以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。図1は封止操作後の太陽電池モジュールの一例の断面模式図である。図2及び図3は封止操作前の積層体の一例の断面模式図である。図4は図3の例における封止操作開始前の積層体の拡大断面模式図である。図5は図3の例における加熱昇温途中の積層体の拡大断面模式図である。図6は図3の例における封止操作後の積層体の拡大断面模式図である。
本発明の製造方法によって得られる太陽電池モジュール1の一例の断面模式図を図1に示す。太陽電池モジュール1は、受光面側透明板2と裏面板3との間に太陽電池セル4が樹脂5で封止されてなるものである。太陽電池モジュール1中に封止される太陽電池セル4の数は、一つであっても良いが、複数の太陽電池セル4が封止されたものであることが好ましい。通常、隣接する太陽電池セル4の受光面6と裏面7とが、導線8を介して接続される。
本発明で使用される太陽電池セル4は、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、化合物半導体太陽電池など、各種の太陽電池のセルが使用可能である。これらの太陽電池セル4は一般的には1mm以下、より一般的には0.5mm以下の厚さの薄板であり、1辺が5cm以上の四角形であることが多い。その基板の材質は、シリコンやゲルマニウム等の半導体基板、ガラス基板、金属基板などを使用できるが、シリコン基板の場合、コスト面の要請から薄板化が望まれている一方で、硬くて脆い材質であることから、封止時に特に割れ易く、本発明の製造方法を採用する意義が大きいものである。
中でも、本発明で特に好適に使用される太陽電池セル4は、シースルー型太陽電池セルである。当該シースルー型太陽電池セルは、透光性の小孔を有するものである。通常1枚のセル中に多数の小孔が設けられており、当該多数の小孔を通じて反対側の景色が観察可能になっているものである。このような太陽電池セル4は、視認性が要求される壁面などに使用される太陽電池モジュールにおいて好適に使用されるものである。当該小孔の形成方法は特に限定されないが、セル表面に形成された溝とセル裏面に形成された溝の交点において透光性の小孔が形成されているものが好適に使用される。この場合、概ねセルの厚みの半分以上の深さの溝が多数形成されることになるから、封止操作において特に破損されやすく、本発明の構成を採用する必要性が大きいものである。
1つの太陽電池モジュール1に封入される太陽電池セル4の個数は、特に限定されず、1枚だけであっても良い。その場合には太陽電池セル4から外部への配線が接続されるだけになる。しかしながら、1つの太陽電池モジュール1に封入される太陽電池セル4の個数が多いほど、太陽電池セル4の破損に由来する不良品率が上昇することから、本発明の製造方法を採用する実益が大きい。したがって、10個以上、より好適には30個以上、さらに好適には100個以上の太陽電池セル4が一つの太陽電池モジュール1内に配置されることが好ましい。
隣接する太陽電池セル4間の間隙部9の幅は特に限定されないが、通常0.5mm以上であり、これ以下の場合には隣接する太陽電池セル4同士が接触して封止する際にセルが破損するおそれがある。採光性を優先するのであれば間隙部9を広くすることが好ましく、光の利用効率を優先するのであれば間隙部9を狭くすることが好ましい。用途やデザイン面の要請などによって適当に調整される。
複数の太陽電池セル4を封入する場合、複数の太陽電池セル4は、所定の幅を介して配列して相互に導線8で接続されることが好ましい。このとき、隣接する太陽電池セル4同士は、受光面6及び裏面7との間で導線8によって接続され、直列方式で多数の太陽電池セル4が接続される。受光面6あるいは裏面7と導線8との接続は、ハンダ等の導電性接着剤を用いて行われる。また、発生した電流を効率良く集めるために、受光面6上に導電ペーストなどで集電パターンを形成し、それを導線8と導通させるようにすることも好ましい。さらにまた、隣接しないセル同士や離れた位置にある導線8同士を接続する場合や、裏面板3に孔を開けて導線8を外部に引き出す場合もある。
導線8は、インターコネクタとも呼ばれるものであるが、その材質は特に限定されず、銅線などが使用される。受光面側透明板2と裏面板3との間に挟み込んで配置するため、薄いリボン状の導線8を使用することが好ましく、その厚みは通常0.5mm以下であり、好適には0.3mm以下である。また普通0.05mm以上である。導線8に予めハンダ等の導電性接着剤が塗布されていることが、接続作業が容易になって好ましい。導線8が接続された状態では、太陽電池セル4の表面から導線8の一番高い部分までの高さは、場所によってバラツキがあるが、接続操作によっては、導線8の厚みよりも0.5mm程度厚くなるところもある。
受光面側透明板2の材質は、太陽光に対して透明であれば良く、ガラス以外にもポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂などを使用することもできる。しかしながら、耐久性、硬度、難燃性などを考慮するとガラスを使用することが好ましい。広い面積の構造材を構成することも多いことから、表面圧縮応力が20MPa以上のガラス板であることが、強度の面から好ましい。また、面積が広い場合には日照などによる温度上昇に伴う熱割れも生じやすいので、この点からも表面圧縮応力が20MPa以上のガラス板を使用することが好適である。しかしながら、大きい表面圧縮応力を有するガラス板は、通常、フロート板ガラスを加熱、急冷して製造されることから、一定の歪の発生が避けられない。そのために生じるガラスの反りによって、封止時に一部の太陽電池セル4に過剰な荷重がかかりやすく、セル割れを防止できる本発明の製造方法を採用する実益が大きい。
ここで、板ガラスの表面圧縮応力は、JIS R3222に準じて測定される値である。表面圧縮応力が20MPa以上のガラス板としては、具体的には、倍強度ガラス、強化ガラス、超強化ガラスなどが挙げられる。倍強度ガラスは表面圧縮応力が通常20〜60MPaのものであり、強化ガラスは表面圧縮応力が通常90〜130MPaのものであり、超強化ガラスは表面圧縮応力が通常180〜250MPaのものである。表面圧縮応力を大きくするほど、強度は向上するが、反りが大きくなりやすく製造コストも大きくなりやすい。また倍強度ガラスは、比較的反りの少ないものを製造しやすく、破損したときに細片になって落下することがない点で好ましい。ガラス板は、用途や目的に応じて選択される。
裏面板3は必ずしも透明でなくても良いが、採光を考慮するのであれば裏面板3も太陽光に対して透明である方が良い。また、受光面側透明板2と同じ理由でガラス、特に表面圧縮応力が20MPa以上のガラス板を使用することが好ましい。
ガラスの材質は特に限定されず、ソーダライムガラスが好適に使用されるが、なかでも、受光面側透明板2には、高透過ガラス(いわゆる白板ガラス)が好適に使用される。高透過ガラスは、鉄分の含有量の少ないソーダライムガラスであり、光線透過率の高いものである。また、裏面板3のガラスには、前記高透過ガラスや、鉄分の含有量の比較的多いソーダライムガラス(いわゆる青板ガラス)を使用するほかに、熱線反射ガラス、熱線吸収ガラスなどを使用することも用途によっては好ましい。また、表面にエンボス模様を形成した型板ガラスなどを使用することもできる。ガラス板の厚みは、特に限定されないが、構造材として使用するのであれば、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。このように厚いガラス板を使用する際には自重の影響が大きく、貼り合わせ前にセルの上にガラス板を重ねる際にセルが破損するおそれがあり、本発明の製造方法を採用する実益が大きい。ガラス板の厚みは通常20mm以下である。また、ガラスの面積は用途によって調整されるが、1m2以上である場合に本発明の製造方法を採用する実益が大きい。
樹脂5の材質は、透明であって接着性や柔軟性を有するものであればよく、特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール及びポリウレタンからなる群から選択される一種の樹脂が好適に使用される。このとき、架橋された樹脂であることが、強度や耐久性の面から好ましい。したがって、樹脂5の原料は、架橋可能な熱可塑性樹脂、特に加熱することによって架橋反応が進行する樹脂であることが好ましい。このような樹脂をシートの形態で受光面側透明板2と裏面板3との間に挟み、加熱溶融してから、必要に応じて架橋反応を進行させ、その後冷却固化させて太陽電池セル4を封止する。加熱によって架橋されるものを使用することによって、耐久性や接着性に優れたものとできる。架橋可能な熱可塑性樹脂としては、加熱した時に架橋反応が進行するものであれば特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール及びポリウレタンからなる群から選択される一種の樹脂が好適に使用される。例えばEVAであれば架橋剤を配合して加熱することで架橋させることができるし、ポリウレタンであればイソシアネート基と水酸基とを反応させることによって架橋させることができる。
ポリウレタンの場合には、比較的低温で架橋反応が進行するので、受光面側透明板又は裏面板の少なくとも一方に耐熱性の低い樹脂板を使用する場合などに好適である。また、ポリウレタンは柔軟性にも優れているので、ガラスとプラスチックのように熱膨張係数の大きく異なる材料を組み合わせて、受光面側透明板及び裏面板に使用する場合にも、剥離が生じにくく好適である。さらにポリウレタンは、貫通強度にも優れている。
架橋可能な熱可塑性樹脂のうちでも、架橋剤を含有する熱可塑性樹脂を使用することが好適である。このときの熱可塑性樹脂は、架橋剤とともに加熱した時に架橋反応が進行するものであれば特に限定されないが、透明性、柔軟性、耐久性などに優れたエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が最も好適に使用される。
封止樹脂シートを受光面側透明板2と裏面板3との間に挟み、加熱溶融してから冷却固化させて、太陽電池セル4を封止する。封止樹脂シートがEVA樹脂に架橋剤を含有するものであることが好ましく、この場合には、加熱溶融してから架橋反応を進行させ、その後冷却することで架橋されたEVAで封止することができる。封止樹脂シート中のEVAは、DSC法で測定した融点が50〜80℃のものであることが、透明性と形態保持性のバランスの観点から好ましい。
封止樹脂シートは、その片面又は両面に適当なエンボスを有することがブロッキングを防止でき、気泡残りも抑制しやすいので好ましい。好適なエンボス深さは10〜100μmであり、深すぎると逆に気泡が残存するおそれがある。シート厚みは好適には0.2〜2mm、より好適には0.3〜1mmであり、これを一枚又は複数枚重ねて厚み調節して使用することができる。
以下、本発明の製造方法による封止操作方法を説明する。
まず、図2の例について説明する。図2の例は、太陽電池セル4の外側の余白部10のみに封止樹脂シート片を配置する例である。図2は、封止操作前の積層体の一例の断面模式図であり、複数の太陽電池セル4が直列に接続される方向に対して平行に切断した断面を示したものである。図2の例では、受光面側透明板2を下においてから重ねる操作を行ったが、先に裏面板3を下においてから、逆の順番で重ねても構わない。図2のような構成とするのが好ましいのは、太陽電池セル4間の間隙部9の幅が狭い場合であり、当該幅が広い場合には、後に説明する図3の例のように、太陽電池セル4間の間隙部9に封止樹脂シート片を配置する方が好ましい。通常、図2のような構成とすることが適しているのは、間隙部9の幅が、好適には10mm以下、より好適には5mm以下、さらに好適には3mm以下の場合である。
最初に、受光面側透明板2の上に、実質的にその全面を覆うように第1封止樹脂シート20を重ねる。このとき、受光面側透明板2はガラス板、特に、反りを有する表面圧縮応力が20MPa以上のガラス板であることが好ましい。そして、受光面側透明板2において、反りの内側、すなわち凹面側が上になるようにして、その上に第1封止樹脂シート20を重ねることが好ましい。このときの受光面側透明板2の反り(JIS R3206に準拠して測定した値)は0.05〜0.5%であることが好適である。反りが大きすぎる場合には封止した後にモジュール内部に剥離しようとする力が残存するおそれがあり、より好適には0.4%以下であり、さらに好適には0.3%以下である。一方、反りが小さすぎる場合には、封止操作中に、モジュールの中央付近で太陽電池セル4に裏面板3の荷重が掛かってセル割れが発生するおそれがあり、より好適には0.1%以上であり、さらに好適には0.15%以上である。
第1封止樹脂シート20の厚さは0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。また、通常5mm以下、好適には3mm以下である。一定以上の厚みとすることで、衝撃を効率的に吸収できて太陽電池セル4を有効に保護することができる。第1封止樹脂シート20を、複数の封止樹脂シートを積層することによって構成することが好ましい。用途や要求性能に応じて第1封止樹脂シート20の厚みを調整することが容易になるからである。図2の例では3枚の封止樹脂シート21,22,23を重ねて第1封止樹脂シート20を構成している。第1封止樹脂シート20は、受光面側透明板2の実質的に全面を覆っていればよく、導線の配置などのために一部が欠落していても構わないし、サイド・バイ・サイドに配置された複数枚の封止樹脂シートから構成されていても構わない。
第1封止樹脂シート20の上に、太陽電池セル4を載置する。このとき、好適には前述の要領で相互に接続した複数の太陽電池セル4を載置して、必要に応じて縦横を揃えて配列する。この場合には、予め接続した太陽電池セル4を載置しても良いし、第1封止樹脂シート20上で接続しても良いし、一部接続したものを載置してから残りを接続しても良い。
太陽電池セル4の外側の余白部10に、合計の厚みが太陽電池セル4の厚みよりも厚い封止樹脂シート片40,41,42,43を配置することによって、内部を減圧した際に、表裏両面からの大気圧による荷重が太陽電池セル4に直接かかることがなく、封止樹脂シート片40,41,42,43がその荷重を受ける。したがって、モジュール内に配置された太陽電池セル4に対して直接裏面板3の荷重が掛からないようにすることができる。そして、温度が上昇するにしたがって樹脂は軟化して荷重のかかった封止樹脂シート片40,41,42,43の厚みが減少していき、セル又はセルに接続された導線8の部分と、上下の封止樹脂シートとが接触することになるが、そのときには樹脂シート全体が軟化しているので局所的な荷重がかかることがなく、セル又はセルに接続された導線8が軟化した封止樹脂シートに埋まりこむように密着することができる。これによって、減圧工程でのセル割れを防止することができる。特に、1つの太陽電池モジュール1に封入される太陽電池セル4の個数が多いほど、太陽電池セル4の破損に由来する不良品率が上昇することから、当該封止樹脂シート片40,41,42,43を配置する実益が大きい。
太陽電池セル4の外側の余白部10に配置される封止樹脂シート片40,41,42,43の厚みは、その合計の厚みが太陽電池セル4の厚みよりも厚いことが必要である。ここで、合計の厚みとは、複数枚の封止樹脂シート片40,41,42,43を重ねて使用した場合には、その合計の厚みということである。例えば、封止樹脂シート片を、第1封止樹脂シート20と第2封止樹脂シート30の間にだけ配置する場合のみならず、第1封止樹脂シート20あるいは第2封止樹脂シート30を構成する複数の封止樹脂シート相互の間に挟持されるように配置する場合も含むものである。図2の例では、第1封止樹脂シート20と第2封止樹脂シート30の間に配置される2枚の封止樹脂シート片40,41と第2封止樹脂シート30を構成する4枚の封止樹脂シート31,32,33,34相互の間に挟持される2枚の封止樹脂シート片42,43との合計(4枚)の厚みということである。
封止樹脂シート片40,41,42,43の合計の厚みが、太陽電池セル4の厚みと導線8の厚みとの合計値よりも厚いことが好ましく、当該合計値よりも0.2mm以上厚いことがより好ましい。また、封止樹脂シート片40,41,42,43の合計の厚みが、太陽電池セル4の厚みよりも0.3mm以上厚いことが好ましく、0.6mm以上厚いことがより好ましい。具体的には、封止樹脂シート片40,41,42,43の合計の厚みが1〜5mmであることが好適である。封止樹脂シート片40,41,42,43の合計の厚みはより好適には1.5mm以上であり、さらに好適には2mm以上である。また、より好適には4mm以下であり、さらに好適には3mm以下である。
封止樹脂シート片40,41,42,43を、水平方向に相互に間隔をあけて配置し、そこから内部の空気を排出できるようにすることが好ましい。内部の空気を積極的に排出する通路を確保することで、気泡の残存を抑制することができ、外観の良好な太陽電池モジュール1を製造することができる。このとき、封止樹脂シート片同士が直接重ねられた構成である場合には、その少なくとも1枚において樹脂シート片相互の間に水平方向に間隔をあけて、そこから内部の空気を排出できれば良い。
図2の例では、太陽電池セル4の外側の余白部10において、第1封止樹脂シート20の上に、余白部10の全周にわたり実質的に連続して配置された封止樹脂シート片40と、それと重ねられて相互に間隔をあけて配置された封止樹脂シート片41とが配置され、その上に第2封止樹脂シート30が重ねられる。太陽電池セル4と同じ高さの位置において全周にわたって連続的に封止樹脂シート片40を配置することで、溶融樹脂の均一な充填が可能であり、気泡の発生を防止できる。この封止樹脂シート片40は、余白部10の幅の50%以上の幅を有することが好ましく、70%以上の幅を有することがより好ましい。封止樹脂シート片40は平行に配置された複数のシート片から構成されていてもよい。封止樹脂シート片40の上に重ねて、相互に間隔をあけて封止樹脂シート片41を配置することが好ましく、これによって内部の空気を円滑に排出できる。
第1封止樹脂シート20の上に太陽電池セル4を載置し、太陽電池セル4の外側の余白部10に封止樹脂シート片40を載置し、封止樹脂シート片40の上に封止樹脂シート片41を載置してから第2封止樹脂シート30を構成する封止樹脂シート31で全体を覆う。引き続き、余白部10に封止樹脂シート片42を間歇的に載置し、2枚の封止樹脂シート32,33で全体を覆い、さらに余白部10に封止樹脂シート片43を間歇的に載置し、封止樹脂シート34で全体を覆う。これにより、4枚の封止樹脂シート31,32,33,34で第2封止樹脂シート30が構成されることになる。第2封止樹脂シート30の好適な厚みは、すでに説明した第1封止樹脂シート20の場合と同じである。また、4枚の封止樹脂シート31,32,33,34に挟まれる形で存在する2枚の封止樹脂シート片42,43も併せて、合計4枚の封止樹脂シート片40,41,42,43が重ねられて、余白部10に存在することになる。ここで、第2封止樹脂シート30は、裏面板3の実質的に全面を覆っておればよく、導線の配置などのために一部が欠落していても構わないし、サイド・バイ・サイドに配置された複数枚の封止樹脂シートから構成されていても構わない。
最後に、第2封止樹脂シート30の上に裏面板3が載置される。このとき、裏面板3はガラス板、特に、反りを有する表面圧縮応力が20MPa以上のガラス板であることが好ましい。そして、裏面板3において、反りの内側、すなわち凹面側が下になるようにして、第2封止樹脂シート30の上に載置することが好ましい。このときの裏面板3の反り(JIS R3206に準拠して測定した値)は0.05〜0.5%であることが好適である。反りが大きすぎる場合には封止した後にモジュール内部に剥離しようとする力が残存するおそれがあり、より好適には0.4%以下であり、さらに好適には0.3%以下である。一方、反りが小さすぎる場合には、封止操作中に、モジュールの中央付近で太陽電池セル4に裏面板3の荷重が掛かってセル割れが発生するおそれがあり、より好適には0.1%以上であり、さらに好適には0.15%以上である。
このように、受光面側透明板2及び裏面板3として、一定の反りを有するガラス板を用い、しかもその凹面同士を向かい合わせて封止操作を行うことによって、封止される太陽電池セル4の破損を防止することができる。図2の例では、隣接する太陽電池セル4の間の間隙部9の幅は狭く、封止樹脂シート片を間隙部9に配置することが困難である。したがって、封止される多数の太陽電池セル4の破損を防止するために、太陽電池セル4の外側の余白部10のみに封止樹脂シート片40,41,42,43を配置する必要がある。ところが、大寸法の板ガラスを周辺部だけで支える場合には、板ガラスの自重による撓みが無視できない。例えば、後述の実施例1で裏面板3として使用している1760×850×10mmの板ガラスの重量は、37.4kgもある。そこで、自重によって裏面板3の中心部が撓んで下方に下がってもなお、直接裏面板3の荷重が太陽電池セル4に掛かることがないように、受光面側透明板2と裏面板3の凹面同士を向かい合わせて封止するものである。通常、内部に何も封止しない合せガラスを製造する場合には、2枚のガラス板の反りの向きを揃えてから貼り合わせる場合が多いのに対して、図2の例では、異なった手法を採用するものである。
次に、図3の例について説明する。図3の例は、太陽電池セル4の外側の余白部10に加えて、太陽電池セル4相互の間の間隙部9にも封止樹脂シート片を配置する例である。図3は、封止操作前の積層体の一例の断面模式図であり、複数の太陽電池セル4が直列に接続される方向に対して平行に切断した断面を示したものである。図3の例では、裏面板3を下においてから重ねる操作を行ったが、先に受光面側透明板2を下においてから、逆の順番で重ねても構わない。図3のような構成とするのが好ましいのは、太陽電池セル間の間隙部9の幅が広い場合である。通常、図3のような構成とすることが適しているのは、間隙部9の幅が、好適には5mm以上、より好適には10mm以上、さらに好適には30mm以上の場合である。
最初に、裏面板3の上に、実質的にその全面を覆うように第2封止樹脂シート30を重ねる。第2樹脂シート30の好適な構成及び好適な厚さは、図2の例と同様である。図3の例では3枚の封止樹脂シート31,32,33を重ねて第2封止樹脂シート30を構成している。次に、第2封止樹脂シート30の上に、太陽電池セル4を載置する。載置の方法は、図2の例と同様である。このとき、裏面板3がガラス板、特に表面圧縮応力が20MPa以上のガラス板であることが好ましい点は、図2の例と同様である。しかしながら、裏面板3が反りを有する場合であっても、第2封止樹脂シート30が重ねられる面はいずれであっても構わない。
続いて、太陽電池セル4間の間隙部9に第2封止樹脂シート30と第1封止樹脂シート20とで挟持されるように封止樹脂シート片47,48を配置する。ここでは、二枚の封止樹脂シート片を重ねて配置している。太陽電池セル4間の間隙部9に封止樹脂シート片47,48を配置することによって、内部を減圧した際に、表裏両面からの大気圧による荷重が太陽電池セル4に直接かかることがなく、封止樹脂シート片47,48がその荷重を受ける。そして、温度が上昇するにしたがって樹脂は軟化して荷重のかかった封止樹脂シート片47,48の厚みが減少していき、太陽電池セル4又は導線8が、第1封止樹脂シート20及び第1封止樹脂シート30と接触する。そのときには樹脂シート全体が軟化しているので局所的な荷重がかかることがなく、太陽電池セル4又は導線8が軟化した封止樹脂シートに埋まり込むように密着する。これによって、減圧工程でのセル割れを防止することができる。このときの状況は、図4〜6に模式的に示されている。すなわち、図4は封止操作開始前の積層体の拡大断面模式図であり、図5は加熱昇温途中の積層体の拡大断面模式図であり、図6は封止操作後の積層体の拡大断面模式図である。この場合、個々の太陽電池セル4の近傍で上下からの荷重を確実に受けることが可能であるので、セル割れを防止する効果は図2の例よりも確実に発揮される。
間隙部9に導線8がある場合には、通常この封止樹脂シート片47,48を導線8の上に載せる形で配置する。導線8と封止樹脂シート片47,48が重なるように配置されることで、導線8を押さえる働きによって、樹脂が溶融する際に太陽電池セル4が移動しにくくなってより好ましい。隣接する太陽電池セル4間の全ての間隙部9に封止樹脂シート片47,48を配置する必要はないが、全ての間隙部9に配置する方が、溶融樹脂の移動がより少なくなり、気泡残りもより生じにくくなるので好ましい。
間隙部9に配置される封止樹脂シート片47,48の合計の厚みは、好適には、太陽電池セル4の厚みよりも0.3mm以上厚いことが好ましく、0.6mm以上厚いことがより好ましい。また、このとき、封止樹脂シート片47,48の合計の厚みが太陽電池セル4の厚みと導線8の厚みとの合計値よりも厚いことも好ましい。このような厚みとすることで、最も荷重のかかりやすい部分に過剰な荷重がかかることを防止できる。この場合、前記合計値よりも0.2mm以上厚いことがより好ましい。このように、封止樹脂シート片が複数枚の封止樹脂シートを積層した構成である場合には、その一番厚いところ(重ねた枚数の多いところ)の厚みが、上記条件を満足すれば良い。
間隙部9に配置される封止樹脂シート片47,48の幅は、前記間隙部9の幅よりも狭いことが好ましい。こうすることによって太陽電池セル4よりも厚い封止樹脂シート片47,48が間隙部9全体に一定の厚さで広がることが容易になるからである。広い範囲に溶融樹脂が移動する場合には、それにつれて太陽電池セル4も移動してしまうことがある。幅は、太陽電池セル4や封止樹脂シート片47,48の厚さや間隙部9の面積などを考慮して調整されるが、好適には間隙部9の幅の0.1〜0.95倍である。より好適には0.3倍以上であり、0.9倍以下である。0.95倍を超えると配置する操作が困難になる上に、減圧時に太陽電池セル4又は導線8を破損するおそれがある。逆に0.1倍以下の場合には、溶融樹脂が均一に広がるのが困難になるおそれがある。封止樹脂シート片47,48の長さは特に限定されず、太陽電池セル4の一辺よりも短い長さであっても構わないし、太陽電池モジュールの一端から他端まで延びたテープ状のものであっても構わない。
また、間隙部9に配置される封止樹脂シート片相互の間から内部の空気を排出できるようにすることも好ましい。内部の空気を積極的に排出する通路を確保することで、気泡の残存を抑制することができ、外観の良好な太陽電池モジュールを製造することができる。このとき、封止樹脂シート片が複数枚の封止樹脂シートを積層した構成である場合には、その少なくとも1枚において樹脂シート片相互の間に間隔をあけて、そこから内部の空気を排出できれば良い。封止樹脂シート片を交差させて配置する場合には、交差部以外の合計厚みの薄いところから内部の空気を排出することができる。
また、太陽電池セル4の外側の余白部10には、封止樹脂シート片40,41が配置されている。これの構成については、図2の例と同様の構成が採用される。ただし、この部分だけで上下からの荷重を支える必要はない。その厚みは間隙部9に配置される封止樹脂シート片47,48と同程度にすることができる。
こうして、封止樹脂シート片40,41,47,48を載置した後、その上に第1封止樹脂シート20を載置する。第1封止樹脂シート20の好適な構成及び好適な厚さは、図2の例と同様である。図3の例では3枚の封止樹脂シート21,22,23を重ねて第1封止樹脂シート20を構成している。最後に、第1封止樹脂シート20の上に受光面側透明板2が載置される。このとき、受光面側透明板2がガラス板、特に表面圧縮応力が20MPa以上のガラス板であることが好ましい点は、図2の例と同様である。しかしながら、受光面側透明板2が反りを有する場合であっても、第1封止樹脂シート20の上に重ねられる面はいずれであっても構わない。
以上、封止操作前の積層体60の構成について説明した。引き続き、受光面側透明板2と裏面板3との間の空気を排出し、加熱して樹脂を溶融させてから冷却して封止する。このとき、加熱して樹脂を溶融させ、架橋反応を進行させてから冷却して封止することが好ましい。封止に使用される装置は、空気の排出操作と加熱操作の可能なものであれば良く、特に限定されない。積層体60を内部に収容する封止処理容器を有し、空気の排出操作と加熱操作の可能なものが好ましく使用される。このとき、当該封止処理容器はその一部又は全部が気体非透過性の柔軟な膜からなるものであることが好ましい。気体非透過性の柔軟な膜からなる封止処理容器の外側が大気圧に保たれている、いわゆる一重真空方式も採用できるし、気体非透過性の柔軟な膜からなる隔壁を隔てた二室の両側の真空度を調整できる、いわゆる二重真空方式も採用できる。一重真空方式は設備が簡易な点から好ましい。本発明の製造方法によれば、封止樹脂が溶融する前に積層体60の上下から荷重のかかる一重真空方式であってもセル割れを防止できる。前記膜の素材は、気体非透過性の柔軟な膜であれば良く、一定以上の柔軟性と強度があって、膜の内部が真空になった時に外気圧が積層体全体に均一にかかるようになるものであれば特に限定されず、ゴムや樹脂のシートやフィルムが使用できる。
一重真空方式の封止処理容器は、ヒーターと一体化されたものであっても良いし、その一部のみが気体非透過性の柔軟な膜からなるものであっても良いが、全体が気体非透過性の柔軟な膜からなる袋61を使用することが好ましい。この場合には、封止処理容器は単なる袋61であるから、様々な形状や寸法の太陽電池モジュールを製造する際に柔軟に対応することが可能であり、建材など、多様な寸法の製品を製造することが要求される用途に対して特に好適である。積層体60を袋61に導入する際には、積層体60の端面の全周を通気性のある素材からなるブリーダー62で覆って、積層体60内部の溶融樹脂が流出するのを防ぐとともに、積層体60内部からの空気の排出ルートを確保することが好ましい。ブリーダー62に使用される素材としては、織布、編地、不織布などの布帛が使用可能である。
このように、全体が気体非透過性の柔軟な膜からなる袋61を使用する場合には、積層体60が導入された袋61を、加熱装置の中に複数配置することができる。それぞれの袋61には排気可能なパイプ63が接続され、圧力調整弁64を介して真空ポンプ65に接続される。このような方法によって、簡易な装置でまとめて複数の貼り合せ操作が可能である。
上述のように配置したところで、受光面側透明板2と裏面板3との間の空気を排出し、加熱して樹脂を溶融させてから冷却して封止する。このときの温度条件は特に限定されるものではなく、樹脂が溶融することの可能な温度まで上昇させれば良く、結晶性の樹脂であればその樹脂の融点以上まで加熱すれば良い。また、封止樹脂が架橋可能な熱可塑性樹脂であれば、架橋可能な温度まで上昇させて、所定の時間架橋可能な温度に保持する。圧力も積層体60内の空気を排出できて気泡残りが低減できるような圧力まで減圧できるのであればその圧力は特に限定されない。
なかでも、封止樹脂(融点:Tm(℃))を溶融させてから冷却するに際し、(Tm+10)℃から(Tm−20)℃まで冷却するのに要する時間が20分以上となるようにして冷却することが好適である。上記時間はより好適には30分以上であり、さらに好適には60分以上である。融点近傍においてゆっくりと冷却することによって、セル割れの発生を抑制することができるものである。
これまで、封止操作においてセル割れが発生する主たる原因は、受光面側透明板2と裏面板3との間の空気を排出して樹脂を溶融させる際に、上下方向からの荷重を受けることによるものと思われていた。しかしながら、そのタイミングではセル割れが発生せず、溶融樹脂内に未破損の太陽電池セル4が存在していながら、その後の冷却時にセル割れが発生する場合があることを、本発明者らは見出したものである。これは、封止操作途中で、融点よりも高い温度にある積層体60を、袋61を破って観察したところセル割れが発見されず、その後大気中で比較的早い速度で放冷している最中にセル割れが発生する現象が認められて明らかになったものであり、驚くべきことである。
このような現象が発生するメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムが推定されている。溶融状態にある封止樹脂が冷却されるときには、融点以下の温度において流動性が失われて固化するとともに収縮する。このような収縮は主としてポリマーの結晶化に由来して発生すると考えられる。このときに、収縮にともなって樹脂内部に発生すると想定される応力によってセル割れが発生しているものと推定される。樹脂の固化に伴う収縮応力がセルを破壊することの可能な大きな力であることは驚きである。これに対し、冷却速度を低下させることによって、このタイミングでのセル割れの発生を抑制できることが明らかになったものである。冷却速度を低下させることによってセル割れを抑制できる理由は必ずしも明らかではないが、結晶化の速度を低下させられる可能性や、応力緩和の進行が容易である可能性などが考えられる。ここで、封止樹脂が融点を有しない場合には、ここでいう融点をガラス転移点又は軟化点と置き換えて考えればよい。封止樹脂が融点を有さない非晶性の樹脂である場合にも、ガラス転移点あるいは軟化点付近において収縮を伴いながら固化する。
シースルー型太陽電池セルのような割れやすい太陽電池セルを使用する場合に、このようにゆっくりと冷却する方法を用いて封止することが好適である。例えば、広い面積の太陽電池セルや、厚みの薄い太陽電池セルや、表面に凹凸を有する太陽電池セルなどを封止する場合に好適であるが、それらに限定されるものではない。
具体的な封止方法の好適な一例は、封止処理容器内で封止するに際して、封止処理容器内の圧力を0.05MPa以上に保って封止樹脂を加熱する工程(工程1)、封止樹脂の融点未満の温度において封止処理容器内を0.01MPa以下の圧力まで減圧する工程(工程2)、減圧したままで封止樹脂の融点以上の温度まで昇温する工程(工程3)、前記封止処理容器内の圧力を上昇させる工程(工程4)及び冷却する工程(工程6)の各工程からなる封止操作を行う方法である。ここで、工程6において、前述のような条件でゆっくりと冷却することが好適である。
前記工程1は、封止処理容器内の圧力を0.05MPa以上に保って封止樹脂を加熱する工程である。封止処理容器内の圧力を0.05MPa以上に保つことによって、積層体60の上下方向からセルに大きな荷重がかかるのを防止することができる。より好適には当該圧力は0.07MPa以上であり、さらに好適には0.09MPa以上であり、最適には大気圧(0.1MPa)である。シースルー型太陽電池セルのような破損しやすいセルを使用する場合には、上下からの荷重が太陽電池セル4にかかるのを防止するために、封止処理容器内の圧力を大気圧に近い値にすることが好ましい。
以上のように、封止処理容器内の圧力が高い状態で封止樹脂を加熱することによって、封止樹脂を予め軟化させる。このときの加熱によって到達する温度は、封止樹脂が溶融しない温度でありながら、弾性率が低下する温度である。ここで、封止樹脂が溶融しない温度とは、通常、融点(Tm)よりも低い温度ということであり、好適には(Tm−5)℃以下であり、より好適には(Tm−10)℃以下である。封止樹脂が融点を有しない場合には、ここでいう融点をガラス転移点又は軟化点と置き換えて考えればよい。多くの封止樹脂において好適な温度は65℃以下であり、より好適な温度は60℃以下である。当該温度が高すぎると、工程2において封止処理容器内の圧力が0.01MPa以下まで下がる前に樹脂の流動が開始してしまい、積層体60の内部の空気を排出するための通路が塞がれて、気泡残りが発生するおそれがある。また、前記加熱によって到達する温度は、好適には(Tm−30)℃以上であり、より好適には(Tm−20)℃以上である。多くの封止樹脂において好適な温度は40℃以上であり、より好適な温度は45℃以上である。当該温度が低すぎる場合には、封止樹脂の弾性率の低下が不十分であり、工程2において封止処理容器内の圧力を下げた場合にセル割れが発生するおそれがある。このような温度範囲で5分以上維持してから工程2の減圧操作を開始することが好ましい。
工程2は、封止樹脂の融点未満の温度において封止処理容器内を0.01MPa以下の圧力まで減圧する工程であり、工程1に引き続いて行われる工程である。封止樹脂の融点未満の温度で減圧することによって積層体60の内部の空気が排出される通路が確保されるものである。このとき、封止処理容器内の圧力は、好適には0.005MPa以下まで減圧される。十分に減圧することによって封止後の気泡残りを効果的に抑制することができる。工程2において0.05MPaから0.01MPaまで減圧する間の温度は、工程1で説明した前記加熱によって到達する温度と同じ温度範囲に維持されることが好ましい。また、急激な減圧操作によるセル割れを防止するためには、0.05MPaから0.01MPaまで、5分以上かけてゆっくり減圧することが好ましい。
工程3は、減圧したままで封止樹脂の融点以上の温度まで昇温する工程であり、工程2に引き続いて行われる工程である。封止樹脂を昇温すると融点付近で弾性率が大きく低下し高粘度の液体へと変化することになるが、工程3は、そのような温度に到達するまで減圧したままにする工程である。弾性率が高いうちに減圧度を下げて昇圧したのでは、積層体60の内部へ空気が流入してしまい、封止樹脂中に気泡が残留するおそれがある。ここで、工程3の昇温操作で到達する温度の下限値は、好適には(Tm+10)℃以上であり、より好適には(Tm+20)℃以上である。多くの封止樹脂において好適な下限値は80℃以上であり、より好適には85℃以上である。また上限値は、通常200℃以下である。
工程3で昇温する速度はゆっくりであることが好ましく、室温から上記温度まで昇温するのにかかる時間が15分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましく、1時間以上であることがさらに好ましい。ゆっくり昇温することによって、急に荷重がかかることがなく、セル割れを効率的に防止することができる。このとき、途中で昇温速度を変化させてもよいし、昇温を停止して積層体60の内部の温度分布を解消させる、バランシング操作を施しても良い。生産性の観点から、昇温時間は通常20時間以下である。
工程4は封止処理容器内の圧力を上昇させる工程であり、工程6は冷却する工程であり、いずれも工程3に引き続いて行われる工程である。工程4と工程6は、どちらを先に行っても構わないし、両工程を同時に行っても構わない。工程6の冷却工程では、通常室温付近まで冷却するが、冷却速度が早すぎるとガラスが割れるおそれがあるので、好適には10分以上、より好適には30分以上かけて冷却する。
工程4においては、ゆっくりと昇圧することが好ましく、昇圧にかける時間は5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましく、20分以上であることがさらに好ましい。生産性の観点から、昇圧時間は通常5時間以下であり、好適には2時間以下である。昇圧後の圧力は、0.05MPa以上、より好適には0.07MPa以上とすることが好ましく、大気圧と同じ圧力(0.1MPa)まで昇圧することもできる。このとき、段階的に昇圧しても構わない。工程4において、圧力を上昇させる際の温度が、高すぎる場合には、不必要に溶融樹脂が流動して、セルの移動が生じるおそれがある。通常120℃以下、好適には100℃以下であることが好ましい。
また、工程4において、前記封止処理容器内の圧力を上昇させながら同時に昇温する過程を有することが好ましい。こうすることによって、徐々に流動性を増していく過程で、積層体60にかかる圧力を徐々に解除することができ、残留気泡の発生を抑制しながら、不必要に溶融樹脂が流動するのを抑制するのに効果的である。この場合には、昇圧開始時の温度を(Tm−10)℃〜(Tm+20)℃、より好適には(Tm−5)℃〜(Tm+15)℃とし、そこから3〜30℃、より好適には5〜20℃温度を上昇させる間に昇圧させることが望ましい。昇温速度(℃/分)に対する昇圧速度(MPa/分)の比は、0.001〜0.1(MPa/℃)であることが好ましく、0.002〜0.05(MPa/℃)であることがより好ましい。
具体的な封止方法の他の好適な一例は、前記封止樹脂シートが架橋可能な熱可塑性樹脂からなり、封止処理容器内で封止するに際して、封止樹脂の融点未満の温度において封止処理容器内を0.01MPa以下の圧力まで減圧する工程(工程2)、減圧したままで封止樹脂の融点以上の温度まで昇温する工程(工程3)、前記封止処理容器内の圧力を上昇させる工程(工程4)、架橋反応が進行する温度範囲まで昇温して架橋反応を進行させる工程(工程5)、及び冷却する工程(工程6)の各工程からなる封止操作を行う方法である。ここでも、工程6において、前述のような条件でゆっくりと冷却することが好適である。
この場合、工程4で封止処理容器内の圧力を上昇させてから、工程5において架橋反応が進行する温度範囲まで昇温して架橋反応を進行させる。通常100℃以上、好適には120℃以上、より好適には130℃以上、さらに好適には140℃以上に加熱して架橋反応を進行させる。樹脂の劣化を防止するために、通常は200℃以下の架橋温度が採用される。架橋反応が進行する温度範囲に保つ時間は、目指す架橋度などにより異なるが、通常5分〜2時間、好適には10分〜1時間である。
工程5で架橋反応を進行させるときの封止処理容器内の圧力は、好適には0.05MPa以上、より好適には0.06MPa以上である。封止処理容器内の圧力を上昇させることによって、上下からかかる圧力を低減させることができる。架橋反応は高温で進行するため、その時の封止樹脂の溶融粘度は、融点付近に比べてかなり低い。そのため、このときに上下から不要な圧力をかけず、セルの移動や、樹脂のはみ出しを抑制することが重要である。しかしながら、大気圧と同じ圧力まで昇圧した場合には、積層体の構成によってはヒケを生じることがあるので、そのようなときには大気圧より低い圧力に設定することが好適である。また、大気圧と同じ圧力まで昇圧した場合には、ブリーダーが積層体の周囲を押えることが困難になり樹脂がはみ出すこともあるので、そのようなときにも大気圧より低い圧力に設定することが好適である。その場合の圧力は大気圧よりも0.001MPa以上低い圧力とすることが好ましく、0.01MPa以上低い圧力(この場合、0.09MPa以下)とすることが好ましい。なお、本発明でいう大気圧とは、積極的に加圧あるいは減圧操作を施していない状態をいい、例えば熱風炉の中にファンで強制的に熱風を吹き込むために若干大気圧よりも高くなってしまうような場合であっても、それは大気圧と実質的に同一である。工程5で架橋反応を進行させたあとで、工程6の冷却工程に供する。工程6については、前述したとおりである。
特に好適な封止方法は、前記工程1、工程2、工程3、工程4、工程5及び工程6をこの順番で行う方法である。
こうして得られた太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルが破損されることなく、規則正しく整列されたものである。多数の太陽電池セルを破損することなく樹脂で封止することができるので、大型の太陽電池モジュールを提供することができる。シースルー型太陽電池セルのような、特に破損しやすい太陽電池セルを使用する場合であってもセル割れなく封止することができる。しかも、気泡残りが抑制され、端部からの樹脂のはみ出しも抑制され、正しく整列されて外観が美麗であるので、各種建築物の外壁、屋根、窓などに好適に使用される。
以下、実施例を使用して本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
図7に太陽電池モジュール1の外形と、その中に配列された太陽電池セル4とを示す。太陽電池セル4として、100mm×100mm×0.32mmの正方形のシースルー型太陽電池セルを使用した。四隅は数mm程度面取りがされている。当該太陽電池セルの受光面6には、上下及び左右の端部をそれぞれ数mmずつ残して、幅が約0.3mmで深さがセル厚みの半分程度の溝が、等間隔に140本形成されている。またその裏面7には、受光面6に形成された溝と垂直な方向に、上下及び左右の端部をそれぞれ数mmずつ残して、幅が約0.3mmで深さがセル厚みの半分程度の溝が、等間隔に138本形成されている。受光面6に形成された溝と、裏面7に形成された溝との交点では表裏を貫く小孔が形成されている。そのため、合計19320個の小孔を有しており、その小孔を通じて反対側の景色を見ることが可能である。このようなシースルー型の太陽電池セル4を112枚使用した。
導線8としては、日立電線株式会社製のハンダディップ銅リボン線を使用した。当該リボン線の幅は1.5mmで厚さは0.15mmである。太陽電池セル4の受光面6と裏面7の導線8を接着する部分には予めハンダを印刷してある。導線8の一端を太陽電池セル4の受光面6のハンダ印刷部に重ねてハンダ付けし、他端を隣接する太陽電池セル4の裏面7のハンダ印刷部に重ねてハンダ付けした。隣接するセル間は2本の導線8で接続し、その間隔が2mmになるようにした。すなわち、間隙部9の幅は2mmである。
受光面側透明板2としては、1760mm×850mm×10mmのフロート板強化ガラス(白板ガラス)を使用した。当該強化ガラスの表面圧縮応力は100MPaであり、JIS R3206に準拠して測定した反りは0.25%であった。封止樹脂シートとしては、特に断らない限り、ハイシート工業株式会社製「ソーラーエバSC36」の厚さ0.6mmのものを切断して使用した。当該封止樹脂シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)に架橋剤、シランカップリング剤、安定剤などを配合したものであり、架橋前の樹脂のDSC法で測定した融点は71℃である。封止樹脂シートの片面には浅いエンボス模様(梨地)が形成されていて、その深さは約45μmである。受光面側透明板2の反りの凹面が上になるようにして、その上に1760mm×850mmの寸法の封止樹脂シート21,22,23を3枚重ねた。この3枚の封止樹脂シート21,22,23が厚み1.8mmの第1封止樹脂シート20を構成する。
図8〜図13は、図7における左上の部分と右上の部分(一点鎖線で囲んだ部分)を拡大して示したものである。図8に示すように、長手方向に16枚の太陽電池セル4を直列に接続したものを2mm間隔で平行に7組並べ、合計112枚のセルを、第1封止樹脂シート20の上に配置した。隣接する太陽電池セル4間の間隙部9の幅は、縦横ともに2mmである。直列に配置された太陽電池セル4の端部では、太陽電池セル4に接続されている導線8同士を5mm離れた位置の導線51で接続した。太陽電池セル4の端から受光面側透明板2の端部までの距離、すなわち余白部10の幅は、図7における左右端で65mm、上下端で69mmとした。図の左側の余白部10では、導線51同士を導線52で接続した。導線51,52としては、幅4.0mmで厚さ0.25mmのハンダディップ銅リボン線を使用した。
続いて、図9に示すように、余白部10に封止樹脂シート片40を配置する。封止樹脂シート片40は余白部10の全周にわたり、受光面側透明板2の端部に沿って配置した。左右の余白部10(幅が65mm)では、封止樹脂シート片40の幅は37mmであり、上下の余白部10(幅が69mm)では、封止樹脂シート片40の幅は40mmである。封止樹脂シート片40の内側には、約7mmの間隔をあけて幅15mmの封止樹脂シート片45を封止樹脂シート片40と平行に配置した。封止樹脂シート片45と太陽電池セル4の端部との距離は約7mmである。このとき、左側の余白部10においては、導線52の上に封止樹脂シート片45が重ならないように、他の余白部10よりも少しだけ外側にシフトさせて配置した。封止樹脂シート片40よりも細幅の封止樹脂シート片45が内側に配置されることによって、封止樹脂シート片40が加熱によって溶融したときに、太陽電池セル4の方向に不均一に流れ込むことを防止することができる。これにより、太陽電池セル4の移動や気泡の発生を防止することができる。その後、長さ100mm、幅10mmの封止樹脂シート片41を受光面側透明板2の端部に沿って間歇的に配置した。これにより、引き続き積層される封止樹脂シート31と封止樹脂シート片40との間に間隙を設けることができ、封止樹脂シート23と封止樹脂シート31の間に形成される空間の空気を円滑に排出することができる。
引き続き、図10に示すように、右側の余白部10に存在する導線51の部分及び左側の余白部10に存在する導線52の部分にそれぞれ幅5mmの間隙36をあけて、ほぼ全面を、3枚のシートから構成される封止樹脂シート31で覆った。間隙36を通して、導線51及び52に導線50を接続することが可能である。次に、長さ100mm、幅10mmの封止樹脂シート片42を受光面側透明板2の端部に沿って間歇的に配置した。また、後に配置される導線50の下側に重なる位置に幅10mmで厚さ0.1mmの絶縁フィルム55を配置した。さらに後に配置される導線53,54の下側に重なる位置にも、幅30mm、長さ100mmで厚さ0.1mmの絶縁フィルム56を配置した。
次に、図11に示すように、右側の余白部10に存在する導線51の部分及び左側の余白部10に存在する導線52の部分にそれぞれ幅5mmの間隙36をあけて、ほぼ全面を、3枚のシートから構成される封止樹脂シート32で覆った。次に、図の右側の余白部10に存在する導線51から、左側の余白部10に存在する導線52までを、導線50で接続し、導線50を封止樹脂シート32の上に配置した。導線50としては、幅6mmで厚さ0.1mmのハンダディップ銅リボン線を使用した。また、左側の余白部10に存在する電気配線(図示せず)に、端子ボックスに引き出される2本の導線53,54を接続した。導線53,54は、導線50と同じものである。左側の余白部10に存在する電気配線(図示せず)や導線52には、モジュールの仕様などに応じてダイオードなどの素子が組み込まれていても良い。
続いて、図12に示すように、導線50の部分が約20mmの幅で欠落し、導線53,54の部分が40×130mmの寸法で欠落した封止樹脂シート33で覆い、前記欠落部分の導線50の上には、ハイシート工業株式会社製「ソーラーエバSC36」の厚さ0.4mmのものからなる15mm幅の封止樹脂シート片44を配置した。また、前記欠落部分の導線53,54の上には、欠落した範囲の実質的に全体を覆うように、0.4mmの厚さの封止樹脂シート片46を配置した。次に、長さ100mm、幅10mmの封止樹脂シート片43を受光面側透明板2の端部に沿って間歇的に配置した。
引き続き、全面を封止樹脂シート34で覆った。図13に示されるように封止樹脂シート34には、長さ300mmの切り込み37が入れられており、この切り込みから端子ボックスに引き出される2本の導線53,54を引き出した。その後、裏面板3を重ねた。受光面側透明板2としては、1760mm×850mm×10mmのフロート板強化ガラス(青板ガラス)を使用した。当該強化ガラスの表面圧縮応力は100MPaであり、JIS R3206に準拠して測定した反りは0.25%であった。また、裏面板3には端子ボックスに引き出される2本の導線53,54を通すための20mm径の円形開口部が設けられている。裏面板3をその凹面が下になるようにして、裏面板3に設けられた開口から2本の導線53,54を引き出して重ねた。
以上のようにして、封止操作に供するための積層体60が得られた。ここで、第1封止樹脂シート20は3枚の封止樹脂シートからなりその合計厚みは1.8mmである。また、第2封止樹脂シート30は、4枚の封止樹脂シートからなりその合計厚みは2.4mmである。また、余白部10に配置された封止樹脂シート片40,41,42,43の合計厚みは2.4mmであった。
こうして得られた積層体60の端面の全周をブリーダー62で覆い、封止処理容器であるゴム製の袋61の中に投入し、袋61を封じた。積層体60の端面をブリーダー62で覆うのは、積層体60内部の溶融樹脂が流出するのを防ぐとともに、積層体60内部からの空気の排出ルートを確保するためである。
上記ゴム製の袋61は熱風炉66の中に設けられた棚67に複数セットが並べて配置される。それぞれのゴム製の袋61には排気可能なパイプ63が接続されていて、それが圧力調整弁64を介して真空ポンプ65に接続されている。封止処理装置の概略図を図14に示す。
以上のようにセッティングしてから、以下の工程1〜6の封止処理操作を行った。このときの温度と圧力は、表1及び図15に示すとおりに制御した。このとき温度は熱風炉66内の温度であり、圧力は圧力調整弁64で設定した圧力である。
工程1:「封止処理容器内の圧力を0.05MPa以上に保って封止樹脂を加熱する工程」
熱風炉66内の温度を、25℃から55℃まで45分かけて昇温し、その後45分間55℃に維持した。この間、圧力は大気圧(0.1MPa)に維持した。
工程2:「封止樹脂の融点未満の温度において封止処理容器内を0.01MPa以下の圧力まで減圧する工程」
熱風炉66内の温度を45分間55℃に維持してから、55℃から60℃まで90分間かけてゆっくりと昇温した。その間、封止処理容器内の圧力を0.1MPaから0.005MPa未満まで、135分間かけてゆっくりと減圧した。
工程3:「減圧したままで封止樹脂の融点以上の温度まで昇温する工程」
熱風炉66内の温度を、60℃から71℃(封止樹脂の融点)まで180分かけてゆっくり昇温し、71℃で90分間維持してから、71℃から75℃まで40分かけて昇温した。この間、封止処理容器内の圧力を0.005MPa未満に維持した。
工程4:「前記封止処理容器内の圧力を上昇させる工程」
前記工程3において、熱風炉66内の温度が75℃になったところで昇圧を開始し、封止処理容器内の圧力を0.005MPa未満から0.07MPaまで60分かけてゆっくりと昇圧した。この間、温度は75℃から80℃まで50分かけてゆっくりと昇温し、80℃から92.5℃まで10分かけて昇温した。このときの昇温速度(℃/分)に対する昇圧速度(MPa/分)の比は、0.004(MPa/℃)であった。
工程5:「架橋反応が進行する温度範囲まで昇温して架橋反応を進行させる工程」
引き続き、50分かけて92.5℃から155℃まで昇温し、155℃で36分間維持して架橋反応を進行させた。その間0.07MPaの圧力を維持した。
工程6:「冷却する工程」
続いて、0.07MPaの圧力を維持しながら30分かけて155℃から100℃まで冷却し、100℃から30℃までは360分かけてゆっくりと冷却した。30℃になったところで、約1分かけて封止処理容器内の圧力を0.1MPa(大気圧)まで上昇させ、熱風炉66から取り出した。
得られた太陽電池モジュールは、セルの割れや欠け、導線の断線は一切なく、気泡残りも観察されず、周辺部での封止樹脂のはみ出しやヒケも観察されなかった。また、太陽電池セルは、規則正しく配列されて封止されていた。
実施例2
封止処理操作において、工程6における冷却速度を速くした以外は、実施例1と同様にして封止処理操作を行った。各工程の操作は以下のとおりである。このときの温度と圧力は、表2及び図16に示すとおりに制御した。
工程1〜5:
実施例1と同じ操作を行った。
工程6:「冷却する工程」
続いて、0.07MPaの圧力を維持しながら60分かけて155℃から30℃まで冷却し、30℃になったところで、約1分かけて封止処理容器内の圧力を0.1MPa(大気圧)まで上昇させ、熱風炉66から取り出した。
得られた太陽電池モジュールにおいては、一部のセルに割れや欠けが観察される場合があった。ただし、導線の断線は一切なく、気泡残りも観察されず、周辺部での封止樹脂のはみ出しやヒケも観察されなかった。また、太陽電池セルは、規則正しく配列されて封止されていた。