JP2005302552A - 電子放出部形成用材料並びに該材料を用いた電子放出素子、電子源、画像表示装置の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 基板上に液滴を付与して導電性薄膜を形成し、該導電性薄膜に通電処理を施して電子放出部を形成する電子放出素子の製造方法において、上記導電性薄膜形成工程において金属化合物の結晶が析出することのない電子放出部形成用材料を提供する。
【解決手段】 有機金属化合物であって、光学異性体以外の立方異性体の混合物を含む溶液を液滴で付与して乾燥、加熱焼成し、導電性薄膜を形成する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、導電性薄膜に電子放出部を形成してなる表面伝導型電子放出素子において、該導電性薄膜の形成に用いる材料に関し、さらには、該材料を用いた電子放出素子の製造方法、さらには、該電子放出素子を用いてなる電子源及び画像表示装置の製造方法に関する。
従来より、冷陰極電子放出素子として表面伝導型電子放出素子が知られている。この電子放出素子の基本構成は、絶縁性基板上に一対の素子電極と、両素子電極を連絡する導電性薄膜とを形成し、上記素子電極間に電圧を印加して上記導電性薄膜を局所的に破壊、変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗な状態にした電子放出部を形成してなる。そして、上記導電性薄膜は、絶縁性基板上に導電性材料を蒸着、スパッタリング等の堆積技術で直接形成することが知られている。
しかしながら、蒸着やスパッタリングを用いて導電性薄膜を形成する場合、大面積基板に多数の素子を形成することが困難であるとともに、製造コストが高いという問題があった。
この問題を解決する手段として、金属含有液体の液滴をインクジェット方式を利用して絶縁性基板上に付与し、導電性薄膜を形成する技術が特許文献1,2に開示されている。
特開平6−313439号公報 特開平6−313440号公報
上記したインクジェット方式により導電性薄膜を形成する方法は、液滴の金属含有液体の結晶性が問題となり、液滴を付与する工程中に或いは液滴を付与してから次の工程に移行する間に金属化合物の結晶が析出するなどして、得られる導電性薄膜の膜質が不均一化し、均質な素子が形成できないといった不都合が生じる場合があった。
本発明の目的は、基板上に液滴を付与して導電性薄膜を形成する工程において、結晶が析出することのない有機金属化合物を提供し、さらに、該有機金属化合物を用いた電子放出素子、電子源、画像表示装置の各製造方法を提供することにある。
本発明の第1は、基板上に一対の素子電極を形成し、次いで、電子放出部形成用材料を含む溶液を液滴の状態で上記素子電極間に付与して加熱焼成することにより導電性薄膜を形成し、該導電性薄膜に上記素子電極を介して通電処理を施して電子放出部を形成する電子放出素子の製造方法に用いる電子放出部形成用材料であって、
該電子放出部形成用材料が、有機金属化合物であって、立体異性体の混合物であることを特徴とする電子放出部形成用材料である。
本発明の第2は、基板上に一対の素子電極を形成し、次いで、電子放出部形成用材料を含む溶液を液滴の状態で上記素子電極間に付与して加熱焼成することにより導電性薄膜を形成し、該導電性薄膜に上記素子電極を介して通電処理を施して電子放出部を形成する電子放出素子の製造方法であって、上記電子放出部形成用材料が、本発明第1の電子放出部形成用材料であることを特徴とする。
本発明の第3は、基板上に複数の電子放出素子と、該複数の電子放出素子を駆動するための配線とを備えた電子源の製造方法であって、上記電子放出素子を、本発明第2の電子放出素子の製造方法により製造することを特徴とする。
本発明の第4は、基板上に複数の電子放出素子と、該複数の電子放出素子を駆動するための配線とを備えた電子源と、該電子放出素子から放出される電子線の照射により発光する発光部材とを具備する画像表示装置の製造方法であって、上記電子源を、本発明第3の電子源の製造方法により製造することを特徴とする。
本発明の電子放出部形成用材料は、該材料を含む溶液を液滴の状態で基板に付与しても、金属化合物の結晶が析出することがなく、均質な導電性薄膜を大面積の基板上の任意の部位にのみ選択的に多数形成することができる。よって、当該材料を用いることにより、均一な電子放出部を備えた電子放出素子を再現性良く製造することが可能であり、大面積、高精細の電子源及び画像表示装置の低コストでの製造が実現する。
図1に、本発明の製造方法による電子放出素子の一例の構成を模式的に示す。図1(a)は平面図、(b)は(a)中のA−A’断面図である。また、図中、1は基板、2,3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部である。図2は、図1の構成の電子放出素子の製造工程であり、図中、21は液滴付与手段、22は液滴である。
以下に、本発明の電子放出部形成用材料及びこれを用いた電子放出素子の製造方法について、図2の製造工程に沿って詳細に説明する。
〔工程1〕
基板1を洗剤、純水及び有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により素子電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に素子電極2,3を形成する〔図2(a)〕。
基板1としては、石英ガラス、Naなどの不純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法等により形成したSiO2を積層したガラス基板等及びアルミナ等のセラミックス等が用いられる。
対向する素子電極2,3の材料としては、一般的導体材料が用いられ、例えばNi,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,Cu,Pd等の金属或は合金及びPd,Ag,Au,RuO2,Pd−Ag等の金属或は金属酸化物とガラス等から構成される印刷導体、In23−SnO2等の透明導体及びポリシリコン等の半導体材料等より適宜選択される。
素子電極間隔(L)は、好ましくは、数百Å〜数百μmであり、より好ましくは、素子電極間に印加する電圧等により、数μm〜数十μmである。また、素子電極長さ(W)は、好ましくは、電極の抵抗値、電子放出特性により、数μm〜数百μmであり、また素子電極2,3の膜厚dは、数百Å〜数μmである。
〔工程2〕
素子電極2,3間を跨ぐように、本発明の電子放出部形成用材料を含む溶液を、液滴付与手段21により、液滴22の状態で基板1上に付与する〔図2(b)〕。
本発明の電子放出部形成用材料は、有機金属化合物であって、立体異性体の混合物である。立体異性体とは、分子式及び原子の結合順序が同じで、原子の三次元的な空間配置が異なる化合物をいい、幾何異性体・光学異性体・配座異性体の三種がある。幾何異性体とは、2つの原子或いは原子団が両者の共通の基準平面の相対位置が異なる化合物をいい、光学異性体とは、互いに鏡像の関係にある化合物をいい、配座異性体とは、結合の周囲の回転によって生じる立体的配置の異なる化合物をいう。
一般に混合物は、純物質よりも固体として存在しにくいこと、即ち結晶性が低下することが知られているが、本発明で用いられる立体異性体の混合物は、物理化学的性質の異なる異性体となる、光学異性体以外の立体異性体を含むことが好適となる。光学異性体以外の立体異性体のなかでも、本発明の目的を達するためには、簡便且つ安価に調製できるジアステレオマーを用いることが好ましい。
さらに、光学異性体以外の立体異性体の中で、最も多い異性体の構成比率の範囲は、用いる有機金属化合物の種類によって最適な範囲が多少異なるが、一般には80%以下の範囲が適当である。最も多い異性体の構成比率が80%より大きすぎると、結晶性が顕著となるため、基板に付与された液滴が後の工程で乾燥或いは焼成される際に著しく不均一化し、その結果として導電性薄膜が不均一になり電子放出素子の特性を悪化させる。
本発明で用いられる前記有機金属化合物の金属元素としては、白金、パラジウム、ルテニウム等の白金族元素、金、銀、銅、クロム、タンタル、鉄、タングステン、鉛、亜鉛、スズ等を用いることができる。また、有機成分としては、配位原子として窒素、酸素、リン、硫黄などを含む炭素数4〜12程度の有機化合物、具体的にはアミン、アルコールアミン、アミノ酸、ホスフィン、スルフィド、スルホン等が好ましく挙げられる。
本発明の電子放出素子の製造方法において用いられる液滴付与手段21としては、微小な液滴22を効率良く適度な精度で発生して付与でき、制御性も良好なインクジェット方式が便利である。インクジェット方式にはピエゾ素子等のメカニカルな衝撃により液滴を発生付与するものや、微少ヒーター等で液を加熱し、突沸により液滴を発生付与するバブルジェット(登録商標)方式などがあるが、いずれの方式でも10ng程度から数10μg程度までの微小液滴を再現性良く発生し基板に付与することができる。このような金属含有水溶液を基板1上に塗布して導電性薄膜4を形成する工程において、本発明の電子放出部形成用材料を用いるならば、該材料を含む溶液を付与する工程中及び次の工程に移行するまでの間に金属化合物の結晶が析出することもなく、容易に均質な塗膜を形成することができ、均質な導電性薄膜4とすることができる。
〔工程c〕
上記手段で基板1に付与された電子放出部形成用材料を含む溶液を、乾燥、加熱焼成することにより、導電性薄膜4を得る〔図2(c)〕。
かかる乾燥工程は通常用いられる自然乾燥、送風乾燥、熱乾燥等を用いればよい。また、加熱焼成工程は通常用いられる加熱手段を用いればよい。乾燥工程と焼成工程とは必ずしも区別された別工程として行う必要はなく、連続してまたは同時に行ってもかまわない。通常有機成分は1000℃以下、ほとんどの場合300℃前後で分解して金属、金属酸化物などの無機化合物、或いはそれらの表面に炭素数の小さな簡単な有機物が吸着した組成物に変化する。
本発明にかかる導電性薄膜4の膜厚は素子電極2,3へのステップカバレージ、素子電極2,3間の抵抗値及び後述する通電フォーミング条件等によって、適宜設定され、好ましくは数Å〜数千Åで、特に好ましくは10Å〜500Åであり、その抵抗値は、1×102〜1×107Ω/□のシート抵抗値である。
また、通常前記のようにして形成された導電性薄膜4は、微視的には電子放出部形成用材料を含む溶液に含まれていた金属原子が数個から数千個凝集した微粒子が多数集合した形態を有する。
尚、ここで述べる微粒子とは複数の微粒子が集合した膜であり、その微細構造として、微粒子が個々に分散配置した状態のみならず、微粒子が互いに隣接、或いは重なり合った状態(島状も含む)の膜をさしており、微粒子の粒径は、数Å〜数千Å、好ましくは10Å〜200Åである。
〔工程d〕
続いて、通電フォーミングと呼ばれる通電処理を行ない、導電性薄膜4に電子放出部5を形成する〔図2(d)〕。
素子電極2,3間に不図示の電源を用いて、適当な真空度のもとで通電を行うと、導電性薄膜4の部位に、構造の変化した電子放出部5が形成される。この通電フォーミングによれば導電性薄膜4を局所的に破壊、変形もしくは変質等の構造の変化した部位が形成される。該部位が電子放出部5を構成する。
通電フォーミングの電圧波形の例を図3に示す。電圧波形は、特にパルス波形が好ましい。これにはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加する図3(a)に示した手法とパルス波高値を増加させながら電圧パルスを印加する図3(b)に示した手法がある。
図3(a)におけるT1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔である。通常T1は1μsec〜10msec、T2は10μsec〜100msecの範囲で設定される。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、電子放出素子形態に応じて適宜選択し、適当な真空度で数秒〜数十分印加する。このような条件のもと、例えば、数秒〜数十分間電圧を印加する。尚、素子電極2,3間に印加するパルス波形は三角波に限定されるものではなく、矩形波など所望の波形を採用することができる。
図3(b)におけるT1及びT2は、図3(a)に示したのと同様とすることができる。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、例えば0.1Vステップ程度ずつ増加させ、適当な真空雰囲気下で印加する。
尚、この場合の通電フォーミング処理の終了は、パルス間隔T2中に、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形しない程度の電圧を印加し、電流を測定して検知することができる。例えば0.1V程度の電圧印加により流れる素子電流を測定し、抵抗値を求めて、1MΩ以上の抵抗を示した時、通電フォーミングを終了させる。
〔工程e〕
フォーミングを終えた素子には活性化工程と呼ばれる処理を施すのが好ましい。活性化工程とは、この工程により、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化する工程である。
活性化工程は、例えば、有機物質のガスを含有する雰囲気下で、通電フォーミングと同様に、パルスの印加を繰り返すことで行うことができる。この雰囲気は例えば油拡散ポンプやロータリーポンプなどを用いて真空容器内を排気した場合に雰囲気内に残留する有機ガスを利用して形成することができる他、イオンポンプなどにより一旦十分に排気した真空中に適当な有機物質のガスを導入することによっても得られる。この時の好ましい有機物質のガス圧は、前述の応用の形態、真空容器の形状や、有機物質の種類などにより異なるため場合に応じ適宜設定される。適当な有機物質としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類等を挙げることができ、具体的には、メタン、エタン、プロパンなどCn2n+2で表される飽和炭化水素、エチレン、プロピレンなどCn2n+2等の組成式で表される不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等が使用できる。この処理により、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素或いは炭素化合物が素子上に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化するようになる。
活性化工程の終了判定は素子電流Ifと放出電流Ieを測定しながら、適宜行う。尚、パルス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設定される。
炭素及び炭素化合物とは、グラファイト(いわゆる高配向性熱分解炭素HOPG、熱分解炭素PG、無定形炭素GCを包含する、HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が200Å程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が20Å程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指す)、非晶質カーボン(アモルファスカーボン及び、アモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混合物を指す)であり、その膜厚は、500Å以下の範囲とするのが好ましい。
このような工程を経て得られた電子放出素子は、安定化工程を行うことが好ましい。この工程は、真空容器内の有機物質を排気する工程である。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げることができる。
前記活性化の工程で、排気装置として油拡散ポンプを用い、これから発生するオイル成分に由来する有機物質ガスを用いた場合は、この成分の分圧を極力低く抑える必要がある。真空容器内の有機物質成分の分圧は、上記の炭素及び炭素化合物がほぼ新たに堆積しない分圧で1.3×10-6Pa以下が好ましく、さらには1.3×10-8Pa以下が特に好ましい。さらに真空容器内を排気するときには、真空容器全体を加熱して、真空容器内壁や、電子放出素子に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱条件は80〜200℃で5時間以上が望ましいが、特にこの条件に限るものではなく、真空容器の大きさや形状、電子放出素子の構成などの諸条件により適宜選ばれる条件により行う。真空容器内の圧力は極力低くすることが必要で、1.3×10-5以下が好ましく、さらに1.3×10-6Pa以下が特に好ましい。
安定化工程を行った後の駆動時の雰囲気は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ましいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な特性を維持することができる。このような真空雰囲気を採用することにより、新たな炭素或いは炭素化合物の堆積を抑制でき、結果として素子電流If、放出電流Ieが、安定する。
上述のような素子構成と製造方法によって作製された電子放出素子の基本特性について図4、図5を参照しながら説明する。
図4は、図1で示した構成を有する電子放出素子の電子放出特性を測定するための測定評価装置の概略構成図である。図4においても、図1に示した部位と同じ部位には同一の符号を付している。図4中、40は素子電極2,3間の導電性薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計、44は素子の電子放出部5より放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極である。43はアノード電極44に電圧を印加するための高圧電源、42は素子の電子放出部5より放出される放出電流Ieを測定するための電流計、45は真空装置である。
また、本装置では、電子放出素子及びアノード電極44等は真空装置45内に設置され、その真空装置45には排気ポンプ46及び不図示の真空計等の真空装置に必要な機器が具備されており、所望の真空下で電子放出素子の測定評価を行えるようになっている。従って、本測定装置では、前述の通電フォーミング以降の工程も行うことができる。尚、アノード電極45の電圧は1kV〜10kV、アノード電極45と電子放出素子との距離Hは2mm〜8mmの範囲で測定される。
図4に示した測定評価装置を用いて測定された放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧Vfの関係の典型的な例を図5に示す。尚、図5は放出電流Ieが素子電流Ifに比べて著しく小さいので、任意単位で示している。
図5からも明らかなように、本発明による電子放出素子は、放出電流Ieに対する以下の三つの特徴的特性を有する。
(1)ある電圧(しきい値電圧と呼ぶ、図5中のVth)以上の素子電圧を印加すると急激に放出電流Ieが増加し、一方しきい値電圧Vth以下では放出電流Ieがほとんど検出されない。つまり、放出電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vthを持った非線形素子である。
(2)放出電流Ieが素子電圧Vfに単調増加依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制御できる。
(3)アノード電極44に捕捉される放出電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。即ち、アノード電極34に捕捉される電荷量は、素子電圧Vfを印加する時間により制御できる。
以上の特性を利用し、本発明による電子放出素子を基板上に複数形成し、該素子を接続する配線を形成して電子源を構成することができ、さらに、該電子源と、電子放出素子から放出された電子線の照射により発光する発光部材とを組み合わせて画像表示装置を構成することができる。以下、電子源及び画像表示装置について説明する。
本発明にかかる電子源において、基板上への電子放出素子の配列の方式としては、一般的な、単純マトリクス配置が好適に用いられる。即ち、m本のX方向配線の上にn本のY方向配線を層間絶縁層を介して設置し、電子放出素子の一対の電子電極にそれぞれX方向配線、Y方向配線を接続した配置法である。
前述した、本発明による電子放出素子の基本的特性の3つの特徴によれば、単純マトリクス配置された電子放出素子においても、電子放出素子からの放出電子は、しきい値電圧Vth以上では対向する素子電極間に印加するパルス状電圧の波高値と幅に制御される。一方、しきい値電圧Vth以下においては電子は殆ど放出されない。この特性によれば、多数の電子放出素子を配置した場合においても、個々の素子に上記パルス状電圧を適宜印加すれば、任意の電子放出素子を選択することができ、その電子放出量を制御できることとなる。
以下、この原理に基づいて構成した電子源の構成について、図6を用いて説明する。図6において61は電子源基板、62はX方向配線、63はY方向配線、64は電子放出素子、65は結線である。
同図において、電子源基板61は図1,図2の基板1であり、その大きさ及びその厚みは電子源基板61に設置される電子放出素子の個数及び個々の素子の設計上の形状、及び電子源の使用時の容器の一部を構成する場合には、その容器を真空に保持するための条件等に依存して適宜設定される。
m本のX方向配線62はDx1,Dx2,・・・Dxmからなり、電子源基板61上に真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等で形成した導電性金属等である。また、多数の電子放出素子にほぼ均等な電圧が供給されるように材料、膜厚、配線幅等が適宜設定される。Y方向配線63はDy1,Dy2,・・・Dynのn本の配線よりなり、X方向配線62と同様に作製される。これらm本のx方向配線62とn本のY方向配線63間には、不図示の層間絶縁層が設置され、電気的に分離されてマトリクス配線を構成する。このm,nは、共に正の整数である。不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等で形成されたSiO2等でありX方向配線62を形成した電子源基板61の全面或いは一部に所望の形状で形成され、特に、X方向配線62とY方向配線63の交差部の電位差に耐え得るように、膜厚、材料、製法が適宜設定される。また、X方向配線62とY方向配線63は、それぞれ外部端子として引き出されている。
さらに、電子放出素子64の対向する素子電極(図1、図2の素子電極2,3)が、m本のX方向配線62とn本のY方向配線63と、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等で形成された導電性金属等からなる結線65によって電気的に接続されているものである。
ここで、m本のX方向配線62とn本のY方向配線63と結線65と対向する素子電極の導電性金属は、その構成元素の一部或いは全部が同一であっても、またそれぞれ異なってもよく、前述の素子電極の材料等より適宜選択される。尚、これら素子電極への配線は、素子電極と配線材料が同一である場合は、素子電極と総称する場合もある。また電子放出素子64は、基板61或いは不図示の層間絶縁層上のどちらに形成してもよい。
また、詳しくは後述するが、前記X方向配線62には、X方向に配列する電子放出素子64の行を入力信号に応じて走査するための走査信号を印加するための不図示の走査信号発生手段と電気的に接続されている。
一方、Y方向配線63には、Y方向に配列する電子放出素子64の列の各列を入力信号に応じて変調するための変調信号を印加するための不図示の変調信号発生手段と電気的に接続されている。
さらに、各電子放出素子64に印加される駆動電圧は、当該素子64に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給されるものである。
上記構成において、単純なマトリクス配線だけで個別の素子64を選択して独立に駆動可能になる。
次に、図1の構成の電子放出素子を図6の単純マトリクス配置してなる電子源を用いた画像表示装置について、図7〜図9を用いて説明する。図7は、当該画像表示装置の表示パネルの基本構成図であり、一部を切り欠いて示す斜視図である。また、図8は図7の表示パネルに用いられる蛍光膜の構成例、図9は図7の画像表示装置をNTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行なう例の駆動回路のブロック図である。
図7中、71は電子源基板61を固定したリアプレート、76はガラス基板73の内面に蛍光膜74とメタルバック75等が形成されたフェースプレート、72は支持枠であり、リアプレート71、支持枠72及びフェースプレート76をフリットガラス等を塗布し、大気中或いは窒素中で、400〜500℃で10分以上焼成することで封着して、外囲器78を構成する。また、図6と同じ部材には同じ符号を付した。
外囲器78は上述の如く、フェースプレート76、支持枠72、リアプレート71で外囲器78を構成したが、リアプレート71は主に基板61の強度を補強する目的で設けられるため、電子源基板61自体で十分な強度を持つ場合は別体のリアプレート71は不要であり、基板61に直接支持枠72を封着し、フェースプレート76、支持枠72、基板61にて外囲器78を構成しても良い。またさらには、フェースプレート76、リアプレート71間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することで、大気圧に対して十分な強度をもつ外囲器78の構成にすることもできる。
蛍光膜74は、モノクロームの場合は蛍光体のみからなるが、カラーの蛍光膜の場合は、図8に示すように、蛍光体の配列によりブラックストライプ〔図8(a)〕或いはブラックマトリクス〔図8(b)〕などと呼ばれる黒色導電材81と蛍光体82とで構成される。ブラックストライプ、ブラックマトリクスが設けられる目的は、カラー表示の場合必要となる三原色蛍光体の、各蛍光体82間の塗り分け部を黒くすることで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜74における外光反射によるコントラストの低下を抑制することである。ブラックストライプの材料としては、通常よく用いられている黒鉛を主成分とする材料だけでなく、導電性があり、光の透過及び反射が少ない材料であればこれに限るものではない。
ガラス基板83に蛍光体を塗布する方法はモノクローム、カラーによらず、沈殿法や印刷法が用いられる。
また、蛍光膜74の内面側には通常メタルバック75が設けられる。メタルバックの目的は、蛍光体の発光のうち内面側への光をフェースプレート76側へ鏡面反射することにより輝度を向上すること、電子ビーム加速電圧を印加するための電極として作用すること、外囲器78内で発生した負イオンの衝突によるダメージからの蛍光体の保護等である。メタルバック75は、蛍光膜74作製後、蛍光膜74の内面側表面の平滑化処理(通常フィルミングと呼ばれる)を行い、その後A1を真空蒸着等で堆積することで作製できる。
フェースプレート76には、さらに蛍光膜74の導電性を高めるため、蛍光膜74の外面側に透明電極(不図示)を設けてもよい。
前述の封着を行う際、カラーの場合は各色蛍光体と電子放出素子64とを対応させなくてはいけないため、十分な位置合わせを行なう必要がある。
外囲器78は不図示の排気管を通じ、1.3×10-5Pa程度の真空度にされ、封止が行なわれる。また、外囲器78の封止後の真空度を維持するために、ゲッター処理を行なう場合もある。これは、外囲器78の封止を行なう直前或いは封止後に、抵抗加熱或いは高周波加熱等の加熱法により、外囲器78内の所定の位置(不図示)に配置されたゲッターを加熱し、蒸着膜を形成する処理である。ゲッターは通常Ba等が主成分であり、該蒸着膜の吸着作用により、例えば1.3×10-3〜1.3×10-5Paの真空度を維持するものである。尚、電子放出素子64のフォーミング以降の工程は、適宜設定される。
以上のように完成した画像表示装置においては、容器外端子Dox1〜Doxm、Doy1〜Doynを通じて電子放出素子に電圧を印加することにより電子放出させ、高圧端子Hvを通じ、メタルバック75、或いは透明電極(不図示)に高圧を印加し、電子ビームを加速し、蛍光膜74に衝突させ、励起・発光させることで画像を表示することができる。
次に、図7の画像表示装置において、NTSC方式のテレビ信号にもとづきテレビジョン表示を行なうための駆動回路の概略構成を、図9のブロック図を用いて説明する。図9中、91は前記表示パネルであり、また、92は走査回路、93は制御回路、94はシフトレジスタ、95はラインメモリ、96は同期信号分離回路、97は変調信号発生器、Vx及びVaは直流電圧源である。
以下、各部の機能を説明していくが、先ず表示パネル91は、端子Dox1〜Doxm、及び端子Doy1〜Doyn、及び高圧端子Hvを介して外部の電気回路と接続している。このうち、端子Dox1〜Doxmには、前記表示パネル内に設けられている電子源、即ちm行×n列の行列状にマトリクス配線された電子放出素子群を一行(n素子)ずつ順次駆動していくための走査信号が印加される。
一方、端子Doy1〜Doynには、前記走査信号により選択された一行の電子放出素子の各素子の出力電子ビームを制御するための変調信号が印加される。また、高圧端子Hvには、直流電圧源Vaより、例えば10K[V]の直流電圧が供給されるが、これは電子放出素子より出力される電子ビームに蛍光体を励起するのに十分なエネルギーを付与するための加速電圧である。
次に、走査回路92について説明する。同回路は、内部にm個のスイッチング素子を備えるもので、該スイッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧もしくは0[V](グランドレベル)のいずれか一方を選択し、表示パネル91の端子Dox1〜Doxmと電気的に接続するものである。各スイッチング素子は、制御回路93が出力する制御信号Tscanに基づいて動作するものだが、実際には例えばFETのようなスイッチング素子を組み合わせることにより容易に構成することが可能である。
尚、前記直流電圧源Vxは、本実施態様の場合には前記電子放出素子の特性(電子放出しきい値電圧Vth)に基づき、走査されていない素子に印加される駆動電圧が電子放出しきい値電圧Vth以下となるような一定電圧を出力するよう設定されている。
また、制御回路93は、外部より入力する画像信号に基づいて適切な表示が行なわれるように各部の動作を整合させる働きを持つものである。次に説明する同期信号分離回路96より送られる同期信号Tsyncに基づいて、各部に対してTscan及びTsft及びTmryの各制御信号を発生する。
同期信号分離回路96は、外部から入力されるNTSC方式のテレビ信号から、同期信号成分と輝度信号成分とを分離するための回路で、よく知られているように周波数分離(フィルター)回路を用いれば、容易に構成できるものである。同期信号分離回路96により分離された同期信号は、よく知られるように垂直同期信号と水平同期信号よりなるが、ここでは説明の便宜上、Tsync信号として図示した。一方、前記テレビ信号から分離された画像の輝度信号成分を便宜上DATA信号と表すが、同信号はシフトレジスタ94に入力される。
シフトレジスタ94は、時系列的にシリアルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制御回路93より送られる制御信号Tsftにもとづいて動作する(即ち、制御信号Tsftは、シフトレジスタ94のシフトクロックであると言い換えても良い。)。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分(電子放出素子n素子分の駆動データに相当する)のデータは、Id1〜Idnのn個の並列信号として前記シフトレジスタ94より出力される。
ラインメモリ95は、画像1ライン分のデータを必要時間の間だけ記憶するための記憶装置であり、制御回路93より送られる制御信号Tmryに従って適宜Id1〜Idnの内容を記憶する。記憶された内容は、I’d1〜I’dnとして出力され、変調信号発生器97に入力される。
変調信号発生器97は、前記画像データI’d1〜I’dnの各々に応じて、電子放出素子の各々を適切に駆動変調するための信号源で、その出力信号は、端子Doy1〜Doynを通じて表示パネル91内の電子放出素子に印加される。
前述したように本発明に関わる電子放出素子は放出電流Ieに対して以下の基本特性を有している。即ち、前述したように、電子放出には明確なしきい値電圧Vthがあり、Vth以上の電圧を印加された時のみ電子放出が生じる。
また、電子放出しきい値電圧Vth以上の電圧に対しては、素子への印加電圧の変化に応じて放出電流も変化していく。尚、電子放出素子の材料や構成、製造方法を変えることにより、電子放出しきい値電圧Vthの値や、印加電圧に対する放出電流の変化の度合いが変わる場合もあるが、いずれにしても以下のような事がいえる。即ち、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、例えば電子放出しきい値電圧Vth以下の電圧を印加しても電子放出は生じないが、電子放出しきい値電圧Vth以上の電圧を印加する場合には電子ビームが出力される。その際、第一には、パルスの波高値Vmを変化させることにより出力電子ビームの強度を制御する事が可能である。第二には、パルス幅を変化させることにより出力される電子ビームの電荷の総量を制御することが可能である。
従って、入力信号に応じて、電子放出素子を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調方式等が挙げられ、電圧変調方式を実施するには、変調信号発生器97としては、一定の長さの電圧パルスを発生するが入力されるデータに応じて適宜パルスの波高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いる。
また、パルス幅変調方式を実施するには、変調信号発生器97としては、一定の波高値の電圧パルスを発生するが入力されるデータに応じて適宜電圧パルスの幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いるものである。
以上に説明した一連の動作により、表示パネル91を用いてテレビジョンの表示を行なえる。尚、上記説明中、特に記載しなかったが、シフトレジスタ94やラインメモリ95は、デジタル信号式のものでもアナログ信号式のものでも差し支えなく、要は画像信号のシリアル/パラレル変換や記憶が所定の速度で行なわれればよい。
デジタル信号式を用いる場合には、同期信号分離回路96の出力信号DATAをデジタル信号化する必要があるが、これは96の出力部にA/D変換器を備えれば容易に可能であることは言うまでもない。また、これと関連してラインメモリ95の出力信号がデジタル信号かアナログ信号かにより、変調信号発生器97に用いられる回路が若干異なったものとなるのは言うまでもない。即ち、デジタル信号の場合には、電圧変調方式の場合、変調信号発生器97には、例えばよく知られるD/A変換回路を用い、必要に応じて増幅回路などを付け加えればよい。またパルス幅変調方式の場合、変調信号発生器97は、例えば、高速の発振器及び発振器の出力する波数を計数する計数器(カウンタ)及び計数器の出力値と前記メモリの出力値を比較する比較器(コンパレータ)を組み合せた回路を用いれば当業者であれば容易に構成できる。必要に応じて、比較器の出力するパルス幅変調された変調信号を電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付け加えてもよい。
一方、アナログ信号の場合には、電圧変調方式の場合、変調信号発生器97には、例えばよく知られるオペアンプなどを用いた増幅回路を用いればよく、必要に応じてレベルシフト回路などを付け加えてもよい。また、パルス幅変調方式の場合には、例えばよく知られた電圧制御型発振回路(VCO)を用いればよく、必要に応じて電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付け加えてもよい。
以上述べた構成は、表示等に用いられる好適な画像表示装置を作製する上で必要な概略構成であり、例えば各部材の材料等、詳細な部分は上述内容に限られるものではなく、画像表示装置の用途に適するよう適宜選択する。また、入力信号例として、NTSC方式をあげたが、これに限るものでなく、PAL、SECAM方式などの諸方式でもよく、また、これよりも、多数の走査線からなるTV信号(例えば、MUSE方式をはじめとする高品位TV)方式でもよい。
本発明の思想によれば、テレビジョン放送の表示装置のみならず、テレビ会議システム、コンピューター等の表示装置として、好適な画像表示装置が提供される。さらには、感光性ドラム等とで構成された光プリンターとしての画像表示装置としても用いることもできる。
これら電子放出素子、電子源及び画像表示装置においては、素子電流(If)、放出電流(Ie)、電子放出効率(η=Ie/If)ならびにそれらの変動係数で、均一性の評価を行うことができる。
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
酢酸パラジウム−(DL−1,2−ジアミノプロパン)錯体を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール25mlを加え、撹拌しながらDL−1,2−ジアミノプロパン1.0gを添加し、室温で4時間撹拌した。反応後、この反応混合液をろ過し、ろ液を減圧して留去した。残渣にアセトンを加え、結晶化させてろ取した。さらにこの結晶にアセトンを加えよく撹拌し再びろ取した。この操作を5回繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗った後、真空乾燥して、酢酸パラジウム−(DL−1,2−ジアミノプロパン)錯体を得た。この錯体の不斉中心は2箇所であり、22=4種の立体異性体が存在しうるが、錯体の対称性により立体異性体はDD体、DL体、LL体の3種となる。ラセミ体のDL−1,2−ジアミノプロパンを用いたことから、これら立体異性体の構成比はDD:DL:LL=1:2:1となり、最も多い構成成分(DL体)の構成比率は50%であった。
(実施例2)
酢酸パラジウム−(DL−3−アミノ−1,2−プロパンジオール)錯体を以下のようにして合成した。
酢酸パラジウム0.5gにイソプロピルアルコール25mlを加え、撹拌しながらDL−3−アミノ−1,2−プロパンジオール1.0gを添加し、室温で4時間撹拌した。反応後、この反応混合液をろ過し、ろ液を減圧して留去した。残渣にアセトンを加え、結晶化させてろ取した。さらにこの結晶にアセトンを加えよく撹拌し再びろ取した。この操作を5回繰り返し、結晶をアセトンで充分に洗った後、真空乾燥して、酢酸パラジウム−(DL−3−アミノ−1,2−プロパンジオール)錯体を得た。この錯体の不斉中心は4箇所であり、24=16種の立体異性体が存在しうるが、錯体の対称性により立体異性体はDDDD体、DDDL体、DDLL体、DLLL体、DLDL体、LLLL体の6種となる。ラセミ体のDL−3−アミノ−1,2−プロパンジオールを用いたことから、これら立体異性体の構成比はDDDD:DDDL:DDLL:DLLL:DLDL:LLLL=1:4:4:4:2:1となり、最も多い構成成分(例えばDDDL体)の構成比率は25%であった。
(実施例3)
本実施例の電子放出素子として図1に示す構成の電子放出素子を、図2の工程により作製した。
〔工程a〕
絶縁性基板1として石英基板を用い、これを有機溶剤により充分に洗浄後、該基板1面上に、白金からなる素子電極2,3を形成した〔図2(a)〕。この時、素子電極間隔Lは10μmとし、素子電極の幅Wを500μm、その厚さdを1000Åとした。
実施例1で合成した酢酸パラジウム−(DL−1,2−ジアミノプロパン)錯体を1.0g、80%ケン化ポリビニルアルコール(平均重合度450)を0.05g、エチルアルコールを25gとり、水を加えて全量を100gとし、パラジウム化合物溶液とした。このパラジウム化合物溶液をポアサイズ0.25μmのメンブレンフィルターでろ過し、キヤノン(株)のバブルジェット(登録商標)プリンタヘッドBC−01に充填し、所定のヘッド内ヒータに外部より20Vの直流電圧を7μsec印加して、前記の石英基板の素子電極2,3のギャップ部分にパラジウム化合物溶液を吐出した。ヘッドと基板1の位置を保持したままさらに5回吐出を繰り返した。液滴はほぼ円形でその直径は約110μmとなった。
この基板を2時間風乾してから、350℃で12分加熱して前記のパラジウム化合物を熱分解したところ、結晶の析出もなく均一な酸化パラジウム膜が生成した。前記素子電極2,3間の電気抵抗は10kΩとなった。
次に、素子電極2,3間に電圧を印加し、電子放出部5を形成した。フォーミング処理の電圧波形は図3(a)のT1を1msec、T2を10msecとし、三角波の波高値(フォーミング時のピーク電圧)は5Vとし、フォーミング処理は約1.3×10-4Paの真空雰囲気下で60秒間行った。
さらに、アセトンを図4の測定評価装置に導入し、4×10-2Paにした。その後、波高値を14V、T1を1msec、T2を10msecとし、15分間印加した活性化工程を行った。続いて、アセトンを排気し、200℃まで加熱し、排気しながら、5時間保持した。
次に、以上の様にして作製した電子放出素子の電子放出特性を図4の測定評価装置を用いて行った。尚、本実施例では、アノード電極44と電子放出素子の距離Hを4mm、アノード電極44の電位を1kVとした。また、電子放出特性測定時の真空装置45内の真空度は、1.3×10-6Paであった。
素子電流If及び放出電流Ieは、図5に示したような電流−電圧特性が得られた。本素子では素子電圧7.4V程度から急激に放出電流Ieが増加し、素子電圧16Vでは素子電流Ifが2.5mA、放出電流Ieが1.0μAとなり、電子放出効率=Ie/If(%)は0.04%であった。
アノード電極44の替わりに、螢光膜74とメタルバック75を有するフェースプレート76を真空装置45内に配置した。こうして電子源からの電子放出を試みたところ螢光膜74の一部が発光し、素子電流Ieに応じて発光の強さが変化した。こうして本素子が発光表示素子として機能することがわかった。
(実施例4)
絶縁性基板1として石英基板を用い、これを有機溶剤により充分に洗浄後、該基板1面上に、Ptからなる素子電極2,3を形成した。素子電極間隔Lは20μmとし、素子電極の幅Wを500μm、その厚さdを1000Åとした。酢酸パラジウム−(DL−3−アミノ−1,2−プロパンジオール)錯体を0.6g、86%ケン化ポリビニルアルコール(平均重合度500)を0.05g、イソプロピルアルコールを25g、エチレングリコールを1gとり、水を加えて全量を100gとし、パラジウム化合物溶液とした。このパラジウム化合物溶液を用いて実施例3と同様の処理を行ない電子放出素子を作製した。素子の作製後、電子放出素子としての評価を行ったところ、素子電圧16Vで電子放出効率は0.054%であった。
(実施例5)
16行×16列の256個の素子電極とマトリクス状配線とを形成した基板の各対向電極に対してそれぞれ実施例3と同様にして、有機金属化合物溶液液滴をバブルジェット(登録商標)方式のインクジェット装置により付与し、焼成した後、フォーミング処理を行ない電子源基板とした。
この電子源基板にリアプレート71、支持枠72、フェースプレート76を接続し、真空封止して図7の構成を有する画像表示装置を作製した。当該装置において、端子Dox1〜Dox16と端子Doy1〜Doy16を通じて各素子に時分割で所定電圧を印加し、端子Hvを通じてメタルバックに高電圧を印加することによって、任意のマトリクス画像パターンを表示することができた。
本発明の製造方法による電子放出素子の一例の構成を示す模式図である。 図1の電子放出素子の製造工程図である。 本発明に用いられるフォーミング電圧の波形図である。 本発明による電子放出素子の電子放出特性を測定するための測定評価装置の概略構成図である。 本発明による電子放出素子の電子放出特性を示す図である。 本発明による単純マトリクス配置の電子源の一例の構成を示す図である。 本発明による画像表示装置の表示パネルの概略構成図である。 図7の画像表示装置に用いられる蛍光膜の一例を示す模式図である。 図7の画像表示装置をNTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行うための駆動回路の一例を示すブロック図である。
符号の説明
1 基板
2,3 素子電極
4 導電性薄膜
5 電子放出部
21 液滴付与手段
22 液滴
40 電流計
41 電源
42 電流計
43 高圧電源
44 アノード電極
45 真空装置
46 排気ポンプ
61 電子源基板
62 X方向配線
63 Y方向配線
64 電子放出素子
65 結線
71 リアプレート
72 支持枠
73 ガラス基板
74 蛍光膜
75 メタルバック
76 フェースプレート
77 高圧端子
78 外囲器
81 黒色導電材
82 蛍光体
83 ガラス基板
91 表示パネル
92 走査回路
93 制御回路
94 シフトレジスタ
95 ラインメモリ
96 同期信号分離回路
97 変調信号発生器

Claims (7)

  1. 基板上に一対の素子電極を形成し、次いで、電子放出部形成用材料を含む溶液を液滴の状態で上記素子電極間に付与して加熱焼成することにより導電性薄膜を形成し、該導電性薄膜に上記素子電極を介して通電処理を施して電子放出部を形成する電子放出素子の製造方法に用いる電子放出部形成用材料であって、
    該電子放出部形成用材料が、有機金属化合物であって、立体異性体の混合物であることを特徴とする電子放出部形成用材料。
  2. 前記有機金属化合物が、少なくとも光学異性体以外の立方異性体の混合物である請求項1に記載の電子放出部形成用材料。
  3. 前記有機金属化合物に含まれる光学異性体以外の立方異性体の中で、最も多い異性体の構成比率が80%以下である請求項2に記載の電子放出部形成用材料。
  4. 前記有機金属化合物の金属種が、白金、パラジウム、ルテニウム、金、銀、銅、クロム、タンタル、鉄、タングステン、鉛、亜鉛、スズのいずれかである請求項1乃至3のいずれかに記載の電子放出部形成用材料。
  5. 基板上に一対の素子電極を形成し、次いで、電子放出部形成用材料を含む溶液を液滴の状態で上記素子電極間に付与して加熱焼成することにより導電性薄膜を形成し、該導電性薄膜に上記素子電極を介して通電処理を施して電子放出部を形成する電子放出素子の製造方法であって、上記電子放出部形成用材料が、請求項1乃至4のいずれかに記載の電子放出部形成用材料であることを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  6. 基板上に複数の電子放出素子と、該複数の電子放出素子を駆動するための配線とを備えた電子源の製造方法であって、上記電子放出素子を、請求項5に記載の電子放出素子の製造方法により製造することを特徴とする電子源の製造方法。
  7. 基板上に複数の電子放出素子と、該複数の電子放出素子を駆動するための配線とを備えた電子源と、該電子放出素子から放出される電子線の照射により発光する発光部材とを具備する画像表示装置の製造方法であって、上記電子源を、請求項6に記載の電子源の製造方法により製造することを特徴とする画像表示装置の製造方法。
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