以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に示す水処理装置は、主に、家庭用排水や工場排水を処理する大規模な排水処理施設に適用されるものであるが、家庭用合併浄化槽等の中小規模の排水処理施設に適用することもできる。また、以下に示す水処理装置によれば、特に、生活排水やメッキ工場の廃水等に含まれる窒素化合物を、電解処理により、被処理水から除去することができる。
図1は、本発明の第一の実施の形態である水処理装置を含む水処理システムの処理工程を模式的に示す図であり、図2は、当該システムを構成する装置の模式的な縦断面図である。
図1および図2を参照して、本実施の形態の水処理システムは、主に、タンク1および電解槽100から構成される。タンク1は、地中に埋設されている。タンク1の内部は、第一仕切壁2、第二仕切壁3、第三仕切壁4および第四仕切壁20により、第一嫌気ろ床槽5、第二嫌気ろ床槽10、接触ばっ気槽14、沈殿槽19および消毒槽21に区画されている。また、タンク1の上部は、複数のマンホール28で蓋をされている。さらに、タンク1内部の部材は、タンク1の外部にある部材(第三ブロア30等)に接続されている。そして、図2では、第三ブロア30等の、タンク1の外部にある部材を、便宜上、タンク1の上方に記載しているが、これらの部材は、必ずしもタンク1の上方に設置されるものではない。
第一嫌気ろ床槽5は、被処理水である生活雑排水が流入する流入口6を備え、その内部に第一嫌気ろ床7を配設されている。つまり、第一嫌気ろ床槽5は、生活雑排水が流入するため、本実施の形態では、共雑物除去槽でもある。そして、本実施の形態では、第一嫌気ろ床槽5により、流入槽が構成されている。第一嫌気ろ床槽5では、生活雑排水中の難分解性の雑物が沈殿分離されるとともに、第一嫌気ろ床7に付着した嫌気性微生物により生活雑排水中の有機物が嫌気分解される。また、硝酸性の窒素が、窒素ガスへと還元される。
また、第一嫌気ろ床槽5には、第一移流管8が備えられている。また、第一仕切壁2の上部には、第一給水口9が形成されている。第一移流管8の一端は第一嫌気ろ床槽5内に、他端は第二嫌気ろ床槽10内に、配置されている。第一嫌気ろ床槽5で嫌気分解された処理水は、第一移流管8を介して、後退する第二嫌気ろ床槽10に供給される。
第二嫌気ろ床槽10には、第二嫌気ろ床11が備えられている。第二嫌気ろ床11により、浮遊物質が捕捉され、嫌気性微生物により有機物が嫌気分解され、硝酸性の窒素が窒素ガスへと還元される。
第二嫌気ろ床槽10には、第二移流管12が備えられている。また、第二移流管12の上部には、噴出装置32が取付けられている。噴出装置32は、第三ブロア30に接続されている。また、噴出装置32は、第二仕切壁3上部に貫通する第二給水口13を介して、第二嫌気ろ床槽10と接触ばっ気槽14を接続させている。
噴出装置32は、第三ブロア30から空気を送られることにより、噴出口31から第二移流管12内に空気を吹出す。これにより、第二移流管12における、第二嫌気ろ床槽10から接触ばっ気槽14への処理水の供給が促進される。
接触ばっ気槽14は、接触材15を備えている。接触材15は、好気性微生物の培養を促進するために備えられている。接触ばっ気槽14の底部付近には、第一散気管16が設けられている。
第一散気管16は、その上端を第一ブロア17に接続されている。第一散気管16の下面側には、複数の孔が形成されている。そして、第一ブロア17から空気を送り込まれると、該空気は、該孔から気泡として放出される。なお、第一散気管16の下面側に孔が形成されることにより、上面または側面に孔が形成される場合よりも、汚泥がその内部に入り難い。
第一散気管16から気泡が放出されることにより、接触ばっ気槽14は、好気状態に維持される。これにより、接触ばっ気槽14では、処理水は好気性微生物によって好気分解されるとともに、硝化され、アンモニア性窒素が、硝酸性の窒素へと分解される。接触ばっ気槽14内の好気性微生物には、硝化菌が含まれる。一般に、硝化菌とは、アンモニア酸化細菌と亜硝酸化細菌のことを指す。
接触材15には、増殖して徐々に大きくなった生物膜が付着している。そして、第一散気管16から気泡が放出されると、接触材15に付着している生物膜は、剥離する。
接触ばっ気槽14の下部には、ポンプ33が備えられている。また、ポンプ33の上方には、汚泥返送路34が接続され、汚泥返送路34の上端には、図の左側に延びるように、汚泥返送路35が接続されている。これにより、接触ばっ気槽14で生じた汚泥は、第一嫌気ろ床槽5に送られる。なお、第三仕切壁4の下端は、タンク1の内壁面には接続されておらず、接触ばっ気槽14と沈殿槽19とは、下部で接続されている。
沈殿槽19の上部には、消毒槽21が設けられている。消毒槽21は、沈殿槽19の上澄みが流れ込むように、構成されている。また、消毒槽21には、殺菌装置22が備えられている。殺菌装置22には、塩素系等の薬品が備えられている。消毒槽19に流入した処理水は、該薬品に消毒され、排水口23を介して、電解槽100に送られる。また、電解槽100と共に、当該電解槽100内にハロゲンイオンを供給するための貯蔵部111およびポンプ110が設置されている。電解槽100は、被処理水中から窒素成分を除去するためのものであって、後述する電解槽59とは別に設けられる。なお、電解槽100の構成については、後述する。
また、沈殿槽19には、第三移流管38およびポンプ39が備えられている。接触ばっ気槽14内の処理水は、第三移流管38を介して、沈殿槽19に流れ込む。なお、この流れは、ポンプ39により、促進される。
沈殿槽19と第一嫌気ろ床槽5は、第一返送管24により、接続されている。第一返送管24は、その内部に、第二散気管25を備えている。第二散気管25は、第二ブロア26に接続されている。第二散気管25は、適宜、空気を噴出するための噴出孔を形成されている。そして、第二散気管25は、第二ブロア26から供給される空気を該噴出孔から噴出して、沈殿槽19内の処理水を、第一返送管24を介して、第一嫌気ろ床槽5に送り込む。
なお、第一嫌気ろ床槽5の上部には、電解槽59が設けられている。電解槽59は、第一返送管24から被処理水を導入される。そして、電解槽59の内側には、電極対51,52が設けられている。電極対51,52は、それぞれ、電源57に接続されている。
電解槽59内では、電極対51,52における電気分解(適宜、電解と略す)反応により、鉄イオンやアルミニウムイオン等の金属イオンが溶出する。これにより、電解槽59内では、溶出した金属イオンと処理水内のリン化合物等が反応して、水に難溶性の金属塩が生成し、凝集する。金属イオンとして鉄イオンが溶出した際、生成される難容性の金属塩としては、主に、「FePO4 」,「Fe(OH)3 」,「FeOOH」,「Fe2 O3 」,および,「Fe3 O4 」の化合物を挙げることができる。つまり、被処理水に鉄イオンが供給されると、主に、上記した5種類の化合物が凝集する。
電解槽59の下流側には、磁気処理ユニット60が設置されている。電解槽59内の被処理水が、磁気処理ユニット60内に流れ込む。
磁気処理ユニット60では、被処理水が磁石と接触する。なお、Fe2 O3 やFe3 O4 は、磁石に引きつけられる。つまり、被処理水に鉄イオンが供給されて生じた凝集物は、Fe2 O3 やFe3 O4 を含むため、磁石に引きつけられる。これにより、Fe2 O3 やFe3 O4 とともに凝集しているFePO4 も、磁石に引きつけられ、被処理水から分離されることになる。
磁気処理ユニット60で処理された後、被処理水は、再び、第一嫌気ろ床槽5に送られる。
つまり、本実施の形態の水処理システムでは、図1に示すように、被処理水は、第一,第二嫌気ろ床槽5,14で処理された後、接触ばっ気槽14に送られ、さらに、沈殿槽19に送られる。沈殿槽19における被処理水は、沈殿する汚泥と共に、電解槽59を介して、第一嫌気ろ床槽5に返送される。なお、沈殿槽19から接触ばっ気槽14へも沈殿する汚泥と共に、被処理水は流れ、また、接触ばっ気槽14から第二嫌気ろ床槽10へも、接触剤15から剥離した汚泥と共に被処理水が流れ込む。沈殿槽19内の被処理水の上澄みは、消毒槽21に流れ込む。そして、消毒槽21内の被処理水は、排水口23を介して、電解槽100に送られる。
次に、電解槽100の構成について、図3(A)をさらに参照して説明する。図3(A)は、電解槽100の構造を模式的に示す図である。なお、図3(A)には、電解槽100の周辺の部材も、合わせて記載されている。
電解槽100には、導入管123から、被処理水が導入される。また、電解槽100からは、導出管122を介して、被処理水が排出される。
電解槽100内には、窒素除去槽100Aが収容されている。窒素除去槽100A内には、電解槽100内の被処理水が導入され、当該被処理水内に2枚の電極101,102が浸されている。電極101,102には、制御回路115内の電源1150から電位を与えられる。電極101,102により、窒素処理のための電極対が構成される。
電解槽100の上流側にはイオン濃度計116が、下流側にはイオン濃度計117が、設置されている。イオン濃度計116,117は、窒素系のイオンの総量を検出するものである。そして、これらの検出出力は、制御回路115に入力される。
窒素除去槽100Aには、ポンプ110を介して、貯蔵部111から、水溶液中でハロゲンイオンを供与する化合物(塩化ナトリウム等)を供給される。貯蔵部111には、当該化合物が、液体等の流動性を有する態様で、貯蔵されている。ハロゲンイオンは、後述するような、窒素除去槽100A内での窒素除去に関連する反応で消費される。そして、貯蔵部111からの、ハロゲンイオンを供与する化合物の注入量は、制御回路115により、イオン濃度計116,117の検出出力に基づいて、制御される。具体的には、窒素系のイオンの総量が多くなれば、当該化合物の注入量が多くなるように、制御される。
ここで、さらに、図3(B)を参照して、窒素除去槽100Aの構成を説明する。図3(B)は、電解槽100内の窒素除去槽100Aのみを示す図である。
窒素除去槽100Aは、その底部に、弁180を備えている。また、窒素除去槽100Aには、当該窒素除去槽100A内に風を送ることのできるブロア121が設置されている。ブロア121の送風動作は、制御回路115により制御される。以下に、ブロアの送風動作についての制御態様、および、弁180の開閉について説明する。
まず、電極101,102への電力の供給が停止されている状態で、ブロア121に、窒素除去槽100A内へ風を送らせる。これにより、窒素除去槽100A内の気圧が上昇する。窒素除去槽100A内の気圧が高くなると、その圧力により、弁180が閉塞するとともに、窒素除去槽100A内の被処理水が排出管122を介して、窒素除去槽100A外へ排出される。弁180が閉塞する状態は、図3(B)に示されている。また、このときの被処理水の流れが、矢印R4,R5,R6として示されている。
そして、一定時間後に、ブロア121による送風を停止させる。これにより、窒素除去槽100A内の気圧が低下する。この状態で、電極101,102への電力の供給が開始される。なお、窒素除去槽100A内の圧力が低下することにより、弁180が開放され、電解槽100から窒素除去槽100A内に、被処理水が導入される。弁180が開放している状態は、図3(A)に示されている。また、このときに窒素除去槽100A内に流れ込む被処理水の流れが、矢印R1,R2,R3として示されている。
そして、所定の時間、この状態で保留される。これにより、電極101,102付近で起こる反応に従って、窒素が除去される。
以降、以上説明したような、電極101,102への電力の供給を停止させてブロア121に窒素除去槽100A内へ風を送らせる状態と、ブロア121の送風を停止させて電極101,102へ電力を供給する状態とを繰り返す。これにより、電極101,102における電気化学的な反応によって生成したものを確実に被処理水に供給し、被処理水内の窒素成分を確実に除去でき、かつ、被処理水を効率良く電極101,102付近に導入できるため、被処理水内の窒素成分を効率良く除去できる。
このように断続的に送風動作を実行するよう制御されるブロア121は、間欠定量ポンプとして作用していると言える。
なお、制御回路115は、イオン濃度計116,117の検出出力に基づいて、電極101,102間に流す電流量を制御してもよい。具体的には、窒素系のイオンの総量が多くなれば、電極101,102間に流す電流量が多くなるように、制御される。
次に、電極101,102により構成される電極対の構造について、より詳細に説明する。図4は、当該電極対の斜視図である。
図4を参照して、電極対を構成する電極101,102は、支持部103に取付けられている。支持部103の上部からは、電極101,102を制御回路115に接続する配線120が延びている。
次に、支持部103の構造を説明する。図5は、支持部103の分解斜視図である。
図5を参照して、支持部103の内部には、カバー103A、パッキン103B、金属板103C、絶縁体103D、金属板103E、パッキン103Fが、順に、重ね合わされている。また、支持部103の上面には、配線120を通すための孔103Gが形成されている。配線120は、先端に、2つの端子を備えている。配線120は、孔103Gを介して、支持部103の内部に挿入され、先端の2つの端子を、それぞれ、金属板103C,103Eに電気的に接続される。つまり、図4および図5に示す支持部103は、配線120の一部を内蔵している。
電極101は、金属性のネジ等により、支持部103の表側に、カバー103Aおよびパッキン103Bを介して、金属板103Cと電気的に接続されつつ、固定される。電極102は、金属性のネジ等により、支持部103の裏側に、支持部103の裏面およびパッキン103Fを介して、金属板103Eと電気的に接続されつつ、固定される。
なお、金属板103Bと金属板103Eとは、絶縁体103Dによって絶縁されている。これにより、配線120が支持部103の内部に導入されていても、電極101と電極102とが電気的に絶縁される。なお、電極101と電極102の絶縁の観点からすれば、支持部103自体が絶縁体で構成されることが好ましい。
また、電極101と電極102とが支持部103の表面側,裏面側にそれぞれ取付けられることにより、支持部103は、電極101と電極102とを一定の間隔で支持することになる。これにより、電極101が電極102に接触して短絡することを回避できる。
ここで、電極101,102に通電された際の電解反応に基づいた、被処理水中の窒素除去反応について、説明する。図6は、電解槽100内の電解反応を説明するための図である。
図6を参照して、電極101,102は、制御回路115内の電源1150により通電される。そして、電極101,102の一方をカソード電極とし他方をアノード電極として通電された場合、アノード側では、被処理水中に存在するハロゲンイオン(図6では塩化物イオン)が酸化され、ハロゲンガス(塩化物イオンが酸化された場合は塩素)が生成された後、当該ガスが被処理水中の水と反応して次亜塩素酸が生成される。一方、カソード側では、被処理水中の窒素成分(被処理水中の有機系窒素化合物等)が硝酸イオンに変換され、さらに、硝酸イオンがアンモニウムイオンに変換される。そして、このように電気化学的に生成された次亜塩素酸とアンモニウムイオンが反応することにより、窒素成分は、クロラミン類を経て、窒素ガスに変換される。
つまり、電解槽100内では、被処理水中の窒素成分が、電気化学的に窒素ガスへと変換され、被処理水から除去される。
また、上記のような反応機構を考慮すると、貯蔵部111(または後述する貯蔵部140,150)に貯蔵され、ハロゲンイオンを供与する化合物としては、次亜塩素酸または次亜塩素酸塩等、次亜塩素酸イオンを供与できるものが好ましい。
なお、電極101,102の一方は、たとえば、導電性を有する不溶性材料、当該不溶性材料を塗布された導電材料、または、当該不溶性材料を塗布されたカーボン等からなる。電極101,102の一方をこのように構成することにより、被処理水中の有機性の窒素成分をも、電解処理により、窒素ガスへ変換できる。
ここで言う導電性の不溶性材料は、たとえば、周期律表のIb族またはIIb族の元素を少なくとも一種類は含む導電対であることが好ましい。これにより、電極101,102のカソード側の反応(窒素成分に関する反応)の効率が向上する。
また、電極101,102は、互いに極性が異なるよう通電されるが、制御回路115は、これらの極性を定期的に入替える(交換させる)ことが好ましい。これにより、電極101,102上で同じ反応のみが進行することを回避できるため、反応の副産物が電極101,102上に膜状に蓄積することを回避できる。
また、電極101,102の他方は、鉄または鉄を含有する化合物(鉄を含有する合金)から構成されることが好ましい。これにより、上記した電極101,102の一方をアノード電極として、当該一方の電極上で窒素除去に関連する反応を進行させ、さらに、電極101,102間で極性を入替え、他方の電極(鉄または鉄含有化合物)をアノード電極として、当該他方の電極上でリン除去に関連する反応を進行させることができる。つまり、電解槽100のみで、電気化学的な窒素除去およびリン除去が可能となる。
また、電極101,102の他方を、上記の導電性の不溶性材料または炭素電極としてもよい。
また、電極101,102の中の、アノード電極とされる方は、白金、酸化チタン等の酸化触媒作用を有する物質からなるか、そのような物質をコーティングされていることが好ましい。これにより、アノード電極側で進行すると考えられる、ハロゲンイオンの酸化反応が促進されるからである。
また、図4および図5を用いて説明したように、電極101,102を配線120と接続させるための端子は、支持部103内に内蔵されていたが、このような端子を支持部103の外に、かつ、支持部103と一体的に、設けることもできる。図7に、このように構成された電極対(支持部103および電極101,102)を示す。
図7は、図4に示す電極対の変形例を示すが、この変形例では、支持部103の孔103Gに管104Aが固定され、当該管104Aの先端には端子104Bが取付けられている。管104A内には、電極101,102と端子104Bとを電気的に接続させる配線が通されている。管104Aは、プラスティック等、支持部103に対して端子104Bを固定できる物質で構成されている。これにより、容易に、電極101,102と電源1150とを接続できる。
なお、電解槽100内のアノード電極とカソード電極で進行する反応の速度は、異なると考えられる。具体的には、カソード電極側で進行する反応は、アノード電極側で進行する反応に比べて遅いと考えられる。このような場合、カソード電極とアノード電極とで、反応速度の遅い方の電極の表面積を速い方の表面積よりも大きくすることが好ましいと考えられる。その一例を、図8に示す。
図8に示す電極対では、電極101と電極102とは、同心で、かつ、径の異なる筒状に構成されている。図8に示す電極対では、電極101をカソード電極とされ、電極102をアノード電極とされることが好ましい。図8に示す例では、電極101,102の表面積が異なることに加えて、これらの電極が同心となるよう配置されている。これにより、電極101と電極102の表面が全体的に等間隔となっている。したがって、両電極上で生成された物が、電極101の内部で、均等に反応できる。
また、電極101,102上での反応効率を高めるためには、これらの電極の表面上に凹凸を設けることにより、表面積を大きくすることが好ましい。このような例を、図9および図10に示す。図9は、図4に示した電極対の変形例の斜視図であり、図10は、図9に示した電極101の側面図である。
図9に示した電極対では、電極101,102は、波板状とされて、支持部103に取付けられている。つまり、図9に示す電極対では、電極101(および電極102)の側面は、図10に示されるように、波線状となっている。
なお、電極101,102の表面形状をポーラス状にする等、ミクロな視点で、電極の表面上に凹凸を設けてもよい。
また、電解槽100内には、汚泥が蓄積することが考えられる。したがって、汚泥により電極101,102上の反応が阻害されることを回避するため、電解槽100内に、当該汚泥を、電極101,102から剥離させる機構、および/または、電解槽100から排出する機構を備えることが好ましい。このような機構を備えた、電解槽100の変形例を、図11に示す。
図11を参照して、電解槽100内には、超音波発振装置132、汚泥量センサ131、散気管135が設けられ、また、電解槽100の下部にはバルブ133が設けられている。
散気管135は、図示せぬポンプに接続され、電極101,102の下部に設置され、電極101,102の下部から上方に気泡を放出する。この気泡により、電極101,102上に付着した汚泥が、粉砕し、当該電極上から剥離する。
超音波発振装置132および汚泥量センサ131は、制御回路130に接続される。超音波発振装置132が超音波を発振することにより、電解槽100内の底部に固まっている汚泥が粉砕される。
なお、電極101,102上に付着した汚泥を粉砕・剥離させたり、電解槽100の底部の汚泥を粉砕させるための機構としては、散気管や超音波発振装置の他に、電解槽100内に攪拌棒を挿入したり、磁性を利用した攪拌子(磁石により構成され、外部から与えられる磁場の変動により回転等の運動を行なうもの)等を挙げることができる。
汚泥量センサ131により、電解槽100内の汚泥が所定量に達したことが検出される。汚泥量センサ131の検出出力は、制御回路130に送信される。制御回路130は、汚泥が所定量に達したことに応じて、バルブ133を開く。これにより、電解槽100では、汚泥量が所定量に達すると、バルブ133が自動的に開かれ、汚泥が排出される。なお、制御回路130は、汚泥が所定量に達した際に、その旨を報知し、手動で、バルブ133が開かれるように構成されてもよい。なお、汚泥量センサ131は、たとえば、導電率を検出できるセンサによって構成される。被処理水中の汚泥量に応じて、被処理水の導電率が変化すると考えられるからである。
図12に、電解槽100の別の変形例として、電解槽100の底部のみの構造を示す。図12を参照して、電解槽100の底部には、搬送管142が接続されている。搬送管142の内部には、スクリュー141が設置されている。スクリュー141は、モータ140に接続され、回転可能となっている。スクリュー141が回転することにより、電解槽100底部に蓄積している汚泥は、当該電解槽100外(図12では右方向)へと運搬される。このようなスクリュー141を含む機構を取付けることによっても、電解槽100底部に汚泥が蓄積することを回避できる。
また、電解槽100についての、さらに別の変形例としては、図13に示すように、電解槽100内に複数の電極対を備えることが挙げられる。図13を参照して、電解槽100内には、支持部103A,103B,103Cそれぞれに、電極101A,102A、101B,102B、101C,102Cの3組の電極が取付けられ、また、電源1150に接続される配線120A,120B,120Cが取付けられている。このように、電解槽100内に備えられる電極対の数を増やすことにより、単位時間当たりの窒素成分の処理量を増加できる。
また、本実施の形態では、図3等を用いて説明したように、電解槽100に、図6を用いて説明した窒素除去反応を促進するために、水溶液中でハロゲンイオンを供与する化合物が注入される。なお、図6から理解されるように、ハロゲンイオンは、アノード電極での反応に利用される。このことから、ハロゲンイオンを供与する化合物は、アノード電極側に注入されるのが好ましい。
なお、このような化合物は、流動性を有する態様で貯蔵部111に貯蔵されていたが、ペレット状等の固形状であってもよい。以下に、固形状の当該化合物を電解槽100に添加する例を説明する。図14に、貯蔵部111の構造の変形例を模式的に示す。
図14を参照して、電解槽100の上流側には、固形状である当該化合物を貯蔵する貯蔵部140が設置されている。なお、貯蔵部140は、被処理水についての、電解槽100への流路に接するように設けられ、当該貯蔵部140の底部であって当該流路に面する部分に孔140Aが形成されている。これにより、貯蔵部140内の化合物は、電解槽100に流れ込む被処理水によって、電解槽100内に導入される。つまり、ポンプ等の装置を用いることなく、かつ、継続的に、貯蔵部140内の化合物を電解槽100に添加できる。
また、貯蔵部111の別の変形例を図15に示す。図15に示す例では、貯蔵部150に当該化合物が貯蔵され、さらに、電解槽100内の被処理水を貯蔵部150内に循環させ、再度、電解槽100に戻す流路151が設けられている。また、流路151には、ポンプ152が取付けられている。ポンプ152は、電解槽100内の処理水を、貯蔵部150内に導入し、さらに、貯蔵部150内から電解槽100へと送ることができる。これにより、図14に示した例と同様に、貯蔵部150内の化合物が、電解槽100に流れ込む被処理水によって、電解槽100内に添加される。また、図15に示す例では、ポンプ152の動作態様を制御することにより、貯蔵部150内の化合物の添加量を制御できる。
また、図11等を用いて、電極101,102の表面に付着した汚泥を除去する機構について説明を行なったが、電極101,102の表面での汚泥の付着自体を回避する対策として、電極101,102に対して、所定の膜を通過させた被処理水を供給することが考えられる。このような対策を、図16を参照して、具体的に説明する。図16は、電極101,102間に、当該電極101,102よりも上流に設けられた膜を通過させた後の被処理水を供給する機構を模式的に示す図である。
図16に示す機構では、電極101,102は、集合管160内に設けられている。また、電極101,102より上流側には、内部に中空子フィルタ等の膜166を設置された、筒状の膜カートリッジ161が備えられている。膜カートリッジ161の下部には、側面に孔を形成された散気管163が備えられている。膜カートリッジ161の外周の上部は、膜ケース164に覆われ、外周の下部は、散気ケース165に覆われている。
集合管160と膜カートリッジ161とは、複数のチューブ162で接続されている。各チューブ162の一端は、集合管160内に導入され、他端は、膜166に対向している。膜カートリッジ161内に導入された被処理水は、膜166を通過した後、散気管163の放出する気泡によって押し上げられ、チューブ162を介して、集合管160内に導入される。
なお、図16では、電極101,102は、それぞれ、集合管160の内壁面に沿うように、設けられている。これにより、集合管160内での被処理水の流れが、電極101,102によって阻害することを回避できる。
また、集合管160の長さや形状を適宜変更することにより、電極101,102における反応またはそれに連鎖して起こる反応に必要な時間だけ、被処理水を滞留させることができる。本実施の形態のように、電解反応に利用して被処理水の窒素除去を行なう場合、集合管160は、少なくとも1時間程度の滞留時間を確保できるよう構成されることが好ましい。
また、図16に示したような機構の後に、さらに、図11を用いて説明した汚泥を剥離・粉砕させる機構、図12を用いて説明した汚泥を運搬する機構、図13を用いて説明した被処理水に複数の電極対を通過させる機構、および、図14,図15を用いて説明したような貯蔵部140,150を、設置することもできる。
以上説明した本実施の形態では、図1に示したような流れに沿って、被処理水が処理される。つまり、リン除去用の電解槽59と窒素除去用の電解槽100とで被処理水が処理されるため、被処理水中のリン成分および窒素成分が除去できる。なお、電解槽100では、図6を用いて説明したように、反応工程の中で次亜塩素酸等の、微生物の活動を阻害するおそれのある化合物が発生する。このことから、窒素除去用の電解槽100は、微生物処理後、つまり、嫌気ろ床槽5,10および接触ばっ気槽14を含む、生物ろ過槽、活性汚泥槽、担体流動処理槽での処理後に、設置されることが好ましい。
また、以上説明した本実施の形態では、窒素除去用の電解槽100は、リン除去用の電解槽59よりも下流側に設置されているが、電解槽100と電解槽59との位置関係はこれに限定されない。電解槽100は、微生物処理後であれば、リン除去処理より上流側に設置されてもよい。
なお、上記したタンク1および電解槽100は、主に、家庭用排水や工場排水を処理する大規模な排水処理施設に適用されるが、電解槽100については、地下水や浄水の汲上げポンプの後段に設置され、これらの水の窒素成分の除去に利用することもできる。
また、本実施の形態では、図1および図2から理解されるように、電解槽100は、タンク1の後段に、つまり、2次処理後の被処理水が導入されるように、設置されていた。このように、被処理水の3次処理用の装置として電解槽100を利用する際の処理の流れとして、図17(B),(C)に、その変形例を示す。なお、図17(A)は、図17(B),(C)の処理の流れの一部分を示している。
図17(A)および図17(B)を参照して、この例では、まず、被処理水は、工程200において、嫌気性処理および好気性処理がなされる。
工程200での処理とは、図17(A)に示される工程での処理である。具体的には、嫌気ろ床槽201で処理された被処理水が、接触ばっ気槽202に送られる。接触ばっ気槽202での処理後の被処理水は、一部が剥離汚泥と共に嫌気ろ床槽201に返送され、一部は沈殿槽203に送られる。沈殿槽203内の被処理水は、一部は、沈殿汚泥と共に接触ばっ気槽202に返送されるが、一部は、次の工程へと送られる。
そして、図17(B)を参照して、工程200での処理後の被処理水は、接触ばっ気槽210に送られる。当該接触ばっ気槽210の処理水は、沈殿槽211に送られる。なお、接触ばっ気槽210の剥離汚泥は、別途設けられた、沈殿槽、汚泥濃縮貯留槽、汚泥濃縮設備等に送られる。沈殿槽211の被処理水は、一部は、沈殿汚泥と共に、嫌気ろ床槽201(図17(A)参照)に送られ、一部は、砂ろ過原水槽212に送られた後、砂ろ過装置213に送られる。
砂ろ過装置213で生じた洗浄排水は、リン除去用の電解槽214に送られた後、嫌気ろ床槽201に(図17(A)参照)返送される。砂ろ過装置213のろ過後の被処理水は、砂ろ過処理水槽215に送られた後、消毒槽216で消毒され、窒素除去用の100で処理された後、施設外に放流される。
次に、図17(A)および図17(C)を参照して、別の変形例について説明する。
この例でも、まず、被処理水は、工程200において、嫌気性処理および好気性処理がなされる。
そして、工程200における処理後の被処理水は、中間流量調整槽220,凝集槽221,凝集沈殿槽222,リン除去用の電解槽223を循環される。なお、リン除去用の電解槽223の被処理水は、工程200内の嫌気ろ床槽201に送られる。
そして、凝集沈殿槽222内の上澄みは、消毒槽224に送られた後、窒素除去用の電解槽100で処理された後、施設外に放流される。
以上説明した本実施の形態では、好気性微生物による処理が接触ばっ気槽14において行なわれるタンク1の3次処理として電解槽100および窒素除去槽100Aが備えられたが、本発明は、これに限定されない。図18に示すように、電解槽100および窒素除去槽100Aは、好気性微生物による処理が、接触ばっ気槽14の代わりに生物ろ過槽14Aにおいて行なわれるようなタンク1の3次処理として採用されてもよい。
なお、図18に示されたタンク1では、沈殿槽19の代わりに、処理水槽19Aが設けられている。また、図18に示すタンク1では、図1の第三仕切壁4の代わりに設けられた第三仕切壁4の下端は、タンク1の内壁に接続されており、接触ばっ気槽14Aと処理水槽19Aとは下部では連結されていない。
また、以上説明した本実施の形態では、電解槽100および窒素除去槽100Aは、タンク1の後段に、3次処理的に設けられていたが、タンク1内に、2次処理の一部として用いられてもよい。なお、上記したように、電解槽100で処理された被処理水に含まれる物質は、微生物の活動を阻害するおそれがあるため、電解槽100は、図19に示すように、沈殿槽190に設置されることが好ましい。図19に示すタンク1では、沈殿槽190において、被処理水の窒素除去がなされることにある。これにより、リン除去および窒素除去を行なう装置をコンパクトに構成できる。なお、図19に示すタンク1は、図2に示したタンク1の沈殿槽19を、電解槽100および窒素除去槽100Aを追加された、沈殿槽190としたものである。
図19に示すようにタンク1内に電解槽100および窒素除去槽100Aが設置された際には、図11等を用いて説明した、電解槽100内や電極101,102表面上の汚泥を除去する機構は、特に有効である。
なお、タンク1での最終段階の処理は、消毒槽21における処理とされることが好ましいため、電解槽100および窒素除去槽100Aは、消毒槽21よりも上流側に設置されることが好ましい。
また、消毒槽21内に、電解槽100および窒素除去槽100Aを設置してもよい。消毒槽21に電解槽100が設置した場合、図1に示した処理工程は、図20(A)に示すものとなる。また、図17(B),(C)に示したものは、それぞれ、図20(B),(C)に示したものとなる。それぞれ、図1、図17(B),(C)に示した工程が、消毒槽21内で電解槽100の処理が行なわれることを示している。
また、上記した本実施の形態では、リン除去用の電解槽59において、電解により金属イオンが供与されるが、電極対51,52を構成する電極は、鉄やアルミニウムの金属板であってもよいし、これらの金属をステンレス等の導電体に被覆したものであってもよい。なお、電極を、鉄板の代わりに、鉄を導電体に被覆させたものとすることにより、電極の軽量化を図ることができる。
電極の軽量化は、水処理装置において、重要な意味を持つ。集合住宅や養豚場など、リン除去が必要とされる水処理装置では、電極の交換頻度を3〜4ヶ月に一度程度に抑えたいという要望があるため、単位表面積当たりの電極の重量の軽量化が、一度に作業する際の電極の重量を大きく左右するからである。
つまり、1日当たり10m3 程度の汚水を処理する、50人用の集合住宅用として設置される水処理装置において、リン除去用の電極として、1.5kg程度の鉄板が8枚使用される。また、1日当たり20〜30m3 程度の汚水を処理する養豚場に設置される水処理装置では、同様の電極として、1.5kg程度の鉄板が32枚使用される。このようなことから、鉄板の代わりに、導電体に鉄を被服させて電極とする等、電極の軽量化を図ることにより、水処理装置における電極の交換の作業が容易になる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 タンク、5 第一嫌気ろ床槽、10 第二嫌気ろ床槽、14 接触ばっ気槽、14A 生物ろ過槽、19 沈殿槽、51,52 電極対、59,100 電解槽、60 磁気処理ユニット、100A 窒素除去槽、101,102 電極、103 支持部、106,107 イオン濃度計、110 ポンプ、111,140 貯蔵部、115 制御回路、1150 電源。