JP2005253830A - 医療用処置材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】組織接着力の面で臨床上の要求を満たすことはもちろんのこと、安全性の面でも、合成材料を利用することによる成分自体またはその分解物の毒性の低減、および生体分解吸収性を有し、さらには、手術中に用時を予め見計らって行う準備操作を少なくし、急な適用に対して迅速に対応でき、その使用にあたり特別な装置が不要である医療用処置材、および製造方法を提供することを目的とする。また、前記多糖誘導体、またはその組成物を利用した医療用処置材およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】粉体層と支持層とからなるシート状の医療用処置材であって、前記粉体層が圧縮されている、医療用処置材。
【選択図】なし

Description

本発明は、粉体層と支持層とからなるシート状の医療用処置材およびその製造方法に関する。
外科手術等において、医療用処置材は手術操作を簡便にして手術時間の短縮化等に貢献する重要な役割がある。特に体内で使用される医療用処置材は、適用箇所にて目的の機能を果たすために留置される場合がある。この場合、治癒後は速やかに該適用箇所から消失して生体に吸収されることが望ましい。このような医療用処置材には組織接着剤、止血材、癒着防止材、塞栓材等があり、生理環境下にて分解され体内に吸収される生体吸収性材料が使用される。該生体吸収性材料は、材料種によって、生体に吸収されるまでの期間が数分間〜数年間の範囲で異なり、それぞれの医療用処置材としての目的の機能を果たした後に生体に吸収されるように材料選定されている。
現在、臨床実績がある生体吸収性材料としては、生体由来材料(ヒトや動物などの生体から得られる材料)が挙げられ、例えば、フィブリン、アルブミン、コラーゲンまたはゼラチン等が組織接着剤、止血剤等に利用されている。これらの生体由来材料は生体代謝系にて吸収されることはよく知られている。
多くの臨床実績があり、現在最もよく使用されている生体組織接着剤の一つとしてフィブリン糊が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。フィブリン糊とは、血液の凝固反応を利用した2液性止血材である。まず、フィブリノゲンがトロンビンの酵素作用を受けフィブリンとなる。次に、トロンビンにより活性化された第XIII因子がフィブリンを架橋し、フィブリン塊を形成する。
また、非特許文献1には、臨床実績のあるもう1つの生体組織接着剤として、ゼラチン糊(GRF接着剤)を利用した技術も記載されている。GRF接着剤は、ゼラチンとレゾルシノールの混合物を、ホルムアルデヒドとグルタルアルデヒドで架橋するものである。組織接着力が強いのが特徴であり、フィブリン糊のような使い方以外に、解離性大動脈瘤の解離腔充填や接着に用いられている。
近年、生体由来材料を使用しない、合成材料系組織接着剤の開発がさかんに行われており、いくつか提案されている。例えば、瞬間接着剤として広く使用されている2−シアノアクリレートのうち、エチルまたはイソブチルエステルのシアノアクリレート系接着剤が挙げられる(例えば、非特許文献2参照)。この接着剤は、水分を重合開始剤として、速やかに重合、硬化して接着するので、接着速度が速く、接着強度が高いことが特長である。
また、別の例として、互いに反応しうる別々の基を有する合成ポリマーの2成分用時混合型の架橋材料を組織に適用し、架橋ポリマーマトリックスを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。具体的には、多分岐構造のポリエチレングリコールの分子鎖末端に、第1級アミノ基あるいはチオール基などの求核性基を導入した第1成分と、スクシンイミジル基などの求電子性基を導入した第2成分とを混合し、架橋ゲル(ハイドロゲル)を形成する(特許文献1)。各成分の骨格であるポリエチレングリコールは、架橋物の分解物が腎臓***されるのに十分な、重量平均分子量10,000のものを使用し、生体分解吸収性の面も踏まえて材料設計されている。しかしながら、上記2成分は、使用に際して、別々の溶液に調製する必要があり、また調製された各溶液は、アプリケーターの別々の噴霧口から噴霧して2成分を用時混合しながら適用部に塗布する必要がある。
ところで、生体適合性の高い材料として多糖が知られており、特にヒアルロン酸などの分子内にカルボキシ基を有する多糖類の架橋物が提案されている(特許文献4〜5など参照)。これら多糖架橋物を形成するには、カルボジイミド、エトキシアセチレン、ウッドワード試薬、クロロアセトニトリル(特許文献4)、ペプチド化学で用いられる活性化剤(特許文献5)で活性化された分子内カルボキシ基が利用されている。これら公報では、活性化した多糖の架橋方法として、加熱または紫外線照射により架橋させる方法(特許文献4)、ポリアミンと架橋させる方法(特許文献5)が開示される。
上記各公報には、上記架橋物の用途として、フィルム、スポンジ様、カプセル、錠剤、DDS担体などの形態で使用する医薬用、外科手術における使用が提案されている。
一方、合成生体吸収性材料としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびこれらの共重合体、酸化セルロース等が挙げられる。一般的に、ポリ乳酸は吸収性骨固定材等に利用され、徐々に加水分解され数ヶ月〜数年かけて生体に吸収される。ポリグリコール酸は吸収性縫合糸や吸収性縫合補強材等に利用され、加水分解されることにより40日〜70日かけて生体に吸収される。また、酸化セルロースは止血剤としても利用され、生理条件下で徐々に水溶性となり30日間程度で適用箇所から消失し、酸化セルロース自体が元々低分子量であるため、最終的に腎臓を通過して***される。
これらの合成生体吸収性材料は、それぞれの医療処置材の用途に応じた機械的物性(強度や柔軟性等)や吸収期間等の要求仕様に合わせて材料設計することが可能である。ただし、合成材料自体またはその吸収過程における分解物が原因となる局所での炎症が少ないこと、および、治癒後は速やかに適用箇所から消失して臓器組織へ過度に蓄積されることなく、速やかに体外に***されること等の生体に対する安全性を考慮する必要がある。
上記合成材料以外にも、さらに新しい合成材料の研究、開発が盛んに行われている。例えば、生体吸収性の止血材や癒着防止材に着目すると、生体適合性に優れる多糖類系やポリエーテル系のポリマーに代表される合成ポリマーを応用したものが多い。具体的には、例えば、止血材としてはカルボキシメチルセルロースを利用した可溶性創傷治癒止血セルロース繊維(特許文献6参照。)、癒着防止材としては生体吸収性の抗癒着カルボキシポリサッカライド/ポリエーテル高分子間複合体(特許文献7参照。)等が提案されている。
これらの医療用処置材は、そのバルク形態を繊維やフィルム等として供するため、比較的高分子量(重量平均分子量十数万〜数十万)の合成ポリマーが利用されている。しかし、これらの比較的高分子量の合成ポリマーは、生理環境下において、加水分解や肝臓代謝作用により分子量をある程度低下させることは可能であるが、元々水溶性のポリマーまたは分解されて水溶性になったポリマーが、創傷部の治癒後に適用箇所から消失できたとしても、腎臓等を通過して***されるのに十分な分子量(約70,000以下、場合によっては約40,000以下)まで分解されるように材料設計されている必要がある。
ポリアルキレンオキサイドと多価カルボン酸化合物とを反応させてなるポリエーテルエステルは、親水性フィルムやシート等の成型体の材料として利用されている(例えば、特許文献8参照。)。また、上記ポリエーテルエステルの親水性や吸水性に優れる点を損なうことなく、耐水性、機械的強度、経時安定性、接着性等においても高い性能を発揮し、かつ、それら相互のバランスにも優れた架橋性材料が提案されている(特許文献9参照)。
このように、医療用処置材として非生体由来の合成材料を用いた試みがなされてきているが、医療用処置材として機能するこれらの非生体由来材料を含有する粉体から粉体層を形成し、この粉体層を支持層と組合わせて用いるという試みはなされていなかった。
米国特許6323278号明細書 特表2000−502380号公報 特表2002−541923号公報 米国特許5676964号明細書 国際公開00/27886号公報 特許第3057446号公報 特表2002−511897号公報 特開平9−52950号公報 特開2003−113240号公報 松田晶二郎、「生体組織の接着」、接着、第44巻、1号、p. 19−27、高分子刊行会、日本(2000年1月25日) 川田志明 他、「Stanford A型解離性大動脈瘤の手術」、外科診療、第32巻、第9号、p. 1250−1258、診断と治療社、日本(1990年9月1日)
前述の通り、組織接着剤や癒着防止材に代表される、体内で使用される医療用処置材は、その臨床上の要求を満たすことはもちろんのこと、安全性の面でも、合成材料を利用することによる成分自体またはその分解物の毒性の低減、および生体分解吸収性を有するように材料設計されることが重要である。さらには、手術中に用時を予め見計らって行う準備操作を少なくし、急な適用に対して迅速に対応でき、その使用にあたり特別な装置が不要であることが望ましい。本発明は、上述のように要求される医療用処置材を実現しうるものとして、粉体層と支持層とからなるシート状の医療用処置材およびその製造方法を提供することを目的としている。
また、本発明は、生体内で形状を保持し、目的を達成した後速やかに適用箇所から消失し、生体外に排出され得る特性を実現できる医療用処置材を提供することを目的とする。すなわち、所望の機械的強度を保持するのに十分な分子量であり、また、生理環境下で一定期間形状を保持した後、速やかに適用箇所から消失することができ、さらに、腎臓や肝臓等の臓器に過剰に蓄積されることなく安全に体外に排出され得る医療用処置材を提供することを目的とする。
さらに、上記特性に加えて、該医療用処置材が生理環境下で分解されるまでの期間をより長い期間内で調節でき、種々の用途に応じた機械的物性(強度や柔軟性等)を得ることができる医療用処置材を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、下記の(1)〜(12)を提供する。
(1)粉体層と支持層とからなるシート状の医療用処置材であって、前記粉体層が圧縮されている、医療用処置材。
(2)前記粉体層の粉体の粒径が0.1〜500μmのパウダーである、(1)の医療用処置材。
(3)前記粉体層の粉体量が1〜100mg/cmである、(1)又は(2)の医療用処置材。
(4)前記粉体層の粉体が、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有しているポリマーを含む、(1)乃至(3)のいずれかの医療用処置材。
(5)前記粉体層にアルカリ化剤を含有している、(1)乃至(4)のいずれかの医療用処置材。
(6)前記支持層が、生体吸収性材料からなる、(1)乃至(5)のいずれかの医療用処置材。
(7)前記支持層の生体吸収性材料が、ポリエーテルエステル、酸化セルロース、ポリグリコール酸、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸およびこれからの複合物よりなる群より選択される少なくとも一つである、(1)乃至(6)のいずれかの医療用処置材。
(8)前記支持層がフィルム、スポンジ、織布、不織布または粉体圧縮体のシート状であることを特徴とする、(1)乃至(7)のいずれかの医療用処置材。
(9)活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有しているポリマーを含む粉体と、シート状の生体吸収性材料とを圧縮することからなる、粉体層と支持層とからなるシート状の医療用処置材の製造方法。
(10)前記圧縮時の圧縮力が1〜100MPaであることを特徴とする、(9)の製造方法。
(11)組織の接着及び/又は閉鎖のために使用される(1)乃至(8)のいずれかの医療用処置材。
(12)粉体層と支持層とからなるシート状の医療用処置材であって、前記粉体層が圧縮されており、前記粉体層の粉体が、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有している非生体由来材料からなるポリマーを含む、シート状の医療用処置材。
本発明の医療用処置材は、潜在的な毒性を有する化学物質を誘導体の骨格としないことで化学的安全性を有する。さらに本発明の医療用処置材は生体吸収性材料であるため生体への適用後に取り除く必要がない。本発明の医療用処置材は、縫合あるいは接合した組織からの血液、リンパ液等の体液または体内ガスの漏出を止めるなど、生体組織の接着及び/又は閉鎖のために用いることができる、医療用処置材の粉体層は活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有しているポリマーからなり、生体表面の活性水素含有基との結合による生体表面へ接着し、粉体層自身も吸水してゲル化することにより接着機能を有する。また、医療用処置材の支持層はその粉体層の担持機能、および生体表面に粉体層を押し当てることを可能とする圧迫機能を有する。本発明の医療用処置材は、臓器や生体組織の癒着を防止するなどに用いることができる。この医療用処置材は、その形状から簡便に、しかも効率的に利用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の医療用処置材は、粉体層と支持層とからなるシート状であり、前記粉体層が圧縮されている医療用処置材である。粉体層は粉体を圧縮した層からなる。粉体が圧縮されることにより粉体の粒子が粉体層として固着している。粉体自体の重量により固着した粉体層が粉体層及び/又は支持層から剥がれ落ちない程度に圧縮されていることが好ましい。密度が高く調製できる粉体層の方が、密度が高く調製できないスポンジと比較して、医療用処置材としてより良い性能を発現することが、本願の発明で明らかとなった。粉体は、特に限定されないが粒径が実質的に0.1〜500μmのパウダーであることができ、好ましくは粒径が実質的に0.5〜250μm、さらに好ましくは粒径が実質的に1〜100μmである。粉体量は実質的に1〜100mg/cmの範囲であることができ、好ましくは粉体量が実質的に5〜80mg/cm、さらに好ましくは粉体量が実質的に10〜50mg/cmである。
粉体は、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有しているポリマーを少なくとも含有している。ポリマーは、特に限定されないが生体吸収性であることが好ましい。またポリマー以外に粉体に含有される成分も生体吸収性であることが好ましい。本明細書において、生体吸収性とは、局所消失性と体外排出性とを有することを言う。局所消失性とは、生理環境下で所定日数以内に分解されて適用局所から消失することを言う。本明細書において、「所定日数」とは最大でも90日、場合によっては70日、50日、40日、または30日である。消失の過程または消失後には、目視により炎症反応が観察されることはない。材料は、材料自体の加水分解および/または貪食細胞の食作用(ファゴサイトーシス)等により分解される。
ここで、生理環境下の条件は幅広く特定されない場合があるので、本明細書では簡便で明確な指標として、in vitroにおいて、37℃の生理食塩水(pH4〜8)中に少なくとも1質量%ポリマー濃度相当のサンプルを入れ、ローターミキサーで混合し、目視で観察したときに、所定日数以内にサンプルの形状がなくなり透明な水溶液になる場合、該サンプルは局所消失性を有する(以下「本発明の局所消失性」と言うこともある。)こととする。本発明の生体吸収性材料が、生理環境下で形状が保持される期間は、用途によって異なり所定日数以内であれば特に限定されない。本明細書において、ポリマーや粉体のことを「生体吸収性材料」と称することがある。
また、体外排出性とは、材料が適用箇所から消失した後、腎臓や肝臓等の臓器に過剰に蓄積されることなく安全に生体外に排出され得ることを言う。本明細書において、材料が、分子量70,000以下、場合によっては40,000以下に分解される場合、該サンプルは体外排出性を有する(以下「本発明の体外排出性」と言うこともある。)こととする。
ポリマーやポリマー以外に粉体に含有される成分は、特に限定されないが生体由来材料又は非生体由来材料であることができる。「生体由来材料」とは、生体から直接得られた材料であることを意味する。より具体的には、材料が脊椎動物から直接得られた材料であることを意味する。「非生体由来材料」とは、生体から直接得られた材料ではないことを意味する。より具体的には、材料が脊椎動物から直接得られた材料ではないことを意味する。非生体由来材料は、生体に元来存在する物質を、化学的に合成したり、遺伝子工学的に製造したり、または脊椎動物以外の動物、たとえば菌類により合成させた材料であることができる。したがって、ポリマーは、天然に自然界に存在する又は存在しない合成材料であることができる。本明細書において、粉体に含有されるポリマーを「生体由来材料」、「非生体由来材料」または「合成材料」と称することがある。
ポリマーは活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有しており、前記ポリマーの原材料に、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基が結合している。ポリマーに導入される活性エステル基は、活性水素含有基と反応して共有結合を形成できるものであればよい。このような活性エステル基は、通常、ポリマー分子が自己保有するか、またはポリマーに導入されたカルボキシ基またはメチルカルボキシ基のカルボニル炭素に、通常のエステルに比して強い求電子性基を結合させた基である。具体的にこの活性エステル基を「−COOX」で表した時、アルコール部位「−OX」を形成する求電子性基は、N−ヒドロキシアミン系化合物から導入される基であることが好ましい。N−ヒドロキシアミン系化合物は、比較的安価な原料であるため、活性エステル基導入の工業的に実施が容易である。
前記「−OX」を形成するためのN−ヒドロキシアミン系化合物としては、具体的に、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド、2−ヒドロキシイミノ−2−シアノ酢酸エチルエステル、2−ヒドロキシイミノ−2−シアノ酢酸アミド、N−ヒドロキシピペリジン等が代表的なものとして挙げられる。
本発明において、ポリマーが有する活性エステル基は、1種単独でも2種以上が存在していてもよい。このような活性エステル基の中でも、スクシンイミドエステル基が好ましい。
本発明において、活性エステル基との反応に関与する活性水素含有基は、本発明特定の反応条件下で、上記活性エステル基と反応して共有結合を形成しうる基であれば特に限定されない。本発明においても一般的な活性水素含有基として例示のものに準ずることができる。具体的には、水酸基、アミノ基、チオール基等が挙げられる。ここで、アミノ基は、第1級アミノ基と第2級アミノ基を含む。これらの中でも、活性水素含有基が水酸基、第1級アミノ基である場合には、活性エステル基との反応性が良好で、架橋してゲル化するまでの時間が短いため好ましい。
活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有するポリマーを架橋(ゲル化)する方法は、活性エステル基と活性水素含有基とが、反応して共有結合を形成する方法であり、具体的には、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有するように調製されたポリマーを、アルカリ条件下で、水、水蒸気、水を含む溶媒等の水分存在下に供することにより架橋させる方法等が挙げられる。したがって、実際には上記ポリマーを含有する粉体又は粉体層を、アルカリ条件下で、水、水蒸気、水を含む溶媒等の水分存在下に供することにより、達成される。本明細書において、「水分」とは、水、水蒸気、水を含む溶媒等いかなる形態の水分を包含する。
より具体的には、pH7.5〜12、好ましくはpH9.0〜10.5の水存在下に供することで活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有するポリマーを架橋させることができる。その際、水のpHが7.5より低いと、自己架橋性が低く、十分な架橋度が得られない。一方、pH12より高いものの適用は架橋反応は進行するものの、生理的条件の点で好適ではない。
「アルカリ条件」とは、pHが少なくとも実質的に7.5以上の水分が存在する条件をいう。活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有するポリマーにおいては、架橋反応への熱の寄与が実質的に大きくないため、「アルカリ条件」の温度は、特に限定されないが、例えば10℃〜40℃の範囲であることができる。
「アルカリ条件の水と接触させる」とは、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有するポリマーをアルカリ条件のいかなる形態の水分と接触させ、ポリマーをアルカリ条件におくことを意味する。このポリマーの形態は粉体であるので、予めアルカリ条件に調整した水を添加したり、またはポリマーの粉体と後述のアルカリ化剤を混合された粉状の状態に水を添加することができる。これらの操作によりポリマー体がアルカリ性環境下に置かれ、架橋反応が開始する。すなわち、ポリマーはアルカリ条件の水分と接触することによりその架橋反応が開始し進行する。したがって、アルカリ条件の水分とポリマーとの混合物のpHはアルカリ条件であってもよいが、必ずしもアルカリ条件でなくてよい。ポリマーはアルカリ条件の水分と接触することにより架橋の形成が開始され、UV(紫外線)や加熱により架橋反応は実質的に開始されず、UVや熱により架橋の形成は実質的に進行しない。したがって、「アルカリ条件の水と接触させる」とは、後述の「アルカリ化剤」を使用して水を加えることも包含する。
本発明において使用される粉体は、本発明の特性を損なわない範囲で、アルカリ化剤を含有することができる。アルカリ化剤は、主に、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有するポリマーのpHを7.5〜12に調整するための塩(粉末)等である。アルカリ化剤としては、特に限定されないが、具体的には、炭酸水素ナトリウム水溶液または粉末、リン酸系緩衝液(リン酸水素二ナトリウム−リン酸二水素カリウム)、酢酸−アンモニア系緩衝液等が挙げられる。なかでも、炭酸水素ナトリウムは医療用pH調整剤として、その約7%水溶液(pH8.3)が静脈注射液として利用されていることより、安全性の面で好適に使用できる。
したがって、上記活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有するポリマー(A)を粉体として供し、さらにアルカリ化剤(B)を提供することができる。アルカリ化剤(B)は、粉体に混合されずに供給されるものであってもよいし、あらかじめ粉体に混合されていてもよい。混合される時期は、特に限定されないが、本発明の医療用処置材の使用前または使用中であり、適宜選ばれる。上記活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有するポリマー(A)とアルカリ化剤(B)との組み合わせにおいて、必要に応じて他の物質を含有していてもよく、他の物質は、ポリマーの粉体と混合しても、混合していなくてもよい。
活性エステル基を有するポリマーとしては、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有している限り特に限定されないが、多糖、ポリエチレンオキサイド(PEO)(特表2000-502380、特表2002-541923、US5583114)及びポリアミノ酸(特開平9-296039)から選択される少なくとも一つ又はそれらの混合物であることができる。また、粉体に含有される活性エステル基を有するポリマーは一成分で医療用処置材として機能するものでもよいし、二成分(二材)またはそれ以上で医療用処置材として機能するものでもよい。これらのうち、多糖が好ましい。
以下、本願発明の一つの形態として、ポリマーが多糖である形態について詳細に説明する。
多糖は、多糖側鎖に導入された、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を少なくとも1つ有し、アルカリ条件下の水と接触させ、前記活性エステル基と活性水素含有基との共有結合による架橋物を形成するための架橋性多糖誘導体であることができる。
多糖は、多糖側鎖に導入された、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を少なくとも1つ有する。この活性エステル基が導入される多糖(原料)については後述するが、多糖分子は本質的に水酸基を自己保有し、すなわち活性水素含有基を有するため、該多糖に活性エステル基が導入された多糖誘導体は、1分子鎖内に活性エステル基および活性水素含有基を両具し、反応条件下で自己架橋性を示す。
この自己架橋性は、活性エステル基と活性水素含有基とが、多糖誘導体の1分子内でまたは分子間で反応して、共有結合を形成することをいう。また生体表面の活性水素含有基を反応に利用した場合には、この架橋性多糖誘導体は、生体表面への接着性を示す。
本明細書において、「多糖」について「架橋性多糖誘導体」、「活性エステル化多糖」と称することもあり、以下では、単に「多糖誘導体」ということもある。したがって、本願発明において、「多糖」は、「多糖分子」、「架橋性多糖誘導体」、「活性エステル化多糖」、「多糖誘導体」を包含する。なお「1分子鎖」または「分子内」の分子とは、共有結合により連続した結合で繋がった範囲の1つの分子を意味する。
本発明において使用される多糖は、活性エステル化された多糖であり、本質的に多糖骨格を保持している。したがって以下には、多糖誘導体を、多糖の活性エステル化方法(多糖誘導体の製造方法)と並列的に説明することがある。
本発明において、多糖に導入される活性エステル基は、アルカリ条件下の水存在下で、活性水素含有基と反応して共有結合を形成できるものであればよい。また、本発明において、多糖誘導体の活性エステル基は、1種単独でも2種以上が存在していてもよい。 このような活性エステル基の中でも、スクシンイミドエステル基が好ましい。本発明において使用される多糖誘導体は、分子内に上記活性エステル基を少なくとも1つ有するが、架橋マトリックスを形成するためには、通常、1分子中に2以上有する。使用目的によっても異なるが、その乾燥重量1gあたりの活性エステル基量で表したとき、0.1〜2mmol/gであることが好ましい。
活性エステル基が導入され、多糖誘導体の主骨格を構成する多糖は、主骨格に単糖構造を2単位以上有するものであればよく、特に制限されない。このような多糖は、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類;トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類;ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース、スタキオース等の三糖以上の多糖類が、共有結合することにより形成されたもの、およびこれに対して、さらに官能基を導入したものが挙げられる。このような多糖は、天然に存在するものでも、人工的に合成されたものでもよい。また、多糖誘導体は、1種単独の、または2種以上の多糖の骨格とすることができる。
本発明において使用される多糖誘導体の主骨格となる多糖の重量平均分子量に特に制限はない。好ましくは、上記の単糖類、二糖類または三糖以上の多糖類が、数十〜数千個結合したものに相当する重量平均分子量5,000〜250万の多糖である。このような多糖であれば、多糖誘導体が架橋した後のゲルの硬度を調整しやすく、活性エステル基および活性水素含有基を1分子鎖に複数導入しやすいからである。より好ましくは、重量平均分子量10,000〜100万の多糖である。
多糖誘導体の主骨格を形成する原料多糖は、上記の構成成分を持ち、活性エステル化前駆段階で、活性エステル基「−COOX」を形成するためのカルボン酸基を有する多糖(以下、酸基含有多糖と称することもある)が好ましい。ここでのカルボン酸基は、カルボキシ基および/またはカルボキシアルキル基(以下、これらをカルボン酸基と称することもある)をいい、カルボキシアルキル基とは、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシイソプロピル基、カルボキシブチル基等に例示されるように、カルボキシ基がアルキル骨格に結合している官能基のことである。
上記原料多糖は、架橋性多糖誘導体の前駆段階で酸基含有多糖であればよく、カルボン酸基を自己保有する天然多糖であってもよく、それ自体はカルボン酸基を有さない多糖に、カルボキシ基および/またはカルボキシアルキル基を導入した多糖であってもよい。このようなカルボン酸基含有多糖の中でも、カルボキシ基を有する天然多糖、カルボキシ基を導入したカルボキシ化多糖、カルボキシメチル基を導入したカルボキシメチル化多糖、カルボキシエチル基を導入したカルボキシエチル化多糖が好ましい。より好ましくは、カルボキシ基を有する天然多糖、カルボキシ基を導入したカルボキシ化多糖、カルボキシメチル基を導入したカルボキシメチル化多糖である。
上記カルボン酸基を自己保有する天然多糖としては、特に限定されないが、ガラクツロン酸を含むペクチンやヒアルロン酸等が挙げられる。例えば、ペクチンはCP Kelco社(デンマーク)の「GENUE pectin」、また、ヒアルロン酸は紀文社(日本)の「ヒアルロン酸FCH」が挙げられ、一般的に商業流通しているものを利用できる。ペクチンはガラクツロン酸を主成分とする多糖である。ペクチンの約75〜80%以上がガラクツロン酸からなり、その他の成分としては、主に他の糖からなる。ペクチンは、上記の割合でガラクツロン酸と他の糖が結合してなる多糖である。ヒアルロン酸は、眼科用手術補助剤や変形性膝関節症治療薬等に使用されている。ヒアルロン酸はガラクツロン酸を含まない。
多糖誘導体のカルボキシ基および/またはカルボキシアルキル基は、塩が配位していない「非塩型」であることが望ましく、最終的に得られる多糖誘導体が塩形態ではないことが望ましい。ここで「塩」とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの無機塩、テトラブチルアンモニウム(TBA)などの四級アミン、ヨウ化クロロメチルピリジリウムなどのハロゲン塩などを包含する。「非塩型」とは、これらの「塩」が配位していないことであり、「塩形態ではない」とは、これらの塩を含まないことを意味する。
上記カルボキシ基および/またはカルボキシアルキル基が導入される多糖としては、特に限定されないが、デキストラン、プルランが挙げられる。
上記デキストランは、代用血漿剤として使用されている。デキストランとしては、アマシャムバイオサイエンス社(日本)の「Dextran T fractions」、プルランは林原社(日本)の「Pullulan PI−20」が挙げられる。プルランは、経口薬を含む医薬添加剤として使用されており、エンドトキシン等の生物学的コンタミネーションが少ないものが好適である。
いずれの多糖も、一般的に商業流通しているものを利用できる。上記医療用途で実績のある多糖は、本発明においては安全性面で好適に利用できる多糖である。
多糖のカルボキシ化反応は、公知の酸化反応を利用して、特に制限なく行うことができる。カルボキシ化反応の種類は、特に限定されないが、例えば、四酸化二窒素酸化、発煙硫酸酸化、リン酸酸化、硝酸酸化、過酸化水素酸化が挙げられ、各々、試薬を用いて通常知られた反応を選択して酸化することができる。各反応条件はカルボキシ基の導入量により適宜設定することができる。例えば、原料となる多糖をクロロホルムあるいは四塩化炭素中に懸濁させ、四酸化二窒素を加えることにより、多糖の水酸基を酸化してカルボキシ化多糖(多糖のカルボキシ化体)を調製することができる。
また、カルボキシアルキル化反応は、公知の多糖のカルボキシアルキル化反応を利用することができ、特に限定されないが、具体的にカルボキシメチル化反応の場合には、多糖をアルカリ化した後にモノクロル酢酸を使用した反応を選択することが可能である。その反応条件はカルボキシメチル基の導入量により適宜設定することができる。
多糖にカルボン酸基を導入する方法として、上記カルボキシ化またはカルボキシアルキル化のいずれの方法も利用でき、特に限定されないが、カルボキシ基導入反応による多糖の分子量の低下が小さく、カルボキシ基の導入量を比較的コントロールしやすい点で、カルボキシアルキル化、特にカルボキシメチル化が好適である。 また、カルボン酸基の導入は、それ自身カルボン酸基をもたない多糖への導入に特に制限されない。それ自身カルボン酸基を有する天然多糖、たとえば、前記ヒアルロン酸などに、さらにカルボキシ基および/またはカルボキシメチル基を導入してもよい。
上記のような酸基含有多糖のカルボキシ基および/またはカルボキシメチル基を活性エステル化するに際して、酸基含有多糖は、単独で使用しても良いし、2種以上のものを併用して使用しても良い。
活性エステル化に使用される酸基含有多糖は、その乾燥重量1gあたりのカルボン酸基(該基を1分子とみなして)量が、通常、0.1〜5mmol/g、好ましくは0.4〜3mmol/g、より好ましくは0.6〜2mmol/gである。このカルボン酸基量の割合が、0.1mmol/gより少ないと、該基から誘導され架橋点となる活性エステル基数が不充分になる場合が多い。一方、カルボン酸基量の割合が、5mmol/gより多くなると、多糖誘導体(未架橋)が水を含む溶媒に溶解しにくくなる。
上記酸基含有多糖の活性エステル化方法(多糖誘導体の製造方法)は、特に制限されず、たとえば、上記の酸基含有多糖を、脱水縮合剤との存在下で、求電子性基導入剤と反応させる方法、活性エステル基を有する化合物から活性エステル基を多糖に導入するエステル交換反応を用いる方法等が挙げられる。これらの中でも、前者の方法が好適であり、以下、主として、この方法について説明する。
上記好ましい方法を行うに際しては、通常、上記酸基含有多糖を、非プロトン性極性溶媒の溶液に調製して反応に供する。より具体的には、該方法は、カルボキシ基またはカルボキシアルキル基を有する多糖を非プロトン性極性溶媒に溶解させる溶液調製工程、および該溶液に求電子性基導入剤と脱水縮合剤を添加して多糖のカルボキシ基またはカルボキシアルキル基を活性エステル化させる反応工程を行う方法、さらに反応生成物の精製工程および乾燥工程を行う方法が挙げられる。
溶液調製工程においては、多糖を溶媒に加え、60℃〜120℃に加熱することによって、多糖の非プロトン性極性溶媒への溶解が達成される。
したがって、この方法で活性エステル化される酸基含有多糖として、上記に例示した多糖のうちでも、60℃〜120℃の間の温度で非プロトン性極性溶媒に溶解するものが好ましく使用される。具体的に、求電子性基導入のための反応に用いられる多糖は、非プロトン性極性溶媒への溶解性の点から、カルボキシ基またはカルボキシメチル基が酸型であることが好ましい。「酸型」とは、カルボキシ基またはカルボキシメチル基のカウンターカチオン種がプロトンであることをいう。酸型のカルボキシ基を有する多糖を酸型 (原料) 多糖という。例えば、カルボキシ基を有する多糖であるペクチンを酸型ペクチンという。酸型のカルボキシメチル基を有するカルボキシメチルデキストランを酸型カルボキシメチル(CM)デキストラン(酸型CMデキストラン)という。「酸型」は、カウンターカチオン種がプロトンであり、塩形態ではない点で前記「非塩型」と同義である。
「非プロトン性極性溶媒」とは、電気的に陽性な官能基を有する求核剤と水素結合を形成できるプロトンを持たない極性溶媒である。本発明の製造方法で使用できる非プロトン性極性溶媒は、特に限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが例示される。多糖の溶媒への溶解性が良好であることから、ジメチルスルホキシドが好適に利用できる。
反応工程では、酸型多糖溶液に、求電子性基導入剤と脱水縮合剤とを添加して、多糖のカルボキシ基および/またはカルボキシメチル基を活性エステル化させる。活性エステル化させる時の反応温度は、特に限定されないが、好ましくは0℃〜70℃、より好ましくは、20℃〜40℃である。反応時間は反応温度により様々であるが、通常は1〜48時間、好ましくは12時間〜24時間である。
「求電子性基導入剤」は、カルボキシ基またはカルボキシアルキル基に、求電子性基を導入し、それらを活性エステル基へ変化させる試薬をいう。求電子性基導入剤としては、特に限定されないが、ペプチド合成に汎用されている活性エステル誘導性化合物が利用でき、その一例として、N−ヒドロキシアミン系活性エステル誘導性化合物が挙げられる。N−ヒドロキシアミン系活性エステル誘導性化合物としては、特に限定されないが、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド、2−ヒドロキシイミノ−2−シアノ酢酸エチルエステル、2−ヒドロキシイミノ−2−シアノ酢酸アミド、N−ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。このなかでも、N−ヒドロキシスクシンイミドが、ペプチド合成分野での実績があり、商業上入手し易いことより好適である。
「脱水縮合剤」は、カルボキシ基またはカルボキシアルキル基に求電子性基導入剤を使用して活性エステル基とする際に、カルボキシ基またはカルボキシアルキル基と、求電子性基導入剤との縮合で生成する水分子を1つ引き抜き、すなわち脱水して、両者をエステル結合させるものである。脱水縮合剤としては、特に限定されないが、例えば、1−エチル−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、1−シクロヘキシル−(2−モルホニル−4−エチル)−カルボジイミド・メソp−トルエンスルホネート等が挙げられる。このなかでは、1−エチル−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)が、ペプチド合成分野での実績があり、商業上入手し易いことより好適である。
精製工程においては、反応工程終了後、反応溶液より、通常の再沈、ろ過および/または洗浄等の手段により、未反応の求電子性基導入剤、脱水縮合剤、および反応副生成物を除去し、多糖誘導体を得ることができる。
乾燥工程においては、前記精製工程で得られた多糖誘導体から洗浄溶媒を除去するため、通常使用される方法により乾燥させればよい。
前述したように、最終的に多糖誘導体の活性エステル基量は、0.1〜2mmol/gであることが好ましく、上記においては、このような多糖誘導体が得られるように、活性エステル化原料多糖のカルボキシ基への活性エステル基導入量を制御することができる。
活性エステル基の導入量を制御するためには、前記反応工程において、求電子性基導入剤と脱水縮合剤の混合量を調整することができる。具体的には、多糖の全カルボキシ基のモル数(Xmmol)に対する脱水縮合剤のモル数(Zmmol)の比(Z/X)が、前述の反応温度において、0.1<Z/X<50を満たす添加条件であることが好ましい。Z/Xが0.1より小さい場合、脱水縮合剤の添加量が少ないため反応効率が低く、所望の活性エステル基導入率を達成し難くなり、Z/Xが50より大きい場合、脱水縮合剤の添加量が多いため、活性エステル基の導入率は高くなるものの、得られた多糖誘導体が水に溶解しにくくなるからである。
多糖の全カルボキシ基のモル数(Xmmol)に対する求電子性基導入剤のモル数(Ymmol)は、活性エステル基の導入率に応じた反応量以上を添加すれば良く、特に限定されないが、0.1<Y/X<100を満たす添加条件であることが好ましい。
多糖誘導体は、活性エステル基が導入された後も、通常、グルコピラノース環が有する水酸基を多糖骨格分子内に有し、したがって活性水素含有基を自己保有するが、分子内の活性水素含有基は、これに限定されず、必要に応じて分子内に導入した活性水素含有基をさらに有していてもよい。この場合、多糖誘導体の有する活性水素含有基は、1種であっても2種以上であってもよい。
多糖誘導体は、上記活性エステル基および活性水素含有基に加え、本発明の特性を損なわない範囲であれば、公知の元素、原子団等の官能基を広く含むことができる。 このような官能基として具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン元素;カルボキシ基;カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシイソプロピル基等のカルボキシアルキル基;シリル基、アルキレンシリル基、アルコキシシリル基、リン酸基等が挙げられる。このような官能基は、1種単独でも2種以上が導入されていてもよい。
活性エステル基の導入率(%)は、活性エステル化原料の多糖が有するカルボキシ基含有モル量およびカルボキシメチル基含有モル量(以下、全カルボキシ基(TC)と表記する)に対して、得られた多糖誘導体中の活性エステル基含有量モル量(AE)の比(AE/TC)に100を乗することで表すことができる。
活性エステル基導入率は、例えば、Biochemistry Vol. 14, No.7(1975), p1535−1541に記載の方法により決定することができる。
特に、上記100%未満の活性エステル基の導入率で活性エステル基が導入された場合に残存する原料多糖の有するカルボキシ基および/またはカルボキシメチル基を有していてもよい。
「架橋構造」とは、多糖誘導体の1分子鎖内および/または複数分子鎖間で共有結合を形成し、結果として多糖誘導体の分子鎖が網目状の三次元構造をとることを意味する。この架橋により、活性エステル基と活性水素含有基とは、1分子鎖内で結合することもできるが、複数分子間で共有結合して架橋されてもよい。架橋形成反応前は水溶性である多糖誘導体は、反応が進行するとともに架橋構造を形成し、流動性が低下して、水不溶性の塊状物(含水ゲル)となり、多糖架橋体を形成する。特に他の架橋剤を使用することなく、自らの分子鎖内、または分子鎖間で共有結合により架橋構造を形成することができる性質を「自己架橋性」と定義すると、多糖誘導体は、自己架橋性多糖である。
また多糖誘導体は、上記のように分子内活性水素含有基の関与による自己架橋性であるだけでなく、該多糖誘導体を、生体表面に適用すれば、生体表面の活性水素含有基と活性エステル基との反応により、生体表面への接着性を示すことができる。このような使用形態は、多糖誘導体の好ましい態様である。なお生体表面に適用時には、同時に自己架橋を生じても勿論よい。
多糖誘導体を架橋する方法は、上述のとおり活性エステル基と活性水素含有基とが、反応して共有結合を形成する方法であり、具体的には、医療用処置材として調製された多糖誘導体を、アルカリ条件下で、水、水蒸気、水を含む溶媒等の水分存在下に供することにより架橋させる方法等が挙げられる。
上記のような多糖誘導体を、その自己架橋性によりそれのみからなる架橋材として提供することができ、さらに他の成分との組合わせによる組成物の形態の架橋性材料を提供することができる。他の成分は、その種類にもよるが、多糖誘導体と接触した状態で組成物を形成していてもよい。
多糖誘導体は粉状物として提供する。すなわち、粉状の多糖誘導体は、前述の合成反応により得られた多糖誘導体を解砕、あるいは粉砕して、必要に応じて粒径調整を行い粒径の範囲を整えることにより取得できる。粒子径を小さくする為には、特に限定されないが、凍結粉砕、ミル粉砕および/または分級すればよい。解砕、粉砕後、篩い分けにより任意の粒度分布に調整することもできる。
本発明では、多糖誘導体(A)と、他のポリマー(C)とを含む架橋性多糖組成物(多糖組成物と略称することもある)との組み合わせも粉体として提供される。ここで、「ポリマー(C)」とは、前述の活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有している「ポリマー」とは異なるが、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有していてもよい。ポリマー(C)は、多糖組成物を架橋させたときの含水ゲルの硬さ、その性状を調整するために使用される。の多糖組成物において、多糖誘導体(A)は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用して使用しても良い。また、この組成物に、前記アルカリ化剤(B)を含ませてもよい。
ポリマー(C)は、特に限定されないが、ポリマー(C)の1分子中に2個以上の第1級アミノ基、チオール基、または水酸基を有するものを用いるのが好ましい。具体的にポリマー(C)としては、ポリアルキレングリコール誘導体、ポリペプチド、多糖またはその誘導体が挙げられる。多糖組成物中のポリマー(C)の含有量に特に制限はないが、多糖組成物全体に対して、5〜50質量%で配合されるのが好ましい。なお、ポリマー(C)は、1種単独でも2種以上を併用することもできる。ポリマー(C)は、生体由来材料、非生体由来材料または合成材料のいずれか又はそれらの混合物であることができる。ポリマー(C)は天然に自然界に存在する物質であることができるし、自然界に存在しない物質であることができる。ポリマー(C)は生体、具体的には脊椎動物から直接得られた物質(生体由来材料)であることができる。また、ポリマー(C)は生体から直接得られない物質(非生体由来材料)であることができる。
前記ポリアルキレングリコール誘導体としては、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体、ポリブチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのブロックコポリマー誘導体、ランダムコポリマー誘導体が挙げられる。そして、ポリエチレングリコール誘導体の基本ポリマー骨格としては、エチレングリコール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、ヘキサグリセロールが挙げられる。ポリアルキレングリコール誘導体の分子量は100〜50,000であることが好ましい。より好ましくは、1,000〜20,000である。
上記ポリエチレングリコール誘導体としては特に限定されないが、例えば、両末端にチオール基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型ポリエチレングリコール誘導体、両末端にアミノ基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型ポリエチレングリコール誘導体、3つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型ポリエチレングリコール誘導体、3つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型ポリエチレングリコール誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型ポリエチレングリコール誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型ポリエチレングリコール誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型ポリエチレングリコール誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型ポリエチレングリコール誘導体、8つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型ポリエチレングリコール誘導体、8つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型ポリエチレングリコール誘導体が挙げられる。
「重量平均分子量(weight-average molecular weight)」とは、高分子の平均分子量を表す数値の一つである。高分子は、同じ基本構造単位を有し異なる分子の長さ(鎖長)を有する分子の混合物であるため、分子の鎖長の違いに応じた分子量分布を有する。その分子量を示すために平均分子量を用いる。平均分子量には、重量平均分子量、数平均分子量等があるが、ここでは重量平均分子量を使用する。なお、本発明における重量平均分子量の値(100%)とは、その値に対して上限が110%のもの、下限が90%のものも包含する。ポリエチレングリコール誘導体は、例えば、Poly(ethylene Glycol) Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications, J Milton Harris編, Plenum Press, NY(1992)の第22章に記載された方法に従って作製することができ、さらに一つまたは複数の1級アミノ基またはチオール基を含むように化学的に修飾することができる。また、日本油脂社より、ポリエチレングリコール誘導体(サンブライトHGEO−20TEA、サンブライトPTE−10TSH等)として購入することができる。
上記ポリペプチドとしては、特に限定されないが、コラーゲン、ゼラチン、アルブミンまたはポリリジンが挙げられる。多糖としては、特に限定されないが、ペクチン、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルキトサン、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸、ケラト硫酸、ヘパリンまたはそれらの誘導体が挙げられる。
多糖誘導体(A)とポリマー(C)とを含有してなる多糖組成物からなる粉体において、好適な多糖誘導体(活性エステル化多糖)(A)とポリマー(C)との組み合わせは、下記の通りである。なお、これらの組合せにおいて、後述の実施例を参照することにより適宜選択することができる。
2つの末端にチオール基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、2つの末端にアミノ基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、8つの末端にアミノ基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、ポリリジン、ペクチン、キトサン、キチンおよびカルボキシメチル(CM)キチンからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマー(C)と活性エステル化ペクチンとの組み合わせ。
2つの末端にチオール基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、2つの末端にアミノ基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、8つの末端にアミノ基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、ポリリジン、ペクチン、キトサン、キチンおよびCMキチンからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマー(C)と活性エステル化CMデキストランとの組み合わせ。
2つの末端にチオール基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、2つの末端にアミノ基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、8つの末端にアミノ基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、ポリリジン、ペクチン、キトサン、キチンおよびCMキチンからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマー(C)と活性エステル化CMプルランとの組み合わせ。
2つの末端にチオール基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、2つの末端にアミノ基を有するエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有するトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有するペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、8つの末端にアミノ基を有するヘキサグリセロール型PEG誘導体、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、ポリリジン、ペクチン、キトサン、キチンおよびCMキチンからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマー(C)と活性エステル化CMヒドロキシエチルスターチとの組み合わせ。
両末端にチオール基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、両末端にアミノ基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体および8つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型ポリエチレングリコール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマー(C)と活性エステル化ペクチンとの組合せ。
両末端にチオール基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、両末端にアミノ基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体および8つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマー(C)と活性エステル化CMデキストランとの組合せ。
両末端にチオール基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、両末端にアミノ基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体および8つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマー(C)と活性エステル化プルランとの組合せ。
両末端にチオール基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、両末端にアミノ基を有する重量平均分子量が1,000、2,000、6,000または10,000のエチレングリコール型PEG誘導体、3つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、3つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000または10,000のトリメチロールエタン型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が5,000、10,000または20,000のジグリセロール型PEG誘導体、4つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、4つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のペンタエリスリトール型PEG誘導体、8つの末端にチオール基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体および8つの末端にアミノ基を有する重量平均分子量が10,000または20,000のヘキサグリセロール型PEG誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマー(C)と活性エステル化CMヒドロキシエチルスターチとの組合せ。
多糖誘導体(SD)(A)に対するポリマー(C)(AP)との混合比率(SD/AP)は、SD/AP=20/80〜98/2(W/W)であることが好ましく、ポリマー(C)が80質量%よりも多く混合される場合は、ポリマー(C)の阻害により多糖誘導体(A)の自己架橋性が得られ難く、逆に、2質量%より少ない場合は、最終的に得られる含水ゲルの硬さ、その性状を調整するのが困難となるからである。
本発明において使用される粉体には、本発明の特性を損なわない範囲で、広く公知の添加剤をさらに含ませることができる。添加剤としては特に限定されないが、硬化触媒、充填剤、可塑剤、軟化剤、安定剤、脱水剤、着色剤、タレ防止剤、増粘剤、物性調整剤、補強剤、揺変剤、老化防止剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、溶剤、担体、賦形剤、防腐剤、結合剤、膨化剤、等張剤、溶解補助剤、保存剤、緩衝剤、希釈剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独でも2種以上を併用して使用することができる。これらの添加剤はポリマーと同様に粉体として提供されたものを使用することができる。ポリマー、アルカリ化剤または添加剤を含有する粉体からなる粉体層は支持層の上に直接形成されてもよいし、支持層以外の場所で形成された粉体層を支持層に適用してもよい。
本発明の医療用処置材は、前述の粉体層のほかに支持層とからなる。支持層は、粉体層の適用前にあらかじめシート状の形態で提供することができる。支持層はその材料を圧接してシートまたはプレートとして調製することができる。
支持層は生体吸収性であることが好ましい。「生体吸収性」とは、本明細書に記載したとおりである。本明細書において、支持層やそれに含有される成分を「生体吸収性材料」と称することがある。
支持層の具体例は、特に限定されないが、ポリエーテルエステル(特開平9−52950号公報)、酸化セルロース(特開平10−66723号公報)、ポリグリコール酸(特開2000−157622号公報)、カルボキシメチルセルロース(CMC)(特開平10−77571号公報、特許第3057446号公報)、ヒアルロン酸(HA)(米国特許第5676964号公報、特開2003−252905号公報)、ポリエチレンオキサイド(PEO)とカルボキシメチルセルロース(CMC)とからなる膜(特表2002−511897号公報)、ヒアルロン酸(HA)とカルボキシメチルセルロース(CMC)とからなる膜(特許第3425147号公報)、ポリエチレンオキサイド(PEO)とペプチドからなる膜(特開2002−371131号公報)およびこれからの複合物からなる群より選択される少なくとも一つであることができる。支持層は、フィルム、スポンジ、織布、不織布または粉体圧縮体のシート状であることが可能である。本発明は、癒着防止の用途に使用可能な生体吸収性の材を、上述の具体例を含めて、支持層として使用することを包含する。
以下、本発明の一つの形態として、支持層がポリエーテルエステルである形態を詳細に説明する。
支持層としてのポリエーテルエステルは、ポリアルキレンオキサイドと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種とを反応させてなるポリエーテルエステルよりなることができる。
支持層の形状は、特に限定されないがシート状またはパウダー状であることが好ましい。最終的に医療用処置材として供される際にシート状であればよい。シート状とは、非多孔質材、例えばフィルム、又は多孔質材、例えばスポンジ状およびその圧縮体である。中でも、材料と生体内の水分が十分接触できることができ、所望の機械的強度を損なうこともないという点で、多孔質材が好ましい。多孔質材は、該多孔質材と同一の組成である非多孔質材に対する密度より小さいことが好ましい。好ましくは、多孔質材の非多孔質材に対して所定の密度の比(多孔質材/非多孔質材)を有する。本明細書において、「所定の密度の比」とは、0.001〜0.5である。
ポリエーテルエステルは、多孔質材であって、該多孔質材と同一の組成である非多孔質材に対する密度より小さいことが好ましい。好ましくは、多孔質材の非多孔質材に対する密度の比(多孔質材/非多孔質材)が0.001〜0.5である。具体的には、例えば、ポリエーテルエステルを水に溶解させて得られた水溶液をシャーレ上に展開し、凍結乾燥して水分を除去して得られたスポンジ状の多孔質材の密度(mg/cm3)を、上記ポリエーテルエステルをフィルム状に押出して得た非多孔質材の密度(mg/cm3)で除した値が、0.001〜0.5である、該スポンジ状の多孔質材が挙げられる。ここで、該多孔質材と非多孔質材は同一材料から形成されていればよく、それらの製造工程で用いる溶媒等は異なっていてもよい。
上記密度の比がこの範囲であれば、材料と生体内の水分が十分接触することができ、所望の機械的強度を損なうこともない。これらの特性により優れる点で、該密度の比は、0.01〜0.03がより好ましく、0.05〜0.2が特に好ましい。
ポリエーテルエステルは、多孔構造を有しており、密度は1〜500mg/cm3であることが好ましい。この範囲であると、必要な機械的強度を有しており、また、取り扱い性にも優れる。これらの特性により優れる点で、該密度は、10〜300mg/cm3がより好ましく、50〜200mg/cm3が特に好ましい。
また、該スポンジ状の支持層を圧縮して作製した圧縮シートでは、厚みに関係なく、シート単位面積あたりの材料重量は0.4〜200mg/cm2であることが好ましい。この範囲であると、必要な機械的強度を有しており、また、取り扱い性にも優れる。これらの特性により優れる点で、該シート単位面積あたりの材料重量は、4〜120mg/cm2がより好ましく、20〜80mg/cm2が特に好ましい。
スポンジ状の支持層を製造する場合、使用するポリエーテルエステル溶液のポリマー濃度は、0.1〜50質量%であることが好ましい。ポリマー濃度が0.1質量%である場合、得られるスポンジ状の支持層の密度は約1mg/cm3、あるいは、該スポンジ状のものを圧縮して作製した圧縮シートのシート単位面積あたりの材料重量は約0.4mg/cm2である。また、ポリマー濃度が50質量%である場合、得られるスポンジ状のものの密度は約500mg/cm3、あるいは、該スポンジ状の支持層を圧縮して作製した圧縮シートのシート単位面積あたりの材料重量は約200mg/cm2である。より好ましい密度のスポンジ状の支持層、あるいはより好ましいシート単位面積あたりの材料重量の該圧縮シートが得られるので、ポリマー濃度は、1〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。
支持層として用いるポリアルキレンオキサイドは、特に限定されないが、炭素数2〜6の脂肪族環状エーテルまたは炭素数2〜6の脂肪族グリコールから得られるものが好適に挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール、ポリエピクロルヒドリン、および、これらの共重合体等が挙げられ、中でも、商業的に入手し易く、優れた生体適合性を有する点で、ポリエチレングリコールが特に好ましい。
上記ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量は、5,000〜50,000であることが好ましい。分子量がこの範囲であると、ポリエーテルエステルが生理環境下でポリアルキレンオキサイドに分解されたときに、腎臓や肝臓等の臓器に過剰に蓄積されることなく生体外に排出可能であり、本発明の局所消失性と体外排出性を満たしている。さらに、該ポリアルキレンオキサイドが溶融されたときの粘度も適度で、製造時の作業性が良好である。これらの特性により優れる点で、該重量平均分子量は、10,000〜40,000がより好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて水系測定を行い、分子量が既知であるポリエチレングリコール標準品を使用して算出した値である。
多価カルボン酸は、2以上のカルボキシ基を有する化合物であれば特に限定されないが、後述する架橋剤と反応して架橋構造を形成する際に十分な架橋密度が得られる4価カルボン酸が好ましい。具体的には、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、p−ターフェニル3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸等が挙げられ、これらは一種単独で用いても、二種以上を併用して用いてもよい。
多価カルボン酸無水物は、特に限定はなく、基本的に上記多価カルボン酸の無水物でよい。中でも、後述する架橋剤と反応して架橋構造を形成する際に十分な架橋密度が得られる分子内に2つ酸無水物基を有するものが好ましい。具体的には、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二酸無水物、二無水ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二酸無水物、p−ターフェニル3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二酸無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二酸無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二酸無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二酸無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二酸無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二酸無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二酸無水物等の2価酸無水物;無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸−塩化ビニル共重合体、無水マレイン酸−ブタジエン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−エチレン共重合体等が挙げられる。これらは一種単独で用いても、二種以上を併用して用いてもよい。中でも、二無水ピロメリット酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二酸無水物および3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二酸無水物が、上記ポリアルキレンオキサイドとの反応性が高く、ポリエーテルエステルの製造効率が高いのでより好ましい。
多価カルボン酸塩は、上記多価カルボン酸と、該カルボン酸と塩を形成する物質(以下、「中和剤」とも言う。)とを反応させて得られるものであれば特に限定されないが、具体的には、上記多価カルボン酸の金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。上記多価カルボン酸と塩を形成する物質としては、金属、アミン類等が挙げられ、該金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、銅、銀、亜鉛、カドミウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、スカンジウム等、これらの金属からなる酸化物、カルボン酸塩、金属アルコキシド、炭酸塩、水酸化物、水素化物、過酸化物、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭化物等が挙げられる。
該アミン類の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、アンモニア、ピリジン、ピロリジン、ピロール、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ヒドラジン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、エタンアミン、アニリン、トルイジン、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、ジイソブチルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリ−n−オクチルアミン、t−ブチルアミン、2−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピコリン、ビニルピリジン、ピペコリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラジン等が挙げられる。
上記多価カルボン酸塩は、ポリエーテルポリエステルの合成時および/または合成後に、上記中和剤を添加することにより合成されるのが好ましい。このように多価カルボン酸塩にすることで、pH調整および得られるポリエーテルエステルの機械的強度が増強される。
上記中和剤の添加量は、特に限定されないが、上記多価カルボン酸または多価カルボン酸無水物1モルに対して、0.001〜10.0モルが好ましく、より好ましくは0.01〜6.0モル、特に好ましくは0.05〜5.0モル、最も好ましくは、0.1〜4.0モルである。添加量が上記の範囲より多いと、該中和剤がポリエーテルエステル中に均一に分散、溶解できなくなるため、ポリエーテルエステルの機械的強度が低下する。また、該中和剤が少ないと、反応時間が長くなり、製造効率が低下する。中和剤の添加量が上記の範囲よりも少ないと、中和剤の添加効果であるpH調整効果および機械的強度を増加させる効果が低下する。
上記中和剤を添加する際、中和剤の分散を良くするために溶媒を用いてもよいが、無溶媒の方が溶媒を除去する工程を省略できるため効率が良いので好ましい。
多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の配合量は、特に限定されないが、上記ポリアルキレンオキサイド1.0モルに対して0.1〜4.0モルが好ましい。この範囲の配合量であれば、得られる生体吸収性材料を用いた成形体の機械的強度に優れる。この特性により優れる点から、上記配合量は、より好ましくは0.2〜3.0モル、さらに好ましくは0.3〜2.0モル、最も好ましくは0.5〜1.5モルである。
支持層として用いられるポリエーテルエステルは、上記ポリアルキレンオキサイドと、上記多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種とを反応させてなるものであることができる。
上記ポリエーテルエステルは水溶性である。該ポリエーテルエステルが水溶性であるため、本発明の生体吸収性材料は、生理環境下で一定期間形状を保持した後、加水分解等の作用により分解され、適用箇所から消失し、腎臓や肝臓等の臓器に過剰に蓄積されることなく安全に体外に排出され得る。
なお、本明細書において、「水溶性」とは、37℃の生理食塩水(pH4〜8)中に少なくとも1質量%ポリマー濃度相当のサンプルをいれて、ローターミキサーで混合し、目視で観察したときに、所定日数以内にサンプルの形状がなくなり、透明な水溶液になることを言う。
上記ポリエーテルエステルの37℃の生理食塩水(pH4〜8)に対する溶解度は、支持層の用途により異なるので特に限定されないが、一般的には、0.001〜0.5g/mlであることが好ましい。該溶解度がこの範囲であると得られる材料の生体吸収性および生理環境下での形状保持性が要求される範囲を満たすことができる。この特性により優れる点で、上記溶解度は0.005〜0.1g/mlがより好ましく、0.01〜0.05g/mlであることが特に好ましい。
上記ポリエーテルポリエステルの重量平均分子量は、50,000〜500,000であることが好ましい。分子量がこの範囲であると、得られる支持層が生体吸収性に優れ、また製造時の加工性にも優れる。
上記ポリエーテルエステルは、上記の成分以外に、要求される生体適合性を満たす範囲で、添加剤を含んでもよい。具体的には、例えば、充填剤、可塑剤、軟化剤、安定剤、着色剤、物性調整剤、補強剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、溶剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独でも2種以上を併用して使用することができる。
上記ポリエーテルエステルは、公知の方法(例えば、特開平9−52950号公報等参照。)により製造される。具体的には、例えば、100mlフラスコに重量平均分子量25,000のポリエチレングリコール10gおよび二無水ピロメリット酸0.106gを仕込み、常圧下150℃で4時間反応を行うことにより上記ポリエーテルエステルが得られる。
また、上記ポリエーテルエステルは、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、PX3−EH1000(EH1000NおよびEH1000A、日本触媒(株)製)等が好適に挙げられる。
支持層は、上記ポリエーテルエステル分子間に、さらに架橋構造を有していても有していなくてもよいが、有していることが好ましい。架橋構造を有することにより、該支持層が生理環境下で分解されるまでの期間を長くすることができ、架橋密度を変化させることにより生体吸収性を調節できる。また、耐水性、機械的強度、経時安定性、接着性等においても高い性能を発揮し、かつ、それら相互のバランスにも優れる支持層を提供できる。一方、架橋構造を有していない支持層は、架橋構造を有しているものに比べて、生体吸収されるまでに要する期間が短いという特徴を有するので、素早く生体吸収されることが好ましい用途に使用される。 上記架橋構造は、上記ポリエーテルエステル主鎖間の共有結合を介して形成されてもよく、該ポリエーテルエステルのカルボキシ基と架橋剤とを反応させて形成されてもよい。また、これらが併用されて架橋構造が形成されてもよい。
上記ポリエーテルエステル主鎖間の共有結合を介して形成される架橋構造を有する支持層は、該ポリエーテルエステルのみで、紫外線等の電離放射線照射等により架橋されるものである。この材料に紫外線等の電離放射線が照射され、該材料に含まれるポリエーテルエステルが架橋される場合、該ポリエーテルエステル中のヘテロ結合において、ヘテロ原子に隣接した炭素上の水素は紫外線等の照射によりラジカルとして比較的解裂し易いため、分子鎖上にいくつかのラジカルが発生し、こうしてできたポリマー分子鎖上のラジカル同士が結合して、架橋構造が形成されると考えられる。この架橋構造は、該ポリエーテルエステル同士の架橋であり、またラジカル濃度も低いため、架橋密度の低いゆるやかな架橋構造が形成される。
通常放射線硬化型樹脂等の硬化に必要とされる光開始剤、光増感剤、光架橋剤および不飽和結合含有化合物は特に必要ないが、照射後の各種性能を低下させない範囲で、架橋効率を向上させるために、これらの添加物または化合物を併用してもよい。
上記電離放射線としては特に限定されないが、上述した紫外線の他、例えば、α線、β線、γ線、X線および電子線等が挙げられる。中でも、紫外線は、取り扱いが容易で工業的にもその利用が普及している点で好ましい。
照射時間は、電離放射線の種類にもよるが、例えば紫外線であれば、高圧水銀灯を用いる場合は1分〜10分が好ましく、より好ましくは2分〜8分である。使用する光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプおよびタングステンランプ等が使用される。
上記ポリエーテルエステルのカルボキシ基と架橋剤とを反応させて形成される架橋構造を有する生体吸収性材料からなる支持層は、上記ポリエーテルエステルと架橋剤とを反応させて架橋したものである。架橋剤を用いて架橋する場合は、架橋反応を確実に行うことができ、架橋密度の調節もし易いという点で有利である。
上記架橋剤としては、特に限定されないが、一般的な多官能化合物を使用することができる。上記多官能性化合物としては、上記ポリエーテルエステルのカルボキシ基と反応可能な官能基を2つ以上持つもの、または、該カルボキシ基と塩形成可能な2価以上の金属または金属化合物であれば特に限定されない。上記多官能性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリエーテルエステルのカルボキシ基と反応可能な官能基は、具体的には、例えば、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アミノ基、イソシアネート基、ベンゾグアナミン基、メラミン基等が挙げられる。好ましくは、オキサゾリン基、イソシアネート基、エポキシ基がよい。上記多官能性化合物が有する官能基の種類は、同じであっても、異なっていてもよい。例えば、1個のオキサゾリン基と1個のエポキシ基とを有する化合物も上記多官能化合物として用いることができる。
上記ポリエーテルエステルのカルボキシ基と反応可能な官能基を2つ以上有する化合物としては、具体的には、例えば、エポキシ化合物類、メラミン化合物類、ベンゾグアナミン化合物類、イソシアネート化合物類、オキサゾリン化合物類、アミン化合物類、アジリジン化合物類、シランカップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、カルボキシ基と比較的低温で反応し、反応に伴う副生成物が無いという点で、オキサゾリン化合物類が好ましい。
上記エポキシ化合物類としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等が好適に挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記メラミン化合物類またはベンゾグアナミン化合物類としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヘキサメトキシメチロールメラミンおよびその変性物等が好適に挙げられる。より具体的には、以下に挙げるサイテック工業(株)製のサイメルシリーズ(C−番号)やマイコートシリーズ(M−番号)が挙げられる。上記シリーズのうち、完全アルキル型としては、C−300、C−301、C−303、C−350、C−232、C−235、C−236、C−238、C−266、C−267、C−285、C−1123、C−1123−10、C−1170、M−506等が挙げられる。メチロール基型としては、C−370、C−771、C−272、C−1172、M−102等が挙げられる。イミノ基型としては、C−325、C−327、C−703、C−712、C−254、C−253、C−212、C−1128、M−101、M−106、M−130、M−132、M−508、M−105等が挙げられる。メチロール/イミノ基型としては、C−701、C−202、C−207等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記イソシアネート化合物類としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、trans−1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、リシンジイソシアネート等が好適に挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記オキサゾリン化合物類としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ビスオキサゾリン、多価オキサゾリン化合物(例えば、エポクロスWS−700(日本触媒(株)製))、オキサゾリン環を有するポリマー(例えば、エポクロスWS−500(日本触媒(株)製))等が好適に挙げられる。中でも、十分な架橋性が発現され、所望の生体吸収性が得られ易いという点で、多価オキサゾリン化合物が好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アミン化合物類としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、トリエチレンテトラミン、エチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタン等が好適に挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アジリジン化合物類としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕フォスフィンオキシド、ヘキサ〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕トリフォスファトリアジン等が好適に挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリエーテルエステルのカルボキシ基と塩形成可能な2価以上の金属または金属化合物を構成する金属原子としては、特に限定されないが、具体的には、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、銅、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、亜鉛、カドミウム、水銀、アルミニウム、珪素、ガリウム、ゲルマニウム、錫、鉛、タリウム、ビスマス、アンチモン、ポロニウム、テリウム、セレン、ランタノイド類、アクチノイド類等が挙げられる。好ましくは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、銅が、上記ポリエーテルエステルのカルボキシル基と塩形成し易いため、好ましい。
上記ポリエーテルエステルのカルボキシル基と塩形成可能な2価以上の金属または金属化合物は、該カルボキシ基と反応可能であれば、その化合物の形態は特に限定されない。例えば、金属単体、酸化物、カルボン酸塩、水酸化物、硫化物、リン酸塩、亜リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、炭酸塩、炭化物等が挙げられる。
上記架橋剤の含有量は、上記ポリエーテルエステルのカルボキシ基数Xに対する上記架橋剤の官能基数Yの比(Y/X)が、0.05〜1.5となるように調整されるのが好ましい。該比がこの範囲であると、適度な架橋密度が得られるため、機械的強度が得られ、種々の用途に要求される期間を満たす生体吸収性を有する。この特性により優れる点で、該比(Y/X)は、0.1〜1.0がより好ましく、0.2〜0.5が特に好ましい。
上記架橋剤と上記ポリエーテルエステルを反応させる方法としては、加熱処理や常温乾燥等の一般的架橋方法等が挙げられる。加熱処理を行う場合、その条件としては、特に限定されないが、40〜200℃で処理するのが好ましい。加熱温度がこの範囲であると、架橋反応が速やかに進行し、ポリエーテルエステルが分解することもない。この特性により優れる点で、より好ましくは40〜150℃である。
また、加熱処理時間は、加熱温度にもよるが、0.1〜8時間が好ましい。加熱処理時間がこの範囲であると、架橋反応が速やかに進行し、ポリエーテルエステルが分解することもない。この特性により優れる点で、加熱処理時間10分〜5時間がより好ましい。
本発明の一つの形態の支持層は、公知の方法(例えば、特開平9−52950号公報、特開2003−113240号公報等参照。)により製造することができる。 本発明のスポンジ状の支持層の製造方法としては、例えば、上記ポリエーテルエステルをRO水に室温で溶解させてポリマー濃度約10質量%の水溶液を調製し、該水溶液10gをポリスチレンディシュ(50×50×25mm)上に展開し、凍結乾燥して残ったポリマー部分がスポンジ状の支持層となる方法が好適に挙げられる。この方法において、RO水の代わりに、アルコール水溶液等ポリマーが溶解し、かつ減圧等により除去できる溶媒を用いてもよい。
パウダー状の支持層の材料は、上述の合成反応により得られたポリエーテルエステルを解砕、あるいは粉砕して、必要であれば粒径調整を行い粒径の範囲を整えることにより取得できる。粒子径を小さくする為には、特に限定されないが、凍結粉砕、ミル粉砕および/または分級すればよい。解砕、粉砕後、篩い分けにより任意の粒度分布に調整することもできる。平均粒子径は特に限定されないが、平均粒子径数十nm〜数百μmが好ましい。得られたパウダー状物は、通常使用される方法により医療用処置材の支持層として調製することができる。
また、一般にスピノーダル分解と呼ばれる原理を用いたケミカル粉砕法(例えば、特開平4−339828号公報参照。)によりパウダー状の生体吸収性材料を得ることができる。具体的には、例えば、上記ポリエーテルエステルを溶剤に加熱溶解混合させた後、冷却して析出した粉末を洗浄、乾燥、解砕、分級等を行い、平均粒径1μm〜150μmの粉体を得ることができる。より具体的には、キシレン等の溶剤を使用して80〜100℃にて加熱溶解させ、その後、その溶液を室温まで徐冷して、ポリエーテルエステルを析出させ、ヘキサンでキシレンを洗浄することによりパウダーを得ることができる。
一つの形態の支持層の製造方法は、これに限定されず、原料中に架橋剤を混合し、水を除去した後、加熱等により架橋してもよい。また、水を除去した後、紫外線照射してポリエーテルエステル同士を架橋させてもよい。
一つの形態の態様の支持層は、製造中または製造後に、濾過滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌等の方法により滅菌処理されて使用されるのが好ましい。濾過滅菌は、例えば、該支持層を製造する際に、上記ポリエーテルエステルの水溶液を、市販されている濾過滅菌用フィルターに通過させることによって行なわれてもよい。エチレンオキサイドガス滅菌は、例えば、得られた材料を密閉容器に入れ、エチレンオキサイドガスを封入した後、所定の時間放置して行なわれてもよい。
もう一つの形態の支持層は、ポリアルキレンオキサイドと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種とを反応させてなるポリエーテルエステルと、ラジカルトラップ剤とを含有する。
もう一つの形態の支持層は、上述した一つの形態の支持層に、さらにラジカルトラップ剤を有すること以外は基本的に本発明の第1の形態の支持層と同様である。以下、ラジカルトラップ剤について詳細に説明する。
上述のように支持層は、滅菌処理されて使用されるのが好ましい。しかし、滅菌処理工程において、生体吸収性材料の物性低下等が誘起されることがあるので、支持層は、滅菌処理工程における物性の低下を抑制する耐滅菌処理性を有することが好ましい。
特に、γ線等の放射線や電子線等を利用した滅菌処理においては、ポリマーが分解されることがある。これは、ポリマーの励起分子および励起分子の安定化過程で生成したポリマーラジカルの開裂によって、または、生成したラジカルが酵素と反応することによって起こると考えられている。このような分解、酸化反応に関わるラジカルの生成を抑制することにより、材料の物性低下を抑制できる。ラジカルを不活性化できる配合剤(ラジカルトラップ剤)としては、電子・イオン捕捉剤、エネルギー移動剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤等が挙げられる。
電子・イオン捕捉剤としては、N,N’−テトラメチルフェニレンジアミン等が挙げられ、これらは初期過程で生成する電子とイオンを不活性化するものである。エネルギー移動剤としては、アセナフテン等が挙げられ、これらは励起種を不活性化するものである。
ラジカル捕捉剤としては、メルカプタン、オクタヒドロフェナントレン等が挙げられ、これらはラジカルを不活性化するものである。 酸化防止剤としては、L−アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、トコフェロール等が挙げられ、これらは酸化反応を防止するものである。これらの中でも、生体に対する安全性の高いL−アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、トコフェロールが好ましい。特に、L−アスコルビン酸は水溶性であり生体吸収性を有するのでより好ましい。
上記ラジカルトラップ剤の含有量は、上記ポリエーテルエステル100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましい。該含有量がこの範囲であれば、ラジカルトラップ剤としての機能を十分に果たすことができ、支持層の機械的物性を低下させることがなく、支持層の生体吸収性に与える影響が少ない。この特性により優れる点で、該含有量は1〜5質量部がより好ましい。
上記ラジカルトラップ剤は、上記ポリエーテルエステルまたはその水溶液に混合されて用いられてもよく、上記ポリエーテルエステルを製造する際に混合して、ポリエーテルエステル中に含有させてもよい。
具体的には、例えば、ポリエーテルエステル1gをRO水9gに溶解させた水溶液に、0.02gのL−アスコルビン酸を混合して用いられる。
上記もう一つの形態の支持層は、ラジカルトラップ剤を含有することにより、γ線滅菌処理や電子線滅菌処理が可能である。
支持層は、上述のように、所望の機械的強度を保持するのに十分な分子量であり、生理環境下で一定期間形状を保持した後、加水分解等の作用により分解されて速やかに適用箇所から消失することができ、さらに、分解された支持層は、上記ポリアルキレンオキサイドと同等かそれより小さい分子量になることが可能であることより、腎臓や肝臓等の臓器に過剰に蓄積されることなく安全に体外に排出され得る。また、架橋密度を変化させることにより、生体に吸収されるまでの期間を調節することができ、種々の用途に応じた機械的物性(強度や柔軟性等)を得ることができる。さらに、ラジカルトラップ剤を含有することにより、γ線または電子線等で滅菌処理を行うことができる。
本発明の粉体層と支持層とからなる医療用処置材の製造方法は、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有しているポリマーを含む粉体と、シート状の生体吸収性材料とを圧縮することからなる。粉体層と支持層は別々に成形してもよいし、同時に成形してもよい。少なくとも粉体層は、ポリマーの粉体を、圧縮時に実質的に1〜100MPaであるように圧縮すればよい。圧縮時の圧縮力は、好ましくは実質的に5〜70MPaであり、さらに好ましくは実質的に10〜50MPaである。圧縮する粉体は支持層上で圧縮されてもよく、支持層上ではない場所にて圧縮されてもよい。
本発明の粉体層と支持層とからなる医療用処置材は、所望の形状に展開して使用することができる。「医療用処置材」とは、生体内で使用された時、生体に有害な毒性が低い安全な成分からなり、生体に許容される物質を意味する。医療用処置材は生体において吸収性や分解性を有してもよい。好ましくは、生体吸収性及び/又は生体分解性であることである。例えば、手術で組織や器官の止血、接着、シーリングおよび/または固定に用いることができる。医療用処置材の剤形は特に限定されないが、シート状やプレート状を挙げることができる。本明細書において、シート状というときは、プレート状も包含する。このように調製した粉体層と支持層とからなる医療用処置材は、水分存在下にて供することによって架橋させることができる。その際、水分として、本明細書に記載のものを使用することができる。
医療用処置材は、使用時の便宜を考慮して、前述のアルカリ化剤を含むキットとして提供することができる。医療用処置材は、粉体層と支持層とからなり、そしてアルカリ化剤が、混合されていない状態で、医療用処置材と共にまたは別々に梱包またはパッケージの中に含めることができる。医療用処置材として使用され得る他の構成物を含んでいても良い。
医療用処置材は、組織の接着及び/又は閉鎖のために使用することができる。組織の接着及び/又は閉鎖とは、特に限定されないが止血材、接着剤または癒着防止材等として使用できることを意味する。止血材とは、生体の出血箇所またはその近辺にて止血を目的として使用される。目的とする箇所に医療用処置材を付し、必要に応じて出血箇所を覆うことにより、出血がとまり止血効果を発揮する。接着剤とは、生体の組織、器官または臓器の少なくとも1ヶ所を、他の部位と接着させることを目的として使用される。目的とする箇所に医療用処置材を付し、他の所望の部位を接着の上、固定、静置または圧着させ、一定時間を経過させる。その際、固定用具等を使用することができる。癒着防止材とは、生体の組織や臓器またはその近辺にて、癒着の防止を目的として使用される。目的とする箇所に医療用処置材を付し、生体の組織、器官または臓器の少なくとも1ヶ所を、他の部位と癒着しないように固定、静置または圧着させ、一定時間を経過させることにより、癒着が防止され、癒着防止効果を発揮することができる。
本発明の医療用処置材は、臨床上の要求を満たしている。成分自体またはその分解物の毒性は小さく、多糖が主骨格なので生体分解吸収性も有するように材料設計されている。また、本発明の医療用処置材は、用時を予め見計らって行う準備操作を少なくし、急な適用に対して迅速に対応でき、その使用にあたり特別な装置が不要なので、誰でも簡便に使用することができる。そして、医療用処置材は、単独でも多糖組成物としても提供できるので、幅広く多様な用途に使用可能である。以上のような特性から、本発明の医療用処置材は、止血材、接着剤、癒着防止材等として好適である。
本発明の医療用処置材の一つの形態は、粉体層と支持層とからなるシート状であって、前記粉体層が圧縮されており、前記粉体層の粉体が、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有している非生体由来材料からなるポリマーを含む。また、本発明の医療用処置材のひとつの形態は、粉体層と支持層とからなるシート状であって、前記粉体層が圧縮されており、前記粉体層の粉体が、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有している合成材料からなるポリマーを含む。
以下に、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有しているポリマーを粉体層に、生体吸収性ポリマーを支持層に具体的に使用した本発明の一つの形態を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
1.粉体層に使用する活性エステル基を有しているポリマー
粉体層に使用する活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有しているポリマーとして、活性エステル化多糖(多糖誘導体)の粉体を調製した。
1−1.原料多糖の調製
活性エステル化多糖(多糖誘導体)の原料となる原料多糖として、酸型のカルボキシ基を有する、あるいは酸型のカルボキシメチル基を有する多糖、すなわち酸基含有多糖を調製した。
デキストラン(Dextran T−40、Amersham Biosciences社、重量平均分子量40,000)10gを、18wt%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム、和光純薬工業社製)125gに添加して、25℃で3時間攪拌した。続いて、40wt%モノクロル酢酸水溶液(モノクロル酢酸、和光純薬工業社製)75gを添加して、60℃で6時間攪拌した。放冷により反応溶液を25℃にした後、20%塩酸を使用して反応溶液をpH1.0に調整し、25℃で2時間攪拌した。反応溶液を92.5vol%エタノール水溶液(100%エタノール、和光純薬工業社製)5Lに滴下して晶析を行い、吸引ロートを用いて析出物を回収した。92.5vol%エタノール水溶液3Lを使用して得られた析出物を洗浄して、最後にエタノールで置換した後、減圧乾燥した。これにより、酸型カルボキシメチルデキストラン(酸型CMデキストラン)を調製した。
得られた酸型CMデキストランのカルボキシメチル基量の定量を行った。原料多糖0.2g(A(g))を秤取り、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液20mLと80vol%メタノール水溶液10mLとの混合溶液に添加し、25℃で3時間攪拌した。得られた溶液に、指示薬として1.0%フェノールフタレイン(W/V)/90vol%エタノール水溶液を3滴添加し、0.05mol/L硫酸を使用して酸塩基逆滴定を行い、0.05mol/L硫酸の使用量(V1 mL)を測定した(フェノールフタレイン、和光純薬工業社製)。また、原料多糖を添加しない以外は同様にして行ったブランクでの0.05mol/L硫酸の使用量(V0 mL)を測定した。下記の数式(1)に従い、原料多糖のカルボキシ基およびカルボキシメチル基の基量(Bmmol/g)を算出した。なお、使用した0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液、0.05mol/L硫酸の力価は、ともに1.00であった。
B=(V0−V1)×0.1÷A ・・・・・・(1)
A:原料多糖の質量(g)
B:カルボキシ基およびカルボキシメチル基の基量(mmol/g)
得られた酸型CMデキストランのカルボキシメチル基量は、1.2mmol/gであった。
1−2.活性エステル化多糖(多糖誘導体)の調製
前述の原料多糖の活性エステル化反応には、反応溶媒はDMSO、求電子性基導入剤はN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(和光純薬工業社製)、脱水縮合剤は1−エチル−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(和光純薬工業社製)を使用し、活性エステル化多糖(多糖誘導体)を調製した。
酸型CMデキストラン(カルボキシメチル基量1.2mmol/g)5.0g(カルボキシメチル基量6mmol/g)を、DMSO100gに添加し、70℃で2時間攪拌して溶解した。その後、NHS7.02g(60mmol)とEDC11.69g(60mmol)を添加して、25℃で18時間攪拌した。反応溶液をエタノール/アセトン混合溶液(1/1 V/V)3Lに滴下して晶析を行い、吸引ロートを用いて析出物を回収した。エタノール/アセトン混合溶液(1/1 V/V)3Lを使用して得られた析出物を洗浄して、減圧乾燥した。これにより、活性エステル化CMデキストランを調製した。Z/XおよびY/Xの比は、Z/X=10、Y/X=10であった。
得られた活性エステル化CMデキストランのNHS基量の定量、NHS導入率の算出を行った。NHS導入率は、活性エステル化多糖(多糖誘導体)の原料となる原料多糖の単位重量あたりに存在するカルボキシ基量、あるいはカルボキシメチル基量に対する、得られた多糖誘導体の活性エステル基量の割合である。
N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の検量線を作成するため、0.1、0.2、0.5、1.0、2.5、5.0、10mMの NHS標準水溶液を調製した。各NHS標準水溶液1mLに、2N水酸化ナトリウム水溶液0.2mLを添加し、60℃で加熱して10分間攪拌した。放冷後、0.85N塩酸1.5mL、および0.05%FeCl3 /1N塩酸溶液0.75mLを添加し、分光光度計を用いて吸収波長500nmの吸光度を測定した(FeCl3、和光純薬工業社製)。各NHS水溶液の濃度をX軸、吸光度をY軸としてプロットし、線形近似を行い、下記のNHS濃度算出するための数式(2)を得た。
Y=αX+β ・・・・・・(2)
X:NHS濃度(mM)
Y:波長500nmにおける吸光度
α=0.102 (傾き)
β=0.0138 (切片)
r=0.991 (相関係数)
吸光度を元に算出されたX(mM)に対して、測定溶液の容量(3.45ml)を乗算
することで、後述の試料中のNHS基量(Cmmol)を求めることができる。
次に、実施例1〜7の活性エステル化多糖0.01gを秤取り、純水1mLに添加して、25℃で3時間攪拌した後、2N水酸化ナトリウム水溶液0.2mLを添加して、60℃で加熱して10分間攪拌を行った。室温まで放冷した後、0.85N塩酸1.5mLを添加した。不溶物を含む、得られた溶液から、ろ過綿を用いて不溶物を除去した後、0.05%FeCl3 /1N塩酸溶液0.75mlを添加して、波長500nmにおける吸光度を測定した。吸光度測定値が、NHS標準溶液の濃度が5mMの時の吸光度を上回るときは、純水で希釈した(希釈倍率H)。前記NHS濃度算出する数式(2)を利用して吸光度測定値より、活性エステル化多糖のNHS基含有量(Cmmol)を求めた。続いて、下記の数式(3)より、活性エステル化多糖のNHS導入率を算出した。
NHS導入率(%)={(C×H) /0.01}/B×100・・・・・・(3)
B:活性エステル化多糖の原料多糖中の全カルボキシ基量(mmol/g)
C:活性エステル化多糖のNHS基含有量(mmol)
得られた活性エステル化CMデキストランのNHS基量は、1.0mmol/gであった。また、NHS導入率は83.3%であった。
1−3.活性エステル化多糖(多糖誘導体)の自己架橋性
前述の活性エステル化多糖について、自己架橋性を試験した。容量10mLの清浄試験管(ラルボLT−15100、テルモ社製)に、活性エステル化多糖0.2gを秤取り、純水1mLを添加して混合した。次に、pH調整剤として8.3%炭酸水素ナトリウム水溶液(W/V)(炭酸水素ナトリウム、和光純薬工業社製)1mL(pH8.3)を添加し、試験管ミキサー(MT−31、ヤマト科学社製)を用いて約2,000rpmで約1分間混合した。その混合前後での試験管内容物の状態を目視にて確認した。混合後、試験管内容物が混合前と同様に流動性があるものを「自己架橋性なし(−)」、混合後の試験管内容物が塊状物(含水ゲル)になっているものを「自己架橋性あり(+)」と判定した。1−2.で得られた活性エステル化CMデキストラン(NHS基量1.0mmol/g、NHS導入率83.3%)は、「自己架橋性あり(+)」であった。
1−4.活性エステル化多糖(多糖誘導体)の粉体調製
前述の活性エステル化多糖(多糖誘導体)の粉砕処理を行い、粉体層に使用する活性エステル化多糖(多糖誘導体)の粉体を調製した。
活性エステル化CMデキストラン(NHS基量1.0mmol/g、NHS導入率83.3%)5gを、卓上型ラボジェットミル(A−O JET MILL、セイシン企業社製)を用いて、圧縮空気によりノズル圧7kg/cm2、処理速度0.3g/minにて粉砕処理を行い、活性エステル化CMデキストランの粉体4gを調製した。
得られた活性エステル化CMデキストランの粉体の平均粒径は、粒度分布測定装置(LMS−30、セイシン企業社製)を用いて測定を行い、5μmであった。
以上、得られた活性エステル化CMデキストランの粉体を粉体層に使用した。
2.支持層に使用する生体吸収性ポリマー
支持層に使用する生体吸収性ポリマーとして、ポリエーテルエステルを使用してスポンジを作製した。
ポリエーテルエステルとしてPX3−EH1000A(酸価8.4KOHmg/g、重量平均分子量220,000、日本触媒(株)製)1gをRO水9gに室温で溶解させてポリマー濃度10質量%水溶液を調製した。該水溶液に、架橋剤としてエポクロスWS−700(オキサゾリン基当量4.54mmol/g、固形分25質量%、日本触媒(株)製)0.136gを添加して、室温で1時間撹拌した。得られた水溶液約10gを、ポリスチレンディシュ(50×50×25mm)に展開した。次に、凍結乾燥機(LYOFLEX04、Edwards社製)を用いて−40℃に冷却して凍結させたまま、6.7Paに減圧して水分を蒸発させる凍結乾燥を行い、スポンジ状物を作製した。得られたスポンジ状物を50℃で3時間の加熱処理を行った。これにより、ポリエーテルエステルのカルボキシ基と架橋剤とを反応させてなる架橋構造を有するポリエーテルエステルスポンジ(密度100mg/cm3)を作製した。なお、上記ポリエーテルエステルのカルボキシ基数Xに対する上記架橋剤の官能基数Yの比(Y/X)は、1.0であった。
以上、得られたポリエーテルエステルスポンジを支持層に使用した。
3.粉体層と支持層とからなるシートの作製
1.で得られた活性エステル化CMデキストランの粉体、2.で得られたポリエーテルエステルスポンジを使用して、粉体層と支持層とからなるシートを作製した。
2.で得られたポリエーテルエステルスポンジ(50×50×4mm)1枚の上に、1.で得られた活性エステル化CMデキストランの粉体0.4gと平均粒径25μmのリン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業社製)の粉体0.1gからなる混合配合物を均等に載せたものを、プレス機(卓上型テストプレス、テスター産業社製)を用いて、25℃で40MPaにて1分間圧縮した。得られた粉体層と支持層とからなるシートの形状は50×50×0.6mmであり、特に粉体層の厚みは0.25mm、支持層の厚みは0.35mmであった。粉体層のシート単位面積あたりの粉体重量は20mg/cm2であり、粉体密度は800mg/cmであった。また、支持層のシート単位面積あたりの材料重量は40mg/cm2であり、粉体密度は100mg/cmであった。
以上、シートAを作製した。
実施例2
実施例1おいて、3.の粉体層と支持層とからなるシートの作製において、活性エステル化CMデキストランの粉体0.4gと平均粒径25μmのリン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業社製)の粉体0.1gからなる混合配合物を、活性エステル化CMデキストランの粉体0.5gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、シートBを作製した。
実施例3
実施例1おいて、2.の支持層に使用する生体吸収性ポリマーとして、ポリエーテルエステルを使用してスポンジを作製したのを、酸化セルロースからなる織布(50×50mm、生体吸収性止血剤、サージセル、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)を用意したのに変更した以外は、実施例1と同様に行い、シートCを作製した。
実施例4
実施例1おいて、2.の支持層に使用する生体吸収性ポリマーとして、ポリエーテルエステルを使用してスポンジを作製したのを、ポリグリコール酸からなる不織布(50×50mm、吸収性ポリグリコール酸フェルト、ネオベール、シートタイプ、グンゼ社製)を用意したのに変更した以外は、実施例1と同様に行い、シートDを作製した。
実施例5
実施例1おいて、2.の支持層に使用する生体吸収性ポリマーとして、ポリエーテルエステルを使用してスポンジを作製したのを、ヒアルロン酸ナトリム/カルボキシメチルセルロースからなるフィルム(50×50mm、合成吸収性癒着防止材、セプラフィルム、ジェンザイム社製)を用意したのに変更した以外は、実施例1と同様に行い、シートEを作製した。
実施例6
実施例1おいて、2.の支持層に使用する生体吸収性ポリマーとして、ポリエーテルエステルを使用してスポンジを作製したのを、コラーゲンからなるスポンジ(50×50mm、生体吸収性止血剤、インスタット、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)を用意したのに変更した以外は、実施例1と同様に行い、シートFを作製した。
比較例1
実施例1おいて、3.の粉体層と支持層とからなるシートの作製において、プレス機(卓上型テストプレス、テスター産業社製)を用いて、25℃で40MPaにて1分間圧縮したのを、圧縮しないのに変更した以外は、実施例1と同様に行い、シートGを作製した。
比較例2
実施例1おいて、3.の粉体層と支持層とからなるシートの作製において、活性エステル化CMデキストランの粉体0.4gと平均粒径25μmのリン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業社製)の粉体0.1gからなる混合配合物を、平均粒径25μmのリン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業社製)の粉体0.5gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、シートHを作製した。
作製したシートの家兎頚動脈モデルを用いた止血性能評価を行った。家兎(ジャパニーズホワイト、雄、日本医科学動物資材研究所社製)を、キシラジン(セラクタ−ル2%注射液、バイエル社製)5mg/kg及びケタミン(ケタミン(フジ)、フジタ薬品工業社製)35mg/kgの筋肉内投与により全身麻酔した後、頸部を切開し、左右の頸動脈を露出した。耳介静脈よりヘパリン溶液(ノボ・ノルディクス社製、1000 IU/mL)を200 IU/kg投与した後、約10分後に実験を開始した。頸動脈の分枝部分を避けて、中枢側および末梢側を動脈クレンメで挟む事により血流を遮断した。その間の血管壁を22G注射針(外径0.7mm、テルモ社製)で穿刺し、穿刺孔を作製した。穿刺孔の直上に作製したシート(1×1cm)を置き、クリップによりシートと動脈を挟みこむことにより圧迫を行った。1分間の圧迫時間終了後、クリップ、続いて動脈クレンメを外して、その後1分間、穿刺部からの出血の有無を確認した。止血が達成できたものは「○」、できていないものは「×」とした。圧迫に用いたクリップの接触面積当たりの荷重は200g/cm2 であった。
なお、シートの粉体層にアルカリ化剤を配合していないものについては、穿刺孔の直上に作製したシート(1×1cm)を置く直前に、穿刺孔付近にアルカリ化剤を溶解させた水溶液1mLを噴霧した。例えば、実施例2では、1Mリン酸水素二ナトリム水溶液1mLを噴霧した後に、シートBを穿刺孔直上に置いた。
その結果はつぎのとおりである。
実施例1−6:○、比較例1−2:×。
以上のことより、本発明の医療用処置材は、有効に機能することが明らかとなった。

Claims (12)

  1. 粉体層と支持層とからなるシート状の医療用処置材であって、前記粉体層が圧縮されている、医療用処置材。
  2. 前記粉体層の粉体の粒径が0.1〜500μmのパウダーである、請求項1に記載の医療用処置材。
  3. 前記粉体層の粉体量が1〜100mg/cmである、請求項1又は2に記載の医療用処置材。
  4. 前記粉体層の粉体が、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有しているポリマーを含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医療用処置材。
  5. 前記粉体層にアルカリ化剤を含有している、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医療用処置材。
  6. 前記支持層が、生体吸収性材料からなる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医療用処置材。
  7. 前記支持層の生体吸収性材料が、ポリエーテルエステル、酸化セルロース、ポリグリコール酸、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸およびこれからの複合物よりなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の医療用処置材。
  8. 前記支持層がフィルム、スポンジ、織布、不織布または粉体圧縮体のシート状であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項8に記載の医療用処置材。
  9. 活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有しているポリマーを含む粉体と、シート状の生体吸収性材料とを圧縮することからなる、粉体層と支持層とからなるシート状の医療用処置材の製造方法。
  10. 前記圧縮時の圧縮力が1〜100MPaであることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
  11. 組織の接着及び/又は閉鎖のために使用される請求項1乃至8のいずれか1項に記載の医療用処置材。
  12. 粉体層と支持層とからなるシート状の医療用処置材であって、前記粉体層が圧縮されており、前記粉体層の粉体が、活性水素含有基と反応しうる活性エステル基を有している非生体由来材料からなるポリマーを含む、シート状の医療用処置材。
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