JP2006104008A - 光学素子成形用型材の製造方法 - Google Patents

光学素子成形用型材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 光学素子成形用型材の耐久性向上。
【解決手段】 離型層として硬質炭素膜、中間層として非晶質炭化けい素膜を用いる光学素子成形用型材の製造方法において、硬質炭素膜及び非晶質炭化けい素膜の形成時に、型材に直流パルスバイアスを印加して形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、主として、ガラス素材のプレス成形により、レンズ、プリズムなどのガラスよりなる光学素子を製造する際に使用される光学素子成形用型の製造方法に関するものである。
研磨工程を必要としないで、ガラス素材のプレス成形によってレンズを製造する技術は、従来の製造において必要とされた複雑な工程をなくし、簡単かつ安価にレンズを製造することを可能とし、近年レンズのみならず、プリズム、その他のガラスよりなる光学素子の製造に使用されるようになった。
このような、ガラスの光学素子のプレス成形に使用される型材に要求される性質としては、硬度、耐熱性、離型性、鏡面加工性などに優れていることが挙げられる。従来、この種の型材として、金属、セラミックス、および、それらをコーティングした材料など、数多くの提案がなされている。
幾つかの例を挙げるならば、特開昭49−51112号公報(特許文献1)には、13Crマルテンサイト鋼が、特開昭52−45613号公報(特許文献2)には、SiC及びSi3 N4 が、特開昭60−246230号公報(特許文献3)には、超硬合金に貴金属をコーティングした材料が、また、特開昭61−183134号公報(特許文献4)、特開昭61−281030号公報(特許文献5)、特開平1−301864号公報(特許文献6)には、それぞれ、ダイヤモンド薄膜もしくはダイヤモンド状炭素膜が、特開昭64−83529号公報(特許文献7)には、硬質炭素膜をコーティングした材料が提案されている。
また、特公平2−31012号公報(特許文献8)には、レンズまたは型のどちらか一方に5〜500nmの炭素膜を形成することが提案されている。更に、本発明者らによる出願の、特開平6−72728号公報(特許文献9)によれば、高イオンエネルギーの炭素イオンビームを用いて、炭素と型母材もしくは母材表面に形成した中間層を構成する、少なくとも一種類以上の元素よりなるミキシング層を形成することにより、膜の剥離およびクラックの発生を生じない型を製造する方法が記載されている。
特開昭49−51112号公報 特開昭52−45613号公報 特開昭60−246230号公報 特開昭61−183134号公報 特開昭61−281030号公報 特開平1−301864号公報 特開昭64−83529号公報 特公平2−31012号公報 特開平6−72728号公報
しかしながら、13マルテンサイト鋼は酸化し易く、更に、高温でFeがガラス中に拡散して、ガラスが着色する欠点を持つ。SiC及びSi3 N4 は、一般的に酸化されにくいとされているが、高温では酸化が起こり、表面にSiO2 が形成され、ガラスの融着を生じる。貴金属をコーティングした材料は、融着を起こしにくいが、極めて柔らかいために、傷がつき易く、変形し易いという欠点をもっている。
また、一般的にダイヤモンド状炭素膜、a−C:H膜、硬質炭素膜を用いた型は、型とガラスとの離型性が良く、ガラスとの融着を起こしにくいが、型と膜の密着性が一般に低く、成形操作を、数百回以上繰り返して行うと、前記膜が部分的に剥離し、成形品において、十分な成形性能が得られないことがあるなど、耐久性に問題があった。また、ダイヤモンド薄膜は、高硬度で、熱的安定性にも優れているが、前記ダイヤモンド状炭素膜、a−C:H膜、硬質炭素膜など、非晶質の炭素膜に比べると、型とガラスとの離型性が悪く、更なる離型性の向上が望まれていた。
また、特開平1−301864号公報において、炭素源ガス濃度を3%以上として、ダイヤモンド結晶、グラファイト結晶、アモルファス状カーボンよりなる膜を形成し、最大面粗さ20nm以下とすることが提案されているが、膜中のグラファイト結晶の存在は、硬度と耐酸化性の劣化を生じ、型の耐久性を劣化させる原因となる。
また、特公平2−31012号公報の実施例で用いられている形成方法(真空蒸着法)で得られる炭素膜は、一般的には、膜と基板との密着力が弱く、成形中に膜が剥離するなどの耐久性に問題がある場合がある。
また、特開平6−72728号公報に記載の、炭素イオンをイオン注入することにより光学素子成形用型材を形成する方法は、膜と型母材との密着力を上げることができるが、非常に高い電圧を印加する必要があるため製造装置が非常に高価となりやすと言う欠点があった。また、指向性の高いイオンビームを用いているため、曲率の小さいレンズ用型材や、階段状の段差のある回折型光学素子用型材では、成形面に均一な膜厚で硬質炭素膜を形成することができないと言う欠点があった。
また、特開2000-143221号公報に記載の、基体に直流のパルスバイアスを印加して硬質炭素膜を作製する方法は、他の製造方法に比べると、成形面に均一な膜厚で硬質炭素膜を形成することができ、また型材と密着性良く硬質炭素膜を形成することができるが、更なる膜厚の均一化及び型材との密着性の向上が望まれている。
更に、特開平5-124825号公報に記載の、中間層としてけい素と炭素の非晶質混合物からなる中間層を形成した後に、ダイヤモンド様炭素膜を形成する方法は、他の製造方法に比べると、型材と密着性良く硬質炭素膜を形成することができるが、更なる型材との密着性の向上が望まれている。
このため本発明では、少なくとも最表面層に硬質炭素膜を形成する光学素子成形用型材の製造方法において、炭素とけい素を少なくとも含有する原料ガスをイオン化源でイオン化するとともに、型母材に負の直流パルスバイアスを印加して非晶質炭化けい素膜を形成した後に、少なくとも炭素を含有する原料ガスをイオン化源でイオン化するとともに、型母材に負の直流バイアスを印加して硬質炭素膜を形成することを目的とする。
本発明によれば、少なくとも最表面層に硬質炭素膜を形成する光学素子成形用型材の製造方法において、炭素とけい素を少なくとも含有する原料ガスをイオン化源でイオン化するとともに、型母材に負の直流パルスバイアスを印加して非晶質炭化けい素膜を形成した後に、少なくとも炭素を含有する原料ガスをイオン化源でイオン化するとともに、型母材に負の直流バイアスを印加して硬質炭素膜を形成することで、離型層として形成される硬質炭素膜を型材に密着性良く、更に形状によらず均一な膜厚で形成された光学素子成形用型材を提供することができる。
(作用)
次に、本発明の作用を、本発明をなすに際して得た知見と併せて、以下に説明する。本発明者は、従来の光学素子成形用型の問題点に鑑み、離型層として形成される硬質炭素膜を型材に密着力良く、更に種々の形状にも均一な膜厚で形成する方法について、詳細な実験を続けた結果、見出されたものである。
つまり、少なくとも最表面層に硬質炭素膜を形成する光学素子成形用型材の製造方法において、炭素とけい素を少なくとも含有する原料ガスをイオン化源でイオン化するとともに、型母材に負の直流パルスバイアスを印加して非晶質炭化けい素膜を形成した後に、少なくとも炭素を含有する原料ガスをイオン化源でイオン化するとともに、型母材に負の直流バイアスを印加して硬質炭素膜を形成することにより、型材に密着力良く、更に複雑形状にも均一に硬質炭素膜を形成することが可能となったものである。
従来の製造方法で形成された非晶質を主成分とする硬質炭素膜は、他のセラミックスおよび金属薄膜より、ガラスとの密着力が小さいため、離型性に優れているが、型母材と膜の密着力が弱く、ガラスの成形時を続けるうちに、膜の剥離が生じることがあった。これは、硬質炭素膜には一般的に内部に大きな膜応力があり、熱や成形時の力により、容易に剥離が生じるためと考えられる。
特開平5-124825号公報に記載の、中間層としてけい素と炭素の非晶質混合物(非晶質炭化けい素膜)からなる中間層を形成した後に、ダイヤモンド様炭素膜を形成する方法は、他の製造方法に比べると、型材と密着性良く硬質炭素膜を形成することができるが、非晶質炭化けい素膜の形成方法が、バイアス印加プラズマCVD法と言う、基板に直流バイアスの印加する方法であるため膜の密着力に限界があり、使用条件によっては、型材と非晶質炭化けい素膜の間または非晶質炭化けい素膜と硬質炭素膜の間で剥離が生じることがあった。
これに対して本発明の製造方法によれば、パルスバイアスを印加するので型材表面でのプラズマの密度が上昇し、炭素原子及びけい素原子と型材材料の原子とのミキシングの効果が上がり、非晶質炭化けい素膜と型材との密着力が大幅に向上する。更に、この上にパルスバイアスを印加して硬質炭素膜を形成することで、非晶質炭化けい素膜と硬質炭素膜の間でも原子のミキシングの効果が生じ、密着性良く硬質炭素膜を形成する事ができる。
また更に、パルスバイアスを印加することで、型材の形状に沿って均一なプラズマを形成することが可能となり、複雑な形状の型材上にも非晶質炭化けい素膜及び硬質炭素膜が均一な膜厚で形成できる。特開平5-124825号公報に記載の通常のバイアス印加プラズマCVD法で、複雑形状の型材に非晶質炭化けい素膜で形成した場合、膜厚の厚い部分と薄い部分ができてしまうことがある。非晶質炭化けい素膜の薄い部分では中間層としての効果が薄くなり、非晶質炭化けい素膜と型材の間で剥離が生じやすい。このような均一な膜厚で非晶質炭化けい素膜及び硬質炭素膜を形成することで、更に非晶質炭化けい素膜を型材に密着性良く形成できる効果がある。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら、具体的に説明する。ここで、本発明の光学素子成形用型の模式的断面を図1に示す。図において、11は成形面に硬質炭素膜13がある型母材である。なお、図1では、凸レンズ成形用型を示したが、本発明では、凸レンズ成形用型に限定されるものでなく、凹レンズ成形用型、非球面レンズ成形用型、シリンドリカルレンズ成形用型などにも使用可能である。
本発明で言う、硬質炭素膜とは、基本的には非晶質であり、硬度が高く、赤外領域で透明性が高いことから、ダイヤモンド状炭素膜とも呼ばれているものである。この硬質炭素膜は、非晶質であるため、非常に平滑な表面を有しており、型母材表面に形成することにより、型母材の表面の平滑性と同様、あるいは、それ以上の平滑性を得ることができる。
また、硬質炭素膜は、通常、いかなる結晶性も有していないが、電子顕微鏡などで、微小領域(nmオーダー)を詳細に観察すると、数nm程度の大きさの、微結晶のダイヤモンドまたはグラファイトが観察されることがある。これらの微結晶の量も、見積もるのは非常に困難であるが、全体積のせいぜい数%以下であろうと思われる。つまり、「硬質炭素膜」とは、ほとんど無視できる量以下の炭素結晶相(ダイヤモンド、グラファイト)のみを含有する非晶質の炭素膜である。この硬質炭素膜の形成には、イオンビーム蒸着法及びイオンプレーティング法などと呼ばれる方法を用いる。上記成膜方法は、炭素源ガス、および、水素、酸素、塩素、フッ素、希ガスなどの希釈ガスを、熱フィラメントまたは高周波、更には、電場、磁場などを印加しすることで、プラズマ化し、このプラズマから、電界を用いてイオンを加速して引出し、このイオンを型母材上に照射して、その成形面に硬質炭素膜を形成する方法である。
また、本発明では硬質炭素膜は、中間層として非晶質炭化けい素膜を形成した上に形成する。非晶質炭化けい素膜は硬度が高く、化学的安定性にも優れているので中間層として最適である。また、型母材として超硬材料などの焼結体を用いた場合、粒子の脱落、ポアなどにより表面の平滑性が十分に上がらない場合があるが、非晶質炭化けい素膜は、表面の平滑性を向上させるのに有効である。これに対して結晶性の炭化けい素膜は表面の平滑性に劣り、光学素子成形用型材として必要な表面の平滑性を得られない事がある。また、非晶質炭化けい素膜の最適な厚さは、一般的には0.05μm以上、望ましくは0.1μm以上である。本発明の非晶質炭化けい素膜は、型材に負の直流パルスバイアスを印加することによって行われる。負の直流パルスバイアスの電圧は、型材材料や形状により変化するが、0.5〜20kV程度印加する。印加する負の直流パルスバイアスは、成膜時に一定の値としても良いが、成膜開始直後に高く、成膜終了時に低くしても良い。これは、成膜開始直後に高い負の直流パルスバイアスを印加することで型母材と非晶質炭化けい素膜の密着力を高めるためで、例えば、5kV以上20kV以下の負のパルスバイアスを印加することにより炭素及びけい素含有イオンが型母材に注入され非晶質炭化けい素膜と型母材の密着性が向上する。また、更に成膜終了時に低い負の直流パルスバイアスを印加するのは非晶質炭化けい素膜の平滑性を上げるためであり、例えば、1kV以上4kV以下の負のパルスバイアスを印加することにより平滑性の高い非晶質炭化けい素膜を得ることができる。具体的な例を示すと、成膜開始直後に、バイアス電圧を7kVとし、その後徐々に電圧を、5kV、3kV、1kVと下げていき、成膜を終了させる、と言うプロセスで成膜を行うことができる。
また、直流パルス電圧の繰り返し周波数やデューティー比は、印加電圧や成膜する膜厚などの条件により最適条件は異なるが、代表的には500〜20kHzの繰り返し周波数で、かつデューティー比2〜40%で行う。
また、炭素及びけい素を含有したガスのイオン化は、イオン源で行う。イオン源は加熱したフィラメントに電場や磁場を印加したり、高周波を印加したりして炭素含有ガスを分解、イオン化する。イオン源で形成された炭素及びけい素を含有したイオンを、負の直流パルスバイアスで型材近傍に引き込みことで非晶質炭化けい素膜を型材表面に形成することができる。
本発明の非晶質炭化けい素膜の形成方法では、原料として有機けい素化合物や炭素化合物とけい素化合物を混合したものなどを用いることができる。有機けい素化合物としては、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどを用いることができる。炭素化合物としては、種々の炭素含有ガスや液体有機化合物を気化して用いることができる。液体有機化合物としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、ギ酸、酢酸などの有機酸を用いることができる。炭素含有ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、アセチレンなどの炭化水素ガス、一酸化炭素、または、ハロゲン化炭素などを用いることができる。
けい素化合物としては、シラン、ジシラン、4フッ化珪素などを用いることができる。
本発明の硬質炭素膜の成膜は、型材に負の直流パルスバイアスを印加することによって行われる。負の直流パルスバイアスの電圧は、型材材料や形状により変化するが、0.5〜20kV程度印加する。印加する負の直流パルスバイアスは、成膜時に一定の値としても良いが、成膜開始直後に高く、成膜終了時に低くしても良い。これは、成膜開始直後に高い負の直流パルスバイアスを印加することで型母材と硬質炭素膜の密着力を高めるためで、例えば、8kV以上20kV以下の負のパルスバイアスを印加することにより炭素含有イオンが型母材に注入され硬質炭素膜と型母材の密着性が向上する。また、更に成膜終了時に低い負の直流パルスバイアスを印加するのは硬質炭素膜の平滑性を上げるためであり、例えば、1kV以上4kV以下の負のパルスバイアスを印加することにより平滑性の高い硬質炭素膜を得ることができる。具体的な例を示すと、成膜開始直後に、バイアス電圧を10kVとし、その後徐々に電圧を、7.5kV、5kV、2.5kVと下げていき、成膜を終了させる、と言うプロセスで成膜を行うことができる。
また、直流パルス電圧の繰り返し周波数やデューティー比は、印加電圧や成膜する膜厚などの条件により最適条件は異なるが、代表的には500〜20kHzの繰り返し周波数で、かつデューティー比2〜40%で行う。
また、炭素含有ガスのイオン化は、イオン源で行う。イオン源は加熱したフィラメントに電場や磁場を印加したり、高周波を印加したりして炭素含有ガスを分解、イオン化する。イオン源で形成された炭素含有イオンを、負の直流パルスバイアスで型材近傍に引き込みことで硬質炭素膜を型材表面に形成することができる。
本発明の硬質炭素膜の形成方法では、炭素源として、種々の炭素含有ガスや液体有機化合物を気化して用いることができる。液体有機化合物としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、ギ酸、酢酸などの有機酸を用いることができる。炭素含有ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、アセチレンなどの炭化水素ガス、一酸化炭素、または、ハロゲン化炭素などを用いることができる。
本発明で用いられる型母材は、アルミナ・ジルコニアのような酸化物系セラミックス、炭化珪素・窒化珪素・炭化チタン・窒化チタン・炭化タングステンなどの炭化物・窒化物系セラミックス、更に、WC系の超硬合金、モリブデン・タングステン・タンタルなどの金属を用いることができる。型母材(基体)の形状は、成形装置や成形レンズの形状により任意に決めることができるが、例えば、レンズを成形する場合、成形面を、そのレンズ径の曲率に合わせて、曲面形状にし、その曲面上に前記非晶質炭化けい素膜及び硬質炭素膜を形成する。
図3は、本発明で用いられる非晶質炭化けい素膜及び硬質炭素膜を形成する成膜装置を示す模式図である。30は真空チャンバー、31はガス排気口で、バルブ、ターボ分子ポンプ、ロータリーポンプ(何れも図示せず)が接続されている。32はイオン源で、加熱されたフィラメントと電場及び磁場を用い原料ガスをイオン化することができる。また、32のイオン源には不図示のバルブ、ガス流量調整器、圧力調整器、ガスボンベ、液体気化装置が接続されている。33はイオンビームを模式的に示したものである。34は型材である。図では凸形状の型材が記載されているが、本発明の型材はこれに何ら限定されるものではない。35は基体ホルダーで型材の固定及び不図示の冷却機構または加熱機構を用いて型材の成膜温度を調整することができる。36は直流パルスバイアス電源で、型材及び基体ホルダーに直流パルスバイアスを印加することができる。
なお、本発明で用いられる成膜装置は、上記装置に何ら限定されるものではないが、本発明では上記装置のように非晶質炭化けい素膜を形成した後、大気に晒すことなく、同一の成膜装置内で硬質炭素膜を連続して形成することができるものであることが望ましい。これは、非晶質炭化けい素膜を形成後大気に晒すと、表面に酸素、水分が吸着し、この上に硬質炭素膜を形成しても、非晶質炭化けい素膜と硬質炭素膜の界面に多量の酸素原子が残留し、硬質炭素膜の密着力を減少させるためである。
上述した本発明は、特に、大口径ガラスレンズ、肉厚の薄いガラスレンズ、肉厚比の大きいガラスレンズ、階段状の形状を有する回折型光学素子など、従来、硬質炭素膜の剥離などで型の耐久性に問題のあったレンズの成形で、型耐久の大幅な向上に効果がある。
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
図1および図2は、本発明に係る光学素子成形用型の一つの実施様態を示すものである。なお、図1は光学素子のプレス成形前の状態を示し、図2は光学素子成形後の状態を示す。ここで、符号11は型母材、12はガラス素材、13は本発明の硬質炭素膜よりなる離型膜であり、また、図2での、符号21は光学素子である。図1に示すように、型の間に置かれたガラス素材12をプレス成形することにより、レンズなどの光学素子21が形成される。
次に、本発明の光学素子成形用型について詳細に説明する。型母材として、バインダーレスWC系超硬合金焼結体(フジダイス製、商品名J−05)を所定の形状に加工した後、これをRa=1.8nmとなるように研磨した。
次に、この型母材を良く洗浄した後、図3に示す成膜装置に設置し、まず、非晶質炭化けい素膜を形成する。基体ホルダーの基体加熱機構を用いて型材を300℃まで加熱し、原料ガスとしてテトラエトキシシラン:20ml/minの流量で導入し、圧力を2×10-1Paに調整した。イオン源で、加熱したフィラメントと電場及び磁場の印加により原料ガスを分解、イオン化し、また、型母材へ36の直流パルスバイアス電源を用いて基板バイアスを印加して、型材表面に非晶質炭化けい素膜を形成した。なお、直流パルスバイアスは、−2.5kVとして、繰り返し周波数:2kHz、デューティー比:10%とした。10分間の成膜で約100nmの非晶質炭化けい素膜が形成された。
続いて、硬質炭素膜を形成する。ガス流量はトルエン:20ml/min、水素:10ml/minとし、型材の温度は300℃で、圧力:3×10-1Paとした。イオン源で原料ガスを分解、イオン化し、型母材へ直流パルスバイアスを印加して、硬質炭素膜を形成した。直流パルスバイアスは、−4kVとして、繰り返し周波数:2kHz、デューティー比:10%とした。30分間の成膜で約300nmの硬質炭素膜が形成された。
次に、この光学素子成形用型材を用いて光学レンズの成形を行った。
成形ガラスは、クラウン系光学ガラスSK12(軟化点Sp=672℃、転移点Tg=550℃)で、直径半径:φ30mmで、中心部:2.2mmの厚さ、最外周:1.5mmの厚さの、極薄の凸メニスレンズを成形する。成形条件は、窒素雰囲気下、プレス温度620℃で行った。成形中、型と成形された光学素子との離型性は良好であった。また、成形後の型表面を走査型電子顕微鏡で観察した所、膜剥離、クラックの発生、更には、ガラスの融着が認められず、良好な型表面性を有していた。また、成形ガラスレンズも、ガラスの割れが見られず、良好な表面粗さであった。
型母材として、WC系超硬合金を所定の形状に加工した後、成形面をRmax=0.04μmに鏡面研磨した。次に、この型母材を良く洗浄した後、図3に示す成膜装置に設置し、まず、中間層として、非晶質炭化けい素膜を形成した。成膜条件は、型材温度:200℃、原料ガスはトリメチルシラン:25ml/min、圧力は3×10−1Paとした。イオン源で原料ガスを分解、イオン化し、型母材へ直流パルス電源を用いて基板バイアスを印加した。直流パルスバイアスは、電圧を成膜開始から10分ごとに−6kV、−3.5kV、−1kVと変化させた。また、繰り返し周波数:2kHz、デューティー比:10%とした。30分間の成膜で約200nmの非晶質炭化けい素膜が形成された。
次に、硬質炭素膜を形成する。ガス流量はアセチレン:20ml/min、水素:5ml/minとし、基板温度:200℃で、圧力:2×10−1Paとした。イオン源で原料ガスを分解、イオン化し、型母材へ直流パルス電源を用いて基板バイアスを印加した。直流パルスバイアスは、電圧を成膜開始から10分ごとに−10kV、−6kV、−2kVと変化させた。また、繰り返し周波数:2kHz、デューティー比:10%とした。30分間の成膜で約300nmの硬質炭素膜が形成された。
次に、この光学素子成形用型材を用いて光学レンズの成形を行った。
成形ガラスは、クラウン系光学ガラスSK12(軟化点Sp=672℃、転移点Tg=550℃)で、直径半径:φ12mmで、中心部:1.4mmの厚さ、最外周:2.5mmの厚さの、凹メニスレンズを成形する。成形条件は、窒素雰囲気下、プレス温度620℃で行った。成形中、型と成形された光学素子との離型性は良好であった。また、成形後の型表面を走査型電子顕微鏡で観察した所、膜剥離、クラックの発生、更には、ガラスの融着が認められず、良好な型表面性を有していた。また、成形ガラスレンズも、ガラスの割れが見られず、良好な表面粗さであり、透過率も高く、ハローの発生も認められなかった。
(比較例1)
中間層として非晶質炭化けい素でなく、アモルファスシリコン、クロム、窒化チタンを用いる(中間層の作成は全て公知のスパッタ法)以外は実施例1と同様にして光学素子成形用型材を作成して光学ガラスを成形した所、成形を進めるにつれ、硬質炭素膜の剥離が生じ、ガラスの型材への融着が発生した。
(実施例3〜5、比較例1〜2)
バイアス印加条件を種々変更する以外は、実施例2と同様にして、光学素子成形用型材を形成し、光学素子を成形した。(非晶質炭化けい素膜の膜厚は約200nm、硬質炭素膜の膜厚は、約300nmとなるように成膜時間についてはおのおの調整した)
その結果を表1に示す。なお、比較例1〜2においては直流パルスバイアスの代わりに直流バイアスを印加した。
Figure 2006104008
◎:非常に良好
○:良好
△:実用上可
×:不可
非晶質炭化けい素及び硬質炭素膜の成膜条件で、直流パルスバイアスを印加する本発明の範囲内とすることで、型の成形耐久性は良好となる。
これに対して、直流パルスバイアスのみを印加した場合(比較例2)、型母材と硬質炭素膜の密着量が低下し、硬質炭素膜の剥離が生じ、型の耐久性が悪化する。
更に、非晶質炭化けい素膜のみに直流パルスバイアスを印加した場合(比較例3)、硬質炭素膜と非晶質炭化けい素膜の間で密着量が低下し、硬質炭素膜と非晶質炭化けい素膜の間で剥離が生じ、型の成形耐久性が悪化する。
また、硬質炭素膜のみに直流パルスバイアスを印加した場合(比較例4)、非晶質炭化けい素膜と型母材の間で密着量が低下し、非晶質炭化けい素膜と型母材の間で剥離が生じ、型の成形耐久性が悪化する
光学素子のプレス成形前の状態。 光学素子成形後の状態。 成膜装置の模式図。
符号の説明
11 型母材
12 ガラス素材
13 本発明の硬質炭素膜よりなる離型膜
21 光学素子
30 真空チャンバー
31 ガス排気口
32 イオン源
33 イオンビームを模式的に示したもの
34 型材
35 基体ホルダー
36 直流パルスバイアス電源

Claims (1)

  1. 少なくとも最表面層に硬質炭素膜を形成する光学素子成形用型材の製造方法において、
    炭素とけい素を少なくとも含有する原料ガスをイオン化源でイオン化するとともに、型母材に負の直流パルスバイアスを印加して非晶質炭化けい素膜を形成した後に、少なくとも炭素を含有する原料ガスをイオン化源でイオン化するとともに、型母材に負の直流バイアスを印加して硬質炭素膜を形成する、ことを特徴とする光学素子成形用型材の製造方法。
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