JP2005295921A - 新規bst1選択的スプライシング変異体及びその用途 - Google Patents

新規bst1選択的スプライシング変異体及びその用途 Download PDF

Info

Publication number
JP2005295921A
JP2005295921A JP2004118693A JP2004118693A JP2005295921A JP 2005295921 A JP2005295921 A JP 2005295921A JP 2004118693 A JP2004118693 A JP 2004118693A JP 2004118693 A JP2004118693 A JP 2004118693A JP 2005295921 A JP2005295921 A JP 2005295921A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
bst1
asv
polypeptide
pancreatic cancer
antibody
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004118693A
Other languages
English (en)
Inventor
Munetaka Mitsuyama
宗孝 光山
Osamu Kanai
理 金井
Toshio Furuya
利夫 古谷
Yoshiitsu Tabata
義巌 田端
Toshiyuki Saito
俊行 齋藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
PharmaDesign Inc Japan
Original Assignee
PharmaDesign Inc Japan
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by PharmaDesign Inc Japan filed Critical PharmaDesign Inc Japan
Priority to JP2004118693A priority Critical patent/JP2005295921A/ja
Publication of JP2005295921A publication Critical patent/JP2005295921A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】本発明は、膵臓癌に特異性の高い、新規腫瘍マーカー 抗原を提供すること、および該新規腫瘍マーカーの検出方法の提供。
【解決手段】本発明の課題を解決するために、正常な膵臓組織には存在せず、癌化した膵臓癌組織または膵臓癌由来の細胞に特異的に発現している、BST1_ASV(BST1の選択的スプライスバリアント)の遺伝子、タンパク質を提供する。また、該遺伝子およびタンパク質を膵臓癌特異的な腫瘍マーカーとして利用し、その存在を確認することで、膵臓癌の発症の有無を確認する方法を提供する。
【選択図】
なし

Description

本発明は、膵臓癌に特異的である新規腫瘍マーカー物質に関する。また、本発明は、当該マーカーを使用した検査方法及び該検査のためのキットにも関する。さらにまた、本発明は前記癌を治療するための医薬組成物にも関する。
最近の医療技術の進歩により、癌の治療技術も大幅に改善されており、ある種の癌については、死亡率の減少傾向を示すものもある。しかしながら、癌の発症を早期に発見することは、その治療効果に影響を与えるものであるため、癌の早期発見を可能にする方法の確立が望まれている。
癌の診断には、癌組織を超音波又はX線検査などにより視覚的にとらえる方法の他、患者から採取した組織を免疫組織学的手法により細胞形態等の異常を発見する方法、並びに、特定の癌の発症に伴い発現に変化が生じるタンパク質又は遺伝子などのいわゆる腫瘍マーカーの動態を検出する生化学的、免疫化学的方法などが知られている。
これらの方法において、組織を免疫組織学的手法によりその形態を観察する方法は、組織の標本化が必要であるため、癌の発症の有無の確認に時間を要し、また、観察された形態から癌の発症の有無を見極めるためにはかなりの熟練が必要となる。
従って、比較的簡便でかつ客観的に癌発症の有無を判断することができる腫瘍マーカーを用いる方法の適用が、しばしば行なわれるようになってきた。しかしながら、腫瘍マーカー
を検出する方法を適用する場合、特定の癌に対するマーカーの特異性が非常に重要となってくる。ヒトの癌の診断において使用される腫瘍マーカーの多くは、正常組織細胞にも、ある程度発現しており、そのため、該腫瘍マーカーの発現の変動を癌化の指標として用いなくてはならないことが多く、誤診断の可能性が常に存在している。また、現在使用されている腫瘍マーカー、例えば、CEAやCA19−9という腫瘍マーカーは、胃、大腸、膵臓、肺など多くの臓器の細胞でつくられるため、それらの血清レベルが高くてもそれだけでは上記のどの臓器に癌病巣があるのか決定することが困難であった。
従って、癌発症の有無を客観的により正確に検出するために、非癌細胞にはその存在が認められず、癌化した細胞だけが産生する物質を腫瘍マーカーとして用いることが望ましい。特に、膵臓癌については、有効なスクリーニング検査法がないため、癌症状が表れた時には手遅れになっていることが多く、膵臓癌の早期発見のためには膵臓癌特異的な腫瘍マーカーの使用が必要とされている。
BST1は、BP−3又はCD157とも称され、慢性関節リウマチ(RA)由来の骨髄間質細胞株に高発現し、プレB細胞増殖支持能に関与するグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合膜タンパク質としてクローニングされ(非特許文献1)、慢性関節リウマチの病態と密接な関連性を有すると考えられている。また、BST1は、ADPリボシルシクラーゼ活性、及びサイクリックADPリボース加水分解活性を有することも報告されている(Hirataら, 1994)。
マウスにおけるBST1の発現は、B細胞においては、プロB細胞の分化段階に始まり成熟B細胞で低下し、また、T細胞においては、胎児期の胸腺細胞及び成体胸腺細胞のT前駆体細胞のうちCD44−CD25+とCD44−CD25−の段階に限って認められた。従って、マウスBST1はリンパ球の初期発生段階で生じるIgH鎖又はTCRb鎖の再構成時において重要な役割を担っていることが考えられる(Ishiharaら, 1996)
また、ヒトの末梢血の顆粒球、単球においてもBST1の発現が確認されている。これらの細胞中において、BST1が何らかの受容体としての役割を果たしていることも示唆されているが、詳細は明らかにされていない。
Kaishoら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:5325−5329, 1994 Adkinsら, Mol Cell Proteomics. 12:947−955, 2002 Anderson及びAnderson, Mol Cell Proteomics. 11:845−867, 2002
そこで、本発明は、上記腫瘍マーカーに関する従来技術の問題点を解決するため、膵臓癌に特異性の高い、新規腫瘍マーカー
抗原を提供することを目的とするものである。
さらに、本発明は、当該腫瘍マーカーを用いた膵臓癌の検出方法を提供することも目的とする。
さらにまた、本発明は、前記検出方法に用いることができるキットを提供することも目的とする。
また、本発明は、上記腫瘍マーカーを標的とした腫瘍治療のための医薬を提供することも目的とする。
本発明者等は、上記事情に鑑み、膵臓癌に特異的な腫瘍マーカーとなり得る抗原を同定すべく、鋭意研究を行った結果、意外にも、新規のBST1の選択的スプライシング変異体(以下、BST1_ASVと記載する)タンパク質及び該遺伝子が膵臓癌由来細胞中で特異的に発現することを見出した。
すなわち、上記課題は以下の(1)〜(12)によって解決される。
(1)本発明の第1の実施態様に係る発明は、「以下の(a)又は(b)のポリペプチドを含むBST1_ASVポリペプチド又はその塩。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号2で示される配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、膵臓癌細胞に特異的に存在するポリペプチド」である。
ここで、「BST1_ASVポリペプチド」とは、配列番号2で表されるアミノ酸配列、又は配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、膵臓癌細胞中に存在するポリペプチドのことである。さらに、これらのポリペプチドの部分ペプチド、断片も本発明の「BST1_ASVポリペプチド」に含まれる。
(2)本発明の第2の実施態様に係る発明は、「配列番号1で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。」である。即ち、配列番号1からなる塩基配列によりコードされるポリペプチドのN末端又はC末端部に、当業者において周知のタグポリペプチド、例えば、Flag、myc、HA、GSTなどを連結するために、配列番号1のポリヌクレオチド以外のポリペプチドを連結するポリペプチドも本発明のポリペプチドに含まれる。
(3)本発明の第3の実施態様に係る発明は、「前記BST1_ASVポリペプチドをコードする遺伝子。」である。
(4)本発明の第4の実施態様に係る発明は、「前記BST1_ASVポリペプチドを検出する段階を含むことを特徴とする膵臓癌細胞を検出する方法。」である。
ここで、「膵臓癌」とは、膵臓の癌全般を含む概念である(以下、同様)。また、膵臓癌細胞を検出する方法には、膵臓癌細胞の有無を検出する方法のほか、膵臓癌細胞の悪性度又は組織型などを併せて検出する方法も含む(以下、同様)。
(5)本発明の第5の実施態様に係る発明は、「前記BST1_ASVポリペプチドを検出する段階が、BST1_ASVポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いたイムノアッセイ法を用いることを特徴とする上記(4)に記載の方法。」である。
ここで、上記「抗体」とは、本発明における「BST1_ASVポリペプチド」と特異的に結合し、公知のBST1メジャーフォーム(スプライスバリアントではないBST1ポリペプチド)および他のBST1選択的スプライスバリアントには結合しない抗体を意味する。
また、上記(4)に記載の「前記BST1_ASVポリペプチドを検出する」方法には、抗体を用いたイムノアッセイのほか、当業者の通常の知識に基づいて行い得る全ての方法が含まれる。
(6)本発明の第6の実施態様に係る発明は、「膵臓癌の患者由来の血清又は病理組織切片を試料に用いることを特徴とする上記(5)に記載の方法。」である。
上記(4)又は(5)に記載の方法に用いられる試料は、上記(6)に記載の血清又は病理組織切片(膵臓癌組織切片など)の他、当業者における通常の技術常識に基づいて選択し得る試料であれば如何なるものも使用することができる。
(7)本発明の第7の実施態様に係る発明は、「上記(2)に記載のポリヌクレオチド又は上記(3)に記載の遺伝子を検出する段階を含むことを特徴とする膵臓癌細胞を検出する方法。」である。
(8)本発明の第8の実施態様に係る発明は、「前記ポリヌクレオチド又は前記遺伝子の発現の検出が、該ポリヌクレオチド又は該遺伝子の転写物若しくはその断片を特異的に増幅するプローブを用いたRT−PCR法により行われることを特徴とする上記(7)に記載の方法。」である。
上記(7)に記載の「前記ポリヌクレオチド又は前記遺伝子の発現」を検出する方法には、PCRを用いた方法のほか、当業者の通常の知識に基づいて行い得る全ての方法が含まれる。
(9)本発明の第9の実施態様に係る発明は、「膵臓癌の患者由来のバッフィーコートを試料に用いることを特徴する上記(8)に記載の方法。」である。
上記(7)又は(8)に記載の方法に用いられる試料は、上記(9)に記載のバッフィーコートのほか、病理組織切片(膵臓癌組織切片など)など、当業者における通常の技術常識に基づいて選択し得る試料であれば如何なるものも使用することができる。
(10)本発明の第10の実施態様に係る発明は、「上記(4)に記載の方法を実施するためのキットであって、該キットが上記(1)に記載のポリペプチドに対するモノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体を含むことを特徴とするキット。」である。
(11)本発明の第11の実施態様に係る発明は、「上記(8)に記載の方法を実施するためのキットであって、該キットが配列番号5乃至9の塩基配列を有する核酸から選択される少なくとも1つの核酸を含むことを特徴とするキット。」である。
(12)本発明の第12の実施態様に係る発明は、「前記BST1_ASVポリペプチドと特異的に結合する抗体に制癌化合物をコンジュゲートした該抗体を含む医薬組成物。」である。
ここで、「制癌化合物」とは、癌化又は腫瘍化した細胞を死滅させることにより、癌病巣を縮小又は消滅させる効果を示す物質であって、当業者に周知のいかなるものをも用いることができる。典型的に、制癌化合物は、タキソール、タキソテール、シスプラチン、アドリアマイシン、エピルビシン、サイクロファスファマイド、カンプトテシン、5−FU(ウルオロルラシル)、塩酸ゲムシタビン(ジェムザール(商品名))からなる群から選択される。特に、塩酸ゲムシタビンが好ましい。
本発明により提供される方法を用いることにより、膵臓癌の確実かつ迅速な検出が可能となる。また、本発明の医薬組成物を用いることにより、膵臓癌の有効な治療が実現される。
1.腫瘍マーカー候補の探索
(1)in silico解析による腫瘍マーカー候補の探索
本発明において、腫瘍マーカーとして使用可能なBST1_ASVは、バイオインフォマティクスの分野における技術及び従来の分子生物学的技術に基づいて、探索及び同定可能である。
まず、血中に存在する腫瘍マーカー候補を探索するために、血中タンパク質の情報について記載されている既刊の論文の検討を行う。本発明を行なうにあたり必要とされる論文は、周知の方法により検索及び収集することが可能であるが、例えば、NCBI(National Center for
Biotechnology Information)によるPubMed(生物・医学文献データベース)を利用してもよい。
収集した論文から所望のものを参考にして、血中タンパク質のリストを作成してもよい。この場合には、リスト化された血中タンパク質の中から、ある基準、例えば、腫瘍マーカーとしての情報が少ないタンパク質であること、ASVの有無等の情報が少ないタンパク質であること、該タンパク質が分泌可能であること、などを指標にして幾つかのタンパク質を腫瘍マーカー候補として絞り込むことが可能となる。この方法により絞り込まれたタンパク質リストの中に、本発明に係るBST1が含まれていた。
上記方法の別法として、既存の腫瘍マーカーの情報を利用することも可能である。既存の腫瘍マーカーの特徴に基づき、限定はしないが、酵素タンパク質であること、及び糖タンパク質であることを特徴として備える因子の中から、所望の腫瘍マーカーの絞込みを行なうこともできる。例えば、SWISS−PROTデータベースに対してKeyword検索によりGlycoproteinを検索したのち、「_HUMAN」の表記があるタンパク質のみを抽出してリスト化を行なう。さらに、SWISS−PROTデータベース内のEnzyme Nomenclature databaseに存在するタンパク質からヒトタンパク質のみを全て抽出しリスト化を行なう。上記2つのリスト中に重複して存在するタンパク質を腫瘍マーカー候補として絞り込むことができる。この方法により絞り込まれたタンパク質リストの中にも、本発明に係るBST1が含まれていた。
(2)腫瘍マーカーとしての特異性等の検討
腫瘍マーカーとして使用可能であるためには、特定の腫瘍(癌)が発症している場合に、ある程度の特異性をもって発現され、その発現が確認される必要がある。該腫瘍マーカーの発現の確認は、当業者における通常の知識に基づいて容易に行なうことができるが、例えば、腫瘍が疑われる組織中にマーカー遺伝子が発現されていることを、RT−PCR、ノザンブロッティング法などで確認するか、又は、腫瘍マーカーが血液中に分泌されるタンパク質であれば、血液サンプルに対して、腫瘍マーカータンパク質特異的に反応する抗体を用いたイムノアッセイにより、血中への分泌を確認することができる。その他、特定の腫瘍(癌)が発症している場合に、所望の腫瘍マーカーが該腫瘍に特異的に発現していることを確認する方法であれば、いかなる方法であっても使用可能であり、特に、RT−PCR法、イムノアッセイ法などが好ましい。
2.新規腫瘍マーカーBST1_ASVの配列情報の取得
本発明におけるBST1_ASV遺伝子は、公知のBST1の配列情報に基づいて作製されたPCRプライマーを用いて、cDNAライブラリー、ゲノムDNAライブラリー等からクローニングすることができる。
PCRプライマーの設計は、OLIGO(Molecular Biology Insights. Inc)等のプライマー設計ソフトを用いて行うことができる。また、PCRプライマー合成は、標準的な合成技術、例えば、自動DNA合成装置などを用いて行うことができるが、商業的に入手してもよい。PCR反応によって増幅が予想される増幅産物の長さは、増幅効率及びその後のアガロースゲルによる分離能及び塩基配列解析が容易であるような長さが好ましい。作成したPCRプライマーを用いて、cDNAライブラリー等を鋳型にしてPCR反応を行い、増幅産物が目的の産物であることを、配列決定を行うなどして確認する。
2.本発明のBST1_ASVポリペプチド
本発明のBST1_ASVポリペプチドは、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。ここで、「実質的に同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド」とは、配列番号2で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、膵臓癌細胞中に存在するポリペプチドのことである。
配列番号2で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドとしては、配列番号2で表わされるアミノ酸配列中の1又は2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、配列番号2で表わされるアミノ酸配列に1又は2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、ならびに配列番号2で表わされるアミノ酸配列中の1又は2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含む、ポリペプチドが含まれる。上記アミノ酸の欠失、付加及び置換は、BST1_ASVポリペプチドをコードする遺伝子を、当該技術分野で公知の手法によって、改変することによって行うことができる。例えば、特定のアミノ酸残基の置換は、市販のキット(例えば、MutanTM−G(TAKARA社)、MutanTM−K(TAKARA社))等を使用し、Guppedduplex法やKunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法によって、塩基の置換を行うことによって達成することができる。
また、本発明のBST1_ASVポリペプチド及びその部分ペプチドのC末端は、通常カルボキシル基(−COOH)又はカルボキシレート(−COO)であるが、当該カルボキシル基は、アミド(−CONH)やエステル(−COOR)等に化学修飾されていてもよい。ここで、エステル中のRとしては、C1−6アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル)、C3−8シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル)、C1−6アリール基(例えば、フェニル、α−ナフチル)、フェニル−C1−2アルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル)、α−ナフチル−C1−2アルキル基(例えば、α−ナフチルメチル)等が挙げられる。その他、経口用エステルとして汎用されているピバロイルオキシメチルエステルとすることも可能である。本発明のBST1_ASVポリペプチドがC末端以外にもそのポリペプチド鎖中にカルボキシル基を有する場合には、当該カルボキシル基がアミド化又はエステル化されているものも、本発明のポリペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては上記の各エステルが挙げられる。同様に、本発明の新規BST1_ASVポリペプチドのN末端は、通常アミノ基(−NH)であるが、当該アミノ基は、ホルミル基、アセチル基等のC1−6アシル基等で化学修飾されていてもよい。その他、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したものや、分子内のアミノ酸側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な官能基(例えば、ホルミル基、アセチル等)で化学修飾されているものや糖鎖の結合しているものも本発明のポリペプチドに含まれる。
上記いずれかのBST1_ASVポリペプチド中の部分アミノ酸配列を含むペプチド(部分ペプチドともいう)も本発明の範囲に含まれる。すなわち、本発明の部分ペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一又は実質的に同一なアミノ酸配列の一部のアミノ酸配列を含むものである限り、いずれのものであってもよい。
本発明のBST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドは、必要に応じて塩の形態、好ましくは生理学的に許容される酸付加塩の形態で提供され得る。そのような塩としては、無機酸、限定はしないが、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸などの塩、有機酸、限定はしないが、例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの塩等が挙げられる。また、無機塩基、限定はしないが、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属などとの塩、有機塩基、限定はしないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどとの塩が挙げられる。
本発明のBST1_ASVポリペプチド又はその塩は、本発明の新規BST1_ASVポリペプチドを発現しているヒトや動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ウシ、サル、ヒツジ、イヌ、ネコなど)の培養細胞又は組織から、当該分野における通常の技術により抽出・分離することができ、あるいは後述のように本発明の新規BST1_ASVポリペプチドをコードするDNAを含む形質転換体を培養することにより、該培養物から抽出・分離することによっても製造することができる。ヒトや動物の組織又は細胞から製造する場合、ヒトや動物の組織又は細胞をホモジナイズ後、酸等で抽出を行い、得られた抽出液を疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィーを組み合わせることにより単離精製することができる。
また、本発明の部分ペプチド又はその塩は、公知のペプチド合成法又は前記BST1_ASVポリペプチドを適当なペプチダーゼ(例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ)で切断することによって製造することができる。ペプチド合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによってもよい。すなわち、本発明の新規BST1_ASVポリペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる(例えば、Bodanszkyら, 1996;Schroederら, 1965を参照のこと)。合成反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、再結晶などを組み合わせて本発明の部分ペプチドを単離精製することができる。
上記の方法で得られる新規BST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができる、塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
3.本発明のBST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド
本発明のBST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、上記2のBST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドをコードする塩基配列(DNA又はRNA)又はその相補鎖を含有するものであれば如何なるものであってもよい。該ポリヌクレオチドとしては、本発明のBST1_ASVポリペプチドをコードするDNA、mRNA等のRNAが挙げられ、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNA又はDNAとRNAとのハイブリッドでもよい。
本発明のBST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドをコードするDNAは、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前述のcDNAライブラリーから調製したもの、あるいは合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、所望の細胞又は組織から調製した全RNA又はmRNA画分を用いて直接、RT−PCR法(Reverse Transcriptase Polymerase
Chain Reaction)によって増幅することもできる。具体的には、本発明の新規BST1_ASVポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号1で表わされる塩基配列を含有するポリヌクレオチドが挙げられるが、これらのいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ本発明のBST1_ASVポリペプチドと実質的に同質の活性を有するBST1_ASVポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであればいずれのものであってもよい。
配列番号1で表わされる塩基配列を含有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、配列番号1で表わされる塩基配列と好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%最も好ましくは約99%のポリヌクレオチド配列相同性を有する塩基配列を含有するDNA等が挙げられる。ここで、ここで、「ストリンジェントな条件」とは、核酸ハイブリダイゼーション及びクローニングに関する技術分野において周知の技術常識により決定され(例えば、Sambrook等, 1989などを参照のこと)、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な条件である。例えば、ナトリウム濃度が約20〜40mM、好ましくは約20〜25mM、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件などである。典型的には、「ストリンジェントな条件」とは、(1)低いイオン強度及び高い温度での洗浄を行なう条件(例えば、50℃において、15mM NaCl、1.5mM クエン酸ナトリウム、0.1% ドデシル硫酸ナトリウム);(2)ハイブリッド形成中に変性剤を用いる条件(例えば、42℃において、50%(v/v)ホルムアミド、0.1% ウシ血清アルブミン、0.1% フィコール、0.1% ポリビニルピロリドン、50mM リン酸ナトリウムバッファー(pH6.5;750mM NaCl、75mM クエン酸ナトリウムを含む)などが選択可能である。さらに、典型的には、洗浄条件に関しても、5xSSC(0.75M NaCl、75mM クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1% ピロリン酸ナトリウム、5xデンハード液、超音波処理サケ***DNA(50μg/ml)、0.1% SDS、及び10% デキストラン硫酸が含まれ、42℃における0.2x SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中の洗浄及び55℃でのホルムアミド、次いで55℃におけるEDTAを含む0.1x SSCからなるストリンジェントな洗浄条件が選択され得る。
本発明の部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、上述の本発明の部分ペプチドをコードする核酸配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前述の細胞又は組織由来のcDNA、前述の細胞又は組織由来のcDNAライブラリーより、当該技術分野において公知の方法により単離されたもの、合成DNAのいずれでもよい。
4.組換えベクター及び形質転換体の作製
(1)組換えベクターの作製
本発明を行なうにあたり使用される組換えベクターは、適当なベクターに本発明のBST1_ASVポリペプチド又はその部分をコードするDNAを連結することにより得ることができる。本発明のBST1_ASVポリペプチド又はその部分をコードするDNA配列を挿入するためのベクターは、クローニング用に供される場合には、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されない。また、本発明のBST1_ASVポリペプチド又はその部分を発現するためのベクターとしては、宿主中で複製可能なものであって、該ポリペプチド又はその部分をコードするDNA断片を発現させることができるプロモーターを有するものが使用可能である。
使用可能なベクターとしては、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pCBD−C等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5、pC194等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YEp24、YCp50、YIp30等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ等が挙げられる。さらに、レトロウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルス、トガウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであれば特に限定されない。
例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、HSV−TKプロモーター等が挙げられる。
宿主が大腸菌である場合には、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPプロモーター、lppプロモーター等が、宿主が枯草菌である場合には、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等が挙げられる。
宿主が酵母である場合には、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等が挙げられる。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
本発明に使用される組換えベクターには新規BST1_ASVポリペプチド又はその部分のコード配列、プロモーター以外にも、エンハンサー、選択マーカー、ターミネーター、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)、SV40複製起点(SV40ori)などを連結することができる。
選択マーカーとしては、限定はしないが、ハイグロマイシン耐性マーカー(Hyg)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(dhfr)、アンピシリン耐性遺伝子(Amp)、カナマイシン耐性遺伝子(Kan)、ネオマイシン耐性遺伝子(Neo, G418)などが利用可能である。
また、組換えタンパク質の単離・精製を容易にするなどの目的で、本発明のBST1_ASVポリペプチド又はその部分のN末端側に適当なシグナル配列を付加してもよい。
宿主が大腸菌である場合にはアルカリホスファターゼシグナル、OmpAシグナルなどが利用可能であり、宿主が枯草菌である場合にはα−アミラーゼシグナル配列、ズブチリスシグナル配列などが利用可能であり、宿主が酵母である場合には、α因子シグナル配列、インベルターゼシグナル配列などが利用可能であり、宿主が動物細胞である場合には、例えば、インシュリンシグナル配列、α−インターフェロンシグナル配列、抗体分子シグナル配列などが利用可能である。
上述のベクターに対して本発明の新規BST1_ASV遺伝子又はその断片を挿入するには、上記1においてクローニングされた新規BST1_ASVポリペプチドをコードするDNA又はその断片をそのまま、又は所望により制限酵素で消化して、リンカーを付加し、ベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入することにより行うことができる。連結するDNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGA又はTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。連結するDNAは、当該DNA中にコードされている本発明の新規BST1_ASVポリペプチド又はその部分が宿主細胞中で発現されるようにベクターに組み込まれることが必要である。
以上の方法により、本発明のBST1_ASVポリペプチドをコードするDNA配列を含むベクターを構築することができる。
(2) 形質転換体の作製
本発明の形質転換体は、本発明の組換え発現ベクターを、目的遺伝子又はその断片を発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。ここで、宿主としては、本発明のDNAを発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、大腸菌(Escherichia coli)等のエシェリヒア属、枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母、サル細胞COS−7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、マウスAtT−20、ヒトGH3、ヒトFL細胞等の動物細胞、あるいはSf9、Sf21等の昆虫細胞が挙げられる。
大腸菌への組換えベクターの導入方法としては、カルシウムイオンを用いる方法(Cohenら, 1972)、エレクトロポレーション法(Shigekawa及びDower, 1988)等が利用可能である。酵母への組換えベクターの導入方法としては、エレクトロポレーション法(Beckerら, 1990)、スフェロプラスト法(Hinnenら, 1978)、酢酸リチウム法(Itohら,
1983)等が利用可能である。動物細胞又は動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法(Chen及びOkayama,
1988)、カチオン性脂質による方法(Elroy-Stein及びMoss, 1990)等が挙げられる。
以上のようにして、本発明のBST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドをコードDNAが挿入された発現ベクターを含む形質転換体を得ることができる。
5.本発明の新規BST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドの製造
本発明の新規BST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドは、上記4において得られる形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより製造することができる。「培養物」とは、培養上清、あるいは培養細胞若しくは培養菌体又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
培養は、宿主細胞に適した条件下で行う。
例えば、大腸菌を培養する際の培地としては、LB培地、M9培地等が好ましい。所望によりプロモーターを効率よく働かせるために、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。大腸菌の場合、培養は通常約15〜37℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。宿主が枯草菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
酵母培養するための培地としては、SD培地、YPD培地があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。宿主が昆虫細胞又は昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、ウシ血清を含むグレース昆虫培地等が挙げられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地、DMEM培地、RPMI 1640培地等が用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。以上のようにして、形質転換体の細胞膜等に本発明の新規BST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドを生成させることができる。上記培養物から本発明の新規BST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドを分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
本発明の新規BST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドを培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチーム及び/又は凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過により新規BST1_ASVポリペプチドの粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジン等のタンパク質変性剤や、トリトンX−100などの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中に新規BST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドが分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。このようにして得られた培養上清又は抽出液中に含まれる新規BST1_ASVポリペプチド又はその部分ペプチドの精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、及びSDS−PAGE等の主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
6.抗BST1_ASV抗体
本発明に係るBST1_ASVポリペプチドを検出する方法には、抗BST1_ASV抗体を使用することができる。
本発明において使用される「抗体」には、BST1_ASVに対するモノエピトープ特異的抗BST1_ASV抗体、ポリエピトープ特異的抗BST1_ASV抗体、単一鎖抗体、及びこれらの断片が含まれる。これらの抗体には、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化又はヒト抗体などが含まれる。特に、ヒト化又はヒト抗体は、制癌化合物をコンジュゲートして、標的癌病巣に該制癌化合物を送達する場合に、好ましい。
(1)ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、例えば、哺乳類宿主動物に対して、免疫原及びアジュバントの混合物をインジェクトすることにより調製することができる。通常は、免疫原及び/又はアジュバントを宿主動物の皮下又は腹腔内へ複数回インジェクトする。免疫原にはBST1_ASV及びその異種ポリペプチドとの融合体又はこれらの断片が含まれる。アジュバントの例には、完全フロイト及びモノホスホリル脂質A合成−トレハロースジコリノミコレオート(MPL−TDM)が含まれる。免疫応答を増強するために、免疫原は、キーホールインペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、ウシチログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターなどの免疫原性を有するタンパク質に結合させたのち、インジェクトしてもよい。
免疫後、免疫動物から試験的に採取した抗血清を用いて力価をモニターしながら、所望の力価を示した段階で抗血清の採取を開始する。採取した抗血清から、定法に従って、目的の抗体を精製することができる。
あるいは、IgY分子を産生するニワトリを用いて調製してもよい(Schadeら,
1996)。
抗体産生方法の詳細は、例えば、Ausubelら, 1987又はHarlow及びLane, 1988を参照されたし。
(2)モノクローナル抗体
抗BST1_ASVモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法を用いて調製される(Milstein及びCuello, 1983)。
この方法には以下に示す4つの工程が含まれる:(i)宿主動物又は、宿主動物由来のリンパ球を免疫する、(ii)モノクローナル抗体分泌性(又は潜在的に分泌性)のリンパ球を回収する、(iii)リンパ球を不死化細胞に融合させる、(iv)所望のモノクローナル抗体(抗BST1_ASV)を分泌する細胞を選択する。
マウス、ラット、モルモット、ハムスター、又は他の適当な宿主動物が、免疫動物として選択され免疫原がインジェクトされる。或いは、免疫動物から取得したリンパ球をin vitroで免疫化してもよい。ヒト細胞が望ましい場合には、末梢血リンパ球(PBLs)が一般に使用される。しかしながら、他の哺乳類由来の脾臓細胞又はリンパ球がより一般的で好ましい。免疫原は典型的にはBST1_ASV及びその異種ポリペプチドとの融合体又はこれらの断片を含まれる。
免疫後、宿主動物から得られたリンパ球はハイブリドーマ細胞を樹立するために、ポリエチレングリコールなどの融合剤を用いて不死化細胞株と融合される(Goding, 1996)。トランスフォーメーションによって不死化された齧歯類、ウシ、又はヒトのミエローマ細胞が使用されるか、ラットもしくはマウスのミエローマ細胞株が使用される。細胞融合を行った後、融合しなかったリンパ球及び不死化細胞株の成長又は生存を阻害する一又は複数の基質を含む適切な培地中で細胞を生育させる。通常の技術では、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く親細胞を使用する。この場合、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンがHGPRT欠損細胞の成長を阻害し、ハイブリドーマの成長を許容する培地(HAT培地)に添加される。
モノクローナル抗体の調製にあたり、好ましい不死化細胞株はマウスミエローマ株で、アメリカンタイプカルチャーコレクション(Manassas, VA)より入手可能である。ヒトミエローマ及びマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株による、ヒトモノクローナル抗体産生に関しては、Kozborら, 1984;Schook, 1987を参照のこと。
ハイブリドーマ細胞は細胞外に抗体を分泌するため、BST1_ASVに対するモノクローナル抗体の産生の有無を培養液を用いて確認することができる。産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などの免疫沈降又はin vitroでの結合アッセイにより評価することができる(Harlow及びLane, 1988;Harlow及びLane, 1999)。
抗BST1_ASVモノクローナル抗体分泌性ハイブリドーマ細胞は、限界希釈法及びサブカルチャーにより単一クローンとして単離され得る(Goding, 1996)。適切な培地にはダルベッコ改変イーグル培地、RPMI−1640、場合によっては、タンパク質を含まない培地若しくは無血清培地などが含まれる(例えば、Ultra DOMA PF 又はHL−1;Biowhittaker, Walkersville, MD)。あるいは、イブリドーマ細胞は、適切な宿主動物の腹水中で増殖させてもよい。
モノクローナル抗体は、培地又は腹水からプロテインAセファロース、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、硫安沈殿又はアフィニティークロマトグラフィー(Harlow及びLane, 1988;Harlow及びLane, 1999)などの当業者にとって周知の方法によって単離及び精製される。
また、モノクローナル抗体は遺伝子組換え技術によっても作製することができる(米国特許第4166452号)。抗BST1_ASV抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株から目的のモノクローム抗体ポリペプチドをコードする遺伝子を同定するに、例えば、マウスの重鎖及び軽鎖抗体遺伝子と特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブを用いてもよい。その結果、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子が取得された場合は、その遺伝子の配列を決定することにより目的の抗体遺伝子を同定することができる。単離されたDNA断片は、モノクローナル抗体を発現させるために、適当な発現ベクターの抗体遺伝子を導入し、該ベクターを他のIgタンパク質を生産しないsimian COS−7細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はミエローマ細胞などのホスト細胞中へトランスフェクトさする。単離されたDNA断片は、例えば、ヒト重及び軽鎖定常ドメインに対するコード化配列を相同なマウス配列の代わりに置換することにより(米国特許第4816567号;Morrisonら, 1987)、又は非Igポリペプチドをコードする配列の全て又は一部に対するIgコード化配列を融合することにより、修飾することができる。そのような非Igポリペプチドは、キメラ二価抗体を創作するために、抗体の定常ドメインと置換することが可能であり、又は一抗原結合部位の定常ドメインと置換することができる。
(3)ヒト化及びヒト抗体
抗BST1_ASV抗体には、ヒト化又はヒト抗体が含まれる。非ヒト抗体のヒト化型は、非ヒトIg由来の最小配列を含むキメラIgs、Ig鎖又は断片(Fv,Fab’,F(ab’)又は他の抗体の抗原結合領域など)である。
一般に、ヒト化抗体は、非ヒト由来のIgから導入された一又は複数のアミノ酸残基を持つ。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、可変ドメインから選ばれる。ヒト化抗体は、例えばマウスのCDRs又はCDR配列と対応するヒト抗体配列とを置換することにより作製することができる(Jonesら, 1986;Riechmannら, 1988;Verhoeyenら, 1988)。つまり、ヒト化抗体とは、典型的には、特定のCDR残基がマウス由来の抗体中の相当部位由来の残基と置換されているヒト抗体のことである。ヒト化抗体には、マウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種のCDRであって、抗原に対する所望の特異的親和性を持つ残基により、レシピエント(ヒトIg)の相補性決定領域(CDR)由来の残基が置換されるヒトIgs(レシピエント抗体)が含まれる。また、非ヒト由来の残基によって、ヒトIgのFvフレームワーク残基が置換される場合もある(Jonesら, 1986;Presta, 1992;Riechmannら, 1988)。
7.腫瘍マーカーの検出
本発明のBST1_ASV遺伝子又はポリペプチドなどを腫瘍マーカーとして検出する方法としは、当業者の通常の技術常識に基づいて実施し得る方法であれば、如何なる方法でもよいが、例えば、BST1_ASV遺伝子の転写産物を検出するRT−PCR法、FISH法、又はBST1_ASV遺伝子産物を検出するイムノアッセイ法などが使用可能である。
(1)RT−PCR法、FISH法
RT−PCR法は、当業者において周知の技術を用いて容易に行なうことができる。
具体的には、検査対象試料中のBST1_ASV遺伝子の転写産物であるBST1_ASV mRNA又はその断片に対して相補的な一本鎖DNAを合成し、該DNA又はその断片を特異的に増幅することができるプライマーにより該DNA又はその断片をPCR増幅した後、増幅産物を電気泳動などで検出する。RT−PCR法については、例えば、Ishikawaら, J.
Clin. Oncol., 28:723-728, 1998などを参照して行なうこともできる。本発明のBST1_ASVを検出するために使用可能なプライマーセットとしては、配列番号5乃至配列番号9に記載されるヌクレオチド配列からなるプライマーを適切に組合わせを挙げることができる。これらのプライマーは、例えば、ホスホアミダイド法などにより容易に合成することができる。
FISH(Fluorescent in situ hybridization)法により、本発明のBST1_ASVの転写状態を検出してもよい。FISH法に用いることのできるプローブは、BST1_ASVを特異的に認識する核酸プローブであれば使用可能である。例えば、配列番号7又は8に示す配列からなる核酸およびその相補鎖が使用可能である。
RT−PCR法またはFISH法によりBST1_ASV遺伝子の転写産物を検出する方法に供される試料としては、バッフィーコートが好適に使用可能である。バフィーコートは、検査対象の患者由来の血液を遠心分離した場合、遠心チューブの最下層の赤血球層と最上層の血清層との間に位置する層のことで、主として白血球を含むが、この層には血液中に存在する腫瘍細胞も含まれる。従って、RT−PCRまたはFISH法による検査において、好適に使用することができる。
(3)イムノアッセイ法
本発明のBST1_ASV遺伝子の発現は、BST1_ASVポリペプチドの存在を上述のBST1_ASVに特異的な抗体または抗血清で検出することによっても確認することが可能であり、この検出にはイムノアッセイを用いることができる。具体的には、検査対象試料、例えば、膵臓癌患者由来の血清を試料としたサンドイッチアッセイ、競合アッセイ、あるいは、病理切片を試料とした免疫組織染色などが利用可能である。イムノアッセイ法で使用される抗体は免疫組織染色、サンドイッチアッセイのために標識されてもよい。標識物質としては、放射性物質、金コロイドなどの着色粒子、蛍光式、化学発光物質、または酵素などを用いることができる。抗体の標識方法としては、当業者によって周知の技術であれば、いかなる方法を採用することも可能である。
サンドイッチアッセイなどにおいては、本アッセイに使用する抗体又は抗血清を個体支持体に固相化することが望ましく、例えば、炭酸緩衝液(pH9.6)に抗体などを溶解したのち、この溶解溶液をマイクロタイタープレートのウェル中に添加し、所定の時間インキュベートすることで、固相化することができる。イムノアッセイによる測定は、抗体又は抗血清とBST1_ASVとの免疫複合体を検出することで行なわれる。病理組織切片などの免疫染色においては、BST1_ASV特異的な抗体をパラフィン包埋切片と接触させ、得られた免疫複合体を、CSAシステム(Wako社)により、該製品に添付される指示書に従って検出することができる。患者の結成を検査対象試料として用いた場合には、BST1_ASV特異的な抗体がウェルに固相化され、キャプチャー側抗体を提供し、他方の抗体が放射性物質、着色粒子又は酵素で標識されて、検出抗体として使用される。
キャプチャー側抗体が固相化されたウェル内に適切に希釈された試料を添加し、所定時間インキュベートした後、試料液をウェルから除去し、適切なバッファーで各ウェルを洗浄後、検出抗体が添加される。所定のインキュベーションの後、ウェルを洗浄し、免疫複合体を検出する。検出は、検出側抗体に標識された標識物質の性質に依存し、放射線量、発光色、球高度、などを検出する。標識物質が酵素標識であれば、さらに、適当な基質をウェルに添加して、所定のインキュベーション後の吸光度を検出することができる(ELIZA法)。ELIZA法で用いられる酵素は、本方法に使用可能なものであれば、いかなる酵素でも使用可能であり、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼで標識する場合には、3,3’,5,5’−テトラメチルベンチジンなどがその基質として利用可能である。アルカリホスファターゼで標識する場合には、p−ニトロフェニルホスフェートが基質として利用可能である。
8.医薬組成物
本発明のBST1_ASVポリペプチドは、膵臓癌細胞に特異的に発現していることが予想される。従って、膵臓癌特異的な腫瘍マーカーであるBST1_ASVを標的分子とした、膵臓癌治療のための医薬を提供することも可能となる。例えば、BST1_ASV特異的結合する因子(小分子、ペプチドなど)、又はBST1_ASV特異的な抗体などに、制癌作用を有する化合物又は細胞毒素をコンジュゲートした物質などを含む組成物は、膵臓癌治療のための医薬組成物として使用することができる。該組成物は薬学的に受容可能な担体と共に、生体に対して悪影響を及ぼさない医薬組成物の形態で治療剤として使用され得る。
「薬学的に受容可能な坦体」は、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、アイソトニックに作用して吸着を遅らせる薬剤及びその類似物を含み、薬剤的投与に適するもののことである(Gennaroら, 2000)。該担体及び該担体を希釈するために好ましいものの例には、限定はしないが、水、生理食塩水、フィンガー溶液、デキストロース溶液、及び5%のヒト血清アルブミンが含まれる。また、リポソーム及び不揮発性油などの非水溶性媒体も用いられる。
(1)医薬組成物の調製
本発明の医薬組成物は、静脈内、経口への投与、胃への直接投与を含む、治療上適切な投与経路に適合するように製剤化される。静脈内への投与、又は胃への直接投与に使用される溶液又は懸濁液には、限定はしないが、注射用の水などの滅菌的希釈液、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒、ベンジルアルコール又は他のメチルパラベンなどの保存剤、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなどの無痛化剤、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝剤、塩化ナトリウム又はデキストロースなど浸透圧調製のための薬剤を含んでもよい。
pHは塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調整することができる。非径口的標品はアンプル、ガラスもしくはプラスチック製の使い捨てシリンジ又は複数回投与用バイアル中に収納される。
(2)注射可能な製剤
注射に適する医薬組成物には、滅菌された注射可能な溶液又は分散媒であって、使用時に調製するための滅菌水溶液(水溶性の)又は分散媒及び滅菌されたパウダー(凍結乾燥されたタンパク質、核酸などを含む)が含まれる。静脈内の投与に関し、適切な担体には生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR ELTM(BASF, Parsippany, N.J.)、又はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が含まれる。注射剤として使用する場合、組成物は滅菌的でなくてはならず、また、シリンジを用いて投与されるために十分な流動性を保持していなくてはならない。該組成物は、調剤及び保存の間、化学変化及び腐食等に対して安定でなくてはならず、細菌及び真菌などの微生物由来のコンタミネーションなどが生じてはならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及び適切な混合物を含む溶媒又は分散媒培地を使用することができる。例えば、レクチンなどのコーティング剤を用い、分散媒においては必要とされる粒子サイズを維持し、界面活性剤を用いることにより適度な流動性が維持される。種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールなどは、微生物のコンタミネーションを防ぐために使用可能である。また、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール及び塩化ナトリウムのような等張性を保つ薬剤が組成物中に含まれてもよい。吸着を遅らせることができる組成物には、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの薬剤が含まれる。
滅菌的な注射可能溶液は、必要な成分を単独で又は他の成分と組み合わせた後に、適切な溶媒中に必要量の活性化合物を加え、滅菌することで調製される。一般に、分散媒は、基本的な分散培地及び上述したその他の必要成分を含む滅菌的媒体中に活性化合物を取り込むことにより調製される。滅菌的な注射可能な溶液の調製のための滅菌的なパウダーの調製方法には、活性な成分及び滅菌溶液に由来する何れかの所望な成分を含むパウダーを調製する真空乾燥及び凍結乾燥が含まれる。
(3)経口組成物
通常、経口組成物には、不活性な希釈剤又は体内に取り込んでも害を及ぼさない担体が含まれる。経口組成物には、例えば、ゼラチンのカプセル剤に包含されるか、加圧されて錠剤化される。経口的治療のためには、活性化合物は賦形剤と共に取り込まれ、錠剤、トローチ又はカプセル剤の形態で使用される。また、経口組成物は、流動性担体を用いて調製することも可能であり、流動性担体中の該組成物は経口的に適用される。さらに、薬剤的に適合する結合剤、及び/又はアジュバント物質などが包含されてもよい。
錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチ剤及びその類似物は以下の成分又は類似の性質を持つ化合物の何れかを含み得る:微結晶性セルロースのような賦形剤、アラビアゴム、トラガント又はゼラチンなどの結合剤;スターチ又はラクトース、アルギン酸、PRIMOGEL、又はコーンスターチなどの膨化剤;ステアリン酸マグネシウム又はSTRROTESなどの潤滑剤;コロイド性シリコン二酸化物などの滑剤;スクロース又はサッカリンなどの甘味剤;又はペパーミント、メチルサリシル酸又はオレンジフレイバーなどの香料添加剤。
(5)全身投与
また、全身投与は経粘膜的又は経皮的に行なうことができる。経粘膜的又は経皮的投与について、標的のバリアーを透過することができる浸透剤が選択される。経粘膜浸透剤は界面活性剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が含まれる。経鼻スプレー又は坐薬は経粘膜的な投与に対して使用することができる。経粘膜的投与に対して、活性化合物はオイントメント、軟膏、ジェル又はクリーム中に製剤化される。
また、化合物は、直腸への送達に対して、坐薬(例えば、ココアバター及び他のグリセリドなどの基剤と共に)又は滞留性の浣腸の形態で調製することもできる。
(6)担体
本発明のBST1_ASVポリペプチド、その部分ポリペプチド、又はそれらの発現ベクターは、植込錠及びマイクロカプセルに封入された送達システムなどの制御放出製剤として、体内から即時に除去されことを防ぎ得る担体を用いて調製することができる。エチレンビニル酢酸塩、ポリエチレングリコール、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生物分解性、生物適合性ポリマーを用いることができる。このような材料は、ALZA Corporation(Mountain View, CA)及びNOVA Pharmaceuticals, Inc.(Lake Elsinore, CA)から入手することが可能で、また、当該技術分野の専門家によって容易に調製することもできる。また、リポソームの懸濁液も薬学的に受容可能な坦体として使用することができる。有用なリポソームは、限定はしないが、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導ホスファチジルエタノール(PEG−PE)を含む脂質組成物として、使用に適するサイズになるように、適当なポアサイズのフィルターを通して調製され、逆相蒸発法によって精製される。例えば、抗体のFab’断片などは、ジスルフィド交換反応を介して、リポソームに結合させてもよい(Martin及びPapahadjopoulos, 1982)。詳細な調製方法は、例えば、Eppsteinら, 1985;Hwangら, 1980中の記載を参照のこと。
(7)投与量
本発明のBST1_ASVポリペプチド、その部分ポリペプチド、又はそれらの発現ベクター等による特定の疾患の治療又は予防において、適切な投与量レベルは、投与される患者の状態、投与方法等に依存するが、当業者であれば、容易に最適化することが可能である。
注射投与の場合は、例えば、一日に患者の体重あたり約0.1μg/kgから500mg/kgを投与するのが好ましく、一般に一回又は複数回に分けて投与され得るであろう。好ましくは、投与量レベルは、一日に約0.1μg/kgから約250mg/kgであり、より好ましくは一日に約0.5〜約100mg/kgである。例えば、タキソールを制癌化合物として抗体にコンジュゲートして投与する場合には、患者の体表面積1m105〜135mgの1日投与量が適切である。
経口投与の場合は、組成物は、好ましくは1.0から1000mgの活性成分を含む錠剤の形態で提供され、好ましくは治療されるべき患者に対する投与量に含まれる有効活性成分は、1.0,5.0,10.0,15.0,20.0,25.0,50.0,75.0,100.0,150.0,200.0,250.0,300.0,400.0,500.0, 600.0,750.0,800.0,900.0及び1000.0mgである。化合物は1日に1〜4回の投与計画で、好ましくは1日に1回又は2回投与される。
(8)単位投与量
医薬組成物又は製剤は、一定の投与量を保障すべく、均一単位投与量により構成されなくてはならない。単位投与量とは、患者の治療に有効な一回の投与量を含み、薬学的に受容可能な担体と共に製剤化された一単位のことである。本発明の単位投与量を決定する場合には、製剤化される化合物(例えば、BST1_ASVポリペプチドなど)の物理的、化学的特徴、期待される治療上の効果、及び該化合物に特有な製剤化における留意事項等により影響を受ける。
9.検出用キット
本発明の腫瘍マーカーを検出するためのキットには、RT−PCRを行なうために必要なプライマー(例えば、配列番号5乃至9の適切なプライマーセット)のほか、RNaseH阻害剤、逆転写酵素、TaqDNAポリメラーゼなどが含まれてもよい。また、本発明の腫瘍マーカーを検出するためのキットには、イムノアッセイを行うために必要な、本発明のBST1_ASVと特異的に結合するモノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体のほか、イムノアッセイに必要なバッファー、ブロッキング剤(BSA、スキムミルクパウダーなど)、検出用標識(蛍光色素、化学発光物質、金コロイド、酵素など)がコンジュゲートされた二次抗体などが含まれてもよい。さらに、イムノアッセイの中でも、ELIZA法の使用のためのキットには、キャプチャー抗体、酵素標識化した検出用抗体、適切な酵素基質などが含まれてもよい。これらの試薬は適切な容器に収容し、使用説明書と共にキット中に含めることができる。
(1)容器
キット中に含まれる試薬は、構成成分が活性を長期間有効に持続し、容器の材質によって吸着されず、変質を受けないような何れかの種類の容器中に供給される。例えば、封着されたガラスアンプルは、窒素ガスのような中性で不反応性ガスの下において包装されたバッファーを含む。アンプルは、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの有機ポリマー、セラミック、金属、又は試薬を保持するために通常用いられる他の何れかの適切な材料などから構成される。他の適切な容器の例には、アンプルなどの類似物質から作られる簡単なボトル、及び内部がアルミニウム又は合金などのホイルで裏打ちされた包装材が含まれる。他の容器には、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、シリンジ、又はその類似物が含まれる。容器は、皮下用注射針で貫通可能なストッパーを有するボトルなどの無菌のアクセスポートを有する。
(2)使用説明書
また、キットには使用説明書も添付される。当該医薬組成物からな成るキットの使用説明は、紙又は他の材質上に印刷され、及び/又はフロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープなどの電気的又は電磁的に読み取り可能な媒体として供給されてもよい。詳細な使用説明は、キット内に実際に添付されていてもよく、あるいは、キットの製造者又は分配者によって指定され又は電子メール等で通知されるウェッブサイトに掲載されていてもよい。
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
in silico解析による腫瘍マーカーの絞り込み
血中腫瘍マーカー候補となる遺伝子及びタンパク質の候補をin silicoにおける解析により絞り込みを行なった。血液中に分泌されているタンパク質の中からマーカーの候補となる可能性のあるタンパク質を選択するために、NCBI(National Center for
Biotechnology Information)が運営する統合データベース内に存在するPubMed(生物・医学文献データベース)を利用し、血液中に存在するタンパク質を実験的に立証した論文を収集した。血中タンパク質につき、網羅的に記載された論文(非特許文献2、非特許文献3)から以下の方法で、腫瘍マーカー候補タンパク質を抜き出し、リスト化を行なった。
非特許文献2および3中に記載される全てのタンパク質名を抽出して、それぞれの文献についてリスト化を行った。ここで作成したリストについて、GenBank(National Institutes of
Healthが作成する核酸データベース)、PIR(Georgetown University Medical Centerが運営するアミノ酸配列データベース)、SwissProt(Swiss Institute of Bioinformaticsが提供するアミノ酸・タンパク質データベース)、PDB(Research Collaboratory for Structural Bioinformaticsの運営するタンパク質立体構造データベース)、RefSeq(NCBIの提供するレファレンス配列データベース)のID、および、SwissProtのPrimary accession number及びEntry name、LocusLink(NCBIの提供する統合データベース)のLocusID、Unigene(NCBIの提供するクラスタリングデータベース)のクラスターIDを追加するプログラムを作成した。文献2または3に基づいて作成した腫瘍マーカー候補タンパク質のリストを比較して、重複部分を削除し、最終的な腫瘍マーカー候補タンパク質となり得る、血中分泌タンパク質のリストを作成した。
血中分泌タンパク質リストに記述された各遺伝子及びタンパク質にSwissProtのProtein name、Synonym、Gene nameを追加し、それらを一つずつPubMedで検索したのち、検索可能なものを論理和条件によりつなげてクエリを作成した。作成したクエリを用いてPubMedによる文献検索を行い、各遺伝子及びタンパク質ごとに検索結果数を血中分泌タンパク質リストに追加した。クエリの作成からPubMedによるクエリの検索結果数追加までの一連の作業はプログラムを作成し自動的に行った。また、このプログラムを応用し、作成したクエリと以下の語句を組み合わせてPubMed検索を行い、組み合わせ語句を用いた検索結果数の追加を行い(表1)、最終的なリストを作成した。以下に組み合わせに用いた語句を示す:tumor, tumor marker, Alternative Splicing, Alternative Splicing AND
tumor, Alternative Splicing AND tumor marker, plasma, plasma AND tumor, plasma
AND tumor marker, plasma AND Alternative Splicing
表1:上記組み合わせた語句を用いた検索に使用したプログラム
作成したリストを元に以下のようなデーターマイニングを行なった。
PubMedのAbstractから各遺伝子及びタンパク質の総論文ヒット数に対してそれぞれの組み合わせた用語(前記9種類)のヒット数の割合を計算した(PubMedのAbstractに対する各遺伝子及びタンパク質の総論文ヒット数をAとし、前記9種類の用語をそれぞれ加えた論文ヒット数をNとする。N/Aとすることにより割合が計算できる)。N/Aの値が0となるタンパク質をすべて候補からはずし、残りのタンパク質について、検索された論文の内容から血中分泌タンパク質か否かを判断した。即ち、腫瘍マーカーとして探索されつくされていない遺伝子及びタンパク質を選び出すため、総論文数が少ないがん関連因子を候補上位にランクし、マーカーとして既に登録があるか、若しくは登録の可能性のあるものは候補下位へランクした。さらにASVが探索されている遺伝子及びタンパク質は候補下位にランクした。
また、in silico解析における生物情報学的解析手法に用いることにより、ASVが実際に発現した場合に、該ASVタンパク質が血中に分泌されるかどうかを立体構造から予測することが可能であるため、PDB(Protein Data Bank)に立体構造が登録されているものを優先的に候補上位にランクした。
以上の方法に基づき、100の腫瘍マーカー候補を絞り込んだ(表2)。この候補の中には、BST1遺伝子(配列番号3)及びタンパク質(配列番号4)が含まれていた。
〔表2〕
in vitro解析による腫瘍マーカーの絞り込み
実施例1に絞り込まれた100の腫瘍マーカー候補の中から、臓器特異的な腫瘍マーカーの候補を絞り込むために、RT−PCR法を用いて、幾つかの癌細胞および正常細胞由来のサンプルについて検討を行なった。RT−PCR法においては、上記100の遺伝子のメジャーフォームとそのASVを同時に検出できるように、メージャーフォームの5’側および3’側双方の両端のエクソン領域に対して上記100遺伝子のPCR用プライマー(サワデー・テクノロジー社)をデザインした。
本発明において使用した癌細胞株由来の全RNAはがんセンターからご供与頂き(図2の図面の簡単な説明の部分を参照のこと)、正常細胞由来の全RNAは、Human Rapid Scan(Ori-gene社)から購入した(図1の図面の簡単な説明の部分を参照のこと)。また、RT−PCR法を行うにあたって、ポジティブコントロールとして正常細胞およびがん細胞由来のcDNAの全ての混合物を調製したが(図2、PC)、この混合物の調製に用いた正常細胞組織(骨髄、脳・小脳、胎児脳、胎児肝臓、心臓、腎臓、肺、胎盤、前立腺、唾液腺、骨格筋、脾臓、精巣、甲状腺、気管、子宮、大腸(粘膜内面)、小腸、脊髄、胃、卵巣、皮膚、胆嚢、脂肪組織)のcDNAはクロンテックから購入した。
RT−PCRの結果、正常細胞において検出されたPCR産物のバンドサイズと癌細胞において検出されたPCR産物のバンドサイズを、ポジティブコントロール(図2、PC)において検出されたバンドの位置を参照しながら比較を行い、臓器特異的に発現している遺伝子の確認を行なった。確認されたPCR産物のバンド位置から、メジャーフォームとは異なる位置に出現するバンドをASV由来のバンドとし、臓器特異性のあるASV由来のバンドをアガロースゲルから切り出して、定法に従って、その塩基配列を決定した。決定したASVの塩基配列は、マップソフトest2genome(EMBOSS is “The European Molecular Biology Open Software Suite”)を用いてゲノム配列に対しマッピングを行い、メジャーフォームのエクソン、イントロン構造と比較して、ASVのゲノム構造を決定した。
BST1_ASV配列情報の取得
実施例2に示す方法により、膵臓癌特異的にmRNA発現が確認されたBST1遺伝子の選択的スプライスバリアントであるBST1_ASVを同定した。
(1)BST1_ASV塩基配列の決定
BST1_ASVのcDNAを同定するため、がんセンターよりご供与頂いた各癌細胞株全RNAをもとに作製したcDNAに対して、以下のプライマーを用いてPCRを行った。
BST1_h.f1:5’−AGGAGAGAAGGGGAGTGGAGGAAGC(配列番号5)
BST1_t.r1:5’−GGCTGGAGGAGGGTTAGAGCAACAC(配列番号6)
PCRの条件は以下に示す。
使用酵素 : TAKARA LA_taq
使用機種 :
Biometra T-GRADIENT
反応液組成 : 10 × LA Buffer 1.5μl
dNTP MIX (2.5mM each) 2.4μl
プライマー(BST1_h.f1) 2.4μl
(BST1_t.r1) 2.4μl
LA Taq+Taq AB(*) 0.3μl
(*)monoclonal antibody for Hot Start PCR anti−Taq high(TOYOBO)と各Taq polymeraseを等量ずつ混合し、室温で15分間静置した
鋳型DNA 0.5μl
蒸留水 5.5μl
総量 15μl
サイクル条件は、95℃ で保持した後、95℃30秒、68℃2分30秒、68℃2分を35サイクル行い、4℃で保持した。
正常細胞(図1)および癌細胞(図2)各々に関し、得られたPCR産物のアガロースゲル電気泳動を行い、メジャーフォームとは異なるサイズに位置し、かつ、膵臓癌特異的に検出されるバンドを切り出し、定法によりクローニングおよび配列決定を行なった。配列決定は、ABI PRISM BigDye Terminator v3.1(Applied Biosystems社)遺伝子解析試薬を用いてサンプルを調製し、3730DNA Analyzer(Applied Biosystems社)を使用して解析を行なった。同定されたBST1_ASVの塩基配列を配列番号1、およびアミノ酸配列を配列番号2として示す。また、BST1メジャーフォームの塩基配列を配列番号3として示す。また、メジャーフォームとASVのアライメントを図3に示す。
(2)BST1_ASVの膵臓癌特異性に関する検討
BST1_ASVが膵臓癌特異的に発現していることについて、上記プライマー(配列番号5および6)とは異なるプライマーを用いて再度確認を行なった。
BST1_ASVをコードする塩基配列は、メジャーフォームをコードする塩基配列のうち、開始コドンのAから数えて15番目〜188番目までの配列を欠いている。従って、ASVのこの領域に対して設計したプライマーは、メジャーフォームにはアニールせず、ASVに対してのみアニールし、ASVのみを特異的に増幅させることができる(図4を参照のこと)。そこで、そのようなプライマーを順方向(配列番号8)または逆方向(配列番号7)に用いてPCRを行なった。
以下に配列を示すプライマーのうち、BST1_h.f1(配列番号5)およびBST1_sv1.r1(配列番号7)で示されるプライマーセットは、ASVに特異的なプライマー(配列番号7)を逆方向に設定してBST1_ASVを特異的に増幅するためのセットであり、また、BST1_sv1.f1(配列番号8)およびBST1_e2.r1(配列番号9)で示されるプライマーセットは、ASVに特異的なプライマーを順方向に設定してBST1_ASVを特異的に増幅するためのセットである(図4を参照のこと)。
5’側BST1_ASV特異的検出用プライマー
BST1_h.f1:5’−AGGAGAGAAGGGGAGTGGAGGAAGC−3’(配列番号5)
BST1_sv1.r1:5’−GCTGTGCAGTTCTTGTTCCCCTGG−3’(配列番号7)
3’側BST1_ASV特異的検出用プライマー
BST1_sv1.f1:5’−CGATGGCGGCCCAGGGGAACA−3’(配列番号8)
BST1_e2.r1:5’−TGAGGGCAGCACGGAGCAGGGAT−3’(配列番号9)
PCRの条件は以下に示す。
使用酵素 : TAKARA LA_taq
使用機種 :
Biometra T-GRADIENT
反応液組成 : 10 × LA Buffer 1.0μl
dNTP MIX (2.5mM each) 1.6μl
プライマー(BST1_h.f1) 1.6μl
(BST1_t.r1) 1.6μl
LA Taq+Taq AB(*) 0.4μl
(*)monoclonal antibody for Hot Start PCR anti−Taq high(TOYOBO)と各Taq polymeraseを等量ずつ混合し、室温で15分間静置した
鋳型DNA 0.5μl
蒸留水 5.5μl
総量 10μl
サイクル条件は、96℃ で保持した後、96℃30秒、62℃30秒、72℃1分30秒を35サイクル行い、72℃2分、4℃で保持した。
配列番号5および7のプライマーを用いた確認実験の結果を図5および6に、配列番号8および9のプライマーを用いた確認実験の結果を図7および8に示す。
以上の結果から、BST1メジャーフォームは、膵臓を含めた検討したほとんどの正常細胞において発現しており(図1)、癌細胞では、膵臓癌細胞(図2、レーン11〜13、15)の4種と扁平上皮癌細胞(口腔癌由来の細胞株、図2、レーン34)の1種にその発現が確認された(図2)。一方、BST1_ASVは、正常細胞については骨髄において発現される可能性が示されているが(図1、レーン22のNDで示すバンド)、このバンドはASV特異的なプライマーでは検出されていないため(図5および図7、レーン22)、プライマーによる非特異的増幅産物であると考えられる。それ以外の正常細胞における発現は検出されなかった(図1,5,7)。一方、癌細胞では、BST1_ASVの発現は、膵臓癌細胞(膵管系膵癌由来の細胞株)(図2,6,8、レーン12,13,15)と扁平上皮癌細胞(口腔癌由来の細胞株)(図2,6,8、レーン34)の1種において確認され、それ以外の組織由来の癌細胞では検出できなかった。
すなわち、正常な膵臓においてBST1_ASVは発現しておらず、癌化して初めて膵臓に発現が認められることから、膵臓癌特異的な腫瘍マーカーとして利用可能であると判断できる。
参考文献
Adkinsら, Mol Cell Proteomics. 12:947-955,
2002
Anderson及びAnderson, Mol Cell Proteomics.
11:845-867, 2002
Ausubelら, Current protocols in molecular biology. John Wiley & Sons, New
York. 1987
Beckerら, Methods. Enzymol., 194:182-184,
1990
Bondanszkyら, Peptide Synthesis, Interscience Publishers, New York 1996
Chen及びOkayama, BioTechniques. 6:632-638, 1988
Cohenら, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69:2110-2114, 1972
Elroy-Stein及びMoss, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6743-6747, 1990
Eppsteinら, Proc Natl Acad Sci USA. 82:3688-6892, 1985
Gennaroら: The science and practice of pharmacy. Lippincott, Williams &
Wilkins, Philadelphia, PA. 2000
Godingら, Academic Press, San Diego. 492 pp. 1996
Harlow及びLane, Antibodies: A laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory
Press, Cold Spring Harbor. 726 pp, 1988
Harlow及びLane, Using antibodies: A laboratory manual. Cold Spring Harbor
Laboratory PRess, Cold Spring Harbor, New York. 1999
Hinnenら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75:1929-1933, 1978
Hirataら, FEBS Lett. 19: 356: 244-248, 1994
Hwangら, Proc Natl Acad Sci USA. 77:4030-4034, 1980
Itohら, J. Bacteriol., 153:163-168, 1983
Ishiharaら, Int. Immunol. 8: 1395-1404, 1996
Ishikawaら, J. Clin. Oncol., 28:723-728, 1998
Jonesら, Nature. 321:522-525, 1986
Kaishoら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:5325-5329, 1994
Kozborら, J Immunol. 133:3001-3005, 1984
Martin及びPapahadjopoulos, J Biol Chem. 257:286-288, 1982
Milsteinら, Nature. 305:537-540, 1983
Morrisonら, Genetically engineered antibody molecules and their application.
Ann NY Acad Sci. 507:187-198, 1987
Prestaら, Curr Opin Biotechnol. 3:394-398, 1992
Riechmannら, Nature. 332:323-327, 1988
Sambrook, J. Molecular cloning: a
laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor. 1989
Schadeら, The production of avian (egg yold) antibodies: IgY. The report and
recommendations of ECVAM workshop. Alternatives to Laboratory Animals (ATLA).
24:925-934, 1996
Schook, L.B. 1987. Monoclonal antibody production techniques and
applications. Marcel Dekker, Inc., New York. 336 pp.
Schroederら, The peptide, Academic Press, New York 1965
Shigekawa及びDower BioTechniques. 6:742-751, 1988
Verhoeyen及びWinter Science 239:1534-1536,
1988
本発明により、癌の中でも早期発見が困難であった膵臓癌の検診において、特異的な検出マーカーを提供することが可能となる。また、本発明の腫瘍マーカーを利用することで、膵臓癌特異的に制癌化合物などを送達することも可能となり、膵臓癌における新たな治療法をも提供し得る。
図1は、正常細胞におけるBST1およびBST1_ASVの発現確認の結果を示す。各正常細胞から調製したcDNAに対して、BST1およびBST1_ASVを増幅する特異的なプライマーを用いてPCRを行い、合成されたPCR産物の電気泳動を行なった。各レーンに対応する正常細胞の由来を以下に示す;レーン1〜24まで、順次、1.脳、2.心臓、3.腎臓、4.脾臓、5.肝臓、6.大腸(結腸)、7.肺、8.小腸、9.筋肉、10.胃、11.精巣、12.胎盤、13.唾液腺、14.甲状腺、15.副腎、16.膵臓、17.卵巣、18.子宮、19.前立腺、20.皮膚、21.末梢血Tリンパ球、22.骨髄、23.胎児脳、24.胎児肝臓 図2は、癌細胞におけるBST1およびBST1_ASVの発現確認の結果を示す。各レーンに対応する癌細胞の由来を以下に示す;レーン1〜24まで、順次、1.HepG2、2.Alexander、3.Li7、4.Kim-1、5.KYN-2(レーン1〜5まで肝細胞癌)、6.CaC0-2、7.HT-29、8.HCT-15、9.SW-48、10.SW-480(レーン6〜10まで大腸癌(結腸癌))、11.MIAPaCa、12.CFPAC、13.Capan-2、14.HIPAF-II、15.Panc-1(レーン11〜15まで膵臓癌)、16.OV-90、17.OMC-3、18.MCAS、19.RMG-1(レーン16〜19まで卵巣癌)、20.JEG-3、21.JAR、22.BeWo、23.NJG(レーン20〜23まで絨毛癌)、24.Lu130、25.Lu134-A、26.Lu134B、27.Lu135、28.Lu139(レーン24〜28まで肺小細胞癌)、29.PC-3、30.MDA-Pca-2b、31.22Rv-1(レーン29〜31まで前立腺癌)、32.HSC-2、33.SAS、34.HO-1-N-1、35.HO-1-U-1(レーン32〜35まで扁平上皮癌)、36.Lu65、37.HeLa、38.MKN-28、39.PlatE、40.KIT32(レーン36〜40までコントロール) 図3は、BST1メジャーフォームとBST1_ASVのアライメントを示す。 図4は、発現確認のために行なったPCRのプライマーの位置を示す。斜字体の部分はASVでは欠失している部分である。従って、破線の部分を除いた矢印部分が設定したプライマーの位置を示す。 図5は、正常細胞から調製したcDNAに対して、ASV特異的なプライマーを用いてPCRを行った結果である。各レーンは図1と同じである。 図6は、癌細胞から調製したcDNAに対して、ASV特異的なプライマーを用いてPCRを行った結果である。各レーンは図2と同じである。 図7は、正常細胞から調製したcDNAに対して、ASV特異的なプライマーを用いてPCRを行った結果である。各レーンは図1と同じである。 図8は、癌細胞から調製したcDNAに対して、ASV特異的なプライマーを用いてPCRを行った結果である。各レーンは図2と同じである。

Claims (12)

  1. 以下の(a)又は(b)のポリペプチドを含むBST1_ASVポリペプチド又はその塩。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (b)配列番号2で示される配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、膵臓癌細胞に特異的に存在するポリペプチド
  2. 配列番号1で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
  3. 前記BST1_ASVポリペプチドをコードする遺伝子。
  4. 前記BST1_ASVポリペプチドを検出する段階を含むことを特徴とする膵臓癌細胞を検出する方法。
  5. 前記BST1_ASVポリペプチドを検出する段階が、BST1_ASVポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いたイムノアッセイ法を用いることを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 膵臓癌の患者由来の血清又は病理組織切片を試料に用いることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 請求項2に記載のポリヌクレオチド又は請求項3に記載の遺伝子を検出する段階を含むことを特徴とする膵臓癌細胞を検出する方法。
  8. 前記ポリヌクレオチド又は前記遺伝子の発現の検出が、該ポリヌクレオチド又は該遺伝子の転写物若しくはその断片を特異的に増幅するプローブを用いたRT−PCR法により行われることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  9. 膵臓癌の患者由来のバッフィーコートを試料に用いることを特徴する請求項8に記載の方法。
  10. 請求項4に記載の方法を実施するためのキットであって、該キットが請求項1に記載のポリペプチドに対するモノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体を含むことを特徴とするキット。
  11. 請求項8に記載の方法を実施するためのキットであって、該キットが配列番号5乃至9の塩基配列を有する核酸からなる群から選択される少なくとも1の核酸を含むことを特徴とするキット。
  12. 前記BST1_ASVポリペプチドと特異的に結合する抗体に制癌化合物をコンジュゲートした該抗体を含む医薬組成物。
JP2004118693A 2004-04-14 2004-04-14 新規bst1選択的スプライシング変異体及びその用途 Pending JP2005295921A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004118693A JP2005295921A (ja) 2004-04-14 2004-04-14 新規bst1選択的スプライシング変異体及びその用途

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004118693A JP2005295921A (ja) 2004-04-14 2004-04-14 新規bst1選択的スプライシング変異体及びその用途

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005295921A true JP2005295921A (ja) 2005-10-27

Family

ID=35328216

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004118693A Pending JP2005295921A (ja) 2004-04-14 2004-04-14 新規bst1選択的スプライシング変異体及びその用途

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005295921A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013003625A3 (en) * 2011-06-28 2013-09-06 Oxford Biotherapeutics Ltd. Antibodies to adp-ribosyl cyclase 2
US9175092B2 (en) 2011-06-28 2015-11-03 Oxford Biotherapeutics Ltd Antibodies to bone marrow stromal antigen 1
US9447178B2 (en) 2011-06-28 2016-09-20 Oxford Biotherapeutics Ltd. Therapeutic and diagnostic target
CN111971091A (zh) * 2018-04-13 2020-11-20 柏林化学股份公司 预防或治疗骨髓发育不良综合征的抗bst1抗体

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013003625A3 (en) * 2011-06-28 2013-09-06 Oxford Biotherapeutics Ltd. Antibodies to adp-ribosyl cyclase 2
JP2014522645A (ja) * 2011-06-28 2014-09-08 オックスフォード ビオトヘラペウトイクス エルティーディー. Adpリボシルシクラーゼ2に対する抗体
US9175092B2 (en) 2011-06-28 2015-11-03 Oxford Biotherapeutics Ltd Antibodies to bone marrow stromal antigen 1
US9447178B2 (en) 2011-06-28 2016-09-20 Oxford Biotherapeutics Ltd. Therapeutic and diagnostic target
US9732160B2 (en) 2011-06-28 2017-08-15 Oxford Biotherapeutics Ltd Methods of treating acute myeloid leukemia with antibodies to bone marrow stromal antigen 1
EA031181B1 (ru) * 2011-06-28 2018-11-30 Оксфорд Байотерепьютикс Лтд. Антитело, которое специфически связывается с bst1, или его антигенсвязывающий фрагмент, нуклеиновые кислоты, кодирующие его цепи, клетка-хозяин, способ получения этого антитела и применение для лечения рака и воспалительных заболеваний
US10239956B2 (en) 2011-06-28 2019-03-26 Oxford Biotherapeutics Ltd Nucleic acid encoding bone marrow stromal antigen 1 antibody
KR102058185B1 (ko) 2011-06-28 2019-12-20 옥스포드 바이오테라퓨틱스 리미티드 Adp-리보실 시클라제 2에 대한 항체
US10982005B2 (en) 2011-06-28 2021-04-20 Oxford Biotherapeutics Ltd Antibodies to bone marrow stromal antigen 1
CN111971091A (zh) * 2018-04-13 2020-11-20 柏林化学股份公司 预防或治疗骨髓发育不良综合征的抗bst1抗体

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Vasu et al. Novel vertebrate nucleoporins Nup133 and Nup160 play a role in mRNA export
Guan et al. Nup50, a nucleoplasmically oriented nucleoporin with a role in nuclear protein export
KR102178945B1 (ko) 암 모델 및 관련 방법
AU2008333810B2 (en) Compositions and methods to modulate cell membrane resealing
Bullock et al. The 1.6 Å resolution crystal structure of nuclear transport factor 2 (NTF2)
JPH06505152A (ja) 肝集積性転写因子
CN101679485A (zh) 骨桥蛋白的功能表位、针对该单元的单克隆抗体及它们的应用
KR20050103474A (ko) 갈렉틴 9 함유 의약
JP4975444B2 (ja) 創薬標的タンパク質及び標的遺伝子、並びにスクリーニング方法
JP2005295921A (ja) 新規bst1選択的スプライシング変異体及びその用途
JP2003510053A (ja) ヘパラナーゼ蛋白質ファミリーの1種、ヘパラナーゼ−2
EP0831148B1 (en) Human adhesion molecule occludin
KR20070042994A (ko) 항시노비올린 항체
JPH05506981A (ja) ガストリン放出ペプチド受容体
JPH11501817A (ja) ヒト臍静脈内皮細胞で発現されるヒアルロン酸レセプタ
US7179898B1 (en) Human vanilloid receptor-like receptor
CN103370338B (zh) Myomegalin变体8及其应用
EP1767633B1 (en) Novel polypeptide useful for diagnosis and treatment of cancer
EP1466975A1 (en) Postsynaptic proteins
ES2242597T3 (es) Composiciones y procedimientos para el diagnostico y tratamiento de un tumor.
JP2005278472A (ja) オーロラb結合因子incenp
WO2006085648A1 (ja) 新規ナルコレプシー関連遺伝子
CN111808938A (zh) Atp6v0d2用于动脉粥样硬化的早期诊断或疗效监控
AU2015201325B2 (en) Methods for diagnosing and treating cancers
JP2001500847A (ja) 癌の検出および処置の新規方法