JP2005154225A - 炭素質材料の精製法及び該精製法により得られる精製炭素質材料 - Google Patents

炭素質材料の精製法及び該精製法により得られる精製炭素質材料 Download PDF

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Abstract

【課題】 ナノスケールカーボンチューブ又は遷移金属もしくはその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブを含有する炭素質材料から、遷移金属系不純物を、少なくとも部分的に除去して、その含有量を減少させることにより、該炭素質材料を精製する方法を提供する。
【解決手段】 ナノスケールカーボンチューブ又は遷移金属もしくはその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブ及び遷移金属系不純物を含む炭素質材料の精製法であって、(a)(i)該炭素質材料と、(ii)該遷移金属系不純物と反応して可溶性の金属錯体を形成する配位子化合物とを混合する工程、及び、(b)工程(a)で得られる混合物から、未反応配位子化合物及び該未反応配位子化合物に溶解している金属錯体を含む液状成分を分離し、炭素質材料を回収する工程及び必要に応じて(c)洗浄工程を含む精製法。
【選択図】なし

Description

本発明は、炭素質材料の精製法に関し、より詳しくは、ナノスケールカーボンチューブ又は遷移金属もしくはその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブ及び遷移金属系不純物を含む炭素質材料から、該遷移金属系不純物を除去してその含有量を低減させる精製法に関する。
また、本発明は、該精製法により精製されたナノスケールカーボンチューブ又は遷移金属もしくはその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブを含む炭素質材料にも関する。
遷移金属又はその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブを含有する炭素質材料は、例えば、鉄、ニッケル、コバルトなどの遷移金属系触媒ないし遷移金属系原料を用いる方法により製造されている(特許文献1〜3参照)。これら炭素質材料は、鉄、ニッケル、コバルトなどの遷移金属又はその合金をナノフレークカーボンチューブのチューブ内空間部の10〜90%の範囲に内包しており(即ち、部分的に内包しており)、例えば、その導電性に基づき、導電性助剤として好ましく使用できる。
また、遷移金属系不純物を含有する他の炭素質材料として、アモルファスナノスケールカーボンチューブも知られている(特許文献4参照)。
しかし、これら炭素質材料には、上記遷移金属系触媒又は遷移金属系原料に由来する遷移金属系不純物が含まれており、該遷移金属系不純物は、導電性を阻害する場合があり、該炭素質材料の導電性助剤としての性能を更に向上させるためには、かかる遷移金属系不純物をできるだけ除去することが望ましい。
特開2002−338220(請求項12参照) 特開2003−73108(請求項14参照) 特開2003−73109(請求項14参照) 特許第3355442号
本発明は、ナノスケールカーボンチューブ又は遷移金属もしくはその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブを含有する炭素質材料から、上記遷移金属系不純物を、少なくとも部分的に(好ましくは大幅に)除去して、その含有量を減少させることにより、該炭素質材料を精製する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するべく、鋭意検討を重ねた。本発明者らは、まず、かかる遷移金属系不純物を除去する方法として、塩酸等の酸で炭素質材料を処理することを着想した。しかし、このような酸処理では、精製装置の酸による腐食を防止するための措置が必要となり、工業的には必ずしも有利とはいえない。また、酸処理では、ナノフレークカーボンチューブのチューブ内空間部に部分内包されている遷移金属又はその合金までも溶出してしまい、遷移金属又はその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブを変性してしまうことが判明した。
そのため、本発明者は更に検討を重ねたところ、次の知見を得た。
(1) 炭素質材料中に含まれている遷移金属系不純物に配位子化合物と炭素質材料とを接触させて可溶性の錯体を形成させると、固体である炭素質材料を、配位子化合物及びこれに溶解している該錯体等の液体成分から単に固液分離するだけで、遷移金属系不純物の含有量が減少した炭素質材料を回収することができる。
(2) 上記配位子化合物を使用する場合は、酸処理の場合のように、ナノフレークカーボンチューブのチューブ内空間部に内包する遷移金属又はその合金を除去してしまうことがほとんどない。
(3) 更に、酸処理の場合と異なり、精製装置の腐食の問題も少ない。
本発明はかかる知見に基づき、更に検討を加えて完成されたものであり、次の精製法及び精製された炭素質材料を提供するものである。
項1 ナノスケールカーボンチューブ又は遷移金属もしくはその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブ及び遷移金属系不純物を含む炭素質材料の精製法であって、
(a)(i)該炭素質材料と、(ii)該遷移金属系不純物と反応して可溶性の金属錯体を形成する配位子化合物とを混合する工程、及び
(b)上記工程(a)で得られる混合物から、未反応配位子化合物及び該未反応配位子化合物に溶解している金属錯体を含む液状成分を分離し、炭素質材料を回収する工程
を含むことを特徴とする精製法。
項2 炭素質材料が、遷移金属又はその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブ及び遷移金属系不純物を含む炭素質材料である項1に記載の精製法。
項3 遷移金属が、周期表の第8族、第9族及び第10族金属からなる群から選ばれる少なくとも1種である項1又は2に記載の精製法。
項4 遷移金属が、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種である項1又は2に記載の精製法。
項5 遷移金属が、鉄である項1又は2に記載の精製法。
項6 遷移金属又はその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブが、(a)ナノフレークカーボンチューブと、(b)鉄、ニッケル及びコバルトからなる群から選ばれる金属又はその合金とからなり、該ナノフレークカーボンチューブ(a)のチューブ内空間部の10〜90%の範囲に、該金属又はその合金が存在している金属−炭素複合体である項2〜5のいずれかに記載の精製法。
項7 ナノスケールカーボンチューブの最外面を構成する炭素網面の長さが500nm以下である項1〜6のいずれかに記載の精製法。
項8 配位子化合物が、アセチルアセトン、アミノ酸、蓚酸、ジアミノアルカン類、o−ジアミノアレン類、2,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビオキサゾール、2,2’−ビチアゾール、2,2’−ビピリジン、2−(2−ピリジル)イミダゾール、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、4,6−ジオキソヘプタン酸、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、5−メチル−1,3−ヘキサンジオン及び1,1,1,5,5,6,6,7,7,7-デカフルオロ-2,4-ヘプタンジオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である項1〜7のいずれかに記載の精製法。
項9 工程(a)において、(i)炭素質材料と(ii)配位子化合物との混合を、室温〜配位子化合物の沸点の温度範囲で行う項1〜8のいずれかに記載の精製法。
項10 混合工程(a)を、ソックスレー抽出機を用いて行う項1〜9のいずれかに記載の精製法。
項11 工程(b)において回収された炭素質材料を、溶媒で洗浄する工程を更に含む項1〜10のいずれかに記載の精製法。
項12 溶媒が、常圧における沸点が30〜100℃の低沸点有機溶媒である項11に記載の精製法。
項13 溶媒が、低級アルコール、ケトン、エーテル、エステル及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である項12に記載の精製法。
項14 項1〜13のいずれかに記載の精製法を行なうことにより得られる、遷移金属系不純物の含量が減少された、ナノスケールカーボンチューブ又は遷移金属もしくはその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブを含む炭素質材料。
本発明の精製法によれば、精製装置の腐食の問題をほとんど気にすることなく、炭素質材料中の遷移金属系不純物の含量を簡単に低減できる。
特に、遷移金属又はその合金をチューブ内空間部に部分内包するナノスケールカーボンチューブを含有する炭素質材料を、本発明の精製法により精製すると、チューブ内空間部に内包されている遷移金属又はその合金を、溶出することがほとんどないので、該炭素質材料中の遷移金属又はその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブを変性することがほとんどない。
また、一般的なカーボンナノチューブ、遷移金属又はその合金をチューブ内空間部に部分内包するナノフレークカーボンチューブ、アモルファスナノスケールカーボンチューブは濃塩酸、濃硫酸等の強酸中で加熱することにより壁部が損傷又は変性する可能性のあることが知られているが、本発明の精製法ではこれらチューブの壁部を損傷又は変性させることもない。
上記のように、本発明の精製法は、ナノスケールカーボンチューブ又は遷移金属もしくはその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブ及び遷移金属系不純物を含む炭素質材料の精製法であって、
(a)(i)該炭素質材料と、(ii)該遷移金属系不純物と反応して可溶性の金属錯体を形成する配位子化合物とを混合する工程、及び
(b)上記工程(a)で得られる混合物から、未反応配位子化合物及び該未反応配位子化合物に溶解している金属錯体を含む液状成分を分離し、炭素質材料を回収する工程
を含むことを特徴とするものである。
炭素質材料
本発明の精製法により精製する対象となる炭素質材料は、ナノスケールカーボンチューブ又は遷移金属もしくはその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブを含む炭素質材料であって、遷移金属系不純物を含むものである。
該ナノスケールカーボンチューブの具体例としては、カーボンナノチューブ、特許文献1〜3に記載の金属部分内包ナノフレークカーボンチューブ、特許文献4に記載のアモルファスナノスケールカーボンチューブ、これらの混合物等が例示できる。
本明細書においては、これらカーボンナノチューブ、ナノフレークカーボンチューブ、アモルファスナノスケールカーボンチューブを総称して「ナノスケールカーボンチューブ」というものとする。
かかるナノスケールカーボンチューブ又は遷移金属もしくはその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブを含む炭素質材料は、一般に、周期表の第8族、第9族及び第10族に属する遷移金属、例えば、鉄、ニッケル、コバルトなどのハロゲン化物等の遷移金属系の触媒ないし原料を使用して製造されるので、製造されたままの状態では、遷移金属系触媒又は遷移金属系原料に由来する遷移金属系不純物が混入している。特に本発明の精製法は、遷移金属系不純物が鉄系不純物である場合に有利である。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「周期表」は、長倉三郎他編集、1998年2月20日、株式会社岩波書店発行「岩波 理化学辞典」第5版の付録2aに所載の長周期型周期表を指している。
カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブは、黒鉛シート(即ち、黒鉛構造の炭素原子面ないしグラフェンシート)がチューブ状に閉じた中空炭素物質であり、その直径はナノメートルスケールであり、壁構造は黒鉛構造を有している。かかるカーボンナノチューブは、1991年に飯島澄男氏により発見された。カーボンナノチューブのうち、壁構造が一枚の黒鉛シートでチューブ状に閉じたものは単層カーボンナノチューブと呼ばれ、複数枚の黒鉛シートがそれぞれチューブ状に閉じて、入れ子状になっているものは入れ子構造の多層カーボンナノチューブと呼ばれている。
本発明では、これらカーボンナノチューブと不純物を含有する炭素質材料を、精製の対象とする。これらナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料は、公知の方法、例えば、遷移金属触媒の存在下、熱CVD法等の方法により製造されるので、鉄、ニッケル等の遷移金属系不純物が混入している。
アモルファスナノスケールカーボンチューブ
アモルファスナノスケールカーボンチューブは、WO00/40509(特許第3355442号=上記特許文献4)に記載されており、カーボンからなる主骨格を有し、直径が0.1〜1000nmであり、アモルファス構造を有するナノスケールナノスケールカーボンチューブであって、直線状の形態を有し、X線回折法(入射X線:CuKα)において、ディフラクトメーター法により測定される炭素網平面(002)の平面間隔(d002)が3.54Å以上、特に3.7Å以上であり、回折角度(2θ)が25.1度以下、特に24.1度以下であり、2θバンドの半値幅が3.2度以上、特に7.0度以上であることを特徴とするものである。
本発明の製造法は、このアモルファスナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を原料として用いて、高純度のアモルファスナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料を製造するのに特に適している。
該アモルファスナノスケールカーボンチューブは、鉄、コバルト、ニッケル等の金属の塩化物の少なくとも1種からなる触媒の存在下で、分解温度が200〜900℃である熱分解性樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール等を、励起処理することにより得られる。このため、アモルファスナノスケールカーボンチューブなどを含む炭素質材料には、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属系不純物が混入している。
本発明で使用するアモルファスナノスケールカーボンチューブは、アモルファス構造(非晶質構造)を有するナノスケールのカーボンナノチューブで、中空直線状であり、細孔が高度に制御されている。その形状は、主に円柱、四角柱などであり、先端の少なくとも一方が、キャップを有していない(開口している)場合が多い。先端が閉口している場合には、形状がフラット状である場合が多い。
該アモルファスナノスケールカーボンチューブの外径は、通常1〜1000nm程度の範囲にあり、好ましくは1〜200nm程度の範囲にあり、より好ましくは、1〜100nm程度の範囲にある。そのアスペクト比(チューブの長さ/直径)は2倍以上であり、好ましくは5倍以上である。
ここで、「アモルファス構造」とは、規則的に配列した炭素原子の連続的な炭素層からなる黒鉛質構造ではなく、不規則な炭素網平面からなる炭素質構造を意味し、多数の微細なグラフェンシートが不規則に配列し、原子の配列が不規則になっている。代表的な分析手法である透過型電子顕微鏡(TEM)による像からは、本発明による非晶質構造のナノスケールナノスケールカーボンチューブは、上記微細なグラフェンシート1枚の炭素網平面の平面方向の広がりがアモルファスナノスケールカーボンチューブの直径の1倍より小さい、特に、アモルファスナノスケールカーボンチューブ直径の1倍以下、特に、20nmより小さいものと規定できる。従って、アモルファスナノスケールカーボンチューブの壁部の最外面を構成する炭素網面の長さは、20nm未満、特に5nm未満である。
典型的には、本発明で使用するアモルファスナノスケールカーボンチューブは、X線回折による回折角度(2θ)が18.9〜22.6度の範囲内にあり、炭素網平面間隔(d002)は3.9〜4.7Åの範囲内にあり、2θバンドの半値幅は7.6〜8.2度の範囲内にある。
本発明で使用するアモルファスナノスケールカーボンチューブの形状を表す一つの用語である「直線状」なる語句は、次のように定義される。すなわち、透過型電子顕微鏡によるアモルファスナノスケールカーボンチューブ像の長さをLとし、そのアモルファスナノスケールカーボンチューブを伸ばした時の長さをL0とした場合に、L/L0が0.9以上となる形状特性を意味するものとする。
金属部分内包ナノフレークカーボンチューブ
本発明で使用する金属部分内包ナノフレークカーボンチューブは、前記特許文献1〜3に記載のものであり、上記金属又は合金が、ナノスケールカーボンチューブ内空間部の全長に亘って、即ち、チューブ内空間部の100%の範囲に完全に充填されているものではなく、上記金属又は合金がそのチューブ内空間部の10〜90%の範囲に充填されている(即ち、部分的に充填されている)ことを特徴とするものである。
壁部は、パッチワーク状ないし張り子状(いわゆるpaper mache状)のナノフレークカーボンチューブである。本願特許請求の範囲及び明細書において、「ナノフレークカーボンチューブ」とは、フレーク状の黒鉛シートが複数枚(通常は多数)パッチワーク状ないし張り子状(paper mache状)に集合して構成されている、黒鉛シートの集合体からなる炭素製チューブを指す。
このナノフレークカーボンチューブは、一枚の黒鉛シートが円筒状に閉じた単層カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ)や複数枚の黒鉛シートがそれぞれ円筒状に閉じて同心円筒状ないし入れ子状となっている多層カーボンナノチューブ(マルチウォールカーボンナノチューブ)とは全く構造の異なるチューブ状炭素材である。
また、チューブ内空間部に内包される金属は、一種類の金属であっても合金であってもよい。チューブ内空間部に内包される金属としては、鉄、ニッケル、コバルト等が例示できる。また、チューブ内空間部に内包される合金としては、上記金属の2種以上からなる合金、例えば、鉄-ニッケル合金、鉄-コバルト合金、ニッケル-コバルト合金、鉄-ニッケル-コバルト合金等の金属同士の合金を例示できる。また、鉄、ニッケル、コバルト等の金属又はこれら金属の合金に炭素が含まれた合金、又は、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化コバルト等も例示できる。これらのうちでも、鉄又は炭化鉄が好ましい。
本発明で使用する金属部分内包ナノフレークカーボンチューブは、(a)ナノフレークカーボンチューブと(b)内包金属又は合金(好ましくは、鉄又は炭化鉄)とからなるものであり、該チューブ内空間部(即ち、チューブ壁で囲まれた空間)の実質上全てが充填されているのではなく、該空間部の一部、より具体的には10〜90%程度、特に30〜80%程度、好ましくは40〜70%程度が内包金属又は合金(好ましくは、炭化鉄又は鉄)により充填されている。以下、炭化鉄又は鉄を内包するカーボンチューブを「鉄−炭素複合体」という。かかる鉄−炭素複合体は、前記特許文献1(特開2002−338220号)に記載されている。
かかる鉄−炭素複合体は、特開2002−338220号に記載されている製造法に従って、
(1)不活性ガス雰囲気中、圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、反応炉内の酸素濃度を、反応炉容積をA(リットル)とし酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aが1×10-10〜1×10-1となる濃度に調整して、反応炉内でハロゲン化鉄を600〜900℃まで加熱する工程、及び
(2)上記反応炉内を不活性ガス雰囲気とし、圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、熱分解性炭素源を導入して600〜900℃で加熱処理を行う工程を包含する製造方法により得られる。
以下本発明の鉄又は炭化鉄内包カーボンチューブ(鉄−炭素複合体)について説明する。
本発明で使用する鉄−炭素複合体においては、炭素部分は、製造工程(1)及び(2)を行った後、特定の速度で冷却するとナノフレークカーボンチューブとなり、製造工程(1)及び(2)を行った後、不活性気体中で加熱処理を行い、特定の冷却速度で冷却することにより、入れ子構造の多層カーボンナノチューブとなる。
<(a-1) ナノフレークカーボンチューブ>
本発明のナノフレークカーボンチューブと炭化鉄又は鉄からなる鉄−炭素複合体は、典型的には円柱状であるが、そのような円柱状の鉄−炭素複合体(特開2002−338220号の実施例1で得られたもの)の長手方向にほぼ垂直な断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図3に示し、側面のTEM写真を図1に示す。
また、図4の(a-1)にそのような円柱状のナノフレークカーボンチューブのTEM像の模式図を示す。図4の(a-1)において、100は、ナノフレークカーボンチューブの長手方向のTEM像を模式的に示しており、200は、ナノフレークカーボンチューブの長手方向にほぼ垂直な断面のTEM像を模式的に示している。
本発明で使用する鉄−炭素複合体を構成するナノフレークカーボンチューブは、代表的には、中空円筒状の形態を有し、その断面をTEM観察した場合、弧状グラフェンシート像が同心円状に集合しており、弧状グラフェンシート像がいくつか集まって、不連続な環を形成しており、また、その長手方向をTEMで観察した場合、略直線状のグラフェンシート像が、長手方向にほぼ並行に多層状に配列しており、個々のグラフェンシート像は、長手方向全長にわたって連続しておらず(長手方向全長よりも短く)、いくつかの短いグラフェンシート像が集まって、不連続な略直線状の像をチューブ長手方向全長に亘って形成しているという特徴を有している。
本発明で使用する鉄−炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブは、図3及び図4の(a-1)の200から明らかなように、その長手方向にほぼ垂直な断面をTEM観察した場合、多数の弧状グラフェンシート像が同心円状(多層構造のチューブ状)に集合しているが、個々のグラフェンシート像は、例えば210、214に示すように、完全に閉じた連続的な環を形成しておらず、途中で途切れた不連続な環を形成している。一部のグラフェンシート像は、211に示すように、分岐している場合もある。不連続点においては、一つの不連続環を構成する複数の弧状TEM像は、図4の(a-1)の222に示すように、層構造が部分的に乱れている場合もあれば、223に示すように隣接するグラフェンシート像との間に間隔が存在している場合もあるが、TEMで観察される多数の弧状グラフェンシート像は、全体として、多層状のチューブ構造を形成している。
また、図1及び図4の(a-1)の100から明らかなように、ナノフレークカーボンチューブの長手方向をTEMで観察した場合、多数の略直線状のグラフェンシート像が本発明で使用する鉄−炭素複合体の長手方向にほぼ並行に多層状に配列しているが、個々のグラフェンシート像110は、鉄−炭素複合体の長手方向全長にわたって連続しておらず、途中で不連続となっている。一部のグラフェンシート像は、図4の(a-1)の111に示すように、分岐している場合もある。また、不連続点においては、層状に配列したTEM像のうち、一つの不連続層のTEM像は、図4の(a-1)の112に示すように、隣接するグラフェンシート像と少なくとも部分的に重なり合っている場合もあれば、113に示すように隣接するグラフェンシート像と少し離れている場合もあるが、多数の略直線状のTEM像が、全体として多層構造を形成している。
かかる本発明のナノフレークカーボンチューブの構造は、従来の多層カーボンナノチューブと大きく異なっている。即ち、図4の(a-2)の400に示すように、入れ子構造の多層カーボンナノチューブは、その長手方向に垂直な断面のTEM像が、410に示すように、完全な円形のTEM像となっている同心円状のチューブであり、且つ、図4の(a-2)の300に示すように、その長手方向の全長にわたって連続する直線状グラフェンシート像310等が平行に配列している構造(同心円筒状ないし入れ子状の構造)である。
以上より、詳細は未だ完全には解明されていないが、本発明で使用する鉄−炭素複合体を構成するナノフレークカーボンチューブは、フレーク状のグラフェンシートが多数パッチワーク状ないし張り子状に重なり合って全体としてチューブを形成しているようにみえる。
本発明で使用する鉄−炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブをTEM観察した場合において、その長手方向に配向している多数の略直線状のグラフェンシート像に関し、個々のグラフェンシート像の長さは、通常、2〜500nm程度、特に10〜100nm程度である。即ち、図4の(a-1)の100に示されるように、110で示される略直線状のグラフェンシートのTEM像が多数集まってナノフレークカーボンチューブの壁部のTEM像を構成しており、個々の略直線状のグラフェンシート像の長さは、通常、2〜500nm程度、特に10〜100nm程度である。
このように、鉄−炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブの最外面を構成する炭素網面の長さは、500nm以下であり、特に2〜500nm、特に10〜100nmである。
本発明で使用する鉄−炭素複合体を構成するナノフレークカーボンチューブの壁部の炭素部分は、上記のようにフレーク状のグラフェンシートが多数長手方向に配向して全体としてチューブ状となっているが、X線回折法により測定した場合に、炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有するものである。
また、本発明で使用する鉄−炭素複合体のナノフレークカーボンチューブからなる壁部の厚さは、75nm以下、特に1〜40nm程度、好ましくは1〜30nm程度であって、全長に亘って実質的に均一である。
<(b)内包されている炭化鉄又は鉄>
本明細書及び特許請求の範囲において、上記カーボンチューブ内空間部の炭化鉄又は鉄による充填率(10〜90%)は、本発明により得られた鉄−炭素複合体を透過型電子顕微鏡で観察し、各カーボンチューブの空間部(即ち、カーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)の像の面積に対する、炭化鉄又は鉄が充填されている部分の像の面積の割合である。
炭化鉄又は鉄の内包形態は、カーボンチューブ内空間部に連続的に内包されている形態、カーボンチューブ内空間部に断続的に内包されている形態等があるが、基本的には断続的に内包されている。従って、本発明で使用する鉄−炭素複合体は、金属内包炭素複合体ないし鉄化合物内包炭素複合体、炭化鉄又は鉄内包炭素複合体とも言うべきものである。
また、本発明で使用する鉄−炭素複合体に内包されている炭化鉄又は鉄は、カーボンチューブの長手方向に配向しており、結晶性が高く、炭化鉄又は鉄が充填されている範囲のTEM像の面積に対する、結晶性炭化鉄又は鉄のTEM像の面積の割合(以下「結晶化率」という)は、一般に、90〜100%程度、特に95〜100%程度である。
内包されている炭化鉄又は鉄の結晶性が高いことは、本発明鉄−炭素複合体の側面からTEM観察した場合、内包物のTEM像が格子状に配列していることから明らかであり、電子線回折において明確な回折パターンが得られることからも明らかである。
また、本発明で使用する鉄−炭素複合体に炭化鉄又は鉄が内包されていることは、電子顕微鏡、EDX(エネルギー分散型X線検出器)により容易に確認することができる。
<鉄−炭素複合体の全体形状>
本発明で使用する鉄−炭素複合体は、湾曲が少なく、直線状であり、壁部の厚さが全長に亘ってほぼ一定の均一厚さを有しているので、全長に亘って均質な形状を有している。その形状は、柱状で、主に円柱状である。
本発明による鉄−炭素複合体の外径は、通常、1〜150nm程度、特に3〜100nm程度の範囲にあり、好ましくは5〜80nm程度の範囲にある。チューブの長さ(L)の外径(D)に対するアスペクト比(L/D)は、5〜10000程度であり、特に10〜1000程度である。
本発明で使用する鉄−炭素複合体の形状を表す一つの用語である「直線状」なる語句は、次のように定義される。即ち、透過型電子顕微鏡により本発明で使用する鉄−炭素複合体を含む炭素質材料を200〜2000nm四方の範囲で観察し、像の長さをWとし、該像を直線状に伸ばした時の長さをWoとした場合に、比W/Woが、0.8以上、特に、0.9以上となる形状特性を意味するものとする。
本発明で使用する鉄−炭素複合体は、バルク材料としてみた場合、次の性質を有する。即ち、本発明では、上記のようなナノフレークカーボンチューブのチューブ内空間部の10〜90%の範囲に鉄または炭化鉄が充填されている鉄−炭素複合体は、顕微鏡観察によりかろうじて観察できる程度の微量ではなく、多数の該鉄−炭素複合体を含むバルク材料であって、鉄−炭素複合体を含む炭素質材料、或いは、炭化鉄又は鉄内包炭素質材料ともいうべき材料の形態で大量に得られる。
特開2002−338220号の実施例1で得られたナノフレークカーボンチューブとそのチューブ内空間に部分充填された炭化鉄からなる本発明炭素質材料の電子顕微鏡写真を、図2に示す。
図2から判るように、本発明で使用する鉄−炭素複合体を含む炭素質材料においては、基本的にはほとんど全ての(特に99%又はそれ以上の)カーボンチューブにおいて、その空間部(即ち、カーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)の10〜90%の範囲に炭化鉄又は鉄が充填されており、空間部が充填されていないカーボンチューブは実質上存在しないのが通常である。但し、場合によっては、炭化鉄又は鉄が充填されていないカーボンチューブも微量混在することがある。
また、本発明の炭素質材料においては、上記のようなカーボンチューブ内空間部の10〜90%に鉄または炭化鉄が充填されている鉄−炭素複合体が主要構成成分であるが、本発明の鉄−炭素質複合体以外に、スス等が含まれている場合がある。そのような場合は、本発明の鉄−炭素質複合体以外の成分を除去して、本発明の炭素質材料中の鉄−炭素質複合体の純度を向上させ、実質上本発明で使用する鉄−炭素複合体のみからなる炭素質材料を得ることもできる。
また、従来の顕微鏡観察で微量確認し得るに過ぎなかった材料とは異なり、本発明で使用する鉄−炭素複合体を含む炭素質材料は大量に合成できるので、その重量を容易に1mg以上とすることができる。後述する本発明製法をスケールアップするか又は何度も繰り返すことにより本発明の該材料は無限に製造できる。
本発明炭素質材料は、該炭素質材料1mgに対して25mm2以上の照射面積で、CuKαのX線を照射した粉末X線回折測定において、内包されている鉄または炭化鉄に帰属される40°<2θ<50°のピークの中で最も強い積分強度を示すピークの積分強度をIaとし、カーボンチューブの炭素網面間の平均距離(d002)に帰属される26°<2θ<27°のピークの積分強度Ibとした場合に、IaのIbに対する比R(=Ia/Ib)が、0.35〜5程度、特に0.5〜4程度であるのが好ましく、より好ましくは1〜3程度である。
本願明細書において、上記Ia/Ibの比をR値と呼ぶ。このR値は、本発明で使用する鉄−炭素複合体を含む炭素質材料を、X線回折法において25mm2以上のX線照射面積で観察した場合に、炭素質材料全体の平均値としてピーク強度が観察されるために、TEM分析で測定できる1本の鉄−炭素複合体における内包率ないし充填率ではなく、鉄−炭素複合体の集合物である炭素質材料全体としての、炭化鉄又は鉄充填率ないし内包率の平均値を示すものである。
尚、多数の本発明鉄−炭素複合体を含む炭素質材料全体としての平均充填率は、TEMで複数の視野を観察し、各視野で観察される複数の鉄−炭素複合体における炭化鉄又は鉄の平均充填率を測定し、更に複数の視野の平均充填率の平均値を算出することによっても求めることができる。かかる方法で測定した場合、本発明で使用する鉄−炭素複合体からなる炭素質材料全体としての炭化鉄又は鉄の平均充填率は、10〜90%程度、特に40〜70%程度である。
また、本発明においては、ハロゲン化鉄に代えて、前記特許文献2(特開2003−73108)又は特許文献3(特開2003−73109)に記載の方法に従い、例えば、(イ)ニッケル、コバルト等からなる群から選ばれる金属のハロゲン化物、又は、(ロ)上記(イ)の金属のハロゲン化物と他の金属(例えば鉄)のハロゲン化物との混合物を用いて、上記鉄−炭素複合体の製造法と同様にして、上記(イ)のニッケル、コバルトなどからなる群から選ばれる金属、又は、上記(ロ)の混合物の構成元素からなる合金、又は、上記ニッケル、コバルト等の炭化物が、ナノフレークカーボンチューブのチューブ内空間部の10〜90%の範囲に存在している金属−炭素複合体を得ることができる。
これら鉄、ニッケル及びコバルトからなる群から選ばれる金属又はその合金とからなり、該ナノフレークカーボンチューブ(a)のチューブ内空間部の10〜90%の範囲に、該金属又はその合金が存在している金属−炭素複合体を含む炭素質材料にも、上記の遷移金属系触媒乃至遷移金属系原料に由来する遷移金属系不純物が含まれている。
本発明の精製法は、特に、上記鉄−炭素複合体(鉄又は炭化鉄が部分的に内包されているナノフレークカーボンチューブ)を含む炭素質材料の精製に有利である。
ナノスケールカーボンチューブ含有炭素質材料
上記のように、本発明の製造法において精製の対象となる炭素質材料は、ナノスケールカーボンチューブ又は遷移金属もしくはその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブを含有する炭素質材料であり、特に、上記のカーボンナノチューブ、アモルファスナノスケールカーボンチューブ、金属−炭素複合体又はこれらの混合物を含有する炭素質材料である。
前記のように、これら炭素質材料は、製造時点では、不純物として、すす、ナノ粒子等の炭素質不純物のほかに、製造時に使用した周期表第8〜10族の遷移金属、特に、鉄、ニッケル、コバルトなどの遷移金属系の触媒ないし原料に由来する遷移金属系不純物を含んでいる。この遷移金属系不純物は、主として遷移金属、特に、鉄、ニッケル、コバルト等の酸化物等であり、その他、過酸化物、未反応の遷移金属系触媒乃至遷移金属系原料も含まれていると思われる。
配位子化合物
本発明の精製法は、上記炭素質材料に含まれている遷移金属系不純物を、配位子化合物を使用して可溶化し、固液分離により炭素質材料から分離する方法である。
本発明で使用する配位子化合物は、該遷移金属系不純物と反応して、当該配位子化合物に可溶の金属錯体を形成するものであれば、特に制限されることなく広い範囲のものが使用できる。かかる配位子化合物としては、常温で液状であるものが好ましいが、加熱により溶融して液状となるもの、或いは、適当な溶媒に溶解させることにより液状となるものであっても差し支えない。
かかる配位子化合物としては、例えば、アセチルアセトン、アミノ酸、蓚酸、エチレンジアミン等のジアミノアルカン類、o-フェニレンジアミン等のo−ジアミノアレン、2,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビオキサゾール、2,2’−ビチアゾール、2,2’−ビピリジン、2−(2−ピリジル)イミダゾール、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、4,6−ジオキソヘプタン酸、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、5−メチル−1,3−ヘキサンジオン、1,1,1,5,5,6,6,7,7,7-デカフルオロ-2,4-ヘプタンジオン等が使用できる。これらの中でも、アセチルアセトンが特に好ましい。
本発明の精製法
本発明の精製法は、
(a)(i)上記炭素質材料と、(ii)遷移金属系不純物と反応して可溶性の金属錯体を形成する配位子化合物とを混合する工程、及び
(b)上記工程(a)で得られる混合物から、未反応配位子化合物及び該未反応配位子化合物に溶解している金属錯体を含む液状成分を分離し、炭素質材料を回収する工程
を含むことを特徴とする。
<工程(a)>
上記工程(a)において、上記炭素質材料と、(ii)遷移金属系不純物と反応して可溶性の金属錯体を形成する配位子化合物とを混合するには、通常公知の混合方法を採用できるが、一般には、精製すべき炭素質材料を、配位子化合物中に均一に分散させるのが好ましい。この観点からは、例えば、炭素質材料を配位子化合物に添加し、超音波を照射して分散させる方式を採用するのが有利である。超音波照射条件としては、通常、固体を液体中に分散させる際に採用されている条件から適宜選択すればよいが、例えば、出力30〜100W程度、周波数20〜60KHz程度の超音波を0.5〜10分間程度照射する条件を採用すると良好な結果が得られる。このような分散の後、系を通常公知の方法で撹拌して混合する。かかる撹拌方法としては、撹拌羽根、スターラーチップ等による撹拌等を例示できる。
配位子化合物の使用量は、通常、形成された可溶性の金属錯体が配位子化合物に溶解するのに足る量を使用すればよく、広い範囲から適宜選択することができるが、一般には、炭素質材料100重量部に対して、配位子化合物を100〜100,000重量部程度、特に1000〜50,000重量部程度使用すると良好な結果が得られる。
工程(a)における混合時の圧力は、特に制限されず、通常は、常圧でよいが、必要であれば、減圧下又は加圧下であってもよい。
また、工程(a)における混合時の温度は、特に限定されず、室温〜配位子化合物の沸点までの広い範囲から適宜選択することができる。一般には、還流条件を使用すると、配位子化合物と炭素質材料中の遷移金属系不純物との反応が迅速に起きるので有利である。特に、ソックスレー抽出機等の装置を用いて、配位子化合物を蒸発させて炭素質材料と接触させて可溶性錯体を形成させ、可溶性錯体を含む配位子化合物を分離回収し、分離回収された配位子化合物を再度蒸発させて炭素質材料と接触させるサイクルを繰り返す方法が有利である。
混合時間は、配位子化合物と遷移金属系不純物との反応が完了するに足る時間である。この混合は、当該混合操作によっても配位子化合物と遷移金属系不純物との反応がそれ以上進行しなくなるまで行うのが好ましい。混合時間は、混合工程(a)での温度条件、配位子化合物の種類及び量等にもよるが、通常は、12〜24時間程度である。
また、一般に配位子化合物と遷移金属系不純物との反応により精製する錯体は着色しているので、生成する錯体が着色している場合は、その着色を利用して混合による配位子化合物と遷移金属系不純物との反応終点を知ることもできる。例えば、鉄系不純物を含有する炭素質材料と、配位子化合物であるアセチルアセトン(淡黄色)とを混合すると、鉄系不純物とアセチルアセトンとの赤色錯体が形成され、炭素質材料とアセチルアセトンとの混合物は赤色を呈する。ソックスレー抽出機で抽出する場合、抽出管内の円筒濾紙の中に炭素質材料を収容し、加熱により受器から気化させ、冷却器で液化させたアセチルアセトンと接触させる。これにより、当初赤色錯体のアセチルアセトン溶液が存在するが、抽出操作(受器で気化し冷却器で液化したアセチルアセトンと炭素質材料とを抽出管内で接触させる操作、及び、錯体のアセチルアセトン溶液をサイホン管を通して受器に戻す操作の繰り返し)により、抽出管内の溶液の色が当初のアセチルアセトンの色と同一となってくる。その時点を反応終点とすることができる。
<工程(b)>
工程(b)は、上記工程(a)での混合により生成した混合物中の未反応配位子化合物、未反応配位子化合物に溶解している可溶性錯体、必要に応じて使用される溶媒等の液状成分から、炭素質材料を分離する工程である。
この分離を行う方法としては、例えば、通常の固液分離に使用されている方法、例えば、濾紙、ガラスフィルターなどを用いて濾過する方法、遠心分離後に濾過する方法等を例示できる。上記混合工程(a)を、ソックスレー抽出機を用いて行った場合は、系全体を室温まで冷却し、円筒濾紙から炭素質材料を取り出せばよい。
こうして、回収された炭素質材料は、公知の方法により乾燥される。乾燥方法としては、特に制限されることなく広い範囲の方法が採用できるが、例えば、温風乾燥機等の装置を用いて、50〜120℃程度で1〜24時間程度乾燥させる方法を例示できる。
こうして乾燥された固体が、本発明方法により精製されて遷移金属系不純物の含量が低減された炭素質材料である。
<工程(c)>
本発明では、必要に応じて、上記工程(b)の分離操作で回収された炭素質材料を更に洗浄する工程を行ってもよく、これにより、該回収された炭素質材料中に残存している可溶性錯体、配位子化合物等を更に除去することができる。
かかる洗浄は、該回収された炭素質材料と溶媒とを接触させることにより行う。かかる溶媒としては、可溶性錯体を溶解できるものであれば、水、各種の有機溶媒等が使用できる。かかる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等の低級アルコール、アセトン等のケトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル等のエーテル、酢酸エチル等のエステル及びトルエン等の芳香族炭化水素、キノリン等が使用できる。これらは1種単独で或いは2種以上を混合して使用される。
これらの中でも、洗浄操作後に、炭素質材料から短時間で蒸発する低沸点有機溶媒が好ましい。かかる低沸点溶媒としては、常圧における沸点が30〜100℃程度、特に30〜80℃程度のもの、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、THF、ジエチルエーテル等を例示することができる。
洗浄操作は、上記洗浄用の溶媒と炭素質材料とを接触させればよい。例えば、工程(b)で回収された炭素質材料を、洗浄用溶媒中に均一に分散させるのが好ましい。この観点からは、例えば、炭素質材料を洗浄用溶媒に添加し、超音波を照射して分散させる方式を採用するのが有利である。超音波照射条件としては、通常、固体を液体中に分散させる際に採用されている条件から適宜選択すればよいが、例えば、出力30〜100W程度、周波数20〜60KHz程度の超音波を0.5〜10分間程度照射する条件を採用すると良好な結果が得られる。
洗浄用溶媒の使用量は、洗浄を行うに有効な量であれば特に限定されず、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、炭素質材料100重量部に対して、洗浄用溶媒を100〜100,000重量部程度、特に1000〜5000重量部程度使用すると良好な結果が得られる。
洗浄時の温度条件は、室温〜洗浄用溶媒の沸点までの広い温度範囲から適宜選択すればよいが、通常は、室温で行うことで十分である。洗浄時の圧力も、特に限定されず、通常は、常圧でよいが、必要であれば、減圧下又は加圧下であってもよい。
洗浄操作後は、通常の固液分離により、炭素質材料を回収する。この分離を行う方法としては、例えば、通常の固液分離に使用されている方法、例えば、濾紙、ガラスフィルターなどを用いて濾過する方法、遠心分離後に濾過する方法、減圧濾過器を使用する方法等を例示できる。
こうして洗浄された炭素質材料は、通常の方法で乾燥されて、精製品とされる。乾燥方法としては、特に制限されることなく広い範囲の方法が採用できるが、例えば、温風乾燥機等の装置を用いて、50〜120℃程度で1〜24時間程度乾燥させる方法を例示できる。
こうして乾燥された固体が、本発明方法により精製されて遷移金属系不純物の含量が低減された炭素質材料である。
精製された炭素質材料
上記本発明の工程(a)及び工程(b)を行い、必要に応じて工程(c)の洗浄を行った後に、回収された炭素質材料は、遷移金属系不純物の含有量が低減されている。
精製炭素質材料中の遷移金属系不純物の残存量を直接測定する方法は知られていないが、後述の実施例の項に記載の方法に従って、精製炭素質材料0.1gをアセチルアセトン10mlに混合して室温(25℃)で6時間マグネティックスターラーを用いて撹拌し、次いで同温度で混合物を1時間静置することにより上澄み液を得、得られる上澄み液中に溶解している遷移金属分濃度をICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置で分析した場合、当該遷移金属分濃度が0〜30ppm、特に0〜10ppmの範囲となるのが好ましい。
こうして得られる精製炭素質材料は、導電性を阻害する遷移金属系不純物の含量が減少しているので、導電性助剤として有利に使用することができる。
以下、実施例及び比較例を掲げて本発明をより一層詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
なお、精製後の炭素質材料中に残留している遷移金属系不純物の量は、次の方法に従って、測定した:
精製炭素質材料0.1gをアセチルアセトン10mlに混合して室温(25℃)で6時間マグネティックスターラーを用いて撹拌し、次いで同温度で混合物を1時間静置する。得られた上澄み液中に溶解している遷移金属分濃度をICP発光分光分析装置(セイコー電子工業社製、「SPS1700HVR」)で分析した。
参考例1
原料としてトルエンを用い、触媒として塩化第2鉄を用い、特開2002−338220号に記載の方法に従って反応を行うことにより、炭化鉄又は鉄がナノフレークカーボンチューブのチューブ内空間部に部分的に内包された鉄−炭素複合体を含む炭素質材料を得た。
得られた鉄−炭素複合体は、SEM観察の結果から、外径20〜100nm、長さ1〜10ミクロンで直線性の高いものであった。また、炭素からなる壁部の厚さは、5〜40nmであり、全長に亘って実質的に均一であった。該壁部は、TEM観察において、その炭素壁面が、入れ子状でもスクロール状でもなく、パッチワーク状(いわゆる paper mache 状ないし張り子状)になっているように見え、また、X線回折法から炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有するナノフレークカーボンチューブであることを確認した。また、X線回折、EDXにより、上記本発明の鉄−炭素複合体には炭化鉄又は鉄が内包されていることを確認した。
得られた本発明の炭素質材料を構成する多数の鉄−炭素複合体を含む炭素質材料を電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、ナノフレークカーボンチューブの空間部(即ち、ナノフレークカーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)への炭化鉄又は鉄の充填率が20〜60%の範囲の種々の充填率を有する鉄−炭素複合体が混在していた。
該多数の鉄−炭素複合体のナノフレークカーボンチューブ内空間部への炭化鉄又は鉄のTEM観察像の複数の視野を観察して算出した平均充填率は30%であった。また、X線回折から算出されたR値は、0.57であった。
実施例1
(a)上記参考例1で得られた鉄−炭素複合体を含む炭素質材料2.5009gを、アセチルアセトン(配位子化合物)500ml中に添加し、超音波洗浄機(出力30W、周波数45KHz)を用いて5分間超音波照射して該炭素質材料をアセチルアセトン中に均一に分散させた後、マグネティックスターラーを用いて、室温で3時間撹拌した。混合物は、鉄−アセチルアセトン錯体の赤色を呈していた。
(b)得られた混合物を、濾紙を用いて濾過し、炭素質材料を、アセチルアセトン、これに溶解している錯体などの液状成分から固液分離して回収した。
(c)回収された炭素質材料を、エタノール300ml中に添加し、超音波洗浄機(出力30W、周波数45KHz)を用いて5分間超音波照射して該炭素質材料をエタノール中に均一に分散させ、得られた混合物を、マグネティックスターラーを用いて、室温で1時間撹拌することにより洗浄した。
洗浄後の混合物を減圧濾過器を用いて濾過し、洗浄された炭素質材料を回収し、温風乾燥機で70℃、4時間乾燥することにより、目的とする精製鉄−炭素複合体含有炭素質材料2.1487gを得た。
こうして得られた精製炭素質材料0.1gをアセチルアセトン10mlに混合して室温(25℃)で6時間マグネティックスターラーを用いて撹拌し、次いで同温度で混合物を1時間静置することにより上澄み液を得、得られた上澄み液中に溶解している鉄分濃度をICP発光分光分析装置(セイコー電子工業社製、「SPS1700HVR」)で分析した。その結果、残留鉄分濃度は、17ppmであった。
なお、対照として、上記参考例1で得られた鉄−炭素複合体を含む炭素質材料0.1gをアセチルアセトン10mlに混合して室温(25℃)で6時間マグネティックスターラーを用いて撹拌し、次いで同温度で混合物を1時間静置することにより上澄み液を得、得られた上澄み液中に溶解している鉄分濃度をICP発光分光分析装置(セイコー電子工業社製、「SPS1700HVR」)で分析した。その結果、残留鉄分濃度は、1800ppmであった。これは、精製前の炭素質材料中の遷移金属系不純物(鉄系不純物)の含有量の目安となる値である。
従って、本発明の精製法により、遷移金属系不純物(鉄系不純物)の含有量が、残留鉄分濃度でみて1800ppmから17ppmへと、約1/100以下まで著しく減少したことが明らかである。
また、本実施例1で得られた精製炭素質材料中の鉄−炭素複合体のナノフレークカーボンチューブ内空間部の炭化鉄又は鉄を、TEM観察像の複数の視野で観察して算出した平均充填率は30%であり、内包されている炭化鉄又は鉄は実質上溶出されていないことが判った。
実施例2
(a)上記参考例1で得られた鉄−炭素複合体を含む炭素質材料2.5021gを、円筒濾紙に入れ、アセチルアセトン300mlを配位子化合物として使用し、ソックスレー抽出機を使用して6時間還流させた。
即ち、ソックスレー抽出機の受器に入れたアセチルアセトンを加熱して気化させ、冷却器で液化させ、抽出管に入れた炭素質材料と接触させる。これにより、鉄系不純物とアセチルアセトンとの赤色錯体が形成され、炭素質材料とアセチルアセトンとの混合物は、赤色を呈する。炭素質材料を存在させた抽出管において、当初赤色錯体のアセチルアセトン溶液が存在しているが、抽出操作(受器で気化し冷却器で液化したアセチルアセトンと炭素質材料とを抽出管内で接触させる操作、及び、錯体のアセチルアセトン溶液をサイホン管を通して受器に戻す操作の繰り返し)により、抽出管内の溶液の色が当初のアセチルアセトンの色と同一となってくる。その時点を反応終点とした。
(b)系全体を室温まで冷却し、円筒濾紙から炭素質材料を取り出した。
(c)回収された炭素質材料を、エタノール300ml中に添加し、超音波洗浄機(出力30W、周波数45KHz)を用いて5分間超音波照射して該炭素質材料をエタノール中に均一に分散させ、得られた混合物を、マグネティックスターラーを用いて室温で1時間撹拌することにより洗浄した。
洗浄後の混合物を減圧濾過器を用いて濾過し、洗浄された炭素質材料を回収し、温風乾燥機で70℃、4時間乾燥することにより、目的とする精製鉄−炭素複合体含有炭素質材料2.1549gを得た。
得られた精製炭素質材料について、実施例1と同様にしてICP分析を行った結果、上澄み液中の残留鉄分濃度は、6.7ppmであった。
また、得られた精製炭素質材料中の鉄−炭素複合体のナノフレークカーボンチューブ内空間部の炭化鉄又は鉄を、TEM観察像の複数の視野で観察して算出した平均充填率は30%であった。このことから、本発明の精製法により、内包されている炭化鉄又は鉄は実質上溶出されないことが判った。
実施例3
鉄−炭素複合体を含む炭素質材料2.5013gを使用し、還流時間を18時間に延長した以外は実施例2と同様にして精製を行った。こうして、精製鉄−炭素複合体含有炭素質材料2.1023gを得た。
得られた精製炭素質材料について、実施例1と同様にしてICP分析を行った結果、上澄み液中の残留鉄分濃度は、2.9ppmであった。
また、得られた精製炭素質材料中の鉄−炭素複合体のナノフレークカーボンチューブ内空間部の炭化鉄又は鉄を、TEM観察像の複数の視野で観察して算出した平均充填率は、やはり30%であった。このことから、本発明の精製法により、内包されている炭化鉄又は鉄は実質上溶出されないことが判った。
実施例4
鉄−炭素複合体を含む炭素質材料2.5021gを使用し、洗浄用溶媒としてエタノールに代えてイソプロピルアルコール(IPA)を使用した以外は実施例2と同様にして精製を行った。こうして、精製鉄−炭素複合体含有炭素質材料2.1432gを得た。
得られた精製炭素質材料について、実施例1と同様にしてICP分析を行った結果、上澄み液中の残留鉄分濃度は、7.0ppmであった。
また、得られた精製炭素質材料中の鉄−炭素複合体のナノフレークカーボンチューブ内空間部の炭化鉄又は鉄を、TEM観察像の複数の視野で観察して算出した平均充填率は、やはり30%であった。このことからも、本発明の精製法により、内包されている炭化鉄又は鉄は実質上溶出されないことが判った。
比較例1
(a)上記参考例1で得られた鉄−炭素複合体を含む炭素質材料2.5108gを、1規定の塩酸300mlに分散させ、室温で18時間撹拌した。
(b)得られた混合物を、濾紙を用いて濾過し、炭素質材料を、液状成分から固液分離して回収した。
(c)回収された炭素質材料を、水300ml中に添加し、超音波洗浄機(出力30W、周波数45KHz)を用いて5分間超音波照射して該炭素質材料を水中に均一に分散させ、得られた混合物を、室温で1時間撹拌することにより洗浄した。洗浄後の炭素質材料を、濾紙を用いて濾取し、更に、エタノール300ml中に添加し、超音波洗浄機(出力30W、周波数45KHz)を用いて5分間超音波照射して該炭素質材料をエタノール中に均一に分散させ、得られた混合物を、室温で1時間撹拌することにより洗浄した。洗浄後の炭素質材料を、濾紙を用いて濾取し、温風乾燥機で70℃、4時間乾燥することにより、目的とする精製鉄−炭素複合体含有炭素質材料1.8953gを得た。
得られた精製炭素質材料について、実施例1と同様にしてICP分析を行った結果、上澄み液中の残留鉄分濃度は、2.0ppmであった。
また、得られた精製炭素質材料中の鉄−炭素複合体のナノフレークカーボンチューブ内空間部の炭化鉄又は鉄を、TEM観察像の複数の視野で観察して算出した平均充填率は約10%であり、内包されている炭化鉄又は鉄が溶出されていることが判った。
特開2002−338220号の実施例1で得られた炭素質材料を構成する鉄−炭素複合体1本の電子顕微鏡(TEM)写真である。 特開2002−338220号の実施例1で得られた炭素質材料における鉄−炭素複合体の存在状態を示す電子顕微鏡(TEM)写真である。 特開2002−338220号の実施例1で得られた鉄−炭素複合体1本を輪切状にした電子顕微鏡(TEM)写真である。尚、図3の写真中に示されている黒三角(▲)は、組成分析のためのEDX測定ポイントを示している。 カーボンチューブのTEM像の模式図を示し、(a-1)は、円柱状のナノフレークカーボンチューブのTEM像の模式図であり、(a-2)は入れ子構造の多層カーボンナノチューブのTEM像の模式図である。
符号の説明
100 ナノフレークカーボンチューブの長手方向のTEM像
110 略直線状のグラフェンシート像
200 ナノフレークカーボンチューブの長手方向にほぼ垂直な断面のTEM像
210 弧状グラフェンシート像
300 入れ子構造の多層カーボンナノチューブの長手方向の全長にわたって連続する直線状グラフェンシート像
400 入れ子構造の多層カーボンナノチューブの長手方向に垂直な断面のTEM像

Claims (14)

  1. ナノスケールカーボンチューブ又は遷移金属もしくはその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブ及び遷移金属系不純物を含む炭素質材料の精製法であって、
    (a)(i)該炭素質材料と、(ii)該遷移金属系不純物と反応して可溶性の金属錯体を形成する配位子化合物とを混合する工程、及び
    (b)上記工程(a)で得られる混合物から、未反応配位子化合物及び該未反応配位子化合物に溶解している金属錯体を含む液状成分を分離し、炭素質材料を回収する工程
    を含むことを特徴とする精製法。
  2. 炭素質材料が、遷移金属又はその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブ及び遷移金属系不純物を含む炭素質材料である請求項1に記載の精製法。
  3. 遷移金属が、周期表の第8族、第9族及び第10族金属からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の精製法。
  4. 遷移金属が、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の精製法。
  5. 遷移金属が、鉄である請求項1又は2に記載の精製法。
  6. 遷移金属又はその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブが、(a)ナノフレークカーボンチューブと、(b)鉄、ニッケル及びコバルトからなる群から選ばれる金属又はその合金とからなり、該ナノフレークカーボンチューブ(a)のチューブ内空間部の10〜90%の範囲に、該金属又はその合金が存在している金属−炭素複合体である請求項2〜5のいずれかに記載の精製法。
  7. ナノスケールカーボンチューブの最外面を構成する炭素網面の長さが500nm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の精製法。
  8. 配位子化合物が、アセチルアセトン、アミノ酸、蓚酸、ジアミノアルカン類、o−ジアミノアレン類、2,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビオキサゾール、2,2’−ビチアゾール、2,2’−ビピリジン、2−(2−ピリジル)イミダゾール、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、4,6−ジオキソヘプタン酸、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、5−メチル−1,3−ヘキサンジオン及び1,1,1,5,5,6,6,7,7,7-デカフルオロ-2,4-ヘプタンジオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の精製法。
  9. 工程(a)において、(i)炭素質材料と(ii)配位子化合物との混合を、室温〜配位子化合物の沸点の温度範囲で行う請求項1〜8のいずれかに記載の精製法。
  10. 混合工程(a)を、ソックスレー抽出機を用いて行う請求項1〜9のいずれかに記載の精製法。
  11. 工程(b)において回収された炭素質材料を、溶媒で洗浄する工程を更に含む請求項1〜10のいずれかに記載の精製法。
  12. 溶媒が、常圧における沸点が30〜100℃の低沸点有機溶媒である請求項11に記載の精製法。
  13. 溶媒が、低級アルコール、ケトン、エーテル、エステル及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項12に記載の精製法。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の精製法を行なうことにより得られる、遷移金属系不純物の含量が減少された、ナノスケールカーボンチューブ又は遷移金属もしくはその合金をチューブ内空間部に内包するナノスケールカーボンチューブを含む炭素質材料。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009023886A (ja) * 2007-07-20 2009-02-05 Nara Institute Of Science & Technology カーボンナノチューブ分散液およびその製造方法、並びにその利用
CN102923692A (zh) * 2012-11-21 2013-02-13 光明乳业股份有限公司 一种纯化碳纳米管的方法
WO2022005163A1 (ko) * 2020-06-30 2022-01-06 한국생산기술연구원 이온성 액체를 이용한 탄소나노튜브의 정제방법

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