JP2005278473A - バイオフィルムモデルおよびそれを用いた評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価するのに有用なバイオフィルムモデルおよびそれを用いた評価方法を提供する。
【解決手段】 菌を液体培地に接種する工程(a)および上記液体培地とバイオフィルムを形成させる物体を接触させる工程(b)の作製工程を行うことにより達成される。また、本発明の作製工程により作製したバイオフィルムモデルを使用することにより、簡便かつ効率的にコンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価することができる。さらには、本発明の評価方法を用いることによって、効率的に、該バイオフィルムの除去および/または形成阻害に有効なコンタクトレンズ用処理剤の探索を行うことができると期待できる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価するのに有用なバイオフィルムモデルに関し、さらに詳しくは、菌を液体培地に接種する工程(a)および上記液体培地とバイオフィルムを形成させる物体を接触させる工程(b)の作製工程により形成されることを特徴とするバイオフィルムモデルに関する。さらに、本発明は、該バイオフィルムモデルを用いて、コンタクトレンズ用処理剤の該バイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価する方法に関する。
バイオフィルムとは、担体表面に付着し、膜状物質に覆われた微生物集合体のことを言い、栄養が枯渇した環境下で形成されることが知られている。また、一旦バイオフィルムが形成されると、該バイオフィルムが鎧の役割を果たし、バイオフィルム内部の微生物が抗生物質や殺菌剤等から守られることになるため、消毒・殺菌等が非常に困難となることが知られている。
このようなバイオフィルムは、工場の排水管内等の自然環境下において広く存在している。また、現在、医学および歯学分野等において、様々な感染症疾患の病原因子としてバイオフィルムが関与していることも明らかとなってきている。
例えば、眼科分野においては、細菌性角膜炎等の眼感染症を引き起こす原因の一つとして、バイオフィルムが関与していることが明らかとなってきている。さらに、このようなバイオフィルム感染症が発症する原因の1つとして、コンタクトレンズおよびコンタクトレンズケース等へのバイオフィルムの形成が関与していることが報告されている。
現在、コンタクトレンズ等が関与するバイオフィルム感染症の問題が、特に注目されている。これは、コンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズの消毒法において、近年、コールド消毒法が主流になってきたことが、原因の1つであると考えられているためである。すなわち、コールド消毒法は、これまで主流であった煮沸消毒法と比較して、消毒力が弱く、微生物によっては完全に死滅させることができないものがある。その結果、死滅せずに生存した菌が、コンタクトレンズおよびコンタクトレンズケースの表面に付着し、さらに、細菌同士が凝集してバイオフィルムが形成される。
しかしながら、コンタクトレンズ等が関与するバイオフィルム感染症が問題となっている一方で、現在、コールド消毒剤の消毒力評価基準の中にバイオフィルムに対する除去効果についての基準はない。それゆえ、上記バイオフィルム感染症等の発症を未然に防ぐことを目的に、コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価する手段として、簡便かつ効率的に用いられるバイオフィルムモデルが必要とされていた。さらには、該バイオフィルムモデルを用いた際のコンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価する方法が必要とされていた。
一方、歯学分野においても、う蝕や歯周病の原因としてバイオフィルムが関与していることが明らかとなっており、この疾患に対する治療法や予防のための有効成分の探索等が研究されてきている。さらに、これまでに、口腔疾患等に対する有効成分の探索・評価および口腔疾患予防等の開発に有効なインビトロバイオフィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、眼科分野においては、バイオフィルムモデルは知られていない。
特開2004−8046号公報
本発明の目的は、コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価するのに有用なバイオフィルムモデルを提供することにある。さらに詳しくは、菌を液体培地に接種する工程(a)および上記液体培地とバイオフィルムを形成させる物体を接触させる工程(b)の作製工程により形成されることを特徴とするバイオフィルムモデルを提供することにある。さらに、本発明は、該バイオフィルムモデルを用いて、コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価する方法を提供することにある。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、以下により達成される。
(1)コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価するのに有用なバイオフィルムモデルであって、下記(a)および(b)の作製工程により形成されることを特徴とするバイオフィルムモデル。
(a)菌を液体培地に接種する工程および
(b)上記液体培地とバイオフィルムを形成させる物体を接触させる工程
(2)さらに、工程(a)の液体培地に、5〜500mmol/Lの2価の金属イオンおよび/またはグルコースを0.1〜10w/v%添加することを特徴とする上記(1)記載のバイオフィルムモデル。
(3)上記2価の金属イオンが、カルシウムイオン、鉄(II)イオンおよびマグネシウムイオンから選ばれる少なくともいずれか1つであることを特徴とする上記(2)記載のバイオフィルムモデル。
(4)工程(a)の液体培地が、Soybean-Casein Digest Broth培地、GAM培地、ブレインハートインフュージョン培地、ミューラーヒントン培地、トリプトソイブイヨン培地、普通ブイヨン培地およびLB培地から選ばれる少なくともいずれか1つである上記(1)記載のバイオフィルムモデル。
(5)工程(b)のバイオフィルムを形成させる物体が、プラスチックスを素材とする物体である上記(1)記載のバイオフィルムモデル。
(6)上記の菌が、スタフィロコッカス、セラチア、シュードモナス、ストレプトコッカス、アクチノマイセス、ストレプトマイセス、カンジダ、クレブシエラ、エンテロバクター、バシラスおよびエシェリキア属に属する菌から選ばれる少なくともいずれか1種である上記(1)記載のバイオフィルムモデル。
(7)コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去効果を評価する方法であって、上記(1)記載の作製工程によりバイオフィルムモデルを作製した後、該バイオフィルムモデルとコンタクトレンズ用処理剤とを接触させ、処理時間経過後、該バイオフィルムが完全または部分的に除去されたことを観察することにより、該コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去効果を評価する方法。
(8)コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する形成阻害効果を評価する方法であって、下記(c)および(d)の工程により、該コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する形成阻害効果を評価する方法。
(c)コンタクトレンズ用処理剤を容器に入れ、さらに菌を負荷する工程および
(d)上記時間経過後、容器の内側表面へのバイオフィルムの形成阻害を観察する工程
本発明の作製工程を行うことにより、コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価するのに有用なバイオフィルムモデルを作製することができる。また、本発明の作製工程により作製したバイオフィルムモデルを使用することによって、簡便かつ効率的にコンタクトレンズ用処理剤剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価することができる。さらには、本発明のコンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価する方法を用いることによって、効率的に、該バイオフィルムの除去および/または形成阻害に有効なコンタクトレンズ用処理剤の探索を行うことができると期待できる。
本発明のバイオフィルムモデルは、以下の作製工程(a)および(b)を行うことによって作製することができる。以下に各作製工程について説明する。
本発明では、まず、菌を液体培地に接種する工程(a)を行う。ここで、接種する菌としては、あらかじめ培養を行い、菌数が1×10〜1×10、好ましくは1×10〜1×10となるようにダルベッコリン酸緩衝溶液(以下、DPBSと称す)にて希釈したものを用いるのが好ましい。また、菌を接種する培地としては、液体培地の代わりに固体培地を用いてもよいが、バイオフィルム形成菌以外の浮遊菌等を分離することができるよう液体培地を用いるのがより好ましい。また、用いる培地としては、通常用いられる液体培地であれば特に問題はないが、例えば、Soybean-Casein Digest Broth(以下、SCDBと称す)培地、GAM培地、ブレインハートインフュージョン培地、ミューラーヒントン培地、トリプトソイブイヨン培地、普通ブイヨン培地およびLB培地等から選ばれる少なくともいずれか1つを用いるのが好ましい。
本発明のバイオフィルムモデルを作製するにあたり、好ましい菌としては、一般的に知られている菌であれば、細菌および真菌を問わずいずれの菌でも用いることができるが、コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価するのに有用に用いられる菌として、例えば、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、セラチア(Serratia)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、アクチノマイセス(Actinomyces)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、カンジダ(Candida)、クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)、バシラス(Bacillus)およびエシェリキア(Escherichia)属等に属する菌から選ばれる少なくともいずれか1種を用いるのが好ましい。また、これらの菌は、2種以上用いても差し支えない。さらに、コンタクトレンズ用処理剤の評価にあたり、効率的にバイオフィルムモデルを作製することができる菌としては、Staphylococcus aureus、Serratia marcescens、Pseudomonas aeruginosaから選ばれるいずれか1種を用いるのが好ましく、2種以上用いても差し支えない。
なお、上記の菌をあらかじめ培養するにあたっては、固体培地または液体培地のいずれか用いても培養は可能であるが、より効率的に作製するため、固体培地を用いるのがより好ましい。ここで用いる培地としては、通常用いられる固体培地であれば特に問題はないが、均一な状態の菌を得ることができるようSoybean-Casein Digest Agar(以下、SCDAと称す)スラント培地を用いるのが好ましい。また、培養条件としては、静置培養あるいは振とう培養を行うのが好ましく、培養温度は、菌が生育する温度範囲であればいずれの温度でも良いが、25〜40℃で行うのが好ましい。培養時間としては、ある程度菌が増殖する時間を選べばよいが、18〜24時間とするのが好ましい。
また、工程(a)の液体培地には、さらに、5〜500mmol/L、好ましくは、10〜100mmol/Lの2価の金属イオンおよび/またはグルコースを0.1〜10w/v%、好ましくは0.5〜5w/v%添加することもでき、通常、その方が好ましい。添加することができる2価の金属イオンとしては、特に制限はないが、効率的にバイオフィルムモデルを作製する上で、カルシウムイオン、鉄(II)イオンおよびマグネシウムイオンから選ばれる少なくともいずれか1つを添加するのが好ましく、2つ以上添加しても特に差し支えない。また、グルコースは、栄養源として添加することができ、その他栄養源として一般的に用いられるものを用いることもできる。
次に、本発明では、上記液体培地とバイオフィルムを形成させる物体を接触させる工程(b)を行う。本発明では、工程(b)にて、上記液体培地とバイオフィルムを形成させる物体を接触させることで、該物体の表面にバイオフィルムモデル作製することができる。なお、本発明では、該物体として、例えば、金属、プラスチックス、ゴム、ガラスおよび繊維等から選ばれるいずれかの素材からなる物体を用いるのが好ましく、さらには、プラスチックスを用いるのが好ましく、特には、プラスチックス製のコンタクトレンズ用収容ケースを用いるのがより好ましい。また、2種以上の素材からなる物体を用いても差し支えない。
また、本発明のバイオフィルムモデルを作製するにあたり、培養温度としては、菌が生育する温度範囲であればいずれの温度でもよいが、25〜40℃とするのが好ましい。また、培養時間としては、上記の菌数範囲に調整できる程度菌が増殖する時間を選べばよいが、4時間〜20日間とするのが好ましく、さらには、10時間〜14日間とするのが好ましい。培養は、静置培養あるいは振とう培養のいずれを行ってもよいが、静置培養を行うのがより好ましい。
上記の工程(a)および(b)にて作製したバイオフィルムモデルは、通常知られているバイオフィルムの観察方法により確認することができる。このような方法としては、例えば、Periodic acid Schiff reaction(以下、PASと称す)染色による観察法およびCongo−Red染色による観察法等が挙げられる。本発明では、これらの方法のうち、少なくともいずれか1つの方法により確認するのが好ましい。しかしながら、これらの方法では、実質的に、バイオフィルムが形成されたかどうかを確認することができないため、本発明では、さらに走査型電子顕微鏡(以下、SEMと称す)観察による方法を併用するのが好ましい。すなわち、SEM観察による方法を用いることによって、バイオフィルムが菌体を覆う様子を確認することができることから、該方法は有用な方法となりうる。なお、PAS染色においては、ヘマトキシリンを併用するのが好ましい。
一方、本発明では、上記の作製工程により作製したバイオフィルムモデルを用いて、コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価する方法も開示する。以下に、特に有用な2通りの方法を説明するが、本発明のバイオフィルムモデルを用いた評価方法であれば、その他の方法であっても差し支えない。
コンタクトレンズ用処理剤を評価する第1の方法としては、上記の作製工程によりバイオフィルムモデルを作製した後、該バイオフィルムモデルとコンタクトレンズ用処理剤とを接触させ、処理時間経過後、該バイオフィルムが完全または部分的に除去されたことを観察することにより評価を行う方法が挙げられる。ここで、評価を行うコンタクトレンズ用処理剤とは、コンタクトレンズ用洗浄剤、消毒剤および保存剤等が挙げられ、このうち、特にコンタクトレンズ用消毒剤が好ましい。また、コンタクトレンズ用処理剤の剤型としては、液剤が好ましいが、その他、錠剤、顆粒および粉末等の剤型であっても、溶解して用いることができる。なお、これらの製剤のバイオフィルムに対する除去効果を評価するにあたっては、少なくとも各製剤の使用方法に記載された処理時間の間、該バイオフィルムモデルと接触させ、評価するのが好ましい。これより、各製剤の実質的な評価が可能となる。
また、バイオフィルムモデルが完全または部分的に除去されたことを観察する方法としては、上記に挙げたPAS染色、Congo−Red染色およびSEM観察の少なくともいずれか1つの観察方法を用いることができる。本発明の評価法では、上記のいずれの観察方法を用いた場合でも、バイオフィルムが除去された程度によって、コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去効果を評価することができ、該バイオフィルムが完全に除去された場合に、特に有効であると判断する。また、バイオフィルムの除去効果を評価するには、上記の各染色法を用いた場合は、染色面積を画像処理ソフト等により数値化し判断する。すなわち、コンタクトレンズ用処理剤による処理前後の染色面積を比較し、除去率(%)を算出することによって判断する。また、SEM観察による方法を用いた場合は、直接観察し、バイオフィルムが除去されたかどうかで判断する。
第2の方法としては、下記(c)および(d)の工程を行い、コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する形成阻害効果を評価する方法が挙げられる。以下に、(c)および(d)の工程について説明する。
まずはじめに、評価を行うコンタクトレンズ用処理剤を容器に入れ、さらに菌を負荷する工程(c)を行う。ここで、負荷する菌としては、上述した菌から選ばれる少なくともいずれか1種を用いるのが好ましく、2種以上用いても差し支えない。また、菌数としては、1×10〜1×10、好ましくは1×10〜1×10に調整した菌を負荷するのが好ましい。評価を行うコンタクトレンズ用処理剤としては、上記に挙げた製剤等を用いることができるが、コンタクトレンズ用消毒剤を用いる場合に、本発明の評価法は特に有用な方法となりうる。また、剤型についても、上記に挙げた剤型のものを用いることができるが、液剤を用いるのがより好ましい。コンタクトレンズ用処理剤を入れる容器としては、通常、コンタクトレンズを収容するケースとして使用されているものを用いることができる。なお、素材としては、プラスチックスが好ましい。
また、工程(c)においては、さらに、5〜500mmol/L、好ましくは10〜100mmol/Lの2価の金属イオンおよび/またはグルコースを0.1〜10w/v%、好ましくは0.5〜5w/v%添加することもできる。添加することができる2価の金属イオンとしては、上記に挙げたもの等を用いることができる。また、グルコース溶液は、栄養源として添加することができ、その他栄養源として一般的に用いられるものを用いることもできる。
本評価法を行うにあたり、温度および時間の条件としては、以下のとおり設定するのが好ましい。すなわち、処理温度としては、コンタクトレンズ用処理剤ごとの使用方法に応じた温度条件下で評価を行うのが好ましく、通常は室温下で行うのが好ましい。これにより、該処理剤ごとの実質的な評価が可能となる。また、処理時間としては、ある程度菌が付着する時間を選べばよく、また、処理剤ごとの評価ができるよう、一定時間で評価を行うのが好ましい。具体的には、1時間〜12時間とするのが好ましく、さらには、2〜10時間とするのが好ましい。
さらに、本発明では、上記時間経過後、容器の内側表面へのバイオフィルムの形成阻害を観察する工程(d)を行う。これにより、コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する形成阻害効果を評価することが可能となる。なお、付着したバイオフィルムの有無を観察する方法としては、上記に挙げた方法以外に、Hoechst染色による方法を用いることもでき、ここでは、該方法を用いることが好ましい。また、本評価法を用いる場合も、上記と同様、バイオフィルムが形成阻害された程度によって、コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する形成阻害効果を評価することができ、該バイオフィルムが完全に阻害された場合に、特に有効であると判断する。なお、評価においては、各染色法およびSEM観察を用いた場合は、上記の方法にて判断する。Hoechst染色を用いた場合は、蛍光法により定量し、コンタクトレンズ用処理剤による処理前後の数値と比較し、形成阻害率(%)を算出することによって判断する。
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の工程により、バイオフィルムモデルを作製した。
(1)菌の前培養
Staphylococcus aureus(NBRC 13276)をSCDAスラント上に接種し、インキュベーター内にて、35℃、18〜24時間培養した。培養後、DPBSを3mL添加し、懸濁した。該懸濁液を遠心管に移し、遠心分離機にて、3000rpm/10分間遠心分離した。その後、上清を捨て、DPBSを4mL添加し、再懸濁した。さらに、1×10〜1×10の菌数となるように、DPBSを用いて希釈したものを前培養した菌として用いた。
(2)バイオフィルムモデルの作製
24well plateに、800μL/wellのSCDB培地を添加した後、500mM塩化マグネシウム溶液を100μL/well加えながら攪拌した。次に、上記にて前培養した菌を100μLずつ添加した。さらに、24well plateに、plastic cover slip(SUMILON セルデスクLF1、以下CSと称す)を浸漬した後、インキュベーター内にて、35℃で14日間培養した。
上記の方法にて作製したバイオフィルムモデルについて、以下の方法を用いて観察した。
(3)PAS染色法
培養後、DPBSにてwell中のCSを洗浄した後、2.5%グルタルアルデヒド固定液を用いて、CS表面上の接着細菌集団を1時間固定した。wellからCSを取り出し、DPBSで洗浄した後、0.5%過ヨウ素酸をCS上に200μL載せ、5分間室温で反応させた。さらに、DPBSにて洗浄した後、シッフ試薬を200μL載せ、15分間室温で反応させた。その後、亜硫酸水で3分間ずつ3回洗浄した後、蒸留水を一度通し、グリセロールで封入した。封入後、光学顕微鏡により検鏡した。
(4)SEM観察
培養後、wellからCSを取り出し、DPBSで洗浄した後、グルタルアルデヒド−ルテニウムレッド固定液を用いて、4℃で3時間、前固定した。DPBSで洗浄後、オスミウム酸−ルテニウムレッド固定液を用いて、室温で2時間、後固定した。DPBSで洗浄後、アルコール希釈系列(70、80、90、95、100%エタノール各10分間)を用いて脱水した。脱水後、t−ブタノ−ルでエタノールを2回置換し、3回目にt−ブタノ−ルで試料を凍結した。さらに、真空乾燥機を用いて、t−ブタノ−ルを真空昇華させた。その後、グラファイトペーストを用いて、試料を試料台に載せた。デシケーター内で試料を1昼夜乾燥させた後、マルチコーターを用いて白金コートした。該白金コートしたものを、X−650形微小部走査型X線分析装置を用いて観察した。
PAS染色法およびSEM観察の結果を以下の図1および図2に示す。なお、CSの代わりに、コンタクトレンズケースを用いて、同様にバイオフィルムモデルを作製した。その結果を図3および図4に示す。
図1より、PAS染色法を行ったところ、CS上にPAS染色陽性所見が見られたことから、本発明の作製工程(a)および(b)により、CS上にバイオフィルムが形成されたことが分かった。さらに、確認のため、SEM観察による方法を行ったところ、図2より、菌を覆うバイオフィルムを確認することができた。これらのことから、本発明の作製工程(a)および(b)を行うことにより、簡便に、バイオフィルムを作製することができた。また、CSの代わりにコンタクトレンズケースを用いて同様の作製工程を行ったところ、図3および図4に示すとおり、該コンタクトレンズケース上にもバイオフィルムを作製することができた。すなわち、本発明の作製工程(a)および(b)の工程にて作製したバイオフィルムは、有用なバイオフィルムモデルとなりうることが分かった。
次に、実施例1の方法にてコンタクトレンズケースにバイオフィルムを作製し、該バイオフィルムモデルを用いて、市販のコンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去効果の評価を行った。ここで、評価を行うコンタクトレンズ用処理剤としては、以下の表1に示す有効成分を含有するサンプル1〜サンプル3の製剤を選択した。評価方法としては、バイオフィルムを作製したコンタクトレンズケースに各サンプルを注入し、用法にて指定する時間処理した後、PAS染色法にて観察した。なお、コントロールとして、DPBSにて処理した結果を用いた。結果を図5〜図8に示す。
図5〜図8の結果より、市販のコンタクトレンズ処理剤にてバイオフィルムモデルを処理した結果、DPBSにて処理した場合と比較して、有効にバイオフィルムが除去されていることが分かった。また、各処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を比較したところ、次亜塩素酸ナトリウムにて処理したものが、最もバイオフィルム除去効果が高く、次いで、過酸化水素、ポリヘキサメチレンビグアニドという順番であった。このことから、本発明のバイオフィルムモデルは、コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去効果を評価するのに有効であることが分かった。さらには、該評価方法により、効率的に、該バイオフィルムの除去に有効なコンタクトレンズ用処理剤の探索を行うことができるものと期待できる。
CSに作製したバイオフィルムモデルをPAS染色した図である。 CSに作製したバイオフィルムモデルをSEM観察した図である。 コンタクトレンズケースに作製したバイオフィルムモデルをPAS染色した図である。 コンタクトレンズケースに作製したバイオフィルムモデルをSEM観察した図である。 次亜塩素酸ナトリウムにて処理したバイオフィルムモデルをPAS染色した図である。 過酸化水素にて処理したバイオフィルムモデルをPAS染色した図である。 ポリヘキサメチレンビグアニドにて処理したバイオフィルムモデルをPAS染色した図である。 DPBSにて処理したバイオフィルムモデルをPAS染色した図である。

Claims (8)

  1. コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去および/または形成阻害効果を評価するのに有用なバイオフィルムモデルであって、下記(a)および(b)の作製工程により形成されることを特徴とするバイオフィルムモデル。
    (a)菌を液体培地に接種する工程および
    (b)上記液体培地とバイオフィルムを形成させる物体を接触させる工程
  2. さらに、工程(a)の液体培地に、5〜500mmol/Lの2価の金属イオンおよび/またはグルコースを0.1〜10w/v%添加することを特徴とする請求項1記載のバイオフィルムモデル。
  3. 上記2価の金属イオンが、カルシウムイオン、鉄(II)イオンおよびマグネシウムイオンから選ばれる少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項2記載のバイオフィルムモデル。
  4. 工程(a)の液体培地が、Soybean-Casein Digest Broth培地、GAM培地、ブレインハートインフュージョン培地、ミューラーヒントン培地、トリプトソイブイヨン培地、普通ブイヨン培地およびLB培地から選ばれる少なくともいずれか1つである請求項1記載のバイオフィルムモデル。
  5. 工程(b)のバイオフィルムを形成させる物体が、プラスチックスを素材とする物体である請求項1記載のバイオフィルムモデル。
  6. 上記の菌が、スタフィロコッカス、セラチア、シュードモナス、ストレプトコッカス、アクチノマイセス、ストレプトマイセス、カンジダ、クレブシエラ、エンテロバクター、バシラスおよびエシェリキア属に属する菌から選ばれる少なくともいずれか1種である請求項1記載のバイオフィルムモデル。
  7. コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去効果を評価する方法であって、請求項1記載の作製工程によりバイオフィルムモデルを作製した後、該バイオフィルムモデルとコンタクトレンズ用処理剤とを接触させ、処理時間経過後、該バイオフィルムが完全または部分的に除去されたことを観察することにより、該コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する除去効果を評価する方法。
  8. コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する形成阻害効果を評価する方法であって、下記(c)および(d)の工程により、該コンタクトレンズ用処理剤のバイオフィルムに対する形成阻害効果を評価する方法。
    (c)コンタクトレンズ用処理剤を容器に入れ、さらに菌を負荷する工程および
    (d)一定時間経過後、容器の内側表面へのバイオフィルムの形成阻害を観察する工程
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