JP2006035027A - リンを採取回収する吸着材、その製造方法およびそれを用いたリン回収方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ポリオレフィン若しくは天然高分子を材質とする繊維、織布、不織布、フィルム、中空糸膜、平膜、または糸から製造される高分子基材と、該高分子基材にビニル反応性モノマーをグラフト重合させて形成したグラフト鎖と、該グラフト鎖に導入されたリン酸キレート形成基とを有することを特徴とする、リン採取回収のための吸着材。
【選択図】 なし
Description
(1)リン化合物を含有する液体からリンを回収するための方法であって、前記液体をリンを回収するための吸着材に通液することを含み、前記吸着材が、繊維由来の形態の高分子基材と、前記高分子基材にグラフト重合により導入された、主としてビニル反応性モノマーから構成されるグラフト鎖と、前記グラフト鎖に導入されたリンキレート形成基とを有することを特徴とする方法。
(2)前記キレート形成基がリン酸基またはイミノジ酢酸基である、上記(1)記載の方法。
(3)前記キレート形成基が、鉄、アルミニウム、またはジルコニウムを担持させられたものである、上記(2)記載の方法。
(4)前記ビニル反応性モノマーが、モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート(CH2=C(CH3)COO(CH2)2OPO(OH)2)、ジ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート([CH2=C(CH3)COO(CH2)2O]2PO(OH))、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート(CH2=CHCOO(CH2)2OPO(OH)2)、ジ(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート([CH2=CHCOO(CH2)2O]2PO(OH))、またはこれらの混合モノマーである、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
(5)前記ビニル反応性モノマーが、次式:CH2=C(CH3)COO(CH2)lOCO-R-CO-OPO(OH)R'(式中、Rは置換基を有してもよい(CH2)mまたはC6H4であり、R'は水酸基またはCH2=C(CH3)COO(CH2)nOCO-R-CO-O-基であり、l,mおよびnはそれぞれ独立して1〜6の整数である。)のモノマーである、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
(6)前記高分子基材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、キチン、キトサン、セルロース、デンプンの繊維を材質とする織布、不織布、フィルム、中空糸膜、平膜、または糸の形態である、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法。
(7)前記吸着材はカラムに充填されたものである、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の方法。
(8)前記カラムが複数個直接または並列に接続されている、上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の方法。
(9)更に、前記液体を吸着材に通液した後、前記吸着材を洗浄して、吸着したリンを溶離させ、繰返しリンを含有する液体を前記吸着材に通液することを含む、上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の方法。
(10)上記(1)〜(9)のいずれか1つに記載のリン回収方法により回収したリンを有用資源として利用するための方法。
まず、本発明のリンを採取回収する吸着材の好適な実施形態は、繊維由来の形態の高分子基材と、前記高分子基材にグラフト重合により導入された、主としてビニル反応性モノマーから構成されるグラフト鎖と、前記グラフト鎖に導入されたリン酸を回収するためのキレート形成基とを有することを特徴とする。
高分子基材は、主として高分子繊維から構成されるものである。高分子繊維は、特に限定はないが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、またはキチン、キトサン、セルロース、デンプンなどの天然高分子の繊維が挙げられる。天然高分子由来の基材は、使用後に生分解可能な基材がある点で有益である。
高分子基材の形態は、特に限定はないが、繊維由来の織布、不織布、フィルム、中空糸膜、平膜、または糸などの形態が挙げられ、また、これらから製造される任意の形態であってもよい。
ビニル反応性モノマーは、分子内に一つ以上のビニル基を有する、グラフト重合により高分子基材にグラフト鎖を導入することができるモノマーである。ビニル反応性モノマーは、特に限定はないが、モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート(CH2=C(CH3)COO(CH2)2OPO(OH)2)、ジ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート([CH2=C(CH3)COO(CH2)2O]2PO(OH))、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート(CH2=CHCOO(CH2)2OPO(OH)2)、ジ(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート([CH2=CHCOO(CH2)2O]2PO(OH))、またはこれらの混合モノマーが挙げられる。また、次式:CH2=C(CH3)COO(CH2)lOCO-R-CO-OPO(OH)R'(式中、Rは置換基を有してもよい(CH2)mまたはC6H4であり、R'は水酸基またはCH2=C(CH3)COO(CH2)nOCO-R-CO-O-基であり、l,mおよびnはそれぞれ独立して1〜6の整数である。)のモノマーも使用することができる。
また、ビニル反応モノマーは、後述するキレート形成基を分子内に一つ以上有するものであることが好ましい。これにより、高分子基材に反応活性点を生成して、モノマーのグラフト重合を行う二段階の反応によりリン吸着材を製造することができる。ビニル反応モノマーがキレート形成基を有さない場合は、反応活性点を生成し、モノマーのグラフト重合を行い、グラフト鎖にキレート形成基を導入する三段階の反応によりリン吸着材を製造することができる。
ここで、本発明における「キレート形成基」とは、リンとキレートを形成することができる官能基をいうものとする。キレート形成基は、特に限定はないが、リン酸基またはイミノジ酢酸基が挙げられる。またこれらのキレート形成基は、鉄、アルミニウム、またはジルコニウムを担持させてもよい。
本発明のリン吸着材の製造方法の好適な実施形態は、高分子基材に反応活性点を生成させる工程と、前記高分子基材にビニル反応性モノマーをグラフト重合してグラフト鎖を導入する工程と、そして場合により、前記グラフト鎖にキレート形成基を導入する工程とを含むことを特徴とする。
本発明のリン吸着材の製造方法においては、まず、以下の(a)または(b)の方法により高分子基材に反応活性点を生成させる。
予め窒素置換した高分子基材に、窒素雰囲気下、室温またはドライアイスなどによる冷却下で放射線を照射する。用いる放射線は電子線またはγ線で、照射線量は反応活性点を生成させるのに充分な線量であることを条件に適宜決定することができる。照射線量は、特に限定はないが、典型的には5〜200kGyである。
予め窒素置換した高分子基材に、窒素雰囲気下室温でプラズマを照射する。窒素雰囲気下、10MHz以上の高周波を用いて1〜数時間基材を照射する。
反応活性点生成工程に次いで、高分子基材にビニル反応性モノマーを接触させてグラフト重合を行い、高分子基材にグラフト鎖を導入する。
グラフト重合反応においてキレート形成基を有するビニル反応性モノマーを使用しない場合は、キレート形成基を有する化合物をグラフト鎖と反応させることにより、グラフト鎖にキレート形成基を導入することができる。
次に、本発明の前記吸着材を用いたリン回収方法の好適な実施形態を説明する。
(実施例1)
ポリエチレン製の不織布を基材として吸着材を製造した。
試験は、吸着材を1ppmおよび10ppbの濃度のリン酸溶液(pH3)中に浸漬し、それぞれ24時間撹拌して行った。図1に、吸着材の回収性能を接触時間対リン酸回収率で示す。いずれのリン酸濃度においても24時間の接触後には98%のリン酸が回収された。更に、濃度10ppbの試験では、約15分で98%のリン酸が回収できることが確認された。これにより、本発明の吸着材は、リン酸濃度に依存することなく回収可能であることが分かった。
ポリプロピレンとポリエチレンの合成繊維を基材として吸着材を製造した。
ドライアイスによる冷却下で基材に電子線を200kGy照射した。次いで、この基材をメタノール95%とグリシジルメタクリレート5%の混合溶液中に浸漬し、40℃で15分間反応させ、エポキシ基を導入した。反応率(グラフト率)は120%であった。更に、この基材を0.425Mのイミノ酢酸二ナトリウム溶液中に浸漬し、80℃で8時間反応させた。導入したイミノ二酢酸基に関して、官能基密度は3mmol/gであった。このグラフト物(グラフト後に得られる反応物)を酸化鉄(Fe2O3)中性溶液中に浸漬し、60℃で12時間撹拌させて吸着材を得た。得られた吸着材の官能基量は2.5mmol/gであった。
試験は、吸着材をカラムに充填し、種々の濃度のリン酸溶液を通液することにより行った。リン酸濃度は、1mM、5mM、10mMとし、空間速度(SV)およびpHは一定でそれぞれ100、5とした。図2に、吸着材のリン酸濃度依存性をベッド体積対C(リン酸濃度)/C0(リン酸初濃度)で示す。いずれの濃度での試験も、ほぼ同じ破過点および破過吸着量を示し、本発明の吸着材は、濃度に依存せずリン酸を回収できることが確認された。
ポリエチレン製の不織布を基材として吸着材を製造した。
ドライアイスによる冷却下、基材にγ線を総吸収線量が160kGyになるように照射した。次いで、基材を予め調製した混合モノマー中に浸漬し、60℃で3時間反応させてから、10mMのジルコニウム硝酸溶液中に浸漬しジルコニウムを担持させた。モノマー溶液は、モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートとジ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートが35対65の割合の混合モノマーを、メタノールと純水が30対70の割合の混合溶媒中に溶解して調製した。得られた吸着材の反応率(グラフト率)および官能基量はそれぞれ、100%、4mMであった。
試験は、吸着材をイオン交換塔に充填し、図4に示すフロー図にしたがった装置構成を用いて行った。図4に示すように、リザーバに収容されたリン酸を含有する処理液を、ポンプにより、フィルター、熱交換器、イオン交換塔(吸着材)へと送液した。
Claims (10)
- リン化合物を含有する液体からリンを回収するための方法であって、前記液体をリンを回収するための吸着材に通液することを含み、前記吸着材が、繊維由来の形態の高分子基材と、前記高分子基材にグラフト重合により導入された、主としてビニル反応性モノマーから構成されるグラフト鎖と、前記グラフト鎖に導入されたリンキレート形成基とを有することを特徴とする方法。
- 前記キレート形成基がリン酸基またはイミノジ酢酸基である、請求項1記載の方法。
- 前記キレート形成基が、鉄、アルミニウム、またはジルコニウムを担持させられたものである、請求項2記載の方法。
- 前記ビニル反応性モノマーが、モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート(CH2=C(CH3)COO(CH2)2OPO(OH)2)、ジ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート([CH2=C(CH3)COO(CH2)2O]2PO(OH))、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート(CH2=CHCOO(CH2)2OPO(OH)2)、ジ(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート([CH2=CHCOO(CH2)2O]2PO(OH))、またはこれらの混合モノマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ビニル反応性モノマーが、次式:CH2=C(CH3)COO(CH2)lOCO-R-CO-OPO(OH)R'(式中、Rは置換基を有してもよい(CH2)mまたはC6H4であり、R'は水酸基またはCH2=C(CH3)COO(CH2)nOCO-R-CO-O-基であり、l,mおよびnはそれぞれ独立して1〜6の整数である。)のモノマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記高分子基材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、キチン、キトサン、セルロース、デンプンの繊維を材質とする織布、不織布、フィルム、中空糸膜、平膜、または糸の形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記吸着材はカラムに充填されたものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記カラムが複数個直接または並列に接続されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 更に、前記液体を吸着材に通液した後、前記吸着材を洗浄して、吸着したリンを溶離させ、繰返しリンを含有する液体を前記吸着材に通液することを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載のリン回収方法により回収したリンを有用資源として利用するための方法。
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