A.装置レイアウト
図1は、この発明にかかるフィルム供給機構を装備した薄膜形成装置の一実施形態を示すレイアウト図である。この薄膜形成装置では、図1に示すように上手側(図1の左側)にインデクサ部IDが設けられる一方、インデクサ部IDの下手側(図1の右手側)にシートフィルムを用いて基板に薄膜を形成するプロセス部PPが設けられている。
このインデクサ部IDでは、基板を収容するための基板収容カセット11が4個X方向に一列で配置されるとともに、その配列方向Xに沿って従来より多用されている基板搬送ロボット12が移動し、一の基板収容カセット11に収容されている薄膜形成前の基板を取り出してプロセス部PPに搬送したり、プロセス部PPから薄膜形成済の基板を受け取って基板収容カセット11に収容する。なお以下の説明便宜のために、各図には、上下方向Zと、基板収容カセット11の配列方向Xとに直交する方向を「Y方向」とするXYZ直角座標軸が示されている。
インデクサ部IDの(+Y)側に配置されたプロセス部PPでは、センターロボット2の周囲に、塗布ユニット3、乾燥ユニット4、転写ユニット5、剥離ユニット6、フィルム供給ユニット7および反転ユニット8が配設されている。この実施形態では、転写ユニット5による転写処理を並行して行うために2台の転写ユニット5が設けられている。また、後述するようにインデクサ部IDから受け取った基板については、反転ユニット8で反転させた後、いずれかの転写ユニット5に搬送するため、プロセス部PPのうちインデクサ部IDに隣接する領域に2台の転写ユニット5により反転ユニット8をサンドイッチするようにこれらがX方向に配列されている。また、各転写ユニット5に対して重ね合わせるように乾燥ユニット4が配置されて装置のフットプリントの低減を図っている。また、プロセス部PPのうちインデクサ部IDの反対側には塗布ユニット3および剥離ユニット6が配置されている。さらに、塗布ユニット3と転写ユニット5との間にシートフィルムを供給するフィルム供給ユニット7が介挿されている。このように、プロセス部PPではセンターロボット2を中心として各処理ユニット3〜8が放射状に配置され、センターロボット2はプロセス部PPのほぼ中央に固定されたまま次に説明するように、基板用ハンドを伸縮させて転写ユニット5、剥離ユニット6および反転ユニット8の間で基板を搬送することができる一方、フィルム用ハンドを伸縮させて塗布ユニット3、乾燥ユニット4、転写ユニット5およびフィルム供給ユニット7の間でシートフィルムを搬送することが可能となっている。
B.センターロボット(搬送機構)2
図2はセンターロボットを示す図であり、同図(a)は上方より見た平面図であり、同図(b)は側面図である。このセンターロボット2は本発明にかかる搬送機構に相当する多関節ロボットであり、ロボット本体21と、そのロボット本体21の頂部に取り付けられた2本の多関節アーム22,23とを備えている。このロボット本体21はプロセス部PPの中央部に固定配置された状態で回転軸AX1回りに回転し、さらにZ方向に伸縮自在となっている。
また、多関節アーム22の先端部には基板Wを保持するための基板保持部として機能する基板用ハンド24が取り付けられており、装置全体を制御する制御ユニット(後で説明する図12中の符号9)からの動作指令にしたがって多関節アーム22の伸縮駆動およびロボット本体21の回転軸AX1回りの回転およびZ方向駆動を制御することによって基板Wを各ユニット5,6,8から搬出したり、逆に基板用ハンド24で保持している基板Wを各ユニット5,6,8に搬入する。このように、この実施形態では、ロボット本体21および多関節アーム22が本発明の「基板用保持部」に相当する基板用ハンド24を移動させて基板Wを搬送する駆動部として機能している。
図3は基板用ハンドの構成を示す図であり、同図(a)は基板用ハンドを上方より見た平面図であり、同図(b)は同図(a)のA−A線断面図である。この基板用ハンド24は、同図に示すように、上下2枚のプレート241,242を重ね合わせてなるハンド本体243を備えている。このハンド本体243の先端部と中央部には、ハンド本体243の長手方向とほぼ直交する方向に延びるウイング部244が形成されている。そして、各ウイング部244の上面部に基板支持ブロック245が固着され、同図中の2点鎖線で示すように、基板Wの外側面を係止することでハンド本体243の上面側で基板Wを機械的に保持可能となっている。このように本実施形態では基板支持ブロック245が本発明の「上方側保持機構」として機能している。
また、下プレート242の中央部には3つの吸着孔246〜248が設けられるとともに、上プレート241の下面側に溝部249が形成されており、上下プレート241,242を一体化させることで溝部249によって3つの吸着孔246〜248が連通されている。また、この溝部249は図示を省略する真空ポンプなどの真空吸着機構と接続されており、真空吸着機構を作動させることで溝部249に負圧を与え、同図(b)中の1点鎖線で示すように、ハンド本体243の下面側で基板Wを吸着保持可能となっている。このように本実施形態ではハンド本体243に設けられた吸着孔246〜248および溝部249、ならびに真空吸着機構が本発明の「下方側保持機構」として機能している。
このように、この実施形態では、センターロボット2は基板Wを2つの保持態様、つまり上方側で機械的保持する態様および下方側で吸着保持する態様で保持しながら基板を搬送することが可能となり、基板Wの状態に応じて保持態様を切替えることができ、その基板Wの状態に適応し、しかも効率的に基板搬送を行うことが可能となる。また、同時に2枚の基板Wを搬送することも可能である。
もう一方の多関節アーム23の先端部には、シートフィルムFの表面周縁部を吸着保持するフィルム用ハンド25が取り付けられており、制御ユニットからの動作指令にしたがって多関節アーム23の伸縮駆動およびロボット本体21の回転軸AX1回りの回転およびZ方向駆動を制御することによってシートフィルムFを各ユニット3〜5、7から搬出したり、逆にフィルム用ハンド25で保持しているシートフィルムFを各ユニット3〜5に搬入する。このように、この実施形態では、ロボット本体21および多関節アーム23が、本発明の「フィルム用保持部」に相当するフィルム用ハンド25を移動させてシートフィルムFを搬送する駆動部として機能している。
図4はフィルム用ハンドの構成を示す図であり、同図(a)はフィルム用ハンドを下方からみた底面図であり、同図(b)は同図(a)のB−B線断面図である。このフィルム用ハンド25では、ハンド本体251の下面先端部にシートフィルムFと同程度の外径を有するリング部材252が取り付けられるとともに、そのリング部材252の下面側にシートフィルムFとほぼ同一形状のプレート部材253が取り付けられてハンド本体251とリング部材252とで内部空間254を形成している。なお、ハンド本体251およびプレート部材253の各中央部を補強するために、内部空間254に6本の支柱部材255が設けられている。
また、プレート部材253の周縁部には、18個の貫通孔253aが形成されるとともに、ゴムや樹脂などで形成されたパッキンシート256を介してプレート部材253にシートフィルムFとほぼ同一外径を有するリングプレート257が取り付けられている。ここで、パッキンシート256にはプレート部材253の貫通孔253aと対応して貫通孔256aが形成されており、貫通孔253aと1対1で対応するように配置されるとともに、リングプレート257には3個の貫通孔253aに跨る吸着孔257aが6個形成されており、3個の貫通孔253aごとに1個の吸着孔257aが対応するように配置されている。このようにして吸着孔257a、貫通孔256aおよび253aを介してリングプレート257の下面側と内部空間254とが相互に連通されている。
一方、ハンド本体251の上面には、同図(b)に示すように、連通孔251aが設けられ、排気管258を介して排気ブロア(図示省略)に接続されている。このため、排気ブロアを作動させることで内部空間254に負圧を与え、同図(b)で示すように、リングプレート257の下面全体が本発明の「当接領域」としてシートフィルムFの表面周縁部に当接しながら、その表面周縁部を吸着保持可能となっている。
C.フィルム供給ユニット(フィルム供給機構)7およびフィルム収容カセット71
図5は、図1の薄膜形成装置に設けられたフィルム供給ユニットの構成を示す図である。このフィルム供給ユニット7は、シートフィルムFを収容するフィルム収容カセット71をカセット載置台72に対して着脱自在となっている。また、カセット載置台72は図示を省略する昇降機構によって上下方向Zに昇降され、カセット載置台72に装着されたフィルム収容カセット71を上下方向Zにおいて位置決め可能となっている。なお、この実施形態では、同図に示すように、3つのカセット載置台72が設けられており、最大3つのフィルム収容カセット71を同時に載置可能となっているが、カセット載置台72の設置個数については「3」に限定されるものではなく任意である。
図6は、図1の薄膜形成装置に設けられたフィルム収容カセットの分解組立斜視図である。各フィルム収容カセット71はシートフィルムFの間に離形シートSHを介在させた状態で複数のシートフィルムFをカセット本体711に収容可能となっている。また、このカセット本体711には、3本の位置決めピン712が立設されており、カセット本体711に収容されたシートフィルムFおよび離形シートSHの周縁部と係合してシートフィルムFおよび離形シートSHをカセット本体711に対して位置決めする。これによって、カセット本体711内では、シートフィルムFおよび離形シートSHが常に整列された状態で収容され、後で説明するようにしてシートフィルムFの取出処理や離形シートSHの除去処理を良好に行うことができる。
また、カセット本体711に対して保護カバー713が開閉自在に設けられている。より詳しく説明すると、保護カバー713の下端周縁部の4箇所に突起部714が取り付けられる一方、各突起部714に対応してカセット本体711に挿入孔715が設けられている。そして、突起部714のそれぞれを対応する挿入孔715に挿入させながら、保護カバー713をカセット本体711に装着することで保護カバー713は閉じた状態となり、カセット本体711に収容されたシートフィルムFおよび離形シートSHを上方より覆って保護することとなる。これによって、シートフィルムFの汚染を確実に防止することができる。一方、保護カバー713をカセット本体711から上方に移動させると、保護カバー713は開いた状態となり、カセット本体711に収容されたシートフィルムFおよび離形シートSHを上方より搬出することができるようになる。
このように保護カバー713を開閉移動させるために、この実施形態にかかるフィルム供給ユニット7では、図5に示すように、カバー開閉駆動機構73がカセット載置台72の上方位置に配設されている。このカバー開閉駆動機構73は、回動軸AX2回りに回動自在となっている回動アーム731と、その先端に取り付けられた把持部732とを備えており、図示を省略する駆動部により回動アーム731が1点鎖線矢印P1の方向に回動する。そして、カバー開閉駆動機構73は所定のカバー開閉位置(図8(a))に位置決めされたフィルム収容カセット71の保護カバー713に設けられた取っ手部716を把持部732により把持した後、回動アーム731を(−P1)方向に回動させることで図5の退避位置に移動させるように構成している。また、保護カバー713を閉じる場合には、これと逆の動作を行う。
このカバー開閉駆動機構73の下方位置には、離形シートSHを取り除く離形シート除去機構74が配設されている。この離形シート除去機構74では、図5および図7に示すように、シートフィルムFおよび離形シートSHの外径よりも広い間隔を隔てて2本の回動アーム741,742が配設されている。また、これらの回動アーム741,742の頂部には、水平方向に延びる連結ビーム743が掛け渡されている。また、この連結ビーム743の中央部には、離形シートSHを吸着する吸着プレート744が取り付けられており、図5および図7に示すように吸着位置において吸着プレート744の下面が吸着面744aとなっている。そして、図8(b)に示すように吸着面744aを(−Z)方向に向けたままの状態でカセット載置台72を上昇させると、そのカセット載置台72に載置されたフィルム収容カセット71内の最上部に位置する離形シートSHが吸着面744aに当接し、同図(c)に示すように吸着プレート744に吸着保持される。なお、カセット載置台72上に載置されているフィルム収容カセット71同士の上下方向の間隔は、カバー開閉駆動機構73が保護カバー713を着脱するとき、前記保護カバー713が通過するのに十分な間隔である。
また、回動アーム741,742には、図7に示すように、それぞれ(+Y)方向および(−Y)方向に延びる軸部材745,746が取り付けられており、回動軸AX3を回動中心として回動自在となっている。そして、図示を省略する駆動部により回動アーム741,742が1点鎖線矢印P2の方向に回動可能となっている。このため、上記のようにして離形シートSHを吸着プレート744で吸着保持した後、回動アーム741,742を図9(a)に示す矢印方向(+P2)に回動させると、吸着プレート744は除去位置に位置決めされる。そして、吸着プレート744による吸着を解除すると、吸着プレート744から離形シートSHが下方に落下する。
さらに、この実施形態では離形シートSHを回収する離形シート回収ボックス76がフィルム供給ユニット7の底面部に配設されるとともに、上記のようにして落下してくる離形シートSHを離形シート回収ボックス76に案内するガイド部材77,78がさらに設けられている。このように離形シート回収ボックス76とガイド部材77,78とにより本発明の「離形シート回収手段」を構成しており、離形シートSHを確実に離形シート回収ボックス76に回収可能となっている。このため、フィルム供給ユニット7周囲への離形シートSHの散乱を効果的に防止することができる。
一方、離形シートSHをフィルム収容カセット71から取り除くことによって最上部にシートフィルムFが露出して該カセット71からの搬出が可能となる。そこで、適当なタイミングでフィルム用ハンド25がフィルム供給ユニット7に移動し、最上部のシートフィルムFを吸着保持する(同図(b))。そして、次の処理ユニット、つまり塗布ユニット3に搬送する。
なお、この実施形態では、図5に示すように離形シート除去機構74の近傍にイオナイザー79が設けられており、フィルム収容カセット71からシートフィルムFを搬出したり、離形シートSHを取り除く際に剥離帯電が発生するのを効果的に防止している。
D.塗布ユニット3
図10は、図1の薄膜形成装置に設けられる塗布ユニットの構成を示す図である。この塗布ユニット3は、円板状のステージ31と、このステージ31を回転させるモータ(図示省略)の回転軸32と、薄膜用塗布液である例えばSOG(Spin-on-Glass)液を塗布するためのSOG液用吐出ノズル33と、エッジリンスを行うべくシートフィルムFの周縁部分に洗浄液を吐出する洗浄液用吐出ノズル34と、塗布液や洗浄液等が塗布ユニット3の周辺に飛散するのを防止する飛散防止カップ35とを備えている。
このステージ31の上面全体には、図示を省略する吸着孔が複数個設けられるとともに、真空ポンプ(図示省略)と接続されている。そして、上記のようにフィルム用ハンド25によりシートフィルムFがフィルム供給ユニット7から塗布ユニット3に搬送され、ステージ31上に載置された後、真空ポンプを作動させることでシートフィルムFはステージ31にしっかりと真空吸着される。なお、このように構成されたステージ31の周囲を飛散防止カップ35が取り囲む構成になっている。
このように構成された塗布ユニット3では、ステージ31にシートフィルムFがセットされて塗布処理の準備が完了すると、塗布ユニット3に設けられたモータ(図示省略)が作動し、図10に示すように回転軸32が回転し始め、この回転に伴って、ステージ31、さらにはシートフィルムFが回転軸AX4回りに回転される。また、この回転と同時、あるいは少し遅れてSOG液用吐出ノズル33よりシートフィルムFの中心点に向かってSOG液を供給する。すると、シートフィルムFの回転に伴う遠心力によって、シートフィルムFの中心から全面にわたってSOG液が薄膜状に塗布される。このとき、シートフィルムFの外側に飛散したSOG液は飛散防止カップ35、さらには図示を省略する排出管を介して塗布ユニット3の外部に排出される。
そして、シートフィルムFの全面に対してSOG液の供給を行った後、エッジリンスを行う。即ち、洗浄液用吐出ノズル34よりシートフィルムFの周縁部分に向かって洗浄液が吐出される。ここでも、シートフィルムFの回転は継続されているため、この回転によって、シートフィルムFの周縁部分に付着していた塗布液が除去される。
こうしてシートフィルムFに対する塗布処理が完了すると、フィルム用ハンド25が塗布ユニット3に進入し、シートフィルムFを吸着保持する一方、真空ポンプが停止してステージ31による真空吸着が解除される。そして、フィルム用ハンド25によってSOG膜(薄膜)が形成されたシートフィルムFが塗布ユニット3から搬出され、次の処理ユニット、つまり乾燥ユニット4に搬送される。
なお、この実施形態における塗布ユニット3では、塗布液としてSOG液を用いたが、半導体のフォトリソグラフィに用いられるフォトレジスト液等に例示されるように、基板Wに対して形成すべき薄膜を構成する塗布液ならば、特に限定されるものではない。また、この実施形態では、塗布処理後にシートフィルムFを次に説明する乾燥ユニット4に搬送し、乾燥処理を施しているが、乾燥処理を行わず直接転写ユニット5に搬送するようにしてもよい。
E.乾燥ユニット4
図11は、図1の薄膜形成装置に設けられる乾燥ユニットを示す図である。この乾燥ユニット4は、その内部が処理チャンバー411となっている処理容器41と、その処理チャンバー411の内底部に配置されたホットプレート(ステージ)42とを備えている。なお、同図中の符号121は上記塗布ユニット3によりシートフィルムFの表面上に形成されたSOG膜(薄膜)を示している。
この処理容器41の底部には2箇所の窒素ガス導入口412,413が設けられており、図示を省略する窒素ガス供給源から窒素ガス(N2ガス)が上記導入口412,413を介して処理チャンバー411内に供給される。また、処理容器41の天井部には、排気口414が設けられており、処理チャンバー411内の気体成分を処理チャンバー411から排気可能となっている。このため、処理チャンバー411は窒素ガス雰囲気に満たされ、この雰囲気で乾燥処理が行われる。
また、ホットプレート42はヒータ421を内蔵しており、制御ユニットから与えられる電気信号によりヒータ421が発熱するように構成されている。また、ホットプレート42には、塗布ユニット3のステージ31と同様に、ホットプレート42の上面全体には、図示を省略する吸着孔が複数個設けられるとともに、真空ポンプ(図示省略)と接続されている。そして、上記のようにフィルム用ハンド25によりシートフィルムFが乾燥ユニット4に搬送され、ホットプレート42上に載置された後、真空ポンプを作動させることでシートフィルムFはホットプレート42にしっかりと真空吸着される。また、こうしてホットプレート42により真空吸着された状態で乾燥処理が開始される。
そして、所定時間だけシートフィルムFが加熱されて乾燥処理が完了すると、フィルム用ハンド25が乾燥ユニット4に進入し、シートフィルムFを吸着保持する一方、真空ポンプが停止してホットプレート42による真空吸着が解除される。そして、フィルム用ハンド25によって乾燥処理が施されたシートフィルムFが乾燥ユニット4から搬出され、次の処理ユニット、つまり転写ユニット5に搬送される。
F.転写ユニット5
図12は、図1の薄膜形成装置に設けられた転写ユニットを示す概略断面図である。同図において、この転写ユニット5は、その内部が真空排気可能となっており、SOG膜(薄膜)の転写処理を実行するためのチャンバ511を形成する処理容器51を備えている。この処理容器51の側面部には排気口512が設けられるとともに、その排気口512に真空ポンプ52が接続されている。この真空ポンプ52は装置全体を制御する制御ユニット9に電気的に接続されており、制御ユニット9からの動作指令に応じて作動して排気口512を介してチャンバ511内を真空排気することができるようになっている。
また、チャンバ511内には、第1および第2プレート54,55と、第1プレート54の第2プレート55に対する傾きを自動的に補正し薄膜形成対象である基板WとシートフィルムFに形成されているSOG膜が全面にわたって等しい圧力で押し付けられるようにする機構(以下、傾斜補正機構という)58が配設されている。
第1プレート54は、第2プレート55の上方にこれと軸線が一致するように傾斜補正機構58を介して吊設され、第2プレート55と対向する面(下面)に基板Wが装着されることにより基板用プレートを構成している。このため、第1プレート54の下面は、平坦性を確保するために研磨された石英板(図示省略)が設けられており、この石英板に基板Wが固定される。このように石英板を用いた理由は、石英が、基板Wを汚染する物質を含まないこと、および加工性がよく必要とする平坦性が容易に得られることなどから、基板Wを装着する材料として優れているからである。また、第1プレート54は、内部に加熱手段として加熱ヒータ541を具備している。この加熱ヒータ541はヒータコントローラ542と電気的に接続されており、制御ユニット9からの基板温度情報に基づき作動するヒータコントローラ542によって制御され、25°C〜300°Cの間で加熱制御される。
もう一方のプレート、つまり第2プレート55は、第1プレート54の下方に配設され、上面にシートフィルムFが装着されることによりフィルム用プレートを構成している。また、この第2プレート55は、シートフィルムFが載置される石英製のステージと、シートフィルムFを加熱する加熱台とから構成されるとともに、その加熱台の内部に加熱手段として加熱ヒータ551が内蔵されている。この加熱ヒータ551はヒータコントローラ552と電気的に接続されており、制御ユニット9からの基板温度情報に基づき作動するヒータコントローラ552によって制御され、25°C〜300°Cの間で加熱制御される。また、加熱台の下面中央には、軸553が一体に垂設されている。この軸553は軸受591によって上下動自在に軸支され、加重機構としての加重モータ592によって移動方向Zに沿って上下動されるように構成されている。
次に、傾斜補正機構58の構成について図12ないし図14を参照しつつ詳述する。図13は図12のC−C線断面図である。また、図14は傾斜補正機構を示す部分切欠斜視図である。この実施形態では、傾斜補正機構58は、第1プレート54の外周を取り囲むように配設され、移動方向Zに対してほぼ直交する第1方向Xに延びる第1軸部材581を介して第1プレート54に連結され、第1回動軸AX5を中心として第1プレート54を回動自在に支持するリング状の第1支持体582と、第1支持体582の外周に配設され、移動方向Zおよび第1方向Xに対してほぼ直交する第2方向Yに延びる第2軸部材583を介して第1支持体582に連結され、第2回動軸AX6を中心として第1支持体582を回動自在に支持する第2支持体584とを備えている。なお、この実施形態では、図14に示すように、第1プレート54に装着された基板Wの表面、つまり薄膜形成面112の面内に第1および第2回動軸AX5、AX6が存在するように、各軸部材581,583が設けられている。
このように構成された傾斜補正機構58では、第1プレート54は第1支持体81により第1回動軸AX5回りに回動自在に支持されるとともに、第2支持体583により第2回動軸AX6回りに回動自在に支持されており、いわゆる軸回動によって第1プレート54は移動方向Zに対して傾斜可能となっている。
また、傾斜補正機構58の第2支持体584は、図14に示すように、第1支持体582をY方向において挟み込むように方向Zに延びる2本のコラム部584a,584bと、両コラム部584a,584bの上部を連結するビーム部584cとで構成されている。そして、ビーム部584cの中央部から上方に支柱部584dが延設され、チャンバ511内で吊設されている。より詳しく説明すると、この支柱部584dは、軸受593によって上下動自在に枢支され、上端には下方への落下を防止するフランジ594が一体に突設されている。なお、図12中の符号595はフランジ594に対応して設けられた加重センサであり、基板WとシートフィルムFとの間に印加される加重を検出し、その加重値を制御ユニット9に与える。
次に、上記した転写ユニット5を使用した転写処理手順について説明する。本実施の形態においては、後で説明する反転ユニット8から、薄膜形成面112(電極配線などが形成され、薄膜を形成すべき面)が下方を向いた状態で基板Wが基板用ハンド24の基板支持ブロック245で機械的に保持されたまま転写ユニット5に搬送され、第1プレート54の下面に基板Wが薄膜形成面112を下に向けて装着される。また、第2プレート55上には、その表面に予め塗布ユニット3によってSOG膜121(図11参照)を形成してなるシートフィルムFがSOG膜121を上に向けて装着される。そして、制御ユニット9が装置各部を以下のように制御して薄膜シートフィルムF上の薄膜を基板Wに転写する。
まず、ヒータコントローラ542によって加熱ヒータ541に通電して第1プレート54を加熱して基板Wを所望の温度に加熱するとともに、ヒータコントローラ552によって加熱ヒータ551に通電して第2プレート55を加熱してシートフィルムFを所望の温度に加熱する。
また、真空ポンプ52によってチャンバ511内が所望の真空度となるように真空排気する。そして、チャンバ511内が所望の真空度になった後、制御ユニット9より加重モータ592に駆動信号が送られ、加重操作を開始する。これによって、第2プレート55が移動方向Zに沿って上昇してシートフィルムFを基板Wに押し付ける。このとき、第1プレート54と傾斜補正機構58は、第2プレート55によって一体に押し上げられる。
この押上時に、第1プレート54が第2プレート55に対して傾斜しているときは、第2プレート55が第1プレート54に当たったとき、傾斜補正機構58によって第1プレート54の傾斜が自動的に補正される。すなわち、第1プレート54は傾斜補正機構58によって移動方向Zに対して傾斜可能に保持されているので、例えば図12において左方に小角度傾斜しているとすると、先ず第2プレート55の左端側が第1プレート54に接触して第1プレート54を押し上げる。このため、第1プレート54は基板Wの表面内に存在する第1回動軸AX5を回動中心として時計方向に回動して基板WとシートフィルムFとの接触面積が右方に徐々に広がっていく。そして、第1プレート54の傾斜が完全に補正され第2プレート55と平行になると、基板WとシートフィルムFが全面にわたって等しい圧力で押し付けられる。
そして、加重モータ592によって加重を続け、加重センサ595によって所望の加重が検知されると、制御ユニット9は一定時間、その加重が継続されるように加重モータ592を制御する。その間も基板WとシートフィルムFは所定の温度となるように加熱されている。
また、上記した一連の加重操作が終了すると、加重の状態が零となるように制御ユニット9は加重モータ592に信号を送る。このとき真空排気も停止するように制御される。
なお、上記のようにして転写ユニット5において基板WへのSOG膜121の転写が完了すると、基板WはSOG膜(薄膜)を挟んでシートフィルムFと一体となっており、転写ユニット5に進入してきた基板用ハンド24の吸着孔246〜248で一体化状態のまま基板Wを吸着保持する。つまり、基板用ハンド24の下方側保持機構を用いて密着物(後の図15中の符号Mに示すものであり、SOG膜121を介して相互に密着された基板WおよびシートフィルムFである)を吸着保持する。そして、その吸着保持状態のまま基板用ハンド24はチャンバ511から剥離ユニット6に密着物を搬送する。
G.剥離ユニット6
図15は、図1の薄膜形成装置に設けられた剥離ユニットを示す図である。この剥離ユニット6は、その内部が処理チャンバー611となっている処理容器61と、その処理チャンバー611の下方に配置されて上記転写ユニット5により形成された密着物MのシートフィルムFを真空吸着する吸着プレート62と、処理チャンバー611において、吸着プレート62の上方に設けられ、吸着プレート62上に載置された密着物Mの基板Wを吸着可能で、上下方向(Z方向)および、X方向に沿った軸AX7周りに回動する基板吸着部63とを備えている。なお、同図中の符号111は基板Wの薄膜形成面112に形成された電極配線を示している。
また、基板吸着部63には該基板吸着部63を軸AX7周りに回動させるため、ロータリ型のエアシリンダなどを用いた回動機構64が接続されている。また、基板吸着部63には昇降機構65が設けられている。
昇降機構65は、エアシリンダなどの駆動部材66によって、基板吸着部63における基板Wとの接触面に対して進退するピン67を有する。そして、基板Wが上方を向いた状態になるよう基板吸着部63が回動したとき、ピン67を上昇させることにより基板Wを基板吸着部63の上方に上昇させることが可能である。
処理容器61の処理チャンバー611には、図示を省略する除電器が設けられており、処理チャンバー611内においてオゾン(O3)雰囲気を形成可能となっている。
次に、上記のように構成された剥離ユニット6の動作について説明する。転写ユニット5によりSOG膜121を介してシートフィルムFが貼り合わされた基板W、つまり密着物Mがセンターロボット2の基板用ハンド24により吸着保持されながら剥離ユニット6の処理チャンバー611内に搬入される。このとき、基板吸着部63は上方に退避している。そして、基板用ハンド24は、シートフィルムFが吸着プレート62と接触するように、密着物Mを吸着プレート62に載置した後、処理容器61外に退避する。
そして、吸着プレート62がシートフィルムFを吸着する一方、上方に退避していた基板吸着部63が下降し基板Wの裏面(非薄膜形成面)を吸着する。また、処理容器61を密閉し、除電器を作動させて処理チャンバー611内をオゾン雰囲気の状態にする。このようにシートフィルムFを吸着することで該シートフィルムFを介してSOG膜121中の溶媒を排出してSOG膜121を乾燥させる。この乾燥処理によりシートフィルムFとSOG膜121との界面では、基板WとSOG膜121との界面に比べ、SOG膜121の乾燥が促進されて剥がれ易くなる。そして、所定時間後、基板吸着部63が上昇すると、シートフィルムFとSOG膜121との界面が剥離して、シートフィルムFから基板WへSOG膜が転写されることになる。
次に、上昇した基板吸着部63は回動機構64によって軸AX7周りに回動し、基板Wの薄膜形成面112が上方を向いて水平姿勢になるような状態、つまりフェースアップ状態で停止する。その後、基板吸着部63は基板Wの吸着を解除するとともに、昇降機構65が基板Wを上昇させる。すなわち、駆動部材66によってピン67を上昇させることによって、基板Wを基板吸着部63との接触面から上昇させる。
そして、上昇した基板Wは基板用ハンド24によって次の説明する反転ユニット8に搬送され、さらにインデクサ部IDの基板搬送ロボット12によって基板収容カセット11に収容される。
H.反転ユニット8
図16は、図1の薄膜形成装置に設けられた反転ユニットの構成を示す図であり、同図(a)は反転ユニットを上方より見た平面図であり、同図(b)は同図(a)のD−D線断面図である。この反転ユニット8はセンターロボット2の基板用ハンド24との間で基板Wを受渡すための一対の基板チャック81,81を有している。この基板チャック対81,81は互いに対向して離間配置されている。また、各基板チャック81はロータリーシリンダ82のロッド83の先端部に取付けられており、ロッド83のX方向移動に伴いX方向に移動し、またロッド83の回転動作に伴いロッド83回りに180゜回転する。
このため、相互に離間している基板チャック対81,81の間に未処理の基板Wがインデクサ部IDの基板搬送ロボット12によって搬送されてくると、両ロッド83が伸長して同図に示すように基板チャック対81,81が基板Wを挟持した後、基板搬送ロボット12が退避する。そして、両ロッド83が180゜回転する。これによって、フェースアップ状態、つまり薄膜形成面112に形成された電極配線111を上方に向けた状態で搬送されてきた基板Wは反転されてフェースダウン状態となる。
一方、上記のように剥離ユニット6からフェースアップ状態で基板用ハンド24で機械的に保持されたままセンターロボット2により、薄膜形成済の基板Wが反転ユニット8に搬送されてくると、両ロッド83が伸長して同図に示すように基板チャック対81,81が基板Wを挟持しするのみで、反転処理を行わず、そのまま基板搬送ロボット12に受け渡す。
I.動作
図17は上記のように構成された薄膜形成装置の全体動作を示す図であり、同図中の実線矢印は基板Wの搬送順序を示し、1点鎖線矢印はシートフィルムFの搬送順序を示し、白抜矢印は密着物Mの搬送を示している。この薄膜形成装置では、その表面に電極配線111が形成された基板Wが基板収容カセット11に収容される一方、シートフィルムFがフィルム収容カセット71に収容されている。そして、フィルム収容カセット71の最上部に位置しているシートフィルムFをフィルム用ハンド25により塗布ユニット3に搬送し、そのシートフィルムFの表面にSOG膜121を塗布する(ステップS1:塗布処理)。ここで、フィルム収容カセット71の最上部に離形シートSHが位置している場合には上記「C.フィルム供給ユニット(フィルム供給機構)7およびフィルム収容カセット71」の項で説明した動作手順で最上部の離形シートSHを取り除いてシートフィルムFを最上部に位置させた後で、上記した塗布ユニット3へのシートフィルムFの搬送、ならびに塗布ユニット3による塗布処理を実行する。
また、このシートフィルムFの搬出および塗布処理と並行して、インデクサ部IDにおいて、基板搬送ロボット12によって基板収容カセット11に収容されている基板Wをフェースアップ状態のまま取り出し、反転ユニット8に搬送する。そして、反転ユニット8により基板Wを反転してフェースダウン状態にする(ステップS2:反転処理)。そして、基板用ハンド24の基板支持ブロック245で反転ユニット8から基板Wを受取り、転写ユニット5に搬送し、転写ユニット5の第1プレート54の下面に装着する。このように、この実施形態では基板用ハンド24の上方側保持機構によって基板Wを保持して反転ユニット8から転写ユニット5に搬送している。
一方、塗布処理が完了すると、フィルム用ハンド25によってシートフィルムFを塗布ユニット3から乾燥ユニット4に搬送し、この乾燥ユニット4においてシートフィルムF上のSOG膜121を乾燥させる(ステップS3:乾燥処理)。ここで、乾燥処理を必要としない場合には、フィルム用ハンド25によってシートフィルムFを塗布ユニット3から直接転写ユニット5に搬送し、第2プレート55上にシートフィルムFを装着する。
こうして、転写ユニット5において基板WおよびシートフィルムFがそれぞれ第1および第2プレート54,55にセットされると、上記「F.転写ユニット5」の項で詳述した動作手順で基板WへのSOG膜121の転写を行う(ステップS4:転写処理)。
次に、基板用ハンド24を転写ユニット5に進入させ、ハンド本体243の下面側で基板Wを吸着保持した後、その吸着状態のまま密着物Mを剥離ユニット6に搬送する。このように、転写ユニット5から剥離ユニット6への密着物Mの搬送については、基板用ハンド24の下方側保持機構を用いている。
そして、剥離ユニット6に搬送された密着物MからシートフィルムFのみを選択的に剥離させる(ステップS5:剥離処理)。こうすることで薄膜形成面112にSOG膜121のみが形成された基板Wを得ることができる。そして、この基板Wをフェースアップ状態で基板用ハンド24の基板支持ブロック245で保持しながら反転ユニット8に搬送する。すなわち、基板用ハンド24の上方側保持機構を用いて基板搬送を行っている。一方、剥離されたシートフィルムFについては廃却する。
こうして反転ユニット8に戻された薄膜形成済の基板Wについては、インデクサ部IDで基板搬送ロボット12を用いて基板収容カセット11に収容される。
J.作用効果
以上のように、この実施形態によれば、次のような作用効果が得られる。
(1)このように構成された薄膜形成装置では、プロセス部PPにおいて、本発明の「搬送手段」として機能するセンターロボット2がシートフィルムFおよび/または基板Wを塗布ユニット3、乾燥ユニット(乾燥手段)4、転写ユニット(転写手段)5および剥離ユニット(剥離手段)6の間で搬送し、シートフィルムFを用いた基板Wへの薄膜形成を行うように構成しているので、オペレータを介することなく、シートフィルムFを用いた薄膜形成が可能となっている。また、フィルム供給ユニット(フィルム供給手段)7をプロセス部PPに設けてシートフィルムFをプロセス部PPに直接的に供給しているので、シートフィルムFの搬送効率を高めることができ、装置のスループットを向上させることができる。
(2)センターロボット2をプロセス部PPのほぼ中央部に固定的に配置する一方、このセンターロボット2の周囲に塗布ユニット(塗布手段)3、乾燥ユニット(乾燥手段)4、転写ユニット(転写手段)5、剥離ユニット(剥離手段)6、フィルム供給ユニット(フィルム供給手段)7および反転ユニット8を配置するとともに、各ユニット3〜8に対して基板用ハンド24またはフィルム用ハンド25を直接的にアクセスさせるように構成しているので、センターロボット2の搬送経路を設ける必要がなくなり、装置のコンパクト化にとって有利となっている。
(3)センターロボット2は上方側保持機構および下方側保持機構を有しており、2つの保持態様で保持しながら基板Wを搬送することが可能となっており、上記実施形態では基板Wの状態に応じて保持態様を切替えている。このように、基板Wの状態に適応し、しかも効率的に基板搬送を行うことが可能となっている。
(4)シートフィルムF上のSOG膜121を基板Wの薄膜形成面112に転写する転写手段としては、上記実施形態にかかる転写ユニット5以外に従来より提案されている種々の装置、例えば特許文献1に記載された装置などを用いてもよい。しかしながら、この実施形態では傾斜補正機構58を、上記「F.転写ユニット5」の項で詳述したように、2つの回動軸AX5,AX6を回動中心とする軸回動により上下方向Zに対して第1プレート54を傾斜可能に構成した転写ユニット5を用いているため、図1に示すように乾燥ユニット4と転写ユニット5とを上下方向Zに重ね合わせて配置することができ、薄膜形成装置を設置するために必要となる占有床面積、つまりフットプリントを低減することができる。ここで、その理由は以下のとおりである。すなわち、基板Wの全面を均一な加重圧力でシートフィルムFに押し付けるために、例えば上記公報に記載の傾斜補正機構、つまり第1プレートを凸プレートと凹プレートの球面に沿って回動させることで傾斜補正を行う機構を転写ユニットに組み込むことが従来より提案されているが、この提案例では上下方向Zに大型化してしまうという問題があり、転写ユニットと乾燥ユニットとを積層配置することは事実上困難であった。これに対し、上記実施形態にかかる転写ユニットによれば、従来の転写ユニットに比べ転写ユニット5の高さを大幅に低くすることができ、乾燥ユニット4を該転写ユニット5と上下方向に重ね合わせて配置してプットプリントの低減を可能としている。
(5)シートフィルムFの間に離形シートSHを介在させた状態でシートフィルムFをフィルム収容カセット71に収容しているので、シートフィルム同士の密着を防止することができ、各シートフィルムFを確実に分離して使用することができる。そして、フィルム収容カセット71において離形シートSHが最上部に位置することで、シートフィルムFの汚染を効果的に防止することができる。また、この実施形態では、離形シート除去機構74が設けられており、最上部に位置する離形シートSHを取り除くように構成しているので、フィルム収容カセット71において最上部にシートフィルムFを位置させることができ、フィルム収容カセット71からのシートフィルムFの取り出しが容易となる。その結果、オペレータを介することなく、必要に応じてシートフィルムFの供給が可能となり、効率的にシートフィルムFを供給することができる。なお、シートフィルムFは樹脂製の薄板状物もしくは薄膜状物である。また、離形シートSHはシートフィルムFの保護、帯電抑制のため、シートフィルムF間に挟まれる薄板状物もしくは薄膜状物である。材料としては、帯電抑制や発塵抑制の点で無塵紙が好ましく、その他、紙、樹脂などを用いることができる。
(6)フィルム収容カセット71が薄膜形成装置に対して着脱自在となっているので、予めシートフィルムFを収容しておいたフィルム収容カセット71を準備しておき、必要に応じてフィルム収容カセット71を装置に装着することでシートフィルムFを補給することができ、シートフィルムFの供給をより効率的なものとすることができる。
(7)フィルム用ハンド25の内部に形成された内部空間254をブロアにより負圧状態にしてフィルム用ハンド25にシートフィルムFを吸着保持させる、つまり排気流量を高めて吸着孔に負圧を与えているため、仮に吸着孔246〜248からブロアに至るまでに排気経路の一部でリークが発生したとしても、リーク量に対応する量だけ負圧が減少するが、シートフィルムFを吸着保持するのに十分な負圧を発生させることは可能であり、優れた安定性でシートフィルムFを搬送することができ、効率的なシートフィルム搬送を行うことができる。
K.その他
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、図1に示すようにセンターロボット2を中心として処理ユニット3〜8を放射状に配置しているが、センターロボット2および各処理ユニット3〜8の配置レイアウトはこれに限定されるものではなく、センターロボット2が所定の搬送経路に沿って移動自在に構成するとともに、その搬送経路に沿って、その搬送経路の両側あるいは片側に処理ユニット3〜8を配置するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、シートフィルムFに対する処理を行うユニットとして、塗布処理を行う塗布ユニット3、乾燥処理を行う乾燥ユニット4、転写処理を行う転写ユニット5、および剥離処理を行う剥離ユニット6を設けているが、これらのユニット以外に別の処理ユニット、例えばシートフィルムFに対して親水性の表面処理を施す親水性処理用ユニットをさらに組み込んだり、逆に一部のユニットを削除したりしてもよく、シートフィルムFを取り扱うユニットを設けた薄膜形成装置全般に本発明を適用することができる。
また、上記実施形態では、転写手段に相当する転写ユニット5と、剥離手段に相当する剥離ユニット6とを相互に異なる別ユニットで構成しているが、これらのユニット5,6の代わりに転写手段と剥離手段とを兼ね備えたユニットを設けた薄膜形成装置に対して本発明を適用するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、転写ユニット5の上下方向Zに乾燥ユニット4を積層配置しているが、乾燥ユニット4を他の処理ユニットに対して積層配置したり、乾燥ユニット4を独立して配置したり、乾燥ユニット4を独立配置する場合であっても、複数の乾燥ユニット4を一括して積層配置するようにしてもよい。なお、乾燥処理を必要としない場合には、乾燥ユニット4の配設を省略してもよいことは言うまでもない。
また、センターロボット2は、2つの保持態様を有し、基板Wに応じて保持態様を切替えながら基板を搬送したり、同時に2枚の基板を搬送することが可能となっているという特徴を備え、本発明の搬送機構に相当するものである。そして、上記実施形態では、かかる特徴を利用すべく、センターロボット2を薄膜形成装置に適用しているが、本発明にかかる搬送機構については、基板搬送を伴う装置全般に適用することができ、上記した効果(3)、つまり基板の状態に適応し、しかも効率的に基板搬送を行うことができるという効果が得られる。
また、この発明は、凹凸パターンを有する基板の凹部に空隙を作らずに薄膜を圧着し、かつ、薄膜の表面を平坦にする処理に好適である。たとえば、金属などの配線パターンを有する基板に層間絶縁膜としてSOD膜やSOG膜を形成する場合や、コンタクトホールなどの穴や溝形状を有する基板に導電性の薄膜を埋め込んだりする場合が挙げられる。