の上面に接合される後述の振動板30により覆われている。各圧力室14は、平面視、即ち、圧力室14が形成された平面に直交する方向から見て、走査方向(図2の左右方向)に長い、略長円形状に形成されている。
ベースプレート11の平面視で圧力室14の長手方向両端部に重なる位置には、夫々連通孔15,16が形成されている。また、マニホールドプレート12には、紙送り方向(図2の上下方向)に2列に延び、平面視で圧力室14の連通孔15側の部分(図2における圧力室14の右側部分)と重なるマニホールド17が形成されている。このマニホールド17には、キャビティプレート10に形成されたインク供給口18を介してインクタンク(図示省略)からインクが供給される。また、平面視で圧力室14のマニホールド17と反対側の端部(図2における圧力室14の左側部分)と重なる位置には、連通孔16に連なる連通孔19も形成されている。さらに、ノズルプレート13には、平面視で複数の圧力室14の図2の左端部に重なる位置に、複数のノズル20が夫々形成されている。ノズル20は、例えば、ポリイミド等の高分子合成樹脂の基板にエキシマレーザー加工を施すことにより形成される。
そして、図4に示すように、マニホールド17は連通孔15を介して圧力室14に連通し、さらに、圧力室14は、連通孔16,19を介してノズル20に連通している。このように、流路ユニット2内には、マニホールド17から圧力室14を経てノズル20に至る個別インク流路21が形成されている。
次に、圧電アクチュエータ3について説明する。
図2〜図5に示すように、圧電アクチュエータ3は、流路ユニット2の表面に配置された導電性を有する振動板30と、この振動板30の上面(圧力室14と反対側の面)に形成された圧電層31と、この圧電層31の上面において、複数の圧力室14に夫々対応して形成された複数の個別電極32とを備えている。
振動板30は、金属材料(例えば、ステンレス鋼等の鉄系合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、あるいは、チタン合金等)からなる、平面視で略矩形状の板であり、この振動板30は、複数の圧力室14を覆うようにキャビティプレート10に接合されている。また、この振動板30は、複数の個別電極32と対向して個別電極32と振動板30との間の圧電層31に電界を作用させる共通電極を兼ねており、振動板30は常にグランド電位に保持された状態となっている。
圧電層31は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなり、振動板30の上面において、複数の圧力室14を全面的に覆うように形成されている。この圧電層31は、例えば、圧電材料の粒子を層形成面に噴射して堆積させるエアロゾルデポジション法(AD法)により形成することができる。また、スパッタ法、CVD(化学蒸着)法、ゾル・ゲル法、水熱合成法等の、他の既知の方法で圧電層31を形成することもできる。あるいは、PZTのグリーンシートを焼成することにより生成された圧電シートを所定の大きさに切断し、この切断された圧電シートを振動板30に貼り付けることにより圧電層31を形成してもよい。
個別電極32は、走査方向(図2の左右方向)に長く、且つ、その中央部に穴32aが形成された環状の形状を有する。そして、この個別電極32は、平面視で穴32aが圧力室14の中央部と重なるように、圧力室14の中央部以外の縁部と重なる領域において圧力室14の中央部を取り囲むように形成されている。尚、個別電極32は、導電性材料(例えば、金、銅、銀、パラジウム、白金、あるいは、チタン等)で形成されている。また、複数の個別電極32の図2における右端部からは、夫々複数の端子部35が走査方向に延びている。そして、これら複数の端子部35には、フレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit:FPC)等の可撓性を有する配線部材(図示省略)を介して、ドライバIC(図示省略)が接続されており、このドライバICから複数の端子部35を介して複数の個別電極32に対して選択的に駆動電圧が印加される。尚、個別電極32及び端子部35は、スクリーン印刷、スパッタ法、あるいは、蒸着法等により形成することができる。
次に、インク吐出時における圧電アクチュエータ3の作用について説明する。
複数の個別電極32に対してドライバICから選択的に駆動電圧が印加されると、駆動電圧が印加された圧電層31上側の個別電極32とグランド電位に保持されている圧電層31下側の共通電極としての振動板30の電位が異なる状態となり、個別電極32と振動板30の間に挟まれた圧電層31の部分に上下方向の電界が与えられる。すると、駆動電圧が印加された個別電極32の直下の圧電層31の部分が、分極方向である厚み方向に伸びて、分極方向と直交する、面と平行な方向に収縮する。
ここで、前述したように、個別電極32は、平面視で、圧電層31の圧力室14の縁部と重なる領域に形成されているため、図6に示すように、圧電アクチュエータ3の、圧力室14の縁部と重なる領域が、圧電層31が自発的に変形する駆動領域A1となり、圧力室14の中央部と重なる領域が、駆動領域A1の圧電層31の変形に伴って変形する従動領域A2となる。また、圧力室14の外側の、振動板30がキャビティプレート10に接合された領域は、振動板30の変形が拘束された被拘束領域A3となる。そして、個別電極32に駆動電圧が印加されたときには、図6における両側に位置する駆動領域A1の圧電層31は面と平行な方向に収縮する一方で、振動板30は収縮しないことから、駆動領域A1の間に挟まれた従動領域A2の圧電層31及び振動板30が変形し、振動板30は従動領域A2の中央を頂点として圧力室14と反対側に凸となるように変形する。すると、圧力室14内の容積が増大して、圧力室14内に圧力波が発生する。
ここで、従来から知られているように、この圧力室14の容積増大に伴う圧力波が圧力室14の長手方向に片道伝搬する時間が経過したときに、圧力室14内の圧力は正に転じる。そこで、ドライバICは、この圧力室14内の圧力が正に転じるタイミングで、個別電極32への駆動電圧の印加を停止する。すると、個別電極32の電位がグランド電位になり、振動板30が元の形状に戻って圧力室14内の容積が減少するが、このとき、前述の圧力室14の容積増大に伴う圧力波と、振動板30の復元に伴い生じる圧力波とが合成されるため、圧力室14内のインクに大きな圧力が付与されて、インクがノズル20から吐出される。このように、いわゆる引き打ちを行うことにより、低い駆動電圧でインクに高い圧力を付与することが可能になり、圧電アクチュエータ3の駆動効率が高くなる。また、インクを吐出するタイミングにおいてのみ個別電極32に駆動電圧を印加して圧電層31に電界を作用させるため、圧電層31に分極劣化が生じにくく、耐久性に優れる。
ところで、この圧電アクチュエータ3は、低い駆動電圧で、圧電層31(振動板30)を大きく変形させるように構成されていることが、駆動効率の面から好ましいが、振動板30の変形量の大小は、駆動電圧が印加されて圧電層31に電界を作用させる、個別電極32の寸法に左右される。具体的には、圧力室14の縁部と重なる個別電極32の部分の、径方向(圧力室14の面積中心を通る直線の方向)の長さに大きく影響される。そこで、本実施形態の圧電アクチュエータ3においては、このような個別電極32の径方向長さとして、圧力室14の長手方向と直交する方向である幅方向一方側の幅方向長さA(図3、図5参照、以下、単に幅という)が採用され、この個別電極32の幅Aが、振動板30の変形量が大きくなるような最適な値に設定される。
この個別電極32の幅Aを決定する手法について説明する。まず、圧力室14の幅方向長さ(図3、図5参照、以下、単に幅という)をWとしたときに、個別電極32の幅Aの値を変化させたときの、振動板30の最大変位量(圧力室14の面積中心に対向する位置の上方への変位量)の変化を、有限要素法(Finite Element Method:FEM)等による構造解析や実験などにより求める。例えば、圧力室14の幅Wを419μm、ステンレス鋼製の振動板30の厚さTvを20μm、PZTからなる圧電層31の厚さTpを10μm、個別電極32に印加される駆動電圧を20Vとして、FEMによる構造解析を行った場合の、個別電極32の幅Aと圧力室14の幅Wの半分の(W/2)との比である、A/(W/2)の値と、振動板30の最大変位量(単位:nm)との関係は、図7のようになる。
ここで、図5に示すように、圧電層31は、振動板30の上面において、圧力室14を全面的に覆うように形成されているため、圧力室14に対向する領域内で、圧電アクチュエータ3の剛性のばらつきは小さく、ほぼ均一である。そのため、振動板30及び圧電層31の厚さやその弾性係数、あるいは、駆動電圧の大きさ等の条件が変わると、振動板30の最大変位量の値自体は変化するが、個別電極32の幅Aに対する振動板30の最大変位量の変化の傾向は変わらない。例えば、図7のグラフにおいて、振動板30の最大変位量がピークとなるときの、A/(W/2)の値は、振動板30及び圧電層31の厚さや、駆動電圧の大きさ等の他の条件には依存しない。ここで、振動板30の最大変位量が大きい方が、同じ駆動電圧で圧力室14内のインクにより大きな圧力を付与することができることから、最適なA/(W/2)の値は、振動板30の最大変位量がそのピークとなる値(0.55)となり、個別電極32の幅Aの最適値が容易に決定される。
ところで、製造誤差により、圧電層31の上面に実際に形成された個別電極32の幅Aは、前述の最適値からずれることもあり、その場合には、振動板30の最大変位量が圧力室14ごとにばらついてしまうことになる。そして、振動板30の最大変位量のばらつきに起因して、複数のノズル20から吐出されるインクの液滴速度にもばらつきが生じ、このインクの液滴速度が大きくばらつくと印字品質が低下してしまう。ここで、振動板30の変位量とノズル20から吐出されるインクの液滴速度との間には、ある経験則が存在することがわかっている。この経験則は、図8に示すように、振動板30の変位量が7.5%減少すると、液滴速度が1m/s減少するというものである。尚、異なる種類の圧電アクチュエータ3では、図8における曲線a及び曲線bのように、振動板30の変位量と液滴速度の関係を示す曲線は異なるものの、この経験則自体は、どのような圧電アクチュエータ3においても成立する。そこで、個別電極32の幅Aの値が最適値からずれた場合に、許容されるAの範囲は、例えば、次のようにして決定される。
良好な印字品質を保つためには、液滴速度のばらつきを、少なくとも2m/s以内に抑えることが好ましい。そのためには、図8の関係から、振動板30の最大変位量のばらつきを15%以内に抑えることが必要になる。従って、振動板30の最大変位量を極力大きくするとともに、個別電極32の幅Aの公差を広くとることができるように、A/(W/2)の値は、最大変位量がピークの値となるときの値である0.55を挟んで、そのピークの値に対して最大変位量が−15%となる範囲内、即ち、図7の関係から、0.33以上で、0.75以下に収まっていることが好ましい。
また、より高い印字品質を保つために、液滴速度のばらつきを1m/s以内に抑えることが必要な場合もある。この場合には、A/(W/2)の値は、最大変位量がピークの値となるときの値である0.55を挟んで、そのピークの値に対して最大変位量が−7.5%となる範囲内、即ち、図7の関係から、0.41以上で、0.69以下に収まっていることが好ましい。
さらに、個別電極32の幅Aの値が小さい場合には、Aの値が大きい場合よりも、個別電極32と振動板30との間に挟まれる圧電層31に生じる静電容量が小さくなるため、圧電アクチュエータ3の消費電力が小さくなる。そのため、A/(W/2)の値は、0.41以上で、最大変位量がピークとなる0.55以下に収まっていることがより好ましい。
次に、インクジェットヘッド1の製造方法について説明する。
まず、図9(a)に示すように、圧力室14やマニホールド17等となる穴が形成された、キャビティプレート10、ベースプレート11及びマニホールドプレート12と、振動板30の、4枚の金属プレートを一括して接合する。また、図9(b)に示すように、振動板30の上面に、圧電層31を、AD法等により、複数の圧力室14を覆うように形成する(圧電層形成工程)。
次に、図7に示す、A/(W/2)の値と、個別電極32に電圧が印加されたときの振動板30の変形量(最大変位量)との関係に基づいて、振動板30の最大変位量がピークの値(つまり、A/(W/2)の値が0.55)となるように、個別電極32の幅Aの値を決定する(電極長さ決定工程)。そして、図9(c)に示すように、この決定されたAの値を有する個別電極32を、圧電層31の上面の、圧力室14の縁部と重なる領域に、スクリーン印刷等により形成する(個別電極形成工程)。このとき、個別電極32に連なる端子部35も同時に形成する。最後に、図9(d)に示すように、ノズルプレート13をマニホールドプレート12の下面に接着して、インクジェットヘッド1の製造を完了する。
尚、個別電極32の幅Aは、キャビティプレート10、ベースプレート11、マニホールドプレート12、及び、振動板30の、4枚の金属プレートを接合する前に、図7の関係に基づいて決定してもよい。
また、ノズルプレート13が金属プレートである場合には、このノズルプレート13も、他の4枚の金属プレート(キャビティプレート10、ベースプレート11、マニホールドプレート12、及び、振動板30)と同時に接合するようにしてもよい。
以上説明した第1実施形態のインクジェットヘッド1及びその製造方法によれば、次のような効果が得られる。
個別電極32は、圧力室14の中央部以外の領域である縁部と重なる領域に形成されており、インクを吐出するタイミングにおいてのみ個別電極32に駆動電圧を印加することにより、引き打ちを実現することができる。従って、圧電アクチュエータ3の駆動効率が高くなり、また、耐久性に優れる。さらに、個別電極32の幅Aは、液滴速度のばらつきを抑えて良好な印字品質を保つことのできる範囲内で、振動板30の最大変位量が極力大きくなるような値となっているため、圧電アクチュエータ3の駆動効率がより高くなる。
次に、前記第1実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]振動板が、絶縁材料(例えば、表面が酸化されたシリコン材料、圧電層31と同じ材料であるPZTや、アルミナ、ジルコニア等のセラミックス材料、あるいは、ポリイミド等の合成樹脂材料など)からなるものであってもよい(変更形態1)。但し、この場合には、図10に示すように、圧電アクチュエータ3Aにおいて、絶縁性の振動板30Aの、圧力室14と反対側の面に、個別電極32と対向してその間の圧電層31に電界を生じさせるための、共通電極34が必要になる。
2]前記第1実施形態では、圧電層31の振動板30と反対側に個別電極が形成されているが、圧電層31の振動板30側に個別電極が配置され、圧電層31の振動板30と反対側に共通電極34が配置されていてもよい。但し、振動板が金属材料からなる場合には、図11に示すように、圧電アクチュエータ3Bにおいて、複数の個別電極32Bの間を絶縁するために、金属製の振動板30の上面(圧力室14と反対側の面)には絶縁材料層40が形成されるなどして、個別電極32Bが配置される振動板30の面が絶縁性を有する必要がある(変更形態2)。この絶縁材料層40は、例えば、アルミナ、ジルコニア等のセラミックス材料で、AD法、スパッタ法、CVD法、あるいは、ゾル・ゲル法等により形成することができる。一方、振動板が、シリコン材料、圧電層31と同じ材料であるPZTや、アルミナ、ジルコニア等のセラミックス材料、あるいは、合成樹脂材料等の絶縁材料からなる場合には、図12に示すように、圧電アクチュエータ3Cにおいて、振動板30Cの上面に直接個別電極32が配置されていればよく、絶縁性を有する振動板30Cにより複数の個別電極32の間が絶縁される(変更形態3)。
3]前記第1実施形態のように、個別電極32が圧力室14の中央部を取り囲む環状に形成されている必要は必ずしもなく、例えば、図13に示すように、個別電極32Dが圧力室14の中央部を完全に取り囲んでいなくてもよい(変更形態4)。尚、ここで、圧力室14の縁部と重なる領域のうち、少なくとも、圧力室14の長手方向(図13の左右方向)にほぼ平行に延びる2つの領域50に個別電極32Dが形成されていることが、振動板30の変形量を大きくする点で好ましい。この場合、前記第1実施形態と同様に、この領域50に形成された個別電極32Dの部分の幅Aの値が、振動板30の変形量が大きくなるような値に設定される。
4]圧力室の形状は、前記実施形態における略長円形状に限られるものではなく、圧力室が、円形、菱形、矩形等の他の形状に形成されたものであってもよい(変更形態5)。例えば、図14に示すように、圧力室が円形である場合には、個別電極32Eの径方向(圧力室14Eの面積中心Cを通る直線の方向)の長さの、径方向一方側の部分の長さAが、振動板30の最大変位量が大きくなるような最適な値に決定される。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態も本発明をインクジェットヘッドに適用したものであるが、圧電アクチュエータの構成が前記第1実施形態と少し異なる。尚、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
図15、図16に示すように、この第2実施形態のインクジェットヘッド61の圧電アクチュエータ63は、流路ユニット2の表面に配置された導電性を有する振動板30と、この振動板30の上面(圧力室14と反対側の面)に形成された圧電層71と、この圧電層71の上面において、複数の圧力室14に夫々対応して形成された複数の個別電極72とを備えている。
ここで、この第2実施形態の圧電アクチュエータ63においては、前記第1実施形態の圧電アクチュエータ3(図4〜図6参照)と異なり、振動板30の上面において、圧電層71が、平面視で複数の圧力室14の縁部と夫々重なる領域に形成されている。そして、一方、複数の圧力室14の中央部と夫々重なる領域には、圧電層71が部分的に形成されていない領域である開口部75が設けられている。
また、個別電極72は、前記第1実施形態と同様に、圧力室14の長手方向と直交する方向である幅方向(図16の左右方向)の長さが、振動板30の変形量(最大変位量)が大きくなるような最適な値に設定されている。
そして、前記第1実施形態と同様に、圧力室14の幅Wを419μm、ステンレス鋼製の振動板30の厚さTvを20μm、PZTからなる圧電層71の厚さTpを10μm、個別電極72に印加される駆動電圧を20Vとして、FEMによる構造解析を行った場合の、個別電極72の幅Aと圧力室14の幅の半分の(W/2)との比である、A/(W/2)の値と、振動板30の最大変位量との関係は、図17のようになる。従って、最適なA/(W/2)の値は、振動板30の最大変位量がピークとなる、0.44に設定され、この値から、個別電極32の幅Aの最適値が決定される。尚、この第2実施形態の圧電アクチュエータ63は、圧力室14の中央部と重なる圧電アクチュエータ63の従動領域が振動板30のみで構成されるため、従動領域の剛性が小さくなり、第1実施形態の圧電アクチュエータ3(図4〜図6参照)と比較して、振動板30の最大変位量は全体的に大きくなる。
ところで、製造誤差により、実際に形成された個別電極32の幅Aは、前述の最適値からずれることもあるが、その場合に、許容されるAの値の範囲は、例えば、以下のようにして決定される。液滴速度のばらつきを2m/sの範囲内に抑える場合には、振動板30の最大変位量が7.5%減少すると、液滴速度が1m/s減少するという経験則(図8参照)に従って、A/(W/2)の値が、振動板30の最大変位量がそのピークの値から−15%以内の値となる、0.27以上で、0.63以下に収まっていればよい。また、液滴速度のばらつきを、さらに厳しい、1m/sの範囲内に抑える場合には、A/(W/2)の値が、振動板30の最大変位量がそのピークの値から−7.5%以内の値となる、0.33以上で、0.56以下に収まっていればよい。
ところで、この第2実施形態の圧電アクチュエータ63においては、圧力室14の縁部と重なる領域には振動板30の上面に圧電層71が形成されているが、圧力室14の中央部と重なる領域には、振動板30の上面に圧電層71が形成されていないため、これら2つの領域の間で、圧電アクチュエータ63の剛性が異なる。そして、これら2つの領域の剛性は、振動板30の厚さTv、圧電層71の厚さTp、及び、開口部75の幅Sに夫々依存するため、これら3つのパラメータTv,Tp,Sの何れか1つが変化すると、個別電極72の幅Aに対する振動板30の最大変位量の変化の傾向は変わる。従って、これら3つのパラメータTv,Tp,Sの組み合わせごとに、図17に示すような、A/(W/2)の値と振動板30の最大変位量の関係を求めておき、インクジェットヘッド61の製造段階で測定されたTv,Tp及びSの値に対応する、A/(W/2)の値と振動板30の最大変位量の関係を1つ選択して、選択された関係から最適なA/(W/2)を決定することになる。以下、振動板30の厚さTv、圧電層71の厚さTp、及び、開口部75の幅Sのうちの1つが変化したときの、A/(W/2)の値と振動板30の最大変位量の関係の、変化の傾向を、図18〜図20に示す。
図18に示すように、振動板30の厚さTvが大きくなると、最大変位量がピークとなるA/(W/2)の値は大きくなり、逆に、Tvが小さくなると、最大変位量がピークとなるA/(W/2)の値は小さくなる。また、図19に示すように、圧電層71の厚さTpが大きくなると、最大変位量がピークとなるA/(W/2)の値は小さくなり、逆に、Tpが小さくなると、最大変位量がピークとなるA/(W/2)の値は大きくなる。さらに、図20に示すように、開口部75の幅Sが大きくなると、最大変位量がピークとなるA/(W/2)の値は小さくなり、逆に、Sが小さくなると、最大変位量がピークとなるA/(W/2)の値は大きくなる。
次に、第2実施形態のインクジェットヘッド61の製造方法について説明する。
まず、振動板30の厚さTv、圧電層71の厚さTp、及び、開口部75の幅Sの組み合わせごとに、図17に示すような、A/(W/2)の値と振動板30の最大変位量との関係を求める。
次に、図21(a)に示すように、振動板30の厚さTvを測定してから(振動板30厚さ測定工程)、キャビティプレート10、ベースプレート11、マニホールドプレート12、及び、振動板30の、4枚の金属プレートを一括して接合する。
次に、図21(b)に示すように、振動板30の上面に、AD法等を用いて、複数の圧力室14の中央部と夫々重なる位置に複数の開口部75が形成されるように、圧電層71を、複数の圧力室14の縁部と夫々重なる領域に形成する(圧電層形成工程)。そして、この圧電層71の厚さTpを、レーザー変位計などを用いて測定し(圧電層厚さ測定工程)、さらに、圧力室14の中央部と重なる領域に形成された、開口部75の幅Sを測定する(開口長さ測定工程)。
次に、予め、振動板30の厚さTv、圧電層71の厚さTp、及び、開口部75の幅Sの組み合わせごとに求めておいた、A/(W/2)の値と振動板30の最大変位量との関係から、Tv,Tp及びSの測定値に対応した、A/(W/2)の値と振動板30の最大変位量の関係を1つ選択し、この選択された関係に基づいて、振動板30の最大変位量が大きくなるような個別電極72の幅Aを決定する(電極長さ決定工程)。そして、図21(c)に示すように、この決定されたAの値を有する個別電極72を、圧電層71の上面の圧力室14の縁部と重なる領域に、スクリーン印刷等により形成する(個別電極形成工程)。最後に、図21(d)に示すように、ノズルプレート13をマニホールドプレート12の下面に接着して、インクジェットヘッド61の製造を完了する。
この第2実施形態のインクジェットヘッド61の製造方法によれば、前記第1実施形態と同様に、個別電極72の幅Aを、印字品質を損なわない範囲内で、振動板30の最大変位量が大きくなるような値にすることができるため、圧電アクチュエータ63の駆動効率がより高くなる。また、圧力室14の中央部と重なる圧電アクチュエータ63の従動領域が振動板30のみで構成されるため、従動領域の剛性が小さくなり、第1実施形態の圧電アクチュエータ3(図4〜図6参照)と比較して、振動板30の最大変位量が大きくなる。
尚、この第2実施形態においても、個別電極が圧力室の中央部を取り囲む環状に形成されている必要は必ずしもなく、例えば、前記第1実施形態の変更形態4(図13参照)のように、個別電極が圧力室の中央部を完全に取り囲んでいなくてもよい。また、圧力室の形状も、略長円形状に限られるものではなく、圧力室が、円形、菱形、矩形等の他の形状に形成されていてもよい。
また、以上説明した第1実施形態及び第2実施形態は、インクをノズルへ移送して吐出するインクジェットヘッドに本発明を適用した一例であるが、本発明を適用可能な液体移送装置はインクジェットヘッドに限られない。例えば、マイクロ総合分析システム(μTAS)内部で薬液や生化学溶液等の液体を移送する液体移送装置、マイクロ化学システム内部で溶媒や化学溶液等の液体を移送する液体移送装置等、インク以外の液体を移送する液体移送装置にも本発明を適用することもできる。
本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの概略斜視図である。 インクジェットヘッドの平面図である。 図2の一部拡大図である。 図3のIV-IV線断面図である。 図3のV-V線断面図である。 個別電極に駆動電圧が印加されたときの、圧電層及び振動板の変形状態を示す図である。 A/(W/2)の値と振動板の最大変位量との関係を示すグラフである。 振動板の最大変位量とインクの液滴速度との関係を示すグラフである。 インクジェットヘッドの製造工程を示す図であり、(a)は金属プレートの接合工程、(b)は圧電層形成工程、(c)は個別電極形成工程、(d)はノズルプレートの接合工程を夫々示す。 変更形態1の図5相当の断面図である。 変更形態2の図5相当の断面図である。 変更形態3の図5相当の断面図である。 変更形態4のインクジェットヘッドの一部拡大平面図である。 変更形態5のインクジェットヘッドの一部拡大平面図である。 第2実施形態のインクジェットヘッドの図4相当の断面図である。 第2実施形態のインクジェットヘッドの図5相当の断面図である。 A/(W/2)の値と振動板の最大変位量との関係を示すグラフである。 振動板の厚さTvが変化したときの振動板の最大変位量の変化の傾向を示すグラフである。 圧電層の厚さTpが変化したときの振動板の最大変位量の変化の傾向を示すグラフである。 開口部の幅Sが変化したときの振動板の最大変位量の変化の傾向を示すグラフである。 第2実施形態のインクジェットヘッドの製造工程を示す図であり、(a)は金属プレートの接合工程、(b)は圧電層形成工程、(c)は個別電極形成工程、(d)はノズルプレートの接合工程を夫々示す。
符号の説明
1 インクジェットヘッド
2 流路ユニット
3,3A,3B,3C 圧電アクチュエータ
14,14E 圧力室
20 ノズル
30,30A,30C 振動板
31 圧電層
32,32B,32E,32E 個別電極
34 共通電極
61 インクジェットヘッド
63 圧電アクチュエータ
71 圧電層
72 個別電極
75 開口部

Claims (10)

  1. それぞれが平面に沿って配置された複数の圧力室を有する流路ユニットと、これら複数の圧力室内の容積を選択的に変化させて圧力室内の液体に圧力を付与する圧電アクチュエータとを有する液体移送装置であって、
    前記圧電アクチュエータは、
    前記流路ユニットに接合されて前記複数の圧力室を覆う振動板と、
    前記振動板の前記複数の圧力室と反対側に配置され、前記平面に直交する方向から見て、前記複数の圧力室と全面的に重なるように形成された圧電層と、
    この圧電層の一方の面側において、前記平面と直交する方向から見て、少なくとも前記複数の圧力室の中央部を除いた領域である縁部と重なる領域に夫々形成された複数の個別電極と、
    前記圧電層の他方の面側に形成された共通電極とを有し、
    前記圧力室の径方向の長さをW、前記個別電極の、前記圧力室の前記縁部の前記径方向一方側部分と重なる領域に形成された部分の前記径方向の長さをAとしたときに、A/(W/2)の値が、0.33以上で、0.75以下であることを特徴とする液体移送装置。
  2. 前記A/(W/2)の値が、0.41以上で、0.69以下であることを特徴とする請求項1に記載の液体移送装置。
  3. 前記A/(W/2)の値が、0.41以上で、0.55以下であることを特徴とする請求項2に記載の液体移送装置。
  4. 前記複数の圧力室は、夫々所定の一方向に長い形状を有し、
    前記複数の個別電極は、前記複数の圧力室の前記縁部と重なる領域のうち、少なくとも、前記所定の一方向にほぼ平行に延びる2つの領域に夫々形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の液体移送装置。
  5. 前記振動板は金属材料からなり、前記共通電極を兼ねていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の液体移送装置。
  6. 前記振動板は、少なくとも前記圧力室と反対側の面において絶縁性を有し、
    この振動板の前記圧力室と反対側の面に前記共通電極が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の液体移送装置。
  7. 前記振動板は、少なくとも前記圧力室と反対側の面において絶縁性を有し、
    この振動板の前記圧力室と反対側の面に前記複数の個別電極が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の液体移送装置。
  8. それぞれが平面に沿って配置された複数の圧力室を有する流路ユニットと、前記複数の圧力室を覆う振動板、この振動板の圧力室と反対側に配置された圧電層、この圧電層の一方の面側において、前記平面と直交する方向から見て、前記複数の圧力室の中央部を除いた領域である縁部と重なる領域に夫々形成された複数の個別電極、及び、前記圧電層の他方の面側に形成された共通電極を備えた圧電アクチュエータを有する液体移送装置の製造方法であって、
    前記圧力室の径方向の長さをW、前記個別電極の、前記圧力室の前記縁部の前記径方向一方側部分と重なる領域に形成される部分の前記径方向の長さをAとしたときの、A/(W/2)の値と、前記個別電極に電圧が印加されたときの前記振動板の変形量との関係に基づいて、前記個別電極の前記径方向の長さAを決定する電極長さ決定工程と、
    この電極長さ決定工程で決定された径方向長さAを有する個別電極を形成する個別電極形成工程とを備えたことを特徴とする液体移送装置の製造方法。
  9. 前記圧電層を複数の圧力室を全面的に覆うように形成する圧電層形成工程を備えたことを特徴とする請求項8に記載の液体移送装置の製造方法。
  10. 前記振動板の厚さを測定する振動板厚さ測定工程と、
    前記振動板の前記圧力室と反対側の面において、前記平面と直交する方向から見て、前記複数の圧力室の中央部と夫々重なる位置に複数の開口部が形成されるように、前記圧電層を、前記複数の圧力室の前記縁部と夫々重なる領域に形成する圧電層形成工程と、
    前記圧電層の厚さを測定する圧電層厚さ測定工程と、
    前記平面と直交する方向から見て、前記圧力室に重なり且つ前記圧電層が部分的に形成されていない領域である、前記開口部の前記径方向の長さを測定する開口長さ測定工程とを備え、
    前記電極長さ決定工程において、前記振動板の厚さ、前記圧電層の厚さ、及び、前記開口部の前記径方向の長さに基づいて、前記A/(W/2)の値と前記個別電極に電圧が印加されたときの前記振動板の変形量との関係を決定し、この決定された関係に基づいて前記個別電極の前記径方向の長さAを決定することを特徴とする請求項8に記載の液体移送装置の製造方法。
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