本発明はレーザ光を走査して画像を形成する走査記録装置に関し、特にレーザ光の主走査方向における画像の濃度むらを解消して画像品質を向上した走査記録装置に関するものである。
レーザ光を変調しながら感光面に走査して画像形成を行う走査記録装置では、例えば、レーザ光源から出射したレーザ光を高速回転するポリゴンミラーで偏向し、さらに光学系を通して感光ドラムの感光面に照射することで感光ドラムの回転軸と平行な主走査方向への走査を行っている。また、感光ドラムを回転軸回りに回転することで主走査方向と垂直な副走査方向への走査を行っている。このような走査記録装置では、感光面に対してレーザ光の主走査方向に沿った露光むらが生じ易く、この露光むらによって描画した画像に濃度むらが生じる。すなわち、ポリゴンミラーにおけるレーザ光の反射角、すなわち偏向角の違いにより、ポリゴンミラーから感光面までの光路長が相違すること、あるいは偏向されたレーザ光を感光面に対して等速で走査させるためのfθレンズ等の光学系における屈折角の違いによる光路長の相違などが主な理由である。そのため、感光面において主走査方向の中央部は両端部よりも数パーセント以上にレーザ光強度が高くなり、このレーザ光強度のばらつきが露光むらとなっている。また、光学系の一部に透過率の異なる部分が存在するような場合に、当該部分を透過したレーザ光の光強度が他の部分に対して相違することによる露光むらも生じている。
このようなレーザ光の主走査方向に沿った露光むらを改善するための技術として、感光面に実際に投射される際のレーザ光強度を主走査方向に沿ってモニタし、このモニタ出力に基づいて露光するレーザ光強度や露光時間等の発光エネルギをフィードバック制御する技術が考えられる。例えば、主走査方向沿ってレーザ光強度を検出する手段を配設し、このレーザ光強度検出手段からの検出出力に基づいてレーザ光源(レーザダイオード)に印加する駆動電流の電流値や印加時間を制御して発光エネルギをリアルタイムで制御するというものである。
また、別の技術として、特許文献1に開示されている技術は、予め感光面における主走査方向のレーザ光強度分布を測定し、得られたレーザ光強度分布から露光むらを補正するための補正データを演算してメモリに記録しておく。そして、実際にレーザ光を走査する際に、記録した補正データに基づいてレーザ光の照射時間やレーザ光強度のいずれかを制御してレーザ光の発光エネルギを調整することにより感光面において主走査方向のレーザ光強度を均一化し、露光むらを解消するものである。
特開平8−146328公報
これらの従来の技術のうち、前者の技術は、レーザ光の主走査方向に沿ってレーザ光強度を検出するためのレーザ光強度検出手段が必要であり、このような検出手段を備えることは走査記録装置が大型化するとともに高価なものになる。また、レーザ光の発光エネルギをリアルタイムで制御する場合には極めて高速なフィードバック制御が要求されることになり、制御が難しくなる。
これに対し特許文献1の技術では、予め記録した補正データに基づいて発光エネルギを制御しているためこのような問題は生じないが、画像信号で変調されたレーザ光に対して発光エネルギを制御する技術であるため、制御が煩雑なものになるとともに、これに付随する問題が生じる。すなわち、通常の走査記録装置では画像信号に基づいてレーザ光をスイッチング制御して変調を行っているが、この場合にスイッチング時間を制御して発光エネルギを補正制御する場合には、1画素を露光する時間を複数の時間に分解して調整する必要があり、そのため画像信号のクロックを分解数倍にしなければならず、クロック周波数の限界で補正分解能が規定されてしまうとともに、クロック周波数の上昇による放射性ノイズ増加が問題になる。
また、特許文献1では発光エネルギの制御に際してレーザ光強度を補正する技術も提案されているが、描画を行う際のスイッチング時間の違いによってレーザ光強度の補正データの値も相違することになるため、補正データを一義的に決定することはできず、スイッチング時間とレーザ光強度のあらゆる組み合わせの補正データを用意する必要があり、補正データを記録するメモリに大容量のものが必要になるとともに、補正データを用いての補正制御も極めて困難なものになる。
本発明の目的は、このような従来の技術における問題を解消し、簡易な構成でしかも簡易な制御で主走査方向での露光むらを解消して高品質の画像記録を実現することを可能にした走査記録装置を提供するものである。
本発明は、それぞれ独立してレーザ光を発光する複数のレーザ光源を備え、このレーザ光源から出射したレーザ光を走査して画像の描画を行う走査記録装置において、複数のレーザ光源の一部で構成される描画用レーザ光源と、他の一部のレーザ光源で構成される補正用レーザ光源と、描画用レーザ光源及び補正用レーザ光源から出射されたレーザ光を感光面に順次主走査する走査手段と、描画用レーザ光源から出射されるレーザ光を描画データに基づいて変調する描画手段と、補正用レーザ光源から出射されるレーザ光の発光エネルギを補正データに基づいて補正する補正手段を備えており、描画用レーザ光源と補正用レーザ光源からの各レーザ光を同一感光面に対してそれぞれ重畳して露光するように構成したことを特徴とする。
本発明では、描画手段においてはこれまでと同様に画像信号に基づく変調を行って描画走査を行う一方で、補正手段においては予め設定された補正データにより補正した発光エネルギでの走査を行ない、これら描画走査と補正走査を同一感光面に重畳して露光を行ううので、補正手段におけるレーザ光の補正走査は描画する画像データとは関係なく一義的に設定された補正データに基づいた制御によって行うことができる。そのため、描画手段において発光エネルギを補正する必要がなくなり、描画用のレーザ光のスイッチング時間とレーザ光強度のあらゆる組み合わせの補正データを用意する必要はなく、補正データを記録する補正テーブルのメモリ容量は小容量のものでもよく、また補正の制御は一義的な制御として容易に行うことが可能になる。
本発明の走査記録装置では、補正データは走査手段の主走査方向に沿って生じる露光むらを予め測定した測定値に基づいて演算し、この露光むらを相殺するための補正データとする。ここで、補正手段は、補正データを記録した補正テーブルを備え、この補正テーブルから読み出した補正データに基づいて補正用レーザ光源の発光エネルギを補正する構成とする。この場合、補正手段は、補正用レーザ光源の光強度を主走査方向に沿って制御し、あるいは補正用レーザ光源の露光時間を主走査方向に沿って制御する構成とする。
また、本発明の走査記録装置では、複数のレーザ光源は複数の半導体レーザが副走査方向と等価な方向に配列された2n個(nは1以上の整数)の半導体レーザで構成され、うちn個は描画用レーザ光源として他のn個は補正用レーザ光源としてそれぞれ1対1で対応する構成とされる。
次に、本発明の実施例1を図面を参照して説明する。図1は本発明の走査記録装置として、レーザ光を感光ドラムに走査して画像を描画するレーザ走査装置に適用した実施例の概略構成を示す平面図である。レーザ走査装置は100は、レーザ光源としての半導体レーザ装置101と、前記半導体レーザ装置101で発光されたレーザ光(レーザビーム)のビーム形状を平行光束とするコリメータレンズ102と、レーザ光のビーム形状を整形するためのシリンダレンズ等からなる整形レンズ103と、レーザ光を偏向するための高速回転されるポリゴンミラー104と、偏向された各レーザ光を感光面において等速走査させるためのfθレンズ光学系105と、レーザ光が照射されて描画が行われる感光面を有する感光ドラム106が設けられる。ここで、本実施例では前記ポリゴンミラー104及びfθレンズ105を走査手段として定義する。また、前記レーザ走査装置100には前記ポリゴンミラー104で偏向されたレーザ光を受光して水平同期信号を生成するための同期用フォトダイオードTPDが配置されている。さらに、前記レーザ走査装置100には発光制御回路110が設けられており、外部制御回路200からの画像信号を含む各種制御信号を受けて前記半導体レーザ装置101の発光を制御するように構成されている。
前記発光制御回路110は、詳細は図3を参照して後述するように入力される画像信号の画像データに基づいて前記半導体レーザ装置101の発光をスイッチング制御して描画を行う画像走査回路(描画手段)120と、描画に際しての露光むらを補正するための補正走査回路(補正手段)130を備えている。この描画手段120により発光が制御された半導体レーザ装置101からのレーザ光はコリメータレンズ102によって平行光束とされ、整形レンズ103でビーム形状が整形されてポリゴンミラー104によって反射され、fθレンズ光学系105で等速状態で感光ドラム106の感光面に回転軸方向に主走査される。また、感光ドラム106の回転軸回りの回転により副走査される。これにより感光面に画像データに対応した露光が行われる。また、この走査に際しては、偏向されたレーザ光の一部は同期用フォトダイオードTPDで受光され、これに基づいて外部制御回路200において生成された水平同期信号によって走査タイミングがとられている。
前記半導体レーザ装置101は図2に模式的な構成を示すようにマルチビームレーザ装置として構成されており、ここでは説明を簡略化するために第1及び第2の2つのレーザダイオード(半導体レーザ)LD1,LD2が1つのモニタ用フォトダイオードMPDと共に一体的にパッケージされた構成とされている。前記第1レーザダイオードLD1は画像を描画するための描画用レーザダイオードとして構成され、前記第2レーザダイオードLD2はレーザ光の発光エネルギを補正するための補正用レーザダイオードとして構成されている。前記モニタ用フォトダイオードMPDは前記描画用レーザダイオードLD1及び前記補正用レーザダイオードLD2で発光したレーザ光のバックビームをいずれも受光してその発光強度を検出するようになっている。また、前記2つのレーザダイオードLD1,LD2は前述したレーザ光の副走査方向に向けて配列されており、前記感光ドラム106の感光面に対して副走査方向に並んで2本のレーザ光を同時に主走査するように構成されている。また、このとき、2本のレーザ光のピッチは画像を走査する際の副走査方向の走査ピッチに等しい間隔になるように設定されている。
図3は前記発光制御回路110のブロック図である。それぞれAPC機能を備える画像走査回路120及び補正走査回路130と、これら画像走査回路120と補正走査回路130を切り替えて前記モニタ用フォトダイオードMPDに切替接続するモニタ切替器140を備えている。前記発光制御回路110には、前記外部制御回路200からAPCループ切替信号SWapc、画像信号Video、画像クロックCLKv、補正クロックCLKc、第1及び第2の各サンプル・ホールド信号SH1,SH2、スイッチング信号SWTが入力される。これらの制御信号は、前述したように前記同期用フォトダイオードTPDでレーザ光を受光して得られる水平同期信号に基づいて生成されて前記発光制御回路110に入力されている。そして、前記モニタ切替器140は、前記APCループ切替信号SWapcにより前記モニタ用フォトダイオードMPDを画像走査回路120と補正走査回路130のいずれか一方に選択的に切り替え接続するようになっている。
前記画像走査回路120は、外部から入力される画像信号Videoの画像データを記録するとともに、画像クロックCLKvに基づいて画像データを読み出して画像データ信号を出力する画像メモリ部121と、この画像データ信号Videoと第1サンプル・ホールド信号SH1とが入力されて前記描画用レーザダイオードLD1を発光制御する描画用APC制御・LD駆動部122とを備えている。この描画用APC制御・LD駆動部122は、図4に示すように、駆動電圧Vdにより描画用レーザダイオードLD1の電流源Iを制御して当該描画用レーザダイオードLD1に印加する駆動電流Idに変換するためのV/I変換回路11と、この描画用レーザダイオードLD1で発光したレーザ光を検出するモニタ用フォトダイオードMPDの発光検出電流Irを発光検出電圧Vrに変換するI/V変換回路12と、変換された発光検出電圧Vrを基準電圧Vref1と比較し、当該発光検出電圧Vrと基準電圧Vref1との差に基づいて描画用レーザダイオードLD1の発光出力が一定となるようなAPC電圧Vapcを出力するアナログ演算器からなる比較回路13と、出力されたAPC電圧Vapcを第1サンプル・ホールド信号SH1によりサンプル・ホールドして前記した駆動電圧Vdとして出力するサンプル・ホールド(S/H)回路14とを備えている。また、前記V/I変換回路11は前記画像データ信号によりオン・オフ制御され、オンされたときに前記駆動電流Idを描画用レーザダイオードLD1に供給する。
前記補正走査回路130は、予め測定した補正データを記録するとともに、補正クロックCLKcに基づいて記録した補正データの読み出しが可能なメモリからなる補正テーブル131と、読み出した補正データをD/A変換して基準電圧Vref2に変換するD/A変換器132と、前記D/A変換器132からの基準電圧Vref2で動作する補正用APC制御・LD駆動部133とを備えている。この補正用APC制御・LD駆動部133は図4に示した前記描画用APC制御・LD駆動部122と同様な構成であるが、前記補正用レーザダイオードLD2を駆動するように接続されるとともに、サンプル・ホールド回路14は第2サンプル・ホールド信号SH2により動作され、かつ基準電圧としてVref2が用いられるようになっている。また、前記V/I変換回路11はスイッチング信号SWTによってオン・オフ制御され、オンされたときに駆動電流Idを補正用レーザダイオードLD2に供給する。
以上の構成の発光制御回路110の動作を図5のタイミング図を参照して説明する。主走査されるレーザ光を同期用フォトダイオードTPDで受光し、この受光に基づいて外部制御回路200において生成される図外の水平同期信号に同期してAPCループ切替信号SWapcがHレベルになると、モニタ切替器140はモニタ用フォトダイオードMPDを画像走査回路120に切り替える。また、これと同時に第1サンプル・ホールド信号SH1はHレベルとなりサンプル動作を行う。そのため、モニタ用フォトダイオードMPDで描画用レーザダイオードLD1のレーザ光を受光して得られる発光検出電流IrはI/V変換回路12によって発光検出電圧Vrに変換され、この発光検出電圧Vrは比較回路13において基準電圧Vref1と比較され、比較回路13からは前記描画用レーザダイオードLD1の発光出力が基準電圧Vrer1に対応した出力とするようなAPC電圧Vapcが生成されて出力される。そして、このAPC電圧Vapcはサンプル・ホールド回路14においてホールドされる。その後、第1サンプル・ホールド信号SH1がLレベルに変化すると、水平同期信号から所定のタイミングでレーザ光がポリゴンミラー104によって感光ドラム106の感光面に対して主走査を開始するのと同時に、画像データ信号に基づいてV/I変換回路11がオン,オフ制御されるため、ホールドされたAPC電圧Vapcをオンのタイミングで駆動電流Idとして描画用レーザダイオードLD1に供給する。これにより、描画用レーザダイオードLD1は画像データ信号に基づき基準電圧Vref1に追従してAPC制御された発光出力で発光され、レーザ走査装置100での前記した偏向動作によって感光ドラム106に描画を実行することになる。
一方、前記APCループ切替信号SWapcがLレベルに変化されるとモニタ切替器140はモニタ用フォトダイオードMPDを補正走査回路130に切り替える。また、これと同時に第2サンプル・ホールド信号SH2はHレベルに変化する。そのため、モニタ用フォトダイオードMPDでレーザ光を受光して得られる発光検出電流IrはI/V変換回路12によって発光検出電圧Vrに変換され、この発光検出電圧Vrは比較回路13において基準電圧Vref2と比較される。このとき、基準電圧Vref2の補正データは補正クロックCLKcに同期して補正テーブル131から読み出され、D/A変換器132において補正データに対応した基準電圧となる。例えば、図6(a)に示すように、レーザ走査装置100の感光ドラム106の感光面において、ポリゴンミラー104やfθレンズ105等の光学系での種々の要因によって主走査方向の中央部のレーザ光強度が高く、両端部が低くなるような分布特性の場合には、基準電圧Vref2はこのレーザ光強度の分布に対応したものとなり、図6(b)に示すように、主走査方向の中央部の基準電圧は両端部よりも低い特性となる。そのため、比較回路13からは前記補正用レーザダイオードLD2の発光出力が基準電圧Vrer2に対応した出力とするようなAPC電圧Vapcが生成されて出力される。また、前記APCループ切替信号SWapcがLレベルを出力している間はスイッチング信号SWTは連続して出力されており、V/I変換回路11からは駆動電流Idを常時補正用レーザダイオードLD2に出力している。この場合には、前述のように主走査方向の中央部のAPC電圧は低く、両端部は高くなる。そして、このAPC電圧Vapcはサンプル・ホールド回路14において描画を行っている1主走査の間サンプル状態を維持してAPC電圧Vapcを駆動電流Idに変換して補正用レーザダイオードLD2に供給する。そのため、補正用レーザダイオードLD2から発光されるレーザ光の強度は、主走査の中央部でレーザ光強度が低く、両端部で高くなる。
そして、図7に感光面でのレーザ光の露光状態を模式的に示すように、描画用レーザダイオードと補正用レーザダイオードの各レーザ光LB1,LB2は感光ドラム106の感光面において副走査方向に1ピッチずれているため、描画用のレーザ光を副走査方向に1ピッチずつずらしながらの主走査を行うことにより、感光面に描画される画素はそれぞれ補正用レーザダイオードからのレーザ光と、描画用レーザダイオードからのレーザ光が重ねて露光されることになり、各画素における合計の露光量、すなわち発光エネルギは両ダイオードのレーザ強度を加えたものとなる。ここでは、図7(a)のように1回目の主走査のときには、主走査ラインML1には補正用レーザダイオードLD2のレーザ光LB2のみが走査され、図7(b)のように2回目の主走査のときには、主走査ラインML1に描画用レーザダイオードLD1のレーザ光LB1による描画が行われ、このとき主走査ラインML2は補正用レーザダイオードLD2のレーザ光LB2のみが走査される。続いて図7(c)のように3回目の主走査のときには、主走査ラインML2に描画用レーザダイオードLD1のレーザ光LB1による描画が行われ、このとき主走査ラインML3は補正用レーザダイオードLD2のレーザ光LB2のみが走査される。結局、各主走査ラインML1,ML2はそれぞれ描画用レーザ光LB1と、副走査方向に1走査ライン分先行する補正用レーザ光LB2が重畳して走査されることになる。そのため、前述のように補正用レーザダイオードLD2の補正用レーザ光LB2で走査されるレーザ光の強度分布を図6(b)に示したような感光ドラム106の感光面での主走査方向の分布に対応しておけば、図6(c)に示すように、主走査方向の中央部と両端部で均一なレーザ光強度で露光され、露光むらが解消されることになる。
このように、実施例1の発光制御回路110においては、描画走査回路120はこれまでのレーザ走査装置と同様に描画用レーザダイオードLD1はAPC制御を行って画像データにより画像を描画するだけでよい。そして、当該描画に際して生じる主走査方向の露光むらについては、予め設定された補正データにより補正した光強度で補正用レーザダイオードLD2のレーザ光を感光面に主走査することにより補正できる。そのため、補正用のレーザ光の走査は描画する画像データとは関係なく一義的に設定された補正データに基づいた制御によって行うことができる。したがって、スイッチング時間とレーザ光強度のあらゆる組み合わせの補正データを用意する必要はなく、補正データを記録する補正テーブルのメモリ容量は小容量のものでもよく、また補正の制御は一義的な制御として容易に行うことが可能になる。さらに、主走査方向のレーザ強度分布の変化率は、画像データの周期(周波数)に比較して十分に長く緩やかな変化であるため、補正用レーザダイオードLD2で感光面に主走査する際に補正データを読み出すタイミング、すなわち補正クロックCLKcは、描画用レーザダイオードLD1の画像データ信号を読み出す画像クロックCLKvに比較して十分に遅くすることができ、クロック周波数の上昇による放射性ノイズを低減することが可能となる。
図8は本発明を図1のレーザ走査装置に適用したときの発光制御回路110の実施例2のブロック回路図であり、実施例1と等価な部分には同一符号を付してある。発光制御回路110が描画走査回路120と補正走査回路130とで構成されていることは実施例1と同様であり、特に描画走査回路120は実施例1の構成と同一である。一方、補正走査回路130は、ここではレーザ光を時間制御する構成であり、実施例1と同様の補正データを記録した補正テーブル131と、この補正テーブル131から読み出された補正データに基づいて画素の露光時間、すなわちパルス幅を制御するPWM変調器134を備え、このPWM変調器134からのPWM信号に基づいてAPC制御・LD駆動部133のスイッチング制御を行っている。なお、このAPC制御・LD駆動部133におけるスイッチング動作は図4に示したAPC制御・LD駆動部122での動作と同じである。
この実施例2では、図9にタイミング図を示すように、補正走査回路130は補正用レーザダイオードLD2の発光時間を制御する。すなわち、水平同期信号に同期するAPCループ切替信号SWapcがLレベルを出力するとモニタ切替器140はモニタ用フォトダイオードMPDを補正走査回路130に切り替える。また、これと同時に第2サンプル・ホールド回路SH2はHレベルに変化する。そのため、モニタ用フォトダイオードMPDでレーザ光を受光して得られる発光検出電流IrはI/V変換回路12によって発光検出電圧Vrに変換され、この発光検出電圧Vrは比較回路13において基準電圧Vref2と比較される。そのため、比較回路13からは前記レーザダイオードLD2の発光出力が基準電圧Vref2に対応した出力とするようなAPC電圧Vapcが生成されて出力される。そして、補正クロックCLKcに同期して補正テーブル131から読み出された補正データに対応してPWM変調器134はスイッチング時間を制御し、1画素に対応するパルス幅を制御する。例えば、図6(a)に示した実施例1と同様に感光ドラム106の感光面において主走査方向の中央部のレーザ光強度が高く両端部が低い分布の場合には、パルス幅はこのレーザ光強度の分布に相反するものとなり、図6(b)のレーザ光強度をパルス幅に対応させた図9に示すように、主走査方向の中央部のパルス幅は両端部よりも小さくなる。そのため、補正用レーザダイオードLD2から発光されて感光面に照射されるレーザ光の露光量は、主走査の中央部で小さく、両端部で大きくなる。
そして、補正用レーザダイオードLD2と描画用レーザダイオードLD1の各レーザ光は感光ドラム106の感光面において副走査方向に1ピッチずれているため、描画を副走査方向に1ピッチずつずらして主走査を行うことにより、感光面に描画される画素はそれぞれ補正用レーザダイオードからのレーザ光と、描画用レーザダイオードからのレーザ光が重ねて露光されることになり、図6(c)に示したように各画素における合計の露光量は両ダイオードによる露光量を加えたものとなる。そのため、補正用レーザダイオードLD2で走査されるレーザ光の露光量を感光ドラム106の感光面での主走査方向の分布に対応しておけば、主走査方向の中央部と両端部で均一な露光量で露光され、露光むらが解消されることになる。
ここで、実施例2では、図7に示した補正用レーザダイオードLD2のレーザ光LB2は、補正を行う際にドット毎にPWM変調によって露光量が制御されるため、描画用レーザダイオードLD1のレーザ光LB1はレーザ光LB2の各ドットに重なった状態で露光されることが好ましい。そのために補正クロックCLKcは描画クロックCLKvと同じ周波数で同期したクロックとして構成されており、図9では補正クロックCLKcが画像クロックにより描画される画像データVideoの最小周期に一致した周波数で生成されている。すなわち、図9の下側に補正クロックCLKcの一部を拡大したタイミング波形を示すように、補正クロックCLKcの1周期に対応する補正用レーザダイオードLD2のレーザ光LB2がドット単位でPWM変調された露光量で露光が行われており、各ドットにそれぞれ重なるように画像データのLD発光が行われている。
このように、描画用レーザダイオードLD1はこれまでのレーザ走査装置と同様にAPC制御を行って画像データにより画像を描画するだけでよい。レーザ走査装置における主走査方向の露光むらについては、補正用レーザダイオードLD2を感光面に主走査する際に、予め設定された補正データにより補正したパルス幅制御で走査を行うため、補正データでのレーザ光の走査制御は描画する画像データとは関係なく一義的に行うことができる。したがって、スイッチング時間とパルス幅のあらゆる組み合わせの補正データを用意する必要はなく、補正データを記録する補正テーブルは小容量のものでよく、また補正の制御を容易に行うことが可能になる。さらに、主走査方向のレーザ強度分布の変化率は、が粗をデータの周期(周波数)に比例して十分に長く緩やかな変化であるため、補正用レーザダイオードLD2の発光時間を制御するPWM変調器134は、デューティ比の異なる補正クロックCLKcを複数用意して、それらを切り替えることによって構成することができる。したがって、必要以上にクロック周波数を上げる必要がなく、クロック周波数の上昇による放射性ノイズを低減することが可能になる。
ここで、本発明における描画用レーザダイオードと補正用レーザダイオードによる各露光は感光面の同一画素に対してそれぞれ行うことが可能であれば、補正用レーザダイオードによる補正露光の走査は描画用レーザダイオードによる描画走査の前あるいは後のいずれで行なうようにしてもよい。
前記実施例1,2は説明を簡略化するために2つのレーザダイオードで構成されるマルチビーム半導体レーザ装置を用いた場合を説明したが、4つ以上のレーザダイオードで構成されるマルチビーム半導体レーザ装置においても本発明を同様に適用することが可能である。一般的には2n個(nは1以上の整数)のレーザダイオードで構成されるマルチビーム半導体レーザ装置の場合には、n個のレーザダイオードを描画用に他のn個のレーザダイオードを補正用に用いる。このような場合、副走査方向の走査ピッチについてはこれらレーザダイオードの配列状態によって相違するものとなる。例えば、2つの描画用レーザダイオードと2つの補正用レーザダイオードをこの順序に配列した場合には、副走査方向に2ピッチ単位で送りながら主走査を行うようにすればよい。
また、複数個の描画用レーザダイオードに対して、1個または描画用レーザダイオードよりも少ない数の補正用レーザダイオードを用いた構成としてもよい。例えば、図10に示すように、2個の描画用レーザダイオードLD11,LD12と、1個の補正用レーザダイオードLD21を用いる場合には、補正用レーザダイオードLD21からのレーザ光をシリンダレンズ107等によって副走査方向にレーザ光幅をほぼ2倍に拡大し、2個の描画用レーザダイオードLD11,LD12でそれぞれ描画走査を行う2本の主走査ラインにわたる領域に対して一括して同時に補正露光の走査を行うようにしてもよい。
本発明は実施例で説明したようなレーザ走査装置に限定されるものではなく、レーザ光を主走査する際に、主走査方向に定性的な露光むらが生じるレーザ走査装置、ないしはレーザ光を走査して情報の記録を行う走査記録装置であれば本発明を同様に適用することが可能である。
本発明を適用したレーザ走査装置の概略構成の平面図である。
半導体レーザ装置の模式的な構成図である。
実施例1の発光制御回路のブロック回路図である。
APC制御・LD駆動回路のブロック回路図である。
実施例1の動作を説明するためのタイミング波形図である。
感光面における光強度補正を説明するための図である。
感光面における補正動作を説明するためのレーザ光走査の模式図である。
実施例2の発光制御回路のブロック回路図である。
実施例2の動作を説明するためのタイミング波形図である。
変形例を説明するための模式構成図である。
符号の説明
LD1 第1レーザダイオード(描画用レーザダイオード)
LD2 第2レーザダイオード(補正用レーザダイオード)
MPD モニタ用フォトダイオード
TPD 同期用フォトダイオード
10 レーザ駆動回路
11 V/I変換回路
12 I/V変換回路
13 比較回路
14 サンプル・ホールド回路
100 レーザ走査ユニット
101 光源部
104 ポリゴンミラー
105 fθレンズ光学系
106 感光ドラム
110 発光制御回路
120 画像走査回路
121 画像メモリ部
122 APC制御・LD駆動部
130 補正走査回路
131 補正テーブル
132 D/A変換回路
133 APC制御・LD駆動部
134 PWM回路
200 外部制御装置