JP2005292423A - 偏光選択反射シート並びにそれを備えた投影スクリーン及び投影システム - Google Patents

偏光選択反射シート並びにそれを備えた投影スクリーン及び投影システム Download PDF

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Abstract

【課題】 映像光の反射光に与えられる拡散効果のうち望ましくない拡散効果(散乱効果)を抑制して、明るい環境光の下でも映像を鮮明に表示することが可能な視認性に優れた偏光選択反射シートを提供する。
【解決手段】 投影スクリーン10は、特定の偏光成分の光を選択的に反射するコレステリック液晶構造を有する偏光選択反射層11と、偏光選択反射層11を支持する支持基材12とを備えている。偏光選択反射層11のコレステリック液晶構造は、螺旋軸Lの方向が異なる複数の螺旋構造領域を含んでおり、このようなコレステリック液晶構造の構造的な不均一性により反射光33を拡散させるようになっている。偏光選択反射層11の厚さtは、当該偏光選択反射層11の選択反射中心波長における透過率が不飽和となるような大きさに設定されている。偏光選択反射層11の選択反射中心波長における透過率は3〜35%であることが好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、投影機により投影スクリーン上に映像光を投射して映像を表示する投影システムに係り、とりわけ、映像を鮮明に表示することが可能な視認性に優れた偏光選択反射シート並びにそれを備えた投影スクリーン及び投影システムに関する。
従来の投影システムとしては、投影機により投射された映像光を投影スクリーン上に映し出し、その反射光を観察者が映像として観察するものが一般的である。
このような従来の投影システムで用いられる投影スクリーンとしては、白色の紙材や布材の他、プラスチックフィルム上に光を白色散乱するインキを塗装したものなどが一般に用いられている。また、より高品質な投影スクリーンとして、ビーズやパールなどを練りこんだ散乱層を含み、この散乱層によって映像光の散乱状態を制御するものが市販されている。
ところで、近年では、投影機本体の小型化や価格の低下などに伴って、ホームシアターなどの家庭用途の需要が増加してきており、投影システムが一般家庭で用いられることが多くなってきている。この場合、投影システムは家庭のリビングスペースなどに設置されることが多いが、このような場所は通常、外光や照明光などの環境光が入りやすい設計となっている。このため、家庭用途の投影システムで用いられる投影スクリーンとしては、明るい環境光の下でも良好な映像表示を実現することが可能なものが望まれている。
しかしながら、上述した従来の投影スクリーンでは、外光や照明光などの環境光についても映像光と同様に反射してしまうので、明るい環境光の下で良好な映像表示を実現することが困難であるという問題がある。
具体的には、従来の投影システムでは、投影スクリーン上に投射される投影機からの投射光(映像光)の強度差によって映像の濃淡が作り出されており、例えば、黒地に白の絵を映し出すような場合には、投射光が投影スクリーンに当たる部分が白、それ以外の部分が黒となり、このような白黒の明るさの差により映像の濃淡が作り出されている。この場合、良好な映像表示を実現するためには、白表示の部分をより明るくし、黒表示の部分をより暗くして、コントラスト差を大きくする必要がある。
しかしながら、上述した従来の投影スクリーンでは、外光や照明光などの環境光を映像光との区別なく反射してしまうので、白表示の部分及び黒表示の部分の両方が明るくなり、白黒の明るさの差が小さくなってしまう。このため、上述した従来の投影スクリーンでは、部屋を暗くするための手段や環境などを用いて外光や照明光などの環境光の影響を抑えない限り、良好な映像表示を実現することが困難であるという問題がある。
このような背景の下で、従来から、明るい環境光の下でも良好な映像表示を実現することが可能な投影スクリーンが研究されており、例えばホログラムを利用したものや、偏光分離層を利用したものなどが提案されている(特許文献1及び2参照)。
特開平5−107660号公報 特開2002−540445号公報
しかしながら、上述した従来の投影スクリーンのうち、ホログラムを利用した投影スクリーンでは、散乱効果を制御して白表示の部分をより明るくすることができ、明るい環境光の下で比較的良好な映像表示を実現することができるものの、ホログラムは波長選択性はあるものの、偏光選択性を有しておらず、一定の限度でしか映像を鮮明に表示することができないという問題がある。また、ホログラムを利用した投影スクリーンでは、製造上の問題から大画面化が困難であるという問題がある。
一方、偏光分離層を利用した投影スクリーンでは、白表示の部分を明るくしつつ、黒表示の部分をより暗くすることが可能であり、ホログラムを利用したものに比べて、明るい環境光の下で映像を鮮明に表示することができる。
具体的には例えば、上記特許文献1には、映像光に含まれる赤色、緑色及び青色の各色の光(右円偏光又は左円偏光)を反射するコレステリック液晶を用い、コレステリック液晶の円偏光分離機能により環境光の略半分を反射させないようにする投影スクリーンが記載されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載された投影スクリーンでは、コレステリック液晶がプラーナー配向状態となっているので、このようなコレステリック液晶により光を反射させた場合には光の反射が鏡面反射となり、光を映像として視認することが困難である。すなわち、光を映像として視認するためには反射光に拡散効果が与えられている必要があるが、上記特許文献1に記載された投影スクリーンではこの点についての考慮が全くなされていない。
一方、上記特許文献2には、拡散性を有する多層反射性偏光材などを反射性偏光要素として用いる投影スクリーンであって、多層反射性偏光材などの偏光分離機能により環境光の一部を反射させないようにするとともに、多層反射性偏光材を構成する屈折率の異なる材料の界面反射、又は、多層反射性偏光材とは別に設けられた拡散要素により、反射光に拡散効果を与えるものが記載されている。また、上記特許文献2には、コレステリック反射性偏光材などを反射性偏光要素として用いる投影スクリーンであって、この反射性偏光要素と拡散要素とを組み合わせて用い、コレステリック反射性偏光材などの偏光分離機能により環境光の一部を反射させないようにするとともに、コレステリック反射性偏光材とは別に設けられた拡散要素により反射光に拡散効果を与えるものが記載されている。
しかしながら、上記特許文献2に記載されたもののうち前者のものは、あくまでも多層反射性偏光材などの直線偏光要素(スリーエム社製のDBEFなど)を前提とするものであるので、投影システムなどに組み込んで用いる際には、直線偏光を出射する液晶プロジェクターなどの投影機との間で偏光面を一致させる必要があり、両者の偏光面が一致しない場合には良好な映像表示を実現することができないという問題がある。
また、上記特許文献2に記載されたもののうち後者のものでは、反射性偏光要素としてコレステリック反射性偏光材などの円偏光要素が用いられているものの、反射性偏光要素の観察者側に設けられた拡散要素により反射光に拡散効果を与えるものであるので、反射性偏光要素により与えられる偏光分離機能が損なわれてしまい、映像の視認性を十分に向上させることができないという問題がある。
すなわち、反射性偏光要素の観察者側に拡散要素が設けられているので、反射性偏光要素に入射する前に光が拡散要素を透過し、その偏光状態が乱されてしまう(これを「消偏」という)。ここで、拡散要素を透過する光には環境光(外光など)と映像光の2種類があるが、環境光の偏光状態が拡散要素により乱された場合には、反射性偏光要素で本来透過されるべき光が消偏によって反射性偏光要素で反射される成分に変換されてしまい、不要な光として反射性偏光要素で反射されてしまう。また、映像光の偏光状態が拡散要素により乱された場合には、反射性偏光要素で本来反射されるべき光が消偏によって反射性偏光要素で反射されない成分に変換されてしまい、反射性偏光要素を透過してしまう。このような2つの現象により、本来の偏光分離機能が損なわれてしまい、映像の視認性を十分に向上させることができない。
以上のように、上述した従来の投影スクリーンでは、ホログラムを利用したもの、及び上記特許文献1及び2に記載されたような偏光分離層を利用したもののいずれにおいても、明るい環境光の下では一定の限度でしか映像を鮮明に表示することができず、映像の視認性を十分に向上させることができなかった。
このような背景の下で、本出願人は先に、コレステリック液晶構造を有する偏光選択反射層を備え、コレステリック液晶構造の構造的な不均一性により映像の視認性を低下させることなく映像光の反射光に拡散効果を与えることができる投影スクリーンを提案している(特願2003−165687号)。
本発明はこのような投影スクリーンをさらに改良する目的でなされたものであり、映像光の反射光に与えられる拡散効果のうち望ましくない拡散効果(散乱効果)を抑制して、明るい環境光の下でも映像を鮮明に表示することが可能な視認性に優れた偏光選択反射シート並びにそれを備えた投影スクリーン及び投影システムを提供することを目的とする。
本発明は、第1の解決手段として、特定の偏光成分の光を選択的に反射する偏光選択反射層であって、それ自体の構造により反射光を拡散させる偏光選択反射層を備え、前記偏光選択反射層の厚さが、当該偏光選択反射層の選択反射中心波長における透過率が不飽和となるような大きさに設定されていることを特徴とする偏光選択反射シートを提供する。
なお、上述した第1の解決手段においては、前記偏光選択反射層の前記選択反射中心波長における透過率が3〜35%であることが好ましい。
また、上述した第1の解決手段において、前記偏光選択反射層はコレステリック液晶構造を有し、このコレステリック液晶構造の構造的な不均一性により反射光を拡散させることが好ましい。ここで、前記偏光選択反射層の前記コレステリック液晶構造は、螺旋軸の方向が異なる複数の螺旋構造領域を含むことが好ましい。
さらに、上述した第1の解決手段において、前記偏光選択反射層は、可視光域の一部のみをカバーする特定の波長域の光を選択的に反射することが好ましい。
なお、上述した第1の解決手段において、前記偏光選択反射層は、重合性の液晶材料からなることが好ましい。
本発明は、第2の解決手段として、投射された映像光を反射して映像を表示する投影スクリーンにおいて、上述した第1の解決手段に係る、一つ以上の互いに積層された偏光選択反射シートと、前記一つ以上の偏光選択反射シートを支持する支持基材とを備えたことを特徴とする投影スクリーンを提供する。
なお、上述した第2の解決手段において、前記一つ以上の偏光選択反射シートは、その選択反射中心波長が互いに異なることが好ましい。ここで、前記各偏光選択反射シートの選択反射中心波長は、当該各偏光選択反射シートに対して光が垂直に入射する場合を基準にして、選択反射中心波長が430〜460nm、540〜570nm及び580〜620nmの範囲のいずれかであることが好ましい。
また、上述した第2の解決手段において、前記支持基材は、可視光域の光を吸収する光吸収層を含むことが好ましい。
さらに、上述した第2の解決手段においては、前記偏光選択反射層と前記支持基材との間に設けられ、両者の密着性を高める中間層をさらに備えることが好ましい。
本発明は、第3の解決手段として、上述した第2の解決手段に係る投影スクリーンと、前記投影スクリーン上に映像光を投射する投影機とを備えたことを特徴とする投影システムを提供する。
本発明によれば、偏光選択反射シートにおいて、特定の偏光成分の光を選択的に反射する偏光選択反射層が、それ自体の構造により反射光を拡散させるようになっており、かつ、偏光選択反射層の厚さが、当該偏光選択反射層の選択反射中心波長における透過率が不飽和となるような大きさに設定されている。
このとき、偏光選択反射層においては、その偏光分離特性により特定の偏光成分の光(例えば右円偏光)のみを選択的に反射するので、このような偏光選択反射層を偏光選択反射シートとして備えた投影スクリーンで用いた場合には、偏光特性のない外光や照明光などの環境光を偏光選択反射層で略半分しか反射しないようにすることができる。このため、白表示など明表示の部分の明るさが同じ場合でも、黒表示などの暗表示の部分の明るさを略半分にして、映像のコントラストを略2倍にすることができる。なおこのとき、投射された映像光が、偏光選択反射層で選択的に反射される光の偏光成分と同一の偏光成分の光(例えば右円偏光)を主として含むようにすれば、投射された映像光を偏光選択反射層で略全部反射することができ、映像光を効率的に反射することができる。
また、偏光選択反射層においては、それ自体の構造(例えば構造的な不均一性を有するコレステリック液晶構造)により反射光を拡散させるようにしているので、映像光が鏡面反射でなく拡散反射され、映像が視認しやすくなる。なおこのとき、偏光選択反射層は、それ自体の構造により反射光を拡散させるので、特定の偏光成分の光を拡散させながら反射する一方で、その他の光については拡散させずに透過させることができる。このため、偏光選択反射層を透過する環境光や映像光について、上述したような「消偏」の問題は起こらず、偏光選択反射層の本来の偏光分離機能を維持しつつ、映像の視認性を向上させることができる。なお、コレステリック液晶構造が構造的な不均一性を有する例としては、コレステリック液晶構造に含まれる螺旋構造領域の螺旋軸の方向がばらついたりする場合などを挙げることができる。
ここで、本発明において最も重要なことは、上述したような偏光選択反射層(それ自体の構造により特定の偏光成分の光を選択的に拡散反射する偏光選択反射層)において、その厚さを、当該偏光選択反射層の選択反射中心波長における透過率が不飽和となるような大きさに設定することである。ここで、「透過率が不飽和」であるとは、偏光選択反射層において反射される特定の偏光状態の光の透過スペクトルが、飽和状態のスペクトル(透過率の極小値(選択反射中心波長における値)が下限に達して所定の波長域に亘って約0%の透過率を持つようなスペクトル)でなく、不飽和状態のスペクトル(透過率の極小値が下限に達していないガウス分布形状を反転させたようなスペクトル)をとることを意味する。
この点に関し、本出願人が先に出願した上記特願2003−165687号においては、偏光選択反射層の厚さが厚くなるのに伴って拡散効果が増すことに着目し、偏光選択反射層の厚さには特に制限はなく、逆に十分な厚さを持つことが望ましいと考えていた。しかしながら、その後、本発明者が鋭意研究を進めた結果、構造的な不均一性のあるコレステリック液晶構造を有する偏光選択反射層であっても、その厚さが厚い場合には望ましくない拡散効果(界面屈折率の違いや材料中の不純物に起因した散乱効果)が顕著に現れ、偏光分離の優位性が損なわれ、良好な視認性にとって障害となることが分かった。一方、偏光選択反射層の厚さが薄い場合にも、本来選択的に反射されるべき光が透過してしまうので、拡散反射率が下がり、偏光分離の優位性を損なわれる。このため、高いコントラストを維持するためには液晶プロジェクターなどの投影機から投射される映像光の明るさを高く保つ必要がある。
このような知見に基づき、本発明によれば、上述したような偏光選択反射層(それ自体の構造により特定の偏光成分の光を選択的に拡散反射する偏光選択反射層)において、その厚さを、当該偏光選択反射層の選択反射中心波長における透過率が不飽和となるような大きさに設定しているので、光を映像として視認するために与えられる拡散効果を十分に確保しつつ、良好な視認性を得る上で障害となる拡散効果(散乱効果)を効果的に抑制することができる。このため、本発明によれば、映像のコントラストを向上させて、明るい環境光の下でも映像を鮮明に表示することが可能となり、良好な視認性を実現することができる。
ここで、偏光選択反射層の選択反射中心波長における透過率は3〜35%であるようにすることが好ましく、この場合には、本来選択的に反射されるべき光が透過してしまう事態を最小限に抑えつつ、上述した作用効果を効果的に奏することができる。
また、本発明によれば、偏光選択反射層が、可視光域の一部のみをカバーする特定の波長域の光を選択的に反射するようにすることにより、このような偏光選択反射層を偏光選択反射シートとして備えた投影スクリーンにおいて、外光や照明光などの環境光の影響をさらに抑えて映像のコントラストを高めることができ、映像の視認性をより向上させることができる。すなわち、投影スクリーン上に映像光を投射する投影機は一般に、光の三原色である赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の波長域の光によりカラー表示を実現しており、例えば、投影スクリーンに対して光が垂直に入射する場合を基準にして、選択反射中心波長が430〜460nm、540〜570nm及び580〜620nmの範囲に存在する光を投射している。このため、投影スクリーンにおいて、投影機により投射される映像光の波長域に対応する波長域の光のみを選択的に反射するようにすることにより、外光や照明光などの環境光のうち上述した波長域から外れた範囲にある可視光域の光の反射を防止して映像のコントラストを高めることができる。
発明を実施するための形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
投影スクリーン
まず、図1により、本発明の一実施の形態に係る偏光選択反射層(偏光選択反射シート)を備えた投影スクリーンについて説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る投影スクリーン10は、観察者側(図面の上方側)から投射された映像光を反射して映像を表示するものであり、特定の偏光成分の光(例えば右円偏光)を選択的に反射するコレステリック液晶構造を有する偏光選択反射層(偏光選択反射シート)11と、偏光選択反射層11を支持する支持基材12とを備えている。
このうち、偏光選択反射層11は、コレステリック規則性を示す液晶性組成物からなり、液晶分子の物理的な分子配列として、液晶分子のダイレクターが層の厚さ方向に連続的に回転してなる螺旋構造をとっている。
そして、偏光選択反射層11は、このような液晶分子の物理的な分子配列に基づいて、一方向の円偏光成分と、これと逆回りの円偏光成分とを分離する偏光分離特性を有している。すなわち、偏光選択反射層11において、螺旋軸に沿って入射した無偏光状態の光は、2つの偏光状態の光(右円偏光及び左円偏光)に分離され、一方は透過され、残りは反射される。この現象は、円偏光二色性として知られ、液晶分子の螺旋構造における螺旋巻き方向を適宜選択すると、この螺旋巻き方向と同一の旋光方向を有する円偏光成分が選択的に反射される。
この場合の最大旋光光散乱は、次式(1)の波長λで生じる。
λ=nav・p … (1)
ここで、pは液晶分子の螺旋構造における螺旋ピッチ長(液晶分子の分子螺旋の1ピッチ当たりの長さ)、navは螺旋軸に直交する平面内での平均屈折率である。
また、このときの反射光の波長バンド幅△λは次式(2)で表される。ここで、△nは複屈折値である。
△λ=△n・p … (2)
すなわち、図1において、投影スクリーン10の観察者側から入射する無偏光状態の光(選択反射波長域内の右円偏光31R及び左円偏光31L、選択反射波長域外の右円偏光32R及び左円偏光32L)は、偏光選択反射層11において、上述したような偏光分離特性に従って、選択反射中心波長λを中心とした波長バンド幅△λの範囲(選択反射波長域)に属する一方の円偏光成分(例えば選択反射波長域内の右円偏光31R)が反射光33として反射され、その他の光(例えば選択反射波長域内の左円偏光31L、選択反射波長域外の右円偏光32R及び左円偏光32L)が透過される。
なお、このような偏光選択反射層11のコレステリック液晶構造は、図2(a)に示すように、螺旋軸Lの方向が異なる複数の螺旋構造領域30を含んでいる。そして、このようなコレステリック液晶構造の構造的な不均一性により、選択的に反射される光(反射光33)を拡散させるようになっている。ここで、コレステリック液晶構造が構造的な不均一性を有する状態とは、コレステリック液晶構造に含まれる螺旋構造領域30の螺旋軸Lの方向がばらついた状態の他、ネマチックレイヤー面(液晶分子のダイレクターがXY方向で同一である面)の少なくとも一部が偏光選択反射層11の面に対して平行でないような状態(染色処理したコレステリック液晶構造膜の断面TEM写真を撮ったときに濃淡パターンで現われる層の1つながりの曲線が基板面と平行でない状態)などをいう。また、このようなコレステリック液晶構造の構造的な不均一性に起因して生じる「拡散」とは、投影スクリーン10で反射された反射光(映像光)を観察者が映像として認識することができる程度に拡げることをいう。
これに対し、一般的なコレステリック液晶構造は、プラーナー配向状態となっており、図2(b)に示すように、コレステリック液晶構造に含まれる各螺旋構造領域30の螺旋軸Lの方向は全て層の厚さ方向に一様に平行に延びており、選択的に反射される光(反射光36)は鏡面反射される。
なお、本実施の形態において、偏光選択反射層11の厚さtは、当該偏光選択反射層11の選択反射中心波長における透過率が不飽和となるような大きさに設定することが好ましい。ここで、「透過率が不飽和」となるとは、偏光選択反射層11において反射される特定の偏光状態の光の透過スペクトルが、飽和状態のスペクトル(透過率の極小値(選択反射中心波長における値)が下限に達して所定の波長域に亘って約0%の透過率を持つようなスペクトル)でなく、不飽和状態のスペクトル(透過率の極小値が下限に達していないガウス分布形状を反転させたようなスペクトル)をとることを意味する。また、「透過率」とは、偏光選択反射層11において反射される特定の偏光状態の光の入射光量を100%としたときの透過光量の割合であり、「100%−透過率−正反射率」が拡散反射率に相当する。
より具体的には、偏光選択反射層11の選択反射中心波長における透過率は3〜35%であることが好ましい。これは、偏光選択反射層11の厚さtが厚く透過率が3%よりも小さくなると、望ましくない拡散効果(散乱効果)が顕著に現れ、偏光分離の優位性が損なわれ、良好な視認性にとって障害となるからである。また、この場合には、配向の制御などが困難となったり、ムラが生じたり、また材料自体による光吸収の程度が大きくなるという問題もある。一方、偏光選択反射層11の厚さtが薄く透過率が35%よりも大きくなると、本来選択的に反射されるべき光が透過してしまうので、拡散反射率が下がり、偏光分離の優位性を損ねることとなる。
なお、偏光選択反射層11の透過率(拡散反射率)は直接的には螺旋ピッチ数に依存しているが、螺旋ピッチ長が固定であるとすれば間接的には偏光選択反射層11の厚さtに依存している。具体的には、偏光選択反射層11にコレステリック液晶を用いる場合には、液晶性組成物の材料の種類や選択反射波長域にもよるが、3〜35%の透過率を得るためには、4〜12ピッチ程度が必要となる。このため、例えば偏光選択反射層11の選択反射中心波長が550nmである場合には、その厚さtは1.4〜4.2μm程度となる。
ここで、偏光選択反シート11のコレステリック液晶構造に含まれる螺旋構造領域30は、可視光域(例えば例えば400〜700nmの波長域)の一部のみをカバーする特定の波長域の光を選択的に反射するように、特定の螺旋ピッチ長を有していることが好ましい。より具体的には、偏光選択反射層11のコレステリック液晶構造は、液晶プロジェクターなどの投影機により投射される映像光の波長域に対応する波長域の光のみを選択的に反射するように、不連続的に異なる少なくとも2種類以上の螺旋ピッチ長を有していることが好ましい。なお、投影機は一般に、光の三原色である赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の波長域の光によりカラー表示を実現しているので、例えば、偏光選択反射層11に対して光が垂直に入射する場合を基準にして、選択反射中心波長が430〜460nm、540〜570nm及び580〜620nmの範囲に存在する光を選択的に反射するように、コレステリック液晶構造の螺旋ピッチ長を決定するようにするとよい。
なお、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の波長域として用いられる、430〜460nm、540〜570nm及び580〜620nmは、光の三原色によって白色を表現するディスプレイに用いられるカラーフィルターや光源などの波長域として一般的なものである。ここで、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の各色は特定の波長(例えば緑色(G)は代表的なものでは550nm)にピークを持つ輝線として表される。しかしながら、このような輝線にはある程度の幅があり、また、装置の設計や光源の種類などによって波長に差があることから、各色について、30〜40nmの波長バンド幅を持つことが好ましい。なお、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の各色の波長域を上述した範囲以外に設定した場合には、白色を表現することができず、白色が、黄味がかった白色や赤味がかった白色などになってしまう。
ここで、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の波長域が互いに独立した選択反射波長域として表される場合には、偏光選択反射層11のコレステリック液晶構造は、不連続的に異なる3種類の螺旋ピッチ長を有することが好ましい。なお、赤色(R)及び緑色(G)の波長域は一つの螺旋ピッチ長での選択反射波長域の波長バンド幅に含まれる場合があるが、この場合には、コレステリック液晶構造は、不連続的に異なる2種類の螺旋ピッチ長を有することが好ましい。
なお、偏光選択反射層11のコレステリック液晶構造が不連続的に異なる2種類以上の螺旋ピッチ長を有する場合には、偏光選択反射層11は、螺旋ピッチ長が互いに異なる少なくとも2層以上の部分選択反射層を互いに積層することにより構成することができる。具体的には、図3に示すように、青色(B)の波長域の光を選択的に反射する部分選択反射層11aと、緑色(G)の波長域の光を選択的に反射する部分選択反射層11bと、赤色(R)の波長域の光を選択的に反射する部分選択反射層11cとを、支持基材12側から順に積層するようにするとよい。なお、部分選択反射層11a,11b,11cの積層の順番は必ずしもこれに限られるものではなく、適宜任意の順番をとることができる。なお、図3において、各部分選択反射層11a,11b,11cは、図1及び図2(a)に示す偏光選択反射層11と同様に、特定の偏光成分の光(例えば右円偏光)を選択的に反射するコレステリック液晶構造であって、その構造的な不均一性により反射光を拡散させるコレステリック液晶構造を有している。ここで、各部分選択反射層11a,11b,11cで選択的に反射される光の偏光成分は互いに同一である。また、個々の部分選択反射層11a,11b,11cの厚さtは、当該部分選択反射層11a,11b,11cの選択反射中心波長における透過率が不飽和となるような大きさに設定されている。
なお、図3に示す偏光選択反射層11において、支持基材12と部分選択反射層11aとの間、部分選択反射層11aと部分選択反射層11bとの間、及び部分選択反射層11bと部分選択反射層11cとの間には易接着層などの中間層を設けてもよく、これにより、各部分選択反射層11a,11b,11cのコレステリック液晶構造の配向状態を制御したり、各部分選択反射層11a,11b,11c間の密着性を高めることが可能となる。
次に、支持基材12について説明する。
支持基材12は、偏光選択反射層11を支持するためのものであり、プラスチックフィルムや金属、紙材、布材、ガラスなどの材料を用いて形成することができる。
ここで、支持基材12は、可視光域の光を吸収する光吸収層を含むことが好ましい。具体的には例えば、黒い顔料を練りこんだアクリル板やプラスチックフィルム(例えばカーボンを練りこんだ黒色PETフィルム)などを用いて支持基材12を形成したり(この場合には、支持基材12の全体が光吸収層(光吸収基材)となる)、プラスチックフィルムなどの透明な支持フィルムのいずれかの側の表面上に、黒い顔料などからなる光吸収層を形成したりするとよい。これにより、投影スクリーン10の観察者側から入射する無偏光状態の光のうち反射光として本来反射されるべきででない光(選択反射波長域内の左円偏光、選択反射波長域外の右円偏光及び左円偏光)や、投影スクリーン10の背面側から入射する光を吸収して、外光や照明光などの環境光に起因した反射光や、映像光に起因した迷光などの発生を効果的に防止することができる。
なお、支持基材12の厚さは、巻き取りできるようにすることを考慮するならば15〜300μmが好ましく、より好ましくは25〜100μmである。一方、パネルとして用いられる場合のように支持基材12にフレキシブル性が必ずしも必要とされない場合には制限なく厚くすることができる。
また、支持基材12の材料として用いられるプラスチックフィルムとしては、ポリカーボネート系高分子、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系高分子、ポリイミド系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリスチレン系高分子、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、酢酸セルロース系高分子、ポリ塩化ビニル系高分子、ポリアクリレート系高分子、ポリメチルメタクリレート系高分子などの熱可塑性ポリマーなどからなるフィルムを用いることができる。なお、支持基材12の材料はこれに限定されるものではなく、金属や紙材、布材、ガラスなどの材料を用いることもできる。
なお、支持基材12上に偏光選択反射層11(又は偏光選択反射層11を構成する各部分選択反射層11a,11b,11c)を積層する場合には、後述するように、コレステリック規則性を示す液晶性組成物を塗布した後、配向処理及び硬化処理を行うのが一般的である。
この場合、偏光選択反射層11(又は偏光選択反射層11を構成する各部分選択反射層11a,11b,11c)のコレステリック液晶構造がプラーナー配向状態とならないように制御する必要があるので、支持基材12としては、液晶性組成物が塗布される側の表面に配向能を有していないものを用いることが好ましい。ただし、支持基材12のうち液晶性組成物が塗布される側の表面の材料が、延伸フィルムなどのように表面に配向能を有しているものであっても、支持基材12としての延伸フィルムの表面に表面処理を施したり、液晶性組成物の材料や、液晶性組成物を配向処理する際のプロセス条件などを制御することにより、偏光選択反射層11(又は偏光選択反射層11を構成する各部分選択反射層11a,11b,11c)のコレステリック液晶構造がプラーナー配向状態とならないように制御することが可能である。
また、支持基材12のうち液晶性組成物が塗布される側の表面が配向能を有している場合には、偏光選択反射層11(又は偏光選択反射層11を構成する部分選択反射層11a)と支持基材12との間に易接着層などの中間層を設けることにより、偏光選択反射層11(又は偏光選択反射層11を構成する各部分選択反射層11a,11b,11c)のコレステリック液晶構造の配向状態を制御し、偏光選択反射層11(又は偏光選択反射層11を構成する各部分選択反射層11a,11b,11c)のコレステリック液晶構造のうち中間層との界面近傍の液晶分子のダイレクターが複数の方向に向くようにすることも可能である。なお、易接着層などの中間層を設ける場合には、偏光選択反射層11(又は偏光選択反射層11を構成する部分選択反射層11a)と支持基材12との間の密着性を高めることもできる。なお、このような中間層としては、偏光選択反射層11の材質及び支持基材12の材質の両方に対して高い密着性が得られるものであればよく、一般に市販されているものを用いることができる。具体的には例えば、東洋紡社製の易接着層付PETフィルムA4100や、パナック社製の易接着材料AC−X、AC−L、AC−Wなどが挙げられる。なお、中間層は、黒い顔料などを練りこみ、可視光域の光を吸収する光吸収層として用いることもできる。
ここで、支持基材12の表面が配向能を有しておらず、また偏光選択反射層11(又は偏光選択反射層11を構成する部分選択反射層11a)と支持基材12との間の密着性も十分高い場合には、必ずしも中間層を設ける必要はない。また、偏光選択反射層11と支持基材12との間の密着性を高めるための方法としては、コロナ処理やUV洗浄などのプロセス的な方法を用いることもできる。
次に、上述したような偏光選択反射層(偏光選択反射シート)11を備えた投影スクリーン10の製造方法について説明する。
まず、偏光選択反射層11が積層される支持基材12を準備する。また、必要に応じて、支持基材12のうち偏光選択反射層11が設けられる側の表面上に易接着層などの中間層を積層する。なおこのとき、支持基材12のうち液晶性組成物が塗布される側の表面(又は中間層がある場合にはその表面)は配向能を有していないようにする。
次に、このようにして準備された支持基材12上に、コレステリック規則性を示す液晶性組成物を塗布した後、配向処理及び硬化処理を行うことにより、偏光選択反射層11を積層(固着)させる。
以下、偏光選択反射層11を積層(固着)させるための各工程(塗布工程、配向処理工程及び硬化処理工程)の詳細について説明する。
(塗布工程)
塗布工程においては、支持基材12上に、コレステリック規則性を示す液晶性組成物を塗布することにより、コレステリック液晶層を形成する。このとき、液晶性組成物を塗布する方法としては、既存の任意の方法を用いることができる。具体的には、ロールコート法やグラビアコート法、バーコート法、スライドコート法、ダイコート法、スリットコート法、浸漬法などを用いることができる。また、支持基材12としてプラスチックフィルムを用いる場合には、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)システムによるフィルムコーティングなどを用いることができる。なおこのとき、コレステリック液晶層の厚さは、コレステリック液晶層の選択反射中心波長における透過率が3〜35%となるような大きさに設定する。具体的には例えば、コレステリック液晶層の選択反射中心波長が550nmである場合には、その厚さは1.4〜4.2μm程度とする。
なお、支持基材12上に塗布される液晶性組成物としては、コレステリック規則性を示すカイラルネマチック液晶やコレステリック液晶を用いることができる。このような材料としては、コレステリック液晶構造を形成し得る液晶材料であれば特に限定されるものではないが、特に、分子の両末端に重合性の官能基があるような重合性の液晶材料が、硬化後に光学的に安定した偏光選択反射層11を得る上で好ましい。
以下、液晶性組成物としてカイラルネマチック液晶を用いる場合を例に挙げて説明する。なお、カイラルネマチック液晶は、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料とカイラル剤とを混合したものである。ここで、カイラル剤は、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料の螺旋ピッチ長を制御し、液晶性組成物が全体としてコレステリック規則性を呈するようにするためのものである。なお、カイラル剤の種類を変えてカイラルパワーを変えるか、あるいは、カイラル剤の濃度を変化させることにより、重合性の液晶材料の分子構造に起因する選択反射中心波長を制御することができる。また、このような液晶性組成物には、重合開始剤や適当な添加剤が添加される。
ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料の一例としては、例えば、下記の一般式(1)で表わされる化合物や、下記の式(2−i)〜(2−xi)で表される化合物を挙げることができる。また、これらの化合物を単独で、もしくは混合して用いることができる。
Figure 2005292423
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上記一般式(1)において、R及びRはそれぞれ水素又はメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR及びRはともに水素であることが好ましい。Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、ニトロ基のいずれであっても差し支えないが、塩素又はメチル基であることが好ましい。また、上記一般式(1)において、分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と芳香環とのスペーサーであるアルキレン基の鎖長を示すa及びbは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)の化合物は、安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物自体の結晶性が高い。また、a及びbがそれぞれ13以上である一般式(1)の化合物は、アイソトロピック転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物はどちらも液晶相を示す温度範囲が狭く好ましくない。
なお、以上においては、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料として重合性液晶モノマーの例を挙げて説明したが、これに限らず、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子、液晶ポリマーなどを用いることも可能である。このような重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子、液晶ポリマーとしては、従来から提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。
一方、カイラル剤は、光学活性な部位を有する低分子化合物であり、主として分子量1500以下の化合物である。カイラル剤は主として、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料が発現する正の一軸ネマチック規則性に螺旋構造を誘起させる目的で用いられる。この目的が達成される限り、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料との間で溶液状態あるいは溶融状態において相溶し、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料の液晶性を損なうことなく、これに所望の螺旋構造を誘起できるものであれば、カイラル剤としての低分子化合物の種類は特に限定されない。
なお、このようにして液晶に螺旋構造を誘起させるために用いられるカイラル剤は、少なくとも分子中に何らかのキラリティーを有していることが必要である。従って、ここで用いられるカイラル剤としては、例えば1つあるいは2つ以上の不斉炭素を有する化合物、キラルなアミンやキラルなスルフォキシドなどのようにヘテロ原子上に不斉点がある化合物、あるいはクムレンやビナフトールなどの軸不斉を持つ光学活性な部位を有する化合物が挙げられる。さらに具体的には、市販のカイラルネマチック液晶(例えばキラルドーパント液晶S−811(Merck社製))が挙げられる。
しかしながら、選択されたカイラル剤の性質によっては、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料が形成するネマチック規則性の破壊、配向性の低下、あるいはカイラル剤が非重合性の場合には、液晶性組成物の硬化性の低下や、硬化後のフィルムの信頼性の低下を招くおそれがある。さらに、光学活性な部位を有するカイラル剤の多量な使用は、液晶性組成物のコストアップを招く。従って、短い螺旋ピッチ長のコレステリック規則性を有する偏光選択反射層を形成する場合には、液晶性組成物に含有させる光学活性な部位を有するカイラル剤としては、螺旋構造を誘起させる効果の大きなカイラル剤を選択することが好ましく、具体的には下記の一般式(3)、(4)又は(5)で表されるような、分子内に軸不斉を有する低分子化合物を用いることが好ましい。
Figure 2005292423
Figure 2005292423
Figure 2005292423
上記一般式(3)又は(4)において、Rは水素又はメチル基を示す。Yは上記に示す式(i)〜(xxiv)の任意の一つであるが、中でも、式(i)、(ii)、(iii)、(v)及び(vii)のいずれか一つであることが好ましい。また、アルキレン基の鎖長を示すc及びdは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。c又はdの値が0又は1である上記一般式(3)又は(4)の化合物は、安定性に欠け、加水分解を受けやすく、結晶性も高い。一方、c又はdの値が13以上である化合物は融点(Tm)が低い。これらの化合物では、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料との間の相溶性が低下し、濃度によっては相分離などが起きるおそれがある。
なお、このようなカイラル剤は、特に重合性を有する必要はない。しかしながら、カイラル剤が重合性を有している場合には、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料と重合され、コレステリック規則性が安定的に固定化されるので、熱安定性などの面では非常に好ましい。特に、分子の両末端に重合性の官能基があることが、耐熱性の良好な偏光選択反射層11を得る上で好ましい。
なお、液晶性組成物に含有されるカイラル剤の量は、螺旋構造の誘起能力や最終的に得られる偏光選択反射層11のコレステリック液晶構造などを考慮して最適値が決められる。具体的には、用いられる液晶性組成物の材料により大きく異なるものではあるが、液晶性組成物の合計量100重量部当り、0.01〜60重量部、好ましくは0.1〜40重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部、最も好ましくは1〜20重量部の範囲で選ばれる。カイラル剤の含有量が上述した範囲よりも少ない場合は、液晶性組成物に十分なコレステリック規則性を付与することができない場合があり、上述した範囲を越える場合は、液晶分子の配向が阻害され、活性放射線などによって硬化させる際に悪影響を及ぼす危惧がある。
なお、液晶性組成物は支持基材12上にそのまま塗布することも可能であるが、粘性を塗布装置に合わせたり、良好な配向状態を得る目的で有機溶媒などの適当な溶媒に溶解させてインキ化するようにしてもよい。
このような溶媒としては、上述したような重合性の液晶材料を溶解することが可能であれば特に限定されるものではないが、支持基材12を浸食しないものであることが好ましい。具体的には、アセトンや、酢酸−3−メトキシブチル、ジグライム、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、塩化メチレン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。重合性の液晶材料の希釈の程度は特に限定されるものではないが、液晶自体が溶解性の低い材料であり、また粘性が高いことなどを考慮して、5〜50%、さらに好ましくは10〜30%程度に希釈することが好ましい。
(配向処理工程)
上述した塗布工程において、支持基材12上に液晶性組成物を塗布し、コレステリック液晶層を形成した後、配向処理工程において、コレステリック液晶層をコレステリック液晶構造が発現する所定の温度に保持し、コレステリック液晶層中の液晶分子を配向させる。
なお、最終的に得られるべき偏光選択反射層11のコレステリック液晶構造は、プラーナー配向状態ではなく、図2(a)に示すように、複数の螺旋構造領域30の螺旋軸Lの方向が層内でばらついた配向状態となっているが、この場合でも、配向処理は必要となる。すなわち、コレステリック液晶構造の液晶分子のダイレクターを支持基材12上で一定方向に揃えるような配向処理は必要とされないが、コレステリック液晶構造中に複数の螺旋構造領域30を形成させるような配向処理は必要となるからである。
ここで、支持基材12上に形成されたコレステリック液晶層を、コレステリック液晶構造が発現する所定の温度に保持すると、コレステリック液晶層は液晶相を呈し、液晶分子自体の自己集積作用により、液晶分子のダイレクターが層の厚さ方向に連続的に回転してなる螺旋構造が形成される。そして、このような液晶相の状態で発現したコレステリック液晶構造は、後述するような手法でコレステリック液晶層を硬化させることにより、固定化することができる。
なお、このような配向処理工程は、支持基材12上に塗布された液晶性組成物に溶媒が含有されている場合には、通常、溶媒を除去するための乾燥処理とともに行われる。なお、溶媒を除去するためには、40〜120℃、好ましくは60〜100℃の乾燥温度が適しており、乾燥時間(加熱時間)はコレステリック液晶構造が発現し、実質上溶媒が除去されればよく、例えば、15〜600秒が好ましく、さらに好ましくは30〜180秒である。なお、乾燥後に配向状態が不十分であることが分かった場合には、適宜加熱時間を延長するようにするとよい。なお、このような乾燥処理において減圧乾燥の手法を用いる場合には、配向処理のために別途加熱処理を行うことが好ましい。
(硬化処理工程)
上述した配向処理工程において、コレステリック液晶層中の液晶分子を配向させた後、硬化処理工程において、コレステリック液晶層を硬化させ、液晶相の状態で発現したコレステリック液晶構造を固定化する。
ここで、硬化処理工程で用いられる方法としては、(1)液晶性組成物中の溶媒を乾燥させる方法、(2)加熱により液晶性組成物中の液晶分子を重合させる方法、(3)放射線の照射により液晶性組成物中の液晶分子を重合させる方法、及び(4)それらの方法を組み合わせた方法を用いることができる。
このうち、上記(1)の方法は、コレステリック液晶層の材料である液晶性組成物に含有されるネマチック規則性を示す重合性の液晶材料として液晶ポリマーを用いた場合に適した方法である。この方法では、液晶ポリマーを有機溶媒などの溶媒に溶解させた状態で支持基材12に塗布することとなるが、この場合には、乾燥処理により溶媒を除去するだけで、コレステリック規則性を有する固体化したコレステリック液晶層が形成される。なお、溶媒の種類や乾燥条件などについては、上述した塗布工程及び配向処理工程で述べたものを用いることができる。
上記(2)の方法は、加熱により液晶性組成物中の液晶分子を熱重合させてコレステリック液晶層を硬化させる方法である。この方法では、加熱(焼成)温度によって液晶分子の結合状態が変化するので、加熱時にコレステリック液晶層の面内で温度ムラがあると、膜硬度などの物性や光学的な特性にムラが生じる。ここで、膜硬度の分布を±10%以内にするためには、加熱温度の分布も±5%以内に抑えることが好ましく、より好ましくは±2%以内に抑えることが好ましい。
なお、支持基材12上に形成されたコレステリック液晶層を加熱する方法としては、加熱温度の均一性が得られれば特に限定はなく、ホットプレート上に密着して保持したり、ホットプレートとの間にわずかな気層を設けてホットプレートと平行になるように保持する方法を用いることができる。また、オーブンのような特定の空間全体を加熱する装置内に静置したり当該装置内を通過させる方法でもよい。なお、フィルムコーターなどを用いる場合には、乾燥ゾーンを長くして加熱時間を十分にとることができるようにすることが好ましい。
加熱温度としては一般に、100℃以上の高温が必要となるが、支持基材12の耐熱性から150℃程度までとすることが好ましい。ただし、耐熱性に特化したフィルムなどを支持基材12の材料として用いれば、150℃以上の高温での加熱も可能である。
上記(3)の方法は、放射線の照射により液晶性組成物中の液晶分子を光重合させてコレステリック液晶層を硬化させる方法である。この方法では、放射線として、電子線や紫外線などを条件に応じて適宜用いることができる。通常は、装置の容易性などの観点から紫外線が好ましく用いられ、その波長は250〜400nmである。なお、紫外線によりコレステリック液晶層を硬化させる場合には、酸素がラジカル阻害をして液晶分子の反応性を低下させるので、窒素やアルゴンなどの不活性ガス(酸素濃度が5%以下、さらには0.5%以下)中で硬化させることが好ましい。ここで、紫外線を用いる場合には、液晶性組成物に光重合開始剤が添加されていることが好ましい。
液晶性組成物中に添加される光重合開始剤としては、ベンジル(ビベンゾイルともいう)や、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどを挙げることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することも可能である。
なお、液晶性組成物に添加される光重合開始剤の添加量は、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲であることが好ましい。
以上のような一連の工程(塗布工程、配向処理工程及び硬化処理工程)を行うことにより、単層のコレステリック液晶層からなる偏光選択反射層(偏光選択反射シート)11を備えた投影スクリーン10を製造することができるが、上述した一連の工程を繰り返すことにより、複数層のコレステリック液晶層(部分選択反射層11a,11b,11c)からなる偏光選択反射層(偏光選択反射シート)11を備えた投影スクリーン10を製造することが可能である。これにより、例えば、図3に示すように、偏光選択反射層11として、青色(B)の波長域の光を選択的に反射する部分選択反射層11aと、緑色(G)の波長域の光を選択的に反射する部分選択反射層11bと、赤色(R)の波長域の光を選択的に反射する部分選択反射層11cとが、支持基材12側から順に積層された投影スクリーン10を製造することが可能となる。
この場合、下層のコレステリック液晶層が形成されてそれが固定化されていれば、2層目以降のコレステリック液晶層の液晶性組成物を塗布するときも同様の手法により行うことができる。この場合、上層のコレステリック液晶層のコレステリック液晶構造(配向状態)は下層のコレステリック液晶層のコレステリック液晶構造(配向状態)を継続したものとなり、積層されるコレステリック液晶層の間に配向制御などのための層を設ける必要はない。ただし、必要に応じて、積層されるコレステリック液晶層の間に易接着層などの中間層を設けるようにしてもよい。なお、2層目以降のコレステリック液晶層を形成するに際しての、塗布工程、配向処理工程及び硬化処理工程に関する条件や用いる材料などに関しては、上述した通りであるので、ここでの説明は省略する。
なお、以上において、投影スクリーン10を構成する偏光選択反射層11(又は偏光選択反射層11を構成する部分選択反射層11a,11b,11c)は、支持基材12から剥離して偏光選択反射層11単独で偏光選択反射シートとして用いることも可能である。
このように本実施の形態によれば、それ自体の構造により特定の偏光成分の光を選択的に拡散反射する偏光選択反射層11において、その厚さtを、当該偏光選択反射層11の選択反射中心波長における透過率が不飽和となるような大きさに設定しているので、このような偏光選択反射層11を偏光選択反射シートとして備えた投影スクリーン10において、光を映像として視認するために与えられる拡散効果を十分に確保しつつ、良好な視認性を得る上で障害となる拡散効果(散乱効果)を効果的に抑制することができる。このため、本発明によれば、映像のコントラストを向上させて、明るい環境光の下でも映像を鮮明に表示することが可能となり、良好な視認性を実現することができる。特に、偏光選択反射層11の選択反射中心波長における透過率を3〜35%であるようにすることにより、本来選択的に反射されるべき光が透過してしまう事態を最小限に抑えつつ、上述した作用効果を効果的に奏することができる。
また、本実施の形態によれば、偏光選択反射層11において、可視光域の一部のみをカバーする特定の波長域の光を選択的に反射するようにしているので、このような偏光選択反射層11を偏光選択反射シートとして備えた投影スクリーン10において、外光や照明光などの環境光の影響をさらに抑えて映像のコントラストを高めることができ、映像の視認性をより向上させることができる。
投影システム
なお、上述した投影スクリーン10は、図4に示すように、投影機21を備えた投影システム20に組み込んで用いることができる。
図4に示すように、投影システム20は、投影スクリーン10と、投影スクリーン10上に映像光を投射する投影機21とを備えている。
このうち、投影機21としては、CRTや液晶プロジェクター、DLP(digital light processing)プロジェクターなどを用いることができるが、特に限定はされない。ただし、投影機21により投影スクリーン10上に投射される映像光は、投影スクリーン10により選択的に反射される光の偏光成分と同一の偏光成分の光(例えば右円偏光)を主として含むことが好ましい。
ここで、投影機21として液晶プロジェクターを用いる場合には、その動作原理から、実質的に直線偏光が出射されている場合が多い。このような場合には、投影機21から出射された映像光を位相差板22などを介して出射させることにより、光量の損失なく直線偏光を円偏光へと変換することができる。
なお、位相差板22としては、1/4波長位相差を持つものが好ましく用いられ、具体的には視感度が最も高い550nmに合わせて137.5nmの位相差を持つものが理想的である。また、出射される赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の全ての波長域の光に適用することができるという意味で、広帯域1/4波長位相差板がさらに好ましい。さらに、材料の複屈折を制御することで得られる単体の位相差板、又は、1/4波長位相差板と1/2波長位相差板とを組み合わせたものなどを用いることもできる。
このような位相差板22は、図4に示すように、外付けで投影機21の出射口に装着される他、投影機21の内部に組み込まれていてもよい。
なお、投影機21としてCRTやDLPプロジェクターが用いられる場合には、投影機21から出射される光が無偏光状態の光であるので、円偏光を出射する場合には、直線偏光板及び位相差板からなる円偏光板を配置する必要がある。この場合、投影機21自体の光量は半減するが、投影スクリーン10の偏光選択反射層11で選択的に反射される光の偏光成分と異なる偏光成分の光(例えば左円偏光)に起因した迷光などの発生を効果的に防止して映像のコントラストを高めることができる。
ここで、投影機21は一般に、光の三原色である赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の波長域の光によりカラー表示を実現しており、例えば、投影スクリーン10に対して光が垂直に入射する場合を基準にして、選択反射中心波長が430〜460nm、540〜570nm及び580〜620nmの範囲に存在する光を投射している。
次に、上述した実施の形態の具体的実施例について述べる。
(実施例)
紫外線硬化型のネマチック液晶からなる主剤(溶液全量に対して20重量%)にカイラル剤(1.15重量%)を添加したモノマー混合液晶をシクロヘキサノンに溶解し、550nmに選択反射中心波長を有するコレステリック液晶溶液を調整した。
なお、ネマチック液晶としては、上記の化学式(2−xi)で表される化合物を含む液晶を用いた。
また、重合性カイラル剤としては、上記の化学式(5)で表される化合物を用いた。
さらに、第1のコレステリック液晶溶液には、Ciba Speciality Chemicals社製の光重合開始剤を1重量%添加した。
そして、以上のようにして調整したコレステリック液晶溶液を、10cm□の素ガラス上にスピンコート法により塗布した。
次に、減圧乾燥を行い、溶媒が除去されたコレステリック液晶層を得た。
その後、空気雰囲気下でコレステリック液晶層に対して365nmの紫外線を20mW/cmで1分間照射し、コレステリック液晶層を硬化させた。なお、このようにして硬化されたコレステリック液晶層のコレステリック液晶構造はプラーナー配向状態ではなかった。
以上により、素ガラス上に、550nmに選択反射中心波長を有する偏光選択反射層(偏光選択反射シート)が積層された投影スクリーンを得た。なお、このようにして得られた投影スクリーンの偏光選択反射層の厚さは1.5μmとした。
(実施例2)
最終的に得られる投影スクリーンの偏光選択反射層の厚さが2.1μmとなるようにした以外は、上記実施例1と同様の手法により、実施例2に係る投影スクリーンを製造した。
(実施例3)
最終的に得られる投影スクリーンの偏光選択反射層の厚さが3.1μmとなるようにした以外は、上記実施例1と同様の手法により、実施例3に係る投影スクリーンを製造した。
(実施例4)
最終的に得られる投影スクリーンの偏光選択反射層の厚さが4.1μmとなるようにした以外は、上記実施例1と同様の手法により、実施例4に係る投影スクリーンを製造した。
(比較例1)
最終的に得られる投影スクリーンの偏光選択反射層の厚さが1.2μmとなるようにした以外は、上記実施例1と同様の手法により、比較例1に係る投影スクリーンを製造した。
(比較例2)
最終的に得られる投影スクリーンの偏光選択反射層の厚さが4.6μmとなるようにした以外は、上記実施例1と同様の手法により、比較例2に係る投影スクリーンを製造した。
(比較例3)
最終的に得られる投影スクリーンの偏光選択反射層の厚さが6.5μmとなるようにした以外は、上記実施例1と同様の手法により、比較例3に係る投影スクリーンを製造した。
(比較例4)
最終的に得られる投影スクリーンの偏光選択反射層の厚さが8.9μmとなるようにした以外は、上記実施例1と同様の手法により、比較例4に係る投影スクリーンを製造した。
(評価結果)
実施例1〜4及び比較例1〜4に係る投影スクリーンをそれぞれ暗室内にて床に対して垂直になるように設置した。なお、投影機は投影スクリーンから垂直な方向(床に平行な方向)に約2m離れたところに配置した。ここで、投影機としては、液晶プロジェクター(TLP−T621、東芝社製)を用いた。また、投影機の出射口には、出射された映像光が円偏光(各投影スクリーンで選択的に反射される円偏光と同一方向の円偏光)となるように円偏光板を設置した。
この状態で、投影機により各投影スクリーン上に映像光(白と黒のエリアがある静止映像)を投射し、各投影スクリーン上に映し出された映像を目視により観察した。
また、各投影スクリーンの透過光量を分光光度計(MPC−3100、島津社製)により測定し、その測定結果に基づいて透過率(円偏光の入射光量を100%としたときの透過光量の割合)を求めた。
さらに、各投影スクリーン上に映し出された映像のコントラストを測定した。具体的には、色彩輝度計(CS−100A、コニカミノルタセンシング社製)により、投影スクリーンの中央部の白色及び黒色の映像のそれぞれの輝度を測定し、その比をコントラスト(コントラスト=白映像の輝度÷黒映像の輝度)として表した。
その結果を次表1、図5及び図6に示す。なお、次表1において、「明るさ」の項目では、目視評価で、映像が明るく観察された場合を「○」、暗く観察された場合を「×」とした。また、「散乱」の項目では、目視評価で、散乱が少なく映像の視認性が良い場合を「○」、散乱が多く映像の視認性が悪い場合を「×」とした。
Figure 2005292423
上記表1から分かるように、実施例1〜4に係る各投影スクリーンはいずれも、映像の明るさ及び散乱の度合いのいずれもが良好であり、各投影スクリーン上に映し出された映像を良好に視認することができた。これに対し、比較例1に係る投影スクリーンでは、反射光の強度が弱く、映像光の視認性が低かった。また、比較例2〜4に係る各投影スクリーンでは、反射光の強度は強かったものの、散乱の度合いが強く、映像光の視認性が低かった。
また、図5から分かるように、実施例1〜4及び比較例1〜4における各投影スクリーンの偏光選択反射層の厚さとコントラストとの関係を見ると、厚さが1.5μm(透過率35%)及び4.1μm(透過率3%)のところで変曲点が存在している。なお、偏光選択反射層の厚さと透過率との関係は図6に示すようなものであり、偏光選択反射層の厚さが薄くなりすぎると、本来選択的に反射されるべき光が透過してしまう。また、偏光選択反射層の厚さが厚くなりすぎても、その厚さの増分ほどには透過率が低下せず、飽和状態になってしまう。ここで、図5に示すようなコントラストの特性と、図6に示すような透過率の特性とを勘案すると、偏光選択反射層の厚さは上記2つの変曲点の間の範囲、すなわち1.5μm(透過率35%)と4.1μm(透過率3%)との間に設定するとよいことが分かる。
本発明の一実施の形態に係る偏光選択反射層(偏光選択反射シート)を備えた投影スクリーンを示す概略断面図。 図1に示す投影スクリーンの偏光選択反射層の配向状態及び光学的機能を説明するための模式図。 図1に示す投影スクリーンの一変形例を示す概略断面図。 図1に示す投影スクリーンを備えた投影システムの一例を示す概略図。 実施例1〜4及び比較例1〜4に係る投影スクリーンにおける偏光選択反射層の厚さとコントラストとの関係を示す図。 実施例1〜4及び比較例1〜4に係る投影スクリーンにおける偏光選択反射層の厚さと透過率との関係を示す図。
符号の説明
10 投影スクリーン
11 偏光選択反射層(偏光選択反射シート)
11a,11b,11c 部分選択反射層
12 支持基材
20 投影システム
21 投影機
22 位相差板
30 螺旋構造領域
31R 選択反射波長域内の右円偏光
31L 選択反射波長域内の左円偏光
32R 選択反射波長域外の右円偏光
32L 選択反射波長域外の左円偏光
33,36 反射光

Claims (12)

  1. 特定の偏光成分の光を選択的に反射する偏光選択反射層であって、それ自体の構造により反射光を拡散させる偏光選択反射層を備え、
    前記偏光選択反射層の厚さが、当該偏光選択反射層の選択反射中心波長における透過率が不飽和となるような大きさに設定されていることを特徴とする偏光選択反射シート。
  2. 前記偏光選択反射層の前記選択反射中心波長における透過率が3〜35%であることを特徴とする、請求項1に記載の偏光選択反射シート。
  3. 前記偏光選択反射層はコレステリック液晶構造を有し、このコレステリック液晶構造の構造的な不均一性により反射光を拡散させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の偏光選択反射シート。
  4. 前記偏光選択反射層の前記コレステリック液晶構造は、螺旋軸の方向が異なる複数の螺旋構造領域を含むことを特徴とする、請求項3に記載の偏光選択反射シート。
  5. 前記偏光選択反射層は、可視光域の一部のみをカバーする特定の波長域の光を選択的に反射することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の偏光選択反射シート。
  6. 前記偏光選択反射層は、重合性の液晶材料からなることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の偏光選択反射シート。
  7. 投射された映像光を反射して映像を表示する投影スクリーンにおいて、
    請求項1乃至6のいずれか一項に記載の一つ以上の互いに積層された偏光選択反射シートと、
    前記一つ以上の偏光選択反射シートを支持する支持基材とを備えたことを特徴とする投影スクリーン。
  8. 前記一つ以上の偏光選択反射シートは、その選択反射中心波長が互いに異なることを特徴とする、請求項7に記載の投影スクリーン。
  9. 前記各偏光選択反射シートの選択反射中心波長は、当該各偏光選択反射シートに対して光が垂直に入射する場合を基準にして、430〜460nm、540〜570nm及び580〜620nmの範囲のいずれかであることを特徴とする、請求項8に記載の偏光選択反射シート。
  10. 前記支持基材は、可視光域の光を吸収する光吸収層を含むことを特徴とする、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の投影スクリーン。
  11. 前記偏光選択反射層と前記支持基材との間に設けられ、両者の密着性を高める中間層をさらに備えたことを特徴とする、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の投影スクリーン。
  12. 請求項7乃至11のいずれか一項に記載の投影スクリーンと、
    前記投影スクリーン上に映像光を投射する投影機とを備えたことを特徴とする投影システム。
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