JP2006118021A - 低合金鋼及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】クリープ強度及び靭性に優れた低合金鋼を提供する。
【解決手段】本発明による低合金鋼は、質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.7%以下、Mn:0.1〜0.7%、Cr:1.5〜3.5%、Ti:0.005〜0.02%、B:0.0006〜0.01%、V:0.05〜0.3、Nb:0.01〜0.1%、Al:0.005〜0.05%、N:0.002〜0.05%、Mo+W:0.03〜3.5%、P:0.025%以下、S:0.025%以下、Ni:0〜0.8%、Ca:0〜0.005%、Nd:0〜0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、ラスマルテンサイト母相と析出物とを含む。ラスマルテンサイト母相のラス幅は2μm以下であり、析出物の大きさは1μm以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、低合金鋼及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、靭性及びクリープ特性に優れた低合金鋼及びその製造方法に関する。
火力発電等に利用されるボイラは高温高圧の蒸気流を発生する。そのため、水壁管や管よせ等のボイラを構成する鋼管(以下、ボイラ用鋼管と称する)に加工される鋼は優れた高温強度、特に優れたクリープ強度を必要とする。
ボイラ用鋼管に使用される鋼は使用温度域により異なる。具体的には、低温域では炭素鋼、中低温域では低Crフェライト鋼に代表される低合金鋼、中高温域では高Crフェライト鋼が使用される。
低合金鋼は、高Crフェライト鋼よりもクリープ強度は劣るものの、安価である。さらに高Crフェライト鋼よりも優れた熱伝導性及び溶接性を有する。そのため、低合金鋼は主として水壁管等に使用される。
しかしながら、高い高温強度を必要とするボイラ部分に使用するボイラ用鋼管を低合金鋼で製造する場合、クリープ強度を得るためにボイラ用鋼管の肉厚を厚くしなければならない。肉厚を厚くすれば熱伝導性が悪化し、かつ素材コストも上がる。ボイラの熱効率を向上させ、かつ、製造コストを抑えるためには、低合金鋼の高温強度、特にクリープ強度の向上が必要である。
さらに、ボイラは高い熱応力を受けるため、ボイラに用いられる低合金鋼は高温強度だけでなく、優れた靭性も要求される。
特開平11−92881号公報 特開平9−31535号公報
本発明の目的は、クリープ強度及び靭性に優れた低合金鋼を提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
従来の低合金鋼はフェライト、マルテンサイト、ベイナイト及びパーライトの混合組織であり、母相がマルテンサイト単相の低合金鋼は存在しなかった。低合金鋼は焼入性を向上する合金元素の含有量が少ないため、従来の熱処理では母相をマルテンサイトにできなかったからである。
また、従来はマルテンサイトを有する低合金鋼はクリープ変形が発生しやすいと考えられていた。マルテンサイトは他の組織よりも転位密度が高い。そのため、高温で変形したとき旧オーステナイト粒界での転位密度が他の組織よりも高くなり、動的再結晶を起こしやすいと考えられていたためである。
しかしながら本発明者は低合金鋼の母相をラスマルテンサイトにすることにより、従来の低合金鋼よりもクリープ強度を向上できると考えた。さらに、ラス幅、すなわちラスマルテンサイト内のラス(マルテンサイトラス)の幅を小さくする程、クリープ強度を向上できると考えた。
図1及び図2に示すように、ラスマルテンサイト鋼は階層的に複数の組織を有する。具体的には、旧オーステナイト粒10と、パケット20と、ブロック30と、ラス41とを有する。旧オーステナイト粒は複数のパケット20を含む。パケット20は複数のブロック30を含む。ブロック30は複数のラス41を含む。
本発明者らは、母相がラスマルテンサイトである低合金鋼のクリープ変形のメカニズムを以下のように考えた。高温で鋼がクリープ変形するとき、初めにラス内の転位が移動し、ラス境界4でピンニングされる。要するに、ラス境界4はクリープ変形に対する抵抗となる。ラス境界4に複数の転位が蓄積されると、蓄積された転位を駆動力としてラス同士が合体及び成長する。ラス同士の合体及び成長が多発すると、転位はブロック境界3及びパケット境界2に蓄積し始める。このとき、クリープ変形が進行する。ブロック境界3及びパケット境界2での転位密度の増加によりブロック及びパケットが合体、成長すると、転位は旧オーステナイト粒界に蓄積し始める。転位の蓄積により旧オーステナイト粒界で動的再結晶が発生すれば、急速にクリープ変形が進行する。
以上のメカニズムを想定して、本発明者らは低合金鋼の母相を従来にはないラスマルテンサイトとし、かつ、ラス幅を小さくすればクリープ強度を向上できると考えた。ラス幅を小さくする程、転位がピンニングされるラス境界4が増加する。ラス境界4が多いほど転位の蓄積が分散され、転位が旧オーステナイト粒界に集中しにくい。そのため動的再結晶が起こりにくく、クリープ変形が起こりにくい。
また、本発明者らは、鋼中の析出物を微細化することにより低合金鋼のクリープ強度をさらに向上できると考えた。微細析出物は転位をピンニングするためである。また、微細析出物により旧オーステナイト粒界の粗大化が抑制され、旧オーステナイト粒が微細化するためである。
さらに、本発明者らは析出物の微細化により鋼の靭性も向上すると考えた。析出物を微細化することにより旧オーステナイト粒界に粗大な析出物が析出するのを防止できる。そのため、旧オーステナイト粒界の強度を上げ、析出物を起点とする割れの発生及び伝播を抑制できる。
種々の実験の結果、本発明者らはラス幅を2μm以下にし、かつ、析出物の大きさを1μm以下にすれば、ボイラに用いられる従来の低合金鋼よりも優れたクリープ強度が得られることを見出した。また、上記ラス幅及び析出物の大きさにすることにより、靭性がボイラに用いられる従来の低合金鋼よりも向上することを見出した。
本発明者らは、低合金鋼の母相をラスマルテンサイトにし、かつ析出物を微細化するために、種々の製造方法を検討した。検討した結果、加工後の焼き入れの冷却速度を10℃/秒以上にすれば、母相がラスマルテンサイトになり、そのラス幅は2μm以下になり、かつ、析出物が1μm以下になることを見出した。
以上の知見に基づいて、本発明者らは以下の本発明を完成した。
本発明による低合金鋼は、質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.7%以下、Mn:0.1〜0.7%、Cr:1.5〜3.5%、Ti:0.005〜0.02%、B:0.0006〜0.01%、V:0.05〜0.3、Nb:0.01〜0.1%、Al:0.005〜0.05%、N:0.002〜0.05%、Mo+W:0.03〜3.5%、P:0.025%以下、S:0.025%以下、Ni:0〜0.8%、Ca:0〜0.005%、Nd:0〜0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、ラス幅が2μm以下のラスマルテンサイト母相と大きさが1μm以下の析出物とを含む。
ここで、ラス幅はたとえば次のように求めることができる。まず、表面の脱炭層以外の低合金鋼部分のうち任意の56μmの領域を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて10視野観察する。各領域でラスのラス幅を求める。具体的には、図2に示すようにラスの短径をラス幅LWとして測定する。ラス幅を測定した後、大きい順に10個の測定値を各領域で選択する。全ての領域の選択された測定値(合計100個の測定値)の平均値をラス幅と定義する。
析出物はたとえば、炭化物、窒化物、炭窒化物である。具体的には、Cr炭化物、V炭窒化物、Nb炭窒化物、W炭化物、Mo炭化物、Ti炭化物、Ti窒化物等である。
析出物の大きさは、たとえば次のように求めることができる。まず、表面の脱炭層以外の低合金鋼部分のうち任意の56μmの領域を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて10視野観察する。各領域で観察された析出物のうち、大きいものから10個選択する。選択された析出物の長径及び短径を測定し、それらの平均値を析出物の大きさとする。ここで、長径とは図3に示す通り、析出物100と母相50との界面上の異なる2点を結ぶ直線のうち、最大のものをいい、短径とは最小のものをいう。
本発明による低合金鋼の製造方法は、質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.7%以下、Mn:0.1〜0.7%、Cr:1.5〜3.5%、Ti:0.005〜0.02%、B:0.0006〜0.01%、V:0.05〜0.3、Nb:0.01〜0.1%、Al:0.005〜0.05%、N:0.002〜0.05%、Mo+W:0.03〜3.5%、P:0.025%以下、S:0.025%以下、Ni:0〜0.8%、Ca:0〜0.005%、Nd:0〜0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、残部はFe及び不純物からなる素材を熱間加工して低合金鋼にする工程と、熱間加工した低合金鋼を1000〜1100℃に均熱する工程と、均熱後、低合金鋼を10℃/秒以上の冷却速度で焼入する工程と、焼入後、低合金鋼をAc1点以下の温度で焼き戻す工程とを備える。
ここで、素材とはたとえば鋼塊や連続鋳造材である。連続鋳造材とはたとえばスラブでありビレットである。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
1.化学組成
本発明の実施の形態による低合金鋼は、以下の組成を有する。以降、合金元素に関する%は質量%を意味する。
C:0.01〜0.15%
Cは後述するCr、Mo、W、V、Nb、Ti、Feと結合して炭化物を形成し、これにより鋼の高温強度を改善する。C含有量が少なすぎると、炭化物の析出が少なくなり高温強度が改善されない。また、鋼の母相にフェライト相が形成されるため靭性が向上しない。一方、C含有量が高すぎると、炭化物が粗大化し、靭性が劣化する。さらに溶接性も劣化する。C含有量は0.01〜0.15%とする。好ましいC含有量は0.05〜0.12%である。
Si:0.7%以下
Siは鋼を硬化する。Si含有量が高すぎると鋼の靭性及び加工性を劣化させる。また、鋼板の厚さ又は鋼管の肉厚が20mmを超える場合、高いSi含有量は焼き戻し脆化を引き起こす。そのため、Si含有量は0.7%以下にする。好ましいSi含有量は0.5%以下である。一方、Siは脱酸剤であり、さらに耐水蒸気酸化性を改善する。そのため、好ましいSi含有量は0.1〜0.7%であり、さらに好ましいSi含有量は0.1〜0.5%である。
Mn:0.1〜0.7%
Mnは鋼の熱間加工性を改善する元素であり、組織の安定化に寄与する。Mn含有量が高すぎると、鋼を硬化し、靭性及び加工性を劣化する。また、高いMn含有量は焼き戻し脆化を引き起こす。そのため、Mn含有量は0.1〜0.7%にする。好ましいMn含有量は0.1〜0.5%である。
Cr:1.5〜3.5%
Crは鋼の耐酸化性及び高温耐食性を改善する元素である。Cr含有量が高すぎると、靭性、溶接性及び熱伝導性が悪化する。そのため、Cr含有量は1.5〜3.5%にする。好ましいCr含有量は2.0〜2.6%である。
Ti:0.005〜0.020%
TiはCと結合してクリープ強度に寄与する炭化物を形成する。さらに炭化物の形成により結晶粒の微細化に寄与する。Ti含有量が高すぎると鋼を硬化し、靭性、溶接性、加工性を劣化する。そのため、Ti含有量は0.005〜0.020%にする。好ましいTi含有量は0.005〜0.015%である。
B:0.0006〜0.01%
Bは焼き入れ性に寄与し、鋼の強度を増加する。B含有量が高すぎると、Bは粒界に偏析し、粒界の炭化物を粗大化する。そのため、鋼の強度や靭性が低下する。そのため、B含有量は0.0006〜0.01%にする。好ましいB含有量は0.0010〜0.0060%である。
V:0.05〜0.3%
VはC及びNと結合してクリープ強度に寄与する炭窒化物を形成する。V含有量が高すぎるとかえってクリープ強度を低下させ、かつ、靭性及び溶接性も低下する。そのため、V含有量は0.05〜0.3%にする。好ましいV含有量は0.05〜0.25%である。
Nb:0.01〜0.1%
NbはVと同様に炭窒化物を形成し、クリープ強度に寄与する。Nb含有量が高すぎると鋼を硬化させ靭性及び加工性を低下する。そのため、Nb含有量は0.01〜0.1%にする。好ましいNb含有量は0.01〜0.08%である。
Al:0.005〜0.05%
Alは脱酸剤として有効である。Al含有量が高すぎると高温強度及び加工性を低下する。そのため、Al含有量は0.005〜0.05%にする。好ましいAl含有量は0.005〜0.020%である。
N:0.002〜0.05%
NはV及びNbと結合して窒化物を形成する。N含有量が高すぎると粗大な窒化物の形成を促進することにより強度、靭性、溶接性及び加工性を低下する。そのためN含有量は0.002〜0.05%にする。好ましいN含有量は0.002〜0.010%である。
Mo+W:0.03〜3.5%
Mo及びWは、固溶することにより、及び微細な炭化物を形成することによりクリープ強度に寄与する。Mo及びWを過剰に含有すれば、鋼を硬化し、靭性、溶接性及び加工性を低下する。そのため、Mo含有量とW含有量との合計(Mo+W)は0.03〜3.5%である。好ましくは、0.1〜2.5%である。
P:0.025%以下
S:0.025%以下
P及びSは不純物である。P及びSは粒界に偏析して靭性及びクリープ強度を低下する。また、溶接性及び加工性を低下する。そのため、P含有量及びS含有量は共に0.025%以下に制限される。好ましいP含有量は0.015%以下であり、好ましいS含有量は0.010%以下である。
Ni:0〜0.8%
Niは選択的に添加される。Niはオーステナイト安定化元素である。また、Niは靭性を改善する。しかしながら、Ni含有量が高すぎると高温強度を低下させる。そのため,Ni含有量は0〜0.8%にする。好ましいNi含有量は0〜0.3%である。
Ca:0〜0.005%
Caは選択的に添加される。Caは靭性及びクリープ強度を低下する元素であるSを固定する。これにより、靭性及びクリープ強度に寄与する。過剰にCaを含有すると炭化物や硫化物を粗大化し、靭性及びクリープ強度を低下する。そのため、Ca含有量は0〜0.005%にする。好ましいCa含有量は0.0005〜0.005%である。
Nd:0〜0.10%
Ndは選択的に添加される。NdはCaと同様にSを固定し、靭性及びクリープ強度に寄与する。過剰にNdを含有するとかえって靭性及びクリープ強度を低下する。そのため、Nd含有量は0〜0.10%にする。好ましいNd含有量は0.001〜0.10%である。
なお、残部はFeで構成されるが、製造過程の種々の要因により他の不純物が含まれることもあり得る。他の不純物とは、たとえばO(酸素)等である。なお、これら不純物により本実施の形態の低合金鋼の特徴が変わることはない。
2.微細組織
本実施の形態による低合金鋼の母相は、表面の脱炭された部分を除いてラスマルテンサイトである。さらに、ラスマルテンサイト中のラスのラス幅は2μm以下である。
ラス幅が2μm以下の微細なラスにより、鋼中を移動する転位はラス境界に蓄積される。そのため、旧オーステナイト粒界に転位が過剰に蓄積されるのを抑制できる。要するに、変形中に発生する歪みを旧オーステナイト粒界以外の部分に分散できる。そのため、クリープ強度を向上できる。
さらに、本実施の形態による低合金鋼は析出物を含み、その大きさは1μm以下である。微細な析出物は相変態時における結晶粒の成長を抑制し、結晶粒を微細化する。そのため鋼の靭性は向上する。また、析出物を微細化することにより旧オーステナイト粒界に粗大な析出物が生成されるのを防止する。そのため、旧オーステナイト粒界での割れの発生及び伝播を防止でき、鋼の靭性は向上する。
さらに、微細析出物は析出強化に寄与する。そのためクリープ強度及び高温引張強度を向上できる。
なお、析出物は上述した通り、炭化物、窒化物、炭窒化物である。具体的には、Cr炭化物、V炭窒化物、Nb炭窒化物、W炭化物、Mo炭化物、Ti炭化物、Ti窒化物等である。
ラス幅はたとえば次のように求めることができる。まず、表面の脱炭層以外の低合金鋼部分のうち任意の56μmの領域を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて10視野観察する。各領域でマルテンサイトラスのラス幅を測定する。図2に示すようにマルテンサイトラスの短径をラス幅LWとして測定する。ラス幅を測定した後、大きい順に10個の測定値を各領域で選択する。全ての領域の選択された測定値(合計100個の測定値)の平均値をラス幅と定義する。
析出物の大きさは、たとえば次のように求めることができる。まず、表面の脱炭層以外の低合金鋼部分のうち任意の56μmの領域を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて10視野観察する。各領域で観察された析出物のうち、大きいものから10個選定する。このとき、析出物の種類は問わない。選定された析出物の長径及び短径を測定し、それらの平均値を析出物の大きさとする。ここで、長径とは図3に示す通り、析出物100と母相50との界面上の異なる2点を結ぶ直線のうち、最大のものをいい、短径とは最小のものをいう。
3.製造方法
本実施の形態による低合金鋼は、ボイラに用いられる従来の低合金鋼と異なり母相がラスマルテンサイトである。母相をラスマルテンサイトにするために熱間加工後の低合金鋼を10℃/秒以上の冷却速度で焼き入れする。本実施の形態による低合金鋼の製造方法の詳細を以下に示す。
上記化学組成の鋼を溶製し、溶鋼を連続鋳造法又は造塊法により鋼塊にする。その後、必要に応じて鋼塊を分塊圧延し丸ビレットにする。続いて、鋼塊又は丸ビレットを熱間加工して低合金鋼管等にする。
加工により低合金鋼を継目無鋼管にする場合、マンネスマン法を採用する。マンネスマン法により製造した継目無鋼管に対して焼き入れ焼き戻しを実施する。具体的には、継目無鋼管を1000〜1100℃に均熱する。均熱後の継目無鋼管を10℃/秒以上の冷却速度で室温以下に焼き入れする。水冷により冷却するのが好ましい。この焼き入れにより、継目無鋼管の母相はラスマルテンサイトになり、かつ、ラス幅は2μm以下になる。焼き入れ後、継目無鋼管をAC1点温度以下で焼き戻す。好ましくは、熱処理炉に継目無鋼管を挿入し、700〜800℃の炉温で継目無鋼管を焼き戻す。このときの結晶粒は微細であるため、析出物は粗大化せず、1μm以下の大きさになる。
一方、加工により低合金鋼を鋼板にする場合、スラブ又はインゴットを熱間圧延して鋼板にする。鋼板はたとえば曲げ加工されオープンパイプになり、さらに継ぎ目部を溶接されて溶接鋼管になる。鋼板の焼き入れ焼き戻しの条件は継目無鋼管のものと同じである。
以上の製造方法により製造された低合金鋼の母相は、表面の脱炭された部分を除きラスマルテンサイト組織になる。また、ラスマルテンサイト中のラス幅は2μm以下になる。さらに析出物の大きさは1μm以下になる。
化学組成及び組織の異なる複数の供試材のクリープ強度、高温引張強度及び靭性を調査した。
Figure 2006118021
表1に示す化学組成を有する溶鋼を80t転炉で溶製した。溶鋼を造塊法により10tインゴットにし、さらにインゴットを鍛造して直径360mmの丸ビレットにした。丸ビレットをマンネスマン法にて継目無鋼管にし、その後表1中のT1℃で5〜10分均熱した。均熱後、表1の冷却速度CRで冷却した。このとき、供試材番号8〜10は空冷し、それ以外は水冷した。空冷の冷却速度は風量で調整し、水冷の冷却速度は水量で調整した。冷却後、大気炉にて焼き戻しを実施した。このとき、焼き戻し温度を770℃にし、均熱時間を60〜180分とした。
製造した継目無鋼管のうち、脱炭層がなく軸方向に垂直な部分から組織観察用の試験片を加工した。具体的には、試験片として幅10mm、長さ20mm、厚さ80μmの薄片を採取した。採取した薄片を電解研磨法により研磨し薄膜化した。電解液に5%過塩素酸、95%メチルアルコール溶液を用い、−20℃以下の電解浴中で電解研磨を実施した。研磨後、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて任意の56μmの領域を10箇所観察し、ラス幅及び析出物の大きさを求めた。ラス幅及び析出物の大きさは上述した方法で求めた。
供試材1〜7の化学組成、ラス幅及び析出物の大きさはいずれも本発明の規定範囲内であった。一方、供試材8〜10の化学組成は本発明の規定範囲内であったものの、ラス幅及び析出物の大きさは本発明の規定範囲を超えた。具体的には、冷却速度が遅かったため、母相がラスマルテンサイトにならずラスが生じなかった。また、遅い冷却速度により析出物が粗大化した。供試材11の化学組成は本発明の規定範囲内であったが、焼き入れ温度が950℃と低かったためラスが微細化せず、ラス幅が2μmを超えた。さらに、焼き入れ温度での均熱時に未固溶の析出物が残存したため、析出物の大きさが1μmを超えた。供試材12の化学組成は本発明の規定範囲内であったが、析出物の大きさが1μmを超えた。
供試材13〜29の化学組成は本発明の規定範囲外であった。
[クリープ破断試験]
製造した各継目無鋼管からクリープ破断試験用の試験片を加工した。試験片は丸棒試験片とし、幅を6mm、標点間距離を30mmとした。
クリープ破断試験は試験温度550℃にて最長15000時間の試験を実施し、内挿により550℃×10時間のクリープ破断強度を求めた。
[高温引張試験]
製造した各継目無鋼管から高温引張試験用の試験片を加工した。試験片はクリープ破断試験片と同じ形状とした。高温引張試験はJISG0567規格に基づいて実施した。このとき、試験温度を500℃にした。
[シャルピー衝撃試験]
製造した各継目無鋼管からJIS4号試験片(10mm×10mm×55mm、2mmVノッチ)を加工した。シャルピー衝撃試験はJISZ2242規格に基づいて実施した。このとき0℃でのエネルギーを測定した。
[試験結果]
供試材1〜7はいずれも高い靭性、クリープ強度及び高温引張強度を示した。0℃の破壊靭性値は100Jを超えた。また、クリープ強度は180MPaを超えた。高温引張強度は400MPaを超えた。
一方、供試材8〜10はいずれも破壊靭性値が低く、クリープ強度も低かった。旧オーステナイト粒界に析出した粗大な析出物が靭性を低下させ、母相にラスが生成されなかったためクリープ強度が低かったと考えられる。
供試材11は破壊靭性値が100J未満であった。析出物が粗大化したためと考えられる。また、ラス幅が広いため、クリープ強度が180MPa未満であり、引張強度も400MPa未満であった。供試材12は析出物の粗大化に起因して破壊靭性値が低く、ラス幅が広いためクリープ強度が低かった。
供試材13〜29は、化学組成の何れかが本発明の規定範囲外であることに起因して靭性値、クリープ強度、引張強度の少なくとも1つが基準値未満であった。供試材13はC含有量が低すぎるため、マルテンサイトラスが微細化せず、クリープ強度及び靭性が低かった。また、析出物の析出量が少ないため、靭性が低かった。供試材14はSi含有量が高すぎるため靭性が低かった。供試材15はCr含有量が高すぎるため靭性が低かった。供試材16はNi含有量が高いためクリープ強度及び高温引張強度が低かった。供試材17はV含有量が低いため高温引張強度が低かった。供試材18はV含有量が高いため析出物が粗大化した。そのため靭性及びクリープ強度が低かった。供試材19はNb含有量が低いためクリープ強度が低かった。供試材20はNb含有量が高いため析出物が粗大化し、靭性が低かった。供試材21はAl含有量が高いためクリープ強度及び高温引張強度が低かった。供試材22はN含有量が高いため析出物(窒化物及び炭窒化物)が粗大化した。そのため、靭性、クリープ強度及び高温引張強度が低かった。供試材23はMo+W含有量が低いためクリープ強度及び高温引張強度が低かった。供試材24はMo+W含有量が高く、供試材25はTi含有量が高く、供試材26はB添加量が高いため、これらの供試材中の析出物は粗大化した。そのため、これらの供試材の靭性は低かった。供試材27及び28はそれぞれ不純物であるP、Sの含有量が高いため靭性が低かった。供試材29はCa含有量が高いため析出物が粗大化し、靭性、クリープ強度及び高温引張強度が低かった。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
本発明による低合金鋼はクリープ強度及び靭性が必要な用途に利用可能であり、特に水壁管や管よせ等のボイラ用部品に用いられるボイラ用鋼材として利用可能である。
マルテンサイト鋼の組織を説明するための模式図である。 図1中の領域40の組織を示す模式図である。 本発明の実施の形態による低合金鋼中の析出物の形状を示す模式図である。
符号の説明
41 ラス
50 母相
100 析出物

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.7%以下、Mn:0.1〜0.7%、Cr:1.5〜3.5%、Ti:0.005〜0.02%、B:0.0006〜0.01%、V:0.05〜0.3、Nb:0.01〜0.1%、Al:0.005〜0.05%、N:0.002〜0.05%、Mo+W:0.03〜3.5%、P:0.025%以下、S:0.025%以下、Ni:0〜0.8%、Ca:0〜0.005%、Nd:0〜0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
    ラス幅が2μm以下のラスマルテンサイト母相と大きさが1μm以下の析出物とを含むことを特徴とする低合金鋼。
  2. 質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.7%以下、Mn:0.1〜0.7%、Cr:1.5〜3.5%、Ti:0.005〜0.02%、B:0.0006〜0.01%、V:0.05〜0.3、Nb:0.01〜0.1%、Al:0.005〜0.05%、N:0.002〜0.05%、Mo+W:0.03〜3.5%、P:0.025%以下、S:0.025%以下、Ni:0〜0.8%以下、Ca:0〜0.005%、Nd:0〜0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、残部はFe及び不純物からなる素材を熱間加工して低合金鋼にする工程と、
    前記熱間加工した低合金鋼を1000〜1100℃に均熱する工程と、
    均熱後、前記低合金鋼を10℃/秒以上の冷却速度で焼入する工程と、
    焼入後、前記低合金鋼をAc1点以下の温度で焼き戻す工程とを備えることを特徴とする低合金鋼の製造方法。
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