JP2005146135A - プラスチック成形体、プラスチック成形品及びこれらの製造方法 - Google Patents

プラスチック成形体、プラスチック成形品及びこれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 射出成形加工時に表面を粗面化することなく表面が選択的に、例えば、無電解メッキに適用可能なように、改質されたプラスチック成形品を提供する
【解決手段】 プラスチック成形体の表面にメッキ膜によるパターンが形成されたプラスチック成形品であって、プラスチック成形体のメッキ膜を鍍着すべき部分の表面及びその近傍付近に、有機金属錯体が還元されることにより生成された金属微粒子が0.1at%〜5at%の割合で存在している。
【選択図】 図1

Description

本発明は表面改質されたプラスチック成形品及び該プラスチック成形品の製造方法に関する。更に詳細には、本発明は無電解メッキが可能になるように表面改質されたプラスチック成形品(特に超臨界流体を利用した射出成形によるプラスチック成形品)及び該プラスチック成形品の製造方法に関する。
無電解メッキは、プラスチック成形品よりなる電子機器の表面に金属導電膜を形成する手段として広く利用されている。プラスチックの無電解メッキプロセスは材料などにより多少異なるが、一般的に図5の流れ図に示されるように、樹脂成形(ステップ100)、成形品の脱脂(ステップ101)、エッチング(ステップ102)、中和及び湿潤化(ステップ103)、触媒付与(ステップ104)、触媒活性化(ステップ105)、および無電解メッキ(ステップ106)の各工程からなる。
また、エッチングにはクロム酸溶液やアルカリ金属水酸化物溶液などを用いるが、これらエッチング液は中和等の後処理が必要なため、コスト高の要因となっている他、毒性の高いエッチャントを用いることによる取り扱いの問題がある。
該エッチングによる粗面化の必要のないプロセスは、従来から幾つか提案されている(例えば、特許文献1及び2)。これらはメッキ触媒の含有する薄膜を有機バインダーや紫外線硬化樹脂によりプラスチック表面に形成するものである。更に、アミン化合物等のガス雰囲気で紫外線レーザーをプラスチック表面に照射し改質する技術も既に提案されており(例えば、特許文献3)、これ以外でもコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線処理等による改質技術はある。
一方、無電解メッキや電解メッキにより回路基板上に配線を形成する方法としてセミアディティブ法がよく知られているが、このフローを図6に示す。
この方法で配線層は次に示すように形成される。まず、図5に示した方法に従って樹脂成形品の表面を処理し、「無電解メッキ」により基板全体に1〜2μmのメッキ層を形成する(ステップ106)。次に、「感光性フィルムやレジスト」を形成後(ステップ107)、マスキングして「露光および現像」を行うことで配線パターンが設けられたフィルムやレジストの層を形成する(ステップ108)。さらに「電解メッキ」プロセスにより前記パターン化によって露出した無電解メッキ層上に電解メッキを形成する(ステップ109)。次にフィルムやレジストを除去した後(ステップ110)、ソフトエッチングにより配線部以外の無電解メッキ層を除去することでメッキ配線は完成する(ステップ111)。
更に、銅メッキの場合、樹脂との密着性が悪いことから「黒化処理」と呼ばれる(酸化)銅に微細突起を作り樹脂とのアンカー作用を強化する後処理も行われることもある。
成形品に立体回路を設ける方法も従来から提案されている(例えば、特許文献4及び5)。これら製法について下記に説明するが、まず立体的な回路基板のプラスチックを樹脂成形により形成する。次に、表面を粗面化および触媒付与した後、全面に無電解メッキを形成し、フォトレジストを全面塗着する。そしてフォトマスクを被せて露光した後に現像し回路パターン形成部以外を除去する。
この上に電解メッキさらにNiやAuの無電解メッキを形成した後、フォトレジストを剥離するとともに無電解メッキの不要部分をエッチング除去する。立体構造体に均一なフォトレジストを形成するのは困難であるため、電着レジストを用いることが特許文献4に提案されているが、かかるレジストは耐アルカリ性が低いという欠点を有している。
射出成形を利用した回路形成方法として、次のような方法が開示されている(例えば、特許文献6)。この特許文献6に記載された方法によれば、先ず、金型表面における回路形成面にRa1〜5μm程度の粗面化した面を設け、射出成形前に触媒核を金型の全面に付着させた後、回路基板を射出成形で形成することで該触媒核を全面転写させる。そして、触媒核の密着性の強い粗面化された成形面のみ無電解メッキが強固に密着し、それ以外の粗面化されていない個所は密着性が弱いため電解メッキ後における回路以外の無電解メッキ層を除去するエッチングの際に核触媒と共に除去できると説明されている。
特開平9−59778号公報 特開2001−303255号公報 特開平6−87964号公報 特開平4−76985号公報 特開平1−206692号公報 特開平6−196840号公報
射出成形の成形加工時において、成形加工と同時に成形品の表面改質のできる応用範囲の広い技術は未だ何も提案されていない。また、触媒核となる金属粒子の量(金属量)や化合物を規定した報告例も無い。更に、従来のプラスチック成形品の無電解メッキプロセスは複雑でコスト高の上、有害物質を多く使わなければならず、廃液の処理にも問題がある。
従って、本発明の目的は、前記課題を解決し、射出成形加工時に表面を粗面化することなく表面が選択的に、例えば、無電解メッキに適用可能なように、改質されたプラスチック成形品及びその製造方法を提供することである。
前記課題を解決するための手段として、請求項1に係る発明の特徴は、プラスチック成形体であって、該プラスチック成形体の所望部分の表面及びその近傍付近に、有機金属錯体が還元されることにより生成された金属微粒子が0.1at%〜5at%の割合で存在していることである。
前記課題を解決するための手段として、請求項2に係る発明の特徴は、請求項1に記載の発明において、前記有機金属錯体が下記の一般式(1)〜(4)で示される化合物のうちの少なくとも一種類であることである。
Figure 2005146135
(式中、XとX は各々独立にハロゲン原子を表わし、R〜R10 は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアルコキシアルキル基を表す。R〜R10のうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。Mはn価の金属イオンを表す。)、
Figure 2005146135
(式中、RとRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、R〜Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又はアルキル基を表す。R〜Rのうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。Mはn価の金属イオンを表す。)、
Figure 2005146135
(式中、R〜Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基又はアルキル基を表し、Mはn価の金属イオンを表す。)及び、
Figure 2005146135
(式中、R〜Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又はアルキル基を表す。R〜R及びR〜Rのうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。Mはn価の金属イオンを表す。)
前記課題を解決するための手段として、請求項3に係る発明の特徴は、請求項1に記載の金属微粒子を触媒核として形成されたメッキ層を更に有するプラスチック成形品である。
前記課題を解決するための手段として、請求項4に係る発明の特徴は、請求項3に記載の発明において、前記メッキ層は電気配線パターンを構成することである。
前記課題を解決するための手段として、請求項5に係る発明の特徴は、プラスチック成形体の製造方法であって、(1)射出成形機の金型内に熱可塑性樹脂と、有機金属錯体化合物含有超臨界流体を注入するステップと、(2)これら成分類を射出成形することによりプラスチック成形体を得るステップとからなり、前記プラスチック成形体の所望部分の表面及びその近傍付近に、前記有機金属錯体が還元されることにより生成された金属微粒子が0.1at%〜5at%の割合で存在していることである。
前記課題を解決するための手段として、請求項6に係る発明の特徴は、プラスチック成形品の製造方法であって、(1)射出成形機の金型内に熱可塑性樹脂と、有機金属錯体化合物含有超臨界流体を注入するステップと、(2)これら成分類を射出成形することによりプラスチック成形体を得るステップと、(3)前記プラスチック成形体の所望の表面に無電解メッキによりパターンを形成するステップとからなり、前記プラスチック成形体のメッキ膜を形成すべき表面及びその近傍付近に、前記有機金属錯体が還元されることにより生成された金属微粒子が0.1at%〜5at%の割合で存在していることである。
前記課題を解決するための手段として、請求項7に係る発明の特徴は、請求項5又は6に記載の発明において、前記有機金属錯体が下記の一般式(1)〜(4)で示される化合物のうちの少なくとも一種類であることである。
Figure 2005146135
(式中、XとX は各々独立にハロゲン原子を表わし、R〜R10 は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアルコキシアルキル基を表す。R〜R10のうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。Mはn価の金属イオンを表す。)、
Figure 2005146135
(式中、RとRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、R〜Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又はアルキル基を表す。R〜Rのうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。Mはn価の金属イオンを表す。)、
Figure 2005146135
(式中、R〜Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基又はアルキル基を表し、Mはn価の金属イオンを表す。)及び、
Figure 2005146135
(式中、R〜Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又はアルキル基を表す。R〜R及びR〜Rのうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。Mはn価の金属イオンを表す。)
前記課題を解決するための手段として、請求項8に係る発明の特徴は、請求項6に記載の発明において、前記めっき膜によるパターンは電気配線パターンであることである。
本発明によれば、射出成形加工時に表面を粗面化することなく表面が選択的に、例えば、無電解メッキに適用可能なように、改質されたプラスチック成形体を得ることができる。
図1は本発明によるプラスチック成形品の一例の模式的断面図である。図1に示されるように、本発明によるプラスチック成形品1は、プラスチック成形体3の表面に鍍金膜による導電性パターン5が形成されている。このプラスチック成形体3はその内部に、有機金属錯体7と、該有機金属錯体が還元されることにより生成された金属微粒子9を含有する。メッキのための触媒核として寄与するのは金属微粒子9であるが、還元されなかった有機金属錯体化合物粒子7もプラスチック成形体3の内部に取り込まれる。
特に、プラスチック成形体3と導電性パターン5との界面(すなわち、プラスチック成形体3の表面及びその近傍付近)には金属微粒子9が0.1at%〜5at%の割合で存在している。金属微粒子9の存在割合が0.1at%未満の場合、メッキのための触媒核として寄与する金属微粒子の量が少なすぎるために無電解メッキが困難になる。金属微粒子9の存在割合が5at%超の場合、メッキのための触媒核として寄与する効果が飽和し、不経済となるだけである。メッキのための触媒核として寄与する効果を確実にするために、金属微粒子9の存在割合は0.5at%以上であることが好ましい。
図1に示されるプラスチック成形品1におけるプラスチック成形体3は熱可塑性樹脂を射出成形することにより作製することができる。例えば、射出成形機の金型内に熱可塑性樹脂の溶融樹脂を充填し、この金型内の特定位置に、超臨界流体と、該超臨界流体に溶解させた有機金属錯体化合物の溶液を注入し、これら成分類を射出成形することによって作製することができる。その後、プラスチック成形体3の表面において、前記金属微粒子が析出した部位にメッキ膜からなるパターンを形成する。
図2は物質の圧力と温度との関係を示す相図である。本発明では、図2に示される超臨界流体を使用する。超臨界流体とは液体の溶解性と気体の浸透性をあわせもつ流体である。本発明で使用することができる超臨界流体は、空気、CO、CO、O、N、HO、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、メタノール、エチルアルコール、アセトン、ジエチルエーテル等である。Nの臨界温度は−147℃、臨界圧力は34気圧であり、HOの臨界温度は374℃、臨界圧力は218気圧であるのに対して、COの臨界温度は31℃、臨界圧力は73気圧であり、しかも、n―ヘキサン並の溶解度を有し、ある種の熱可塑性樹脂材料へ可塑剤として働き射出成形や押し出し成形で実績が多い点で、COが特に望ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合してもよい。
本発明のプラスチック成形体を作製するための熱可塑性樹脂は、特に制限されるものではなく、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、脂環式オレフィン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリメチルペンテン、非晶質ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、液晶ポリマー、スチレン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリアセタール等やそれらを複合種混合したもの、これらを主成分とするポリマーアロイやこれらに各種の充填剤を配合したものを用いることができる。
超臨界流体に溶解させる有機金属錯体化合物は下記の一般式(1)〜(4)を有する。
Figure 2005146135
(式中、XとXは、各々独立に、塩素原子、臭素原子、沃素原子、フッ素原子などのハロゲン原子を表す。また、R〜R10はそれぞれ独立して、水素原子;塩素原子、臭素原子、沃素素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基;又はメトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、n-プロポキシメチル基、n-プロポキシエチル基、メトキシ-n-プロピル基などの炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルコキシアルキル基を表す。また、R〜R10のうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。また、Mはパラジウム、ニッケル、白金、金、銀、銅、コバルト、モリブデンなどのn価の金属イオンであ。)
一般式(1)で示される化合物における好ましい置換基の組合せは以下のものが挙げられる。
Figure 2005146135
Figure 2005146135
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子;塩素原子、臭素原子、沃素素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子;塩素原子、臭素原子、沃素素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;ヒドロキシル基;あるいはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基を表す。RとR、RとRは隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。また、Mはパラジウム、ニッケル、白金、金、銀、銅、コバルト、モリブデンなどのn価の金属イオンである。)
一般式(2)で示される化合物における好ましい置換基の組合せは以下のものが挙げられる。
Figure 2005146135
Figure 2005146135
(式中、R〜R10はそれぞれ独立して、水素原子;塩素原子、臭素原子、沃素素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;ヒドロキシル基;カルボキシル基;ニトロ基;アミノ基;又はメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基を表す。また、R〜R10のうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。Mは鉄、コバルト、ニッケル等のn価の金属イオンである。)
一般式(3)で示される化合物における好ましい置換基の組合せは以下のものが挙げられる。
Figure 2005146135
Figure 2005146135
(式中、R1〜R6はそれぞれ独立して、水素原子;塩素原子、臭素原子、沃素素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;ヒドロキシル基;又はメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基を表す。また、Mはパラジウム、ニッケル、白金、金、銀、銅、コバルト、モリブデンなどのn価の金属イオンである。)
一般式(4)で示される化合物における好ましい置換基の組合せは以下のものが挙げられる。
Figure 2005146135
前記化1で示される一般式(1)の化合物は新規化合物である。例えば、表1における化合物(a1)のジ−μ−クロロビス(4−メトキシ−2,3−ジメチルブテニル)ジパラジウム(II)は次のようにして生成することができる。塩化パラジウム(II)ナトリウム・三水和物(2.00g、5.74ミリモル)を20mlのメタノール溶液に溶解させる。窒素ガスをパージしながら、この溶液に対して、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン(2.92g、35.6ミリモル)を添加する。この混合液を室温で10分間撹拌した後、無水炭酸ナトリウム(0.6g、5.66ミリモル)を添加し、1時間撹拌する。その溶液を濾過した後、水で洗浄し、次いで、メタノールで洗浄すると、目的とする化合物、ジ−μ−クロロビス(4−メトキシ−2,3−ジメチルブテニル)ジパラジウム(II){FAB−MS(+):511(M+1)、m.p.:110.5℃}が得られる。
前記化2で示される一般式(2)の化合物は一般に市販されており、例えば、表2における化合物(b1)のシクロオクタジエンジメチルプラチナ(m.p.:95℃)はAldrich社から購入することができる。
前記化3で示される一般式(3)の化合物は一般に市販されており、例えば、表3における化合物(c1)のニッケロセン(m.p.:171℃)は和光純薬工業(株)から購入することができる。
前記化4で示される一般式(4)の化合物は一般に市販されており、例えば、表4における化合物(d1)のパラジウムアセチルアセトナート(m.p.:132−205℃)は東京化成(株)から購入することができる。
図3は本発明のプラスチック成形体を製造するための射出成形装置の一例の概要構成図である。図3を参照しながら、本発明のプラスチック成形体の製造について詳細に説明する。本発明のプラスチック成形体を製造するために超臨界流体としてCOを使用した。超臨界流体に有機金属錯体化合物を溶解させる方法としては任意の方法を使用できるが、図3の装置では、COボンベ301から供給されるCOを超臨界流体発生装置302で超臨界状態にした後、混合槽303中で貯蔵容器304から供給される有機金属錯体化合物を所定の濃度になるように超臨界流体に溶解させた。有機金属錯体化合物を溶解させるための超臨界流体の圧力、温度は任意であるが、溶解度を高くするために、COの圧力は15〜40MPaの範囲が望ましい。温度は40℃〜150℃、より望ましくは40℃〜60℃の範囲が望ましい。40℃以下では超臨界の閾値である31℃に近くなり、溶解度が不安定になる。一方、温度が高すぎると、有機金属錯体化合物が熱分解してしまう恐れがある。
有機金属錯体化合物が溶解した超臨界流体溶液の金型内部への導入方法は任意であるが、図3の装置においては電磁弁で駆動するエアーバルブ307の開放により流路316を経て固定金型314内の微細流路306より固定金型314と可動金型315により形成されるキャビティ305に注入した。図3の射出成形装置において固定金型314内における微細流路306の直径はφ0.3mmとした。
熱可塑性樹脂の可塑化及び充填は公知の方法を使用することができる。例えば、図3の射出成形装置において、スクリュー319の回転によりホッパー317よりバンドヒーター318を介して可塑化シリンダー320内に充填された図示しない熱可塑性樹脂ペレットは、可塑化溶融されてスクリュー319前方に計量される。スクリュー319前方の内圧が上昇することによってスクリュー319が後退する。射出時はスクリュー319が前進することで計量された溶融樹脂は金型のキャビティ305内に充填される。キャビティ305は図示しない温調回路により温度制御された固定金型314および可動金型315によって形成されており、溶融熱可塑性樹脂がノズル321および金型のスプール322を経て充填される。
図3の射出成形装置における固定金型314表面には、流路306に通じる凹凸が設けられている。固定金型314の表面の凹凸形状及びそのピッチや深さ等は任意であるが、図3の射出成形装置においては、深さ一定でピッチや幅がランダムなラインアンドスペースの溝パターン9を設けた。該溝の深さは1mm、幅は0.5mm、ピッチは最小0.6mmとした。
溝パターン309が設けられた金型キャビティ305の図3におけるA部拡大図を図4に示す。以下、図4を参照しながら、溝309への熱可塑性樹脂充填の方法を説明する。図4(a)における充填前のキャビティ305空間に図4(b)に示すように溶融熱可塑性樹脂312が充填される。このとき、1次充填では樹脂内圧が十分に高くないので金型の溝309の内部には十分に充填できず凸部310が形成される。この未充填の状態において、有機金属錯体化合物が溶解された超臨界流体308を、溝部309に注入する。この際、熱可塑性樹脂内圧および型締め圧によって該有機金属錯体化合物が溶解された超臨界流体が、該溝309より漏れないように制御する。有機金属錯体化合物は加熱により配位子が外れ(すなわち、還元され)、錯体内の金属微粒子が遊離してくる。超臨界流体COが溶融熱可塑性樹脂表面に接触することで、溝309部における熱可塑性樹脂の凸部310は軟化するので、有機金属錯体が還元されて生成した金属微粒子は熱可塑性溶融樹脂表面内に一層浸透しやすくなる。さらに図4(d)に示すように、保圧および型締め圧を高くすることで、溝309内に溶融熱可塑性樹脂がほぼ完全に充填される。それによって成形体の凸部310表面及びその近傍付近にのみ有機金属錯体の還元生成物である金属微粒子9が配向する。
従来の方法によりメッキを行う場合、エッチングの際にCr6+等の有毒な化合物を使用しなければならないが、本発明の方法によれば、無毒な超臨界流体を使用するので、Cr6+等の有毒な化合物による環境汚染を避けることができる。また、COからなる超臨界流体は射出成形後はガスとなり空気中に放出されるだけで処理が終了するので、本発明の方法は環境に優しい方法であると言うことができる。
有機金属錯体化合物は加熱により配位子が外れ(すなわち、還元され)、錯体内の金属微粒子が遊離してくる。従って、加熱温度が高いほど配位子が外れ易い(すなわち、還元され易い)が、その上限温度は使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)により限定される。射出成形の場合、溶融熱可塑性樹脂の加熱表面の温度が最も高いので、樹脂の加熱表面付近に存在する有機金属錯体化合物が優先的に還元され、その結果、熱可塑性樹脂の所望部分の表面及びその近傍付近に金属微粒子を存在させることができるようになる。
本発明では、有機金属錯体化合物が還元されることにより生成された金属微粒子が、プラスチック成形体の所望部分の表面及びその近傍付近において0.1at%以上存在していることが必要である。プラスチック成形体の表面及びその近傍に金属微粒子が0.1at%以上、好ましくは0.5at%以上存在すれば、その表面に銅やニッケルなどの金属をメッキすることができる。ここで、有機金属錯体化合物が還元されることにより生成された金属微粒子がプラスチック成形体の所望部分の表面及びその近傍付近において0.1at%以上存在し得るために、有機金属錯体化合物は該溶融熱可塑性樹脂の表面及びその近傍付近に1at%以上注入することが望ましい。必ずしも注入した有機金属錯体が全て溶融熱可塑性樹脂内で還元されてメッキの触媒核として寄与する金属微粒子が生成されるわけではないからである。有機金属錯体化合物の注入量は有機金属錯体化合物の超臨界流体に対する溶解度、超臨界流体と有機金属錯体化合物が溶融熱可塑性樹脂に接触する際の樹脂温度や圧力、接触時間等で制御することができる。有機金属錯体化合物に対する超臨界流体の溶解度はエントレーナーとしてメタノール等のアルコールやアセトン等を用いることで、飛躍的に向上させることができる。また溶解度を均一にするために該超臨界流体や有機金属錯体化合物及びエントレーナーの混合槽は圧力一定、温度一定で攪拌することが望ましい。
保圧や型締め圧等によって熱可塑性樹脂内圧を上昇させることで凹部内に樹脂が行き渡り、成形体表面に有機金属錯体化合物が配向した凸部が形成される。かかる方法によれば超臨界流体に、ある程度の溶解性を有する有機金属錯体化合物であれば成形体表面の凸部のみに均一に分散配向させることができる。従って、その場で有機金属錯体化合物が還元されれば、同じ場所に金属微粒子が分散配向されることとなる。その結果、本発明の方法によれば、金型表面を粗面化する必要もなく、微細な領域に選択的にメッキ用の触媒核となるべき金属微粒子を配向させることができる。
本発明の方法によれば、射出成形により作製されたプラスチック成形体に対し、その後無電解メッキを行い、金属微粒子が存在するプラスチック成形体の所定部分(例えば、凸部)にメッキ膜又はメッキ層を形成する。これらのメッキ膜又はメッキ層は例えば、電気配線パターンを構成することができる。本発明の方法によれば、使用する熱可塑性樹脂が極性基を持たず強固な無電解メッキ層の形成が困難な材料であっても触媒核となる金属微粒子を熱可塑性樹脂内に容易に埋め込むことができるので、任意の選択個所のみに密着性に優れた高品質な無電解メッキ膜を形成することができる。従って、本発明による無電解メッキの配線プロセスは従来法と比べ無害で前処理工程が著しく少なくて済む画期的な方法である。本発明において使用される無電解メッキ法自体は当業者に周知であるから、ここでは詳細な説明は省略する。
本発明の方法による無電解メッキ配線においては、射出成形後、有機金属錯体化合物の有機部分と金属部分の結合を切断するため、還元反応や加熱による後処理が必要な場合もある。しかし、或る種の有機金属錯体化合物は高温な溶融熱可塑性樹脂と接触する間に樹脂の熱により該結合が切断され数〜数十nmの金属微粒子が自動的に析出するので後処理も不要となる。本発明者らの検討によれば、有機金属錯体化合物と熱可塑性樹脂は次に示すような密接な相互関係を有することがわかった。
つまり、ここで用いた有機金属錯体化合物がアルコキシ基やヒドロキシル基などの極性の置換基をもち、化合物全体として極性がある場合、アクリル樹脂やポリカーボネートなどの極性の大きな熱可塑性樹脂において、金属微粒子に還元されやすい。また、有機金属錯体化合物に極性の置換基が無く、化合物全体として非極性の化合物である場合、脂環式オレフィン樹脂などの非極性熱可塑性樹脂中で金属微粒子に還元されやすいことが発見された。
有機金属錯体化合物が極性を持つ化合物の場合、非極性の樹脂中では金属微粒子に還元されにくい。また、有機金属錯体化合物が分子全体として非極性である場合、極性の樹脂中において金属微粒子に還元されにくい。しかしながら、ここで有機金属錯体化合物の極性が高すぎる場合には、超臨界流体に対する溶解度が減少するため、用いる有機金属錯体化合物の極性が高すぎないように注意することが好ましい。
図3に示される射出成形装置とその射出条件を用いて射出成形を行った。プラスチックとしてはガラス転移温度約150℃の脂環式オレフィン樹脂(日本ゼオン社製ゼオネックス480R)を用いた。本実施例では、図3の射出成形装置における混合槽304は、50℃、15MPaの雰囲気に維持した。可塑化シリンダー320の温度は200℃とした。また、金型内を流れる温調回路内の媒体温度は120℃とした。有機金属錯体としては化合物(a1)、ジ−μ−クロロビス(4−メトキシ−2,3−ジメチルブテニル)ジパラジウム(II){FAB−MS(+):511(M+1)、m.p.:110.5℃}を使用した。この条件により射出成形したプラスチック成形体を(A)とする。
実施例1の条件で化合物(a2)、ジ−μ−ブロモビス(4−メトキシ−2,3−ジメチルブテニル)ジパラジウム(II){FAB−MS(+):600(M+1)}を使用してプラスチック成形品(B)を射出成形した。
実施例1及び実施例2の条件で射出成形したプラスチック成形体(A)および(B)を無電解銅メッキ用水溶液(奥野製薬工業製「OPC700A」100mL/L+奥野製薬工業製「OPC700B」100mL/L)の入った容器に入れ30℃、10分間攪拌し銅メッキ処理した。純水及びメタノールにて超音波洗浄した後、プラスチック成形体凸部に厚み10μmの銅メッキ膜を形成した。また該メッキ膜は膜厚が均一であり、ふくれがなく、ピール試験においても実用上問題ない密着強度が得られていることを確認した。また配線に導通させた抵抗測定により低抵抗の配線が断線することなく形成されていることを確認した。隣接配線同士の絶縁性も良好であることを確認した。
図3に示される射出成形装置とその射出条件を用いて射出成形を行った。プラスチックとしてはガラス転移温度約150℃の脂環式オレフィン樹脂(日本ゼオン社製ゼオネックス480R)を用いた。本実施例では、図3の射出成形装置における混合槽304は、50℃、25MPaの雰囲気に維持した。可塑化シリンダー320の温度は200℃とした。また、金型内を流れる温調回路内の媒体温度は120℃とした。有機金属錯体としては化合物(b1)のシクロオクタジエンジメチルプラチナ(m.p.:95℃)を使用した。有機金属錯体の量は該溶融樹脂量に対して2質量%用いた。この条件により射出成形したプラスチック成形体を(C)とする。
実施例4の条件で化合物(b2)のシクロオクタジエンジメチルパラジウム(m.p.:92℃(dec.))を使用して、プラスチック成形体(D)を射出成形した。
実施例4及び実施例5の条件で射出成形したプラスチック成形体(C)および(D)を無電解銅メッキ用水溶液(奥野製薬工業製「OPC700A」100mL/L+奥野製薬工業製「OPC700B」100mL/L)の入った容器に入れ30℃、10分間攪拌し銅メッキ処理した。純水及びメタノールにて超音波洗浄した後、プラスチック成形体凸部に厚み10μmの銅メッキ膜を形成した。また該メッキ膜は膜厚が均一であり、ふくれがなく、ピール試験においても実用上問題ない密着強度が得られていることを確認した。また配線に導通させた抵抗測定により低抵抗の配線が断線することなく形成されていることを確認した。隣接配線同士の絶縁性も良好であることを確認した。
図3に示される射出成形装置とその射出条件を用いて射出成形を行った。プラスチックとしてはガラス転移温度約150℃の脂環式オレフィン樹脂(日本ゼオン社製ゼオネックス480R)を用いた。本実施例では、図3の射出成形装置における混合槽304は、120℃、30MPaの雰囲気に維持した。可塑化シリンダー320の温度は200℃とした。また、金型内を流れる温調回路内の媒体温度は120℃とした。有機金属錯体としては化合物(d1)のパラジウムアセチルアセトナート(m.p.:132−205℃)を使用した。有機金属錯体の量は該溶融樹脂量に対して2質量%用いた。この条件により射出成形したプラスチック成形体を(E)とする。
実施例7の条件で化合物(a5)、ジ−μ−クロロビス(4−メトキシ−2,3−ジメチルブテニル)ジニッケル(II){FAB−MS(+):463(M+1)}を使用してプラスチック成形体(F)を射出成形した。
実施例7の条件で射出成形したプラスチック成形体(E)を無電解銅メッキ用水溶液(奥野製薬工業製「OPC700A」100mL/L+奥野製薬工業製「OPC700B」100mL/L)の入った容器に入れ30℃、10分間攪拌し銅メッキ処理した。純水及びメタノールにて超音波洗浄した後、プラスチック成形体凸部に厚み10μmの銅メッキ膜を形成した。また該メッキ膜は膜厚が均一であり、ふくれがなく、ピール試験においても実用上問題ない密着強度が得られていることを確認した。また配線に導通させた抵抗測定により低抵抗の配線が断線することなく形成されていることを確認した。隣接配線同士の絶縁性も良好であることを確認した。
実施例8の条件で射出成形したプラスチック成形体(F)を無電解銅メッキ用水溶液(奥野製薬工業製「OPC700A」100mL/L+奥野製薬工業製「OPC700B」100mL/L)の入った容器に入れ30℃、10分間攪拌し銅メッキ処理した。しかしながら、プラスチック成形体凸部にはメッキ膜が殆ど形成されていなかった。
図3に示される射出成形装置と、その射出条件を用いて射出成形を行った。プラスチックとしてはガラス転移温度約150℃の脂環式オレフィン樹脂(日本ゼオン社製ゼオネックス480R)を用いた。本実施例では、図3の射出成形装置における混合槽304は、150℃、15MPaの雰囲気に維持した。可塑化シリンダー320の温度は200℃とした。また、金型内を流れる温調回路内の媒体温度は150℃とした。有機金属錯体としては化合物(a1)を使用した。有機金属錯体の量は該溶融樹脂量に対して10質量%用いた。この条件により射出成形したプラスチック成形体を(G)とする。
実施例11の条件で射出成形したプラスチック成形体(G)を無電解ニッケルメッキ用水溶液(日進化成製「NP700」50mL+純水200mL)の入った容器に入れ85℃、10分間攪拌しニッケルメッキ処理した。純水及びメタノールにて超音波洗浄した後、プラスチック成形体凸部に厚み10μmのニッケルメッキ膜を形成した。また該メッキ膜は膜厚が均一であり、ふくれがなく、ピール試験においても実用上問題ない密着強度が得られていることを確認した。
図3に示される射出成形装置において、COだけからなる超臨界流体の代わりに、10%のエントレーナー(エタノール)を混合したCOからなる超臨界流体用い、かつその他は図3の射出成形装置の射出条件で射出成形を行った。プラスチックとしてはガラス転移温度約150℃の脂環式オレフィン樹脂(日本ゼオン社製ゼオネックス480R)を用いた。本実施例では、図3の射出成形装置における混合槽304は、130℃、15MPaの雰囲気に維持した。可塑化シリンダー320の温度は200℃とした。また、金型内を流れる温調回路内の媒体温度は130℃とした。有機金属錯体としては化合物(a1)を使用した。有機金属錯体の量は該溶融樹脂量に対して10質量%用いた。この条件により射出成形したプラスチック成形体を(H)とする。
実施例13の条件で射出成形したプラスチック成形体(H)を無電解ニッケルメッキ用水溶液(日進化成製「NP700」50mL+純水200mL)の入った容器に入れ85℃、10分間攪拌しニッケルメッキ処理した。純水及びメタノールにて超音波洗浄した後、プラスチック成形体凸部に厚み10μmのニッケルメッキ膜を形成した。また該メッキ膜は膜厚が均一であり、ふくれがなく、ピール試験においても実用上問題ない密着強度が得られていることを確認した。
図3に示される射出成形装置と、その射出条件を用いて射出成形を行った。プラスチックとしてはアクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)を用いた。本実施例では、図3の射出成形装置における混合槽304は、70℃、25MPaの雰囲気に維持した。可塑化シリンダー320の温度は120℃とした。また、金型内を流れる温調回路内の媒体温度は70℃とした。有機金属錯体としては化合物(a1)を使用した。有機金属錯体の量は該溶融樹脂量に対して10質量%用いた。この条件により射出成形したプラスチック成形体を(I)とする。
実施例15の条件で射出成形したプラスチック成形体(I)を無電解ニッケルメッキ用水溶液(日進化成製「NP700」50mL+純水200mL)の入った容器に入れ85℃、10分間攪拌しニッケルメッキ処理した。純水及びメタノールにて超音波洗浄した後、プラスチック成形体凸部に厚み10μmのニッケルメッキ膜を形成した。また該メッキ膜は膜厚が均一であり、ふくれがなく、ピール試験においても実用上問題ない密着強度が得られていることを確認した。
図3に示される射出成形装置と、その射出条件を用いて射出成形を行った。プラスチックとしてはアクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)を用いた。本実施例では、図3の射出成形装置における混合槽304は、70℃、25MPaの雰囲気に維持した。可塑化シリンダー320の温度は180℃とした。また、金型内を流れる温調回路内の媒体温度は70℃とした。有機金属錯体としては化合物(c1)、ニッケロセン(m.p.:171℃)を使用した。有機金属錯体の量は該溶融樹脂量に対して10質量%用いた。この条件により射出成形したプラスチック成形体を(J)とする。
実施例16の条件で射出成形したプラスチック成形体(J)を無電解ニッケルメッキ用水溶液(日進化成製「NP700」50mL+純水200mL)の入った容器に入れ85℃、10分間攪拌しニッケルメッキ処理した。純水及びメタノールにて超音波洗浄した後、プラスチック成形体凸部に厚み10μmのニッケルメッキ膜を形成した。また該メッキ膜は膜厚が均一であり、ふくれがなく、ピール試験においても実用上問題ない密着強度が得られていることを確認した。
実施例4の条件で化合物(b3)、シクロオクタジエンジメチルニッケル{FAB−MS(+):198(M+1)}を使用してプラスチック成形体(K)を射出成形した。
実施例19の条件で射出成形したプラスチック成形体(K)を無電解ニッケルメッキ用水溶液(日進化成製「NP700」50mL+純水200mL)の入った容器に入れ85℃、10分間攪拌しニッケルメッキ処理した。しかしながら、プラスチック成形体凸部にはメッキ膜が殆ど形成されていなかった。
プラスチック成形体(A)〜(K)に関して、X線光電子分光装置(XPS)で測定することにより、各々の有機金属錯体が金属微粒子に還元された還元率(%)と、基板も含む全元素中の金属微粒子の定量値(at%)を求めた。測定結果を下記の表5及び表6に要約して示す。
Figure 2005146135
Figure 2005146135
前記の表5及び表6に示された結果から、還元率では、プラスチック成形体(A)、(B)、(F)、(G)、(H)のようにゼオネックスのような非極性基板中では、化合物(a1)、(a2)、(a5)のような極性有機金属錯体化合物の還元率は低い。しかしながら、成形品(C)、(D)、(K)のように非極性基板中では、(b1)、(b2)、(b3)のような非極性有機金属錯体化合物は還元されやすい。成形品(I)のように、アクリル樹脂のような極性基板中では(a1)のような極性有機金属錯体化合物の還元率は高く、成形品(J)のように、極性基板では、(c1)のような非極性有機金属錯体化合物は還元されにくいことが理解できる。
また、メッキ処理の結果から、析出金属量が0.1at%以上あればCuメッキを行うことができ、Niメッキを行う場合には0.7at%以上の析出金属量が必要であることが理解できる。
プラスチック成形体(A)、(C)及び(I)に対して無電解メッキにより鍍着したCuメッキ膜及びNiメッキ膜を、7Nの硝酸水溶液に浸漬したところ、メッキ膜は各プラスチック成形体から完全に剥離した。剥離した後のプラスチック成形体表面を前記X線光電子分光装置(XPS)で分析した。結果を下記の表7に示す。
Figure 2005146135
表7に示された結果から、7N硝酸水溶液への浸漬によるメッキ膜剥離の際に、プラスチック成形体表面に存在する金属微粒子の一部が失われ、金属量は減少するが、還元率は殆ど変動しないことが理解できる。
以上説明したきたように、本発明はプラスチック成形体の所望部分の表面に金属微粒子を存在させることにより、当該部分に無電解メッキを行い、電気配線パターンを形成することができるが、本発明はこのような無電解メッキによる導電性パターンの形成にのみ限定されるものではない。例えば、本発明は射出成形法のみでも十分に有益なプラスチック成形体を製造することができる。例えば、金属微粒子をプラスチック成形体表面に選択式に配向させることで、局所的に導電性を付与したり、磁力との密着性を高めたりすることができる。かかるプラスチック成形体を用いて、例えば、簡単にバイオチップの封止を行うことができる。つまり、流体の流路となる微細な凹凸を有したプラスチックをガラス基板等と貼り合わせ該ガラス基板裏面から磁力を発生させることでガラス基板と該プラスチック成形体を簡便に封止することが可能となる。
また、本発明の射出成形法では有機金属錯体化合物以外の化合物も使用することができる。例えば、有機金属錯体化合物の代わりに、ポリプロピレングリコールを用いることでポリエチレンテレフタレート等の疎水性プラスチック表面を選択式に親水化することができる。プラスチックで作製されたバイオッチップにおける流路の一部表面を任意な局所的な個所で親水化もしくは撥水化することによりチップ内における混合流体の層流状態をより高効率化することや、タンパク質を該個所にトラップすることにより分析等を行うことが可能となる。同様にフッ素化合物を用いることで選択的な撥水処理や屈折率の低減を図ることができる。
更に、本発明は、溶融熱可塑性樹脂を保圧・型締めなどによって圧縮した後で、キャビティの容積を増大させて溶融熱可塑性樹脂を発泡させる工程を更に有してもよい。これにより、プラスチック成形体表面の選択的改質を行うと同時に内部は微細発泡セルを形成することにより材料の低誘電化を図ることも可能となる。この場合、平均セル径が30μm以下で発泡倍率が1.5倍以上の発泡状態が望ましい。これにより、プラスチック成形品を軽量にし、断熱効果を高め、かつ、剛性重量比の高めることができる。かかる成形品は、高周波電気回路用基板やMID(Mold Interconnect Device)、ミリ波アンテナ等の平面アンテナに好適である。
本発明のプラスチック成形品の一例の模式的部分概要断面図である。 超臨界流体を示す相図である。 本発明のプラスチック成形体を製造するために使用される射出成形装置の一例の概要構成図である。 図3に示される射出成形装置のA部の拡大図である。 従来のプラスチックの無電解メッキプロセスの一例の流れ図である。 従来のメッキ配線方法の一例の流れ図である。
符号の説明
1 本発明のプラスチック成形品
3 プラスチック成形体
5 メッキ膜
7 有機金属錯体化合物粒子
9 金属微粒子
301 COボンベ
302 超臨界流体発生装置
303 混合槽
304 有機金属錯体化合物貯蔵容器
305 キャビティ
306 微細流路
307 エアーバルブ
308 有機金属錯体化合物含有超臨界流体
309 溝パターン
310 凸部
312 溶融熱可塑性樹脂
314 固定金型
315 可動金型
316 有機金属錯体化合物含有超臨界流体供給流路
317 熱可塑性樹脂供給ホッパー
318 バンドヒーター
319 スクリュー
320 可塑化シリンダー
321 ノズル
322 金型スプール

Claims (8)

  1. プラスチック成形体であって、該プラスチック成形体の所望部分の表面及びその近傍付近に、有機金属錯体が還元されることにより生成された金属微粒子が0.1at%〜5at%の割合で存在していることを特徴とするプラスチック成形体。
  2. 前記有機金属錯体が下記の一般式(1)〜(4)、
    Figure 2005146135
    (式中、XとX は各々独立にハロゲン原子を表わし、R〜R10 は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアルコキシアルキル基を表す。R〜R10のうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。Mはn価の金属イオンを表す。)、
    Figure 2005146135
    (式中、RとRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、R〜Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又はアルキル基を表す。R〜Rのうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。Mはn価の金属イオンを表す。)、
    Figure 2005146135
    (式中、R〜Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基又はアルキル基を表し、Mはn価の金属イオンを表す。)及び、
    Figure 2005146135
    (式中、R〜Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又はアルキル基を表す。R〜R及びR〜Rのうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。Mはn価の金属イオンを表す。)
    で示される化合物のうちの少なくとも一種類であることであることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形品。
  3. 請求項1に記載の金属微粒子を触媒核として形成されたメッキ層を更に有することを特徴とするプラスチック成形品。
  4. 前記メッキ層は電気配線パターンを構成することを特徴とする請求項3に記載のプラスチック成形品。
  5. プラスチック成形体の製造方法であって、
    (1)射出成形機の金型内に熱可塑性樹脂と、有機金属錯体化合物含有超臨界流体を注入するステップと、
    (2)これら成分類を射出成形することによりプラスチック成形体を得るステップとからなり、
    前記プラスチック成形体の所望部分の表面及びその近傍付近に、前記有機金属錯体が還元されることにより生成された金属微粒子が0.1at%〜5at%の割合で存在していることを特徴とするプラスチック成形体の製造方法。
  6. プラスチック成形体の表面にめっき膜によるパターンが形成されているプラスチック成形品の製造方法であって、
    (1)射出成形機の金型内に熱可塑性樹脂と、超臨界流体に溶解させた有機金属錯体溶液を注入するステップと、
    (2)これら成分類を射出成形することによりプラスチック成形体を得るステップと、
    (3)前記プラスチック成形体の所望の表面に無電解メッキによりパターンを形成するステップとからなり、
    前記プラスチック成形体のメッキ膜を形成すべき表面及びその近傍付近に、前記有機金属錯体が還元されることにより生成された金属微粒子が0.1at%〜5at%の割合で存在していることを特徴とするプラスチック成形品の製造方法。
  7. 前記有機金属錯体が下記の一般式(1)〜(4)、
    Figure 2005146135
    (式中、XとX は各々独立にハロゲン原子を表わし、R〜R10 は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアルコキシアルキル基を表す。R〜R10のうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。Mはn価の金属イオンを表す。)、
    Figure 2005146135
    (式中、RとRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、R〜Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又はアルキル基を表す。R〜Rのうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。Mはn価の金属イオンを表す。)、
    Figure 2005146135
    (式中、R〜Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基又はアルキル基を表し、Mはn価の金属イオンを表す。)及び、
    Figure 2005146135
    (式中、R〜Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又はアルキル基を表す。R〜R及びR〜Rのうち隣接する置換基同士が結合して環状を形成してもよい。Mはn価の金属イオンを表す。)
    で示される化合物のうちの少なくとも一種類であることであることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
  8. 前記めっき膜によるパターンは電気配線パターンであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
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