ところが、前記構成の位置計測装置を備えたステージ装置では、前記の温度変化に伴う移動体と反射鏡の伸縮に伴って、それら移動体と反射鏡との締結部分で微小な位置ずれを生じることがある。このような位置ずれが生じると、例えば、ステージ装置が、ある温度から所定の温度に暖められた後、元の温度に冷やされた時に、温度変化の前後において移動体と反射鏡との相対位置が微妙に変化する現象、いわゆる「ヒステリシス」が生じることになる。
このようなヒステリシスは、干渉計における載置物の位置計測の精度低下を引き起こす。このようなヒステリシスは、例えば移動体の移動に伴う加減速、ステージ装置を露光装置等の装置に装着する際の衝撃等によって、引き起こされることもある。また、何らかの要因で移動体と反射鏡との間に歪みが蓄積されていたりすると、その歪みが長期間にわたって徐々に解放され、移動体と反射鏡との相対位置が変化して、ヒステリシスを生じることもある。
このような移動体から反射鏡への歪みの伝達は、移動体と反射鏡とを固定するねじの締め付け力を小さくすることにより緩和される。しかしながら、締め付け力を小さくすると、前述のヒステリシスが起こりやすくなるという問題を生じることになる。
また、移動体と反射鏡とを同じ材料で形成して熱膨張係数を揃えたとしても、移動体は載置面を大きくするため大容量となる。一方、反射鏡は、移動体の素速い移動を確保するため、小容量とすることが望ましい。このため、移動体と反射鏡との間に熱容量の差が生じる。そして、例えばステージ装置の周囲の温度が上昇した時には、小容量の反射鏡が先に暖まめられて膨張することになり、反射鏡に曲がりが生じることがある。
一方、移動体の表面に直接、反射面を形成すれば、前述のようなヒステリシスが発生することはない。しかしながら、この場合には、周囲の温度変化、移動体の加減速等による移動体の変形が、反射面にそのまま反映されることになり、干渉計の位置計測精度を高く保持することは難しい。
ここで、載置物の位置計測精度の要求が厳しい露光装置では、前述のヒステリシス、移動体から反射鏡への変形の伝達、反射鏡の曲がり等の反射鏡の位置ずれや想定外の変形は、その程度が微小であったとしても、無視できないものとなりやすい。特に、半導体素子製造用の露光装置では、1枚のウエハ上に複数の異なるパターンを重ね合わせて焼き付けるため、前記位置ずれや想定外の変形は重ね合わせ精度の低下を招き、半導体素子の歩留まりを低下させることになる。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的としては、移動体の位置を精度よく計測することのできるステージ装置を提供することにある。また、その他の目的としては、微細なパターンであっても精度よく露光することのできる露光装置を提供することにある。さらに、その上の目的としては、高集積度のデバイスを歩留まりよく製造可能なデバイスの製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するために、本願請求項1に記載の発明は、載置物を載置するとともに、少なくとも一方向に移動可能な移動体と、その移動体に取着され、反射面を備える反射部材と、前記反射面に対して所定の計測光を投射するとともに、前記反射面で反射された計測光を受光して前記移動体の位置を計測する位置計測装置とを有するステージ装置において、前記移動体に前記反射部材を取り付けるとともに、前記移動体の移動に起因して発生する変形を低減するフレクシャ機構を備えることを特徴とするものである。
この請求項1に記載の発明では、移動体の移動に起因して移動体に変形が発生したとしても、その変形がフレクシャ機構により低減されるため、反射部材の変形を小さくすることができる。このため、位置計測装置により移動体の位置を精度よく計測することができる。
また、本願請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記フレクシャ機構は、前記反射部材と前記移動体との間に介在され、両端が回転自在に形成された6本のロッドを有することを特徴とするものである。
この請求項2に記載の発明では、前記請求項1に記載の発明の作用に加えて、反射部材を、移動体に対して6つの動きを互いに矛盾することない状態で、いわゆるキネマティックに保持することができる。このため、移動体が任意の方向に変形したとしても、その変形が反射部材に伝達されることが抑制され、反射部材に想定外の変形が生じることを回避することができる。
また、本願請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の発明において、前記ロッドは、前記反射部材に対して回転可能に連結する第1のピボット部と、前記移動体に対して回転可能に連結する第2のピボット部と、両ピボット部の間に配置される剛体部とを有することを特徴とするものである。
また、本願請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の発明において、前記フレクシャ機構は、さらに前記反射部材に取り付けられる第1の取付部と、前記移動体に取り付けられる第2の取付部とを有し、前記第1のピボット部は、前記第1の取付部を介して前記反射部材に連結し、前記第2のピボット部は、前記第2の取付部を介して前記移動体に連結することを特徴とするものである。
これら請求項3及び請求項4に記載の発明では、前記請求項2に記載の発明の作用に加えて、簡単な構成で、反射部材の移動体に対するキネマティックな保持を実現することができる。
また、本願請求項5に記載の発明は、前記請求項4に記載の発明において、前記第1の取付部と前記第2の取付部と前記ロッドとは、同一の材料で一体的に構成されることを特徴とするものである。
この請求項5に記載の発明では、前記請求項4に記載の発明の作用に加えて、部品点数の削減を図ることができるとともに、フレクシャ機構を高い再現性をもって動作させることができる。
また、本願請求項6に記載の発明は、前記請求項4または請求項5に記載の発明において、前記反射面は矩形状に形成され、前記フレクシャ機構は、前記ロッドの長さ方向が前記反射面における長手方向とほぼ平行に配列された第1フレクシャ部と、前記ロッドの長さ方向が前記反射面と交差する方向とほぼ平行に配列された第2フレクシャ部と、前記ロッドの長さ方向が前記反射面における短手方向とほぼ平行に配列された第3フレクシャ部とを備えることを特徴とするものである。
また、本願請求項7に記載の発明は、前記請求項6に記載の発明において、前記第1フレクシャ部は1つのロッドを有し、前記第2フレクシャ部は3つのロッドを有し、前記第3フレクシャ部は2つのロッドを有することを特徴とするものである。
これら請求項6及び請求項7に記載の発明では、前記請求項4または請求項5に記載の発明の作用に加えて、矩形状の反射面を有する反射部材を、移動体に対し、反射面の長手方向、反射面と交差する方向及び反射面の短手方向の各方向に、所定の剛性を確保しつつ、キネマティックに保持することができる。
また、本願請求項8に記載の発明は、前記請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載の発明において、前記反射部材は、前記移動体の移動に伴って前記反射面に伝達される振動を吸収する振動吸収機構を有することを特徴とするものである。
この請求項6に記載の発明では、前記請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、反射面に伝達される振動が吸収されるため、反射面における計測光の反射が不安定になることがなく、移動体の位置を一層精度よく計測することができる。
また、本願請求項9に記載の発明は、前記請求項8に記載の発明において、前記振動吸収機構が、ダイナミックダンパからなることを特徴とするものである。
この請求項9に記載の発明では、前記請求項8に記載の発明の作用に加えて、ダイナミックダンパの固有振動数を、反射部材の固有振動を打ち消すに設定することで、ステージの制御を容易に行うことが可能となる。
また、本願請求項10に記載の発明は、前記請求項9に記載の発明において、前記ダイナミックダンパが、前記反射部材に取り付けられる取付部と、所定の質量を有する質量部と、それら取付部と質量部を連結する弾性変形可能な弾性連結部とからなり、前記取付部と前記質量部と前記弾性連結部とを一体の物質で形成したことを特徴とするものである。
この請求項10に記載の発明では、前記請求項9に記載の発明の作用に加えて、部品点数の削減を図ることができる。
また、請求項11に記載の発明は、前記請求項10に記載の発明において、前記質量部と、前記弾性連結部及び前記取付部及び前記反射部材の少なくとも1つとの間に、前記質量部の振動を減衰させるダンピング材を介装したことを特徴とするものである。
この請求項11に記載の発明では、前記請求項10に記載の発明の作用に加えて、反射部材の振動を打ち消すための質量部の固有振動数の範囲を広げることができて、ダイナミックダンパにおける振動吸収の自由度を高めることができる。
また、本願請求項12に記載の発明は、前記請求項8〜請求項11のうちいずれか一項に記載の発明において、前記振動吸収機構は、前記移動体及び前記反射部材の少なくとも一方に振動が生じたときに、前記移動体と前記反射部材との間に微小な摩擦力を生じさせる摩擦材を有することを特徴とするものである。
この請求項12に記載の発明では、簡単な構成で、前記請求項8〜請求項11のうちいずれか一項に記載の発明の作用を実現することができる。
また、本願請求項13に記載の発明は、マスク上に形成されたパターンの像をステージ装置上に載置された基板上に転写する露光装置において、前記ステージ装置が、請求項1〜請求項12のうちいずれか一項に記載のステージ装置からなることを特徴とするものである。
この請求項13に記載の発明では、前記請求項1〜請求項12のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、基板の位置を精度よく計測することができて、基板の位置計測に伴う収差の発生を抑制することができる。また、1枚の基板上に複数の異なるパターンを重ね合わせて露光する際において、各パターンを精度よく重ね合わせることができる。このため、微細なパターンを有する高集積度のデバイスであっても精度よく露光することができ、高集積度のデバイスを歩留まりよく製造することができる。
また、本願請求項14に記載の発明は、リソグラフィ工程を含むデバイスの製造方法において、前記リソグラフィ工程で、請求項13に記載の露光装置を用いて露光を行うことを特徴とするものである。
この請求項14に記載の発明では、高集積度のデバイスを歩留まりよく製造することができる。
次に、前記各請求項に記載の発明にさらに含まれる技術的思想について、それらの作用とともに以下に記載する。
(1) 前記フレクシャ機構は、前記反射部材に対する前記移動体の加減速の影響を低減することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
従って、この(1)に記載の発明によれば、移動体の加減速に伴う反射部材の位置ずれや変形を抑制することができ、移動体の位置を精度よく計測することができるという作用が得られる。
(2) 前記フレクシャ機構は、前記移動体の移動に伴って移動体に生じる微小変形の前記反射部材への伝達を抑制する変形抑制機構を有することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
従って、この(2)に記載の発明によれば、移動体の移動に伴う移動体の変形が反射部材に伝達されることが抑制され、反射部材の位置ずれや変形を低減することができるという作用が得られる。
(3) 前記第2フレクシャ部を、前記反射部材の反射面とは反対側の面における短手方向の両端の近傍に配置したことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のステージ装置。
従って、この(3)に記載の発明によれば、矩形状の反射部材を支持する上で、その反射部材の変位を小さくすることができるという作用が得られる。
(4) 前記反射部材は、前記第2フレクシャ部の少なくとも1つのロッドを取着するために、前記反射面とは反対側の面から外側に突出する凸部を備えたことを特徴とする前記(3)に記載のステージ装置。
従って、この(4)に記載の発明によれば、第2フレクシャ部における各ロッドの反射部材の短手方向における間隔を拡大することができて、反射部材の変位をさらに小さくすることができるという作用が得られる。
(5) 前記膨出部を、前記反射面とは反対側の面におけるほぼ中央に設けたことを特徴とする請求項(4)に記載のステージ装置。
(6) 前記第2フレクシャ部を複数設けたとき、それら第2フレクシャ部を、前記反射部材にその反射面の短手方向に沿って所定の加速度を加えたときに前記反射面の変形がほぼ最小になる位置に配置したことを特徴とする請求項6、請求項7、前記(3)〜(5)のうちいずれか一項に記載のステージ装置。
従って、これら(5)及び(6)に記載の発明によれば、第2フレクシャ部の各ロッドを、例えば反射部材の中央の1つを中心に、他のロッドをその中央と反射部材の長手方向の両端との間でロッドの両側の変位がバランスする位置に配置することができる。これにより、反射部材の変形を、可及的に小さくすることができるという作用が得られる。
(7) 前記第3フレクシャ部を複数設けたとき、それら第3フレクシャ部を、前記反射部材にその反射面の短手方向に沿って所定の加速度を加えたときに前記反射面の変形がほぼ最小になる位置に配置したことを特徴とする請求項6、請求項7、前記(3)〜(6)のうちいずれか一項に記載のステージ装置。
従って、この(7)に記載の発明によれば、第3フレクシャ部の各ロッドを、反射面の短手方向において、各ロッド間及び最も外側のロッドの外側における変位がバランスする位置に配置することができる。これにより、反射部材の変形を、可及的に小さくすることができるという効果が得られる。
(8) 前記ダイナミックダンパを、前記フレクシャ機構の一部で構成し、前記反射部材と前記移動体との間に介在されるロッドと、そのロッドの長さ方向が前記反射面と交差する方向とほぼ平行に配列された第2フレクシャ部を取着するために、前記反射面の長手方向のほぼ中央に突出された凸部内に収容したことを特徴とする請求項9〜請求項11のうちいずれか一項に記載のステージ装置。
従って、この(8)に記載の発明によれば、前記(4)と同様の作用が得られるとともに、ダイナミックダンパが凸部内に収容されるため、ステージ装置の大型化を抑制することができるという効果が得られる。
(9) 前記摩擦材は、前記フレクシャ機構の一部を構成し、前記反射部材と前記移動体との間に介在されるロッドと、そのロッドの長さ方向が前記反射面の短手方向とほぼ平行に配列された第3フレクシャ部において前記移動体に取着される移動体取着部と、前記反射部材に取着される反射部材取着部及び前記移動体の少なくとも一方との一方に固定され、他方に摺接される板状体からなることを特徴とする請求項12に記載のステージ装置。
従って、この(9)に記載の発明によれば、ステージ装置の大型化を回避しつつ、移動体または反射部材に、あるいはその両方に生じた振動を減衰させることができるという効果が得られる。
以上、詳述したように、本発明によれば、移動体の位置を精度よく計測することのできるステージ装置を提供することができる。また、本発明によれば、微細なパターンであっても精度よく露光することのできる露光装置を提供することができる。さらに、本発明によれば、高集積度のデバイスを歩留まりよく製造可能なデバイスの製造方法を提供することができる。
(第1実施形態)
以下に、本発明の露光装置及びステージ装置を、半導体素子製造用の露光装置及びその露光装置に装備されるウエハステージに具体化した第1実施形態について図1〜図10に基づいて説明する。
まず、露光装置の概略構成について説明する。
図1は、露光装置の概略構成図であり、図1に示すように、露光光源21は、露光光ELとして、例えばKrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、F2レーザ光等のパルス光を出射する。露光光ELはオプティカルインテグレータとして、例えば多数のレンズエレメントからなるフライアイレンズ22に入射する。そのフライアイレンズ22の出射面上には、それぞれのレンズエレメントに対応した多数の2次光源像が形成される。なお、オプティカルインテグレータとしては、ロッドレンズであってもよい。フライアイレンズ22から射出した露光光ELは、リレーレンズ23a、23b、レチクルブラインド24、ミラー25、コンデンサレンズ26を介して半導体素子等の回路パターン等が描かれ、レチクルステージRST上に載置されたマスクとしてのレチクルRに入射する。
ここで、フライアイレンズ22、リレーレンズ23a、23b、ミラー25、コンデンサレンズ26の合成系は、2次光源像をレチクルR上で重畳させ、レチクルRを均一な照度で照明する照明光学系27を構成している。レチクルブラインド24は、その遮光面がレチクルRのパターン領域と共役な関係をなすように配置されている。そのレチクルブラインド24は、レチクルブラインド駆動部28により開閉可能な複数枚の可動遮光板(例えば2枚のL字型の可動遮光板)からなっている。そして、それらの可動遮光板により形成される開口部の大きさ(スリット幅等)を調整することにより、レチクルRを照明する照明領域を任意に設定するようになっている。
レチクルステージRSTは、リニアモータ等で構成されたレチクルステージ駆動部29により所定の方向(走査方向(Y方向))に移動可能となっている。なお、図1においては、投影光学系PLの光軸AXに沿う方向をZ方向、投影光学系PLの光軸及び紙面と直交する方向をX方向、投影光学系PLの光軸に直交し紙面に沿う方向をY方向とする。また、レチクルステージRSTは、露光光ELの光軸AXに垂直な平面内において、走査方向と垂直なX方向に微動可能に、かつ光軸AX周りに微小回転可能にレチクルRを保持している。
レチクルステージRSTの近傍には、干渉計30が配設されている。この干渉計30は、レチクルステージRSTの端部に固定された反射鏡31の反射面32に向かって計測光としてレーザビームを投射する。そして、干渉計30は、反射鏡31の反射面32で反射される計測光を受光して、レチクルステージRSTの走査方向の位置を常時検出するようになっている。
この干渉計30で検出されたレチクルステージRSTの位置情報は、レチクルステージ制御部33に送られる。レチクルステージ制御部33は、露光装置全体の動作を制御する主制御系34の制御の下で、そのレチクルステージRSTの位置情報に基づいてレチクルステージ駆動部29を制御し、レチクルステージRSTを移動させる。
レチクルRを通過した露光光ELは、例えば両側テレセントリックな投影光学系PLに入射する。投影光学系PLは、複数のレンズエレメントLEからなり、そのレチクルR上の回路パターンを例えば1/5あるいは1/4に縮小した投影像を、表面に露光光ELに対して感光性を有するフォトレジストが塗布された載置物及び基板としてのウエハW上に形成する。
このウエハWは、ステージ装置の一部を構成する移動体としてのウエハステージWST上にZステージ36及びウエハホルダ37を介して保持されている。Zステージ36は、モータ等からなるZステージ駆動部38により、投影光学系PLの最適結像面に対し、任意方向に傾斜可能でかつ投影光学系PLの光軸AX方向(Z方向)に微動可能になっている。また、ウエハステージWSTは、モータ等のウエハステージ駆動部39により、走査方向(Y方向)の移動のみならず、ウエハW上に区画された複数のショット領域に対し任意に移動できるように走査方向に垂直な方向(X方向)にも移動可能に構成されている。これにより、ウエハW上の各ショット領域毎に走査露光を繰り返すステップ・アンド・スキャン動作が可能になっている。
ウエハステージWSTの近傍には、ステージ装置の一部を構成する位置計測装置としての干渉計40が配設されている。この干渉計40は、ウエハステージWSTの端部に固定された反射部材としての反射鏡41の反射面42に向かって計測光としてレーザビームを投射する。そして、干渉計40は、反射鏡41の反射面42で反射された計測光を受光し、ウエハステージWSTのX方向及びY方向の位置を常時検出するようになっている。
この干渉計40で検出されたウエハステージWSTの位置情報(または速度情報)は、ウエハステージ制御部43に送られる。そして、ウエハステージ制御部43は、主制御系34の制御の下で、このウエハステージWSTの位置情報(または速度情報)に基づいてウエハステージ駆動部39を制御する。
ここで、ステップ・アンド・スキャン方式でレチクルR上の回路パターンをウエハW上のショット領域に走査露光する場合、レチクルR上の照明領域が、レチクルブラインド24で長方形(スリット)状に整形される。この照明領域は、レチクルR側の走査方向(+Y方向)に対して直交する方向に長手方向を有するものとなっている。そして、レチクルRを露光時に所定の速度Vrで走査することにより、レチクルR上の回路パターンをスリット状の照明領域で一端側から他端側に向かって順次照明する。これにより、照明領域内におけるレチクルR上の回路パターンの像が、投影光学系PLを介してウエハW上に投影され、投影領域が形成される。
ここで、ウエハWはレチクルRとは倒立結像関係にあるため、レチクルRの走査方向とは反対方向(−Y方向)へ、レチクルRの走査に同期して所定の速度Vwで走査される。これにより、ウエハWのショット領域の全面が露光可能となる。走査速度の比Vw/Vrは正確に投影光学系PLの縮小倍率に応じたものになっており、レチクルR上の回路パターンの像がウエハW上の各ショット領域上に正確に縮小転写される。
次に、ウエハステージWSTについて、反射鏡41の構成を中心に説明する。
図2は、ウエハステージWSTの斜視図であり、この図2に示すように、ウエハステージWSTの互いに交差する一対の側面には、そのY方向(走査方向)の位置を計測するための第1反射鏡41aと、X方向(走査方向に交差する方向)の位置を計測するための第2反射鏡41bとが取り付けられている。これら第1及び第2反射鏡41a、41bは、ウエハステージWSTの側面のほぼ全体を覆うように形成されており、その表面には矩形状をなす反射面42が形成されている。そして、第1及び第2反射鏡41a、41bは、フレクシャ機構を構成する第1〜第3フレクシャ部46〜48を介してウエハステージWSTの側端部に固定されている。
ここでは、第1反射鏡41aと、第2反射鏡41bとは、配設方向が異なるのみで、同一の構成となっているため、以下第1反射鏡41aを例にとって説明する。
図3はウエハステージWSTの側面図であり、図4は、第1反射鏡41aの取付部分を中心に示すウエハステージWSTの底面図である。また、図5は図4の5−5線における部分断面図、図6は図3の6−6線における部分断面図、図7は図3の7−7線における部分断面図、図8は図3の8−8線における部分断面図である。
図4に示すように、第1反射鏡41aの長手方向の両端部のそれぞれには、その第1反射鏡41aの底面に開口する凹部49が設けられている。第1フレクシャ部46は、その一部が凹部49の一方に収容された状態で、第1反射鏡41aをウエハステージWSTの側面に固定している。なお、この凹部49は、第1反射鏡41aの先端部を軽量化して、第1反射鏡41a全体の剛性を向上させる役割も担っている。
図5に示すように、第1フレクシャ部46は、側面横L字状をなしており、スリットにより1つの材料から3つのブロックに切り分けられている。この3つのブロックは、第1反射鏡41aに取付られる第1の取付部としての反射鏡取付部50と、反射面42の長手方向と平行をなすように長さ方向を有するロッド51と、ウエハステージWSTに取付られる第2の取付部としてのステージ取付部52とからなっている。
ロッド51は、首部をなす第1のピボット部53と、同じく首部をなす第2のピボット部54と、両ピボット部53,54間に配置される剛体部51aとを有している。そして、反射鏡取付部50は、ロッド51の第1のピボット部53に連結されている。これにより、ロッド51が第1反射鏡41aに対して回転可能なように連結される。また、ステージ取付部52は、ロッド51の第2のピボット部54に連結されている。これにより、ロッド51がウエハステージWSTに対して回転可能なように連結される。
ここで、反射鏡取付部50は、第1反射鏡41aの端部の壁部55の取付孔56に嵌入され、その反射鏡取付部50の外周面が取付孔56の内周面に接着固定されている。一方、ステージ取付部52は、ウエハステージWSTの側面に接合された状態でねじにより締め付け固定されている。そして、この第1フレクシャ部46は、第1のピボット部53と第2のピボット部54とを結ぶ直線の延長線が第1反射鏡41aの重心を通るよう配置されている。
図3に示すように、第1反射鏡41aの中央部には、反射面42の下方外側に突出するように凸部59が形成されている。図6及び図7に示すように、第2フレクシャ部47は、第1反射鏡41aの凸部59の裏面に取着される1つの下方第2フレクシャ部47aと、第1反射鏡41aの中央と長手方向の端部との間において反射面42とは反対側の裏面に取着される2つの上方第2フレクシャ部47bとからなっている。
図6に示すように、下方第2フレクシャ部47aは、略直方体状をなしており、スリットにより1つの材料から3つのブロックに切り分けられている。この3つのブロックは、第1反射鏡41aに取付られる第1の取付部としての反射鏡取付部60と、反射面42の長手方向と交差するように長さ方向を有するロッド61と、ウエハステージWSTに取付られる第2の取付部としてのステージ取付部62とからなっている。図4に示すように、反射鏡取付部60は、平板状をなしている。ステージ取付部62は、平面略コ字状をなしており、ロッド61を取り囲むように配置されている。
ロッド61は、首部をなす第1のピボット部63と、同じく首部をなす第2のピボット部64と、第1及び第2のピボット部63,64間に配置される剛体部61aとを有している。そして、反射鏡取付部60は、ロッド61の第1のピボット部63に連結されている。これにより、ロッド61が第1反射鏡41aに対して回転可能なように連結される。また、ステージ取付部62は、ロッド61の第2のピボット部64に連結されている。これにより、ロッド61がウエハステージWSTに対して回転可能なように連結される。
反射鏡取付部60は、第1反射鏡41aにおける凸部59の裏面に接合され、ねじにより締め付け固定されている。一方、ステージ取付部62は、ウエハステージWSTの底面に接合され、ねじにより締め付け固定されている。
図7に示すように、上方第2フレクシャ部47bは、中央に隔壁を有する略箱状をなしており、スリットにより1つの材料から3つのブロックに切り分けられている。この3つのブロックは、第1反射鏡41aに取付られる第1の取付部としての反射鏡取付部67と、反射面42の長手方向と交差するように長さ方向を有するロッド68と、ウエハステージWSTに取付られる第2の取付部としてのステージ取付部69とからなっている。
ロッド68は、首部をなす第1のピボット部70と、同じく首部をなす第2のピボット部71と、第1及び第2のピボット部70,71間に配置される剛体部68aとを有している。そして、反射鏡取付部67は、ロッド68の第1のピボット部70に連結されている。これにより、ロッド68が第1反射鏡41aに対して回転可能なように連結される。また、ステージ取付部69は、ロッド68の第2のピボット部71に連結されている。これにより、ロッド68がウエハステージWSTに対して回転可能なように連結される。
反射鏡取付部67は、第1反射鏡41aにおける反射面42反対側の裏面に接合され、ねじにより締め付け固定されている。一方、ステージ取付部69は、ウエハステージWSTの平面に接合され、ねじにより締め付け固定されている。
図3及び図4に示すように、第3フレクシャ部48は、第1反射鏡41aの中央の凸部59と、その第1反射鏡41aの長手方向の両端部との間であって、第1反射鏡41aの底面における凹部49の近傍に、凸部59を中心に対をなすように取着されている。
図8に示すように、第3フレクシャ部48は、スリットにより1つの材料から3つのブロックに切り分けられている。この3つのブロックは、第1反射鏡41aに取付られる第1の取付部としての反射鏡取付部74と、反射面42の短手方向と平行をなすように長さ方向を有するロッド75と、ウエハステージWSTに取付られる第2の取付部としてのステージ取付部76とからなっている。図3に示すように、反射鏡取付部74は、平板状をなしている。ステージ取付部76は、平面略コ字状をなしており、ロッド75を取り囲むように配置されている。
ロッド75は、首部をなす第1のピボット部77と、同じく首部をなす第2のピボット部78と、第1及び第2のピボット部77,78間に配置される剛体部75aとを有している。そして、反射鏡取付部74は、ロッド75の第1のピボット部77に連結されている。これにより、ロッド75が第1反射鏡41aに対して回転可能なように連結される。また、ステージ取付部76は、ロッド75の第2のピボット部78に連結されている。これにより、ロッド75がウエハステージWSTに対して回転可能なように連結される。
反射鏡取付部74は、第1反射鏡41aの底面に接合され、ねじにより締め付け固定されている。一方、ステージ取付部76は、ウエハステージWSTの底面に接合され、ねじにより締め付け固定されている。
以上述べてきたように、第1反射鏡41aは、1つの第1フレクシャ部46と、1つの下方第2フレクシャ部47a及び2つの上方第2フレクシャ部47bからなる3つの第2フレクシャ部47と、2つの第3フレクシャ部48とで、ウエハステージWSTに支持されている。これらの第1〜第3フレクシャ部46〜48は、それぞれ両端が第1反射鏡41aまたはウエハステージWSTに対して回転可能に連結されたロッド51,61,68,75を一本ずつ有している。つまり、図9に模式的に示すように、第1反射鏡41aは、両端が回転可能な6本のロッド51,61,68,75により、6つの方向にそれぞれ矛盾なく変位可能な、いわゆるキネマティックな状態でウエハステージWSTに支持されている。
ここで、例えばウエハステージWSTの周囲の環境における温度条件の変化や、ウエハステージWSTの加減速等によって、ウエハステージWSTに変形が生じたとする。このウエハステージWSTでは、その変形が生じたときに、6本の各ロッド51,61,68,75が適宜変位することにより、ウエハステージWSTの変形が第1〜第3フレクシャ部46〜48で吸収され、その変形が第1反射鏡41aに伝達されることが抑制される。
ここで、第1反射鏡41aをその反射面42の長手方向と交差する方向に支持する第2フレクシャ部47のロッド61,68は、次のように配置されている。下方第2フレクシャ部47aのロッド61は、第1反射鏡41aの重心位置に対応するとともに、反射面42から外方に突出した凸部59に配置されている。一方、各上方第2フレクシャ部47bのロッド68は、その凸部59と第1反射鏡41aの両端との間において、そのロッド68を中心としてバランスする位置に配置されている。また、各上方第2フレクシャ部47bのロッド68は、第1反射鏡41aの上端の近傍に配置されており、下方第2フレクシャ部47aのロッド61と、反射面42の短手方向において可能な限り離間した位置に配置されている。
従って、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(ア) このウエハステージWSTでは、反射鏡41に取り付けられ、ウエハステージWSTの移動に起因して発生する変形を低減する第1〜第3フレクシャ部46〜48を備えている。このため、ウエハステージWSTの移動に起因してウエハステージWSTに変形が発生したとしても、その変形が第1〜第3フレクシャ部46〜48により低減されるため、反射鏡41の変形を小さくすることができる。従って、干渉計40により、ウエハステージWSTの位置を精度よく計測することができる。
(イ) このウエハステージWSTでは、第1〜第3フレクシャ部46〜48が、反射鏡41に対するウエハステージWSTの加減速の影響を低減するようになっている。このため、ウエハステージWSTの加減速に伴う反射鏡41の位置ずれや変形を抑制することができ、ウエハステージWSTの位置を精度よく計測することができる。
(ウ) このウエハステージWSTでは、第1〜第3フレクシャ部46〜48は、反射鏡41とウエハステージWSTとの間に介在され、両端が回転自在に形成された6本のロッド51,61,68,75を有している。このため、反射鏡41を、ウエハステージWSTに対して6つの動きを互いに矛盾することない状態で、いわゆるキネマティックに保持することができる。このため、ウエハステージWSTが任意の方向に変形したとしても、その変形が反射鏡41に伝達されることが抑制され、反射鏡41に想定外の変形が生じることを回避することができる。
(エ) このウエハステージWSTでは、第1〜第3フレクシャ部46〜48が、ウエハステージWSTの移動に伴うウエハステージWSTの微小変形を、6本のロッド51,61,68,75が適宜変位することにより反射鏡41への伝達を抑制するようになっている。このため、ウエハステージWSTの移動に伴う変形が反射鏡41に伝達されることが抑制され、反射鏡41の位置ずれや変形を低減することができる。
(オ) このウエハステージWSTでは、ロッド51,61,68,75が、反射鏡41に対して回転可能に連結する第1のピボット部53,63,70,77と、ウエハステージWSTに対して回転可能に連結する第2のピボット部54,64,71,78を有している。第1及び第2のピボット部の間には、剛体部51a,61a,68a,75aが配置されている。さらに、第1〜第3フレクシャ部46〜48は、反射鏡41に取り付けられる反射鏡取付部50,60,67,74と、ウエハステージWSTに取り付けられるステージ取付部52,62,69,76とを有している。そして、第1のピボット部53,63,70,77は、反射鏡取付部50,60,67,74を介して反射鏡41に連結し、第2のピボット部54,64,71,78は、ステージ取付部52,62,69,76を介してウエハステージWSTに連結されている。このため、簡単な構成で、反射鏡41のウエハステージWSTに対するキネマティックな保持を実現することができる。
(カ) このウエハステージWSTでは、反射鏡取付部50,60,67,74とステージ取付部52,62,69,76とロッド51,61,68,75とは、同一の材料で一体的に構成されている。このため、部品点数の削減を図りつつ、第1〜第3フレクシャ部46〜48を高い再現性をもって動作させることができる。
(キ) このウエハステージWSTでは、第1〜第3フレクシャ部46〜48を有している。第1フレクシャ部46は、ロッド51が反射鏡41の反射面42における長手方向とほぼ平行に配列されている。第2フレクシャ部47は、ロッド61,68が反射面42と交差する方向とほぼ平行に配列されている。第3フレクシャ部48は、ロッド75が反射面42における短手方向とほぼ平行に配列されている。そして、第1フレクシャ部46は1つのロッド51を有し、第2フレクシャ部47は3つのロッド61,68を有し、第3フレクシャ部48は2つのロッド75を有している。
このように構成することで、矩形状の反射面42を有する反射鏡41を、ウエハステージWSTに対して、反射面42の長手方向、反射面42と交差する方向及び反射面42の短手方向の各方向に、所定の剛性を確保しつつ、キネマティックに保持することができる。
(ク) このウエハステージWSTでは、第2フレクシャ部47を、反射鏡41の反射面42とは反対側の面における短手方向の両端の近傍に配置している。このため、矩形状の反射鏡41を支持する上で、その反射鏡41の変位を小さくすることができる。
(ケ) この反射鏡41では、下方第2フレクシャ部47aのロッド61を取着するために、反射面42とは反対側の面から外側に突出する凸部59を備えている。このため、第2フレクシャ部47における各ロッド61,68の反射鏡41の短手方向における間隔を拡大することができて、反射鏡41の変位をさらに小さくすることができる。
(コ) このウエハステージWSTでは、反射鏡41を、反射面42とは反対側の面におけるほぼ中央に設けられた凸部59において、下方第2フレクシャ部47を介して支持されている。また、反射鏡41を、2つの上方第2フレクシャ部47bを、反射鏡41にその反射面42の短手方向に沿って所定の加速度を加えたときに反射面42の変形がほぼ最小になる位置に配置されている。このため、第2フレクシャ部47の各ロッド61,68を、反射鏡41の中央の1つのロッド61を中心に、他の2つのロッド68をその中央と反射鏡41の長手方向の両端との間でロッド68の両側の変位がバランスする位置に配置することができる。これにより、反射鏡41の変形を、可及的に小さくすることができる。
(サ) このウエハステージWSTでは、第3フレクシャ部48が、反射鏡41にその反射面42の短手方向に沿って所定の加速度を加えたときに、反射面42の変形がほぼ最小になる位置に配置されている。このため、第3フレクシャ部48の各ロッド75を、反射面42の短手方向において、各ロッド75間及び各ロッド75の外側における変位がバランスする位置に配置することができる。これにより、反射鏡41の変形を、可及的に小さくすることができる。
(シ) この露光装置では、ウエハステージWSTが、前記(ア)〜(シ)に記載の作用及び効果を有するステージ装置からなっている。このため、ウエハWの位置を精度よく計測することができて、ウエハWの位置計測に伴う収差の発生を抑制することができる。また、1枚のウエハW上に複数の異なるパターンを重ね合わせて露光する際において、各パターンを精度よく重ね合わせることができる。このため、微細なパターンを有する高集積度の半導体素子であっても精度よく露光することができ、高集積度の半導体素子を歩留まりよく製造することができる。
(第2実施形態)
次に、第1実施形態の反射鏡41に、振動吸収機構としてのダイナミックダンパ101を装着した第2実施形態について、図10に基づいて説明する。
図10は、ダイナミックダンパ101を中心に、反射鏡41の中央付近を拡大して示す斜視図である。図10に示すように、ダイナミックダンパ101は、反射鏡41の中央に突出された凸部59の反射面42側に形成された収容凹部102内に収容されている。
ダイナミックダンパ101は、取付部103と、質量部の一部を構成するダンパステージ104と、弾性連結部としての平行バネ105とからなっている。これらの取付部103とダンパステージ104と平行バネ105とは、同一の部材で一体的に形成されている。
取付部103は、側面略U字状をなしており、ねじ106により反射鏡41の凸部59に締め付け固定されている。ダンパステージ104は、略平板状に形成されており、反射鏡41の長手方向の両端において、スリット加工により一対の薄板状に形成された平行バネ105により、取付部103の底壁部103aに連結されている。
また、ダンパステージ104の取付部103側の面には、質量部の一部を構成する質量体107が取着されている。ここで、ダンパステージ104と質量体107とは、反射鏡41の凸部59の内面及び取付部103に接触しないようになっている。これらのダンパステージ104及び質量体107の合計重量は、反射鏡41の固有振動を抑えるように設定されており、自身が振動することで反射鏡41に振動を生じないようになっている。また、ダンパステージ104及び質量体107は、平行バネ105により、その振動方向が反射鏡41の長手方向のみとなるようにガイドされている。
さらに、質量体107と取付部103の底壁部103aとの間の隙間、そしてダンパステージ104と取付部103の側壁部103bとの間の隙間には、例えばソルボセイン、α−ゲル、防振ゴム等のダンピング材108が介装されている。このダンピング材108は、ダンパステージ104及び質量体107に生じた振動を減衰させる役割を担っている。
従って、本実施形態によれば、第1実施形態における(ア)〜(シ)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(ス) この反射鏡41では、ウエハステージWSTの移動に伴って反射面42に伝達され、その振動によって引き起こされる反射鏡41の振動を吸収するダイナミックダンパ101を有している。このため、ダイナミックダンパ101の固有振動数を、反射鏡41の固有振動を打ち消すに設定することで、反射面42の振動が吸収される。これにより、反射面42における計測光の反射が不安定になることがなく、ウエハステージWSTの位置を一層精度よく計測することができるとともに、ウエハステージWSTの制御を容易に行うことが可能となる。
(セ) この反射鏡41では、ダイナミックダンパ101が、反射鏡41に取り付けられる取付部103と、所定の質量を有するダンパステージ104と、それら取付部103とダンパステージ104を連結する弾性変形可能な平行バネ105とからなっている。そして、取付部103とダンパステージ104と平行バネ105とが、一体の物質で形成されている。このため、反射鏡41に振動を吸収する機構を取着する上で、部品点数の削減を図りつつ、反射鏡41の振動を効率よく吸収することができる。
(ソ) この反射鏡41では、ダンパステージ104と取付部103との間、質量体107と取付部103との間に、ダンピング材108が介装されている。このため、ダンパステージ104及び質量体107の振動を減衰させることができるとともに、反射鏡41の振動を打ち消すためのダンパステージ104及び質量体107の固有振動数の範囲を広げることができて、ダイナミックダンパ101における振動吸収の自由度を高めることができる。
(第3実施形態)
次に、第1実施形態の反射鏡41に、摩擦材としての摩擦板121を有する振動吸収機構を装着した第3実施形態について、図11及び図12に基づいて説明する。
図11は摩擦板121を備えた、振動吸収機構としての第3フレクシャ部122の外観を示す斜視図であり、図12はその第3フレクシャ部122の分解斜視図である。
図11及び図12に示すように、この第3実施形態の第3フレクシャ部122では、摩擦板121の一側端が、反射鏡取付部74に対して一対の取付ねじ123により締め付け固定された摩擦板押さえ124を介して固定されている。一方、ステージ取付部76には、略L字状の磁石カバー125が取付ねじ126により締め付け固定されている。
摩擦板121における前記一側端とは反対側の他側端は、ステージ取付部76と磁石カバー125との間の隙間に挿入されている。そして、摩擦板121と磁石カバー125との間には、磁石127(本実施形態では、1つ)が介装されている。そして、この磁石127により、摩擦板121と磁石カバー125とが磁着される。この磁着により、反射鏡41とウエハステージWSTとの少なくとも一方に、反射鏡41の長手方向に交差する方向への振動が生じた時に、摩擦板121と磁石カバー125との間で微小な摩擦力が発生されるようになっている。これにより、反射鏡41とウエハステージWSTとの少なくとも一方で発生した振動が吸収されるようになっている。
従って、この第3実施形態によれば、第1実施形態における(ア)〜(シ)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(タ) この第3フレクシャ部122では、ウエハステージWST及び反射鏡41の少なくとも一方に振動が生じたときに、ウエハステージWSTと反射鏡41との間に微小な摩擦力を生じさせる摩擦板121が設けられている。このため、簡単な構成で、ウエハステージWST及び反射鏡41の少なくとも一方の振動を吸収することができる。
(チ) この摩擦板121は、第3フレクシャ部122の反射鏡取付部74に固定されるとともに、磁石127及びに磁石カバー125を介してステージ取付部76に摺接されるようになっている。言い換えると、摩擦板121は、第3フレクシャ部122の一部を構成している。このため、ウエハステージWSTの大型化を回避しつつ、ウエハステージWST及び反射鏡41の少なくとも一方の振動を吸収することができる。また、磁石127の磁力や個数を調整することによって、ウエハステージWSTと反射鏡41との間に発生する微小な摩擦力を容易に調整することができる。
(変形例)
なお、本発明の実施形態は、以下のように変形してもよい。
・ 第1実施形態のウエハステージWSTに、第2実施形態のダイナミックダンパ101及び第3実施形態の第3フレクシャ部122の少なくとも一方を装着してもよい。
・ 第1実施形態のレチクルステージRSTに、ウエハステージWSTと同様な反射鏡31の支持構成を採用してもよい。
・ 第2実施形態では、ダンパステージ104と取付部103との間、質量体107と取付部103との間に、ダンピング材108を介装したが、ダンパステージ104と質量体107との少なくとも一方と、反射鏡41の収容凹部102の内壁面との間に、ダンピング材108を介装してもよい。
・ ダイナミックダンパ101を、例えば下方第2フレクシャ部47aの反射鏡取付部60に一体的に固定して、反射鏡41の凸部59内に収容するようにしてもよい。このように構成すれば、ウエハステージWSTの大型化を抑制することができる。
・ 第3実施形態において、磁石127の数は、1つに限定されるものではなく、2つ以上の磁石127を設けてもよい。
・ 第3実施形態では、磁石127を摩擦板121と磁石カバー125との間に介装したが、磁石カバー125を省略して、磁石127を摩擦板121とステージ取付部76との間に直接磁着するようにしてもよい。
・ 第3実施形態では、摩擦板121を反射鏡取付部74に摩擦板押さえ124を介して固定したが、摩擦板121を取付ねじ123等により反射鏡取付部74に直接固定してもよい。
・ 第3実施形態では、摩擦板121を、反射鏡取付部74側に固定し、ステージ取付部76側に磁着するようにしたが、摩擦板121を、ステージ取付部76側に固定し、反射鏡取付部74側に磁着するようにしてもよい。
・ 第3実施形態では、摩擦板121を一側端で反射鏡取付部74またはステージ取付部76の一方に固定し、他側端を反射鏡取付部74またはステージ取付部76の他方に磁着するようにした。これに対して、摩擦板121を一側端で反射鏡取付部74またはステージ取付部76の一方に固定し、摩擦板121の他側端と反射鏡取付部74またはステージ取付部76の他方との間にバネを介装して微小な摩擦力が発生するようにしてもよい。また、摩擦板121を一側端で反射鏡取付部74またはステージ取付部76の一方に固定し、反射鏡取付部74またはステージ取付部76の他方の突部を設けて、その突部に対して摩擦板121の他側端に摺接させて、微小な摩擦力が発生するようにしてもよい。
・ 第3実施形態では、摩擦板121を第3フレクシャ部48に設けたが、摩擦板121を第1フレクシャ部46及び第2フレクシャ部47の少なくとも一方に設けてもよい。
・ この発明のウエハステージWSTは、露光装置のウエハステージのみならず、例えば顕微鏡、干渉計等の他の光学機械、工作機械等の試料台に適用することができる。
・ また、露光装置として、投影光学系を用いることなく、マスクと基板とを密接させてマスクのパターンを露光するコンタクト露光装置、マスクと基板とを近接させてマスクのパターンを露光するプロキシミティ露光装置の光学系にも適用することができる。また、投影光学系としては、全屈折タイプに限らず、反射屈折タイプであってもよい。
さらに、本発明の露光装置は、縮小露光型の露光装置に限定されるものではなく、例えば等倍露光型、拡大露光型の露光装置であってもよい。
また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクルまたはマスクを製造するために、マザーレチクルからガラス基板やシリコンウエハなどへ回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。ここで、DUV(深紫外)やVUV(真空紫外)光などを用いる露光装置では一般に透過型レチクルが用いられ、レチクル基板としては、石英ガラス、フッ素がドープされた石英ガラス、蛍石、フッ化マグネシウム、または水晶などが用いられる。また、プロキシミティ方式のX線露光装置や電子線露光装置などでは、透過型マスク(ステンシルマスク、メンバレンマスク)が用いられ、マスク基板としてはシリコンウエハなどが用いられる。
もちろん、半導体素子の製造に用いられる露光装置だけでなく、液晶表示素子(LCD)などを含むディスプレイの製造に用いられてデバイスパターンをガラスプレート上へ転写する露光装置にも、本発明を適用することができる。また、薄膜磁気ヘッド等の製造に用いられて、デバイスパターンをセラミックウエハ等へ転写する露光装置、及びCCD等の撮像素子の製造に用いられる露光装置などにも本発明を適用することができる。
さらに、本発明は、マスクと基板とが静止した状態でマスクのパターンを基板へ転写し、基板を順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式のステッパにも適用することができる。
・ また、露光装置の光源としては、実施形態に記載のArFエキシマレーザ(193nm)、F2レーザ(157nm)の他、例えばg線(436nm)、i線(365nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)、Kr2レーザ(146nm)、Ar2レーザ(126nm)等を用いてもよい。また、DFB半導体レーザまたはファイバレーザから発振される赤外域、または可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(またはエルビウムとイッテルビウムの双方)がドープされたファイバアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いてもよい。
なお、実施形態の露光装置は、例えば次のように製造される。
すなわち、まず、照明光学系27、投影光学系PLを露光装置の本体に組み込み、光学調整を行う。次いで、多数の機械部品からなるウエハステージWST(スキャンタイプの露光装置の場合は、レチクルステージRSTも含む)を露光装置の本体に取り付けて配線を接続する。そして、露光光の光路内にガスを供給するガス供給配管を接続した上で、さらに総合調整(電気調整、動作確認など)を行う。
ここで、照明光学系27及び投影光学系PLを保持する光学素子保持装置を構成する各部品は、超音波洗浄などにより、加工油や、金属物質などの不純物を落としたうえで、組み上げられる。なお、露光装置の製造は、温度、湿度や気圧が制御され、かつクリーン度が調整されたクリーンルーム内で行うことが望ましい。
実施形態における硝材として、蛍石、石英などを例に説明したが、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、リチウム−カルシウム−アルミニウム−フロオライド、及びリチウム−ストロンチウム−アルミニウム−フロオライド等の結晶や、ジルコニウム−バリウム−ランタン−アルミニウムからなるフッ化ガラスや、フッ素をドープした石英ガラス、フッ素に加えて水素もドープされた石英ガラス、OH基を含有させた石英ガラス、フッ素に加えてOH基を含有した石英ガラス等の改良石英を採用してもよい。
次に、上述した露光装置をリソグラフィ工程で使用したデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
図13は、デバイス(ICやLSI等の半導体素子、液晶表示素子、撮像素子(CCD等)、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートを示す図である。図13に示すように、まず、ステップS201(設計ステップ)において、デバイス(マイクロデバイス)の機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS202(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レクチルRt等)を製作する。一方、ステップS203(基板製造ステップ)において、シリコン、ガラスプレート等の材料を用いて基板(シリコン材料を用いた場合にはウエハWとなる。)を製造する。
次に、ステップS204(基板処理ステップ)において、ステップS201〜S203で用意したマスクと基板を使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によって基板上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS205(デバイス組立ステップ)において、ステップS204で処理された基板を用いてデバイス組立を行う。このステップS205には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入等)等の工程が必要に応じて含まれる。
最後に、ステップS206(検査ステップ)において、ステップS205で作製されたデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
図14は、半導体デバイスの場合における、図13のステップS204の詳細なフローの一例を示す図である。図14において、ステップS211(酸化ステップ)では、ウエハWの表面を酸化させる。ステップS212(CVDステップ)では、ウエハW表面に絶縁膜を形成する。ステップS213(電極形成ステップ)では、ウエハW上に電極を蒸着によって形成する。ステップS214(イオン打込みステップ)では、ウエハWにイオンを打ち込む。以上のステップS211〜S214のそれぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS215(レジスト形成ステップ)において、ウエハWに感光剤を塗布する。引き続き、ステップS216(露光ステップ)において、先に説明したリソグラフィシステム(露光装置31)によってマスク(レチクルRt)の回路パターンをウエハW上に転写する。次に、ステップS217(現像ステップ)では露光されたウエハWを現像し、ステップS218(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS219(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハW上に多重に回路パターンが形成される。
以上説明した本実施形態のデバイス製造方法を用いれば、露光工程(ステップS216)において上記の露光装置が用いられ、真空紫外域の露光光ELにより解像力の向上が可能となり、しかも露光量制御を高精度に行うことができる。従って、結果的に最小線幅が0.1μm程度の高集積度のデバイスを歩留まりよく生産することができる。
32,42…反射面、40…位置計測装置としての干渉計、41…反射部材としての反射鏡、42…反射面、46…フレクシャ機構を構成する第1フレクシャ部、47…フレクシャ機構を構成する第2フレクシャ部、47a…第2フレクシャ部の一部を構成する下方第2フレクシャ部、47b…第2フレクシャ部の一部を構成する上方第2フレクシャ部、48…フレクシャ機構を構成する第3フレクシャ部、50,60,67,74…第1の取付部としての反射鏡取付部、51,61,68,75…ロッド、51a,61a,68a,75a…剛体部、52,62,69,76…第2の取付部としてのステージ取付部、53,63,70,77…第1のピボット部、54,64,71,78…第2のピボット部、101…振動吸収機構としてのダイナミックダンパ、103…取付部、104…質量部の一部を構成するダンパステージ、105…弾性連結部としての平行バネ、107…質量部の一部を構成する質量体、108…ダンピング材、121…摩擦材としての摩擦板、122…振動吸収機構としての第3フレクシャ部、R…マスクとしてのレチクル、W…載置物及び基板としてのウエハ、WST…移動体としてのウエハステージ。