JP2006075155A - 新規非ヒト動物 - Google Patents

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Abstract

【目的】 そう病、うつ病、そううつ病、多動性障害、自閉症、統合失調症、外傷後ストレス障害等の精神疾患または学習記憶障害、老化に伴う記憶障害、脳血管障害に伴う記憶障害、認知症に伴う記憶障害、パーキンソン病に伴う記憶障害、うつ病に伴う記憶障害等の記憶障害の治療及び/または予防薬のスクリーニングに有用な新規非ヒト動物の提供。
【構成】 アクチビン遺伝子が少なくとも脳で過剰発現され、かつ、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有する継代可能な非ヒト動物、またはその子孫。また、少なくとも脳で活性化されるプロモーターの制御下におかれたアクチビン遺伝子が導入され、かつ、継代可能であることを特徴とする非ヒト動物、またはその子孫。
【選択図】 なし

Description

本発明は、新規な非ヒト動物に関する。具体的には、アクチビン遺伝子が過剰発現された非ヒト動物に関する。
アクチビン(Activin)は、TGFβ(Transforming growth factor β)スーパーファミリーに属する分泌性因子である。アクチビンは発生初期において分化決定などの重要な役割を演じており、これらのシグナルを乱すと正常な発生ができないことで広く知られている。
アクチビンシグナルは、分泌因子であるアクチビンが放出されることから始まる(例えば、非特許文献1〜3参照)。放出されたアクチビンがII型アクチビンレセプター(Type II activin receptor)に結合するとII型アクチビンレセプターが活性化し、I型アクチビンレセプター(Type I activin receptor)を活性化させる。その後、活性化したI型アクチビンレセプターは転写因子であるSmad2/3をリン酸化し、活性化させる。活性化したSmad2/3はSmad4と結合することで核移行し、アクチビンシグナル系の下流にある遺伝子群の転写制御を行う。
アクチビンシグナルは、発生、分化において重要な役割を演じていることで広く知られているが、そればかりでなく、皮膚形成、骨形成、ホルモン分泌等において様々な作用を有している(例えば、非特許文献4、5参照)。また、学習・記憶等への関与も示唆されている(例えば、非特許文献6、7参照)。動物においては、アクチビンβサブユニットをコードする遺伝子として、アクチビンA遺伝子、B遺伝子、C遺伝子、E遺伝子の4種類が存在しており、それぞれ、アクチビンβA、βB、βC、βEをコードしている。これらの機能の相違等については、未だ解明されていない部分が多々あるが、アクチビンはこれらのβsubunitの2つからなる二量体であり、例えば脳では主にβA/βAの組み合わせから成るアクチビンが存在していることが知られている。また、前記4種類の遺伝子のうち、神経活動依存的に神経においてmRNAの発現量が増大するのはアクチビンA遺伝子のみである(例えば、非特許文献6、7参照)。
このような多種多様なアクチビンの機能解明のため、アクチビンシグナル系の様々な遺伝子改変動物が作製されているが、脳神経系へのアクチビンの影響を解明するのに適した、特に脳におけるアクチビンの発現が変化していて、脳神経系に何らかの異常をきたしている動物は報告されていない。例えば、アクチビンの脳を含む全身における機能を解析するために、アクチビンまたはアクチビンシグナル系に関わる因子のノックアウトマウスが作製されている。これらのうち、神経活動依存的に神経においてmRNAの発現量が増大するアクチビンβAのノックアウトマウスでは、頬ヒゲと門歯が無く、口蓋形成に異常が見られた。しかしこのマウスは、生まれてくるものの生後24時間以内に死滅してしまうので、脳神経系へのアクチビンの影響を解析することができない(例えば、非特許文献8参照)。また、II型アクチビンレセプターのノックアウトマウス(例えば、非特許文献9参照)は、まれに骨と顔面形成に異常が見られるものの、多くのものは正常に生育すると報告されている。しかしこのノックアウトマウスは、卵胞刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone)が減少していたために生殖能力を有しておらず、継代が不可能で、長期間にわたって十分な解析を行えるようなものではなかった。
このように、現在までに複数のアクチビンに関する遺伝子改変動物が作製されているものの、いずれもアクチビンの機能を解析するに十分なものではなく、また、学習・記憶や、その他のアクチビンが関与する疾患のモデル動物として使用可能なものも得られていなかった。
一方、精神疾患の治療及び/または予防薬の開発等のために、精神疾患の適切なモデル動物が望まれている。適切なモデル動物があれば、例えば一般的な動物行動テスト等によって薬剤の初期のスクリーニング等を簡便に行うことができる。しかし、現在のところ、精神疾患のモデル動物は未だ確立されているとは言いがたい。例えば、精神疾患であるそう病、うつ病、統合失調症等のモデル動物としては、麻薬類等の薬剤により病状を誘導したモデル動物が繁用されている。しかし、このような動物では、スクリーニングに用いる薬剤と病状を誘導するために投与された薬剤との相互作用が問題となったり、個体によって病状の誘導状態が異なる等、正確で均質なスクリーニングを行うのが困難であった。そのような点から、安定的に精神疾患の病状を呈し、精神疾患の治療及び/または予防薬のスクリーニング等に利用可能な遺伝的に均質な精神疾患モデル動物の作出が望まれていた。また、記憶障害の治療及び/または予防薬の開発等のために、記憶障害の適切なモデル動物が望まれている。適切なモデル動物があれば、例えば一般的な動物行動テスト等によって薬剤の初期のスクリーニング等を簡便に行うことができる。そのような点から、安定的に記憶障害の病状を呈し、記憶障害の治療及び/または予防薬のスクリーニング等に利用可能な遺伝的に均質な記憶障害モデル動物の作出が望まれていた。
Nature, 425, 577-584, 2003 Cell, 103, 295-309, 2000 Trends Endocrinol. Metab., 11, 309-314, 2000 Proc. Sc. Exp. Biol. Med., 214, 114-122, 1997 Proc. Sc. Exp. Biol. Med., 215, 209-222, 1997 FEBS Lett., 382, 48-52, 1996 Neuroscience, 69, 781-796, 1995 Nature, 374, pp354-356, 1995 Nature, 374, pp356-360, 1995
本発明は、アクチビン遺伝子が過剰発現された非ヒト動物を提供するためになされたものである。より具体的には、アクチビン遺伝子が少なくとも脳で過剰発現され、かつ、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有する継代可能な非ヒト動物、またはその子孫を提供するためになされたものである。また、少なくとも脳で活性化されるプロモーターの制御下におかれたアクチビン遺伝子が導入され、かつ、継代可能であることを特徴とする非ヒト動物、またはその子孫を提供するためになされたものである。さらに、本発明は、前記動物の製造方法、アクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/または予防薬のスクリーニング方法等を提供する。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を進めた結果、少なくとも脳で活性化されるプロモーターの制御下におかれたアクチビン遺伝子を非ヒト動物に導入することによれば、少なくとも脳でアクチビン遺伝子が過剰発現し、かつ安定的に継代可能な非ヒト動物を作製できることを見出した。また、この動物を解析したところ、活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常等の表現型を有することを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち本発明によれば、
(1)アクチビン遺伝子が少なくとも脳で過剰発現され、かつ、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有する継代可能な非ヒト動物、またはその子孫が提供される。また、
(2)少なくとも脳で活性化されるプロモーターの制御下におかれたアクチビン遺伝子が導入され、かつ、継代可能であることを特徴とする非ヒト動物、またはその子孫、
(3)プロモーターが、さらに生殖器官で活性化されないものであることを特徴とする上記(2)に記載の動物、
(4)プロモーターが、脳神経回路網発達期以降に活性化されるものであることを特徴とする上記(2)または(3)に記載の動物、
(5)プロモーターが、前脳特異的に活性化されるものであることを特徴とする上記(2)〜(4)のいずれかに記載の動物、
(6)プロモーターが、CaMKIIプロモーターである上記(2)〜(5)のいずれかに記載の動物、
(7)動物が、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有することを特徴とする上記(2)〜(6)のいずれかに記載の動物、
が提供される。さらに、
(8)下記(i)〜(iii)の工程を含むことを特徴とする上記(2)〜(6)のいずれかに記載の動物の製造方法、
(i)少なくとも脳で活性化されるプロモーターの制御下におかれたアクチビン遺伝子を非ヒト動物受精卵に導入する、
(ii)前記受精卵を発生させ、得られた非ヒト動物を解析して、該アクチビン遺伝子が導入された個体を選択する、
(iii)選択された個体が、継代可能であることを確認する、
(9)下記(i)〜(iii)の工程を含むことを特徴とする、上記(1)または(7)に記載の動物の製造方法、
(i)アクチビン遺伝子を非ヒト動物受精卵に導入する、
(ii)前記受精卵を発生させ、得られた非ヒト動物を解析して、アクチビン遺伝子が過剰発現された個体を選択する、
(iii)選択された個体が、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有し、かつ継代可能であることを確認する、
が提供される。
また、本発明の別の態様からは、
(10)上記(1)または(7)に記載の動物に被検物質を投与し、該動物に対して被検物質が与える影響を、該動物のアクチビンの過剰発現が誘導する表現型の変化を指標にして検出することを特徴とする、アクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/または予防薬のスクリーニング方法、
(11)アクチビンレセプターを発現している細胞にアクチビン及び被検物質、もしくは被検物質のみを添加し、該細胞に対して被検物質が与える影響をアクチビンシグナル系の変化を指標にして検出することを特徴とする、アクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/または予防薬のスクリーニング方法、
(12)アクチビン発現細胞に被検物質を添加し、該細胞に対して被検物質が与える影響をアクチビン発現量の変化を指標にして検出することを特徴とする、アクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/または予防薬のスクリーニング方法、
(13)アクチビンが関与する精神疾患がそう病、うつ病、そううつ病、多動性障害、自閉症、統合失調症、または外傷後ストレス障害である上記(10)〜(12)のいずれかに記載の方法、
(14)アクチビンが関与する記憶障害が学習記憶障害、老化に伴う記憶障害、脳血管障害に伴う記憶障害、認知症に伴う記憶障害、パーキンソン病に伴う記憶障害、またはうつ病に伴う記憶障害である上記(10)〜(12)のいずれかに記載の方法、
(15)上記(13)または(14)に記載の方法により選択される物質を製剤化することを特徴とする、そう病、うつ病、そううつ病、多動性障害、自閉症、統合失調症、外傷後ストレス障害、学習記憶障害、老化に伴う記憶障害、脳血管障害に伴う記憶障害、認知症に伴う記憶障害、パーキンソン病に伴う記憶障害、またはうつ病に伴う記憶障害の治療及び/または予防薬の製造方法、
が提供される。さらに、
(16)上記(1)または(7)に記載の動物と、フォリスタチン遺伝子が過剰発現され、かつ、少なくとも活動量、情動性、情報処理機構、および学習記憶のいずれかの指標において、上記(1)または(7)に記載の動物と逆の表現型を有する動物とにそれぞれ被検物質を投与し、下記(i)または(ii)のいずれかの物質を選択することを特徴とするそううつ病または統合失調症の治療及び/または予防薬のスクリーニング方法、
(i)上記(1)または(7)に記載の動物において少なくとも活動量、情動性、情報処理機構のいずれかの指標においてその値が正常に近くなり、フォリスタチン遺伝子が過剰発現され、かつ、少なくとも活動量、情動性、情報処理機構、および学習記憶のいずれかにおいて上記(1)または(7)に記載の動物と逆の表現型を有する動物における該指標の値には影響を与えない物質、
(ii)フォリスタチン遺伝子が過剰発現され、かつ、少なくとも活動量、情動性、情報処理機構、および学習記憶のいずれかにおいて上記(1)または(7)に記載の動物と逆の表現型を有する動物において少なくとも活動量、情動性、情報処理機構のいずれかの指標においてその値が正常に近くなり、上記(1)または(7)に記載の動物における該指標の値には影響を与えない物質、
が提供される。
本発明によれば、アクチビン遺伝子が少なくとも脳で過剰発現された非ヒト動物が提供される。該動物は、アクチビン遺伝子が関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/または予防薬のスクリーニング等に有用である。
以下、本発明を更に詳細に説明するが、以下の構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの内容のみに特定されるものではない。
なお、本明細書において、DNAやベクターの調製等の分子生物学的手法、遺伝子改変動物の作製に関する一般的な手法等は、特に明記しない限り、例えば、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd edition (Sambrook and Russell著、Cold Spring Harbor Laboratory Press刊 (2001))」、「Manipulating the Mouse Embryo. A Laboratory Manual, third edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press刊 (2003))」等の一般的実験書に記載の方法又はそれに準じて行うことができる。
1.本発明の非ヒト動物及びその製造方法
本発明の非ヒト動物は、アクチビン遺伝子が少なくとも脳で過剰発現され、かつ、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有し、継代可能であることを第一の特徴としている。特に、アクチビンの過剰発現と、活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常等の関連については、今まで知られておらず、本発明の非ヒト動物が作製されたことによって初めて明らかになったものである。
本発明の非ヒト動物は、アクチビン遺伝子が少なくとも脳において過剰発現された結果、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常(以下、これらを単に「行動異常」と称することがある)のいずれかの表現型を有し、継代可能なものであれば、いかなる方法によりアクチビン遺伝子が過剰発現されたものであってもよい。
「アクチビン遺伝子が過剰発現されている」とは、上記アクチビン遺伝子の翻訳生成物であるアクチビンが、該動物のいずれかの組織中で同種の野生型動物に比べて多く存在していることを意味する。例えば、通常のELISA法、ウエスタンブロット法等を用いて該動物のいずれかの組織を解析した場合に、検出されるアクチビンの存在量が、野生型動物の同組織におけるアクチビン存在量より多いことを意味する。また、アクチビンをコードしているmRNAの発現量により比較されてもよい。mRNA発現量の解析は、例えば、ノザンブロット法等の公知の手法により行うことができる。なお、本明細書において「アクチビン遺伝子が発現する」という場合には、アクチビンをコードするmRNAの生成やアクチビンの生成を意味する。
ここで、アクチビン遺伝子とは、蛋白質であるアクチビンの遺伝情報を担う核酸であり、アクチビンをコードする遺伝子を意味する。アクチビンをコードする遺伝子としては、アクチビンA遺伝子、アクチビンB遺伝子、アクチビンC遺伝子、アクチビンE遺伝子またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。これらの機能には大きな差がないと考えられているが、脳においては主にアクチビンβAが存在することが知られていることから、本発明においてはアクチビンA遺伝子が好ましく用いられる。
本発明の非ヒト動物で、アクチビン遺伝子が過剰発現する組織は、少なくとも脳を含み、該動物が上記の行動異常を有する限りいずれの組織でもよい。脳の中でも、前脳に過剰発現していることが特に好ましい。本発明の動物として、人工的にアクチビン遺伝子を過剰発現させたものを用いる場合、アクチビン遺伝子を、上記組織で活性化される適当なプロモーターの制御下においたDNAを作製し、これを導入することにより上記動物を作製することができる。このような動物の作製方法は、以下に詳述する方法等が挙げられる。
また、非ヒト動物としては、ヒト以外の動物であって、アクチビン遺伝子を導入する場合には、これが発現されるものであればよい。好ましくは哺乳類であり、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ等が挙げられる。より好ましくはげっ歯類であり、さらに好ましくはマウスもしくはラットであり、最も好ましくはマウスである。
上記の「行動異常」は、これらのうち少なくとも一つ以上の表現型を有していればよく、好ましくは二つ以上、より好ましくは三つ以上を有する。これらの行動異常は、いずれもそれ自体公知の通常用いられる動物行動テスト等により検出され得るものであり、例えば、本発明の動物を用いて得られる結果とコントロールの個体(好ましくは同腹の野生型動物)を用いて得られる結果とを比較して有意差が見られた場合に、異常であると判断することができる。具体的には、本発明の動物においては、コントロールの個体に比較して活動量が上昇している。情動性、情報処理機構、学習記憶は上昇もしくは低下している。好ましくは、いずれも上昇している。有意差の判定は、公知の一般的統計解析法により行うことができる。具体的には、以下に詳述するとおりである。また、本発明の非ヒト動物は、上記行動異常以外にも、コントロールの個体と異なる表現型を有していてもよい。
動物行動テストは、例えば、「Current Protocol in Neuroscience (John Wiley & Sons, Inc.)」、「動物の行動機能テスト(生体の化学、医学書院刊、Vol.45、No.5 (1995)」等に記載の公知の方法に準じて行うことができる。また、前記したものに限らず、該非ヒト動物に適用できるものであればいかなるものでも用い得る。例えば、活動量は探索行動テスト(Open field test)等の一般活動性テストで解析することができる。情動性は、明暗テスト(Light and dark test)、強制水泳テスト(Forced swimming test)、高架式十字迷路テスト等で解析することができる。情報処理機構は、プレパルス抑制テスト(Prepulse inhibition test)等で解析することができる。学習記憶は、モリス水迷路(Morris water maze)、恐怖条件付け(Fear conditioning)、オブジェクト認識テスト(Object recognition test)等により解析することができる。これらのうち幾つかを組み合わせて用いることが好ましい。
本発明の非ヒト動物の行動異常のうち、「活動量の上昇」とは、一般に活動度、好奇心、積極性がコントロールに比べて強いことを意味する。このような表現型として、例えば、探索行動テスト(Open field test)において行動時間、行動距離や、立ち上がり回数、立ち上がり時間がコントロールの個体に比較して有意に上昇しているもの等が挙げられる。また、該テストにおいて真ん中部位の占有時間がコントロールに比較して有意に長いこと等も含む。
「情動性の異常」とは、一般に、不安行動、絶望行動、恐怖に対する行動等に異常を有することを意味する。このような表現型としては、例えば、明暗テスト(Light and dark test)において明部の占有時間がコントロールに対して有意に上昇していて不安度合いが減少しているもの、強制水泳テスト(Forced swimming test)における無動時間が、コントロールに比べて有意に短く、絶望に対して抵抗性が上昇しているもの、あるいは、高架式十字迷路テストにおいてむき出しの通路(Open arm)での存在時間がコントロールに比べて有意に上昇していて、高所における恐怖心が低下しているもの等が挙げられる。
「情報処理機構の異常」とは、一般に、不必要な情報を無視する行動等にコントロールと比べて異なる表現型があることを意味する。このような表現型としては、例えば、プレパルス抑制テスト(Prepulse inhibition test)においてプレパルスによる抑制の度合いがコントロールに比べて増大しているもの等があげられる。
「学習・記憶の異常」とは、一般に、学習能力、記憶能力が上昇、もしくは低下することを意味する。このような表現型としては、例えば、モリス水迷路(Morris water maze)、恐怖条件付け(Fear conditioning)、オブジェクト認識テスト(Object recognition test)等の行動テストにおいて学習能力、記憶能力がコントロールに比べて上昇、もしくは低下しているもの等が挙げられる。
記憶の形成は、獲得、保持、想起の3つの相から成るが、分子機構はそれぞれの相で異なる。最近、これらに加え、記憶形成には再固定と呼ばれる4つ目の相がある事が明らかにされつつある。再固定とは、想起することで記憶が一時的に不安定化し、その後タンパク質合成を含む分子カスケードの働きで記憶がさらに強固になることを指す。「学習・記憶の異常」には、これらの相における異常に起因するものも含まれる。
また、本発明の動物において「継代可能な」とは、正常な交配を繰り返すことができることを意味し、好ましくは、交配を繰り返しても本発明の動物の特徴が安定的に維持されるものである。具体的には、例えば、生殖能力が正常で、オス、メスいずれも正常な交配が可能であることが好ましい。また、交配は少なくとも1世代以上、好ましくは2世代以上、より好ましくは3世代以上にわたって安定的に繰り返すことができる。遺伝子型は、ホモ型でもヘテロ型でも安定的に維持されればいずれでもよい。このような性質を有することにより、均質な個体群を継続的に得ることができ、例えば本発明の非ヒト動物を疾患モデル動物として使用する場合等において非常に有用である。
例えば、人工的にアクチビン遺伝子が過剰発現された動物は、通常、同じ系統の野生型動物と交配し、得られた産仔の中から遺伝子が導入された動物を選択することを繰り返しながら、系統が維持されていく。このとき、生殖能力に異常があり正常な交配が不可能であると、満足に産仔を得ることができず、系統を維持することが困難である。該動物を作製するためには長い時間と労力が必要であるため、安定的に系統を維持して十分な数の産仔を得ることができないと、例えば、これを用いて解析・実験等を安定的に行うことも困難になってしまう。
このような本発明の非ヒト動物としては、人工的にアクチビン遺伝子を過剰発現させたものでもよいし、突然変異の誘発等によりアクチビン遺伝子が過剰発現されたものを選択してもよいが、好ましい例として、少なくとも脳で活性化されるプロモーターの制御下におかれたアクチビン遺伝子が導入され、かつ継代可能な非ヒト動物(以下、これを「アクチビン導入動物」と称することがある)が挙げられる。
プロモーターは、少なくとも脳で活性化され、導入された非ヒト動物の体内でアクチビン遺伝子を過剰発現させ、さらに導入された動物が継代可能である能力を有するものであれば、いかなるものでも用い得る。すなわち、脳のみで活性化されるものでも、脳に加えて脳以外の部位でも活性化されるものでもよい。このようなプロモーターを選択して用いることにより、少なくとも脳でアクチビン遺伝子が過剰発現され、脳におけるアクチビンの機能が増強された非ヒト動物を作製することができる。
さらに好ましくは、プロモーターは、生殖器官で活性化されないものが用いられる。このようなプロモーターを選択することにより、生殖能力に影響を及ぼすことなく、作製された非ヒト動物を安定的に維持することができる。また、より好ましくは、脳神経回路網発達期以降に活性化されるプロモーターが用いられる。脳神経回路網発達期以降とは、生後3週後、好ましくは4週後以降である。このようなプロモーターを用いることにより、脳神経回路網の発達自体に影響を与えないことから、正常に発達した脳神経回路網における脳神経活動でのアクチビンの機能を解析することができる。また、前脳特異的に活性化されるプロモーターを用いることも好ましい。前脳とは、主に大脳半球と間脳から成る部分であり、大脳皮質、視床、嗅球、視床下部、下垂体、大脳基底核、海馬、扁桃核等が含まれ、複雑な感覚情報の処理、記憶、情動などに重要な役割を果たす部位と考えられている。この前脳特異的に活性化されるプロモーターを用いれば、前脳において、記憶、感覚、感情等にかかわるアクチビンの機能を解析することができる。
本発明のアクチビン導入動物の作製に用いられるプロモーターの具体例としては、例えば、前脳特異的に活性化されるプロモーターとして、βCaMKIIプロモーター、神経細胞特異的エノラーゼプロモーター、Thi-1プロモーター等が挙げられる。脳神経回路網発達期以降に活性化され、かつ、前脳特異的に活性化されるプロモーターとして、例えば、αCaMKIIプロモーター(Science, vol 274, pp1678-1683, 1996)が挙げられる。本発明においては、このαCaMKIIプロモーターが特に好ましく用いられる。
ここで、アクチビン遺伝子とは、蛋白質であるアクチビンの遺伝情報を担う核酸であり、アクチビンをコードする遺伝子を意味する。アクチビンをコードする遺伝子としては、アクチビンA遺伝子、アクチビンB遺伝子、アクチビンC遺伝子、アクチビンE遺伝子等が挙げられる。これらの機能には大きな差がないと考えられているが、脳においては主にアクチビンβAが存在することが知られていることから、本発明においてはアクチビンA遺伝子が好ましく用いられる。アクチビン遺伝子は、これが発現されたときに当該動物内でアクチビンシグナル系において正常に機能する能力を有するアクチビンを生成し得るものであれば、いかなるものでもよい。例えば、ゲノム上のアクチビンをコードする領域等を取得して用いても良いが、本発明においてはcDNAが好ましく用いられる。このようなアクチビン遺伝子としては、例えば、アクチビンβAをコードするアクチビンA遺伝子であって、配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するもの等が挙げられる。該遺伝子は、作製する非ヒト動物と同種の動物由来のものでも、異種由来のものでもよいが、好ましくは同種由来のものである。また、例えば、前記遺伝子に点突然変異誘発法等を用いて変異を導入したもの等も、生成されたアクチビンが前記したようなアクチビンとしての機能を維持してさえいれば、用いることができる。また、該遺伝子が動物内で発現されたことを確認するために、該遺伝子にタグ蛋白質を共発現させるための塩基配列(以下、これを「タグ配列」と称することがある)等を付加しておき、これを用いることも好ましい。このような構成とすることにより、該遺伝子の発現の有無や度合いをこのタグ蛋白質の発現の有無や度合いにより検出することができるので簡便である。タグ蛋白質としては、例えば、Mycタグ、HAタグ、FLAGタグ等が挙げられる。なお、本明細書において「アクチビン遺伝子が発現する」という場合には、アクチビンをコードするmRNAの生成やアクチビンの生成を意味する。
また、上記プロモーターの「制御下におかれた」とは、導入された組織内で上記プロモーターが活性化されることによりアクチビン遺伝子の発現が誘導されることを意味し、具体的には、例えば、上記プロモーターの下流に該アクチビン遺伝子を連結し、さらに上記タグ配列やターミネーター等の発現制御領域等を適宜連結したDNA(以下、これを「トランスジーン」と称することがある)を作製し、これを以下に詳述するような方法で非ヒト動物に導入することにより該状態を誘導することができる。トランスジーンの各構成要素の調製、およびそれらを連結する技術等は、それ自体公知の通常用いる方法により行うことができる。
アクチビン遺伝子を「導入する」とは、導入を受ける非ヒト動物のゲノム中のいずれかに導入することを意味する。ここで、ゲノム中に前記アクチビン遺伝子を含むDNA(トランスジーン)が1コピー以上、好ましくは2コピー以上、より好ましくは3コピー以上導入されたものが、本発明の非ヒト動物として好ましい。
また、上記アクチビン導入動物は、継代可能なものであることも特徴の一つである。例えば、一般に外来遺伝子導入動物は、通常、同じ系統の野生型動物と交配し、得られた産仔の中から遺伝子が導入された動物を選択することを繰り返しながら、系統が維持されていく。このとき、生殖能力に異常があり正常な交配が不可能であると、満足に産仔を得ることができず、系統を維持することが困難である。このような動物を作製するためには長い時間と労力が必要であるため、安定的に系統を維持して十分な数の産仔を得ることができないと、例えば、これを用いて解析・実験等を安定的に行うことも困難になってしまう。
すなわち、継代可能であるとは、正常な交配を繰り返すことができることを意味し、好ましくは、交配を繰り返しても本発明の動物の特徴が安定的に維持されるものである。具体的には、例えば、生殖能力が正常で、オス、メスいずれも正常な交配が可能であることが好ましい。また、交配は少なくとも1世代以上、好ましくは2世代以上、より好ましくは3世代以上にわたって安定的に繰り返すことができる。遺伝子型は、ホモ型でもヘテロ型でも安定的に維持されればいずれでもよい。このような性質を有することにより、均質な個体群を継続的に得ることができ、例えば本発明の非ヒト動物を疾患モデル動物として使用する場合等において非常に有用である。
かくして得られる本発明の非ヒト動物は、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有し、継代可能であるという非常に有用な性質を有しているが、これ以外の表現型を有しているものでも本発明のアクチビン導入動物に含まれる。
本発明のアクチビン導入動物は、上記したようなプロモーターとアクチビン遺伝子等を用いて、それ自体公知の通常用いられる外来遺伝子導入動物の作製方法に準じて作製することができる。具体的には、例えば、
(1)少なくとも脳で活性化されるプロモーターの制御下におかれたアクチビン遺伝子を非ヒト動物受精卵に導入する、
(2)前記受精卵を発生させ、得られた非ヒト動物を解析して、該アクチビン遺伝子が導入された個体を選択する、
(3)選択された個体が、継代可能であることを確認する、
ことによって作製することができる。
もしくは、
(1)アクチビン遺伝子を非ヒト動物受精卵に導入する、
(2)前記受精卵を発生させ、得られた非ヒト動物を解析して、アクチビン遺伝子が過剰発現された個体を選択する、
(3)選択された個体が、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有し、かつ継代可能であることを確認する、
ことによって作製することができる。
上記作製方法において、例えば、非ヒト動物受精卵の調製、該受精卵へのアクチビン遺伝子の導入、該受精卵の発生、該受精卵由来の産仔の取得、アクチビン遺伝子が導入された個体の選択等は、いずれもそれ自体公知の通常用いられる方法により行うことができる。
また、非ヒト動物としては、ヒト以外の動物であって、アクチビン遺伝子を前記プロモーター等とともに導入されてこれが発現されるものであればよい。好ましくは哺乳類であり、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ等が挙げられる。より好ましくはげっ歯類であり、さらに好ましくはマウスもしくはラットであり、最も好ましくはマウスである。
以下に、アクチビンβA cDNA及びαCaMKIIプロモーター(Science, vol 274, pp1678-1683, 1996)等を用いて、これをマウス受精卵に導入し、アクチビン導入マウスを作製する場合を例にあげて具体的に説明する。
アクチビンβA cDNAは、例えば、マウスのアクチビンを発現している組織からmRNAを抽出し、さらにcDNAライブラリーを作製したのち、通常の方法によりこれをスクリーニングして調製する方法等が用いられる。Mycタグ蛋白質の塩基配列は、例えば、公知の該塩基配列を通常の手法により合成したもの等が用いられる。SV40 poly A配列は、例えば、一般的に広く用いられている市販の塩基配列等を適宜選択して用いることができる。これらの連結は、それ自体公知の通常用いられる方法により行うことができる。例えば、アクチビンβA cDNAの下流に、Mycタグ蛋白質の塩基配列を含むプライマーを用いてPCR反応を行うこと等により、簡便にこれらが連結されたDNAを調製することができる。さらに、このDNAを、αCaMKIIプロモーターとSV40 poly A配列を含むプラスミドに挿入すること等によって、これらすべてを連結したDNA(トランスジーン)を作製することができる。
次に、得られたDNAをマウス受精卵に導入する。マウスの系統としては、例えば、C57BL等が挙げられる。マウス受精卵は、自然交配によるものを採取してもよいが、過***処理した雌マウスから採取した未受精卵と雄マウスから採取した***を常法により体外受精させて調製された受精卵や、過***処理した雌マウスと雄マウスを交配させたのちに雌マウスから採取した受精卵を用いることもできる。これに、マイクロインジェクション法等により前記DNAを導入し、得られたアクチビン遺伝子導入受精卵を偽妊娠させた雌マウスの卵管に移植して発生させ、出産させればよい。
かくして得られた産仔の中から、アクチビン遺伝子が導入された個体を選択する。例えば、マウスの尾の先を切り取り、公知のDNA抽出法等の市販キット等を利用してゲノムDNAを抽出し、サザンブロット法、PCR法等を用いてゲノム中に導入されたアクチビン遺伝子の有無やコピー数を解析することができる。
また、該個体内で実際にアクチビン遺伝子が発現され、アクチビンが生成されていることを確認することが好ましい。さらに、アクチビンと共に発現されるMycタグ蛋白質に対する抗体を利用し、間接的にアクチビンの発現を確認することもできる。このようなアクチビン遺伝子の発現確認は、例えば、ELISA法、ウエスタンブロット法等によって行うことができる。また、例えば、アクチビンをコードしているmRNAの発現量により解析されてもよい。また、アクチビン遺伝子とともに前記トランスジーンを構成しているSV40 poly A配列等をプローブとして用いて、間接的にアクチビン遺伝子の発現を確認することもできる。このようなアクチビン遺伝子の発現確認は、例えば、In situ hybridization法、ノザンブロット法等によって行うことができる。これらの解析は、具体的には、例えば、該動物の各種臓器、組織、細胞等や、これらから調製した抽出液を試料として行えばよい。本発明のアクチビン導入マウスとしては、好ましくは、少なくとも脳でアクチビン遺伝子が過剰発現されている個体を選択する。好ましくは、本発明のマウスの脳におけるアクチビン遺伝子の発現量を解析し、これを野生型マウスの脳におけるアクチビン遺伝子の発現量と比較して、野生型マウスよりも発現量の多いものを選択することが好ましい。ただし、特にアクチビンそのものを解析しようとする場合、通常野生型動物の体内で生成されているアクチビン量は非常に少ないので、通常用いられるELISA法、ウエスタンブロット法等ではアクチビンが検出限界以下となることがある。これに対して本発明の動物ではアクチビンが検出された場合には、本発明の非ヒト動物では同種の野生型動物に比べてアクチビンが多く存在しているということができる。
かくして得られた本発明のアクチビン導入マウスは、好ましくは同系の野生型マウスとの交配を行って、系統を維持することができる。交配を行うごとに、得られた産仔の中でアクチビン遺伝子を過剰発現している個体を選択する。また、得られるヘテロ型個体の雄と雌を交配することにより、ホモ型個体を得ることもできる。
さらに好ましくは、得られたアクチビン導入マウスを用いて、行動テストを行い、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有するものを選択する。行動テストは、該マウスに適用できるものであればいかなるものでもよく、複数を組み合わせて行い、総合的に判断することが好ましい。得られた結果は、好ましくは同腹の野生型マウスを用いて得られた結果と比較し、有意差があった場合に異常であると判定することができる。結果の判定には、例えば、分散分析法(ANOVA)等を用いることができる。また、各行動テストにおける表現型の選択基準は、以上に詳述したとおりである。
2.本発明のアクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/または予防薬のスクリーニング方法
2−1.本発明の非ヒト動物を用いるスクリーニング方法
本発明の非ヒト動物のうち、アクチビン遺伝子が少なくとも脳で過剰発現され、かつ、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有し、継代可能である動物は、これらの行動異常と同様の病状を呈するアクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/予防薬のスクリーニングに非常に有用である。アクチビンが関与する精神疾患としては、例えば、そう病、うつ病、そううつ病、多動性障害、自閉症、統合失調症、外傷後ストレス障害等が挙げられる。また、アクチビンが関与する記憶障害としては、学習記憶障害、老化に伴う記憶障害、脳血管障害に伴う記憶障害、認知症に伴う記憶障害、パーキンソン病に伴う記憶障害、うつ病に伴う記憶障害等が挙げられる。
非ヒト動物の行動テストは、既に様々な精神疾患または記憶障害のモデル動物において各種精神疾患または記憶障害の治療及び/予防薬のスクリーニングに用いられており、各行動テストにより得られる結果がヒトのどのような精神疾患または記憶障害と同様の症状と考えられるかについて、多くの知見が得られている。例えば、探索行動テスト(Open field test)等の一般活動性テストにおいて活動量の上昇が見られた場合、該動物はヒトのそう病や多動性障害と類似の症状を有すると考えられている。情動性の行動テストである、明暗テスト(Light and dark test)や強制水泳テスト(Forced swimming test)において数値が低下した場合や、高架式十字迷路テストで数値が上昇した場合も、同様に該動物がヒトのそう病や多動性障害と類似の症状を有すると理解される。逆に、それぞれの行動テストで逆の結果が得られた場合には、該動物はヒトうつ病と類似の症状を有すると考えられている。また、例えば、情報処理機構の行動テストであるプレパルス抑制テスト(Prepulse inhibition test)において、その抑制度合いが低下した場合は、ヒトの統合失調症と関連していると考えられている。さらに、学習記憶の行動テストであるモリス水迷路(Morris water maze)、恐怖条件付け(Fear conditioning)、オブジェクト認識テスト(Object recognition test)等において成績が低下した場合は、ヒトの学習記憶障害、老化に伴う記憶障害、アルツハイマー病等の認知症による記憶障害、脳血管障害に伴う記憶障害、パーキンソン病等の神経性疾患に伴う記憶障害、うつ病に伴う記憶障害等と関連していると考えられている。一方、恐怖条件付けにおいて記憶の再固定の増強または低下が見られた場合は、外傷後ストレス障害等と関係していると考えられる。さらに、モリス水迷路において、ワーキングメモリーの低下が見られた場合は、該動物がヒトの統合失調症と関連していると考えられる。
そこで、本発明の非ヒト動物に被検物質を投与し、この被検物質が該動物に与える影響を、該動物が有する前記のような表現型の変化を指標にして検出することにより、アクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/予防薬のスクリーニングを行うことができる。
被検物質としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液等が挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。具体的には、本発明の非ヒト動物に被検物質を投与し、前記行動テストを行って、被検物質が該動物に与える影響を解析する。好ましくは、無処理の対照動物を用いた行動テストを行い、これと結果を比較して解析する。これらの非ヒト動物に被検物質を投与する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射等が用いられ、非ヒト動物の種類、症状、被検物質の性質等に鑑みて適宜選択すればよい。また、被検物質の投与量についても、同様に適宜選択することができる。
具体的には、例えば、本発明の非ヒト動物は、上記1に詳述したとおり、好ましくは野生型動物に比べて活動量や情動性が上昇している。活動量や情動性の上昇は、該動物がヒトのそう病や多動性障害と類似の症状を有することを意味している。そこで、例えば、ある被検物質を投与した本発明の非ヒト動物に活動量や情動性の行動テストを行い、活動量や情動性の低下が確認された場合、該被検物質はそう病や多動性障害の治療及び/または予防薬として用い得ることがわかる。また、逆に活動量や情動性のさらなる上昇が確認された場合、該被検物質はうつ病の治療及び/または予防薬として用い得ることがわかる。また、例えば、本発明の非ヒト動物は、好ましくは野生型動物に比べて情報処理機構が増強されている。被検物質の投与により、情報処理機構の行動テストの結果に変化が見られた場合、該被検物質は統合失調症の治療及び/または予防薬として用い得ることがわかる。さらに、学習記憶機能についても、同様に、被検物質の投与により学習記憶の行動テストの結果に変化が見られた場合、該被検物質は学習記憶障害やアルツハイマー病等の認知症等の治療及び/または予防薬として用い得ることがわかる。各行動テストにおける表現型の選択基準は、以上に詳述したとおりである。
2−2.アクチビンレセプターを発現している細胞を用いるスクリーニング方法
本発明のアクチビン導入動物の行動異常の解析により、アクチビンの過剰発現と精神疾患または記憶障害との関連が判明したため、アクチビンの発現量を制御することによりこれらの疾患の治療及び/予防を行うことができる。すなわち、アクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/予防薬のスクリーニングは、アクチビンを発現している細胞(以下、これを「アクチビン発現細胞」と称することがある)を用いても行うことができる。具体的には、アクチビン発現細胞に被検物質を添加し、該細胞に対して被検物質が与える影響をアクチビン発現量の変化を指標にして検出することにより行うことができる。
アクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/予防薬のスクリーニングは、アクチビンレセプターを発現している細胞を用いても行うことができる。具体的には、アクチビンレセプターを発現している細胞にアクチビン及び被検物質、もしくは被検物質のみを添加し、該細胞に対して被検物質が与える影響をアクチビンシグナル系の変化を指標にして検出することにより行うことができる。
アクチビンは、アクチビンレセプターと結合してアクチビンシグナル系を活性化し、その機能を発現する。従って、例えば、このシグナル系に存在するある因子を増強する物質は、アクチビンにより発現される機能を増強すると考えられる。そこで、アクチビンレセプターを発現している細胞を用いれば、培養細胞系等を用いて簡便にアクチビンシグナル系に影響を与える物質のスクリーニングを行うことができる。用いる細胞としては、アクチビンレセプターを発現しているものであればいかなるものでもよいが、好ましくはアクチビンレセプターだけでなくアクチビンも発現している細胞である。このような細胞として、例えば、アクチビンレセプターを発現している線維芽細胞腫(fibloblast)、ケラチノサイト(keratinocyte)等を用いることができる。また、脳におけるアクチビンの機能を反映するという点で、例えば、海馬等から調製される脳神経細胞の初代培養細胞等が好ましく挙げられる。上記1に詳述した本発明の非ヒト動物由来のアクチビンレセプターを発現している細胞も好ましく用いられる。さらに、本来はアクチビンレセプターを発現していない細胞であっても、公知の手法によりアクチビンレセプターを導入して発現させた細胞株等も用いることができる。
前記細胞への被検物質の添加は、例えば、該細胞を培養している培地に直接添加する等の方法により簡便に行うことができる。被検物質としては、上記2−1に詳述したものと同様のものを用いることができる。また、該細胞がアクチビンレセプターは発現しているがアクチビンは発現していない細胞である場合には、被検物質とともにアクチビンを投与する。アクチビンの投与量は、それを添加された細胞においてアクチビンシグナル系が活性化され得る量であればよい。
かくしてアクチビンシグナル系が活性化された細胞において、被検物質が該シグナル系に与える影響を解析すればよい。解析は、好ましくは被検物質を添加していない細胞と比較して行われる。被検物質が該シグナル系に与える影響の解析は、例えば、アクチビンシグナル系においてアクチビンよりも下流に存在している各種因子のいずれを解析することにより行ってもよい。このような因子としては、例えば、アクチビンレセプター、Smad2/3等が挙げられる。例えば、アクチビンレセプター、Smad2/3等の場合、これらの因子のリン酸化状態の変化をウエスタンブロッティング法等により解析すること等により、該被検物質がアクチビンシグナル系に与える影響を解析することができる。
解析の結果、例えば、前記アクチビンレセプターやSmad2/3のリン酸化が減少していた場合に、該被検物質はそう病または多動性障害の治療及び/予防薬として有用であると判定することができる。逆に、リン酸化が亢進していた場合には、該被検物質はうつ病の治療及び/予防薬として有用であると判定することができる。各行動テストにおける表現型の選択基準は、以上に詳述したとおりである。
2−3.アクチビンを発現している細胞を用いるスクリーニング方法
本発明のアクチビン導入動物の行動異常の解析により、アクチビンの過剰発現と精神疾患または記憶障害との関連が判明したため、アクチビンの発現量を制御することによりこれらの疾患の治療及び/予防を行うことができる。すなわち、アクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/予防薬のスクリーニングは、アクチビンを発現している細胞(以下、これを「アクチビン発現細胞」と称することがある)を用いても行うことができる。具体的には、アクチビン発現細胞に被検物質を添加し、該細胞に対して被検物質が与える影響をアクチビン発現量の変化を指標にして検出することにより行うことができる。
アクチビンの量が増加すれば、アクチビンシグナル系がより活性化されるので、例えば、アクチビン遺伝子に関与してアクチビンの生成量を増加させる物質は、アクチビンの機能を増強させる物質である。従って、アクチビン発現細胞を用いれば、アクチビンの発現に影響を与える物質をスクリーニングすることができる。
アクチビン発現細胞としては、アクチビンを発現し得る細胞であればいかなるものでもよいが、例えば、海馬等から調製されるアクチビンを発現している脳神経細胞の初代培養細胞等が挙げられる。ここで、アクチビンは、アクチビンβA、βB、βC、βEが挙げられる。これらの機能には大きな差がないと考えられているが、脳においては主にアクチビンβAが存在することが知られていることから、本発明においてはアクチビンβAを発現している細胞が好ましく用いられる。これらの細胞に、被検物質を添加し、該細胞に対して被検物質が与える影響をアクチビン発現量の変化を指標にして検出することができる。被検物質としては、上記2−1に詳述したものと同様のものを用いることができる。被検物質の添加は、例えば、該細胞を培養している培地に直接添加する等の方法により簡便に行うことができる。かくして被検物質を添加された細胞におけるアクチビン発現量の変化を、公知の蛋白質の解析方法、例えば、ELISA法、ウエスタンブロッティング法等により解析する。解析は、好ましくは被検物質を添加していない細胞と比較して行われる。
解析の結果、例えば、アクチビン発現量が減少していた場合に、該被検物質はそう病または多動性障害の治療及び/予防薬として有用であると判定することができる。逆に、発現量が増加していた場合には、該被検物質はうつ病の治療及び/予防薬として有用であると判定することができる。
2−4.本発明のスクリーニング方法により得られた物質の製剤化方法
かくして2−1〜3および下記3に記載の本発明のスクリーニング方法により選択された物質を、それ自体公知の通常用いられる方法により製剤化し、該物質を有効成分として含むそう病、うつ病、そううつ病、多動性障害、自閉症、統合失調症、外傷後ストレス障害等の精神疾患、または学習記憶障害、老化に伴う記憶障害、脳血管障害に伴う記憶障害、認知症に伴う記憶障害、パーキンソン病に伴う記憶障害、うつ病に伴う記憶障害等の記憶障害の治療及び/または予防薬を調製することができる。
本発明の薬剤に有効成分として含まれる物質は、生理学的に許容されるそれらの塩、水和物並びに溶媒和物等であってもよい。例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などの薬学的に許容し得る塩などがあげられる。無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ならびにアルミニウム塩、アンモニウム塩などがあげられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩があげられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などとの塩があげられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸などとの塩があげられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルチニンなどとの塩があげられ、酸性アミノ酸との好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩があげられる。
本発明の薬剤に有効成分として含まれる物質は、それ自体単独でそう病、うつ病、そううつ病、多動性障害、自閉症、統合失調症、外傷後ストレス障害等の精神疾患、または学習記憶障害、老化に伴う記憶障害、脳血管障害に伴う記憶障害、認知症に伴う記憶障害、パーキンソン病に伴う記憶障害、うつ病に伴う記憶障害等の記憶障害の患者に投与することもできるが、複数の有効成分を2種以上含むこともできる。また、薬理学的に許容される製剤用添加物等を用いて医薬品組成物として調製し、これを投与するのが好ましい。例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、マイクロカプセル剤、リポソーム製剤、トローチ、舌下剤、液剤、エリキシル剤、乳剤、懸濁剤等として経口的に、あるいは無菌の水性液もしくは油性液として製造した注射剤や、座剤、軟膏、貼付剤等として非経口的に使用できる。これらは例えば、該化合物を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和し、充填又は打錠等の当業界で周知の方法を用いて製造することができる。これらの医薬品組成物における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
例えば、錠剤、カプセル剤等に混和することができる添加剤としては、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴム等の結合剤、結晶性セルロース等の賦形剤、セルロース、マンニトール、又はラクトース等の充填剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸等の膨化剤、澱粉、ポリビニルポリピロリドン、澱粉誘導体、又はナトリウム澱粉グリコラート等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、ラウリル硫酸ナトリウム等の湿潤剤、ショ糖、乳糖又はサッカリン等の甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリー等の香味剤等が用いられる。また、錠剤は必要に応じて腸溶性コーティング剤等を用いてコーティングを施すこともできる。カプセルについては、前記の添加剤にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。
また例えば、注射剤として用いる無菌医薬品組成物は、注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油等の天然産出植物油等を溶解又は懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(D-ソルビトール、D-マンニトール、塩化ナトリウム等)等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80TM、HCO-50等)等と併用することができる。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等と併用することができる。また、上記の医薬品組成物には、例えば、緩衝剤(リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液等)、無痛化剤(塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン等)、安定剤(ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコール等)、保存剤(ベンジルアルコール、フェノール等)、及び酸化防止剤等を配合してもよい。かくして調製される注射用の水性液は、通常、該化合物を上記のような媒体に溶解させて濾過滅菌してから、適当な滅菌済みバイアル又はアンプルに充填して製造される。安定性を高めるために、該医薬品組成物を凍結させた後にバイアル中の水を真空下で除去してもよい。油性液についても水性液の場合と実質的に同様に製造できるが、該化合物を上記媒体に懸濁させた後にエチレンオキシド等により滅菌することによって好適に製造できる。
かくして得られる医薬品組成物は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや、ヒト以外の哺乳動物に対してそう病、うつ病、そううつ病、多動性障害、自閉症、統合失調症、外傷後ストレス障害、学習記憶障害、老化に伴う記憶障害、脳血管障害に伴う記憶障害、認知症に伴う記憶障害、パーキンソン病に伴う記憶障害、またはうつ病に伴う記憶障害等の治療及び/または予防薬として投与することができる。該組成物に含まれる有効成分である前記物質の投与量は、対象疾患、症状、対象臓器、投与対象、投与方法等により差異はあるが、例えば、経口投与する場合は、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき約0.01〜10mg、好ましくは約0.1〜5mg、より好ましくは約0.1〜2mgである。また、非経口的に投与する場合、例えば、注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合は、一日につき約0.01〜3mg程度、好ましくは約0.01〜2mg程度、より好ましくは約0.01〜1mg程度を静脈注射により投与するのが好ましい。また、一日の投与量を一〜数回に分けて投与するのが望ましい。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を同様に投与することができる。
3.本発明のそううつ病または統合失調症の治療及び/または予防薬のスクリーニング方法
本発明の非ヒト動物のうち、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有し、継代可能な動物は、これらの行動異常と同様の病状を呈するアクチビンが関与する精神疾患の治療及び/予防薬のスクリーニングに非常に有用であり、具体的には、例えば、そう病、うつ病、そううつ病、多動性障害、自閉症、統合失調症、外傷後ストレス障害、学習記憶障害、老化に伴う記憶障害、脳血管障害に伴う記憶障害、認知症に伴う記憶障害、パーキンソン病に伴う記憶障害、またはうつ病に伴う記憶障害等の治療及び/予防薬のスクリーニングに有用であることは上記2に詳述したとおりである。
これらの疾患のうち、そううつ病及び統合失調症は、二相性の症状を有することから治療や薬剤の開発が非常に難しい疾患として知られている。例えば、そううつ病の患者は、そう状態とうつ状態を繰り返すことを特徴としており、その反復の周期や程度を注意深く観察しながらの薬剤投与が行われる。また、統合失調症の患者は、妄想や幻聴、感情障害等を発症するが、これらの症状の発病と回復を繰り返すことで知られている。これらの二相性の症状を有する疾患では、一方の症状のみに強く効果をあらわす薬剤をむやみに投与すると、それが他方の症状に対しては悪影響を与え、結果的に病状を悪化させることがあるため、薬剤の開発にも考慮が必要である。また、例えば、現在繁用されているそう病薬、うつ病薬の中には、投与された患者のうち30〜40%程度にしか有効性を示さないものも多く、現在知られている作用機序とは異なる新たな作用機序による薬剤の開発も求められている。
そこで、本発明者らは、本発明の非ヒト動物とともに、これと逆の症状を呈する非ヒト動物を用いて、二つの非ヒト動物における結果を解析することにより、これらの疾患の治療及び/予防薬のスクリーニングを効果的に行うことができることに想到した。アクチビンには、その作用を阻害するフォリスタチンという蛋白質が知られており(Science,247,836-838,1990、ヒトフォリスタチンcDNAのGenBank accession number: CR541813)、このフォリスタチンが過剰発現され(Molecular Endocrinology, 12, pp96-106, 1998)、かつ、本発明の動物と逆の表現系を有する非ヒト動物を用いれば(特願2004-233619号)、このようなスクリーニングが可能である。また、アクチビンが関与する精神疾患は、従来知られているそう病やうつ病の作用機序とは異なると考えられているため、かくして選択される物質は、従来用いられてきた薬剤の問題点を解決できる可能性がある。
すなわち、本発明のそううつ病または統合失調症の治療及び/または予防薬のスクリーニング方法は、上記1に詳述した本発明の非ヒト動物で少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有している動物と、フォリスタチン遺伝子が過剰発現され、かつ、少なくとも活動量、情動性、情報処理機構、および学習記憶のいずれかの指標において本発明の非ヒト動物と逆の表現型を有する動物とにそれぞれ被検物質を投与し、下記(1)または(2)のいずれかの物質を選択することを特徴としている。
(1)本発明の非ヒト動物において少なくとも活動量、情動性、情報処理機構のいずれかの指標においてその値が正常に近くなり、フォリスタチン遺伝子が過剰発現され、かつ、少なくとも活動量、情動性、情報処理機構、および学習記憶のいずれかにおいて本発明の非ヒト動物と逆の表現型を有する動物における該指標の値には影響を与えない物質。
(2)フォリスタチン遺伝子が過剰発現され、かつ、少なくとも活動量、情動性、情報処理機構、および学習記憶のいずれかにおいて本発明の非ヒト動物と逆の表現型を有する動物において少なくとも活動量、情動性、情報処理機構のいずれかの指標においてその値が正常に近くなり、本発明の非ヒト動物における該指標の値には影響を与えない物質。
このようなスクリーニングを行うことにより、一方の症状には改善効果を示し、かつ、他方の症状に対して悪影響を与えて病状を悪化させることのない、そううつ病または統合失調症の治療及び/または予防薬のスクリーニングを行うことができる。
上記方法において用いられる被検物質、行動テスト、結果の解析方法等は、すべて上記1及び2に詳述したものと同様にして行うことができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
ActivinβA前脳特異的過剰発現miceの作製
本発明の動物は、アクチビンの脳における機能を解析するため、発生初期での異常を起こさず、前脳特異的かつ脳神経回路網発達期終了後(おおよそ生後4週後以降)に発現が開始するαCaMKII promoter(Science, vol 274, pp1678-1683, 1996)の制御下でマウスActivinβAが発現するようにトランスジーン(図1参照)を作製し、アクチビン導入マウスを作製した。用いたマウスの系統はC57BLである。
アクチビンβA cDNA(配列番号1)は、マウスのアクチビンを発現している脳の海馬からmRNAを抽出し、RT-PCR法によりこれを増幅して取得した。Mycタグ蛋白質の塩基配列としては、公知の塩基配列(配列番号2)を用いた。まず、アクチビンβA cDNAの下流に、Mycタグ蛋白質の塩基配列を含むプライマーを用いてPCR反応を行うことにより、これらが連結されたDNAを調製した。さらに、このDNAを、αCaMKIIプロモーターとSV40 poly A配列を含むプラスミド(Invitrogen社製)に挿入することによって、これらすべてが連結されたDNA(トランスジーン)を作製した(図1)。
次に、得られたDNAをマウス受精卵に導入した。マウスの系統としては、C57BLを用いた。マウス受精卵は、過***処理した雌マウスと雄マウスを交配させたのちに雌マウスから採取した受精卵を用いた。これに、マイクロインジェクション法により前記トランスジーンを導入し、得られたアクチビン遺伝子導入受精卵を偽妊娠させた雌マウスの卵管に移植して発生させ、出産させた。
その結果、アクチビン導入マウス(アクチビントランスジェニックマウス;Activin-Myc transgenic mice:以下、これを「ACM」と略記することがある)は、独立ラインとしてACM3とACM4の合計2ライン作製された。得られた個体におけるトランスジーンの発現状態を、In situ hybridization法により解析した。プローブとしては、トランスジーンに含まれるSV40 polyA signal配列を使用し、本発明の非ヒト動物としては成熟した100日齢のマウスを使用し、コントロールの個体としては同腹から産まれた野生型マウスを使用した。その結果、野生型マウスと比較し、ACM3とACM4において海馬での発現が有意に増大していることが確認された。また、ACM3よりACM4の方がmRNAの発現量が多いことがわかった。
次に、得られた個体内で実際にアクチビン遺伝子が発現され、アクチビンが生成されていることを確認するため、ELISA法による解析を行った。解析は、アクチビンアッセイキット(MCA1426KZZ:セロテック社製)によって行った。100日齢マウス脳の片側から海馬を摘出し、Tris buffer(0.32M sucrose, 5mM Tris-HCl pH7.0, Protease inhibitor cocktail(Sigma社製))でホモゲナイズを行った後、その抽出液を試料とした。その結果、海馬において野生型マウスとACM3ではアクチビンの発現が確認できなかったが、ACM4においては、アクチビンの存在が確認できた。ACM3、ACM4、及び野生型マウスの海馬におけるアクチビンβAの生成量をELISA法により解析した結果を図2に示す。図中、「Wild」はコントロールの野生型マウスを示し、ACM3及びACM4は本発明のアクチビン導入マウスを示す。「N.D.」は検出されなかったこと(Not detectable)を意味する。グラフの縦軸は、一匹のマウス脳の片側から取得した海馬あたりのアクチビンβA量(ng)である。
海馬において野生型マウスとACM4との間に有意にアクチビン量の差がみられたことから、確かにαCaMKII promoterの制御下でアクチビンが前脳特異的に過剰に生産されていることが分かった。また、内在性のアクチビンは非常に少ないので、このELISAキットでは野生型マウスにおける内在性アクチビンの解析は難しいことが示唆された。ACM3でも海馬でのアクチビン発現自体を検出できなかったが、これについても、ACM4に較べてトランスジーンのmRNAの発現が弱いために検出限界以下となったと考えられた。ただし、次に詳述する各種行動テストにおいて、ACM3もACM4と同様の行動異常を示したことから、前記キットの検出感度以下ではあったものの、野生型マウスと比較すると多量のアクチビンが発現していると推察された。
ACM3とACM4はそれぞれ正常に生育し、身体的特徴(姿、体重、身長、毛並み、腕力)に異常は見あたらず、雄雌ともに正常な生殖が可能であった。
一般活動性テスト
ACMの一般的活動度を、探索行動テスト(open field test)により測定した。探索行動テストは、高い壁に囲まれた30cm×30cmの四方形(室町科学株式会社製)の中にマウスを30分間放置し、平常状態でのマウスの行動距離、行動時間、立ち上がり回数、立ち上がり時間を5分ごとに測定するテストである。
ACM(100〜150日齢、オス)にこの実験を行ったところ、コントロール個体と較べて、ACM3では行動時間及び行動距離が有意に増大し(ANOVA, p<0.05)、ACM4では立ち上がり回数、立ち上がり時間が増大していた(ANOVA, p<0.05)(図3)。図3の[A]に、本発明のアクチビントランスジェニックマウスについて行った探索行動テスト(open field test)の結果を示した。図中、丸形(○)で示した値が本発明のアクチビン導入マウスの結果であり、四角形(□)で示した値はコントロールの野生型マウスの結果である。グラフ横軸はいずれも実験時間(分)であり、縦軸は、それぞれの時間における行動時間(sec)、行動距離(cm)、立ち上がり回数、立ち上がり時間(sec)である。
一方、図3の[B]は、同じテストにおいて、真ん中部分を占有する時間を測定した結果を示すグラフである。縦軸は占有時間(sec)である。一般に、マウスは初めての場所では警戒心が強いため壁際部分を好み、真ん中の開放部位には滞在しない傾向にある。しかし、特にACM4では、真ん中部位の占有時間がコントロール個体に較べ有意に高いことが判明した。真ん中部分の占有時間は、risk-taking behaviorと呼ばれ、積極度合いの高さを示し、立ち上がり行動の多さは好奇心の高さを示すと言われている。
以上の結果は、ACMではコントロール個体に較べて有意に活動度、好奇心、積極性が高
いことを示している。なお、ANOVA(analysis of variance)は分散分析法により求めた
数値である。
明暗テスト(light and dark test)
明暗テスト(Light and dark test)は、高い壁で囲まれた四方形を明るい場所(light)と暗い場所(dark)の2つに壁で区分し(室町科学株式会社製)、それぞれの領域をマウスが自由に行き来できるように、壁の真ん中に穴が空いている。マウスをこの装置に30分間放置し、行動を記録することにより、不安行動を測定することができる。マウスは通常暗部を好み、明部には出てこない傾向にあるので、それぞれの占有時間を測定することで、マウスの不安度合いを知ることができる。すなわち、明部の占有時間が長くなるほど不安度合いが低く、活動的で大胆であることを意味し、逆に短くなるほど不安度合いが強いことを意味する。
ACMにこの実験を行った結果、ACM3においてはコントロール個体との間に有意な差は見られなかったが、ACM4ではコントロール個体に較べて明部の占有時間が有意に長いことが分かった(ANOVA, p<0.05)(図4)。明暗テスト(Light and dark test)の結果を図4に示す。グラフ横軸は実験時間(分)であり、縦軸は暗部の占有時間(%)である。
この結果は、ACM4では、不安度合いが減少していることを示している。
強制水泳テスト(forced swimming test)
強制水泳テスト(Forced swimming test)は、円筒(直径25cm)のプールの中にマウスの足が床に着かない高さ(20cm)まで水(水温25℃)を入れ、その中にマウスを投入してマウスの活動度を測定する(15分間)テストである。マウスは通常、この逃げ場のない状態で強制的に水泳を行わせると、次第に水泳を止め、無動状態となる(いわゆる、絶望行動)。この無動時間を測定することにより、マウスの絶望に対する行動様式を知ることができる。すなわち、無動時間が短いほど絶望に対して抵抗性が高いことを意味し、逆に長いほど、絶望に対して抵抗性が低く絶望し易いことを意味する。このテストはうつ病薬のスクリーニングに繁用されている。
15分間のテストを1日1回、2日間行った。マウスの活動度は、赤外線センサー(室町科学株式会社製)により測定した。その結果、ACM3において、2日目の無動時間がコントロール個体に較べて有意に減少していた(ANOVA, p=0.02)(図5)。この強制水泳テスト(Forced swimming test)の結果を図5に示す。グラフ横軸は実験時間(分)であり、縦軸は各1分間における無動時間(sec)である。
この結果は、ACM3が絶望に対して高い抵抗性を持つことを示している。
高架式十字迷路テスト
高架式十字迷路テストは、十字型に組まれた4本の通路を高さ30cmの所に設置した装置(小原医科産業社製)で行われ、4本の通路のうち2本はむき出しの通路(open arm)になっており、残る2本の通路は透明なプラスチック壁で囲まれている(closed arm)。通常マウスは高所が苦手なため、open armでの存在時間がclosed armに較べて短くなる傾向がある。そこで、Open arm、closed arm、及び交差部分(center)のそれぞれにおけるマウスの存在時間を測定することにより、そのマウスの恐怖に対する行動を知ることができる。すなわち、open armでの存在時間が長くなると恐怖に対して抵抗性を有することを意味し、逆に短くなると恐怖心が強いことを意味する。
高架式十字迷路テストの結果を、図6に示した。open arm、closed arm、centerにおけるマウスの存在時間を測定し、それぞれの割合をグラフで示した。グラフ縦軸は各部位における占有時間の割合(%)である。その結果、ACM3では、各存在時間においてコントロール個体との間に有意差は見られなかった。一方、ACM4では、統計的に大きな有意差は得られなかった(ANOVA, p=0.06)ものの、コントロール個体に較べてopen armに存在する時間が若干長い傾向が見られた。
この結果から、ACM4ではコントロールに較べて若干高所における恐怖心が減少していることが示唆された。
プレパルス抑制テスト(prepulse inhibition test)
プレパルス抑制テスト(Prepulse inhibition test)は、統合失調症薬のスクリーニング等に使用されている行動テストである。通常、マウスは大きい音を聞かせると大きな驚愕反応を示す。しかし、大きい音の直前に予め小さい音(以下、これを「プレパルス」と称することがある)を聞かせると、大きい音を聞いた際の驚愕反応が減少する(この現象を「prepulse inhibition(PPI)」という)。PPIの機構は、最初に入力した感覚情報の処理が、直後の刺激により乱されるのを防ぐためのニューロン回路の機能を反映していると考えられている。この機構を利用し、PPIテストによって脳内の情報処理機能の異常を解析することができる。情報の処理に不全がある場合(例えば、ヒトの統合失調症患者等)、この抑制の度合いが低下する、もしくは生じないことが知られている。
大きい音は120dBとし、また、その100msec前に68、71、77dBの3種類の小さい音(プレパルス)を聞かせた。大きい音を聞かせた時の驚愕反応は、マウスが飛び上がった時に生じる体重変化で測定した(San Diego Instruments社製)。ACM3にこの行動テストを行った結果を、図7に示した。プレパルス(PP)がそれぞれ68、71、77dBの場合について、マウスの120dBの音に対する驚愕反応を測定した結果を示すグラフである。縦軸はプレパルスによる抑制率(PPI)である。
ACM3は、68dBという小さなプレパルスでも有意に抑制の度合いが上昇した(ANOVA, p=0.0016)(図7)。このレベルのプレパルスでは、通常コントロール個体でも抑制の度合いは低い。このように反応性の増大が見られたことの意味づけは不明であるが、少なくともPPIにおける抑制の度合いは増大し、情報処理機構の不全は見られないことがわかった。
以上の結果から、本発明者らによって作製されたアクチビン導入マウスは、野生型マウスに較べて活動量が大きく、好奇心が強く、そして、不安や絶望に対して抵抗があることがわかった。また、情報処理機構の不全は見られなかった。これらの結果から、このアクチビン導入マウスは、そう病や多動性障害のモデルマウスとなることが示された。
恐怖条件付け学習テスト
ACMマウスに対して恐怖条件付け学習テストを行った。箱の中にマウスを入れ、恐怖条件(電気ショック)を与えると、マウスは箱と電気ショックの間に関連がある事を学習(連合学習)する。フリージング反応(呼吸以外の動きが停止する怯えの反応)を示した時間を測定する事により、恐怖条件を覚えているか否かを判定した。フリージング反応は、ビデオカメラによりマウスの動きを記録し、後にパソコンによる画像解析によりフリージング反応か否かの判定を行った。
条件刺激は、マウスを箱の中に入れた2分後に3秒間隔で4回0.5mA-0.5secで電気ショックを与え(training)、刺激終了4分後にマウスを箱から取り出し、ホームケージ(マウスを普段飼育する籠)に戻した。次の日に、同箱に再びマウスを投入し(test-1)、フリージング反応を解析した。この時、電気ショックは与えない。さらに次の日に(test-2)、同箱にマウスを入れ電気ショックを与えずにフリージング反応を観察した。
Training時におけるフリージング反応は、ACM4はwildに比べ有意に素早く上昇した(図8)。この事は学習習得能力がwildに比べ高い事を示す。
Test-1において、ACM4はwildと比べ有意な差を示さなかったが、Test-2においてフリージング反応の有意な上昇を示した(図8)。この結果は、アクチビンが記憶の再固定を促進する作用を持っていることを示している。
本発明の非ヒト動物は、そう病、うつ病、そううつ病、多動性障害、自閉症、統合失調症、外傷後ストレス障害等のアクチビンが関与する精神疾患または学習記憶障害、老化に伴う記憶障害、脳血管障害に伴う記憶障害、認知症に伴う記憶障害、パーキンソン病に伴う記憶障害、うつ病に伴う記憶障害等の記憶障害のモデル動物として用いられ、これらによりアクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/予防薬のスクリーニングを行うことができる。
本発明のアクチビン導入マウスの作製に用いたトランスジーンの構造を示した図である。 本発明のアクチビン導入マウスについて、海馬におけるアクチビンβAの生成量をELISA法により解析した結果である。 [A]は、本発明のアクチビン導入マウスについて行った探索行動テスト(open field test)の結果を示すグラフである。[B]は、同じテストにおいて、真ん中部分を占有する時間を測定した結果を示すグラフである。縦軸は占有時間(sec)である。 本発明のアクチビン導入マウスについて行った明暗テスト(Light and dark test)の結果を示すグラフである。 本発明のアクチビン導入マウスについて行った強制水泳テスト(Forced swimming test)の結果を示すグラフである。 本発明のアクチビン導入マウスについて行った高架式十字迷路テストの結果を示すグラフである。 本発明のアクチビン導入マウスACM3について行ったプレパルス抑制テスト(Prepulse inhibition test)の結果を示すグラフである。 本発明のアクチビン導入マウスACM4について行った恐怖条件付け学習テストの結果を示すグラフである。

Claims (16)

  1. アクチビン遺伝子が少なくとも脳で過剰発現され、かつ、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有する継代可能な非ヒト動物、またはその子孫。
  2. 少なくとも脳で活性化されるプロモーターの制御下におかれたアクチビン遺伝子が導入され、かつ、継代可能であることを特徴とする非ヒト動物、またはその子孫。
  3. プロモーターが、さらに生殖器官で活性化されないものであることを特徴とする請求項2に記載の動物。
  4. プロモーターが、脳神経回路網発達期以降に活性化されるものであることを特徴とする請求項2または3に記載の動物。
  5. プロモーターが、前脳特異的に活性化されるものであることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の動物。
  6. プロモーターが、CaMKIIプロモーターである請求項2〜5のいずれかに記載の動物。
  7. 動物が、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有することを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の動物。
  8. 下記(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の動物の製造方法。
    (1)少なくとも脳で活性化されるプロモーターの制御下におかれたアクチビン遺伝子を非ヒト動物受精卵に導入する。
    (2)前記受精卵を発生させ、得られた非ヒト動物を解析して、該アクチビン遺伝子が導入された個体を選択する。
    (3)選択された個体が、継代可能であることを確認する。
  9. 下記(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする、請求項1または7に記載の動物の製造方法。
    (1)アクチビン遺伝子を非ヒト動物受精卵に導入する。
    (2)前記受精卵を発生させ、得られた非ヒト動物を解析して、アクチビン遺伝子が過剰発現された個体を選択する。
    (3)選択された個体が、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有し、かつ継代可能であることを確認する。
  10. 請求項1または7に記載の動物に被検物質を投与し、該動物に対して被検物質が与える影響を、該動物のアクチビンの過剰発現が誘導する表現型の変化を指標にして検出することを特徴とする、アクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/または予防薬のスクリーニング方法。
  11. アクチビンレセプターを発現している細胞にアクチビン及び被検物質、もしくは被検物質のみを添加し、該細胞に対して被検物質が与える影響をアクチビンシグナル系の変化を指標にして検出することを特徴とする、アクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/または予防薬のスクリーニング方法。
  12. アクチビン発現細胞に被検物質を添加し、該細胞に対して被検物質が与える影響をアクチビン発現量の変化を指標にして検出することを特徴とする、アクチビンが関与する精神疾患または記憶障害の治療及び/または予防薬のスクリーニング方法。
  13. アクチビンが関与する精神疾患がそう病、うつ病、そううつ病、多動性障害、自閉症、統合失調症、または外傷後ストレス障害である請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
  14. アクチビンが関与する記憶障害が学習記憶障害、老化に伴う記憶障害、脳血管障害に伴う記憶障害、認知症に伴う記憶障害、パーキンソン病に伴う記憶障害、またはうつ病に伴う記憶障害である請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
  15. 請求項13または14に記載の方法により選択される物質を製剤化することを特徴とする、そう病、うつ病、そううつ病、多動性障害、自閉症、統合失調症、外傷後ストレス障害、学習記憶障害、老化に伴う記憶障害、脳血管障害に伴う記憶障害、認知症に伴う記憶障害、パーキンソン病に伴う記憶障害、またはうつ病に伴う記憶障害の治療及び/または予防薬の製造方法。
  16. 請求項1または7に記載の動物と、フォリスタチン遺伝子が過剰発現され、かつ、少なくとも活動量、情動性、情報処理機構、および学習記憶のいずれかの指標において、請求項1または7に記載の動物と逆の表現型を有する動物とにそれぞれ被検物質を投与し、下記(1)または(2)のいずれかの物質を選択することを特徴とするそううつ病または統合失調症の治療及び/または予防薬のスクリーニング方法。
    (1)請求項1または7に記載の動物において少なくとも活動量、情動性、情報処理機構のいずれかの指標においてその値が正常に近くなり、フォリスタチン遺伝子が過剰発現され、かつ、少なくとも活動量、情動性、情報処理機構、および学習記憶のいずれかにおいて請求項1または7に記載の動物と逆の表現型を有する動物における該指標の値には影響を与えない物質。
    (2)フォリスタチン遺伝子が過剰発現され、かつ、少なくとも活動量、情動性、情報処理機構、および学習記憶のいずれかにおいて請求項1または7に記載の動物と逆の表現型を有する動物において少なくとも活動量、情動性、情報処理機構のいずれかの指標においてその値が正常に近くなり、請求項1または7に記載の動物における該指標の値には影響を与えない物質。
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