本発明は、フリーピストン型スターリング冷凍機及びその制御方法に関するものであり、特に、ピストンとディスプレイサーとが圧縮室を隔てて直接対向して配されているフリーピストン型スターリング冷凍機及びその制御方法に関するものである。
従来、この種のスターリングサイクル機関は、図7に示すように、リニアモータ51により往復運動駆動させるピストン52が、シリンダ53の基端側53Aの内部を軸方向に往復動し、そして、前記ピストン52が、前記シリンダ53の先端側53Bの内部を軸方向に往復動可能に挿入されたディスプレイサー54に近付く方向に移動すると、前記ピストン52とディスプレイサー54との間に区画形成された圧縮室C内の作動ガスが圧縮されて、前記シリンダ53の先端側53Bとケース55との間に配置された排熱フィンにより形成される排熱部56、再生器57、吸熱フィンにより形成される吸熱部58を通って前記ディスプレイサー54の先端とケース55の先端部との間に形成された膨張室Eに至ると共に、前記ディスプレイサー54を押し下げる。一方、前記リニアモータ51によって、前記ピストン52が前記ディスプレイサー54から遠ざかる方向に移動すると、前記圧縮室Cの内部が負圧となり、前記膨張室E内の作動ガスが、前記膨張室Eから前記吸熱部58、再生器57、排熱部56を通って前記圧縮室Cに還流し、これにより、前記ディスプレイサー54を押し上げる。このような工程中において、二つの等温変化と等体積変化とからなる可逆サイクルが行われることで、前記吸熱部39の周辺は低温となり、一方、前記排熱部56は高温となる(例えば特許文献1)。
ところで、第1のシリンダ、該第1のシリンダの中を往復運動するピストン、前記ピストンを駆動させるリニアモータとを備えた圧縮機と、第2のシリンダ、該第2のシリンダの中を往復運動するディスプレーサ(本発明のディスプレイサーに該当)、前記ディスプレーサにより仕切られた低温室と高温室とを備えたコールドフィンガとを有する冷凍機においては、前記低温室の温度が低下するに従い前記ピストンの振幅が小さくなる傾向がある。これは、前記低温室の温度が低下するに従い、前記ピストンと圧力波の位相差が大きくなって圧縮抵抗が増加するためである。そして、前記コールドフィンガの低温室が常温から極低温まで冷却される場合、前記ピストンの振幅が徐々に小さくなり、これにより作動ガスの圧力振幅が小さくなるので、冷却速度が低下し,クールダウンタイム(常温から極低温まで冷却する時間)が長くなるという問題がある。このため、前記コールドフィンガの低温室の温度を検出する温度検出器と、この温度検出器の検出信号を入力とし低温室の温度が低いときほど前記リニアモータに印加する入力電力量が大となるように入力電力量を決定する入力電力量決定器と、この入力電力量決定器の出力に基づいた入力電力量を前記リニアモータに供給する電源とを設け、前記低温室の温度を前記温度検出器により検出し、前記入力電力量決定器が、前記温度検出器による検出信号を入力として、前記低温室の温度が低下するに従って、前記リニアモータに供給する入力電力量が増大するよう入力電力量を決定し、この決定に対応した入力電力量を前記電源から前記リニアモータに供給することで、前記ピストンの振幅を前記低温室の温度が低下しても小さくさせず、クールダウンタイムを短縮することができるものが公知である(例えば特許文献2)。これは、逆に言えば、前記リニアモータへの入力電力量が同じであるならば、前記コールドフィンガの低温室の温度が高いほど前記ピストンの振幅が大きくなることを意味する。
特開2001−355513号公報
特公平7−88985号公報
前記図7で示したフリーピストンスターリング冷凍機においては、前記リニアモータ51への入力電力量が同じであっても、前記排熱部56と吸熱部58の温度差が小さいほど、前記ピストン52とディスプレイサー54が衝突しやすくなるという問題がある。これは、例えば起動時、又は熱負荷が変化した時(冷却対象が追加されたり冷却対象が発熱したりすることによる)、又は排熱条件や使用環境等で前記排熱部56と吸熱部58の温度差が小さい場合、前記ピストン52及びディスプレイサー54の振幅が大きくなると共に、前記ピストン52とディスプレイサー54の位相差が大きくなってしまうことに起因する。また、前記フリーピストン型スターリング冷凍機においては、前記リニアモータ51への入力電力量が同じで、なお且つ前記排熱部56と吸熱部58の温度差が同じであったとしても、前記排熱部56と吸熱部58の温度が共に低いほど前記ピストン52とディスプレイサー54が衝突しやすくなるという問題がある。従って、前記吸熱部58の温度に基づいて前記リニアモータ51への入力電力量を制御するだけでは、前記ピストン52とディスプレイサー54、或いは前記ケース55の先端とディスプレイサー54が衝突してしまう虞があった。
本発明が解決しようとする問題点は、フリーピストン型スターリング冷凍機において、リニアモータにより駆動するピストンと該ピストンによる圧縮流体により連動して往復運動するディスプレイサーの相互の衝突或いは前記ピストン及び/又はディスプレイサーと他の部位との衝突等を抑止できるフリーピストン型スターリング冷凍機及びその制御方法を提供する点である。
請求項1の発明は、シリンダと、このシリンダの基端側内部に挿入されるピストンと、前記シリンダの先端側内部に挿入されるディスプレイサーと、前記ピストンを前記シリンダ内で往復運動させるリニアモータと、前記ディスプレイサーの先端側に区画された膨張室の周囲に形成される吸熱部と、前記ピストンとディスプレイサーとの間に区画された圧縮室の周囲に形成される排熱部とを備えたフリーピストン型スターリング冷凍機において、前記吸熱部の温度又は該吸熱部の温度と相関のある物理量を検出する吸熱部状態検出手段と、前記排熱部の温度又は該排熱部の温度と相関のある物理量を検出する排熱部状態検出手段と、前記リニアモータと前記吸熱部状態検出手段と前記排熱部状態検出手段に接続された制御手段を備え、前記吸熱部状態検出手段の検出結果と前記排熱部状態検出手段の検出結果に応じて前記制御手段が前記リニアモータの駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を制御することを特徴とするフリーピストン型スターリング冷凍機である。
請求項2の発明は、シリンダと、このシリンダの基端側内部に挿入されるピストンと、前記シリンダの先端側内部に挿入されるディスプレイサーと、前記ピストンを前記シリンダ内で往復運動させるリニアモータと、前記ディスプレイサーの先端側に区画された膨張室の周囲に形成される吸熱部と、前記ピストンとディスプレイサーとの間に区画された圧縮室の周囲に形成される排熱部とを備えたフリーピストン型スターリング冷凍機において、前記吸熱部の温度又は該吸熱部の温度と相関のある物理量を検出する吸熱部状態検出手段の検出結果と、前記排熱部の温度又は該排熱部の温度と相関のある物理量とを検出する排熱部状態検出手段の検出結果に応じて前記リニアモータの駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を制御することを特徴とするフリーピストン型スターリング冷凍機の制御方法である。
請求項3の発明は、シリンダと、このシリンダの基端側内部に挿入されるピストンと、前記シリンダの先端側内部に挿入されるディスプレイサーと、前記ピストンを前記シリンダ内で往復運動させるリニアモータと、前記ディスプレイサーの先端側に区画された膨張室の周囲に形成される吸熱部と、前記ピストンとディスプレイサーとの間に区画された圧縮室の周囲に形成される排熱部とを備えたフリーピストン型スターリング冷凍機において、前記吸熱部の温度又は該吸熱部の温度と相関のある物理量を検出する吸熱部状態検出手段と、前記排熱部の温度又は該排熱部の温度と相関のある物理量を検出する排熱部状態検出手段と、前記リニアモータと前記吸熱部状態検出手段と前記排熱部状態検出手段に接続された制御手段を備え、前記吸熱部状態検出手段の検出結果と前記排熱部状態検出手段の検出結果との差に応じて前記制御手段は前記リニアモータの駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を制御することを特徴とするフリーピストン型スターリング冷凍機である。
請求項4の発明は、シリンダと、このシリンダの基端側内部に挿入されるピストンと、前記シリンダの先端側内部に挿入されるディスプレイサーと、前記ピストンを前記シリンダ内で往復運動させるリニアモータと、前記ディスプレイサーの先端側に区画された膨張室の周囲に形成される吸熱部と、前記ピストンとディスプレイサーとの間に区画された圧縮室の周囲に形成される排熱部とを備えたフリーピストン型スターリング冷凍機において、前記吸熱部の温度又は該吸熱部の温度と相関のある物理量を検出する吸熱部状態検出手段の検出結果と、前記排熱部の温度又は該排熱部の温度と相関のある物理量とを検出する排熱部状態検出手段の検出結果との差に応じて前記リニアモータの駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を制御することを特徴とするフリーピストン型スターリング冷凍機の制御方法である。
請求項5の発明は、シリンダと、このシリンダの基端側内部に挿入されるピストンと、前記シリンダの先端側内部に挿入されるディスプレイサーと、前記ピストンを前記シリンダ内で往復運動させるリニアモータと、前記ディスプレイサーの先端側に区画された膨張室の周囲に形成される吸熱部と、前記ピストンとディスプレイサーとの間に区画された圧縮室の周囲に形成される排熱部とを備えたフリーピストン型スターリング冷凍機において、前記吸熱部と排熱部の温度差と相関のある物理量を検出する差分検出手段と、前記リニアモータと前記差分検出手段に接続された制御手段を備え、前記差分検出手段の検出結果に応じて前記制御手段は前記リニアモータの駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を制御することを特徴とするフリーピストン型スターリング冷凍機である。
請求項6の発明は、請求項5において、前記差分検出手段が、一端を前記吸熱部又はその近傍に対して熱的に接触させると共に他端を前記排熱部又はその近傍に対して熱的に接触させた熱電対であることを特徴とするフリーピストン型スターリング冷凍機である。
請求項7の発明は、シリンダと、このシリンダの基端側内部に挿入されるピストンと、前記シリンダの先端側内部に挿入されるディスプレイサーと、前記ピストンを前記シリンダ内で往復運動させるリニアモータと、前記ディスプレイサーの先端側に区画された膨張室の周囲に形成される吸熱部と、前記ピストンとディスプレイサーとの間に区画された圧縮室の周囲に形成される排熱部とを備えたフリーピストン型スターリング冷凍機において、前記吸熱部と排熱部の温度差と相関のある物理量を検出する差分検出手段の検出結果に応じて前記リニアモータの駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を制御することを特徴とするフリーピストン型スターリング冷凍機の制御方法である。
請求項8の発明は、請求項7において、前記差分検出手段が熱電対であり、前記吸熱部又はその近傍に対して熱的に接触する前記熱電対の一端と、前記排熱部又はその近傍に対して熱的に接触する前記熱電対の他端との温度差に応じた電圧に基づいて前記制御手段によって駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を制御することを特徴とするフリーピストン型スターリング冷凍機の制御方法である。
請求項1の発明によれば、前記吸熱部状態検出手段による前記吸熱部の温度又はこれと相関のある物理量の検出結果と、前記排熱部状態検出手段による前記排熱部の温度又はこれと相関のある物理量の検出結果に応じて、前記リニアモータの駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を制御する前記制御手段により、前記リニアモータの起動時などにおいて前記ピストンとディスプレイサーが相互に衝突すること、或いは前記ピストン及び/又はディスプレイサーが他の部位と衝突すること等を阻止することができる。
請求項2の発明によれば、前記吸熱部状態検出手段による前記吸熱部の温度又はこれと相関のある物理量の検出結果と、前記排熱部状態検出手段による前記排熱部の温度又はこれと相関のある物理量の検出結果に応じて、前記リニアモータの駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を制御することにより、前記リニアモータの起動時などにおいて前記ピストンとディスプレイサーが相互に衝突すること、或いは前記ピストン及び/又はディスプレイサーが他の部位と衝突すること等を阻止することができる。
請求項3の発明によれば、前記吸熱部状態検出手段による前記吸熱部の温度又はこれと相関のある物理量の検出結果と、前記排熱部状態検出手段による前記排熱部の温度又はこれと相関のある物理量の検出結果との差に応じて、前記リニアモータの駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を制御する前記制御手段により、前記リニアモータの起動時などにおいて前記ピストンとディスプレイサーが相互に衝突すること、或いは前記ピストン及び/又はディスプレイサーが他の部位と衝突すること等を阻止することができる。
請求項4の発明によれば、前記吸熱部状態検出手段による前記吸熱部の温度又はこれと相関のある物理量の検出結果と、前記排熱部状態検出手段による前記排熱部の温度又はこれと相関のある物理量の検出結果との差に応じて、前記リニアモータの駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を制御することにより、前記リニアモータの起動時などにおいて前記ピストンとディスプレイサーが相互に衝突すること、或いは前記ピストン及び/又はディスプレイサーが他の部位と衝突すること等を阻止することができる。
請求項5の発明によれば、前記差分検出手段による前記吸熱部と排熱部の温度差と相関のある物理量の検出結果に応じて、前記リニアモータの駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を制御する前記制御手段により、前記リニアモータの起動時などにおいて前記ピストンとディスプレイサーが相互に衝突すること、或いは前記ピストン及び/又はディスプレイサーが他の部位と衝突すること等を阻止することができる。
請求項6の発明によれば、前記差分検出手段として熱電対を用いたことで、検出系の構造を単純化することができると共に、前記熱電対から前記制御手段に入力される電圧のみによって駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を演算すればよいので、前記制御手段の回路構成も単純化することができる。
請求項7の発明によれば、前記差分検出手段による前記吸熱部と排熱部の温度差と相関のある物理量の検出結果に応じて、前記リニアモータの駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を制御することにより、前記リニアモータの起動時などにおいて前記ピストンとディスプレイサーが相互に衝突すること、或いは前記ピストン及び/又はディスプレイサーが他の部位と衝突すること等を阻止することができる。
請求項6の発明によれば、前記差分検出手段として熱電対を用いたことで、前記熱電対から前記制御手段に入力される電圧のみによって駆動電力、電圧又は電流の少なくとも一つの上限値を容易に演算することができる。
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
図1及び図2において、1は略円筒状に形成された円筒部2と胴部3とで構成されるケーシングである。前記円筒部2はステンレス鋼などからなり、基部4と中間部5と先端部6が一体に構成されている。また、前記胴部3と同軸状(軸線Z)に、シリンダ7が配置されると共に、このシリンダ7は、前記円筒部2の内部に、この円筒部2と同軸状(軸線Z)に延びて配置されている。なお、前記シリンダ7は、後述する連通孔11を挟んで、基端側7Aが前記胴部3から前記円筒部2の基部4にかけて内部に配置されていると共に、先端側7Bが前記円筒部2の基部4から中間部5にかけて内部に配置されている。更に、前記シリンダ7の先端側7Bの先端には、前記シリンダ7と同軸に延長シリンダ7Cが取り付けられている。そして、前記シリンダ7は、アルミニウム等の金属を用いてダイカスト等の鋳造を行うことによって、後述するマウント26,27及び接続用腕部30と一体に成形されたものであり、その基端側7Aと先端側7Bとが同軸で且つ同径に連通している。すなわち、単一のシリンダ7の中間位置に形成された連通孔11を挟んで、前記基端側7Aと先端側7Bとが定義付けられている。そして、前記シリンダ7は、鋳造後にその内外周などを切削、研磨加工することで形成される。そして、前記シリンダ7の先端側7B及び前記延長シリンダ7Cの内側には、ディスプレイサー8が前記シリンダ7の軸方向に摺動可能な状態で収容されている。また、前記ディスプレイサー8の先端と前記円筒部2の先端部6との間には膨張室Eが形成されており、前記先端部6の内面と前記延長シリンダ7Cの先端との間に形成された隙間9によって、前記シリンダ7の先端側7Bに取り付けられた延長シリンダ7Cの内外が連通されている。また、前記中間部5において、前記円筒部2の内周と前記シリンダ7の先端側7B及び前記延長シリンダ7Cの外周との間に再生器10が設けられていると共に、前記基部4の内側において、前記シリンダ7の内外を連通する連通孔11が形成されている。また、前記円筒部2の先端部6の内面と前記延長シリンダ7Cの先端外面との間には、フィン状の吸熱部12が設けられると共に、前記再生器10と連通孔11の間において、前記円筒部2の基端部4の内面と前記シリンダ7の外面との間に、フィン状の排熱部13が設けられている。尚、前記吸熱部12側は冷蔵室R等の熱負荷に臨むように設けられる。そして、前記延長シリンダ7Cの内部先端から前記隙間9、吸熱部12、再生器10、排熱部13、連通孔11を通って前記シリンダ7内の圧縮室Cに至る経路14が形成されている。さらに、前記胴部3内において、前記シリンダ7の基端側7Aの内側には、ピストン15が前記シリンダ7の軸方向に摺動可能に収容されている。そして、このピストン15の基端部は、リニアモータ16に対して同軸的に連結されている。尚、このリニアモータ16は、前記ピストン15の基端に対して接続体15Aによって接続されていると共に、前記シリンダ7の基端側7Aの外周に同軸状に延設された短筒状の枠17と、この枠17の先端側に固定された短円筒状の永久磁石18と、この永久磁石18の外周に近接して設けられた環状の電磁コイル19と、前記永久磁石18の内周に近接して設けられた導磁部18Aとで構成されている。そして、前記シリンダ7の基端側7Aと、その中で往復運動する前記ピストン15と、このピストン15を往復駆動させる前記リニアモータ16等により圧縮機20が形成される。
また、前記ピストン15に枠17を接続させる前記接続体15Aには、前記ピストン15の動作を制御するための第1の板バネ21が接続されている。さらに、前記ディスプレイサー8の基端側には、このディスプレイサー8の動作を制御するためのロッド22の一端が接続されていると共に、このロッド22の他端には第2の板バネ23が接続されている。尚、前記ロッド22は前記ピストン15及び接続体15Aを貫通して延びている。また、前記一対の板バネ21,23は、前記胴部3内において前記シリンダ7の基端側7Aの外部に配置されていると共に、前記第1の板バネ21よりも第2の板バネ23が前記シリンダ7の基端側7Aから離れた位置に配置されている。
前記リニアモータ16について詳述する。このリニアモータ16を構成する前記導磁部18Aは円筒状に形成されている。また、前記電磁コイル19は電磁コア24に巻かれるように設けられている。この電磁コア24は第1の電磁コア24Aと第2の電磁コア24Bとに分割して構成されている。これら第1及び第2の電磁コア24A,24Bは内側及び外側にそれぞれフランジ部25A,25Bを有し、それぞれ断面形状ほぼコ字型に成形されている。そして、前記第1及び第2の電磁コア24A,24Bの内側に電磁コイル19を配置すると共に、前記第1及び第2の電磁コア24A,24Bのそれぞれのフランジ部25A,25B同士を突き合せることで、前記電磁コア24を前記電磁コイル19等と共に一体化している。尚、前記電磁コア24を構成する第1及び第2の電磁コア24A,24B及び前記導磁部18Aは、例えば絶縁体である合成樹脂で予め被覆された強磁性体である鉄粉を適宜形状に成形した後、これを焼結することで、前記第1及び第2の電磁コア24A,24Bと円筒状の導磁部18Aをそれぞれ一体形成している。そして、このように前記電磁コア24及び導磁部18Aを合成樹脂と鉄粉とで一体形成することで、前記電磁コイル19から発生した磁力線によって前記電磁コア24及び導磁部18A内の鉄粉に渦電流が流れようとしても、前記各鉄粉同士が前記合成樹脂によって絶縁されていることで、複数の鉄粉に渡って渦電流が流れることが防止される。
また、前記シリンダ7の中間部の外周面には、該シリンダ7と同軸状に突出するマウント26が一体に形成されていると共に、このマウント26よりも基端寄りの位置に、フランジ状のマウント27が前記第2のシリンダ7と一体に成形されている。これら一対のマウント26,27は間隔をおいて配置されていると共に、前記マウント26は、前記円筒部2の基部4の内面にO−リング26Aを介して当接することで、前記シリンダ7をケーシング1の円筒部2に固定する。一方、前記マウント27は、その一側面27Aが前記胴部3内部の取付部3Aに当接してこの取付部3Aに対して螺子止めされるように構成されていると共に、その他側面27Bに前記リニアモータ16を構成する電磁コア24の一端が当接するように形成されている。また、前記電磁コア24の他端には固定リング28が当接しており、この固定リング28と前記マウント27とで前記電磁コア24を挟持してビス29によって締め付けることによって、前記電磁コア24、ひいてはこの電磁コア24と一体化している前記電磁コイル19が前記マウント27に固定される。さらに、前記マウント27の他側面27Bから、複数の接続用腕部30が前記シリンダ7の軸方向と略平行に突設されている。尚、前記接続用腕部30は、基端30Aにおいて前記マウント27と一体に形成されている。また、前記接続用腕部30の先端面30Bは、前記シリンダ7の軸方向と直交するように同一面上に形成されており、この先端面30Bに雌螺子を有する螺子孔30Cが前記シリンダ7の軸方向と平行に形成されている。
前記先端面30Bには、前記第一の板バネ21が当接する。この第一の板バネ21は、前記先端面30Bに当接した状態で前記腕部30とスペーサー31との間で挟持される。尚、前記スペーサー31は、その本体31Aが正六角柱状に形成されており、その一端に前記螺子孔30Cの雌螺子と螺合する雄螺子31Bが前記本体31Aと同軸に形成されていると共に、その他端面31Cに雌螺子を有する螺子孔31Dが前記本体31Aと同軸に形成されている。そして、前記第一の板バネ21の外周部に形成された螺子孔21Aを介して、前記スペーサー31の一端の雄螺子31Bを腕部30の螺子孔30Cの雌螺子と螺合させることで、前記第一の板バネ21が前記腕部30とスペーサー31との間で挟持される。このとき、前記スペーサー31の本体31Aが正六角柱状に形成されているので、スパナ等で締め付けることで簡単に前記腕部30に取り付けられる。また、複数の前記先端面30Bが前記シリンダ7の軸方向と直交するように同一面上に形成されているため、これらの先端面30Bに当接する前記第一の板バネ21も前記シリンダ7の軸方向に対して直交することになる。さらに、前記スペーサー31が複数の前記腕部30にそれぞれ取り付けられた状態において、前記スペーサー31の他端面31Cは、前記シリンダ7の軸方向と直交するように同一面上に形成されており、この他端面31Cに前記第二の板バネ23が当接する。そして、この第二の板バネ23は、前記他端面31Cに当接した状態で、前記第二の板バネ23の外周部に形成された螺子孔23Aを介して、ビス32を前記スペーサー31の螺子孔31Dの雌螺子と螺合させることで、前記第二の板バネ23が前記スペーサー31に固定される。
尚、図中33は前記ケーシング1の他端に設けられた振動吸収ユニットであり、前記シリンダ7の軸線上に配置された連結部を介して同軸状に複数の板バネ34とバランスウエイト35が重なるように配置されている。
さらに、前記吸熱部12又はその近傍に吸熱部状態検出手段36が設けられている。この吸熱部状態検出手段36は、前記吸熱部12の温度を測定する温度センサ又は該吸熱部12の温度と相関のある物理量(例えば、前記吸熱部12と熱的に接触する要素又は前記吸熱部12周囲の温度、或いは冷却される空間内の圧力等)を検出する手段によって形成される。また、前記排熱部13又はその近傍に排熱部状態検出手段37が設けられている。この排熱部状態検出手段37は、前記排熱部13の温度を測定する温度センサ又は該排熱部13の温度と相関のある物理量(例えば、前記排熱部13と熱的に接触する要素又は前記排熱部13周囲の温度、或いは前記排熱部13を冷却する手段の一つである冷却液の体積変化等)を検出する手段によって形成される。なお、以後の説明では、説明の簡略化のため、前記吸熱部12及び排熱部13で測定される物理量を温度とし、駆動電力を制御するものとする。そして、これら吸熱部状態検出手段36と排熱部状態検出手段37は、制御手段38に接続されている。また、前記制御手段38には、交流等の電源39が接続されている。さらに、前記制御手段38は前記リニアモータ16の電磁コイル19に接続されている。そして、前記制御手段38は、前記吸熱部状態検出手段36からの温度データ及び前記排熱部状態検出手段37からの温度データを入力とし、これらの温度データに基づいて、前記電源39からの電力を変換して駆動電力とし、前記電磁コイル16に出力する。
図2は、横軸を前記吸熱部12の温度とし、縦軸を前記リニアモータ16の駆動電力とした場合における、前記排熱部13の各温度において前記ピストン15を前記ディスプレイサー8に衝突させないように、また前記ディスプレイサー8を前記円筒部2の先端部6の内面に衝突させないように、更に前記ピストン15を前記シリンダ7の基端側7Aに衝突させないように、前記リニアモータ16を駆動するための駆動電力の上限値を示している。そして、前述したように、前記制御手段38は、前記吸熱部状態検出手段36によって検出された温度と前記排熱部状態検出手段37によって検出された温度に応じて、前記リニアモータ16の電磁コイル19の駆動電力値を制御するものであって、前記ピストン15が前記ディスプレイサー8に衝突しないようにするために、駆動電力の上限値を越えないように制御する。例えば、下段の曲線を前記排熱部13の温度が10℃における駆動電力の上限値のグラフ、中段の曲線を前記排熱部13の温度が20℃における駆動電力の上限値のグラフ、上段の曲線を前記排熱部13の温度が30℃における駆動電力の上限値のグラフとすると、前記吸熱部12の温度が0℃のとき、前記排熱部13の温度が10℃、20℃、30℃の場合では、駆動電力の上限値は、横軸における温度0℃の位置からの垂直線と各グラフとの交点における縦軸の値であり、それぞれa,b,cとなる。また、例えば、前記吸熱部12の温度が10℃で排熱部13の温度が10℃の場合、駆動電力の上限値は、横軸における温度10℃の位置からの垂直線と前記排熱部13の温度が10℃のグラフとの交点における縦軸の値であり、dとなる。なお、前記排熱部13の温度が10℃の場合で比較すると、前記吸熱部12の温度が0℃の場合における駆動電力の上限値aは、前記吸熱部12の温度が10℃の場合における駆動電力の上限値dよりも大きくなっている。更に、前記吸熱部12の温度が0℃よりも低く、前記排熱部13の温度が10℃である場合、駆動電力の上限値がaよりも高くなることはグラフから読み取ることができる。そして、このような前記吸熱部12の温度と前記排熱部13の温度と、これらの温度に対応する前記リニアモータ16の駆動電力の上限値が、予め前記制御手段38に記憶されている。詳述すると、前記制御手段38には、前記図2のような駆動電力の上限値データを記憶する記憶部38Aと、前記吸熱部状態検出手段36の検出結果と前記排熱部状態検出手段37の検出結果を入力とし、これらの検出結果(温度)と前記記憶部38Aに記憶されているデータを比較して、前記制御手段38からリニアモータ16へ出力する駆動電力の上限値を決定する比較演算部38Bと、この比較演算部38Bの演算結果に基づいて、前記電源39からの電力を前記駆動電力の上限値の範囲内で制御して前記制御手段38からリニアモータ16へ出力する駆動部38Cが備えられている。
そして、前記構成により、前記電磁コイル19に交流電流を流すと、この電磁コイル19から交番磁界が発生して前記電磁コア24で集中し、この交番磁界によって、前記永久磁石18を軸方向に往復動させる力が生じる。この力によって、前記永久磁石18が固定された前記枠17に接続された前記ピストン15が前記シリンダ7の基端側7A内を軸方向に往復動する。このため、前記ピストン15が前記ディスプレイサー8に近付く方向に移動すると、前記ピストン15とディスプレイサー8との間で区画された前記圧縮室C内の作動ガスが圧縮されて、前記連通孔11、排熱部13、再生器10、吸熱部12、隙間9を通り、前記ディスプレイサー8の先端と円筒部2の先端部6の間に形成された膨張室Eに至ることで、前記ディスプレイサー8が前記ピストン15に対して所定の位相差をもって押し下げられる。一方、前記ピストン15が前記ディスプレイサー8から遠ざかる方向に移動すると、前記圧縮室Cの内部が負圧となり、前記膨張室E内の作動ガスが前記膨張室Eから前記隙間9、吸熱部12、再生器10、排熱部13、連通孔11を通って前記圧縮室Cに還流することで、前記ディスプレイサー8が前記ピストン15に対して所定の位相差をもって押し上げられる。このような工程中において二つの等温変化と等体積変化とからなる可逆サイクルが行われることによって、前記膨張室Eの近傍は低温となり、一方、前記圧縮室Cの近傍は高温となる。
そして、例えば起動時などにおいて前記吸熱部12と排熱部13との温度差が小さい場合、前記ピストン15とディスプレイサー8の振幅が大きくなると共に位相差が大きくなるため、両者が衝突する虞があるばかりでなく、前記ディスプレイサー8と前記円筒部2の先端部6の内面が衝突する虞があるが、前述したように、前記吸熱部12の温度と前記排熱部13の温度に基づいて駆動電力の上限値が演算され、この上限値の範囲内の電力で前記リニアモータ16が駆動されるので、前記ピストン15がディスプレイサー8に衝突することなく、また前記ディスプレイサー8が前記円筒部2の先端部6の内面に衝突したり、前記ピストン15が前記シリンダ7の基端側7Aに衝突したりすることなく、冷蔵室R等の熱負荷を冷却することが可能となる。例えば、前記リニアモータ16の始動時における前記吸熱部12の温度が10℃で前記排熱部13の温度が10℃、両者の温度差が0℃である場合、算出される駆動電力の上限値はdとなり、この値d以下の電力を前記制御手段38からリニアモータ16に出力する。この値d以下の駆動電力では、往復動する前記ピストン15及びこのピストン15に従動する前記ディスプレイサー8の振幅が、これらが相互に衝突しない程度に、また前記ディスプレイサー8が前記円筒部2の先端部6の内面に衝突しない程度に小さく抑制される。そして、前記吸熱部12の温度が低下して−20℃となり、前記排熱部13の温度が上昇して30℃となった場合、算出される駆動電力の上限値はe(>d)となり、この値e以下の電力を前記制御手段38からリニアモータ16に出力する。そしてこの場合、値dよりも高い値eの駆動電力を前記制御手段38からリニアモータ16に出力したとしても、前記吸熱部12と排熱部13との温度差が大きくなっていることによって、前記ピストン15とディスプレイサー8の位相差が小さくなっており、また、前記ピストン15及びディスプレイサー8の振幅が抑制されるので、これらが衝突しない。
以上のように構成されるフリーピストン型スターリング冷凍機において、前記吸熱部12の温度又はこれと相関のある物理量を検出する吸熱部状態検出手段36と、前記排熱部13の温度又はこれと相関のある物理量とを検出する排熱部状態検出手段37と、前記リニアモータ16と前記吸熱部状態検出手段36と前記排熱部状態検出手段37に接続された制御手段38を備え、前記吸熱部状態検出手段36の検出結果と前記排熱部状態検出手段37の検出結果に応じて前記制御手段38が前記リニアモータ16の駆動電力の上限値を制御することで、起動時等、前記吸熱部12と排熱部13の温度差が小さい場合において、前記ピストン15とディスプレイサー8が衝突すること、或いは前記ディスプレイサー8が前記円筒部2の先端部6の内面と衝突したり、前記ピストン15が前記シリンダ7の基端側7Aに衝突したりすることを阻止することができる。
また、前記制御手段38には、図2に示されるような駆動電力の上限値データを記憶する記憶部38Aと、この記憶部38Aに記憶されているデータと、前記吸熱部状態検出手段36の検出結果と前記排熱部状態検出手段37の検出結果とを比較して前記リニアモータ16の駆動電力の上限値を決定する比較演算部38Bと、この比較演算部38Bの演算結果に基づいて前記電源39からの電力を制御して前記制御手段38からリニアモータ16へ駆動電力を出力する駆動部38Cを備えていることにより、前記制御手段38の制御により確実に前記ピストン15がディスプレイサー8に衝突すること、或いは前記ディスプレイサー8が前記円筒部2の先端部6の内面と衝突したり、前記ピストン15が前記シリンダ7の基端側7Aに衝突したりすることを阻止することができる。
本発明の実施例2について、図1及び図3を参照して説明する。この実施例2は、横軸を前記吸熱部12の温度とし、縦軸を前記リニアモータ16の駆動電力とした場合における、前記排熱部13の各温度において前記ピストン15を前記ディスプレイサー8に衝突させないように、また前記ディスプレイサー8を前記円筒部2の先端部6の内面に衝突させないように、更に前記ピストン15を前記シリンダ7の基端側7Aに衝突させないように、前記リニアモータ16を駆動するための駆動電力の上限値を示したものにおいて、駆動電力の最大値e´を設定したものであり、この最大値e´以下の範囲で前記駆動電力の上限値が決定されるものである。このため、前記実施例1において上限値がeとなる条件であっても、上限値が最大値e´となり、この値がeよりも小さくなる場合が生じ得る。
以上のように構成されるフリーピストン型スターリング冷凍機において、前記制御手段38には、図3に示されるような駆動電力の上限値データを記憶する記憶部38Aと、この記憶部38Aに記憶されているデータと、前記吸熱部状態検出手段36の検出結果と前記排熱部状態検出手段37の検出結果とを比較して前記リニアモータ16の駆動電力の上限値を決定すると共に、前記駆動電力の上限値が最大値e´に達した後は、以後前記吸熱部12の温度が低下しても前記駆動電力の上限値を一定の最大値e´とする比較演算部38Bと、この比較演算部38Bの演算結果に基づいて前記電源39からの電力を制御して前記制御手段38からリニアモータ16へ駆動電力を出力する駆動部38Cを備えていることにより、前記制御手段38の制御により確実に前記ピストン15がディスプレイサー8に衝突すること、或いは前記ディスプレイサー8が前記円筒部2の先端部6の内面と衝突したり、前記ピストン15が前記シリンダ7の基端側7Aに衝突したりすることを阻止することができる。
本発明の実施例3について、図1及び図4を参照して説明する。この実施例3は、図4に示すように、横軸を前記吸熱部12と排熱部13の温度差とし、縦軸を前記リニアモータ16の駆動電力とした場合における、前記ピストン15をディスプレイサー8と衝突させないように、また前記ディスプレイサー8を前記円筒部2の先端部6の内面に衝突させないように、更に前記ピストン15を前記シリンダ7の基端側7Aに衝突させないように、前記リニアモータ16を駆動するための駆動電力の上限を示したものであり、この駆動電力の上限が、なだらかな曲線状となって増加する傾向が示されている。なお、前記吸熱部12と排熱部13の温度差とは、前記排熱部13の温度から前記吸熱部12の温度を引いた値であり、前記排熱部13の温度が前記吸熱部12の温度よりも低い場合は、その値がマイナスとなる。そして、前述したように、前記制御手段38は、前記吸熱部状態検出手段36によって検出された温度と前記排熱部状態検出手段37によって検出された温度との差に応じて、前記リニアモータ16の駆動電力の上限値を算出し、この上限値以内の駆動電力で前記リニアモータ16を制御することで、前記ピストン15が前記ディスプレイサー8に衝突しないように、或いは前記ディスプレイサー8が前記円筒部2の先端部6の内面と衝突したり、前記ピストン15が前記シリンダ7の基端側7Aに衝突したりしないように、前記リニアモータ16を駆動制御する。例えば、前記吸熱部12の温度が10℃であり、前記排熱部13の温度が10℃の場合では、両者の温度差が0℃であり、駆動電力の上限値は、横軸における温度差0℃の位置からの垂直線とグラフとの交点における縦軸の値であり、fとなる。そして、前記吸熱部12の温度が−20℃まで低下し、前記排熱部13の温度が30℃まで上昇した場合、両者の温度差が50℃となり、この場合の駆動電力の上限値はg(>f)となる。そして、このような前記吸熱部12と前記排熱部13の温度差と、これらの温度差に対応する前記リニアモータ16の駆動電力の上限値との関係が、予め前記制御手段38に記憶されている。詳述すると、前記制御手段38には、前記図4のような駆動電力の上限値データを記憶する記憶部38Aと、前記吸熱部状態検出手段36の検出結果と前記排熱部状態検出手段37の検出結果を入力とし、これらの検出結果(温度)から温度差を算出すると共に前記記憶部38Aに記憶されているデータと比較して前記制御手段38からリニアモータ16へ出力する駆動電力の上限値を決定する比較演算部38Bと、この比較演算部38Bの演算結果に基づいて、前記電源39からの電力を前記駆動電力の上限値以内で制御して前記制御手段38からリニアモータ16へ出力する駆動部38Cが備えられている。
そして、例えば起動時などにおいて前記吸熱部12と排熱部13との温度差が小さい場合、前記ピストン15とディスプレイサー8の振幅が大きくなると共に位相差が大きくなるため、両者が衝突する虞があるばかりでなく、前記ディスプレイサー8と前記円筒部2の先端部6の内面が衝突したり、前記ピストン15が前記シリンダ7の基端側7Aに衝突したりする虞があるが、前述したように、前記吸熱部12と前記排熱部13の温度差に基づいて駆動電力の上限値が演算され、この上限値の範囲内の電力で前記リニアモータ16が駆動されるので、前記ピストン15がディスプレイサー8に衝突することなく、また前記ディスプレイサー8が前記円筒部2の先端部6の内面に衝突したり、前記ピストン15が前記シリンダ7の基端側7Aに衝突したりすることなく、冷蔵室R等の熱負荷を冷却することが可能となる。例えば、前記リニアモータ16の始動時における前記吸熱部12の温度が10℃で前記排熱部13の温度が10℃、両者の温度差が0℃である場合、算出される駆動電力の上限値はfとなり、この値f以下の電力を前記制御手段38からリニアモータ16に出力する。この値f以下の駆動電力では、往復動する前記ピストン15及びこのピストン15に従動する前記ディスプレイサー8の振幅が、これらが相互に衝突しない程度に、また前記ピストン15及びディスプレイサー8がそれぞれ前記シリンダ7の基端側7A及び前記円筒部2の先端部6の内面に衝突しない程度に小さく抑制される。そして、前記吸熱部12の温度が低下して−20℃に、前記排熱部13の温度が上昇して30℃になり、両者の温度差が50℃となった場合、算出される駆動電力の上限値はg(>f)となり、この値g以下の電力を前記制御手段38からリニアモータ16に出力する。そしてこの場合、値fよりも高い値gの駆動電力を前記制御手段38からリニアモータ16に出力したとしても、前記吸熱部12と排熱部13との温度差が大きくなっていることによって、前記ピストン15とディスプレイサー8の位相差が小さくなっており、また、前記ピストン15及びディスプレイサー8の振幅が抑制されるので、これらが衝突しない。
以上のように構成されるフリーピストン型スターリング冷凍機において、前記吸熱部12の温度又はこれと相関のある物理量を検出する吸熱部状態検出手段36と、前記排熱部13の温度又はこれと相関のある物理量とを検出する排熱部状態検出手段37と、前記リニアモータ16と前記吸熱部状態検出手段36と前記排熱部状態検出手段37に接続された制御手段38を備え、前記吸熱部状態検出手段36の検出結果と前記排熱部状態検出手段37の検出結果との差に応じて前記制御手段38が前記リニアモータ16の駆動電力の上限値を制御することで、起動時等、前記吸熱部12と排熱部13の温度差が小さい場合において、前記ピストン15とディスプレイサー8が衝突すること、或いは前記ディスプレイサー8が前記円筒部2の先端部6の内面と衝突したり、前記ピストン15が前記シリンダ7の基端側7Aに衝突したりすることを阻止することができる。
また、前記制御手段38には、図4に示されるような駆動電力の上限値データを記憶する記憶部38Aと、前記吸熱部状態検出手段36の検出結果と前記排熱部状態検出手段37の検出結果との差と前記記憶部38Aに記憶されているデータとを比較して前記リニアモータ16の駆動電力の上限値を決定する比較演算部38Bと、この比較演算部38Bの演算結果に基づいて前記電源39からの電力を制御して前記制御手段38からリニアモータ16へ駆動電力を出力する駆動部38Cを備えていることにより、前記制御手段38の制御により確実に前記ピストン15がディスプレイサー8に衝突すること、或いは前記ディスプレイサー8が前記円筒部2の先端部6の内面と衝突したり、前記ピストン15が前記シリンダ7の基端側7Aに衝突したりすることを阻止することができる。
本発明の実施例4について、図1及び図5を参照して説明する。この実施例4は、図5に示すように、横軸を前記吸熱部12と排熱部13の温度差とし、縦軸を前記リニアモータ16の駆動電力とした場合における、前記ピストン15がディスプレイサー8と衝突しないように、また前記ディスプレイサー8を前記円筒部2の先端部6の内面に衝突させないように、更に前記ピストン15を前記シリンダ7の基端側7Aに衝突させないように、前記リニアモータ16を駆動するための駆動電力の上限を示したものにおいて、駆動電力の最大値g´を設定したものであり、この最大値g´以下の範囲で前記駆動電力の上限値が決定されるものである。このため、前記実施例3において上限値がgとなる条件であっても、上限値が最大値g´となり、この値g´がgよりも小さくなる場合が生じ得る。
以上のように構成されるフリーピストン型スターリング冷凍機において、前記制御手段38には、図4に示されるような駆動電力の上限値データを記憶する記憶部38Aと、前記吸熱部状態検出手段36の検出結果と前記排熱部状態検出手段37の検出結果との差と前記記憶部38Aに記憶されているデータとを比較して前記リニアモータ16の駆動電力の上限値を決定すると共に、前記駆動電力の上限値が最大値g´に達した後は、以後前記吸熱部12と排熱部13の温度差が大きくなっても前記駆動電力の上限値を一定の最大値g´とする比較演算部38Bと、この比較演算部38Bの演算結果に基づいて前記電源39からの電力を制御して前記制御手段38からリニアモータ16へ駆動電力を出力する駆動部38Cを備えていることにより、前記制御手段38の制御により確実に前記ピストン15がディスプレイサー8に衝突することを阻止することができる。
本発明の実施例5について、図6を参照して説明する。この実施例5は、円筒部2の基部4及び先端部6に、差分検出手段たる熱電対40を取り付けたものである。この熱電対40は、よく知られているように、それぞれ異種金属の電線41,42から構成されている。そして、前記熱電対40の先端部40Aを構成する前記各電線41,42の先端部41A及び42Aを互いに電気的に接合すると共に、これらの先端部41A及び42Aを前記円筒部2の先端部6の外面、即ち吸熱部12の近傍に対し熱的に接触させる。また、前記熱電対40の基端部40Bを構成する前記各電線41,42の基端部41B,42Bを互いに電気的に絶縁すると共に、これら基端部41B,42Bを前記円筒部2の基部4の外面、即ち排熱部13の近傍に対し熱的に接触させる。更に、前記各電線41,42の基端部41B,42Bは、リード線43,44によって制御回路38に対して電気的に接続される。また、前記制御手段38には、交流等の電源39が接続されている。さらに、前記制御手段38はリニアモータ16の電磁コイル19に接続されている。そして、前記制御手段38は、前記熱電対40がその先端部40Aと基端部40Bの温度差に応じた電圧を発生させることから、前記熱電対40が発生させる電圧を入力とし、この電圧に基づいて駆動電力の上限値を演算し、この上限値に基づいて前記電源39からの電力を前記上限値以下の範囲で変換して駆動電力とし、前記電磁コイル16に出力する。なお、このような構成による前記フリーピストン型スターリング冷凍機の制御及び作用は、前述した実施例3に準拠する。
なお、本発明のフリーピストン型スターリング冷凍機は、以上の実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記各実施例では、前記シリンダを一体に形成したが、前記シリンダの基端側と先端側とを独立したシリンダで構成し、これらを同軸上に配列してもよい。また、前記吸熱部状態検出手段及び排熱部状態検出手段で検出される物理量は、温度以外の物理量、例えば気体の圧力や電圧等であってもよい。また、前記吸熱部状態検出手段及び排熱部状態検出手段が取り付けられる位置は、前記円筒部自身の基部及び先端部でなく、これらと熱的に接触する部位であってもよい。また、上記各実施例では、前記制御手段に上限値データを記憶しているが、前記吸熱部と排熱部の温度差等から上限値を計算してもよい。更に、前記各実施例では電力の上限値を定めているが、電圧の上限値を定めたり、電流の上限値を定めたりしてもよく、また、これら電力、電圧、電流のうちの二つ以上の上限値を定めるようにしてもよい。
以上のように、本発明に係るフリーピストン型スターリング冷凍機は、種々の用途に適用できる。
本発明の実施例1を示す断面図である。
本発明の実施例1を示す入力電力量上限のグラフである。
本発明の実施例2を示す入力電力量上限のグラフである。
本発明の実施例3を示す入力電力量上限のグラフである。
本発明の実施例4を示す入力電力量上限のグラフである。
本発明の実施例5を示す説明図である。
従来例を示す説明図である。
符号の説明
7 シリンダ
8 ディスプレイサー
12 吸熱部
13 排熱部
15 ピストン
16 リニアモータ
36 吸熱部状態検出手段
37 排熱部状態検出手段
38 制御手段
40 熱電対(差分検出手段)
40A 熱電対の先端部(一端)
40B 熱電対の基端部(他端)
C 圧縮室
E 膨張室