JP2006104519A - 高靭性熱間工具鋼およびその製造方法 - Google Patents

高靭性熱間工具鋼およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
熱間加工用の金型の製造材料とする熱間工具鋼において、大型の金型素材としても、高い硬さをもたせることにより長い金型寿命を享受するとともに、高い靭延性を確保して、金型使用中に割れが発生する危険を低減した高靭性熱間工具鋼を提供する。
【解決手段】
凝固時の固相線温度から液相線温度までの平均冷却速度が0.025℃/秒以上の条件で熱間工具鋼を造塊し、1240〜1360℃の温度範囲に加熱して、晶出した炭化物および炭窒化物の固溶化処理を施すことによって、鋼中に晶出した炭化物および炭窒化物、ならびに酸化物系の介在物を合わせた存在密度が、鋼の断面積1mm2あたり、1)円相当径が50μmを超える大型のものは0.01個以下であり、かつ、2)円相当径1〜50μmの小型のものは100個以下であるものを得る。
【選択図】 なし

Description

本発明は、熱間鍛造型、熱間プレス型、ダイカスト型、熱間押出し型等の金型を製造する材料として使用される熱間工具鋼において、硬さを高くしても高い靭延性が低くならず、したがって割れが発生するおそれが小さく、長い金型寿命を得ることができる熱間工具鋼に関する。
熱間金型の使用寿命に限界を与える損傷は、摩耗やヒートチェックなどによって生じることが多く、そうした現象を低減するためには、一般に金型の硬さを増加させることが効果的であるから、鋼材の硬さを増す努力がなされている。しかし近年は、従来は複数の部品に分かれていたものを、生産効率の向上を狙って一体に製造することが多くなり、それに伴って金型が大型化し、摩耗やヒートチェックを低減するために硬さを増すことが、困難になってきている。この困難は、下記の二つの原因にもとづくものである。
1)金型の大型化によって、素材を焼入するときの冷却速度が十分に確保できなくなり、同じ硬さでも、小型の金型に比べて衝撃値が低くなること。
2)大型の金型を製造する素材は大断面の製品でなければならず、大断面の素材を製造するためには大型の鋼塊に鋳造する必要があり、鋼塊サイズの大型化にともない凝固時の冷却速度が低下すること。冷却速度が低下すると、炭化物、とくにバナジウムの炭化物VCや、炭窒化物、とくにバナジウムの炭窒化物V(C,N)の粗大なものが晶出したり、Mn,Si,Alなどの酸化物またはこれらの複合酸化物なども粗大化したりして、撃値が大きく低下する。晶出が問題になる炭化物および炭窒化物は、主としてバナジウムのそれらであるから、以下の記述においては、それぞれ「VC」および「V(C,N)」をもって代表させる。
このような理由から、大型の金型では、摩耗やヒートチェックに耐える硬さにしようとすると衝撃値が低下して、金型使用初期における「大割れ」が発生しやすくなる。そのために、実現できる硬さには限界があった。
こうした、大型の金型の素材においては硬さと靭性とを両立させることが困難である、という問題を解決する手段として、焼入時の冷却速度不足を補うこと、すなわち、金型材料の焼入性不足を改善することが企てられ、その手段として、MnやMoのような焼入性を向上させる元素の添加量を増すことが提案されている。しかし、その効果にはおのずから限界がある。
一方、鋼塊サイズの大型化にともなう、晶出炭化物VCや晶出炭窒化物V(C,N)、酸化物系介在物の粗大化と、それがひきおこす衝撃値の低下を防止する対策として、VやOの含有量の上限を規制することが提案されている。ところが、晶出するVCやV(C,N)、酸化物系介在物の大きさは、VやOの含有量だけではなく、鋼塊のサイズによっても異なること、すなわち凝固時の冷却速度にも大きく依存することから、成分だけの調整では、十分な靭性改善効果は望めない。
JIS−SKD61に代表される熱間工具鋼には、焼入加熱時の結晶粒粗大化防止と焼戻し軟化抵抗向上のために、1%程度のVが添加されている。このVは、平衡状態図的には1200℃以上に加熱すればすべて固溶するはずであるが、実際には、凝固時の濃化溶鋼中に非常に粗大なVCやV(C,N)が晶出し、それらは1200℃程度の加熱では、工業的に実施可能な処理時間内に固溶させることができない。VC、V(C,N)が残存すると、それを起点として破壊することにより衝撃値が低下し、金型の早期割れが起こりやすくなるので、晶出VCおよびV(C,N)は、とりわけ重大な問題を招いている。
粗大な晶出VC、V(C,N)に起因する衝撃値の低下を防ぐためには、上記の理由で、1200℃よりも高い温度で長時間の加熱を行なって、晶出物を固溶させる熱処理が必要になる。さらにこの晶出VC、V(C,N)の大きさは、鋼塊の大きさが大きいほど、すなわち凝固時の冷却速度が遅いほど大きくなるから、鋼塊サイズが大きいほど、より高い温度で、より長い時間の固溶化熱処理が必要となる。
結局、凝固時に実現できる冷却速度には実際上の上限があるので、それを前提にし、ある限度内ではあるが、凝固時の冷却速度に対応する晶出VC、V(C,N)の大きさに応じて、その固溶化のための熱処理条件を決定することが実際的であって、不相当に高温かつ長時間の固溶化熱処理を施すことなく、したがってコストを高くすることなく、靭性の高い熱間工具鋼を得ることが賢明である、という結論に至る。
このような見地から、発明者らは、凝固時の冷却速度(液相線から固相線までの平均冷却速度)と晶出炭化物VC、炭窒化物V(C,N)のサイズとの関係、およびそれら晶出物のサイズと固溶化熱処理の温度および時間との関係を詳細に調査し、凝固時の冷却速度に応じた最適な固溶化熱処理の条件を見出した。それに立脚して、大型の金型素材を製造しても、従来製品に比べて高い衝撃値が得られる熱間工具鋼と、その製造方法を確立した。
本発明の目的は、上記した発明者らの知見にもとづき、熱間加工用の金型を製造する材料とする熱間工具鋼において、大型の金型素材としても、高い硬さをもたせることにより長い金型寿命を享受するとともに、高い靭延性を確保して、金型使用中に割れが発生する危険を低減した高靭性熱間工具鋼と、その製造方法を提供することにある。
本発明の高靭性熱間工具鋼は、鋼中に晶出した炭化物および炭窒化物、ならびに酸化物系の介在物を合わせた存在密度が、鋼の断面積1mm2あたり、1)円相当径が50μmを超える大型のものは0.01個以下であり、かつ、2)円相当径1〜50μmの小型のものは100個以下であることを特徴とする。
本発明の高靭性熱間工具鋼を製造する方法は、造塊に当たって、凝固時の固相線温度から液相線温度までの平均冷却速度が0.025℃/秒以上であり、造塊後に、鋼塊のまま、または分塊鍛造後、1240〜1360℃の温度範囲に加熱することにより、晶出した炭化物および炭窒化物の固溶化処理を施すことを特徴とする。
本発明の高靭性熱間工具鋼は、これまで製造されてきた大型の金型素材においても、小型の金型素材において実現していた高い硬さと高い靭性とがバランスして得られるから、この鋼で製造した金型は、割れ発生の危険が低く、かつ、摩耗やヒートチェックに耐えて長寿命を享受することができる。本発明の製造方法は、こうした特性をもつ高靭性熱間工具鋼を、確実に製造することを可能にしたものである。
上述のように、粗大な晶出炭化物および炭窒化物、ならびに酸化物系介在物は、破壊の起点として作用することにより、金型の衝撃値を大幅に低下させる。このため、これらの粗大な晶出物はできるだけ低減することが好ましい。発明者らは、所望の衝撃値が得られるしきい値を決定するため、金型から切り出した衝撃試験片で衝撃値が低いものの破面を観察し、起点として作用する粗大晶出物を確認した結果、円相当径で50μmを超える大型のもの、または1〜50μmの比較的微細な炭化物、炭窒化物であってもクラスター状に存在しているものが、破壊の起点となっており、したがってその存在密度は厳重に規制すべきこと、また円相当径で1μm未満の大きさの晶出物は、実質的に破壊の起点として作用せず、衝撃値を低下させないことを確認した。以上の知見にもとづき、金型の衝撃値を低下させないために、円相当径が50μm以上の、および1〜50μmの、晶出した炭窒物および炭窒化物、ならびに酸化物系介在物の存在密度の上限を、それぞれ0.01個/mm2と100個/mm2に規定した。
本発明の高靭性熱間工具鋼を構成する合金の代表的な組成は、重量基準で、C:0.3〜0.5%、Si:0.05〜1.5%、Mn:0.3〜2%、Cr:3〜6%、Mo+0.5W:0.5〜3.5%、V:0.5〜1.5%、Al:0.001〜0.025%およびN:0. 005〜0.025%を含有し、P:0.05%以下、S:0.015%以下、O:0.0025%以下であって、残部Feおよび不純物からなる合金組成を有する。
本発明の高靭性熱間工具鋼はまた、上記の合金成分に加えて、Ni:2%以下、Co:5%以下、Cu:1%以下、Ti:0.2%以下、Zr:0.2%以下およびNb:0.2%以下の1種または2種以上を含有することができる。
上記の合金組成を選択した理由を、以下に説明する。
C:0.3〜0.5%
Cは、金型性能として重要な硬さ、耐摩耗性を確保するために必要な元素である。熱間工具鋼として十分な硬さ、耐摩耗性を確保するためには、0.3%以上のCの存在が必要である。0.5%を超えて過度に添加した場合は、焼入時に固溶しない炭化物が増加することが原因となって、衝撃値の低下を招く。
Si:0.05〜1.5%
Siは、製鋼時に脱酸元素として必要であり、また、その含有量を高めると、被削性および焼戻し軟化抵抗性が向上するという利益もあるから、少なくとも0.05%のSiを添加する。ただし、添加量が多くなると靭性が低下するから、1.5%を上限とする。
Mn:0.3〜2%
Mnは焼入性および硬さの確保のために必要な成分であり、この目的で、添加量を0.3%以上とした。過剰に添加すると焼入れ性が高くなりすぎて、焼入れ時に残留γ相が多量に生成し、衝撃値が低下したり、焼きなまししても硬さが低下しなくなったりすることがあるため、その上限を2%とした。
P:0.05%以下、好ましくは0.015%以下
Pは衝撃値を低下させるため、一般には低減することが好ましい元素であるが、不可避的に存在する。0.05%が許容限度であり、好ましくは0.015%以下である。
S:0.015%以下
SはMnSを形成して衝撃値を低下させるため、やはり低減することが好ましいが、鋼中には不可避的に入ってくる。含有する場合も、0.015%以下に低減することが好ましい。
Cr:3〜6%
Crは炭化物および炭窒化物を形成して、基地を強化するとともに、耐摩耗性を向上させる。焼入性を確保するためにも、Crは必要である。このような効果を得るため、3%以上の添加が必要である。ただし、Cr含有量の増加は焼戻し軟化抵抗を弱めて、金型性能を低下させる。このため、Cr量の上限を6%とした。
Mo+0.5W:0.5〜3.5%
MoもWも、炭化物および炭窒化物を形成して基地を強化し、耐摩耗性を向上させる。焼入性確保のためにも、必要な成分である。添加は、どちらか一方単独でもよいし、複合してもよい。MoとWとは同等の効果を有し、Wの原子量ははMoの約2倍であることから、よく知られているように、両者の添加量をMo当量(Mo+1/2W)で規定する。上記の効果を得るためには、Mo当量にして0.5%以上の添加が必要である。過剰に添加してもその効果は飽和し、経済的に不利となるため、上限値として3.5%を定めた。
熱間工具鋼の晶出炭化物および炭窒化物、ならびに酸化物系介在物の存在密度は、炭窒化物形成元素であるV含有量と、O含有量の増加によって増加するため(Vのほかに、Ti,NbおよびZrも炭化物、炭窒化物の形成に寄与するから、それらの含有量も問題であるが、重要なのはV含有量である。)、VおよびOの含有量を規定する必要がある。また、その他の合金含有量についても、以下の理由で、その範囲を規定した。
V:0.5〜1.5%
Vは、焼戻し時に炭化物および炭窒化物を形成して析出することにより、基地の強化や耐摩耗性の向上に役立つ元素である。それに加えて、焼入れ加熱時には微細な炭化物および炭窒化物を形成することにより、結晶粒の粗大化を抑制して、衝撃値の低下を抑制する効果を有する。このような効果を得るためには0.5%以上のVを添加することが必要である。一方、上限の1.5%を超える過剰量を添加すると、再三述べたように、凝固時に炭化物や炭窒化物として粗大な晶出物を生成し、前述した(晶出炭化物・炭窒化物+酸化物系介在物)の存在密度に関する限定条件を満たすことができず、靭性を低下させる。
Al:0.001〜0.025%
Alは製鋼時に脱酸元素として作用するほか、鋼中のNと結合し窒化物となって微細に分散し、焼入れ加熱時の結晶粒粗大化を抑制するはたらきがある。このような効果を得るためには、少なくとも0.001%のAlの添加が必要である。多量に添加してもその効果が飽和するため、上限を0.025%とした。
N:0.005〜0.025%
Nは鋼中のAlやVと結合して窒化物を形成し、それが微細に分散することにより焼入れ加熱時の結晶粒粗大化を抑制し、衝撃値低下を防止するのに効果のある元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要である。多量に加えてもその効果が飽和するので、0.025%の上限値以内の添加に止める。
O:0.0025%以下
Oは酸化物系介在物を形成し、衝撃値を低下させる。前述した(晶出炭化物・炭窒化物+酸化物系介在物)の存在密度の条件を満たして衝撃低の低下を抑制するためには、O含有量を0.0025%以下にする必要がある。
Ni:2%以下、Cu:1%以下
NiもCuも、焼入れ性を高めるとともに基地の強靭化にとって有効であり、必要に応じて添加することができる。過度に添加しても、効果が飽和するとともに経済的に不利となるため、それぞれの上限を2%と1%とした。
Co:5%以下
固溶強化により強度を向上させる元素であり、必要に応じて添加することができる。過度に添加してもその効果が飽和し、経済的に不利になるため、上限値5%を設けた。
Ti:0.2%以下、Zr:0.2%以下、Nb:0.2%以下
これらの成分はいずれも、TiC,ZrCおよびNbCのような炭化物、ならびに、Ti(C,N),Zr(C,N)およびNb(C,N)のような炭窒化物、さらにはそれらの複合炭化物ないし炭窒化物を形成して微細に析出し、焼入れ加熱時の結晶粒粗大化を防止する。したがって、結晶粒を微細化して靭性を確保するという効果を高く得たい場合には、添加するとよい。ただし、過剰に添加すると凝固時に粗大な炭化物や炭窒化物として晶出し、前記した(晶出炭化物・炭窒化物+酸化物系介在物)の存在密度の限定条件を守ることができなくなり、かえって衝撃値を低下させるため、その上限をそれぞれ0.2%とした。2成分以上を複合して添加する場合には、合計量が0.5%を超えないようにすることが好ましい。
本発明の高靭性熱間工具鋼の製造方法を実施するに当たっては、凝固時の固相線温度から液相線温度までの平均冷却速度v(℃/秒)と晶出炭化物、炭窒化物の固溶化処理の温度T(絶対温度K)および時間t(秒)とが、下記の式(1)の条件を満たすように実施することが好ましい。
0≦{2×10-14×exp(0.019×T)×t0.54}−{117×exp(−35×v)}
・・・(1)
この条件は、晶出する炭化物や炭窒化物の好ましい分布を得る上で、重要である。凝固時の冷却速度、ここでは固相線から液相線温度までの平均冷却速度が0.025℃/秒以上であれば、晶出炭化物・炭窒化物の大きさが、粗大であるといっても、1240〜1360℃の加熱温度で固溶させることが可能な程度のものになる。これよりさらに加熱温度を高めれば、より遅い冷却速度で冷却した鋼塊でも晶出炭化物・炭窒化物を固溶させることが可能であるが、加熱温度1360℃は工業的に連続して処理することができる限界の温度であり、これ以上の温度に加熱することは、経済的に不利になる。一方で、加熱温度1240℃以下では、冷却速度が0.025℃/秒以上であった場合でも、粗大な晶出炭化物・炭窒化物を固溶させるまでには、非常に長い加熱時間を要する。このため、凝固時の冷却速度を0.025℃/秒以上に規定した。ここで凝固時の冷却速度を0.025℃/秒以上にすることにより、晶出炭化物・炭窒化物と同様に、酸化物系晶出物も、規定の分布状態を確保することが可能である。
大型品向けの金型素材を製造する場合、鋼塊サイズがやむを得ず大きくなるため、通常の造塊方法では0.025℃/秒以上の冷却速度を得ることが困難な場合がある。このような場合には、通常の造塊後に、ESR、VARなどの二次溶解法を実施して、所定の速い冷却速度を確保することが望ましい。ESR、VARは精錬効果も有するため、固溶化処理では消滅させることのできない酸化物系晶出物を大幅に減少させる効果を有する。
表1に示す組成の鋼を溶製し、一方向凝固炉を使用して種々の冷却速度で凝固させることにより、Φ100×80mmの円柱状鋼塊を準備した。これらの鋼塊を1200〜1320℃の範囲の温度に加熱し、保持時間を変化させて固溶化処理を行なった。固溶化処理後、1180℃に加熱して1/2アップセットにより据え込み、Φ140×40mmの円盤に加工した。さらにこれを1180℃に加熱し、60×60×170mmの直方体に熱間鍛造した。この鍛造材を、970℃×1時間・空冷の焼ならし処理をした後、750℃×1時間・空冷の低温焼きなましを施し、さらに870℃に2時間保持後、600℃まで冷却速度15℃/時間で冷却する、球状化焼きなましを施した。
Figure 2006104519
この球状化焼きなまし材の心部から、11×11×55mmのJIS3号シャルピー衝撃試験片用の素材(ノッチ方向はT方向)と、光学顕微鏡による組織観察用の素材とを切り出した。組織観察用の素材は、#1500までのエメリー紙による研磨とバフ研磨とを行なって鏡面とし、10mm2の範囲を撮影倍率400倍で写真撮影し、この領域に存在する晶出炭化物・炭窒化物および酸化物系介在物のすべてを、画像解析した。具体的には、個々の炭化物・炭窒化物および酸化物系介在物の面積を測定し、同じ面積を有する円の直径を算出してこれを「円相当径」とすることにより、(晶出炭化物・炭窒化物および酸化物系介在物)の存在密度を調査した。
衝撃試験片用の素材は、1030℃×l時間・油冷の焼き入れ後、620℃×2時間・空冷で2回焼き戻した後に、JIS3号衝撃試験片に加工して、室温で試験に供した。試験は各条件で6本実施し、それらの中の最低値を採用した。結果を表2に示す。





































Figure 2006104519
比較例1−11〜15の各鋼において衝撃値が低いのは、いずれも(晶出した炭化物、炭窒化物および酸化物系介在物)の存在密度が本発明の条件を満たしていないためであって、その理由は、それぞれつぎのとおりである。
1−11鋼:V含有量が多すぎる。
1−12鋼:O含有量が多すぎる。
1−13鋼:Ti含有量が多すぎる。
1−14鋼:Zr含有量が多すぎる。
1−15鋼:Nb含有量が多すぎる。
表3に示す組成のJIS−SKD61を溶製し、一方向凝固装置で凝固させ、そのときの冷却速度と固溶化処理条件とを変化させて、(晶出炭化物、炭窒化物および酸化物系介在物)の存在密度と衝撃値とを測定した。その結果を表4に示す。試験法は、実施例1と同じである。










































Figure 2006104519
表4の比較例において衝撃値が低かったのは、それぞれつぎの理由である。
比較例2−11の条件:凝固時の平均冷却速度が遅かったので、高温で長時間炭化物の固溶化処理を施しても所定の炭化物・炭窒化物の分布を得ることができなかった。
比較例2−12の条件:固溶化処理の保持温度が低すぎたため、所定の炭化物・炭窒化物の分布を得ることができなかった。
比較例2−13,14の条件:固溶化処理の保持時間が短すぎたため、所定の炭化物・炭窒化物の分布を得ることができなかった。
表5に示す合金組成の鋼を一次溶解後、ESR装置を用いて再溶解し、Φ1000×800mmの鋼塊に鋳造した。この鋼塊を、1280℃×20hの炭化物・炭窒化物固溶化処理を施した後、1180℃で鍛伸し、一辺400mmの角材とした。この角材の中心部から、組織観察用の素材と衝撃試験用の素材とを切り出し、前述した方法と同様にして、(晶出炭化物・炭窒化物および酸化物系介在物)の存在密度および衝撃値を測定した。その結果を、表6に示す。ESR鋼塊の凝固時の冷却速度は、同じ操業条件の鋼塊から光学顕微鏡により組織の観察をする試験片を採取し、二次デンドライトアームの間隔から算出した。





































Figure 2006104519

Claims (6)

  1. 鋼中に晶出した炭化物および炭窒化物、ならびに酸化物系の介在物を合わせたものの存在密度が、鋼の断面積1mm2あたり、1)円相当径が50μmを超える大型のものは0.01個以下であり、かつ、2)円相当径が1〜50μmの小型のものは100個以下であることを特徴とする高靭性熱間工具鋼。
  2. 重量基準で、C:0.3〜0.5%、Si:0.05〜1.5%、Mn:0.3〜2%、Cr:3〜6%、Mo+0.5W:0.5〜3.5%、V:0.5〜1.5%、Al:0.001〜0.025%およびN:0.005〜0.025%を含有し、P:0.05%以下、S:0.015%以下、O:0.0025%以下であって、残部Feおよび不純物からなる合金組成を有する請求項1の高靭性熱間工具鋼。
  3. 請求項2に規定の合金成分に加えて、Ni:2%以下、Co:5%以下、Cu:1%以下、Ti:0.2%以下、Zr:0.2%以下およびNb:0.2%以下の1種または2種以上を含有する請求項1の高靭性熱間工具鋼。
  4. 請求項1〜3の高靭性熱間工具鋼を製造する方法であって、造塊に当たって、凝固時の固相線温度から液相線温度までの平均冷却速度が0.025℃/秒以上であり、造塊後に、鋼塊のまま、または分塊鍛造後、1240〜1360℃の温度範囲に加熱することにより、晶出した炭化物および炭窒化物の固溶化処理を施すことを特徴とする製造方法。
  5. 凝固時の固相線温度から液相線温度までの平均冷却速度v(℃/秒)と、晶出した炭化物および炭窒化物の固溶化処理の温度T(絶対温度K)および時間t(秒)との関係が、下式の条件を満たすように実施する請求項4の製造方法。
    0≦{2×10-14×exp(0.019×T)×t0.54}−{117×exp(−35×v)}
  6. ESRまたはVARによる二次溶解を行なって造塊する工程を含む請求項4または5の製造方法。
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