JP2006030295A - 光スイッチ - Google Patents

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  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)

Abstract

【課題】光ファイバループに利用する光ファイバとして長いものを利用しても、偏波クロストークの影響を受けず、また信号光の波長の揺らぎや、光スイッチの周囲温度の変化によっても、スイッチ動作の安定が保たれる。
【解決手段】光分波合成器10と、光ファイバループを構成する非線形光ファイバ20と、光カプラ12と、ループ外偏波分離装置18と、出力用光ファイバ16とを具えて構成される光スイッチである。光分波合成器は、第1ポート10-1、第2ポート10-2、第3ポート10-3及び第4ポート10-4を具えており、第1ポートから入力される信号光は、第2ポート10-2及び第3ポート10-3に出力されるという特性を有している。非線形光ファイバは、光分波合成器の第2ポートに一端が接続され、制御光を入力する光カプラを具えている。光分波合成器の第2ポートから非線形光ファイバに入力された第1信号光は、CW方向に伝播して光分波合成器の第3ポートに入力される。光分波合成器の第3ポートから非線形光ファイバに入力された第2信号光は、CCW方向に伝播して光分波合成器の第2ポートに入力される。
【選択図】図1

Description

この発明は、長距離大容量光ファイバ通信等に利用される、制御光によって被制御光をスイッチする光スイッチに関する。
限られた通信線路資源を有効に利用して、大容量光ファイバ通信を実現するには、送受信可能なチャンネル数を増やし、かつ通信速度を高速化する手段が必要である。
チャンネル数を増やす手段として、時分割多重通信(TDM: Time Division Multiplexing)等の多重通信方法が検討されている。TDMは、複数チャンネルを時間多重して時分割多重信号として送信し、受信側でクロック信号から生成されるゲート信号によって時分割多重信号から個々のチャンネルを分離することにより、個々のチャンネルの情報を個別に取り出して受信する方法を採用した通信方法である。
上述したTDMの通信速度を高速化するためには、多重分離手段を全て光学的な手段で実現するのが望ましい。すなわち、光パルス信号を構成する光パルスを遮断/透過させるスイッチ動作を、電気的な手段を介することなく光制御信号のみで実行できる光スイッチを実現するのが望ましい。
光ファイバにおいて発現する光カー効果は、光ファイバを強い強度の光が伝播することにより光ファイバの屈折率が変化する現象である。光カー効果の応答速度は数フェムト秒(fs)である。すなわち、光カー効果を利用して光スイッチを構成すれば、数百Gbit/s以上の光パルス信号のスイッチ動作が可能な光スイッチを実現できる可能性がある。因みに、光パルス信号を一旦電気信号である電気パルス信号に変換し、その電気パルス信号を電子デバイスでスイッチした後に再び光パルス信号に戻すという、従来のスイッチでは、40 Gbit/s程度のビットレートの光パルス信号をスイッチすることが限界であった。
光カー効果を利用した光スイッチとして、非線形光ループミラー(NOLM:Nonlinear Optical Loop Mirror)が研究されてきた(例えば、非特許文献1及び特許文献1参照)。非特許文献1及び特許文献1に開示されているNOLMの基本構成は、光分波合成器、光カプラ及び光ファイバループを具えている。これらNOLMの基本動作を要約すると次のようになる。
スイッチングの対象である、時分割多重光パルス信号は、光分波合成器によってその光強度を均等に二分割される。二分割された時分割多重光パルス信号は、それぞれが光ファイバループ内を時計回り(CW方向ということもある。)及び反時計回り(CCW方向ということもある。)に伝播し、再び光分波合成器に入力されて両者が結合される。このとき、光カプラから制御光が入力されなければ、光ファイバループ内を時計回りに伝播する時分割多重光パルスと反時計回りに伝播する時分割多重光パルスとは、光分波合成器において同位相で合波される。その結果、NOLMに入力された時分割多重光パルス信号は、光分波合成器へ入力された入出力端と同一の入出力端に出力される。この入出力端に出力される時分割多重光パルス信号(光)は、ループ反射光と呼ばれることもある。
一方、光カプラから制御光が入力されると光ファイバループ内で光カー効果が発現し屈折率が変化する。そのため、二分割された時分割多重光パルス信号は、それぞれが光ファイバループ内を時計回り及び反時計回りに伝播し、再び光分波合成器に入力されて両者が結合されたときには両者の位相がずれている。この位相ずれ量がπとなるように、光ファイバループの長さや制御光の強度を調整すれば、NOLMに入力された時分割多重光パルス信号は、光分波合成器へ入力された入出力端と対になるもう一方の入出力端に出力される。このもう一方の入出力端に出力される時分割多重光パルス信号(光)は、ループ透過光と呼ばれることもある。
以上説明したように、制御光によって、時分割多重光パルス信号が光分波合成器へ入力された入出力端と同一の入出力端に出力されたり、光分波合成器へ入力された入出力端と対になるもう一方の入出力端に出力されたりといった、スイッチ動作が実現する。
また、NOLMにおいては、光ファイバループを時計回りに伝播する光パルス信号と反時計回りに伝播する光パルス信号とを、光分波合成器で合波させて干渉させるためには、これら両者の光パルス信号の偏光方向を合致させる必要がある。そのための方法として上述の光ファイバループを偏波面保存光ファイバで構成する方法が研究されている(例えば非特許文献2参照)。
市販されているパンダ(PANDA:Polarization-maintaining AND Absorption-reducing)型光ファイバ等の偏波面保存光ファイバは、この光ファイバを伝播する光の伝播方向(以後「光ファイバの光軸方向」ということもある。)に対して垂直な面内に設定された遅相軸あるいはスロー(slow)軸と呼ばれる光学軸の方向と、slow軸と直交する進相軸あるいはファスト(fast)軸と呼ばれる光学軸の方向とでは、導波される光に対する実効屈折率が異なる構造を有する光ファイバである。
しかし、その光ファイバの光軸方向に沿って、fast軸(あるいはslow軸)の方向が完全に不変であるわけではない。そのために、偏波面保存光ファイバへの入力光が偏波面保存光ファイバのfast軸(あるいはslow軸)にその偏波面が平行である直線偏波であっても、この偏波面保存光ファイバからの出力光には、入力光の偏波方向と直交する方向に偏光成分を有していることになる。この入力光の偏波方向と直交する偏波方向の成分は、偏波クロストークと呼ばれる。
市販の平均的な偏波保存性能を有するPANDA型光ファイバにおいては、この偏波クロストークが、PANDA型光ファイバの長さが数十m以上の長さになると、急激に増大することが知られている(例えば、非特許文献3参照)。
光カー効果を利用する光スイッチは、通常数十m以上の長さの偏波面保存光ファイバが用いられて構成されるので、その設計においては、偏波クロストークを十分に考慮する必要がある。光スイッチを構成する偏波面保存光ファイバを伝播する光パルスは、fast軸及びslow軸の両方向に対する偏光成分を有している。このため偏波クロストークが発生すれば、信号光の光パルスの本来の偏波方向成分と偏波クロストークとが干渉し、信号光の光パルスの偏光状態は、偏波クロストークが存在しない場合と異なる状態となる。この偏波クロストークにより信号光の光パルスに与えられる効果は、信号光の光パルスの波長や、偏波面保存光ファイバの周囲温度等が変化することによっても変化する。すなわち、偏波クロストークの存在によって、光スイッチの動作特性に変動を与え、不安定動作を引き起こすという問題が発生する。
"Modelling of NOLM Demultiplexers Employing Optical Soliton Control Pulse," Z. Ghassemlooy, C. Y. Cheung & A. K. Ray, Microwave and Optical Technology Letters, vol. 21, No. 3 pp. 205-208, 1999. "Ultrafast polarisation-independent all-optical switching using a polarisation diversity scheme in the nonlinear optical loop mirror," K. Uchiyama, H. Takara, S. Kawanishi, T. Morioka and M. Saruwatari, Electronics Letters, vol. 28, No. 20, pp. 1864-1866, 1992. 「偏波保持光ファイバ」荒井、齋藤、小山、中村、横溝、相曽, 古河電工時報、第109号、pp. 5-10, 2002.
光カー効果により光ファイバにおいて発現する屈折率の変化の大きさはその光ファイバ長さ等の寸法的要件と、素材と、伝播する光の強度とによって決まる。すなわち、光スイッチの光ファイバループを構成する光ファイバの種類が選択されれば、スイッチングに必要とされる上述の位相ずれ量を得るために必要とされる、光ファイバループの長さ及び制御光の強度が決まる。光ファイバループを構成する光ファイバは、その光スイッチの用途によってその種類等が決められる。すなわち光通信の光搬送波の波長等によって決定される事項である。
上述のスイッチングに必要とされる位相ずれ量φは次式(1)で与えられる。
φ=2γPL (1)
ここで、P(W)は制御光のパワー、L(km)は光ファイバループを構成している光ファイバの長さである。γ(W-1km-1)は光カー効果に基づく非線形光学定数であり、光ファイバの導波モード断面積であるモードフィールド径(MFD:Mode Field Diameter)などで規格化された値が使われる。
γ(W-1km-1)は通常の光ファイバに対しては、1〜2 W-1km-1程度の値であるが、数十〜数百 W-1km-1程度の値をとるMFDを小さくした高非線形光ファイバと呼ばれる特殊な光ファイバも開発されている。仮にγ=10 W-1km-1の非線形光ファイバを利用する場合を想定し、制御光のパワーPが1 Wであるとすると、φ=πとなる非線形光ファイバの長さLは、157 mとなる。このL=157 mという値は上述した非特許文献3によれば、偏波クロストークが大きな領域である。したがって、光ファイバループを偏波面保存光ファイバで構成したとしても、偏波面を完全に保存して、すなわち偏波クロストークを発生させないで、光スイッチを動作させることは難しいことが分かる。
光ファイバループを構成する光ファイバ内で偏波クロストークが発生した場合、光スイッチの動作には次のような影響が現れる。光ファイバループを構成する光ファイバ内で発生する偏波クロストークは、光ファイバループをCW方向及びCCW方向に伝播する信号光のそれぞれに対して発生する。そしてそれぞれの偏波クロストーク成分は、それらの強度はほぼ等しいがそれらの位相は相互に合致しない。したがって、光ファイバループをCW方向及びCCW方向に伝播する信号光のそれぞれに対して発生する偏波クロストーク成分が、光ファイバループ内を伝播後、光分波合成器で合波されるとき、その干渉の効果は一義的には確定しない。すなわち、その干渉の効果は、信号光の波長の揺らぎや環境温度変化に基づく光ファイバの実効屈折率の変動によって、絶えず変化を繰り返す。
光ファイバループを構成する光ファイバの長さを短く設定すれば、偏波クロストークが光スイッチのスイッチ動作に与える効果は小さいが、そのためには制御光のパワーを大きく設定しなければならない。制御光のパワーが制限された条件下で光スイッチを設計する場合、多くの場合に光ファイバループを構成する光ファイバの長さを、偏波クロストークの影響が大きく現れる程度まで長く設定する必要がある。この場合には偏波クロストークが、光スイッチの消光比を低下させるなど、スイッチ動作に好ましくない効果を与える。そして、偏波クロストークは、信号光の波長の揺らぎや、光スイッチの周囲温度の変化によって、時間的に不規則に発生し、光スイッチのスイッチ動作の安定を損なう原因となる。
そこで、この発明の目的は、光ファイバループに利用する光ファイバとして長いものを利用しても、偏波クロストークの影響を受けず、信号光の波長の揺らぎや、光スイッチの周囲温度の変化によっても、スイッチ動作の安定が保たれる光スイッチを提供することにある。
上述の目的を達成するため、この発明の第1光スイッチは、光分波合成器と、非線形光ファイバと、光カプラと、ループ外偏波分離装置と、出力用光ファイバとを具えて構成される。光分波合成器は、信号光を入力する第1ポート、非線形光ファイバの一端を接続する第2ポート、この非線形光ファイバの他端を接続する第3ポート及び変調信号光を出力する第4ポートを具えており、光強度の分岐比が1対1であるという特性を有している。すなわち、光分波合成器は、信号光を第1ポートに入力すると、信号光の強度が1対1に分岐されて第2ポートと第3ポートとに出力されるという特性を有している。非線形光ファイバは、光分波合成器の第2ポートに一端が接続され、制御光を入力する光カプラを具え、光分波合成器の第3ポートに他端が接続されている。そして非線形光ファイバは、光ファイバループを構成している。出力用光ファイバは、光分波合成器の第4ポートに一端が接続され、他端にループ外偏波分離装置が接続されている。
第2光スイッチは、光分波合成器と、非線形光ファイバと、光カプラと、ループ内偏波分離装置と、出力用光ファイバとを具えて構成される。光分波合成器は、信号光を入力する第1ポート、非線形光ファイバの一端を接続する第2ポート、非線形光ファイバの他端を接続する第3ポート及び変調信号光を出力する第4ポートを具えており、上述の第1光スイッチの光分波合成器同様、光強度の分岐比が1対1であるという特性を具えている。非線形光ファイバは、光分波合成器の第2ポートに一端が接続され、制御光を入力する光カプラとループ内偏波分離装置とを具えており、光分波合成器の第3ポートに他端が接続されている。そして非線形光ファイバは、光ファイバループを構成している。出力用光ファイバは、光分波合成器の第4ポートに一端が接続されている。
第3光スイッチは、光分波合成器と、非線形光ファイバと、光カプラと、ループ内偏波分離装置と、ループ外偏波分離装置と、出力用光ファイバとを具えて構成される。光分波合成器は、信号光を入力する第1ポート、非線形光ファイバの一端を接続する第2ポート、非線形光ファイバの他端を接続する第3ポート及び変調信号光を出力する第4ポートを具えており、上述の第1及び第2光スイッチの光分波合成器同様、光強度の分岐比が1対1であるという特性を具えている。非線形光ファイバは、光分波合成器の第2ポートに一端が接続され、制御光を入力する光カプラとループ内偏波分離装置を具えており、他端が光分波合成器の第3ポートに接続されている。そして非線形光ファイバは、光ファイバループを構成している。出力用光ファイバは、光分波合成器の第4ポートに一端が接続され、他端にループ外偏波分離装置が接続されている。
この発明の第1光スイッチによれば、被制御光である直線偏光の信号光が第1ポートから光分波合成器に入力されて第1信号光と第2信号光とに分岐され、第1信号光は第2ポートから出力されて非線形光ファイバの一端に入力され、第2信号光は第3ポートから出力されて非線形光ファイバの他端に入力される。
第1信号光は、非線形光ファイバを伝播して非線形光ファイバの他端から出力されて、光分波合成器の第3ポートから光分波合成器に入力される。一方第2信号光は、非線形光ファイバを伝播して非線形光ファイバの一端から出力されて光分波合成器の第2ポートから光分波合成器に入力される。
制御光は、非線形光ファイバの途中に設置された光カプラを介して非線形光ファイバに入力される。非線形光ファイバに入力される制御光によって、非線形光ファイバにおいて光カー効果が発現し、非線形光ファイバを伝播する第1信号光に対する屈折率が変化する。
すなわち、第1及び第2信号光が互いに反対向きに非線形光ファイバを伝播した後に、光分波合成器で合波される際、第1信号光と第2信号光との位相差がπとなるように、制御光の強度に応じて非線形光ファイバの長さを調整すれば、光分波合成器の第1ポートに入力された信号光は、制御光が、非線形光ファイバが具える光カプラから非線形光ファイバに入力されたときに限り、光分波合成器へ入力された第1ポートと対になる第4ポートにループ透過光として変調信号光が外部に出力される。一方、制御光が入力されないとき、信号光は、ループ反射光として第1ポートに反射される。
ここで、第1及び第2信号光が非線形光ファイバを伝播している間に偏波クロストークが発生した場合、上述したように、光スイッチのスイッチ動作に障害が発生する。しかし、第1光スイッチは、光分波合成器の第4ポートに出力用光ファイバの一端が接続され、この出力用光ファイバの他端にループ外偏波分離装置が接続されているので、非線形光ファイバ内で発生した偏波クロストーク成分は、このループ外偏波分離装置によって除去される。その結果、詳細は後述するが、信号光の波長の揺らぎや、光スイッチの周囲温度の変化によっても、スイッチ動作の安定が保たれる。
また、第2光スイッチによれば、スイッチ動作は、上述の第1光スイッチと同様である。第1及び第2信号光が非線形光ファイバを伝播している間に偏波クロストークが発生した場合に対し、この偏波クロストークによるスイッチ動作の障害除去のための構成が異なる。第2光スイッチは、非線形光ファイバによって構成される光ファイバループ内に、ループ内偏波分離装置が設置されている。このループ内偏波分離装置によって偏波クロストーク成分が除去され、第1光スイッチ同様に、信号光の波長の揺らぎや、光スイッチの周囲温度の変化によっても、スイッチ動作の安定が保たれる。
また、第3光スイッチによれば、非線形光ファイバによって構成される光ファイバループ内に、ループ内偏波分離装置が設置されており、かつ光分波合成器の第4ポートに出力用光ファイバの一端が接続されこの出力用光ファイバの他端にループ外偏波分離装置が接続されている。このループ内偏波分離装置及びループ外偏波分離装置によって、偏波クロストーク成分が除去される。そして、その偏波クロストーク成分が除去される効果は、第1及び第2光スイッチにおける効果の和となるので、第1及び第2光スイッチに比較してより一層効率よく偏波クロストーク成分が除去され、より一層スイッチ動作の安定が保たれる。
以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の機器及び条件等を用いることがあるが、これら材料及び条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、各図において同様の構成要素については、その重複する説明を省略することもある。
<第1の実施の形態>
(構造)
図1を参照して第1光スイッチの構造について説明する。第1光スイッチは、光分波合成器10と、非線形光ファイバ20と、光カプラ12と、ループ外偏波分離装置18と、出力用光ファイバ16とを具えて構成される。光分波合成器10は、信号光を入力する第1ポート10-1、非線形光ファイバ20の一端を接続する第2ポート10-2、この非線形光ファイバ20の他端を接続する第3ポート10-3及び変調信号光を出力する第4ポート10-4を具えている。そして、第1ポートから入力される信号光はその強度の分岐比が1対1となるように分岐されて、第2ポート10-2及び第3ポート10-3に出力されるという特性を有している。
非線形光ファイバ20は、光分波合成器10の第2ポート10-2に一端が接続され、制御光を入力する光カプラ12を具えている。そして非線形光ファイバ20は、光ファイバループを構成している。ここで、光ファイバループとは、光ファイバによって形成される光導波経路であって、光分波合成器10の第2ポート10-2と第3ポート10-3とに、それぞれの一端と他端とが結合されて形成される閉じた光導波経路をいうものとする。ここでは、光ファイバループを構成する光ファイバにおいて光カー効果を発現させるので、特にこの光ファイバを非線形光ファイバと呼ぶこともある。また、この非線形光ファイバ20で構成される光ファイバループには、必要に応じてその途中に光カプラ12等の素子を適宜挿入できるものとする。
第1光スイッチにおいては、この光ファイバループを構成する非線形光ファイバの途中に光カプラ12が挿入されている。光カプラ12の第1ポート12-1から制御光が光カプラ12に入力され、第2ポート12-2から出力されて非線形光ファイバ20に入力される構成となっている。一方、光分波合成器10の第2ポート10-2から非線形光ファイバ20に入力された第1信号光は、光カプラ12の第3ポート12-3から光カプラ12に入力されて、第2ポート12-2から出力されて再び非線形光ファイバ20に入力され、CW方向に光ファイバループを構成する非線形光ファイバを伝播して、光分波合成器10の第3ポート10-3に達する。
また、光分波合成器10の第3ポート10-3から非線形光ファイバ20に入力された第2信号光は、光カプラ12の第2ポート12-2から光カプラ12に入力されて、第3ポート12-3から出力されて再び非線形光ファイバ20に入力されて、CCW方向にに光ファイバループを構成する非線形光ファイバを伝播して、光分波合成器10の第2ポート10-2に達する構成となっている。
出力用光ファイバ16は、光分波合成器10の第4ポート10-4に一端が接続され、他端にループ外偏波分離装置18の入力端が接続されている。また、後述するように、ループ外偏波分離装置18の出力端には光ファイバ24の一端が接続され光ファイバ24の他端と波長選択装置28の入力端とが接続されている。また、入力用光ファイバ14の一端は光分波合成器10の第1ポート10-1に接続されており、その他端には光サーキュレータ30が接続されている。
第1光スイッチにおける上述の非線形光ファイバ20は、制御光及び被制御光である信号光の偏光面がこれらの光ファイバを伝播中に不規則に変動することがないように、偏波面保存光ファイバを利用するのが望ましい。偏波面保存光ファイバとしては、PANDA型光ファイバが代表的である。この光ファイバは、コアの近傍に応力付与部を形成し,コアに強い応力を加えることにより偏波保持性を得ている。
PANDA型光ファイバは、光が導波されるコアを取り囲むクラッドに、コアを挟む形で応力付与部が形成されている。例えば、クラッドはSiO2、コアはGeO2がドープされたSiO2で形成され、応力付与部はB2O3がドープされたSiO2から形成される。このように形成することによって、PANDA型光ファイバの光の伝播方向に対して垂直な面内に設定されたスロー(slow)軸の方向と、slow軸と直交するファスト(fast)軸の方向では、コアを導波される光に対する実効屈折率が異なる。すなわち、コアの近くにクラッドの屈折率より高い屈折率を有する応力付与部がおかれているために、光の電場ベクトルの振動方向がslow軸の方向に平行な光に対する実効屈折率が、光の電場ベクトルの振動方向がfast軸の方向に平行な光に対する実効屈折率よりも高くなる。このような実効屈折率の非対称性があるために、PANDA型光ファイバに入力される光の偏光面は保存されて伝播されるようになる。
すなわち、PANDA型光ファイバでは、直線偏波の光の偏波面を、slow軸(もしくはfast軸)に合わせて入力すると、偏波状態が保たれたままPANDA型光ファイバ中を伝搬し、出射端においても、偏波面が、slow軸(もしくはfast軸)に一致した直線偏波の光のみを得ることが可能である。
光分波合成器10は、方向性光結合器等を利用することができる。特にこの発明の光スイッチを構成するには、光の偏波面が一定の方向に確定されたまま光経路を切り替えることができる方向性光結合器を利用するのが望ましい。このような偏波面が保存される方向性光結合器として、偏波面保存光カプラが開発されている(例えば、フジクラ技法:第102号2002年4月参照)。この偏波面保存光カプラは、2本のPANDA型光ファイバのslow軸(もしくはfast軸)同士を精密にあわせて平行に整列させた上で、融着延伸して作製される。所望の方向性光結合器としての特性(光強度の分岐比が1対1となる等)が得られることが確認できた時点で、延伸を終了して補強のための基板に固定されて完成される。
以下の説明では、便宜のために、図1に示す光スイッチの概略的構成図において、光ファイバ等の光伝送路や光分波合成器等の光素子を伝播する光の偏光方向を次のように規定しておく。光の電場ベクトルの振動方向が紙面に対して垂直な偏光をTE (Transverse-Electric Modes)偏波と呼び、紙面に垂直な方向をTE方向という。また、光の電場ベクトルの振動方向が紙面に対して平行な偏光をTM (Transverse-Magnetic Modes)偏波と呼び、紙面に平行な方向をTM方向という。もちろん、この発明の光スイッチの利用の可能性は上記の場合に限定されるものではない。
非線形光ファイバ20は、光分波合成器10の第2ポート10-2に一端が接続され、光分波合成器10の第3ポート10-3にその他端が接続されており、波長λpの制御光を入力する光カプラ12を具えている。非線形光ファイバ20は、偏光面保存光ファイバを用いるのが望ましいが、偏光面保存という性質のほかに、非線形光学効果が大きいことも望ましい。非線形光学効果を大きくするため、非線形光ファイバのコアにGeO2を高濃度ドープして光カー効果に基づく非線形光学定数γ(W-1km-1)を増大させたり、あるいは、光ファイバの導波モード断面積であるMFDを小さくしたりして、光ファイバ内での光エネルギー密度を高くする工夫がなされている。例えば、MFDが8μmの通常の光ファイバはγ=2 km-1W-1程度であるのに対して、MFDを3.6μmとしてγ=20 km-1W-1と一桁大きくした光ファイバも市販されている。
また、ホーリーファイバ(Holey fiber)と呼ばれるクラッドに空洞を形成したファイバや、フォトニックバンドギャップファイバといった、光非線形性の高い光ファイバも開発されている。将来、偏波面保存光ファイバにも上述の工夫が取り入れられ、偏波面保存という性質を備えつつ高い光非線形性を有する光ファイバが開発されることが当然に予想される。
光カプラ12は、偏波面が保存されるタイプの光カプラを利用するのが望ましい。例えば、上述した偏波面保存光カプラの入出力端のうちの3箇所の入出力端を利用する形で設定すればよい。
(動作)
図1を参照して、第1光スイッチの動作原理を説明する。以下の説明において、信号光はTE波であるものとして説明する。もちろん信号光をTM波として光スイッチを動作させることも可能であるが、同様の説明となるので、その説明を省略する。
この発明の第1光スイッチによれば、被制御光である直線偏光の波長λs信号光が第1ポート10-1からTE波として光分波合成器10に入力されて、第1信号光と第2信号光とに分岐され、第1信号光は第2ポート10-2から出力されて非線形光ファイバ20の一端に入力され、第2信号光は第3ポート10-3から出力されて非線形光ファイバ20の他端に入力される。以後の説明において、光分波合成器10の第1ポート10-1に入力される信号光を、入力信号光ということもある。
第1信号光は、非線形光ファイバ20を伝播して非線形光ファイバ20の他端から出力されて、光分波合成器10の第3ポート10-3から光分波合成器10に入力される。一方第2信号光は、非線形光ファイバ20を伝播して非線形光ファイバ20の一端から出力されて光分波合成器10の第2ポート10-2から光分波合成器10に入力される。すなわち、第1信号光は非線形光ファイバ20で構成される光ファイバループをCW方向に伝播し、第2信号光は光ファイバループをCCW方向に伝播する。
制御光は、非線形光ファイバ20の途中に設置された光カプラ12を介して非線形光ファイバ20にTE偏波の状態で入力される。すなわち、波長λpの制御光は、光カプラ12の第1ポート12-1から光カプラ12に入力され、光カプラ12の第2ポート12-2から非線形光ファイバ20に入力される。
非線形光ファイバ20に入力される制御光によって、非線形光ファイバ20において光カー効果が発現し、非線形光ファイバ20を伝播する第1信号光に対する屈折率が変化する。すなわち、第1及び第2信号光が互いに反対向きに非線形光ファイバ20を伝播した後に、光分波合成器10で合波される際、第1信号光と第2信号光との位相差がπとなるように、制御光の強度に応じて非線形光ファイバ20の長さを調整すれば、光分波合成器10の第1ポート10-1に入力された信号光は、制御光が、非線形光ファイバ20が具える光カプラ12から非線形光ファイバ20に入力されたときに限り、光分波合成器10へ入力された第1ポート10-1と対になる第4ポート10-4にループ透過光として変調信号光が外部に出力される。
一方、制御光が入力されないときは、非線形光ファイバ20において光カー効果が発現しないので、第1及び第2信号光が互いに反対向きに非線形光ファイバ20を伝播した後に、光分波合成器10で合波される際、第1信号光と第2信号光との位相差が発生しない。そのため入力用光ファイバ14を介して、光分波合成器10の第1ポート10-1から光ファイバループに入力された信号光は、ループ反射光として第1ポート10-1に反射される。
上述した第1光スイッチの動作は、偏波クロストークが光ファイバループ内で発生しないものとして説明した。しかし偏波クロストークが光ファイバループ内で発生すると、光ファイバループを構成する非線形光ファイバの光学的特性が、信号光の波長、あるいは第1光スイッチの周囲温度によって変動を受け、その結果スイッチ動作に支障が発生する。
信号光はTE偏波光であるので、光ファイバループを構成する非線形光ファイバ内で発生する偏波クロストーク成分はTM偏波光である。したがって、このTM偏波光である偏波クロストーク成分を除去する目的で、光分波合成器10の第4ポート10-4から出力される変調光信号を、ループ外偏波分離装置18を通過させることで、変調光信号に含まれるTM偏波を除去できる構成とした。すなわち、光分波合成器10の第4ポート10-4に出力用光ファイバ16の一端を接続し、他端にループ外偏波分離装置18の入力端を接続し、ループ外偏波分離装置18の出力端から出力された変調光信号には、TM偏波成分が含まれない構成とした。
このようにして、光ファイバループに利用する光ファイバとして長いものを利用しても、偏波クロストークの影響を受けず、また信号光の波長の揺らぎや、光スイッチの周囲温度の変化によっても、スイッチ動作の安定が保たれる第1光スイッチを完成させた。以下、上述の第1光スイッチのスイッチ動作に関して、上記課題が解決されることを実験によって確かめたので、その実験結果を説明する。
図2を参照して、光ファイバループを構成する非線形光ファイバの長さに対して第1光スイッチの消光比がどのように変化するか、すなわち、消光比の光ファイバループ長依存性を調べた実験結果を説明する。ここで消光比とは、ループ反射光とループ透過光(変調光信号)との強度比である。つまり、消光比が大きいほど、光スイッチとしての特性が優れていることを意味する。
この実験では、信号光はTE偏波の連続光とし、その波長λsは1550 nmとした。そして、光ファイバループを構成する非線形光ファイバには、制御光を入力しないで、非線形光ファイバの長さに対する消光比を測定した。また、ループ外偏波分離装置18として、偏波消光比が30dBの積層型偏光子を内蔵した光ファイバ型偏光子を用いた。
図2の横軸は光ファイバループを構成する非線形光ファイバの長さ(「ループ長」ということもある。)をメートル単位で目盛ってある。また、縦軸の左側の目盛りは消光比をdB表示で目盛ってある。ループ外偏波分離装置18としての光ファイバ型偏光子を、図1に示す位置に設置しないで測定した消光比の値を白丸(○)で示し、光ファイバ型偏光子を設置して測定した消光比の値を黒丸(●)で示してある。また、光ファイバ型偏光子を設置しないで測定した消光比の値と設置して測定した消光比の値との差異(「消光比改善度」ということもある。)を、三角形(△あるいは▲)で示し、その値を右側の縦軸に目盛ってある。
光ファイバ型偏光子を設置しない場合、ループ長が10 mを超える長さとなると消光比が急激に小さくなることが分かる。特に、ループ長が300 mであるときに、ループ透過光の偏波方向を調べた結果、TM波であることが分かった。第1光スイッチに入力した入力信号光はTE波であるので、ループ透過光もTE波であるはずであるが、TM波であったという事実は、偏波クロストークが発生していることを示している。
一方、光ファイバ型偏光子を設置して測定した消光比の値は、図2に黒丸(●)で示してある。図2において、黒丸(●)の位置は、明らかに白丸(○)の位置よりも上にある。すなわち、光ファイバ型偏光子を設置することによって、消光比を大きく保つことができることを意味している。図2に三角形(△あるいは▲)で示した、消光比改善度を右側の縦軸の目盛にしたがって読み取ると、ループ長が10 m未満では2 dB程度であるのに対して、ループ長が長くなるにつれて消光比改善度は大きくなり、ループ長が300 mの時(▲で示してある。)に約19 dBとなっている。すなわち、ループ長が長くなるほど、光ファイバ型偏光子を設置することが効果的であることが分かる。
次に、ループ透過光強度の経時変化を調べた結果を、図3を参照して説明する。図3において、横軸は時間を分単位で目盛ってあり、縦軸はループ透過光強度をdBm単位で目盛ってある。図3中で、光ファイバ型偏光子を設置せずに測定したループ透過光の強度の値を白丸(○)で示し、光ファイバ型偏光子を設置して測定したループ透過光の強度の値を黒丸(●)で示してある。ループ透過光強度が、時間の経過とともに変動しないことが、光スイッチとして安定なスイッチ動作が実現する条件である。
光ファイバ型偏光子を設置しなければ、ループ透過光強度の最大は、-15 dBmであり最小は、-35 dBmであるので、時間とともにその差は約20 dB(-15 dBm-(-35 dBm)=20 dB)変動していることが読み取れる。これは、光ファイバループを構成している非線形光ファイバの周囲温度が時間とともに微小な変化をし、非線形光ファイバの信号光に対する実効屈折率がこれにともない時間とともに変化するためであると考えられる。すなわち、実効屈折率の変化にともなって、光ファイバループを互いに逆方向に伝播する、第1及び第2信号光に付随して発生するそれぞれの偏波クロストーク成分の間の相対位相が変化して、それらの間で生じる干渉の仕方に変化が生じるためであると考えられる。
一方、光ファイバ型偏光子を設置した場合には、ループ透過光強度の最大は、-37 dBmであり最小は、-40 dBmであるので、ループ透過光強度の時間とともに変動する量は、その差である3 dB(-37 dBm-(-40 dBm)=3 dB)以内に抑えられていることが、図3から読み取れる。すなわち、光ファイバ型偏光子を設置することによって、ループ透過光強度の経時変化は、設置しないときと比較して、17 dB(20 dB-3 dB=17 dB)の改善が認められる。
次に、信号光の波長λsの変動がループ透過光の強度に及ぼす効果をループ透過光の変動を観測することで調べた結果について、図4を参照して説明する。図4において、横軸は信号光の波長λsをnm単位で目盛ってあり、縦軸は消光比をdB表示で目盛ってある。
図4中で光ファイバ型偏光子を設置せずに測定した消光比の値を白丸(○)で示し、光ファイバ型偏光子を設置して測定した消光比の値を黒丸(●)で示してある。消光比が、信号光の波長λsに依存しないことが、光スイッチとして安定なスイッチ動作が実現する条件である。
光ファイバ型偏光子を設置しなければ、消光比は信号光の波長λsの変動によって、約20dB変動していることが読み取れる。一方、光ファイバ型偏光子を設置した場合には、消光比の変動は6 dB程度であることが読み取れる。更に、光ファイバ型偏光子を設置しなければ、信号光の波長λsの変動によって消光比は5 dB程度(信号光の波長λs=1574 nmにおいて5 dBとなっている。)まで減少しているのに対して、光ファイバ型偏光子を設置した場合には、最小でも30dBまでの減少にとどまっていることが読み取れる。すなわち、図4において、光ファイバ型偏光子を設置して測定した消光比の値を示す黒丸(●)の位置が、縦軸の30 dBを示す位置より上にある(図4縦軸に矢印で示してある。)。この実験の結果から、光ファイバ型偏光子を設置することによって、信号光の波長λsの変動に対しても、安定なスイッチ動作が保障されることが分かる。
次に、第1光スイッチに制御光として制御光パルス列を光カプラ12から入力して、スイッチ動作を調べる実験を行なったので、図5(A)から(D)を参照してこの実験結果を説明する。実験では、制御光パルス列をビットレートが39.67137 Gbit/s 、中心波長λpが1553 nm、消光比が10 dBであるRZ(Return to Zero)符合化された信号を用いた。また、マーク率が1/2(時間軸上で光パルスが存在する位置としない位置の出現割合が等しい。)制御光パルス列を用いて実験した。また、信号光には連続光を使用した。そして、信号光および制御光には、TE波である直線偏光を用いた。実験では、信号光の波長λsを16 pm変化させて、ループ透過光の時間波形を観測した。このループ透過光の時間波形は、制御光パルスで変調されて得られた変調光信号の波形であるので、以下の説明において、ゲート波形と呼ぶこともある。
図5(A)から(D)に、第1光スイッチを構成する非線形ループミラーによる光ゲート波形を示す。図5(A)から(D)において、横軸は時間を一目盛り5 psで目盛って表示した時間軸であり、縦軸は光強度を任意スケールで目盛って表示してある。図5(A)及び(B)は、光ファイバ型偏光子を設置していない場合のゲート波形を示しており、図5(A)は信号光の波長が1550 nmとした場合、図5(B)は信号光の波長を1550 nmから16 pm変化させた場合に観測されたゲート波形である。また、図5(C)及び(D)は、光ファイバ型偏光子を設置した場合のゲート波形を示しており、図5(C)は信号光の波長が1550 nmとした場合、図5(D)は信号光の波長を1550 nmから16 pm変化させた場合に観測されたゲート波形である。
図5(A)から(D)において、ループ透過光の光パルスの高さを、右向き及び左向きの矢印で挟んで示してある。右向き及び左向きの矢印で挟んで示された高さが高いほど、明瞭に光パルスとして認識される、強い強度を持つゲート波形であることを示しており、強いゲート号が得られるほど、光スイッチとして優れた特性を示すことが保証される。
光ファイバ型偏光子を設置していない場合には、図5(A)と(B)とを比較すると明らかに、信号光の波長を1550 nmから16 pm変化させた場合に、ゲート信号強度が低下していることが読み取れる。このようにゲート信号強度が低下する原因は、偏波クロストーク成分がループ透過光に含まれ、この偏波クロストーク成分が有意なバックグラウンド成分となって、消光比を低下させるとともに、このバックグラウンド成分が、図4を参照して説明したように、消光比が急峻な信号光の波長依存性を示すためであると考えられる。
一方、光ファイバ型偏光子を設置した場合には、図5(C)と(D)とを比較すると明らかに、信号光の波長λsを変化させても、ゲート信号の波形に有意な変化は認められない。この実験結果から、光ファイバ型偏光子を設置して構成されるこの発明の第1光スイッチは、偏波クロストークの影響を受けにくく、信号光の波長の揺らぎや、光スイッチの周囲温度の変化によっても、スイッチ動作の安定が保たれることが確かめられた。
第1光スイッチにおいて、ループ外偏波分離装置18から出力される変調信号光には、ループ外偏波分離装置18からの出力光を、光ファイバ24を介して、透過波長の中心がλsに設定されておりかつ波長λpを遮断できる特性を有する波長選択装置28を接続する必要がある。波長選択装置28としては、光バンドパスフィルタ等を利用することができる。
また、光分波合成器10の第1ポート10-1に出力されるループ反射光は、入力用光ファイバ14に図1に示す光サーキュレータ30が配置されていなければ、伝送されてきた伝送路を逆に進み、送信側に返送されることになる。一般に時間多重光通信において、受信側から送信側に向けて、送信信号の一部が逆送されることは、好ましくないので、光サーキュレータ30を利用して、光分波合成器10の第1ポート10-1に出力されるループ反射光を、信号光が伝播してきた伝送路とは異なる伝送路に向けて出力させる構成とするのが望ましい。
<第2の実施の形態>
(構造)
図6を参照して第2光スイッチの構造について説明する。第2光スイッチは、光分波合成器10と、非線形光ファイバ20と、光カプラ12と、ループ内偏波分離装置22と、出力用光ファイバ16とを具えて構成される。光分波合成器10は、信号光を入力する第1ポート10-1、非線形光ファイバ20の一端を接続する第2ポート10-2、非線形光ファイバ20の他端を接続する第3ポート10-3及び変調信号光を出力する第4ポート10-4を具えている。しかも上述の第1光スイッチの光分波合成器同様、光強度の分岐比が1対1であるという特性を具えている。
非線形光ファイバ20は、光分波合成器10の第2ポート10-2に一端が接続され、制御光を入力する光カプラ12とループ内偏波分離装置22とを具えており、光分波合成器10の第3ポート10-3に他端が接続されている。そして非線形光ファイバ20は、光ファイバループを構成している。出力用光ファイバ16は、光分波合成器10の第4ポート10-4に一端が接続されている。
第2光スイッチは、光ファイバループ内に、非線形光ファイバ内で発生した偏波クロストーク成分を除去するための、ループ内偏波分離装置22が配置されている点が、第1光スイッチと異なる。光ファイバループ内に配置されるループ内偏波分離装置は、ループ内偏波分離装置22だけに限らず、複数個設置する構成としてもよい。第2光スイッチが第1光スイッチと異なる点は、偏波分離装置の設定位置であり、その他の部分の構成は第1光スイッチと共通するので、共通する部分についての説明は繰り返さない。
(動作)
第2光スイッチも、スイッチ動作原理は第1光スイッチと共通する。また、偏波クロストーク成分を除去するという技術的思想も第1光スイッチと共通するが、偏波クロストーク成分を除去するための偏波分離装置の設定位置が異なる。
すなわち、第1光スイッチにおいては、光ファイバループ外に偏波分離装置として、ループ外偏波分離装置が配置されているのに対して、第2光スイッチにおいては、光ファイバループ内に偏波分離装置として、ループ内偏波分離装置が配置される。そして、ループ内偏波分離装置は、光ファイバループ内に、ループ内偏波分離装置を配置することが条件であり、複数個配置してもかまわない。
このように、光ファイバループ内に、ループ内偏波分離装置を配置することによって、第1光スイッチと同様に、安定なスイッチ動作を実現できる。
図7を参照して、第2光スイッチが安定なスイッチ動作が実現できる理由を説明する。図7は、非線形光ファイバ20で構成された第2光スイッチの光ファイバループを、非線形光ファイバ20の光学軸の向きを強調して単純化して描いた模式図である。すなわち、非線形光ファイバ20の光学軸の向きは、長さ方向に従って少しずつずれているのが現実であるが、ここでは説明を簡単化するために光学軸のずれは特定の箇所(点)で急峻に生じているものとして描いてある。
光ファイバループを利用する光スイッチのスイッチ動作の安定性を阻害する要因には、上述した偏波クロストークの存在の他に、光ファイバループを構成する偏波面保存光ファイバと、光分波合成器10や光カプラ12との接合部での光学軸のずれ、更には光分波合成器10や光カプラ12内部における光学軸のずれ等が考えられる。図7において、光ファイバループを構成する非線形光ファイバ20には、偏波面保存光ファイバが使われているものとする。すなわち十分に長尺の偏波面保存光ファイバを用いて光ファイバループを形成することで、偏波面保存光ファイバを伝播する第1信号光の光カー効果による第2信号光に対する位相ずれが、スイッチ動作に十分な大きさとして得られるように設計されている。
図7において、光ファイバループを構成する偏波面保存光ファイバと、光分波合成器10や光カプラ12との接合部での光学軸のずれは、非線形光ファイバの点A及びBで示す位置(以後、「光学軸のずれ部」と呼ぶこともある。)において発生するものと抽象化して描いてある。また、非線形光ファイバの点Cで示す位置にループ内偏波分離装置が挿入されているものとする。
電場ベクトルの複素振幅がE0(ジョーンズベクトル表記であるものとする。)で記述される信号光が、第2光スイッチに入力された場合の、ループ透過光について考える。まず、ループ内偏波分離装置が設置されていないものとして検討を始める。
光学軸がθずれている光学軸のずれ部における座標変換行列R(θ)は次式(2)で与えられる。
また、光ファイバループを構成する偏波面保存型非線形光ファイバ内で生じる位相ずれ及び偏波クロストークを記述するジョーンズ行列Φを次式(3)で表されるものとする。
ここで、pは偏波クロストークの大きさを与えるパラメータである。式(3)で与えられるジョーンズ行列Φは、CW方向に伝播する第1信号光に対する光ファイバループ内で生じる位相ずれ及び偏波クロストークを記述するジョーンズ行列であるので、ΦCWと表示してもよい。
またTE偏波の電場ベクトルの振動方向をx軸の方向としたとき、φ1とφ2とは、それぞれ信号光のTE偏波成分とTM偏波の信号光成分とに対応する位相ずれ量を与える。また、φ3とφ4とは、それぞれ信号光のTE偏波とTM偏波の信号光成分とに対して生じる、偏波クロストークのTE偏波成分とTM偏波成分の位相ずれ量を与える。
第1信号光及び第2信号光として、それぞれCW方向及びCCW方向に伝播する信号光成分に対して、光分波合成器10の第2及び第3ポート10-2,10-3から出力された時点では、φ1とφ2とは等しい。また、光ファイバループ内で発生する偏波クロストーク成分に関しては、その強度(pで与えられる。)は等しいが、それらの位相は互いに異なる。すなわち、φ3とφ4とはそれぞれ、第1信号光(CW方向に伝播する。)に対する値と第2信号光(CCW方向に伝播する。)に対する値とは異なる。そこで、両者を区別できるように、第1信号光に対する値をφ3及びφ4とし、第2信号に対する値をφ3'及びφ4'と表記する。
CCW方向に伝播する第2信号光に対する光ファイバループ内で生じる位相ずれ及び偏波クロストークを記述するジョーンズ行列ΦCCWを次式(4)で表されるものとする。
CW方向に伝播する第1信号光が、再び光分波合成器10で第2光信号と合波されるときの、第1信号光の複素振幅を与えるジョーンズベクトルECWは、次式(5)で与えられる。
同様に、CCW方向に伝播する第2信号光が、再び光分波合成器10で第1信号光と合波されるときの、第2信号光の複素振幅を与えるジョーンズベクトルECCWは、次式(6)で与えられる。
また、ループ透過光の複素振幅を表すジョーンズベクトルEtransは、Etrans=ECW - ECCWで与えられる。
第2光スイッチへの入力信号光がTE偏波であるとき、この入力信号光の複素振幅を与えるジョーンズベクトルE0は、E0=(1, 0)Tであるので、Etransは次式(7)で与えられる。
図7において、非線形光ファイバ20の点A及びBで示す位置の光学軸のずれ部においては、図7中でPANDA型光ファイバを想定して光学軸の方向がどのようにずれているかを模式的に示してある。すなわち、点Aを境にして、応力付与部の並んだ方向に平行な方向の光学軸であるslow軸が角度θ1だけ傾いて接合されており、点Bを境にして同様にslow軸が角度θ2だけ傾いて接合されているものとしてある。
これら光学軸の傾き、θ1あるいはθ2は、通常1°から3°程度であるので、その正弦の値(sinθ1あるいはsinθ2)は、-13dBから-18dB程度である。また、偏波クロストークの大きさを与えるpの値としては、-20dB程度であると考えられる。これらの事情を考慮すると、式(7)において最も大きな寄与成分は、sin(θ12)(e1+e2)と、p1/2cos(θ1)cos(θ2)(e4-e4')とである。前者は、光学軸のずれによる寄与成分であり、後者は偏波クロストーク成分の寄与成分である。これらは共に、入力信号光の電場ベクトルの振動方向その電場ベクトルの振動方向が直交するTM偏波成分に対応する値である。
光学軸のずれによる寄与成分sin(θ12)(e1+e2)と、偏波クロストーク成分の寄与成分p1/2cos(θ1)cos(θ2)(e4-e4')とには、それぞれ(e1+e2)及び(e4-e4')で表される干渉成分を有しており、この成分は温度や信号光の波長λsの変化に応じて変化するので、光スイッチのスイッチ動作を不安定にする要因を表示しているものと理解される。
ここで、p=-20 dBであるとすると、偏波クロストーク成分に起因して消光比は最小で14 dBまで減少することが、上述の式を用いて行なった検討結果から判明した。すなわち、式(7)で与えられる偏波クロストーク成分の寄与分を与える項、p1/2cos(θ1)cos(θ2)(e4-e4')、について、消光比に与える寄与分を評価すると次のようになる。すなわち、p1/2の部分で-10 dB、偏波クロストーク成分が同位相で重なった場合に、(e4-e4')の部分で3 dBの寄与が発生し、cos(θ1)cos(θ2)の部分からは、θ1及びθ2の値が小さいことから、0 dBとみなせるので、p1/2cos(θ1)cos(θ2)(e4-e4')全体からは、-10 dB+3 dB=7 dBの寄与となる。この値は振幅であるので、これを強度に換算すると2×7 dB=14 dBとなる。
偏波クロストークの存在によって主に消光比が影響を受けると考えられるので、上述の検討結果は、図2に示した実験結果とも符合する。すなわち、図2において、白丸(○)で示されている、偏波分離装置である光ファイバ型偏光子を図1に示す位置に設置しないで測定した、光ファイバループを構成する非線形光ファイバの長さが300 mでの消光比の値が14 dBとなっていることが読み取れる。
第1光スイッチの構成のように、光分波合成器10の第4ポート10-4から出力されるループ透過光を、第4ポート10-4の後段に積層型偏光子を内蔵した光ファイバ型偏光子等の偏光子を配置して、この偏光子を通して出力させることによって、TE偏波成分を除去すれば、式(7)で与えられるループ透過光のTE偏波成分(式(7)の1行1列成分)のみが出力される。すなわち、式(7)の1行2列成分が0となる。
TE偏波成分の振幅の大きさは、θ1あるいはθ2を1°から3°程度とし、pの値としては-20dB程度であるとすれば、-17 dBから-22 dBと見積もれる。したがって、この値の二乗で与えられる消光比は、-34 dBから-44 dB程度と見積もることができ、非常に安定なスイッチ動作が実現する光スイッチが形成できることが分かる。すなわち、TE偏波成分の振幅の大きさを与える、式(7)のp1/2sin(θ1)cos(θ2)(e3-e4')+ p1/2cos(θ1)sin(θ2)(e4-e3')の項について、その大きさを見積もると次のようになる。
まず、p1/2の部分から-10 dB、sin(θ1)及びsin(θ2)の部分から-13 dBから-18dB程度、(e3-e4')の部分から同位相で重ね合わされた場合が最大で3 dBの寄与がある。すなわち、sin(θ1)及びsin(θ2)の部分から-13 dBの寄与があるとすると、p1/2sin(θ1)cos(θ2)(e3-e4')の項からは、-10 dB+(-13 dB)+ 3 dB=-20 dB分の寄与があり、p1/2cos(θ1)sin(θ2)(e4-e3')の項からも同じく、-10 dB+(-13 dB)+ 3 dB=-20 dB分の寄与があるので、両者の合計の寄与は、-20 dB+ 3 dB=-17 dBとなる。同様に、sin(θ1)及びsin(θ2)の部分から-18 dBの寄与があるとすると、p1/2sin(θ1)cos(θ2)(e3-e4')の項からは、-10 dB+(-18 dB)+ 3 dB=-25 dB分の寄与があり、p1/2cos(θ1)sin(θ2)(e4-e3')の項からも同じく、-10 dB+(-18 dB)+ 3 dB=-25 dB分の寄与があるので、両者の合計の寄与は、-25 dB+ 3 dB=-22 dBとなる。したがって、上述のように、TE偏波成分の振幅の大きさは、θ1あるいはθ2を1°から3°程度とし、pの値としては-20dB程度であるとすれば、-17 dBから-22 dBと見積もれることになる。
次に第2光スイッチのように、ループ内偏波分離装置22が挿入されている場合を考える。入力信号光は、直線偏波光であり、TE偏波光であるとする。この場合ループ内偏波分離装置22に対するジョーンズ行列Aは、次式(8)で与えられる。
このとき、CW方向及びCCW方向に伝播する第1及び第2信号光が、再度光分波合成器10において合波されるときの、それぞれの複素振幅を与えるジョーンズベクトルは、それぞれ次式(9)及び(10)で与えられる。
したがって、ループ透過光の複素振幅を与えるジョーンズベクトルEtransは次式(11)で与えられる。
式(7)と式(11)とを比較すると、式(11)では(e1+e2)及び(e4-e4')で与えられる干渉項が消失していることが分かる。したがって、この場合には、光学軸のずれ成分の寄与分を無視すれば、TM偏波の偏波クロストーク成分同士の干渉が生ぜず、その結果出力用光ファイバの他端にループ外偏光分離装置を配置しなくとも、消光比の不規則な変動を抑制できる。
また、ループ内偏光分離装置を配置すれば、TE偏波に対応する項(ジョーンズベクトルEtransの1行1列成分)が式(7)と式(11)とを比較すると明らかなように、多項式(2項)から単項式に変わっている。すなわち、TE偏波に対応する項が与える値の大きさは、項数が半分に減少しているので、式(11)で与えられるEtransの1行1列成分の大きさは、式(7)で与えられるEtransの1行1列成分の大きさの約1/2の大きさになる。つまり式(11)で与えられるEtransの1行1列成分の大きさは、3 dB小さくなる。
したがって、第1光スイッチに、更にループ内偏光分離装置を配置した、図8に示す第3光スイッチとして構成すれば、第1光スイッチと比較して、消光比において更に3 dB分の改善が図られる。
<第3の実施の形態>
図8を参照して第3光スイッチの構成を説明する。第3光スイッチは、光分波合成器10と、光分波合成器10の第2ポート10-2に一端が接続され、制御光を入力する光カプラ12とループ内偏波分離装置22とを具え、光分波合成器10の第3ポート10-3に他端が接続されて光ファイバループを構成する非線形光ファイバ20と、光分波合成器10の第4ポート10-4に一端が接続され、他端にループ外偏波分離装置18が接続された出力用光ファイバ16とを具えている。
ループ内偏波分離装置22を具える点が第1光スイッチと異なる点であり、ループ外偏波分離装置18を具える点が第2光スイッチと異なる点である。すなわち、第3光スイッチは、第1光スイッチが具えるループ外偏波分離装置18と第2光スイッチが具えるループ内偏波分離装置22とを共に具えていることが特徴である。
そのために、第3光スイッチは、第1光スイッチが発揮するスイッチ動作の安定度に加え、第2光スイッチが発揮するスイッチ動作の安定度を兼ね備えた、より優れた光スイッチとなる。
以上説明した理論的な検討結果を踏まえて、光ファイバループ内にループ内偏波分離装置22を設置することの効果を確かめるための実験を行なった。以下において、この実験結果を説明する。
図9を参照して、光ファイバループを形成する非線形光ファイバの途中に挿入した積層型偏光子(ループ内偏波分離装置)の個数に対して、消光比の値がどのように変化するかを測定した結果を説明する。図9の横軸は挿入された積層型偏光子の個数を示し、縦軸は消光比をdB表示してある。積層型偏光子を挿入しなかった場合の消光比は14 dB、一つ挿入した場合の消光比は17.5 dB、二つ挿入した場合は19.6 dBと、積層型偏光子を一つ挿入するごとに消光比がほぼ3 dB程度増大している。この結果は、上述した理論的な検討結果とほぼ符合する。
図9には、非線形光ファイバの途中に挿入した積層型偏光子(ループ内偏波分離装置)の個数について、挿入しなかった場合、1個挿入した場合、2個挿入した場合の3通りの結果を示した。挿入する積層型偏光子を3個以上挿入しても、挿入個数に応じて消光比は増大するであろうことは、上述の実験結果と上述の式(2)から(11)による検討結果とから、容易に推察できる。したがって、第2光スイッチ及び第3光スイッチを構成するには、非線形光ファイバの途中に挿入する積層型偏光子(ループ内偏波分離装置)の個数が多いほど、偏波クロストーク成分を除去する効果を高めることができ、消光比を増大させられる。
しかし、非線形光ファイバの途中に積層型偏光子を設置する際に、積層型偏光子と光ファイバループを構成する偏波面保存光ファイバと光学軸のずれにより発生する偏波クロストーク成分が積算されて増加し、光スイッチの消光比を減少させるという効果も加わる。したがって、光スイッチを設計する際には、非線形光ファイバの途中に挿入する積層型偏光子を、上述の相反する2つの効果を考慮して、制御光の強度、光ファイバループを構成する光ファイバの長さや光カー効果に基づく非線形光学定数の大きさ等を、総合的に勘案して決定する必要がある。
次に、ループ透過光強度の時間変化について調べる実験を行なった。図10を参照して、この実験結果を説明する。図10の横軸は時間を分単位で目盛って表示してあり、縦軸はループ透過光強度をdBm単位で目盛って表示してある。ループ外偏波分離装置もループ内偏波分離装置も両方とも設定されていない通常の非線形ループミラー型光スイッチに対する測定結果を白丸(○)で、第1光スイッチに対する測定結果を黒丸(●)で、第2光スイッチに対する測定結果を白三角(△)で、第3光スイッチに対する測定結果を黒三角(▲)でそれぞれ示した。
通常の非線形ループミラー型光スイッチに対する消光比は、最小で-35 dBm、最大で-15 dBmでありその差は20 dBとなっており、時間変動幅は20 dBである。これに対して第2光スイッチに対する消光比は、最小で-27 dBm、最大で-22 dBmでありその差は5 dBとなっており、時間変動幅は5 dBである。すなわち、第2光スイッチは、通常の非線形ループミラー型光スイッチに比べて、20 dBから5 dB と、15 dBだけ安定度が向上していることが読み取れる。
また、第1光スイッチに対する消光比は、最小で-40 dBm、最大で-37 dBmでありその差は3 dBとなっており、時間変動幅は3 dBである。これに対して第3光スイッチに対する消光比は、最小で-38 dBm、最大で-37 dBmでありその差は1 dBとなっており、時間変動幅は1 dBである。ループ外偏波分離装置に加えて更にループ内偏波分離装置を加えて設置することで、時間変動幅は更に小さくなり、時間的に安定な動作が保証された光スイッチが実現することが分かる。
以上説明した第1乃至第3の実施の形態では、ループ外偏光分離装置18及びループ内偏光分離装置22として、偏波消光比が30dBの積層型偏光子を内蔵した光ファイバ型偏光子を用いたがこれに限定されるものではない。また、光バンドパスフィルタを、波長選択装置28として利用したがこれに限定されるものではない。また、この発明の光スイッチの構成要素である、光分波合成器10、光カプラ12、非線形光ファイバ20等として具体的に何を選択して利用するかについても、設計的事項に属する。したがって、ここで開示した以外の光学素子を利用したとしても、そのことをもってこの発明と異なる構成の光スイッチを実現するものではない。
第1の実施の形態の光スイッチの概略的構成図である。 消光比の光ファイバループ長依存性を示す図である。 ループ透過光強度の経時変化を示す図である。 消光比の波長依存性を示す図である。 非線形ループミラーによる光ゲート波形を示す図である。 第2の実施の形態の光スイッチの概略的構成図である。 第2の実施の形態の光スイッチの動作原理の説明に供する図である。 第3の実施の形態の光スイッチの概略的構成図である。 消光比の光ファイバループ内への偏光子の挿入個数依存性を示す図である。 ループ透過光強度の経時変化を示す図である。
符号の説明
10:光分波合成器
12:光カプラ
14:入力用光ファイバ
16:出力用光ファイバ
18:ループ外偏波分離装置
20:非線形光ファイバ
22:ループ内偏波分離装置
24:光ファイバ
28:波長選択装置
30:光サーキュレータ

Claims (8)

  1. 信号光を入力する第1ポート、非線形光ファイバの一端を接続する第2ポート、該非線形光ファイバの他端を接続する第3ポート及び変調信号光を出力する第4ポートを具える、光強度の分岐比が1対1である光分波合成器と、
    該光分波合成器の第2ポートに一端が接続され、制御光を入力する光カプラを具え、前記光分波合成器の第3ポートに他端が接続されて光ファイバループを構成する前記非線形光ファイバと、
    前記光分波合成器の第4ポートに一端が接続され、他端にループ外偏波分離装置が接続された出力用光ファイバと
    を具えることを特徴とする光スイッチ。
  2. 信号光を入力する第1ポート、非線形光ファイバの一端を接続する第2ポート、該非線形光ファイバの他端を接続する第3ポート及び変調信号光を出力する第4ポートを具える、光強度の分岐比が1対1である光分波合成器と、
    該光分波合成器の第2ポートに一端が接続され、制御光を入力する光カプラとループ内偏波分離装置とを具え、前記光分波合成器の第3ポートに他端が接続されて光ファイバループを構成する前記非線形光ファイバと、
    前記光分波合成器の第4ポートに一端が接続された出力用光ファイバと
    を具えることを特徴とする光スイッチ。
  3. 信号光を入力する第1ポート、非線形光ファイバの一端を接続する第2ポート、該非線形光ファイバの他端を接続する第3ポート及び変調信号光を出力する第4ポートを具える、光強度の分岐比が1対1である光分波合成器と、
    該光分波合成器の第2ポートに一端が接続され、制御光を入力する光カプラとループ内偏波分離装置とを具え、前記光分波合成器の第3ポートに他端が接続されて光ファイバループを構成する前記非線形光ファイバと、
    前記光分波合成器の第4ポートに一端が接続され、他端にループ外偏波分離装置が接続された出力用光ファイバと
    を具えることを特徴とする光スイッチ。
  4. 請求項1に記載の光スイッチであって、前記ループ外偏波分離装置の出力端に光ファイバを介して波長選択装置が接続されていることを特徴とする光スイッチ。
  5. 請求項2に記載の光スイッチであって、光分波合成器の第4ポートに光ファイバを介して波長選択装置が接続されていることを特徴とする光スイッチ。
  6. 請求項3に記載の光スイッチであって、前記ループ外偏波分離装置の出力端に光ファイバを介して波長選択装置が接続されていることを特徴とする光スイッチ。
  7. 請求項1乃至6項に記載の光スイッチであって、前記非線形光ファイバが偏波面保存光ファイバであることを特徴とする光スイッチ。
  8. 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光スイッチであって、前記光分波合成器の第1ポートに入力用光ファイバを介して光サーキュレータが接続されていることを特徴とする光スイッチ。
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