以下、本発明を、実施の形態によって、より詳細に説明する。
<静電潜像現像剤用キャリア及びその製造方法>
本発明の静電潜像現像剤用キャリアは、マトリックス樹脂中に、少なくとも無機粒子を含む複合樹脂粒子と導電性微粉末と、を分散含有せしめた樹脂被覆層を、芯材表面に形成してなることを特徴とする。
本発明者等は、特開平9−269614号公報に開示されているキャリア構成を鋭意検討した結果、樹脂被覆層中に分散される樹脂粒子の帯電特性がキャリア特性に影響し、かつこの樹脂粒子の帯電付与性が湿度や温度等の環境変化によって変動しやすいことを確認した。そしてさらに検討を進めた結果、前記樹脂粒子を、無機粒子を含む複合樹脂粒子とすることで、帯電特性をより安定に保たせることができることをつきとめた。
すなわち、樹脂粒子単独組成では帯電特性が湿度や温度等の環境変化によって変動しやすいが、無機粒子を樹脂粒子中に存在させることで、詳細は不明だが無機粒子の働きによって帯電性が安定するものと思われる。この場合、前記無機粒子を単に被覆樹脂層のマトリックス樹脂中に分散させることによっても前記効果はある程度期待できるが、上記無機粒子は被覆樹脂層中に均一に分散されることで、前記環境変化に対する帯電特性をより安定化できるものと考えられる。
本発明においては、以上の観点から前記無機粒子を樹脂粒子に含ませることにより、樹脂被覆層中に無機粒子を均一に存在させ、前記無機粒子の添加による帯電特性の安定化を最大限に発揮できることを見出したものである。
本発明の静電潜像現像剤用キャリアの一形態を図1に示す。キャリア1は、マトリックス樹脂21中に無機粒子を含む複合樹脂粒子22と、導電性微粉末23とを分散含有せしめた樹脂被覆層20を、芯材30表面に形成されてなる。
マトリックス樹脂21と、無機粒子を含む複合樹脂粒子22の樹脂とは、製法や分子量等の違いによって、そのような形態に区分できるならば同じ種類であってもよいが、性能がより異なる材料によって、複数の機能をバランス良く達成する観点からは、異なる種類であることが好ましい。
無機粒子を含む複合樹脂粒子22は、マトリックス樹脂21中に、樹脂被覆層20の厚み方向、キャリア表面の接線方向にできるだけ均一に分散しているのが好ましい。同時に樹脂被覆層20のマトリックス樹脂21も同様に均一であるのが好ましい。これによって、キャリア全体で帯電付与能、及びスペント防止機能が均一に働き、その機能が安定的に発揮できる。しかも、樹脂被覆層20が長時間の使用によってその表面から磨耗していっても、未使用時と同様な表面組成を常に保つことができ、上記機能を長期間維持することが可能である。
マトリックス樹脂21と、無機粒子を含む複合樹脂粒子22の樹脂とは、高い相溶性(つまり、マトリックス樹脂21の原料と無機粒子を含む複合樹脂粒子22の原料樹脂とを混ぜた場合には、それらが相分離しないことをいう)であることが、分散の均一性を向上できるので好ましい。特に無機粒子を含む複合樹脂粒子22を一次粒子径で均一に分散させることができるので好ましい。
樹脂被覆層20中に分散される無機粒子を含む複合樹脂粒子22としては、熱可塑性樹脂粒子、熱硬化性樹脂粒子のいずれも用いることができる。その微粒子形態を作製するためには、後述するような適切な粒径が得られるならば、任意の方法が利用されてよい。なお、無機粒子を含む複合樹脂粒子22は、マトリックス樹脂21に混合分散する前に、微粒子形態となっていることが好ましい。その混合分散の均一性の確保や、分散の均一性の確認がしやすいからである。
無機粒子を含む複合樹脂粒子22に含まれる樹脂は、それが担う所望の機能に応じて、各種の樹脂から適宜選択すればよいが、熱可塑性樹脂の場合は溶剤中で溶けない場合でも膨潤する場合がある為、使用する溶剤種範囲を広くできる熱硬化性樹脂が好ましい。
前記熱可塑性樹脂の例としては、具体的には、ポリオレフィン系樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン;ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品;フッ素樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン;ポリエステル;ポリカーボネート等が挙げられる。これら樹脂形成と共にジビニルベンゼン等の架橋成分を同時に用いて硬化樹脂粒子とすることもできる。
前記熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂;アミノ樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂;エポキシ樹脂、等が挙げられる。
これらの樹脂の中では、帯電序列的に正であり、トナーに対して負帯電付与能を有する窒素原子を含有する樹脂を用いることが好ましい。そして特に、熱硬化性であり、トナーに対する負帯電付与能が高いメラミン樹脂を用いることが好ましい。
なお、無機粒子を含む複合樹脂粒子22によって、キャリアの機械的な強度を向上させるためにも、比較的硬度を上げやすい熱硬化性樹脂粒子を用いることが好ましい。
前記無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム等をあげることができるが、帯電付与能力を調整する目的からシリカが好ましい。
上記無機粒子としては、分散性の観点から、親水性であることが好ましく、粒径としては、5〜100nmの範囲(1次粒径)、形状は不定形であることが好ましい。
本発明における無機粒子を含む複合樹脂粒子を製造する方法としては、サスペンジョン重合、乳化重合、懸濁重合などの重合方法を利用して粒状樹脂を製造する方法、モノマーもしくはオリゴマーを貧溶媒中に分散して、架橋反応を行いつつ表面張力により粒状化する方法、低分子成分と架橋剤とを溶融混練などにより、混合反応させた後、風力、機械力により、所定の粒度に粉砕する方法などが挙げられる。
以下に具体的な製造方法を例示する。
製造方法は下記に限定されるものではないが、例えば次の工程(a)及び(b)によって、無機粒子としてシリカを含む球状複合メラミン樹脂粒子(複合樹脂粒子)を製造することができる。
(a)水性媒体中、5〜70nmの平均粒子径を有するコロイダルシリカの懸濁下で、メラミン化合物とアルデヒド化合物とを塩基性条件下で反応させて、水に可溶なメラミン系樹脂の初期縮合物の水溶液を生成させる工程、及び
(b)(a)工程で得られた水溶液に酸触媒を加えて、球状複合メラミン樹脂粒子を析出させる工程。
上記(a)工程で使用されるメラミン化合物としては、メラミン、メラミンのアミノ基の水素をアルキル基、アルケニル基、フェニル基で置換した置換メラミン化合物など公知のものが使用できる。この中では安価なメラミンが最も好ましい。
前記アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラールなどが挙げられるが、安価でメラミン化合物との反応性が良いホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒドが好ましい。
アルデヒド化合物としては、前記メラミン化合物1モルに対して有効アルデヒド基当たり1.1〜6.0モル、特に1.2〜4.0モルとなるように配合することが好ましい。
前記コロイダルシリカは、5〜70nmの範囲の平均粒子径を有するものが使用される。より好ましくは5〜50nmの範囲、さらに好ましくは5〜30nmの範囲である。沈降性シリカパウダー、気相法シリカパウダーなどのパウダー状のコロイダルシリカを使用することもできるが、好ましくは媒体中で一次粒子レベルまで安定分散させたコロイダルシリカのゾルを使用すると良い。
コロイダルシリカの平均粒子径が70nmを超える場合は、前記(b)工程で析出する複合メラミン樹脂粒子は球状粒子になり難くなる場合がある。また、5nmに満たないと、粒度分布がシャープに制御し難くなる場合がある。球状複合メラミン樹脂粒子の平均粒子径は、一般的にメラミン系樹脂濃度が低いほど、またコロイダルシリカの平均粒子径が小さいほど小さくなる。
コロイダルシリカの添加量は、メラミン化合物100質量部に対して0.5〜100質量部の範囲、特に1〜50質量部の範囲であることが好ましい。添加量が0.5質量部未満では、前記(b)工程で球状複合メラミン樹脂粒子を得ることが困難になる。また、添加量が100質量部を超えても球状硬化メラミン樹脂粒子が得られるが、この場合、球状複合メラミン樹脂粒子に比べ、微小で球状でない凝集粒子が副生するので好ましくない。
また、必要に応じて球状複合メラミン樹脂粒子を、無機化合物粒子で表面被覆しても良い。例えば、球状複合メラミン樹脂粒子と無機化合物粒子とを直接又は水性媒体中で混合させれば良い。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの一般的な蒸着法にて、無機化合物粒子で表面被覆させることも可能である。
さらに必要に応じて球状複合メラミン樹脂粒子表面に存在するコロイダルシリカを表面処理しても良い。例えば、下記式(I)〜(III)で示されるケイ素化合物で表面処理をすることができる。
R1Si(X)3 ・・・ (I)
R1R2Si(X)2 ・・・ (II)
R1R2R3SiX ・・・ (III)
上記各式中、R1は、炭素数1〜20のアルキル基またはパーフルオロアルキル基を表し、R2およびR3は、それぞれ水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、パーフルオロアルキル基、またはアリール基を表し、Xは塩素原子、アルコキシ基、NCO基、またはアセトキシ基を表す。
このような表面処理により、感光体表面のコメットやフィルミングの発生防止、トナーへの分散性や密着性、さらには疎水性の制御に伴う帯電の安定性、電荷交換性等の向上効果がより一層期待される。
ここで、前記表面処理に使用される処理剤(カップリング剤)としては、次のようなものを例示することができる。
前記式(I)で示される化合物としては、CH3Si(Cl)3、CH3Si(OCH3)3 、CH3Si(OC2H5)3 、CH3CH2Si(OCH3)3、CH3(CH2)2Si(OCH3)3、CH3(CH2)3Si(OCH3)3、CH3(CH2)4Si(OCH3)3、CH3(CH2)5Si(OCH3)3、CH3(CH2)6Si(OCH3)3、CH3(CH2)7Si(OCH3)3、CH3(CH2)8Si(OCH3)3、CH3(CH2)9Si(OCH3)3、CH3(CH2)10Si(OCH3)3、CH3(CH2)11Si(OCH3)3、CH3(CH2)12Si(OCH3)3、CH3(CH2)13Si(OCH3)3、CH3(CH2)14Si(OCH3)3、CH3(CH2)15Si(OCH3)3、CH3(CH2)16Si(OCH3)3、CH3(CH2)17Si(OCH3)3、CH3(CH2)18Si(OCH3)3、CH3(CH2)19Si(OCH3)3、CH3(CH2)5Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)6Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)7Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)8Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)9Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)10Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)11Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)12Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)13Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)14Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)15Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)16Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)17Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)18Si(OCO2H5)3、CH3(CH2)19Si(OCO2H5)3、CF3Si(OCH3)3、CH3Si(NCO)3等が挙げられる。
前記式(II)で示される化合物としては、(CH3)2SiC12、(CH3)2Si(OCH3)2、(CH3)2Si(OC2H5)2、(CH3)(CH3CH2)Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)2]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)3]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)4]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)5]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)6]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)7]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)8]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)9]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)10]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)11]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)12]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)13]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)14]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)15]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)16]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)17]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)18]Si(OCH3)2、(CH3)[CH3(CH2)19]Si(OCH3)2、(CH)2Si(NCO)2 等が挙げられる。
前記式(III)で示される化合物としては、(CH3)3SiCl、(CH3)3Si(OCH3)、(CH3)3Si(OC2H5)、(CH3)2(CH3CH2)Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)2]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)3]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)4]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)5]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)6]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)7]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)8]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)9]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)10]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)11]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)12]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)13]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)14]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)15]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)16]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)17]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)18]Si(OCH3)、(CH3)2[CH3(CH2)19]Si(OCH3)等が挙げられる。
これらの中でも、帯電量の増加という点で、上記式(I)で示されるものが好ましく、特にCH3(CH2)nSi(OCH3)3(ただし、n=5〜19)が好ましい。また、同様の理由で、R1が炭素数7〜16のアルキル基またはパーフルオロアルキル基であるものが好ましい。
前記カップリング剤による処理は、例えば、カップリング剤を含有する溶液中に球状複合メラミン樹脂粒子を浸漬し、乾燥する方法の場合は、均一な被覆を形成することができるので好ましい。前記カップリング剤の付着量は、球状複合メラミン樹脂粒子に対して0.1〜25質量%の範囲であることが好ましい。
また、球状複合メラミン樹脂粒子自体の表面をシリコーンオイル等で処理しても良い。該処理には公知のシリコーンオイルを用いることができ、気相中で浮遊させられた粒子に対して処理剤または処理剤を含む溶液を噴霧するスプレードライ法等による乾式法や処理剤を含有する溶液中に粒子を浸漬し、乾燥する湿式法で処理することができる。
以上の述べたような方法により、無機粒子を含む複合樹脂粒子得ることができる。
図2に、作製された複合樹脂粒子の一例の断面を模式的に示す。図2において、40は複合樹脂粒子22を構成する樹脂、50は無機粒子を示す。本発明における複合樹脂粒子中では、無機粒子50が均一に分散されていても、不均一に分散されていてもよいが、前述の製造方法によれば、複合樹脂粒子22は図2に示すように、無機粒子50が複合樹脂粒子22の表面近傍に偏在した構成となる。
本発明においては、後述するように上記無機粒子50が複合樹脂粒子22の表面に一部露出していることが好ましく、このためには複合樹脂粒子22の製造において、少ない添加量で前記無機粒子50の露出を発現させる観点から、図2に示すように、無機粒子50は複合樹脂粒子22の表面近傍に偏在していることが好ましい。
ここで、上記「偏在」とは、複合樹脂粒子22の粒径に対し表面から深さ方向に10%の範囲に、複合樹脂粒子22に含まれる無機粒子50の40〜100%の範囲(数)が存在することをいう。
前述の製造方法によれば、無機粒子50を含む複合樹脂粒子22は、無機粒子50であるコロイダルシリカが、粒子表面付近に偏在した球状メラミン樹脂粒子となる。無機粒子50としては、図2の51に示すような複合樹脂粒子表面付近の樹脂40内に埋め込まれた状態のもの、52に示すような粒子表面に半分以上露出し固着した状態のもの、53に示すような僅かな部分のみを露出させたもの等が存在する。
したがって、この複合樹脂粒子22は大まかにみれば球形を呈しているが、上記のように無機粒子50はその形状を保持したまま複合樹脂粒子22に取り込まれながら無機粒子50の一部が表面に露出するものがあるので、表面はミクロにみれば凸凹形状の状態になっている。
樹脂被覆層として形成した時のマトリックス樹脂と、従来の樹脂単独粒子とは、化学的に結びついていることはないため、これらによる複合膜を形成する(キャリアを作製する)際や、キャリアが複写機/プリンター内で使用される際には、樹脂粒子がマトリックス樹脂層から脱落しやすい。一方、無機粒子50を含む複合樹脂粒子22は表面が細かく凸凹形状を有しているのでアンカー効果的にマトリックス樹脂から脱落し難い長所がある。
このように、本発明においては、複合樹脂粒子22がマトリックス樹脂中に分散された場合でも、無機粒子50が効果的に帯電特性に寄与できることや、前記マトリックス樹脂に対する複合樹脂粒子のアンカー効果を有効とするため、無機粒子50は複合樹脂粒子22の表面に一部露出していることが好ましい。
ここで、上記「一部露出」とは、図2における52や53で示される無機粒子50の状態をいう。
本発明における無機粒子を含む複合樹脂粒子の体積平均粒径は、0.05〜1μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmの範囲である。体積平均粒径が0.05μmより小さいと樹脂被覆層での分散が非常に悪く、1μmより大きいと樹脂被覆層からの脱落が生じ易く、本来の機能を維持できなくなる。
また、樹脂被覆層の平均厚さを1とした場合、無機粒子を含む複合樹脂粒子22の体積平均粒径は、1以下であることが好ましく、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは、0.5以下である。体積平均粒径をこの範囲とすることで、複合樹脂粒子の樹脂被覆層中での分散が均一となりやすいからである。
なお、前記樹脂被覆層の平均厚さの測定法については後述する。
本発明においては、無機粒子を含む複合樹脂粒子の個数粒径分布はある程度の範囲に制御されていることが望ましい。具体的には、複合樹脂粒子の個数平均粒径をd50としたとき、1/2×d50以下の粒径を有する微粒子の割合が20個数%以下、2×d50以上の粒径を有する微粒子の割合が20個数%以下であることが好ましい。
また、上記割合は15個数%以下であることがより好ましく、10個数%以下であることがさらに好ましい。
1/2×d50以下の粒径を有する微粒子の割合が20個数%を越える場合には、小径の微粒子同士の凝集が数多く現れるために、樹脂被覆層の組成の均一性が低下する。更に、トナーへの接触帯電付与性が不安定となる。一方、2×d50以上の粒径を有する微粒子の割合が20個数%を越える場合には、樹脂被覆層からの複合樹脂粒子の逸脱が起きやすく、トナーへの帯電付与性が、現像剤の使用に伴って変化するようになるため、安定性が損なわれる。
なお、本発明において、前記体積平均粒径、個数平均粒径、及び微粒子の粒径分布は、例えばレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(商品名:マスターサイザー2000、マルバーン社製)により測定することができる。
また、本発明における無機粒子を含む複合樹脂粒子の形状は、特に制限されないが、図2に示すような球状形状であることが好ましい。
無機粒子を含む複合樹脂粒子の量は、樹脂被覆層中に1〜50質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量%の範囲、さらに好ましくは5〜20質量%の範囲である。1質量%未満では無機粒子添加による前記効果を発現させることができず、50質量%を超えると樹脂被覆層そのものが脆くなりやすい。
前記無機粒子を含む複合樹脂粒子を含む樹脂被覆層のマトリックス樹脂は、キャリアの被覆樹脂として当業界で利用され得る任意の樹脂から、選択されてよい。その樹脂は、単独でも二種以上でもよい。
具体的には、ポリオレフィン系樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン;ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂又はその変性品;フッ素樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂;エポキシ樹脂、等が挙げられる。
静電潜像現像剤用キャリアにおいては、マトリックス樹脂として、好ましくは臨界表面張力(γc)が35mN/m以下、より好ましくは30mN/m以下の樹脂を用いることが好ましい。このマトリックス樹脂によって、キャリア表面は低エネルギーとなり、その表面へトナーによるスペントを抑制できるからである。
上記臨界表面張力が35mN/m以下の樹脂としては、例えば、ポリスチレン(γc=33mN/m)、ポリエチレン(γc=31mN/m)、ポリフッ化ビニル(γc=28mN/m)、ポリフッ化ビニリデン(γc=25mN/m)、ポリトリフルオロエチレン(γc=22mN/m)、ポリテトラフルオロエチレン(γc=18mN/m)、ポリヘキサフルオロプロピレン(γc=16mN/m)等の他に、フッ化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ素化単量体のターポリマーのようなフルオロターポリマー等の臨界表面張力で35mN/m以下の樹脂が使用できる。
上記樹脂の中では、特に臨界表面張力で30mN/m以下を示すフッ素を含む樹脂、重合体及び又はシリコーン樹脂を含有するのが好適である。
上記臨界表面張力は、具体的には以下のようにして求めることができる。
まず、表面張力が既知のn−アルカン族液体を数種類(表面張力が20〜40mN/mの範囲の程度のもの)用意し、20℃の環境下でこれらを注射器で液滴としたものを、フッ素原子含有樹脂表面に滴下し、各々の液滴のフッ素原子含有樹脂表面に対する接触角θを接触角計(例えば自動接触角計CA−Z、協和界面科学社製)により測定する。
次に、上記接触角値θのcosθ値を、前記各々の液体の表面張力に対しプロットし(Zismanプロット)、該プロットの外挿線がcosθ=1.0のラインと交わる点の表面張力値を臨界表面張力とする。
樹脂被覆層中に混在させる導電性微粉末は、キャリアの導電性を調整するために利用される。すなわち、樹脂被膜の厚膜化にともなってキャリアは絶縁化され、現像時、現像電極として働きにくくなるので、特に黒ベタ部でエッジ効果が出る等、ソリッドの再現性に劣ることとなるが、それを改善する機能を有する。
導電性微粉末自身の導電性は、体積抵抗率で1010Ωcm以下が好ましく、109 Ωcm以下がより好ましい。そのような範囲の導電性を持つ微粉末から、マトリックス樹脂の種類等に応じて、適宜選択すればよい。導電性微粉末の具体例としては、金、銀、銅のような金属や;カーボンブラック;更に酸化チタン、酸化亜鉛のような半導電性酸化物;酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズやカーボンブラック、金属で覆ったもの等が挙げられる。製造安定性、コスト、導電性の良さからカーボンブラックが好ましい。カーボンブラック種類としては特に制限されるものではなく公知のものが使用でき、特に好ましくは製造安定性のよいDBP(ジブチルフタレート)吸油量が50〜300ml/gの範囲のカーボンブラックが好ましい。なお、体積平均粒径は、0.1μm以下が好ましく、分散のためには一次粒子径が50nm以下が好ましい。
樹脂被覆層を、キャリア芯材(芯材)の表面に形成する方法としては、代表的には、樹脂被覆層形成用溶液(溶剤中に、マトリックス樹脂、無機粒子を含む複合樹脂粒子、導電性微粉末等を含む溶液)を利用する。具体的には、例えば、キャリア芯材の粉末を、樹脂被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、樹脂被覆層形成用溶液をキャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で樹脂被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と樹脂被覆層形成用溶液を混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法が挙げられるが、本発明においてはニーダーコーター法が、特に好ましく用いられる。
本発明の静電潜像現像剤用キャリアにおいて用いられる芯材(キャリア芯材)としては、特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、又は、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、磁気ブラシ法を用いる観点からは、磁性キャリアであるのが望ましい。キャリア芯材の体積平均粒径としては、10μm〜150μmの範囲ものが好ましく、より好ましくは30μm〜100μmの範囲のものが用いられる。
樹脂被覆層形成用溶液に使用する溶剤は、前記マトリックス樹脂を溶解するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類が使用できる。
一方、無機粒子を含む複合樹脂粒子は、溶剤中で既に微粒子状となっていることが好ましいので、複合樹脂粒子は、前記溶剤に実質的に溶けないこと(溶剤不溶性)が好ましい。これによって、複合樹脂粒子は、樹脂被覆層中で、凝集せず、一次粒子の形態を保つ。
無機粒子を含む複合樹脂粒子は、溶剤中に均一に分散していれば、形成される樹脂被覆層中でも、均一に分散されるので、そのように樹脂被覆層形成用溶液を調製することが好ましい。このような均一分散は、溶液であるので極めて容易に達成できる。例えば、その溶液全体を攪拌すれば十分である。
このように、マトリックス樹脂、溶剤に不溶な複合樹脂粒子を用いることによって、その両材料を適切に選定することが可能なので、その一方によって、安定な帯電性付与能、機械的な強度、スペント防止性を向上させ、他方によって、残りを向上させることが可能となる。例えば、樹脂粒子によって、安定な帯電性付与能と機械的な強度とを向上させ、マトリックス樹脂によって、十分なスペント防止機能を発揮させることができるが、さらに、樹脂粒子として本発明における無機粒子を含む複合樹脂粒子を使用することによって、湿度や温度等の環境変化に対して帯電付与特性を十分安定にし、樹脂被覆層からの樹脂粒子の脱落を抑制できるのでより長期的に安定化することができる。
しかも、本発明においては無機粒子を含む複合樹脂粒子を、マトリックス樹脂中に均一に分散させることができるので、トナーへの帯電性付与能や、スペント防止機能を安定的に発揮するのに適している。また、この均一分散によって、樹脂被覆層が長時間の使用によってその表面から磨耗していっても、未使用時と同様な表面組成を保つことができ、上記安定な帯電性付与能や、安定なスペント防止機能を維持することが可能である。
加えて、樹脂被覆層に導電性微粉末が含まれているので、キャリアの電気的な性能を、より望ましいものに制御可能である。
前記のようにして形成される樹脂被覆層の平均膜厚(平均厚さ)は、0.1〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.2〜3μmの範囲である。この樹脂被覆層平均膜厚は、キャリア芯材の比重をρD 、キャリア芯材の体積平均粒径をD、コートした複合樹脂粒子を含む樹脂の平均比重をρC 、樹脂の全被覆量をWC としたとき、下記式によって簡単に計算される。
平均膜厚(l)=[キャリア1個当たりの被覆樹脂量(無機粒子を含む複合樹脂粒子を含む)/キャリア1個当たりの表面積]÷被覆樹脂の平均比重
=[4/3π・(D/2)3 ・ρD・WC]/[4π(D/2)3 ]÷ρC
=(1/6)・(D・ρD ・WC /ρC )
本発明においては、キャリア抵抗は、1×108〜1×1014Ωcmの範囲に制御されることが好ましく、1×108〜1×1013Ωcmの範囲であることがより好ましく、1×108〜1×1012Ωcmの範囲であることがさらに好ましい。
キャリア抵抗が1×1014Ωcmを超える高抵抗になり、現像時に現像電極として働きにくくなるため、特にベタ画像部でエッジ効果が出るなど、ソリッド再現性が低下する。一方、1×108Ωcm未満の低抵抗になるため、現像剤中のトナー濃度が低下した時に現像ロールからキャリアへ電荷が注入し、キャリア自体が現像されてしまう不具合が発生しやすい。
上記キャリア抵抗(Ω・cm)は以下のように測定した。なお、測定環境は、温度20℃、湿度50%RHとした。
20cm2の電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象となるキャリアを1〜3mm程度の厚さになるように平坦に載せ、キャリア層を形成する。この上に前記同様の20cm2の電極板を載せキャリア層を挟み込む。キャリア間の空隙をなくすため、キャリア層上に載置した電極板の上に4kgの荷重をかけてからキャリア層の厚み(mm)を測定する。キャリア層上下の両電極には、エレクトロメーターおよび高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が103.8V/cmとなるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取ることにより、キャリア抵抗(Ω・cm)を計算する。キャリア抵抗(Ω・cm)の計算式は、下式(1)に示す通りである。
R=E×20/(I−I0 )/L ・・・式(1)
上記式中、Rはキャリア抵抗(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、I0は印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lはキャリア層の厚み(mm)をそれぞれ表す。また、20の係数は、電極板の面積(cm2)を表す。
<静電潜像現像剤>
前記本発明の静電潜像現像剤用キャリアは、任意の種類の粒状のトナーと共に使用されて、静電潜像現像剤となる。
上記トナーとしては、従来の溶融混練粉砕法を用いる乾式法によるものと、液中でトナーを造粒する湿式法によるものとに大別される。最近では、トナーの小径化、粒度分布のシャープネス化、形状制御の自由度(より球状化が容易)、製造のエネルギーコスト低減等の観点から、湿式法が評価されつつある。しかし、前記湿式法では液中でトナー粒子を造粒するため、トナー表面に親水基が残存し易く、高湿下での吸湿の原因となり、帯電特性が悪化する傾向がある。このため、湿式法で得られたトナーを含有するこれまでの現像剤は、高湿下において帯電特性が劣化する欠点を有していた。
このようなトナーの保存性(耐ブロッキング性)、搬送性、現像性、転写性、帯電性等の特性を改善するために、結着樹脂の分子量、ガラス転移温度等を制御することに加えて、トナー粒子表面に外添剤と称する有機/無機微粒子が添加されている。
上記無機微粒子としては、疎水性シリカに代表される疎水性微粉末や、アルミナまたはチタニアを添加したシリカ微粒子、さらには、疎水化度分布を有する無機微粒子等が用いられるが、いずれも帯電環境安定性と帯電維持特性とを両方満足できないという問題があった。
本発明の静電潜像現像剤には、前記乾式法によるトナー及び湿式法によるトナーのいずれもが適用可能であるが、前述のように、本発明の静電潜像現像剤用キャリアは、湿度変化に対しても安定した帯電付与能を有するため、本発明の静電潜像現像剤としては、湿式法により製造されるトナーを用いた場合により効果を発揮することができる。
本発明におけるトナーは、前記本発明の静電潜像現像剤用キャリアによる帯電安定性に加え、トナーの搬送性、帯電均一性、転写性等を向上させ高品質の画像を得る観点から球状であることが好ましく、形状係数SF1(ML2/A:MLはトナーの最大長を表し、Aはトナーの投影面積を表す)が100〜140の範囲のものが好ましく用いられる。上記SF1は105〜135の範囲がより好ましく、105〜130の範囲がさらに好ましい。
なお、トナーの形状係数SF1は、スライドガラス表面に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナー粒子の最大長と投影面積を求め、下記式(2)によりML2/Aを計算し、その平均値を求めることにより得られる。
ML2/A=(最大長)2 ×π×100/(投影面積×4)・・・式(2)
本発明におけるトナーの製造方法としては、粉砕分級方式の乾式法、液中で粒子を作製する湿式法があり、本発明において制限を設けるものではないが、上記球状のトナーを製造するには湿式法が適している。
湿式法には、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させた樹脂微粒子分散液と、着色剤分散液、離型剤分散液、及び必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集粒子を形成した後、加熱融合合一させてトナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤、離型剤、及び必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させ、重合してトナー粒子を得る懸濁重合法;結着樹脂と着色剤、離型剤、及び必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させ、造粒する溶解懸濁法などがある。その中でも、前記乳化重合凝集法が最適である。
前記乳化重合凝集法は、少なくとも粒径が1μm以下の樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液と、着色剤を分散した着色剤分散液とを混合し、樹脂粒子、着色剤をトナー粒径に凝集する工程(以下「凝集工程」と称することがある)、及び樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱し凝集体を融合し、着色トナー粒子を形成する工程(以下「融合工程」と称することがある)を含む。
前記凝集工程においては、互いに混合された前記樹脂粒子分散液、前記着色剤分散液、及び必要に応じて前記離型剤分散液中の樹脂粒子が凝集して凝集粒子を形成する。前記凝集粒子はヘテロ凝集等により形成され、前記凝集粒子の安定化、粒度/粒度分布制御を目的として、前記凝集粒子とは極性が異なるイオン性界面活性剤や、金属塩等の一価以上の電荷を有する化合物を添加することにより形成される。
前記融合工程においては、前記凝集粒子中の樹脂がガラス転移点以上の温度条件で溶融し、凝集粒子は不定形から球状へと変化する。このとき凝集粒子の形状係数SF1は、150以上あるものが、球状になるに従い小さくなるのであって、所望の形状係数になった段階でトナーの加熱を中止することにより形状係数を制御するものである。その後、凝集物を水系媒体から分離、必要に応じて洗浄、乾燥させることによって、トナー粒子を形成する。
また本発明に用いられるトナーの製造方法としては、前記懸濁重合法も好ましく用いることができる。前記懸濁重合法は、着色剤粒子、離型剤粒子等を、重合性単量体とともに必要に応じて分散安定剤等が添加された水系媒体中へ懸濁させ、所望の粒度、粒度分布に分散させた後、加熱等の手段により重合性単量体を重合し、重合後重合物を水系媒体から分離、必要に応じて洗浄、乾燥させることによって、トナー粒子を形成するものである。
本発明におけるトナーに用いる結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、10−ウンデセン酸等の不飽和カルボン酸、カルボキシルスチレン等のカルボキシル基を有するスチレン誘導体類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることができる。
本発明におけるトナーに用いる着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー128、C.I.ピグメント・イエロー151、C.I.ピグメント・イエロー155、C.I.ピグメント・イエロー173、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー185、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
本発明におけるトナーに用いる離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができ、その他公知のものを使用することができる。
本発明に用いられるトナーにおいて、例えば前記懸濁重合法における分散時の安定化、前記乳化重合凝集法における樹脂粒子分散液、着色剤分散液、及び離型剤分散液の分散安定を目的として界面活性剤を用いることができる。
前記界面活性剤としては、例えば硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもイオン性界面活性剤が好ましく、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤がより好ましい。
本発明におけるトナーにおいては、一般的にはアニオン系界面活性剤は分散力が強く、樹脂粒子、着色剤の分散に優れているため、離型剤を分散させるための界面活性剤としてはカチオン系界面活性剤を用いることが有利である。
前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン系界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
また、前記懸濁重合法に用いる分散安定剤としては、難水溶性で、親水性の無機微粉末を用いることができる。使用できる無機微粉末としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸3カルシウム(ヒドロキシアパタイト)、クレイ、ケイソウ土、ベントナイト等が挙げられる。これらの中でも炭酸カルシウム、リン酸3カルシウム等は微粒子の粒度形成の容易さと、除去の容易さの点で好ましい。
また、分散安定剤として、常温固体の水性ポリマー等も用いることができる。具体的には、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系化合物、ポリビニルアルコール、ゼラチン、デンプン、アラビアゴム等が使用できる。
本発明におけるトナー作製において、前記乳化重合凝集法を用いた場合、前記凝集工程においてpH変化により凝集を発生させ、粒子を調整することができる。同時に粒子の凝集を安定に、また迅速に、またはより狭い粒度分布を持つ凝集粒子を得る方法として、凝集剤を添加しても良い。
上記凝集剤としては一価以上の電荷を有する化合物が好ましく、該一価以上の電荷を有する化合物の具体例としては、前述のイオン性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の水溶性界面活性剤類;塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等の酸類;塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム等の無機酸の金属塩;酢酸ナトリウム、蟻酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム等の脂肪族酸;芳香族酸の金属塩;ナトリウムフェノレート等のフェノール類の金属塩;アミノ酸の金属塩;トリエタノールアミン塩酸塩;アニリン塩酸塩等の脂肪族、芳香族アミン類の無機酸塩類;等が挙げられる。
前記凝集粒子の安定性、凝集剤の熱や経時に対する安定性、洗浄時の除去を考慮した場合、前記無機酸の金属塩が性能、使用の点で好ましい。
具体的には塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム等の無機酸の金属塩である。
これらの凝集剤の添加量は、電荷の価数により異なるが、いずれも少量であって、一価の場合は3質量%以下程度、二価の場合は1質量%以下程度、三価の場合は0.5質量%以下程度である。本発明の静電潜像現像剤においては、帯電性能の安定(環境安定性、維持性)の観点から、凝集剤の量は少ない方が好ましく、価数の多い化合物が好ましい。
また、本発明におけるトナーには、必要に応じて帯電制御剤を添加してもよい。帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。なお、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解し難い材料を使用するのが好ましい。本発明におけるトナーは、磁性材料を内包する磁性トナー、磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
本発明の静電潜像現像剤は、前述の本発明の静電潜像現像剤用キャリアと上記トナーとを混合してなるものであるが、その混合比は、静電潜像現像剤用キャリア100質量部に対し、トナーが3〜20質量部の範囲で混合され調整されることが好ましい。
<画像形成方法、画像形成装置>
本発明の画像形成方法は、少なくとも、現像剤担持体表面に形成されたトナーとキャリアとを含む現像剤層を用いて、静電潜像担持体表面の静電潜像を現像する現像工程を含む画像形成方法において、前記キャリアとして、前述の本発明の静電潜像現像剤用キャリアを用いることを特徴とする。
前記現像工程とは、静電潜像担持体表面に、少なくともトナーを含む現像剤層を表面に形成させた現像剤担持体を接触若しくは近接させて、前記潜像担持体表面の静電潜像にトナーの粒子を付着させ、静電潜像担持体表面にトナー画像を形成する工程である。現像方式は、既知の方式を用いて行うことができるが、本発明に用いられる2成分現像剤による現像方式としては、カスケード方式、磁気ブラシ方式などがある。また、現像はいわゆる正規現像方式であっても、反転現像方式であってもよいが、反転現像方式を用いることが好ましい。本発明の画像形成方法は、現像方式に関し、特に制限を受けるものではない。
本発明においては、少なくとも上記現像工程が含まれていればよく、そのほかに静電潜像形成工程、転写工程、定着工程などが含まれていてもよい。
以上のような画像形成方法において、現像剤として前記本発明の静電潜像現像剤を使用することにより、環境変化に対しても安定した画像形成を長期にわたって行うことができる。
図3に、本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置の例を概略図として示す。
図3に示す画像形成装置では、まず、照明801から原稿802に照射した反射光を、カラーCCD803により読み取って、画像処理装置804でY、M、Cの三色に色分解し、画像処理を加えて各色ごとに、最隣接画素の角度をかえた信号として、一色ずつ順番に、半導体レーザー805から光信号として出力する。その光信号を、光学系806を通して、予め帯電器807によって帯電された感光体(静電潜像担持体)808に露光して、画像部分が低電位となる静電潜像を作製する。
次に、帯電した有色トナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)と本発明のキャリアとからなる現像剤A,B,C,D(静電潜像現像剤)を現像器809〜812(現像手段)に仕込んで、現像バイアスを印加することで、有色トナーを静電気力によって感光体上の静電潜像に現像する。
現像されたトナーを、転写ドラム813に静電吸着された用紙814に、一色ずつ、転写コロトロン815で与えられた電界により転写する。これをY、M、Cの順に3回繰り返し、用紙814上に3色重ねられたカラートナー画像を得る。その後、定着器816によって加熱定着して、カラー画像を得た。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
まず、各実施例、比較例に用いた複合樹脂粒子、キャリア、及びトナーについて説明する。
(無機粒子を含む複合樹脂粒子の作製)
−複合樹脂粒子1−
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した2Lの反応フラスコに、メラミン50.0質量部、37質量%ホルマリン96.5質量部、水性シリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックスS、SiO2濃度:30.5質量%、pH:10.0、平均粒子径:7.9nm)20.7質量部、水720質量部を仕込み、25質量%アンモニア水にてpHを8.7に調整した。その後、上記混合物を撹拌しながら昇温し、温度を70℃に保ち、30分反応させてメラミン樹脂の初期縮合物の水溶液を調製した。
次に、温度を70℃に維持したまま、得られた初期縮合物の水溶液にドデシルベンゼンスルホン酸の10質量%水溶液を添加してpHを7.0に調整した。約20分後に反応系内が白濁してコロイダルシリカ(無機粒子)を含む硬化メラミン樹脂粒子(複合樹脂粒子)が析出した。その後、温度を90℃まで昇温して3時間硬化反応を続けた。冷却後、得られた反応液を濾過、乾燥して白色の複合樹脂粒子1を得た。
上記複合樹脂粒子1の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(商品名:マスターサイザー2000、マルバーン社製)で測定したところ、0.3μmであった。また、個数平均粒子径d50は0.27μmであり、1/2×d50以下の粒径を有する微粒子の割合は5個数%、2×d50以上の粒径を有する微粒子の割合が15個数%であった。
この硬化メラミン複合樹脂粒子(複合樹脂粒子1)を、そのままの状態で走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、また、スライス片の状態で透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析(TEM−EDX)にて観察したところ、該複合樹脂粒子1は球状で、かつコロイダルシリカが該粒子表面付近に偏在している(粒子径の深さ方向10%の範囲にコロイダルシリカが約80%存在)こと、及びコロイダルシリカが複合樹脂粒子表面に一部露出していることが確認された。
−複合樹脂粒子2−
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した2Lの反応フラスコに、メラミン50.0質量部、37質量%ホルマリン96.5質量部、水性シリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックスS、SiO2濃度:30.5質量%、pH:10.0、平均粒子径:7.9nm)35.7質量部、水920質量部を仕込み、25質量%アンモニア水にてpHを8.5に調整した。その後、上記混合物を撹拌しながら昇温し、温度を70℃に保ち、30分反応させてメラミン樹脂の初期縮合物の水溶液を調製した。
次に、温度を70℃を維持したまま、得られた初期縮合物の水溶液にドデシルベンゼンスルホン酸の10質量%水溶液を添加してpHを7.0に調整した。約25分後に反応系内が白濁してコロイダルシリカ(無機粒子)を含む硬化メラミン樹脂粒子(複合樹脂粒子)が析出した。その後、温度を90℃まで昇温して3時間硬化反応を続けた。冷却後、得られた反応液を濾過、乾燥して白色の複合樹脂粒子2を得た。
上記複合樹脂粒子2の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(商品名:マスターサイザー2000、マルバーン社製)で測定したところ、0.15μmであった。また、個数平均粒子径d50は0.13μmであり、1/2×d50以下の粒径を有する微粒子の割合は10個数%、2×d50以上の粒径を有する微粒子の割合が7個数%であった。
この硬化メラミン複合樹脂粒子(複合樹脂粒子2)を、そのままの状態で走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、また、スライス片の状態で透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析(TEM−EDX)にて観察したところ、該複合樹脂粒子2は球状で、かつコロイダルシリカが該粒子表面付近に偏在していること(粒子径の深さ方向10%の範囲にコロイダルシリカが約75%存在)こと、及びコロイダルシリカが複合樹脂粒子表面に一部露出していることが確認された。
(キャリアの作製)
−キャリアA−
・フェライト粒子(体積平均粒径:50μm) 100質量部
・トルエン 14質量部
・スチレン−メタクリレート共重合体(臨界表面張力:35mN/m) 1.5 質量部
・カーボンブラック(平均粒径:25nm、DBP吸油量:71ml/g、体積抵抗率:100Ωcm以下、商品名:R330R、キャボット社製) 0.15質量部
・複合樹脂粒子1 0.3 質量部
フェライト粒子を除く上記各成分を混合し、10分間スターラーで分散し、樹脂被覆層形成用溶液を調合した。次に、この樹脂被覆層形成用溶液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーにいれ、温度60°Cにおいて30分撹拌した後、減圧してトルエンを留去して、樹脂被覆層を形成したキャリアAを得た(但し、マトリックス樹脂であるスチレン−メタクリレート共重合体にトルエンに希釈して、前記カーボンブラックを予めサンドミルで分散しておいた)。樹脂被覆層の平均厚さは、0.7μm、キャリアの体積抵抗率は108Ωcmであった。
−キャリアB−
・フェライト粒子(体積平均粒径:50μm) 100質量部
・トルエン 14質量部
・スチレン−メタクリレート共重合体(臨界表面張力:35mN/m) 1.0質量部
・パーフルオロアクリレート共重合体(臨界表面張力:24mN/m)0.8質量部
・導電粉(BaSO4、平均粒径:0.2μm、体積抵抗率:5〜30Ωcm、商品名:パストラン−タイプ−IV、三井金属社製) 0.4質量部
・複合樹脂粒子1 0.2質量部
フェライト粒子を除く上記各成分を、ホモミキサーで10分間分散し、樹脂被覆層形成用溶液を調合した。更に、この樹脂被覆層形成用溶液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーにいれ、温度60°Cにおいて30分撹拌した後、減圧してトルエンを留去して、樹脂被覆層を形成してキャリアBを得た(但し、マトリックス樹脂であるスチレン−メタクリレート共重合体及びパーフルオロアクリレート共重合体をトルエンに希釈して、前記導電粉を予めサンドミルで分散しておいた)。樹脂被覆層の平均厚みは、0.6μm、キャリアの体積抵抗率は1011Ωcmであった。
−キャリアC−
・フェライト粒子(体積平均粒径:45μm) 100質量部
・トルエン 14質量部
・パーフルオロアクリレート共重合体(臨界表面張力:24mN/m)1.7質量部
・導電粉(SnO2、平均粒径:20nm、体積抵抗率:106〜108Ωcm、商品名:S−1、三菱マテリアル社製) 0.6質量部
・複合樹脂粒子2 0.3質量部
フェライト粒子を除く上記各成分を10分間スターラーで分散し、樹脂被覆層形成用溶液を調合した。次に、この樹脂被覆層形成用溶液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーにいれ、温度60°Cにおいて30分撹拌した後、減圧してトルエンを留去して、樹脂被覆層を形成してキャリアCを得た(但し、マトリックス樹脂であるパーフルオロアクリレート共重合体をトルエンに希釈して酸化錫を予めサンドミルで分散しておいた)。樹脂被覆層の平均厚みは0.6μm、キャリアの体積抵抗率は1012Ωcmであった。
−キャリアD−
・フェライト粒子(体積平均粒径:45μm) 100質量部
・トルエン 14質量部
・パーフルオロアクリレート共重合体(臨界表面張力:24mN/m) 1.6質量部
・カーボンブラック(平均粒径:30nm、DBP吸油量:174ml/g、体積抵抗率:100 Ωcm以下、商品名:VXC−7、キャボット社製)0.12質量部
・複合樹脂粒子2 0.3質量部
フェライト粒子を除く上記各成分を、10分間スターラーで分散し、樹脂被覆層形成用溶液を調合した。更に、この樹脂被覆層形成用溶液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーにいれ、温度60°Cにおいて30分撹拌した後、減圧してトルエンを留去して、樹脂被覆層を形成してキャリアDを得た(但し、マトリックス樹脂であるパーフルオロアクリレート共重合体をトルエンに希釈し、予めカーボンブラックをサンドミルで分散しておいた)。樹脂被覆層の平均厚みは0.6μm、キャリアの体積抵抗率は1010Ωcmであった。
−キャリアE−
キャリアAにおいて、複合樹脂粒子1を用いなかった以外はキャリアAと同様にしてキャリアEを得た。樹脂被覆層の平均厚みは0.6μm、キャリアの体積抵抗率は108Ωcmであった。
−キャリアF−
キャリアDにおいて、カーボンブラックを用いなかった以外はキャリアDと同様にしてキャリアFを得た。樹脂被覆層の平均厚みは0.6μm、キャリアの体積抵抗率は1016<Ωcmであった。
−キャリアG−
・フェライト粒子(平均粒径:45μm) 100質量部
・トルエン 14質量部
・パーフルオロアクリレート共重合体(臨界表面張力:24mN/m) 0.8質量部
・メタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートとの共重合体(臨界表面張力:42mN/m)1.5質量部
フェライト粒子を除く上記各成分を、10分間スターラーで分散し、樹脂被覆層形成用溶液を調合した。次に、この樹脂被覆層形成用溶液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーにいれ、温度60°Cにおいて30分撹拌した後、減圧してトルエンを留去して、樹脂被膜層を形成してキャリアGを得た。樹脂被覆層の平均厚みは0.8μm、キャリアの体積抵抗率は1016<Ωcmであった。
−キャリアH−
・フェライト粒子(平均粒径:45μm) 100質量部
・トルエン 14質量部
・パーフルオロアクリレート共重合体(臨界表面張力:24mN/m) 1.6質量部
・カーボンブラック(商品名:VXC−72、キャボット社製) 0.12質量部
・未架橋メラミン樹脂 0.3質量部
フェライト粒子を除く上記各成分を、10分間スターラーで分散し、樹脂被覆層形成用溶液を調合した。次に、この樹脂被覆層形成用溶液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーにいれ、温度60°Cにおいて30分撹拌した後、減圧してトルエンを留去した。その後、更に温度150°Cにおいて60分撹拌して熱架橋させたメラミン樹脂を含む樹脂被覆層を形成してキャリアHを得た(但し、マトリックス樹脂であるパーフルオロアクリレート共重合体をトルエンに希釈して、予めカーボンブラックをサンドミルで分散しておいた)。樹脂被覆層の平均厚みは0.7μm、キャリアの体積抵抗率は1011Ωcmであった。また、この樹脂被覆層は連続した2層になっていた。
−キャリアI−
実施例1において、複合樹脂粒子1を架橋メラミン粒子(体積平均粒径:0.3μm、トルエン不溶)に変えた以外は実施例1と同様にしてキャリアIを得た。樹脂被覆層の平均厚みは0.7μm、キャリアの体積抵抗率は109Ωcmであった。
(トナーの作製)
−トナーA−
・線状ポリエステル樹脂(テレフタル酸/ビスフェノールA エチレンオキサイド付加物/シクロヘキサンジメタノールから得られた線状ポリエステル、Tg(ガラス転移温度):62 °C、Mn(数平均分子量):4,000、Mw(重量平均分子量):35,000、酸価:12、水酸価:25) 100質量部
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド57) 3質量部
上記混合物をエクストルーダーで混練し、ジェットミルで粉砕した後、風力式分級機で分級して体積平均粒径D50が7.5μm、形状係数SF1が138.5のマゼンタトナー粒子を得た。このマゼンタトナー粒子にシリカ(商品名:R972、日本アエロジル社製)0.4質量%、チタニア(商品名:T805、日本アエロジル社製)0.7質量%加え、ヘンシェルミキサー混合してマゼンタトナー(トナーA)を得た。
なお、前記トナーの形状指数SF1は、下記式(2)で計算された値を意味し、真球の場合ML2/Aが100となる。
ML2/A=(最大長)2 ×π×100/(投影面積×4)・・・式(2)
平均形状指数を求めるための具体的な手法として、トナー画像を光学顕微鏡から画像解析装置(LUZEX III、(株)ニレコ製)に取り込み、円相当径を測定して、最大長および投影面積から、個々の粒子について上記式のML2/Aの値を求めた。
−トナーB−
a.樹脂分散液の調製
・スチレン 328質量部
・n−ブチルアクリレート 72質量部
・アクリル酸 8質量部
・ドデカンチオール 8質量部
・ジビニルベンゼン 1質量部 (以上和光純薬製)
以上の成分を混合して溶解したものを、非イオン性界面活性剤(ノニポール400、三洋化成(株)製)6質量部及びアニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製)10質量部をイオン交換水550質量部に溶解したものにフラスコ中で乳化分散させ、10分間ゆっくり混合しながら、これに過硫酸アンモニウム4質量部を溶解したイオン交換水50質量部を投入した。窒素置換を行った後、前記フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。その結果、平均粒子径が155nmであり、Tgが54℃、重量平均分子量Mwが33000の樹脂粒子が分散された樹脂分散液が得られた。
b.着色剤分散液の調製
・Magenta顔料(R122) 70質量部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC:第一工業製薬(株)製)5質量部
・イオン交換水 200質量部
以上の成分を混合して、溶解、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社製)を用いて10分間分散し、平均粒子径が250nmである着色剤(マゼンタ)粒子が分散された着色剤分散剤を調製した。
c.離型剤分散液
・パラフィンワックス(HNP0190、日本精蝋(株)製、融点:85℃)50質量部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製)5質量部
以上の成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社製)を用いて10分間分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、平均粒子径が250nmである離型剤粒子が分散された離型剤分散液を調製した。
d.凝集粒子の作製
・樹脂分散液 200質量部
・着色剤分散液 200質量部
・離型剤分散液 40質量部
・硫酸アルミニウム 1.5質量部
以上の成分を、丸型ステンレス鋼鉄フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社製)を用いて混合し、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら50℃まで加熱した。50℃で20分間保持した後、光学顕微鏡で確認したところ、平均粒子径が約4.7μmである凝集粒子が形成されていることが確認された。更に上記分散液に、樹脂分散液を緩やかに60質量部追加した。そして加熱用オイルバスの温度を52℃まで上げて30分間保持した。光学顕微鏡にて観察したところ、平均粒子径が約5.3μmである付着粒子(凝集粒子表面に樹脂粒子が付着した粒子)が形成されていることが確認された。
e.トナーの作製
上記粒子分散液に0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを6.5に調整した。その後攪拌しながら95℃まで加熱し、さらに0.1mol/Lの硝酸水溶液でpHを4.5に調整し、4時間保持した。冷却後、粒子をろ過し、イオン交換水で充分に洗浄した後、乾燥させることにより、形状係数SF1が133.5、体積平均粒径D50が6.0μmのトナー粒子(マゼンタ)を得た。
このトナー粒子に、シリカ(商品名:R972、日本アエロジル社製)を0.4質量%、チタニア(商品名:T805、日本アエロジル社製)0.7質量%を加え、ヘンシェルミキサーで混合してマゼンタトナー(トナーB)を得た。
(実施例1〜4、比較例1〜5)
上記キャリアA〜Iそれぞれ100質量部を、前記トナーA6質量部と混合して、9種類の現像剤を調製した。それぞれの現像剤を静電潜像現像剤1〜9(静電潜像現像剤5〜9は、比較用現像剤)とする。
これらの現像剤について、後述する画像形成及び評価を行った。
(実施例5〜8、比較例6)
前記キャリアA〜D、Iそれぞれ100質量部を、前記トナーB(マゼンタ)6質量部と混合して、5種類の現像剤を調製した。それぞれの現像剤を静電潜像現像剤10〜14(静電潜像現像剤14は、比較用現像剤)とする。
これらの現像剤について、同様に下記画像形成及び評価を行った。
(画像形成及びその評価)
前記現像剤1〜14について、電子写真複写機(商品名:DocuCentreColor500、富士ゼロックス(株)製)を用いて、高温高湿(28°C、85%RH)、及び低温低湿(10°C、30%RH)の環境下で各10,000枚のコピーテストを行った。
評価は、各環境における初期、3000枚後、10000枚後におけるトナー帯電量、画質(画像濃度、かぶり)により行った。各評価の評価方法、評価基準を以下に示す。
−トナー帯電量−
実機評価におけるトナー帯電量は、各環境、コピー枚数において、現像器中のマグスリーブ上の現像剤約0.3gを採取し、25℃、55%RHの条件下で東芝社製TB200にてブローオフ法により測定した。
−画像濃度−
X−rite濃度計によって、ソリッド画像部分の光学濃度を測定した。
−カブリ−
画像の白地部分を目視により観察し、以下の基準で判断した。
○:カブリなし。
×:カブリ多少あり。
××:カブリが目立つ。
以上の結果について、現像剤1〜9までを表1に、現像剤10〜14までを表2にまとめて示す。
実施例のキャリアを利用した現像剤1〜4、現像剤10〜13では、高温高湿、低温低湿環境を通じて10000枚後までトナー帯電量が安定しており、これに対応して、画像濃度の変動や地汚れがなく、エッジ効果もなく安定な画像が得られた。
一方、比較例1のキャリアを用いた現像剤5では、コピー枚数と共に徐々に帯電量が低下して、地カブリも発生するようになり、機内でのトナー汚れもみられた。
また、比較例2、3のキャリアを用いた現像剤6、7の場合は、エッジ効果がはっきり見られた。さらに、比較例4のキャリアを用いた現像剤8の場合は、コピーテストでの帯電量の変動が大きく、画像濃度が1.3を下回ることがあり、比較例5のキャリアを用いた現像剤9の場合は帯電量の環境変動が大きく、高温高湿環境では問題がなかったが、低温低湿環境では帯電量がかなり高くなり、画像濃度が1.3を下回り濃度が不十分となった。