JP2006117967A - 透明導電膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低抵抗率の透明導電膜を、有機フィルム上に低温で形成することを可能とする透明導電膜の形成方法を提供すること。
【解決手段】In−Sn−O系ターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法により有機フィルム上に透明導電膜を形成する方法であって、前記スパッタリングは、−70〜−130Vのバイアス電圧、0.1〜0.7Aのターゲット電流で行うことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】In−Sn−O系ターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法により有機フィルム上に透明導電膜を形成する方法であって、前記スパッタリングは、−70〜−130Vのバイアス電圧、0.1〜0.7Aのターゲット電流で行うことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、低抵抗の透明導電膜の形成方法に係り、特に、有機フィルム上に低抵抗の透明導電膜を低温で形成する方法に関する。
各種表示素子や薄膜太陽電池の電極部には、可視光線透過率が高く、低電気抵抗を有する透明導電膜を用いることが不可欠である。また、近年の携帯移動端末の急激な小型化・軽量化に伴って、透明電極基板にも、更に軽量の部材が要求されている。そのため、基板材料としてガラスに比べてより軽量の透明有機フィルム材料を用い、その上にIn−Sn−Oを主成分とする膜(以下ITO膜と記す)を積層した透明導電性フィルムが使用されつつある。
また、有機フィルム上に形成したITO膜を用いてカラー表示素子を作成する場合、ITO膜の表面抵抗は、20Ω/□程度であるのが望まれている。
ITO膜をガラス及び/または有機フィルム上に形成するためには、DCマグネトロンスパッタリング、RFマグネトロンスパッタリング、真空蒸着法、イオンプレーティング法などが用いられている。特に、大面積に対して膜厚分布を低減させた透明導電膜を形成するためには、DCマグネトロンスパッタリングが有効である。
有機フィルム上に積層されたITO膜は、ガラス基板上に積層されたITO膜に比較して、一般に比抵抗が高い。この理由には、主として二つの要因が考えられる。一つの要因は、プロセス温度がガラス基板上への成膜プロセスに比較して低いために、十分に結晶成長を行うことができないことに起因するものである。他の要因は、有機フィルムの剛性が低いため、ITO膜の膜厚を厚くすることが出来ないことに起因している。
有機フィルム上へのITO膜の形成においては、有機フィルムの転移温度が一般に200℃に満たないため、かかる温度以上に加熱することができず、ガラス上へのITO膜の形成時のように200℃を超えるような高い基板温度条件を使用することができない。特に、ポリエチレンテレフタレート(以下PETフィルムと記す)は、ガラスに比べて熱伝導率が小さく、熱膨張係数も大きいことから、高い成膜速度で被覆すると、基板表面の温度が上昇し、薄膜が剥離することがある。これを避けるためには、成膜時の基板温度の上昇を出来るだけ抑える必要がある。
また、有機フィルムの曲げに対する剛性はガラス基板に比べて小さいことから、ITO膜の膜厚を厚く形成すると、有機フィルムがITO膜の応力のために、カールが大きくなってしまったり、クラックが発生してしまったりする。更には、透過率の低下といった光学特性に対する弊害も起こってしまう。
従って、表面抵抗の小さなITO膜を有機フィルム上に形成するためには、ITO膜の膜厚を増加することなく、ITO膜の比抵抗を低減することが求められている。
一般に、DCマグネトロンスパッタリングにより形成されるITO膜の構造は、その成膜温度に強く依存すると言われており、基板温度を室温にした成膜では、結晶質部と非結晶質部が混合した構造となる。また、ITO膜の結晶質部の構造は、bixbite型であり、その結晶配向は、基板温度を室温〜200℃程度の温度範囲に設定した状態で成膜した場合、最密面である(222)面が基板に対して平行になるような結晶配向を示す。
これに対し、成膜時の基板温度が200℃を越えるような条件でITOを成膜した場合、(222)面のみならず(400)面がさらに基板に対して平行になるような結晶配向を示すと言われている。
しかし、基板温度が200℃越える高温プロセスによる低比抵抗化のための結晶配向制御は多く議論されているものの、低温プロセスで形成したITOを主成分とする透明導電膜の低比抵抗を実現するための構造制御は、これまで議論されていない。
本発明者らは、軽量であるとともに耐衝撃性に優れているプラスティック基板の特性を最大に生かすことに主眼をおき、有機フィルム基板の温度を上昇させることなく比抵抗を低減したITO膜を成膜することを検討した。特に、高温に弱いPETフィルム等の上に成膜するために、例えば、40℃以下という極めて低い基板温度(フィルム温度)条件で成膜し、その後の熱処理を必要とせずに、ITO膜の膜厚を増加させることなく、比抵抗の低い透明導電膜の形成を可能とする方法について検討を重ねた。
本発明は、以上のような事情の下になされ、結晶構造を含む低抵抗率の透明導電膜を、有機フィルム上に低温で形成することを可能とする透明導電膜の形成方法を提供することを目的とする。
DCマグネトロンスパッタ装置においては、成膜条件のうちバイアス電圧の制御が近年になって可能になってきている。本発明者らは、バイアス電圧は、成膜されたITO膜の特性を決定する重要なパラメータであると考え、検討を行った結果、次の知見を得た。
即ち、バイアス電圧が高すぎると、スパッタされた分子が基板に到達する際のエネルギーが大きいため、再スパッタ現象が起こる。再スパッタとは、一度堆積したITO膜がターゲットから飛んできた分子によってさらにスパッタされることである。
一方、バイアス電圧が低すぎると、ターゲットに到達する分子のエネルギーが低いために十分な膜厚が得られないため、電気的特性が低下する。なお、バイアス電圧が高いほど粒子の衝突のエネルギーが高くなり、ITO膜の結晶化が助長された薄膜が形成される。
ITO膜は、アモルファス構造よりも結晶構造のほうがより低抵抗であることが知られている。しかし、その形成メカニズムは未だ詳しく解明されていない。
また、ターゲット電流もITO薄膜の特性に影響を及ぼす重要なパラメータである。ターゲット電流を大きくすると、ターゲットに到達するイオンのエネルギーが高くなるため、ターゲットから飛び出す粒子は大きくなる。また、ターゲット電流が大きくなればなるほど成膜速度は増加し、同一の成膜時間であれば膜厚は厚くなる。
更に、飛び出す粒子がクラスタのように大きくなると、基板上に堆積された膜は粗くなる。また、ターゲット電流が大きくなれば膜の結晶化が進み、格子間原子や格子の乱れが減少するためにキャリア電子が移動しやすい状態になるため、抵抗率は低くなる。しかし、その反面、膜厚が厚くなるために可視光透過率は減少する。このことから、ターゲット電流においても電気的、光学的特性のかみ合った値を決定する必要がある。
本発明は、以上のような知見に基づきなされたものである。
即ち、本発明の一態様は、 In−Sn−O系ターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法により有機フィルム上に、(222)面及び(400)面からのX線回折強度が最も強い透明導電膜を形成する方法であって、前記スパッタリングは、−70〜−130Vのバイアス電圧、0.1〜0.7Aのターゲット電流で行うことを特徴とする透明導電膜の形成方法を提供する。
以上のように構成される本発明の透明導電膜の形成方法によると、1×10−3Ω・cm以下の、好ましくは7×10−4Ω・cm以下の低抵抗率の、(222)面及び(400)面からのX線回折強度が最も強い、例えば、酸化インジウムを主体とし、酸化スズを5〜10wt%含む透明導電膜を、有機フィルム上に、例えば、200℃未満、特に40℃以下の低温で形成することが可能である。
本発明の一態様に係る透明導電膜の形成方法では、スパッタリングは、−70〜−130Vのバイアス電圧、0.3〜0.7Aのターゲット電流で行うことが必要である。
バイアス電圧が−70V未満では、形成された透明導電膜の抵抗率が高く、また(222)面及び(400)面からのX線回折強度が最も強い結晶質を含む透明導電膜を得ることが困難となる。一方、バイアス電圧が−130Vを越えると、透過率が低くなり、透明導電膜としての使用が困難となるとともに、透明導電膜の表面の荒れがはなはだしくなる。好ましいバイアス電圧の範囲は、−70〜−80Vである。
ターゲット電流が0.3A未満では、形成された透明導電膜の抵抗率が高く、また(222)面及び(400)面からのX線回折強度が最も強い結晶質を含む透明導電膜を得ることが困難となる。一方、ターゲット電流が0.7Aを越えると、透過率が低くなり、透明導電膜としての使用が困難となるとともに、透明導電膜の表面の荒れがはなはだしくなる。好ましいターゲット電流の範囲は、0.3〜0.4Aである。
本発明の他の態様は、以上の方法によって得られた透明導電膜であって、1MHz〜60GHz帯の電磁波に対して20〜35dBのシールド特性を有することを特徴とする透明導電膜を提供する。
本発明によると、結晶構造を含む低抵抗率の透明導電膜を、有機フィルム上に低温で形成することを可能とする透明導電膜の形成方法が提供される。
以下、発明を実施するための最良の形態としての実施例を示し、本発明について、より具体的に説明する。
実施例1
本実施例では、図1に示す傾斜対向ターゲット型DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、ターゲットとしてIn2O3(90wt%)とSnO2(10wt%)の焼結体を使用し、有機フィルム基板として厚さ0.05mmのPETフィルムを使用して、室温においてITO膜を成膜した。
本実施例では、図1に示す傾斜対向ターゲット型DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、ターゲットとしてIn2O3(90wt%)とSnO2(10wt%)の焼結体を使用し、有機フィルム基板として厚さ0.05mmのPETフィルムを使用して、室温においてITO膜を成膜した。
基板温度の上昇を抑制するため、基板加熱用ヒーターは使用せず、ターゲットと基板までの距離を300mmと一定にして、基板を4.5rpmで回転させて成膜を行った。成膜条件は、次の通りである。
バイアス電圧:−10〜−130V、
ターゲット電流:0.3A、
アノード電圧:1V、
コイル電流:5A、
成膜時間:120分。
ターゲット電流:0.3A、
アノード電圧:1V、
コイル電流:5A、
成膜時間:120分。
なお、導入ガス流量は、最初にいくつかのパラメータで成膜し、最適であると思われる値であるAr流量65SCCM、O2流量0.55SCCMを採用した。この時のガス圧は、0.5Paであった。
上記表1から、−70V以上のバイアス電圧において、7.6×10−4以下の低い抵抗率が得られていることがわかる。
また、膜厚は、バイアス電圧が−70Vまでは350nmのほぼ一定の値が得られているが、−90V以上では膜厚は減少している。これは、スパッタされた粒子がバイアスによって基板上に引き付けられる際に、エネルギーが大き過ぎるために、膜表面において再スパッタ現象が生じたためと考えられる。従って、バイアス電圧が−130Vを越えると、膜厚が薄すぎて、好ましくない。
また、バイアス電圧が低いと、滑らかな表面状態が得られるが、これは、バイアス電圧により引き付けられる力が弱いために、粒子の運動エネルギーが小さくなり、そのため、基板への衝撃が小さくなったためである。一方、バイアス電圧が大きくなるに従って、表面の凹凸が大きくなるが、これは、粒子の運動エネルギーが増大し、基板衝撃が大きくなったことによるものと考えられる。また、再スパッタ現象により、膜表面が傷つけられたためでもある。従って、バイアス電圧は、−130Vを越える値であってはならない。
バイアス電圧による結晶構造の変化を、X線回折装置ATX−G(商品名、理学電機社製)により調べた。測定は、薄膜法2θスキャン(入射角ω=0.5°固定)10°〜70°0.1ステップ 4°/minにおいて、試料をスライドガラス上にシリコーングリースによりフラットに固定して行った。その結果、バイアス電圧が−50Vまではピークが見られないことから結晶化が起こっておらず、アモルファス膜であると考えられる。また、−70〜130Vにおいては、(222)と(40)のピークが見られ、結晶化していることがわかる。結晶化には、通常、150℃前後の温度が必要になる。しかし、本発明においては、バイアス電圧により大きなエネルギーを得た粒子が基板に衝突することにより、温度上昇と同等の効果を得られ、室温でも結晶化したITO膜が成膜されたものと考えられる。
次に、ホール効果において測定したキャリア電子密度と移動度について説明する。キャリア電子密度は、バイアス電圧が−10Vから−50Vまではほぼ同じ値をとっているが、バイアス電圧が−70Vであるときに最大の5×1020cm−3を示した。またホール移動度においても、バイアス電圧が−10V〜−50Vにおいて、5〜6cm2/V・sと低い値を示していた。これは、バイアス電圧が低い状態においては、イオン粒子を引き付けるエネルギーが小さく、基板上において十分に粒子が拡散されずに成長したためにキャリアが移動しにくい状態になったものと考えられる。
また、一方、バイアス電圧が−70V〜−130Vにおいては、高い移動度と高いキャリア電子密度を示した。これは、十分にエネルギーを持ったイオン粒子が基板上に拡散され、均一に成長した結果であると考えられる。
電磁波遮蔽効果は、測定法として図2に示す自由空間法を用い、40〜60GHz帯の周波数について測定した。その結果、図3に示すように、バイアス電圧が−10〜−50Vにおいては電磁波遮蔽効果は低く、5dB以下であるが、−70Vにおいて約20dBと高い数値を示した。しかし、バイアス電圧が大きくなるにつれて、電磁波遮蔽効果は減少していった。また、バイアスが−10V〜−50Vまでは抵抗率が10−3台であるのに対し、−70V以上では、抵抗率は10−4Ω・cm台となったために、電磁波遮蔽効果が高くなったものと考えられる。しかし、−70V〜−130Vまで、ほとんど抵抗率の違いがないことから、膜厚による電磁波遮蔽効果と抵抗率の相乗効果としての差であると考えられる。
次に、紫外から赤外領域までの透過率を分光光度計により測定し、これとバイアス電圧との関係性について検討した。その結果、バイアス電圧がいずれの値の場合にも、差はあるものの赤外領域において反射吸収が生じているのが確認された。プラズマ周波数は、キャリア密度の関数で表されることから、赤外反射吸収はキャリア電子密度と関係しているものと考えられる。また、キャリア電子密度が大きいほど赤外の反射吸収効果が大きいことがわかった。
実施例2
ターゲット電流を0.1〜0.7A、バイアス電圧を−70Vとしたことを除いて、実施例1と同じ条件にて成膜を行い、得られたITO膜の抵抗率、膜厚、結晶性、透過率、電磁波遮断効果をそれぞれ求めた。その結果を下記表2に示す。
ターゲット電流を0.1〜0.7A、バイアス電圧を−70Vとしたことを除いて、実施例1と同じ条件にて成膜を行い、得られたITO膜の抵抗率、膜厚、結晶性、透過率、電磁波遮断効果をそれぞれ求めた。その結果を下記表2に示す。
上記表2から、0.3〜0.7Aのターゲット電流において、7.0×10−4以下の低い抵抗率が得られていることがわかる。
また、膜厚は、ターゲット電流が増加するごとに大きくなっている。これは、ターゲット電流により大きなエネルギーを持ったイオンがターゲットに衝突したため、ターゲット粒子の大きさが大きくなったのと同時に、飛ぶターゲット粒子の量も増えたためである。
次に、ターゲット電流による結晶構造の変化を、X線回折装置ATX−G(商品名、理学電機社製)により調べた。測定は、薄膜法2θスキャン(入射角ω=0.5°固定)10°〜70°0.1ステップ 4°/minにおいて、試料をスライドガラス上にシリコーングリースによりフラットに固定して行った。その結果、ターゲット電流が0.1A〜0.2Aまではピークが見られなかった。これは、結晶化が起こらず、ITO膜はアモルファス膜であると考えられる。また、ターゲット電流が0.3Aからは(222)と(400)のピークが観測され、ターゲット電流が大きくなるに従って、ピークは強くなっていったことから、ターゲット電流が大きくなるに従って結晶性が向上しているものと考えられる。
次に、ホール効果において測定したキャリア電子密度と移動度、抵抗率との関係について説明する。抵抗率は、ターゲット電流が0.4Aのときに、最低抵抗率である3×10−4Ω・cmを示した。ターゲット電流が0.3A〜0.7Aの間においては、キャリア電子密度はほぼ一定であったのに対し、移動度は、最低で0.3Aにおいて15.45cm2/V・s、最高では0.2Aにおいて24.34cm2/V・sと幅広く変化した。これは、ターゲット電流が低い時には結晶化が進んでおらず、アモルファス膜であったために格子間原子や格子の乱れが多く、キャリアである価電子が移動しにくかったためであると考えられる。
一般に、キャリア移動度は、キャリアが結晶内で散乱されることにより決定される。キャリアの散乱機構としては、1)イオン化不純物散乱、2)中性不純物散乱、3)格子振動による散乱、4)転移による散乱、5)結晶粒界による散乱、が考えられている。しかし、透明導電膜においては、ドーパントの添加によりキャリアを透明性を保つ限界まで生成させた状態にするので移動度の温度依存性がなくなることから、格子振動や転移による散乱は重要ではなく、また、In2O3の場合、キャリアの平均自由行程が結晶粒径に比べて1桁以上小さくなることから、結晶粒界も重要でないものと判断される。従って、ITOの場合、ドーパントによって結晶内に生成するイオン化不純物中心または中性不純物中心が透明導電膜内においてキャリアが散乱される要因であると考えられる。
ITOにおいて、イオン化不純物とは、In2O3結晶内でIn3+のサイトに置換固溶したSn4+を指す。このイオン化不純物と自由電子の間に働くクーロン力が散乱現象を引き起こす。しかし、ターゲット電流が低い値において結晶化が起こっていないため、低いターゲット電流においては、イオン化不純物散乱は起こっていないものと考えられる。従って、低いターゲット電流における移動度の増加は、中性不純物散乱が原因であると考えられる。
中性不純物は、ドーパントのうちイオン化せずに中性であるものであり、ITOにおいてはIn2O3格子間に位置するSn原子やSnO2の複合体などが考えられ、これによって中性不純物散乱が起こり、移動度が高くなったものである。また、ターゲット電流が0.5A以上において、0.4Aの場合と比べ移動度が減少した原因として、電子と電子および電子と不純物による散乱が減少したために移動度が減少したものと考えられる。
電磁波遮蔽効果は、測定法として図2に示す自由空間法を用い、40〜60GHz帯の周波数について測定した。その結果、図4に示すように、ターゲット電流が0.7Aにおいて特に優れた電磁波遮蔽効果が見られた。また、ターゲット電流が0.3A〜0.7Aにおいてほぼ同じような良好な電磁波遮蔽効果が得られた。これは、それらの各パラメータにおける抵抗率がほぼ同じであったことから説明できる。
ターゲット電流が0.7Aにおいて特に優れた電磁波遮蔽効果が得られた理由として、一般にITO膜の電磁波遮蔽効果は、膜厚が厚ければ高くなることが知られているので、膜厚の差であると考えられる。しかし、0.7Aにおいて可視光による透過率が低いこと、またイオン衝撃によるPET基板の歪み、20dB程度で電磁波のほぼ99%以上を遮蔽できることを考慮すると、膜厚を大きくして遮蔽効果を得るよりも、可視光による透過率を高め、低抵抗率の膜のほうが電磁波遮蔽材として優れていると言える。
次に、紫外から赤外領域までの透過率を分光光度計により測定し、これとターゲット電流との関係性について検討した。その結果、ターゲット電流が0.1A及び0.2Aの赤外波長における反射吸収効果はあまり見られなかった。これは、0.2Aでは、0.3Aの場合に比べて一桁程度キャリア電子密度が小さかったためであると考えられる。また、0.1Aにおいては膜厚が薄すぎるため、また、導電性がほとんどないため、ホール効果測定の結果が得られなかったが、赤外反射吸収のグラフから、キャリア電子密度が0.2Aと同等、あるいはそれ以下であるものと予測される。
ターゲット電流が0.3A〜0.5Aの間では、赤外の吸収反射の振舞いがほとんど同じになった。これもキャリア電子密度が関係しており、ホール効果の測定において測定したキャリア電子密度の傾向と一致する。しかし、0.6Aと0.7Aにおいて0.3A〜0.5Aと比較してもキャリア電子密度の値はほぼ同じなのに対し、赤外吸収反射が非常に顕著に見られた。これはある程度膜厚が関係しているのではないかと思われる。
Claims (8)
- In−Sn−O系ターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法により有機フィルム上に、(222)面及び(400)面からのX線回折強度が最も強い透明導電膜を形成する方法であって、前記スパッタリングは、−70〜−130Vのバイアス電圧、0.1〜0.7Aのターゲット電流で行うことを特徴とする透明導電膜の形成方法。
- 前記透明導電膜の比抵抗が、7×10−4Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜の形成方法。
- 前記透明導電膜が、酸化インジウムを主体とし、酸化スズを5〜10wt%含むことを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
- 前記スパッタリングのバイアス電圧は、−70〜−80Vであることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
- 前記スパッタリングのターゲット電流は、0.3〜0.4Aであることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
- 前記スパッタリングにおける有機フィルムの温度は、200℃未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
- 前記スパッタリングにおける有機フィルムの温度は、40℃以下であることを特徴とする請求項6に記載の透明導電膜の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られた透明導電膜であって、1MHz〜60GHz帯の電磁波に対して20〜35dBのシールド特性を有することを特徴とする透明導電膜。
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