JP2006097087A - 成膜方法及び成膜装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 AD法によって形成された膜における物性値を向上させることができる成膜方法及び成膜装置を提供する。
【解決手段】 成膜装置は、膜が形成される基板8を保持する基板ステージ9を有するチャンバ1と、原料の粉体を収納する容器を含み、該容器にキャリアガスを導入することにより、原料の粉体を含むエアロゾルを生成するエアロゾル生成室3と、該エアロゾル生成室において生成されたエアロゾルの流路に磁場を印加することにより、エアロゾルに含まれる原料の粉体における結晶方位を配向させる超伝導コイル5と、該超伝導コイルによって磁場が印加されたエアロゾルを基板に吹き付けることにより、結晶方位が配向した原料の粉体を基板上に堆積させる噴射ノズル7とを含む。
【選択図】 図1
【解決手段】 成膜装置は、膜が形成される基板8を保持する基板ステージ9を有するチャンバ1と、原料の粉体を収納する容器を含み、該容器にキャリアガスを導入することにより、原料の粉体を含むエアロゾルを生成するエアロゾル生成室3と、該エアロゾル生成室において生成されたエアロゾルの流路に磁場を印加することにより、エアロゾルに含まれる原料の粉体における結晶方位を配向させる超伝導コイル5と、該超伝導コイルによって磁場が印加されたエアロゾルを基板に吹き付けることにより、結晶方位が配向した原料の粉体を基板上に堆積させる噴射ノズル7とを含む。
【選択図】 図1
Description
本発明は、成膜方法及び成膜装置に関し、特に、原料の粉体を基板等に噴射して堆積させる成膜方法及び成膜装置に関する。
近年、材料の特性を制御したり、向上させるために、金属やセラミックス等の固体材料において結晶方位を制御する手法が注目されている。例えば、結晶粒を配向させることにより、特定の方向について優れた電気的特性を有する機能性材料や、特定の方向に対する曲げ応力に強い高強度材料を作製することができる。そのような機能性材料等を作製する手法の1つとして、結晶成長、ゾルゲル析出、HIP(熱間静水圧加圧)、SIP(常圧焼結)等の処理を強磁場中において行う配向制御手法が知られている。
関連する技術として、特許文献1には、急冷、圧延等の前処理を必要とせず、また、強磁性体に限らず、非磁性体の金属、セラミックス、あるいは有機物にも適用できる結晶方位制御方法として、強磁場を印加しながら、材料を固液共存温度に再加熱することにより、または、凝固過程において固液共存温度領域で攪拌することにより結晶粒の分断を図り、個々の結晶粒が融液に浮遊して自由に回転できる状態を生み出し、結晶粒を磁化エネルギーが最小となる方向に回転させて、材料の結晶方位を制御することが開示されている。
また、特許文献2には、鋳込み成形のための型や容器を必要とせずに、簡便に、単結晶粒子の配向性と層厚の制御を可能として、高度にセラミックス単結晶粒子が配向された単層または多層のセラミックス高次構造体を得るために、溶媒中に帯電、分散させたセラミックス単結晶粒子サスペンションに単結晶磁気異方性を利用して個々の粒子を配向させ、その配向状態のサスペンションに電場を印加して、帯電・配向セラミックス粒子を堆積させることが開示されている。さらに、非特許文献1には、強磁場中において電気泳動法を行うことにより、セラミックス膜を配向制御する原理について記載されている(第1487頁)。
しかしながら、特許文献1及び2に開示されている発明においては、高温環境下や湿式によるバルク材形成又は成膜が主流であるため、工程が多くて煩雑であり、手間がかかってしまう。また、作製された機能性材料をデバイスに応用する際には、膜パターンを形成するための煩雑な工程がさらに増えてしまう。従って、配向制御された材料を、より簡便に製造する方法や装置の開発が望まれている。
ところで、近年、エアロゾルデポジション(aerosol deposition)法(以下、AD法ともいう)と呼ばれる成膜方法の研究が進められている。AD法とは、原料の粉体(成膜粉)を含むエアロゾルを生成し、それをノズルから噴射して基板に吹き付けることにより、ミクロンオーダーの薄膜からミリオーダーの厚膜を形成する方法である。ここで、エアロゾルとは、気体中に浮遊している固体や液体の微粒子のことをいう。なお、AD法は、噴射堆積法、又は、ガスデポジション法とも呼ばれている。AD法においては、高速で噴射された原料の粉体が下層に衝突して食い込むと共に破砕し、その際に生じた破砕面が下層に付着するというメカニズムで成膜が為される。この成膜メカニズムは、メカノケミカル反応と呼ばれており、この反応により、不純物を含まない、緻密で強固な膜を、常温且つ乾式で形成することが可能になる。また、AD法においてはエアロゾルを噴射する際にノズルが用いられるので、ノズルの開口径や開口の形状等を調節することにより、所望のパターンを形成することが可能である。そのため、このような特殊な成膜メカニズムを活かした新たな材料開発や、様々なアプリケーションへの適用が期待されている。
特開2003−342100号公報(第1頁)
特開2004−131363号公報(第1頁)
打越哲郎、他、「強磁場電気泳動法による多結晶アルミナ・セラミックス成形体の組織配向制御(Control of crystalline texture in polycrystalline alumina ceramics by electrophoretic deposition in a strong magnetic field)」、J.Mater.Res.、マテリアル・リサーチ・ソサエティ、第19巻、第5号、2004年5月、p.1487−1491
しかしながら、AD法によって形成された膜(以下において、AD膜ともいう)は、圧電性能等の物性値の面で、同じ組成を有するバルク材に及ばないという問題が生じている。そのため、AD膜の物性値を、バルク材以上に、又は、少なくともバルク材と同程度に向上させる手法の開発が望まれている。
上記の点に鑑み、本発明は、AD法によって形成された膜における物性値を向上させることを目的とする。
上記の点に鑑み、本発明は、AD法によって形成された膜における物性値を向上させることを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る成膜方法は、原料の粉体を容器に収納し、該容器にキャリアガスを導入することにより、原料の粉体を含むエアロゾルを生成する工程(a)と、工程(a)において生成されたエアロゾルの流路に磁場を印加することにより、エアロゾルに含まれる原料の粉体における結晶方位を配向させる工程(b)と、工程(b)において磁場が印加されたエアロゾルを基板に吹き付けることにより、結晶方位が配向した原料の粉体を基板上に堆積させる工程(c)とを具備する。
また、本発明に係る成膜装置は、膜が形成される基板を保持する保持手段を有するチャンバと、原料の粉体を収納する容器を含み、該容器にキャリアガスを導入することにより、原料の粉体を含むエアロゾルを生成するエアロゾル生成手段と、該エアロゾル生成手段によって生成されたエアロゾルの流路に磁場を印加することにより、エアロゾルに含まれる原料の粉体における結晶方位を配向させる磁場印加手段と、該磁場印加手段によって磁場が印加されたエアロゾルを基板に吹き付けることにより、結晶方位が配向した原料の粉体を基板上に堆積させるエアロゾル噴射手段とを具備する。
本発明によれば、原料の粉体を含むエアロゾルに磁場を印加して原料の粉体の結晶方位を制御するので、基板上に堆積したAD膜における結晶方位を所望の向きに配向することができる。従って、AD膜の物性値を上昇させることが可能になる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本実施形態の一実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。この成膜装置は、原料の粉体(成膜粉)を下層に吹き付けて堆積させるエアロゾルデポジション(AD)法を用いており、成膜が行われるチャンバ1と、排気ポンプ2と、エアロゾル生成室3と、エアロゾル搬送ライン4と、加速管5と、超伝導コイル6と、噴射ノズル7と、基板8を保持する基板ステージ9とを含んでいる。これら内で超伝導コイル6は、この成膜装置に設けられている超伝導磁石の一部であり、図1において、超伝導磁石の他の構成要素である冷却装置や、コイルに電流を供給するための電源装置等は省略されている。
図1は、本実施形態の一実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。この成膜装置は、原料の粉体(成膜粉)を下層に吹き付けて堆積させるエアロゾルデポジション(AD)法を用いており、成膜が行われるチャンバ1と、排気ポンプ2と、エアロゾル生成室3と、エアロゾル搬送ライン4と、加速管5と、超伝導コイル6と、噴射ノズル7と、基板8を保持する基板ステージ9とを含んでいる。これら内で超伝導コイル6は、この成膜装置に設けられている超伝導磁石の一部であり、図1において、超伝導磁石の他の構成要素である冷却装置や、コイルに電流を供給するための電源装置等は省略されている。
排気ポンプ2は、チャンバ1の内部を排気することにより、チャンバ1内を所定の圧力に維持する。
エアロゾル生成室3は、原料の微小な粉体(成膜粉)が配置される容器である。本実施形態において用いられる成膜粉は、単結晶状態であることが望ましい。例えば、酸化物セラミックスであるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)や、チタン酸バリウム(TiBaO3)の膜を形成する場合には、平均粒子径が0.1μm〜1.0μm程度の単結晶粉体が用いられる。なお、成膜粉の粒子径については、通常は上記の範囲とすることが良好な条件となるが、それ以外にも、装置や、そこで生成されるエアロゾルの条件等に応じて様々な範囲を選択することができる。
エアロゾル生成室3は、原料の微小な粉体(成膜粉)が配置される容器である。本実施形態において用いられる成膜粉は、単結晶状態であることが望ましい。例えば、酸化物セラミックスであるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)や、チタン酸バリウム(TiBaO3)の膜を形成する場合には、平均粒子径が0.1μm〜1.0μm程度の単結晶粉体が用いられる。なお、成膜粉の粒子径については、通常は上記の範囲とすることが良好な条件となるが、それ以外にも、装置や、そこで生成されるエアロゾルの条件等に応じて様々な範囲を選択することができる。
エアロゾル生成室3には、ガスボンベ等の圧縮ガス供給ラインが接続されており、そこから窒素(N2)、酸素(O2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、又は、乾燥空気等のキャリアガスが導入される。それにより、エアロゾル生成室3において、成膜粉が吹き上げられてエアロゾルが生成される。このエアロゾルは、エアロゾル搬送管4を介して、チャンバ1に配置されている加速管5に導入される。
加速管5は、エアロゾル搬送管4を介して導入されたエアロゾルを、エアロゾル生成室3内とチャンバ1内との気圧差によって加速しつつ、噴射ノズル7に供給する。
超伝導コイル6は、例えば、アルミニウム(Al)線によって形成されており、加速管5の周りを囲むように配置されている。この超伝導コイルに電流を供給すると共に、絶対温度4K以下に冷却すると、コイルが超伝導状態となって電気抵抗がなくなる。それにより、コイルに大電流が流れ、加速管5を含む広い空間に強磁場(例えば、10テスラ程度)が発生する。その結果、加速管5を通過するエアロゾルに対して、例えば、基板8面に対して垂直方向(Z方向)の磁場が印加される。
噴射ノズル7は、所定の径の開口を有している。噴射ノズル7は、加速管5を通過する間に加速されたエアロゾルを、基板8の所定の領域に向けて開口から噴射する。
基板ステージ9は、基板8を保持しつつ3次元に移動する可動ステージである。基板ステージ9を移動させて、基板8と噴射ノズル7との相対位置を変化させることにより、基板8の所望の領域に膜を形成することができる。
基板ステージ9は、基板8を保持しつつ3次元に移動する可動ステージである。基板ステージ9を移動させて、基板8と噴射ノズル7との相対位置を変化させることにより、基板8の所望の領域に膜を形成することができる。
次に、本実施形態に係る成膜装置において用いられる成膜方法の原理について、図2を参照しながら説明する。
一般に、立方晶以外の結晶構造を有する磁性体には、結晶方位によって磁化し易さが異なるという異方性(結晶磁気異方性)が存在する。即ち、結晶のいずれかの主軸に平行な磁場をかけたときの磁化率χPARAと、その主軸に対して垂直な磁場をかけたときの磁化率χPERPENDとが異なっており、磁化容易方向が存在する。ここで、磁化容易方向とは、結晶が磁化され易い方向のことであり、例えば、セラミックの一種であるα−Al2O3においては、磁化容易方向がc軸方向である。結晶方位に応じた磁化し易さの差分に対応するエネルギー差ΔEは、次式によって表される。
ΔE=(χPARA−χPERPEND)VB2/2μ0 …(1)
式(1)において、Vは単結晶粒子の体積であり、Bは印加された磁場による磁束密度であり、μ0は真空の透磁率である。
図2の(a)に示すように、結晶磁気異方性を有する単結晶粒子100に磁場Hを印加した場合に、エネルギー差ΔEが結晶の熱擾乱エネルギーkT(k:ボルツマン定数、T:絶対温度)よりも大きくなると(ΔE>kT)、磁化容易軸を磁場Hの方向に揃えて磁気異方性エネルギー(内部エネルギー)を小さくするために、単結晶粒子100を回転させるトルクが発生する。
一般に、立方晶以外の結晶構造を有する磁性体には、結晶方位によって磁化し易さが異なるという異方性(結晶磁気異方性)が存在する。即ち、結晶のいずれかの主軸に平行な磁場をかけたときの磁化率χPARAと、その主軸に対して垂直な磁場をかけたときの磁化率χPERPENDとが異なっており、磁化容易方向が存在する。ここで、磁化容易方向とは、結晶が磁化され易い方向のことであり、例えば、セラミックの一種であるα−Al2O3においては、磁化容易方向がc軸方向である。結晶方位に応じた磁化し易さの差分に対応するエネルギー差ΔEは、次式によって表される。
ΔE=(χPARA−χPERPEND)VB2/2μ0 …(1)
式(1)において、Vは単結晶粒子の体積であり、Bは印加された磁場による磁束密度であり、μ0は真空の透磁率である。
図2の(a)に示すように、結晶磁気異方性を有する単結晶粒子100に磁場Hを印加した場合に、エネルギー差ΔEが結晶の熱擾乱エネルギーkT(k:ボルツマン定数、T:絶対温度)よりも大きくなると(ΔE>kT)、磁化容易軸を磁場Hの方向に揃えて磁気異方性エネルギー(内部エネルギー)を小さくするために、単結晶粒子100を回転させるトルクが発生する。
そこで、図2の(b)に示すように、単結晶の成膜粉を含むエアロゾルに、上記の条件を満たすように磁場Hを印加することにより、それぞれの単結晶の方位を揃えることができる。そのようなエアロゾルを基板8に吹き付け、成膜粉を堆積させることにより、結晶方位が配向された膜101が形成される。
以上説明したように、本実施形態においては、成膜粉を含むエアロゾルに磁場を印加することにより、AD法によって形成される緻密で強固な膜に、結晶配向性を付与することができる。従って、常温且つ乾式でパターン形成できるというAD法の利点を活かしつつ、膜の機能性を容易に向上させることができる。例えば、PZTやBaTiO3を含む圧電膜を形成する場合には、圧電性能が発現する結晶方位を揃えることにより分極し易くなるので、それらの圧電性能を向上させることが可能である。
また、従来においては圧電性能が弱くて実用化に適しない材料であっても、本実施形態に係る成膜装置を用いることにより、圧電性能を向上させることができる。それにより、現在において主流であるPZT等の鉛系圧電材料を凌駕する非鉛系圧電材料の創生も期待される。具体的には、BaTiO3系材料、K0.5N0.5NbO3系材料、BiNaTiO3系材料(BiNaBaTi−6)、BNBT−5.5、BaSrNaNb5O15、Ba2NaBiNb5O15、Na0.5Bi0.5CaBi4Ti4O15−5、KNbO3等において、圧電性能を大幅に向上できる可能性がある。
ここで、本実施形態においては、エアロゾルに印加される磁場を形成するために、超伝導磁石を用いている。これは、セラミックス等の常磁性体においては、強磁性体やフェリ磁性体と比較して、磁化率χが小さいので、式(1)によって表されるトルクΔEを熱擾乱エネルギーkTより大きくするためには、例えば、B=10テスラ、又は、それ以上の強磁場を形成する必要があるからである。しかしながら、成膜粉として、強磁性体やフェリ磁性体のように、磁化率χが大きい材料を用いる場合には、それほど強力な磁場を形成する必要はなく、例えば、2テスラ〜3テスラで十分である。従って、その場合には、通常の電磁石や、ネオジウム系磁石等の永久磁石を用いても良い。それにより、成膜装置の構成を簡単にして小型化することができる。
なお、本実施形態において、磁場を形成する際に用いられたコイルタイプの磁石は、比較的安価に入手することができるので、低コストで装置を構成することが可能である。
なお、本実施形態において、磁場を形成する際に用いられたコイルタイプの磁石は、比較的安価に入手することができるので、低コストで装置を構成することが可能である。
また、図1に示す成膜装置においては、超伝導コイル6に含まれる超伝導コイルを加速管5の周囲に配置したが、エアロゾルの流路を含む領域に磁場を形成できれば、超伝導コイルの位置は図1に示す位置に限られない。例えば、図3に示すように、加速管5及び基板8を囲むように超伝導コイル20を配置しても良い。この場合には、基板8を含む領域にも磁場を形成することにより、成膜粉が基板8に付着する直前まで強い磁場の作用を受けるので、結晶配向性をさらに向上させることができる。また、図4に示すように、チャンバ1の外部に超伝導コイル30を配置しても構わない。この場合には、超伝導コイル30を含む超伝導磁石の取り扱いが容易になるというメリットがある。
次に、本実施形態に係る成膜装置の変形例について、図5〜図8を参照しながら説明する。
図5に示すように、エアロゾルの進行方向(即ち、基板への付着面)に対する磁場の相対的な角度を変化させることにより、基板8に形成される膜102の結晶配向を変化させることができる。そのためには、図6に示すように、加速管5に対する超伝導コイル7の向きを所望の角度に傾ければ良い。或いは、図7に示すように、超伝導コイル30によって形成された磁場において、噴射ノズル7が取り付けられた加速管5と、基板8を保持する基板ステージ9とを所望の角度に傾けても良い。この場合には、エアロゾル搬送管4と加速管5とを、フレキシブルな弾性部材10によって接続しておけば良い。なお、成膜粉を基板8に堆積させる際に、成膜粉が有する運動エネルギーを有効に利用するため、噴射ノズル7と基板8との相対的角度を所定の範囲内(例えば、90°付近)に維持しておくことが望ましい。
図5に示すように、エアロゾルの進行方向(即ち、基板への付着面)に対する磁場の相対的な角度を変化させることにより、基板8に形成される膜102の結晶配向を変化させることができる。そのためには、図6に示すように、加速管5に対する超伝導コイル7の向きを所望の角度に傾ければ良い。或いは、図7に示すように、超伝導コイル30によって形成された磁場において、噴射ノズル7が取り付けられた加速管5と、基板8を保持する基板ステージ9とを所望の角度に傾けても良い。この場合には、エアロゾル搬送管4と加速管5とを、フレキシブルな弾性部材10によって接続しておけば良い。なお、成膜粉を基板8に堆積させる際に、成膜粉が有する運動エネルギーを有効に利用するため、噴射ノズル7と基板8との相対的角度を所定の範囲内(例えば、90°付近)に維持しておくことが望ましい。
さらに、図6又は図7に示す成膜装置において、基板8上に形成された膜の厚さ(基板からの高さ)に応じて、エアロゾルの進行方向と磁場との相対的な向きを変化させることにより、図8に示すように、結晶配向の異なる複数の層103、104、…が積層された機能性材料を形成することができる。
次に、本発明の第2の実施形態に係る成膜装置について、図9及び図10を参照しながら説明する。図9は、本実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
図9に示す成膜装置は、図1に示す成膜装置に加えて、電極50a及び50bと、電源装置51とを有している。電極50aと電極50bとは、噴射ノズル7から噴射されたエアロゾルの流路を挟んで、対向して配置されている。電源装置51は、電極50aと電極50bとの間に電位差を与えることにより、エアロゾルの流路を含む領域に所定方向の電場(図9においてはY方向)を形成する。その他の構成については、図1に示す成膜装置と同様である。
図9に示す成膜装置は、図1に示す成膜装置に加えて、電極50a及び50bと、電源装置51とを有している。電極50aと電極50bとは、噴射ノズル7から噴射されたエアロゾルの流路を挟んで、対向して配置されている。電源装置51は、電極50aと電極50bとの間に電位差を与えることにより、エアロゾルの流路を含む領域に所定方向の電場(図9においてはY方向)を形成する。その他の構成については、図1に示す成膜装置と同様である。
図10は、本実施形態に係る成膜装置において用いられる成膜方法の原理を説明するための図である。
図10の(a)に示すように、一般に、単結晶である成膜粉100は、結晶軸方向に分極している。そのため、成膜粉100に電場Eを印加すると、成膜粉100は分極電荷と電場Eの大きさに応じたローレンツ力(偶力)F1及びF2(F2=−F1)受ける。その結果、成膜粉100を矢印の方向に回転させるトルクNが生じる。そこで、図10の(b)に示すように、超伝導コイル6によって形成された磁場Hを印加されることにより、結晶方位を揃えられた成膜粉100に対し、電極50a及び50bによって形成される電場Eを印加する。それにより、成膜粉100の結晶方位を所望の方向に所望の量だけ変化させて、結晶が所望の方位に配向された膜105を形成することができる。ここで、成膜粉100の結晶方位を変化させる方向及び変化量は、電場Eの大きさ及び配置、並びに、エアロゾルが電場Eを通過する距離(即ち、電極50a及び50bの長さ)を調節することにより制御することができる。
図10の(a)に示すように、一般に、単結晶である成膜粉100は、結晶軸方向に分極している。そのため、成膜粉100に電場Eを印加すると、成膜粉100は分極電荷と電場Eの大きさに応じたローレンツ力(偶力)F1及びF2(F2=−F1)受ける。その結果、成膜粉100を矢印の方向に回転させるトルクNが生じる。そこで、図10の(b)に示すように、超伝導コイル6によって形成された磁場Hを印加されることにより、結晶方位を揃えられた成膜粉100に対し、電極50a及び50bによって形成される電場Eを印加する。それにより、成膜粉100の結晶方位を所望の方向に所望の量だけ変化させて、結晶が所望の方位に配向された膜105を形成することができる。ここで、成膜粉100の結晶方位を変化させる方向及び変化量は、電場Eの大きさ及び配置、並びに、エアロゾルが電場Eを通過する距離(即ち、電極50a及び50bの長さ)を調節することにより制御することができる。
或いは、エアロゾルは気固二層流なので、そこに含まれる成膜粉100は、摩擦によって帯電し易い。そのため、成膜粉100に帯電している電荷と電場Bとの相互作用によって生じるローレンツ力の影響により、成膜粉100の結晶方位を変化させることも考えられる。
なお、本実施形態においては、磁場が印加された後のエアロゾルに対して電場を印加しているが、電極50a及び50bの配置を変更することにより、エアロゾルに対して電場と磁場を同時に印加しても良いし、電場を印加した後で磁場を印加しても良い。
なお、本実施形態においては、磁場が印加された後のエアロゾルに対して電場を印加しているが、電極50a及び50bの配置を変更することにより、エアロゾルに対して電場と磁場を同時に印加しても良いし、電場を印加した後で磁場を印加しても良い。
本発明は、原料の粉体を基板等に噴射して堆積させる成膜方法及び成膜装置において利用可能である。
1 チャンバ
2 排気ポンプ
3 エアロゾル生成室
4 エアロゾル搬送管
5 加速管
6、20、30 超伝導コイル
7 噴射ノズル
8 基板
9 基板ステージ
10 弾性部材
50a、50b 電極
51 電源装置
100 単結晶粒子
101、102、105 膜
103、104 層
2 排気ポンプ
3 エアロゾル生成室
4 エアロゾル搬送管
5 加速管
6、20、30 超伝導コイル
7 噴射ノズル
8 基板
9 基板ステージ
10 弾性部材
50a、50b 電極
51 電源装置
100 単結晶粒子
101、102、105 膜
103、104 層
Claims (5)
- 原料の粉体を容器に収納し、前記容器にキャリアガスを導入することにより、前記原料の粉体を含むエアロゾルを生成する工程(a)と、
工程(a)において生成されたエアロゾルの流路に磁場を印加することにより、エアロゾルに含まれる原料の粉体における結晶方位を配向させる工程(b)と、
工程(b)において磁場が印加されたエアロゾルを基板に吹き付けることにより、結晶方位が配向した原料の粉体を前記基板上に堆積させる工程(c)と、
を具備する成膜方法。 - 工程(b)が、前記原料の粉体が有する磁化率と印加される磁場の大きさとに基づいて定まる磁気異方性エネルギーの大きさが、前記原料の粉体における熱擾乱エネルギーよりも大きくなるように、エアロゾルに磁場を印加することを含む、請求項1記載の成膜方法。
- 工程(a)において生成されたエアロゾルの流路に電場を印加することにより、エアロゾルに含まれる原料の粉体における結晶方位を変化させる工程をさらに具備する請求項1又は2記載の成膜方法。
- 膜が形成される基板を保持する保持手段を有するチャンバと、
原料の粉体を収納する容器を含み、該容器にキャリアガスを導入することにより、前記原料の粉体を含むエアロゾルを生成するエアロゾル生成手段と、
前記エアロゾル生成手段によって生成されたエアロゾルの流路に磁場を印加することにより、エアロゾルに含まれる原料の粉体における結晶方位を配向させる磁場印加手段と、
前記磁場印加手段によって磁場が印加されたエアロゾルを前記基板に吹き付けることにより、結晶方位が配向した原料の粉体を前記基板上に堆積させるエアロゾル噴射手段と、
を具備する成膜装置。 - 前記エアロゾル生成手段によって生成されたエアロゾルの流路に電場を印加することにより、エアロゾルに含まれる原料の粉体における結晶方位を変化させる電場印加手段をさらに具備する請求項4記載の成膜装置。
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