JP2005125803A - 多層生分解性プラスチックフィルム - Google Patents

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潤 高木
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Abstract


【課題】 本発明は、従来のポリ乳酸系重合体から作られたフィルムのヒートシール性を改良した多層構造の生分解性プラスチックフィルムに関するものである。
【解決手段】 ポリ乳酸系重合体あるいはこれを主成分とする組成物からなるフィルム(ポリ乳酸系フィルム)を有し、当該ポリ乳酸系フィルムの両最外層が生分解性プラスチックフィルムである多層生分解性プラスチックフィルムであって、前記ポリ乳酸系フィルムの面配向度ΔPが3.0×10−3〜30×10−3であって、かつ当該ポリ乳酸系フィルムを昇温したときの結晶融解熱量ΔHmと昇温中の結晶化により発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が20J/g以上及び{(ΔHm−ΔHc)/ΔHm}が0.75以上であり、また前記両最外層を形成する生分解性プラスチックフィルムの融解温度Tmは、前記ポリ乳酸系フィルムの融解温度より10℃以上低いことを特徴とする多層生分解性プラスチックフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ヒートシール性に優れた多層生分解性プラスチックフィルムに関する。
スナック菓子袋を典型的な例とした一般包装材用途を始め、農業資材、建築資材、医用材料など幅広い用途でヒートシール性に優れたフィルムが要求されている。
ヒートシール性に優れたフィルムとは、加熱バーや加熱板あるいは加熱ロール等を用いてフィルム同志を熱と圧力で貼り合わせたり接着する、いわゆる「ヒートシ−ル」する際に、所望する接着強度を安定して得られる温度範囲が広いフィルムをさす。すなわちヒートシール性に優れたフィルムは、ヒートシールを行うことにより、各種のフィルム加工製品を簡便に得ることができる。
ヒートシールの際に上記温度範囲を下回るとフィルム基材が固いので充分な接着強度が得られず、上回ると、フィルム基材が柔らかくなり過ぎてピンホールあるいはしわ等が生じて外観の劣化を引き起こすと同時に、それらが原因で接着強度が低下する。
また、ヒートシール性が乏しいと、狭い温度範囲でヒートシール作業を行わなければならず、高い温度制御能力が求められ装置が高価になる、生産性が悪い、不良率が高い、作業者の心身の疲労が激しいといった種々の間題が発生する。
そこでポリオレフィン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)等の汎用フィルムでは、ヒートシールを必要する用途には、特殊なポリマー設計の原料を用いたり、異種原料のブレンドや積層を行うことにより、ヒートシール性を改良したフィルムが使用されるケースが少なくない。
一方、近年環境間題に関する高まりからプラスチック加工品全般に対して、自然環境中に棄却された場合、経時的に分解・消失する自然環境に悪影響を及ぼさないプラスチック製品が求められている。
ところが、従来のプラスチックフィルム製品は、自然環境中で長期にわたって安定であり、しかも嵩比重が小さいため、廃棄物埋め立て地の短命化を促進したり、自然の景観や野生動植物の生活環境を損なうといった問題点が指摘されていた。
そこで、今日注目を集めているのは、生分解性プラスチック材料である。生分解性プラスチックは、土壌中や水中で、加水分解や生分解により、徐々に崩壊・分解が進行し、最終的に微生物の作用により無害な分解物となることが知られている。
現在、実用化が検討されている生分解性プラスチックは、脂肪族ポリエステル、変性PVA(ポリビニルアルコール)、セルロースエステル化合物、デンプン変性体、およびこれらのブレンド体に大別される。
脂肪族ポリエステルとしては、例えば、微生物産出系重合体としてポリ(ヒドロキシ酪酸/吉草酸)が、合成系重合体としてポリカプロラクトンや脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールの縮宿合体が、そして、半合成系重合体としてポリ乳酸系重合体がそれぞれ知られている。
これらの生分解性プラスチックは各々固有の特徴を有し、それに応じた用途展開が考えられるが、中でも、ポリ乳酸系重合体は、他の生分解性プラスチックと比較して透明性、剛性、耐熱性、加工性等が秀でていることから、従来硬質PVCやPETが使用されてきた硬質透明フィルム用途への展開が図られようとしている。
特に、ポリ乳酸系重合体を使用した二軸延伸熱固定フィルムは汎用フィルムと同等あるいは優る機械物性を有し、完全生分解性であるので、−般包装材を始め、幅広い用途に応用が期待されている。
特開平8−85194号公報 特開平7−18063号公報 特開平6−256480号公報
本発明は、従来のポリ乳酸系重合体から作られたフィルムは、ヒートシール性に乏しく、フィルム加工製品等の様々な分野に使用する上で、実用上の大きな問題となっていた。そこで本発明は、従来のポリ乳酸系重合体から作られたフィルムのヒートシール性を改良し、ヒートシール性に優れた生分解性プラスチックフィルムを提供するものである。
本発明の要旨は、(1)ポリ乳酸系重合体あるいはこれを主成分とする組成物からなるフィルム(ポリ乳酸系フィルム)を有し、当該ポリ乳酸系フィルムの両最外層が生分解性プラスチックフィルムである多層生分解性プラスチックフィルムであって、前記ポリ乳酸系フィルムの面配向度ΔPが3.0×10−3〜30×10−3であって、かつ当該ポリ乳酸系フィルムを昇温したときの結晶融解熱量ΔHmと昇温中の結晶化により発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が20J/g以上及び{(ΔHm−ΔHc)/ΔHm}が0.75以上であり、また前記両最外層を形成する生分解性プラスチックフィルムの融解温度Tmは、前記ポリ乳酸系フィルムの融解温度より10℃以上低いことを特徴とする多層生分解性プラスチックフィルムである。
(2)ポリ乳酸系重合体あるいはこれを主成分とする組成物からなるフィルム(ポリ乳酸系フィルム)を有し、当該ポリ乳酸系フィルムの両最外層が生分解性プラスチックフィルムである多層生分解性プラスチックフィルムであって、前記ポリ乳酸系フィルムの面配向度ΔPが3.0×10−3〜30×10−3であって、かつ当該ポリ乳酸系フィルムを昇温したときの結晶融解熱量ΔHmと昇温中の結晶化により発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が20J/g以上及び{(ΔHm−ΔHc)/ΔHm}が0.75以上であると共に当該ポリ乳酸系フィルムは融解温度Tmを有し、また前記両最外層を形成する生分解性プラスチックフィルムは非晶性フィルムであることを特徴とする多層生分解性プラスチックフィルムである。
(3)前記ポリ乳酸系フィルムの融解温度Tmが100℃以上であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の多層生分解性プラスチックフィルムである。
本発明の多層生分解性プラスチックフィルムは、優れたヒートシール性を有するので一般包装資材等に使用でき、かつ、生分解性を有するため環境に優しい。
本発明に用いられるポリ乳酸系重合体は、ポリ乳酸または乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、もしくはこれらの組成物であり、本発明の効果を阻害しない範囲で他の高分子材料が混入されても構わない。また、フィルムの物性および加工性を調整する目的で可塑剤、滑剤、無機フイラー、紫外線吸収剤などの添加剤、改質剤を添加することも可能である。
乳酸としてはL−乳酸、D一乳酸が挙げられ、ヒドロキシカルボン酸としてはグリコール酸、3一ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4一ヒドロキシ吉草酸、6一ヒドロキシカプロン酸などが代表的に挙げられらる。
重合法は縮合重合法、開環重合法など、公知の方法を採用することも可能であり、さらには、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ジエポキシ化合物、酸無水物、酸クロライドなどを使用しても構わない。重合体の重量平均分子量としては、60,000から1,000,000の範囲が好ましく、かかる範囲を下まわると実用物性がほとんど発現されいなどの問題を生じる。また上まわる場合には、溶融粘度が高くなりすぎ成形加工性に劣る。
ここで、ポリ乳酸系重合体あるいはこれを主成分とする組成物からなるフィルム(以下、略してポリ乳酸系フィルムという)の融解温度Tmが100℃以上であることが肝要である。Tmが100℃未満では耐熱性が低下して、二次加工等において、しわ等を引き起こして実用的でない。また、ポリL−乳酸ホモ重合体のTmは195℃であり、D−乳酸、グリコール酸、6−ヒドロキシカプロン酸等の共重合成分が増えるにしたがってTmは低下する。このため実際的には、本発明に使用されるポリ乳酸系フィルムのTmは100℃以上、195℃以下である。
また、ポリ乳酸系重合体等の結晶性重合体は共重合比を増していくと、昇温時の結晶化温度Tcは上昇していき融解温度Tmは低下していく傾向にある。Tc>Tmとなった温度では、実質的にTmは観察されなくなる。すなわち、共重合単量体の選択によっては、Tmが100℃まで下がりきる前に消失する場合もあり得るが、本発明においては、ポリ乳酸系フィルムはTmを有することが必要である。
上述したポリ乳酸系フィルムに積層される生分解性プラスチックフィルムは、使用されるポリ乳酸系フィルムの融解温度Tmより10℃以上低い生分解性プラスチックフィルム、あるいは、非晶性である生分解性プラスチックフィルムである。生分解性プラスチックフィルムとしては例えばポリ乳酸、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル、変性PVA、セルロースエステル化合物等が使用できる。
ポリ乳酸系フィルム(基材)に積層される生分解性プラスチックフィルムとして、ポリ乳酸系フィルムが使用されるときは、ポリ乳酸系フィルムが多層化されたことになる。
基材として使用されるポリ乳酸系フィルムより、融解温度Tmが10℃以上低い所望するポリ乳酸系フィルムは、上述したように、ホモ重合体に対してDあるいはL−乳酸、グリコール酸、6−ヒドロキシカプロン酸等の共重合成分を加えることにより、融解温度Tmを低下させて得ることができる。積層されるフィルムとしては、ホモ重合体の融解温度Tmが195℃なので、185℃以下のポリ乳酸系フィルムが使用される。また、非晶性であるポリ乳酸系フィルムを得るためには、共重合比をさらに増していけばよい。
本発明で積層される生分解性プラスチックフィルムとして用いられるポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルはアルキレンとエステル結合を基本骨格として持つものであり、生分解性に実質影響を与えない範囲で、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合等を導入することもできる。特に、イソシアネート化合物を用い、主鎖にウレタン結合を導入し分子量をジャンプアップすることができる。
具体的には、まず脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られる重合体が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4ーブタンジオール、および1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等が代表的にあげられる。これらの中からそれぞれ1種類以上選んで縮合重合した後、必要に応じてイソシアネート化合物で重量平均分子量を50,000以上にジャンプアップした重合体は、通常60〜110℃のTmとポリエチレンと同様な基本物性を持ち、本発明に好ましく用いることができる。
また、環状ラクトン類を有機金属触媒を用い開環重合した一連の脂肪族ポリエステルが挙げられる。単量体としては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン等が代表的に挙げられ、さらに、ラクチドやグリコリドが挙げられる。これらから1種類以上選ばれて重量平均分子量が30,000以上になるように条件を調整して重合される。Tmの制御は単量体の選択によって行われるが、通常50〜170℃である。
他の合成系脂肪族ポリエステルとしては、環状酸無水物とオキシラン類、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピオンオキサイドあるいはアリルグリシジルエーテルの重合体や、エチレンと環状ケテンアセタールである2−メチレン−1,3−ジオキソランや2−メチレン−1,3−ジオキセパンとのラジカル重合体等が挙げられる。
また、アルカリゲネスユートロファスを始めとする菌体内でアセチルコエンチームA(アセチルCoA)により生合成される脂肪族ポリエステルが知られている。この脂肪族ポリエステルは、主にポリ−β−ビドロキシ酪酸(ポリ3HB)であるが、プラスチックとしての実用特性を向上さすために、発酵プロセスを工夫し、通常吉草酸ユニット(HV)を共重合し、ポリ(3HB−co−3HV)の共重合体にすることが工業的に有利である。HV共重合比は一般的に0〜40%であり、この範囲でTmは130〜165℃である。HVの代わりに4HBを共重合したり、長鎖のヒドロキシアルカノエートを共重合してもよい。
本発明で積層される生分解性プラスチックフィルムとして用いられる、ポリビニルアルコール(PVA)は既存の石油由来合成系重合体の中では、比較的生分解性に優れているが、PVAホモポリマーは分子の凝集力が大きすぎ、融点を持たず溶融押出成形ができないので、フィルム化する上で成形加工上の制約を受ける。そこで、エチレンを共重合したり、通常ケン化工程で消失する酢酸ビニルユニットを残存させたりして、50〜150℃位のTmを持つよう改質して用いることができる。この様なPVA系重合体をベースに、生分解性を高めるためにデンプン等を分散させた組成物が、生分解性プラスチック材料として一定の評価を得ており、変性PVAと呼ばれている。
本発明で積層される生分解性プラスチックフィルムとして用いられるセルロースエステル化合物は、通常セルロースの水酸基を酢酸エステル化した化合物であり、その置換度は2〜3の間にある。セルロースエステル化合物はTmを実質的に持たない。溶融成形加工性を付与するために、可塑剤を添加してもよい。可塑剤は材料のTg(ガラス転移温度)を調整する働きもある。可塑剤としては、生分解性を考慮して、脂肪族エステルや油脂類、例えば、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、グリセリンアセテート、大豆油、ひまし油及びあまに油等が好ましく挙げられる。
ポリ乳酸系フィルムに積層される生分解性プラスチックフィルムにも、本発明の効果を阻害しない範囲でフィルムの物性や加工性を調整する目的で、可塑剤、滑剤、無機フィラー、紫外線吸収剤などの添加剤、改質剤、あるいは、他の高分子材料を添加することも可能である。
本発明の多層生分解性プラスチックフィルムの層構成は、基材としてポリ乳酸系フィルムを使用し、その両最外層を形成するフィルムが生分解性プラスチックフィルムであれば特に限定ざれないが、両面ヒートシール性や耐カール性を付与するために、機械特性に優れたポリ乳酸系フィルムを内層にして、その両最外層を他の生分解性プラスチックフィルムにした2種3層構成の積層フィルムとすることができる。
また、ガスバリヤ性や水蒸気バリヤ性等の他の機能を付与する目的で3層以上の多層構成としても構わない。また、低価格化のためや、カール性を有している方が好ましい用途のために、中心層から上下非対象の層構成にしてもよい。
ポリ乳酸系フィルムに生分解性プラスチックフィルムを積層する方法としては、通常に用いられる方法を採用することができる。例えば、複数の押出機を一つの口金に連結しいわゆる共押出をする方法、巻き出した一種のフィルム上に別種の材料をコーティングする方法、適温にある複数種のフィルムをロールやプレス機などで熱圧着する方法、あるいは、接着剤を使ってフィルム同志を貼り合わせたりする方法等が代表的に挙げられる。
いわゆるドライラミやウエットラミする場合の接着剤としては、ビニル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ゴム系、ウレタン系等が一般的に用いられるが、接着剤も生分解性にする場合には、でんぷん、アミロース、アミロペクチン等の多糖類や、膠、ゼラチン、カゼイン、ゼイン、コラーゲン等の蛋白質類やポリペプチド類、未加硫天然ゴム、あるいは、脂肪族ポリエステル等が好ましく採用される。
ポリ乳酸系重合体が本来的に有する脆性を大幅に改良し、フィルム強度をより向上させるためには、基材として用いられるポリ乳酸系フィルムの面配向度ΔPを3.0×10−〜30×10−3に調整することが望ましい。
ΔPは、フイルムの厚み方向に対する面方向の配向度を表わし、通常直交3軸方向の屈折率を測定し以下の式で算出される。
ΔP={(γ+β)/2}−α
(α<β<γ)
ここで、γ、βがフィルム面に平行な直交2軸の屈折率、αはフィルム厚さ方向の屈折率である。
ΔPは結晶化度や結晶配向にも依存するが、大きくはフィルム面内の分子配向に依存する。つまりフィルム面内、特にフィルムの流れ方向および/またはそれと直交する方向の1または2方向に対し、分子配向を増大させることにより、無配向シート・フィルムでは1.0×10−3以下であるΔPを本発明で規定する3.0×10−3以上に増大させることができる。
ΔPを増大させる方法としては、既知のあらゆるフィルム延伸法に加え、電場や磁場を利用した分子配向法を採用することもできる。
通常はTダイ、Iダイ、丸ダイ等から溶融押し出ししたシート状物または円筒状物を冷却キャストロールや水、圧空等により急冷し非晶質に近い状態で固化させた後、ロール法、テンター法、チューブラー法等により一軸または二軸に延伸する方法が、工業的に望ましく採用される。
延伸した多層生性解性プラスチックフィルムを製造する際に、ラミネート、いわゆる、ドライラミあるいはウエットラミにより多層化する場合は、あらかじめ延伸加工されたポリ乳酸系フィルムを用いれば良いし、共押し出しする場合は、押出された多層フィルムを適当な条件で延伸すれば良い。
ポリ乳酸系フィルムにだけ着目した場合の延伸条件としては、延伸温度50〜100℃、延伸倍率1.5倍〜5倍、延伸速度100%/分〜10,000%/分が一般的ではあるが、この適正範囲は重合体の組成や、未延伸シートの熱履歴によって異なってくるので、ΔPの値を見ながら適宜決められる。
こうして延伸されたポリ乳酸系フィルムは、本来的に有する脆性が大幅に改良され、機械強度が向上している。熱収縮性のフィルムであり、収縮包装や収縮結束包装、あるいは収縮ラベル等に、用途展開可能である。
ところが、前述したΔPが3.0×10−3〜30×10−3のポリ乳酸系フィルムを使用した多層生分解性プラスチックフィルムでは、熱寸法安定生が要求される多くの用途に用いることができない。そこで、ポリ乳酸系フィルムに熱寸法安定性を付与するためには、フィルムを昇温したときの結晶融解熱量ΔHmと昇温中の結晶化により発生する結晶化熱量ΔHcとの差(Hm−ΔHc)を20J/g以上かつ{(ΔHm一ΔHc)/ΔHm}を0.75以上に制御する。
すなわち、これらの条件を下回る場合は、フィルムの熱寸法安定性が不良であり、貼り合わせ、乾燥、エージング等の加温される2次加工工程や、夏場の保管中に収縮してしまう問題が生じやすく、実用に供しない。かかる条件を上回れば、熱寸法安定性が良好となり、実用上支障がなくなる。
ΔHm、ΔHcは、フィルムサンプルの示差走査熱量測定(DSC)により求められるもので、ΔHmは昇温速度10℃/分で昇温したときの全結晶を融解させるのに必要な熱量であって、重合体の結晶融点付近に現れる結晶融解による吸熱ピークの面積から求められる。またΔHcは、昇温過程で生じる結晶化の際に発生する発熱ピークの面積から求められる。
ΔHmは、主に重合体そのものの結晶性に依存し、結晶性が大きい重合体では大きな値を取る。ちなみに共重合体のないL−乳酸またはD−乳酸の完全ホモポリマーでは、60J/g以上であり、これら2種の乳酸の共重合体ではその組成比によりΔHmは変化する。ΔHcは、重合体の結晶性に対するその時のフィルムの結晶化度に関係する指標であり、ΔHcが大きいときには、昇温過程でフィルムの結晶化が進行する。すなわち重合体が有する結晶性を基準にフィルムの結晶化度が相対的に低かったことを表す。逆に、ΔHcが小さい時は、重合体が有する結晶性を基準にフィルムの結晶化度が相対的に高かったことを表す。
すなわち、(ΔHm−ΔHc)を増大させるための1つの方向は、結晶性が高い重合体を原料に、結晶化度の比較的高いフィルムをつくることである。フィルムの結晶化度は、重合体の組成に少なからず依存し、重合体そのものの△Hmを20J/g以上にするには、L−乳酸とD−乳酸から共童合体を作るケースにおいては、その組成比を100:0〜94:6の範囲内または0:100〜6:94の範囲内に調製する必要があることが実験上確かめられている。また、ΔHcを低下させるためには、すなわちフィルムの結晶化度を高めるためにはフィルムの成形加工条件を選定する必要がある。
成形加工工程、特にテンター法2軸延伸においてフィルムの結晶化度を上げるためには、延伸倍率を上げ配向結晶化を促進する、延伸後に結晶化温度以上の雰囲気で熱処理するなどが有用である。なお、ΔPが大きいほど結晶化温度が低下する傾向があり、本発明の場合には鋭意検討した結果少なくとも70℃以上で、好適には90℃〜170℃の範囲で3秒以上熱処理することで熱寸法安定性が付与できる。この範囲内で熱処理温度が高いほど、また熱処理時間が長いほど熱寸法安定性は向上する。
以下に実施例を示すが、これらにより本発明に限定されるものではない。
(実験例1)
50mmφ単軸エクストルーダーからの溶融物が内層に、30mmφ単軸エクストルダーからの溶融物が両外層になるように、2種3層Tダイ口金を用い共押出を行った。外層/内層/外層の厚み比を1/8/1になるよう調整し、全体で250 μmの未延伸シートを押出後急冷して採取した。
内層(基材)としてはL体/D体=98/2、重量平均分子量20万のポリ乳酸((株)島津製作所製ラクティ)(Tm=170℃)を、外層としては脂肪族ポリエステルである昭和高分子(株)製ビオノーレ1010(Tm=114℃)、ダイセル化学工業(株)製プラクセルH−7(Tm=60℃)、(株)ゼネカ製バイオポールD300G(Tm=162℃)および同D400G(Tm=153℃)を用いた。また、同様にして、30mmφ単軸エクストルーダーによりポリ乳酸を押出し、ポリ乳酸の単層で構成される250 μmのシートを得た。
上述したシートを1.5倍に縦延伸し、ついで、1.5倍に横延伸した後、160℃で熱処理した。延伸後のフィルムの流れ速度は2m/分、延伸・熱処理各ゾーンの通過時間はそれぞれ30秒であった。
内層として使用したポリ乳酸系フィルム層のTmが170℃のため、外層に使用される脂肪族ポリエステルの上記例の内、ポリ乳酸系フィルム層のTmより10℃以上低い外層を形成できる本発明に含まれるものはビオノーレ1010(Tm=114℃)、プラクセルH−7(Tm=60℃)、バイオポールD400G(Tm=153℃)を使用したものであり、これらを実施例1〜3とした。一方、バイオポールD300G(Tm=162℃)を使用した多層フィルムおよびポリ乳酸の単層構成のフィルムを使用したものを比較例1および2とした。
フィルムの評価結果を表1に示す。なお、表中に示す測定値は次に示すような条件で測定を行い、算出した。
(1)ΔP
アッベ屈折計によって直交3軸方向の屈折率(α,β,γ)を測定し、次式で算出した。
ΔP={(γ+β)/2}−α
(α<β<γ)
γ:フイルム面内の最大屈折率
β:それに直交するフィルム面内方向の屈折率
α:フィルム厚さ方向の屈折率
なお、本発明においては、ΔPはポリ乳酸系重合体フィルムについて規定するものであるので、共押出等などにより積層後、延伸・熱処理された場合には、必要に応じ、ポリ乳酸系フィルム層以外のフィルム層を除去し、ポリ乳酸系フィルムについて測定した。
(2)熱分析
パーキンエルマー製DSC−7を用い、原料ペレット、もしくはポリ乳酸系フィルム層のフィルムサンプル10mgをJIS−K7122に基づき、昇温速度10℃/分で昇温した時のサーモグラムからガラス転移温度Tg・融解温度Tm・結晶融解熱量ΔHm・結晶化熱量ΔHcを求め、それぞれ算出した。
(3)ヒートシール強度
フィルムサンプルをMD(フィルムの流れ方向)を長手方向として10mm幅×100mm長さの短冊状に切り出し、この短冊状サンプル2枚を重ね合わせ、10mm幅のヒートシールバーを有するヒートシーラーに直交する様にセットした後、所定の温度で片側より加熱し、1.178Kg/cmの圧力で、15秒間ヒートシールした。この時、積層フィルムを用いる場合には、易接着処理面同士が内側になるようセットした。
上記サンプルをインテスコ万能試験機205型機を用い、JISK−6854に準拠し、剥離速度100mm/分で破断するまで、または、接着部分が残り1mmになるまでT型剥離試験を行った。得られた時間−応力のピーク値をヒートシール強度とし、簡便な理解のため、全くシールされないか、されてもその値が50g/cm未満のものを×、50g/cm以上500g/cm未満のものを△、500g/cm以上のものを○として示した。
Figure 2005125803
表1より明らかなように、内層(基材)と外層とのTmの差が10℃以上である実施例1〜3には、広い温度範囲で好適なヒートシール性能が得られることがわかる。一方、Tmの差が10℃以下である比較例1、単層である比較例2はヒートシール性能が劣る。
(実験例2)
実施例1で使用した、ビオノーレ1010を外層に設けた3層である多層生分解性プラスチックフィルムの未延伸シートを表2に示す条件で縦延伸しついで横延伸し、さらに熱処理して、実施例4〜8のシートを得た。尚、実施例4は未延伸シートである。
得られた実施例4〜8について実験例1と同様な方法でヒートシール性能について調べたところ、広い温度範囲で好適なヒートシール性能が得られることがわかった。さらに、引張り破断強度および熱収縮性について表2に示す。尚、表中に示す測走値は次に示すような条件で測定を行い、算出した。
(4)引張り破断強度
引張り強度は東洋精機テンシロンII型機を用い、JIS−K7127に基づいて測定した。MDはフィルムの流れ方向、TDはフィルムの流れに対し直交する方向を示す。
(5)熱収縮性
フィルムサンプルを100mm×100mmに切り出し、80℃の温水バスに300秒浸潰した後、その寸法を計り、元の寸法に対する熱収縮分の割合(%)を算出した。
Figure 2005125803
実施例4は未延伸シートであるため収縮率は小さいが、引張り強度が不十分である。実施例5は面配向度ΔPが3×10−3〜30×10−3の範囲にあり、延伸しているため、程々の引張り強度を有する熱収縮フィルムとして適している。実施例6は面配向度ΔPが上記範囲にあり、延伸後の熱処理が適切であるため、引張り強度及び熱収縮性ともに優れた熱収縮フィルムである。一方、実施例7,8はΔPが3×10−3〜30×10−3、(ΔHm−ΔHc)が20J/g以上、{(ΔHm−ΔHc)/ΔHm}が0.75以上であり、引張り強度および熱寸法安定性ともに優れた熱寸法安定性フィルムである。
すなわち、表2より明らかなように、本発明の多層生分解性プラスチックフィルムは延伸条件によりヒートシール性に優れ、適度な引張り強度を持ち、かつ、熱収縮性あるいは熱寸法安定性を有する多層生分解性プラスチックフィルムを得ることができる。

Claims (3)

  1. ポリ乳酸系重合体あるいはこれを主成分とする組成物からなるフィルム(ポリ乳酸系フィルム)を有し、当該ポリ乳酸系フィルムの両最外層が生分解性プラスチックフィルムである多層生分解性プラスチックフィルムであって、前記ポリ乳酸系フィルムの面配向度ΔPが3.0×10−3〜30×10−3であって、かつ当該ポリ乳酸系フィルムを昇温したときの結晶融解熱量ΔHmと昇温中の結晶化により発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が20J/g以上及び{(ΔHm−ΔHc)/ΔHm}が0.75以上であり、また前記両最外層を形成する生分解性プラスチックフィルムの融解温度Tmは、前記ポリ乳酸系フィルムの融解温度より10℃以上低いことを特徴とする多層生分解性プラスチックフィルム。
  2. ポリ乳酸系重合体あるいはこれを主成分とする組成物からなるフィルム(ポリ乳酸系フィルム)を有し、当該ポリ乳酸系フィルムの両最外層が生分解性プラスチックフィルムである多層生分解性プラスチックフィルムであって、前記ポリ乳酸系フィルムの面配向度ΔPが3.0×10−3〜30×10−3であって、かつ当該ポリ乳酸系フィルムを昇温したときの結晶融解熱量ΔHmと昇温中の結晶化により発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が20J/g以上及び{(ΔHm−ΔHc)/ΔHm}が0.75以上であると共に当該ポリ乳酸系フィルムは融解温度Tmを有し、また前記両最外層を形成する生分解性プラスチックフィルムは非晶性フィルムであることを特徴とする多層生分解性プラスチックフィルム。
  3. 前記ポリ乳酸系フィルムの融解温度Tmが100℃以上であることを特徴とする請求項1または2記載の多層生分解性プラスチックフィルム。
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