JP2006113145A - 反射防止膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 霧化した塗布液を曲面又は傾斜面を有する基材に付着させることにより基材上に均一の厚さの反射防止膜を形成する方法において、塗布液に界面活性剤を配合することを特徴とする。
【選択図】 図8
Description
(1) 霧化した塗布液を曲面又は傾斜面を有する基材に付着させることにより前記基材上に均一の厚さの反射防止膜を形成する方法において、前記塗布液に界面活性剤を配合することを特徴とする方法。
(2) 上記(1) に記載の反射防止膜の形成方法において、前記霧化を超音波素子により行うことを特徴とする反射防止膜の形成方法。
(3) 上記(1) 又は(2) に記載の反射防止膜の形成方法において、前記膜形成剤が有機金属化合物又はその加水分解物及び/又は重合物、又は金属塩であることを特徴とする反射防止膜の形成方法。
(4) 上記(3) に記載の反射防止膜の形成方法において、前記有機金属化合物が金属アルコキシドであることを特徴とする反射防止膜の形成方法。
(5) 上記(4) に記載の反射防止膜の形成方法において、さらに多座配位有機化合物を含有することを特徴とする反射防止膜の形成方法。
(6) 上記(1) 〜(4) に記載の反射防止膜の形成方法において、前記基材及び前記塗布液に帯電処理を施すことを特徴とする反射防止膜の形成方法。
(7) 上記(1) 〜(6) に記載の反射防止膜の形成方法において、前記基材が、開口数0.6以上のレンズ、半球レンズ、非球面レンズ、ボールレンズ、フルネルレンズ、プリズムレンズ及び回折光学素子からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする反射防止膜の形成方法。
(8) 上記(1) 〜(7) に記載の反射防止膜の形成方法において、前記基材が、ガラス、セラミックス又はプラスチックのいずれかからなることを特徴とする反射防止膜の形成方法。
(9) 上記(1) 〜(8) に記載の反射防止膜の形成方法において、前記反射防止膜が単層であることを特徴とする反射防止膜の形成方法。
(10) 上記(1) 〜(8) に記載の反射防止膜の形成方法において、前記反射防止膜が多層であり、屈折率が1.5以下の低屈折率層と、屈折率が1.8以上の高屈折率層をそれぞれ少なくとも1層含むことを特徴とする反射防止膜の形成方法。
(11) 上記(1) 〜(10) に記載の反射防止膜の形成方法において、前記反射防止膜の外面に撥水層を形成することを特徴とする反射防止膜の形成方法。
本発明を適用する基材は曲面又は傾斜面を有するもので、具体的には、レンズ、プリズムレンズ、ボールレンズ、半球レンズ、非球面レンズ、フルネルレンズ及び回折光学素子である。特に開口数が0.6以上のレンズの場合、本発明の方法は効果的である。
反射防止膜の形成に用いる塗布液は、膜形成剤、界面活性剤、触媒、溶媒、及び必要に応じて多座配位有機化合物及び硬化剤を含有する。
膜形成剤としては、Si,Ti,Zr,Ce,Zn,Sn等の金属のアルコキシドM(OR)n(ただし、Mは金属であり、Rはアルキル基である。)又は金属塩を使用するのが好ましい。金属のアルコキシドの場合、アルキル基Rは好ましくは1〜10の炭素数を有する。金属アルコキシドの代わりにその加水分解物及び/又は重合物を使用してもよい。加水分解物及び重合物は明確に区別されるものではなく、例えばSiの場合、いずれも-Si-O-Si-の骨格を有するものである。重合物としては溶解度の観点からオリゴマーが好ましく、三量体程度であるのがより好ましい。このように金属アルコキシドのオリゴマーを用いると成膜性が良い。金属塩は酢酸塩、ギ酸塩等のカルボキシレート類、又は硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、塩化物、フッ化物等の鉱酸塩が好ましい。塗布液中の膜形成剤の濃度は、1〜30質量%であるのが好ましく、2〜10質量%であるのがより好ましい。膜形成剤の濃度が1質量%未満であると、成膜速度が低すぎて、生産性が低い。また膜形成剤の濃度が30質量%超であると、ミスト化しにくい。
界面活性剤を含有することにより、塗布液の表面張力は低下し、霧化した液滴は基材に付着後直ちに平坦化する。すなわち、塗布液のレベリング性が向上する。また塗布液の霧化粒子の径が小さくなるため、レベリングが早い。
触媒を用いる場合、酸触媒又は塩基触媒を用いる。酸触媒としては塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸が好ましいが、酒石酸、フタル酸、マレイン酸、ドデシルコハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルナジック酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジクロルコハク酸、クロレンディック酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ドデシルコハク酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ジクロルコハク酸、無水クロレンディック酸等の有機酸又はその無水物も使用できる。塩基触媒は好ましくはアンモニアである。触媒は0.01 mol以下であるのが好ましく、0.001 mol以下であるのがより好ましい。
溶媒は、膜形成剤(有機金属化合物又はその加水分解物及び/又は重合物、又は金属塩)が可溶で、ゾル−ゲル反応に通常用いられる有機溶媒が好ましい。具体例としては、炭素数が1〜10のアルコール類、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコキシアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、テトラヒドロキシフラン、ジオキサン等の環状エーテル類等である。これらの溶媒は組み合わせて用いることもできる。
水は金属アルコキシドの加水分解反応に必要であるが、大気中の水分を利用する場合には添加する必要がない。水/有機溶媒の比は、有機金属化合物の加水分解反応に応じて適宜設定することができる。
(a) 多座配位有機化合物
金属アルコキシドに多座配位有機化合物を配位させてもよい。多座配位有機化合物としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトン類、アルカノールアミン類等が挙げられる。金属アルコキシドは金属によって加水分解速度が異なり、ZrやTi等の場合には加水分解速度が早い。そのため、ZrやTi等のアルコキシドを用いる場合、基材に付着した塗布液が平坦化する前に加水分解及び重合が進んでしまうため、均一な膜が得られないことがある。その場合、金属アルコキシドに多座配位有機化合物を配位させると、金属アルコキシドの加水分解が遅らされ、膜の均一性を向上させることができる。多座配位有機化合物のmol数は膜形成剤(金属アルコキシド)を形成する金属のmol数に対して0.5〜2倍であるのが好ましく、等倍であるのがより好ましい。多座配位有機化合物のmol数が0.5倍未満であると膜の均一性作用が不十分であり、また2倍超としてもそれに見合う効果の向上は得られない。
プラスチック基材等の耐熱性が低い基材に反射防止膜を形成する場合、高温度で焼成することができないので、焼成せずに高硬度を示す反射防止膜を形成する必要がある。このような場合、塗布液に熱又は光により硬化する有機化合物を添加しておくのが好ましい。熱硬化性又は光硬化性の有機化合物としては、一分子当たり2個以上の結合基(不飽和結合、エポキシ基等)を有する有機化合物が挙げられる。硬化剤は膜形成剤の0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.5〜1.5質量%であるのがより好ましい。硬化剤が0.1質量%未満であると十分な硬化作用が得られず、10質量%超とすると逆に軟らかくなり、また屈折率等の膜の本来の特性を失ってしまう。
反射防止膜は単層又は多層であり、多層の場合、低屈折率層及び高屈折率層をそれぞれ少なくとも1層含むのが好ましい。低屈折率層の屈折率は1.5以下であるのが好ましく、高屈折率層の屈折率は1.8以上であるのが好ましい。低屈折率層は、シリカ、フッ素含有シリカ等からなるのが好ましく、高屈折率層は、チタニア、ジルコニア、セリア、酸化亜鉛及び酸化錫のいずれか、又はこれらの複合組成物からなるのが好ましい。
基材への反射防止膜の形成は、図8に示す装置により行うことができる。この装置は、塗布液1を超音波素子2により霧化するチャンバ3と、加熱板4上に基材5を載置するとともに導管6を介して霧化チャンバ3と連通している塗布チャンバ7と、霧化チャンバ3に開口し、ミスト化により減少する塗布液1を補給する塗布液供給管8と、霧化した塗布液のミスト9を塗布チャンバ7に搬送するためのキャリアガス10を供給する管11とを具備する。キャリアガス10は、塗布液1と反応しないように、低湿度の窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスであるのが好ましい。加熱板4は基材5を塗布液1の沸点未満の温度に加熱する。塗布チャンバ7には、キャリアガス10と未塗布のミスト9とを排気するための孔12が設けられている。
(1) SiO2塗布液の作製
テトラエトキシシランをSiO2換算で10質量%になるように溶解させたエタノールに、テトラエトキシシランの1.2モル倍の水を1N塩酸として添加した。室温で24時間攪拌した後、テトラエトキシシランの0.2モル倍の水を加え、更に24時間攪拌した。得られた加水分解溶液に、加水分解物100質量%(SiO2換算)当たり0.1質量%の割合で、界面活性剤としてポリオキシエチレンオレイルエーテルを加え、さらにエタノールを加えて、加水分解物の濃度が3質量%の塗布液(以下、「SiO2塗布液」という)を作製した。
超音波振動素子2として超音波ミスト発生装置(Pyrosol 7901型)を具備する霧化チャンバ3内に上記SiO2塗布液1を封入し、また塗布チャンバ7内にホウケイ酸クラウン光学ガラス(Bk7)からなるレンズ形状(NA:0.85)の基材5を設置した。ミスト9の発生量は、FREQUENCEダイヤル(共振周波数)及びPUSSIANCEダイヤル(パワー)により調整した。
(a) 膜厚及び屈折率:分光反射法により測定した。
(b) 全透過率及びヘイズ値:U4000分光光度計[(株)日立製作所製]により測定した。
(d) 鉛筆強度:各硬度の鉛筆で表面をこすって、傷がつくか否かを評価した。
(e) テープ剥離強度:SiO2膜の1cm×1cmの領域に均等に100個の枡目をカッターナイフにより形成し、そこにセロハンテープを貼付した後剥離することにより測定した。テープ剥離強度の評価基準は、枡目が全く剥離しない場合は○であり、1つでも剥離した場合は×である。
(1) ZrO2塗布液Aの作製
3質量%(ZrO2換算)のテトラブトキシジルコニウムを2−ブタノールに溶解させた後、テトラブトキシジルコニウムと同モルのアセチルアセトンを多座配位有機化合物として添加し、2時間攪拌した。得られた溶液に、テトラブトキシジルコニウム100質量%(ZrO2換算)当たり0.1質量%の割合で、界面活性剤としてソルビタンモノオレエートを加え、テトラブトキシジルコニウム塗布液(以下、「ZrO2塗布液A」という)を作製した。
実施例1〜3と同じ装置を用い、霧化チャンバ3にZrO2塗布液Aを封入し、また塗布チャンバ7内にレンズ形状(NA:0.85)のBk7基材5を設置した。FREQUENCEダイヤルを500、PUSSIANCEダイヤルを550に設定し、ZrO2塗布液Aを霧化させ、ミスト9を生成した。キャリアガス10として窒素ガスを3L/分の送量で霧化チャンバ3内に送給し、ミスト9を塗布チャンバ7に送給した。塗布チャンバ7の温度は23℃、湿度は53%であった。基材5は50℃に加熱し、成膜時間は実施例4では120秒間、実施例5では180秒間、実施例6では240秒間とした。
(1) ZrO2塗布液Bの作製
5質量%(ZrO2換算)のテトラブトキシジルコニウムを2−ブタノールに溶解させた後、テトラブトキシジルコニウムと同モルの水を含む2−メトキシエタノールを添加し、2時間攪拌した。得られた溶液に、テトラブトキシジルコニウム100質量%(ZrO2換算)当たり0.1質量%の割合で、界面活性剤としてソルビタンモノオレエートを加え、テトラブトキシジルコニウム塗布液(以下、「ZrO2塗布液B」という)を作製した。
実施例1〜3と同じ装置を用い、霧化チャンバ3にZrO2塗布液Bを封入し、また塗布チャンバ7内にレンズ形状(NA:0.85)のBk7基材5を設置した。FREQUENCEダイヤルを500、PUSSIANCEダイヤルを500に設定し、ZrO2塗布液Bを霧化させ、ミスト9を生成した。キャリアガス10として窒素ガスを10 L/分の送量で霧化チャンバ3内に送給し、ミスト9を塗布チャンバ7に送給した。塗布チャンバ7の温度は23℃、湿度は23%であった。基材5は50℃に加熱し、成膜時間は実施例7では120秒間、実施例8では180秒間、実施例9では240秒間とした。
ZrO2塗布液Aをレンズ形状(NA:0.85)のBk7基材5に2000 rpmで30秒間スピンコートした後、120℃で30分間乾燥し、厚さ86 nmのZrO2膜を形成した。その上に、実施例1の成膜条件で厚さ90 nmのSiO2膜を形成し、ZrO2/SiO2多層膜を製造した。得られた多層膜を実施例1と同様に評価した。多層膜は透明であり、傷やムラは認められなかった。SiO2塗布液の組成(テトラエトキシシランの濃度(SiO2換算)及び界面活性剤の種類)、成膜条件(成膜時間、成膜中の基材の加熱温度及び焼成温度)、及び反射防止膜の特性(膜厚、レンズ中央部と縁部での膜厚差、屈折率、全透過率、ヘイズ値、鉛筆強度及びテープ剥離強度)を表1に示す。
レンズ形状(NA:0.85)のBk7基材5に形成した実施例4のZrO2膜の上に、実施例1の成膜条件で厚さ90 nmのSiO2膜を形成し、ZrO2/SiO2多層膜を製造した。得られた多層膜を実施例1と同様に評価した。得られた多層膜は透明であり、傷やムラは認められなかった。ZrO2塗布液Aの組成(テトラブトキシジルコニウムの濃度(ZrO2換算)及び界面活性剤の種類)、SiO2塗布液の組成(テトラエトキシシランの濃度(SiO2換算)及び界面活性剤の種類)、成膜条件(成膜時間、成膜中の基材の加熱温度及び焼成温度)、及び反射防止膜の特性(膜厚、レンズ中央部と縁部での膜厚差、屈折率、全透過率、ヘイズ値、鉛筆強度及びテープ剥離強度)を表1に示す。
(2) ポリオキシエチレンオレイルエーテル
(3) ZrO2塗布液Aは多座配位有機化合物を含有し、ZrO2塗布液Bは多座配位有機化合物を含有しない。
(4) テトラブトキシジルコニウム(重量%、ZrO2換算)。
2・・・超音波素子
3・・・霧化チャンバ
4・・・加熱板
5・・・基材
6・・・導管
7・・・塗布チャンバ
8・・・塗布液供給管
9・・・ミスト
10・・・キャリアガス
11・・・キャリアガス供給管
12・・・排気孔
Claims (11)
- 膜形成剤を含有する霧化した塗布液を曲面又は傾斜面を有する基材に付着させることにより前記基材上に均一の厚さの反射防止膜を形成する方法において、前記塗布液に界面活性剤を配合することを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の反射防止膜の形成方法において、前記霧化を超音波素子により行うことを特徴とする反射防止膜の形成方法。
- 請求項1又は2に記載の反射防止膜の形成方法において、前記膜形成剤が有機金属化合物又はその加水分解物及び/又は重合物、又は金属塩であることを特徴とする反射防止膜の形成方法。
- 請求項3に記載の反射防止膜の形成方法において、前記有機金属化合物が金属アルコキシドであることを特徴とする反射防止膜の形成方法。
- 請求項4に記載の反射防止膜の形成方法において、さらに塗布液が多座配位有機化合物を含有することを特徴とする反射防止膜の形成方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止膜の形成方法において、前記基材及び前記塗布液に帯電処理を施すことを特徴とする反射防止膜の形成方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止膜の形成方法において、前記基材が、開口数0.6以上のレンズ、半球レンズ、非球面レンズ、ボールレンズ、フルネルレンズ、プリズムレンズ及び回折光学素子からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする反射防止膜の形成方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止膜の形成方法において、前記基材が、ガラス、セラミックス又はプラスチックのいずれかからなることを特徴とする反射防止膜の形成方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止膜の形成方法において、前記反射防止膜が単層であることを特徴とする反射防止膜の形成方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止膜の形成方法において、前記反射防止膜が多層であり、屈折率が1.5以下の低屈折率層と、屈折率が1.8以上の高屈折率層をそれぞれ少なくとも1層含むことを特徴とする反射防止膜の形成方法。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の反射防止膜の形成方法において、前記反射防止膜の外面に撥水層を形成することを特徴とする反射防止膜の形成方法。
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