JP2006118374A - 送液システム - Google Patents
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Abstract
【課題】広い流量範囲についての送液を一つのポンプで精度よく行うことを可能とする液体クロマトグラフ用ポンプの提供。
【解決手段】液体クロマトグラフ用ポンプは、溶離液送液用の第1のポンプ100と第2のポンプ200を有し、第1、第2の両ポンプは、溶離液の送液方向について第1のポンプが上流側となり第2のポンプが下流側となって互いに協調動作をなせるように組み合わされている。そして流路切替え手段5を備え、この流路切替え手段にて溶離液の流路を切替えることにより、それぞれ両ポンプの協調状態の異なる複数の動作モードの内のいずれかを選択できるようにされており、この動作モードの選択により、それぞれ送液流量範囲の異なる複数の送液量モードの内のいずれかに切替えて送液を行えるようにされている。
【選択図】図1
【解決手段】液体クロマトグラフ用ポンプは、溶離液送液用の第1のポンプ100と第2のポンプ200を有し、第1、第2の両ポンプは、溶離液の送液方向について第1のポンプが上流側となり第2のポンプが下流側となって互いに協調動作をなせるように組み合わされている。そして流路切替え手段5を備え、この流路切替え手段にて溶離液の流路を切替えることにより、それぞれ両ポンプの協調状態の異なる複数の動作モードの内のいずれかを選択できるようにされており、この動作モードの選択により、それぞれ送液流量範囲の異なる複数の送液量モードの内のいずれかに切替えて送液を行えるようにされている。
【選択図】図1
Description
本発明は、送液システムに係わり、特に広い流量範囲の送液を必要とする液体クロマトグラフシステムなどに好適な送液システムに関する。
例えば液体クロマトグラフシステムに組み込まれる送液システム(液体クロマトグラフ用ポンプシステムシステム)については、2つのプランジャを備えたプランジャポンプが知られている。このようなプランジャポンプでは、2つのプランジャを独立にモータで駆動し、両プランジャの協調駆動により流量の脈動を低減する。例えば特許文献1に記載された例では、第1プランジャが一往復する間に第2プランジャも一往復し、第1プランジャの吸入動作により発生する流量脈動を第2プランジャの動作により補正する。すなわち第1プランジャが送液流量を決定し、第2プランジャは第1プランジャの脈動補正用として使用する。
通常、液体クロマトグラフ用ポンプシステムシステムを運転する場合、先ず、ポンプや配管内に溶離液(液体クロマトグラフシステムで送液対象となる液体)を充填し、気泡を排出する。こうして準備作業が終了したら、つぎにポンプの吐出圧力を所定の目標値に到達させ、それから定常運転に切り替える。そして定常運転に移行すると、液体クロマトグラフシステムにおける分析や計測が開始される。
液体クロマトグラフ用ポンプシステムシステムでは、例えば毎分ナノリットル(nl)の極低流量(「ナノリットルレベル流量」と略称する)から毎分マイクロリットル(μl)の低流量(「マイクロリットルレベル流量」と略称する)までの広い流量範囲での送液が要求される場合が少なくない。このような広い流量範囲での送液要求に応えるのに、従来では送液流量に応じてポンプの種類を変える必要があった。すなわち従来の液体クロマトグラフ用ポンプシステムでは、最小流量と最大流量の比が100倍程度しかなく、要求される送液流量の範囲がそれよりも広い場合には、流量範囲の異なる複数種類を用意し、それらを選択的に用いる必要があった。このため従来の液体クロマトグラフ用ポンプシステムでは、流量範囲の変更に多くの手間と時間を必要としていた。
本発明は、以上のような事情を背景になされたものであり、例えばナノリットルレベルからマイクロリットルレベルまでの広い流量範囲についての送液を精度よく行うことを可能とする送液システムの提供を目的としている。
上記目的のために本発明で、液体を加圧して送液する第1のポンプと第2のポンプが互いに協調動作をなせるように組み合わされた送液システムにおいて、流路切替え手段を備え、前記流路切替え手段にて前記液体の流路を切替えることにより、それぞれ前記第1、第2の両ポンプの協調状態の異なる複数の動作モードの内のいずれかを選択きるようにされており、前記動作モードの選択により、それぞれ送液流量範囲の異なる複数の送液量モードの内のいずれかに切替えて送液を行えるようにされていることを特徴としている。
また本発明では上記のような送液システムについて、所定の圧力と流量を保って送液する定常運転時に第1、第2の両ポンプのいずれかのみを送液に用いる送液量モードと、前記定常運転時に前記第1、第2の両ポンプを送液に用いる送液量モードを前記複数の送液量モードに含ませるようにしている。
また本発明では上記のような送液システムについて、前記複数の送液量モードの切替え基準とする流量は、送液対象のシステムで必要とされる分析時間ないし測定時間と吐出流量に基づいて決定するようにしている。
また本発明では上記のような送液システムについて、前記流路切替え手段は、複数のポートを有し、前記複数のポートの接続を切替えることにより流路の切替えを行うアクティブバルブで形成するようにしている。
また本発明では上記のような送液システムについて、前記複数の送液量モードにわたる送液流量の範囲が毎分1ナノリットル〜毎分200マイクロリットルにあるものとしている。
また本発明では上記目的のために、溶離液を加圧して送液する第1のポンプと第2のポンプを有し、前記第1、第2の両ポンプは、前記溶離液の送液方向について前記第1のポンプが上流側となり前記第2のポンプが下流側となって互いに協調動作をなせるように組み合わされて構成されており、液体クロマトグラフシステムに組み込まれて使用される送液システムにおいて、流路切替え手段を備え、前記流路切替え手段にて前記溶離液の流路を切替えることにより、それぞれ前記第1、第2の両ポンプの協調状態の異なる複数の動作モードの内のいずれかを選択きるようにされており、前記動作モードの選択により、それぞれ送液流量範囲の異なる複数の送液量モードの内のいずれかに切替えて送液を行えるようにされていることを特徴としている。
本発明では、流路切替え手段にて溶離液の流路を切替えることで両ポンプの協調状態の異なる動作モードを選択できるようにし、この選択により、それぞれ送液流量範囲の異なる送液量モードの切替えを行えるようにしている。このため、例えばナノリットルレベルの極低流量からマイクロリットルレベルの低流量までの広い流量範囲の送液を一つの送液システムで精度よく行うことができるようになる。この結果、流量範囲の変更を短時間で行うことが可能となり、例えば液体クロマトグラフシステムにおける処理効率を高めることに寄与できる。
以下、本発明を実施する上で好ましい形態について説明する。図1と図2に第1の実施形態による送液システムである液体クロマトグラフ用ポンプシステムを適用した液体クロマトグラフシステムの構成例を示す。この例の液体クロマトグラフシステムは、液体クロマトグラフ用ポンプシステム(ポンプ装置と略称する)PS、インジェクタ53、カラム54、検出器55、および貯蔵槽56を備えている。ポンプ装置PSは、特に好ましい流量範囲として、1ナノリットル/min〜200マイクロリットル/minの流量範囲で溶離液をカラム54に所定の圧力で送液する。インジェクタ53では分析対象の試料を注入され、それが溶離液に混合される。試料が混合された溶離液はカラム54に導入される。カラム54では、試料混合の溶離液が移動するのに伴って、試料に含まれている複数の成分物質の相互分離がなされる。分離された各成分物質は検出器55により検出され、これにより成分分析や測定がなされる。使用済みの溶離液は貯蔵槽56に回収される。カラム54には微小なシリカゲル粒などが充填されており、ここを流れる際の流体抵抗によってポンプ装置PSには例えば10MPa程度の負荷圧力が発生する。負荷圧力の大きさはカラムの径と通過流量により変化する。
ポンプ装置PSは、本発明の第1の実施形態による送液システムであり、ポンプ部P、コントローラ50、貯蔵槽51、脱気装置(デガッサ)14、吸込配管15、アクティブバルブ5、吸込配管16、中間吐出配管17、中間吸込配管18、および吐出配管19を備えている。
ポンプ部Pは、第1のプランジャポンプ(第1のポンプ)100と第2のプランジャポンプ(第2のポンプ)200を一体構造で直列的に組み合わせて形成されており、第1と第2の各プランジャ101、201を有するとともに、これらが配される第1と第2の各加圧室102、202を有している。各加圧室102、202は、それぞれシール124、224より液密にされている。本実施形態では、両プランジャ101、201の径を同一にしている。第1、第2の各プランジャ101、201は、モータ121、221により駆動される直動アクチュエータ122、222にそれぞれ接続され、また軸受123、223によりそれぞれ摺動可能に保持されている。モータ121、221の回転は、それぞれ直動アクチュエータ122、222により直線運動に変換され、これを受けて第1、第2の各プランジャ101、201が直線動を行う。また第1加圧室102には、吸込配管16に接続する第1加圧室用の吸込通路103と中間吐出配管17に接続する第1加圧室用の吐出通路104が接続されている。一方、第2加圧室202には、中間吸込配管18に接続する第2加圧室用の吸込通路203と吐出配管19に接続する第2加圧室用の吐出通路204が接続されている。吐出通路104、204には圧力センサ60、61がそれぞれ設けられている。
コントローラ50は、アクティブバルブ5とポンプ部Pの動作を制御する。すなわちコントローラ50は、圧力センサ60、61からの信号に基づいて、モータ121、221の駆動制御を行い、またアクティブバルブ5の開閉制御を行う。貯蔵槽51は、ポンプ部Pが送液する溶離液を貯蔵する。脱気装置14は、溶離液の脱気を行う。吸込配管15は、貯蔵槽51とアクティブバルブ5を接続し、ポンプ部Pの送液動作に応じて貯蔵槽51から溶離液をアクティブバルブ5に吸い込ませる。
アクティブバルブ5は、図外の駆動源により流路を切替えて開閉するロータリーバルブであり、複数のポート、図の例では6つのポート5a、5b、5c、5d、5e、5fとこれら各ポートの選択的接続のための複数の流路(ポート接続流路)、図の例では2本の流路5h、5gを有する。流路5h、5gの体積は非常に小さい。第1〜第3のポート5a、5b、5cは、ポンプ部Pの第1プランジャポンプ100への溶離液の吸込み系であり、第1ポート5aは吸込配管15に接続され、第2ポート5bは吸込配管16に接続され、第3ポート5cはどの配管にも接続されない止栓となっている。一方、第4〜第6のポート5d、5e、5fは、ポンプ部Pの第1プランジャポンプ100で加圧された溶離液の吐出系であり、第4ポート5dは中間吸込配管18に接続され、第5ポート5eは中間吐出配管17に接続され、第6ポート5fはどの配管にも接続されない止栓となっている。図1は、流路5gにより第1、第2の両ポート5a、5bが接続され、第4、第5の両ポート5d、5eが非接続とされている状態を示す。一方、図2は、流路5hにより第4、第5の両ポート5d、5eが接続され、第1、第2の両ポート5a、5bが非接続とされている状態を示す。このようなアクティブバルブ5は、後述するような送液量モードの切替えのためにポンプ装置PSにおける溶離液の流路を切替える流路切替え手段として機能する。
吸込配管16は、アクティブバルブ5とポンプ部Pを接続し、貯蔵槽51からアクティブバルブ5に吸い込まれた溶離液をポンプ部Pに吸い込ませる。中間吐出配管17は、ポンプ部Pから吐出される溶離液をアクティブバルブ5に送り出す。中間吸込配管18は、ポンプ部Pから吐出されてアクティブバルブ5を経た溶離液を再びポンプ部Pに吸い込ませる。吐出配管19は、ポンプ部Pが吐出する溶離液をインジェクタ53に送り込む。この吐出配管19にはドレンバルブ9が設けられている。
以下では、本例の液体クロマトグラフシステムにおける送液経路の概略を説明する。図1の状態、つまり流路5gにより第1、第2の両ポート5a、5bが接続されている状態では、貯蔵槽51から吸込配管15を介してアクティブバルブ5の第1ポート5aに導かれる溶離液は、第1流路5g、第2ポート5bおよび吸込配管16を経由し、第1加圧室用の吸込通路103を介して第1加圧室102に導かれる。
一方、図2の状態、つまり第2流路5hにより第4、第5の両ポート5d、5eが接続されている状態では、第1ポンプ100から吐出され吐出通路104と中間吐出配管17を介してアクティブバルブ5の第5ポート5eに導かれた溶離液は、第2流路5h、第4ポート5dおよび中間吸込配管18を経由し、ポンプ部Pの吸込通路203に導かれる。吸込通路203に導かれた溶離液は、さらに第2加圧室202、吐出通路204、および吐出配管19を経由してインジェクタ53に導かれる。インジェクタ53に導かれた溶離液にインジェクタ53で分析対象試料が混合されて分析対象試料の成分分析がなされ、その際にポンプ装置PSのポンプ部Pに10MPa程度の負荷圧力が発生することは上述のとおりである。
以下ではポンプ装置PSにおける動作について説明する。ポンプ装置PSは、それぞれ流量範囲の異なる複数の送液量モードで送液を行えるようにされている。各送液量モードは、第1、第2の両ポンプ100、200の動作協調状態をアクティブバルブ5による溶離液流路の切替えで異ならせることにより切替えられる。まず、ナノリットルレベルの極低流量で溶離液を送液する第1の送液量モードの場合の動作について説明する。第1の送液量モードにおけるポンプ装置PSの動作モードを図3に示す。図3Aは、ドレンバルブ9の開閉動作、図3Bは、第1プランジャ101に対するアクティブバルブ5の開閉動作、図3Cは、第1プランジャ101の変位、図3Dは、第2プランジャ201に対するアクティブバルブ5の開閉動作、図3Eは、第2プランジャ201の変位、図3Fは、第1ポンプ100の流量(第1ポンプ流量)、図3Gは、第2ポンプ200の流量(第2ポンプ流量)、図3Hは、圧力センサ61によって検出されたポンプ装置PSの吐出圧力を示す。図における横軸は時間である。
以下の説明では、図1の例のように、アクティブバルブ5において、流路5gにより第1、第2の両ポート5a、5bが接続され、第4、第5の両ポート5d、5eが非接続の状態を、第1プランジャ101に対して「開」と呼び、第2プランジャ201に対して「閉」と呼ぶことにする。このとき、第1加圧室102は、アクティブバルブ5を介して貯蔵槽51に接続され、第1加圧室102と第2加圧室202の間は遮断の状態にある。一方、図2に示すように、流路5hにより第4、第5の両ポート5d、5eが接続され、第1、第2ポートの両5a、5bが非接続の状態を、第1プランジャ101に対して「閉」と呼び、第2プランジャ201に対して「開」と呼ぶことにする。このとき、第1加圧室102と貯蔵槽51の間はアクティブバルブ5により遮断される一方で、第1加圧室102がアクティブバルブ5を介して第2加圧室202に接続される。以上のように、アクティブバルブ5は、第1プランジャ101に対して「開」であるとき第2プランジャ201に対して「閉」であり、第1プランジャ101に対して「閉」であるとき第2プランジャ201に対して「開」である。
また、第1、第2の各プランジャ101、201について、それらが直動アクチュエータ122、222によって引き込まれた状態にあるとき、すなわち図1および図2において、加圧室の左端にプランジャが位置する状態を下死点にあると呼び、直動アクチュエータ122、222によって押し込まれた状態にあるとき、すなわち図1および図2において、加圧室の右端に位置する状態を上死点にあると呼ぶことにする。
ポンプ装置PSは、ナノリットルレベル流量の場合、分析開始前の準備的な動作である気泡排出・溶離液充填(気泡排出・溶離液充填動作)、送液開始にあたってポンプ装置PSの吐出圧力を適切な圧力まで短時間で上げる動作である起動運転(起動運転動作)、および所定の圧力と流量を保って送液を行う定常運転(定常運転動作)の順で動作を行うのが通常である。これらではそれぞれ第1、第2の両ポンプ100、200の動作協調状態が異なる。すなわち気泡排出・溶離液充填では、第1、第2の両ポンプ100、200を共に使用する動作モードで送液し、起動運転では第1ポンプ100だけを使用する動作モードで送液し、極低流量の送液を行う場合の定常運転では、第2ポンプ200だけを使用する動作モードで送液する。
まず、気泡排出・溶離液充填について説明する。気泡排出・溶離液充填では、液体クロマトグラフシステムにおける溶離液の通路(加圧室、配管、流路など)に、そこから気泡を排出しながら溶離液を充填する。図3Aに示すように、ドレンバルブ9を開放する。図3Bと図3Dを比較すると、アクティブバルブ5の第2プランジャ201に対する開閉動作は、第1プランジャ101に対する開閉動作に対して、半周期遅れている。
図3Cと図3Eを比較すると、第2プランジャ201の往復運動は第1プランジャ101の往復運動に対して、半周期遅れている。第1プランジャ101が引き込まれ上死点から下死点に移動するとき、第2プランジャ201は押し込まれ下死点から上死点に移動する。すなわち、第1ポンプ100の吸込工程では、第2ポンプ200は吐出工程となる。逆に、第1プランジャ101が押し込まれ下死点から上死点に移動するとき、第2プランジャ201は引き込まれ上死点から下死点に移動する。すなわち、第1ポンプ100の吐出工程では、第2ポンプ200は吸込工程となる。
図3Fと図3Gを比較すると、第1ポンプ100が吸込工程のとき、第2ポンプ200は吐出工程である。逆に、第1ポンプが吐出工程のとき、第2ポンプは吸込工程である。ここで、第1ポンプ流量が、第2ポンプ流量より大きいのは、第1プランジャの移動速度を第2プランジャの移動速度より大きくしていることによるものである。
図3B〜図3Eを比較すると、第1、第2の各プランジャ101、102の動作は、アクティブバルブ5の開閉動作に対して、4分の1周期遅れている。したがって、図3Bのアクティブバルブ5の第1プランジャ101に対する開閉動作、図3Cの第1プランジャ101の往復運動、図3Dのアクティブバルブ5の第2プランジャ2に対する開閉動作、および図3Eの第2プランジャ2の往復運動は、それぞれ、順に、4分の1周期ずつ遅れている。
例えば、図3Bに示すように、アクティブバルブ5が第1プランジャ101に対して「閉」から「開」に変化する。つぎに、4分の1周期遅れて、図3Cに示すように、第1プランジャ101が上死点から下死点に変化し、第1ポンプ100の吸込工程が行われる。つぎに、4分の1周期遅れて、図3Dに示すように、アクティブバルブ5が第2プランジャ2に対して「閉」から「開」に変化する。つぎに、4分の1周期遅れて、図3Eに示すように、第2プランジャ2が上死点から下死点に変化し、第2ポンプ200の吸込工程が行われる。
図3Bに示すように、アクティブバルブ5が第1プランジャ101に対して、半周期遅れて「開」から「閉」に変化する。つぎに、4分の1周期遅れて、図3Cに示すように、第1プランジャ101の位置が下死点から上死点に変化し、第1ポンプ100の吐出工程が行われる。つぎに、4分の1周期遅れて、図3Dに示すように、アクティブバルブ5が第2プランジャ2に対して「開」から「閉」に変化し、さらに4分の1周期遅れて、図3Eに示すように、第2プランジャ2が下死点から上死点に変化し、第2ポンプ200の吐出工程が行われる。図3Hに示すように、ポンプの吐出圧力は、第1ポンプ流量と第2ポンプ流量の微小な変動成分を含むが略一定となる。
気泡排出・溶離液充填では、図3に示すように、第1、第2の各プランジャを複数回往復運動させる。ドレンバルブ9からは、第1ポンプ流量と第2ポンプ流量の差分が排出され、同時に気泡も除去される。特に本例では、下流側の第2加圧室202に溜まった気泡を容易に排出することが可能である。これにより分析や測定に先立つ送液準備を短時間で完了することができる。
気泡排出・溶離液充填が終了すると、第1、第2の各プランジャとアクティブバルブが以下に説明するホームポジションに配置され、起動運転に移行する。起動運転は、上述のように、送液開始にあたってポンプ装置PSの吐出圧力を適切な圧力まで短時間で上げる動作モードであり、これを行うことにより、目標圧力までの到達時間、つまりはポンプ装置PSの起動時の立ち上がり時間を短縮することができる。起動運転の開始に先立って第1、第2の両プランジャとアクティブバルブはホームポジションに配置される。ホームポジションでは、アクティブバルブ5は第1プランジャ101に対して「開」であり、第2プランジャ201に対して「閉」である。また、第1、第2の各プランジャは下死点に配置されている。したがって、第1、第2の両加圧室には溶離液が満たされている。
以下の説明では、アクティブバルブ5が第1プランジャ101に対して「開」であるとき、単に、アクティブバルブ5が「開」であると記述する。したがって、アクティブバルブ5が「開」であるとは、図1に示すように第1プランジャ101に対して「開」であり、第2プランジャ201に対して「閉」であることを意味する。またアクティブバルブ5が第1プランジャ101に対して「閉」であるとき、単に、アクティブバルブ5が「閉」であると記述する。したがって、アクティブバルブ5が「閉」であるとは、図2に示すように、第1プランジャ101に対して「閉」であり、第2プランジャ201に対して「開」であることを意味する。
ホームポジションにあるときアクティブバルブ5は「開」である。まず、図3Aに示すようにドレンバルブ9を閉じ、図3Bおよび図3Dに示すように、アクティブバルブ5を「開」から「閉」にする。したがって、図2に示すように、第1加圧室102は、アクティブバルブ5を介して第2加圧室202に接続される。図3Cに示すように、第1プランジャ101を下死点から上死点方向に所定の速度にて移動させ、第1ポンプの吐出工程が行われる。グラフの勾配から判るように、起動運転における第1プランジャ101の移動速度は、気泡排出・溶離液充填の場合より小さい。図3Eに示すように、第2プランジャ201は下死点に配置されているから、第1加圧室102から吐出された溶離液は、アクティブバルブ5を介して第2加圧室202に導かれ、そこから吐出配管19に吐出される。このとき、第2ポンプ200は実質的に作動していない。つまり、第2ポンプ200は、その加圧室202を溶離液の通路として機能させているだけである。したがって、図3Fに示すように、第1ポンプ流量は第1プランジャ101の移動速度に対応した所定の値となるが、図3Gに示すように、第2ポンプ流量はゼロである。
以上のような起動運転における動作により、図3Hに示すように、ポンプ部Pの吐出圧力つまり吐出配管19における吐出圧力が目標圧力PsetよりΔPsetだけ低い値(Pset−ΔPset)に到達すると、定常運転に切り替える。
つぎに、ナノリットルレベルの極低流量で溶離液を送液する場合の定常運転について説明する。定常運転が開始されると、図3Bおよび図3Dに示すように、アクティブバルブ5を「閉」から「開」にする。したがって、図1に示すように、第2加圧室202は、第1加圧室102より遮断される。図3Cに示すように、第1プランジャ101は、下死点と上死点の間の所定の位置で停止する。したがって図3Fに示すように、第1ポンプ流量はゼロとなる。一方、第2ポンプ流量は、図3Gに示すように、目標流量Qsetとなる。図3Hに示すように、ポンプの吐出圧力は、上昇し、目標圧力Psetに到達する。目標圧力Psetは、カラム54の径とそこで必要な通過流量によって決まる。圧力センサ61は、ポンプの吐出圧力が目標圧力Psetに到達すると、それをコントローラ50に通知する。コントローラ50は、第1、第2の両ポンプ100、200とアクティブバルブ5に定常運転の命令を送信する。定常運転では、吐出圧力を目標圧力Psetに保持しながら、一定の送液流量で送液を行う。以上のように本例では、ナノリットルレベル流量における定常運転では、第2プランジャ201のみを一定の低速度にて押し込むことにより、吐出圧力を目標圧力Psetに保持し、また送液流量をナノリットルレベルの目標流量Qsetに保持する。
こうした超低流量による送液を必要とする分析や測定の操作が終了すると、第1、第2の両プランジャ101、201およびアクティブバルブ5は上記したホームポジションの状態に戻り、次の分析や測定の操作をできるように待機する。
ここで、図1および図2の例では、第1プランジャの径と第2プランジャの径を同一径となるように構成したが、第1プランジャ径を第2プランジャ径より大きくするようにしてもよい。
以下では、ポンプ装置PSがマイクロリットルレベルの低流量で溶離液を送液する場合のポンプ装置PSの動作について説明する。マイクロリットルレベル流量での送液には、それぞれ流量範囲の異なる第2の送液量モードと第3の送液量モードがある。
まず、第2の送液量モードについて説明する。図4に示すのは、第2の送液量モードでアクティブバルブ5に現れる「閉−閉」状態を示す図である。「閉−閉」とは、第1ポート5aと第2ポート5bとが隔絶されており、さらに、第4ポート5dと第5ポート5eも隔絶されている状態である。こうしたアクティブバルブ5の「閉−閉」状態にあっては、アクティブバルブ5が第1加圧室102と第2加圧室202の何れとも隔絶した状態にある。
図5に、第2の送液量モードにおけるポンプ装置PSの動作モードを示す。図5のA〜Gは図3におけるA〜Gに対応し、図5のHはポンプ装置から吐出される溶離液の流量を示している。マイクロリットルレベル流量の場合にも気泡排出・溶離液充填や起動運転を経た後に定常運転に入るが、気泡排出・溶離液充填の動作は図3の場合と同様なので図5では省略してある。またマイクロリットルレベル流量の場合、起動運転は必ずしも必要でなく、省略することもできる。本例では起動運転を省略し、気泡排出・溶離液充填が終了すると定常運転に移るようにしている。
気泡排出・溶離液充填が終了すると、第1、第2の両プランジャとアクティブバルブはホームポジションに配置される。ホームポジションでは、アクティブバルブ5は第1プランジャ101に対して「開」であり、第2プランジャ201に対して「閉」である。つまり上で仮に定義した“アクティブバルブ5が「開」”の状態にある。また、第1プランジャは下死点に配置され、第2プランジャは上死点と下死点の中間位置に配置されている。したがって第1、第2の両加圧室には溶離液が満たされている。
まず、図5Aに示すようにドレンバルブ9を閉じ、1回目のサイクルにおけるPhase(フェーズ)1の行程では、図5Bおよび図5Dに示すように、アクティブバルブ5を「開」から「閉−閉」にする。したがって、図4に示すように、アクティブバルブ5は、第1加圧室102と第2加圧室202の何れとも遮断された状態となる。図5Eに示すように、第2プランジャ201を中間位置から上死点方向に所定の速度にて移動し、第2ポンプ200の吐出工程が行われる。図5Cに示すように、第1プランジャ101は下死点に配置されているから、第1ポンプは実質的に作動していない。したがって、図5Gに示すように、第2ポンプ流量は第2プランジャ201の移動速度に対応した所定の値となるが、図5Fに示すように、第1ポンプ流量はゼロである。
1回目のサイクルにおけるPhase2−1の行程では、図5Bおよび図5Dに示すように、アクティブバルブ5は「閉−閉」の状態である。図5Eに示すように、第2プランジャ201は上死点方向に所定の速度にて移動し、引き続き第2ポンプの吐出工程が行われる。図5Cに示すように、第1プランジャ101は、下死点から上死点方向に所定の速度にて移動し、第1加圧室102の圧力が第2加圧室202の圧力(ポンプ吐出圧力)に達するまで加圧する。したがって、図5Gに示すように、第2ポンプ流量は第2プランジャ201の移動速度に対応した所定の値となるが、図5Fに示すように、第1ポンプ流量はゼロである。
1回目のサイクルにおけるPhase2−2の行程では、図5Bおよび図5Dに示すように、アクティブバルブ5を「閉−閉」から「閉」にする。したがって、図2に示すように、第1加圧室102はアクティブバルブ5を介して第2加圧室202に接続される。図5Eに示すように、第2プランジャ201はPhase1やPhase2−1の速度の半分の速度で上死点まで移動し、第2ポンプの吐出工程が終了する。図5Cに示すように、第1プランジャ101は、第2プランジャ201と同じ速度で上死点方向に移動し、第1ポンプの吐出工程が行われる。したがって、図5Gに示すように、第2ポンプ流量はPhase1やPhase2−1時の半分の流量となるが、図5Fに示すように、第1ポンプ流量も第2ポンプ流量と同じ流量である。すなわち、第1ポンプと第2ポンプで目標流量の半分ずつを吐出することでトータル流量を得ている。
1回目のサイクルにおけるPhase3の行程では、図5Bおよび図5Dに示すように、アクティブバルブ5は「閉」の状態を維持している。図5Eに示すように、第2プランジャ201は上死点から中間位置まで移動し、第2ポンプの吸込工程が行われる。図5Cに示すように、第1プランジャ101は、Phase1時の第2プランジャ201速度の2倍の速度で上死点まで移動し、第1ポンプの吐出工程が終了する。したがって、図5Gに示すように、第2ポンプ流量はPhase1時に相当する負の流量(吸込流量)となるが、図5Fに示すように、第1ポンプ流量はPhase1時の第2ポンプ流量の2倍の流量となる。すなわち、第2ポンプの負の流量を第1ポンプで補って吐出することで目標のトータル流量を得ている。
2回目以降のサイクルにおいては、1回目サイクルと比較してPhase1のみが異なっている。以下では2回目以降のサイクルにおけるPhase1についてだけ説明をする。2回目以降のサイクルにおけるPhase1行程では、図5Bおよび図5Dに示すように、アクティブバルブ5を「閉」から「開」にする。したがって、図1に示すように、第2加圧室202は第1加圧室102より遮断され、第1加圧室102はアクティブバルブ5を介して貯蔵槽51に接続される。図5Cに示すように、第1プランジャ101は上死点から下死点方向に所定の速度にて移動し、第1ポンプの吸込工程が行われる。図5Eに示すように、第2プランジャ201は下死点から上死点方向に所定の速度にて移動し、第2ポンプの吐出工程が行われる。したがって、図5Gに示すように、第2ポンプ流量は第2プランジャ201の移動速度に対応した所定の値となるが、図5Fに示すように、第1ポンプ流量はゼロである。ここで、第1ポンプの吸込工程が第2ポンプ流量に影響を与えないのは、上記したようにアクティブバルブ5によって第2加圧室202が第1加圧室102から遮断されているためである。
以上の例では、Phase2−1の行程のように、第1プランジャを動作させて第1加圧室の圧力が第2加圧室の圧力に達するまで加圧する行程を組み入れるようにしている。このような工程を組み入れることにより、アクティブバルブの切替えタイミング、それに溶離液の圧縮性やシール材の弾性変形などから生じる圧力変動(この圧力変動は流量に影響を与えて無視できない脈動をもたらす)を効果的に回避することができる。マイクロリットルレベル流量の送液においは、上記のような圧力変動を生じる流量域がある。したがってそのよう流量域ではPhase2−1の行程を組み入れるのが好ましい。
ポンプ装置PSは、以上のようなポンプ動作により、図5Hに示すように、溶離液を目標流量Qsetに高精度で保って送液することができる。
つぎに、マイクロリットルレベル流量送液における第3の送液量モードについて説明する。第3の送液量モードは第2の送液量モードよりも流量が大きい流量域で用いられる。図6に、第3の送液量モードにおけるポンプ装置PSの動作モードを示す。図6のA〜Hは図5におけるA〜Hに対応している。
まず、前半の行程では、図6Aに示すようにドレンバルブ9を閉じ、図6Bおよび図6Dに示すように、アクティブバルブ5を「閉」にする。したがって、図2に示すように、第1加圧室102はアクティブバルブ5を介して第2加圧室202に接続される。図6Cに示すように、第1プランジャ101を下死点から上死点方向に所定の速度にて移動し、第1ポンプの吐出工程が行われる。図6Eに示すように、第2プランジャ201は伴に配置されているから、第2ポンプは実質的に作動していない。したがって、図6Fに示すように、第1ポンプ流量は第1プランジャ101の移動速度に対応した所定の値となるが、図6Gに示すように、第2ポンプ流量はゼロである。
つぎに、後半の行程では、図6Bおよび図6Dに示すように、アクティブバルブ5を「閉」から「開」にする。したがって、図1に示すように、第2加圧室202は、第1加圧室102より遮断される。図6Cに示すように、第1プランジャ101は上死点から下死点方向に所定の速度にて移動し、第1ポンプの吸込工程が行われる。図6Eに示すように、第2プランジャ201は下死点から上死点方向に所定の速度にて移動し、第2ポンプの吐出工程が行われる。したがって、図6Gに示すように、第2ポンプ流量は第2プランジャ201の移動速度に対応した所定の値となるが、図6Fに示すように、第1ポンプ流量はゼロである。すなわち、図6Hに示すように、第1ポンプと第2ポンプの吐出・吸込行程を交互に繰り返す動作によって目標のトータル流量Qsetを得ている。
以上のように第3の送液量モードによれば、アクティブバルブの単純で簡便な開閉動作により、マイクロリットルレベル流量における送液を安定的に行うことができる。
本実施例において、アクティブバルブは3ポジションの6ポートバルブとしているが、本発明においてはこの限りではなく、3ポジションであればポート数は限定されるものではない。
本発明では、上で説明したように、ナノリットルレベルの極低流量を送液する場合とマイクロリットルレベルの低流量を送液する場合とで送液量モードを変えている。以下で、このような送液量モードの使い分けを行うことについての考え方を説明する。基本的には、プランジャ式ポンプの場合、低流量で脈動を伴わずに高精度に送液するポンプの動作は、一押し運転である。いわゆるシリンジ式ポンプとしての動作である。シリンジ式は、流量脈動(圧力脈動)の問題を避けることができるというメリットを有するものの、「連続送液」を行えないというデメリットを有している。一方、繰返し運転(往復動運転)は、「連続送液」が可能であるというメリットを有するものの、連続送液中にプランジャの吸込工程を不可欠とするため無視できない流量脈動を伴うというデメリットを有している。
本発明では、ナノリットルレベルの極低流量域で送液する場合にはプランジャを一押し運転とする動作モードで定常運転を行う第1の送液量モードとし、マイクロリットルレベルの低流量域についてはプランジャに往復動を行わせる繰返し運転による第2や第3の送液量モードとすることにより、一押し運転と繰返し運転それぞれのメリットを一つのポンプ装置において有効に生かせるようにし、このことにより、ナノリットルレベルの極低流量からマイクロリットルレベルの低流量までの広い流量範囲の送液を一つのポンプ装置で実現することができるようになる。
以上では、ナノリットルレベルとマイクロリットルレベルなどのおおまかな流量目安を前提にした説明であったが、送液流量モードの切替えを行う流量は、一般的には以下のようにして決められる。ポンプ装置におけるプランジャの「1ストローク当たりの流量(あるいは流速)」は、プランジャの仕様であるプランジャの径とプランジャのストローク長で決まる。したがってプランジャの仕様が決まっていれば、液体クロマトグラフシステム(あるいはこれを使用するユーザ)が要求する「分析時間」ないし「測定時間」と「吐出流量(毎分の送液量)」に基づいて切替え流量を決定することができる。
具体例として、プランジャ径:φ2μm、ストローク長:8μmとするとプランジャの1ストローク当たりの流量(あるいは流速)は約25μl/minである。要求される吐出流量が500nl/minであれば、プランジャが1ストロークするのに要する時間は約50分となる。この場合に「分析時間」や「測定時間」が30分であれば、プランジャを1ストロークすれば十分である。したがってポンプは一押し運転すればよいことになる。
一方、要求される吐出流量が100μl/minであれば、プランジャが1ストロークするのに要する時間は0.25分となる。この場合に「分析時間」や「測定時間」が30分であると、プランジャの1ストローク分では不足となる。したがって繰返し運転(往復動運転)することになる。
すなわち、プランジャの1ストローク当たりの流量(あるいは流速)をQs、要求吐出流量をQd、要求分析時間(または測定時間)をTdとして、Qs/Qd=T≧Tdであれば、プランジャを一押し運転とする送液量モード(上の例では第1の送液量モード)とし、Qs/Qd=T<Tdであれば、プランジャに往復動を行わせる繰返し運転による送液量モード(上の例では第2と第3の各送液量モード)とすることになる。
本例の液体クロマトグラフシステムを用いて分析や測定を行う場合、あらかじめ目標流量や測定時間に対するポンプ装置の運転方法を決めるマップを作成しておき、このマップを用いて液体クロマトグラフシステムを自動的に立ち上げるようにすることも可能である。例えば、ユーザが目標流量あるいは測定時間を入力する。液体クロマトグラフシステムは、マップから目標流量あるいは測定時間に対する最適なポンプの動作モードを読み取り、それにより自動的にポンプを立ち上げるようにする。
つぎに、高圧グラジエント運転システムに本発明による送液システム(液体クロマトグラフ用ポンプシステム)を適用する場合の形態例について説明する。図7に本発明による送液システムを適用した高圧グラジエント運転システムの構成を示す。高圧グラジエント運転システムでは、二つの送液システムを用い、高圧グラジエント運転を行う。本例の高圧グラジエント運転システムは、2台のポンプ装置10a、10b、インジェクタ53、カラム54、検出器55、貯蔵槽56、ミキサー62、およびメインコントローラ70を含む。ポンプ装置10a、10bは、図1におけるポンプ装置PSと同様である。またインジェクタ53、カラム54、検出器55、および貯蔵槽56も図1におけるそれらと同様である。なお図7では、煩雑になるのを避けてポンプ装置10a、10bの構成要素の一部について符号を付すのを省略してある。
ポンプ装置10a、10bそれぞれの第1ポンプの吐出通路には第1の圧力センサ60a、60bがそれぞれ設けられ、ポンプ装置10a、10bそれぞれの第1加圧室には第2の圧力センサ61a、61bがそれぞれ設けられている。またポンプ装置10a、10bそれぞれの吐出配管19a、19bはミキサー62に接続されている。そしてミキサー62の吐出側はインジェクタ53に接続されている。
図8に高圧グラジエント運転システムにおける2つのポンプ装置10a、10bのそれぞれで送液される溶離液の流量の関係を示す。グラジエント運転とは、ポンプ装置10aで送液される溶離液Aとポンプ装置10bで送液される溶離液Bの混合比を時間と共に階段状に変化させながら送液することをいう。すなわち、総送液流量(Qt=Qa+Qb)を一定に保持しながら、2つの送液流量QaとQbの比率を変化させる。図8Aに示すように、第1の溶離液Aの流量Qaは時間と共に段階的に増加し、例えば、Qa=1から99まで段階的に変化する。図8Bに示すように、第2の溶離液Bの流量Qbは時間と共に段階的に減少し、例えば、Qb=99から1まで段階的に変化する。図8Cに示すように、総送液流量Qt=Qa+Qbは一定であり、その値を100とする。なお総送液流量Qtはミキサー62の流量である。図8Dはミキサー62の吐出点Sにおける両溶離液A、Bの混合比を示す。第1の溶離液Aと第2の溶離液Bの混合比は時間と共に段階的に増加する。例えば、Qb/Qa=1から99まで段階的に変化する。本例は、100段階のグラジエントである。したがって、総送液流量Qtを1μl/minとすると最小流量および分解能はその1/100、すなわち、10nl/minである。
図8Eは、ポンプ装置の吐出圧力を示す。2つのポンプ装置それぞれの吐出配管19a、19bはミキサー62を介して互いに接続されている。ミキサー62による圧力低下または圧力損失を無視すると、2つのポンプ装置の吐出圧力は同一である。すなわち、第1のポンプ装置10aの第1の圧力センサ60aによって検出された吐出圧力は、第2のポンプ装置10bの第1の圧力センサ60bによって検出された吐出圧力に等しい。さらに、これらの圧力センサ60a、60bによって検出された吐出圧力は、ミキサー62の吐出圧力に等しい。
図8Cに示すように、総送液流量Qtが一定でも、図8Eに示すように、ポンプの吐出圧力は、最大1.5〜2倍程度も変化する。これは、2つの溶離液の混合比が変化すると、カラムを通過するときの流体抵抗が変化するためである。ポンプの吐出圧力を一定に保持しようとすると、逆に総送液流量Qtが一定とならない。しかし、混合比と圧力変動の関係は過去の実験データより既知である。したがって、総送液流量Qtが一定である場合の圧力変動曲線は予測可能である。そこで、ミキサー62の吐出圧力を測定し、それを圧力変動曲線の予測値と比較し、両者の偏差をフィードバック信号としてポンプ装置を駆動することで総送液流量Qtを一定に保つことができる。図8Eの実線の曲線は、ポンプの吐出圧力の測定値であり、破線の曲線は、過去の実験データより得られた目標圧力である。
図7に示すように、第1のポンプ装置に設けられた第1の圧力センサ60aの出力は、メインコントローラ70にフィードバックされる。メインコントローラ70は、第1の圧力センサ60aからの測定値を目標圧力と比較し、両者の偏差を求める。この偏差を各ポンプ装置10a、10bのコントローラ50a、50bに送信する。コントローラ50a、50bは、偏差に基づいて、各ポンプ装置10a、10bを制御する。
ポンプ装置10a、10bの吐出圧力が目標圧力より低い場合、総送液流量(Qt=Qa+Qb)が低下している。したがって、総送液流量を増加させればよい。しかしながら、2つの送液流量QaとQbのどちらがより大きく低下しているのかは不明である。例えば、実際には第1の送液流量Qaが低下しているのに誤って第2の送液流量Qbが低下していると判断し、第2の送液流量Qbを増加させた場合、混合比の精度が悪化する。これはグラジエント運転における相互干渉と呼ばれる問題である。
本例では、2つの送液流量QaとQbは、同一の割合で増加または減少すると仮定する。したがって、図8Fに示すように、2つの送液流量QaとQbに対して、流量比に比例したフィードバックゲインを与える。すなわち、比例制御を行う。例えば2つの送液流量の比Qa:Qbが20:80の場合、2つの送液流量Qa、Qbのフィードバックゲインは、それぞれ(20/100)×K、(80/100)×Kで与えられる。Kは定数である。仮に総送液流量Qtが5だけ不足している場合、2つのポンプへの指令値はそれぞれ20+(20/100)×K×5、80+(80/100)×K×5で与えられる。例えばKを1とすると、前者は21、後者は84となる。この方法によれば2つのポンプ装置の固体差による混合比の精度の低下は避けられないが、相互干渉は避けられる。
以上のような高圧グラジエント運転システムは、混合精度に優れ送液を安定して行うことを可能とする。
つぎに、本発明による送液システムを適用して構成される2次元高性能液体クロマトグラフ/質量分析システムの形態例について説明する。図9に、2次元高性能液体クロマトグラフ/質量分析システムの構成例を示す。本例の2次元高性能液体クロマトグラフ/質量分析システムは、前段分離部、脱塩部、後段分離部および質量分析部を含み、さらにコンピュータで構成される制御部79と各部の接続関係の切替え手段である6方バルブ80を含んでいる。前段分離部は、ポンプ装置71、オートサンプラ72、およびイオン交換カラム73を含み、脱塩部は、ポンプ装置74およびトラップカラム75を含み、後段分離部は、グラジエント送液ユニット76および逆相カラム77を含み、質量分析部は、質量分析計78を含む。
前段分離部では、図1のポンプ装置PSと同様に構成されているポンプ装置71が制御部79からの制御の下で溶離液を定量でイオン交換カラム73へ送液する。分析対象の試料を含む試料溶液は、オートサンプラ72から導入される。オートサンプラ72から導入された試料の成分の一部は、イオン交換カラム73で最初の溶離液により分離されてイオン交換カラム73から流出し、6方バルブ80を経由して接続された脱塩部のトラップカラム75に成分ごとに分離された状態でトラップされる。トラップカラム75にトラップされた各分離成分は、後述の脱塩、逆相グラジエント分離、および質量分析という一連の操作を経て分析される。前段分離部の溶離液流量としては、極微量試料に対する高分離能での分離を可能とするために200μl/min以下が好適である。
脱塩部では、イオン交換カラム73による各分離成分の脱塩処理を行う。脱塩処理は、分離成分を逆相分離系である後段分離部へそのまま導入した場合、その分離成分に含まれる塩が後続の質量分析部の質量分析計78に混入して質量分析計78の分析性能に影響するのを防止するために行われる。
後段分離部では、トラップカラム75で各分離成分を脱塩処理した後、6方バルブ80を回転して流路を切り替える。そして、各分離成分は逆相カラム77へ送られ、逆相分離用の溶離液によりグラジエント分離される。グラジエント送液ユニット76は、高圧グラジエント運転システムについて上で説明しグラジエント運転と同様に2種類の溶離液を任意の混合比で混合した混合溶離液を送液する。具体的には、図1のポンプ装置PSと同様に構成されている2つのポンプ装置76a、76bのそれぞれで送液される2種類の溶離液をミキサー76cで混合することにより、任意混合比の混合溶離液として逆相カラム77へ導入する。混合溶離液の混合比率は制御部79の制御により段階的に変えられ、上記各分離成分は、混合溶離液の混合比率に応じた溶出強度に基づいてさらに各成分に分離される。後段分離部の溶離液流量としては、極微量試料に対する高分離能での分離を可能とするために100μl/min以下が好適である。場合によっては、50nl/min以下が好適な場合もある。
質量分析部では、以上のような2段階の分離により単一成分へ分離された各成分の定性、定量分析が質量分析計78にて行われる。高性能液体クロマトグラフと質量分析計のインターフェースとしては、ESI(エレクトロスプレーイオン化)、APCI(大気圧化学イオン化)などが用いられる。また質量分析計としては、飛行時間型やイオントラップ型などの構成が適用される。
以上のような2次元高性能液体クロマトグラフ/質量分析システムは、例えばプロテオーム解析において高分離能を発揮し、高精度な自動分析を可能とし、また処理効率を高めることも可能とする。これには、本システムに用いているポンプ装置(71、74、76a、76b)の送液能力が大きく寄与している。プロテオーム解析においては、採取した細胞から種々のたんぱく質を抽出して分析するが、細胞に含まれる各たんぱく質は極微量であり、増殖も不可能である。したがって2次元高性能液体クロマトグラフ/質量分析システムの検出感度を上げるためには、液体クロマトグラフシステムで極低流量の送液も行えることが求められることになる。またプロテオーム解析では、試料を投入してからデータ処理するまでに数時間の分析時間を要する。本発明による液体クロマトグラフ用ポンプシステムであるポンプ装置(71、74、76a、76b)は、極低流量のナノリットルレベルから低流量のマイクロリットルレベルまでの広い送液量範囲での送液を一つのポンプで可能とし、送液動作モードの切替えを短時間で行うことを可能とするものであり、プロテオーム解析で求められる上記のような条件を満足させることができ、そのことでプロテオーム解析において高精度な自動分析を可能とし、また処理効率を高めることも可能とする。
図10に、第2の実施形態による送液システムを適用した液体クロマトグラフシステムの構成例を示す。本例の液体クロマトグラフシステムは、図1の液体クロマトグラフシステムと基本的には同様である。したがって図1と共通する要素には同一の符号を付し、それらについての説明は適宜省略する。
この例の液体クロマトグラフシステムは、ポンプ装置PS´が本発明の第2の実施形態による送液システム(液体クロマトグラフ用ポンプシステム)で構成されている。ポンプ装置PS´は、第1の実施形態におけるポンプ装置PSが一体構造であったのに対して、それぞれ別体に形成された第1のプランジャポンプ(第1のポンプ)1と第2のプランジャポンプ(第2のポンプ)2を並列的に組み合わせた構造とされている。第1ポンプ1には、貯蔵槽51−1と脱気装置14−1が吸込配管16−1を介して接続され、第2ポンプ2には、貯蔵槽51−2と脱気装置14−2が吸込配管16−2を介して接続されている。また第1ポンプ1は、吸込通路103に吸込チェック弁105が設けられ、吐出通路104に吐出チェック弁106が設けられ、第2ポンプ2は、吸込通路203に吸込チェック弁205が設けられ、吐出通路204に吐出チェック弁206が設けられている。これらのチェック弁は、図1のアクティブバルブ5が負っていた機能を実現する。すなわち送液量モードの切替えのための流路切替え手段として機能する。また第1ポンプ1と第2ポンプ2は、共通の吐出配管19を介してそれぞれ個別にインジェクタ53に接続されている。吐出配管19には、ドレンバルブ9と圧力センサ63が設けられている。以上が第1の実施形態におけるポンプ装置PSに対するポンプ装置PS´の構造上の主な相違である。
つぎにポンプ装置PS´の動作について説明する。ポンプ装置PS´の動作は、基本的には図1のポンプ装置PSと同様である。以下ではポンプ装置PS´に特有な動作を中心にして説明する。気泡排出・溶離液充填では、ドレンバルブ9を開にし、第1、第2の両ポンプ1、2を作動させて気泡の排出と溶離液の充填を行う。起動運転では、ドレンバルブ9を閉じ、第1プランジャ101のみを作動させて、第1ポンプ1の吐出圧力を目標圧力に到達させる。吐出圧力が目標圧力に到達したら定常運転に移る。定常運転では、ドレンバルブ9が閉じた状態で、第1ポンプ1を停止し、第2ポンプ2のみを作動させる。第2プランジャ201を低速にて第2加圧室202に押し込む。それにより、第2ポンプ2の吐出圧力を目標圧力に保持しながら、所定の流量で送液する。以上がポンプ装置PS´におけるナノリットルレベル流量の場合の動作モードである。マイクロリットルレベル流量の動作モードでは、第1、第2の両ポンプ1、2に、それぞれの加圧室の圧力をモニターしながら、交互に吐出・吸込工程を行わせることにより、所定の流量で送液する。
以上のように本実施形態におけるポンプ装置PS´は、別体に形成した第1、第2の両ポンプ1、2を配管で接続する構造とされているため、その分解作業が容易となり、シール交換などのメンテナンス作業の負担を軽減できる。また機器のレイアウト性が向上するなどの利点も得られる。
本発明は、送液システムについて、例えばナノリットルレベルの極低流量からマイクロリットルレベルの低流量までの広範囲な流量域での送液を一つのポンプで精度よく行えるようにするものであり、液体クロマトグラフの分野などで広く利用することができる。
5 アクティブバルブ(流路切替え手段)
5a〜5h ポート
100 第1のポンプ
200 第2のポンプ
PS ポンプ装置(送液システム)
5a〜5h ポート
100 第1のポンプ
200 第2のポンプ
PS ポンプ装置(送液システム)
Claims (6)
- 液体を加圧して送液する第1のポンプと第2のポンプが互いに協調動作をなせるように組み合わされた送液システムにおいて、
流路切替え手段を備え、前記流路切替え手段にて前記液体の流路を切替えることにより、それぞれ前記第1、第2の両ポンプの協調状態の異なる複数の動作モードの内のいずれかを選択きるようにされており、前記動作モードの選択により、それぞれ送液流量範囲の異なる複数の送液量モードの内のいずれかに切替えて送液を行えるようにされていることを特徴とする送液システム。 - 所定の圧力と流量を保って送液する定常運転時に前記第1、第2の両ポンプのいずれかのみを送液に用いる送液量モードと、前記定常運転時に前記第1、第2の両ポンプを送液に用いる送液量モードが前記複数の送液量モードに含まれている請求項1に記載の送液システム。
- 前記送液量モードの切替え基準とする流量は、送液対象のシステムで必要とされる分析時間ないし測定時間と吐出流量に基づいて決定するようにされている請求項1または請求項2に記載の送液システム。
- 前記流路切替え手段は、複数のポートを有し、前記複数のポートの接続を切替えることにより流路の切替えを行うアクティブバルブで形成されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の送液システム。
- 前記複数の送液量モードにわたる送液流量の範囲が毎分1ナノリットル〜毎分200マイクロリットルにある請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の送液システム。
- 溶離液を加圧して送液する第1のポンプと第2のポンプを有し、前記第1、第2の両ポンプは、前記溶離液の送液方向について前記第1のポンプが上流側となり前記第2のポンプが下流側となって互いに協調動作をなせるように組み合わされて構成されており、液体クロマトグラフシステムに組み込まれて使用される送液システムにおいて、
流路切替え手段を備え、前記流路切替え手段にて前記溶離液の流路を切替えることにより、それぞれ前記第1、第2の両ポンプの協調状態の異なる複数の動作モードの内のいずれかを選択きるようにされており、前記動作モードの選択により、それぞれ送液流量範囲の異なる複数の送液量モードの内のいずれかに切替えて送液を行えるようにされていることを特徴とする送液システム。
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-
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