JP2005291343A - 転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】 低コストで且つ生産性を低下させることなく、結晶粒の微細化を可能にし、これにより、材料を強化して転がり軸受の長寿命化を図る。
【解決手段】 内輪、外輪及び転動体の内の少なくとも一つの素材をC含有量:0.8重量%以上の高炭素軸受鋼とすると共に、熱処理完了後の最大炭化物粒子径を0.8μm以下とし、且つ旧オーステナイト粒径を6μm以下とし、前記熱処理が、素材を900°〜1000°Cに加熱してオーステナイト化した後、急冷によりマルテンサイト組織とする第1の工程と、500〜700°Cで1〜2時間保持する第2の工程と、500〜700°Cの温度に保持した状態で塑性加工した後、冷却する第3の工程と、冷却後、オーステナイト温度域に加熱した後、焼入れする第4の工程と、焼戻しする第5の工程とを具備する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば自動車、一般産業機械、工作機械、鉄鋼機械等に用いられる玉軸受、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受等の転がり軸受の長寿命化に関する。
通常、転がり軸受の材料としては、高炭素クロム軸受鋼が用いられるが、近年、使用条件の過酷化傾向に対応するために転がり軸受の長寿命化の要求が高まり、クリーンな潤滑条件下では、材料の清浄度を高めることで、長寿命化が図られている。また、軸受鋼は、通常、焼き入れ、焼戻し処理が施されるが、寿命を延長させるため、浸炭窒化焼き入れ処理が施される場合もある。
上述した材料の清浄度の向上については、鋼の製造上、介在物を無くすことは不可能であり、極限まで介在物を低減させるには特殊な溶解方法が必要となるため、素材のコストアップにつながる。また、浸炭窒化処理を施す場合には、長時間の浸炭窒化処理が必要となり、やはり製品のコストアップにつながる。
そこで、このような問題点を解決するため、軸受鋼の強度を向上させて、転動疲労寿命の改善を図ることが考えられる。材料の強度を改善する手法としては、金属学的には、(1)結晶粒を細かくする、(2)炭素、窒素の固溶量を増加させ、固溶強化を図る、(3)炭化物による析出強化が主に挙げられている。
上記(2)の手法は、上述した浸炭窒化処理に相当し、コスト上の問題があり、また、上記(3)の手法は、通常の軸受鋼ではセメンタイトが析出物に相当し、強化に必要とされる析出量が確保されているため、析出硬化で強度を向上させるには、MoやV等の特殊な元素の添加が必要となり、やはり素材のコストアップにつながる。
上記(1)の結晶粒の微細化による強化は、結晶粒径dの−1/2乗に比例して、材料強度が増すというホールペッチ則で知られており、素材を変えずに、結晶粒径を細かくするだけで強度が改善されるので、近年、注目を集めている強化方法である。
軸受鋼の結晶粒の微細化を図った事例としては、軸受鋼SUJ2をオーステナイト温度域に加熱後、熱間、温間域に跨がるように、塑性加工を施した後、室温まで被加熱物を下げずに、再度、オーステナイト化温度まで加熱して焼入れすることによって、通常の焼入れ、焼戻し処理で得られる10〜15μm程度の結晶粒を、最も細かくした場合、4μm程度まで細粒化し、これにより、寿命延長を図るようにしたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
特許2524156号公報
しなしながら、上記特許文献1においては、変態点よりも高い温度域と低い温度域の2段階で塑性加工を行うので、被加熱物の正確な温度制御が必要となるばかりか、50%以上の大きな加工率での塑性加工が必要になるため、加熱時に塑性加工を施す装置が複雑になってコスト高になり、また、塑性加工後、室温まで被加熱物を下げずに、再度、オーステナイト化温度まで加熱して焼入れするため、生産性に劣るという問題がある。
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、低コストで且つ生産性を低下させることなく、結晶粒の微細化を可能にし、これにより、材料を強化して長寿命化を図ることができる転がり軸受を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、内輪と外輪との間に複数の転動体が周方向に転動可能に配設された転がり軸受において、
前記内輪、前記外輪及び前記転動体の内の少なくとも一つの素材をC含有量:0.8重量%以上の高炭素軸受鋼とし、且つ熱処理時に塑性加工を行うことで、該熱処理完了後の最大炭化物粒子径を0.8μm以下、旧オーステナイト粒径を6μm以下としたことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記熱処理が、素材を900°〜1000°Cに加熱してオーステナイト化した後、急冷によりマルテンサイト組織とする第1の工程と、500〜700°Cで1〜2時間保持する第2の工程と、500〜700°Cの温度に保持した状態で塑性加工した後、冷却する第3の工程と、冷却後、オーステナイト温度域に加熱した後、焼入れする第4の工程と、焼戻しする第5の工程とを具備することを特徴とする。
本発明によれば、内輪、外輪及び転動体の内の少なくとも一つの素材をC含有量:0.8重量%以上の高炭素軸受鋼とし、且つ熱処理時に塑性加工を行うことで、該熱処理完了後の最大炭化物粒子径を0.8μm以下、旧オーステナイト粒径を6μm以下とすることにより、熱処理完了後の最大炭化物粒子径及び旧オーステナイト粒径を微細化して材料を強化し、これにより、転動疲労寿命の延長を可能にする。
また、前記熱処理が、素材を900°〜1000°Cに加熱してオーステナイト化した後、急冷によりマルテンサイト組織とする第1の工程と、500〜700°Cで1〜2時間保持する第2の工程と、500〜700°Cの温度に保持した状態で塑性加工した後、冷却する第3の工程と、冷却後、オーステナイト温度域に加熱した後、焼入れする第4の工程と、焼戻しする第5の工程とを具備することで、塑性加工を施す装置を簡略にして低コスト化を図ることができると共に、塑性加工後、被加熱物を室温まで下げてから、再度、オーステナイト化温度まで加熱して焼入れすることができるので、生産性の向上を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態の一例を図を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態の一例である転がり軸受の熱処理工程を説明するための図、図2は比較例1の熱処理工程を説明するための図、図3は比較例2の熱処理工程を説明するための図、図4は比較例4の熱処理工程を説明するための図、図5は比較例5及び比較例6の熱処理工程を説明するための図、図6は比較例7の熱処理工程を説明するための図、図7は実施例2の走査型電子顕微鏡による写真、図8は比較例7の走査型電子顕微鏡による写真、図9は温間での塑性加工率と結晶粒径との関係を示すグラフ図、図10は結晶粒径と寿命比との関係を示すグラフ図、図11は結晶粒径と最大炭化物粒径と寿命比との関係を示すグラフ図である。
本発明では、一般的に転がり軸受に使用される高炭素クロム鋼SUJ2に代表される高炭素鋼の最大炭化物粒子径及び旧オーステナイト粒径を、通常の焼入れ、焼戻し処理を施した場合よりも微細にすることによって、転がり疲労特性を改善する。
本発明における結晶粒の微細化の方法は、素材を一度焼入れてマルテンサイト組織として、マルテンサイトを高温で焼戻し、微細な炭化物を多量に析出させることによって、オーステナイト化時にオーステナイト粒の核の発生箇所となる炭化物と基地(フェライト)との界面を増やし、この状態で、塑性加工を行って加工歪を与え、この加工歪によって更にオーステナイト粒の核発生の箇所を増やすことを特徴としている。
即ち、本発明の実施の形態の一例である転がり軸受は、内輪、外輪及び転動体の内の少なくとも一つの素材をC含有量:0.8重量%以上の高炭素軸受鋼とし、且つ熱処理時に塑性加工を行うことで、該熱処理完了後の最大炭化物粒子径を0.8μm以下、旧オーステナイト粒径を6μm以下としたもので、前記熱処理が、図1に示すように、素材を900°〜1000°Cで20〜60分加熱してオーステナイト化した後、油冷による急冷でマルテンサイト組織とする第1の工程と、500〜700°Cで1〜2時間保持する第2の工程と、500〜700°Cの温度に保持した状態でA1変態点より低い温度域で温間加工率25〜70%の塑性加工を行った後、冷却する第3の工程と、冷却後、800〜840°Cで10〜30分オーステナイト温度域に加熱した後、焼入れする第4の工程と、焼戻しする第5の工程とを具備する。
これにより、熱処理完了後の最大炭化物粒子径及び旧オーステナイト粒径を微細化して材料を強化し、転動疲労寿命の延長を可能にすると共に、塑性加工を施す装置を簡略にして低コスト化を図り、更に、塑性加工後、被加熱物を室温まで下げてから、再度、オーステナイト化温度まで加熱して焼入れできるようにして、生産性の向上を図るようにしている。
次に、各工程について詳述する。
(第1の工程)
第1の工程は、前処理としての焼入れ処理であり、マルテンサイト組織とする工程である。焼入れ温度は900〜1000°Cの範囲内で行なわれ、マルテンサイトと残留オーステナイトの二相組織とする。通常の軸受鋼の標準焼入れ温度である830〜850°Cよりも高い温度で焼入れを施すのは、900〜1000°Cで焼入れをすることによって、球状化セメンタイトを消失させ、炭素の固溶量を増やし、第2の工程における焼戻し炭化物量を増やすためである。
(第2の工程)
第2の工程は、高温焼戻し工程であり、500〜700°Cで1〜2時間行う。このときに第1の工程で得られた基地組織であるマルテンサイトが焼戻され、セメンタイトが析出する。この焼戻しセメンタイトは、マルテンサイトの基地中に均一に微細に析出する。この焼戻しによって、セメンタイトと基地組織のフェライトとの界面が球状化焼鈍の状態よりも増加し、その後の焼入れでオーステナイト粒の核ができる箇所が増え、球状化焼鈍材をオーステナイト化して焼入れる場合よりも微細化する。
なお、500°C未満においても微細な焼戻し炭化物は析出するが、500°C未満で析出する炭化物は500°C以上の高温では不安定であるため、後述する第4の工程でのオーステナイト化の際の昇温過程で分解してしまい、オーステナイト粒の核発生箇所になりにくいため、微細化が進行しにくい。このため、保持温度は、オーステナイト化時に安定にかつ微細に存在できる炭化物が得られる500〜700°Cとする。
(第3の工程)
第3の工程は、さらに微細化を促進するために、加工歪を導入する工程である。500〜700°Cは温間加工領域であり、塑性加工によって材料内に導入された歪は、残存したままになる。この加工による歪を蓄えた状態で、オーステナイト域に再度加熱すると、オーステナイト結晶粒の核が生成する箇所が増えて微細化が進行する。この段階での歪量が大きければ、第4の工程で焼入れを行なう際に、オーステナイト粒の核が発生する箇所が増え、更に結晶粒の微細化が進行しやすくなる。
また、第2の工程における高温の焼戻し処理によって僅かではあるが結晶粒界に層状にセメンタイトが析出する部位があり、第3の工程における塑性加工で層状の炭化物を分断させて微細化を促進させる作用もある。塑性加工を施した後の冷却については、水冷、油冷などの急冷が望ましいが放冷でもよい。
更に、500〜700°Cでの温間加工の方法としては、ローリングミルによるローリング成形、温間鍛造が挙げられる。
微細化に必要な温間での塑性加工率は、肉厚比で25%以上であり、安定的に微細化を図る場合は、30%以上の加工率とする。塑性加工の加工率が大きくなると、結晶粒の微細化は比例的に進行するが、塑性加工時の温度が500〜700°Cでは材料の変形抵抗が大きくなるため、肉厚比で70%を越えるような加工率で加工歪を加えると、割れが発生する可能性がある。したがって、本発明では、温間での塑性加工の加工率を25〜70%とし、安定した製造ができる範囲としては、30〜50%とする。
(第4の工程)
第4の工程は焼入れ処理であり、800〜840°Cで行われる。オーステナイト化時に第2の工程及び第3の工程で得られた微細炭化物と加工歪によって、オーステナイト核発生箇所が増え、結晶粒が微細化する。また、この高温焼戻しによる炭化物は微細であるので、焼入れ時に成長しても最大粒子径で0.8μm以下と、球状化焼鈍材の焼入れで得られる最大径数μmよりも微細化し、結晶粒成長を抑える効果が増加する。
更に、前述した第3の工程で高温で長時間保持されて硬さが低下しているので、再度焼入れて転動部材としての必要な硬さを得る工程として第4の工程は必須である。
第4の工程による焼入れ後、第5の工程の焼戻し処理を行い、研磨を施して軸受として用いる。
以上の第1〜第5の工程を経ることによって、球状化焼鈍材を出発素材とした通常の焼入れ、焼戻し処理では、結晶粒径が15〜20μm程度のマルテンサイト組織であるが、本発明では、微細な焼戻し炭化物および温間加工で導入された加工歪によるオーステナイト核発生箇所の増加効果によって、通常の焼入れ、焼戻し処理の約半分以下の6μm以下の結晶粒の微細化が可能となり、この結晶粒の微細化によって、材料強度が向上し、軸受寿命が延長する。
なお、本発明は、軸受形式に限定されず、玉軸受、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受等の転がり軸受に適用でき、いずれの軸受の場合も同様の作用効果が得られる。
本発明の効果を確認するために、以下の実験を行った。
高炭素クロム鋼SUJ2を用いて、試験片を作製した。出発素材は、球状化焼鈍材である。試験片の熱処理工程は次の通りである。
(実施例1〜8)
第1の工程:900〜1000°Cで30分加熱後、油冷
第2の工程:500〜700°Cで90分保持
第3の工程:保持後、500〜700°Cで圧下率25〜70%の圧延加工を施した後、急冷
第4の工程:800〜840°Cで20分保持後、油冷
第5の工程:160〜180°Cで2時間焼戻し
また、比較例として、次の試験片を用意した。
(比較例1(図2参照):第3の工程を省いた例)
第1の工程:950°Cで20分加熱後、油冷
第2の工程:600°Cで90分、加熱後急冷
第4の工程:800〜840°Cで20分保持後、油冷
第5の工程:160〜180°Cで2時間焼戻し
(比較例2(図3参照):第2の工程を省いた例)
第1の工程:950°Cで20分加熱後、油冷
第3の工程:600°Cで3分保持後、圧下率で25〜70%の圧延加工を施した後、急冷
第4の工程:800〜840°Cで20分保持後、油冷
第5の工程:160〜180°Cで2時間焼戻し
(比較例3:第3の工程で圧下率を25%未満とした例)
第1の工程:950°Cで20分加熱後、油冷
第2の工程:600°Cで90分保持
第3の工程:保持後、600°Cで圧下率20%の圧延加工を施した後、急冷
第4の工程:800〜840°Cで20分保持後、油冷
第5の工程:160〜180°Cで2時間焼戻し
(比較例4(図4参照):第1の工程を省いた例)
第2の工程:600°Cで90分保持
第3の工程:保持後、600°Cで圧下率25〜70%の圧延加工を施した後、急冷
第4の工程:800〜840°Cで20分保持後、油冷
第5の工程:160〜180°Cで2時間焼戻し
(比較例5(図5参照):第1の工程の焼入れ温度が低い例)
第1の工程:890°Cで20分保持後、油冷
第2の工程:600°Cで90分保持
第3の工程:保持後、600°Cで圧下率25〜70%の圧延加工を施した後、急冷
第4の工程:800〜840°Cで20分保持後、油冷
第5の工程:160〜180°Cで2時間焼戻し
(比較例6(図5参照):第1の工程の焼入れ温度が低い例)
第1の工程:840°Cで20分保持後、油冷
第2の工程:600°Cで90分保持
第3の工程:保持後、600°Cで圧下率25〜70%の圧延加工を施した後、急冷
第4の工程:800〜840°Cで20分保持後、油冷
第5の工程:160〜180°Cで2時間焼戻し
(比較例7(図6参照):通常の焼入れ・焼戻し処理)
第4の工程:800〜840°Cで20分保持後油冷
第5の工程:160〜180°Cで2時間焼戻し
各実施例及び比較例共に、第5の工程での焼戻し処理後に研磨を行い、試験片を作製した。また、圧延完了温度は、加熱保持温度の20°C未満にならないようにしている。各試験片の処理工程を整理したものを表1に示す。
これらの試験片について、スラスト寿命試験を行った。寿命試験には森式スラスト転がり寿命試験機を用いた。試験条件は次の通りである。
面圧:4900MPa
回転数:1000min-1
潤滑油:68番タービン油(油浴)
各試験片の平均結晶粒径および最大炭化物粒子径を測定した。平均結晶粒径は各試験片を塩化第二鉄と塩酸の混合溶液でエッチングして旧オーステナイト粒界のみを現出させ、走査型電子顕微鏡を用い、2000〜3000倍で撮影した写真から切片法で測定し、平均化した。最大炭化物粒子径は、走査型電子顕微鏡を用いて、5000〜10000倍で撮影した写真から視野中で大きい物を5個選定し、平均化した。
試験結果を表1に併せて示す。表1中の寿命比は、比較例7の通常焼入れ、焼戻しのL10寿命を1とし、その比率で示してある。
表1から判るように、本発明の実施例1〜8は、本発明の熱処理工程を施すことによって、いずれも最大炭化物粒径は0.8μm以下であり、かつ結晶粒径(旧オーステナイト粒径)が6μm以下に微細化されており、寿命延長効果は明らかである。例として図7に本発明の実施例2の走査型電子顕微鏡による写真を示し、図8に比較例7の走査型電子顕微鏡による写真を示す。各図共に、(a)は2000〜3000倍で撮影した写真、(b)は5000〜10000倍で撮影した写真である。
図10に結晶粒径(旧オーステナイト粒径)と寿命比との関係を示す。本発明では、結晶粒径を6μm以下にすることによって、従来の焼入れ、焼戻し品(結晶粒径が15〜20μm)に比べて寿命が延長することが判る。
比較例1(図2参照)は、第3の工程の温間での塑性加工を施さなかった場合、比較例2(図3参照)は、第2の工程の高温焼戻しを施さないで、第3の工程で温間加工のみを施した場合である。いずれも、比較例7の焼入れ、焼戻しのみを施した場合よりは、結晶粒が微細化されているが、本発明の実施例よりは粒径が大きく、6μmを超え、寿命の延長効果は小さい。結晶粒径を6μm以下にするためには、第2の工程の高温焼戻しによって、微細な炭化物を析出させるのと、第3の工程の温間での塑性加工の両方の作用が必要であることが判る。
比較例3は、第3の工程における温間での塑性加工率を25%未満の20%で行なった場合であり、微細化に必要な加工歪が得られないので、結晶粒径が6μm超えとなっている。
図9に温間での塑性加工率と結晶粒径の関係を示すが、寿命延長効果のある6μm以下にするには、加工率が25%以上の塑性加工を加える必要があることが判る。
比較例4(図4参照)は、第1の工程を省いた場合であるが、球状化焼鈍材を500〜700°Cで保持して、温間での塑性加工を施しても、球状化炭化物が粗大化してしまい、オーステナイトの核となる微細炭化物が得られない。したがって、微細化は進まず、寿命延長効果は小さい。
比較例5および比較例6(図5参照)は、第1の工程の焼入れ温度が900°Cよりも低い場合である。この場合は、素材時に存在する球状化炭化物の基地組織への溶け込みが不十分であり、2〜3μmの粗大な炭化物が残存する。溶け込みが不十分であるために、第2の工程において、微細化に必要とされる炭化物の析出量が少なくなり、結晶粒径6μm以下の微細化は達成できない。
図11に本発明範囲の結晶粒径(旧オーステナイト粒径)と最大炭化物粒子径と寿命比との関係を示す。図から明らかなように、寿命延長に必要な結晶粒径と最大炭化物粒子径について、結晶粒径6μm以下で、且つ最大炭化物粒子径0.8μm以下とする必要があることが判る。。
なお、本発明の実施例では、高炭素クロム軸受鋼SUJ2の事例のみを示したが、鋼種はこれに限定されず、SUJ3のほか、炭素量で0.8重量%以上の鋼で、構成組織が、マルテンサイト、セメンタイト、残留オーステナイトからなる鋼種であれば、同様の効果が得られる。
本発明の実施の形態の一例である転がり軸受の熱処理工程を説明するための図である。 比較例1の熱処理工程を説明するための図である。 比較例2の熱処理工程を説明するための図である。 比較例4の熱処理工程を説明するための図である。 比較例5及び比較例6の熱処理工程を説明するための図である。 比較例7の熱処理工程を説明するための図である。 実施例2の走査型電子顕微鏡による写真で、(a)は2000〜3000倍で撮影した写真、(b)は5000〜10000倍で撮影した写真である。 比較例7の走査型電子顕微鏡による写真で、(a)は2000〜3000倍で撮影した写真、(b)は5000〜10000倍で撮影した写真である。 温間での塑性加工率と結晶粒径との関係を示すグラフ図である。 結晶粒径と寿命比との関係を示すグラフ図である。 結晶粒径と最大炭化物粒径と寿命比との関係を示すグラフ図である。

Claims (2)

  1. 内輪と外輪との間に複数の転動体が周方向に転動可能に配設された転がり軸受において、
    前記内輪、前記外輪及び前記転動体の内の少なくとも一つの素材をC含有量:0.8重量%以上の高炭素軸受鋼とし、且つ熱処理時に塑性加工を行うことで、該熱処理完了後の最大炭化物粒子径を0.8μm以下、旧オーステナイト粒径を6μm以下としたことを特徴とする転がり軸受。
  2. 前記熱処理が、素材を900°〜1000°Cに加熱してオーステナイト化した後、急冷によりマルテンサイト組織とする第1の工程と、500〜700°Cで1〜2時間保持する第2の工程と、500〜700°Cの温度に保持した状態で塑性加工した後、冷却する第3の工程と、冷却後、オーステナイト温度域に加熱した後、焼入れする第4の工程と、焼戻しする第5の工程とを具備することを特徴とする請求項1に記載した転がり軸受。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010255095A (ja) * 2009-03-31 2010-11-11 Jfe Steel Corp 異物環境下での転動疲労特性に優れた軸受部品の製造方法

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