JP2005504010A - 成長ホルモンおよびfoxm1bを用いた肝臓疾患および肝臓損傷の処置方法 - Google Patents
成長ホルモンおよびfoxm1bを用いた肝臓疾患および肝臓損傷の処置方法 Download PDFInfo
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Abstract
本発明は、肝臓再生を刺激することによって患者における肝臓損傷または肝臓疾患を処置する方法を提供する。詳細には、本発明は、FoxM1Bタンパク質を発現する肝臓細胞を成長ホルモンと接触させることを含む、肝臓細胞の増殖を誘導する方法を提供する。本発明はまた、FoxM1Bタンパク質の発現、または核局在化、または発現および核局在化の両方を誘導する化合物についてスクリーニングする方法を提供する。本発明はさらに、選択された化合物を含む薬学的組成物、およびそのような組成物の使用方法を提供する。
Description
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/291,789号(2001年5月17日出願)、同第60/305,821号(2001年7月16日出願)および同第60/315,484号(2001年8月28日出願)に関連する。
【0002】
本出願は、糖尿病および消化器・腎臓疾患研究所からの公益補助金(補助金番号DK54687)による援助を受けた。合衆国政府は、本発明に対して一定の権利を有し得る。
【0003】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、FoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導することによって肝臓疾患および肝臓損傷を処置する方法に関する。本発明は、FoxM1Bタンパク質の発現を誘導し、そして哺乳動物細胞の核へのFoxM1Bタンパク質の転位を誘導または促進し、これにより、多くの不可欠な細胞周期促進遺伝子の転写が高められる方法に特に関する。詳細には、本発明は、患者に治療有効量の成長ホルモンを投与することを含む、肝臓損傷または肝臓疾患を防止または改善する方法に関する。本発明はさらに、肝臓細胞におけるFoxM1Bの発現を誘導する化合物、または肝臓細胞におけるFoxM1Bの核局在化を誘導する化合物、または肝臓細胞におけるFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化の両方を誘導する化合物をスクリーニングする方法に関する。本発明はまた、肝臓損傷または肝臓疾患を防止または改善するために有用であるそのような化合物、および肝臓損傷または肝臓疾患を防止または改善するための前記化合物の使用方法を提供する。
【0004】
2.関連技術の背景
哺乳動物の肝臓の重要な機能の1つは、体内に入った有害な化合物を解毒することである。肝臓において、毒性の物質は、食作用、胆汁内への分泌によって、または腎臓による除去を容易にするための化合物の化学的修飾によって身体から除かれ得る。肝臓の他の機能には、ビタミンを貯蔵すること、コレステロールおよび消化を助けるための胆汁を産生すること、過剰なグルコースをグリコーゲンに変換すること、そしてグルコースを空腹時に血液内に放出することが含まれる。肝臓はまた、すべての血清キャリアタンパク質、および血液凝固に関与するすべてのタンパク質を分泌することも担っている。従って、健康な肝臓は、動物個体またはヒト個体の全体的な健康状態に寄与する重要なものである。
【0005】
環境および食事からの様々なトキシンにより、肝臓は、生涯を通して絶えず攻撃を受けている。肝臓損傷に対する潜在的可能性が、時間とともに、そしてこれらのトキシンを除くことのストレスが増大するにつれて大きくなる。哺乳動物の肝臓は、そのような肝臓損傷に応答して自身を完全に再生することができる(Faustoら、1995、FASEB J. 9:1527〜1536;Michalopoulosら、1997、Science 276:60〜66;Taub、1996、FASEB J. 10:413〜427)。しかし、アルコールまたはある種の薬物などのトキシンに過度にさらされると、疾患をもたらす重篤な肝臓損傷が引き起こされ得る。加齢時に、肝臓の再生能は低下し、肝臓の損傷および疾患はより重篤になり、そして処置がより困難になる。従って、肝細胞の増殖を刺激し、これらの肝臓細胞の再生能力を回復させることができることは、肝臓疾患を処置することにおいて非常に有用であると考えられる。
【0006】
加齢プロセス時において、細胞周期を調節することに関与するいくつかの遺伝子の発現パターンが変化する。有糸***装置のこれらの欠陥は、中高年において見出される多くの疾患を生じさせる染色体の不安定性および変異の一因となっている(Ly他、2000、Science、287:2486〜2492)。いくつかの細胞周期調節遺伝子の低下した発現、特に、フォークヘッドボックスM1B(FoxM1B)転写因子(これは、TridentおよびHFH−11Bとしても知られている)の低下した発現は、細胞増殖における年齢に関連する欠陥の一因となっている(同上)。FoxM1Bは、HNF−3翼型らせんDNA結合ドメインとの39%のアミノ酸相同性を有する増殖特異的な転写因子である。この分子はまた、M期特異的キナーゼに対するリン酸化部位をいくつか有する強力なC末端転写活性化ドメイン、ならびに迅速なタンパク質分解を媒介するPEST配列を含む(Korverら、1997、Nucleic Acids Res.、25:1715〜1719;Korverら、1997、Genomics、46:435〜442;Yaoら、1997、J.Biol.Chem.、272:19827〜19836;Yeら、1997、Mol.Cell Biol.、17:1626〜1641)。
【0007】
FoxM1Bは、腫瘍に由来するいくつかの上皮細胞株で発現しており、G1/S移行に先立って血清によって誘導される(Korverら、1997、Nucleic Acids Res.、25:1715〜1719;Korverら、1997、Genomics、46:435〜442;Yaoら、1997、J.Biol.Chem.、272:19827〜19836;Yeら、1997、Mol.Cell Biol.、17:1626〜1641)。インシチューハイブリダイゼーション研究により、FoxM1Bが、胚の肝臓、腸、肺および腎盤で発現することが示されている(Yeら、1997、Mol.Cell Biol.、17:1626〜1641)。しかしながら、成体組織では、FoxM1Bは、胸腺、精巣、小腸および結腸の増殖中の細胞において発現しているが、肝臓および肺の有糸***後の分化細胞では発現していない(同上)。FoxM1Bの発現は、部分肝切除によって誘導される再生の後の肝細胞のDNA複製に先立って肝臓で再活性化される(同上)。
【0008】
転写活性なFoxM1B遺伝子を肝細胞で発現する遺伝子導入マウスを用いた肝臓再生研究では、FoxM1Bの早期発現は、肝細胞のDNA複製および有糸***の開始を8時間早めることが明らかにされた(Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)。遺伝子導入マウスにおける非再生肝臓での異常な肝細胞増殖は認められず、これは、FoxM1Bが、核に転位されたのではなく、細胞質に保持されたためであることが見出された(同上)。FoxM1Bは、肝臓再生時に有糸***促進のシグナル伝達に応答したときにだけ、核に転位されることが見出された(同上)。野生型および遺伝子導入型の再生中の肝臓から得られたRNAをcDNAアレイブロットのディファレンシャルハイブリダイゼーションおよびRNase保護アッセイによって分析することにより、FoxM1Bがいくつかの細胞周期調節遺伝子の発現を刺激することが示された(同上)。このデータは、FoxM1Bが細胞周期の進行を直接的または間接的のいずれかで媒介することを示している。
【0009】
遺伝子導入マウスの肝細胞におけるc−myc転写因子および腫瘍増殖因子α(TGF−α)の発現もまた、肝細胞の複製を肝臓再生時に刺激し得る。しかし、c−mycまたはTGF−αの構成的発現は肝臓腫瘍の発生率を増大させる(Factorら、1997、Hepatology、26:1434〜1443)。肝細胞におけるc−mycおよびTGF−αの同時発現もまた、酸化的ストレスおよびDNA損傷を刺激し、これらにより、部分肝切除後の老化、および4月齢〜8月齢の間における肝臓腫瘍の発達をもたらしている(同上;Factorら、1998、J.Biol.Chem.、273:15846〜15853)。
【0010】
FoxM1Bは、細胞周期促進遺伝子の転写を高めることができ、従って、トキシンおよび年齢に関連する肝臓損傷を相殺することができる肝細胞の複製を刺激することができる一方で、核内に転位されたときにだけ、そのような刺激を行う(Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)。成体の肝臓におけるFoxM1Bの発現、それに続く、適切な時期に核内に入るためのその誘導は、年齢に関連する増殖欠陥を軽減させることができ、そして望ましくない肝細胞増殖を避けることができ、これにより、c−mycまたはTGF−αの発現を誘導する化合物よりもはるかに安全な治療的介入の候補になる。
【0011】
発明の要約
本発明は、疾患肝臓および損傷肝臓における肝細胞のDNA複製および有糸***を回復させる方法を提供する。本発明はまた、哺乳動物の肝臓細胞(特に、老化した肝臓細胞またはトキシンによる損傷を受けた肝臓細胞)におけるFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導する方法を提供する。1つの局面において、本発明は、肝臓細胞を成長ホルモンと接触させることによって、FoxM1Bタンパク質の発現、またはFoxM1Bタンパク質の核局在化、またはFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導するための方法を提供する。別の局面において、本発明は、哺乳動物細胞におけるFoxM1Bタンパク質の発現を誘導する能力を有する化合物、および哺乳動物細胞におけるFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導する化合物、および哺乳動物細胞におけるFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化の両方を誘導する化合物を同定するためのスクリーニング方法を提供する。さらなる局面において、本発明は、本発明のスクリーニング方法によって同定された化合物を含む薬学的組成物を提供する。さらに、さらなる局面において、本発明は、そのような処置を必要としている患者における肝臓損傷を防止または改善する方法を提供する。
【0012】
特定の局面において、本発明は、哺乳動物の肝臓細胞におけるFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導するための方法を提供する。この場合、この方法は、肝臓細胞を成長ホルモンと接触させる工程を含む。1つの実施形態において、哺乳動物の肝臓細胞は、若齢の哺乳動物から得られる肝臓細胞の場合などのようにFoxM1Bを内因的に発現する。別の実施形態において、肝臓細胞は、加齢した哺乳動物における肝臓細胞などのように、FoxM1Bタンパク質を発現する能力が低下している。好ましい実施形態において、本発明は、細胞におけるFoxM1Bの発現および再生能力を回復させるために細胞(好ましくは肝臓細胞、最も好ましくは肝細胞)に導入され得る組換え核酸構築物を提供する。
【0013】
別の局面において、本発明は、FoxM1Bタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する核酸を含む組換え核酸構築物を提供する。好ましい実施形態において、核酸はヒトFoxM1Bをコードし、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。組換え核酸構築物はまた、FoxM1Bをコードする核酸に機能的に連結される発現制御配列を含む。1つの局面において、発現制御配列は、肝臓細胞において特異的に活性である肝臓特異的プロモーターである。この実施形態において、本発明の組換え核酸構築物を含む核酸は、構築物がインビボで送達されたとき、肝臓細胞においてのみ転写活性であり、発現される。本発明のこの局面において有用なプロモーターは、ヒトまたはマウスのα1−アンチトリプシンプロモーター、アルブミンプロモーター、血清アミロイドAプロモーター、トランスチレチンプロモーターおよび肝細胞核因子6(HNF−6)プロモーターが含むが、これらに限定されない。好ましくは、プロモーターは、成長ホルモンによって誘導されるHNF−6である。
【0014】
いくつかの局面において、本発明の組換え核酸構築物はベクターを含む。特定の実施形態において、ベクターはウイルスベクターであり、例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルスのベクターなどである。
【0015】
本発明はさらに、本発明の組換え核酸構築物を細胞(最も好ましくは、哺乳動物細胞)に導入するための方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明の組換え発現構築物はリポソームに配合され、哺乳動物の肝臓細胞に導入される。FoxM1Bの介入から利益を受け得る他の増殖性細胞タイプには、例えば、腸および結腸の上皮細胞、胸腺内の胸腺細胞および脾臓内のリンパ球、そして皮膚の基底細胞がある。本発明の組換え発現構築物はまた、例えば、ExGen500試薬(MBI Fermentas)を使用して細胞に導入することができる。
【0016】
本発明はまた、本発明の組換え核酸構築物が導入されている細胞(好ましくは、哺乳動物細胞)を提供する。好ましい実施形態において、細胞は、肝細胞、腸もしくは結腸の上皮細胞、胸腺内の胸腺細胞および脾臓内のリンパ球、または皮膚の基底細胞である。
【0017】
別の局面において、本発明は、細胞の核内に転位するためにFoxM1Bタンパク質を誘導することによって、FoxM1Bタンパク質を発現する細胞における肝臓再生を刺激する方法を提供する。特定の局面において、本発明は、そのような細胞を成長ホルモンと接触させて核局在化を誘導するための方法を提供する。
【0018】
本発明はさらに、哺乳動物細胞におけるFoxM1Bタンパク質の発現を誘導する化合物についてスクリーニングする方法を提供する。この場合、FoxM1Bタンパク質が核内に転位され得る。これらの実施形態において、本発明の方法は、FoxM1Bを通常の培養条件のもとで発現しない多数の細胞を成長ホルモンの存在下および非存在下で候補化合物と接触させる工程、成長ホルモンの存在下および非存在下で培養された細胞におけるFoxM1Bの発現および局在化をアッセイして、細胞におけるFoxM1Bの発現および核局在化を比較する工程を含み、この場合、FoxM1Bが、成長ホルモンの非存在下ではなく、成長ホルモンの存在下で前記細胞において発現し、細胞の核に局在化する場合、候補化合物が同定される。
【0019】
本発明はまた、FoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導する化合物についてスクリーニングする方法を提供する。これらの実施形態において、本発明の方法は、FoxM1Bタンパク質を発現する細胞を候補化合物と接触させる工程、および細胞におけるFoxM1Bタンパク質の細胞内局在化を調べる工程を含み、この場合、FoxM1Bタンパク質が、化合物の非存在下ではなく、化合物の存在下で細胞の核に局在化する場合、候補化合物が同定される。
【0020】
本発明はまた、FoxM1Bタンパク質の発現および核局在化の両方を誘導する化合物についてスクリーニングする方法を提供する。これらの実施形態において、本発明の方法は、(a)FoxM1Bを通常の培養条件のもとで発現しない細胞を候補化合物と接触させる工程、そして(b)細胞におけるFoxM1Bの発現および局在化をアッセイする工程を含み、この場合、FoxM1Bが、化合物と接触しなかった細胞ではなく、化合物と接触した細胞の核において発現し、局在化する場合、候補化合物が同定される。代わりの実施形態において、細胞は、化合物の存在下で細胞においてFoxM1Bの発現を誘導したとき、成長ホルモンと接触させられる。
【0021】
本発明はまた、肝臓細胞の増殖を誘導する方法を提供する。この場合、この方法は、FoxM1Bタンパク質を発現する肝臓細胞を、成長ホルモンと、または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物と接触させる工程を含む。好ましい実施形態において、細胞はFoxM1Bタンパク質を内因的に発現する。すなわち、細胞は、細胞DNAによってコードされるFoxM1Bタンパク質を発現する。別の実施形態において、細胞は、本発明の組換え核酸構築物によってコードされるFoxM1Bを発現する。
【0022】
本発明はさらに、哺乳動物における肝臓再生を刺激する方法を提供する。この場合、この方法は、哺乳動物の肝臓細胞を、成長ホルモンと、または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物と接触させる工程を含む。好ましい実施形態において、細胞はFoxM1Bタンパク質を内因的に発現する。すなわち、細胞は、細胞DNAによってコードされるFoxM1Bタンパク質を発現する。別の実施形態において、細胞は、本発明の組換え核酸構築物によってコードされるFoxM1Bを発現する。
【0023】
本発明はまた、哺乳動物における肝臓損傷を防止または改善する方法を提供する。この場合、この方法は、哺乳動物の肝臓細胞を、成長ホルモンと、または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物と接触させる工程を含む。好ましい実施形態において、細胞はFoxM1Bタンパク質を内因的に発現する。すなわち、細胞は、細胞DNAによってコードされるFoxM1Bタンパク質を発現する。別の実施形態において、細胞は、本発明の組換え核酸構築物によってコードされるFoxM1Bを発現する。特定の局面において、この方法は、肝臓損傷または肝臓疾患を受けることに関して大きい感受性または遺伝的素因を有する個体に適用されることが最も好ましい予防的措置である。
【0024】
別の局面において、前記方法は、肝臓損傷または肝臓疾患に罹患している個体に適用される治療的措置である。この局面において、本発明の方法は、損傷または疾患のさらなる進行を妨げるか、あるいは損傷または疾患の進行を逆にする。好ましい実施形態において、この方法は、肝臓移植を待っている個体に適用される。他の好ましい実施形態において、本発明の方法は、受容者に移植されるための、ドナーから摘出された肝臓に適用される。1つの実施形態において、ドナーは、FoxM1Bタンパク質の発現、またはFoxM1Bタンパク質の核局在化、またはFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導するために、手術による肝臓摘出に先立って、成長ホルモンで、または本発明のスクリーニング方法で同定された別の化合物で処置される。別の局面において、肝臓は、ドナーから摘出された後、成長ホルモンと、あるいはFoxM1Bタンパク質の発現、またはFoxM1Bタンパク質の核局在化、またはFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導する本発明のスクリーニング方法で同定された別の化合物と接触させられる。本発明の方法はまた、肝臓が移植された後、受容者を、成長ホルモンで、あるいはFoxM1Bタンパク質の発現、またはFoxM1Bタンパク質の核局在化、またはFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導する本発明のスクリーニング方法で同定された別の化合物で処置することによって受容者にも適用することができる。
【0025】
本発明はさらに、哺乳動物における肝臓損傷を防止または改善する方法を提供する。この場合、この方法は、FoxM1Bタンパク質を発現する肝臓細胞を哺乳動物に導入する工程、そしてその後、肝臓細胞を成長ホルモンまたは本発明のスクリーニング方法で同定された別の化合物と接触させる工程を含む。この局面において、肝臓細胞は、個体から取り出され、受容者個体に再導入されるが、最も好ましくは、免疫学的合併症を最小限に抑えるために同じ個体に再導入される。好ましい実施形態において、肝臓細胞はFoxM1Bを内因的に発現する。別の好ましい実施形態において、肝臓細胞は、本発明の組換え核酸構築物とエクスビボで接触させられ、それにより、細胞はFoxM1Bタンパク質を発現する。本明細書中に開示されるような同種移植片および自家移植片の両方が、患者における肝臓損傷または肝臓疾患を防止または改善するために本発明によって考えられる。本発明は、個体から取り出された肝臓細胞が、受容者に細胞が導入される前または導入された後において、成長ホルモンと、あるいはFoxM1Bタンパク質の発現、またはFoxM1Bタンパク質の核局在化、またはFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導する本発明のスクリーニング方法で同定された化合物と接触させられるこれらの方法を提供する。
【0026】
細胞周期の調節を媒介するFoxM1Bおよびその標的遺伝子の低下した発現は、12月齢(老齢)マウスの再生中の肝細胞および老齢者の増殖中の繊維芽細胞における低下した増殖と関連している。老齢のTTR−FoxM1B遺伝子導入マウスを使用した本明細書中に開示される肝臓再生研究では、FoxM1Bレベルを維持することにより、肝細胞の増殖が回復し、かつ細胞***を調節する遺伝子の発現が回復することが明らかにされる。アデノウイルス遺伝子治療を使用したFoxM1Bタンパク質の老齢マウスへの急性送達により、肝臓再生時における肝細胞のDNA複製および細胞***が回復する。これらのデータは、FoxM1B遺伝子送達が、FoxM1Bレベルが低下したことによる増殖を回復させるための治療的介入には有利であることを示唆している。この使用は、肝細胞がFoxM1B遺伝子欠損である遺伝子的に変化させたマウスを使用した本明細書中に開示される結果によって裏付けられる。FoxM1Bの欠損は、若齢マウスでさえも、肝臓障害に応答した肝細胞の増殖を阻害する。このことは、肝細胞がDNA複製および細胞***(有糸***)を経るためには、FoxM1Bの発現が必須であることを明らかにしている。FoxM1Bはまた、傷害に応答して肝臓を再生させるために必要となる肝細胞の複製にも必須である。FoxM1Bは、調べられたどの増殖中の細胞でも発現しているので、FoxM1Bは、身体のすべての細胞タイプの増殖のためには非常に重要である。まとめると、本開示により、FoxM1Bの発現が、肝臓傷害に応答した肝細胞の複製には必要であること、そして増大したFoxM1Bレベルが、中高年および肝臓疾患患者における肝細胞の増殖を回復させるためには十分であることが明らかにされる。従って、本明細書中に開示される方法は、肝臓の疾患および傷害を処置および防止するために様々な利点を提供する。
【0027】
さらに、本明細書中に開示される方法は、肝細胞の増殖を誘導するためにこの分野で知られている他の方法を上回る重要な利点を有している。一例には、遺伝子導入マウスにおけるc−mycの肝細胞での発現であり、これにより、肝細胞の複製が肝臓再生時に刺激されることである。c−mycの構成的発現は、肝臓傷害がない場合には異常な肝細胞増殖を引き起こすので望ましくない。これは、増殖シグナルがない場合、c−mycが核に局在化するためであり、肝細胞ガンなどの肝臓ガンの発達をもたらす。c−mycとは異なり、FoxM1Bの核局在化には、増殖特異的なシグナルが必要である。従って、異所的なFoxM1B発現は、休止細胞を誘導して細胞周期に入るためには不十分であり、従って、望ましくない細胞増殖を誘導しない。この特徴により、FoxM1Bを、患者が肝細胞ガンなどの肝臓ガンを発達させる危険性を伴うことなく、中高年者において、または不完全な肝臓再生を示す肝臓疾患を有する患者において認められる不完全な増殖を改善するための治療的介入のために使用することができる。休止細胞における増大したFoxM1B発現は、ガンの発達をもたらす望ましくない細胞増殖を誘導しないので、患者への投与により肝臓再生を刺激することの方がはるかに安全である。
【0028】
本発明の具体的な好ましい実施形態が、いくつかの好ましい実施形態の下記のより詳細な記載および請求項から明らかになる。
【0029】
好適な実施形態の詳細な説明
標準的な技術が、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために使用された。酵素反応および酵素精製技術が、製造者の説明書に従って、あるいはこの分野で一般に行われているように、または本明細書中に記載されるように行われた。これらの技術および手法は、一般的には、この分野で広く知られている従来の方法に従って、そして本明細書中に引用され、議論されている様々な一般的な参考文献およびより具体的な参考文献に記載されるように行われた。例えば、Sambrookら、2001、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.を参照のこと(これはすべての目的のために参考として本明細書中に組み込まれる)。具体的な定義が示されていない限り、本明細書に記載される分子生物学、遺伝子操作、分析化学、合成有機化学、医化学および製薬化学に関連して用いられる命名法、ならびにそれらの実験室手法および技術は、この分野において広く知られ、かつ一般に使用されているものである。様々な標準的な技術を、化学合成、化学分析、医薬品の調製および配合および送達、ならびに患者の処置のために使用することができる。
【0030】
文脈により別途要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、そして複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0031】
定義
本開示に従って用いられるとき、下記の用語は、別途示されない限り、下記の意味を有することを理解しなければならない。
【0032】
本明細書中で使用される用語「単離されたポリヌクレオチド」は、ゲノム起源、cDNA起源、合成起源、またはそれらの何らかの組合せであるポリヌクレオチドであり、その起源のせいで、「単離されたポリヌクレオチド」は、(1)「単離されたポリヌクレオチド」が自然界において見出されるポリヌクレオチドの全体または一部分と関連しない、(2)自然界において連結されていないポリヌクレオチドに連結されている、または(3)より大きな配列の一部分として自然界に存在しないポリヌクレオチドを意味する。
【0033】
本明細書中で示される用語「単離されたタンパク質」は、ゲノムDNA、cDNA、組換えDNA、組換えRNA、または合成起源もしくはそれらの何らかの組合せによってコードされるタンパク質で、(1)通常の場合に見出される少なくともいくつかのタンパク質を含まないタンパク質、または(2)同じ供給源(例えば、同じ種)に由来する他のタンパク質を実質的に含まないタンパク質、または(3)異なる種に由来する細胞によって発現されるタンパク質、または(4)供給源の細胞から単離されたとき、「単離されたタンパク質」が一緒に天然に見出されるポリヌクレオチド、脂質、炭水化物もしくは他の物質の少なくとも約50パーセントから分離されているタンパク質、または(5)「単離されたタンパク質」が自然界において連結されるポリペプチドの全体もしくは一部分に(共有結合的もしくは非共有結合的な相互作用により)連結されていないタンパク質、または(6)「単離されたタンパク質」が自然界において連結されていないポリペプチドに(共有結合的もしくは非共有結合的な相互作用により)機能的に連結されているタンパク質、または(8)自然界に存在しないタンパク質を意味する。好ましくは、単離されたタンパク質は、その自然環境において見出され、かつその治療的使用、診断的使用、予防的使用もしくは研究的使用を妨げる他の混在するタンパク質もしくはポリペプチドまたは他の混在物を実質的に含まない。
【0034】
用語「ポリペプチド」または用語「タンパク質」は、天然のタンパク質、すなわち、天然に存在する細胞および具体的には非組換え細胞、または遺伝子操作された細胞もしくは組換え細胞によって産生されるタンパク質を示すために本明細書中では使用され、天然タンパク質のアミノ酸配列を有する分子、あるいは天然配列の1つ以上のアミノ酸の欠失および/または付加および/または置換を有する配列を有する分子を含む。用語「ポリペプチド」および用語「タンパク質」は、具体的には、FoxM1B、またはFoxM1Bタンパク質の少なくとも1つの機能的性質を有する、FoxM1Bの1つ以上のアミノ酸の欠失および/または付加および/または置換を有するその種を含む。
【0035】
本明細書中で使用される用語「天然に存在する」は、自然界に見出され得る対象を示し、例えば、自然界における供給源から単離することができ、かつ人によって意図的に改変されていない、生物(ウイルスを含む)に存在するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列を示す。用語「天然に存在する」または用語「天然の」は、核酸分子、ポリペプチドおよび宿主細胞などの生物学的材料に関連して使用されるとき、自然界に見出され、かつ人によって操作されていない材料を示す。同様に、本明細書中で使用される「組換え」または「天然に存在しない」または「非天然の」は、自然界に見出されないか、または人により構造的に改変されているか、もしくは人により合成された材料を示す。
【0036】
本明細書中で使用されているように、20個の通常のアミノ酸およびそれらの略号は従来の使用法に従う。IMMUNOLOGY−A SYNTHESIS、第2版(E.S.GolubおよびD.R.Gren編)、1991、Sinauer Associates、Sunderland、Mass.を参照のこと(これはすべての目的のために参考として本明細書中に組み込まれる)。いくつかの実施形態により、1個または複数個のアミノ酸の置換(いくつかの実施形態では、保守的なアミノ酸置換)を、天然に存在する配列において行うことができる(いくつかの実施形態では、分子間の接触部を形成するドメインの外側のポリペプチド部分において行うことができる)。いくつかの実施形態において、保守的なアミノ酸置換は元の配列の構造的特徴を実質的に変化させない(例えば、代替アミノ酸は、元のタンパク質または天然のタンパク質を特徴づける二次構造(らせんなど)を破壊しないはずである)。この分野で認められているポリペプチドの二次構造および三次構造の様々な例が、PROTEINS,STRUCTURES AND MOLECULAR PRINCIPLES(Creighton編)、1984、W.H.New York:Freeman and Company;INTRODUCTION TO PROTEIN STRUCTURE(BrandenおよびTooze編)、1991、New York:Garland Publishing;Thorntonら、1991、Nature、354:105に記載される(これらはそれぞれが参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0037】
保守的なアミノ酸置換では、生物学的システムにおける合成によってではなく、化学的なペプチド合成によって典型的には取り込まれる、天然に存在しないアミノ酸残基を含むことができる。これらには、アミノ酸成分のペプチド模倣体および他の逆転型形態または反転型形態が含まれる。
【0038】
天然に存在する残基は、共通する側鎖性質に基づいて下記のクラスに分けることができる:1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;2)中性かつ親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;3)酸性:Asp、Glu;4)塩基性:His、Lys、Arg;5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0039】
例えば、非保守的な置換では、これらのクラスのあるクラスのメンバーを、別のクラスに由来するメンバーに交換することが含まれることがある。そのような置換残基は、非ヒト抗体と相同的であるヒト抗体の様々な領域に、または分子の非相同的領域に導入することができる。
【0040】
そのような変化を行うとき、いくつかの実施形態により、アミノ酸のヒドロパシー指数(hydropathic index)が考慮されることがある。それぞれのアミノ酸には、その疎水性および電荷特性に基づいたヒドロパシー指数が割り当てられている。それらは次の通りである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸塩(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸塩(−3.5);アスパラギン(−3.5);リシン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)(Kyteら、1982、J.Mol.Biol.、157:105〜131)。
【0041】
相互作用する生物学的機能をタンパク質に与えることにおけるアミノ酸のヒドロパシー指数の重要性がこの分野では理解されている(例えば、Kyteら、1982、J.Mol.Biol.、157:105〜131を参照のこと)。いくつかのアミノ酸は、類似するヒドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸に置換することができ、類似する生物学的活性を依然として保持し得ることが知られている。ヒドロパシー指数に基づく変化を行う際には、いくつかの実施形態において、ヒドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれる。いくつかの実施形態では、±1以内であるアミノ酸が含まれ、いくつかの実施形態では、±0.5以内であるアミノ酸が含まれる。
【0042】
類似するアミノ酸の置換が、親水性に基づいて効果的に行われ得ることもまた理解される。特に、それにより作製された生物学的に機能的なタンパク質またはペプチドが、本発明の場合のような免疫学的実施形態における使用のために意図される場合にはそうである。いくつかの実施形態において、タンパク質の最大の局所的平均親水性が、その隣接アミノ酸の親水性によって支配されるが、その免疫原性および抗原結合性または免疫原性と、すなわち、タンパク質の生物学的性質と相関する。
【0043】
米国特許第4,554,101号に記載されるように、下記の親水性値がこれらのアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸塩(+3.0±1);グルタミン酸塩(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。類似する親水性値に基づく変化を行う際には、いくつかの実施形態では、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれ、いくつかの実施形態では、±1以内であるアミノ酸が含まれ、いくつかの実施形態では、±0.5以内であるアミノ酸が含まれる。
【0044】
代表的なアミノ酸置換が表1に示される。
【表1】
【0045】
当業者は、十分に広く知られている様々な技術を使用して本明細書中に示されるようなポリペプチドの好適な変化体を決定することができる。いくつかの実施形態において、当業者は、活性のために重要であるとは考えられない領域を標的化することによって、活性を破壊することなく変化させることができる分子の好適な領域を同定することができる。いくつかの実施形態において、類似するポリペプチドの間で維持されている分子の残基および部分を同定することができる。いくつかの実施形態において、生物学的活性または構造のために重要である領域でさえ、生物学的活性を破壊することなく、またはポリペプチドの構造に悪影響を及ぼすことなく、保守的なアミノ酸置換に供することができる。
【0046】
さらに、当業者は、活性または構造のために重要である残基を類似ポリペプチドにおいて同定する構造−機能研究を検討することができる。そのような比較を考慮して、類似するタンパク質における活性または構造のために重要なアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基のタンパク質における重要性を予測することができる。当業者は、そのような予測された重要なアミノ酸残基に対する化学的に類似するアミノ酸置換の方を選ぶことができる。
【0047】
当業者はまた、類似するポリペプチドにおけるその構造に関連して三次元構造およびアミノ酸配列を分析することができる。そのような情報を考慮して、当業者は、その三次元構造に関して抗体のアミノ酸残基のアラインメントを予測することができる。いくつかの実施形態において、当業者は、タンパク質の表面に位置することが予測されたアミノ酸残基に対する根元的な(radical)変化をもたらさないように選ぶことができる。これは、そのような残基は、他の分子との重要な相互作用に関与し得るからである。さらに、当業者は、それぞれの所望するアミノ酸残基における一アミノ酸置換を含む試験変化体を作製することができる。このような変化体は、その後、当業者に知られている活性アッセイを使用してスクリーニングすることができる。そのような変化体を使用して、好適な変化体に関する情報を集めることができる。例えば、特定のアミノ酸残基に対する変化が、活性の破壊、または活性の望ましくない低下、または適さない活性をもたらすことが発見された場合、そのような変化を有する変化体を避けることができる。すなわち、そのような日常的実験から集められた情報に基づいて、当業者は、さらなる置換を単独または他の変異との組合せでのいずれでも避けなければならないアミノ酸を容易に決定することができる。
【0048】
20個の通常的なアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、天然に存在しないアミノ酸(α,α−二置換アミノ酸など)、N−アルキルアミノ酸、乳酸、および他の非通常的なアミノ酸もまた、本発明のポリペプチドのための好適な成分であり得る。非通常的なアミノ酸の例には、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸塩、ε−N,N,N−トリメチルリシン、ε−N−アセチルリシン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、σ−N−メチルアルギニン、ならびに他の類似するアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書中で使用されるポリペプチド表記法では、標準的な使用法および規約に従って、左手側の方向がアミノ末端方向であり、右手側の方向がカルボキシ末端方向である。
【0049】
ペプチド類似化合物が、テンプレートペプチドの性質に類似する性質を有する非ペプチド薬物として製薬業界では一般に使用される。これらのタイプの非ペプチド化合物は「ペプチド模倣体(peptide mimetics)」または「ペプチドミメティクス(peptidomimetics)」と呼ばれる(Fauchere、1986、Adv.Drug Res.、15:29;VeberおよびFreidinger、1985、TINS、392頁;Evans他、1987、J.Med.Chem.、30:1229を参照のこと。これらはすべての目的のために参考として本明細書中に組み込まれる)。そのような化合物は、コンピューターを使用した分子モデル化の助けによって開発されることが多い。治療的に有用なペプチドと構造的に類似するペプチド模倣体を使用して、類似する治療効果または予防効果を得ることができる。一般に、ペプチドミメティクスは、ヒト抗体などのパラダイムペプチド(すなわち、生化学的性質または薬学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、1つ以上のペプチド結合が、この分野で広く知られている方法によって、場合により、−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−および−CH2SO−などの結合により置き換えられている。コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸を同じ型のD−アミノ酸(例えば、L−リシンの代わりにD−リシン)で系統的に置換することが、より安定なペプチドを作製するために、いくつかの実施形態では使用され得る。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列の変化を含む立体配置的に制約されたペプチドを、この分野で知られている方法(RizoおよびGierasch、1992、Ann.Rev.Biochem.61:387;これはすべての目的のために参考として本明細書中に組み込まれる)によって、例えば、ペプチドを環化する分子内ジスルフィド架橋を形成し得る内部システインを付加することによって作製することができる。
【0050】
別途示されない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左手側の端部が5’端部であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左手側の方向が5’方向として示される。初期RNA転写物の5’から3’への付加方向が転写方向として示される;RNAと同じ配列を有するDNA鎖における配列領域で、RNA転写物の5’末端に対して5’側の配列領域が、「上流配列」と示され、RNAと同じ配列を有するDNA鎖における配列領域で、RNA転写物の3’末端に対して3’側の配列領域が、「下流配列」と示される。
【0051】
本明細書中で使用される用語「ポリヌクレオチド」は、長さが少なくとも10塩基であるヌクレオチドのポリマー形態を意味する。いくつかの実施形態において、塩基は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドまたはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾された形態であり得る。この用語には、一本鎖形態および二本鎖形態のDNAが含まれる。
【0052】
本明細書中で使用される用語「オリゴヌクレオチド」は、天然に存在するオリゴヌクレオチド連結および/または天然に存在しないオリゴヌクレオチド連結によって連結された天然に存在するヌクレオチド、およびそのような修飾ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、多くても200ヌクレオチドを一般には含むポリヌクレオチドのサブセットである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは長さが10ヌクレオチド〜60ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、長さが、12塩基、13塩基、14塩基、15塩基、16塩基、17塩基、18塩基、19塩基または20塩基から40塩基までである。オリゴヌクレオチドは、例えば、部位特異的変異誘発技術を使用する遺伝子変異体の構築において使用される一本鎖である。本発明のオリゴヌクレオチドはセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。
【0053】
用語「天然に存在するヌクレオチド」には、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドが含まれる。用語「修飾ヌクレオチド」には、修飾された糖基または置換された糖基などを有するヌクレオチドが含まれる。用語「オリゴヌクレオチド連結」には、リン酸塩、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデートおよびホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド連結が含まれる。例えば、LaPlancheら、1986、Nucl.Acids Res.、14:9081;Stecら、1984、J.Am.Chem.Soc.、106:6077;Steinら、1988、Nucl.Acids Res.、16:3209;Zonら、1991、Anti−Cancer Drug Design、6:539;Zonら、1991、OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES:A PRACTICAL APPROACH(F.Eckstein編)、Oxford University Press、Oxford(英国)、87頁〜108頁;Stec他、米国特許第5,151,510号;UhlmannおよびPeyman、1990、Chemical Reviews、90:543を参照のこと(これらのそれぞれの開示はすべての目的のために参考として本明細書により組み込まれる)。オリゴヌクレオチドは、放射性標識、蛍光標識、抗原性標識またはハプテンなどの検出可能な標識を含むことができる。
【0054】
用語「剤(agent)」は、化学化合物、化学化合物の混合物、生物学的高分子、または生物学的材料から作製された抽出物を示すために本明細書中では使用される。
【0055】
本明細書中で使用される用語「標識」または用語「標識された(される)」は、例えば、放射能標識されたアミノ酸を取り込むことによって、または標識されたアビジン(例えば、光学的方法または比色的方法により検出され得る蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)により検出され得るビオチン成分をポリペプチドに結合することによって検出可能なマーカーを含むことを示す。いくつかの実施形態において、標識またはマーカーはまた治療的であり得る。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法を使用することができ、それらはこの分野では知られている。ポリペプチドに対する標識の例には、下記のものが含まれるが、これらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチン、および二次レポーターにより認識される事前に決定されたポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。いくつかの実施形態において、標識は、立体障害を減らすために様々な長さのスペーサーアーム(−(CH2)n−(n=1〜50、より好ましくは1〜20)など)によって結合させられる。
【0056】
本明細書中で使用される表現「組換え核酸構築物」は、制御配列に機能的に連結されるコード配列を含むDNA配列またはRNA配列を示す。本発明の組換え核酸構築物は、細胞内に導入されたとき、コード配列によってコードされるタンパク質を発現させることができる。本発明の組換え核酸構築物は、好ましくは、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードする核酸配列、例えば、配列番号1に示されるような核酸配列を含み、それにより、組換え核酸構築物と接触した細胞はFoxM1Bタンパク質を発現する。本明細書中で使用される用語「機能的に連結される」は、それらの意図された様式または通常の様式でそれらを機能させることができる関係にある構成成分を示す。例えば、コード配列に「機能的に連結される」制御配列は、コード配列の発現が、制御配列と適合し得る条件のもとで達成されるような様式でコード配列に連結される。
【0057】
本明細書中で使用される用語「制御配列」は、連結されるコード配列の発現およびプロセシングを行うことができるポリヌクレオチド配列を示す。そのような制御配列の性質は、宿主生物に依存して変化し得る。いくつかの実施形態によれば、原核生物に対する制御配列には、プロモーター、リプレッサー、オペレーター、リボソーム結合部位、ならびに転写終結配列およびアンチセンスmRNAを挙げることができる。いくつかの実施形態によれば、真核生物に対する制御配列には、プロモーター、エンハンサーおよび転写終結配列、タンパク質分解、mRNA分解、核局在化、核外輸送、細胞質保持、タンパク質リン酸化、タンパク質アセチル化、タンパク質スモレーション(sumolation)、RNAi阻害を挙げることができる。いくつかの実施形態において、「制御配列」には、リーダー配列および/または融合パートナー配列を挙げることができる。「制御配列」は、連結されるコード配列の発現およびプロセシングを「制御配列」が行うとき、コード配列に「機能的に連結される」。
【0058】
本明細書中で使用される表現「肝臓特異的なプロモーター」は、コード配列の転写を行わせることができ、かつ肝臓細胞内において特異的に活性化される核酸配列を示す。本発明の方法のために好適な肝臓特異的なプロモーターには、ヒトまたはマウスのα1−アンチトリプシン、アルブミンプロモーター、血清アミロイドA、トランスチレチン、および肝細胞核因子6が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
用語「ベクター」は、宿主細胞にコード情報を移すために使用される任意の分子(例えば、核酸、プラスミドまたはウイルス)を示すために使用される。本発明の方法のために好適なウイルスベクターには、例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルスに由来するベクターが含まれる。
【0060】
用語「発現ベクター」は、宿主細胞を形質転換するために好適であり、挿入された異種の核酸配列の発現を命令および/または制御する核酸配列を含むベクターを示す。発現には、転写、翻訳、およびイントロンが存在する場合にはRNAスプライシングなどのプロセスが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
用語「宿主細胞」は、核酸配列が導入されている細胞、または核酸配列が導入され、その後、目的とする遺伝子を発現させることができる細胞を示すために使用される。この用語には、遺伝子が存在する限り、子孫が形態学または遺伝的構成において最初の親と同一であるか否かによらず、親細胞の子孫が含まれる。
【0062】
用語「形質導入」は、通常的にはファージによるある細菌から別の細菌への遺伝子の移入を示すために使用される。「形質導入」はまた、レトロウイルスなどのウイルスによる真核生物の細胞性配列の獲得および移入を示す。
【0063】
用語「トランスフェクション」は、外部DNAまたは外因性DNAの細胞による取り込みを示し、外因性DNAが細胞膜の内部に導入されているとき、細胞は「トラスフェクション」されている。多数のトランスフェクション技術がこの分野では知られており、そして本明細書中に開示される。例えば、Grahamら、1973、Virology、52:456;Sambrookら、2001、同上;Davisら、1986、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY(Elsevier);Chuら、1981、Gene、13:197を参照のこと。そのような技術は、1つ以上の外因性DNA成分を好適な宿主細胞に導入するために使用することができる。
【0064】
本明細書中で使用される用語「形質転換」は細胞の遺伝的特徴の変化を示し、細胞が、新しいDNAを含有するために改変されているとき、細胞は形質転換されている。例えば、細胞は、その天然状態から遺伝子的に改変される場合、形質転換される。トランスフェクションまたは形質導入の後、形質転換DNAは、細胞の染色体に物理的に組み込まれることによって細胞のDNAと組み換えられ得るか、または複製されることなくエピソームエレメントとして一時的に維持され得るか、またはプラスミドとして独立的に複製し得る。DNAが細胞の***とともに複製するとき、細胞は安定的に形質転換される。
【0065】
本明細書中で使用される用語「薬学的組成物」は、患者に適正に投与されたとき、所望する治療効果を誘導することができる化学的な化合物または組成物を示す。
【0066】
用語「治療有効量」は、哺乳動物における治療的応答をもたらすことが決定された成長ホルモンの量または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物の量を示す。そのような治療有効量は当業者によって容易に確認される。
【0067】
本明細書中で使用される「実質的に純粋な」は、存在する優勢な種である対象種を意味する(すなわち、モル量に基づいて、対象種が、組成物内の任意の他の個々の種よりも多量である)。いくつかの実施形態において、実質的に精製された画分は、対象種が、(モル数に基づいて、または重量もしくは数に基づいて)存在するすべての高分子種の少なくとも約50パーセントを含む組成物である。いくつかの実施形態において、実質的に純粋な組成物は、組成物に存在するすべての高分子種の約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上または約99%以上を含む。いくつかの実施形態において、対象種は、組成物が実質的に単一の高分子種からなる本質的な均一にまで精製される(この場合、混在する種は、通常の検出方法によって組成物中に検出することができない)。
【0068】
用語「患者」は、ヒトおよび動物の対象体を含む。
【0069】
本明細書中で使用される用語「自家移植」は、生物の一部分を取り出し、同じ個体の体内においてそれを置き換えることを示す。自家移植は、同種の器官または組織または細胞を個体に導入することであり得る。
【0070】
本明細書中で使用される用語「同種移植」は、ある個体の一部分を取り出し、異なる個体の体内においてそれを置き換えることを示す。同種移植はまた、異種移植(xenograft、heterograftまたはheterologous graft)として示される。同種移植片は、例えば、臓器供与から得ることができる。
【0071】
本明細書中で使用される表現「肝臓細胞」は、哺乳動物の肝臓を構成する細胞を示す。肝臓細胞には、例えば、肝細胞、クッパー細胞、胆管上皮細胞、有窓内皮細胞およびイトウ細胞が含まれる。
【0072】
本明細書中で使用される用語「肝臓再生」は、新しい肝臓組織の成長または増殖を示す。本発明の再生された肝臓組織は、正常な肝臓組織の細胞学的特徴および組織学的特徴および機能的特徴を有する。そのような特徴は、この分野で知られている任意の方法によって調べることができる。例えば、本発明の再生された肝臓組織は、肝機能を示す一般的なマーカーの発現について調べることができる。
【0073】
表現「肝機能」は、肝臓によって行われる多くの生理学的機能の1つ以上を示す。そのような機能には、血糖レベルを調節すること、内分泌調節、酵素システム、代謝産物(例えば、ケトン体、ステロールおよびステロイドおよびアミノ酸)の相互変換;フィブリノーゲン、血清アルブミンおよびコリンエステラーゼなどの血液タンパク質を製造すること、赤血球生成の機能、解毒化、胆汁形成、ならびにビタミン貯蔵が含まれるが、これらに限定されない。肝機能を調べるためのいくつかの試験がこの分野では知られており、これらには、例えば、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ、ビリルビン、プロトロンビンおよびアルブミンが含まれる。
【0074】
本明細書中で使用される表現「肝臓疾患」または用語「肝臓損傷」は、肝機能を損なう任意の状態を示す。「肝臓損傷」は、例えば、ウイルス感染、寄生虫感染、遺伝的素因、自己免疫疾患、放射線被曝、肝毒性化合物にさらされること、機械的傷害、および様々な環境的トキシンを含む多数の要因のいずれかによって引き起こされる肝臓障害に応答して生じ得る。アルコール、アセトアミノフェン、アルコールおよびアセトアミノフェンの組合せ、吸入麻酔薬、ナイアシン、そして薬草補充物カワは、肝臓損傷を引き起こし得る化合物の例の一部である。肝臓損傷の多くの形態は肝硬変をもたらす。肝硬変は、広範囲にわたる線維症および再生小節を含む慢性的な肝臓損傷を伴う病理学的状態である。本明細書中で使用される「線維症」は、肝臓における線維芽細胞の増殖および瘢痕組織の形成を示す。
【0075】
一般的な「肝臓疾患」には、若年小児におけるライ症候群、ウィルソン病、血色素症、α−1−アンチトリプシン欠乏症、様々な寄生虫感染症、ウイルス疾患、肝硬変および肝臓ガンが含まれるが、これらに限定されない。ウイルス疾患の例には、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎およびG型肝炎による感染が含まれる。寄生虫感染症の例には、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma hematobium)および日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)が含まれる。
【0076】
用語「成長ホルモン」は、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、および好ましくはヒトを含む任意の種に由来する、天然配列または変化体形態にある成長ホルモン、ならびに、天然または合成または組換えであっても、任意の供給源に由来する成長ホルモンを示す。ヒトでの使用の場合、ヒト天然配列の成熟型成長ホルモンが本明細書中では好ましく、この場合、メチオニンがそのN末端に存在するか、またはメチオニンがそのN末端に存在しない。同様に、例えば、組換えDNA技術によって製造される組換えヒト成長ホルモン(hGH)もまた好ましい。
【0077】
ヒト成長ホルモンは市販されており、ソマトレムおよびソマトロピンとして知られている。ソマトレムは、典型的には、hGH不足が原因である成長不良の小児を処置するために使用される。小児に対するソマトレムの通常的な1週間投薬量は、体重1キログラム(kg)あたり0.3ミリグラム(mg)である。ソマトロピンは、ターナー症候群、腎臓疾患、またはhGH欠乏が原因である成長不良を処置するために使用される。小児に対するソマトロピンの通常的な1週間投薬量は、体重1kgあたり0.16mg〜0.375mgである。成人の場合、0.006mg/kgが通常の場合には毎日服用され、必要に応じて徐々に増やされる。劇的な体重減少を受けるAIDS患者には、体重に依存して1日あたり6mgまでのソマトロピンが与えられる。ソマトロピンおよびソマトレムは、典型的には、皮下への注射によって、または直接筋肉内への注射によって投与される。経口投与される成長ホルモンの形態もまたこの分野では知られている(例えば、米国特許第6,239,105号を参照のこと)。
【0078】
マウスでの遺伝学的研究により、増大したp53活性により、早すぎる老化、および早期の老化に関連した表現型をもたらすことが明らかにされている(Tynerら、2002、Nature、415:45〜53)。FoxM1Bの増大した発現が老齢TTR−FoxM1B TGマウスの再生中の肝細胞における低下したp53タンパク質レベルを媒介する能力が、本明細書中に記載されるように調べられた。肝細胞のDNA複製の前(PHx後の24時間〜36時間)において、ウエスタンブロット分析では、p53タンパク質レベルの50%〜70%の低下が、老齢のWTマウスと比較した場合、老齢TTR−FoxM1B TGマウスの再生中の肝臓において明らかにされた。p53タンパク質レベルの低下と完全に一致して、老齢TTR−FoxM1B TGマウスの再生中の肝臓では、S期前のp21Cip1タンパク質の発現が50%低下することが観測された。これらの肝臓再生研究は、FoxM1Bのレベルを維持することにより、老齢TTR−FoxM1B TGマウスでは、p53タンパク質およびp21Cip1タンパク質の低下した発現がG1期からS期への移行時にもたらされたことを示しており、このことは、老化の表現型に関連する低下した増殖を防止することと一致している。
【0079】
加齢時における増殖欠陥は筋肉量の低下および皮膚の薄化をもたらし、このことは、成長ホルモン(GH)の分泌および血清中のGH結合タンパク質の進行性の減退と関連している。GHで処置された老齢マウスは、再生中の肝細胞のDNA複製および有糸***が、若齢の再生中の肝臓において見出されるレベルに増大することを示した。さらに、本明細書中に明らかにされるように、FoxM1Bの増大した発現および核局在化は、GHが老齢マウスの再生中の肝臓における肝細胞の増殖を回復させる機構である。このことは、GHが、老齢マウスの再生中の肝臓におけるFoxM1Bの発現を回復させることによって肝細胞の増大した増殖を媒介することを示唆している。
【0080】
本明細書中で議論されているように、短期間のGH投与は、肝臓再生に欠陥を示す疾患肝臓におけるFoxM1Bの発現および肝臓細胞の増殖を刺激するために使用することができる。また、短期間のGH投与は、受容者への肝臓の生体ドナー移植片において効果的であり得る。これらは、その肝葉の1つを受容者に与えるドナーであり、そしてドナーおよび受容者の両方における肝臓の再生を必要とする。ドナーおよび肝臓疾患受容者に対する数日前のGH投与は、生体ドナーの肝臓において、そして受容者において肝臓の再生を刺激することができ、両方の患者についてより良好な予後を可能にする。本明細書中の実施例により、GHの投与が、FoxM1Bの増大した発現および核局在化によって肝臓の再生を高める有用な治療的介入であることが明らかにされる。
【0081】
本発明は、肝臓損傷または肝臓疾患に関して診断された患者を処置するための様々な方法を提供する。本発明のこれらの局面において、患者は、医学的に慢性的な様式でなく、医学的に急性的な様式で成長ホルモンで処置される。すなわち、処置は、疾患または傷害または損傷の性質および程度によって限定される継続期間を有し、そして患者における好ましい応答を検出したときに停止される。好ましくは、本発明は、医学的に急性的な様式で成長ホルモンにより処置された患者におけるFoxM1Bタンパク質の一時的な核局在化をもたらす。本明細書中で使用される「一時的な核局在化」は、細胞の核におけるFoxM1Bタンパク質の非永続的な局在化を示す。例えば、FoxM1Bタンパク質を、成長ホルモンにさらすことによって肝細胞の核に局在化するように誘導することができ、その一方で、FoxM1Bタンパク質は、成長ホルモンに対する暴露が中断されると核において検出することができない。
【0082】
患者は、好ましくは、この分野で知られている様々なアッセイを使用して、肝臓損傷または肝臓疾患についてスクリーニングされる。例えば、肝臓のアミノトランスフェラーゼ酵素(アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸塩アミノトランスフェラーゼ(AST)など)の血清レベルにより、患者における肝臓損傷の量の指標が提供され得る。ほとんどの肝臓疾患において、ASTレベルの増大はALTの増大よりも小さい(すなわち、AST/ALTの比率は1未満である)。しかし、アルコールが原因である肝臓障害では、この比率は>2であることが多い。患者における肝臓損傷の量を測定するための他の方法には、ビリルビン、プロトロンビンおよびアルブミンのレベルを測定することが伴う。肝臓損傷および肝臓疾患をスクリーニングおよび診断するための様々な方法の総説については、THE MERCK MANUAL、第17版(BeersおよびBerkow編)、1999、Whitehouse Station、N.J.を参照のこと。従って、例えば、ALT、ASTおよびビリルビンの血清レベルが高く、アルブミンの血清レベルが低い患者は、本発明の方法に従って成長ホルモンが有利に投与される。
【0083】
ヒト成長ホルモン(hGH)の場合、ヒト投与のための好適な投薬量は、1日あたり体重1kgについて0.001mg〜約0.2mgの範囲である。一般に、hGHの治療効果的な1日投薬量は、1日あたり体重1kgについて約0.05mg〜約0.2mgである。ほとんどの患者については、1日あたり1回以上の適用において0.07mg/kg〜0.15mg/kgの用量が、所望する結果を得るために効果的である。代わりの方法では、hGHは、より少ない頻度で投与することができ、特に、徐放性形態で配合されている場合には、例えば、ある種の適用症については1日おきに、または2日おきに投与することができる。
【0084】
hGHによる処置の期間中、患者は、肝機能の改善について、本明細書中に記載され、この分野で知られているアッセイによってモニターされ得る。肝機能が、健康な肝臓のレベルに類似するレベルに回復したとき、これは、肝臓の再生プロセスが十分であることを示唆するので、成長ホルモンの投与が停止される。従って、患者が成長ホルモンに慢性的にさらされないことが本発明の利点である。
【0085】
本発明の方法は、例えば、外傷による肝臓損傷を有する患者、ならびに肝臓損傷を受けることに対する危険性が大きい患者、例えば、アルコール中毒者、および肝臓疾患に対する遺伝的素因を有する患者など、そして環境的トキシンおよび工業的トキシンおよび化学的トキシンに日常的にさらされる患者に関して有利に使用される。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明は、肝臓細胞において細胞質から核に転位するためにFoxM1Bタンパク質を誘導することによって哺乳動物における肝臓損傷または肝臓疾患を処置するための様々な方法を提供する。この場合、FoxM1Bタンパク質は多くの細胞周期促進遺伝子の転写を高め、細胞増殖を刺激する。特定の実施形態において、哺乳動物は、FoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導するために成長ホルモンで処置される。
【0087】
他の実施形態において、本発明は、FoxM1Bタンパク質の発現を誘導する化合物、またはFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導する化合物、またはFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化の両方を誘導する化合物についてスクリーニングするための様々な方法を提供する。これらのスクリーニングで同定された化合物は、本明細書中に記載されるように肝臓損傷および肝臓疾患を処置する方法において使用することができる。
【0088】
FoxM1Bタンパク質の発現を誘導する化合物に対するスクリーニングは、例えば、FoxM1B遺伝子を含むが、FoxM1Bタンパク質を通常の培養条件のもとで発現しない細胞を用いて達成され得る。そのような細胞には、例えば、加齢した個体に由来する肝細胞、または下記に議論されるようにFoxM1B遺伝子を含む宿主細胞、またはFoxM1Bタンパク質を発現しない休止細胞を挙げることができる。
【0089】
哺乳動物細胞におけるFoxM1Bタンパク質の発現を誘導する化合物についてスクリーニングする方法は、下記のように達成され得る:(a)FoxM1B遺伝子を含み、FoxM1Bタンパク質が通常の培養条件のもとで発現されない多数の細胞を成長ホルンの存在下で候補化合物と接触させること;(b)FoxM1B遺伝子を含み、FoxM1Bタンパク質が通常の培養条件のもとで発現されない多数の細胞を成長ホルンの非存在下で該候補化合物と接触させること;そして(c)工程(a)および工程(b)から得られる細胞におけるFoxM1Bの発現および局在化をアッセイすること;この場合、FoxM1Bが、工程(a)から得られる細胞の核に局在化し、かつ工程(b)から得られる細胞の細胞質に局在化する場合、候補化合物が選択される。前記のアッセイは、FoxM1Bの核局在化に対する直接的なアッセイであり得るか、または細胞質から核内へのFoxM1Bの転位の結果として発現した遺伝子産物の存在もしくは活性に対する間接的なアッセイであり得る。
【0090】
FoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導する化合物についてスクリーニングする方法は、FoxM1Bタンパク質を発現する細胞を候補化合物と接触させること、そして細胞におけるFoxM1Bタンパク質の局在化を調べることによって達成され得る。候補化合物は、FoxM1Bタンパク質が細胞の核に局在化する場合に選択される。いくつかの実施形態において、FoxM1Bは内因性であり、すなわち、細胞のゲノムDNA補体を含む。他の実施形態において、FoxM1Bは外因性であり、最も好ましくは異種のFoxM1B遺伝子、すなわち、宿主細胞種とは異なる哺乳動物種から得られる異種のFoxM1B遺伝子をコードする本発明の組換え核酸構築物が最も好ましく、そのような組換え核酸構築物として実験的に導入される。
【0091】
成長ホルモンの様式と類似する様式でFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化の両方を誘導する化合物についてスクリーニングする方法は、下記のように達成され得る:(a)FoxM1B遺伝子を含み、FoxM1Bタンパク質が通常の培養条件のもとで発現されない多数の細胞を候補化合物と接触させること;yおよび(b)工程(a)から得られる細胞におけるFoxM1Bの発現および核局在化をアッセイすること;この場合、FoxM1Bが、成長ホルモンと接触した細胞において観測されるパターンと類似する様式で、化合物と接触した細胞の核において発現および局在化する場合、候補化合物が選択される。代わりの実施形態では、工程(a)の細胞を、工程(b)におけるアッセイの前に成長ホルモンと接触させることができる。
【0092】
FoxM1Bタンパク質の核局在化および発現についてアッセイすることは、この分野で知られている任意の方法によって達成され得る。例えば、抗FoxM1B抗体と、蛍光マーカー(フルオレセインイソチオシアナート(FITC)など)で標識された二次抗体とを使用する免疫組織化学を、FoxM1Bタンパク質の局在化を蛍光顕微鏡によって可視化するために使用することができる。あるいは、一次抗体を蛍光標識またはそれ以外の標識で標識することができる。放射性標識、酵素標識およびハプテン標識などの代わりの標識は本発明の範囲内である。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、本発明の組換え核酸構築物を宿主細胞に導入することによって宿主細胞においてFoxM1Bタンパク質を発現させることを含む。そのような実施形態により、細胞は、例えば、ポリヌクレオチドをウイルス(またはウイルスベクター)にパッケージングし、宿主細胞をそのウイルス(またはベクター)により形質導入することなど含む、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の知られている方法を使用して、または米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号および同第4,959,455号(そのような特許はすべての目的のために本明細書により参考として本明細書中に組み込まれる)により例示されるようなこの分野で知られているトランスフェクション手法によって組換え核酸構築物で形質転換される。いくつかの実施形態において、使用される形質転換手法は、形質転換される宿主に依存し得る。異種のポリヌクレオチドを哺乳動物の細胞に導入するための様々な方法がこの分野では広く知られており、これらには、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム内へのポリヌクレオチド(1つまたは複数)のカプセル化、核酸を陽荷電の脂質と混合すること、および核内へのDNAの直接的な顕微注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
本発明の組換え核酸構築物は、典型的には、標準的な連結技術を使用して適切な発現ベクターに挿入される、FoxM1Bタンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸分子を含む。好ましくは、本発明の組換え核酸構築物は、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードする核酸配列を含む。ベクターは、典型的には、用いられる特定の宿主細胞において機能するように選択される(すなわち、ベクターは、増幅を可能にする宿主細胞装置との適合性を有し、かつ/または遺伝子の発現が生じ得る)。発現ベクターの総説については、NolanおよびShatzman、1998、Curr.Opin.Biotechnol.、9:447〜450を参照のこと。
【0095】
典型的には、宿主細胞のいずれかにおいて使用される発現ベクターは、プラスミド維持のための配列、ならびに外因性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための配列を含有する。そのような配列は、いくつかの実施形態ではまとめて「フランキング配列」として示されるが、これらには、下記のヌクレオチド配列の1つ以上が典型的に含まれる:プロモーター、1つ以上のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナースプライス部位およびアクセプタースプライス部位を含有する完全なイントロン配列、ポリペプチドを分泌させるためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現させられるポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択マーカーエレメント。これらの配列のそれぞれが下記に議論される。
【0096】
フランキング配列は、同族(すなわち、宿主細胞と同じ種および/または系統に由来する)、異種(すなわち、宿主細胞の種または系統とは異なる種に由来する)、ハイブリッド(すなわち、2つ以上の供給源に由来するフランキング配列の組合せ)、合成または天然であり得る。そのため、フランキング配列が宿主細胞の装置において機能的であり、かつ宿主細胞の装置によって活性化され得るならば、フランキング配列の供給源は、原核生物または真核生物の任意の生物、脊椎動物または無脊椎動物の任意の生物、あるいは植物であり得る。
【0097】
本発明のベクターにおいて有用なフランキング配列は、この分野で広く知られているいくつかの方法のいずれによっても得ることができる。典型的には、本明細書で有用なフランキング配列は、マッピングおよび/または制限エンドヌクレアーゼ消化によって以前に同定されており、従って、適切な制限エンドヌクレアーゼを使用して適正な組織供給源から単離することができる。いくつかの場合には、フランキング配列の完全なヌクレオチド配列を知ることができる。その場合、フランキング配列は、核酸合成またはクローニングについて本明細書中に記載される方法を使用して合成することができる。
【0098】
フランキング配列の全体または一部分のみが知られている場合、そのフランキング配列は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などのインビトロでの増幅方法を使用して、かつ/または同じ種もしくは異なる種に由来する好適なオリゴヌクレオチドおよび/もしくはフランキング配列フラグメントを用いてゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって得ることができる。フランキング配列が知られていない場合、フランキング配列を含有するDNAフラグメントを、例えば、コード配列を含むより大きいDNA片から、または別の遺伝子(1つまたは複数)さえからも単離することができる。単離は、適正なDNAフラグメントを得るための制限エンドヌクレアーゼ消化、それに続く、アガロースゲル精製(Qiagen(登録商標)カラムクロマトグラフィー(Chatsworth、CA)、または当業者に知られている他の方法)を使用する単離によって達成され得る。この目的を達成するための好適な酵素の選択は当業者には容易に明かである。
【0099】
必要な場合には、ベクターは、「タグ」をコードする配列、すなわち、FoxM1Bポリペプチドのコード配列の5’端側または3’端側に位置するオリゴヌクレオチド分子、ポリHis(ヘキサHisなど)をコードするオリゴヌクレオチド配列、またはそれに対する市販の抗体が存在する別の「タグ」(FLAG、HA(インフルエンザウイルスの赤血球凝集素)もしくはmycなど)を含むことができる。このタグは、典型的には、ポリペプチドの発現時にポリペプチドに融合され、宿主細胞からのFoxM1Bポリペプチドのアフィニティー精製のための手段として役立ち得る。アフィニティー精製は、例えば、タグに対する抗体をアフィニティーマトリックスとして使用するカラムクロマトグラフィーによって達成され得る。必要な場合には、タグは、続いて、切断のためのいくつかのペプチダーゼを使用することなどの様々な手段によって精製FoxM1Bポリペプチドから除去され得る。
【0100】
複製起点は、典型的には原核生物発現ベクター(特に、市販の原核生物発現ベクター)の一部分であり、複製起点は宿主細胞におけるベクターの増幅を助ける。選ばれたベクターが複製起点部位を含まない場合、複製起点を、知られている配列に基づいて化学合成して、ベクターに連結することができる。例えば、プラスミドpBR322に由来する複製起点(New England Biolabs、Beverly、MA)がほとんどのグラム陰性細菌に対して好適であり、そして様々な起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎(VSV)、またはHPVもしくはBPVなどのパピローマウイルス)が、哺乳動物細胞におけるクローニングベクターのためには有用である。一般に、哺乳動物の複製起点は、哺乳動物発現ベクターには必要とされない(例えば、SV40の起点はその初期プロモーターを含むだけであるので、SV40の起点が使用されることが多い)。
【0101】
転写終結配列は、典型的には、ポリペプチドのコード領域の終端の3’側に位置し、転写を終結させるために役立つ。通常、原核生物細胞における転写終結配列は、ポリT配列が続くG−Cが多いフラグメントである。この配列は、ライブラリーから容易にクローン化されるか、またはベクターの一部分として市販さえされているが、本明細書中に記載される方法などの核酸合成に関する方法を使用して容易に合成することもできる。真核生物では、配列AAUAAAが、転写終結シグナルとして、そしてエンドヌクレアーゼによる切断のために必要とされ、ポリA残基(200個のA残基)の付加が続くポリAシグナルとして、その両方で機能する。選択マーカー遺伝子エレメントは、選択的な培養培地において増殖する宿主細胞の生存および成長のために必要なタンパク質をコードする。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)原核生物宿主細胞のために抗生物質もしくは他のトキシン(例えば、アンピシリン、テトラサイクリンまたはカナマイシン)に対する耐性を付与するタンパク質;(b)細胞の栄養要求欠損を補うタンパク質;または(c)複雑な培地から利用できない不可欠な栄養素を供給するタンパク質をコードする。好ましい選択マーカーには、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、およびテトラサイクリン耐性遺伝子がある。細菌のネオマイシン耐性遺伝子もまた、原核生物宿主細胞および真核生物宿主細胞の両方における選択のために非常に都合よく使用することができる。
【0102】
リボソーム結合部位は、通常、mRNAの翻訳開始のために必要であり、シャイン−ダルガルノ配列(原核生物)またはコザック配列(真核生物)によって特徴づけられる。このエレメントは、典型的には、プロモーターの3’側と、発現させられるポリペプチドのコード配列の5’側とに位置する。
【0103】
場合により、例えば、グリコシル化が真核生物宿主細胞発現システムにおいて所望される場合、様々なプレ配列を、グリコシル化または収率を改善するために操作することができる。例えば、特定のシグナルペプチドのペプチダーゼ切断部位を変化させることができ、またはグリコシル化にも影響を及ぼし得るプロ配列を付加することができる。最終的なタンパク質産物は、完全に除去されていないことがあるために、発現に付随する1つ以上のさらなるアミノ酸を、(成熟タンパク質の最初のアミノ酸に対して)−1位に有することがある。例えば、最終的なタンパク質産物は、ペプチダーゼ切断部位において見出され、アミノ末端に結合している1個または2個のアミノ酸残基を有することがある。あるいは、いくつかの酵素切断部位を使用することにより、酵素が成熟ポリペプチド内のそのような領域を切断する場合、所望するポリペプチドの少し不完全であるが、なおも活性な形態を得ることができる。
【0104】
本発明の発現ベクターおよびクローニングベクターは、典型的には、宿主生物によって認識され、FoxM1Bタンパク質をコードする核酸に機能的に連結されるプロモーターを含有する。プロモーターは、構造遺伝子の開始コドンの上流(すなわち、5’側)に(一般には100bp〜1000bpの範囲内に)位置する非転写配列で、構造遺伝子の転写を制御するものである。プロモーターは、便宜上、誘導性プロモーターおよび構成的プロモーターの2つクラスのいずれかに分類される。誘導性プロモーターは、栄養物の存在の有無または温度変化などの培養条件の何らかの変化に応答してその制御下にあるDNAからの転写レベルの増大を開始させる。一方、構成的プロモーターは、連続的な遺伝子産物の産生を開始させる:すなわち、遺伝子発現に関する実験的制御がほとんどできない。非常に多数のプロモーターが様々な潜在的な宿主細胞によって認識され、そのようなプロモーターは広く知られている。好適なプロモーターが、制限酵素消化により供給源DNAからプロモーターを取り出すか、またはポリメラーゼ連鎖反応によりプロモーターを増幅し、所望するプロモーター配列をベクターに挿入することによって、FoxM1Bタンパク質をコードするDNAに機能的に連結される。
【0105】
哺乳動物宿主細胞との使用に好適な様々なプロモーターが広く知られており、これらには、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(2型アデノウイルスなど)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、および最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。他の好適な哺乳動物プロモーターには、異種の哺乳動物プロモーター、例えば、熱ショックプロモーターおよびアクチンプロモーターが含まれる。
【0106】
本発明の組換え発現ベクターの実施において有用な具体的なプロモーターには、SV40の初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon、1981、Nature、290:304〜10);CMVプロモーター;ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復に含まれるプロモーター(Yamamotoら、1980、Cell、22:787〜97);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、1981、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、78:1444〜45);メタロチオニン遺伝子の調節配列(Brinsterら、1982、Nature、296:39〜42)が含まれるが、これらに限定されない。組織特異性を示し、遺伝子導入動物において利用されている、動物の下記の転写制御領域もまた注目される:膵臓腺房細胞において活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら、1984、Cell、38:639〜46;Ornitzら、1986、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.、50:399〜409;MacDonald、1987、Hepatology、7:425〜515);膵臓β細胞において活性であるインスリン遺伝子制御領域(Hanahan、1985、Nature、315:115〜22);精巣細胞、***細胞、リンパ細胞およびマスト細胞において活性であるマウス乳腫瘍ウイルス制御領域(Lederら、1986、Cell、45:485〜95);骨髄細胞において活性であるβ−グロビン遺伝子制御領域(Mogramら、1985、Nature、315:338〜40;Kolliasら、1986、Cell、46:89〜94);脳内の希突起神経膠細胞において活性であるミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら、1987、Cell、48:703〜12);骨格筋において活性であるミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Sani、1985、Nature、314:283〜86);視床下部において活性である性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら、1986、Science、234:1372〜78);および、非常に特に、リンパ細胞において活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら、1984、Cell、38:647〜58;Adamesら、1985、Nature、318:533〜38;Alexanderら、1987、Mol.Cell Biol.、7:1436〜44)。
【0107】
好ましくは、本発明の組換え核酸構築物のプロモーターは肝臓において活性である。例えば、アルブミン遺伝子の制御領域は肝臓において活性である(Pinkertら、1987、Genes and Devel.、1:268〜76);α−フェトプロテイン遺伝子の制御領域は肝臓において活性である(Krumlaufら、1985、Mol.Cell Biol.、5:1639〜48;Hammerら、1987、Science、235:53〜58);そしてα1−アンチトリプシン遺伝子の制御領域は肝臓において活性である(Kelseyら、1987、Genes and Devel.、1:161〜71)。
【0108】
エンハンサー配列を、FoxM1Bタンパク質をコードする核酸の高等真核生物による転写を増大させるためにベクターに挿入することができる。エンハンサーは、プロモーターに作用して転写を増大させるDNAのシス作用領域である(通常、約10bp〜300bpの長さである)。エンハンサーは、比較的、配向および位置に無関係である。エンハンサーが、イントロン内に、ならびに転写ユニットの5’側および3’側の数キロベース内の両方に見出されている。哺乳動物遺伝子から得ることができるエンハンサー配列がいくつか知られている(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、インスリン、トランスチレチンおよびHNF−6)。遺伝子の増大した発現が所望される場合、ウイルス由来のエンハンサーを使用することができる。SV40のエンハンサー、サイトメガロウイルスの初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマのエンハンサー、およびアデノウイルスのエンハンサーは、真核生物プロモーターを活性化するための例示的な増強エレメントである。エンハンサーは、核酸分子の5’位または3’位においてベクター内にスプライシングされ得るが、典型的には、プロモーターから5’側の部位に位置する。
【0109】
本発明の発現ベクターは、市販されているベクターなどの有利な出発ベクターから構築することができる。そのようなベクターは、所望するフランキング配列のすべてを含んでもよく、または所望するフランキング配列のすべてを含まなくてもよい。本明細書中に記載されるフランキング配列の1つ以上がベクターにまだ存在していない場合、それらを個々に得て、ベクターに連結することができる。フランキング配列のそれぞれを得るために使用される様々な方法が当業者には広く知られている。
【0110】
ベクターが構築され、FoxM1Bタンパク質をコードする核酸分子がベクターの適正な部位に挿入された後、完成したベクターを、増幅および/またはポリペプチド発現のために好適な宿主細胞に挿入することができる。FoxM1Bタンパク質に対する発現ベクターを選択された宿主細胞に形質転換することは、トランスフェクション、感染、塩化カルシウム、エレクトロポレーション、顕微注入、リポフェクション、DEAE−デキストラン法、または他の知られている技術などの方法を含む広く知られている方法によって達成され得る。選択された方法は、ある程度、使用される宿主細胞のタイプと相関関係がある。これらの方法および他の好適な方法が当業者には広く知られており、例えば、Sambrookら(同上)に示される。
【0111】
宿主細胞は、適する条件のもとで培養されたとき、FoxM1Bタンパク質を合成し、そのFoxM1Bタンパク質を、その後、(宿主細胞がFoxM1Bタンパク質を培地中に分泌する場合)培養培地から回収することができ、または(FoxM1Bタンパク質が分泌されない場合)FoxM1Bタンパク質を産生する細胞から直接回収することができる。適する宿主細胞の選択は、所望する発現レベル、活性のために望まれるか、または必要であるポリペプチド修飾(グリコシル化またはリン酸化など)、および生物学的に活性な分子への折り畳み(folding)の容易さなどの様々な要因に依存する。
【0112】
発現のための宿主として利用可能な様々な哺乳動物細胞株がこの分野では広く知られており、これらには、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から得ることができる多くの不死化細部株、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞ガン細胞(例えば、HepG2)、および多数の他の細胞株などが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、細胞株は、どの細胞株がFoxM1Bタンパク質の大きい発現レベルを有するかを決定することによって選択することができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、本発明は、哺乳動物の肝臓細胞におけるFoxM1Bの発現または核局在化または発現および/もしくは核局在化を誘導する化合物の治療有効量を、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリア、可溶化剤、乳化剤、保存剤および/またはアジュバントと一緒に含む薬学的組成物を提供する。他の実施形態において、本発明は、哺乳動物の肝臓細胞におけるFoxM1Bの発現を誘導し、かつ同様に、哺乳動物の肝臓細胞の核内に転位するためにFoxM1Bタンパク質を誘導する化合物の治療有効量を、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリア、可溶化剤、乳化剤、保存剤および/またはアジュバントと一緒に含む薬学的組成物を提供する。そのような化合物は、好ましくは、本発明のスクリーニング方法で同定される。
【0114】
受容可能な配合物質は、好ましくは、用いられた投薬量および濃度で受容者に対して無毒である。薬学的組成物は、例えば、組成物のpH、浸透度、粘度、清澄度、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解速度または放出速度、吸着または浸透を改変または維持または保持するための配合物質を含有することができる。好適な配合物質には、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシンなど);抗菌剤;酸化防止剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝剤(ホウ酸塩、重炭酸塩、Tris−HCl、クエン酸塩、リン酸塩または他の有機酸など);増量剤(マンニトールまたはグリシンなど);キレート化剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β−シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類;二糖類;および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど);着色剤、矯味矯臭剤および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成性の対イオン(ナトリウムなど);保存剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);懸濁化剤;界面活性剤または湿潤化剤(プルロニクス、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート(ポリソルベート20、ポリソルベート80など)、トリトン、トリメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポールなど);安定性増強剤(スクロースまたはソルビトールなど);張性増強剤(アルカリ金属ハロゲン化物(好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)、マンニトール、ソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤および/または薬学的アジュバントが含まれるが、これらに限定されない(REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第18版(A.R.Gennaro編)、1990、Mack Publishing Company)。
【0115】
最適な薬学的組成物は、例えば、意図された投与経路、送達形式および所望する投薬量に依存して当業者によって決定され得る。例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(同上)を参照のこと。そのような組成物は、本発明の抗体の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度およびインビボでのクリアランス速度に影響を及ぼし得る。
【0116】
薬学的組成物における主要なビヒクルまたはキャリアは、性質が水性または非水性のいずれかであってもよい。例えば、好適なビヒクルまたはキャリアは、注射用水、生理学的な生理的食塩水溶液、または人工的な脳脊髄液、可能であれば、非経口投与用の組成物において共通する他の物質が補充されたものであり得る。中性緩衝化生理的食塩水、または血清アルブミンと混合された生理的食塩水は、さらなる例示的なビヒクルである。薬学的組成物は、約7.0〜8.5のpHを有するTris緩衝剤または約4.0〜5.5のpHを有する酢酸塩緩衝剤を含むことができ、そしてソルビトールまたはそれに対する好適な代用物をさらに含むことができる。本発明の薬学的組成物は、所望する純度を有する選択された組成物を任意の配合剤(REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、同上)と混合することによって貯蔵のために、凍結乾燥ケークまたは水溶液の形態で調製することができる。さらに、FoxM1Bを誘導する製造物を、スクロースなどの適切な賦形剤を使用して凍結乾燥物として配合することができる。
【0117】
配合成分は、投与部位に対して許容され得る濃度で存在する。緩衝剤は、生理学的pHで、またはそれよりもわずかに低いpHで、典型的には、約5〜約8のpH範囲内に組成物を維持するために有利に使用される。
【0118】
本発明の薬学的組成物は非経口的に送達することができる。非経口投与が考えられるとき、本発明において使用される治療用組成物は、FoxM1Bタンパク質または本発明のスクリーニング方法で同定された所望する化合物を薬学的に受容可能なビヒクルに含む、パイロジェンを含有しない非経口的に受容可能な水溶液の形態であり得る。非経口注入用の特に好適なビヒクルは、本発明のスクリーニング方法で同定された化合物またはFoxM1Bタンパク質が無菌の等張性溶液として配合される、適正に保存された滅菌蒸留水である。調製には、所望する分子を、デポ剤注射剤によってその後に送達され得る製造物の制御された放出または持続した放出をもたらし得る注射可能な微小球体、生物浸食性粒子、ポリマー化合物(ポリ乳酸またはポリグリコール酸など)、ビーズまたはリポソームなどの薬剤と配合することが伴い得る。ヒアルロン酸との配合は、循環における持続した継続期間を促進するという効果を有する。埋め込み可能な薬物送達デバイスを、所望する分子を導入するために使用することができる。
【0119】
FoxM1Bタンパク質を患者に投与することは、例えば、肝臓移植の受容者における肝臓細胞の増殖を短期間にわたって刺激するために使用することができる。さらに、FoxM1Bタンパク質は、肝臓再生を刺激して、臓器機能を再び確立するために、肝臓またはその一部分が摘出された後の肝臓ドナーに投与することができる。
【0120】
組成物は吸入のために選択されることがある。これらの実施形態において、本発明のスクリーニング方法で同定された化合物またはFoxM1Bタンパク質が、吸入用の乾燥粉末剤として配合されるか、または吸入溶液剤もまた、噴霧化などによるエアロゾル送達用の噴射剤を用いて配合され得る。肺投与が、化学修飾されたタンパク質の肺送達を記載するPCT出願番号PCT/US94/001875にさらに記載される。
【0121】
本発明の薬学的組成物は、消化管を通して、例えば、経口的に送達することができる。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製はこの分野の技術の範囲内である。このような様式で投与される本発明のFoxM1Bタンパク質または化合物は、錠剤およびカプセルなどの固体の投薬形態物を配合する際に通常的に使用されるそのようなキャリアを用いて、またはそのようなキャリアを用いることなく配合することができる。カプセルは、生物利用性が最大になり、かつ前全身的分解が最小限であるときの胃腸管内のところで配合物の活性な部分を放出するように設計することができる。さらなる薬剤を、FoxM1Bタンパク質または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物の吸収を促進させるために含めることができる。希釈剤、矯味矯臭剤、低融点ワックス、植物油、滑剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤および結合剤もまた用いることができる。
【0122】
薬学的組成物は、FoxM1Bタンパク質または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物の効果的な量を、錠剤を製造するために好適である非毒性の賦形剤との混合物で含むことができる。錠剤を滅菌水または別の適切なビヒクルに溶解することによって、溶液を多回用量形態で調製することができる。好適な賦形剤には、不活性な希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムもしくは重炭酸ナトリウム、ラクトースまたはリン酸カルシウムなど;あるいは結合剤、例えば、デンプン、ゼラチンまたはアラビアゴムなど;あるいは、滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
FoxM1Bタンパク質または本発明の化合物を持続送達配合物または制御送達配合物で含む配合物を含むさらなる薬学的組成物が当業者には明かである。様々な他の持続送達手段または制御送達手段(リポソームキャリア、生物浸食性のマイクロ粒子または多孔性ビーズ、およびデポ注射剤など)を配合するための技術もまた当業者には知られている。例えば、薬学的組成物を送達するための多孔性のポリマーマイクロ粒子の制御された放出を記載するPCT出願番号PCT/US93/00829を参照のこと。持続放出調製物は、フィルムなどの成形物の形態での半透過性ポリマーマトリックス、またはマイクロカプセル、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号および欧州特許EP058,481)、L−グルタミン酸およびL−グルタミン酸γ−エチルの共重合体(Sidmanら、1983、Biopolymers、22:547〜556)、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)(Langerら、1981、J.Biomed.Mater.Res.、15:167〜277;Langer、1982、Chem.Tech.、12:98〜105)、エチレン酢酸ビニル(Langerら、同上)、またはポリD(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許EP133,988)を含むことができる。持続放出配合物はまた、この分野で知られているいくつかの方法のいずれかによって調製され得るリポソームを含むことができる。例えば、Eppsteinら、1985、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:3688〜3692;欧州特許EP036,676;欧州特許EP088,046および欧州特許EP143,949を参照のこと。
【0124】
インビボ投与のために使用される薬学的組成物は典型的には無菌である。いくつかの実施形態において、これは、滅菌されたろ過メンブランによるろ過によって達成され得る。いくつかの実施形態において、組成物が凍結乾燥される場合、この方法を使用する滅菌化を凍結乾燥および再構成の前または後のいずれかで行うことができる。いくつかの実施形態において、非経口投与される組成物は凍結乾燥形態または溶液で貯蔵することができる。いくつかの実施形態において、非経口用組成物は、一般に、無菌操作ポートを有する容器に、例えば、皮下注射用注射針により突き刺すことができる栓を有する静脈内注射溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0125】
本発明の薬学的組成物が配合されると、本発明の薬学的組成物は、溶液、懸濁物、ゲル、エマルション、固体、または脱水もしくは凍結乾燥された粉末として無菌バイアルに貯蔵することができる。そのような配合物は、直ちに使用できる形態または投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥された形態)で、そのいずれかで貯蔵することができる。
【0126】
本発明は、単回用量投与ユニット物を製造するためのキットに関する。本発明によるキットはそれぞれが、本発明のスクリーニング方法で同定された乾燥後のタンパク質化合物を有する第1の容器と、例えば、単回チャンバーまたは多回チャンバーの充填済みシリンジ(例えば、液体シリンジ、リオシリンジまたは無ニードルシリンジ)を含む、水性配合物を有する第2の容器との両方を含むことができる。
【0127】
治療的に用いられる本発明の薬学的組成物の効果的な量は、例えば、治療状況および治療目的に依存する。当業者は、いくつかの実施形態による処置に対する適切な投薬量レベルが、従って、部分的には、送達される分子、薬学的組成物が使用されている適用症、投与経路、ならびに患者のサイズ(体重、体表面積または臓器サイズ)および/または状態(年齢および全体的な健康状態)に依存して変化することを理解する。臨床医は、最適な治療効果を得るために、投薬量を決め、投与経路を変更することができる。典型的な投薬量は、上記に述べられた要因に依存して、約0.1μg/kgから約100mg/kg以上までの範囲である。いくつかの実施形態において、投薬量は、0.1μg/kgから約100mg/kgまでの範囲であり、または1μg/kgから約100mg/kgまでの範囲であり、または5μg/kgから約100mg/kgまでの範囲である。
【0128】
投薬頻度は、配合物におけるFoxM1Bタンパク質または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物の薬物動態学的パラメーターに依存する。例えば、臨床医は、所望する効果を達成する投薬量に達するまで、組成物を投与する。従って、組成物は、単回用量物として、または時間とともに、(同じ量の所望する分子を含有してもよく、または含有しなくてもよい)2回以上の用量物として、または埋め込みデバイスもしくはカテーテルによる連続注入物として投与することができる。適切な投薬量のさらなる改善が当業者によって日常的に行われるので、これは、当業者によって日常的に行われる業務の範囲内である。適切な投薬量は、適切な用量−応答データの使用によって確認することができる。
【0129】
本発明の薬学的組成物に対する投与経路には、経口投与、あるいは静脈内経路、腹腔内経路、脳内(実質内)経路、脳室内経路、筋肉内経路、眼内経路、動脈内経路、門脈内経路または病巣内経路による注射による投与、あるいは持続放出システムまたは埋め込みデバイスによる投与が含まれる。薬学的組成物は、ボーラス注射によって、または注入により連続的に、または埋め込みデバイスによって投与することができる。薬学的組成物はまた、所望する分子が吸着またはカプセル化されている膜またはスポンジまたは別の適切な材料の埋め込みを介して局所的に投与することができる。埋め込みデバイスが使用される場合、埋め込みデバイスは任意の好適な組織または器官に埋め込むことができ、そして所望する分子の送達が拡散または徐放性ボーラスまたは連続投与によって行われ得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、FoxM1Bタンパク質、FoxM1Bをコードする組換え核酸構築物、または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物の薬学的組成物をエクスビボ様式で使用することが望ましい場合がある。そのような場合には、患者から取り出された細胞または組織または器官が本発明の薬学的組成物にさらされるか、またはFoxM1B遺伝子を含む本発明の組換え核酸構築物にさらされ、その後、その細胞および/または組織および/または器官が続いて患者に戻される。
【0131】
いくつかの実施形態において、FoxM1Bタンパク質、FoxM1Bをコードする組換え核酸構築物、または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物の薬学的組成物を、ポリペプチドを発現および分泌させるために、本明細書中に記載される方法などの方法を使用して、遺伝子操作された特定の細胞を埋め込むことによって送達することができる。そのような細胞は動物細胞またはヒト細胞であってもよく、そして自家または異種(heterologousまたはxenogenic)であってもよく、あるいは不死化されていてもよい。免疫学的応答を可能性を低下させるために、細胞は、周囲組織の浸潤を避けるためにカプセル化することができる。カプセル化材料は、典型的には、タンパク質産物(1つまたは複数)の放出を可能にするが、患者の免疫系によるか、または周囲組織からの他の有害な因子による細胞の破壊を防止する生体適合性かつ半透過性ポリマーの封入体またはメンブランである。
【0132】
本発明の薬学的組成物は、単独で、または他の治療作用因との組合せで、特に、他のガン治療作用因との組合せで投与することができる。そのような作用因には、一般には放射線治療または化学療法が含まれる。例えば、化学療法では、下記の1つまたは2つ以上による処置を伴い得る:アントラサイクリン類、タキソール、タモキシフェン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、および当業者に知られている他の薬物。
【0133】
細胞の内因性FoxM1B遺伝子からのFoxM1Bポリペプチドの発現を増大させるか、または生じさせるための1つの方法には、細胞の内因性FoxM1B遺伝子からのデノボでのFoxM1Bポリペプチド産生または増大したFoxM1Bポリペプチド産生をもたらす様式で、1つまたは複数の遺伝子(例えば、転写因子)の発現を増大させるか、もしくは生じさせ、かつ/または1つまたは複数の遺伝子(例えば、転写リプレッサー)の発現を低下させることが伴う。この方法には、細胞の内因性FoxM1B遺伝子からのデノボでのFoxM1Bポリペプチド産生または増大したFoxM1Bポリペプチド産生が生じるように、天然に存在しないポリペプチド(例えば、転写因子ドメインに融合された部位特異的なDNA結合ドメインを含むポリヌクレオチド)を細胞に導入することが含まれる。
【0134】
本発明はさらに、標的遺伝子の発現を変化させる方法において有用なDNA構築物に関する。いくつかの実施形態において、例示的なDNA構築物は、(a)1つ以上のターゲッティング配列、(b)調節配列、(c)エキソン、および(d)対になっていないスプライスドナー部位を含む。DNA構築物内のターゲッティング配列により、エレメント(b)〜(d)が内因性標的遺伝子の配列に機能的に連結されるように、エレメント(a)〜(d)が細胞内の標的遺伝子に組み込まれる。別の実施形態において、DNA構築物は、(a)1つ以上のターゲッティング配列、(b)調節配列、(c)エキソン、(d)スプライスドナー部位、(e)イントロン、および(f)スプラスアクセプター部位を含み、この場合、ターゲッティング配列により、エレメント(b)〜(f)が内因性遺伝子に機能的に連結されるように、エレメント(a)〜(f)が組み込まれる。ターゲッティング配列は、相同的組換えが生じ得る、細胞の染色体DNAにおける所定の部位に対して相同的である。構築物において、エキソンは一般に調節配列の3’側に存在し、スプライスドナー部位はエキソンの3’側に存在する。
【0135】
本明細書中に示されるFoxM1Bポリペプチドの核酸配列などの特定の遺伝子の配列が知られている場合、遺伝子の選択された領域に対して相補的であるDNA片を合成することができ、またはそうでなければ、例えば、目的とする領域の境界となる特異的な認識部位で本来のDNAを適切に制限することなどによって得ることができる。この断片は、細胞内への挿入時にターゲッティング配列として役立ち、ゲノム内のその相同的な領域に対してハイブリダイゼーションする。このハイブリダイゼーションがDNA複製時に起こる場合、このDNA片、およびそれに結合している任意のさらなる配列が岡崎フラグメントとして作用し、新しく合成されたDNAの娘鎖に取り込まれる。従って、本発明は、ターゲッティング配列として使用され得る、FoxM1Bポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む。
【0136】
FoxM1Bポリペプチドの細胞治療、例えば、FoxM1Bポリペプチドを産生する細胞の埋め込みもまた考えられる。この実施形態には、生物学的に活性な形態のFoxM1Bポリペプチドを合成および分泌することができる細胞を埋め込むことが伴う。そのようなFoxM1Bポリペプチド産生細胞は、FoxM1Bポリペプチドの天然の産生体である細胞であり得るか、あるいはFoxM1Bポリペプチドの産生能が、所望するFoxM1Bポリペプチドをコードする遺伝子で、またはFoxM1Bポリペプチドの発現を増強する遺伝子で形質転換することによって増強されている組換え細胞であってもよい。そのような改変は、遺伝子を送達するために、ならびにその発現および分泌を促進するために好適なベクターによって達成され得る。異物の種のポリペプチドを投与することにより生じ得るような、FoxM1Bポリペプチドが投与されている患者における潜在的な免疫学的反応を最小限に抑えるために、FoxM1Bポリペプチドを産生する天然の細胞がヒト起源であり、ヒトFoxM1Bポリペプチドを産生することが好ましい。同様に、FoxM1Bポリペプチドを産生する組換え細胞は、ヒトFoxM1Bポリペプチドをコードする遺伝子を含有する発現ベクタ−で形質転換されることが好ましい。
【0137】
埋め込まれる細胞は、周囲組織の浸潤を避けるためにカプセル化することができる。ヒトまたは非ヒト動物の細胞を、FoxM1Bポリペプチドの放出を可能にするが、患者の免疫系によるか、または周囲組織からの他の有害な因子による細胞の破壊を防止する生体適合性かつ半透過性ポリマーの封入体またはメンブランで患者に埋め込むことができる。あるいは、患者自身の細胞を、FoxM1Bポリペプチドを産生させるためにエクスビボで形質転換した後、そのようなカプセル化を行うことなく、直接、患者に埋め込むことができる。
【0138】
生細胞をカプセル化するための様々な技術がこの分野では知られており、カプセル化された細胞の調製およびそれらの患者への埋め込みが日常的に達成され得る。例えば、Baetgeら(PCT公開番号WO95/05452およびPCT/US94/09299)には、生物学的に活性な分子を効果的に送達するための、遺伝子操作された細胞を含有するメンブランカプセルが記載される。このカプセルは生体適合性であり、そして容易に回収することができる。カプセルにより、哺乳動物宿主に埋め込まれたときにインビボでのダウンレギュレーションを受けないプロモーターに機能的に連結された生物学的に活性な分子をコードするDNA配列を含む組換えDNA分子でトランスフェクションされた細胞がカプセル化される。このデバイスにより、生細胞から受容者内の特異的な部位への分子の送達がもたらされる。さらに、米国特許第4,892,538号、同第5,011,472号および同第5,106,627号を参照のこと。生細胞をカプセル化するためのシステムがPCT公開番号WO91/10425(Aebischerら)に記載される。PCT公開番号WO91/10470(Aebischerら);Winnら、1991、Exper.Neurol.、113:322〜29;Aebischerら、1991、Exper.Neurol.、111:269〜75;Trescoら、1992、ASAIO、38:17〜23もまた参照のこと。
【0139】
FoxM1Bポリペプチドのインビボ遺伝子治療およびエクスビボ遺伝子治療およびインビトロ遺伝子治療もまた本明細書に提供される。遺伝子治療技術の一例が、「遺伝子治療DNA構築物」を形成するために構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターに機能的に連結され得る、FoxM1BポリペプチドをコードするFoxM1B遺伝子(ゲノムDNA、cDNAおよび/または合成DNAのいずれか)を使用することである。プロモーターは、構築物が挿入される細胞タイプまたは組織タイプにおいて活性であるならば、内因性のFoxM1B遺伝子に対して同種または異種であり得る。遺伝子治療DNA構築物の他の成分として、部位特異的な組み込みのために設計されたDNA分子(例えば、相同的組換えのために有用な内因性配列)、組織特異的なプロモーターまたはエンハンサーまたはサイレンサー、親細胞を上回る選択上の利点を提供し得るDNA分子、形質転換された細胞を同定するための標識として有用なDNA分子、負の選択システム、細胞特異的な結合因子(例えば、細胞標的化のためとして)、細胞特異的な内在化因子、ベクターからの発現を増強する転写因子、ベクター産生を可能にする因子を場合により挙げることができる。
【0140】
遺伝子治療DNA構築物は、その後、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを使用して(エクスビボまたはインビボのいずれかで)細胞に導入することができる。遺伝子治療DNA構築物を導入するための1つの手段が、本明細書中に記載されるようなウイルスベクターによるものである。レトロウイルスベクターなどのいくつかのベクターにより、DNA構築物が細胞の染色体DNAに送達され、そして遺伝子が染色体DNA内に組み込まれ得る。他のベクターはエピソームとして機能し、遺伝子治療DNA構築物は細胞質内に留まる。
【0141】
さらに別の実施形態において、調節エレメントを、標的細胞におけるFoxM1B遺伝子の制御された発現のために含めることができる。そのようなエレメントは、適切なエフェクターに応答して作動する。このようにして、治療ペプチドを、所望するときに発現させることができる。1つの従来的な制御手段には、小分子結合ドメインと、生物学的プロセスを開始させることができるドメインとを含有するキメラなタンパク質(DNA結合タンパク質または転写活性化タンパク質など)を二量体化するための小分子の二量体化剤またはラパログの使用が伴う(PCT公開番号WO96/41865、同WO97/31898および同WO97/31899を参照のこと)。これらのタンパク質の二量体化を使用して、導入遺伝子の転写を開始させることができる。
【0142】
インビボ遺伝子治療は、FoxM1Bポリペプチドをコードする遺伝子を、FoxM1B核酸分子の局所的な送達によって、または直接的な注入によって、または他の適切なウイルス送達ベクターもしくは非ウイルス送達ベクターによって細胞に導入することによって達成され得る(Hefti、1994、Neurobiology、25:1418〜35)。例えば、FoxM1Bポリペプチドをコードする核酸分子は、標的化された細胞への送達のためのアデノ関連ウイルス(AAV)ベクターに含有させることができる(例えば、ジョンソン、PCT公開番号WO95/34670;PCT出願番号PCT/US95/07178を参照のこと)。組換えAAVゲノムは、典型的には、機能的なプロモーター配列およびポリアデニル化配列に機能的に連結された、FoxM1BポリペプチドをコードするDNA配列を挟むAAV逆方向末端反復を含有する。
【0143】
別の好適なウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス、肝炎ウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルスおよびパピローマウイルスのベクターが含まれるが、これらに限定されない。米国特許第5,672,344号には、組み換えられた神経親和性HSV−1ベクターを伴うインンビボでのウイルス媒介型遺伝子移入システムが記載される。米国特許第5,399,346号では、治療タンパク質をコードするDNAセグメントを挿入するためにインビトロで処理されたヒト細胞を送達することによって治療タンパク質を患者に与えるためのプロセスの様々な例が提供される。遺伝子治療技術を実施するためのさらなる方法および材料が、米国特許第5,631,236号(アデノウイルスベクターを伴う)、同第5,672,510号(レトロウイルスベクターを伴う)、同第5,635,399号(サイトカインを発現するレトロウイルスベクターを伴う)に記載される。
【0144】
非ウイルス送達方法には、リポソーム媒介による移入、ネイクドDNAの送達(直接的な注入)、受容体媒介による移入(リガンド−DNA複合体)、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、および微小粒子衝撃(例えば、遺伝子銃)が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子治療用の材料および方法ではまた、誘導性プロモーター、組織特異的なエンハンサー−プロモーター、部位特異的な組み込みのために設計されたDNA配列、親細胞を上回る選択上の利点を提供し得るDNA配列、形質転換された細胞を同定するための標識、負の選択システムおよび発現制御システム(安全対策)、細胞特異的な結合因子(細胞標的化のために)、細胞特異的な内在化因子、そしてベクターによる発現を増強する転写因子、ならびにベクター製造方法を含むことができる。遺伝子治療技術を実施するためのそのようなさらなる方法および材料が、米国特許第4,970,154号(エレクトロポレーション技術を伴う)、同第5,679,559号(遺伝子送達用のリポタンパク質含有システムを記載する)、同第5,676,954号(リポソームキャリアを伴う)、同第5,593,875号(リン酸カルシウムトランスフェクション方法を記載する)、および同第4,945,050号(生物学的に活性な粒子が一定の速度で細胞に向けられて発射され、それにより、粒子が細胞の表面を突き抜け、細胞の内部に取り込まれるプロセスを記載する)、そしてPCT公開番号WO96/40958(核リガンドを伴う)に記載される。
【0145】
FoxM1Bの遺伝子治療または細胞治療ではさらに、1つ以上のさらなるポリペプチドを同じ細胞または異なる細胞に送達することを含み得ることもまた考えられる。そのような細胞は別々に患者に導入することができ、または上記に記載されたカプセル化メンブランなどの単一の埋め込み可能なデバイスに含有させることができ、またはウイルスベクターによって別々に改変することができる。
【0146】
遺伝子治療によって細胞における内因性のFoxM1Bポリペプチド発現を増大させる別の手段は、FoxM1B遺伝子の転写活性を増大させるように作用し得る1つ以上のエンハンサーエレメントをFoxM1Bポリペプチドプロモーターに挿入することである。使用されるエンハンサーエレメントは、遺伝子を活性化することが所望される組織に基づいて選択される。すなわち、その組織においてプロモーター活性を与えることが知られているエンハンサーエレメントが選択される。例えば、FoxM1Bポリペプチドをコードする遺伝子をT細胞において「作動」させる場合、lckプロモーターのエンハンサーエレメントを使用することができる。この場合、付加される転写エレメントの機能的な部分を、標準的なクローニング技術を使用して、FoxM1Bポリペプチドプロモーターを含有するDNAフラグメントに挿入することができる(そして場合により、ベクターおよび/または5’および/または3’のフランキング配列に挿入することができる)。この構築物は、「相同的組換え構築物」として知られており、その後、エクスビボまたはインビボのいずれかで所望の細胞に導入することができる。
【0147】
下記の実施例は例示目的のために示され、本発明の範囲を限定するためのものではない。本発明は、本発明の個々の局面の様々な例示として意図される例示された実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書中に示され、そして記載された改変に加えて、本発明の様々な改変が、前記の説明および添付された図面から当業者には明らかになる。そのような改変は、添付された請求項の範囲に含まれるものとする。
【0148】
実施例
実施例1
老齢の遺伝子導入マウスの再生中の肝臓におけるDNA複製および有糸***に対するFoxM1Bの増大した発現の影響
遺伝子導入CD−1マウスを、記載(Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)のように、肝細胞においてFoxM1B導入遺伝子(図1に示される配列番号1)を構成的に発現させるために、〜3kbのトランスチレチン(TTR)プロモーターを使用して作製した。12月齢の野生型CD−1(WT)マウスおよびTTR−FoxM1B(TG)マウスをメトキシフルラン(メトファン);Schering−Plough Animal Health Corp.、Union、N.J.)で麻酔し、そして肝臓の再生を誘導するために、腹部中央での開腹の後、肝臓の左葉側部、左葉中央部および右葉中央部を除いた(Higginsら、1931、Arch.Pathol.、12:186〜202)。左葉中央部と右葉中央部との間に位置する胆嚢の除去を注意深く回避した。手術後、動物には、生理的食塩水におけるアンピシリン(50μg/g体重)の皮下注射が1回施された。残された肝臓を採取する2時間前に、動物は、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)における10mg/mLの5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU;50μg/g体重)が腹腔内に注射された。2匹のマウスを、部分肝切除(PHx)手術後の24時間、32時間、36時間、40時間、44時間および48時間でCO2窒息によって屠殺し、その肝臓を取り出した。解剖した肝臓を3つに分けた(パラフィン包埋のために1つ、総RNA単離のために1つ、そして総タンパク質単離のために1つ)。
【0149】
パラフィン包埋用の肝臓部分を4%パラホルムアルデヒドにおいて一晩固定し、パラフィンに包埋した。組織を、ミクロトームを用いて5μmの切片に切断し、スライドガラス上に固定した。切片をキシレンで脱パラフィンし、エタノール濃度を下げながら段階的なエタノール洗浄によって再水和して、0.25%トリトンX−100を含有するPBS(PBT)中に入れた。マイクロ波による抗原賦活法が、以前の記載(Zhouら、1996、J.Histochem.Cytochem.、44:1183〜1193)のように、抗体の抗原反応性を増強するために使用された。切片を、抗BrdUモノクローナル抗体を製造者の使用説明書(Boehringer Mannheim)に従って用いて免疫組織化学的に染色した。1000個の肝細胞あたりのBrdU陽性核の数を計数し、そして各時点から2つの再生中の肝臓サンプルを使用して、平均BrdU陽性細胞および標準偏差(SD)を計算した。2月齢(若齢)CD−1マウスから得られた再生中の肝臓が、比較として、調べられ、含まれた。2月齢の肝臓はPHx後40時間でS期のピークを示している(図2)。はるかに小さい40時間でのS期のピークが、12月齢のWTマウスから得られた再生中の肝臓において認められた(図2)。12月齢のTGマウスの再生中の肝臓は、2月齢の肝臓において観測されたピークと類似する鋭いS期のピークを40時間で示した(図2)。抗BrdU抗体を用いた免疫組織化学的染色では、40時間でのWTの肝臓と比較したとき、TGの肝臓におけるBrdU取り込みの増大が示される。さらに、PHx後48時間では、老齢WTマウスの再生中の肝細胞は、TGマウスの再生中の肝細胞と比較して、有糸***像が少なくなっていた(図3)。
【0150】
これらの研究は、老齢の遺伝子導入マウスの再生中の肝臓におけるFoxM1Bの増大した肝細胞発現により、肝細胞のDNA複製および有糸***が、若齢マウスの再生中の肝臓において見出されるレベルにまで刺激されたことを明らかにしている。
【0151】
実施例2
若齢WTマウスおよび老齢WTマウスならびに老齢TGマウスにおけるFoxM1BのmRNA発現レベルおよびタンパク質発現レベルに対するPHxの影響
野生型(WT)マウスおよび遺伝子導入(TG)マウスの再生中の肝臓からの総RNAを、RNA−STAT−60(Tel−Test“B”Inc.、Friendswood、TX)を用いた酸性チオシアン酸グアニジウム−フェノール−クロロホルム抽出法によって、部分肝切除(PHx)後の24時間、32時間、36時間、40時間および44時間において抽出した。ヒトおよびマウスのFoxM1B導入遺伝子ならびにマウスシクロフィリンに対するアンチセンスRNase保護プローブを記載されるように作製した(Yeら、1997、Mol.Cell Biol.、17:1626〜1641;Wangら、2001、Hepatology、33:1404〜1414)。RNase保護アッセイを、以前の記載(Yeら、1997、Mol.Cell Biol.、17:1626〜1641;Wangら、2001、Hepatology、33:1404〜1414;Rausaら、2000、Mol.Cell Biol.、20:8264〜8282)のように、20μg〜40μgの総肝臓RNAを{32P}UTP標識プローブとハイブリダイゼーションさせ、その後、RNase Oneでの消化、電気泳動およびオートラジオグラフィーを行うことによって行った。X線フィルムを走査し、BioMax 1Dプログラム(Eastman Kodak Co)を使用して発現レベルを定量化し、発現レベルをシクロフィリンRNAレベルに対して正規化した。FoxM1BのmRNAレベルは、2月齢のWTマウスから得られた再生中の肝臓では、40時間で誘導され、S期のピークと一致していた(図4A、図2)。同様に、老齢TGマウスにおけるPHx後40時間で観測されるS期のピークには、FoxM1BのmRNAの上昇が伴っていた(図4B)。40時間におけるFoxM1BのmRNAの誘導は、若齢マウスと比較した場合、12月齢のWTマウスでは低下していた(図4AおよびB)。
【0152】
PHx後の24時間、32時間、36時間、40時間および44時間における12月齢のTGマウスおよびWTマウスの再生中の肝臓からの総タンパク質抽出物を記載されるように単離した(Rausaら、2000、Mol.Cell Biol.、20:8264〜8282)。ウエスタンブロット分析を、50μgの総肝臓タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、Protranメンブラン(Schleicher&Schuell、Keene,NH)に転写し、HFH−11(FoxM1B)抗体(Yeら、1997、Mol.Cell Biol.、17:1626〜1641;Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)とインキュベーションし、そしてビオチン結合抗ウサギIgG(BioRad、Hercules、CA)を用いてシグナルを増幅することによって行った。シグナルは、増強化学発光(ECL、Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)を用いて検出された。FoxM1Bのタンパク質レベルの上昇には、PHx後40時間におけるBrdU取り込みおよびFoxM1BのmRNA発現の増大が伴っていた(図3、図4Cおよび図5)。FoxM1Bタンパク質発現の増大は、老齢WTマウスの再生中の肝細胞では全く観測されなかった(図5)。
【0153】
これらの研究は、遺伝子導入マウスにおけるFoxM1BのmRNAレベルおよびタンパク質レベルの増加が、老齢の遺伝子導入マウスの再生中の肝臓における肝細胞増殖の増加と関連することを明らかにしている。
【0154】
実施例3
再生中の肝臓においてFoxM1Bの増大した発現に応答してS期およびM期の進行に関与する遺伝子の変換した発現
サイクリンD1、サイクリンD3、サイクリンE、サイクリンA1、サイクリンA2、サイクリンB1、サイクリンB2およびサイクリンFに対するRNase保護プローブをPharmingen(San Diego、CA)から購入し、Cdc25Bおよびp55Cdcに対するプローブをClontechから購入した。RNase保護アッセイを、PHx後の24時間、32時間、36時間、40時間および44時間のWTマウスおよびTGマウスから単離された20μg〜40μgの総肝臓RNAに対して、サイクリン遺伝子については製造者によって記載された方法を使用して行い、他の遺伝子については上記に記載されたように行った。S期を促進するサイクリンD1遺伝子の発現が、老齢TGマウスでは、PHxの36時間後〜40時間後、肝細胞のDNA複製の開始直前で上昇した(図6)。サイクリンEの発現レベルもまた、老齢TGマウスでは、PHx後40時間で増大した(図6)。TGマウスの再生中の肝臓におけるサイクリンD1およびサイクリンEの誘導には、FoxM1Bの増大した発現が伴った。サイクリンD1およびサイクリンEの発現は、老齢WTマウスの再生中の肝臓の細胞周期のG1/S移行時に低下した(図6)。さらに、FoxM1Bレベルの上昇は、これらの肝臓においてサイクリンA2の発現の増大をもたらした(図6)。このデータは、老齢マウスの再生中の肝臓におけるFoxM1Bの発現を回復させることにより、サイクリンD1、サイクリンEおよびサイクリンA2の誘導が刺激され、それらにより肝細胞のS期への進入およびS期を過ぎた進行が促進されることを示している。
【0155】
肝細胞のDNA複製がピークにあるとき、サイクリンB1およびサイクリンB2の著しい誘導が、老齢TGマウスから得られた再生中の肝臓でのみ観測された(図6)。この時点ではまた、サイクリンFのレベルが、12月齢TGマウスの再生中の肝臓では著しく増大した(図6)。TG動物の肝臓では、WT動物の肝臓の場合よりも、Cdc25BのmRNAの大きな活性化がPHx後の40時間〜44時間の間で観測された(図6)。さらに、TG動物の肝臓のみがPHx後のp55Cdcの誘導された発現を示した(図6)。サイクリンB1およびサイクリンB2はG2期から有糸***への細胞周期の進行を媒介する(Zachariaeら、1999、Genes Dev.、13:2039〜2058)。サイクリンFは、サイクリンB複合体の核への転位を促進するので、M期の進行には必須である(Kongら、2000、EMBO J.、19:1378〜1388)。M期の進行はまた、有糸***キナーゼのcdk1/サイクリンBを活性化するCdc25Bによっても媒介される(Sebastianら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:3521〜3524;Trembleyら、1996、Cell Growth Differ.、7:903〜916;Nilssonら、2000、Prog.Cell Cycle Res.、4:107〜114)。有糸***を完了させるために必要なプロセスであるサイクリンタンパク質の分解がp55Cdcによって調節される(Zachariaeら、1999、Genes Dev.、13:2039〜2058)。
【0156】
これらの結果は、老齢TGマウスにおけるFoxM1Bの増大した発現により、サイクリンB1、サイクリンB2、サイクリンF、Cdc25Bおよびp55Cdcを含む、M期促進遺伝子が誘導されることを明らかにしている。
【0157】
実施例4
部分肝切除後の老齢FoxM1B遺伝子導入マウスの肝臓におけるp21およびp53の発現
20μg〜40μgの総肝臓RNAが、PHx後の24時間、32時間、36時間および40時間において老齢のTGマウスおよびWTマウスから単離された。p21に対するRNase保護プローブはGuy Adami博士(Illinois大学、Chicago)から贈与された。上記のように、約2×105cpmの各プローブを、20mMのPIPES(pH6.4)、400mMのNaCl、1mMのEDTAおよび80%ホルムアミドを含有する溶液において20μgの総RNAと45℃または55℃で一晩ハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーション後、サンプルあたり10ユニットのRNase One酵素を製造者のプロトコル(Promega、Madison、WI)に従って使用することによってサンプルを37℃で1時間消化した。RNase Oneから保護されたフラグメントを8%ポリアクリルアミド−8M尿素ゲルで電気泳動し、その後オートラジオグラフィーを行った。発現レベルの定量化が、BioMax 1Dプログラム(Eastman Kodak、Rochester、NY)を使用することによって、X線フィルムを走査して決定された。シクロフィリンのハイブリダイゼーションシグナルが、種々の肝臓RNAサンプル間の正規化コントロールのために使用された。p21のmRNAレベルが、老齢TG動物において細胞周期のG1/S移行のときに減少した(図7、PHxの32時間後〜40時間後)。
【0158】
PHx後の24時間、32時間および40時間で解剖された12月齢のWTマウスおよびTGマウスの再生中の肝臓からのパラフィン包埋組織サンプルをミクロトームで切断して、上記に記載されるような免疫組織化学的染色のために調製した。切片を抗p21抗体(Oncogene Science、Cambridge、MA)または抗FoxM1B抗体とインキュベーションし、そしてABCキットおよびDABペルオキシダーゼ基質を製造者の使用説明書(Vector Laboratories、Burlingame、CA)に従って使用することによって検出した。それぞれのマウス肝臓について1000個の核あたりのp21陽性肝細胞およびFoxM1B陽性肝細胞の数が測定され、各時点について2匹のマウスから得られたデータが、マッキントッシュ・マイクロソフト・エクセル98におけるAnalysis ToolPakを使用して平均±標準偏差(SD)を計算するために使用された。老齢TGマウスの再生中の肝臓の核におけるp21タンパク質レベルは、PHxの32時間後、WTの肝臓で観測されたレベルと比較して低下していた(図8)。しかし、PHxの36時間後では、TGマウスの肝臓におけるp21の核タンパク質レベルはWTの肝臓におけるレベルと類似していた(図8)。このことは、S期への進行のために必要なサイクリンD/cdk4/6複合体の組み立てにおけるp21の役割と一致している(Chengら、1999、Embo J.、18:1571〜1583)。
【0159】
増大したFoxM1B発現が老齢TTR−FoxM1B TGマウスの再生中の肝細胞におけるp53タンパク質レベルの減少を媒介する能力もまた調べられた。肝細胞のDNA複製の前(PHx後の24時間〜36時間)において、ウエスタンブロット分析では、p53タンパク質レベルの50%〜70%の低下が、老齢のWTマウスと比較した場合、老齢TTR−FoxM1B TGマウスの再生中の肝臓において明らかにされた(図9A〜C)。p53タンパク質レベルの低下と一致して、老齢TTR−FoxM1B TGマウスの再生中の肝臓では、S期前のp21Cip1タンパク質の発現が50%低下することが観測された。
【0160】
これらの肝臓再生研究は、FoxM1Bのレベルを維持することにより、老齢TTR−FoxM1B TGマウスでは、p53タンパク質およびp21Cip1タンパク質の低下した発現がG1期からS期への移行時にもたらされたことを示しており、このことは、老化の表現型に関連する低下した増殖を防止することと一致している。
【0161】
実施例5
FoxM1B遺伝子導入マウスにおけるFoxM1Bの局在化および肝細胞のDNA複製に対する四塩化炭素誘導による肝臓傷害の影響
野生型またはFoxM1B遺伝子導入の雄性CD−1マウス(8〜10週齢)に、Serfasら、1997、Cell Growth Differ.、8:951〜961に記載されるように、軽質鉱油に溶解された四塩化炭素の10%溶液の単回腹腔内(IP)注射を施した(10μL CCl4/g体重;Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)。マウスは、以前の記載(Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)のように、肝臓を採取する2時間前に、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)における10mg/mLの5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU;50μg/g体重)溶液のIP注射を受けた。マウスは、CCl4投与後の16時間、20時間、24時間、28時間、32時間、34時間、36時間、40時間、44時間および48時間の間隔でCO2窒息によって屠殺された。肝臓組織の一部が、総RNAを調製するために使用され、残りの肝臓は以前の記載(同上)のようにパラフィン包埋された。遺伝子導入マウスと野生型マウスとの間での何らかの観測される差の統計的有意性を明らかにするために、4匹のマウスがそれぞれの時点で屠殺された。
【0162】
FoxM1Bタンパク質の核局在化には、増殖性のシグナル伝達が必要である(同上)。従って、アフィニティー精製されたFoxM1B抗体が、CCl4肝臓傷害後の様々な時点でのマウス肝臓切片の免疫組織化学的染色のために上記のように使用された。再生中のWT肝細胞は、CCl4肝臓傷害後の32時間〜36時間の間にFoxM1Bの核染色を示し(図10A〜B)、40時間の時点までに最大の染色に達した(図10C)。対照的に、核のFoxM1Bタンパク質染色は、調べられた最も早い時点(CCl4傷害後の20時間)で再生中のTG肝細胞において見出され、肝臓再生プロセス中を通して持続した(図10D〜F)。
【0163】
CCl4による再生中の肝臓において、肝細胞がS期に進入し、DNAを合成するタイミングが、上記に記載されるように、DNA内へのBrdU取り込みの免疫組織化学的染色によって調べられた。WTの肝臓において、少数のBrdU陽性の染色肝細胞がCCl4傷害後36時間で検出され、その一方で、肝細胞のDNA複製は40時間までに最大に達し、広い持続したS期ピークを示した(図11)。対照的に、TGの肝細胞は、CCl4傷害後32時間で検出可能なBrdU取り込みを示し、その一方で、肝細胞の複製は34時間までに著しく増大し、36時間までに最大になった(図11)。
【0164】
これらの研究は、FoxM1B導入遺伝子のタンパク質のより早い核での発現は、CCl4により誘導された肝臓傷害の後における肝細胞のDNA複製の開始を6時間早めることを示している。
【0165】
実施例6
FoxM1B遺伝子導入マウスにおけるp21レベルに対する四塩化炭素誘導による肝臓傷害の影響
遺伝子導入肝細胞のより早い複製がp21タンパク質の減少した発現と相関するかどうかを明らかにするために、WTマウスおよびTGマウスの肝臓を、CCl4誘導による肝臓傷害の16時間後、20時間後、24時間後、28時間後、32時間後、36時間後および40時間後に取り出し、抗p21抗体を用いた上記に記載されるような免疫組織化学的染色によって調べた。再生中のTG肝細胞に存在する門脈周囲のp21染色肝細胞の数は、再生中のWT肝細胞と比較して、CCl4肝臓傷害後の16時間〜36時間の間で著しく低下した(図12A)。p21タンパク質の肝細胞での発現の差はCCl4投与後36時間で最大になった(図12A)。この時期は、TG肝細胞のDNA複製が最大であり、WT肝細胞の複製がほとんど検出できない時点に対応する(図11)。p21の発現パターンは、CCl4肝臓傷害後40時間では同じであった。このとき、WT肝細胞およびTG肝細胞はともに多量のBrdU取り込みを示した。
【0166】
p21のmRNA発現レベルもまた、TGマウスおよびWTマウスのCCl4による再生中の肝臓において調べられた。RNase保護アッセイが、記載されたように2連で行なわれた。肝臓のp21 mRNAが正規化され、図示される。これにより、再生中のWT肝臓でのp21の発現が、検討された時点のすべてを通して一定に保たれたことが明らかにされる(図12B)。TG肝臓でのp21のmRNAレベルの著しい低下が、CCl4肝臓傷害後の28時間〜32時間の間で観測された(図12B)。このことは、図11で認められるように、肝細胞がS期に早期に進入することと一致している。
【0167】
これらの研究は、p21の発現が減少することにより、これはDNA複製に対して阻害的であるが、肝臓再生時の促進された肝細胞増殖が媒介されることを明らかにしている。
【0168】
実施例7
CCl4肝臓傷害後の遺伝子導入マウスおよび野生型マウスの再生中の肝臓における増殖特異的遺伝子の示差的な発現
上記に記載されるように、RNase保護アッセイを、RNA保護プローブおよびPharmingen(San Diego、CA)により製造されたキットを製造者によって推奨される手順に従って使用して、様々なサイクリン遺伝子について行った。リボソームのラージサブユニットタンパク質L32およびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼGAPDHのシグナルを、CCl4肝臓再生時の種々の時点でのサイクリン発現を正規化するために使用した。マウスのCdc25aおよびCdc25bに対するアンチセンスRNAプローブを、Clontech(Paolo Alto、CA)から購入したAtlas cDNAプラスミドから作製した。
【0169】
RNase保護アッセイを、CCl4による再生中のTG肝臓およびWT肝臓におけるサイクリン遺伝子の時間的な発現パターンを調べるために2連で行った。再生中のWT肝臓と比較して、再生中のTG肝臓は、S期を促進するサイクリンD1遺伝子およびサイクリンE遺伝子の発現における早期の増大をCCl4傷害後の24時間〜36時間の間で示した。この時期は細胞周期のG1/S移行に対応する。CCl4による再生中のTG肝臓は、再生中のWT肝臓と比較して、サイクリンD1発現のより顕著なピークを示した(図13A)。このことは、未成熟なFoxM1BがサイクリンD1の発現を誘導し、S期への肝細胞の進入を促進し得ることを示唆している。TGマウスにおけるCCl4肝臓傷害後のサイクリンD1およびサイクリンEの発現の誘導ピークは、PHx肝臓再生モデルにおいて観測されたピークとは異なる。再生中のTG肝臓は、PHx後28時間からDNA複製の開始まで肝臓のサイクリンD1レベルの持続した増大を示したが、サイクリンE発現の誘導における変化は全く見出されなかった(Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)。PHxまたはCCl4により誘導される再生中の肝臓はともに、サイクリンA2発現の早期活性化を示す(図13D、同上)。サイクリンA2はCDK2との複合体を形成し、そしてE2Fのリン酸化(これにより、そのDNA結合活性が不活化される)を媒介することによってS期の進行のためには必須である(Dynlachtら、1994、Genes Dev.、8:1772〜1786;Xuら、1994、Mol.Cell Biol.、14:8420〜8431)。
【0170】
サイクリンB1遺伝子およびサイクリンB2遺伝子の早期発現と同時に、有糸***への進入が8時間早まることが明らかにされた以前のPHx再生研究(Ye他、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)において観測されたように、CCl4による再生中のTG肝臓は、サイクリンB1遺伝子およびサイクリンB2遺伝子の早期の肝臓発現を示した(図13C)。また、両方の肝臓再生モデルは、肝細胞のDNA複製のピークにおけるサイクリンFレベルの早期誘導を示した(図13E)。サイクリンFは、サイクリンBタンパク質の核局在化および有糸***への進入を媒介することができる(Kongら、2000、EMBO J.、19:1378〜1388)。これらの結果は、早期のサイクリンF発現が、サイクリンBの核局在化を促進することによって、TG肝細胞のM期へのより早い進入を誘発し得ることを示唆している。さらに、これらの肝臓再生モデル研究の分析では、FoxM1Bにより、異なるS期促進経路がCCl4肝臓傷害後に活性化されるが、これらのモデルはM期への促進された進入のために、類似するサイクリン遺伝子の活性化を示したことが示唆される。
【0171】
RNase保護アッセイにより、高レベルのCdc25aのmRNAが、再生中のTG肝臓においてCCl4傷害後の24時間〜40時間の間において維持され、その一方で、再生中のWT肝臓におけるCdc25aの発現が、28時間の時点以降、急激に低下することもまた明らかにされた(図13Fおよび図13G)。Cdc25aの発現は、TGの肝細胞のDNA複製がピークを過ぎるまで持続し、これは、サイクリンD1/CDK4複合体の活性化によるS期への進行を可能にした。TGの肝細胞複製がピークのとき、Cdc25b(cdc25M2)ホスファターゼレベルの増大が認められた(図13G)。Cdc25bのmRNAレベルの早期活性化が、CCl4傷害後36時間で、再生中のTG肝臓で見られたが、これに対して、その発現は40時間の時点までWTの再生中の肝臓では増大しなかった(図13G)。Cdc25bは、有糸***キナーゼのCdk1/サイクリンBを脱リン酸化により活性化することによってM期の進行を調節した(Nilssonら、2000、Prog.Cell Cycle Res.、4:107〜114;Sebastianら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、90:3521〜3524;Trembley他、1996、Cell Growth Differ.、7:903〜916)。Cdc25bの早期発現は、有糸***(2倍になった染色体の娘細胞への分配)を開始し、達成するために必要であるcdk1−サイクリンBキナーゼ活性を活性化することによって有糸***への進入を促進する。
【0172】
実施例8
マウス肝臓へのFoxM1B遺伝子のアデノウイルス送達によるFoxM1Bの発現
12月齢のBalb/cマウスを国立加齢研究所から入手して、マウスに、FoxM1Bを発現するアデノウイルスベクター(AdFoxM1B)またはコントロールとしてのアデノウイルス(AdCon)(1×1011個の精製アデノウイルス粒子)のいずれかを尾静脈注射により感染させた。FoxM1Bを発現するアデノウイルス(AdFoxM1B)は、ヒトFoxM1BcDNAの2.7kBのEcoRI−HindIIIフラグメントをアデノウイルスシャトルベクターpGEMCMV NEW(Duke大学のJ.R.Nevinsからの贈与)にサブクローン化することによって作製された。尾静脈注射後、95%を超えるアデノウイルスが肝臓に感染し、他の器官への感染は最小限に抑えられている。アデノウイルスが肝臓実質中のほとんどの細胞に効率よく送達されている。AdFoxM1Bのマウス尾静脈注射は、FoxM1Bのインビボでの肝臓発現の効果的な増大をもたらす。尾静脈注射の2日後、感染マウスを上記に記載されるような部分肝切除(PHx)手術に付した。PHx手術は、アデノウイルス感染後の最初の36時間以内に完了するウイルス感染に対する初期の急性期応答を避けるために、アデノウイルス感染の2日後に行なわれた。10mg/mLのBrdU(Sigma;50μg/g体重)を含むリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)溶液の腹腔内(IP)注射が、残存する再生中の肝臓を採取する2時間前に投与され、残存する再生中の肝臓が、以前の記載(Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)のように、手術の24時間後〜48時間後の間において種々の間隔で採取された。
【0173】
肝臓組織は、以前に記載されたように、総RNAを調製するために使用され、または肝細胞のDNA複製をモニターするためのDNAへのBrdU取り込みの免疫組織化学的染色のためにパラフィン包埋された。RNase保護アッセイが、上記に記載されたようにFoxM1BのRNase保護プローブを用いて行なわれ、これにより、AdFoxM1Bの感染がFoxM1BのmRNAの大きな増大を誘発することが明らかにされた(図14A)。比較のために、RNase保護アッセイが、2月齢(若齢)マウスの再生中の肝臓から単離された肝臓RNAに対して行なわれた。FoxM1B発現の著しい増大が、これらのサンプルにおいてPHx後の36時間〜44時間の間で観測され、高い発現レベルが肝臓再生実験の継続期間中維持された(図14A)。対照的に、AdConを感染させた老齢マウスの再生中の肝臓から得られたRNAを用いたRNase保護アッセイは、PHx後24時間においてFoxM1BのmRNAのほんのわずかな増大を示し、40時間において2度目の増大を示した(図14A)。また、FoxM1B発現の小さい増大が、老齢マウスの非感染の再生中の肝臓から、調べられた時点のすべてを通して観測された(図14A)。
【0174】
パラフィン包埋された肝臓組織は、抗BrdU抗体を用いた免疫染色に付され、FoxM1Bタンパク質の発現パターンが、上記に記載されたように、FoxM1Bタンパク質を使用した免疫組織化学によって調べられた。アデノウイルスにより媒介されるFoxM1B発現の増大は、PHx後32時間で、肝細胞のDNA複製のより早期のピークを刺激した(図14B)。これは、通常、若齢Balb/cマウスではPHx後40時間で生じる。S期への進行を媒介する際のFoxM1Bの役割と一致して、AdCon感染の再生中の肝臓または模擬感染の再生中の肝臓では、肝細胞のDNA複製が著しく増大しなかった(図14B)。肝細胞の有糸***像が調べられ、図14Cに図示される。アデノウイルスにより媒介されるFoxM1B発現の増大は、コントロールのアデノウイルスを感染させた老齢マウスまたは非感染の老齢マウスのいずれかの再生中の肝臓と比較した場合、PHx後の36時間〜44時間の間で肝細胞の有糸***を刺激した(図14C)。AdCon感染の老齢マウスから得られた再生中の肝臓の免疫組織化学的染色は、PHx後のFoxM1Bの核でのタンパク質レベルが検出できないほどであることが示された(図15、左図)。核でのFoxM1Bタンパク質の発現は、24時間〜36時間の間のすべての時点で観測された(図15、右図)。
【0175】
これらの結果は、アデノウイルスにより媒介されるFoxM1Bの肝臓レベルの増大は、S期および有糸***への肝細胞の進行を、若齢の再生中の肝臓において見出される速度と類似する速度で回復させたことを示している。
【0176】
実施例9
細胞周期調節遺伝子の発現が、AdFoxM1Bを発現する老齢マウスの再生中の肝臓では回復する
S期促進遺伝子の発現
AdFoxM1Bを感染させた老齢マウスの再生中の肝臓においてその発現が回復する細胞周期調節遺伝子を同定するために、RNase保護アッセイを、上記のようにAdConまたはAdFoxM1Bを感染させた老齢Balb/cマウスの再生中の肝臓から単離されたRNAに関して、様々なサイクリン遺伝子に対するプローブを用いて、2連で、記載されたように行った。
【0177】
老齢の再生中の肝臓におけるAdFoxM1Bの感染によって生じるFoxM1B発現の増大は、PHx後28時間での、S期を促進させるサイクリンD1遺伝子の上昇した発現を伴った(図16D)。同様に、サイクリンEは、AdFoxM1B感染の老齢マウスにおいてPHx後の28時間〜32時間の間で著しい増大を示した(図16F)。S期への肝細胞の減少した進入と一致して、AdCon感染の老齢マウスの再生中の肝臓は、細胞周期のG1/S移行時のサイクリンD1およびサイクリンEの発現の著しい低下を示した(図16Dおよび図16F)。FoxM1Bレベルの上昇により、AdFoxM1B感染の老齢マウスの再生中の肝臓におけるサイクリンA2の発現の増大もまた回復した(図16A)。
【0178】
まとめると、これらのデータは、老齢マウスの再生中の肝臓におけるFoxM1Bの発現を回復させることにより、肝細胞のS期への進入およびS期を経た進行を促進するために役立った、S期を促進させるサイクリンD1、サイクリンEおよびサイクリンA2の誘導が刺激されることを示している。
【0179】
M期促進遺伝子の発現
RNase保護アッセイを、記載されたように、M期の進行に関与する様々なサイクリンに対するプローブを用いて行った。肝細胞のDNA複製がピークにあるとき(PHxの24時間後〜32時間後)、AdFoxM1B感染の老齢マウスから得られた再生中の肝臓のみがサイクリンB1およびサイクリンB2の著しい誘導を示した(図16Bおよび図16C;PHxの24時間後〜32時間後)。サイクリンBレベルの誘導と同時に、サイクリンFレベルの著しい増大が、AdFoxM1Bを感染させた12月齢の再生中の肝臓では明らかであった(図16G)。さらに、サイクリンGの上昇したレベルが、肝細胞のDNA複製の期間中に観測された(図16H)。
【0180】
まとめると、これらの肝臓再生研究は、アデノウイルスにより増大した老齢マウスにおけるFoxM1B発現により、M期を進行させるために要求される、M期促進性のサイクリンB1遺伝子、サイクリンB2遺伝子、サイクリンF遺伝子およびサイクリンG遺伝子の誘導が回復することを示している。
【0181】
実施例10
肝臓再生時の条件付きFoxM1Bノックアウトマウスにおける増殖および有糸***
FoxM1Bノックアウトマウスは出生直後に死亡する。従って、成体の肝臓再生におけるFoxM1Bの役割を調べるために、条件付きFoxM1Bノックアウトマウスを、「Flox化」FoxM1B標的遺伝子座を作製するためにトリプルLoxP FoxM1Bターゲッティングベクターを使用して作製した(ベクターの概略図については図17を参照のこと)。2つのLoxP部位の間に広がるFoxM1ゲノム配列のCreリコンビナーゼ媒介による欠失により、翼型らせんDNA結合ドメイン全体およびC末端の転写活性化ドメインが除かれ、それにより機能的なFoxM1イソ型の発現が防げられる。標準的なエレクトロポレーション、および相同的組換え(G418およびガンシクロビル)について選択するためのマウス胚性幹(ES)細胞の培養の後、相同的組換え体をES細胞のゲノムDNAのサザンブロッティングによって同定した。
【0182】
マウスの胚盤胞に、「Flox化」(fl/+)FoxM1Bで標的化された対立遺伝子を含むES細胞を注入し、生殖系列伝達を有するキメラマウスを選択した。「Flox化」(fl/fl)FoxM1Bで標的化された対立遺伝子についてホモ接合性である生存可能なマウスを作製した。FoxM1B(fl)対立遺伝子についてホモ接合性(fl/fl)またはヘテロ接合性(fl/+)のいずれかであるマウスが、LoxP部位に隣接するプライマーを用いたマウスゲノムDNAのPCR増幅によって確認された。交配してアルブミンプロモーターのCreリコンビナーゼ導入遺伝子をFoxM1B(fl/fl)マウスの遺伝的背景に導入することにより、肝細胞のFoxM1B遺伝子座欠失が出生後6週間以内に可能になった。これは、肝臓のゲノムDNAを使用するサザンブロットによって確認された。
【0183】
肝細胞増殖におけるFoxM1Bの役割を、FoxM1B fl/flマウスおよびFoxM1B −/−マウス(このマウスでは、FoxM1B遺伝子がアルブミンCreリコンビナーゼ導入遺伝子によって肝細胞において欠失された)を用いた肝臓再生研究を行なうことによって調べた。8週齢のFoxM1B −/−マウスが部分肝切除(PHx)に付され、その再生中の肝臓が手術後の24時間〜52時間の間において種々の間隔で採取された(Wangら、2001、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、98:11468〜11473)。肝細胞のDNA合成が、上記に記載されたように、DNAへの5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)取り込みの免疫組織化学的染色によってモニターされた。
【0184】
FoxM1B fl/flマウスは、再生中のWT肝臓との比較において、(PHx後32時間で)8時間早いFoxM1B発現を示した(同上)。FoxM1Bは主に転写後レベルで調節されるので、FoxM1B遺伝子の3’末端におけるLoxPneo構築物は、おそらくはそのmRNAを安定化させ、従って、FoxM1Bの誘導されるレベルを増強していると考えられる。FoxM1B(fl/fl)マウスは、PHx後のBrdU取り込みにおいて二機能性のS期ピークを示し(図18A)、一方、DNA複製の著しい低下がFoxM1B(−/−)の再生中の肝臓において観測された(図18A)。さらに、有糸***への進行が、PHx後の36時間〜52時間の間における有糸***像が少数であることによって明らかにされように(図18B)、FoxM1B(−/−)マウスの再生中の肝細胞では著しく低下した。
【0185】
RNase保護アッセイを、FoxM1B −/−マウスの再生中の肝臓においてその発現が減少する細胞周期調節遺伝子を同定するために2連で行った(図19A)。FoxM1B(−/−)マウスの再生中の肝臓におけるサイクリンDまたはサイクリンEのmRNAレベルの非常に小さい変化が検出された(図19A)。しかし、ウエスタンブロット分析により、コントロールと匹敵するFoxM1B fl/flと比較して、再生中のFoxM1B −/−肝細胞では、p21タンパク質レベルが上昇していることが明らかにされた(図19B)。p21タンパク質はサイクリン/cdk活性を阻害するので、p21タンパク質レベルが増加したことにより、再生中のFoxM1B −/−肝細胞におけるDNA複製の低下が説明される。
【0186】
再生中のFoxM1B −/−肝臓の有糸***への進行の減少は、PHx手術後の40時間〜48時間の時点の間におけるCdc25BのmRNAレベルの低下と一致する。cdk−1に特異的なホスホチロシン15抗体を用いたウエスタンブロット分析により、FoxM1B欠損肝細胞における増大したcdk−1リン酸化が明らかにされた(図19C)。これは、Cdc25Bホスファターゼの減少したレベルがcdk1活性の低下をもたらすことと一致する発見である(Nilssonら、2000、Prog.Cell Cycle Res.、4:107〜114;Sebastianら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:3521〜3524;Trembleyら、1996、Cell Growth Differ.、7:903〜916)。減少したcdk1活性を裏付けるものとして、免疫沈降−キナーゼアッセイにより、再生中のFoxM1B −/−肝細胞から得られたタンパク質抽出物がヒストンH1基質の低下したcdk−1依存的リン酸化を示すことが明らかにされた(図19C)。また、サイクリンA2、サイクリンB1およびcdk1の低下したレベルがFoxM1B −/−において観測されたが、それらの発現は、細胞周期の期間中、依然として増大した。
【0187】
まとめると、これらの結果は、FoxM1BがM期の進行に不可欠な活性化因子(Cdc25B)を調節し、S期への進入を促進させるp21の減少した発現を媒介することを示唆している。
【0188】
実施例11
肝臓におけるFoxM1Bの発現および局在化に対する成長ホルモンの影響
2月齢のWT型CD−1マウスおよびTG型CD−1マウスに、ビヒクル緩衝液(溶液1mLあたり、2.2mgのグリシン、0.325mgのリン酸二ナトリウム二水和物(Na2HPO4,2H2O)、0.275mgのリン酸ナトリウム二水和物(NaH2PO4,2H2O)、および11mgのマンニトール)におけるヒト成長ホルモン(ソマトロピン(Norditropin)、Novo Nordisk Pharmaceuticals Inc.、Princeton、New Jersey;体重1gあたり5μg)の腹腔内(IP)注射が行われた。肝臓組織が、成長ホルモンの投与後、様々な時間間隔(0時間〜3時間)で採取された。肝臓組織はパラフィン包埋され、FoxM1B抗体を用いた免疫組織化学的染色のために使用された。免疫組織化学的染色により、ヒト成長ホルモンが、成長ホルモン投与の30分以内に、WTマウスにおいてFoxM1Bタンパク質の核染色を誘導すること(図20A〜Bと比較して、図20C〜D)、そしてFoxM1Bタンパク質の核染色が3時間の時点まで持続すること(図20E〜H)が明らかにされた。遺伝子導入FoxM1Bタンパク質の核染色が、TTR−FoxM1B遺伝子導入マウスへのIP投与後の30分〜3時間の間において成長ホルモンによって誘導された(図21)。成長ホルモンのビヒクル緩衝液が注射されたWTマウスおよびTGマウスのコントロールでは、肝臓の核でのFoxM1B染色が全く見出されなかった(図20〜図21、パネルAおよびパネルB)。これらの研究により、成長ホルモンは単独で、PHxまたはCCl4によって引き起こされる肝臓傷害を伴うことなく、FoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導することができることが明らかにされる。
【0189】
FoxM1Bレベルの低下が、若齢Balb/cマウス(2ヶ月齢)と比較した場合、老齢Balb/cマウス(12月齢)の再生中の肝臓において見出された(図22)。老齢マウスにおける肝細胞の増殖およびFoxM1Bの発現に対する成長ホルモンの影響を、部分肝切除(PHx)の前およびその後において12月齢のBalb/cマウスに成長ホルモンを投与することによって調べた。ヒト成長ホルモン(HGH)またはリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)が、PHx手術の1時間前に腹腔内(IP)注射(体重1グラムあたり5μg)によって老齢(12月齢)Balb/cマウスに投与された。マウスはまた、再生中の肝臓が採取されるまで、手術後8時間毎にHGHまたはPBSのIP注射を受けた。
【0190】
マウスには、上記に記載されたようにBrdUが注射され、その肝臓がPHx後の24時間〜48時間の間の様々な時間間隔で採取された。肝臓組織の一部が、RNase保護アッセイのための総RNAを調製するために使用された。上記に記載されるように肝臓組織を処理し、肝臓切片を抗BrdU抗体で染色した。BrdU染色された肝細胞および明白な有糸***像を、以前に記載されたように計数した(Wangら、2001、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、98:11468〜11473)。BrdUの取り込みによって測定されるような再生中の肝細胞のDNA複製は、若齢(2月齢)マウスの再生中の肝臓において観測されるレベルと類似していた(図23A)。また、老齢マウスの再生中の肝臓における有糸***は、若齢マウスの再生中の肝臓における有糸***と類似していた(図23B)。
【0191】
RNase保護アッセイによって測定されるFoxM1B発現は、再生過程のときに定期的なHGH注射を受けた老齢マウスの再生中の肝臓では上昇した(図22)。さらに、HGH処置により、FoxM1Bの標的遺伝子であるCdc25Bホスファターゼの発現が、若齢の再生中の肝臓において見出されるレベルにまで回復した。
【0192】
これらの研究は、FoxM1Bの発現が、再生中の肝臓において成長ホルモンによって刺激されることを示唆している。
【0193】
実施例12
成長ホルモンは休止肝臓細胞におけるFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導する
緑色蛍光タンパク質を、FoxM1Bのアミノ酸1〜748に読み枠を合わせて融合し、CMVプロモーターを、GFP−FoxM1B融合タンパク質の発現を行わせるために使用した。CMV−GFP−FoxM1B発現ベクターをマウス尾静脈注射により2.5mLの生理的食塩水において送達した。この技術により、DNA発現プラスミドがインビボで10%の肝細胞に形質導入されることが以前に明らかにされている。一群の形質導入された動物からの肝臓を採取し、上記に記載されるように処理した。CMV−GFP−FoxM1B発現ベクターで形質導入された第2のマウス群には、その肝臓が採取される45分前にHGHのIP注射が行われた。両方の群から得られた肝臓切片を蛍光顕微鏡で調べた。GFP−FoxM1Bは、HGHで処置されていない動物から得られた休止肝細胞の細胞質に存在し(図24C)、一方、GFP−FoxM1Bは、第2のマウス群から得られた肝細胞における核局在化を示した(図24D)。コントロールとして、第3のマウス群をCMV−GFP−FoxM1B−NLS(NLS=SV40のラージT抗原核局在化配列)で形質導入した(図24B)。HGHによって誘導されたGFP−FoxM1Bの核局在化パターンは、正常な調節を受けないGFP−FoxM1B−NLSの局在化と類似していた。これらの結果は、成長ホルモンが休止肝細胞におけるFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導するためにに十分であることを明らかにした。
【0194】
上記開示は本発明のいくつかの特定の実施形態を強調していること、そしてこれらと等価なすべての改変または変更は、添付された請求項に示されるような本発明の精神および範囲に含まれることを理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1A】3’末端における末端の972ヌクレオチドの欠失を含むヒトFoxM1BのcDNA(配列番号1)を示す。
【図1B】3’末端における末端の972ヌクレオチドの欠失を含むヒトFoxM1BのcDNA(配列番号1)を示す。
【図1C】配列番号1に示されるヌクレオチド配列によってコードされるヒトFoxM1Bタンパク質配列(配列番号2)を示す。
【図2】12月齢の野生型CD−1マウス(WT、黒丸)、12月齢の遺伝子導入CD−1マウス(TG、黒ひし形)または2月齢の野生型CD−1マウス(WT、黒四角)における部分肝切除(PHx)後の示された時間における(DNA複製の尺度としての)5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)取り込みを表すグラフを示す。
【図3】PHx後48時間での老齢TGマウスの再生中の肝臓における増大した肝細胞有糸***を表すグラフを示す。
【図4】2月齢WTマウス(A)、12月齢WTマウス(B)および12月齢TGマウス(C)の再生中の肝臓からPHx後の示された時間で単離された総RNAを使用して行われたRNase保護アッセイを示す。
【図5】示された時間で12月齢のWTマウスおよびTGマウスの再生中の肝臓から単離された総肝臓タンパク質抽出物を用いて行われた抗FoxM1B抗体とのウエスタンブロット分析を示す。FoxM1Bタンパク質は非特異的(NS)バンドよりも遅く移動する。
【図6】PHx後の示された時間でWTマウスと比較して、老齢TGマウスの再生中の肝臓における細胞周期促進遺伝子の増大した発現を明らかにするRNase保護アッセイを示す。
【図7】p21に対するアンチセンスRNAプローブを使用する、12月齢のWTマウスまたはTGマウスの再生中の肝臓から単離された総RNAのRNase保護アッセイを示す。
【図8】再生中のマウス肝臓あたり2500個の肝細胞に対するp21陽性核の数±標準偏差(SD)を表すグラフを示す。
【図9】図9Aは、老齢TTR−FoxM1B TGマウスおよび老齢WTマウスの再生中の肝臓におけるp53タンパク質の発現を示す、抗p53抗体を用いたウエスタンブロットを示す。図9B〜Cは、PHx後の様々な時間で老齢WTマウスにおけるレベルと比較したときの、老齢TTR−FoxM1B遺伝子導入マウスにおける相対的なp53タンパク質レベルおよびp21タンパク質レベルを示すグラフを示す。
【図10】WTマウス(A〜C)またはTGマウス(D〜F)から得られたCCl4処置の再生中の肝臓における、FoxM1B抗体を用いたFoxM1Bタンパク質の免疫組織化学染色およびFoxM1Bタンパク質の核発現を示す。
【図11】WTマウスおよびTGマウスにおけるCCl4誘導の肝臓損傷の後の様々な時点での肝細胞におけるBrdU取り込みを表すグラフを示す。BrdU陽性細胞が、約250個の核がそれぞれの視野に含まれる3つの視野で計数された。
【図12】図12Aは、WTおよびTGの肝臓再生におけるp21染色された肝細胞の統計学的分析を示す。図12Bは、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)およびラージリボソームL32のタンパク質レベルに対して正規化された、WTマウスおよびTGマウスから得られた再生中の肝臓におけるp21のmRNA発現レベルを表すグラフを示す。
【図13】CCl4誘導の肝臓損傷の後の様々な時間での再生中のWT肝臓および再生中のTG肝臓におけるサイクリンD1(A)、サイクリンE(B)、サイクリンB1(C)、サイクリンA2(D)、サイクリンF(E)、Cdc25a(F)およびCdc25b(G)のmRNA発現を表すグラフを示す。
【図14】図14Aは、PHx手術の2日前にAdCon(アデノウイルスコントロール)またはAdFoxM1B(FoxM1Bを有するアデノウイルスベクター)のいずれかを感染させたか、あるいは非感染のままに置かれた老齢Balb/cマウスの再生中の肝臓におけるFoxM1BのmRNAレベルを示す。FoxM1BのmRNA発現はシクロフィリンレベルに対して正規化された。パネルの下には、実験開始時(0時間の時点)における発現レベルと比較したときの誘導倍数が示される。図14Bは、AdFoxM1BまたはAdConのいずれかを感染させたか、あるいは非感染のままに置かれた12月齢Balb/cマウスにおけるPHx誘導されるマウス肝臓再生時の肝細胞のBrdU取り込みを表すグラフを示す。1000個の肝細胞あたりのBrdU陽性核の数の平均値および標準偏差(SD)がそれぞれの時点について計算された。図14Cは、PHx後の36時間〜44時間の間での、AdFoxM1B感染の老齢マウスの再生中の肝臓における増大した肝細胞有糸***を表すグラフを示す。PHx後のそれぞれの時点について2つの再生中の肝臓を使用して、肝細胞の有糸***が、1000個の肝細胞について見出された有糸***像の数の平均値±SDとして表される。
【図15】AdConではなく、AdFoxM1Bを感染させた老齢マウスの再生中の肝臓におけるFoxM1Bタンパク質の肝細胞核発現を示す、FoxM1B抗体を用いた免疫組織化学染色を示す。
【図16】AdFoxM1Bを感染させた老齢マウスの再生中の肝臓におけるサイクリン遺伝子の刺激された発現を表すグラフを示す。サイクリン発現レベルの発現レベルは、GAPDHタンパク質およびリボソームラージサブユニットL32タンパク質のmRNAレベルに対して正規化された。サイクリンA2(A)、サイクリンB1(B)、サイクリンB1(C)、サイクリンD1(D)、サイクリンD3(E)、サイクリンE(F)、サイクリンF(G)およびサイクリンG1(H)の正規化された平均mRNAレベルが図示される。
【図17】条件付きFoxM1Bノックアウトマウスを作製するために使用されたトリプルLoxP FoxM1B標的化ベクターの概略図である。
【図18】図18Aは、部分肝切除後のFoxM1B欠損肝細胞におけるBrdU取り込みを示すグラフを示す。図18Bは、FoxM1B −/−マウスおよびFoxM1B fl/flマウスにおける部分肝切除後の様々な時点での肝細胞有糸***を示すグラフを示す。
【図19】図19Aは、FoxM1B −/−マウスおよびFoxM1B fl/flマウスの再生中の肝臓における細胞周期調節遺伝子の発現を示す、二連で行われたRNase保護アッセイを示す。図19Bは、FoxM1B −/−およびFoxM1B fl/flの再生中の肝細胞におけるp21タンパク質レベルを示すウエスタンブロット分析を示す。
【図19C】図19Cは、肝臓再生時のFoxM1B −/−およびFoxM1B fl/flの肝細胞における、cdk−1特異的ホスホチロシン15抗体を用いたウエスタンブロット分析および基質としてH1タンパク質を使用するキナーゼアッセイを示す。
【図20】成長ホルモンで刺激された若齢CD−1マウスにおけるFoxM1Bタンパク質の肝細胞核発現を示す。コントロールマウス(A〜B)では示されなかったが、成長ホルモン投与の30分後(C〜D)、2時間後(E〜F)および3時間後(G〜H)におけるFoxM1Bの核染色(矢印により示される)を示した野生型の肝臓切片の顕微鏡写真が示される(200X(左パネル)および400X(右パネル))。
【図21】成長ホルモンで刺激された若齢TTR−FoxM1B遺伝子導入マウスにおけるFoxM1Bタンパク質の肝細胞核発現を示す。コントロールの遺伝子導入マウス(A〜B)では示されなかったが、成長ホルモン投与の30分後(C〜D)、2時間後(E〜F)および3時間後(G〜H)におけるFoxM1Bの核染色(矢印により示される)を示したTTR−FoxM1Bの肝臓切片の顕微鏡写真が示される(200X(左パネル)および400X(右パネル))。
【図22】非処置の2月齢(若齢)および12月齢のBalb/cマウス、ならびにヒト成長ホルモンで処置された12月齢Balb/cマウスの再生中の肝臓におけるFoxM1BのmRNAレベルの時間経過を示す。
【図23】図23Aは、成長ホルモンで処置されたマウスにおける再生中の肝臓から得られたBrdU陽性肝細胞の数を表すグラフを示す。図23Bは、成長ホルモンで処置されたマウスにおける再生中の肝臓から得られた有糸***性肝細胞の数を表すグラフを示す。
【図24】GFP−FoxM1B−NLS(B)、そして成長ホルモンの存在下および非存在下におけるGFP−FoxM1B(CおよびD)の局在化を示す、FoxM1B抗体を用いた免疫組織化学染色を示す。パネルAはコントロールである。
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/291,789号(2001年5月17日出願)、同第60/305,821号(2001年7月16日出願)および同第60/315,484号(2001年8月28日出願)に関連する。
【0002】
本出願は、糖尿病および消化器・腎臓疾患研究所からの公益補助金(補助金番号DK54687)による援助を受けた。合衆国政府は、本発明に対して一定の権利を有し得る。
【0003】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、FoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導することによって肝臓疾患および肝臓損傷を処置する方法に関する。本発明は、FoxM1Bタンパク質の発現を誘導し、そして哺乳動物細胞の核へのFoxM1Bタンパク質の転位を誘導または促進し、これにより、多くの不可欠な細胞周期促進遺伝子の転写が高められる方法に特に関する。詳細には、本発明は、患者に治療有効量の成長ホルモンを投与することを含む、肝臓損傷または肝臓疾患を防止または改善する方法に関する。本発明はさらに、肝臓細胞におけるFoxM1Bの発現を誘導する化合物、または肝臓細胞におけるFoxM1Bの核局在化を誘導する化合物、または肝臓細胞におけるFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化の両方を誘導する化合物をスクリーニングする方法に関する。本発明はまた、肝臓損傷または肝臓疾患を防止または改善するために有用であるそのような化合物、および肝臓損傷または肝臓疾患を防止または改善するための前記化合物の使用方法を提供する。
【0004】
2.関連技術の背景
哺乳動物の肝臓の重要な機能の1つは、体内に入った有害な化合物を解毒することである。肝臓において、毒性の物質は、食作用、胆汁内への分泌によって、または腎臓による除去を容易にするための化合物の化学的修飾によって身体から除かれ得る。肝臓の他の機能には、ビタミンを貯蔵すること、コレステロールおよび消化を助けるための胆汁を産生すること、過剰なグルコースをグリコーゲンに変換すること、そしてグルコースを空腹時に血液内に放出することが含まれる。肝臓はまた、すべての血清キャリアタンパク質、および血液凝固に関与するすべてのタンパク質を分泌することも担っている。従って、健康な肝臓は、動物個体またはヒト個体の全体的な健康状態に寄与する重要なものである。
【0005】
環境および食事からの様々なトキシンにより、肝臓は、生涯を通して絶えず攻撃を受けている。肝臓損傷に対する潜在的可能性が、時間とともに、そしてこれらのトキシンを除くことのストレスが増大するにつれて大きくなる。哺乳動物の肝臓は、そのような肝臓損傷に応答して自身を完全に再生することができる(Faustoら、1995、FASEB J. 9:1527〜1536;Michalopoulosら、1997、Science 276:60〜66;Taub、1996、FASEB J. 10:413〜427)。しかし、アルコールまたはある種の薬物などのトキシンに過度にさらされると、疾患をもたらす重篤な肝臓損傷が引き起こされ得る。加齢時に、肝臓の再生能は低下し、肝臓の損傷および疾患はより重篤になり、そして処置がより困難になる。従って、肝細胞の増殖を刺激し、これらの肝臓細胞の再生能力を回復させることができることは、肝臓疾患を処置することにおいて非常に有用であると考えられる。
【0006】
加齢プロセス時において、細胞周期を調節することに関与するいくつかの遺伝子の発現パターンが変化する。有糸***装置のこれらの欠陥は、中高年において見出される多くの疾患を生じさせる染色体の不安定性および変異の一因となっている(Ly他、2000、Science、287:2486〜2492)。いくつかの細胞周期調節遺伝子の低下した発現、特に、フォークヘッドボックスM1B(FoxM1B)転写因子(これは、TridentおよびHFH−11Bとしても知られている)の低下した発現は、細胞増殖における年齢に関連する欠陥の一因となっている(同上)。FoxM1Bは、HNF−3翼型らせんDNA結合ドメインとの39%のアミノ酸相同性を有する増殖特異的な転写因子である。この分子はまた、M期特異的キナーゼに対するリン酸化部位をいくつか有する強力なC末端転写活性化ドメイン、ならびに迅速なタンパク質分解を媒介するPEST配列を含む(Korverら、1997、Nucleic Acids Res.、25:1715〜1719;Korverら、1997、Genomics、46:435〜442;Yaoら、1997、J.Biol.Chem.、272:19827〜19836;Yeら、1997、Mol.Cell Biol.、17:1626〜1641)。
【0007】
FoxM1Bは、腫瘍に由来するいくつかの上皮細胞株で発現しており、G1/S移行に先立って血清によって誘導される(Korverら、1997、Nucleic Acids Res.、25:1715〜1719;Korverら、1997、Genomics、46:435〜442;Yaoら、1997、J.Biol.Chem.、272:19827〜19836;Yeら、1997、Mol.Cell Biol.、17:1626〜1641)。インシチューハイブリダイゼーション研究により、FoxM1Bが、胚の肝臓、腸、肺および腎盤で発現することが示されている(Yeら、1997、Mol.Cell Biol.、17:1626〜1641)。しかしながら、成体組織では、FoxM1Bは、胸腺、精巣、小腸および結腸の増殖中の細胞において発現しているが、肝臓および肺の有糸***後の分化細胞では発現していない(同上)。FoxM1Bの発現は、部分肝切除によって誘導される再生の後の肝細胞のDNA複製に先立って肝臓で再活性化される(同上)。
【0008】
転写活性なFoxM1B遺伝子を肝細胞で発現する遺伝子導入マウスを用いた肝臓再生研究では、FoxM1Bの早期発現は、肝細胞のDNA複製および有糸***の開始を8時間早めることが明らかにされた(Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)。遺伝子導入マウスにおける非再生肝臓での異常な肝細胞増殖は認められず、これは、FoxM1Bが、核に転位されたのではなく、細胞質に保持されたためであることが見出された(同上)。FoxM1Bは、肝臓再生時に有糸***促進のシグナル伝達に応答したときにだけ、核に転位されることが見出された(同上)。野生型および遺伝子導入型の再生中の肝臓から得られたRNAをcDNAアレイブロットのディファレンシャルハイブリダイゼーションおよびRNase保護アッセイによって分析することにより、FoxM1Bがいくつかの細胞周期調節遺伝子の発現を刺激することが示された(同上)。このデータは、FoxM1Bが細胞周期の進行を直接的または間接的のいずれかで媒介することを示している。
【0009】
遺伝子導入マウスの肝細胞におけるc−myc転写因子および腫瘍増殖因子α(TGF−α)の発現もまた、肝細胞の複製を肝臓再生時に刺激し得る。しかし、c−mycまたはTGF−αの構成的発現は肝臓腫瘍の発生率を増大させる(Factorら、1997、Hepatology、26:1434〜1443)。肝細胞におけるc−mycおよびTGF−αの同時発現もまた、酸化的ストレスおよびDNA損傷を刺激し、これらにより、部分肝切除後の老化、および4月齢〜8月齢の間における肝臓腫瘍の発達をもたらしている(同上;Factorら、1998、J.Biol.Chem.、273:15846〜15853)。
【0010】
FoxM1Bは、細胞周期促進遺伝子の転写を高めることができ、従って、トキシンおよび年齢に関連する肝臓損傷を相殺することができる肝細胞の複製を刺激することができる一方で、核内に転位されたときにだけ、そのような刺激を行う(Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)。成体の肝臓におけるFoxM1Bの発現、それに続く、適切な時期に核内に入るためのその誘導は、年齢に関連する増殖欠陥を軽減させることができ、そして望ましくない肝細胞増殖を避けることができ、これにより、c−mycまたはTGF−αの発現を誘導する化合物よりもはるかに安全な治療的介入の候補になる。
【0011】
発明の要約
本発明は、疾患肝臓および損傷肝臓における肝細胞のDNA複製および有糸***を回復させる方法を提供する。本発明はまた、哺乳動物の肝臓細胞(特に、老化した肝臓細胞またはトキシンによる損傷を受けた肝臓細胞)におけるFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導する方法を提供する。1つの局面において、本発明は、肝臓細胞を成長ホルモンと接触させることによって、FoxM1Bタンパク質の発現、またはFoxM1Bタンパク質の核局在化、またはFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導するための方法を提供する。別の局面において、本発明は、哺乳動物細胞におけるFoxM1Bタンパク質の発現を誘導する能力を有する化合物、および哺乳動物細胞におけるFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導する化合物、および哺乳動物細胞におけるFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化の両方を誘導する化合物を同定するためのスクリーニング方法を提供する。さらなる局面において、本発明は、本発明のスクリーニング方法によって同定された化合物を含む薬学的組成物を提供する。さらに、さらなる局面において、本発明は、そのような処置を必要としている患者における肝臓損傷を防止または改善する方法を提供する。
【0012】
特定の局面において、本発明は、哺乳動物の肝臓細胞におけるFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導するための方法を提供する。この場合、この方法は、肝臓細胞を成長ホルモンと接触させる工程を含む。1つの実施形態において、哺乳動物の肝臓細胞は、若齢の哺乳動物から得られる肝臓細胞の場合などのようにFoxM1Bを内因的に発現する。別の実施形態において、肝臓細胞は、加齢した哺乳動物における肝臓細胞などのように、FoxM1Bタンパク質を発現する能力が低下している。好ましい実施形態において、本発明は、細胞におけるFoxM1Bの発現および再生能力を回復させるために細胞(好ましくは肝臓細胞、最も好ましくは肝細胞)に導入され得る組換え核酸構築物を提供する。
【0013】
別の局面において、本発明は、FoxM1Bタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する核酸を含む組換え核酸構築物を提供する。好ましい実施形態において、核酸はヒトFoxM1Bをコードし、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。組換え核酸構築物はまた、FoxM1Bをコードする核酸に機能的に連結される発現制御配列を含む。1つの局面において、発現制御配列は、肝臓細胞において特異的に活性である肝臓特異的プロモーターである。この実施形態において、本発明の組換え核酸構築物を含む核酸は、構築物がインビボで送達されたとき、肝臓細胞においてのみ転写活性であり、発現される。本発明のこの局面において有用なプロモーターは、ヒトまたはマウスのα1−アンチトリプシンプロモーター、アルブミンプロモーター、血清アミロイドAプロモーター、トランスチレチンプロモーターおよび肝細胞核因子6(HNF−6)プロモーターが含むが、これらに限定されない。好ましくは、プロモーターは、成長ホルモンによって誘導されるHNF−6である。
【0014】
いくつかの局面において、本発明の組換え核酸構築物はベクターを含む。特定の実施形態において、ベクターはウイルスベクターであり、例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルスのベクターなどである。
【0015】
本発明はさらに、本発明の組換え核酸構築物を細胞(最も好ましくは、哺乳動物細胞)に導入するための方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明の組換え発現構築物はリポソームに配合され、哺乳動物の肝臓細胞に導入される。FoxM1Bの介入から利益を受け得る他の増殖性細胞タイプには、例えば、腸および結腸の上皮細胞、胸腺内の胸腺細胞および脾臓内のリンパ球、そして皮膚の基底細胞がある。本発明の組換え発現構築物はまた、例えば、ExGen500試薬(MBI Fermentas)を使用して細胞に導入することができる。
【0016】
本発明はまた、本発明の組換え核酸構築物が導入されている細胞(好ましくは、哺乳動物細胞)を提供する。好ましい実施形態において、細胞は、肝細胞、腸もしくは結腸の上皮細胞、胸腺内の胸腺細胞および脾臓内のリンパ球、または皮膚の基底細胞である。
【0017】
別の局面において、本発明は、細胞の核内に転位するためにFoxM1Bタンパク質を誘導することによって、FoxM1Bタンパク質を発現する細胞における肝臓再生を刺激する方法を提供する。特定の局面において、本発明は、そのような細胞を成長ホルモンと接触させて核局在化を誘導するための方法を提供する。
【0018】
本発明はさらに、哺乳動物細胞におけるFoxM1Bタンパク質の発現を誘導する化合物についてスクリーニングする方法を提供する。この場合、FoxM1Bタンパク質が核内に転位され得る。これらの実施形態において、本発明の方法は、FoxM1Bを通常の培養条件のもとで発現しない多数の細胞を成長ホルモンの存在下および非存在下で候補化合物と接触させる工程、成長ホルモンの存在下および非存在下で培養された細胞におけるFoxM1Bの発現および局在化をアッセイして、細胞におけるFoxM1Bの発現および核局在化を比較する工程を含み、この場合、FoxM1Bが、成長ホルモンの非存在下ではなく、成長ホルモンの存在下で前記細胞において発現し、細胞の核に局在化する場合、候補化合物が同定される。
【0019】
本発明はまた、FoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導する化合物についてスクリーニングする方法を提供する。これらの実施形態において、本発明の方法は、FoxM1Bタンパク質を発現する細胞を候補化合物と接触させる工程、および細胞におけるFoxM1Bタンパク質の細胞内局在化を調べる工程を含み、この場合、FoxM1Bタンパク質が、化合物の非存在下ではなく、化合物の存在下で細胞の核に局在化する場合、候補化合物が同定される。
【0020】
本発明はまた、FoxM1Bタンパク質の発現および核局在化の両方を誘導する化合物についてスクリーニングする方法を提供する。これらの実施形態において、本発明の方法は、(a)FoxM1Bを通常の培養条件のもとで発現しない細胞を候補化合物と接触させる工程、そして(b)細胞におけるFoxM1Bの発現および局在化をアッセイする工程を含み、この場合、FoxM1Bが、化合物と接触しなかった細胞ではなく、化合物と接触した細胞の核において発現し、局在化する場合、候補化合物が同定される。代わりの実施形態において、細胞は、化合物の存在下で細胞においてFoxM1Bの発現を誘導したとき、成長ホルモンと接触させられる。
【0021】
本発明はまた、肝臓細胞の増殖を誘導する方法を提供する。この場合、この方法は、FoxM1Bタンパク質を発現する肝臓細胞を、成長ホルモンと、または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物と接触させる工程を含む。好ましい実施形態において、細胞はFoxM1Bタンパク質を内因的に発現する。すなわち、細胞は、細胞DNAによってコードされるFoxM1Bタンパク質を発現する。別の実施形態において、細胞は、本発明の組換え核酸構築物によってコードされるFoxM1Bを発現する。
【0022】
本発明はさらに、哺乳動物における肝臓再生を刺激する方法を提供する。この場合、この方法は、哺乳動物の肝臓細胞を、成長ホルモンと、または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物と接触させる工程を含む。好ましい実施形態において、細胞はFoxM1Bタンパク質を内因的に発現する。すなわち、細胞は、細胞DNAによってコードされるFoxM1Bタンパク質を発現する。別の実施形態において、細胞は、本発明の組換え核酸構築物によってコードされるFoxM1Bを発現する。
【0023】
本発明はまた、哺乳動物における肝臓損傷を防止または改善する方法を提供する。この場合、この方法は、哺乳動物の肝臓細胞を、成長ホルモンと、または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物と接触させる工程を含む。好ましい実施形態において、細胞はFoxM1Bタンパク質を内因的に発現する。すなわち、細胞は、細胞DNAによってコードされるFoxM1Bタンパク質を発現する。別の実施形態において、細胞は、本発明の組換え核酸構築物によってコードされるFoxM1Bを発現する。特定の局面において、この方法は、肝臓損傷または肝臓疾患を受けることに関して大きい感受性または遺伝的素因を有する個体に適用されることが最も好ましい予防的措置である。
【0024】
別の局面において、前記方法は、肝臓損傷または肝臓疾患に罹患している個体に適用される治療的措置である。この局面において、本発明の方法は、損傷または疾患のさらなる進行を妨げるか、あるいは損傷または疾患の進行を逆にする。好ましい実施形態において、この方法は、肝臓移植を待っている個体に適用される。他の好ましい実施形態において、本発明の方法は、受容者に移植されるための、ドナーから摘出された肝臓に適用される。1つの実施形態において、ドナーは、FoxM1Bタンパク質の発現、またはFoxM1Bタンパク質の核局在化、またはFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導するために、手術による肝臓摘出に先立って、成長ホルモンで、または本発明のスクリーニング方法で同定された別の化合物で処置される。別の局面において、肝臓は、ドナーから摘出された後、成長ホルモンと、あるいはFoxM1Bタンパク質の発現、またはFoxM1Bタンパク質の核局在化、またはFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導する本発明のスクリーニング方法で同定された別の化合物と接触させられる。本発明の方法はまた、肝臓が移植された後、受容者を、成長ホルモンで、あるいはFoxM1Bタンパク質の発現、またはFoxM1Bタンパク質の核局在化、またはFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導する本発明のスクリーニング方法で同定された別の化合物で処置することによって受容者にも適用することができる。
【0025】
本発明はさらに、哺乳動物における肝臓損傷を防止または改善する方法を提供する。この場合、この方法は、FoxM1Bタンパク質を発現する肝臓細胞を哺乳動物に導入する工程、そしてその後、肝臓細胞を成長ホルモンまたは本発明のスクリーニング方法で同定された別の化合物と接触させる工程を含む。この局面において、肝臓細胞は、個体から取り出され、受容者個体に再導入されるが、最も好ましくは、免疫学的合併症を最小限に抑えるために同じ個体に再導入される。好ましい実施形態において、肝臓細胞はFoxM1Bを内因的に発現する。別の好ましい実施形態において、肝臓細胞は、本発明の組換え核酸構築物とエクスビボで接触させられ、それにより、細胞はFoxM1Bタンパク質を発現する。本明細書中に開示されるような同種移植片および自家移植片の両方が、患者における肝臓損傷または肝臓疾患を防止または改善するために本発明によって考えられる。本発明は、個体から取り出された肝臓細胞が、受容者に細胞が導入される前または導入された後において、成長ホルモンと、あるいはFoxM1Bタンパク質の発現、またはFoxM1Bタンパク質の核局在化、またはFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導する本発明のスクリーニング方法で同定された化合物と接触させられるこれらの方法を提供する。
【0026】
細胞周期の調節を媒介するFoxM1Bおよびその標的遺伝子の低下した発現は、12月齢(老齢)マウスの再生中の肝細胞および老齢者の増殖中の繊維芽細胞における低下した増殖と関連している。老齢のTTR−FoxM1B遺伝子導入マウスを使用した本明細書中に開示される肝臓再生研究では、FoxM1Bレベルを維持することにより、肝細胞の増殖が回復し、かつ細胞***を調節する遺伝子の発現が回復することが明らかにされる。アデノウイルス遺伝子治療を使用したFoxM1Bタンパク質の老齢マウスへの急性送達により、肝臓再生時における肝細胞のDNA複製および細胞***が回復する。これらのデータは、FoxM1B遺伝子送達が、FoxM1Bレベルが低下したことによる増殖を回復させるための治療的介入には有利であることを示唆している。この使用は、肝細胞がFoxM1B遺伝子欠損である遺伝子的に変化させたマウスを使用した本明細書中に開示される結果によって裏付けられる。FoxM1Bの欠損は、若齢マウスでさえも、肝臓障害に応答した肝細胞の増殖を阻害する。このことは、肝細胞がDNA複製および細胞***(有糸***)を経るためには、FoxM1Bの発現が必須であることを明らかにしている。FoxM1Bはまた、傷害に応答して肝臓を再生させるために必要となる肝細胞の複製にも必須である。FoxM1Bは、調べられたどの増殖中の細胞でも発現しているので、FoxM1Bは、身体のすべての細胞タイプの増殖のためには非常に重要である。まとめると、本開示により、FoxM1Bの発現が、肝臓傷害に応答した肝細胞の複製には必要であること、そして増大したFoxM1Bレベルが、中高年および肝臓疾患患者における肝細胞の増殖を回復させるためには十分であることが明らかにされる。従って、本明細書中に開示される方法は、肝臓の疾患および傷害を処置および防止するために様々な利点を提供する。
【0027】
さらに、本明細書中に開示される方法は、肝細胞の増殖を誘導するためにこの分野で知られている他の方法を上回る重要な利点を有している。一例には、遺伝子導入マウスにおけるc−mycの肝細胞での発現であり、これにより、肝細胞の複製が肝臓再生時に刺激されることである。c−mycの構成的発現は、肝臓傷害がない場合には異常な肝細胞増殖を引き起こすので望ましくない。これは、増殖シグナルがない場合、c−mycが核に局在化するためであり、肝細胞ガンなどの肝臓ガンの発達をもたらす。c−mycとは異なり、FoxM1Bの核局在化には、増殖特異的なシグナルが必要である。従って、異所的なFoxM1B発現は、休止細胞を誘導して細胞周期に入るためには不十分であり、従って、望ましくない細胞増殖を誘導しない。この特徴により、FoxM1Bを、患者が肝細胞ガンなどの肝臓ガンを発達させる危険性を伴うことなく、中高年者において、または不完全な肝臓再生を示す肝臓疾患を有する患者において認められる不完全な増殖を改善するための治療的介入のために使用することができる。休止細胞における増大したFoxM1B発現は、ガンの発達をもたらす望ましくない細胞増殖を誘導しないので、患者への投与により肝臓再生を刺激することの方がはるかに安全である。
【0028】
本発明の具体的な好ましい実施形態が、いくつかの好ましい実施形態の下記のより詳細な記載および請求項から明らかになる。
【0029】
好適な実施形態の詳細な説明
標準的な技術が、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために使用された。酵素反応および酵素精製技術が、製造者の説明書に従って、あるいはこの分野で一般に行われているように、または本明細書中に記載されるように行われた。これらの技術および手法は、一般的には、この分野で広く知られている従来の方法に従って、そして本明細書中に引用され、議論されている様々な一般的な参考文献およびより具体的な参考文献に記載されるように行われた。例えば、Sambrookら、2001、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.を参照のこと(これはすべての目的のために参考として本明細書中に組み込まれる)。具体的な定義が示されていない限り、本明細書に記載される分子生物学、遺伝子操作、分析化学、合成有機化学、医化学および製薬化学に関連して用いられる命名法、ならびにそれらの実験室手法および技術は、この分野において広く知られ、かつ一般に使用されているものである。様々な標準的な技術を、化学合成、化学分析、医薬品の調製および配合および送達、ならびに患者の処置のために使用することができる。
【0030】
文脈により別途要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、そして複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0031】
定義
本開示に従って用いられるとき、下記の用語は、別途示されない限り、下記の意味を有することを理解しなければならない。
【0032】
本明細書中で使用される用語「単離されたポリヌクレオチド」は、ゲノム起源、cDNA起源、合成起源、またはそれらの何らかの組合せであるポリヌクレオチドであり、その起源のせいで、「単離されたポリヌクレオチド」は、(1)「単離されたポリヌクレオチド」が自然界において見出されるポリヌクレオチドの全体または一部分と関連しない、(2)自然界において連結されていないポリヌクレオチドに連結されている、または(3)より大きな配列の一部分として自然界に存在しないポリヌクレオチドを意味する。
【0033】
本明細書中で示される用語「単離されたタンパク質」は、ゲノムDNA、cDNA、組換えDNA、組換えRNA、または合成起源もしくはそれらの何らかの組合せによってコードされるタンパク質で、(1)通常の場合に見出される少なくともいくつかのタンパク質を含まないタンパク質、または(2)同じ供給源(例えば、同じ種)に由来する他のタンパク質を実質的に含まないタンパク質、または(3)異なる種に由来する細胞によって発現されるタンパク質、または(4)供給源の細胞から単離されたとき、「単離されたタンパク質」が一緒に天然に見出されるポリヌクレオチド、脂質、炭水化物もしくは他の物質の少なくとも約50パーセントから分離されているタンパク質、または(5)「単離されたタンパク質」が自然界において連結されるポリペプチドの全体もしくは一部分に(共有結合的もしくは非共有結合的な相互作用により)連結されていないタンパク質、または(6)「単離されたタンパク質」が自然界において連結されていないポリペプチドに(共有結合的もしくは非共有結合的な相互作用により)機能的に連結されているタンパク質、または(8)自然界に存在しないタンパク質を意味する。好ましくは、単離されたタンパク質は、その自然環境において見出され、かつその治療的使用、診断的使用、予防的使用もしくは研究的使用を妨げる他の混在するタンパク質もしくはポリペプチドまたは他の混在物を実質的に含まない。
【0034】
用語「ポリペプチド」または用語「タンパク質」は、天然のタンパク質、すなわち、天然に存在する細胞および具体的には非組換え細胞、または遺伝子操作された細胞もしくは組換え細胞によって産生されるタンパク質を示すために本明細書中では使用され、天然タンパク質のアミノ酸配列を有する分子、あるいは天然配列の1つ以上のアミノ酸の欠失および/または付加および/または置換を有する配列を有する分子を含む。用語「ポリペプチド」および用語「タンパク質」は、具体的には、FoxM1B、またはFoxM1Bタンパク質の少なくとも1つの機能的性質を有する、FoxM1Bの1つ以上のアミノ酸の欠失および/または付加および/または置換を有するその種を含む。
【0035】
本明細書中で使用される用語「天然に存在する」は、自然界に見出され得る対象を示し、例えば、自然界における供給源から単離することができ、かつ人によって意図的に改変されていない、生物(ウイルスを含む)に存在するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列を示す。用語「天然に存在する」または用語「天然の」は、核酸分子、ポリペプチドおよび宿主細胞などの生物学的材料に関連して使用されるとき、自然界に見出され、かつ人によって操作されていない材料を示す。同様に、本明細書中で使用される「組換え」または「天然に存在しない」または「非天然の」は、自然界に見出されないか、または人により構造的に改変されているか、もしくは人により合成された材料を示す。
【0036】
本明細書中で使用されているように、20個の通常のアミノ酸およびそれらの略号は従来の使用法に従う。IMMUNOLOGY−A SYNTHESIS、第2版(E.S.GolubおよびD.R.Gren編)、1991、Sinauer Associates、Sunderland、Mass.を参照のこと(これはすべての目的のために参考として本明細書中に組み込まれる)。いくつかの実施形態により、1個または複数個のアミノ酸の置換(いくつかの実施形態では、保守的なアミノ酸置換)を、天然に存在する配列において行うことができる(いくつかの実施形態では、分子間の接触部を形成するドメインの外側のポリペプチド部分において行うことができる)。いくつかの実施形態において、保守的なアミノ酸置換は元の配列の構造的特徴を実質的に変化させない(例えば、代替アミノ酸は、元のタンパク質または天然のタンパク質を特徴づける二次構造(らせんなど)を破壊しないはずである)。この分野で認められているポリペプチドの二次構造および三次構造の様々な例が、PROTEINS,STRUCTURES AND MOLECULAR PRINCIPLES(Creighton編)、1984、W.H.New York:Freeman and Company;INTRODUCTION TO PROTEIN STRUCTURE(BrandenおよびTooze編)、1991、New York:Garland Publishing;Thorntonら、1991、Nature、354:105に記載される(これらはそれぞれが参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0037】
保守的なアミノ酸置換では、生物学的システムにおける合成によってではなく、化学的なペプチド合成によって典型的には取り込まれる、天然に存在しないアミノ酸残基を含むことができる。これらには、アミノ酸成分のペプチド模倣体および他の逆転型形態または反転型形態が含まれる。
【0038】
天然に存在する残基は、共通する側鎖性質に基づいて下記のクラスに分けることができる:1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;2)中性かつ親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;3)酸性:Asp、Glu;4)塩基性:His、Lys、Arg;5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0039】
例えば、非保守的な置換では、これらのクラスのあるクラスのメンバーを、別のクラスに由来するメンバーに交換することが含まれることがある。そのような置換残基は、非ヒト抗体と相同的であるヒト抗体の様々な領域に、または分子の非相同的領域に導入することができる。
【0040】
そのような変化を行うとき、いくつかの実施形態により、アミノ酸のヒドロパシー指数(hydropathic index)が考慮されることがある。それぞれのアミノ酸には、その疎水性および電荷特性に基づいたヒドロパシー指数が割り当てられている。それらは次の通りである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸塩(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸塩(−3.5);アスパラギン(−3.5);リシン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)(Kyteら、1982、J.Mol.Biol.、157:105〜131)。
【0041】
相互作用する生物学的機能をタンパク質に与えることにおけるアミノ酸のヒドロパシー指数の重要性がこの分野では理解されている(例えば、Kyteら、1982、J.Mol.Biol.、157:105〜131を参照のこと)。いくつかのアミノ酸は、類似するヒドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸に置換することができ、類似する生物学的活性を依然として保持し得ることが知られている。ヒドロパシー指数に基づく変化を行う際には、いくつかの実施形態において、ヒドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれる。いくつかの実施形態では、±1以内であるアミノ酸が含まれ、いくつかの実施形態では、±0.5以内であるアミノ酸が含まれる。
【0042】
類似するアミノ酸の置換が、親水性に基づいて効果的に行われ得ることもまた理解される。特に、それにより作製された生物学的に機能的なタンパク質またはペプチドが、本発明の場合のような免疫学的実施形態における使用のために意図される場合にはそうである。いくつかの実施形態において、タンパク質の最大の局所的平均親水性が、その隣接アミノ酸の親水性によって支配されるが、その免疫原性および抗原結合性または免疫原性と、すなわち、タンパク質の生物学的性質と相関する。
【0043】
米国特許第4,554,101号に記載されるように、下記の親水性値がこれらのアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸塩(+3.0±1);グルタミン酸塩(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。類似する親水性値に基づく変化を行う際には、いくつかの実施形態では、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれ、いくつかの実施形態では、±1以内であるアミノ酸が含まれ、いくつかの実施形態では、±0.5以内であるアミノ酸が含まれる。
【0044】
代表的なアミノ酸置換が表1に示される。
【表1】
【0045】
当業者は、十分に広く知られている様々な技術を使用して本明細書中に示されるようなポリペプチドの好適な変化体を決定することができる。いくつかの実施形態において、当業者は、活性のために重要であるとは考えられない領域を標的化することによって、活性を破壊することなく変化させることができる分子の好適な領域を同定することができる。いくつかの実施形態において、類似するポリペプチドの間で維持されている分子の残基および部分を同定することができる。いくつかの実施形態において、生物学的活性または構造のために重要である領域でさえ、生物学的活性を破壊することなく、またはポリペプチドの構造に悪影響を及ぼすことなく、保守的なアミノ酸置換に供することができる。
【0046】
さらに、当業者は、活性または構造のために重要である残基を類似ポリペプチドにおいて同定する構造−機能研究を検討することができる。そのような比較を考慮して、類似するタンパク質における活性または構造のために重要なアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基のタンパク質における重要性を予測することができる。当業者は、そのような予測された重要なアミノ酸残基に対する化学的に類似するアミノ酸置換の方を選ぶことができる。
【0047】
当業者はまた、類似するポリペプチドにおけるその構造に関連して三次元構造およびアミノ酸配列を分析することができる。そのような情報を考慮して、当業者は、その三次元構造に関して抗体のアミノ酸残基のアラインメントを予測することができる。いくつかの実施形態において、当業者は、タンパク質の表面に位置することが予測されたアミノ酸残基に対する根元的な(radical)変化をもたらさないように選ぶことができる。これは、そのような残基は、他の分子との重要な相互作用に関与し得るからである。さらに、当業者は、それぞれの所望するアミノ酸残基における一アミノ酸置換を含む試験変化体を作製することができる。このような変化体は、その後、当業者に知られている活性アッセイを使用してスクリーニングすることができる。そのような変化体を使用して、好適な変化体に関する情報を集めることができる。例えば、特定のアミノ酸残基に対する変化が、活性の破壊、または活性の望ましくない低下、または適さない活性をもたらすことが発見された場合、そのような変化を有する変化体を避けることができる。すなわち、そのような日常的実験から集められた情報に基づいて、当業者は、さらなる置換を単独または他の変異との組合せでのいずれでも避けなければならないアミノ酸を容易に決定することができる。
【0048】
20個の通常的なアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、天然に存在しないアミノ酸(α,α−二置換アミノ酸など)、N−アルキルアミノ酸、乳酸、および他の非通常的なアミノ酸もまた、本発明のポリペプチドのための好適な成分であり得る。非通常的なアミノ酸の例には、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸塩、ε−N,N,N−トリメチルリシン、ε−N−アセチルリシン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、σ−N−メチルアルギニン、ならびに他の類似するアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書中で使用されるポリペプチド表記法では、標準的な使用法および規約に従って、左手側の方向がアミノ末端方向であり、右手側の方向がカルボキシ末端方向である。
【0049】
ペプチド類似化合物が、テンプレートペプチドの性質に類似する性質を有する非ペプチド薬物として製薬業界では一般に使用される。これらのタイプの非ペプチド化合物は「ペプチド模倣体(peptide mimetics)」または「ペプチドミメティクス(peptidomimetics)」と呼ばれる(Fauchere、1986、Adv.Drug Res.、15:29;VeberおよびFreidinger、1985、TINS、392頁;Evans他、1987、J.Med.Chem.、30:1229を参照のこと。これらはすべての目的のために参考として本明細書中に組み込まれる)。そのような化合物は、コンピューターを使用した分子モデル化の助けによって開発されることが多い。治療的に有用なペプチドと構造的に類似するペプチド模倣体を使用して、類似する治療効果または予防効果を得ることができる。一般に、ペプチドミメティクスは、ヒト抗体などのパラダイムペプチド(すなわち、生化学的性質または薬学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、1つ以上のペプチド結合が、この分野で広く知られている方法によって、場合により、−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−および−CH2SO−などの結合により置き換えられている。コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸を同じ型のD−アミノ酸(例えば、L−リシンの代わりにD−リシン)で系統的に置換することが、より安定なペプチドを作製するために、いくつかの実施形態では使用され得る。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列の変化を含む立体配置的に制約されたペプチドを、この分野で知られている方法(RizoおよびGierasch、1992、Ann.Rev.Biochem.61:387;これはすべての目的のために参考として本明細書中に組み込まれる)によって、例えば、ペプチドを環化する分子内ジスルフィド架橋を形成し得る内部システインを付加することによって作製することができる。
【0050】
別途示されない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左手側の端部が5’端部であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左手側の方向が5’方向として示される。初期RNA転写物の5’から3’への付加方向が転写方向として示される;RNAと同じ配列を有するDNA鎖における配列領域で、RNA転写物の5’末端に対して5’側の配列領域が、「上流配列」と示され、RNAと同じ配列を有するDNA鎖における配列領域で、RNA転写物の3’末端に対して3’側の配列領域が、「下流配列」と示される。
【0051】
本明細書中で使用される用語「ポリヌクレオチド」は、長さが少なくとも10塩基であるヌクレオチドのポリマー形態を意味する。いくつかの実施形態において、塩基は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドまたはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾された形態であり得る。この用語には、一本鎖形態および二本鎖形態のDNAが含まれる。
【0052】
本明細書中で使用される用語「オリゴヌクレオチド」は、天然に存在するオリゴヌクレオチド連結および/または天然に存在しないオリゴヌクレオチド連結によって連結された天然に存在するヌクレオチド、およびそのような修飾ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、多くても200ヌクレオチドを一般には含むポリヌクレオチドのサブセットである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは長さが10ヌクレオチド〜60ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、長さが、12塩基、13塩基、14塩基、15塩基、16塩基、17塩基、18塩基、19塩基または20塩基から40塩基までである。オリゴヌクレオチドは、例えば、部位特異的変異誘発技術を使用する遺伝子変異体の構築において使用される一本鎖である。本発明のオリゴヌクレオチドはセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。
【0053】
用語「天然に存在するヌクレオチド」には、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドが含まれる。用語「修飾ヌクレオチド」には、修飾された糖基または置換された糖基などを有するヌクレオチドが含まれる。用語「オリゴヌクレオチド連結」には、リン酸塩、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデートおよびホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド連結が含まれる。例えば、LaPlancheら、1986、Nucl.Acids Res.、14:9081;Stecら、1984、J.Am.Chem.Soc.、106:6077;Steinら、1988、Nucl.Acids Res.、16:3209;Zonら、1991、Anti−Cancer Drug Design、6:539;Zonら、1991、OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES:A PRACTICAL APPROACH(F.Eckstein編)、Oxford University Press、Oxford(英国)、87頁〜108頁;Stec他、米国特許第5,151,510号;UhlmannおよびPeyman、1990、Chemical Reviews、90:543を参照のこと(これらのそれぞれの開示はすべての目的のために参考として本明細書により組み込まれる)。オリゴヌクレオチドは、放射性標識、蛍光標識、抗原性標識またはハプテンなどの検出可能な標識を含むことができる。
【0054】
用語「剤(agent)」は、化学化合物、化学化合物の混合物、生物学的高分子、または生物学的材料から作製された抽出物を示すために本明細書中では使用される。
【0055】
本明細書中で使用される用語「標識」または用語「標識された(される)」は、例えば、放射能標識されたアミノ酸を取り込むことによって、または標識されたアビジン(例えば、光学的方法または比色的方法により検出され得る蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)により検出され得るビオチン成分をポリペプチドに結合することによって検出可能なマーカーを含むことを示す。いくつかの実施形態において、標識またはマーカーはまた治療的であり得る。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法を使用することができ、それらはこの分野では知られている。ポリペプチドに対する標識の例には、下記のものが含まれるが、これらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチン、および二次レポーターにより認識される事前に決定されたポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。いくつかの実施形態において、標識は、立体障害を減らすために様々な長さのスペーサーアーム(−(CH2)n−(n=1〜50、より好ましくは1〜20)など)によって結合させられる。
【0056】
本明細書中で使用される表現「組換え核酸構築物」は、制御配列に機能的に連結されるコード配列を含むDNA配列またはRNA配列を示す。本発明の組換え核酸構築物は、細胞内に導入されたとき、コード配列によってコードされるタンパク質を発現させることができる。本発明の組換え核酸構築物は、好ましくは、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードする核酸配列、例えば、配列番号1に示されるような核酸配列を含み、それにより、組換え核酸構築物と接触した細胞はFoxM1Bタンパク質を発現する。本明細書中で使用される用語「機能的に連結される」は、それらの意図された様式または通常の様式でそれらを機能させることができる関係にある構成成分を示す。例えば、コード配列に「機能的に連結される」制御配列は、コード配列の発現が、制御配列と適合し得る条件のもとで達成されるような様式でコード配列に連結される。
【0057】
本明細書中で使用される用語「制御配列」は、連結されるコード配列の発現およびプロセシングを行うことができるポリヌクレオチド配列を示す。そのような制御配列の性質は、宿主生物に依存して変化し得る。いくつかの実施形態によれば、原核生物に対する制御配列には、プロモーター、リプレッサー、オペレーター、リボソーム結合部位、ならびに転写終結配列およびアンチセンスmRNAを挙げることができる。いくつかの実施形態によれば、真核生物に対する制御配列には、プロモーター、エンハンサーおよび転写終結配列、タンパク質分解、mRNA分解、核局在化、核外輸送、細胞質保持、タンパク質リン酸化、タンパク質アセチル化、タンパク質スモレーション(sumolation)、RNAi阻害を挙げることができる。いくつかの実施形態において、「制御配列」には、リーダー配列および/または融合パートナー配列を挙げることができる。「制御配列」は、連結されるコード配列の発現およびプロセシングを「制御配列」が行うとき、コード配列に「機能的に連結される」。
【0058】
本明細書中で使用される表現「肝臓特異的なプロモーター」は、コード配列の転写を行わせることができ、かつ肝臓細胞内において特異的に活性化される核酸配列を示す。本発明の方法のために好適な肝臓特異的なプロモーターには、ヒトまたはマウスのα1−アンチトリプシン、アルブミンプロモーター、血清アミロイドA、トランスチレチン、および肝細胞核因子6が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
用語「ベクター」は、宿主細胞にコード情報を移すために使用される任意の分子(例えば、核酸、プラスミドまたはウイルス)を示すために使用される。本発明の方法のために好適なウイルスベクターには、例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルスに由来するベクターが含まれる。
【0060】
用語「発現ベクター」は、宿主細胞を形質転換するために好適であり、挿入された異種の核酸配列の発現を命令および/または制御する核酸配列を含むベクターを示す。発現には、転写、翻訳、およびイントロンが存在する場合にはRNAスプライシングなどのプロセスが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
用語「宿主細胞」は、核酸配列が導入されている細胞、または核酸配列が導入され、その後、目的とする遺伝子を発現させることができる細胞を示すために使用される。この用語には、遺伝子が存在する限り、子孫が形態学または遺伝的構成において最初の親と同一であるか否かによらず、親細胞の子孫が含まれる。
【0062】
用語「形質導入」は、通常的にはファージによるある細菌から別の細菌への遺伝子の移入を示すために使用される。「形質導入」はまた、レトロウイルスなどのウイルスによる真核生物の細胞性配列の獲得および移入を示す。
【0063】
用語「トランスフェクション」は、外部DNAまたは外因性DNAの細胞による取り込みを示し、外因性DNAが細胞膜の内部に導入されているとき、細胞は「トラスフェクション」されている。多数のトランスフェクション技術がこの分野では知られており、そして本明細書中に開示される。例えば、Grahamら、1973、Virology、52:456;Sambrookら、2001、同上;Davisら、1986、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY(Elsevier);Chuら、1981、Gene、13:197を参照のこと。そのような技術は、1つ以上の外因性DNA成分を好適な宿主細胞に導入するために使用することができる。
【0064】
本明細書中で使用される用語「形質転換」は細胞の遺伝的特徴の変化を示し、細胞が、新しいDNAを含有するために改変されているとき、細胞は形質転換されている。例えば、細胞は、その天然状態から遺伝子的に改変される場合、形質転換される。トランスフェクションまたは形質導入の後、形質転換DNAは、細胞の染色体に物理的に組み込まれることによって細胞のDNAと組み換えられ得るか、または複製されることなくエピソームエレメントとして一時的に維持され得るか、またはプラスミドとして独立的に複製し得る。DNAが細胞の***とともに複製するとき、細胞は安定的に形質転換される。
【0065】
本明細書中で使用される用語「薬学的組成物」は、患者に適正に投与されたとき、所望する治療効果を誘導することができる化学的な化合物または組成物を示す。
【0066】
用語「治療有効量」は、哺乳動物における治療的応答をもたらすことが決定された成長ホルモンの量または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物の量を示す。そのような治療有効量は当業者によって容易に確認される。
【0067】
本明細書中で使用される「実質的に純粋な」は、存在する優勢な種である対象種を意味する(すなわち、モル量に基づいて、対象種が、組成物内の任意の他の個々の種よりも多量である)。いくつかの実施形態において、実質的に精製された画分は、対象種が、(モル数に基づいて、または重量もしくは数に基づいて)存在するすべての高分子種の少なくとも約50パーセントを含む組成物である。いくつかの実施形態において、実質的に純粋な組成物は、組成物に存在するすべての高分子種の約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上または約99%以上を含む。いくつかの実施形態において、対象種は、組成物が実質的に単一の高分子種からなる本質的な均一にまで精製される(この場合、混在する種は、通常の検出方法によって組成物中に検出することができない)。
【0068】
用語「患者」は、ヒトおよび動物の対象体を含む。
【0069】
本明細書中で使用される用語「自家移植」は、生物の一部分を取り出し、同じ個体の体内においてそれを置き換えることを示す。自家移植は、同種の器官または組織または細胞を個体に導入することであり得る。
【0070】
本明細書中で使用される用語「同種移植」は、ある個体の一部分を取り出し、異なる個体の体内においてそれを置き換えることを示す。同種移植はまた、異種移植(xenograft、heterograftまたはheterologous graft)として示される。同種移植片は、例えば、臓器供与から得ることができる。
【0071】
本明細書中で使用される表現「肝臓細胞」は、哺乳動物の肝臓を構成する細胞を示す。肝臓細胞には、例えば、肝細胞、クッパー細胞、胆管上皮細胞、有窓内皮細胞およびイトウ細胞が含まれる。
【0072】
本明細書中で使用される用語「肝臓再生」は、新しい肝臓組織の成長または増殖を示す。本発明の再生された肝臓組織は、正常な肝臓組織の細胞学的特徴および組織学的特徴および機能的特徴を有する。そのような特徴は、この分野で知られている任意の方法によって調べることができる。例えば、本発明の再生された肝臓組織は、肝機能を示す一般的なマーカーの発現について調べることができる。
【0073】
表現「肝機能」は、肝臓によって行われる多くの生理学的機能の1つ以上を示す。そのような機能には、血糖レベルを調節すること、内分泌調節、酵素システム、代謝産物(例えば、ケトン体、ステロールおよびステロイドおよびアミノ酸)の相互変換;フィブリノーゲン、血清アルブミンおよびコリンエステラーゼなどの血液タンパク質を製造すること、赤血球生成の機能、解毒化、胆汁形成、ならびにビタミン貯蔵が含まれるが、これらに限定されない。肝機能を調べるためのいくつかの試験がこの分野では知られており、これらには、例えば、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ、ビリルビン、プロトロンビンおよびアルブミンが含まれる。
【0074】
本明細書中で使用される表現「肝臓疾患」または用語「肝臓損傷」は、肝機能を損なう任意の状態を示す。「肝臓損傷」は、例えば、ウイルス感染、寄生虫感染、遺伝的素因、自己免疫疾患、放射線被曝、肝毒性化合物にさらされること、機械的傷害、および様々な環境的トキシンを含む多数の要因のいずれかによって引き起こされる肝臓障害に応答して生じ得る。アルコール、アセトアミノフェン、アルコールおよびアセトアミノフェンの組合せ、吸入麻酔薬、ナイアシン、そして薬草補充物カワは、肝臓損傷を引き起こし得る化合物の例の一部である。肝臓損傷の多くの形態は肝硬変をもたらす。肝硬変は、広範囲にわたる線維症および再生小節を含む慢性的な肝臓損傷を伴う病理学的状態である。本明細書中で使用される「線維症」は、肝臓における線維芽細胞の増殖および瘢痕組織の形成を示す。
【0075】
一般的な「肝臓疾患」には、若年小児におけるライ症候群、ウィルソン病、血色素症、α−1−アンチトリプシン欠乏症、様々な寄生虫感染症、ウイルス疾患、肝硬変および肝臓ガンが含まれるが、これらに限定されない。ウイルス疾患の例には、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎およびG型肝炎による感染が含まれる。寄生虫感染症の例には、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma hematobium)および日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)が含まれる。
【0076】
用語「成長ホルモン」は、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、および好ましくはヒトを含む任意の種に由来する、天然配列または変化体形態にある成長ホルモン、ならびに、天然または合成または組換えであっても、任意の供給源に由来する成長ホルモンを示す。ヒトでの使用の場合、ヒト天然配列の成熟型成長ホルモンが本明細書中では好ましく、この場合、メチオニンがそのN末端に存在するか、またはメチオニンがそのN末端に存在しない。同様に、例えば、組換えDNA技術によって製造される組換えヒト成長ホルモン(hGH)もまた好ましい。
【0077】
ヒト成長ホルモンは市販されており、ソマトレムおよびソマトロピンとして知られている。ソマトレムは、典型的には、hGH不足が原因である成長不良の小児を処置するために使用される。小児に対するソマトレムの通常的な1週間投薬量は、体重1キログラム(kg)あたり0.3ミリグラム(mg)である。ソマトロピンは、ターナー症候群、腎臓疾患、またはhGH欠乏が原因である成長不良を処置するために使用される。小児に対するソマトロピンの通常的な1週間投薬量は、体重1kgあたり0.16mg〜0.375mgである。成人の場合、0.006mg/kgが通常の場合には毎日服用され、必要に応じて徐々に増やされる。劇的な体重減少を受けるAIDS患者には、体重に依存して1日あたり6mgまでのソマトロピンが与えられる。ソマトロピンおよびソマトレムは、典型的には、皮下への注射によって、または直接筋肉内への注射によって投与される。経口投与される成長ホルモンの形態もまたこの分野では知られている(例えば、米国特許第6,239,105号を参照のこと)。
【0078】
マウスでの遺伝学的研究により、増大したp53活性により、早すぎる老化、および早期の老化に関連した表現型をもたらすことが明らかにされている(Tynerら、2002、Nature、415:45〜53)。FoxM1Bの増大した発現が老齢TTR−FoxM1B TGマウスの再生中の肝細胞における低下したp53タンパク質レベルを媒介する能力が、本明細書中に記載されるように調べられた。肝細胞のDNA複製の前(PHx後の24時間〜36時間)において、ウエスタンブロット分析では、p53タンパク質レベルの50%〜70%の低下が、老齢のWTマウスと比較した場合、老齢TTR−FoxM1B TGマウスの再生中の肝臓において明らかにされた。p53タンパク質レベルの低下と完全に一致して、老齢TTR−FoxM1B TGマウスの再生中の肝臓では、S期前のp21Cip1タンパク質の発現が50%低下することが観測された。これらの肝臓再生研究は、FoxM1Bのレベルを維持することにより、老齢TTR−FoxM1B TGマウスでは、p53タンパク質およびp21Cip1タンパク質の低下した発現がG1期からS期への移行時にもたらされたことを示しており、このことは、老化の表現型に関連する低下した増殖を防止することと一致している。
【0079】
加齢時における増殖欠陥は筋肉量の低下および皮膚の薄化をもたらし、このことは、成長ホルモン(GH)の分泌および血清中のGH結合タンパク質の進行性の減退と関連している。GHで処置された老齢マウスは、再生中の肝細胞のDNA複製および有糸***が、若齢の再生中の肝臓において見出されるレベルに増大することを示した。さらに、本明細書中に明らかにされるように、FoxM1Bの増大した発現および核局在化は、GHが老齢マウスの再生中の肝臓における肝細胞の増殖を回復させる機構である。このことは、GHが、老齢マウスの再生中の肝臓におけるFoxM1Bの発現を回復させることによって肝細胞の増大した増殖を媒介することを示唆している。
【0080】
本明細書中で議論されているように、短期間のGH投与は、肝臓再生に欠陥を示す疾患肝臓におけるFoxM1Bの発現および肝臓細胞の増殖を刺激するために使用することができる。また、短期間のGH投与は、受容者への肝臓の生体ドナー移植片において効果的であり得る。これらは、その肝葉の1つを受容者に与えるドナーであり、そしてドナーおよび受容者の両方における肝臓の再生を必要とする。ドナーおよび肝臓疾患受容者に対する数日前のGH投与は、生体ドナーの肝臓において、そして受容者において肝臓の再生を刺激することができ、両方の患者についてより良好な予後を可能にする。本明細書中の実施例により、GHの投与が、FoxM1Bの増大した発現および核局在化によって肝臓の再生を高める有用な治療的介入であることが明らかにされる。
【0081】
本発明は、肝臓損傷または肝臓疾患に関して診断された患者を処置するための様々な方法を提供する。本発明のこれらの局面において、患者は、医学的に慢性的な様式でなく、医学的に急性的な様式で成長ホルモンで処置される。すなわち、処置は、疾患または傷害または損傷の性質および程度によって限定される継続期間を有し、そして患者における好ましい応答を検出したときに停止される。好ましくは、本発明は、医学的に急性的な様式で成長ホルモンにより処置された患者におけるFoxM1Bタンパク質の一時的な核局在化をもたらす。本明細書中で使用される「一時的な核局在化」は、細胞の核におけるFoxM1Bタンパク質の非永続的な局在化を示す。例えば、FoxM1Bタンパク質を、成長ホルモンにさらすことによって肝細胞の核に局在化するように誘導することができ、その一方で、FoxM1Bタンパク質は、成長ホルモンに対する暴露が中断されると核において検出することができない。
【0082】
患者は、好ましくは、この分野で知られている様々なアッセイを使用して、肝臓損傷または肝臓疾患についてスクリーニングされる。例えば、肝臓のアミノトランスフェラーゼ酵素(アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸塩アミノトランスフェラーゼ(AST)など)の血清レベルにより、患者における肝臓損傷の量の指標が提供され得る。ほとんどの肝臓疾患において、ASTレベルの増大はALTの増大よりも小さい(すなわち、AST/ALTの比率は1未満である)。しかし、アルコールが原因である肝臓障害では、この比率は>2であることが多い。患者における肝臓損傷の量を測定するための他の方法には、ビリルビン、プロトロンビンおよびアルブミンのレベルを測定することが伴う。肝臓損傷および肝臓疾患をスクリーニングおよび診断するための様々な方法の総説については、THE MERCK MANUAL、第17版(BeersおよびBerkow編)、1999、Whitehouse Station、N.J.を参照のこと。従って、例えば、ALT、ASTおよびビリルビンの血清レベルが高く、アルブミンの血清レベルが低い患者は、本発明の方法に従って成長ホルモンが有利に投与される。
【0083】
ヒト成長ホルモン(hGH)の場合、ヒト投与のための好適な投薬量は、1日あたり体重1kgについて0.001mg〜約0.2mgの範囲である。一般に、hGHの治療効果的な1日投薬量は、1日あたり体重1kgについて約0.05mg〜約0.2mgである。ほとんどの患者については、1日あたり1回以上の適用において0.07mg/kg〜0.15mg/kgの用量が、所望する結果を得るために効果的である。代わりの方法では、hGHは、より少ない頻度で投与することができ、特に、徐放性形態で配合されている場合には、例えば、ある種の適用症については1日おきに、または2日おきに投与することができる。
【0084】
hGHによる処置の期間中、患者は、肝機能の改善について、本明細書中に記載され、この分野で知られているアッセイによってモニターされ得る。肝機能が、健康な肝臓のレベルに類似するレベルに回復したとき、これは、肝臓の再生プロセスが十分であることを示唆するので、成長ホルモンの投与が停止される。従って、患者が成長ホルモンに慢性的にさらされないことが本発明の利点である。
【0085】
本発明の方法は、例えば、外傷による肝臓損傷を有する患者、ならびに肝臓損傷を受けることに対する危険性が大きい患者、例えば、アルコール中毒者、および肝臓疾患に対する遺伝的素因を有する患者など、そして環境的トキシンおよび工業的トキシンおよび化学的トキシンに日常的にさらされる患者に関して有利に使用される。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明は、肝臓細胞において細胞質から核に転位するためにFoxM1Bタンパク質を誘導することによって哺乳動物における肝臓損傷または肝臓疾患を処置するための様々な方法を提供する。この場合、FoxM1Bタンパク質は多くの細胞周期促進遺伝子の転写を高め、細胞増殖を刺激する。特定の実施形態において、哺乳動物は、FoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導するために成長ホルモンで処置される。
【0087】
他の実施形態において、本発明は、FoxM1Bタンパク質の発現を誘導する化合物、またはFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導する化合物、またはFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化の両方を誘導する化合物についてスクリーニングするための様々な方法を提供する。これらのスクリーニングで同定された化合物は、本明細書中に記載されるように肝臓損傷および肝臓疾患を処置する方法において使用することができる。
【0088】
FoxM1Bタンパク質の発現を誘導する化合物に対するスクリーニングは、例えば、FoxM1B遺伝子を含むが、FoxM1Bタンパク質を通常の培養条件のもとで発現しない細胞を用いて達成され得る。そのような細胞には、例えば、加齢した個体に由来する肝細胞、または下記に議論されるようにFoxM1B遺伝子を含む宿主細胞、またはFoxM1Bタンパク質を発現しない休止細胞を挙げることができる。
【0089】
哺乳動物細胞におけるFoxM1Bタンパク質の発現を誘導する化合物についてスクリーニングする方法は、下記のように達成され得る:(a)FoxM1B遺伝子を含み、FoxM1Bタンパク質が通常の培養条件のもとで発現されない多数の細胞を成長ホルンの存在下で候補化合物と接触させること;(b)FoxM1B遺伝子を含み、FoxM1Bタンパク質が通常の培養条件のもとで発現されない多数の細胞を成長ホルンの非存在下で該候補化合物と接触させること;そして(c)工程(a)および工程(b)から得られる細胞におけるFoxM1Bの発現および局在化をアッセイすること;この場合、FoxM1Bが、工程(a)から得られる細胞の核に局在化し、かつ工程(b)から得られる細胞の細胞質に局在化する場合、候補化合物が選択される。前記のアッセイは、FoxM1Bの核局在化に対する直接的なアッセイであり得るか、または細胞質から核内へのFoxM1Bの転位の結果として発現した遺伝子産物の存在もしくは活性に対する間接的なアッセイであり得る。
【0090】
FoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導する化合物についてスクリーニングする方法は、FoxM1Bタンパク質を発現する細胞を候補化合物と接触させること、そして細胞におけるFoxM1Bタンパク質の局在化を調べることによって達成され得る。候補化合物は、FoxM1Bタンパク質が細胞の核に局在化する場合に選択される。いくつかの実施形態において、FoxM1Bは内因性であり、すなわち、細胞のゲノムDNA補体を含む。他の実施形態において、FoxM1Bは外因性であり、最も好ましくは異種のFoxM1B遺伝子、すなわち、宿主細胞種とは異なる哺乳動物種から得られる異種のFoxM1B遺伝子をコードする本発明の組換え核酸構築物が最も好ましく、そのような組換え核酸構築物として実験的に導入される。
【0091】
成長ホルモンの様式と類似する様式でFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化の両方を誘導する化合物についてスクリーニングする方法は、下記のように達成され得る:(a)FoxM1B遺伝子を含み、FoxM1Bタンパク質が通常の培養条件のもとで発現されない多数の細胞を候補化合物と接触させること;yおよび(b)工程(a)から得られる細胞におけるFoxM1Bの発現および核局在化をアッセイすること;この場合、FoxM1Bが、成長ホルモンと接触した細胞において観測されるパターンと類似する様式で、化合物と接触した細胞の核において発現および局在化する場合、候補化合物が選択される。代わりの実施形態では、工程(a)の細胞を、工程(b)におけるアッセイの前に成長ホルモンと接触させることができる。
【0092】
FoxM1Bタンパク質の核局在化および発現についてアッセイすることは、この分野で知られている任意の方法によって達成され得る。例えば、抗FoxM1B抗体と、蛍光マーカー(フルオレセインイソチオシアナート(FITC)など)で標識された二次抗体とを使用する免疫組織化学を、FoxM1Bタンパク質の局在化を蛍光顕微鏡によって可視化するために使用することができる。あるいは、一次抗体を蛍光標識またはそれ以外の標識で標識することができる。放射性標識、酵素標識およびハプテン標識などの代わりの標識は本発明の範囲内である。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、本発明の組換え核酸構築物を宿主細胞に導入することによって宿主細胞においてFoxM1Bタンパク質を発現させることを含む。そのような実施形態により、細胞は、例えば、ポリヌクレオチドをウイルス(またはウイルスベクター)にパッケージングし、宿主細胞をそのウイルス(またはベクター)により形質導入することなど含む、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の知られている方法を使用して、または米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号および同第4,959,455号(そのような特許はすべての目的のために本明細書により参考として本明細書中に組み込まれる)により例示されるようなこの分野で知られているトランスフェクション手法によって組換え核酸構築物で形質転換される。いくつかの実施形態において、使用される形質転換手法は、形質転換される宿主に依存し得る。異種のポリヌクレオチドを哺乳動物の細胞に導入するための様々な方法がこの分野では広く知られており、これらには、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム内へのポリヌクレオチド(1つまたは複数)のカプセル化、核酸を陽荷電の脂質と混合すること、および核内へのDNAの直接的な顕微注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
本発明の組換え核酸構築物は、典型的には、標準的な連結技術を使用して適切な発現ベクターに挿入される、FoxM1Bタンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸分子を含む。好ましくは、本発明の組換え核酸構築物は、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードする核酸配列を含む。ベクターは、典型的には、用いられる特定の宿主細胞において機能するように選択される(すなわち、ベクターは、増幅を可能にする宿主細胞装置との適合性を有し、かつ/または遺伝子の発現が生じ得る)。発現ベクターの総説については、NolanおよびShatzman、1998、Curr.Opin.Biotechnol.、9:447〜450を参照のこと。
【0095】
典型的には、宿主細胞のいずれかにおいて使用される発現ベクターは、プラスミド維持のための配列、ならびに外因性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための配列を含有する。そのような配列は、いくつかの実施形態ではまとめて「フランキング配列」として示されるが、これらには、下記のヌクレオチド配列の1つ以上が典型的に含まれる:プロモーター、1つ以上のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナースプライス部位およびアクセプタースプライス部位を含有する完全なイントロン配列、ポリペプチドを分泌させるためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現させられるポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択マーカーエレメント。これらの配列のそれぞれが下記に議論される。
【0096】
フランキング配列は、同族(すなわち、宿主細胞と同じ種および/または系統に由来する)、異種(すなわち、宿主細胞の種または系統とは異なる種に由来する)、ハイブリッド(すなわち、2つ以上の供給源に由来するフランキング配列の組合せ)、合成または天然であり得る。そのため、フランキング配列が宿主細胞の装置において機能的であり、かつ宿主細胞の装置によって活性化され得るならば、フランキング配列の供給源は、原核生物または真核生物の任意の生物、脊椎動物または無脊椎動物の任意の生物、あるいは植物であり得る。
【0097】
本発明のベクターにおいて有用なフランキング配列は、この分野で広く知られているいくつかの方法のいずれによっても得ることができる。典型的には、本明細書で有用なフランキング配列は、マッピングおよび/または制限エンドヌクレアーゼ消化によって以前に同定されており、従って、適切な制限エンドヌクレアーゼを使用して適正な組織供給源から単離することができる。いくつかの場合には、フランキング配列の完全なヌクレオチド配列を知ることができる。その場合、フランキング配列は、核酸合成またはクローニングについて本明細書中に記載される方法を使用して合成することができる。
【0098】
フランキング配列の全体または一部分のみが知られている場合、そのフランキング配列は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などのインビトロでの増幅方法を使用して、かつ/または同じ種もしくは異なる種に由来する好適なオリゴヌクレオチドおよび/もしくはフランキング配列フラグメントを用いてゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって得ることができる。フランキング配列が知られていない場合、フランキング配列を含有するDNAフラグメントを、例えば、コード配列を含むより大きいDNA片から、または別の遺伝子(1つまたは複数)さえからも単離することができる。単離は、適正なDNAフラグメントを得るための制限エンドヌクレアーゼ消化、それに続く、アガロースゲル精製(Qiagen(登録商標)カラムクロマトグラフィー(Chatsworth、CA)、または当業者に知られている他の方法)を使用する単離によって達成され得る。この目的を達成するための好適な酵素の選択は当業者には容易に明かである。
【0099】
必要な場合には、ベクターは、「タグ」をコードする配列、すなわち、FoxM1Bポリペプチドのコード配列の5’端側または3’端側に位置するオリゴヌクレオチド分子、ポリHis(ヘキサHisなど)をコードするオリゴヌクレオチド配列、またはそれに対する市販の抗体が存在する別の「タグ」(FLAG、HA(インフルエンザウイルスの赤血球凝集素)もしくはmycなど)を含むことができる。このタグは、典型的には、ポリペプチドの発現時にポリペプチドに融合され、宿主細胞からのFoxM1Bポリペプチドのアフィニティー精製のための手段として役立ち得る。アフィニティー精製は、例えば、タグに対する抗体をアフィニティーマトリックスとして使用するカラムクロマトグラフィーによって達成され得る。必要な場合には、タグは、続いて、切断のためのいくつかのペプチダーゼを使用することなどの様々な手段によって精製FoxM1Bポリペプチドから除去され得る。
【0100】
複製起点は、典型的には原核生物発現ベクター(特に、市販の原核生物発現ベクター)の一部分であり、複製起点は宿主細胞におけるベクターの増幅を助ける。選ばれたベクターが複製起点部位を含まない場合、複製起点を、知られている配列に基づいて化学合成して、ベクターに連結することができる。例えば、プラスミドpBR322に由来する複製起点(New England Biolabs、Beverly、MA)がほとんどのグラム陰性細菌に対して好適であり、そして様々な起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎(VSV)、またはHPVもしくはBPVなどのパピローマウイルス)が、哺乳動物細胞におけるクローニングベクターのためには有用である。一般に、哺乳動物の複製起点は、哺乳動物発現ベクターには必要とされない(例えば、SV40の起点はその初期プロモーターを含むだけであるので、SV40の起点が使用されることが多い)。
【0101】
転写終結配列は、典型的には、ポリペプチドのコード領域の終端の3’側に位置し、転写を終結させるために役立つ。通常、原核生物細胞における転写終結配列は、ポリT配列が続くG−Cが多いフラグメントである。この配列は、ライブラリーから容易にクローン化されるか、またはベクターの一部分として市販さえされているが、本明細書中に記載される方法などの核酸合成に関する方法を使用して容易に合成することもできる。真核生物では、配列AAUAAAが、転写終結シグナルとして、そしてエンドヌクレアーゼによる切断のために必要とされ、ポリA残基(200個のA残基)の付加が続くポリAシグナルとして、その両方で機能する。選択マーカー遺伝子エレメントは、選択的な培養培地において増殖する宿主細胞の生存および成長のために必要なタンパク質をコードする。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)原核生物宿主細胞のために抗生物質もしくは他のトキシン(例えば、アンピシリン、テトラサイクリンまたはカナマイシン)に対する耐性を付与するタンパク質;(b)細胞の栄養要求欠損を補うタンパク質;または(c)複雑な培地から利用できない不可欠な栄養素を供給するタンパク質をコードする。好ましい選択マーカーには、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、およびテトラサイクリン耐性遺伝子がある。細菌のネオマイシン耐性遺伝子もまた、原核生物宿主細胞および真核生物宿主細胞の両方における選択のために非常に都合よく使用することができる。
【0102】
リボソーム結合部位は、通常、mRNAの翻訳開始のために必要であり、シャイン−ダルガルノ配列(原核生物)またはコザック配列(真核生物)によって特徴づけられる。このエレメントは、典型的には、プロモーターの3’側と、発現させられるポリペプチドのコード配列の5’側とに位置する。
【0103】
場合により、例えば、グリコシル化が真核生物宿主細胞発現システムにおいて所望される場合、様々なプレ配列を、グリコシル化または収率を改善するために操作することができる。例えば、特定のシグナルペプチドのペプチダーゼ切断部位を変化させることができ、またはグリコシル化にも影響を及ぼし得るプロ配列を付加することができる。最終的なタンパク質産物は、完全に除去されていないことがあるために、発現に付随する1つ以上のさらなるアミノ酸を、(成熟タンパク質の最初のアミノ酸に対して)−1位に有することがある。例えば、最終的なタンパク質産物は、ペプチダーゼ切断部位において見出され、アミノ末端に結合している1個または2個のアミノ酸残基を有することがある。あるいは、いくつかの酵素切断部位を使用することにより、酵素が成熟ポリペプチド内のそのような領域を切断する場合、所望するポリペプチドの少し不完全であるが、なおも活性な形態を得ることができる。
【0104】
本発明の発現ベクターおよびクローニングベクターは、典型的には、宿主生物によって認識され、FoxM1Bタンパク質をコードする核酸に機能的に連結されるプロモーターを含有する。プロモーターは、構造遺伝子の開始コドンの上流(すなわち、5’側)に(一般には100bp〜1000bpの範囲内に)位置する非転写配列で、構造遺伝子の転写を制御するものである。プロモーターは、便宜上、誘導性プロモーターおよび構成的プロモーターの2つクラスのいずれかに分類される。誘導性プロモーターは、栄養物の存在の有無または温度変化などの培養条件の何らかの変化に応答してその制御下にあるDNAからの転写レベルの増大を開始させる。一方、構成的プロモーターは、連続的な遺伝子産物の産生を開始させる:すなわち、遺伝子発現に関する実験的制御がほとんどできない。非常に多数のプロモーターが様々な潜在的な宿主細胞によって認識され、そのようなプロモーターは広く知られている。好適なプロモーターが、制限酵素消化により供給源DNAからプロモーターを取り出すか、またはポリメラーゼ連鎖反応によりプロモーターを増幅し、所望するプロモーター配列をベクターに挿入することによって、FoxM1Bタンパク質をコードするDNAに機能的に連結される。
【0105】
哺乳動物宿主細胞との使用に好適な様々なプロモーターが広く知られており、これらには、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(2型アデノウイルスなど)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、および最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。他の好適な哺乳動物プロモーターには、異種の哺乳動物プロモーター、例えば、熱ショックプロモーターおよびアクチンプロモーターが含まれる。
【0106】
本発明の組換え発現ベクターの実施において有用な具体的なプロモーターには、SV40の初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon、1981、Nature、290:304〜10);CMVプロモーター;ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復に含まれるプロモーター(Yamamotoら、1980、Cell、22:787〜97);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、1981、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、78:1444〜45);メタロチオニン遺伝子の調節配列(Brinsterら、1982、Nature、296:39〜42)が含まれるが、これらに限定されない。組織特異性を示し、遺伝子導入動物において利用されている、動物の下記の転写制御領域もまた注目される:膵臓腺房細胞において活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら、1984、Cell、38:639〜46;Ornitzら、1986、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.、50:399〜409;MacDonald、1987、Hepatology、7:425〜515);膵臓β細胞において活性であるインスリン遺伝子制御領域(Hanahan、1985、Nature、315:115〜22);精巣細胞、***細胞、リンパ細胞およびマスト細胞において活性であるマウス乳腫瘍ウイルス制御領域(Lederら、1986、Cell、45:485〜95);骨髄細胞において活性であるβ−グロビン遺伝子制御領域(Mogramら、1985、Nature、315:338〜40;Kolliasら、1986、Cell、46:89〜94);脳内の希突起神経膠細胞において活性であるミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら、1987、Cell、48:703〜12);骨格筋において活性であるミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Sani、1985、Nature、314:283〜86);視床下部において活性である性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら、1986、Science、234:1372〜78);および、非常に特に、リンパ細胞において活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら、1984、Cell、38:647〜58;Adamesら、1985、Nature、318:533〜38;Alexanderら、1987、Mol.Cell Biol.、7:1436〜44)。
【0107】
好ましくは、本発明の組換え核酸構築物のプロモーターは肝臓において活性である。例えば、アルブミン遺伝子の制御領域は肝臓において活性である(Pinkertら、1987、Genes and Devel.、1:268〜76);α−フェトプロテイン遺伝子の制御領域は肝臓において活性である(Krumlaufら、1985、Mol.Cell Biol.、5:1639〜48;Hammerら、1987、Science、235:53〜58);そしてα1−アンチトリプシン遺伝子の制御領域は肝臓において活性である(Kelseyら、1987、Genes and Devel.、1:161〜71)。
【0108】
エンハンサー配列を、FoxM1Bタンパク質をコードする核酸の高等真核生物による転写を増大させるためにベクターに挿入することができる。エンハンサーは、プロモーターに作用して転写を増大させるDNAのシス作用領域である(通常、約10bp〜300bpの長さである)。エンハンサーは、比較的、配向および位置に無関係である。エンハンサーが、イントロン内に、ならびに転写ユニットの5’側および3’側の数キロベース内の両方に見出されている。哺乳動物遺伝子から得ることができるエンハンサー配列がいくつか知られている(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、インスリン、トランスチレチンおよびHNF−6)。遺伝子の増大した発現が所望される場合、ウイルス由来のエンハンサーを使用することができる。SV40のエンハンサー、サイトメガロウイルスの初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマのエンハンサー、およびアデノウイルスのエンハンサーは、真核生物プロモーターを活性化するための例示的な増強エレメントである。エンハンサーは、核酸分子の5’位または3’位においてベクター内にスプライシングされ得るが、典型的には、プロモーターから5’側の部位に位置する。
【0109】
本発明の発現ベクターは、市販されているベクターなどの有利な出発ベクターから構築することができる。そのようなベクターは、所望するフランキング配列のすべてを含んでもよく、または所望するフランキング配列のすべてを含まなくてもよい。本明細書中に記載されるフランキング配列の1つ以上がベクターにまだ存在していない場合、それらを個々に得て、ベクターに連結することができる。フランキング配列のそれぞれを得るために使用される様々な方法が当業者には広く知られている。
【0110】
ベクターが構築され、FoxM1Bタンパク質をコードする核酸分子がベクターの適正な部位に挿入された後、完成したベクターを、増幅および/またはポリペプチド発現のために好適な宿主細胞に挿入することができる。FoxM1Bタンパク質に対する発現ベクターを選択された宿主細胞に形質転換することは、トランスフェクション、感染、塩化カルシウム、エレクトロポレーション、顕微注入、リポフェクション、DEAE−デキストラン法、または他の知られている技術などの方法を含む広く知られている方法によって達成され得る。選択された方法は、ある程度、使用される宿主細胞のタイプと相関関係がある。これらの方法および他の好適な方法が当業者には広く知られており、例えば、Sambrookら(同上)に示される。
【0111】
宿主細胞は、適する条件のもとで培養されたとき、FoxM1Bタンパク質を合成し、そのFoxM1Bタンパク質を、その後、(宿主細胞がFoxM1Bタンパク質を培地中に分泌する場合)培養培地から回収することができ、または(FoxM1Bタンパク質が分泌されない場合)FoxM1Bタンパク質を産生する細胞から直接回収することができる。適する宿主細胞の選択は、所望する発現レベル、活性のために望まれるか、または必要であるポリペプチド修飾(グリコシル化またはリン酸化など)、および生物学的に活性な分子への折り畳み(folding)の容易さなどの様々な要因に依存する。
【0112】
発現のための宿主として利用可能な様々な哺乳動物細胞株がこの分野では広く知られており、これらには、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から得ることができる多くの不死化細部株、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞ガン細胞(例えば、HepG2)、および多数の他の細胞株などが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、細胞株は、どの細胞株がFoxM1Bタンパク質の大きい発現レベルを有するかを決定することによって選択することができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、本発明は、哺乳動物の肝臓細胞におけるFoxM1Bの発現または核局在化または発現および/もしくは核局在化を誘導する化合物の治療有効量を、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリア、可溶化剤、乳化剤、保存剤および/またはアジュバントと一緒に含む薬学的組成物を提供する。他の実施形態において、本発明は、哺乳動物の肝臓細胞におけるFoxM1Bの発現を誘導し、かつ同様に、哺乳動物の肝臓細胞の核内に転位するためにFoxM1Bタンパク質を誘導する化合物の治療有効量を、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリア、可溶化剤、乳化剤、保存剤および/またはアジュバントと一緒に含む薬学的組成物を提供する。そのような化合物は、好ましくは、本発明のスクリーニング方法で同定される。
【0114】
受容可能な配合物質は、好ましくは、用いられた投薬量および濃度で受容者に対して無毒である。薬学的組成物は、例えば、組成物のpH、浸透度、粘度、清澄度、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解速度または放出速度、吸着または浸透を改変または維持または保持するための配合物質を含有することができる。好適な配合物質には、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシンなど);抗菌剤;酸化防止剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝剤(ホウ酸塩、重炭酸塩、Tris−HCl、クエン酸塩、リン酸塩または他の有機酸など);増量剤(マンニトールまたはグリシンなど);キレート化剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β−シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類;二糖類;および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど);着色剤、矯味矯臭剤および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成性の対イオン(ナトリウムなど);保存剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);懸濁化剤;界面活性剤または湿潤化剤(プルロニクス、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート(ポリソルベート20、ポリソルベート80など)、トリトン、トリメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポールなど);安定性増強剤(スクロースまたはソルビトールなど);張性増強剤(アルカリ金属ハロゲン化物(好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)、マンニトール、ソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤および/または薬学的アジュバントが含まれるが、これらに限定されない(REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第18版(A.R.Gennaro編)、1990、Mack Publishing Company)。
【0115】
最適な薬学的組成物は、例えば、意図された投与経路、送達形式および所望する投薬量に依存して当業者によって決定され得る。例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(同上)を参照のこと。そのような組成物は、本発明の抗体の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度およびインビボでのクリアランス速度に影響を及ぼし得る。
【0116】
薬学的組成物における主要なビヒクルまたはキャリアは、性質が水性または非水性のいずれかであってもよい。例えば、好適なビヒクルまたはキャリアは、注射用水、生理学的な生理的食塩水溶液、または人工的な脳脊髄液、可能であれば、非経口投与用の組成物において共通する他の物質が補充されたものであり得る。中性緩衝化生理的食塩水、または血清アルブミンと混合された生理的食塩水は、さらなる例示的なビヒクルである。薬学的組成物は、約7.0〜8.5のpHを有するTris緩衝剤または約4.0〜5.5のpHを有する酢酸塩緩衝剤を含むことができ、そしてソルビトールまたはそれに対する好適な代用物をさらに含むことができる。本発明の薬学的組成物は、所望する純度を有する選択された組成物を任意の配合剤(REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、同上)と混合することによって貯蔵のために、凍結乾燥ケークまたは水溶液の形態で調製することができる。さらに、FoxM1Bを誘導する製造物を、スクロースなどの適切な賦形剤を使用して凍結乾燥物として配合することができる。
【0117】
配合成分は、投与部位に対して許容され得る濃度で存在する。緩衝剤は、生理学的pHで、またはそれよりもわずかに低いpHで、典型的には、約5〜約8のpH範囲内に組成物を維持するために有利に使用される。
【0118】
本発明の薬学的組成物は非経口的に送達することができる。非経口投与が考えられるとき、本発明において使用される治療用組成物は、FoxM1Bタンパク質または本発明のスクリーニング方法で同定された所望する化合物を薬学的に受容可能なビヒクルに含む、パイロジェンを含有しない非経口的に受容可能な水溶液の形態であり得る。非経口注入用の特に好適なビヒクルは、本発明のスクリーニング方法で同定された化合物またはFoxM1Bタンパク質が無菌の等張性溶液として配合される、適正に保存された滅菌蒸留水である。調製には、所望する分子を、デポ剤注射剤によってその後に送達され得る製造物の制御された放出または持続した放出をもたらし得る注射可能な微小球体、生物浸食性粒子、ポリマー化合物(ポリ乳酸またはポリグリコール酸など)、ビーズまたはリポソームなどの薬剤と配合することが伴い得る。ヒアルロン酸との配合は、循環における持続した継続期間を促進するという効果を有する。埋め込み可能な薬物送達デバイスを、所望する分子を導入するために使用することができる。
【0119】
FoxM1Bタンパク質を患者に投与することは、例えば、肝臓移植の受容者における肝臓細胞の増殖を短期間にわたって刺激するために使用することができる。さらに、FoxM1Bタンパク質は、肝臓再生を刺激して、臓器機能を再び確立するために、肝臓またはその一部分が摘出された後の肝臓ドナーに投与することができる。
【0120】
組成物は吸入のために選択されることがある。これらの実施形態において、本発明のスクリーニング方法で同定された化合物またはFoxM1Bタンパク質が、吸入用の乾燥粉末剤として配合されるか、または吸入溶液剤もまた、噴霧化などによるエアロゾル送達用の噴射剤を用いて配合され得る。肺投与が、化学修飾されたタンパク質の肺送達を記載するPCT出願番号PCT/US94/001875にさらに記載される。
【0121】
本発明の薬学的組成物は、消化管を通して、例えば、経口的に送達することができる。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製はこの分野の技術の範囲内である。このような様式で投与される本発明のFoxM1Bタンパク質または化合物は、錠剤およびカプセルなどの固体の投薬形態物を配合する際に通常的に使用されるそのようなキャリアを用いて、またはそのようなキャリアを用いることなく配合することができる。カプセルは、生物利用性が最大になり、かつ前全身的分解が最小限であるときの胃腸管内のところで配合物の活性な部分を放出するように設計することができる。さらなる薬剤を、FoxM1Bタンパク質または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物の吸収を促進させるために含めることができる。希釈剤、矯味矯臭剤、低融点ワックス、植物油、滑剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤および結合剤もまた用いることができる。
【0122】
薬学的組成物は、FoxM1Bタンパク質または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物の効果的な量を、錠剤を製造するために好適である非毒性の賦形剤との混合物で含むことができる。錠剤を滅菌水または別の適切なビヒクルに溶解することによって、溶液を多回用量形態で調製することができる。好適な賦形剤には、不活性な希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムもしくは重炭酸ナトリウム、ラクトースまたはリン酸カルシウムなど;あるいは結合剤、例えば、デンプン、ゼラチンまたはアラビアゴムなど;あるいは、滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
FoxM1Bタンパク質または本発明の化合物を持続送達配合物または制御送達配合物で含む配合物を含むさらなる薬学的組成物が当業者には明かである。様々な他の持続送達手段または制御送達手段(リポソームキャリア、生物浸食性のマイクロ粒子または多孔性ビーズ、およびデポ注射剤など)を配合するための技術もまた当業者には知られている。例えば、薬学的組成物を送達するための多孔性のポリマーマイクロ粒子の制御された放出を記載するPCT出願番号PCT/US93/00829を参照のこと。持続放出調製物は、フィルムなどの成形物の形態での半透過性ポリマーマトリックス、またはマイクロカプセル、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号および欧州特許EP058,481)、L−グルタミン酸およびL−グルタミン酸γ−エチルの共重合体(Sidmanら、1983、Biopolymers、22:547〜556)、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)(Langerら、1981、J.Biomed.Mater.Res.、15:167〜277;Langer、1982、Chem.Tech.、12:98〜105)、エチレン酢酸ビニル(Langerら、同上)、またはポリD(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許EP133,988)を含むことができる。持続放出配合物はまた、この分野で知られているいくつかの方法のいずれかによって調製され得るリポソームを含むことができる。例えば、Eppsteinら、1985、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:3688〜3692;欧州特許EP036,676;欧州特許EP088,046および欧州特許EP143,949を参照のこと。
【0124】
インビボ投与のために使用される薬学的組成物は典型的には無菌である。いくつかの実施形態において、これは、滅菌されたろ過メンブランによるろ過によって達成され得る。いくつかの実施形態において、組成物が凍結乾燥される場合、この方法を使用する滅菌化を凍結乾燥および再構成の前または後のいずれかで行うことができる。いくつかの実施形態において、非経口投与される組成物は凍結乾燥形態または溶液で貯蔵することができる。いくつかの実施形態において、非経口用組成物は、一般に、無菌操作ポートを有する容器に、例えば、皮下注射用注射針により突き刺すことができる栓を有する静脈内注射溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0125】
本発明の薬学的組成物が配合されると、本発明の薬学的組成物は、溶液、懸濁物、ゲル、エマルション、固体、または脱水もしくは凍結乾燥された粉末として無菌バイアルに貯蔵することができる。そのような配合物は、直ちに使用できる形態または投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥された形態)で、そのいずれかで貯蔵することができる。
【0126】
本発明は、単回用量投与ユニット物を製造するためのキットに関する。本発明によるキットはそれぞれが、本発明のスクリーニング方法で同定された乾燥後のタンパク質化合物を有する第1の容器と、例えば、単回チャンバーまたは多回チャンバーの充填済みシリンジ(例えば、液体シリンジ、リオシリンジまたは無ニードルシリンジ)を含む、水性配合物を有する第2の容器との両方を含むことができる。
【0127】
治療的に用いられる本発明の薬学的組成物の効果的な量は、例えば、治療状況および治療目的に依存する。当業者は、いくつかの実施形態による処置に対する適切な投薬量レベルが、従って、部分的には、送達される分子、薬学的組成物が使用されている適用症、投与経路、ならびに患者のサイズ(体重、体表面積または臓器サイズ)および/または状態(年齢および全体的な健康状態)に依存して変化することを理解する。臨床医は、最適な治療効果を得るために、投薬量を決め、投与経路を変更することができる。典型的な投薬量は、上記に述べられた要因に依存して、約0.1μg/kgから約100mg/kg以上までの範囲である。いくつかの実施形態において、投薬量は、0.1μg/kgから約100mg/kgまでの範囲であり、または1μg/kgから約100mg/kgまでの範囲であり、または5μg/kgから約100mg/kgまでの範囲である。
【0128】
投薬頻度は、配合物におけるFoxM1Bタンパク質または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物の薬物動態学的パラメーターに依存する。例えば、臨床医は、所望する効果を達成する投薬量に達するまで、組成物を投与する。従って、組成物は、単回用量物として、または時間とともに、(同じ量の所望する分子を含有してもよく、または含有しなくてもよい)2回以上の用量物として、または埋め込みデバイスもしくはカテーテルによる連続注入物として投与することができる。適切な投薬量のさらなる改善が当業者によって日常的に行われるので、これは、当業者によって日常的に行われる業務の範囲内である。適切な投薬量は、適切な用量−応答データの使用によって確認することができる。
【0129】
本発明の薬学的組成物に対する投与経路には、経口投与、あるいは静脈内経路、腹腔内経路、脳内(実質内)経路、脳室内経路、筋肉内経路、眼内経路、動脈内経路、門脈内経路または病巣内経路による注射による投与、あるいは持続放出システムまたは埋め込みデバイスによる投与が含まれる。薬学的組成物は、ボーラス注射によって、または注入により連続的に、または埋め込みデバイスによって投与することができる。薬学的組成物はまた、所望する分子が吸着またはカプセル化されている膜またはスポンジまたは別の適切な材料の埋め込みを介して局所的に投与することができる。埋め込みデバイスが使用される場合、埋め込みデバイスは任意の好適な組織または器官に埋め込むことができ、そして所望する分子の送達が拡散または徐放性ボーラスまたは連続投与によって行われ得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、FoxM1Bタンパク質、FoxM1Bをコードする組換え核酸構築物、または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物の薬学的組成物をエクスビボ様式で使用することが望ましい場合がある。そのような場合には、患者から取り出された細胞または組織または器官が本発明の薬学的組成物にさらされるか、またはFoxM1B遺伝子を含む本発明の組換え核酸構築物にさらされ、その後、その細胞および/または組織および/または器官が続いて患者に戻される。
【0131】
いくつかの実施形態において、FoxM1Bタンパク質、FoxM1Bをコードする組換え核酸構築物、または本発明のスクリーニング方法で同定された化合物の薬学的組成物を、ポリペプチドを発現および分泌させるために、本明細書中に記載される方法などの方法を使用して、遺伝子操作された特定の細胞を埋め込むことによって送達することができる。そのような細胞は動物細胞またはヒト細胞であってもよく、そして自家または異種(heterologousまたはxenogenic)であってもよく、あるいは不死化されていてもよい。免疫学的応答を可能性を低下させるために、細胞は、周囲組織の浸潤を避けるためにカプセル化することができる。カプセル化材料は、典型的には、タンパク質産物(1つまたは複数)の放出を可能にするが、患者の免疫系によるか、または周囲組織からの他の有害な因子による細胞の破壊を防止する生体適合性かつ半透過性ポリマーの封入体またはメンブランである。
【0132】
本発明の薬学的組成物は、単独で、または他の治療作用因との組合せで、特に、他のガン治療作用因との組合せで投与することができる。そのような作用因には、一般には放射線治療または化学療法が含まれる。例えば、化学療法では、下記の1つまたは2つ以上による処置を伴い得る:アントラサイクリン類、タキソール、タモキシフェン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、および当業者に知られている他の薬物。
【0133】
細胞の内因性FoxM1B遺伝子からのFoxM1Bポリペプチドの発現を増大させるか、または生じさせるための1つの方法には、細胞の内因性FoxM1B遺伝子からのデノボでのFoxM1Bポリペプチド産生または増大したFoxM1Bポリペプチド産生をもたらす様式で、1つまたは複数の遺伝子(例えば、転写因子)の発現を増大させるか、もしくは生じさせ、かつ/または1つまたは複数の遺伝子(例えば、転写リプレッサー)の発現を低下させることが伴う。この方法には、細胞の内因性FoxM1B遺伝子からのデノボでのFoxM1Bポリペプチド産生または増大したFoxM1Bポリペプチド産生が生じるように、天然に存在しないポリペプチド(例えば、転写因子ドメインに融合された部位特異的なDNA結合ドメインを含むポリヌクレオチド)を細胞に導入することが含まれる。
【0134】
本発明はさらに、標的遺伝子の発現を変化させる方法において有用なDNA構築物に関する。いくつかの実施形態において、例示的なDNA構築物は、(a)1つ以上のターゲッティング配列、(b)調節配列、(c)エキソン、および(d)対になっていないスプライスドナー部位を含む。DNA構築物内のターゲッティング配列により、エレメント(b)〜(d)が内因性標的遺伝子の配列に機能的に連結されるように、エレメント(a)〜(d)が細胞内の標的遺伝子に組み込まれる。別の実施形態において、DNA構築物は、(a)1つ以上のターゲッティング配列、(b)調節配列、(c)エキソン、(d)スプライスドナー部位、(e)イントロン、および(f)スプラスアクセプター部位を含み、この場合、ターゲッティング配列により、エレメント(b)〜(f)が内因性遺伝子に機能的に連結されるように、エレメント(a)〜(f)が組み込まれる。ターゲッティング配列は、相同的組換えが生じ得る、細胞の染色体DNAにおける所定の部位に対して相同的である。構築物において、エキソンは一般に調節配列の3’側に存在し、スプライスドナー部位はエキソンの3’側に存在する。
【0135】
本明細書中に示されるFoxM1Bポリペプチドの核酸配列などの特定の遺伝子の配列が知られている場合、遺伝子の選択された領域に対して相補的であるDNA片を合成することができ、またはそうでなければ、例えば、目的とする領域の境界となる特異的な認識部位で本来のDNAを適切に制限することなどによって得ることができる。この断片は、細胞内への挿入時にターゲッティング配列として役立ち、ゲノム内のその相同的な領域に対してハイブリダイゼーションする。このハイブリダイゼーションがDNA複製時に起こる場合、このDNA片、およびそれに結合している任意のさらなる配列が岡崎フラグメントとして作用し、新しく合成されたDNAの娘鎖に取り込まれる。従って、本発明は、ターゲッティング配列として使用され得る、FoxM1Bポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む。
【0136】
FoxM1Bポリペプチドの細胞治療、例えば、FoxM1Bポリペプチドを産生する細胞の埋め込みもまた考えられる。この実施形態には、生物学的に活性な形態のFoxM1Bポリペプチドを合成および分泌することができる細胞を埋め込むことが伴う。そのようなFoxM1Bポリペプチド産生細胞は、FoxM1Bポリペプチドの天然の産生体である細胞であり得るか、あるいはFoxM1Bポリペプチドの産生能が、所望するFoxM1Bポリペプチドをコードする遺伝子で、またはFoxM1Bポリペプチドの発現を増強する遺伝子で形質転換することによって増強されている組換え細胞であってもよい。そのような改変は、遺伝子を送達するために、ならびにその発現および分泌を促進するために好適なベクターによって達成され得る。異物の種のポリペプチドを投与することにより生じ得るような、FoxM1Bポリペプチドが投与されている患者における潜在的な免疫学的反応を最小限に抑えるために、FoxM1Bポリペプチドを産生する天然の細胞がヒト起源であり、ヒトFoxM1Bポリペプチドを産生することが好ましい。同様に、FoxM1Bポリペプチドを産生する組換え細胞は、ヒトFoxM1Bポリペプチドをコードする遺伝子を含有する発現ベクタ−で形質転換されることが好ましい。
【0137】
埋め込まれる細胞は、周囲組織の浸潤を避けるためにカプセル化することができる。ヒトまたは非ヒト動物の細胞を、FoxM1Bポリペプチドの放出を可能にするが、患者の免疫系によるか、または周囲組織からの他の有害な因子による細胞の破壊を防止する生体適合性かつ半透過性ポリマーの封入体またはメンブランで患者に埋め込むことができる。あるいは、患者自身の細胞を、FoxM1Bポリペプチドを産生させるためにエクスビボで形質転換した後、そのようなカプセル化を行うことなく、直接、患者に埋め込むことができる。
【0138】
生細胞をカプセル化するための様々な技術がこの分野では知られており、カプセル化された細胞の調製およびそれらの患者への埋め込みが日常的に達成され得る。例えば、Baetgeら(PCT公開番号WO95/05452およびPCT/US94/09299)には、生物学的に活性な分子を効果的に送達するための、遺伝子操作された細胞を含有するメンブランカプセルが記載される。このカプセルは生体適合性であり、そして容易に回収することができる。カプセルにより、哺乳動物宿主に埋め込まれたときにインビボでのダウンレギュレーションを受けないプロモーターに機能的に連結された生物学的に活性な分子をコードするDNA配列を含む組換えDNA分子でトランスフェクションされた細胞がカプセル化される。このデバイスにより、生細胞から受容者内の特異的な部位への分子の送達がもたらされる。さらに、米国特許第4,892,538号、同第5,011,472号および同第5,106,627号を参照のこと。生細胞をカプセル化するためのシステムがPCT公開番号WO91/10425(Aebischerら)に記載される。PCT公開番号WO91/10470(Aebischerら);Winnら、1991、Exper.Neurol.、113:322〜29;Aebischerら、1991、Exper.Neurol.、111:269〜75;Trescoら、1992、ASAIO、38:17〜23もまた参照のこと。
【0139】
FoxM1Bポリペプチドのインビボ遺伝子治療およびエクスビボ遺伝子治療およびインビトロ遺伝子治療もまた本明細書に提供される。遺伝子治療技術の一例が、「遺伝子治療DNA構築物」を形成するために構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターに機能的に連結され得る、FoxM1BポリペプチドをコードするFoxM1B遺伝子(ゲノムDNA、cDNAおよび/または合成DNAのいずれか)を使用することである。プロモーターは、構築物が挿入される細胞タイプまたは組織タイプにおいて活性であるならば、内因性のFoxM1B遺伝子に対して同種または異種であり得る。遺伝子治療DNA構築物の他の成分として、部位特異的な組み込みのために設計されたDNA分子(例えば、相同的組換えのために有用な内因性配列)、組織特異的なプロモーターまたはエンハンサーまたはサイレンサー、親細胞を上回る選択上の利点を提供し得るDNA分子、形質転換された細胞を同定するための標識として有用なDNA分子、負の選択システム、細胞特異的な結合因子(例えば、細胞標的化のためとして)、細胞特異的な内在化因子、ベクターからの発現を増強する転写因子、ベクター産生を可能にする因子を場合により挙げることができる。
【0140】
遺伝子治療DNA構築物は、その後、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを使用して(エクスビボまたはインビボのいずれかで)細胞に導入することができる。遺伝子治療DNA構築物を導入するための1つの手段が、本明細書中に記載されるようなウイルスベクターによるものである。レトロウイルスベクターなどのいくつかのベクターにより、DNA構築物が細胞の染色体DNAに送達され、そして遺伝子が染色体DNA内に組み込まれ得る。他のベクターはエピソームとして機能し、遺伝子治療DNA構築物は細胞質内に留まる。
【0141】
さらに別の実施形態において、調節エレメントを、標的細胞におけるFoxM1B遺伝子の制御された発現のために含めることができる。そのようなエレメントは、適切なエフェクターに応答して作動する。このようにして、治療ペプチドを、所望するときに発現させることができる。1つの従来的な制御手段には、小分子結合ドメインと、生物学的プロセスを開始させることができるドメインとを含有するキメラなタンパク質(DNA結合タンパク質または転写活性化タンパク質など)を二量体化するための小分子の二量体化剤またはラパログの使用が伴う(PCT公開番号WO96/41865、同WO97/31898および同WO97/31899を参照のこと)。これらのタンパク質の二量体化を使用して、導入遺伝子の転写を開始させることができる。
【0142】
インビボ遺伝子治療は、FoxM1Bポリペプチドをコードする遺伝子を、FoxM1B核酸分子の局所的な送達によって、または直接的な注入によって、または他の適切なウイルス送達ベクターもしくは非ウイルス送達ベクターによって細胞に導入することによって達成され得る(Hefti、1994、Neurobiology、25:1418〜35)。例えば、FoxM1Bポリペプチドをコードする核酸分子は、標的化された細胞への送達のためのアデノ関連ウイルス(AAV)ベクターに含有させることができる(例えば、ジョンソン、PCT公開番号WO95/34670;PCT出願番号PCT/US95/07178を参照のこと)。組換えAAVゲノムは、典型的には、機能的なプロモーター配列およびポリアデニル化配列に機能的に連結された、FoxM1BポリペプチドをコードするDNA配列を挟むAAV逆方向末端反復を含有する。
【0143】
別の好適なウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス、肝炎ウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルスおよびパピローマウイルスのベクターが含まれるが、これらに限定されない。米国特許第5,672,344号には、組み換えられた神経親和性HSV−1ベクターを伴うインンビボでのウイルス媒介型遺伝子移入システムが記載される。米国特許第5,399,346号では、治療タンパク質をコードするDNAセグメントを挿入するためにインビトロで処理されたヒト細胞を送達することによって治療タンパク質を患者に与えるためのプロセスの様々な例が提供される。遺伝子治療技術を実施するためのさらなる方法および材料が、米国特許第5,631,236号(アデノウイルスベクターを伴う)、同第5,672,510号(レトロウイルスベクターを伴う)、同第5,635,399号(サイトカインを発現するレトロウイルスベクターを伴う)に記載される。
【0144】
非ウイルス送達方法には、リポソーム媒介による移入、ネイクドDNAの送達(直接的な注入)、受容体媒介による移入(リガンド−DNA複合体)、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、および微小粒子衝撃(例えば、遺伝子銃)が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子治療用の材料および方法ではまた、誘導性プロモーター、組織特異的なエンハンサー−プロモーター、部位特異的な組み込みのために設計されたDNA配列、親細胞を上回る選択上の利点を提供し得るDNA配列、形質転換された細胞を同定するための標識、負の選択システムおよび発現制御システム(安全対策)、細胞特異的な結合因子(細胞標的化のために)、細胞特異的な内在化因子、そしてベクターによる発現を増強する転写因子、ならびにベクター製造方法を含むことができる。遺伝子治療技術を実施するためのそのようなさらなる方法および材料が、米国特許第4,970,154号(エレクトロポレーション技術を伴う)、同第5,679,559号(遺伝子送達用のリポタンパク質含有システムを記載する)、同第5,676,954号(リポソームキャリアを伴う)、同第5,593,875号(リン酸カルシウムトランスフェクション方法を記載する)、および同第4,945,050号(生物学的に活性な粒子が一定の速度で細胞に向けられて発射され、それにより、粒子が細胞の表面を突き抜け、細胞の内部に取り込まれるプロセスを記載する)、そしてPCT公開番号WO96/40958(核リガンドを伴う)に記載される。
【0145】
FoxM1Bの遺伝子治療または細胞治療ではさらに、1つ以上のさらなるポリペプチドを同じ細胞または異なる細胞に送達することを含み得ることもまた考えられる。そのような細胞は別々に患者に導入することができ、または上記に記載されたカプセル化メンブランなどの単一の埋め込み可能なデバイスに含有させることができ、またはウイルスベクターによって別々に改変することができる。
【0146】
遺伝子治療によって細胞における内因性のFoxM1Bポリペプチド発現を増大させる別の手段は、FoxM1B遺伝子の転写活性を増大させるように作用し得る1つ以上のエンハンサーエレメントをFoxM1Bポリペプチドプロモーターに挿入することである。使用されるエンハンサーエレメントは、遺伝子を活性化することが所望される組織に基づいて選択される。すなわち、その組織においてプロモーター活性を与えることが知られているエンハンサーエレメントが選択される。例えば、FoxM1Bポリペプチドをコードする遺伝子をT細胞において「作動」させる場合、lckプロモーターのエンハンサーエレメントを使用することができる。この場合、付加される転写エレメントの機能的な部分を、標準的なクローニング技術を使用して、FoxM1Bポリペプチドプロモーターを含有するDNAフラグメントに挿入することができる(そして場合により、ベクターおよび/または5’および/または3’のフランキング配列に挿入することができる)。この構築物は、「相同的組換え構築物」として知られており、その後、エクスビボまたはインビボのいずれかで所望の細胞に導入することができる。
【0147】
下記の実施例は例示目的のために示され、本発明の範囲を限定するためのものではない。本発明は、本発明の個々の局面の様々な例示として意図される例示された実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書中に示され、そして記載された改変に加えて、本発明の様々な改変が、前記の説明および添付された図面から当業者には明らかになる。そのような改変は、添付された請求項の範囲に含まれるものとする。
【0148】
実施例
実施例1
老齢の遺伝子導入マウスの再生中の肝臓におけるDNA複製および有糸***に対するFoxM1Bの増大した発現の影響
遺伝子導入CD−1マウスを、記載(Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)のように、肝細胞においてFoxM1B導入遺伝子(図1に示される配列番号1)を構成的に発現させるために、〜3kbのトランスチレチン(TTR)プロモーターを使用して作製した。12月齢の野生型CD−1(WT)マウスおよびTTR−FoxM1B(TG)マウスをメトキシフルラン(メトファン);Schering−Plough Animal Health Corp.、Union、N.J.)で麻酔し、そして肝臓の再生を誘導するために、腹部中央での開腹の後、肝臓の左葉側部、左葉中央部および右葉中央部を除いた(Higginsら、1931、Arch.Pathol.、12:186〜202)。左葉中央部と右葉中央部との間に位置する胆嚢の除去を注意深く回避した。手術後、動物には、生理的食塩水におけるアンピシリン(50μg/g体重)の皮下注射が1回施された。残された肝臓を採取する2時間前に、動物は、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)における10mg/mLの5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU;50μg/g体重)が腹腔内に注射された。2匹のマウスを、部分肝切除(PHx)手術後の24時間、32時間、36時間、40時間、44時間および48時間でCO2窒息によって屠殺し、その肝臓を取り出した。解剖した肝臓を3つに分けた(パラフィン包埋のために1つ、総RNA単離のために1つ、そして総タンパク質単離のために1つ)。
【0149】
パラフィン包埋用の肝臓部分を4%パラホルムアルデヒドにおいて一晩固定し、パラフィンに包埋した。組織を、ミクロトームを用いて5μmの切片に切断し、スライドガラス上に固定した。切片をキシレンで脱パラフィンし、エタノール濃度を下げながら段階的なエタノール洗浄によって再水和して、0.25%トリトンX−100を含有するPBS(PBT)中に入れた。マイクロ波による抗原賦活法が、以前の記載(Zhouら、1996、J.Histochem.Cytochem.、44:1183〜1193)のように、抗体の抗原反応性を増強するために使用された。切片を、抗BrdUモノクローナル抗体を製造者の使用説明書(Boehringer Mannheim)に従って用いて免疫組織化学的に染色した。1000個の肝細胞あたりのBrdU陽性核の数を計数し、そして各時点から2つの再生中の肝臓サンプルを使用して、平均BrdU陽性細胞および標準偏差(SD)を計算した。2月齢(若齢)CD−1マウスから得られた再生中の肝臓が、比較として、調べられ、含まれた。2月齢の肝臓はPHx後40時間でS期のピークを示している(図2)。はるかに小さい40時間でのS期のピークが、12月齢のWTマウスから得られた再生中の肝臓において認められた(図2)。12月齢のTGマウスの再生中の肝臓は、2月齢の肝臓において観測されたピークと類似する鋭いS期のピークを40時間で示した(図2)。抗BrdU抗体を用いた免疫組織化学的染色では、40時間でのWTの肝臓と比較したとき、TGの肝臓におけるBrdU取り込みの増大が示される。さらに、PHx後48時間では、老齢WTマウスの再生中の肝細胞は、TGマウスの再生中の肝細胞と比較して、有糸***像が少なくなっていた(図3)。
【0150】
これらの研究は、老齢の遺伝子導入マウスの再生中の肝臓におけるFoxM1Bの増大した肝細胞発現により、肝細胞のDNA複製および有糸***が、若齢マウスの再生中の肝臓において見出されるレベルにまで刺激されたことを明らかにしている。
【0151】
実施例2
若齢WTマウスおよび老齢WTマウスならびに老齢TGマウスにおけるFoxM1BのmRNA発現レベルおよびタンパク質発現レベルに対するPHxの影響
野生型(WT)マウスおよび遺伝子導入(TG)マウスの再生中の肝臓からの総RNAを、RNA−STAT−60(Tel−Test“B”Inc.、Friendswood、TX)を用いた酸性チオシアン酸グアニジウム−フェノール−クロロホルム抽出法によって、部分肝切除(PHx)後の24時間、32時間、36時間、40時間および44時間において抽出した。ヒトおよびマウスのFoxM1B導入遺伝子ならびにマウスシクロフィリンに対するアンチセンスRNase保護プローブを記載されるように作製した(Yeら、1997、Mol.Cell Biol.、17:1626〜1641;Wangら、2001、Hepatology、33:1404〜1414)。RNase保護アッセイを、以前の記載(Yeら、1997、Mol.Cell Biol.、17:1626〜1641;Wangら、2001、Hepatology、33:1404〜1414;Rausaら、2000、Mol.Cell Biol.、20:8264〜8282)のように、20μg〜40μgの総肝臓RNAを{32P}UTP標識プローブとハイブリダイゼーションさせ、その後、RNase Oneでの消化、電気泳動およびオートラジオグラフィーを行うことによって行った。X線フィルムを走査し、BioMax 1Dプログラム(Eastman Kodak Co)を使用して発現レベルを定量化し、発現レベルをシクロフィリンRNAレベルに対して正規化した。FoxM1BのmRNAレベルは、2月齢のWTマウスから得られた再生中の肝臓では、40時間で誘導され、S期のピークと一致していた(図4A、図2)。同様に、老齢TGマウスにおけるPHx後40時間で観測されるS期のピークには、FoxM1BのmRNAの上昇が伴っていた(図4B)。40時間におけるFoxM1BのmRNAの誘導は、若齢マウスと比較した場合、12月齢のWTマウスでは低下していた(図4AおよびB)。
【0152】
PHx後の24時間、32時間、36時間、40時間および44時間における12月齢のTGマウスおよびWTマウスの再生中の肝臓からの総タンパク質抽出物を記載されるように単離した(Rausaら、2000、Mol.Cell Biol.、20:8264〜8282)。ウエスタンブロット分析を、50μgの総肝臓タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、Protranメンブラン(Schleicher&Schuell、Keene,NH)に転写し、HFH−11(FoxM1B)抗体(Yeら、1997、Mol.Cell Biol.、17:1626〜1641;Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)とインキュベーションし、そしてビオチン結合抗ウサギIgG(BioRad、Hercules、CA)を用いてシグナルを増幅することによって行った。シグナルは、増強化学発光(ECL、Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)を用いて検出された。FoxM1Bのタンパク質レベルの上昇には、PHx後40時間におけるBrdU取り込みおよびFoxM1BのmRNA発現の増大が伴っていた(図3、図4Cおよび図5)。FoxM1Bタンパク質発現の増大は、老齢WTマウスの再生中の肝細胞では全く観測されなかった(図5)。
【0153】
これらの研究は、遺伝子導入マウスにおけるFoxM1BのmRNAレベルおよびタンパク質レベルの増加が、老齢の遺伝子導入マウスの再生中の肝臓における肝細胞増殖の増加と関連することを明らかにしている。
【0154】
実施例3
再生中の肝臓においてFoxM1Bの増大した発現に応答してS期およびM期の進行に関与する遺伝子の変換した発現
サイクリンD1、サイクリンD3、サイクリンE、サイクリンA1、サイクリンA2、サイクリンB1、サイクリンB2およびサイクリンFに対するRNase保護プローブをPharmingen(San Diego、CA)から購入し、Cdc25Bおよびp55Cdcに対するプローブをClontechから購入した。RNase保護アッセイを、PHx後の24時間、32時間、36時間、40時間および44時間のWTマウスおよびTGマウスから単離された20μg〜40μgの総肝臓RNAに対して、サイクリン遺伝子については製造者によって記載された方法を使用して行い、他の遺伝子については上記に記載されたように行った。S期を促進するサイクリンD1遺伝子の発現が、老齢TGマウスでは、PHxの36時間後〜40時間後、肝細胞のDNA複製の開始直前で上昇した(図6)。サイクリンEの発現レベルもまた、老齢TGマウスでは、PHx後40時間で増大した(図6)。TGマウスの再生中の肝臓におけるサイクリンD1およびサイクリンEの誘導には、FoxM1Bの増大した発現が伴った。サイクリンD1およびサイクリンEの発現は、老齢WTマウスの再生中の肝臓の細胞周期のG1/S移行時に低下した(図6)。さらに、FoxM1Bレベルの上昇は、これらの肝臓においてサイクリンA2の発現の増大をもたらした(図6)。このデータは、老齢マウスの再生中の肝臓におけるFoxM1Bの発現を回復させることにより、サイクリンD1、サイクリンEおよびサイクリンA2の誘導が刺激され、それらにより肝細胞のS期への進入およびS期を過ぎた進行が促進されることを示している。
【0155】
肝細胞のDNA複製がピークにあるとき、サイクリンB1およびサイクリンB2の著しい誘導が、老齢TGマウスから得られた再生中の肝臓でのみ観測された(図6)。この時点ではまた、サイクリンFのレベルが、12月齢TGマウスの再生中の肝臓では著しく増大した(図6)。TG動物の肝臓では、WT動物の肝臓の場合よりも、Cdc25BのmRNAの大きな活性化がPHx後の40時間〜44時間の間で観測された(図6)。さらに、TG動物の肝臓のみがPHx後のp55Cdcの誘導された発現を示した(図6)。サイクリンB1およびサイクリンB2はG2期から有糸***への細胞周期の進行を媒介する(Zachariaeら、1999、Genes Dev.、13:2039〜2058)。サイクリンFは、サイクリンB複合体の核への転位を促進するので、M期の進行には必須である(Kongら、2000、EMBO J.、19:1378〜1388)。M期の進行はまた、有糸***キナーゼのcdk1/サイクリンBを活性化するCdc25Bによっても媒介される(Sebastianら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:3521〜3524;Trembleyら、1996、Cell Growth Differ.、7:903〜916;Nilssonら、2000、Prog.Cell Cycle Res.、4:107〜114)。有糸***を完了させるために必要なプロセスであるサイクリンタンパク質の分解がp55Cdcによって調節される(Zachariaeら、1999、Genes Dev.、13:2039〜2058)。
【0156】
これらの結果は、老齢TGマウスにおけるFoxM1Bの増大した発現により、サイクリンB1、サイクリンB2、サイクリンF、Cdc25Bおよびp55Cdcを含む、M期促進遺伝子が誘導されることを明らかにしている。
【0157】
実施例4
部分肝切除後の老齢FoxM1B遺伝子導入マウスの肝臓におけるp21およびp53の発現
20μg〜40μgの総肝臓RNAが、PHx後の24時間、32時間、36時間および40時間において老齢のTGマウスおよびWTマウスから単離された。p21に対するRNase保護プローブはGuy Adami博士(Illinois大学、Chicago)から贈与された。上記のように、約2×105cpmの各プローブを、20mMのPIPES(pH6.4)、400mMのNaCl、1mMのEDTAおよび80%ホルムアミドを含有する溶液において20μgの総RNAと45℃または55℃で一晩ハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーション後、サンプルあたり10ユニットのRNase One酵素を製造者のプロトコル(Promega、Madison、WI)に従って使用することによってサンプルを37℃で1時間消化した。RNase Oneから保護されたフラグメントを8%ポリアクリルアミド−8M尿素ゲルで電気泳動し、その後オートラジオグラフィーを行った。発現レベルの定量化が、BioMax 1Dプログラム(Eastman Kodak、Rochester、NY)を使用することによって、X線フィルムを走査して決定された。シクロフィリンのハイブリダイゼーションシグナルが、種々の肝臓RNAサンプル間の正規化コントロールのために使用された。p21のmRNAレベルが、老齢TG動物において細胞周期のG1/S移行のときに減少した(図7、PHxの32時間後〜40時間後)。
【0158】
PHx後の24時間、32時間および40時間で解剖された12月齢のWTマウスおよびTGマウスの再生中の肝臓からのパラフィン包埋組織サンプルをミクロトームで切断して、上記に記載されるような免疫組織化学的染色のために調製した。切片を抗p21抗体(Oncogene Science、Cambridge、MA)または抗FoxM1B抗体とインキュベーションし、そしてABCキットおよびDABペルオキシダーゼ基質を製造者の使用説明書(Vector Laboratories、Burlingame、CA)に従って使用することによって検出した。それぞれのマウス肝臓について1000個の核あたりのp21陽性肝細胞およびFoxM1B陽性肝細胞の数が測定され、各時点について2匹のマウスから得られたデータが、マッキントッシュ・マイクロソフト・エクセル98におけるAnalysis ToolPakを使用して平均±標準偏差(SD)を計算するために使用された。老齢TGマウスの再生中の肝臓の核におけるp21タンパク質レベルは、PHxの32時間後、WTの肝臓で観測されたレベルと比較して低下していた(図8)。しかし、PHxの36時間後では、TGマウスの肝臓におけるp21の核タンパク質レベルはWTの肝臓におけるレベルと類似していた(図8)。このことは、S期への進行のために必要なサイクリンD/cdk4/6複合体の組み立てにおけるp21の役割と一致している(Chengら、1999、Embo J.、18:1571〜1583)。
【0159】
増大したFoxM1B発現が老齢TTR−FoxM1B TGマウスの再生中の肝細胞におけるp53タンパク質レベルの減少を媒介する能力もまた調べられた。肝細胞のDNA複製の前(PHx後の24時間〜36時間)において、ウエスタンブロット分析では、p53タンパク質レベルの50%〜70%の低下が、老齢のWTマウスと比較した場合、老齢TTR−FoxM1B TGマウスの再生中の肝臓において明らかにされた(図9A〜C)。p53タンパク質レベルの低下と一致して、老齢TTR−FoxM1B TGマウスの再生中の肝臓では、S期前のp21Cip1タンパク質の発現が50%低下することが観測された。
【0160】
これらの肝臓再生研究は、FoxM1Bのレベルを維持することにより、老齢TTR−FoxM1B TGマウスでは、p53タンパク質およびp21Cip1タンパク質の低下した発現がG1期からS期への移行時にもたらされたことを示しており、このことは、老化の表現型に関連する低下した増殖を防止することと一致している。
【0161】
実施例5
FoxM1B遺伝子導入マウスにおけるFoxM1Bの局在化および肝細胞のDNA複製に対する四塩化炭素誘導による肝臓傷害の影響
野生型またはFoxM1B遺伝子導入の雄性CD−1マウス(8〜10週齢)に、Serfasら、1997、Cell Growth Differ.、8:951〜961に記載されるように、軽質鉱油に溶解された四塩化炭素の10%溶液の単回腹腔内(IP)注射を施した(10μL CCl4/g体重;Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)。マウスは、以前の記載(Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)のように、肝臓を採取する2時間前に、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)における10mg/mLの5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU;50μg/g体重)溶液のIP注射を受けた。マウスは、CCl4投与後の16時間、20時間、24時間、28時間、32時間、34時間、36時間、40時間、44時間および48時間の間隔でCO2窒息によって屠殺された。肝臓組織の一部が、総RNAを調製するために使用され、残りの肝臓は以前の記載(同上)のようにパラフィン包埋された。遺伝子導入マウスと野生型マウスとの間での何らかの観測される差の統計的有意性を明らかにするために、4匹のマウスがそれぞれの時点で屠殺された。
【0162】
FoxM1Bタンパク質の核局在化には、増殖性のシグナル伝達が必要である(同上)。従って、アフィニティー精製されたFoxM1B抗体が、CCl4肝臓傷害後の様々な時点でのマウス肝臓切片の免疫組織化学的染色のために上記のように使用された。再生中のWT肝細胞は、CCl4肝臓傷害後の32時間〜36時間の間にFoxM1Bの核染色を示し(図10A〜B)、40時間の時点までに最大の染色に達した(図10C)。対照的に、核のFoxM1Bタンパク質染色は、調べられた最も早い時点(CCl4傷害後の20時間)で再生中のTG肝細胞において見出され、肝臓再生プロセス中を通して持続した(図10D〜F)。
【0163】
CCl4による再生中の肝臓において、肝細胞がS期に進入し、DNAを合成するタイミングが、上記に記載されるように、DNA内へのBrdU取り込みの免疫組織化学的染色によって調べられた。WTの肝臓において、少数のBrdU陽性の染色肝細胞がCCl4傷害後36時間で検出され、その一方で、肝細胞のDNA複製は40時間までに最大に達し、広い持続したS期ピークを示した(図11)。対照的に、TGの肝細胞は、CCl4傷害後32時間で検出可能なBrdU取り込みを示し、その一方で、肝細胞の複製は34時間までに著しく増大し、36時間までに最大になった(図11)。
【0164】
これらの研究は、FoxM1B導入遺伝子のタンパク質のより早い核での発現は、CCl4により誘導された肝臓傷害の後における肝細胞のDNA複製の開始を6時間早めることを示している。
【0165】
実施例6
FoxM1B遺伝子導入マウスにおけるp21レベルに対する四塩化炭素誘導による肝臓傷害の影響
遺伝子導入肝細胞のより早い複製がp21タンパク質の減少した発現と相関するかどうかを明らかにするために、WTマウスおよびTGマウスの肝臓を、CCl4誘導による肝臓傷害の16時間後、20時間後、24時間後、28時間後、32時間後、36時間後および40時間後に取り出し、抗p21抗体を用いた上記に記載されるような免疫組織化学的染色によって調べた。再生中のTG肝細胞に存在する門脈周囲のp21染色肝細胞の数は、再生中のWT肝細胞と比較して、CCl4肝臓傷害後の16時間〜36時間の間で著しく低下した(図12A)。p21タンパク質の肝細胞での発現の差はCCl4投与後36時間で最大になった(図12A)。この時期は、TG肝細胞のDNA複製が最大であり、WT肝細胞の複製がほとんど検出できない時点に対応する(図11)。p21の発現パターンは、CCl4肝臓傷害後40時間では同じであった。このとき、WT肝細胞およびTG肝細胞はともに多量のBrdU取り込みを示した。
【0166】
p21のmRNA発現レベルもまた、TGマウスおよびWTマウスのCCl4による再生中の肝臓において調べられた。RNase保護アッセイが、記載されたように2連で行なわれた。肝臓のp21 mRNAが正規化され、図示される。これにより、再生中のWT肝臓でのp21の発現が、検討された時点のすべてを通して一定に保たれたことが明らかにされる(図12B)。TG肝臓でのp21のmRNAレベルの著しい低下が、CCl4肝臓傷害後の28時間〜32時間の間で観測された(図12B)。このことは、図11で認められるように、肝細胞がS期に早期に進入することと一致している。
【0167】
これらの研究は、p21の発現が減少することにより、これはDNA複製に対して阻害的であるが、肝臓再生時の促進された肝細胞増殖が媒介されることを明らかにしている。
【0168】
実施例7
CCl4肝臓傷害後の遺伝子導入マウスおよび野生型マウスの再生中の肝臓における増殖特異的遺伝子の示差的な発現
上記に記載されるように、RNase保護アッセイを、RNA保護プローブおよびPharmingen(San Diego、CA)により製造されたキットを製造者によって推奨される手順に従って使用して、様々なサイクリン遺伝子について行った。リボソームのラージサブユニットタンパク質L32およびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼGAPDHのシグナルを、CCl4肝臓再生時の種々の時点でのサイクリン発現を正規化するために使用した。マウスのCdc25aおよびCdc25bに対するアンチセンスRNAプローブを、Clontech(Paolo Alto、CA)から購入したAtlas cDNAプラスミドから作製した。
【0169】
RNase保護アッセイを、CCl4による再生中のTG肝臓およびWT肝臓におけるサイクリン遺伝子の時間的な発現パターンを調べるために2連で行った。再生中のWT肝臓と比較して、再生中のTG肝臓は、S期を促進するサイクリンD1遺伝子およびサイクリンE遺伝子の発現における早期の増大をCCl4傷害後の24時間〜36時間の間で示した。この時期は細胞周期のG1/S移行に対応する。CCl4による再生中のTG肝臓は、再生中のWT肝臓と比較して、サイクリンD1発現のより顕著なピークを示した(図13A)。このことは、未成熟なFoxM1BがサイクリンD1の発現を誘導し、S期への肝細胞の進入を促進し得ることを示唆している。TGマウスにおけるCCl4肝臓傷害後のサイクリンD1およびサイクリンEの発現の誘導ピークは、PHx肝臓再生モデルにおいて観測されたピークとは異なる。再生中のTG肝臓は、PHx後28時間からDNA複製の開始まで肝臓のサイクリンD1レベルの持続した増大を示したが、サイクリンE発現の誘導における変化は全く見出されなかった(Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)。PHxまたはCCl4により誘導される再生中の肝臓はともに、サイクリンA2発現の早期活性化を示す(図13D、同上)。サイクリンA2はCDK2との複合体を形成し、そしてE2Fのリン酸化(これにより、そのDNA結合活性が不活化される)を媒介することによってS期の進行のためには必須である(Dynlachtら、1994、Genes Dev.、8:1772〜1786;Xuら、1994、Mol.Cell Biol.、14:8420〜8431)。
【0170】
サイクリンB1遺伝子およびサイクリンB2遺伝子の早期発現と同時に、有糸***への進入が8時間早まることが明らかにされた以前のPHx再生研究(Ye他、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)において観測されたように、CCl4による再生中のTG肝臓は、サイクリンB1遺伝子およびサイクリンB2遺伝子の早期の肝臓発現を示した(図13C)。また、両方の肝臓再生モデルは、肝細胞のDNA複製のピークにおけるサイクリンFレベルの早期誘導を示した(図13E)。サイクリンFは、サイクリンBタンパク質の核局在化および有糸***への進入を媒介することができる(Kongら、2000、EMBO J.、19:1378〜1388)。これらの結果は、早期のサイクリンF発現が、サイクリンBの核局在化を促進することによって、TG肝細胞のM期へのより早い進入を誘発し得ることを示唆している。さらに、これらの肝臓再生モデル研究の分析では、FoxM1Bにより、異なるS期促進経路がCCl4肝臓傷害後に活性化されるが、これらのモデルはM期への促進された進入のために、類似するサイクリン遺伝子の活性化を示したことが示唆される。
【0171】
RNase保護アッセイにより、高レベルのCdc25aのmRNAが、再生中のTG肝臓においてCCl4傷害後の24時間〜40時間の間において維持され、その一方で、再生中のWT肝臓におけるCdc25aの発現が、28時間の時点以降、急激に低下することもまた明らかにされた(図13Fおよび図13G)。Cdc25aの発現は、TGの肝細胞のDNA複製がピークを過ぎるまで持続し、これは、サイクリンD1/CDK4複合体の活性化によるS期への進行を可能にした。TGの肝細胞複製がピークのとき、Cdc25b(cdc25M2)ホスファターゼレベルの増大が認められた(図13G)。Cdc25bのmRNAレベルの早期活性化が、CCl4傷害後36時間で、再生中のTG肝臓で見られたが、これに対して、その発現は40時間の時点までWTの再生中の肝臓では増大しなかった(図13G)。Cdc25bは、有糸***キナーゼのCdk1/サイクリンBを脱リン酸化により活性化することによってM期の進行を調節した(Nilssonら、2000、Prog.Cell Cycle Res.、4:107〜114;Sebastianら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、90:3521〜3524;Trembley他、1996、Cell Growth Differ.、7:903〜916)。Cdc25bの早期発現は、有糸***(2倍になった染色体の娘細胞への分配)を開始し、達成するために必要であるcdk1−サイクリンBキナーゼ活性を活性化することによって有糸***への進入を促進する。
【0172】
実施例8
マウス肝臓へのFoxM1B遺伝子のアデノウイルス送達によるFoxM1Bの発現
12月齢のBalb/cマウスを国立加齢研究所から入手して、マウスに、FoxM1Bを発現するアデノウイルスベクター(AdFoxM1B)またはコントロールとしてのアデノウイルス(AdCon)(1×1011個の精製アデノウイルス粒子)のいずれかを尾静脈注射により感染させた。FoxM1Bを発現するアデノウイルス(AdFoxM1B)は、ヒトFoxM1BcDNAの2.7kBのEcoRI−HindIIIフラグメントをアデノウイルスシャトルベクターpGEMCMV NEW(Duke大学のJ.R.Nevinsからの贈与)にサブクローン化することによって作製された。尾静脈注射後、95%を超えるアデノウイルスが肝臓に感染し、他の器官への感染は最小限に抑えられている。アデノウイルスが肝臓実質中のほとんどの細胞に効率よく送達されている。AdFoxM1Bのマウス尾静脈注射は、FoxM1Bのインビボでの肝臓発現の効果的な増大をもたらす。尾静脈注射の2日後、感染マウスを上記に記載されるような部分肝切除(PHx)手術に付した。PHx手術は、アデノウイルス感染後の最初の36時間以内に完了するウイルス感染に対する初期の急性期応答を避けるために、アデノウイルス感染の2日後に行なわれた。10mg/mLのBrdU(Sigma;50μg/g体重)を含むリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)溶液の腹腔内(IP)注射が、残存する再生中の肝臓を採取する2時間前に投与され、残存する再生中の肝臓が、以前の記載(Yeら、1999、Mol.Cell Biol.、19:8570〜8580)のように、手術の24時間後〜48時間後の間において種々の間隔で採取された。
【0173】
肝臓組織は、以前に記載されたように、総RNAを調製するために使用され、または肝細胞のDNA複製をモニターするためのDNAへのBrdU取り込みの免疫組織化学的染色のためにパラフィン包埋された。RNase保護アッセイが、上記に記載されたようにFoxM1BのRNase保護プローブを用いて行なわれ、これにより、AdFoxM1Bの感染がFoxM1BのmRNAの大きな増大を誘発することが明らかにされた(図14A)。比較のために、RNase保護アッセイが、2月齢(若齢)マウスの再生中の肝臓から単離された肝臓RNAに対して行なわれた。FoxM1B発現の著しい増大が、これらのサンプルにおいてPHx後の36時間〜44時間の間で観測され、高い発現レベルが肝臓再生実験の継続期間中維持された(図14A)。対照的に、AdConを感染させた老齢マウスの再生中の肝臓から得られたRNAを用いたRNase保護アッセイは、PHx後24時間においてFoxM1BのmRNAのほんのわずかな増大を示し、40時間において2度目の増大を示した(図14A)。また、FoxM1B発現の小さい増大が、老齢マウスの非感染の再生中の肝臓から、調べられた時点のすべてを通して観測された(図14A)。
【0174】
パラフィン包埋された肝臓組織は、抗BrdU抗体を用いた免疫染色に付され、FoxM1Bタンパク質の発現パターンが、上記に記載されたように、FoxM1Bタンパク質を使用した免疫組織化学によって調べられた。アデノウイルスにより媒介されるFoxM1B発現の増大は、PHx後32時間で、肝細胞のDNA複製のより早期のピークを刺激した(図14B)。これは、通常、若齢Balb/cマウスではPHx後40時間で生じる。S期への進行を媒介する際のFoxM1Bの役割と一致して、AdCon感染の再生中の肝臓または模擬感染の再生中の肝臓では、肝細胞のDNA複製が著しく増大しなかった(図14B)。肝細胞の有糸***像が調べられ、図14Cに図示される。アデノウイルスにより媒介されるFoxM1B発現の増大は、コントロールのアデノウイルスを感染させた老齢マウスまたは非感染の老齢マウスのいずれかの再生中の肝臓と比較した場合、PHx後の36時間〜44時間の間で肝細胞の有糸***を刺激した(図14C)。AdCon感染の老齢マウスから得られた再生中の肝臓の免疫組織化学的染色は、PHx後のFoxM1Bの核でのタンパク質レベルが検出できないほどであることが示された(図15、左図)。核でのFoxM1Bタンパク質の発現は、24時間〜36時間の間のすべての時点で観測された(図15、右図)。
【0175】
これらの結果は、アデノウイルスにより媒介されるFoxM1Bの肝臓レベルの増大は、S期および有糸***への肝細胞の進行を、若齢の再生中の肝臓において見出される速度と類似する速度で回復させたことを示している。
【0176】
実施例9
細胞周期調節遺伝子の発現が、AdFoxM1Bを発現する老齢マウスの再生中の肝臓では回復する
S期促進遺伝子の発現
AdFoxM1Bを感染させた老齢マウスの再生中の肝臓においてその発現が回復する細胞周期調節遺伝子を同定するために、RNase保護アッセイを、上記のようにAdConまたはAdFoxM1Bを感染させた老齢Balb/cマウスの再生中の肝臓から単離されたRNAに関して、様々なサイクリン遺伝子に対するプローブを用いて、2連で、記載されたように行った。
【0177】
老齢の再生中の肝臓におけるAdFoxM1Bの感染によって生じるFoxM1B発現の増大は、PHx後28時間での、S期を促進させるサイクリンD1遺伝子の上昇した発現を伴った(図16D)。同様に、サイクリンEは、AdFoxM1B感染の老齢マウスにおいてPHx後の28時間〜32時間の間で著しい増大を示した(図16F)。S期への肝細胞の減少した進入と一致して、AdCon感染の老齢マウスの再生中の肝臓は、細胞周期のG1/S移行時のサイクリンD1およびサイクリンEの発現の著しい低下を示した(図16Dおよび図16F)。FoxM1Bレベルの上昇により、AdFoxM1B感染の老齢マウスの再生中の肝臓におけるサイクリンA2の発現の増大もまた回復した(図16A)。
【0178】
まとめると、これらのデータは、老齢マウスの再生中の肝臓におけるFoxM1Bの発現を回復させることにより、肝細胞のS期への進入およびS期を経た進行を促進するために役立った、S期を促進させるサイクリンD1、サイクリンEおよびサイクリンA2の誘導が刺激されることを示している。
【0179】
M期促進遺伝子の発現
RNase保護アッセイを、記載されたように、M期の進行に関与する様々なサイクリンに対するプローブを用いて行った。肝細胞のDNA複製がピークにあるとき(PHxの24時間後〜32時間後)、AdFoxM1B感染の老齢マウスから得られた再生中の肝臓のみがサイクリンB1およびサイクリンB2の著しい誘導を示した(図16Bおよび図16C;PHxの24時間後〜32時間後)。サイクリンBレベルの誘導と同時に、サイクリンFレベルの著しい増大が、AdFoxM1Bを感染させた12月齢の再生中の肝臓では明らかであった(図16G)。さらに、サイクリンGの上昇したレベルが、肝細胞のDNA複製の期間中に観測された(図16H)。
【0180】
まとめると、これらの肝臓再生研究は、アデノウイルスにより増大した老齢マウスにおけるFoxM1B発現により、M期を進行させるために要求される、M期促進性のサイクリンB1遺伝子、サイクリンB2遺伝子、サイクリンF遺伝子およびサイクリンG遺伝子の誘導が回復することを示している。
【0181】
実施例10
肝臓再生時の条件付きFoxM1Bノックアウトマウスにおける増殖および有糸***
FoxM1Bノックアウトマウスは出生直後に死亡する。従って、成体の肝臓再生におけるFoxM1Bの役割を調べるために、条件付きFoxM1Bノックアウトマウスを、「Flox化」FoxM1B標的遺伝子座を作製するためにトリプルLoxP FoxM1Bターゲッティングベクターを使用して作製した(ベクターの概略図については図17を参照のこと)。2つのLoxP部位の間に広がるFoxM1ゲノム配列のCreリコンビナーゼ媒介による欠失により、翼型らせんDNA結合ドメイン全体およびC末端の転写活性化ドメインが除かれ、それにより機能的なFoxM1イソ型の発現が防げられる。標準的なエレクトロポレーション、および相同的組換え(G418およびガンシクロビル)について選択するためのマウス胚性幹(ES)細胞の培養の後、相同的組換え体をES細胞のゲノムDNAのサザンブロッティングによって同定した。
【0182】
マウスの胚盤胞に、「Flox化」(fl/+)FoxM1Bで標的化された対立遺伝子を含むES細胞を注入し、生殖系列伝達を有するキメラマウスを選択した。「Flox化」(fl/fl)FoxM1Bで標的化された対立遺伝子についてホモ接合性である生存可能なマウスを作製した。FoxM1B(fl)対立遺伝子についてホモ接合性(fl/fl)またはヘテロ接合性(fl/+)のいずれかであるマウスが、LoxP部位に隣接するプライマーを用いたマウスゲノムDNAのPCR増幅によって確認された。交配してアルブミンプロモーターのCreリコンビナーゼ導入遺伝子をFoxM1B(fl/fl)マウスの遺伝的背景に導入することにより、肝細胞のFoxM1B遺伝子座欠失が出生後6週間以内に可能になった。これは、肝臓のゲノムDNAを使用するサザンブロットによって確認された。
【0183】
肝細胞増殖におけるFoxM1Bの役割を、FoxM1B fl/flマウスおよびFoxM1B −/−マウス(このマウスでは、FoxM1B遺伝子がアルブミンCreリコンビナーゼ導入遺伝子によって肝細胞において欠失された)を用いた肝臓再生研究を行なうことによって調べた。8週齢のFoxM1B −/−マウスが部分肝切除(PHx)に付され、その再生中の肝臓が手術後の24時間〜52時間の間において種々の間隔で採取された(Wangら、2001、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、98:11468〜11473)。肝細胞のDNA合成が、上記に記載されたように、DNAへの5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)取り込みの免疫組織化学的染色によってモニターされた。
【0184】
FoxM1B fl/flマウスは、再生中のWT肝臓との比較において、(PHx後32時間で)8時間早いFoxM1B発現を示した(同上)。FoxM1Bは主に転写後レベルで調節されるので、FoxM1B遺伝子の3’末端におけるLoxPneo構築物は、おそらくはそのmRNAを安定化させ、従って、FoxM1Bの誘導されるレベルを増強していると考えられる。FoxM1B(fl/fl)マウスは、PHx後のBrdU取り込みにおいて二機能性のS期ピークを示し(図18A)、一方、DNA複製の著しい低下がFoxM1B(−/−)の再生中の肝臓において観測された(図18A)。さらに、有糸***への進行が、PHx後の36時間〜52時間の間における有糸***像が少数であることによって明らかにされように(図18B)、FoxM1B(−/−)マウスの再生中の肝細胞では著しく低下した。
【0185】
RNase保護アッセイを、FoxM1B −/−マウスの再生中の肝臓においてその発現が減少する細胞周期調節遺伝子を同定するために2連で行った(図19A)。FoxM1B(−/−)マウスの再生中の肝臓におけるサイクリンDまたはサイクリンEのmRNAレベルの非常に小さい変化が検出された(図19A)。しかし、ウエスタンブロット分析により、コントロールと匹敵するFoxM1B fl/flと比較して、再生中のFoxM1B −/−肝細胞では、p21タンパク質レベルが上昇していることが明らかにされた(図19B)。p21タンパク質はサイクリン/cdk活性を阻害するので、p21タンパク質レベルが増加したことにより、再生中のFoxM1B −/−肝細胞におけるDNA複製の低下が説明される。
【0186】
再生中のFoxM1B −/−肝臓の有糸***への進行の減少は、PHx手術後の40時間〜48時間の時点の間におけるCdc25BのmRNAレベルの低下と一致する。cdk−1に特異的なホスホチロシン15抗体を用いたウエスタンブロット分析により、FoxM1B欠損肝細胞における増大したcdk−1リン酸化が明らかにされた(図19C)。これは、Cdc25Bホスファターゼの減少したレベルがcdk1活性の低下をもたらすことと一致する発見である(Nilssonら、2000、Prog.Cell Cycle Res.、4:107〜114;Sebastianら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:3521〜3524;Trembleyら、1996、Cell Growth Differ.、7:903〜916)。減少したcdk1活性を裏付けるものとして、免疫沈降−キナーゼアッセイにより、再生中のFoxM1B −/−肝細胞から得られたタンパク質抽出物がヒストンH1基質の低下したcdk−1依存的リン酸化を示すことが明らかにされた(図19C)。また、サイクリンA2、サイクリンB1およびcdk1の低下したレベルがFoxM1B −/−において観測されたが、それらの発現は、細胞周期の期間中、依然として増大した。
【0187】
まとめると、これらの結果は、FoxM1BがM期の進行に不可欠な活性化因子(Cdc25B)を調節し、S期への進入を促進させるp21の減少した発現を媒介することを示唆している。
【0188】
実施例11
肝臓におけるFoxM1Bの発現および局在化に対する成長ホルモンの影響
2月齢のWT型CD−1マウスおよびTG型CD−1マウスに、ビヒクル緩衝液(溶液1mLあたり、2.2mgのグリシン、0.325mgのリン酸二ナトリウム二水和物(Na2HPO4,2H2O)、0.275mgのリン酸ナトリウム二水和物(NaH2PO4,2H2O)、および11mgのマンニトール)におけるヒト成長ホルモン(ソマトロピン(Norditropin)、Novo Nordisk Pharmaceuticals Inc.、Princeton、New Jersey;体重1gあたり5μg)の腹腔内(IP)注射が行われた。肝臓組織が、成長ホルモンの投与後、様々な時間間隔(0時間〜3時間)で採取された。肝臓組織はパラフィン包埋され、FoxM1B抗体を用いた免疫組織化学的染色のために使用された。免疫組織化学的染色により、ヒト成長ホルモンが、成長ホルモン投与の30分以内に、WTマウスにおいてFoxM1Bタンパク質の核染色を誘導すること(図20A〜Bと比較して、図20C〜D)、そしてFoxM1Bタンパク質の核染色が3時間の時点まで持続すること(図20E〜H)が明らかにされた。遺伝子導入FoxM1Bタンパク質の核染色が、TTR−FoxM1B遺伝子導入マウスへのIP投与後の30分〜3時間の間において成長ホルモンによって誘導された(図21)。成長ホルモンのビヒクル緩衝液が注射されたWTマウスおよびTGマウスのコントロールでは、肝臓の核でのFoxM1B染色が全く見出されなかった(図20〜図21、パネルAおよびパネルB)。これらの研究により、成長ホルモンは単独で、PHxまたはCCl4によって引き起こされる肝臓傷害を伴うことなく、FoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導することができることが明らかにされる。
【0189】
FoxM1Bレベルの低下が、若齢Balb/cマウス(2ヶ月齢)と比較した場合、老齢Balb/cマウス(12月齢)の再生中の肝臓において見出された(図22)。老齢マウスにおける肝細胞の増殖およびFoxM1Bの発現に対する成長ホルモンの影響を、部分肝切除(PHx)の前およびその後において12月齢のBalb/cマウスに成長ホルモンを投与することによって調べた。ヒト成長ホルモン(HGH)またはリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)が、PHx手術の1時間前に腹腔内(IP)注射(体重1グラムあたり5μg)によって老齢(12月齢)Balb/cマウスに投与された。マウスはまた、再生中の肝臓が採取されるまで、手術後8時間毎にHGHまたはPBSのIP注射を受けた。
【0190】
マウスには、上記に記載されたようにBrdUが注射され、その肝臓がPHx後の24時間〜48時間の間の様々な時間間隔で採取された。肝臓組織の一部が、RNase保護アッセイのための総RNAを調製するために使用された。上記に記載されるように肝臓組織を処理し、肝臓切片を抗BrdU抗体で染色した。BrdU染色された肝細胞および明白な有糸***像を、以前に記載されたように計数した(Wangら、2001、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、98:11468〜11473)。BrdUの取り込みによって測定されるような再生中の肝細胞のDNA複製は、若齢(2月齢)マウスの再生中の肝臓において観測されるレベルと類似していた(図23A)。また、老齢マウスの再生中の肝臓における有糸***は、若齢マウスの再生中の肝臓における有糸***と類似していた(図23B)。
【0191】
RNase保護アッセイによって測定されるFoxM1B発現は、再生過程のときに定期的なHGH注射を受けた老齢マウスの再生中の肝臓では上昇した(図22)。さらに、HGH処置により、FoxM1Bの標的遺伝子であるCdc25Bホスファターゼの発現が、若齢の再生中の肝臓において見出されるレベルにまで回復した。
【0192】
これらの研究は、FoxM1Bの発現が、再生中の肝臓において成長ホルモンによって刺激されることを示唆している。
【0193】
実施例12
成長ホルモンは休止肝臓細胞におけるFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導する
緑色蛍光タンパク質を、FoxM1Bのアミノ酸1〜748に読み枠を合わせて融合し、CMVプロモーターを、GFP−FoxM1B融合タンパク質の発現を行わせるために使用した。CMV−GFP−FoxM1B発現ベクターをマウス尾静脈注射により2.5mLの生理的食塩水において送達した。この技術により、DNA発現プラスミドがインビボで10%の肝細胞に形質導入されることが以前に明らかにされている。一群の形質導入された動物からの肝臓を採取し、上記に記載されるように処理した。CMV−GFP−FoxM1B発現ベクターで形質導入された第2のマウス群には、その肝臓が採取される45分前にHGHのIP注射が行われた。両方の群から得られた肝臓切片を蛍光顕微鏡で調べた。GFP−FoxM1Bは、HGHで処置されていない動物から得られた休止肝細胞の細胞質に存在し(図24C)、一方、GFP−FoxM1Bは、第2のマウス群から得られた肝細胞における核局在化を示した(図24D)。コントロールとして、第3のマウス群をCMV−GFP−FoxM1B−NLS(NLS=SV40のラージT抗原核局在化配列)で形質導入した(図24B)。HGHによって誘導されたGFP−FoxM1Bの核局在化パターンは、正常な調節を受けないGFP−FoxM1B−NLSの局在化と類似していた。これらの結果は、成長ホルモンが休止肝細胞におけるFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導するためにに十分であることを明らかにした。
【0194】
上記開示は本発明のいくつかの特定の実施形態を強調していること、そしてこれらと等価なすべての改変または変更は、添付された請求項に示されるような本発明の精神および範囲に含まれることを理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1A】3’末端における末端の972ヌクレオチドの欠失を含むヒトFoxM1BのcDNA(配列番号1)を示す。
【図1B】3’末端における末端の972ヌクレオチドの欠失を含むヒトFoxM1BのcDNA(配列番号1)を示す。
【図1C】配列番号1に示されるヌクレオチド配列によってコードされるヒトFoxM1Bタンパク質配列(配列番号2)を示す。
【図2】12月齢の野生型CD−1マウス(WT、黒丸)、12月齢の遺伝子導入CD−1マウス(TG、黒ひし形)または2月齢の野生型CD−1マウス(WT、黒四角)における部分肝切除(PHx)後の示された時間における(DNA複製の尺度としての)5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)取り込みを表すグラフを示す。
【図3】PHx後48時間での老齢TGマウスの再生中の肝臓における増大した肝細胞有糸***を表すグラフを示す。
【図4】2月齢WTマウス(A)、12月齢WTマウス(B)および12月齢TGマウス(C)の再生中の肝臓からPHx後の示された時間で単離された総RNAを使用して行われたRNase保護アッセイを示す。
【図5】示された時間で12月齢のWTマウスおよびTGマウスの再生中の肝臓から単離された総肝臓タンパク質抽出物を用いて行われた抗FoxM1B抗体とのウエスタンブロット分析を示す。FoxM1Bタンパク質は非特異的(NS)バンドよりも遅く移動する。
【図6】PHx後の示された時間でWTマウスと比較して、老齢TGマウスの再生中の肝臓における細胞周期促進遺伝子の増大した発現を明らかにするRNase保護アッセイを示す。
【図7】p21に対するアンチセンスRNAプローブを使用する、12月齢のWTマウスまたはTGマウスの再生中の肝臓から単離された総RNAのRNase保護アッセイを示す。
【図8】再生中のマウス肝臓あたり2500個の肝細胞に対するp21陽性核の数±標準偏差(SD)を表すグラフを示す。
【図9】図9Aは、老齢TTR−FoxM1B TGマウスおよび老齢WTマウスの再生中の肝臓におけるp53タンパク質の発現を示す、抗p53抗体を用いたウエスタンブロットを示す。図9B〜Cは、PHx後の様々な時間で老齢WTマウスにおけるレベルと比較したときの、老齢TTR−FoxM1B遺伝子導入マウスにおける相対的なp53タンパク質レベルおよびp21タンパク質レベルを示すグラフを示す。
【図10】WTマウス(A〜C)またはTGマウス(D〜F)から得られたCCl4処置の再生中の肝臓における、FoxM1B抗体を用いたFoxM1Bタンパク質の免疫組織化学染色およびFoxM1Bタンパク質の核発現を示す。
【図11】WTマウスおよびTGマウスにおけるCCl4誘導の肝臓損傷の後の様々な時点での肝細胞におけるBrdU取り込みを表すグラフを示す。BrdU陽性細胞が、約250個の核がそれぞれの視野に含まれる3つの視野で計数された。
【図12】図12Aは、WTおよびTGの肝臓再生におけるp21染色された肝細胞の統計学的分析を示す。図12Bは、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)およびラージリボソームL32のタンパク質レベルに対して正規化された、WTマウスおよびTGマウスから得られた再生中の肝臓におけるp21のmRNA発現レベルを表すグラフを示す。
【図13】CCl4誘導の肝臓損傷の後の様々な時間での再生中のWT肝臓および再生中のTG肝臓におけるサイクリンD1(A)、サイクリンE(B)、サイクリンB1(C)、サイクリンA2(D)、サイクリンF(E)、Cdc25a(F)およびCdc25b(G)のmRNA発現を表すグラフを示す。
【図14】図14Aは、PHx手術の2日前にAdCon(アデノウイルスコントロール)またはAdFoxM1B(FoxM1Bを有するアデノウイルスベクター)のいずれかを感染させたか、あるいは非感染のままに置かれた老齢Balb/cマウスの再生中の肝臓におけるFoxM1BのmRNAレベルを示す。FoxM1BのmRNA発現はシクロフィリンレベルに対して正規化された。パネルの下には、実験開始時(0時間の時点)における発現レベルと比較したときの誘導倍数が示される。図14Bは、AdFoxM1BまたはAdConのいずれかを感染させたか、あるいは非感染のままに置かれた12月齢Balb/cマウスにおけるPHx誘導されるマウス肝臓再生時の肝細胞のBrdU取り込みを表すグラフを示す。1000個の肝細胞あたりのBrdU陽性核の数の平均値および標準偏差(SD)がそれぞれの時点について計算された。図14Cは、PHx後の36時間〜44時間の間での、AdFoxM1B感染の老齢マウスの再生中の肝臓における増大した肝細胞有糸***を表すグラフを示す。PHx後のそれぞれの時点について2つの再生中の肝臓を使用して、肝細胞の有糸***が、1000個の肝細胞について見出された有糸***像の数の平均値±SDとして表される。
【図15】AdConではなく、AdFoxM1Bを感染させた老齢マウスの再生中の肝臓におけるFoxM1Bタンパク質の肝細胞核発現を示す、FoxM1B抗体を用いた免疫組織化学染色を示す。
【図16】AdFoxM1Bを感染させた老齢マウスの再生中の肝臓におけるサイクリン遺伝子の刺激された発現を表すグラフを示す。サイクリン発現レベルの発現レベルは、GAPDHタンパク質およびリボソームラージサブユニットL32タンパク質のmRNAレベルに対して正規化された。サイクリンA2(A)、サイクリンB1(B)、サイクリンB1(C)、サイクリンD1(D)、サイクリンD3(E)、サイクリンE(F)、サイクリンF(G)およびサイクリンG1(H)の正規化された平均mRNAレベルが図示される。
【図17】条件付きFoxM1Bノックアウトマウスを作製するために使用されたトリプルLoxP FoxM1B標的化ベクターの概略図である。
【図18】図18Aは、部分肝切除後のFoxM1B欠損肝細胞におけるBrdU取り込みを示すグラフを示す。図18Bは、FoxM1B −/−マウスおよびFoxM1B fl/flマウスにおける部分肝切除後の様々な時点での肝細胞有糸***を示すグラフを示す。
【図19】図19Aは、FoxM1B −/−マウスおよびFoxM1B fl/flマウスの再生中の肝臓における細胞周期調節遺伝子の発現を示す、二連で行われたRNase保護アッセイを示す。図19Bは、FoxM1B −/−およびFoxM1B fl/flの再生中の肝細胞におけるp21タンパク質レベルを示すウエスタンブロット分析を示す。
【図19C】図19Cは、肝臓再生時のFoxM1B −/−およびFoxM1B fl/flの肝細胞における、cdk−1特異的ホスホチロシン15抗体を用いたウエスタンブロット分析および基質としてH1タンパク質を使用するキナーゼアッセイを示す。
【図20】成長ホルモンで刺激された若齢CD−1マウスにおけるFoxM1Bタンパク質の肝細胞核発現を示す。コントロールマウス(A〜B)では示されなかったが、成長ホルモン投与の30分後(C〜D)、2時間後(E〜F)および3時間後(G〜H)におけるFoxM1Bの核染色(矢印により示される)を示した野生型の肝臓切片の顕微鏡写真が示される(200X(左パネル)および400X(右パネル))。
【図21】成長ホルモンで刺激された若齢TTR−FoxM1B遺伝子導入マウスにおけるFoxM1Bタンパク質の肝細胞核発現を示す。コントロールの遺伝子導入マウス(A〜B)では示されなかったが、成長ホルモン投与の30分後(C〜D)、2時間後(E〜F)および3時間後(G〜H)におけるFoxM1Bの核染色(矢印により示される)を示したTTR−FoxM1Bの肝臓切片の顕微鏡写真が示される(200X(左パネル)および400X(右パネル))。
【図22】非処置の2月齢(若齢)および12月齢のBalb/cマウス、ならびにヒト成長ホルモンで処置された12月齢Balb/cマウスの再生中の肝臓におけるFoxM1BのmRNAレベルの時間経過を示す。
【図23】図23Aは、成長ホルモンで処置されたマウスにおける再生中の肝臓から得られたBrdU陽性肝細胞の数を表すグラフを示す。図23Bは、成長ホルモンで処置されたマウスにおける再生中の肝臓から得られた有糸***性肝細胞の数を表すグラフを示す。
【図24】GFP−FoxM1B−NLS(B)、そして成長ホルモンの存在下および非存在下におけるGFP−FoxM1B(CおよびD)の局在化を示す、FoxM1B抗体を用いた免疫組織化学染色を示す。パネルAはコントロールである。
Claims (144)
- FoxM1Bタンパク質を発現する哺乳動物肝臓細胞におけるFoxM1Bタンパク質の一時的な核局在化を誘導する方法であって、成長刺激効果を有するために十分な時間および濃度で肝臓細胞を成長ホルモンと接触させる工程を含む方法。
- 成長ホルモンがヒト成長ホルモンである、請求項1に記載の方法。
- 哺乳動物肝臓細胞が、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードする核酸配列を、制御配列に機能的に連結されて含む組換え核酸構築物を含み、それにより、肝臓細胞がFoxM1Bタンパク質を発現する、請求項1に記載の方法。
- 制御配列が肝臓特異的プロモーター配列である、請求項3に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが、ヒトα1−アンチトリプシン、マウスα1−アンチトリプシン、アルブミンプロモーター、血清アミロイドA、トランスチレチンまたは肝細胞核因子6に由来するプロモーターである、請求項4に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが成長ホルモンによって誘導される、請求項5に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がベクターである、請求項3に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がウイルスベクターである、請求項7に記載の方法。
- ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターまたはワクシニアウイルスベクターである、請求項8に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がリポソーム内において哺乳動物肝臓細胞に導入される、請求項3に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がインビボで哺乳動物肝臓細胞に導入され、この場合、制御配列に機能的に連結された核酸分子を運ぶベクターを哺乳動物に投与する工程を含む、請求項3に記載の方法。
- 哺乳動物が肝臓損傷を有する、請求項11に記載の方法。
- 肝臓損傷が肝臓疾患に関連する、請求項12に記載の方法。
- 疾患が、肝硬変、胆道閉鎖症、B型肝炎またはC型肝炎である、請求項13に記載の方法。
- 肝臓損傷が微生物の感染から生じるか、または化学的トキシンもしくは環境的トキシンにさらされたことから生じる、請求項12に記載の方法。
- 肝臓損傷が、ウイルス、寄生虫、アルコール、タバコ、アセトアミノフェン、吸入麻酔剤、アフロトキシン、アリルアルコール、四塩化炭素、またはそれらの任意の組合せにさらされたことから生じる、請求項15に記載の方法。
- 肝臓損傷を有する哺乳動物を処置する方法であって、肝臓を、FoxM1Bタンパク質の核局在化を生じさせるために十分な量の成長ホルモンと接触させる工程を含む方法。
- 哺乳動物がヒトである、請求項17に記載の方法。
- 成長ホルモンがヒト成長ホルモンである、請求項17に記載の方法。
- 肝臓が、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、制御配列に機能的に連結されて含む組換え核酸構築物を含み、肝臓の細胞がそれによりFoxM1Bタンパク質を発現する、請求項17に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がベクターである、請求項20に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がウイルスベクターである、請求項21に記載の方法。
- ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターまたはワクシニアウイルスベクターである、請求項22に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がリポソーム内において哺乳動物細胞に送達される、請求項20に記載の方法。
- 制御配列が肝臓特異的プロモーター配列である、請求項20に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが、ヒトα1−アンチトリプシン、マウスα1−アンチトリプシン、アルブミンプロモーター、血清アミロイドA、トランスチレチンまたは肝細胞核因子6である、請求項25に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが成長ホルモンによって誘導される、請求項26に記載の方法。
- 肝臓損傷が肝臓疾患に関連する、請求項17に記載の方法。
- 肝臓疾患が、肝硬変、胆道閉鎖症、B型肝炎またはC型肝炎である、請求項28に記載の方法。
- 肝臓損傷が微生物の感染から生じるか、または化学的トキシンもしくは環境的トキシンにさらされたことから生じる、請求項17に記載の方法。
- 肝臓損傷が、ウイルス、寄生虫、アルコール、タバコ、アセトアミノフェン、吸入麻酔剤、アフロトキシン、アリルアルコール、四塩化炭素、またはそれらの任意の組合せにさらされたことから生じる、請求項30に記載の方法。
- 哺乳動物における肝臓再生を刺激する方法であって、FoxM1Bタンパク質を発現する哺乳動物内の肝臓細胞を成長ホルモンと接触させる工程を含む方法。
- 肝臓細胞が、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、制御配列に機能的に連結されて含む組換え核酸構築物を肝臓細胞内に含み、それにより、肝臓細胞がFoxM1Bタンパク質を発現する、請求項32に記載の方法。
- 制御配列が肝臓特異的プロモーター配列である、請求項33に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが、ヒトα1−アンチトリプシン、マウスα1−アンチトリプシン、アルブミンプロモーター、血清アミロイドA、トランスチレチンまたは肝細胞核因子6である、請求項34に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが成長ホルモンによって誘導される、請求項35に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がベクターである、請求項33に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がウイルスベクターである、請求項37に記載の方法。
- ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターまたはワクシニアウイルスベクターである、請求項38に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がリポソーム内において哺乳動物細胞に送達される、請求項33に記載の方法。
- 哺乳動物がヒトである、請求項32に記載の方法。
- 肝臓再生を刺激する方法であって、
a.肝臓細胞を第1の哺乳動物から単離する工程;
b.配列番号2に示されるようなタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、制御配列に機能的に連結されて含む組換え核酸構築物を肝臓細胞に導入し、それにより、肝臓細胞がFoxM1Bタンパク質を発現する工程;
c.FoxM1Bタンパク質を発現する肝臓細胞を第2の哺乳動物に導入する工程;および
d.肝臓細胞におけるFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導するために十分な量のヒト成長ホルモンを第2の哺乳動物に投与する工程
を含む方法。 - FoxM1Bタンパク質を発現する肝臓細胞が第1の哺乳動物に再導入され、かつ、第1の哺乳動物が、肝臓細胞におけるFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導するために十分な量のヒト成長ホルモンで処置される、請求項42に記載の方法。
- 制御配列が肝臓特異的プロモーター配列である、請求項42に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが、ヒトα1−アンチトリプシン、マウスα1−アンチトリプシン、アルブミンプロモーター、血清アミロイドA、トランスチレチンまたは肝細胞核因子6である、請求項44に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが成長ホルモンによって誘導される、請求項45に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がベクターである、請求項42に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がウイルスベクターである、請求項47に記載の方法。
- ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターまたはワクシニアウイルスベクターである、請求項48に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がリポソーム内において哺乳動物細胞に送達される、請求項42に記載の方法。
- 第1の哺乳動物がヒトであり、かつ第2の哺乳動物がヒトである、請求項42に記載の方法。
- 哺乳動物における肝臓損傷を防止または改善する方法であって、FoxM1Bタンパク質を発現する哺乳動物の肝臓細胞を成長ホルモンと接触させる工程を含む方法。
- 哺乳動物がヒトである、請求項52に記載の方法。
- 成長ホルモンがヒト成長ホルモンである、請求項52に記載の方法。
- 肝臓細胞が、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、制御配列に機能的に連結されて含む組換え核酸構築物を含み、それにより、肝臓細胞がFoxM1Bタンパク質を発現する、請求項52に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がベクターである、請求項55に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がウイルスベクターである、請求項56に記載の方法。
- ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターまたはワクシニアウイルスベクターである、請求項57に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がリポソーム内において哺乳動物細胞に送達される、請求項55に記載の方法。
- 制御配列が肝臓特異的プロモーター配列である、請求項55に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが、ヒトα1−アンチトリプシン、マウスα1−アンチトリプシン、アルブミンプロモーター、血清アミロイドA、トランスチレチンまたは肝細胞核因子6である、請求項60に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが成長ホルモンによって誘導される、請求項61に記載の方法。
- 肝臓損傷が肝臓疾患に関連する、請求項52に記載の方法。
- 肝臓疾患が、肝硬変、胆道閉鎖症、B型肝炎またはC型肝炎である、請求項63に記載の方法。
- 肝臓損傷が微生物の感染から生じるか、または化学的トキシンもしくは環境的トキシンにさらされたことから生じる、請求項52に記載の方法。
- 肝臓損傷が、ウイルス、寄生虫、アルコール、タバコ、アセトアミノフェン、吸入麻酔剤、アフロトキシン、アリルアルコール、四塩化炭素、またはそれらの任意の組合せにさらされたことから生じる、請求項65に記載の方法。
- 患者における肝臓損傷を防止または改善する方法であって、
a.配列番号2に示されるようなタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、制御配列に機能的に連結されて含む組換え核酸構築物を有し、それにより、FoxM1Bタンパク質を発現する肝臓細胞を患者に導入する工程;および
b.FoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導するために十分な量の成長ホルモンで患者を処置する工程
を含む方法。 - 患者がヒトである、請求項67に記載の方法。
- 制御配列が肝臓特異的プロモーター配列である、請求項67に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが、ヒトα1−アンチトリプシン、マウスα1−アンチトリプシン、アルブミンプロモーター、血清アミロイドA、トランスチレチンまたは肝細胞核因子6である、請求項69に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが成長ホルモンによって誘導される、請求項70に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がベクターである、請求項67に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がウイルスベクターである、請求項72に記載の方法。
- ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターまたはワクシニアウイルスベクターである、請求項73に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がリポソーム内において哺乳動物細胞に送達される、請求項67に記載の方法。
- 受容者に移植される肝臓における肝臓損傷を防止または改善する方法であって、
a.肝臓の全体または一部分をドナーから手術によって取り出す工程;および
b.肝臓を、FoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導するために十分な量の成長ホルモンと接触させる工程
を含む方法。 - 受容者が哺乳動物であり、かつドナーが哺乳動物である、請求項76に記載の方法。
- 受容者がヒトであり、かつドナーがヒトである、請求項77に記載の方法。
- 成長ホルモンがヒト成長ホルモンである、請求項78に記載の方法。
- 肝臓の全体または一部分をドナーから手術によって取り出すことに先立ち、ドナーが、肝臓におけるFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導するために十分な量の成長ホルモンで処置され、そして肝臓の全体または一部分がドナーから取り出された後、ドナーが、肝臓におけるFoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導するために十分な量の成長ホルモンで処置される、請求項76に記載の方法。
- 成長ホルモンがヒト成長ホルモンである、請求項80に記載の方法。
- 肝臓の全体または一部分をドナーから手術によって取り出すことに先立ち、ドナーが、肝臓におけるFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導するために十分な量の成長ホルモンで処置され、そして肝臓の全体または一部分がドナーから取り出された後、ドナーが、肝臓におけるFoxM1Bタンパク質の発現および核局在化を誘導するために十分な量の成長ホルモンで処置される、請求項76に記載の方法。
- 成長ホルモンがヒト成長ホルモンである、請求項82に記載の方法。
- 肝臓が、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、制御配列に機能的に連結されて含む組換え核酸構築物を含み、それにより、肝臓がFoxM1Bタンパク質を発現する、請求項76に記載の方法。
- 制御配列が肝臓特異的プロモーター配列である、請求項84に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが、ヒトα1−アンチトリプシン、マウスα1−アンチトリプシン、アルブミンプロモーター、血清アミロイドA、トランスチレチンまたは肝細胞核因子6である、請求項85に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが成長ホルモンによって誘導される、請求項86に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がベクターである、請求項84に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がウイルスベクターである、請求項88に記載の方法。
- ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターまたはワクシニアウイルスベクターである、請求項89に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がリポソーム内において哺乳動物細胞に送達される、請求項84に記載の方法。
- 哺乳動物細胞におけるFoxM1Bの発現を誘導する化合物についてスクリーニングする方法であって、この場合、FoxM1Bタンパク質を核内に転位させることができ、
a.FoxM1B遺伝子を含み、FoxM1Bタンパク質が通常の培養条件のもとでは発現されない多数の細胞を成長ホルモンの存在下で候補化合物と接触させる工程、
b.FoxM1B遺伝子を含み、FoxM1Bタンパク質が通常の培養条件のもとでは発現されない多数の細胞を成長ホルモンの非存在下で該候補化合物と接触させる工程、および
c.工程(a)および工程(b)から得られる細胞におけるFoxM1Bの発現および局在化をアッセイする工程
を含み、
FoxM1Bが、工程(a)から得られる細胞の核および工程(b)から得られる細胞の細胞質に局在化する場合、候補化合物が同定される、方法。 - 肝臓細胞が、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、制御配列に機能的に連結されて含む組換え核酸構築物を含み、それにより、肝臓細胞がFoxM1Bタンパク質を発現する、請求項92に記載の方法。
- 制御配列が肝臓特異的プロモーター配列である、請求項93に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが、ヒトα1−アンチトリプシン、マウスα1−アンチトリプシン、アルブミンプロモーター、血清アミロイドA、トランスチレチンまたは肝細胞核因子6である、請求項94に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが成長ホルモンによって誘導される、請求項95に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がベクターである、請求項93に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がウイルスベクターである、請求項97に記載の方法。
- ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターまたはワクシニアウイルスベクターである、請求項98に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がリポソーム内において哺乳動物細胞に送達される、請求項93に記載のベクター。
- 請求項92において選択される化合物を含む薬学的組成物。
- 肝臓損傷を有する哺乳動物を処置する方法であって、請求項101に記載される薬学的組成物の一定量を成長ホルモンとの組合わせで哺乳動物に投与することを含む方法。
- 肝臓損傷が肝臓疾患によって引き起こされる、請求項102に記載の方法。
- 肝臓疾患が、肝硬変、胆道閉鎖症、B型肝炎またはC型肝炎である、請求項103に記載の方法。
- 肝臓損傷が微生物の感染から生じるか、または化学的トキシンもしくは環境的トキシンにさらされたことから生じる、請求項102に記載の方法。
- 肝臓損傷が、ウイルス、寄生虫、アルコール、タバコ、アセトアミノフェン、吸入麻酔剤、アフロトキシン、アリルアルコール、四塩化炭素、またはそれらの任意の組合せにさらされたことから生じる、請求項105に記載の方法。
- 哺乳動物がヒトである、請求項102に記載の方法。
- 成長ホルモンがヒト成長モルモンである、請求項102に記載の方法。
- FoxM1Bタンパク質の核局在化を誘導する化合物についてスクリーニングする方法であって、
a.FoxM1Bタンパク質を発現する細胞を候補化合物と接触させる工程、および
b.細胞におけるFoxM1Bタンパク質の局在化を調べる工程
を含み、
FoxM1Bタンパク質が細胞の核に局在化する場合、候補化合物が同定される、方法。 - 細胞が、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、制御配列に機能的に連結されて含む組換え核酸構築物を含み、それにより、細胞がFoxM1Bタンパク質を発現する、請求項109に記載の方法。
- 制御配列が肝臓特異的プロモーター配列である、請求項110に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが、ヒトα1−アンチトリプシン、マウスα1−アンチトリプシン、アルブミンプロモーター、血清アミロイドA、トランスチレチンまたは肝細胞核因子6である、請求項111に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが成長ホルモンによって誘導される、請求項112に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がベクターである、請求項110に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がウイルスベクターである、請求項114に記載の方法。
- ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターまたはワクシニアウイルスベクターである、請求項115に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がリポソーム内において哺乳動物細胞に送達される、請求項110に記載のベクター。
- 肝臓細胞の増殖を誘導する方法であって、FoxM1Bタンパク質を発現する肝臓細胞を成長ホルモンと接触させる工程を含む方法。
- 成長ホルモンがヒト成長ホルモンである、請求項118に記載の方法。
- 肝臓細胞が、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードする核酸配列を、制御配列に機能的に連結されて含む組換え核酸構築物を含み、それにより、肝臓細胞がFoxM1Bタンパク質を発現する、請求項118に記載の方法。
- 制御配列が肝臓特異的プロモーター配列である、請求項120に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが、ヒトα1−アンチトリプシン、マウスα1−アンチトリプシン、アルブミンプロモーター、血清アミロイドA、トランスチレチンまたは肝細胞核因子6である、請求項121に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが成長ホルモンによって誘導される、請求項122に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がベクターである、請求項120に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がウイルスベクターである、請求項124に記載の方法。
- ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターまたはワクシニアウイルスベクターである、請求項125に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がリポソーム内において肝臓細胞に導入される、請求項120に記載の方法。
- FoxM1Bタンパク質の発現および核局在化の両方を誘導する化合物についてスクリーニングする方法であって、
a.FoxM1B遺伝子を含み、FoxM1Bタンパク質を通常の培養条件のもとでは発現しない多数の細胞を候補化合物と接触させる工程、および
b.細胞におけるFoxM1Bタンパク質の発現および局在化をアッセイする工程
を含み、
FoxM1Bが、該化合物と接触していない細胞ではなく、該化合物と接触した細胞の核において発現および局在化するが、候補化合物が同定される、方法。 - 肝臓細胞が、配列番号2に示されるようなタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、制御配列に機能的に連結されて含む組換え核酸構築物を含み、それにより、肝臓細胞がFoxM1Bタンパク質を発現する、請求項128に記載の方法。
- 制御配列が肝臓特異的プロモーター配列である、請求項129に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが、ヒトα1−アンチトリプシン、マウスα1−アンチトリプシン、アルブミンプロモーター、血清アミロイドA、トランスチレチンまたは肝細胞核因子6である、請求項130に記載の方法。
- 肝臓特異的プロモーターが成長ホルモンによって誘導される、請求項131に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がベクターである、請求項129に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がウイルスベクターである、請求項133に記載の方法。
- ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターまたはワクシニアウイルスベクターである、請求項134に記載の方法。
- 組換え核酸構築物がリポソーム内において哺乳動物細胞に送達される、請求項129に記載のベクター。
- 請求項128において選択される化合物を含む薬学的組成物。
- 肝臓損傷を有する哺乳動物を処置する方法であって、請求項137に記載される薬学的組成物の一定量を哺乳動物に投与することを含む方法。
- 肝臓損傷が肝臓疾患によって引き起こされる、請求項138に記載の方法。
- 肝臓疾患が、肝硬変、胆道閉鎖症、B型肝炎またはC型肝炎である、請求項139に記載の方法。
- 肝臓損傷が微生物の感染から生じるか、または化学的トキシンもしくは環境的トキシンにさらされたことから生じる、請求項138に記載の方法。
- 肝臓損傷が、ウイルス、寄生虫、アルコール、タバコ、アセトアミノフェン、吸入麻酔剤、アフロトキシン、アリルアルコール、四塩化炭素、またはそれらの任意の組合せにさらされたことから生じる、請求項141に記載の方法。
- 哺乳動物がヒトである、請求項138に記載の方法。
- 薬学的組成物がヒト成長モルモンとの組合わせで投与される、請求項138に記載の方法。
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