JP2006022368A - 表面処理装置および表面処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 密着性の高い被膜を生成するべく、被処理面の変質や変形を防止しつつ当該被処理面を洗浄する。
【解決手段】 この表面処理装置10は、真空槽12を有している。この真空槽12にガス管58を介してアルゴンガスが導入され、カソード40にカソード電力Ecが供給されると、カソード40から熱電子が放出される。この熱電子は、アノード電圧Vaが印加されたアノード42に向かって加速され、アルゴンガス粒子に衝突する。これによって、プラズマが発生し、このプラズマ中のアルゴンイオンが被処理物36の表面に照射され、当該表面が洗浄される。ここで、イオン照射により被処理物36に流れる電流が5.6mA/cm以下となるように、アルゴンガスイオンの圧力、カソード電力Ec、アノード電圧Vaおよびカソードバイアス電圧Vcbを設定すれば、変質および変形を防止できる。
【選択図】 図1

Description

この発明は、表面処理装置および表面処理方法に関し、特に例えば真空槽内でプラズマを発生させると共に当該プラズマ中のイオンを被処理物の被処理面に照射することによって当該被処理面を洗浄する、つまり放電洗浄(イオンボンバード)処理を行う、表面処理装置および表面処理方法に関する。
放電洗浄処理は、成膜処理の前処理として必要不可欠である。この放電洗浄処理を行う装置、厳密には放電洗浄処理機能を備えた成膜装置として、従来、例えば特許文献1に開示されたものがある。この従来技術によれば、真空槽内にカソードおよびアノードが互いに距離を置いて対向するように配置されている。そして、これらカソードおよびアノードを間に挟むように、1対の磁極が配置されている。さらに、カソード、アノードおよび1対の磁極の周りに、厳密には真空槽内の略中央に設けられた蒸発源の周りに、被処理物としての基板が、複数配置されている。これらの基板は、個別の基板ホルダを介して円盤状プレートの外周部分に取り付けられている。そして、円盤状プレートが回転すると、各基板は、蒸発源の周りを回転し、言わば公転する。また、この公転と共に、各基板は、自身を中心として回転し、言わば自転する。そしてさらに、真空槽内には、材料ガスとしての例えばアルゴン(Ar)ガスが導入される。
かかる構成において、真空槽内が排気された後、カソードに対し交流電力が供給されると、当該カソードが加熱されて、熱電子を放出する。そして、アノードに対し接地電位を基準とする直流電力が供給されると、熱電子は当該アノード側に引き寄せられ、加速される。この加速過程において、熱電子はアルゴンガス粒子と衝突する。これによって、アルゴンガス粒子が電離して、プラズマが発生する。また、カソードに供給される交流電力には、接地電位を基準とする直流電力が重畳されている。これによって、熱電子の移動速度が調整され、プラズマ(放電)が安定する。このプラズマは、各磁極から発生する磁界によって、当該各磁極間の空間に閉じ込められる。これにより、各磁極間の空間にプラズマ領域が形成され、このプラズマ領域を各基板が順次通過することになる。ここで、各基板に対し接地電位との間で所定のバイアス電力、例えば高周波電力が印加されると、プラズマ中のアルゴンイオンが、プラズマ領域内にある基板の表面に照射される。このイオン照射(衝突)による衝撃によって、基板の表面に付着している不純物が除去され、つまり放電洗浄処理が実現される。
なお、特許文献1においては、その第0038段落に、当該放電洗浄処理の手順が開示されている。即ち、同段落には、真空槽内の圧力を6.7×10−2Paとした状態で当該真空槽内にアルゴンガスを導入すること、アノードに供給する直流電力の値を1200Wとすること、カソードに供給する交流電力の値を1200Wとすると共に、当該交流電力に重畳させる直流電力(フィラメントバイアス)の値を1kWとすること、および基板に供給する高周波電力の値を1800Wとすることが、開示されている。そして、かかる条件による放電洗浄処理(高真空ボンバード)を60分間にわたって行うことが、開示されている。
また、同段落には、チタン(Ti)イオンを用いて基板の表面を洗浄するという、いわゆるメタルボンバード(Tiボンバード)処理についても、開示されている。即ち、上述の蒸発源に収容されているチタンを加熱蒸発させ、真空槽内の圧力を1〜4×10−2Paとした状態でアルゴンガスを導入し、アノードに供給する直流電力の値を4.2kWとし、カソードに供給する交流電力の値を1200Wとすると共に、当該交流電力に重畳させる直流電力の値を1kWとし、さらに基板に供給する高周波電力の値を300Wとし、この条件によるメタルボンバード処理を10分間にわたって行うことが、開示されている。かかるメタルボンバード処理によれば、上述のアルゴンイオンを用いる放電洗浄処理に比べて高いエネルギでイオンを照射することができるので、より強い洗浄力が得られる。
特開2002−105624号公報
しかし、上述の従来技術においては、基板の表面にイオンが照射されるとき、このイオン照射による電流(イオン電流)を相殺するべく、当該基板の表面から電子が放出される。そして、この電子の放出によって、基板内に電流が流れる。この電流は、特に基板が先鋭な部分を有する場合にはその部分に集中して流れる。そして、この電流が集中する部分においてジュール熱が発生し、その部分が750℃以上に加熱されることがある。ここで、例えば基板が高速度鋼等の鉄系材料を母材とする場合には、このように750℃以上に加熱されると、その加熱された部分において炭素が抜け出るといういわゆる脱炭現象が生じ、当該部分が脆弱化する。従って、かかる脆弱化した基板の表面に被膜を形成しても、十分な機械的強度を得ることができず、換言すれば密着性の高い被膜を形成することができない、という問題がある。
また、従来技術では、基板の表面にイオンを高エネルギで照射する(衝突させる)ことによって、当該基板の表面をエッチングし、つまり削り取っている。従って、基板の表面は、当然に変形し、例えば粗くなる。このいわゆる表面粗度の悪化は、メタルボンバード処理においてより顕著となる。そして、この表面粗度の悪化もまた、被膜の密着性を低下させる1つの原因となる。
そこで、この発明は、密着性の高い被膜を生成するべく、被処理面の変質や変形を防止しつつ当該被処理面を洗浄することができる表面処理装置および表面処理方法を提供することを、目的とする。
かかる目的を達成するために、第1の発明は、真空槽内でプラズマを発生させると共に当該プラズマ中のイオンを被処理物の被処理面に照射することによって当該被処理面を洗浄する表面処理装置において、真空槽内を排気する排気手段と、真空槽内に放電用ガスを導入するガス導入手段と、真空槽内において互いに距離を置いて対向するように設けられた第1電極および第2電極と、第1電極に対し交流の第1電力を供給することによって当該第1電極から熱電子を放出させる第1電力供給手段と、第2電極に対し共通電位、例えば接地電位を基準とする直流の第2電力を供給することによって熱電子を加速させる第2電力供給手段と、第1電力に対し接地電位を基準とする直流の第1バイアス電力を重畳することによって熱電子の移動速度を制御する第1バイアス供給手段と、熱電子が放電用ガスの粒子に衝突することによって発生するプラズマを所定領域に閉じ込めるための磁界を発生させる磁界発生手段と、プラズマの中心部分から所定の距離を置いた所定位置において被処理物の被処理面が当該プラズマの中心部分に対向するように被処理物を支持する支持手段と、を具備する。そして、被処理物が接地電位に接続されている状態にあるときに、その被処理面にイオンが照射されることによって当該被処理物に流れる電流が5.6mA/cm以下となるように、第1電力、第2電力および第1バイアス電力が設定された、ものである。
即ち、この第1の発明では、排気手段によって真空槽内が排気される。そして、排気後の真空槽内に、ガス導入手段によって放電用ガスが導入される。この状態で、第1電力供給手段によって第1電極に対し交流の第1電力が供給されると、当該第1電極から熱電子が放出される。そして、第2電力供給手段によって第2電極に対し接地電位を基準とする直流の第2電力が供給されると、熱電子は、当該第2電極に向かって移動し、加速される。この加速過程において、熱電子は放電用ガスの粒子に衝突する。これによって、放電用ガス粒子が電離して、プラズマが発生する。また、第1電極に供給される第1電力には、接地電位を基準とする直流の第1バイアス電力が重畳される。これによって、熱電子の移動速度が制御され、プラズマが安定する。このプラズマは、磁界発生手段から発生される磁界によって、所定領域に閉じ込められる。そして、このプラズマの中心部分から所定の距離を置いた所定位置に、被処理物が配置される。この被処理物は、プラズマの中心部分に被処理面を対向させた状態で、支持手段によって支持される。ここで、被処理物が接地電位に接続されるとする。すると、この被処理物の被処理面に、プラズマ中のイオンが照射され、このイオン照射による衝撃によって被処理面が洗浄される。
この放電洗浄処理においては、被処理物の被処理面に入射されるイオン電流を打ち消すべく、当該被処理面から電子が放出される。そして、この電子の放出によって、被処理物内に電流が流れる。この電流は、特に被処理物が先鋭な部分を有する場合にはその部分に集中して流れる。そして、この電流が集中する部分においてジュール熱が発生し、当該部分が加熱される。この加熱の度合が大きいと、上述した脱炭現象等によって当該被処理物が変質することがある。このたび、被処理物が接地電位に接続されている状態にあるときに、イオン照射によって当該被処理物に流れる電流が5.6mA/cm以下であれば、言い換えると被処理物に流れる電流が5.6mA/cm以下となるようなイオン照射であれば、当該イオン照射による被処理物の異常加熱が抑制され、ひいては被処理物の変質を防止できることが判明した。そこで、イオン照射によって被処理物に流れる電流が5.6mA/cm以下となるように、当該電流に影響するパラメータ、つまり真空槽内における放電用ガスの圧力、第1電力、第2電力および第1バイアス電圧を設定する。このようにすれば、被処理物の変質を防止できる。また、このように被処理物が変質しない程度のイオン照射であれば、当該被処理物の被処理面が上述の従来技術ほどエッチングされることはない、つまり変形しないことも併せて確認された。
具体的には、放電用ガスの圧力を1×10−2Pa〜1×10−1Paとする。
そして、第1電力の電力値を1kW〜2kWとする。
さらに、第2電力の電圧値を20V〜40Vとする。
また、第1バイアス電力の電圧値を−60V〜−10Vとする。
このようにして第1電力、第2電力および第1バイアス電力を設定した後、被処理物に対し、接地電位を基準とする直流成分が重畳された交流の第2バイアス電力を供給してもよい。つまり、かかる第2バイアス電力を供給するための第2バイアス供給手段を設けてもよい。このようにすれば、被処理物の被処理面に対するイオンの照射作用が促進される。ただし、この第2バイアス電力の供給によって被処理物に流れる電流が増大し、ひいては当該被処理物が異常加熱するようなことがあってはならない。そこで、第2バイアス電力の電力値に所定の制限を設け、厳密にはこれに重畳される直流成分の電圧値を制限する。この直流成分の電圧値は−60V〜−10Vであるのが、望ましい。
なお、支持手段は、複数であってもよい。
この場合、各支持手段によって支持された各被処理物が、上述した所定位置においてそれぞれの被処理面をプラズマの中心部分に対向させる配置となるように、当該各支持手段を順次搬送させる搬送手段を設けてもよい。
また、それぞれの支持手段を自転させる自転手段をさらに設けてもよい。
そしてさらに、洗浄後の被処理物の被処理面に、所定の被膜を生成する成膜手段を設けてもよい。このようにすれば、従来よりも密着性の高い被膜を生成することができる。
第2の発明は、真空槽内でプラズマを発生させると共に当該プラズマ中のイオンを被処理物の被処理面に照射することによって当該被処理面を洗浄する表面処理方法において、真空槽内を排気する排気過程と、真空槽内に放電用ガスを導入するガス導入過程と、真空槽内に設けられた第1電極に対し交流の第1電力を供給することによって当該第1電極から熱電子を放出させる第1電力供給過程と、真空槽内において第1電極と距離を置いて対向するように設けられた第2電極に対し接地電位を基準とする直流の第2電力を供給することによって熱電子を加速させる第2電力供給過程と、第1電力に対し接地電位を基準とする直流の第1バイアス電力を重畳することによって熱電子の移動速度を制御する第1バイアス供給過程と、熱電子が放電用ガスの粒子に衝突することによって発生するプラズマを所定領域に閉じ込めるための磁界を発生させる磁界発生過程と、プラズマの中心部分から所定の距離を置いた所定位置において被処理面が当該プラズマの中心部分に対向するように被処理物を支持する支持過程と、を具備する。そして、被処理物が接地電位に接続されている状態にあるときにその被処理面にイオンが照射されることによって当該被処理物に流れる電流が5.6mA/cm以下となるように、真空槽内における放電用ガスの圧力、第1電力、第2電力および第1バイアス電力が設定された、ものである。
即ち、第2の発明は、第1の発明に対応する方法発明であり、よって第1の発明と同様の作用を奏する。
この発明によれば、イオン照射によって被処理物に流れる電流が5.6mA/cm以下に抑えられることで、当該被処理物の異常加熱が抑制され、ひいては被処理面の変質が防止される。また、イオン照射によって被処理面が変形することもない。つまり、被処理面の変質および変形を防止しつつ当該被処理物の被処理面を洗浄することができる。これは、密着性の高い被膜を生成するのに、極めて有効である。
この発明の一実施形態について、図1〜図11を参照して説明する。
本実施形態の表面処理装置10は、放電洗浄処理機能および成膜処理機能を備えるものであり、図1〜図3に示すように、概略円筒形の真空槽12を有している。なお、図1は、表面処理装置10の内部を正面から見た図であり、図2は、図1のA−A矢視断面図、図3は、図1のB−B矢視断面図である。
真空槽12は、円筒形の両端に対応する部分を水平方向に向けた状態で配置されており、当該両端に対応する部分は、概略円盤状の前方壁板14およびこれと略同形状の後方壁板16によって閉鎖されている。これらの前方壁板14および後方壁板16を含む真空槽12は、例えばステンレス鋼(SUS304)によって形成されており、それ自体は、共通電位としての接地電位(GND)に接続されている。そして、この真空槽12の内部は、排気手段としての図示しない真空ポンプによって排気される。なお、真空槽12の直径Cは、例えば1140mmであり、奥行Dは、例えば885mmである。
そして、真空槽12内の略中央には、蒸発源18が配置されている。この蒸発源18は、蒸発材料、例えばチタン材料20が収容される坩堝22と、このチタン材料20を加熱するための材料加熱手段、例えば電子銃24とを、備えている。さらに、蒸発源18の下方近傍には、槽内加熱手段としてのヒータ26が配置されている。なお、電子銃24には、真空槽12の外部に設けられた図示しない電子銃用電源装置から、電圧(加速電圧)が6kV〜10kV、電流が最大1Aの直流電力が、供給される。そして、ヒータ26には、真空槽12の外部に設けられた図示しないヒータ用電源装置から、電圧が約35V、電流が最大700Aの交流電力が、供給される。
また、真空槽12内には、自公転機構28が設けられている。具体的には、自公転機構28は、真空槽12の直径C(厳密には内径)よりも少し、例えば100mmほど径の小さい円盤状の筐体を有しており、この筐体の中央を真空槽12(円筒形)の中心軸に一致させた状態で、後方壁板16の内側面に近接して設けられている。そして、この自公転機構28の中央には、回転軸30が設けられており、この回転軸30は、後方壁板16を貫通して、真空槽12の外部に設けられたモータ32の図示しないシャフトに結合されている。さらに、自公転機構28の前方側周縁近傍には、当該周縁に沿って等間隔に複数個、例えば72個の支持手段としてのホルダ34,34,…が設けられている。そして、これらのホルダ34,34,…のそれぞれに、被処理物36が取り付けられる。なお、ここでは、被処理物36として、例えば高速度鋼(SKH51)を母材する直径が約10mmのドリル(刃)が用いられる。そして、この被処理物36は、真空槽12の中心軸に沿う方向に延伸するように取り付けられる。これらのホルダ34,34,…の並びによって描かれる円の直径(真空槽12の中心軸を間に挟んで互いに対向する2つのホルダ34および34間の距離)Fは、例えば920mmとされている。そして、ホルダ34を含む被処理物36の突出寸法Gは、例えば300mmとされている。
かかる自公転機構28によれば、モータ32が駆動されて、回転軸30が回転すると、各ホルダ34,34,…に取り付けられた被処理物36,36,…は、真空槽12の中心軸を中心として例えば図1に矢印38で示す方向(時計方向)に回転する。言い換えれば、各被処理物36,36,…は、蒸発源14の周りを言わば公転する。これと同時に、各被処理物36,36,…のそれぞれは、自身を中心として例えば時計方向に回転し、言わば自転する。なお、自転速度は、公転速度よりも速く、例えば公転速度の10倍とされている。
さらに、真空槽12内には、第1電極としてのカソード40と、第2電極としてのアノード42とが、設けられている。このうち、カソード40は、例えば直径が1mm、長さ寸法が200mm〜400mmほどの概略直線状のタングステン製フィラメント(厳密には長さ寸法が数十mmほどの直線状フィラメントを複数本直列に接続したもの)を備えている。そして、このカソード40は、蒸発源18とその真上にある被処理物32との間の略中間で、かつ真空槽12を正面から見て(図1において)当該真空槽12の中央よりも少し右寄りの位置に、当該真空槽12の中心軸に沿う方向に延伸するように、配置されている。
一方、アノード42は、例えばモリブデン鋼またはタングステン鋼製であり、長さ寸法が200mm〜400mm程度の四角柱状に形成されたものである。そして、このアノード42は、真空槽12の中心軸を通る垂直面を挟んで、カソード40と略正反対側の位置に、当該真空槽12の中心軸に沿う方向に延伸するように、配置されている。なお、これらカソード40とアノード42との間の距離は、例えば200mm〜300mm程度とされている。
そして、カソード40には、真空槽12の外部に設けられた第1電力供給手段としてのカソード加熱用電源装置44から、第1電力としての交流のカソード電力Ecが供給される。また、交流電源装置44の接地用端子には、第1バイアス供給手段としてのカソードバイアス用電源装置46によって、第1バイアス電力としての直流のカソードバイアス電圧Vcbが印加される。つまり、カソード電力Ecに、当該カソードバイアス電圧Vcbが重畳される。なお、カソードバイアス電圧Vcbは、接地電位を基準とする負電圧とされている。
一方、アノード42には、真空槽12の外部に設けられた第2電力供給手段としてのアノード用電源装置48から、第2電力としての直流のアノード電圧Vaが印加される。なお、アノード電圧Vaは、接地電位を基準とする正電圧である。
さらに、真空槽内12には、カソード40およびアノード42を間に挟んで、磁界発生手段としての1対の磁界発生器50および52が設けられている。具体的には、各磁界発生器50および52のそれぞれは、細長い直方体状の筐体を有している。そして、これらの磁界発生器50よび52は、カソード40およびアノード42を間に挟んだ状態でそれぞれの一側面を互いに対向させ、厳密には当該一側面を斜め上方に向け、かつカソード40およびアノード42と平行を成して延伸するように(つまり真空槽12の中心軸に沿う方向に延伸するように)、配置されている。なお、各磁界発生器50および52の長さ寸法は、例えば200mm〜400mm程度とされている。また、各磁界発生器50および52間の距離は、例えば250mm〜350mm程度とされている。
そして、各磁界発生器50および52には、それぞれ図示しない永久磁石が内蔵されている。詳しくは、各磁界発生器50および52の互いに対向する一側面(言わば内側面)が、互いに異なる磁極となるように、当該永久磁石が内蔵されている。なお、ここでは、カソード40側に配置された磁界発生器50の内側面がS極とされ、アノード42側に配置された磁界発生器52の内側面がN極とされている。これによって、これらの磁界発生器50および52で挟まれた空間に磁界が発生する。
そしてさらに、上述の磁界の発生領域を拡張するために、各磁界発生器50および52にはヨーク54および56が取り付けられている。これらのヨーク54および56は、平板状のものであり、その幅寸法は、各磁界発生器50および52(筐体)の幅寸法よりも大きく、例えばその1.5倍〜2倍ほどであり、長さ寸法は、当該各磁界発生器50および52と略同等とされている。そして、各磁界発生器50および52の各内側面とは反対側の面(言わば外側面)を覆うように、かつ当該外側面の上方縁から上方に突出する(はみ出す)ように、当該各ヨーク54および56が取り付けられている。かかるヨーク54および56が取り付けられることで、各磁界発生器50および52による磁界の発生領域が拡張される。
なお、上述したように各磁界発生器50および52は、互いに対向する一側面を斜め上方に向けた状態で配置されているが、これもまた、磁界の発生領域を拡張させるためであり、詳しくは一定の磁束密度を維持しつつ被処理物36,36,…の近傍において広い磁界を形成するためである。この各磁界発生器50および52の傾斜角度は、当該各磁界発生器50および52間の距離に応じて変わり、例えば5度〜45度とされ、ここでは約30度とされている。そして、言うまでもなく、これら磁界発生器50および52の傾斜に応じて、各ヨーク54および56も傾けられている。また、アノード42についても同様に、当該アノード42側に配置された磁界発生器52と同じ方向に傾けられている。本実施形態では、各磁界発生器50および52間の中央において、例えば6mT〜10mTの磁束密度が得られる。また、各磁界発生器50および52の上縁から最上位にある被処理物36(公転軌道の最上位)までの高さH(後述する図4参照)は、例えば105mm±60mmとされている。
そして、真空槽12内には、ガス導入手段としてのガス管58を介して、放電用ガスとしてのアルゴンガスが導入される。また、真空槽12内には、材料ガスとしての窒素(N)ガスも、当該ガス管58を介して導入される。なお、このガス管58は、後述する放電洗浄処理過程および成膜過程においてアルゴンガスまたは窒素ガスを効率よく電離させるために、上述の磁界の近辺、例えばアノード42の少し下方に、当該アルゴンガスまたは窒素ガスを噴出させるように配置されている。また、真空槽12の外部には、ガス管58内を流れるアルゴンガスおよび窒素ガスの流量を調整するための流量調整手段としてのマスフローコントローラ60が設けられている。
さらに、各被処理物36,36,…には、ホルダ34,34,…、自公転機構28およびマッチングボックス62を介して、第2バイアス供給手段としての高周波電源装置64から、周波数が13.56MHzの高周波電力Ebが供給される。なお、マッチングボックス62は、高周波電源装置62と各被処理物36,36,…を含む負荷側とのインピーダンスを整合させるためのものである。
このように構成された表面処理装置10では、次の手順により放電洗浄処理が行われる。
即ち、まず、真空ポンプによって真空槽12内が排気され、高真空状態とされる。そして、ヒータ26によって被処理物36,36,…が250℃〜500℃に加熱された後、ガス管58を介して当該真空槽12内にアルゴンガスが導入される。この状態で、カソード40に対しカソード加熱用電源装置44からカソード電力Ecが供給されると、当該カソード40は加熱されて、熱電子を放出する。そして、アノード42に対しアノード用電源装置48からアノード電圧Vaが印加されると、熱電子は、当該アノード42に向かって加速される。この加速過程において、熱電子は、アルゴンガスの粒子に衝突する。これによって、アルゴンガス粒子が電離して、プラズマが発生する。ここで、上述したように、カソード40に供給されるカソード電力Ecには、カソードバイアス電圧Vcbが重畳される。従って、熱電子は、このカソードバイアス電圧Vcbと上述のアノード電圧Vaとの総和に応じて加速されることになる。このように熱電子を加速させるエネルギ源として、アノード電圧Vaの他に、カソードバイアス電圧Vcbをも加えることによって、安定したプラズマ(放電)を得ることができる。
また、上述したように、カソード40およびアノード42が配置されている空間には、磁界が発生している、従って、これらカソード40およびアノード42間に発生したプラズマは、当該磁界内に閉じ込められ、これによって図1〜図3に破線模様66で示すような断面が概略扇状のプラズマ領域が形成される。そして、モータ32が駆動されると、各被処理物36,36,…は、当該プラズマ領域66に順次搬送される。
ここで、高周波電源装置63から各被処理物36,36,…に高周波電力Ebが供給されると、プラズマ領域66内においては、プラズマ中のアルゴンイオンが当該各被処理物36,36,…の表面に照射される。そして、このイオン照射の衝撃によって、各被処理物36,36,…の表面が洗浄される。
なお、各被処理物36,36,…の公転速度は、例えば1rpmとされる。また、プラズマ領域66の広がり角度(磁界発生器50および52の開き角)は、例えば60度とされている。従って、各被処理物36,36,…のそれぞれは、1分間につき10秒間だけ、いわゆる間欠的に放電洗浄処理を施される。また、各被処理物36,36,…は、公転速度の10倍、つまり10rpmで自転しているので、それぞれの表面全体に対して一様に放電洗浄処理が施される。
そして、この放電洗浄処理の後に、続いて成膜処理が実行される。
即ち、アルゴンガスに加えて、窒素ガスが、真空槽12内に導入される。この窒素ガスは、プラズマ領域66においてイオン化される。そして、電子銃24によって、坩堝22内のチタン材料20が加熱される。加熱されたチタン材料20は蒸発し、この蒸発したチタンもまた、プラズマ領域66においてイオン化される。そして、これらの窒素イオンおよびチタンイオンは、プラズマ領域66内にある被処理物36,36,…の表面に照射される。これによって当該被処理物36,36,…の表面に窒素およびチタンの化合物、つまり窒化チタン(TiN)が堆積し、被膜としての窒化チタン膜が形成される。なお、この成膜処理もまた、上述の放電洗浄処理と同様に、それぞれの被処理物36に対して1分間につき10秒間ずつ間欠的に施される。
ところで、それぞれの被処理物36の表面にイオンが照射されるとき、このイオン照射によるイオン電流を相殺するべく、当該被処理物36の表面から電子が放出される。そして、この電子の放出によって、被処理物36内に電流が流れる。この電流は、特に先鋭な部分、例えば刃先に、集中して流れ、これによってジュール熱が発生する。このジュール熱の発熱量が大きいと、上述した脱炭現象等によって被処理物36の表面、特に刃先部分が変質してしまうことがある。
そこで、かかる被処理物36の変質を防止するべく、本実施形態では、イオン照射によって被処理物36に流れる電流を5.6mA/cm以下に抑える。具体的には、当該電流に影響するパラメータ、つまり真空槽12内におけるアルゴンガスの圧力P、カソード電力Ec、アノード電圧Vaおよびカソードバイアス電圧Vcbのそれぞれを、次のように設定する。
即ち、アルゴンガスの圧力Pを、1×10−2Pa〜1×10−1Paとする。そして、カソード電力Ecを、1kW〜2kWとする。なお、かかるカソード電力Ecの供給によって、カソード(フィラメント)40は、約1700℃〜約2500℃に加熱される。そして、アノード電圧Vaを、20V〜40Vとし、好ましくは20Vとする。さらに、カソードバイアス電圧Vcbを、−60V〜−10Vとし、厳密には、アノード電圧Vaが20Vとされたとき、当該カソードバイアス電圧Vcbを−60V〜−10Vとする。そして、アノード電圧Vaが例えば30Vとされたときは、カソードバイアス電圧Vcbを−50〜−10Vとし、アノード電圧Vaが例えば40Vとされたときは、カソードバイアス電圧Vcbを−30V〜−10Vとする。なお、好ましくは、当該カソードバイアス電圧Vcbを−10Vとする。
このようにすれば、被処理物36の異常加熱が抑えられ、当該被処理物36の変質を防止できることが、実験によって判明した。また、かかる被処理物36が変質しない程度のイオン照射であれば、その表面が上述した従来技術ほどエッチングされない、つまり変形しないことも、併せて確認された。
ここで、図4に示す構成によって、被処理物36に流れる電流を測定してみた。即ち、モータ32を停止状態とし、つまり各ホルダ34,34,…を静止状態とする。そして、プラズマ領域66に位置するホルダ34,34,…のうち、当該プラズマ領域66の中央に近いものに、計6本の被処理物(ドリル)36,36,…を、1つ置きに取り付ける。さらに、これら6本の被処理物36,36,…を、それぞれに共通の電流計70を介して接地電位に接続する。
この構成において、真空槽12内のアルゴンガスの圧力Pを、6.67×10−2Paとし、カソード電力Ecを、1.1kWとする。そして、アノード電圧Vaを、0V〜60Vの範囲で10V置きに変化させると共に、カソードバイアス電圧Vcbを、0V〜−60Vの範囲で−10V置きに変化させる。そして、このとき各被処理物36,36,…に流れる電流の合計値Ibを電流計70で測定し、その測定値Ibを単位面積当たりの電流値、つまり電流密度に換算した。その結果を、図5に示す。
この図5に示すように、アノード電圧Vaが20V以上の場合は、電流密度(電流値Ib)は正の値となる。これは、イオン照射によるイオン電流を打ち消すべく各被処理物36,36,…の表面から電子が放出されていることを表す。そして、この場合、カソードバイアス電圧Vcbが大きいほど、当該電流密度は増大する。つまり、照射されるイオン量が増える。一方、アノード電圧Vaが10V以下(厳密には十数V以下)の場合には、電流密度は負の値となる。これは、イオンではなく、電子が、各被処理物36,36,…に照射されていることを表す。この場合、洗浄効果は得られない。また、カソードバイアス電圧Vcbが大きいほど、電流密度は負側に増大し、つまり照射される電子の量が増える。なお、アノード電圧Vaが0Vで、かつカソードバイアス電圧Vcbが0Vのときは、放電しない(プラズマが発生しない)ので、電流密度は0mA/cmとなる。また、アノード電圧Vaが10V〜30Vで、かつカソードバイアス電圧Vcbが0Vのときも、電流密度は0mA/cmとなるが、これは、被処理物36,36,…に照射されるイオンおよび電子の量が互いに等価であることを表す。
この図5によれば、例えばアノード電圧Vaが20Vであり、かつカソードバイアス電圧Vcbが−60V(厳密にはこれよりもさらに負側に大きい値)〜−10Vであるときに、電流密度が上述した5.6mA/cm以下となる。なお、この5.6mA/cm以下という電流密度は、これを電流値Ibに換算すると、1.0A以下となる。そして、例えばアノード電圧Vaが30Vであり、かつカソードバイアス電圧Vcbが−40V〜−10Vであるときにも、電流密度は5.6mA/cm以下となる。さらに、アノード電圧Vaが40Vであり、かつカソードバイアス電圧Vcbが−20V〜−10Vであるときも、電流密度は5.6mA/cm以下となる。即ち、上述したように、アノード電圧Vaについては、20V〜40Vとすることで、電流密度を5.6mA/cm以下に抑えることができる。そして、カソードバイアス電圧Vcbについては、例えばアノード電圧Vaが20Vのときは−60V〜−10Vとし、アノード電圧Vaが30Vのときは−40V〜−10Vとし、アノード電圧Vaが40Vのときには−20V〜−10Vとすることによって、電流密度を5.6mA/cm以下とすることができる。ただし、当該電流密度は小さいほど(ゼロに近いほど)好ましく、換言すれば極力被処理物36,36,…に電流が流れないようにするのが好ましい。よって、アノード電圧Vaは20Vとし、カソードバイアス電圧Vcbは−10Vとするのが、最も望ましい。
なお、図5に示す関係は、アルゴンガスの圧力Pおよびカソード電力Ecによって変化する。しかし、これらアルゴンガスの圧力Pおよびカソード電力Ecが上述した最適値に設定されている場合、つまりアルゴンガスの圧力Pが1×10−2Pa〜1×10−1Paであり、かつカソード電力Ecが1kW〜2kWである場合は、当該図5の関係が概ね成り立つことが、確認された。
このようにアルゴンガスの圧力P、カソード電力Ec、アノード電圧Vaおよびカソードバイアス電圧Vcbのそれぞれを上述した最適値に設定することで、イオン照射によって被処理物36に流れる電流を5.6mA/cm以下に抑えることができ、ひいては被処理物36の異常加熱を防止することができる。ただし、実際の放電洗浄処理時には、被処理物36に対して高周波電力Ebが供給される。従って、この高周波電力Ebの供給によって被処理物36が異常加熱し、ひいては変質するようなことがあってはならない。そこで、この高周波電力Ebについても、一定の制限を設ける。
即ち、高周波電力Ebは、上述したように被処理物36に対するイオン照射を促進させるために供給されるが、この高周波電力Ebには、図6に示すように、負極の直流成分Vdcが重畳されている。そして、この直流成分Vdcの電圧値によって、被処理物36に対するイオンの照射エネルギを制御することができる。そこで、この直流成分Vdcの電圧値を、−60V〜−10Vとする。このようにすれば、被処理物36の異常加熱を抑えることができ、ひいては変質を防止できることが、確認された。
なお、このように直流成分Vdcの電圧値が制御されたとき、高周波電力Ebの電力値は、例えば100W〜600Wとなる。言い換えれば、当該高周波電力Ebの電力値を100W〜600Wとすれば、被処理物36の異常加熱を抑制することができる。ただし、高周波電力Ebの電力値は、被処理物36の表面積(数)によって変わるので、当該被処理物36の異常加熱を確実に抑制するには、やはり直流成分Vdcの電圧値を制御するのが、望ましい。なお、この直流成分Vdcの電圧値が変わると、高周波電力Ebの電圧振幅値Vppも、例えば100V〜300Vの範囲で変化する。
図7を参照して、本実施形態による効果を説明する。即ち、同図(a)は、放電洗浄処理を施される前、つまり未処理の被処理物36の表面近傍(表層)部分を撮影した拡大断面写真である。そして、同図(b)は、本実施形態による放電洗浄処理後の被処理物36の拡大断面写真である。なお、このときのアルゴンガスの圧力Pは6.67×10−2Pa、カソード電力Ecは1.1kW、アノード電圧Vaは20V、およびカソードバイアス電圧Vcbは−10Vであり、放電洗浄処理時間は20分間である。そして、同図(c)は、本実施形態よりも強いイオン照射によって放電洗浄処理が施された場合、例えばアノード電圧Vaが60Vとされた場合の(言わば従来技術による)拡大断面写真である。
この図7から明らかなように、同図(a)に示す未処理のものと、同図(b)に示す本実施形態による放電洗浄処理後のものとでは、互いに大きな差異は認められない。これに対して、同図(c)に示す強いイオン照射による放電洗浄処理が施されたものは、表面近傍(表層)において黒い部分が存在することが判る。これは、当該表面近傍から炭素が抜け出ていること、つまり脱炭現象が生じていることを表す。このことから、本実施形態によれば脱炭現象が生じないことが判る。
また、上述の未処理のもの、本実施形態による放電洗浄処理後のもの、および強いイオン照射による放電洗浄処理後のもののそれぞれについて、EPMA(Electron Probe X-ray Micro Analyzer)分析を行ったので、その結果を、図8に示す。なお、図8において、横軸は、被処理物36の表面からの深さを表し、縦軸は、炭素濃度を表す。ただし、縦軸の目盛値は、相対値であり、その数値が大きいほど、炭素濃度が低い(炭素が少ない)ことを表す。
この図8に示すように、本実施形態による放電洗浄処理後の炭素濃度の分布(実線の折線)は、未処理のものの分布(点線の折線)と大きな差異はない。また、各深さにおいて炭素濃度が略一定であること、つまりいずれの深さ(箇所)においても脱炭現象が生じていないことが、判る。これに対して、強いイオン照射による放電洗浄処理が施されたものの分布(一点鎖線の折線)は、未処理のものの分布と大きく異なる。つまり、脱炭現象が生じていることが、判る。
さらに、図9に、被処理物36の表面を撮影した拡大写真を示す。具体的には、同図(a)は、未処理のものの拡大写真であり、同図(b)は、本実施形態による放電洗浄処理後のものの写真である。そして、同図(c)は、強いイオン照射による放電洗浄処理後の写真である。また、参考までに、同図(b)に、上述したイオンボンバード処理後の写真を示す。
この図9において、同図(a)に示す未処理のものと、同図(b)に示す本実施形態による放電洗浄処理後のものとでは、互いに大きな差異は認められない。これに対して、同図(c)に示す強いイオン照射による放電洗浄処理が施されたものは、表面状態が滑らかになっている。これは、強いイオン照射によって表面が平坦化されたことを表す。そして、同図(d)に示すイオンボンバード処理後のものでは、より強力なイオン照射によって表面が荒れている、つまり変形していることが判る。このことから、本実施形態によれば被処理物の表面が変形しないことが証明された。
そして、本実施形態による放電洗浄処理の後に、続いて上述の成膜処理によって膜厚が1μm〜2μmの窒化チタン膜を形成し、この窒化チタン膜の密着性をスクラッチ試験によって検証した。その結果を、図10に実線の曲線で示す。また、併せて、強いイオン照射による放電洗浄処理後のものに同様の窒化チタン膜を形成し、この窒化チタン膜についてもスクラッチ試験を行ったので、その結果を、同図に点線の曲線で示す。
この図10から明らかなように、本実施形態(実線の曲線)による放電洗浄処理後に形成された窒化チタン膜の剥離臨界荷重は、約90Nである。これに対して、強いイオン照射による放電洗浄処理後に形成された窒化チタン膜の剥離臨界荷重は、約40Nである。つまり、本実施形態によれば、強いイオン照射による放電洗浄処理に比べて、略倍以上の密着性を得られることが判明した。また、一般に、窒化チタン膜については剥離臨界荷重が60N以上であれば高密着性であるという評価が得られるが、本実施形態によれば、この60Nという条件を大きく上回ることになる。つまり、これまで実現できなかった遥かに密着性の高い被膜を生成することができる。
なお、この実施形態においては、被処理物36として高速度鋼を母材とするドリルを用いたが、これに限らない。即ち、高速度鋼以外の金属を母材するもの、およびドリル以外のものを、被処理物36として適用してもよい。ただし、上述したように、本発明は、ドリルのように先鋭な部分を有するものが被処理物36とされた場合に、特に有効である。また、金属ではなく、絶縁物を被処理物36としてもよい。
そして、被処理物36が取り付けられるホルダ34の数は、上述した数(72個)に限らず、例えば単数であってもよい。また、ホルダ34は、公転させなくても、自転させなくてもよい。
さらに、磁界発生器50および52を傾斜させたが、これに限らない。即ち、これらを傾斜させずに、互いに正面を向けて対向(正対)させてもよい。アノード42についても、同様である。
そしてさらに、真空槽12等の本実施形態を構成する各要素の形状や寸法は、本実施形態で説明した態様に限らない。例えば、真空槽12は概略円筒形以外の形状であってもよいし、当該真空槽12の直径Cや奥行D等も上述した値に限定されるものではない。
また、放電用ガスとして、アルゴンガスを用いたが、これ以外のガス、例えば水素(H)ガスを用いてもよいし、複数種類のガスを併用してもよい。
そして、上述した成膜処理によって窒化チタン膜を形成したが、これ以外の被膜、例えば窒化ホウ素(BN)膜や窒化アルミニウム(AlN)膜、或いは窒化シリコン(SiN)膜を形成してもよい。
さらに、被処理物36に対して高周波電力Ebを供給したが、これに代えてパルス電力を供給してもよい。そして、この場合、デューティ比を任意に変更できるようにするのが、望ましい。
また、放電洗浄処理を施す時間は、被処理物36の態様(形状、材質、種類等)やプラズマ領域66の広がり角度に応じて、例えば20分間〜60分間とするのが、望ましい。
この発明の一実施形態の概略構成を示す内部正面図である。 図1におけるA−A矢視断面図である。 図1におけるB−B矢視断面図である。 同実施形態において被処理物に流れる電流を測定するときの構成を示す図解図である。 図4の構成による電流の測定結果を示すグラフである。 同実施形態において被処理物に供給される高周波電力の波形を示す図解図である。 同実施形態による効果を説明するための図解図である。 同効果を説明するためのグラフである。 同実施形態による別の効果を説明するための図解図である。 同実施形態によるさらに別の効果を説明するためのグラフである。
符号の説明
10 表面処理装置
12 真空槽
34 ホルダ
36 被処理物
40 カソード
42 アノード
44 カソード加熱用電源装置
46 カソードバイアス用電源装置
48 アノード用電源装置
50,52 磁界発生器
58 ガス管

Claims (11)

  1. 真空槽内でプラズマを発生させると共に該プラズマ中のイオンを被処理物の被処理面に照射することによって該被処理面を洗浄する表面処理装置において、
    上記真空槽内を排気する排気手段と、
    上記真空槽内に放電用ガスを導入するガス導入手段と、
    上記真空槽内において互いに距離を置いて対向するように設けられた第1電極および第2電極と、
    上記第1電極に対し交流の第1電力を供給することによって該第1電極から熱電子を放出させる第1電力供給手段と、
    上記第2電極に対し共通電位を基準とする直流の第2電力を供給することによって上記熱電子を加速させる第2電力供給手段と、
    上記第1電力に対し上記共通電位を基準とする直流の第1バイアス電力を重畳することによって上記熱電子の移動速度を制御する第1バイアス供給手段と、
    上記熱電子が上記放電用ガスの粒子に衝突することによって発生する上記プラズマを所定領域に閉じ込めるための磁界を発生させる磁界発生手段と、
    上記プラズマの中心部分から所定の距離を置いた所定位置において上記被処理面が該プラズマの中心部分に対向するように上記被処理物を支持する支持手段と、
    を具備し、
    上記被処理物が上記共通電位に接続されている状態にあるとき上記被処理面に上記イオンが照射されることによって該被処理物に流れる電流が5.6mA/cm以下となるように上記真空槽内における上記放電用ガスの圧力、上記第1電力、上記第2電力および上記第1バイアス電力が設定された、
    表面処理装置。
  2. 上記放電用ガスの圧力が1×10−2Paないし1×10−1Paである、請求項1に記載の表面処理装置。
  3. 上記第1電力の電力値が1kWないし2kWである、請求項1または2に記載の表面処理装置。
  4. 上記第2電力の電圧値が20Vないし40Vである、請求項1ないし3のいずれかに記載の表面処理装置。
  5. 上記第1バイアス電力の電圧値が−60Vないし−10Vである、請求項1ないし4のいずれかに記載の表面処理装置。
  6. 上記被処理物に対し上記共通電位を基準とする直流成分が重畳された交流の第2バイアス電力を供給する第2バイアス供給手段をさらに備え、
    上記直流成分の電圧値が−60Vないし−10Vである、請求項1ないし5のいずれかに記載の表面処理装置。
  7. 複数の上記支持手段を備える、請求項1ないし6のいずれかに記載の表面処理装置。
  8. 上記複数の支持手段によって支持された複数の上記被処理物が上記所定位置においてそれぞれの上記被処理面を上記プラズマの中心部分に対向させる配置となるように該複数の支持手段を順次搬送させる搬送手段をさらに備える、請求項7に記載の表面処理装置。
  9. 上記支持手段を自転させる自転手段をさらに備える、請求項1ないし8のいずれかに記載の表面処理装置。
  10. 洗浄後の上記被処理面に所定の被膜を生成する成膜手段をさらに備える、請求項1ないし9のいずれかに記載の表面処理装置。
  11. 真空槽内でプラズマを発生させると共に該プラズマ中のイオンを被処理物の被処理面に照射することによって該被処理面を洗浄する表面処理方法において、
    上記真空槽内を排気する排気過程と、
    上記真空槽内に放電用ガスを導入するガス導入過程と、
    上記真空槽内に設けられた第1電極に対し交流の第1電力を供給することによって該第1電極から熱電子を放出させる第1電力供給過程と、
    上記真空槽内において上記第1電極と距離を置いて対向するように設けられた第2電極に対し共通電位を基準とする直流の第2電力を供給することによって上記熱電子を加速させる第2電力供給過程と、
    上記第1電力に対し上記共通電位を基準とする直流の第1バイアス電力を重畳することによって上記熱電子の移動速度を制御する第1バイアス供給過程と、
    上記熱電子が上記放電用ガスの粒子に衝突することによって発生する上記プラズマを所定領域に閉じ込めるための磁界を発生させる磁界発生過程と、
    上記プラズマの中心部分から所定の距離を置いた所定位置において上記被処理面が該プラズマの中心部分に対向するように上記被処理物を支持する支持過程と、
    を具備し、
    上記被処理物が上記共通電位に接続されている状態にあるとき上記被処理面に上記イオンが照射されることによって該被処理物に流れる電流が5.6mA/cm以下となるように上記真空槽内における上記放電用ガスの圧力、上記第1電力、上記第2電力および上記第1バイアス電力が設定された、
    表面処理方法。
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