JP2005105365A - 導電性粉末材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ニッケル又はニッケル合金からなり、非還元雰囲気中で焼成しても表面酸化膜の形成を抑制することができる導電性粉末材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 有機溶媒中にNi粒子1が分散されたNi粒子分散溶液をミスト状にして、H2ガスとArガスとの混合ガスと共に炉心管内に供給する。そして、この炉心管内において、先ず、200乃至600℃に加熱し、Ni粒子1の表面を還元して表面酸化膜を除去する。次に、600乃至1100℃に加熱することにより、有機溶剤に脱水素反応を生じさせ、Ni粒子の表面にグラファイトからなるC被覆層2aを形成する。C被覆層2aの平均厚さは5乃至30nmである。
【選択図】 図1
【解決手段】 有機溶媒中にNi粒子1が分散されたNi粒子分散溶液をミスト状にして、H2ガスとArガスとの混合ガスと共に炉心管内に供給する。そして、この炉心管内において、先ず、200乃至600℃に加熱し、Ni粒子1の表面を還元して表面酸化膜を除去する。次に、600乃至1100℃に加熱することにより、有機溶剤に脱水素反応を生じさせ、Ni粒子の表面にグラファイトからなるC被覆層2aを形成する。C被覆層2aの平均厚さは5乃至30nmである。
【選択図】 図1
Description
本発明は、導電性ペースト、導電性接着剤及び異方性導電シート等の電子部品用実装材料に含有されこれらの電子部品用実装材料に導電性を付与する導電性粉末材料及びその製造方法に関する。
基板、電子部品、配線等を相互に接続する導電性ペースト、導電性接着剤及び異方性導電シート等の電子部品用実装材料(以下、単に実装材料ともいう)においては、樹脂等からなる母材中に、導電性を有する導電性粉末材料が添加されている。この導電性粉末材料には、Ag、Pd、Cu、Ni等の金属からなる金属粒子、これらの金属をベースとしたAg−Pd合金及びCu−Ag等の合金からなる合金粒子、並びにスチレン及びジビニルベンゼン等の耐熱性樹脂からなる粉体の表面にAu又はNi等の金属がめっきされた金属複合樹脂粒子等がある。
このような実装材料は、基板又は電子部品等に塗布又は接着された後、焼成されることにより固化される。このとき、焼成温度は基板及び電子部品の耐熱性能により制限される。例えば、この実装材料をガラスエポキシ等のリジッド基板に対して使用する場合には、焼成温度の上限は約260℃であり、ポリイミド及びポリエチレンテレフタラート等からなるメンブレン基板に対して使用する場合には、焼成温度の上限は180乃至220℃程度である。
このような低い焼成温度では、導電性粉末材料である金属粒子、合金粒子又は金属複合樹脂粒子(以下、総称して金属粒子という)同士の焼結及び融着は起こらないため、導電性ペースト、導電性接着剤、異方性導電シート等の実装材料の導電性は、金属粒子間の接触により実現される。従って、これらの実装材料に添加される金属粒子には、固有抵抗値が低いことの他に、熱衝撃及び機械的応力による抵抗の増加が小さく、更に、耐マイグレーション性が優れていることが要求される。なお、これらの金属粒子の形状は、粒子間の接触面積を大きくとれる扁平なフレーク形状が好ましい。また、粒子の大きさは、0.1乃至数百μmの範囲で種々のものがあり、目的に応じて使い分けられている。
金属粒子を形成する材料には、Ag(銀)が広く一般的に使用されている(例えば、特許文献1参照。)。これは、Agは固有抵抗値が低く、表面酸化による接触不良の問題が生じない材料であるからである。また、上述の金属粒子を形成する材料として、Agに次いで固有抵抗値が低いCu(銅)、及びAg−Cu合金も広く使用されている(例えば、特許文献2乃至5参照。)。
しかしながら、Ag及びCuはマイグレーションを起こしやすいという問題点がある。そして、今後電子部品の高密度実装化が進み、電子部品中の配線の幅及び間隔(L/S)が数十乃至十μm程度まで微細化されるようになると、実装材料の耐マイグレーション性が益々重要になってくる。このため、Ag及びCuに替わる耐マイグレーション性が優れた導電性粉末材料が求められている。また、Cuは、表面が容易に酸化すると共に熱衝撃により酸化が進行することから、実装材料としての信頼性が欠けるという問題点もある。
このため、上述の金属粒子を形成する材料として、Ni又はNi合金(以下、総称してNiともいう)を使用することが考えられる。NiはAgに比べて固有抵抗値は高いものの、マイグレーションを起こしにくい材料であることから、高密度実装に適した次世代の導電性材料として期待できる。
しかしながら、上述の従来の技術には、以下に示すような問題点がある。Ni粒子は大気中で容易に表面酸化膜が形成されてしまうため、Ni粒子を含有させた導電性ペースト等の実装材料を使用する場合には、Ni粒子の表面酸化膜を除去し、Ni粒子間の金属接合を促して接続抵抗を低減させるために、実装材料を水素ガス中で還元焼成することが必要となる。これにより、焼成の処理コスト及び設備コストが増大すると共に、取り扱いが困難になるという問題点がある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、ニッケル又はニッケル合金からなり、非還元雰囲気中で焼成しても表面酸化膜の形成を抑制することができる導電性粉末材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る導電性粉末材料は、電子部品用実装材料に含有される導電性粉末材料において、ニッケル又はニッケル合金からなる粒子と、炭素からなり前記粒子の表面を被覆する平均厚さが5乃至30nmの被覆層と、を有することを特徴とする。
本発明においては、粒子がニッケル又はニッケル合金により形成されているため、この粒子を電子部品用実装材料中に含有させた場合に、この実装材料の耐マイグレーション性が向上する。また、粒子の表面に炭素からなる被覆層が形成されているため、粒子の表面の酸化を抑制することができ、電子部品用実装材料を大気中及び不活性ガス中等の非還元雰囲気中で焼成することができる。
本発明に係る導電性粉末材料の製造方法は、ニッケル又はニッケル合金からなる粒子の表面を還元して表面酸化膜を除去する還元工程と、表面を還元した前記粒子の表面に炭素からなり平均厚さが5乃至30nmの被覆層を被覆する被覆工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明に係る導電性粉末材料の製造方法は、有機溶媒中にニッケル又はニッケル合金からなる粒子を分散させたニッケル粒子分散溶液をミスト状にして還元雰囲気中に供給する供給工程を有し、前記還元工程は、前記還元雰囲気中においてミスト状の前記ニッケル粒子分散溶液を200乃至600℃の温度に加熱する工程であり、前記被覆工程は、表面が還元された前記粒子及び前記有機溶媒を非酸化雰囲気中で600乃至1100℃の温度に加熱して前記粒子の表面に炭素を析出させる工程であることが好ましい。これにより、本発明に係る導電性粉末材料を効率よく製造することができる。
更に、前記供給工程は、前記ミスト状のニッケル粒子分散溶液を還元性のガスと共に炉心管内に供給してこの炉心管内を流通させる工程であり、前記還元工程は前記炉心管の上流側部分において行い、前記被覆工程は前記炉心管の下流側部分において行い、前記炉心管の下流側端部において前記粒子を回収する工程を有していてもよい。これにより、本発明に係る導電性粉末材料を簡単な設備で連続的に効率よく製造することができる。
本発明によれば、電子部品用実装材料に含有させたときに、大気中及び不活性ガス中等の非還元雰囲気中で焼成することができ、良好な耐マイグレーション性が得られる導電性粉末材料を得ることができる。これにより、電子部品の高密度実装を低コストで行うことができる。
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1(a)及び(b)は本実施形態に係る導電性粉末材料を示す断面図であり、(a)はC被覆層がグラファイトからなる材料を示し、(b)はC被覆層がアモルファスカーボンからなる材料を示す。図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る導電性粉末材料においては、ニッケル又はニッケル合金からなるNi粒子1が設けられている。また、Ni粒子1の表面には、グラファイトからなるC被覆層2a、又はアモルファスカーボンからなるC被覆層2bが形成されており、C被覆層2bはNi粒子1を被覆している。グラファイトからなるC被覆層2aは層状に形成されており、その平均厚さは5乃至30nmである。また、アモルファスカーボンからなるC被覆層2bは塊状に形成されており、部分的にNi粒子1の表面が露出している。C被覆層2bの平均厚さは、5乃至30nmである。製造条件により、C被覆層はグラファイトになったり、アモルファスカーボンになったり、又は両者が混在したりする。そして、Ni粒子1及びC被覆層2a又は2bにより、本実施形態に係る導電性粉末材料であるC被覆Ni粒子が形成されている。このC被覆Ni粒子の形状は球状又は扁平フレーク状であり、その平均直径は、例えば200nmである。
このC被覆Ni粒子は、例えば、有機溶媒及びバインダを含むペースト中に添加され、導電性ペーストを形成する。そして、この導電性ペーストを、接続しようとする部材、例えば、基板、電子部品又は配線間に塗布し、大気中又は不活性ガス中において焼成する。これにより、塗布された導電性ペーストが固化する。このとき、この導電性ペースト中においてC被覆Ni粒子同士が接触し、電流経路を形成することにより、導電性ペーストに導電性を付与することができる。この結果、前述の部材を相互に接続することができる。なお、実装材料として導電性接着剤及び異方性導電シートを使用する場合においても同様である。以下、本発明の構成要件における数値限定理由について説明する。
被覆層の平均厚さ:5乃至30nm
Ni粒子の表面にC被覆層を形成することにより、Ni粒子の表面の酸化を抑制することができる。また、Ni粒子の表面には、大気により容易に表面酸化膜が形成されるが、この表面酸化膜の厚さは5nm未満と極めて薄い。このため、被覆層の平均厚さが5nm以上であれば、Ni粒子の表面におけるC被覆層により被覆されていないNiの露出部分に表面酸化膜が形成されても、導電性粉末材料同士が接触する際には被覆層同士が接触することになり、実装材料の導電性が確保される。一方、炭素(C)の比抵抗値は1×10−3乃至1×10−4Ω・cm程度であり、1×10−5Ω・cm以下である金属の比抵抗値と比較すると10倍程度高い。このため、被覆層の厚さが30nmを超えると、実装材料の抵抗が大きくなる。従って、被覆層の平均厚さは5乃至30nmであることが必要である。
Ni粒子の表面にC被覆層を形成することにより、Ni粒子の表面の酸化を抑制することができる。また、Ni粒子の表面には、大気により容易に表面酸化膜が形成されるが、この表面酸化膜の厚さは5nm未満と極めて薄い。このため、被覆層の平均厚さが5nm以上であれば、Ni粒子の表面におけるC被覆層により被覆されていないNiの露出部分に表面酸化膜が形成されても、導電性粉末材料同士が接触する際には被覆層同士が接触することになり、実装材料の導電性が確保される。一方、炭素(C)の比抵抗値は1×10−3乃至1×10−4Ω・cm程度であり、1×10−5Ω・cm以下である金属の比抵抗値と比較すると10倍程度高い。このため、被覆層の厚さが30nmを超えると、実装材料の抵抗が大きくなる。従って、被覆層の平均厚さは5乃至30nmであることが必要である。
本実施形態においては、粒子がNiにより形成されているため、耐マイグレーション性が良好である。また、Ni粒子の表面に厚さが5乃至30nmのグラファイトからなる被覆層が形成されているため、Ni粒子の表面に表面酸化膜が形成されることが抑制される。このため、本実施形態のC被覆Ni粒子を、導電性ペースト、導電性接着剤及び異方性導電シート等の実装材料に含有させると、この実装材料の焼成を非還元雰囲気、例えば大気中又は不活性ガス中において行っても、実装材料の導電性を確保できる。また、実装材料を高温雰囲気中に曝しても、この実装材料の抵抗が増大することがなく、耐熱衝撃性が高く、接続信頼性が高い。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、前述の第1の実施形態に係る導電性粉末材料の製造方法である。図2は、本実施形態におけるC被覆Ni粒子の製造装置を示す図である。図2に示すように、C被覆Ni粒子の製造装置10においては、超音波浴槽11が設けられており、この超音波浴槽11には、耐圧性の密閉型原料容器12が浸漬されている。そして、密閉型原料容器12内にはNi粒子分散溶液13が保持されている。Ni粒子分散溶液13は、例えば、Ni粒子1(図1参照)、有機溶媒及び分散剤が混合された溶液である。
なお、分散剤とは、Ni粒子1が互いに凝集しないように相互に分散させておくための界面活性剤であり、例えばヘキサメタリン酸ナトリウムである。また、有機溶媒は、後述するように、脱水素反応によりNi粒子1の表面に炭素(グラファイト又はアモルファスカーボン)を析出させるための原料であり、テトラヒドロフラン(THF)等のCxHyOz系溶剤、又はベンゼン、トルエン若しくはヘキサン等のCxHy系溶剤を使用する。
また、密閉型原料容器12内には、加圧ガス導入管14の一端がNi粒子分散溶液13に浸漬されないように差し込まれており、この加圧ガス導入管14の途中には流量計15が設けられている。これにより、超音波浴槽12内に、Ni粒子分散溶液13に圧力を印加するための加圧ガスが導入されるようになっている。加圧ガスは不活性ガスであり、例えばArガスである。
一方、密閉型原料容器12内には、導出管16の一端がNi粒子分散溶液13に浸漬されるように差し込まれており、導出管16の他端にはアトマイザ17が連結されている。また、アトマイザ17にはアトマイズガス導入管18が連結されており、アトマイズガス導入管18の途中には流量計19が設けられている。これにより、アトマイザ17にNi粒子分散溶液13及びアトマイズガスが供給されるようになっている。アトマイザ17は、Ni粒子分散溶液13及びアトマイズガスが供給されて、Ni粒子分散溶液13をミスト状にして噴出するものである。アトマイズガスは、アトマイザ17の先端部でNi粒子分散溶液13と混合されてNi粒子の表面を還元する還元性ガスであり、不活性ガスとH2ガスとの混合ガス、例えばArガスとH2ガスとの混合ガスである。
更に、アトマイザ17の噴出口17aには、炉心管20の上端部が連結されている。炉心管20は、管軸が垂直方向に延びており、上端部及び下端部が開口した管である。そして、炉心管20の上部、即ち上流側部分の周囲には電気炉Aが設けられており、炉心管20の下部、即ち下流側部分の周囲には電気炉Bが設けられており、炉心管20の下端にはフィルタ21が連結されている。
次に、C被覆Ni粒子の製造方法について説明する。図2に示すように、先ず、製造装置10の密閉型原料容器12にNi粒子分散溶液13を注入する。そして、超音波浴槽11を作動させることにより、Ni粒子分散溶液13中においてNi粒子を分散させる。なお、この段階においては、Ni粒子の表面には表面酸化膜が形成されている。
次に、加圧ガス導入管14により、加圧ガスとしてArガスを密閉型原料容器12内に導入する。このとき、流量計15によりArガスの流量を調節する。これにより、密閉型原料容器12内のNi粒子分散溶液13が加圧ガスにより導出管16に押し出され、アトマイザ17に供給される。なお、加圧ガスの流量によりNi粒子分散溶液13の供給速度を制御するため、密閉型原料容器12は耐圧性を有している。
一方、アトマイズガス導入管18を介して、アトマイズガスとしてArガスとH2ガスとの混合ガスをアトマイザ17に供給する。このとき、流量計19によりアトマイズガスの流量を調節する。これにより、アトマイザ17が、アトマイズガスによりNi粒子分散溶液13をミスト状にして原料ミスト22とし、噴出口17aより噴出する。これにより、炉心管20の上端部に原料ミスト22が供給される。炉心管20内において、原料ミスト22はゆっくりと降下して炉心管20内を上端部から下端部へと流通する。これにより、原料ミスト22は先ず電気炉Aにより加熱され、次いで電気炉Bにより加熱される。なお、炉心管20内は還元雰囲気であり、圧力は例えば大気圧である。
そして、電気炉Aが、炉心管20内を降下する原料ミスト22及びアトマイズガスを200乃至600℃の温度に加熱する。これにより、Ni粒子の表面酸化膜(NiO)とアトマイズガス中のH2ガスとの間で下記化学式(1)に示す還元反応が起こり、Ni粒子の表面に形成されているNiO膜がNiに還元される。
NiO+H2→Ni+H2O (1)
NiO+H2→Ni+H2O (1)
次に、電気炉Bが、炉心管20内を降下する原料ミスト22及びアトマイズガスを600乃至1100℃の温度に加熱する。これにより、Ni粒子が触媒の役割を果たし、有機溶剤が下記化学式(2)又は(3)に示す脱水素反応を起こす。即ち、有機溶媒がCxHy系溶剤であれば、下記化学式(2)に示す反応が起こり、有機溶媒がCxHyOz系溶剤であれば、下記化学式(3)に示す反応が起こる。この結果、Ni粒子中にCが固溶する。
Ni+CxHy→Ni+xC+(y/2)H2 (2)
Ni+CxHyOz→Ni+xC+(y/2−z)H2+zH2O (3)
Ni+CxHy→Ni+xC+(y/2)H2 (2)
Ni+CxHyOz→Ni+xC+(y/2−z)H2+zH2O (3)
次に、Ni粒子が冷却されると、Ni粒子表面にC(グラファイト又はカーボン)が析出する。これにより、Ni粒子の表面にC被覆層が形成され、C被覆Ni粒子が形成される。そして、原料ミスト22が炉心管20を通過してフィルタ21に到達し、フィルタ21により原料ミスト22からC被覆Ni粒子が分離され、捕集される。
以下、本発明の各構成要件における数値限定理由について説明する。
還元工程における加熱温度:200乃至600℃
還元工程における加熱温度が200℃未満であると、上記化学式(1)に示す還元反応が生じないことがある。一方、加熱温度が高いほど、反応時間が短くてすみ、従って炉心管が短くてすむため、加熱温度は高い方が好ましいが、加熱温度が600℃を超えると、上記化学式(2)又は(3)に示す有機溶媒の脱水素反応も同時に生じてしまう。例えば、上記化学式(3)に示す反応が生じると、H2Oが生成し、雰囲気中のH2O分圧が高くなる。そうすると、上記化学式(1)に示す反応が右に進行し難くなる。このため、上記化学式(1)に示す還元反応を円滑に進行させるためには、上記化学式(3)に示す反応は生じないほうがよい。従って、還元工程における加熱温度は200乃至600℃とすることが好ましい。
還元工程における加熱温度が200℃未満であると、上記化学式(1)に示す還元反応が生じないことがある。一方、加熱温度が高いほど、反応時間が短くてすみ、従って炉心管が短くてすむため、加熱温度は高い方が好ましいが、加熱温度が600℃を超えると、上記化学式(2)又は(3)に示す有機溶媒の脱水素反応も同時に生じてしまう。例えば、上記化学式(3)に示す反応が生じると、H2Oが生成し、雰囲気中のH2O分圧が高くなる。そうすると、上記化学式(1)に示す反応が右に進行し難くなる。このため、上記化学式(1)に示す還元反応を円滑に進行させるためには、上記化学式(3)に示す反応は生じないほうがよい。従って、還元工程における加熱温度は200乃至600℃とすることが好ましい。
被覆工程における加熱温度:600乃至1100℃
被覆工程における加熱温度が600℃未満であると、上記化学式(2)及び(3)に示す有機溶媒の脱水素反応が生じない。一方、加熱温度が高いほど、反応時間は短くてすみ、従って炉心管が短くてすむため、加熱温度は高い方が好ましいが、加熱温度が1100℃を超えると、気相中において下記化学式(4)に示す有機溶媒の熱分解反応が生じてしまう。この結果、炭素の一部が気相中に析出して煤(すす)となってしまい、Ni粒子の表面に析出しなくなる。従って、被覆工程における加熱温度は600乃至1100℃とすることが好ましい。なお、被覆工程において必要とされる処理時間は、加熱温度、炉長及びガス圧等により異なるが、本実施形態においては、例えば加熱温度を1000℃とした場合に、1分間以上の処理時間でNi粒子表面にC被覆層が形成された。
Ni+CxHy→Ni+zC+CpHq+CrHs (4)
被覆工程における加熱温度が600℃未満であると、上記化学式(2)及び(3)に示す有機溶媒の脱水素反応が生じない。一方、加熱温度が高いほど、反応時間は短くてすみ、従って炉心管が短くてすむため、加熱温度は高い方が好ましいが、加熱温度が1100℃を超えると、気相中において下記化学式(4)に示す有機溶媒の熱分解反応が生じてしまう。この結果、炭素の一部が気相中に析出して煤(すす)となってしまい、Ni粒子の表面に析出しなくなる。従って、被覆工程における加熱温度は600乃至1100℃とすることが好ましい。なお、被覆工程において必要とされる処理時間は、加熱温度、炉長及びガス圧等により異なるが、本実施形態においては、例えば加熱温度を1000℃とした場合に、1分間以上の処理時間でNi粒子表面にC被覆層が形成された。
Ni+CxHy→Ni+zC+CpHq+CrHs (4)
本実施形態においては、表面に酸化膜が形成されているNi粒子に対し、還元反応により酸化膜を除去し、引き続き、有機溶媒の脱水素反応により、この酸化膜を除去したNi粒子の表面にCを析出させることにより、C被覆Ni粒子を製造することができる。また、1本の炉心管の上部、即ち電気炉Aに囲まれた部分において還元工程を行い、下部、即ち電気炉Bに囲まれた部分において被覆工程を行うことにより、簡単な設備で効率よくC被覆Ni粒子を製造することができる。
なお、本実施形態においては、加圧ガスとしてArガスを使用したが、本発明はこれに限定されず、加圧ガスはO2ガスを含まない不活性ガスであればよく、N2ガス又はHeガス等を使用してもよい。また、本実施形態においては、アトマイズガスとしてArガスとH2ガスとの混合ガスを使用したが、本発明はこれに限定されず、アトマイズガスは還元性ガスであればよく、例えば、N2ガスとH2ガスとの混合ガス、又はHeガスとH2ガスとの混合ガス等であってもよい。
以下、本発明の実施例の効果について、その特許請求の範囲から外れる比較例と比較して具体的に説明する。前述の第2の実施形態において説明した方法により、C被覆Ni粒子を製造した。製造条件を表1に示す。
このようにして製造したC被覆Ni粒子の試料について、形態観察及びC被覆層の厚さの測定を行った。また、この試料を含有させた導電性ペーストを作製し、その導電性を評価した。
(1)形態観察
上述の試料のうち、電気炉Bの加熱温度を700℃として製造した試料及び1200℃として製造した試料を、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)により観察した。図3(a)は電気炉Bの加熱温度を700℃として製造した試料を示すSEM写真であり、(b)は電気炉Bの加熱温度を1200℃として製造した試料を示すSEM写真である。
上述の試料のうち、電気炉Bの加熱温度を700℃として製造した試料及び1200℃として製造した試料を、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)により観察した。図3(a)は電気炉Bの加熱温度を700℃として製造した試料を示すSEM写真であり、(b)は電気炉Bの加熱温度を1200℃として製造した試料を示すSEM写真である。
図3(a)及び(b)に示すように、電気炉Bの加熱温度を700℃とした場合においては、球状のC被覆Ni粒子のみが認められるのに対し、電気炉Bの加熱温度を1200℃とした場合では、C被覆Ni粒子の他に炭素の結晶がかなりの割合で認められた。これは、電気炉Bの加熱温度を1200℃とした場合には、気相中で有機溶媒の分解反応が生じ、Cが煤(すす)として生成し混入したためと考えられる。
(2)C被覆層の厚さ測定
また、電気炉Bの加熱温度を700乃至1100℃とした試料について、C含有量を分析し、その分析結果からC被覆層の厚さを見積もった。その結果、電気炉Bの加熱温度を高くする程、C被覆層の厚さが厚くなる傾向が認められ、電気炉Bの加熱温度を700℃とした場合は、C被覆層の厚さは5乃至10nmであり、加熱温度を1100℃とした場合は、C被覆層の厚さは20乃至30nmであった。
また、電気炉Bの加熱温度を700乃至1100℃とした試料について、C含有量を分析し、その分析結果からC被覆層の厚さを見積もった。その結果、電気炉Bの加熱温度を高くする程、C被覆層の厚さが厚くなる傾向が認められ、電気炉Bの加熱温度を700℃とした場合は、C被覆層の厚さは5乃至10nmであり、加熱温度を1100℃とした場合は、C被覆層の厚さは20乃至30nmであった。
(3)導電性評価
更に、電気炉Bの加熱温度を700℃としてC被覆層を形成した試料、及び未処理のC被覆層を形成していない試料について、これらの試料を有機溶媒及びバインダを含むペーストに添加して導電性ペーストを作製した。そして、この導電性ペーストをスキージにより基板上に印刷し、短冊状試験パターンを形成した。そして、印刷後の導電性ペーストを、大気中、N2ガス中及びH2ガス中において夫々焼成し、その比抵抗を測定した。導電性ペーストの作製条件、印刷条件及び焼成条件を表2に示す。
更に、電気炉Bの加熱温度を700℃としてC被覆層を形成した試料、及び未処理のC被覆層を形成していない試料について、これらの試料を有機溶媒及びバインダを含むペーストに添加して導電性ペーストを作製した。そして、この導電性ペーストをスキージにより基板上に印刷し、短冊状試験パターンを形成した。そして、印刷後の導電性ペーストを、大気中、N2ガス中及びH2ガス中において夫々焼成し、その比抵抗を測定した。導電性ペーストの作製条件、印刷条件及び焼成条件を表2に示す。
図4は、横軸に導電性ペーストの焼成雰囲気をとり、縦軸に焼成後の導電性ペーストの比抵抗の測定値をとって、焼成雰囲気が導電性ペーストの導電性に及ぼす影響を示すグラフ図である。なお、図4において、比抵抗値が無限大(∞)となっているものは、比抵抗が大きすぎて測定装置の測定範囲を超えていたことを示す。
図4に示すように、C被覆層が形成されていない未処理のNi粒子を含有させた導電性ペーストにおいては、H2ガス中で焼成した場合にのみ導電性が得られ、大気中及びN2ガス中で焼成した場合は導電性が得られなかった。これに対して、C被覆層を形成したC被覆Ni粒子を含有させた導電性ペーストにおいては、大気中、N2ガス中、H2ガス中のいずれの条件で焼成した場合においても、十分な導電性を得ることができた。
図4に示すように、C被覆Ni粒子を使用した導電性ペーストにおいては、比抵抗値はどの焼成条件でも1×10−4Ω・cm程度の値が得られたが、ペースト配合及び添加剤の最適化により、10−5Ω・cmレベルの比抵抗を得ることも可能である。
1;Ni粒子
2a、2b;C被覆層
10;製造装置
11;超音波浴槽
12;密閉型原料容器
13;Ni粒子分散溶液
14;加圧ガス導入管
15;流量計
16;導出管
17;アトマイザ
17a;噴出口
18;アトマイズガス導入管
19;流量計
20;炉心管
21;フィルタ
22;原料ミスト
A、B;電気炉
2a、2b;C被覆層
10;製造装置
11;超音波浴槽
12;密閉型原料容器
13;Ni粒子分散溶液
14;加圧ガス導入管
15;流量計
16;導出管
17;アトマイザ
17a;噴出口
18;アトマイズガス導入管
19;流量計
20;炉心管
21;フィルタ
22;原料ミスト
A、B;電気炉
Claims (4)
- 電子部品用実装材料に含有される導電性粉末材料において、ニッケル又はニッケル合金からなる粒子と、炭素からなり前記粒子の表面を被覆する平均厚さが5乃至30nmの被覆層と、を有することを特徴とする導電性粉末材料。
- ニッケル又はニッケル合金からなる粒子の表面を還元して表面酸化膜を除去する還元工程と、表面を還元した前記粒子の表面に炭素からなり平均厚さが5乃至30nmの被覆層を被覆する被覆工程と、を有することを特徴とする導電性粉末材料の製造方法。
- 有機溶媒中にニッケル又はニッケル合金からなる粒子を分散させたニッケル粒子分散溶液をミスト状にして還元雰囲気中に供給する供給工程を有し、前記還元工程は、前記還元雰囲気中においてミスト状の前記ニッケル粒子分散溶液を200乃至600℃の温度に加熱する工程であり、前記被覆工程は、表面が還元された前記粒子及び前記有機溶媒を非酸化雰囲気中で600乃至1100℃の温度に加熱して前記粒子の表面に炭素を析出させる工程であることを特徴とする請求項2に記載の導電性粉末材料の製造方法。
- 前記供給工程は、前記ミスト状のニッケル粒子分散溶液を還元性のガスと共に炉心管内に供給してこの炉心管内を流通させる工程であり、前記還元工程は前記炉心管の上流側部分において行い、前記被覆工程は前記炉心管の下流側部分において行い、前記炉心管の下流側端部において前記粒子を回収する工程を有することを特徴とする請求項3に記載の導電性粉末材料の製造方法。
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2003
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