JP2006009768A - 内燃機関用ピストン - Google Patents
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Abstract
【課題】ピストンピン孔とピストンピンとの間における摩擦抵抗を増大させずに、その間の潤滑性能を確保すること。
【解決手段】ピストンピンが挿通されるピストンピン孔3の内周面に当該ピストンピン孔3の外側から内側に向けた少なくとも1本のオイル供給溝4を形成すると共に、このオイル供給溝4の溝壁面に複数本の条痕溝5を形成すること。これにより、ピストンピンの外周面と接しないオイル供給溝4の溝壁面の条痕溝5でオイルが保持され、そのオイルがピストン1の上下動に伴ってピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間に供給される。
【選択図】 図2
【解決手段】ピストンピンが挿通されるピストンピン孔3の内周面に当該ピストンピン孔3の外側から内側に向けた少なくとも1本のオイル供給溝4を形成すると共に、このオイル供給溝4の溝壁面に複数本の条痕溝5を形成すること。これにより、ピストンピンの外周面と接しないオイル供給溝4の溝壁面の条痕溝5でオイルが保持され、そのオイルがピストン1の上下動に伴ってピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間に供給される。
【選択図】 図2
Description
本発明は、ピストンピン孔とピストンピンとの間における潤滑性能と摩擦性能の両立を図り得る内燃機関用ピストンに関する。
一般に、内燃機関に用いられるピストンは、そのピストンピン孔とコネクティングロッドの小端部に形成された小端孔とにピストンピンを挿通することによってコネクティングロッドに保持され、このコネクティングロッドに連結されたクランクシャフトから軸出力を発生させる。
ここで、このピストンが上下動する際にはピストンピン孔の内周面とピストンピンの外周面とが摺動するので、何等の策も講じなければ、その摺動抵抗により異常摩耗や焼き付きが生じてしまう。
そこで、従来、ピストンピン孔の内周面とピストンピンの外周面との間で十分なオイルを保持して潤滑性能を確保すべく、そのピストンピン孔の内周面に規則的な条痕加工を施す、という技術が下記の特許文献1に開示されている。また、これと同様の観点から、下記の特許文献2には、ピストンピン孔の周壁(内周面)に条痕を形成する、という技術が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1,2に開示されたピストンにおいては、条痕溝にオイルが保持されるので異常摩耗や焼き付きの抑制を図り得るが、その反面、条痕溝によりピストンピン孔の内周面とピストンピンの外周面との間の接触面積が小さくなるので、その間の面圧の上昇に伴い摩擦抵抗が大きくなってしまう、という不都合があった。
そして、その摩擦抵抗の増大により出力低下や燃料消費量増加等の弊害を生じさせてしまう一方、条痕溝による潤滑性能の向上代が摩擦抵抗の増大により相殺され、結局の所、異常摩耗や焼き付きが発生してしまう。
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、ピストンピン孔とピストンピンとの間における摩擦抵抗を増大させずとも、その間の潤滑性能を確保し得る内燃機関用ピストンを提供することを、その目的とする。
上記目的を達成する為、請求項1記載の発明では、ピストンピンが挿通されるピストンピン孔の内周面に当該ピストンピン孔の外側から内側に向けた少なくとも1本のオイル供給溝を形成すると共に、このオイル供給溝の溝壁面に複数本の条痕溝を形成している。
この請求項1記載の発明によれば、ピストンピンの外周面と接しないオイル供給溝の溝壁面の条痕溝でオイルが保持され、そのオイルがピストンの上下動に伴ってピストンピン孔の内周面とピストンピンの外周面との間に供給される。
また、上記目的を達成する為、請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の内燃機関用ピストンにおいて、前記条痕溝を前記オイル供給溝の両端部に設けると共に、そのオイル供給溝の溝壁面の略中央部分に前記条痕溝よりも幅広のオイル保持溝を形成している。
この請求項2記載の発明によれば、オイル保持溝に多量のオイルが保持されるので、例えばピストンピン孔の内周面とピストンピンの外周面との間における面圧が高い高回転時等の状況下においても、その間へのオイル供給が行われるので、異常摩耗や焼き付きを有効に抑制することができる。
また、上記目的を達成する為、請求項3記載の発明では、ピストンピンが挿通されるピストンピン孔の内周面に当該ピストンピン孔の外側から内側に向けた少なくとも1本のオイル供給溝を形成すると共に、このオイル供給溝の溝壁面に螺旋状の条痕溝を形成し、前記ピストンピン孔の周縁部分に面取り部を設けている。
この請求項3記載の発明によれば、面取り部で無駄なく回収されたオイルはピストンピン孔の内周面とピストンピンの外周面との間に供給され、また、螺旋状の条痕溝に導かれてオイル供給溝の全体にオイルが行き渡る。そして、そのオイルがピストンピンの外周面と接しないオイル供給溝の溝壁面の螺旋状の条痕溝で保持され、ピストンの上下動に伴ってピストンピン孔の内周面とピストンピンの外周面との間に供給される。
本発明に係る内燃機関用ピストンは、ピストンピン孔の内周面とピストンピンの外周面との間において摩擦抵抗を増大させずとも、その間にオイルを供給して潤滑性能を確保することができる。そして、これにより、その間での異常摩耗や焼き付きが抑制され、更に燃料消費量の低減や出力向上等の種々の効果を奏することができる。
以下に、本発明に係る内燃機関用ピストンの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
本発明に係る内燃機関用ピストンの実施例1を図1から図3に基づいて説明する。
図1及び図2の符号1は、本実施例1の内燃機関用ピストンを示す。
このピストン1のピストンヘッド部には、ピストン頂面側から順に二つのコンプレッションリング溝2a,2bとオイルリング溝2cとが形成されており、その夫々に、主として燃焼室の気密性を保持するコンプレッションリング(図示略)とシリンダボア壁面の油膜の最適化を図るオイルリング(図示略)とが取り付けられる。
また、このピストン1には、その下方に、コネクティングロッド(図示略)の小端部と連結すべくピストンピン(図示略)が挿通される二つのピストンピン孔3が形成されている。
先ず、本実施例1のピストン1においては、図1及び図2に示す如く、夫々のピストンピン孔3の内周面に2本の溝4が形成されている。具体的に、本実施例1の溝4は、ピストンピン孔3の外側(ピストン外側)から内側(ピストン内部側)に向けてその軸線方向と略平行に形成されたものであって、そのピストンピン孔3の上側の内周面に設けられている。
このようにピストンピン孔3の内周面に溝4を設けることによって、ピストン1の外壁面や内壁面を流れ落ちてきたオイルが夫々の溝4の中に流入し、この夫々の溝4からピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間にオイルが供給される。以下、その溝4を「オイル供給溝4」という。
ここで、本実施例1のオイル供給溝4については、図1に示す如く、断面が弧状に形成され、且つピストンピン孔3の上側の内周面に2つ設けられている。これが為、ピストン1が上下動する際にピストンピン孔3の内側の内周面で生じるピストンピンからの過大な応力が緩和され、ピストン1やピストンピンの破損を防ぐことができる。即ち、本実施例1のオイル供給溝4は、ピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間へのオイル供給とその間での応力緩和とを図り得る所謂サイドリリーフ溝として機能する。
そこで、その過大な応力が発生しない又は他の手段により緩和し得るのであれば、オイル供給溝4は、本実施例1の如く必ずしも断面形状が弧状である必要はなく、また、必ずしもピストンピン孔3の上側の内周面に設ける必要はない。更に、その本数についても、所望のオイル量を供給できるのであれば1本でもよく、また、3本以上設けてもよい。
このように、本実施例1のピストン1においては、そのオイル供給溝4によりピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間にオイルが供給されるので、その間における潤滑性能を確保することができるが、一方で、オイル供給溝4へと流入したオイルは、流入後にピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間へと即座に流出してしまう。
これが為、オイル供給溝4へオイルを常時流入させることによりその間の油膜切れを防ぐことが好ましいが、高回転時等の運転状態に拘わらず常に所望量のオイルがオイル供給溝4に流入するとは限らないので、油膜切れによる異常摩耗や焼き付きが生じる虞がある。また、オイル供給溝4のオイルは、その殆どが機関停止に伴ってピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間に流出し、その後にオイルパン(図示略)へと戻されてしまうので、再始動時に異常摩耗や焼き付きが起こり易い。
そこで、本実施例1にあっては、オイル供給溝4へと流入したオイルを保持すべく、その全面に渡って図2に示す複数本の条痕溝5を形成する。具体的に、本実施例1における夫々の条痕溝5は、図2及び図3に示す如く、ピストンピン孔3の軸線方向に対して略垂直で且つ略等間隔にオイル供給溝4の溝壁面へ形成される。尚、その条痕溝5は、必ずしもピストンピン孔3の軸線方向に対して略垂直でなくともよく、また等間隔である必要も無い。
このようにオイル供給溝4に条痕溝5を設けることによって、オイル供給溝4へと流入したオイルは、夫々の条痕溝5の中に保持される一方、その残りがピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間に供給される。
これが為、オイル供給溝4に所望量のオイルが流入しない場合においても、ピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間への安定したオイル供給が可能になり、その間での油膜切れを防ぐことができるので、ピストンピン孔3やピストンピンの異常摩耗や焼き付きを抑制することができる。特に、高回転時等の面圧が高い状況下や再始動時においては異常摩耗や焼き付きが起こり易いが、かかる場合にあっても、その間に安定してオイルが供給され、これらの異常摩耗や焼き付きを有効に抑制し得る。
また、その間の潤滑性能は如何なる状況下においても確保されるので、ピストン1の首振り(特に、上死点や下死点における姿勢変化時の首振り)がスムーズに行われ、シリンダボア壁面との間の摺動抵抗が減少する。これが為、燃料消費量の低減や高回転化による出力向上、更にはピストン1とシリンダボア壁面との間の衝突音(所謂ピストンスラップ)の低減をも図ることができる。
更にまた、条痕溝5にオイルが保持されるので、油温が低い再始動時における内燃機関の起動トルクが低下し、始動性が向上する。そして、これが為、スタータやバッテリ等の機関始動に要する機器類の小容量化が図れる。
更に、本実施例1にあってはピストンピンの外周面と接しないオイル供給溝4の溝壁面に条痕溝5が形成されているので、その条痕溝5は、ピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間における摩擦抵抗に何等の影響も及ぼさない。ここで、ピストンピン孔3の内周面やピストンピンの外周面は、その面粗さを小さくすることが好ましく、これにより、これらの間の摩擦抵抗を低減することができる。
以上示した如く、本実施例1のピストン1によれば、ピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間の摩擦抵抗を増大させることなく、その間にオイルを高回転時等の運転状態に影響されずに安定供給して潤滑性能を確保することができる。
本発明に係る内燃機関用ピストンの実施例2について説明する。
本実施例2のピストン1は、前述した実施例1のピストン1において条痕溝5を図4に示す条痕溝15aとオイル保持溝15bとに変更したものである。
具体的に、本実施例2にあっては、オイル供給溝4の溝壁面の両端部(ピストンピン孔3に対しての外側と内側)に夫々複数本の条痕溝15aを形成する。この夫々の条痕溝15aは、ピストンピン孔3の軸線方向に対して略垂直で且つ略等間隔に形成された実施例1の条痕溝5と同様のものである。尚、本実施例2にあっても、その条痕溝15aは、必ずしもピストンピン孔3の軸線方向に対して略垂直でなくともよく、また等間隔である必要も無い。
また、本実施例2にあっては、その外側における夫々の条痕溝15aと内側における夫々の条痕溝15aとの間,即ちオイル供給溝4における略中央部分の溝壁面に少なくとも1本のオイル保持溝15bを形成する。このオイル保持溝15bは、上記条痕溝15aと同様にピストンピン孔3の軸線方向に対して略垂直に形成されたものであって、その条痕溝15aよりも溝幅(ピストンピン孔3の軸線方向の幅)を広くしている。本実施例2にあっては、図4に示す如くオイル保持溝15bが1本のものを例示する。
このように、オイル供給溝4の溝壁面において、その外側と内側に複数本の条痕溝15aを形成すると共に、その略中央部分に条痕溝15aよりも幅広のオイル保持溝15bを形成することによって、そのオイル保持溝15bに多量のオイルが流入し得る一方、その外側と内側の条痕加工部分が壁となってオイル保持溝15b内のオイルの条痕加工部分への流出を防ぐことができる。即ち、本実施例2にあっては、実施例1よりも多くのオイルを保持することができる。
これが為、本実施例2のピストン1は、前述した実施例1の効果をより有効に図り得る。
即ち、多量のオイルを保持できるので、ピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間へのオイル供給の安定性が高まり、その間の油膜切れを回避して有効にピストンピン孔3やピストンピンの異常摩耗や焼き付きを抑制することができる。このように常時安定した潤滑性能を得ることができるので、本実施例2のピストン1は、高回転時等の面圧が高い状況下や再始動時においても確実に異常摩耗や焼き付きを抑制することができる。
また、ピストン1の首振り(特に、上死点や下死点における姿勢変化時の首振り)がよりスムーズになり、シリンダボア壁面との間の摺動抵抗が更に減少するので、燃料消費量の低減等の効果が更に向上する。
更にまた、オイル保持溝15bにより多量のオイルが保持されるので、油温が低い再始動時における内燃機関の起動トルクの更なる低下が図れて始動性が向上し、スタータやバッテリ等の機関始動に要する機器類の小容量化を有効に図ることができる。
更に、本実施例2にあってもピストンピンの外周面と接しないオイル供給溝4の溝壁面に条痕溝15a及びオイル保持溝15bが形成されているので、その条痕溝15aやオイル保持溝15bが設けられていることによって、ピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間における摩擦抵抗が増大しない。
以上示した如く、本実施例2のピストン1によれば、ピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間の摩擦抵抗を増大させずに多量のオイルを保持し、そのオイルを高回転時等の運転状態に影響されることなく確実にその間へと供給することができ、より安定した潤滑性能を確保することができる。
本発明に係る内燃機関用ピストンの実施例3について説明する。
本実施例3のピストン1は、前述した実施例1のピストン1において条痕溝5を図5に示す第1及び第2の条痕溝25a,25bに変更したものである。
具体的に、本実施例3にあっては、オイル供給溝4における外側と内側の溝壁面に夫々複数本の第1条痕溝25aを形成する。この夫々の第1条痕溝25aは、ピストンピン孔3の軸線方向に対して略垂直で且つ略等間隔に形成された実施例1の条痕溝5と同様のものである。
また、本実施例3にあっては、その外側における夫々の第1条痕溝25aと内側における夫々の第1条痕溝25aとの間,即ちオイル供給溝4における略中央部分の溝壁面に複数本の第2条痕溝25bを形成する。この第2条痕溝25bは、上記第1条痕溝25aと同様にピストンピン孔3の軸線方向に対して略垂直で且つ略等間隔に形成されたものであって、その底部25b1からオイル供給溝4の溝底までの距離を第1条痕溝25aの底部25a1からオイル供給溝4の溝底までの距離と略同等にし、その第1条痕溝25aよりも溝深さを浅くしたものである。
即ち、本実施例3の第1条痕溝25aは、前述した実施例2の条痕溝15aと略同等の位置に略同等の形状で形成されたものである。また、本実施例3の第2条痕溝25bは、実施例2のオイル保持溝15bよりも浅めのオイル保持溝の底部に条痕加工を施したもの、換言すれば、実施例2のオイル保持溝15bに条痕形状の複数の山を立設したものである。
これが為、本実施例3のピストン1においては、オイル供給溝4の溝壁面における略中央部分でのオイル保持量は実施例2よりも多少低下するが、その第2条痕溝25bによって実施例2よりもオイルの保持度合いが向上する,即ちオイルを保持し続けることができるので、より安定した潤滑性能を常時得ることができる。
これにより、如何なる運転状態においても更に確実に異常摩耗や焼き付きを抑制することができ、また、スタータやバッテリ等の機関始動に要する機器類の小容量化や燃料消費量の低減等の実施例2における効果をより有効に図ることができる。
また、本実施例3にあってもピストンピンの外周面と接しないオイル供給溝4の溝壁面に第1及び第2の条痕溝25a,25bが形成されているので、その第1及び第2の条痕溝25a,25bが設けられていることによって、ピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間における摩擦抵抗が増大しない。
以上示した如く、本実施例3のピストン1によれば、ピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間の摩擦抵抗を増大させることなく、多量のオイルを長期に渡って保持することができるので、その間にオイルを高回転時等の運転状態等に拘わらず更に確実に供給することができ、より安定した確実なる潤滑性能を確保することができる。
本発明に係る内燃機関用ピストンの実施例4について説明する。
図6に、本実施例4のピストン1が具備するピストンピン孔3をピストン1の内側から見た図を示す。この本実施例4のピストン1は、前述した各実施例1〜3と同様に、夫々のピストンピン孔3における上側の内周面に2本のオイル供給溝4が形成されている。
ここで、ピストン1の外壁面や内壁面を流れ落ち、オイル供給溝4から流入したオイルは、例えばその流入量が少ない場合やピストン1とシリンダボア壁面との間の油圧が低い場合に、オイル供給溝4の中央部分にまで十分に達し得ないことも考えられる。
そこで、本実施例4のピストン1においては、その夫々のオイル供給溝4の溝壁面に、ピストンピン孔3の内側から外側(又は外側から内側)に向けて図7に示す1本の螺旋状の条痕溝35を形成する。
これにより、オイル供給溝4から流入したオイルは、その螺旋状の条痕溝35に導かれてオイル供給溝4の中央部分にまで到達し易くなる。これが為、例えば上記の如きオイル流入量の少ない場合等においてもオイル供給溝4の全体にオイルを行き渡らせることができ、オイル供給溝4の全体で確実にオイルを保持させることができるので、好適な潤滑性能を確保し得る。
ここで、このような螺旋状の条痕溝35においては、オイル供給溝4へのオイルの流入量が多い程、オイル供給溝4の中央部分へとオイルが導かれ易くなる。
そこで、本実施例4のピストン1においては、ピストン1の内壁面から流れ落ちてきたオイルを少しでも多く回収し得るように、図6及び図7に示す如くピストンピン孔3の内側における周縁部分に面取り部6を設ける。この面取り部6は、少なくともオイル供給溝4よりも上側で形成されることが好ましく、これにより、その面取り部6から回収されたオイルがピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間を経てオイル供給溝4に流入する。
これが為、オイル供給溝4には、ピストン1の外壁面や内壁面から直接流入するオイルだけでなく、上記面取り部6からピストンピン孔3やピストンピンを介して流入するオイルも加わって全体のオイル流入量が増加するので、更にオイル供給溝4の中央部分へとオイルが導かれ易くなり、より好適に潤滑性能を確保することができる。
また、その面取り部6からはオイルがピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間に直接供給されるので、上記螺旋状の条痕溝35による効果と相俟って潤滑性能の向上を図ることができる。
更に、本実施例4にあってもピストンピンの外周面と接しないオイル供給溝4の溝壁面に螺旋状の条痕溝35が形成されているので、その螺旋状の条痕溝35が設けられていることによって、ピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間における摩擦抵抗が増大しない。ここで、ピストン1の上下動時にはピストンピンの変形により当該ピストンピンと面取り部6とが接することも考えられるが、このことによって摩擦抵抗の増大はない。仮に摩擦抵抗が増大するのであれば、ピストンピンの外周面と共に面取り部6についても面粗さを小さくすればよい。
このようなことから、本実施例4のピストン1によれば、ピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間の摩擦抵抗を増大させることなく、ピストン1の内壁面から流れ落ちてきたオイルの有効利用が図れる,即ちそのオイルをピストンピン孔3の内周面とピストンピンの外周面との間やオイル供給溝4へと無駄なく供給することができる。これが為、本実施例4のピストン1は、摩擦抵抗を抑制しつつ潤滑性能の向上が図れ、これにより、ピストンピン孔3やピストンピンの異常摩耗や焼き付きを抑制し、更に、燃料消費量の低減や出力向上、スタータやバッテリ等の機関始動に要する機器類の小容量化を図ることができる。
ここで、本実施例4の面取り部6は、図6に示す如く、ピストンピン孔3の内側における2つのオイル供給溝4で挟まれた上方の周縁部分にコニカル加工により設けられている。これが為、ピストンピン孔3やピストンピンが変形する際の接触応力が緩和され、ピストン1やピストンピンの破損を防ぐことができる。
本実施例4にあっては面取り部6をピストンピン孔3の内側にのみ設けたが、その面取り部6は、上記の本実施例4と同様の位置関係でピストンピン孔3の外側にも設けてもよく、また、ピストンピン孔3の外側のみに設けてもよい。また、その面取り部6はオイル供給溝4に設けてもよく、これにより、オイル供給溝4へと直接流入するオイルの量が増加されるので、上記の如き効果をより確実なるものとすることができる。
更に、本実施例4にあってはオイル供給溝4に螺旋状の条痕溝35を設けているが、これに替えて、前述した実施例1の図2に示す条痕溝5をピストンピン孔3の内側から外側に向けて傾斜させたものを設けてもよい。これによれば、オイル供給溝4に流入したオイルの流れは、傾斜した条痕溝に導かれて内側から外側又は外側から内側へと活発化するので、螺旋状の条痕溝35と同様の効果を奏することができる。
尚、以上示した各実施例1〜4においてはピストンピン孔3の軸線方向と略平行のオイル供給溝4を例示したが、必ずしもこれに限定するものではなく、そのオイル供給溝は、ピストンピン孔3の外側と内側とが連通するものであれば何れの形状のものでもよい。
以上のように、本発明に係る内燃機関用ピストンは、ピストンピン孔とピストンピンとの間における潤滑性能について摩擦抵抗を増大させずとも確保し得る技術として有用である。
1 ピストン
3 ピストンピン孔
4 オイル供給溝
5 条痕溝
6 面取り部
15a 条痕溝
15b オイル保持溝
25a 第1条痕溝
25b 第2条痕溝
35 螺旋状の条痕溝
3 ピストンピン孔
4 オイル供給溝
5 条痕溝
6 面取り部
15a 条痕溝
15b オイル保持溝
25a 第1条痕溝
25b 第2条痕溝
35 螺旋状の条痕溝
Claims (3)
- ピストンピンが挿通されるピストンピン孔の内周面に当該ピストンピン孔の外側から内側に向けた少なくとも1本のオイル供給溝を形成すると共に、該オイル供給溝の溝壁面に複数本の条痕溝を形成したことを特徴とする内燃機関用ピストン。
- 前記条痕溝を前記オイル供給溝の両端部に設けると共に、該オイル供給溝の溝壁面の略中央部分に前記条痕溝よりも幅広のオイル保持溝を形成したことを特徴とする請求項1記載の内燃機関用ピストン。
- ピストンピンが挿通されるピストンピン孔の内周面に当該ピストンピン孔の外側から内側に向けた少なくとも1本のオイル供給溝を形成すると共に、該オイル供給溝の溝壁面に螺旋状の条痕溝を形成し、前記ピストンピン孔の周縁部分に面取り部を設けたことを特徴とする内燃機関用ピストン。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015063946A (ja) * | 2013-09-25 | 2015-04-09 | トヨタ自動車株式会社 | 内燃機関 |
-
2004
- 2004-06-29 JP JP2004192155A patent/JP2006009768A/ja not_active Withdrawn
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JP2015063946A (ja) * | 2013-09-25 | 2015-04-09 | トヨタ自動車株式会社 | 内燃機関 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060607 |
|
A761 | Written withdrawal of application |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20061220 |