JP2005291925A - 繊維製品の弾性力測定装置および測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 圧縮試験機の圧縮ロードセルの先端に圧縮子を取り付けている一方、繊維製品を弛みなく張架する枠材を備えた保持具を設けると共に該保持具を往復作動させる駆動手段とを備え、前記保持具の枠部内に張架された繊維製品を前記圧縮子の先端面に接触配置し、前記駆動手段により保持具を往復作動させることにより、該保持具に張架された繊維製品で前記圧縮子に圧縮力を負荷すると共に負荷を解除し、該圧縮子に発生する応力を応力発生時点からピークを越えて応力消滅時点まで前記圧縮ロードセルにより検出して、前記繊維製品の弾力性を測定する構成としている。
【選択図】 図1
Description
また、繊維のJIS規格では、繊維製品の寸法変化測定法JIS L1909、天然繊維の引張試験方法JIS L 1069、ウレタン衣料生地試験方法JIS L 1066がある。ウレタン衣料生地試験方法JIS L 1066では、収縮率、剥離強さ、染色堅牢度の試験方法が開示されている。
よって、衣類の生地から人体に負荷される応力や、挙動時における生地の追従性を数値的に測定できる繊維製品の弾性力を測定することは出来なかった。
「化学繊維の実際知識」 第56頁〜第60頁 日本化学繊維協会編 発行物:東洋経済新報社 1996年12月20日 「JISハンドブック54 繊維」 日本規格協会
また、繊維製品を圧縮子側から後退させて圧縮子に負荷する荷重を減少していき、その際の圧縮子の応力を測定している。この圧縮子の応力は、繊維製品に荷重が負荷されて繊維製品が変形した後に原形に復帰する際の応力と等価であると見なされる。
このように、繊維製品を圧縮子に対して近接、離反させる往復作動させることにより、荷重負荷時に次第に増大していく応力の変移および応力発生時からピークに達するまでの時間と、荷重負荷解除時に次第に減少していく応力の変移とピークから応力消滅までに要する時間とを測定でき、繊維製品の物理的特性である弾性力を測定することができる。
前記繊維製品を保持する前記保持具は、取付台から立設した円筒部と、該円筒部に外嵌する円環枠あるいはゴム輪からなる環状留材とからなり、前記円筒部の上端面に前記繊維製品を被せて前記環状留材で繊維製品を前記円筒部の外周面に添わせて固定し、前記繊維製品を前記円筒部の外周壁で囲まれた空隙内に弛みなく平面状に張架しており、
前記取付台を前記駆動手段を構成するシリンダのピストン上端に固定し、ピストンを上下方向に繰り返し昇降させる構成としている。
駆動手段として空圧、油圧のいずれのシリンダでもよい。また、シリンダの代わりにモータを用い、該モータの回転軸に取り付けたギアにラックを噛み合わせ、該ラックの往復移動により前記取付台を上下作動させてもよい。この作動寸法および作動速度は後述するように所要値に設定している。
前記繊維製品により前記圧縮子に押圧荷重を負荷した時に該圧縮子に発生する応力と、応力発生時から応力がピークに達する時間との積からなる荷重負荷時の圧力積分値(A)と、
前記ピークに達した時から応力が消滅するまでの応力と、該ピークに達した時から応力が消滅するまでの時間との積からなる負荷解除時の圧力積分値(B)を求め、
前記圧力積分値(A)に対する圧力積分値(B)の比(B/A)より弾性復帰時の回復率を求めている。
前記した繊維製品に荷重が負荷された時に発生する応力積分値(A)に対して押圧力が解除された時の圧力積分値(B)が100%となると、繊維製品に荷重が負荷されて変形した時と同一速度で原形に回復しすることとなる。よって、回復率が100%に近づく程、負荷が解除された時の回復力、即ち、弾性力が強い繊維製品となる。
前記繊維製品として衣類の素材を用い、該保持具で保持される繊維製品の面積を前記標準値の面積とすると共に、前記駆動手段による繊維製品の作動寸法を前記標準値の作動寸法とし、
前記荷重負荷時の圧力積分値(A)が挙動時における前記特定部位に対して前記繊維製品から負荷される荷重と見なしていると共に、前記回復率は前記繊維製品の人体への追従性の指標としている。
即ち、肌着用となる弾性素材を前記駆動手段により前記予め設定した標準値に応じて駆動して前記圧縮子に荷重を負荷し、
前記荷重負荷時の圧力積分値(A)が前記弾性素材により人体に負荷される荷重と見なしていると共に、前記回復率は前記弾性素材の人体への追従性の指標としている。
即ち、造形性を目的とするカップ材とする場合には、バスト挙動時に変形しにくく、発生する応力が大きな、所謂、硬い弾性素材が選択される。一方、圧迫感や締付感がすくないカップ材とする場合には、発生する応力が小さい弾性素材が選択される。かつ、バストの挙動に応じて人体にぴったりと追従する動的快適性を有するカップ材とする場合には、発生する応力が小さく且つ回復率の高い弾性素材が選択される。
例えば、カップ材の場合、該カップ材により荷重を受ける圧縮子が肌に相当することとなるため、肌と接する肌側を圧縮子に接触させると、より正確にバストが弾性素材から受ける応力を測定できる。特に、複数の素材を積層して厚みが大きなカップ材となる場合、カップ材の肌側と外側とでは、発生する応力に異なるため、肌側面を圧縮子に接触させることが好ましい。
よって、例えば、カップ材、ガードル材において、造形性に主眼をおく場合には応力の大きな繊維製品を選択し、リラックスした着用感を与える場合には応力が小さい繊維製品を選択し、動的快適性を求める場合には回復率が高い繊維製品を選択することができる。
図1および図2は繊維製品の弾性材反発性測定装置を示す。該測定装置は、試料となる弾性素材1を平面円形に保持する保持具2と、該保持具2を支持する取付台3と、該取付台を上下往復作動させる駆動手段となるシリンダ4と、前記保持具2で保持された弾性素材1の上面に接触させる圧縮子5と、該圧縮子5を下端面に取り付けた圧縮ロードセル6と、該圧縮ロードセル6が取り付けられた圧縮試験機本体7とを備えている。
即ち、ピストン4aを上昇すると、弾性素材1は圧縮子5に押圧荷重を負荷し、該負荷に対して圧縮子5に発生する応力を圧縮ロードセル6により検出している。一方、ピストン4aを下降させると、弾性素材1による圧縮子5の荷重が次第に減少していき、其の際の圧縮子の応力を測定している。
図3(A)は、ピストンを繰り返し上下運動させた間の3回分の山Mを示し、山Mの前半分部分Xはカップ材1が上昇して圧縮子4に押し上げ荷重を作用させた部分に該当し、山Mの後後半部分Yはカップ材1が加工して圧縮子供4への荷重を解除した部分に該当する。
前記した前半部分Xの応力積分値が大きくなると、カップ材に荷重が負荷された時の応力が大きく、バストに対する圧迫感や締付感が強くなる。逆に応力積分値が小さくなると、負荷に対して発生する応力が少なく、バストの動きに対して変形して追従することとなる。
図4に示す4種類のカップ材となる弾性素材を用意して、予め設定したバストにおける標準値に基づいて、前記弾性素材に発生する応力と、回復率とを測定した。
カップ材Bは、バストが動かない状態での静的快適性を追求したカップ材で、肌側は低反発性の発泡ウレタンの表裏両面にトリコット素材をラミネートした素材、外側はエンブロイダリー(刺繍)レースからなる。
カップ材C、Dは、動的快適性を追求したカップ材である。
カップ材Cは、肌側はポリウレタン弾性糸を含むベア天竺素材、中間は低反発性の発泡ウレタンの両面にベア天竺素材を接着剤でラミネートした素材、外側は縦横方向に伸びるT/Wラッセルからなる。
カップ材Dは、肌側は低反発性の発泡ウレタンの表裏両面にベア天竺素材を接着剤でラミネートした素材、外側はストレッチラッセルレースからなる。
ついで、シリンダ4のピストン4aを1.5cmで上下往復作動し、該上下往復回数は1分間に60回とした。各カップ材A〜Dについてそれぞれ複数回の測定を行った。
各カップ材A〜Dの平均測定値を下記の表1に示す。
静的快適性を追求するカップ材Bも応力が比較的大きく、バストの動きに対する追従性が劣ることが分かる。
これに対して、動的快適性を追求したカップ材C、Dは応力が小さく、バストの動きに追従しやすいものであることが認められる。
バストから負荷される荷重により発生する応力は1000gfを越えると、圧迫感が比較的大きくなるため、動的快適性を求めるカップ材では応力が1000gf以下とすることが好ましいことも解明できた。
なお、前記応力が300gf未満であると、カップ材としてバストの保持性がほとんどなるなることも確認できた。
該表1には、カップ材A〜Dの外面側を圧縮子に接触させた場合の測定結果も併記した。
静的快適性を追求するカップ材Bは、カップ材Aよりも圧力積分値が小さいことから、カップ材Aよりはバストが動いた時に変形して伸びが生じるが、カップ材C、Dと比較して前半部分の圧力積分値が大きいことから、伸びや変形がすくなく、カップ材Aよりは圧迫感が小さいが、カップ材C,Dよりはバスト保形性を備えていることが分かる。
カップ材C,Dは前半部分の圧力積分値が最も小さいことより、バスト挙動時にバストの動きに応じて伸びると共に変形し、バストの動きと略一体となって動くものであることが確認できた。
前記したように、回復率は100%に近づく程、バストの変形に応じて伸びたり変形したりするカップ材が、元の原形に回復する力が強いために、動的快適性が優れたものとなる。
カップ材A〜Dの回復率は、C>A>D>Bの順序となっており、カップ材Aの回復率が最大であるため、最もバスト挙動に対する追従性がよく、人体と一体となって動く素材であることが確認できた。これに対して回復率が最も低いカップ材Bは挙動追従性が遅いため、静的快適性は優れたものであるが動的快適性の点では劣ることもわかった。
前記各カップ材の肌側と外側とを圧縮子に接触させた場合における圧力積分値と回復率の相違は、それぞれ下記の理由に因ると判断されるが、このような測定結果の相違がでることより、本発明の測定装置の測定精度が高いものであることが確認出来た。
カップ材Bでは、硬さは略近い数値であったが、肌側の素材は低反発性クッションになっているため、回復率はカップ材C,Dより低かった。
カップ材Cでは、外側のみならず、肌側にもポリウレタンを多く含む弾力効果が発揮できる素材を使用しているため、肌側の回復力が高かった。
カップ材Dは肌側は低反発性クッションであり、ベア天竺で伸びるようにしてはいるが、外側よりも弾力効果自体が少ないため、回復率はカップ材Cより低く出た。
カップ材Dでは、
図6のグラフに示す通り、本発明のカップ材C,Dは(c、d)の領域にあり、応力積分値は3000〜13000の範囲で、回復率は85%以上に達している。よって、応力積分値と回復率との両方から、最も動的快適性が優れたカップ材と言える。
これに対して、カップ材Aは(a)の領域にあり、応力積分値が28000〜41000の範囲であるため、バストへの追従性が劣り、かつ、回復率もカップ材Cより劣っていた。
また、静的快適性を追求したカップ材Bは(b)の領域にあり、応力積分値が動的快適性から求められる13000を越えており、回復率もカップ材D,Cより劣っていた。
一方、バスト造形性を求めるブラジャーのカップ材としてはカップ材Aが好ましい弾力性を備え、静的快適性を求めるブラジャーのカップ材としてはカップ材Bが好ましい弾力性を備えることも実証できた。
2 保持具
2A 円筒部
2B 環状枠
3 取付台
4 シリンダ
4a ピストン
5 圧縮子
6 圧縮ロードセル
7 圧縮試験機本体
A〜D カップ材
X 山の前半部分
Y 山の後半部分
Claims (7)
- 圧縮試験機の圧縮ロードセルの先端に圧縮子を取り付けている一方、繊維製品を弛みなく張架する枠材を備えた保持具を設けると共に該保持具を往復作動させる駆動手段とを備え、
前記保持具の枠部内に張架された繊維製品を前記圧縮子の先端面に接触配置し、前記駆動手段により保持具を往復作動させることにより、該保持具に張架された繊維製品で前記圧縮子に圧縮力を負荷すると共に負荷を解除し、該圧縮子に発生する応力を応力発生時点からピークを越えて応力消滅時点まで前記圧縮ロードセルにより検出して、前記繊維製品の弾力性を測定する構成としている繊維製品の弾力性測定装置。 - 前記圧縮試験装置の本体に前記圧縮ロードセルを下向きに固定し、該圧縮ロードセルの下端面に前記圧縮子を取り付けている一方、該圧縮子の下面に接触させて前記繊維製品を配置しており、
前記繊維製品を保持する前記保持具は、取付台から立設した円筒部と、該円筒部に外嵌する円環枠あるいはゴム輪からなる環状留材とからなり、前記円筒部の上端面に前記繊維製品を被せて前記環状留材で繊維製品を前記円筒部の外周面に添わせて固定し、前記繊維製品を前記円筒部の外周壁で囲まれた空隙内に弛みなく平面状に張架しており、
前記取付台を前記駆動手段を構成するシリンダのピストン上端に固定し、ピストンを上下方向に繰り返し昇降させる構成としている請求項1に記載の繊維製品の弾力性測定装置。 - 請求項1または請求項2に記載の弾力性測定装置により弾性を有する繊維製品の弾力性測定方法であって、
前記繊維製品により前記圧縮子に荷重を負荷した時に該圧縮子に発生する応力と、応力発生時から応力がピークに達する時間との積からなる荷重負荷時の圧力積分値(A)と、 前記ピークに達した時から応力が消滅するまでの応力と、該ピークに達した時から応力が消滅するまでの時間との積からなる負荷解除時の圧力積分値(B)を求め、
前記圧力積分値(A)に対する圧力積分値(B)の比(B/A)より弾性復帰時の回復率を求めている弾性を有する繊維製品の弾力性測定方法。 - 人間の挙動時におけるバスト、ヒップ、腹部等の特定部位の作動寸法および作動面積を予め測定し、該測定値に基づいて、前記駆動手段による往復動作寸法と、前記保持具で張架される繊維製品の面積とを前記特定部位毎に標準値として設定しておき、
前記繊維製品として衣類の素材を用い、該保持具で保持される繊維製品の面積を前記標準値の面積とすると共に、前記駆動手段による繊維製品の作動寸法を前記標準値の作動寸法とし、
前記荷重負荷時の圧力積分値(A)が挙動時における前記特定部位に対して前記繊維製品から負荷される荷重と見なしていると共に、前記回復率は前記繊維製品の人体への追従性の指標としている請求項3に記載の繊維製品の弾力性測定方法。 - 前記繊維製品として肌着用の弾性素材を用い、該弾性素材を前記駆動手段により前記予め設定した標準値に応じて駆動して前記圧縮子に荷重を負荷し、
前記荷重負荷時の圧力積分値(A)が前記弾性素材により人体に負荷される荷重と見なしていると共に、前記回復率は前記弾性素材の人体への追従性の指標としている請求項4に記載の繊維製品の弾力性測定方法。 - 前記弾性繊維はブラジャーを含めたカップ部を有する衣類のカップ材からなり、前記バストの挙動時における前記標準値に基づいてカップ材により前記圧縮子に荷重を負荷し、
前記荷重負荷時の圧力積分値(A)が前記カップ材によりバストに負荷される荷重と見なしていると共に、前記回復率は前記カップ材のバストへの追従性の指標としている請求項4に記載の繊維製品の弾力性測定方法。 - 前記肌着用の弾性素材は、肌側面が前記圧縮子への接触側となるように前記保持具に取り付けている請求項5または請求項6に記載の繊維製品の弾性力測定方法。
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