JP2006019120A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】循環経路に蓄積される不純物を可能な限り選択的に排出して無駄に排出される水素量を最小限にし、不純物濃度上昇による発電効率の低下を抑制しながら燃費の向上を実現できるようにする。
【解決手段】燃料電池1のアノード1a出口から排出されるアノード排ガスをアノード1a入口側へと循環させる水素循環方式の燃料電池システムにおいて、アノード排ガスが流れる循環経路5に電気化学的水素ポンプ6を設置すると共に、この電気化学的水素ポンプ6を迂回するバイパス経路8を設け、循環経路5と水素供給経路4との合流位置にはイジェクタ9を設置する。また、アノード排ガスを循環経路5の外部に排出するための開閉弁7を、電気化学的水素ポンプ6の入口極側に接続する。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池のアノード出口から排出されたアノード排ガスをアノード入口側へと循環させて再利用する水素循環方式の燃料電池システムに関する。
燃料電池システムは、燃料電池の燃料極(アノード)に水素を含む燃料ガス、酸化剤極(カソード)に空気等の酸化剤ガスをそれぞれ供給し、これら燃料ガス中の水素と酸化剤ガス中の酸素とを燃料電池内において電気化学的に反応させて発電電力を得るものである。
このような燃料電池システムでは、燃料電池内部のガス入口側から出口側に亘る全ての領域で均等に電気化学反応を生じさせて効率の良い発電を行わせるために、燃料電池のアノードには、要求される発電量に見合う水素量よりも多目の水素を供給するのが一般的である。このとき、燃料電池のアノードから排出されるガスには、発電に使用されなかった未使用の水素が多く含まれており、このアノード排ガスをそのまま外部に排出したのでは水素の利用効率が悪く、燃費の低下に繋がることになる。そこで、従来より、燃料電池のアノードから排出されるアノード排ガスを循環させて再利用することで、水素の利用効率を高めるようにした水素循環方式の燃料電池システムが提案されている。
ところで、水素循環方式の燃料電池システムにおいては、アノード排ガスの循環を繰り返す中で、燃料電池のカソードからアノード側へと透過してきた窒素や、燃料ガス中に含まれる不純物等が徐々に蓄積されていき、水素分圧低下によって燃料電池の発電効率が低下していくことが知られている。そこで、このような燃料電池の発電効率低下を防止するために、水素循環方式の燃料電池システムでは、アノード排ガスが流れる循環経路に開閉弁を接続し、この開閉弁を周期的に開閉させて不純物が蓄積されたアノード排ガスを循環経路の外部に排出することで、不純物濃度の上昇を抑えることが一般的に行われている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−151592号公報
しかしながら、前記特許文献1に記載されている燃料電池システムをはじめ、従来の水素循環方式の燃料電池システムでは、開閉弁を開いて不純物を外部に排出する際に、同時に燃料となる水素も多く排出してしまっており、燃費向上の観点からも、更なる改善が望まれている。
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みて創案されたものであって、循環経路に蓄積される不純物を可能な限り選択的に排出して無駄に排出される水素量を最小限にし、不純物濃度上昇による発電効率の低下を抑制しながら燃費の向上を実現することができる燃料電池システムを提供することを目的としている。
本発明の燃料電池システムは、燃料電池のアノード出口から排出されたアノード排ガスをアノード入口側へと循環させて再利用する水素循環方式の燃料電池システムである。このような水素循環方式の燃料電池システムにおいて、本発明では、前記目的を達成するために、アノード排ガスが流れる循環経路に電気化学的水素ポンプを設置すると共に、この電気化学的水素ポンプを迂回するバイパス経路を設け、燃料ガス供給源から燃料電池のアノード入口に繋がる燃料ガス供給経路と循環経路との合流位置にはイジェクタを設置している。また、アノード排ガスを循環経路の外部に排出するための排出手段を、電気化学的水素ポンプの入口極側に接続する構成としている。
本発明の燃料電池システムにおいて、循環経路に設置される電気化学的水素ポンプは、電解質膜を挟んで入口極と出口極とが対設されてなり、電解質膜に電流を流すことで入口極に供給されたアノード排ガス中の水素を選択的に出口極へと移動させるものである。
本発明の燃料電池システムでは、燃料電池のアノード出口から排出されたアノードガスの一部は電気化学的水素ポンプに供給されて水素のみが選択的に取り出され、他の一部はバイパス経路を通過して、それぞれイジェクタにより燃料ガス供給源から新たに供給される燃料ガスと混合されて燃料電池のアノード入口へと再度供給される。したがって、燃料電池のアノード入口には、不純物濃度の低い燃料ガスが供給されることになる。また、アノード排ガス中の不純物は電気化学的水素ポンプの入口極側に蓄積されてくるので、不純物濃度が高まったときに電気化学的水素ポンプの入口極側に接続された排出手段を操作することによって、不純物を選択的に循環経路の外部に排出することができる。
本発明の燃料電池システムによれば、アノード排ガスが流れる循環経路に蓄積される不純物を選択的に循環経路の外部に排出できるので、不純物濃度上昇による発電効率の低下を有効に抑制しながら燃費の向上を実現することができる。
以下、本発明を適用した燃料電池システムの具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の燃料電池システムの概略構成を示すものである。この燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとを燃料電池1に供給して燃料電池1内部での電気化学反応により発電電力を得るものであり、主に、発電を行う燃料電池1と、この燃料電池1に燃料ガスである水素を供給する水素供給系、酸化剤ガスである空気を供給する空気供給系、燃料電池1の温度調整のための冷却系とを備えている。
燃料電池1は、水素が供給される燃料極(アノード)1aと、空気が供給される空気極(カソード)1bとが電解質を挟んで重ね合わされて構成される発電セルを主要な構成要素とするものであり、例えば、複数の発電セルが多段積層されたスタック構造とされている。
燃料電池1の各発電セルは、水素供給系から供給される水素と空気供給系から供給される空気中の酸素とによる電気化学反応により化学エネルギを電気エネルギに変換する。すなわち、各発電セルのアノード1aでは、水素供給手段から水素が供給されることで水素イオンと電子とに解離する反応が起き、水素イオンは電解質を通り、電子は外部回路を通って電力を発生させ、カソード1b側にそれぞれ移動する。一方、カソード1bでは、空気供給系から供給された空気中の酸素と前記水素イオン及び電子が反応して水が生成され、外部に排出される。
燃料電池1の電解質としては、高エネルギ密度化、低コスト化、軽量化等を考慮して、例えば固体高分子電解質膜が用いられる。固体高分子電解質膜は、例えばフッ素樹脂系イオン交換膜等、イオン(プロトン)伝導性の高分子膜からなるものであり、飽和含水することによりイオン伝導性電解質として機能する。
水素供給系は、燃料電池1の各発電セルのアノード1aに燃料ガスである水素を供給するためのものであり、例えば、水素供給源としての水素タンク2を備え、この水素タンク2から取り出した水素を水素調圧弁3で所望の圧力に調整し、水素供給経路4を通して燃料電池1のアノード1aへと供給する。また、本実施形態の燃料電池システムは、燃料電池1のアノード1a出口から排出されるアノード排ガスをアノード1a入口側へと循環させて再利用する水素循環方式の燃料電池システムとして構成されており、燃料電池1のアノード1a出口側とアノード1a入口側の水素供給経路4とを繋ぐように、アノード排ガスが流れる循環経路5が接続されている。そして、特に、本実施形態の燃料電池システムでは、このアノード排ガスが流れる循環経路5に、従来一般的に用いられていた機械的な水素ポンプに代えて電気化学的水素ポンプ6が設置され、また、電気化学的水素ポンプ6の入口極側に開閉弁7が接続されている。
更に、本実施形態の燃料電池システムでは、循環経路5に電気化学的水素ポンプ6を迂回するバイパス経路8が設けられ、循環経路5と水素供給経路4との合流位置にはイジェクタ9が設置されている。
電気化学的水素ポンプ6は、電解質に固体高分子膜を用いた固体高分子型の燃料電池1と同様の構造を有するものであり、図2に示すように、固体高分子電解質膜を挟んで入口極6aと出口極6bとが対設されたポンプセルを主要な構成要素とし、例えば、複数のポンプセルが多段積層されたスタック構造とされている。そして、この電気化学的水素ポンプ6は、各ポンプセルの入口極6a側が燃料電池1のアノード1a出口側、各ポンプセルの出口極6b側が燃料電池1のアノード1aの入口側に繋がるように、循環経路5中に設置されている。
具体的には、電気化学的水素ポンプ6の各ポンプセルには、入口極6a側にガス導入部10及びガス導出部11が設けられ、出口極側6bにはガス導出部12のみが設けられている。そして、燃料電池1のアノード1a出口から排出されたアノード排ガスの一部が、入口極6a側のガス導入部10からポンプ内部に導入され、出口極6b側へと移動しなかったアノード排ガスが入口極6a側のガス導出部11からポンプ外部へと導かれる。前記開閉弁7は、この入口極6a側のガス導出部11に接続されている。また、入口極6aから出口極6b側へと移動したアノード排ガス(水素)は、出口極6b側のガス導出部12からポンプ外部へ導出され、燃料電池1のアノード1a入口へと導かれる。
電気化学的水素ポンプ6の各ポンプセルでは、駆動回路13の作動により固体高分子電解質膜に電流が流されることで、入口極6a側に供給されるアノード排ガス中の水素を選択的に固体高分子膜を透過させて出口極6b側へと移動させる。すなわち、各ポンプセルの入口極6a側では、ガス導入部10から導入されたアノード排ガス中の水素が水素イオンと電子とに解離する反応が起き、水素イオンは固体高分子電解質膜を通過し、電子は駆動回路13によってポンプ外部を流され、それぞれ出口極6b側へと移動する。そして、出口極6b側で、固体高分子電解質膜を通過した水素イオンと駆動回路13によりポンプ外部を流された電子とが結合して水素が生成され、出口極6b側のガス導出部12から燃料電池1のアノード1a入口側へと導かれる。
また、本実施形態の燃料電池システムでは、循環経路5に電気化学的水素ポンプ6を迂回するバイパス経路8が設けられ、循環経路5と水素供給経路4との合流位置にはイジェクタ9が設置されているので、燃料電池1のアノード1a出口から排出されたアノード排ガスの一部は、電気化学的水素ポンプ6に供給されることなく、バイパス経路8を通過してイジェクタ9へと導かれることになる。
イジェクタ9は、水素タンク2から調圧弁3を介して燃料電池1のアノード1aに供給される水素の流れをドライビングフォースとして、循環経路5内のガスを吸引するものである。このようなイジェクタ9が循環経路5と水素供給経路4との合流位置に設置されることによって、燃料電池1のアノード1a出口から排出されたアノード排ガスの一部が電気化学的水素ポンプ6を迂回してバイパス経路8を通り、イジェクタ9により吸引されることになる。そして、このバイパス経路8を通ったアノード排ガスの一部が、循環経路5と水素供給経路4との合流位置にて、電気化学的水素ポンプ6によりアノード排ガスから取り出された水素と共に、新たに水素タンク2から取り出された水素と混合されて、水素供給経路4から燃料電池1のアノード1aに再度供給されることになる。
以上のように、本実施形態の燃料電池システムでは、循環経路5に設置した電気化学的水素ポンプ6の働きと、循環経路5と水素供給経路4との合流位置に設置したイジェクタ9の働きとによって、燃料電池1のアノード1a出口から排出されたアノード排ガスをアノード1a入口側へと循環させて再利用するようにしている。ここで、電気化学的水素ポンプ6は、アノード排ガス中の水素を選択的に取り出して燃料電池1のアノード1a入口側へと送る機能を有しているので、従来一般的に用いられていた機械的な水素ポンプでアノード排ガスを循環させる場合や、イジェクタ9のみでアノード排ガスを循環させる場合に比べて、燃料電池1のアノード1a入口には、水素濃度の高い、すなわち不純物濃度の低い燃料ガスが供給されることになる。
また、電気化学的水素ポンプ6によりアノード排ガス中の水素を選択的に取り出して燃料電池1のアノード1a入口側へと送ることにより、アノード排ガス中の不純物は、電気化学的水素ポンプ6の入口極6a側におけるガス導出部11近傍に蓄積されていくことになる。したがって、この不純物の濃度が高まるタイミングでこの入口極6a側のガス導出部11に接続した開閉弁7を開放することによって、不純物を選択的に循環経路5の外部に排出することが可能となる。
空気供給系は、燃料電池1の各発電セルのカソード1bに酸化剤ガスである空気を供給するためのものであり、例えば、空気供給源としてのエアコンプレッサ14を備え、このエアコンプレッサ14で外気を吸入して空気供給経路15を通して燃料電池スタック1のカソード1bへと供給する。また、燃料電池スタック1のカソード1b出口側には空気排気経路16が接続され、燃料電池スタック1のカソード1bで消費されなかった酸素及び空気中の他の成分は、この空気排気経路16から排出される。また、空気排気経路16には空気調圧弁17が設けられており、この空気調圧弁17によって燃料電池スタック1のカソード1bに供給される空気の圧力が調整される。
冷却系は、燃料電池1の作動温度が最適温度となるように燃料電池1の温度調整を行うためのものであり、冷却液ポンプ18の駆動によって、例えば水にエチレングリコール等の凍結防止剤を混入した冷却液を冷却液循環経路19内で循環させ、燃料電池1に供給する構成となっている。冷却液循環経路19にはラジエータ20が設置されており、燃料電池1の熱を吸熱して高温の状態で燃料電池1から排出された冷却液は、このラジエータ20を通過する過程で放熱し、冷却される。
以上が本実施形態の燃料電池システムの基本的な構成であるが、次に、本実施形態の燃料電池システムにおいて特徴的なアノード排ガスの循環動作について説明する。
燃料電池1で効率の良い発電を行わせるためには、燃料電池1の発電で消費される水素量に対して一定の割合で余剰の水素を供給することが要求される。本実施形態の燃料電池システムでは、この余剰の水素を、電気化学的水素ポンプ6によりアノード排ガスから取り出した水素と、イジェクタ9の吸引によりバイパス経路8を通過させたアノード排ガスとによって賄うようにしているので、これらを合わせた流量の目標値が、燃料電池1からの取り出し電流に略比例した値となる。
ここで、電気化学的水素ポンプ6によりアノード排ガスから取り出される水素量、すなわち電気化学的水素ポンプ6の入口極6aから出口極6b側へと移動する水素量は、電気化学的水素ポンプ6の固体高分子電解質膜を流れる電流量で決まる。一方、イジェクタ9の吸引によりバイパス経路8を通過するアノード排ガスの流量は、イジェクタ9の循環比によって決まる。イジェクタ9の循環比とは、イジェクタ9によって循環経路5から吸引される水素流量の供給水素流量に対する比であり、水素タンク2から取り出されてイジェクタ9を通過する水素流量をQs、循環経路5からイジェクタ9に吸引される水素流量をQrとすると、イジェクタ9の循環比αは下記式(1)で定義される。
α=Qr/Qs ・・・(1)
そして、このイジェクタ9の循環比は、図3に示すように、燃料電池1からの取り出し電流が少ない最低負荷側の領域で低く、燃料電池1からの取り出し電流が増加するに従って徐々に高まってピークとなった後に徐々に減少して、燃料電池1からの取り出し電流が更に多い最高負荷側の領域では低くなる特性を有している。したがって、イジェクタ9の吸引によりバイパス経路8を通過するアノード排ガスの流量の前記目標値に対する割合は、このイジェクタ9の循環比の特性を反映したものとなる。
そこで、本実施形態の燃料電池システムでは、燃料電池1からの取り出し電流に応じて電気化学的水素ポンプ6への供給電流を制御し、特に、図4に示すように、燃料電池1からの取り出し電流に対する電気化学的水素ポンプ6への供給電流の比を、イジェクタ9の循環比が低い運転条件ほど大きくすることで、イジェクタ9の吸引によりバイパス経路8を通過するアノード排ガスの流量の不足分を、電気化学的水素ポンプ6によりアノード排ガスから取り出される水素量で補うようにしている。具体的には、燃料電池1からの取り出し電流に対する電気化学的水素ポンプ6への供給電流の比を、最低負荷側では負荷の上昇(燃料電池1からの取り出し電流の増加)に伴って低下させ、最高負荷側では負荷の上昇に伴って高くするようにしている。これにより、燃料電池1のアノード1aには、あらゆる運転負荷に応じて常に最適な量の水素が供給され、効率の良い発電が継続して行われることになる。
また、開閉弁7を閉じた状態で燃料電池システムの運転を継続させると、燃料電池1のカソード1bからアノード1a側へと透過してきた窒素や、燃料ガス中に含まれる不純物等が水素供給系内に徐々に蓄積されていく。ここで、本実施形態の燃料電池システムでは、電気化学的水素ポンプ6によりアノード排ガス中の水素を選択的に取り出して循環させるようにしているので、窒素や不純物ガスは、電気化学的水素ポンプ6の入口極6a側に蓄積されていくことになる。
そこで、本実施形態の燃料電池システムでは、電気化学的水素ポンプ6の入口極6a側に不純物が蓄積されて十分に濃縮される時間を予め実験的に求めておき、不純物が十分に濃縮されたタイミングで、電気化学的水素ポンプ6の入口極6a側に接続した開閉弁7を開放すると共に、所定時間経過後に開閉弁7を閉じる動作を繰り返し行うようにしている。これにより、水素供給系中の不純物を選択的に循環経路5の外部に排出することが可能となり、無駄に排出する水素量を極力低減することができる。
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システムによれば、循環経路5に設置した電気化学的水素ポンプ6の働きと、循環経路5と水素供給経路4との合流位置に設置したイジェクタ9の働きとによって、燃料電池1のアノード1aに対して常に最適な量の水素が供給されるようにしているので、燃料電池1で効率の良い発電が継続して行うことができると共に、電気化学的水素ポンプ6の入口極6a側に蓄積された不純物が十分に濃縮されたタイミングで開閉弁7を開放し、不純物を選択的に排出させるようにしているので、不純物濃度上昇による発電効率の低下を有効に抑制しながら、燃費の向上を実現することができる。
また、本実施形態の燃料電池システムでは、燃料電池1で効率の良い発電を行わせるための余剰の水素を、電気化学的水素ポンプ6によりアノード排ガスから取り出した水素と、電力消費のないイジェクタ9の吸引によってバイパス経路8を通過させたアノード排ガスとにより賄うようにしているので、電気化学的水素ポンプ6によりアノード排ガスから取り出した水素のみで賄うようにした場合に比べて、消費電力を抑制してシステム効率の更なる向上を図ることが可能となる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の燃料電池システムは、基本構成を上述した第1の実施形態と同様とし、開閉弁7の開閉制御が第1の実施形態とは異なるものである。以下、第1の実施形態と同様の部分についての重複した説明は省略し、本実施形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
電気化学的水素ポンプ6への印加電圧は、入口極6aから出口極6b側へと移動させる水素量が多いほど高くなり、また、アノード排ガスの水素分圧が小さいほど高くなる。したがって、電気化学的水素ポンプ6への供給電流が一定である場合で比較すると、電気化学的水素ポンプ6の入口極6a側に蓄積された不純物の濃度が上がると、電気化学的水素ポンプ6への印加電圧は高くなる傾向にある。これは、アノード排ガスの水素分圧が低下したことによるものである。
本実施形態の燃料電池システムでは、以上の特性を利用して、電気化学的水素ポンプ6に所望の電流を流すために必要な印加電圧をもとに入口極6a側に蓄積された不純物の濃度を推定して、それに応じて開閉弁7の開閉を制御するようにしている。これを実現するために、本実施形態の燃料電池システムでは、図5に示すように、電気化学的水素ポンプ6への供給電流を制御するための駆動回路13に電圧センサ21を接続し、この電圧センサ21により電気化学的水素ポンプ6への印加電圧をモニタリングできるようにしている。
そして、開閉弁7を閉じた状態で燃料電池システムの運転を継続させていく中で、電圧センサ21により検知された電気化学的水素ポンプ6への印加電圧が、運転条件に応じて定まる第1の所定値(図6参照。)を越えたら、電気化学的水素ポンプ6の入口極6a側に蓄積された不純物が十分に濃縮された状態にあると判断して、開閉弁7を閉から開に切り替える。そして、その後、電圧センサ21により検知された電気化学的水素ポンプ6への印加電圧が第1の所定値よりも小さい第2の所定値(図6参照。)を下回ったら、水素供給系内の不純物濃度が十分に低下したと判断して、開閉弁7を開から閉に切り替えるようにしている。
図7は、本実施形態の燃料電池システムにおける開閉弁7の開閉制御の制御フローを示すものである。この図7に示すように、本実施形態の燃料電池システムでは、ステップS1で開閉弁7が開いているか閉じているかを判定し、開閉弁7が閉じている場合には、次のステップS2において、電圧センサ21により検知された電気化学的水素ポンプ6への印加電圧が図6に示した第1の所定値を越えているか否かを判定する。そして、電気化学的水素ポンプ6への印加電圧が第1の所定値を越えていれば、次のステップS3で開閉弁7を開いてリターンし、電気化学的水素ポンプ6への印加電圧が第1の所定値以下であれば、そのままリターンする。
また、ステップS1で開閉弁7が開いていると判定した場合には、次にステップS4において、電圧センサ21により検知された電気化学的水素ポンプ6への印加電圧が図6に示した第2の所定値を下回っているか否かを判定する。そして、電気化学的水素ポンプ6への印加電圧が第2の所定値を下回っていれば、次のステップS5で開閉弁7を閉じてリターンし、電気化学的水素ポンプ6への印加電圧が第2の所定値以上であれば、そのままリターンする。
本実施形態の燃料電池システムでは、以上の制御フローを繰り返し実行することによって、水素供給系中の不純物を選択的に循環経路5の外部に排出することが可能となり、無駄に排出する水素量を極力低減することができる。
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システムによれば、電気化学的水素ポンプ6に所望の電流を流すために必要な印加電圧をもとに入口極6a側に蓄積された不純物の濃度を推定して、それに応じて開閉弁7の開閉を制御するようにしているので、開閉弁7の開閉をより適切に行って、第1の実施形態の効果、すなわち不純物濃度上昇による発電効率の低下を有効に抑制しながら燃費の向上を実現できるという効果を更に高めることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態の燃料電池システムは、基本構成を上述した第1の実施形態と同様とし、開閉弁7を閉じている間は、電気化学的水素ポンプ6への供給電流を時間経過に従って徐々に増加させると共に、開閉弁7を開いている間は、電気化学的水素ポンプ6への供給電流を時間経過に従って徐々に減少させるようにしたものである。以下、第1の実施形態と同様の部分についての重複した説明は省略し、本実施形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
燃料電池システムの運転継続に伴って水素供給系内に蓄積される窒素等の不純物は、上述したように、その大部分が電気化学的水素ポンプ6の入口極6a側で濃縮されていくが、一部はバイパス経路8を通過してイジェクタ9によって循環されることになる。そして、このバイパス経路8を通過してイジェクタ9によって循環される窒素等の不純物の濃度は、開閉弁7を閉じている間は時間経過に従って徐々に増加していき、開閉弁7を開くことにより時間経過に従って徐々に減少していくことになる。ここで、バイパス経路8を通過してイジェクタ9によって循環される不純物の濃度が高まると、循環ガスの密度が上がることにより上述したイジェクタ9の循環比が低下して、イジェクタ9の吸引によりバイパス経路8を通過するアノード排ガスの流量が減少する。
そこで、本実施形態の燃料電池システムでは、以上のような不純物の濃度変化とそれに伴うイジェクタ9の循環比の変動に対応させて、図8に示すように、開閉弁7を閉じている間、すなわち不純物濃度が徐々に増加してイジェクタ9の循環比が低下する状況では、電気化学的水素ポンプ6への供給電流を時間経過に従って徐々に増加させ、開閉弁7を開いている間、すなわち不純物濃度が徐々に減少してイジェクタ9の循環比が上昇する状況では、電気化学的水素ポンプ6への供給電流を時間経過に従って徐々に減少させるようにしている。
以上のように電気化学的水素ポンプ6への供給電流を制御することによって、イジェクタ9の吸引によりバイパス経路8を通過するアノード排ガスの流量の不足分を、電気化学的水素ポンプ6によりアノード排ガスから取り出される水素量で補って、燃料電池1のアノード1aに常に最適な流量の水素を供給することができ、燃料電池1での効率の良い発電を継続させることができる。また、バイパス経路8を通過するアノード排ガスの流量の不足分のみを電気化学的水素ポンプ6でアシストすることにより、電気化学的水素ポンプ6での消費電力を極力抑制しながら、燃料電池1での効率の良い発電を継続させることができ、システム効率の更なる向上を図ることが可能となる。
ところで、燃料電池システムの運転継続に伴って水素供給系内に蓄積される不純物の多くは、燃料電池1のカソード1bからアノード1a側へと透過してきた窒素である。そして、このカソード1bからの窒素透過量は、燃料電池1の温度が高いほど多くなる傾向を有する。したがって、燃料電池1の温度が高いほど、開閉弁7を閉じている間に不純物が蓄積される速度、すなわちイジェクタ9の循環比が低下する速度が速くなる。
そこで、本実施形態の燃料電池システムでは、燃料電池1の温度を直接又は間接的に検知する温度検知手段を設け、図8に示したように、燃料電池1の温度が高いほど、電気化学的水素ポンプ6への供給電流の増加速度を高く、すなわち、電気化学的水素ポンプ6への供給電流増加代の時間に対する比(図8のグラフの傾き)を大きくすることが望ましい。これにより、あらゆる温度条件に対応して、アノード1aへの水素供給量を更に最適化して燃料電池1での効率の良い発電を継続させることができる。
なお、燃料電池1の温度を検知する温度検知手段としては、例えば、冷却系の冷却液循環経路19の燃料電池1出口近傍に温度計を設置して、この温度計で燃料電池1の温度を反映した冷却液の温度を検知することが考えられる。
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システムによれば、開閉弁7を閉じている間は、電気化学的水素ポンプ6への供給電流を時間経過に従って徐々に増加させると共に、開閉弁7を開いている間は、電気化学的水素ポンプ6への供給電流を時間経過に従って徐々に減少させるようにしているので、第1及び第2の実施形態の効果、すなわち不純物濃度上昇による発電効率の低下を有効に抑制しながら燃費の向上を実現できるという効果に加えて、燃料電池1のアノード1aに供給する水素流量をより最適化して燃料電池1での効率の良い発電を安定的に継続させることができるという効果も得られ、システム効率を更に改善することができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態の燃料電池システムは、基本構成を上述した第1の実施形態と同様とし、燃料電池1の少なくとも一部の発電セルにて水詰まりが発生したときに、電気化学的水素ポンプ6に流す電流を大きくし、循環水素の流量を増加させて水詰まりを解消させるようにしたものである。以下、第1の実施形態と同様の部分についての重複した説明は省略し、本実施形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
燃料電池1の電解質膜として用いられる固体高分子膜は、上述したように飽和含水することによってイオン伝導体として機能することになるので、燃料電池システムの運転時には燃料電池1に対して必要な量の水分を供給して固体高分子電解質膜を十分に加湿した状態としている。ここで、燃料電池1の加湿量が過剰となった場合や、低温時等の運転条件によっては、燃料電池1内部で水分が凝縮し、液水となって、例えばアノード1a側のガス流路に滞留する、いわゆる水詰まり(フラッディング)と呼ばれる現象が生じる場合がある。このような水詰まりが発生すると、ガスの流通が阻害されて発電効率の低下に繋がることになるので、水詰まりが発生した場合には早急にこれを検知して、水詰まりを解消させる対策を講じることが望まれる。
そこで、本実施形態の燃料電池システムでは、燃料電池1の少なくとも一部の発電セルに水詰まりが発生したことを検知する水詰まり検知手段を設け、水詰まりの発生が検知された場合には、図9に示すように、燃料電池1からの取り出し電流に応じた電気化学的水素ポンプ6への供給電流を水詰まりが発生していない通常時と比べて大きくすることで、循環水素の流量を増加させるようにしている。そして、このように循環水素の流量を増加させることによって、燃料電池1のアノード1a側のガス流路に滞留している液水を吹き飛ばし、水詰まりを解消させるようにしている。
水詰まり検知手段が水詰まりの発生を検知する方法としては、例えば下記のような方法が考えられる。すなわち、燃料電池1の一部の発電セルに水詰まりが発生すると、水詰まりが発生した発電セルの電圧が他の発電セルの電圧に比べて低下する。この特性を利用して、燃料電池1の各発電セル、又は燃料電池1を複数に分割した各発電セル群の電圧を個別に検知するセル電圧モニタを設置し、このセル電圧モニタにより検知される特定の発電セル又は特定の発電セル群の電圧が、他の発電セル又は発電セル群の電圧よりも所定値以上若しくは所定割合以上低下した場合に、この特定の発電セル又は特定の発電セル群に水詰まりが発生したと判断する。
なお、水詰まり発生時に電気化学的水素ポンプ6への供給電流を大きくして循環水素の流量を増加させることによって燃料電池1のアノード1aから排出された水分は、窒素等の不純物と同様に、電気化学的水素ポンプ6の入口極6a側に蓄積されていくことになる。したがって、所定のタイミングで電気化学的水素ポンプ6の入口極6a側に接続された開閉弁7を開閉することによって、この水分を窒素等の不純物と共に循環経路5の外部に排出することができる。
図10は、本実施形態の燃料電池システムにおける水詰まり発生時の制御フローを示すものである。この図10に示すように、本実施形態の燃料電池システムでは、先ずステップS11で、燃料電池1の少なくとも一部の発電セルに水詰まりが発生したことが水詰まり検知手段により検知されたか否かを判定し、水詰まりの発生が検知されたときには、次のステップS12において、電気化学的水素ポンプ6への供給電流を増量させて、循環水素流量を増加させる。そして、この循環水素流量の増加によって水詰まりが解消したかどうかをステップS13で判定し、水詰まりが解消するまで電気化学的水素ポンプ6への供給電流増加を継続させ、水詰まりが解消した段階でリターンする。
本実施形態の燃料電池システムでは、以上の制御フローを繰り返し実行することによって、水詰まりに起因する燃料電池1の発電効率の低下を有効に抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システムによれば、燃料電池1の少なくとも一部の発電セルにて水詰まりが発生したときに、電気化学的水素ポンプ6に流す電流を大きくし、循環水素の流量を増加させて水詰まりを解消させるようにしているので、第1乃至第3の実施形態の効果、すなわち不純物濃度上昇による発電効率の低下を有効に抑制しながら燃費の向上を実現できるという効果に加えて、水詰まりに起因する燃料電池1の発電効率の低下を有効に抑制できるという効果も得ることができ、システム効率を更に改善することができる。
本発明を適用した第1の実施形態の燃料電池システムの概略構成を示す図である。 電気化学的水素ポンプの各ポンプセルの構造を示す模式図である。 イジェクタの循環比と燃料電池からの取り出し電流との関係を示す図である。 燃料電池からの取り出し電流に対する電気化学的水素ポンプへの供給電流の比と燃料電池からの取り出し電流との関係を示す図である。 本発明を適用した第2の実施形態の燃料電池システムを説明する図であり、電気化学的水素ポンプに電流を流すための駆動回路に電圧センサを接続した様子を示す模式図である。 前記第2の実施形態の燃料電池システムにおいて、開閉弁を閉から開に切り替える基準となる第1の所定値と第2の所定値を説明する図である。 前記第2の実施形態の燃料電池システムにおける開閉弁の開閉制御の流れを示すフローチャートである。 本発明を適用した第3の実施形態の燃料電池システムを説明する図であり、開閉弁の開閉に伴って電気化学的水素ポンプへの供給電流を増減させる様子を示す図である。 本発明を適用した第4の実施形態の燃料電池システムを説明する図であり、電気化学的水素ポンプへの供給電流と燃料電池からの取り出し電流との関係を、通常時と水詰まり発生時とで対比して示す図である。 前記第4の実施形態の燃料電池システムにおける水詰まり発生時の制御の流れを示すフローチャートである。
符号の説明
1 燃料電池
1a アノード
1b カソード
5 循環経路
6 電気化学的水素ポンプ
6a 入口極
6b 出口極
7 開閉弁
8 バイパス経路
9 イジェクタ
21 電圧センサ

Claims (11)

  1. 燃料電池のアノード出口から排出されたアノード排ガスをアノード入口側へと循環させて再利用する水素循環方式の燃料電池システムにおいて、
    前記アノード排ガスが流れる循環経路に、電解質膜を挟んで入口極と出口極とが対設されてなり、前記電解質膜に電流を流すことで入口極に供給されたアノード排ガス中の水素を選択的に出口極へと移動させる電気化学的水素ポンプが設置されていると共に、当該電気化学的水素ポンプを迂回するバイパス経路が設けられ、
    燃料ガス供給源から前記燃料電池のアノード入口に繋がる燃料ガス供給経路と前記循環経路との合流位置にイジェクタが設置され、
    前記電気化学的水素ポンプの入口極側に、アノード排ガスを前記循環経路の外部に排出するための排出手段が接続されていることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記燃料電池からの取り出し電流に応じて、前記電気化学的水素ポンプへの供給電流を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記燃料電池からの取り出し電流に対する前記電気化学的水素ポンプへの供給電流の比を、前記イジェクタの循環比が低い運転条件ほど大きくすることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記燃料電池からの取り出し電流に対する前記電気化学的水素ポンプへの供給電流の比を、最低負荷側では負荷上昇に伴って低下させ、最高負荷側では負荷上昇に伴って高くすることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
  5. 前記排出手段が開閉弁よりなることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の燃料電池システム。
  6. 予め定められた周期で前記開閉弁を開閉させることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
  7. 前記電気化学的水素ポンプに印加する電圧を検知する電圧検知手段を備え、
    前記電気化学的水素ポンプへの印加電圧が、運転条件に応じて定まる第1の所定値を越えたら前記開閉弁を閉から開に切り替えると共に、前記電気化学的水素ポンプへの印加電圧が、前記第1の所定値よりも小さい第2の所定値を下回ったら前記開閉弁を開から閉に切り替えることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
  8. 前記開閉弁を閉じている間は、前記電気化学的水素ポンプへの供給電流を時間経過に従って徐々に増加させると共に、前記開閉弁を開いている間は、前記電気化学的水素ポンプへの供給電流を時間経過に従って徐々に減少させることを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載の燃料電池システム。
  9. 前記燃料電池の温度を直接又は間接的に検知する温度検知手段を備え、
    前記燃料電池の温度が高いほど、前記電気化学的水素ポンプへの供給電流の増加速度を高くすることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システム。
  10. 前記燃料電池の少なくとも一部の発電セルにて水詰まりが発生したことを検知する水詰まり検知手段を備え、
    前記水詰まりの発生が検知された場合には、前記電気化学的水素ポンプへの供給電流を水詰まりの発生が検知されない場合に比べて大きくすることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  11. 前記燃料電池の各発電セル、又は前記燃料電池を複数に分割した各発電セル群の電圧を個別に検知するセル電圧検知手段を備え、
    前記水詰まり検知手段は、一部の発電セル又は一部の発電セル群の電圧が、他の発電セル又は他の発電セル群の電圧よりも所定値以上若しくは所定割合以上低下した場合に、当該発電セル又は発電セル群にて水詰まりが発生していると判断することを特徴とする請求項10に記載の燃料電池システム。
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